当連結会計年度における世界経済は、米国の政策動向など不透明感を抱えつつも、緩やかな回復基調を継続しました。
国内は、当社インダストリアル機器部門に関連する新設住宅着工戸数や非居住建築物の着工床面積が足元ではやや増加したものの、全体としては低調に推移しました。米国は、住宅ローン金利の高止まりや資材価格の高騰の影響から、住宅着工が引き続き低調であった一方で、インフラを中心とする非住宅市場に対する建設投資が堅調に推移しました。欧州は、利下げやインフレの抑制に伴い、景気に改善の動きが見られるものの、ドイツや北欧では住宅市況の低迷が継続しました。
当社は、お客様への価値を追求し続けることで、事業のさらなる成長と企業価値の向上を目指しております。当社の経営理念として、社是を次のように定めております。
一、良い製品を責任をもって供給する
一、全従業員の生活の向上と人材の養成に努める
一、社会に奉仕し、文化に貢献する堅実な前進を期する
また、当社は、人が尊重され、人が成長することにより、会社も成長すると考えており、社是の実現に向けた経営基本姿勢を次のように定めております。
いきいきと楽しく力を合わせ、皆揃って成長していく集団を目指す
1.ガラス張りの経営に徹する
2.全員参画の経営に徹する
3.成果配分の経営に徹する
当社の使命は、当社の持てる能力や技術を最大限発揮し、お客様や社会が求める良い製品を創り出し継続的に供給することです。この使命を果たすことを通じ社会の持続性への貢献と堅実に存在し続ける企業の実現を目指しております。
世界経済は、不透明感を抱えつつも緩やかな回復基調を継続し、当期は3期連続で過去最高の売上高、営業利益、経常利益及び当期純利益を達成することができました。
当社グループでは、2030年度に売上高110,000百万円超、営業利益20,000百万円超、ROEは12%超、PBR2倍超、海外売上高比率55%超を目指しています。
2024年4月28日に発表した2025~2027年3月期中期経営計画は、2030年度に目指す姿に向かうための計画であり、当期はその初年度にあたりましたが、堅調な業績結果と今後の見通しから、中期経営計画の業績指標を修正いたしました。「未来を創る」をテーマとして、事業戦略、経営基盤強化戦略、成長投資戦略の3つの戦略を実践することで、上方修正した中期経営計画の達成を狙ってまいります。
3つの戦略の内容は、以下に掲げるとおりであります。
(1)事業戦略
最重要事業である鉄筋結束機事業では、通信・GPS機能を搭載した鉄筋結束機コネクティッド ツインタイアや特大径モデルの投入など製品の競争優位をさらに強化していきます。主力市場である欧米での販路拡大、ディーラー育成及び新規ユーザーの獲得、オセアニア・韓国での普及拡大並びにASEAN・中東での新規市場開拓を進め、海外事業の拡大を牽引していきます。
住環境機器事業のストックビジネス拡大、オフィス事業の文字表示機器拡販、機工品事業の鉄筋結束機拡販などビジネスモデルの変革をさらに推進していきます。また、HCR事業では、継続した新製品投入による売上高の維持・拡大や生産性改善と内製化による収益改善の継続による安定した黒字化の実現を目指してまいります。
新たな収益創出に向け、開発・営業本部内の新技術・新規事業を企画する部門を中心に保有するシーズと市場ニーズをもとに、外部企業とも協業しながら、新規事業の創出・探索を推進していきます。新規事業アイデアの事業化シナリオを検証し、将来のマックスを担う新規事業の事業化に挑戦してまいります。
(2)経営基盤強化戦略
サステナビリティに関する基本方針「マックスは事業の成長を通じて、持続可能な社会の実現に貢献します」の実現に向け、CO₂排出量削減取り組みの強化、環境配慮型製品の開発推進、人権デューデリジェンスの展開、女性の活躍推進環境の整備などの取り組みを継続し、さらに採用を含めた人への投資や大規模災害発生時の対応強化に取り組んでまいります。
DXビジョン「つながるDXで新たな感動を生み出す」の実現に向け、4つのDXテーマ「製品・サービスDX」、「生産・品質保証DX」、「データ・業務基盤DX」及び「人・組織DX」を基に戦略を推進し、新規事業展開や事業成長への貢献など、DXによる競争優位性の確立を目指してまいります。
事業戦略を実現するための生産規模拡大・グローバル展開や自動化による生産性向上により製造基盤を強化してまいります。
(3)成長投資戦略
事業成長の柱となる海外市場拡大を中心に、M&Aを含めた必要な投資を積極的に検討・実行してまいります。
