第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 会社の経営の基本方針

当社グループは、“Feel the earth”(地球を感じ、生きていく。)をスローガンに、地球を舞台に、スポーツを通じ、人生の豊かな時間を提供するライフタイム・スポーツ・カンパニーとして、自然とスポーツを愛する世界中の人々に貢献してまいります。

 

(2) 目標とする経営指標

当社グループは、2022年5月に2025年度を最終年度とする「新・中期経営計画2025」を発表しましたが、事業環境や業績の変化を踏まえ、新たに「新・中期経営計画2026(2024年度~2026年度)」を策定し、最終年度(2026年度)の到達目標を以下の通り設定いたしました。

 

 

2026年3月期

(当初目標)

 


2027年3月期

(新目標)

売上高

1,500億円

1,400億円

営業利益

145億円

100億円

1株当たり配当金

90円

100円

配当性向30%以上を維持し、

安定的かつ継続的な増配を

実施する。

ROE

12%以上

PBR

継続して1.0倍以上

 

 

(3) 企業価値の向上に向けた取り組み

 

①事業戦略

成長軌道へ回帰し持続的な企業価値向上に取り組むため、以下に示す事業別の重点戦略を推進し、目標達成を目指します。

 

ⅰ フィッシング事業

フィッシングの世界市場はコロナ需要の落ち着きにより足下では成長率は調整局面にありますが、2027年3月期に向けては緩やかな成長を見込んでおります。日本、米州、欧州、アジア・オセアニアと4ブロックで戦略を立て、それぞれの地域に合った製品の開発・サービスの提供を行い、更なるシェアアップを目指してまいります。

ⅱ ゴルフ/スポーツ事業

独自の世界観のあるブランドの更なる向上を目指し、上質な製品やサービスを提案し、ブランド価値を高めてまいります。

 

②財務戦略・資本政策

ⅰ 財務戦略

新・中期経営計画2026に沿った幅広い取り組みによって利益体質を改善し、総資産回転率を適正に管理するとともに、最適資本構成を追求することにより財務レバレッジを上げ、ROE12%以上の達成を目標とします。また市場の成長期待に応え、資本コストを低減することにより、企業価値の向上(PBR1.0倍以上の達成を目標)に取り組んでまいります。

ⅱ 株主還元

当社は株主の皆様に対する利益還元を経営上の重要課題の一つとして位置づけ、長期的な視野に立ち安定した配当の継続を基本方針とし、連結業績及び将来の業績見通しを勘案して利益配分を行うこととしており、これまで13期連続の増配を実現してまいりました。今後も健全な財務体質の維持を図りつつ、中長期的な業績見通しや事業戦略等を総合的に勘案した上で、配当性向30%以上を維持しつつ、安定的かつ継続的な増配を目標としてまいります。また株主優待制度につきましては、これまで同様継続実施してまいります。

ⅲ IR推進体制の整備

株主・投資家の皆様との建設的な対話を促進するために、総務部、経理部、広報室がIR担当部門として更に連携を強化することによって、企業価値の向上を図ってまいります。また体制が整い次第、IR部門を組織し、専任できる体制を構築してまいります。

 

③経営基盤の強化

ⅰ 人的資本経営の推進

教育システムの強化・充実など人材への投資を積極的に行うことで従業員エンゲージメントを高めるとともに、企業価値の向上を図ってまいります。

ⅱ サステナビリティ戦略

ライフタイムスポーツ文化の進化と発展に努め、事業活動を通して「人と地球が共に生きる持続可能な社会づくり」に貢献してまいります。

 

(4)中長期的な会社の経営戦略

今後も不安定な世界情勢や物価高、金利高が続くことが予想されますが、自然志向や健康志向が世界的に広がりを見せる中で、フィッシングをはじめとしたアウトドア・スポーツ・レジャーの市場は緩やかに回復するものと予想されます。当社グループは、自然とスポーツを愛する人々に貢献するために、ライフタイム・スポーツ(人生を豊かにするスポーツ)の提案を続け、一層の躍進に挑戦してまいります。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 取り組み方針

