第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

Ⅰ 会社の経営の基本方針

当社グループの経営理念は、社名の「リンテック」すなわち"リンケージ(結合)"と"テクノロジー"、および社是「至誠と創造」に裏付けされる人の和、技術開発力を基軸とし、国内・海外の業界において、誰からも信頼される力強い躍動感あふれる会社として社会に貢献し、株主各位・顧客・社員家族の期待に応える斬新な経営を推進するというものであります。

当社グループは、粘着応用技術、表面改質技術、システム化技術、並びに特殊紙・剥離材製造技術という四つの固有技術を基盤とし、さらにそれらを高次元で融合させることによって、より差別化された独自性の高い製品創りを進めてまいります。また、高い倫理観の下、CSRの精神を徹底し、社会から信頼される会社たるべく邁進してまいります。

 

Ⅱ 中長期的な会社の経営戦略と会社の対処すべき課題

 当社グループは2030年3月期を最終年度とする長期ビジョン「LINTEC SUSTAINABILITY VISION 2030」(略称:LSV 2030)を掲げ、基本方針を「イノベーションによる企業体質の強靭化と持続的成長に向けた新製品・新事業の創出を通じて、サステナブルな社会の実現に貢献する」とし、「社会的課題の解決」、「イノベーションによる企業体質の強靭化」、「持続的成長に向けた新製品・新事業の創出」の三つの重点テーマに対する諸施策を、長期ビジョンの実現に向けたマイルストーンと位置づけ、3か年ごとの中期経営計画を策定し、推進しています。

 最初の中期経営計画「LSV 2030-Stage 1」の初年度においては、当初掲げた最終年度の経営目標を前倒しで達成したことから、最終年度の経営目標を上方修正しました。しかしながら、2年目については、電子・光学関連製品や他の製品において急激な受注減少があったほか、原燃料価格や物流費の高騰影響を大きく受けたことで、収益面では厳しい結果となりました。最終年度の3年目においては、価格改定や円安効果に加え、第3四半期以降、半導体・電子部品関連製品やシール・ラベル用粘着製品を中心に受注は回復傾向にあったものの、上期の不振をカバーするまでには至らず、極めて厳しい結果となりました。

 2024年4月からは、「LSV 2030」の2期目の3か年となる「LSV 2030-Stage 2」がスタートしました。その初年度にあたる2025年3月期においては、半導体・電子部品関連製品が好調な需要に支えられ大幅に増加したことに加え、米国においてシール・ラベル用粘着製品の販売数量が回復したことなどもあり、売上高、営業利益、経常利益ともに過去最高益を達成しました。しかしながら、今後も、地政学リスクの高まりや原燃料や輸送コストの上昇などにより、当社グループを取り巻く事業環境は引き続き厳しい状況が続くと予想されます。そのような中、当社グループが持続的な成長を遂げていくために、「LSV 2030」の三つの重点テーマに対する取り組みを一層強化してまいります。

 また、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応については、長期ビジョンの重点テーマおよび新中期経営計画「LSV 2030-Stage 2」の経営目標の着実な達成、成長投資ならびに株主還元を主眼においたキャッシュアロケーション方針、積極的な株主との対話やIR活動の推進などを着実に実行することで、企業価値の向上と継続的なPBR1倍超えを目指してまいります。

 なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において判断したものであります。

 

≪長期ビジョンの概要≫

Ⅰ.

名  称

 

「LINTEC SUSTAINABILITY VISION 2030」(略称:LSV 2030)

Ⅱ.

基本方針

 

イノベーションによる企業体質の強靭化と持続的成長に向けた新製品・新事業の創出を通じて、サステナブルな社会の実現に貢献する

Ⅲ.

重点テーマ

 

1.社会的課題の解決

(1) 環境 … 脱炭素社会・循環型社会の実現への貢献 など

(2) 社会 … 人権の尊重、ステークホルダーへの情報開示とコミュニケーション強化 など

(3) ガバナンス … コーポレートガバナンスの強化、取締役会の実効性のさらなる向上 など

(4) 事業活動を通じたSDGs達成への貢献

2.イノベーションによる企業体質の強靭化

(1) DXによる設計・開発・製造・物流・業務プロセスの変革

(2) ビルド&スクラップによる省エネ、高品質、高効率、省人化を目的とした新規生産設備の導入

(3) 生産プロセス革新によるコスト競争力の強化

(4) 低成長・不採算事業の構造改革とグループ会社の経営健全化

(5) 強固な財務基盤の維持と資本効率の向上

 

3.持続的成長に向けた新製品・新事業の創出

(1) 技術革新による新製品・新事業の創出

(2) 戦略的投資の拡大と機動的M&A

(3) さらなるグローバルプレーヤーへの飛躍

(4) ローカリゼーションの確立

Ⅳ.

2030年3月期 財務指標

 

売上高営業利益率

12%以上

ROE(自己資本当期純利益率)

10%以上

 

 

≪中期経営計画の概要≫

Ⅰ.

名称/期間

 

「LSV 2030 - Stage 2」/2024年4月~2027年3月

Ⅱ.