持続的な成長の基盤となる新技術・新製品などの研究開発投資を積極的に進め、各事業別に必要となるコア技術を獲得し、お客様への新しい価値を提供してまいります。
目標とする経営指標は、以下のとおりです。
また、セグメントごとの計画は以下のとおりです。
当社グループを取り巻く事業環境は、米国の政策動向やウクライナ情勢の長期化、中国経済の先行き懸念など、依然として不透明な状況が続いていますが、足元の業績は堅調に推移しております。
2026年3月期の売上高は94,100百万円(前期比+2.5%)、営業利益は14,700百万円(同+1.6%)、経常利益は14,900百万円(同+0.6%)、親会社株主に帰属する当期純利益は11,300百万円(同+0.7%)を計画しております。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)マックスのサステナビリティに関する考え方及び取組
当社が考えるサステナビリティへの取組とは、「社是」の実現に向けた我々の活動プロセスそのものと考えております。
当社の使命は、当社の持てる能力や技術を最大限発揮し、お客様や社会が求める良い製品を創り出し継続的に供給することです。この使命を果たすことを通じて社会の持続性への貢献と堅実に存在し続ける企業の実現を目指し、サステナビリティに関する基本方針を以下のとおり定めております。
マックスは事業の成長を通じて、持続可能な社会の実現に貢献します。
1.人を尊重し、多様な人の能力を引き出し、人を活かします。
2.継続的に人と技術に投資し、新しいモノ・コトを創造します。
3.人にやさしく環境に配慮した製品・サービスを世界中の人々に届けます。
4.成果は公正・適正に分配します。
5.ステークホルダーと適切に対話を行うとともに、ガバナンスを高め続けます。
当社は、サステナビリティに関する活動を推進するため、取締役会の監督の下、サステナビリティ戦略決定機関として、サステナビリティ委員会(委員長:代表取締役社長)を設置し、サステナビリティ委員会の下部組織として、サステナビリティに関する諸活動を推進するサステナビリティ推進委員会(委員長:サステナビリティ担当取締役)を設置しております。
サステナビリティ委員会は、認識した課題、審議状況等を取締役会に報告します。また、認識した課題は、中期経営計画及び事業計画に反映させ、サステナビリティに関わる活動と事業戦略を統合して持続的な企業価値向上を実現していきます。

https://www.max-ltd.co.jp/about/sustainability/esg/about_sustainability.html
②戦略
当社は、サステナビリティ経営を推進する上で、ステークホルダーにとって重要であると同時に、当社にとって経営インパクトの大きい課題として、5つのマテリアリティ「人を活かす企業の実現」、「持続可能な地球環境への貢献」、「『暮らしや仕事を楽に、楽しく』の実現に向けたイノベーションの推進」、「責任ある供給の確保」、「ガバナンスの維持・強化」を設定しました。
これらのマテリアリティを当社が事業を通して取り組むべき重要課題として認識し、解決に向けた活動や事業活動を推進することで、新たな事業成長の機会を見出し、企業価値の向上を図ってまいります。
マテリアリティの特定にあたっては、SDGsや国連グローバル・コンパクト、ISO26000、GRIスタンダード等の国際的な枠組みや、幅広いステークホルダーの視点と、企業へのインパクトの視点の双方を考慮しました。その上で、役職員向けアンケートの実施、社外役員や外部有識者との意見交換等、社内外で積極的に議論を重ね、取締役会での承認を経て、マテリアリティを特定しました。
■STEP1 社会課題の抽出
サステナビリティ推進委員会の前身である、執行役員を中心とする「サステナビリティ小委員会」を設置し、国際的なガイドライン、SDGsなどを参照・分析し、社会課題を抽出しました。
■STEP2 社会課題の重要度評価
STEP1で抽出した社会課題について、「ステークホルダー(社会)にとっての重要度」と「当社グループにとっての重要度」の視点から重要性が高い課題を特定しました。
■STEP3 施策の検討と妥当性評価
STEP2で特定した課題に対して、中期経営計画との関連性も踏まえながら施策を検討するとともに、評価の妥当性を確認するため、外部有識者にも意見を伺い、課題の見直しを実施しました。
■STEP4 マテリアリティ(重要課題)の特定
取締役会での審議・検討のもと、当社が事業を通して取り組むべきマテリアリティ(重要課題)を以下のとおり定めました。
マテリアリティ(重要課題)