サステナビリティビジョン  

   ライフタイムスポーツ文化の進化と発展

 

当社は、ライフタイムスポーツ(人生を豊かにするスポーツ)文化の進化と発展に努め、当社の技術と事業活動を通じて、カーボンニュートラルを目指す脱炭素経営の推進、豊かな森林や水辺の保全、サステナブルな製品・サービスづくり、自然体験を通じた環境学習機会の提供、働きがいのある職場環境・人材活躍の推進に取り組み、「人と地球が共に生きる持続可能な社会づくり」に貢献します。

(2) マテリアリティ

「ライフタイムスポーツ文化の進化と発展」に向けて、「これから優先して取り組む課題」として、①カーボンニュートラルを目指す脱炭素経営の推進、②生物多様性保全の推進、③資源循環の推進、④フィッシング・スポーツ文化の牽引、⑤働きがいのある職場環境・人材活躍の推進、の5つを特定しました。

特定するプロセスについては、①サステナビリティに関する内部分析、②ステークホルダーを中心とした外部分析、③マテリアリティ設定、④マテリアリティマップ作成(優先課題の特定)、⑤マテリアリティ・優先課題に関する取り組み方針の策定を継続的に行ってまいります。

 

(3) ガバナンス

当社は気候変動などの地球環境問題への配慮、人的資本および人権の尊重などサステナビリティ課題を重要な経営課題であると認識し、これら課題への取り組みを組織的に推進するため、サステナビリティ担当役員を選任し、サステナビリティ推進室、サステナビリティ戦略会議・サステナビリティ推進会議を設置しました。

「サステナビリティ戦略会議」で気候変動や人的資本等、サステナビリティ課題全般に関する検討を行い、取締役会に上程・報告し、取締役会が監督・指示を行っております。

取締役会で審議・決定された議案は、「サステナビリティ推進会議」を通じて各部門に展開され、それぞれの経営計画・事業運営に反映してまいります。

 

(4) リスク管理

気候変動や人的資本等に関連するサステナビリティ全般のリスク・機会について、重要度と頻度の観点から評価し、「サステナビリティ戦略会議」で継続的に確認してまいります。サステナビリティ関連リスク・機会の管理プロセスとして、「サステナビリティ戦略会議」を通じて、リスクに関する分析、対策の立案と推進、進捗管理等を実践してまいります。「サステナビリティ戦略会議」で分析・検討された内容は、取締役会に報告し、全社で統合したリスク管理を行っております。

 

(5) 戦略

中長期的なリスクの一つとして「気候変動」を捉え、関連リスク及び機会を踏まえた戦略と組織のレジリエンスについて検討するため、当社はIEA(国際エネルギー機関)やIPCC(気候変動に関する政府間パネル)による気候変動シナリオ(1.5℃シナリオおよび4℃シナリオ)を参照し、2050年までの長期的な当社への影響を考察し、国内フィッシング事業を中心にシナリオ分析を実施しました。

 