各事業セグメントの主な取り組み

 

■印刷材・産業工材関連

北米やアジアでの拡販と収益向上

地球環境との共生と循環型社会の実現に向けた取り組み

ウインドーフィルムのさらなる高機能化と拡販

労働力不足の解決や生産効率の向上に貢献する新製品の開発やシステムの拡販 など

(印刷情報材事業部門)

2026年3月期は、「環境」「安全」への市場要求の高まりに引き続き対応すべく、環境負荷が低く「食品衛生法」や「FDA」に準拠したホットメルト粘着剤を使用する製品の拡充・拡販を加速していきます。また、3R対応製品やリサイクル適性の向上などに貢献するモノマテリアルラベル素材を広く訴求するとともに、剥離紙の水平リサイクルへの取り組みも加速させていきます。日本で培われた高い性能を有する粘着製品を北米や欧州、アセアン地域に展開すると同時に、マックタック社が優位性を持つホットメルトなどの製品を他の地域に拡販することで、グローバルでのマーケットイン戦略を推進してまいります。

(産業工材事業部門)

2026年3月期は、部門方針に「品質重視を基本に市場の求める製品・サービスを創出、提供し、顧客満足度向上を図る」を掲げました。前期に掲げた品質重視の姿勢を今期も引き継ぐとともに、新製品や新サービスの創出・提供を大方針に活動します。特にウインドーフィルムにおいては、さらなる高機能化と拡販を目指して、2024年8月に上市した高い透明性を保ちながら遮熱性能も向上させた自動車用ウインドーフィルムなどを訴求していきます。部門方針の実現に向けては組織改編を行い、意思疎通や情報共有、業務遂行がスムーズに展開できる仕組みを構築し、営業活動を活発化することで市場競争力の強化を図っていきます。また、営業推進部を新設して国内外のグループ会社を含めた情報や施策の共有化を推進、組織横断的な製品開発や既存製品の拡販につなげていきます。

 

■電子・光学関連

エレクトロニクス市場の成長に向けた継続的な設備投資と需要対応

先進半導体後工程におけるパッケージング技術に関わる新たなテープや装置、独自プロセスの開発

EUV露光機用CNTペリクル量産体制の確立

車載用OCA(Optical Clear Adhesive)などの新製品の開発と拡販

光拡散フィルムの開発 など

(アドバンストマテリアルズ事業部門)

2026年3月期は、高性能半導体であるHBMやデータセンター向けに旺盛な需要が継続すると予測しており、半導体関連粘着テープや積層セラミックコンデンサ関連テープの販売増加を見込んでいます。引き続きお客様の需要に応えられるよう供給体制の強化に努めるほか、地政学リスクの高まりや新たな環境規制といった諸課題に真摯に対応し、今後もお客様から当社製品が選ばれ続けることを目指します。加えて、先端半導体後工程における新たなテープやパッケージング技術に関する装置や独自プロセスの開発などにも積極的に取り組んでいきます。

(オプティカル材事業部門)

2026年3月期は、前期に種をまいた新製品の販売数量増加や値上げ効果などが発現すると見込んでいます。目標とする損益改善を確実に実現するには、当社の精密薄膜塗工技術を生かした光学機能性材料「Opteria」シリーズの拡販がカギを握ると考えています。とりわけ光拡散フィルムの売り上げ増加、期中のハイバリアフィルムの収益化、車載用OCAの拡販の3点を重点課題に位置づけています。また、ビジネスを縮小した偏光板の事業においても、有機ELディスプレイ関連用途で既存の協業先向けに生産・品質体制を継続してまいります。

 

 

■洋紙・加工材関連

耐油耐水紙のさらなる用途展開

プラスチック代替高機能紙の開発・拡販

合成皮革用工程紙の海外展開強化

炭素繊維複合材料用工程紙の拡販 など

(洋紙事業部門)

2026年3月期は、「収益性の改善」「販売数量のアップ」「新製品の創出」を部門方針として取り組んでまいります。利益の改善に向けては生産体制の再構築・最適化や在庫の適正化などに努め、販売数量のアップについてもニーズの高い非フッ素耐油紙の原価低減と品質向上によってフッ素耐油紙からの完全切り替えを目指します。新製品の創出では、加工材事業部門の設備を生かして高付加価値製品の創出を図るほか、研究所や工場との連携をさらに強化することで、スピード感のある新規開発テーマの検討や確立につなげていきます。

(加工材事業部門)

2026年3月期は、市場動向が不透明ではあるものの、顧客ニーズに柔軟に対応しながら、さらなる販売数量の増加やコスト削減に努め、収益性の改善を進めてまいります。2025年9月には小松島工場(徳島県)において新たな塗工機が稼働予定であり、合成皮革用工程紙のグローバル展開や新製品の創出を図っていくほか、需要拡大が予想される航空機向け炭素繊維複合材料用工程紙の拡販などを進めることで、シェアアップにつなげていきます。また、剥離紙の製造時に有機溶剤を使用しない「無溶剤化」や剥離紙にポリエチレン樹脂をラミネートしない「脱ポリ化」を継続して推進し、中長期的な重要テーマである環境対応を強化してまいります。