※ CO2排出量及び再資源化率の数値に関しては、2024年3月期の実績となります。
当社のサステナビリティに関するリスク及び機会の識別、評価及び管理は、サステナビリティ委員会の下部組織であるサステナビリティ推進委員会が中心となって推進し、サステナビリティ委員会で審議・決定します。サステナビリティに関する取り組みの進捗・結果は、取締役会に報告するとともに、中期経営計画及び事業計画の検討に反映させつつ、会社の企業倫理、法令遵守、リスク管理等を推進する機関であるコーポレートガバナンス委員会(社外取締役を含む全取締役が出席、年4回開催)と連携を図り、全社のリスク管理と統合します。
当社のサステナビリティに関する指標と目標は、「(1)マックスのサステナビリティに関する考え方及び取組 ②戦略」に記載しておりますので、ご参照ください。
(2)気候変動(TCFD)への対応
当社は、2022年9月に取締役会の決議を経て、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に賛同することを表明しました。気候変動問題への対応が重要な経営課題の一つという認識のもと、気候変動に関わるリスクや機会などの特定とその対応等、温室効果ガス(当社から排出される温室効果ガスの殆どがCO2である事を鑑み、以下文中ではCO2と記載しますが温室効果ガスと同義です。)の削減に向けた取り組みと情報開示を推進しております。
①ガバナンス
当社は、気候変動問題を含むサステナビリティに関する活動を推進するため、取締役会の監督のもと、サステナビリティ戦略決定機関としてサステナビリティ委員会(委員長:代表取締役社長)を設置し、また、サステナビリティ委員会の下部組織としてサステナビリティに関する諸活動を推進するサステナビリティ推進委員会(委員長:サステナビリティ担当取締役)を設置しています。
サステナビリティ委員会は、その審議状況や認識した気候変動に関わるリスク及び機会について、取締役会に報告を行うとともに、中期経営計画及び事業計画に反映させ、サステナビリティに関わる活動と事業戦略を統合して持続的な企業価値向上を図っていきます。
気候変動に関わる諸活動は、取締役会の監督のもと、サステナビリティ委員会を中心に推進する体制としています。
② 戦略
気候変動のリスク及び機会が当社にもたらす影響について、シナリオ分析を行いました。
シナリオ分析においては、外部専門家を活用しながら、気候変動に関するリスクと機会の識別及び重要度評価、シナリオ群の定義、事業/財務インパクトの定量評価、ならびにリスクと機会を踏まえた対応策について検討を行いました。
また、複数の温度帯のシナリオを選択・設定するため、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)、IEA(国際エネルギー機関)等の科学的な情報に基づく以下2つのシナリオにおける世界観を描き、当社グループへの影響を考察しました。
シナリオ分析の結果、いずれのシナリオのもとでも、当社はレジリエントな経営を行うことが可能と確認しました。
1.5℃シナリオでは、脱炭素化に向けた規制の強化が想定され、炭素税の導入や原材料価格の高騰、より脱炭素を意識した製品・サービスの創出が求められます。一方、4℃シナリオでは物理的リスクの影響が高まり、工場の操業停止やサプライチェーンの寸断といったリスクへの対応とともにインフラの強靭化ニーズへの対応が必要となります。
分析詳細
※ 当社では、気候変動に伴うリスク及び機会の評価にあたり、以下のように時間軸を設定しています。
短期:~2年程度
中期:3~10年程度
長期:10年程度~
③リスク管理
サステナビリティに関する諸活動の一つとして、マテリアリティの特定を実施した結果、気候変動への対応は、ステークホルダーの観点及び自社の観点から重要度が極めて高い課題と位置付けています。
気候変動に関わる活動は、サステナビリティ委員会の下部組織であるサステナビリティ推進委員会が中心となり、リスクの識別、評価及び管理を推進し、サステナビリティ委員会で審議・決定します。
シナリオ分析においては、定期的に新たな規制上の評価等、各リスクの事業/財務インパクトを定量的に評価し、リスクの管理を行います。
気候変動リスク評価の結果は、取締役会へ報告するとともに、中期経営計画及び事業計画の検討に反映させつつ、会社の企業倫理、法令遵守、リスク管理等を推進する機関であるコーポレートガバナンス委員会(社外取締役を含む全取締役が出席、年4回開催)と連携を図り、全社のリスク管理と統合します。
④ 目標と実績