■シナリオ分析の結果

シナリオ:1.5℃

要因

変化

リスク・機会

影響度

当社への影響

当社の対策

政策・法制度の強化

炭素税の導入による調達・自社操業コスト増加

リスク:大

・製造時にCO₂を多く排出する材料を原料とする調達物資に関しては、炭素税分が仕入価格に転嫁されることが考えられる

・自社操業においても、一定の影響があると考えられる

・調達先における脱炭素活動を積極的な支援、再生材・代替材の使用を検討する

・グループ会社全体での省エネを徹底する

再生可能エネルギー調達に伴うコスト増加

リスク:小

・再生可能エネルギーの調達(太陽光等)により、追加のコストが発生する

・グループ会社を含めた再エネ導入・省エネ活動の徹底を行う

省エネ設備導入による操業コストの減少

機会:小

・省エネ設備の導入等の施策を展開することで運用コストが削減される

・2030年度のCO₂排出削減目標を設定し、計画的な活動を実施する

市場の変化

気候変動活動・対応の遅れによる社会的評判の低下

リスク:大

・気候変動対応が遅れた場合、社会的な評価・ブランドイメージが毀損され、市場シェアの低下等にむすびつく恐れがある

・気候変動取り組みの積極的な開示・ガバナンス体制の構築を通じ、ステークホルダーとの密なコミュニケーションを継続する

環境意識の高いエシカル消費者層等の市場拡大

機会:大

・環境意識の高いエシカル消費者層に対して、当社製品が低環境負荷であることは差別化要因として 働き、将来世代に向けた市場優位性が見込める

・新素材、再生材を活用した製品の開発・販売促進

・リサイクルが容易な新素材・ 製品構造の研究

・釣り具等の修理・修繕サービスの拡充

・エシカル情報のPRによるイメージの向上

環境意識・自然志向の高まりによるアウトドアスポーツ分野の需要増

機会:大

・消費者の環境意識の高まり、生活環境・時間の使い方の変化等により、自然に触れ合うアウトドアスポーツが注目される

・釣りをはじめ、自然を楽しめるスポーツのPRを行う

 

 

シナリオ:4℃

要因

変化

リスク・機会

影響度

当社への影響

当社の対策

気候変動(急性) 

被災によるサプライチェーン・自社の操業停止リスク 

リスク:小 

・代替困難と考えられる調達先の一部で、河川・沿岸浸水の可能性があると考えられる

・自社、グループ会社の営業、生産拠点の影響は限定的であると考えられる

・BCPの取り組みの強化・推進

・災害対策としての設備投資を推進する

自然災害による釣り場の減少 

リスク:大 

・河川・沿岸浸水により、漁港を含めた釣り場が被害を受けることが考えられる

・従業員の釣り場の水辺清掃等による日常からの環境保全の取り組み推進

・森林の里親制度などにおける森林整備範囲の拡大

・災害発生時の復興ボランティア活動への参加

・自治体と連携した釣り場環境整備

気候変動(慢性) 

温暖化による既存の季節・釣種需要の減少

リスク:大

・既存の季節・釣種向け製品の需要が減少する可能性がある

・顧客との密なコミュニケーションによる環境変化に関する情報収集

・環境変化に適応した製品の迅速な開発

暑熱環境に対応した新たな需要の拡大

機会:小

・暑熱環境に対応した新たな製品を提供することにより、需要の創出が生まれる

・暑熱環境に対応した製品の開発 

 

 

 

(6) 指標と目標

■気候関連の指標 Scope1、Scope2に該当するGHG(温室効果ガス)排出量とする

 

■気候関連の目標

2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、製品・サービスやサプライチェーンにおける環境負荷の低減を図る

Scope1・2  国内・海外グループ会社を含めたGHG排出量を2030年度までに40%削減(2021年度比)
 

 

 

(7) 人的資本への取り組み(人材に関する取り組み)

当社グループは、「新・中期経営計画2026(2024年度~2026年度)」の達成と、その先の持続的な成長を実現するために、人材をより重視した経営を進めてまいります。

なお、以下に掲載している指標について、グループ各社で具体的な取り組みを進めているものの、現時点では全てのグループ会社で行われてはいないため、連結単位での記載が困難です。このため、指標及び目標は特に注釈がない場合は、グローブライド株式会社を対象に集計しております。今後、グループ会社の取り組みを推進し、対象会社の追加を進めてまいります。

① 人材育成方針

当社は、行動指針5Key Promisesに基づき、新たな発想、豊かな発想で自発的に考え行動する人材を育成することを基本方針としております。

攻めの経営を堅持し、持続的に成長可能な経営基盤を構築していくためには、変革を牽引する次世代の経営幹部をはじめとした全ての従業員が意欲的に成長していくことが必要であります。

特に、「リーダーシップ」・「育成」・「スキル/経験」の観点から、社外との積極的な交流を通じ、様々な知見を取り込みながら従業員が「個」の能力を高め、組織力の向上に繋げることが重要と考えております。

この実現に向けて、従業員の育成、能力開発に関する様々な取り組みを進めてまいります。

 

5Key Promises(5つの大切な約束)

 Make it Wow!