 

◆当社のESGおよびSDGsに関する取り組みについて◆

 当社は長期ビジョン「LSV 2030」で掲げた重点テーマ「社会的課題の解決」において、ESG(環境・社会・ガバナンス)およびSDGsに関する取り組み課題として、次の項目を設定しております。

 


 

 当社グループ全社員による取り組みを一層加速し、国際社会の課題解決に貢献することのできる企業グループを目指してまいります。また、マテリアリティ(重点課題)については毎年見直しを行っており、「サステナビリティレポート」および「統合報告書」並びに当社ウェブサイトにて開示しております。

 当社はこれからも、社是「至誠と創造」の下、各項目に対して積極的に取り組んでまいります。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社では人的資本や気候変動などのサステナビリティ経営課題について、当社ウェブサイトを通じ積極的な開示を進めてまいります。その概要は以下のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

(1) ガバナンス

サステナビリティに関する具体的な取り組み施策については、「サステナビリティ委員会」(原則年4回開催)において、対応方針や実行計画についての議論と進捗状況の監督を行っています。同委員会は代表取締役社長が委員長を務め、全取締役および下部委員会の推進担当役員が参加しており、討議結果は取締役会において報告される体制としています。当事業年度における同委員会の活動状況は次のとおりです。

 構  成

取締役(社外取締役全員を含む)および傘下の委員会・分科会の担当役員 計14名  

委員長:代表取締役社長

 開催回数

4回

 出 席 率

98.2%

 主な議題

・傘下の各委員会・各分科会における活動報告(四半期毎)
・マテリアリティ・KPIの進捗に関する議論
・生物多様性への対応に関する議論
・CO2排出量削減に関する議論
・TCFD開示情報に関する議論  ほか

 

①人的資本

人的資本関連課題は「ダイバーシティ・働き方改革促進分科会」を通じて社内外のニーズの吸い上げを行い、人事部と協働して施策や制度の浸透と啓蒙を行います。この活動については「社会・ガバナンス委員会」で一次評価を実施し、「サステナビリティ委員会」において最終的な評価を行うとともに、全取締役および全推進担当役員に報告されています。

②気候変動

気候変動関連課題は「TCFD分科会」を通じて「環境委員会」で一次評価を実施し、「サステナビリティ委員会」において最終的な評価を行います。課題への対応策は各拠点で実行・管理され、対応状況は「環境委員会」にて取りまとめ、「サステナビリティ委員会」において全取締役および全推進担当役員に報告されています。

(2) 戦略

サステナビリティに関するさまざまなリスク・機会を事業戦略策定上の重要事項の一つとして捉えており、それぞれの対応策を長期ビジョン「LSV 2030」の取り組みに反映させています。さらに社会トレンド・ニーズに対する感度を高め、必要な諸施策をタイムリーに検討し、実行しております。

①人的資本

当社グループの社是は「至誠と創造」であり、すべての社員に対して誠意をもって、あらゆる差別的取り扱いをせず一人ひとりの多様性を尊重します。また、社員の多様性はイノベーションの源泉であり企業価値向上に資するものと考えており、さまざまな立場の方の採用・登用を積極的に進め、多様性の確保、拡大を目指してまいります。

このため、当社では定期採用のほか必要都度キャリア採用、高度専門人財採用を積極的に行っているほか、家庭の事情で退職した元社員を再雇用するジョブリターン制度や、他社で経験を積んだ元社員を再雇用するキャリアリターン制度(2025年4月より「アルムナイ・キャリアリターン制度」に改め、WEBエントリーシステムを構築)、異業種経験を当社業務に活かしてもらうための副業・兼業制度なども導入し、多様性の確保に努めております。

社員の育成については、当社は社員の業務や能力に合わせた教育プログラムを用意し、グローバル社会にも通用する人財の育成に努めています。また、サクセッションプラン(組織ごとの後任者および育成の計画化)を導入し、会社の屋台骨となる人財の育成・確保にも注力しております。

このほか、当社では社内環境整備にも力点を置いており、出産・育児・介護などのライフイベントがあっても働き続けやすい制度作りなどの取り組みを続けております。

*詳細は、下記にて開示しております。

https://www.lintec.co.jp/sustainability/social/ ※社会性報告

②気候変動

 2030年(中期)および2050年(長期)までの国内事業および海外事業の一部(中国、韓国、タイ、インドネシア)を対象としたシナリオ分析を実施しています。2024年度は北米地域の物理リスクの検討及びリスク・機会の更新検討を行いました。

 主な取り組みとして、CO2排出量やエネルギー使用量の削減に向け、各生産拠点に環境対応設備の導入を進めているほか、VOC(揮発性有機化合物)の大気放出抑制を掲げ、製品の無溶剤化を推進しています。これらの取り組みを長期ビジョン「LSV 2030」に反映させるとともに、今後は当社グループの連結決算対象企業へ拡大していきます。

 

 