2024年3月期のCO2排出量は、Scope1(事業による直接排出)は1,710t、Scope2(電力消費による間接排出)は11,681t、Scope3(Scope1,2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出))は2,569,525tでした。なお、Scope3のうち、カテゴリー11(販売した製品の使用による排出)は2,286,801tでした。
当社は、Scope3カテゴリー11でのCO2排出量が多いことを踏まえ、気候変動に関わるリスクの最小化のため、CO2排出量を指標として、以下の中長期目標を掲げております。

(3)人的資本
①戦略
当社グループは、「人」が尊重され、「人」が成長することにより、会社も成長すると考えます。この考えのもと、「人を活かす企業の実現」をマテリアリティのひとつに設定し、すべての人材が個々の能力を最大限発揮し、意欲とやりがいを持って働くことができるよう、人材育成制度の充実などの環境整備を図っています。
また、「人に関する基本方針」として、「人を信じ、活かす経営」を基本ポリシーに掲げ、目指す人材像及び人事施策運営方針を以下のとおり定めております。
目指す人材像
『失敗を恐れず挑戦し続け、共に学び、成長を目指す人』
1. 人を信頼し、人から信頼され、そして信頼に応える人
2. 考え抜き、前に踏み出す人
3. 主体性を発揮し、チームで協働する人
4. 事実を共通価値とし、衆知を集め、未知を既知とする人
5. 先進半歩の精神を持ち、仕事を通じ自己を無限に進化させる人
6. グローバル人材として幅広い知見と専門性を持ち、工夫を怠らない人
人事施策運営方針
(人権・人格・個性の尊重)
人間尊重の精神に基づき、働くすべての人の人権・人格・個性を尊重します。
(基本は人の成長)
働く人が共に育つ「共育」の実現を目指します。成長に向け努力する人に対し投資するとともに、人材の発掘に努めます。
(育成のための評価)
評価の目的は、人材育成と公正な処遇の実現です。評価は、結果のみではなく、意欲、挑戦、行動など、プロセスも加味します。
(処遇)
100%マキシマムを発揮し挑戦し続けられるとともに、頑張りがいのある制度を目指します。
(強い組織作り)
会社の持続的な発展のため、環境変化に強く、効率的な組織を追求します。
(職場環境の開発)
仕事に打ち込みつつ、生活との調和を実現するため、より働きやすい環境をつくります。
(健康の充実)
社員の健康は会社経営の基盤です。長期にわたり活躍できる、心・身体の健康づくりを支援します。
当社グループでは、「人に関する基本方針」に基づき、以下の取り組みを行っています。
1)多様な人材の活躍(ダイバーシティ推進の取り組み)
当社グループでは、多様な人材や価値観を取り入れ、新たな価値創造に活かすことが重要であるとの考えのもと、様々なダイバーシティの推進に取り組んでおります。
当社グループでは、性別及び国籍を問わず採用を行っております。また、海外現地法人では現地の方の登用を積極的に行っており、グループで国籍の多様性を確保しています。キャリア採用(経験者採用)は、その時々の組織ニーズに合わせて行っています。女性の活躍推進については、当社における新卒採用の女性採用比率を高める取り組みを行っています。理系女性の増加を背景に、技術系女性の採用を継続しています。また、女性管理職については、当社グループの女性管理職比率の向上が課題と捉えており、女性管理職比率の向上を目指しております。
2)人権の尊重
当社グループは、「人」が尊重され、「人」が成長することにより、会社も成長すると考えており、「人間尊重」は創業以来の基本精神です。会社の持続的成長に欠かせない資本である「人」が生まれながらにして持つ人類普遍的な権利、すなわち人権をおびやかすことがあってはならないと認識しています。
この考え方を踏まえ、「マックスグループ人権方針」を定めています。同方針に基づき、人権を尊重した事業活動を行い、社会から信頼される企業を目指します。
マックスグループは、人権尊重の責任を果たすため、人権方針に基づき、人権への負の影響の特定、予防及び軽減を図るべく人権デューデリジェンスの仕組みの構築・運用に取り組んでいます。2024年度はサプライチェーンにおける児童労働・強制労働をはじめとした人権リスクの状況を把握すべく、サプライヤーへの自己評価アンケート(SAQ)を実施しました。SAQの結果を踏まえ、課題の把握・対策の検討を進めています。
3)ワークライフバランスの推進