自ら楽しみ、人生の新たな感動”Wow!”を世界中にとどける。

 Open Our Minds

自由な発想、多様な価値観で、これからの豊かさを生みだす。

 Be Innovative

テクノロジー、アイデア、感性で、未知をデザインする。

 Be Earth-Friendly

地球を想い、世界中の仲間と豊かな自然を未来へつなぐ。

 Play Fair

常にフェアであり続け、人とその先の社会に貢献する。

 

 

取り組み状況

●教育・研修

全ての従業員に各種研修や通信教育補助をはじめとした教育や育成の機会を提供し、能力を高める取り組みを推進しております。

項目

2022年度

2023年度

教育研修費用百万円

60

69

 

 

 

1. 階層別研修

社内階層ごとに求められる役割の違いやその実践に必要な意識・知識・スキルを身につけることを目的とした研修を実施しております。(新入社員研修、中堅社員向け研修、新任課長・係長研修など)

項目

2022年度

2023年度

2026年度目標

人数

201

243

275

 

2. 選抜型研修

リーダーシップ、マネジメント、経営に関する実践的な戦略立案及び経営意識の醸成に資する研修を実施し、2023年度より中堅層まで対象者を拡大し次世代リーダーの育成を行っております。

項目

2022年度

2023年度

人数

19

34

 

3. 公的資格取得奨励

専門能力向上を図る企業風土を醸成し、会社の業績向上に寄与できる専門家づくりを進めております。

項目

2022年度

2023年度

人数

22

22

 

 

② 社内環境整備方針

当社グループは、感動提供企業・日本発グローバル企業として更なる進化を図るために、多様な人材や価値観を積極的に取り入れ、新しい働き方への対応をはじめとして、従業員一人ひとりが活躍できる職場環境を創り続けてまいります。

 

取り組み状況

当社は、「働きがいのある職場環境・人材活躍の推進」をマテリアリティの一つに掲げ、特に「身体的健康」・「福利厚生」の観点から、従業員が最大限に力を発揮できる職場づくりと機会の提供に取り組んでおります。

これら人的資本に関する取り組みの進捗・効果を把握するために、エンゲージメントサーベイを行っております。

 

●時間外労働

従業員が生産性の向上とワークライフバランスを両立して働き続けられるよう、時間外労働管理及び過重労働の防止に努めております。

項目

2022年度

2023年度

2026年度目標

一人当たり平均時間数/月時間

16.8

15.0

15.0

 

 

●有給休暇取得

従業員一人ひとりが仕事と生活の調和を図り、心身のリフレッシュやゆとりある生活の向上を進めるため、1日、半日、時間単位の取得促進に努めております。

項目

2022年度

2023年度

2026年度目標

一人当たり平均取得日数/年

12.8

11.6

12.0

 

 

●健康管理

従業員に定期健康診断及び特殊健診(特定の職場)の受診と二次健診の積極的な受診を促すことに加え、年齢による対象希望者に対し、人間ドック及び大腸内視鏡検査を実施することで、健康状態を定期的に確認し、体の異常や病気の早期発見と健康の維持促進に努めております。

項目

2022年度

2023年度

人間ドック受診者数

264

240

大腸内視鏡検査受診者数

50

42

 

 

●ライフタイムスポーツ奨励

ライフタイムスポーツとの関わりを深めるとともに、従業員間のコミュニケーション向上を促すための費用を助成する「ライフタイムスポーツ奨励制度」を整備しております。

2020年度からコロナ禍により中断しておりましたが、2023年度より再開いたしました。

項目

2022年度

2023年度

のべ利用回数

377

 

 

 

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

 

(1) 市況変動によるリスク 

当社グループの製品は日本をはじめ全世界で販売されており、その需要は当社グループが製品を販売している国または地域の経済状況及び地震、洪水等の自然災害の影響を受けます。従いまして、日本、北米、欧州、アジアを含む当社グループの主要市場における景気の後退及びそれに伴う需要の縮小は、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、「市場優位性の追求」、「国内市場の活性化と健全化」、「海外市場の攻略」を経営戦略の柱となる施策として掲げ、実行することで支持基盤の強化と市場の活性化に積極的に取り組んでまいります。