4℃シナリオ

2℃シナリオ

 

移行

リスク

国際エネルギー機関(IEA)による移行シナリオ

「公表政策シナリオ

(STEPS)」*1

「持続可能な開発シナリオ(SDS)」*1

 

物理的

リスク

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)による

気候変動予測シナリオ

「RCP8.5」*2

「RCP2.6」*2

 

*1出典:IEA「World Energy Outlook 2021」

*2出典:IPCC「第5次評価報告書」

 また、サプライチェーン全体での温室効果ガス(以下、GHG)排出削減を推進するため、科学的根拠に基づいた温室効果ガス排出削減目標「Science Based Targets (SBT)」を認定する機関である「SBTイニシアチブ」に対してコミットメントレターを提出しました。

*詳細は、下記にて開示しております。

https://www.lintec.co.jp/sustainability/environment/pdf/data_env.pdf#page=15 ※TCFDに基づく情報開示

https://www.lintec.co.jp/topics/newsrelease/250108_a.html ※当社ニュースリリース(SBT)

 

(3) リスク管理

リスク管理体制強化のため、各本部長と社長直轄組織である各室の室長で構成される「全社リスク管理委員会」を2018年4月に設置し、定期的に委員会を開催しています。

2021年4月にサステナビリティ活動の推進体制が刷新・強化され、同委員会の目的を「事業におけるリスクと機会の把握、対応方針策定、職制への落とし込みおよび検証」として、改めて明確にしました。同委員会では、主に各委員の課題認識と管理職などを対象に毎年実施しているリスク洗い出しの結果に基づいて、サステナビリティ関連項目を含むさまざまなリスクの評価・分析を行っています。その結果は四半期ごとに「サステナビリティ委員会」で報告され、対応などについての指示を受けています。

各委員会が連携してリスク管理能力の強化に努めるとともに、リスク管理体制の継続的な改善に取り組みリンテックグループの持続的成長を図っております。

①人的資本

社員教育や採用活動、福利厚生などの人事に関する諸課題は人事部が所管し、社会トレンド・ニーズの変化も見据えつつ、経営と一体となり対応方針を検討していきます。また、「ダイバーシティ・働き方改革促進分科会」とも協働し、委員会を通じ社内外のニーズの吸い上げや、施策や制度の浸透と啓蒙を行います。

なお、2023年から従業員サーベイを導入しました。これにより組織の状態把握に努めるとともに、社員と会社の考え方の一致状況や、会社が社員の期待に応えられているかをチェックし、離職や組織力低下などのリスクに対する管理能力を高めてまいります。

②気候変動

気候関連リスクに係る情報は「環境委員会」が収集して識別・評価を行い、その結果を「サステナビリティ委員会」に報告しています。同委員会では対応の必要性を検討後、適宜、下部委員会を通じて推進担当役員に業務指示を行っており、指示を受けた推進担当役員はそれぞれの所管部署を通じて対応策を実行します。「環境委員会」はその後の状況の変化を継続的に確認し、当初掲げた指標・目標が達成できているかどうか定期的に把握しています。

(4) 指標及び目標

サステナビリティのリスク・機会として重要な項目については、指標および目標を設定し、関係部署においてさまざまな施策を推進しています。

 

①人的資本

当社では人的資本経営に関連するKPIとして「女性管理職・監督職(係長・主査)比率」「女性採用比率(大卒・院卒・短大卒)」「障がい者雇用率」等を設定しており、これらの推移を確認しながら人財の多様性確保および人財育成ならびに社内環境整備に努めてまいります。なお、下記表の目標値および実績値は、当社グループでの従業員数において、単体の従業員数が過半数を占めていることから、その重要性を踏まえ単体の数値を記載しております。

 

目標値※

2024年3月期

(実績)

対象範囲

女性管理職・監督職(係長・主査)比率

10

6.7

単体

女性採用比率(大卒・院卒・短大卒)

35以上

37.8

単体

障がい者雇用率

2.7

2.23

単体

 

※LSV 2030-Stage 2における目標値

 

*マテリアリティ・KPIおよび実績(2024年3月期)は、下記にて開示しております。

https://www.lintec.co.jp/sustainability/materiality/ ※マテリアリティ・KPIのリンク

https://www.lintec.co.jp/sustainability/social/ ※社会性報告

②気候変動

気候変動への対応として温室効果ガス(GHG)排出量の削減が重要であると認識し、研究開発・製造・販売・物流面などにおいてさまざまな施策を推進しています。脱炭素に向けたこれらの取り組みはメーカーとしての使命であると同時に、気候関連の新たな機会獲得につながると考えています。

当社グループでは、2030年を見据えた長期ビジョン「LSV 2030」において、「2030年までにCO2排出量を2013年度比50%以上削減」という目標を掲げ、2024年3月期(実績)は2013年度比51%の削減となりました。また、新中計「LSV 2030-Stage 2」では、「2030年までにCO2排出量を2013年度比75%以上削減」という目標の見直しを行いました。さらに、「2050年カーボンニュートラル達成」を目標に設定しております。