当社グループでは、多様な人材が働きやすく、能力を最大限発揮できる職場環境づくりを目指し、ワークライフバランスの実現に向けた取り組みを強化しています。その推進にあたっては、フレックスタイム制や時間単位の年次有給休暇制度を導入しているほか、育児休業後の時短勤務期間を子どもが中学校に入学するまでとしています。
②指標及び目標
当社グループでは、2「サステナビリティに関する考え方及び取組」(1)マックスのサステナビリティに関する考え方及び取組 ②戦略の「マテリアリティ(重要課題)」において記載した、「人を活かす企業の実現」について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は、次のとおりであります。
※ 2025年4月1日入社の新卒採用者における女性比率の実績です。
また、当社の人材データは以下のとおりであります。
(注) 従業員数は2025年3月31日現在の在籍人員数であります。
(1)当社グループのリスク管理体制
①組織
当社は、取締役会決議により「経営関連会議規程」を定め、定期的に開催される「コーポレートガバナンス委員会」を設置し、全社のリスクを抽出、把握、対応する体制を取っております。
また、有事の際に迅速に対応するため、取締役会決議により「危機管理対応規程」を定めて、社長を中心とした初動体制を構築できるようにしております。
②リスク管理のプロセス
リスク管理のプロセスとして内部監査部門が、監査の中で各部門の個別リスク管理状況の把握を行い、定期的にコーポレートガバナンス委員会に報告し、コーポレートガバナンス委員会でのリスク管理状況は取締役会に報告され、各部門のリスク管理についての改善・進捗が全社的に図られる体制を取っております。加えてコーポレートガバナンス委員会では、リスク発生の予防の視点から重要なテーマについては、適宜、モニタリングを行っております。
また、有事の際には、初動の遅れを防ぐため、職制上の報告経路とは別に情報システムを活用した報告経路を設けております。この情報システムを活用した報告経路の情報をもとに、事象の重大性に応じて危機管理小委員会又は危機管理委員会の設置等の判断を行い、速やかに対応できるようにしております。
(2)事業等のリスク
当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性のある主なリスクとして、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項は、以下のとおりです。ただし、これらは当社グループに関するすべてのリスクを網羅したものではありません。
リスクにおいて想定されるシナリオ及びリスクへの対応については、個々のリスクのリスク項目の中に記載しております。また、「発生可能性」については、短期的視点に加え中長期的に発生する可能性、「影響度」については、発生した際に売上高、親会社株主に帰属する当期純利益及び純資産に与える影響により、それぞれ評価しております。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
※PSIRT(Product Security Incident Response Team)
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当連結会計年度における世界経済は、米国の政策動向など不透明感を抱えつつも、緩やかな回復基調を継続しました。
国内は、当社インダストリアル機器部門に関連する新設住宅着工戸数や非居住建築物の着工床面積が足元ではやや増加したものの、全体としては低調に推移しました。米国は、住宅ローン金利の高止まりや資材価格の高騰の影響から、住宅着工が引き続き低調であった一方で、インフラを中心とする非住宅市場に対する建設投資が堅調に推移しました。欧州は、利下げやインフレの抑制に伴い、景気に改善の動きが見られるものの、ドイツや北欧では住宅市況の低迷が継続しました。
このような状況の下、売上高は91,839百万円(前期比6.0%の増収)、営業利益は14,468百万円(同14.8%の増益)となりました。経常利益は14,809百万円(同8.0%の増益)、親会社株主に帰属する当期純利益は11,225百万円(同7.6%の増益)となりました。
(単位:百万円、%)
1)売上高及び営業利益
当社グループの当連結会計年度の売上高は、91,839百万円で前連結会計年度に比べ5,200百万円(6.0%)の増収、営業利益は、14,468百万円で前連結会計年度に比べ1,867百万円(14.8%)の増益となりました。
営業利益の主な増減要因は、次のとおりです。
2)営業外損益及び経常利益