 

(2) 為替相場の変動によるリスク 

当社グループの事業には、海外での製品の生産及び販売が含まれており、為替変動の影響を強く受けます。このため為替予約等のリスクヘッジを行っておりますが、これにより当該リスクを完全に回避できる保証はなく、急激な為替の変動は、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 競争によるリスク 

当社グループの製品は、国内、海外の市場において厳しい競争にさらされております。また近年においては競合他社や中国製品の台頭のため低価格化競争に波及しております。当社グループでは、競争力向上のため、新製品・新技術の開発やコストダウンを強力に推し進めておりますが、製品価格の下落が当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、市場の要請に的確に対応する魅力溢れる新製品開発を促進しております。また、ブランド訴求の一層の強化を図ることで、認知度・信頼度・満足度を更に向上させてまいります。

 

(4) 市場借入金利の変動によるリスク 

当社グループは、運転資金を主として金融機関からの借入金によって調達しております。現在、借入金利は安定的に低位で推移しておりますが、将来、借入金利が上昇することも考えられます。従いまして、金融機関の経営状況及び市場の動向等によっては、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) 法的規制によるリスク 

当社グループの製品は、大自然の中で使用するものであり、自然環境に配慮した製品を開発すると共に、関係団体と共に環境保護に取り組んでおります。各国の自然環境に関する法律には、スポーツ・レジャーの普及に好影響のものがある反面、規制や制限を受けるものもあります。今後これらの規制や制限が強化された場合は、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、環境に対する自社基準として、7つの項目を設定し、それを満たした製品に対して「BE EARTH FRIENDLY」マークをパッケージに表示する等、環境配慮型製品の開発に取り組んでおります。今後も自然環境に配慮した製品を開発し、関係団体と共に環境保護に取り組んでまいります。

 

(6) 海外進出による事業展開に関するリスク 

当社グループは、世界各地域に生産及び販売の拠点を置き、グローバルな事業展開をしております。特に製造会社は、中国、タイ、ベトナム等のアジア地域に集中しております。当該地域での政治、経済の混乱、予期しない法規制等があった場合、当社グループの生産及び販売に重大な支障が発生するおそれがあります。その場合、生産高・売上高の減少により、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、主力のフィッシング事業におけるグローバルな販売供給体制について、特定地域への集中リスクを従来以上に分散することで生産体制の強化等を行うことにより、リスクの最小化に努めております。

 

(7) 世界的なウイルス感染症によるリスク

当社グループは、世界各地域に生産及び販売の拠点を置き、グローバルな事業展開をしております。新型コロナウイルス感染症拡大のようなパンデミック等の異常事態が発生し、事業運営が困難になった場合、当社グループの業績及び財政状態に大きな影響を与える可能性があります。

当社グループは、様々なリスク低減及び回避を目的として、リスク管理基準に基づき、新型コロナウイルス対策本部を設置して対応しております。従業員の感染リスク低減と職場内での感染拡大防止、事業継続への対応につきまして、在宅勤務の実施、従業員の行動指針の策定や体調不良時の対応方針の周知等を通じて、引き続きリスクの低減、回避に努めてまいります。

 

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概況並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営成績

当連結会計年度におけるわが国経済は、ポストコロナの動きの中で社会活動の正常化が進み、個人消費やインバウンド需要が持ち直し、緩やかな景気回復基調で推移しました。その一方で、原材料価格やエネルギー価格の高騰、円安進行からの物価上昇が続いており、依然として先行き不透明な状況が続いております。海外においてはロシア・ウクライナ情勢の長期化に起因するインフレ傾向や中東情勢等の地政学的リスクの高まり、 欧米各国における金融引き締めの長期化、中国経済の先行き懸念など、経済回復の基調は力強さに欠ける状況となりました。