*詳細は、下記にて開示しております。

https://www.lintec.co.jp/ir/management/plan.html ※経営方針 経営計画「LSV 2030-Stage 2」

 

 

3 【事業等のリスク】

当社グループは、グループ全体におけるリスクの把握と発生の防止に努め、チャンス(機会)を捉えて活かす行動を根付かせていくために、全社リスクマネジメントシステムの構築を推進する「全社リスク管理委員会」を設置し、グループ全社でのリスク管理体制構築に向けてシステムづくりから管理・運用までを担い、継続的に改善活動を行っております。

当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性がある主要なリスクには、以下のようなものがあると認識しておりますが、これらは想定される主要なリスクを例示したものであり、すべてのリスクを網羅したものではありません。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1) 経済情勢、市場環境の変動リスク

当社グループの事業は、あらゆる産業に展開しており、国内外の経済情勢、市場環境の影響を直接及び間接的に受けます。国内においては、少子高齢化の進展や人口減少社会の到来によって市場の縮小が進み、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がありますが、新たな需要の開拓を進め、既存事業のシェア拡大と新市場の創出を図っていきたいと考えております。また、電子・光学関連においては、世界のIT産業の動向の影響を受けます。今後のIT産業の動向によっては、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 販売価格の変動リスク

当社グループが事業を展開する市場は、国内外において厳しい競合状態にあり、十分な利益を確保するに足る販売単価の維持や販売シェアの確保ができない場合があります。競合に対する差別化やきめ細かい顧客サービスによるシェアの維持、コスト削減による利益の確保に努めてまいりますが、これらが困難になる場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 原材料等価格の変動リスク

当社グループは、製紙用パルプや各種石化製品などを原材料、燃料として多く使用しており、その価格は在庫水準や需給バランスによって変動する市況製品であります。原材料等の購入に際しては、市況動向を見極めた発注に努めてはおりますが、価格の急激な変動によっては、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 海外事業展開に関するリスク

当社グループは、世界各地で生産・事業展開を進めており、2025年3月期の海外売上高比率は63.9%になっております。生産・事業展開をする各国において、テロ、政変、クーデター等による政情不安や治安の悪化、従業員による労働争議、感染症、予期せぬ税制、外為、通関等に関する法律、規制の変更など不測の事象が発生した場合、海外における当社グループの事業活動に支障をきたし、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

また、為替変動リスクも高まっており、米ドルのみならず、韓国ウォンや中国元、台湾ドルなどアジアの主要通貨の動向も注視するとともに、為替予約などを行うことでリスクの軽減を図っておりますが、想定以上の為替相場の変動によっては、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(5) 新製品開発について

当社グループは、総合技術力で市場ニーズに対応し、競争力のある高付加価値製品を市場に投入していくことを目標に研究開発を推進しており、研究スタッフの増員や、産学共同研究等への経営資源投入を強化しております。

しかしながら、このような研究開発への経営資源の投入が必ずしも新製品の開発さらには営業収入の増加に結びつくとは限らず、開発期間が長期に亘ったことなどにより、開発を中止せざるを得ないような事象が発生した場合は、製品開発コストを回収できず、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(6) 知的財産権について

当社グループは、独自に蓄積してきた様々な製造技術について国内外において必要な知的財産権保護手続きを行っておりますが、法的制限だけでは完全な保護は不可能であり、取得した権利を適切に保護できない場合があります。また、当社グループの製品に関して第三者より知的財産権侵害の提訴を受ける場合があります。このような場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(7) 重要な訴訟等について

当社グループが国内外で事業活動を行うにあたり、製造物責任(PL)関連、環境関連、知的所有権関連等に関し、訴訟その他の請求が提起される可能性があり、その内容によっては当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(8) 法規制について

当社グループが事業活動を展開する各国において、各種法規制の適用を受けております。これらの規制の遵守に努めておりますが、規制の強化または変更がなされた場合には、当社グループの事業活動が制限されたり、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(9) 自然災害や重大事故について

当社グループは自然災害や重大事故の発生に対応するため、BCP(事業継続計画)を策定し、BCMS(事業継続マネジメントシステム)を運用していますが、気候変動などによる大規模自然災害の発生などにより、当社やサプライヤーの事業所が想定を超える被害を受けて製品の安定供給が困難になる場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(10) 情報・サイバーセキュリティーについて

当社グループは、事業活動においてさまざまなデータや管理・制御システム、顧客・個人・技術などの秘密情報を保有・管理しております。その管理においては、規程や情報インフラを整備し、秘密情報の取り扱いや漏えい防止に関する教育・監査などの対策を講じて、情報・サイバーセキュリティー強化に努めております。

しかしながら、年々高度化、巧妙化してきている第三者からのサイバー攻撃(不正侵入やハッキング)等によって、電子化された文書やデータ、さまざまな管理・制御システムが破損、消失、盗難、漏えい等の事故、事件に遭遇する可能性があり、このような場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

 