営業外損益は、前連結会計年度に比べ774百万円減少しました。前期は円安の進展を受け、為替差益が増加しましたが、当期は円高の進展を受け、為替差損が増加したことによります。この影響により、経常利益は14,809百万円で、前連結会計年度に比べ1,092百万円(8.0%)の増益となりました。
特別利益は、前連結会計年度に比べ435百万円増加しました。これは、主に投資有価証券売却益が425百万円増加したことなどによるものです。
特別損失は、前連結会計年度に比べ18百万円増加しました。これは、主に減損損失が46百万円増加したことなどによるものです。
これらの影響により、親会社株主に帰属する当期純利益は11,225百万円で前連結会計年度に比べ789百万円(7.6%)の増益となりました。
セグメントごとの業績は、次のとおりであります。
なお、当連結会計年度より、報告セグメントの区分を変更しており、前連結会計年度との比較・分析は変更後の区分に基づいて記載しております。
「国内オフィス事業」は、文具関連製品の販売が減少したものの、新たな化学物質規制に対応したラベル用途の提案活動の推進などにより、表示作成機「ビーポップ」を中心に文字表示機器の販売が増加しました。(売上高:7,634百万円、前年比+0.1%)
「海外オフィス事業」は、表示作成機「ビーポップ」やチューブマーカー「レタツイン」などの文字表示機器の販売が堅調に推移しました。一方で、東南アジアを中心とする文具関連製品の販売が、下期は回復傾向であったものの通期で減少しました。(売上高:5,786百万円、前年比△0.2%)
「オートステープラ事業」は、取引先からの受注が堅調に推移し、機械・消耗品ともに販売が増加しました。(売上高:8,456百万円、前年比+11.5%)
この結果、売上高は、21,878百万円で前連結会計年度に比べ871百万円(4.1%)の増収、セグメント利益は4,477百万円で前連結会計年度に比べ512百万円(12.9%)の増益となりました。
オフィス機器部門の資産は、411百万円減少し、17,790百万円となりました。
(単位:百万円、%)
(b)インダストリアル機器部門
「国内機工品事業」は、鉄筋結束機の累計稼働台数の増加により、その消耗品の販売が堅調に推移しました。一方で、新設住宅着工戸数の低迷の影響により、木造建築物向け工具の販売が減少しました。
(売上高:21,227百万円、前年比△1.4%)
「海外機工品事業」は、北米でインフラを中心とする非住宅市場に対する建設支出の堅調な推移などにより、鉄筋結束機の消耗品の販売が増加しました。欧州では、北欧などで厳しい市況が続いているものの、主要エリアであるドイツの販売回復や市況が堅調なエリアでの活動強化などにより、鉄筋結束機とその消耗品の販売が増加しました。(売上高:33,284百万円、前年比+13.6%)
「住環境機器事業」は、主力の浴室暖房換気乾燥機「ドライファン」の販売が、注力しているリプレイス向け(既設機の置き換え)で増加したほか、一部OEM先向けで伸長しました。
(売上高:12,195百万円、前年比+5.6%)
この結果、売上高は66,707百万円で前連結会計年度に比べ4,315百万円(6.9%)の増収、セグメント利益は14,595百万円で前連結会計年度に比べ1,903百万円(15.0%)の増益となりました。
インダストリアル機器部門の資産は、881百万円増加し、51,679百万円となりました。
(単位:百万円、%)
HCR機器部門は、国内市場で取引先からの受注が伸び悩んだものの、中国のレンタル市場を中心とする海外向け車いすの販売が増加しました。
この結果、売上高は3,253百万円で前連結会計年度に比べ14百万円(0.4%)の増収、セグメント利益は△82百万円で前連結会計年度に比べ75百万円の減益となりました。
HCR機器部門の資産は、61百万円増加し、2,848百万円となりました。
(単位:百万円、%)
生産、受注及び販売の実績は、次のとおりであります。
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 金額は販売価格によっております。
当社グループは、需要予測に基づく見込生産を行っているため、該当事項はありません。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
②財政状態
当連結会計年度末における総資産は、前連結会計年度末に比べ2,894百万円増加し、124,611百万円となりました。当連結会計年度末における負債は、前連結会計年度末に比べ3,293百万円減少し、18,577百万円となりました。当連結会計年度末における純資産は、前連結会計年度末に比べ6,187百万円増加し、106,034百万円となりました。