こうした情勢の下、当社グループの属するアウトドア・スポーツ・レジャー業界の市況は、余暇の過ごし方が旅行や買い物など、他のスポーツ・レジャーへ分散化、多様化し、また、物価高による家計への負担増の影響を受け、停滞感が見られる状況となりました。

そのような中、当社グループにおきましては、ライフタイム・スポーツ・カンパニーとして、自然とスポーツを愛する皆様に、魅力ある製品と質の高いサービスの提供を行ってまいりましたが、釣り具などのアウトドア・スポーツ・レジャー用品の需要減速や市場在庫調整等の影響を受け、当連結会計年度におきましては、売上高は1,260億8百万円前期比6.4%減)となりました。利益面におきましては、減収による粗利益の減少や人件費等の費用の増加等により、営業利益は74億9千6百万円前期比38.2%減)、経常利益は83億7千5百万円前期比33.8%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は55億8千2百万円前期比39.2%減)となりました。

セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。なお、各セグメントの売上高はセグメント間の内部売上高及び振替高を含んでおります。

 

日本

日本地域におきましては、行動制限の緩和による旅行など他のレジャーへの消費の多様化や、エネルギー価格や物価の高騰が家計を圧迫している状況からアウトドア・スポーツ・レジャーの市況は足取りの重い状況となっております。そのような中、当社グループは、フィッシングではスピニングリール「AIRITY」やバスロッド「STEEZ RC」、ゴルフでは「ONOFF KURO」などお客様にご満足いただける新製品の投入とサービスの提供を行ってまいりましたが、売上高は821億6千万円前期比5.6%減)、セグメント利益は、減収による粗利益の減少等により41億4千3百万円前期比43.3%減)となりました。

 

米州

米州地域におきましては、経済が正常化する一方で、依然高水準なインフレ圧力による景気への影響が懸念される状況が続きました。そのような中、米国市場向けには「TATULAシリーズ」を始めとしたバスフィッシング用品を中心に販売拡大の取り組みを行ってまいりましたが、売上高は125億2千7百万円前期比10.2%減)、セグメント利益は3億1千7百万円前期比33.1%増)となりました。

 

欧州

欧州地域におきましては、長期化するロシア・ウクライナ情勢に伴う高水準なインフレが家計を圧迫し、個人消費にも影響を及ぼす状況となりました。そのような中、引き続き各地域のニーズに合った製品の投入等を行い、また円安による換算の影響もあり、売上高は147億4千4百万円前期比1.9%増)となりましたが、在庫健全化のための処分費用の発生や人件費・荷造運搬費等の費用が増加したことなどにより、セグメント損失は2億1千9百万円(前期は1億4千2百万円のセグメント利益)となりました。

 

アジア・オセアニア

アジア・オセアニア地域におきましては、国ごとの社会経済情勢にばらつきが生じておりますが、金利の上昇、物価の上昇はアジアにおいても顕著となり、消費マインドの低下からアウトドア・スポーツ・レジャーの市況にも減速感が出始めております。そのような中、当社グループにおきましては、日本製の高級品や現地専用品を中心に売上拡大に取り組んでまいりましたが、売上高は494億4千5百万円前期比13.0%減)、セグメント利益は62億1千万円前期比25.4%減)となりました。

 

 

生産、受注及び販売の実績は、次の通りであります。
①生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

生産高(百万円)

前年同期比(%)

日本

22,998

△7.3

米州

-

-

欧州

2,306

△10.4

アジア・オセアニア

42,251

△27.8

合計

67,556

△21.4

 

(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しておりません。

2 金額は販売価格によっております。

②受注実績

当社グループは、主に過去の実績と将来の需要の予測による見込生産をしております。

 

 

③販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(百万円)

構成比(%)

前年同期比(%)

日本

68,383

54.3

△10.0

米州

12,513

9.9

△10.2

欧州

14,730

11.7

+1.8

アジア・オセアニア

30,379

24.1

+0.7

合計

126,008

100.0

△6.4

 

(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。

2 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合

当社グループにおいては、当該割合が100分の10以上となる相手先はないため記載を省略しております。

 