(1)経営成績の状況

当連結会計年度における世界経済は、米国は個人消費や設備投資などの伸びが拡大したことで底堅く推移しましたが、欧州は引き続き低成長にとどまりました。また、中国は政府による支援策があったものの個人消費や不動産市場などの低迷により厳しい状況が続いています。一方、我が国においては、訪日外国人の増加によるインバウンド効果があったものの、食料品などの価格高騰による買い控えなどによる個人消費の低迷や数多くの自然災害、自動車生産台数の減少などもあって停滞感が続いています。

このような情勢の下、当社グループの事業環境につきましては、売上高は半導体・電子部品関連製品が好調な需要に支えられ大幅に増加したことに加え、米国においてシール・ラベル用粘着製品の販売数量が回復したことなどもあり総じて好調に推移しました。利益面においては、原燃料価格や物流コストは引き続き上昇傾向にあったものの、半導体・電子部品関連製品に加えて他の製品についても販売数量が増加したことによる増益効果がありました。

以上の結果、売上高は315,978百万円前期比14.4%増)、営業利益は24,562百万円同131.1%増)、経常利益は26,090百万円同126.1%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は14,476百万円同176.1%増)となりました。

なお、当社の洋紙事業を取り巻く事業環境は、主力の封筒用紙を中心に受注が低迷し、加えてパルプや薬品などの原材料価格や物流コストが引き続き上昇傾向にあることから、極めて厳しい事業環境が続いていることを踏まえ、洋紙事業の将来の回収可能性を検討した結果、当連結会計年度において減損損失7,728百万円を特別損失に計上いたしました。

 

セグメント別の概況は以下のとおりです。

 

〔印刷材・産業工材関連〕

 

前連結

会計年度

当連結

会計年度

前期比

増減額

増減率

 

百万円

百万円

百万円

売上高

168,970

184,647

15,676

9.3

 

印刷情報材事業部門

133,175

146,665

13,489

10.1

 

産業工材事業部門

35,795

37,981

2,186

6.1

営業利益又は営業損失(△)

△1,115

5,462

6,577

 

 

当セグメントの売上高は販売数量の増加や円安効果により184,647百万円前期比9.3%増)となりました。利益面については米国で販売数量が大幅に増加した効果もあり営業利益は5,462百万円同-%)となりました。

当セグメントの事業部門別の売り上げの概況は次のとおりです。

(印刷情報材事業部門)

シール・ラベル用粘着製品は、国内では物価高騰の影響により食品関連を中心に需要が減少したほか、アイキャッチラベルや飲料キャンペーン用なども総じて低調に推移しました。海外では米国で買収効果により販売数量が大幅に増加したほか、中国、アセアン地域においても堅調に推移しました。この結果、当事業部門の売上高は146,665百万円(前期比10.1%増)となりました。

(産業工材事業部門)

国内では自動車生産台数減少の影響を受け自動車用粘着製品やウインドーフィルムが低調に推移しました。海外においては米国で防犯用ウインドーフィルムやスパッタリングフィルムが好調であったほか、インドで自動車用粘着製品が増加しました。この結果、当事業部門の売上高は37,981百万円(前期比6.1%増)となりました。

 

 

〔電子・光学関連〕

 

前連結

会計年度

当連結

会計年度

前期比

増減額

増減率

 

百万円

百万円

百万円

売上高

73,892

96,312

22,419

30.3

 

アドバンストマテリアルズ事業部門

59,978

85,008

25,030

41.7

 

オプティカル材事業部門

13,914

11,303

△2,611

△18.8

営業利益

11,661

18,505

6,844

58.7

 

 

当セグメントの売上高は光学ディスプレイ関連粘着製品は韓国・台湾子会社の閉鎖の影響を受け大きく減少しましたが、半導体・電子部品関連製品の需要が大幅に増加したことにより96,312百万円前期比30.3%増)となりました。利益面については半導体関連粘着テープや装置の売り上げが増加したことにより営業利益は18,505百万円同58.7%増)となりました。

当セグメントの事業部門別の売り上げの概況は次のとおりです。

(アドバンストマテリアルズ事業部門)

半導体関連粘着テープは生成AI関連の需要増加などにより好調に推移しました。また、半導体関連装置についてもHBM製造用などで大幅に増加しました。積層セラミックコンデンサ関連テープはスマートフォンやデータセンター向けなどの需要増加により大きく伸長しました。この結果、当事業部門の売上高は85,008百万円(前期比41.7%増)となりました。

(オプティカル材事業部門)

OLEDスマートフォン用粘着テープは堅調であったものの、韓国・台湾子会社の閉鎖の影響もあり売上高は大幅に減少しました。この結果、当事業部門の売上高は11,303百万円(前期比18.8%減)となりました。

 

〔洋紙・加工材関連〕

 

前連結

会計年度

当連結

会計年度

前期比

増減額

増減率

 

百万円

百万円

百万円

売上高

33,458

35,019

1,561

4.7

 

洋紙事業部門

15,329

14,876

△452

△3.0

 

加工材事業部門

18,129

20,142

2,013

11.1

営業利益

21

535

514

2,443.1

 

 