(単位:百万円、%)
当連結会計年度末における総資産は、前連結会計年度末に比べ、2,894百万円増加し、124,611百万円となりました。流動資産については、有価証券が3,107百万円減少、商品及び製品が620百万円減少しましたが、現金及び預金が8,551百万円増加したことなどにより、4,853百万円増加しました。固定資産については、投資有価証券が960百万円減少、繰延税金資産が982百万円減少したことなどにより、1,959百万円減少しました。
当連結会計年度末における負債は、前連結会計年度末に比べ、3,293百万円減少し、18,577百万円となりました。流動負債については、未払金が333百万円減少、短期借入金が300百万円減少しましたが、未払法人税等が949百万円増加したことなどにより、324百万円増加しました。固定負債については、退職給付に係る負債が3,813百万円減少したことなどにより、3,618百万円減少しました。
当連結会計年度末における純資産は、前連結会計年度末に比べ、6,187百万円増加し、106,034百万円となりました。株主資本は、剰余金の配当が4,698百万円、自己株式の取得2,301百万円などがありましたが、親会社株主に帰属する当期純利益が11,225百万円あったため、4,273百万円増加となりました。
その他の包括利益累計額については、退職給付に係る調整累計額が1,344百万円増加、為替換算調整勘定が468百万円増加、その他有価証券評価差額金が104百万円増加したことなどにより、1,903百万円増加しました。
③キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)の期末残高は、前連結会計年度末に比べ5,003百万円増加し、34,582百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動による資金は、14,588百万円増加(前連結会計年度は12,120百万円の増加)となりました。主な増加は税金等調整前当期純利益が15,208百万円、減価償却費が3,309百万円、一方で主な減少は、退職給付に係る負債の増減額で1,840百万円、法人税等の支払額が2,855百万円です。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動による資金は、1,750百万円減少(前連結会計年度は3,715百万円の減少)となりました。主な減少は、定期預金の預入による支出が11,167百万円、有価証券及び投資有価証券の取得による支出が2,732百万円、有形固定資産の取得による支出が2,709百万円、一方で主な増加は、定期預金の払戻による収入が7,699百万円、有価証券及び投資有価証券の売却及び償還による収入が7,435百万円です。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動による資金は、7,614百万円減少(前連結会計年度は7,196百万円の減少)となりました。主な減少は、自己株式の取得による支出が2,301百万円、配当金の支払額が4,693百万円です。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性についての分析は次のとおりであります。
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、当社グループ製品製造のための材料及び部品の購入のほか、製造費用、販売費及び一般管理費等の営業費用によるものです。営業費用の主なものは人件費及び広告・販売促進費等のマーケティング費用です。当社グループの研究開発費は様々な営業費用の一部として計上されておりますが、研究開発に携わる従業員の人件費が研究開発費の主要な部分を占めております。
当社グループは、今後も営業活動によって得る自己資金を基本的な資金源としながら、資金繰りの見通しや市場金利の状況を考慮し、必要に応じて銀行借入を活用することで資金調達コストを抑制し、資本効率の最適化を図ります。
運転資金及び設備投資資金については、営業活動によるキャッシュ・フローから得られる資金、金融機関からの借入れにより資金を調達しております。
当期の主な設備投資の内容は、本社販売関連で129百万円、国内の生産設備で1,602百万円となりました。研究開発では、全セグメント共通の研究設備に投資を行いました。
4)配当政策