(2)財政状態

当連結会計年度末の資産合計は1,087億1千7百万円前連結会計年度末と比べ3億1千6百万円減少しております。これは主に、設備投資により有形固定資産が増加した一方で、棚卸資産が減少したことによるものです。

負債合計は542億2千9百万円前連結会計年度末と比べ73億1千9百万円減少しております。これは主に、仕入債務と借入金が減少したことによるものです。

純資産合計は544億8千8百万円前連結会計年度末と比べ70億2百万円増加しております。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益を計上したこと等によるものです

 

(3)キャッシュ・フロー

当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ7千6百万円減少し120億3千1百万円前連結会計年度末は121億7百万円)となりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益を計上したことに加え、棚卸資産が減少したことにより、124億5百万円の収入前連結会計年度は41億5千8百万円の収入)となりました。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは、生産設備や新製品生産用金型を中心とした設備投資を行ったことから、63億1千4百万円の支出前連結会計年度は38億6千8百万円の支出)となりました。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは、主に借入金の減少により、63億7千6百万円の支出前連結会計年度は46億5千3百万円の収入)となりました。

 

資本の財源及び資金の流動性について

当社グループは、事業運営上必要な資金の流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。

短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、本社においては金融機関とのコミットメントライン契約による安定的な資金調達を行うとともに、グループ全体での資金効率を高めるため、本社管理の下、グループ間での資金融通を実施しております。

設備投資や長期運転資金の調達については金融機関からのスワップ等利用した長期固定資金の調達を基本としており、長期に亘り良好な関係を築いてきた複数の金融機関から相対借入に加え、シンジケート・ローンを活用した調達を実施しております。

今期末の現金及び現金同等物の残高は、前期末とほぼ同水準の120億3千1百万円となりました。金融機関からは安定的に資金供給を受けており、将来必要な運転資金や設備投資資金は安定的に確保できるものと考えております。

今後もコストを抑えた安定資金を調達するため調達方法の多様化を図ってまいります。

 

(4)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。重要な会計方針については、本報告書「第5 経理の状況」に記載しております。連結財務諸表の作成にあたっては、会計上の見積りを行う必要があり、貸倒引当金等の各引当金の計上、固定資産の減損に係る会計基準における回収可能価額の算定、繰延税金資産の回収可能性の判断につきましては、過去の実績や他の合理的な方法により見積りを行っております。但し、実際の結果は、見積りに含まれる不確実要素によりこれらの見積りと異なる場合があります。

 

5 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

 

6 【研究開発活動】

当社グループでは、フィッシング事業及びゴルフ事業において研究開発活動を行っておりますが、当社の研究開発活動を基軸に全グループがその成果の実現に努めております。

従って製造を担当する子会社等において行われる研究開発活動も、その全てが当社の指揮のもとにあり、グループ全体の調和を旨とした活動を行っております。

当社グループは、スポーツ用品のサプライヤーとして、自然とスポーツを愛する人々に貢献するために魅力ある新製品の開発を積極的に行っております。また、地球に優しい製品づくりを通じて人と自然が共に生きる持続可能な社会づくりに貢献するための研究にも取り組んでおります。

当連結会計年度における当社グループが支出した研究開発費の総額は、2,150百万円であります。

また、セグメントごとの研究開発活動につきましては、そのほとんどが当社(日本)であり、その内容を商品区分ごとに示すと次のとおりであります。

(1) 釣用リール

スピニングリールにおいては、強靭・耐久を実現する構造であるMQ(モノコックボディ)と、信頼の防水構造マグシールドとのコンビネーションにより最高レベルの防水性と耐久性を実現し、さらに意のままにルアーを操作することを追求したAIRDRIVE DESIGN(エアドライブデザイン)を搭載した新機種「セルテート」と、MQ(モノコックボディ)に軽量性や耐食性と同時に強さも備えたカーボン含有樹脂材料ザイオンVを使用するとともにAIRDRIVE DESIGN(エアドライブデザイン)を搭載した普及価格帯の新機種「レガリス」が好評を頂いております。