当セグメントの売上高は洋紙事業部門においてカラー封筒用紙の需要減少の影響を受けましたが、加工材事業部門で電子材料用剥離紙や合成皮革用工程紙の販売数量が増加したことにより35,019百万円前期比4.7%増)となりました。利益面については洋紙事業部門は厳しい結果となりましたが、加工材事業部門の販売数量増加などにより営業利益は535百万円同2,443.1%増)となりました。

当セグメントの事業部門別の売り上げの概況は次のとおりです。

(洋紙事業部門)

クリーンペーパーや耐油耐水紙が堅調に推移したものの、主力のカラー封筒用紙や色画用紙、建材用紙が需要減少により低調に推移しました。この結果、当事業部門の売上高は14,876百万円(前期比3.0%減)となりました。

(加工材事業部門)

電子材料用剥離紙や光学関連製品用剥離フィルムがスマートフォン用などの需要増加により好調に推移したほか、合成皮革用工程紙やレジャー用の炭素繊維複合材料用工程紙も増加しました。この結果、当事業部門の売上高は20,142百万円(前期比11.1%増)となりました。

 

 

2026年3月期の業績見通しにつきましては、海外売上高が60%を超え、さらなるグローバル化を目指す当社グループにとりましては、米国政府における関税政策による世界経済への影響、地政学リスクの高まり、各国金融政策による為替変動など、当社の経営環境に大きな影響を及ぼすとみています。

そのような中、当社グループでは2030年を最終年度とした長期ビジョン「LSV2030」を掲げ、基本方針を「イノベーションによる企業体質の強靭化と持続的成長に向けた新製品・新事業の創出を通じて、サステナブルな社会の実現に貢献する」とし、「社会的課題の解決」、「イノベーションによる企業体質の強靭化」、「持続的成長に向けた新製品・新事業の創出」の三つの重点テーマに対する諸施策に取り組んでおり、2026年3月期はその中間点にあたります。

今後も前述のような世界情勢に加えて、原燃料や輸送コストの上昇、人件費や新規生産設備導入による減価償却費などの固定費増加が利益押し下げ要因となりますが、全社員が一丸となり取り組みを一層強化することで、現下の厳しい経営環境を乗り越え計画達成に向けて邁進してまいります。

2026年3月期の連結業績予想は、売上高は3,170億円(当期比0.3%増)、営業利益は240億円(同2.3%減)、経常利益は240億円(同8.0%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は180億円(同24.3%増)を予想しております。

 

(2)財政状態の状況

〔資産〕

当連結会計年度末の総資産は、棚卸資産の増加に加え有形固定資産が積極的な設備投資などにより増加したことなどから、前連結会計年度末に比べて6,881百万円増加340,471百万円となりました。主な増減要因は以下のとおりです。

・「受取手形」の減少

△1,395百万円

・「売掛金」の増加

1,332百万円

・「棚卸資産」の増加

4,505百万円

・「有形固定資産」の増加

2,776百万円

・「のれん」の減少

△3,220百万円

・「繰延税金資産」の増加

3,627百万円

 

 

〔負債〕

当連結会計年度末の負債は、支払手形及び買掛金や長期借入金の減少などにより、前連結会計年度末に比べて6,324百万円減少94,345百万円となりました。主な増減要因は以下のとおりです。

・「支払手形及び買掛金」の減少

△5,354百万円

・「未払法人税等」の増加

3,022百万円

・「関係会社整理損失引当金」の減少

△1,147百万円

・「長期借入金」の減少

△2,094百万円

・「退職給付に係る負債」の増加

1,005百万円

 

 

〔純資産〕

当連結会計年度末の純資産は、為替換算調整勘定の増加などにより、前連結会計年度末に比べて13,206百万円増加246,126百万円となりました。主な増減要因は以下のとおりです。

・「自己株式」の増加

5,864百万円

・「為替換算調整勘定」の増加

8,921百万円

 

 

(3)キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は50,703百万円となり、前連結会計年度末に比べて1,692百万円の減少となりました。当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況は以下のとおりです。

 

〔営業活動によるキャッシュ・フロー〕

営業活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比較して5,489百万円減少33,715百万円となりました。主な増減要因は以下のとおりです。

 

・「税金等調整前当期純利益」の増加

9,300百万円

・「関係会社整理損失引当金の増減額」の減少

△2,249百万円

・「売上債権の増減額」の増加

5,084百万円

・「棚卸資産の増減額」の減少

△12,867百万円

・「仕入債務の増減額」の減少

△12,137百万円

・「減損損失」の増加

6,713百万円

・「法人税等の支払額又は還付額」の減少

△1,153百万円

 

 

〔投資活動によるキャッシュ・フロー〕

投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比較して3,154百万円減少△24,666百万円となりました。主な増減要因は以下のとおりです。

・「定期預金の払戻による収入」の減少

△3,306百万円

・「有形固定資産の取得による支出」の減少

△9,329百万円

・「連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得

  による支出」の増加

1,090百万円

・「事業譲受による支出」の増加

7,007百万円

 

 