当社は、株主の皆さまに対する利益還元を経営の最重要政策のひとつとして位置付け、利益配分に関する基本方針を「事業活動による利益を持続的な成長により拡大し、長期安定的に利益配分を行うこと」としており、これに基づく配当政策を「連結決算を基準に、純資産配当率5.0%、配当性向50%を目安とする」と定めています。
配当政策及び当期の状況を踏まえて、当期の配当は、前期から13円増配の「1株当たり年間配当金114円」を予定しています。
次期の配当は、業績見通しと配当政策を踏まえ「1株当たり年間配当金120円」を計画しています。
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
1)貸倒引当金
当社グループは、売上債権等の貸倒損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権については個別に回収可能性を勘案し、回収不能見込額を計上しております。
2)製品保証引当金
製品の自主回収及び無償保証期間に基づく修理の支払いに備えるため、合理的に見込まれる損失見込額を計上しております。しかしながら、実際の保証費用が見積りと異なる場合は、引当金の追加計上が必要になる可能性があります。
3)退職給付関係
当社では、退職給付費用及び債務は、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出しておりますが、これらの前提条件が変動した場合、あるいは、運用環境の悪化等により年金資産が減少した場合には、将来期間において認識される費用及び債務に影響を与える可能性があります。
4)繰延税金資産の回収可能性
当社グループは、繰延税金資産について、将来の利益計画に基づいた課税所得が十分に確保できることや、回収可能性があると判断した将来減算一時差異について繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積り(過去における事業計画の達成状況など)に依存するため、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じ減少した場合、繰延税金資産が減額され税金費用が計上される可能性があります。
5)固定資産の減損
当社グループは、固定資産のうち減損の兆候がある資産又は資産グループについて、当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定に当たっては慎重に検討しておりますが、事業計画や市場環境の変化により、その見積り額の前提とした条件や仮定に変更が生じ減少した場合、減損処理が必要となる可能性があります。
該当事項はありません。
当社グループの研究開発活動は、メカニカル技術とエレクトロニクス技術を融合させた技術の展開と深耕を基本に推進しております。新製品開発の原点として「お客様の声」を的確に捉え、製品が使われる現場でのニーズやウォンツを、お客様の作業の現場をつぶさに観察し、分析することから始める現場主義実践を活動の基本としております。また、これに加えて世の中の先進的技術を複合化させる事で、変化する顧客ニーズに適合させ、創意工夫とオリジナリティに富んだ製品開発、技術研究に取組んでおります。
特に当連結会計年度は、オフィス機器事業の複写機内蔵用オートステープラ・文字表示機器、インダストリアル機器事業の空圧工具・電動工具・結束工具/機器・住宅設備機器と、それらに伴う消耗品(ステープル・ネイル・結束ワイヤ・テープなど)の研究開発を推進すると共に、環境と安全対応としての製品アセスメントに積極的に取組み、環境に優しく安全な環境保全の製品化に努めました。徹底した現場主義、顧客主義に基づく顧客ニーズと先端技術動向を的確に捉えるなかで、研究、開発実用化を加速し、これらを基盤にオフィス機器事業・インダストリアル機器事業の新製品展開と、次世代を担う新事業の探索、研究に努めております。
また、開発生産性の面におきましては、3次元CAD/解析ソフトをはじめ無響室、大型環境試験室と各種計測実験装置、及び試作加工設備の拡充により、研究設計作業合理化を進め、3D設計/3Dモデル解析/3Dモデル造形・CAM加工・ハードウエア解析・技術ナレッジシステム活用での研究開発効率の向上を図っております。これらシステムの活用により、技術力の向上、製品設計品質の向上、開発期間の短縮に取組むと共に、今後も継続して固有技術の創出を加速させることによって競争優位の製品開発に取組み、事業の拡大と業績の向上につなげてまいります。
なお、当連結会計年度の研究開発費は、