両軸リールにおいては、初期性能のレベルが高く且つ長く続く為のHYPER DRIVE DESIGN(ハイパードライブデザイン)を搭載した機種を展開し、さらにより遠くへ正確にルアーをキャストするための新たな設計思想ULTIMATECASTING DESIGN(アルティメットキャスティングデザイン)を搭載したベイトキャスティングリールの高級機「STEEZ SV TW」が好評を博し、業界初のスマートフォン連動リールも様々な釣りの提案を実現しユーザー様から高い評価を得ております。

電動リールにおいては、リール本体同様の液晶画面で水深が分かり、ワンハンドで遠隔操作可能な新たなテクノロジーREMOTE JOG(リモートジョグ)を搭載した大形サイズのSEABORG G1800M-RJが大変好評を頂いております。

環境への取り組みでは、SDGsへの対応として、引き続き環境配慮型材料・塗料などの開発・採用を継続し、包装品では脱プラスチック化を引き続き推進してまいります。

 

(2) 釣用ロッド

釣用ロッドにおいては、当社独自の革新的ロッド設計システムESS(感性領域設計システム-エキスパートセンスシミュレーション)により軽量で細身のブランクスを追求し、さらにダイワテクノロジーである軽量で高感度のAGS(エアガイドシステム)を搭載したルアーロッド「OVERTHERE EX」を開発し、「遠投性・操作性・感度」等の基本性能を磨き上げ、サーフルアーゲームでの最高のパフォーマンスを実現しました。また最新のロッド設計技術とダイワテクノロジーの融合により、モンスターグレをタメて獲るように開発した、革新的粘攻胴調子磯竿「モンスタートルク」は高次元で取り込み性能等の基本性能の向上を果たしました。また「強く」「軽く」「美しく」まるでワンピースのような曲がりを実現するV-JOINTαやカーボンテクノロジーにより、市場評価の高い鮎竿銀影エアシリーズに「銀影エア ショートリミテッド」や「銀影エア TYPE S」を追加しました。

環境への取り組みに関しましては、包装品の減量化、VOC(揮発性有機化合物)低減などの環境配慮型材料や塗料などの開発、製造プロセスの省エネルギー化・廃棄物の削減など、引き続き自然環境に優しい製品作りに取り組んでおります。

 

(3) ゴルフクラブ

ゴルフクラブの開発については、上質な大人のゴルフを提案する「ONOFF」ブランドより、「ONOFF KURO」シリーズ及び「ONOFF AKA」シリーズをフルモデルチェンジしました。今回の「KURO」シリーズは、“重力主義”をテーマに、重さを操り、さらに遠くへ飛ばす重ヘッド×クロスバランステクノロジー(X CBT)を搭載。振りやすさを自在にカスタムすることで、 飛ばせて狙えるクラブの開発に成功しました。また、「ONOFF FORGED WEDGE」は「KURO」シリーズに合わせて開発されており、抜けの良さと、高いスピン性能の実現に成功しました。そして、「AKA」シリーズは“全芯主義”をテーマに、どこで打ってもまっすぐ飛ばせる、クロス バランス テクノロジー(X CBT)を搭載した“振りやすさ=飛び”を追求したクラブの開発に成功しました。更にJAPAN PREMIUM GOLF を提案するゴルフブランド DAIWA GⅢ (ダイワ ジースリー)からは、“飛ばすテクノロジーのすべて”を搭載し、 圧倒的な飛距離性能と振りやすさを実現した「DAIWA GⅢ SIGNATURE 」シリーズのクラブ開発に成功しました 。

フォーティーンにおいては、新素材の超高強度「エリート・D・スチール」をフェース材に初採用し、またTB-5 FORGED やDJシリーズで好評のバンパーを持たせたリッジソールを採用、そして最先端素材を適所に使用した、ゴルフ歴が長いアクティブゴルファーがアイアンに求める二大要素である“やさしさ”と“構えやすい形状”を追求、実現した複合系鍛造アイアンの新製品:New「PC-3」を開発致しました。