〔財務活動によるキャッシュ・フロー〕

財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比較して11,044百万円減少△12,332百万円となりました。主な増減要因は以下のとおりです。

・「長期借入れによる収入」の減少

△6,795百万円

・「自己株式の取得による支出」の減少

△3,092百万円

 

 

また、資本の財源及び資金の流動性につきましては、営業キャッシュ・フロー内において、主な設備投資や借入金の返済などを実施しており、自己キャッシュ・フローにより流動性は確保できております。

 

(4)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

〔のれんの減損及び子会社株式の評価〕

当連結会計年度末ののれん残高は11,771百万円であります。主なものは印刷情報材事業の製品を製造・販売するMACTAC AMERICAS, LLCにおいて11,554百万円の残高を計上しており、同社は、米国におけるTopic350「無形資産-のれん及びその他」を適用し、のれんを10年間の定額法で償却しています。また、年4回(四半期決算期末)減損の兆候の判定を行っております。

減損の兆候の判定には、主にマクロ経済の動向、業界及び市場の動向、原材料費や輸送コスト等の調達コストの動向、業績の動向などを判断材料としており、これらの判断材料が大きく変化した場合、のれんの減損損失を認識する可能性があります。

当連結会計年度における減損の兆候を判定した結果、減損の兆候はなく、のれんの減損損失を認識することはありませんでした。

また、当事業年度末の子会社株式残高は61,956百万円であり、主なものは当社の米国子会社であるLINTEC USA HOLDING, INC.の48,731百万円であります。LINTEC USA HOLDING, INC.は、上記のMACTAC AMERICAS, LLCの持分を100%所有しており、MACTAC AMERICAS, LLCがのれんの減損損失を認識した場合、子会社株式の評価損を認識する可能性があります。

 

〔固定資産の減損〕

当連結会計年度において、洋紙・加工材関連セグメントのうち、洋紙事業の収益性が低下したため減損の兆候があると判断し、洋紙事業の固定資産に係る資産グループ11,119百万円について、減損損失の認識の要否判定を行いました。

判定の結果、当該資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額がその帳簿価額を下回ったことから、当該事業に係る資産グループの帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額7,728百万円を減損損失として特別損失に計上しております。

なお、当該見積りに用いた仮定などは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

 

(5)生産、受注及び販売の実績

〔生産実績〕

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

生産高(百万円)

前期比(%)

印刷材・産業工材関連

140,557

6.1

電子・光学関連

65,344

34.6

洋紙・加工材関連

43,308

3.6

合計

249,210

11.8

 

(注) 1 セグメント間およびセグメント内の取引が多様で、各セグメントの生産高を正確に算出することが困難であるため、概算金額を表示しております。また、セグメント間の内部振替高に伴う生産高を含めております。

 2 金額は、製造原価によっております。

 

〔受注実績〕

製品及び商品の大部分が受注即出荷となりますので、受注状況は販売実績とほぼ同じであります。

 

〔販売実績〕

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(百万円)

前期比(%)

印刷材・産業工材関連

184,647

9.3

電子・光学関連

96,312

30.3

洋紙・加工材関連

35,019

4.7

合計

315,978

14.4

 

 (注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。

2 主な相手先別の販売実績は、総販売実績に対する割合が100分の10未満であるため記載を省略しております。

 

 

5 【重要な契約等】

該当事項はありません。

 

 

6 【研究開発活動】

当社グループは、粘着応用技術、表面改質技術、システム化技術、並びに特殊紙・剥離材製造技術を基盤に、印刷情報材料、産業工業材料、半導体関連材料、光学機能材料などの多岐にわたる製品を開発・製造・販売し、その研究開発活動の大部分を提出会社である当社が行っております。当期も中長期研究開発計画に基づいた新技術や新製品、特に機能性材料とその加工技術の開発に積極的に取り組み、ユーザーニーズを重視したマーケット対話型の研究開発に努めてまいりました。また「カーボン・ニュートラル・チャレンジ」のスローガンの下、CO2排出量の削減に向けた開発活動を強化し、脱プラスチック・減プラスチックを目指してプラスチック代替素材を用いた製品開発や、プラスチックフィルム使用量削減に積極的に取り組んでいます。

さらに、当社グループの海外における研究機関であるNano-Science & Technology Center(米国テキサス州)では、カーボンナノチューブ関連の研究と応用製品開発に力を入れております。当社の既存技術との融合による他に類を見ないユニークな製品開発を目指しています。

当連結会計年度における当社グループ全体での研究開発費の総額は10,065百万円となりました。

なお、セグメント別の主な研究開発活動の状況は次のとおりです。

(印刷材・産業工材関連)

(1) 印刷情報材料分野

環境負荷低減に寄与する製品の開発に注力しています。その一環として、粘着剤の塗工時に有機溶剤を使用しないホットメルト粘着剤を使用したラベル素材の開発を推進しています。ホットメルト粘着剤は、乾燥設備が不要でエネルギー使用量が少なく、熱で溶かしながら塗工する常温固形タイプの粘着剤であり、製造時のCO2排出量が少ないことが特徴です。今回、-5℃までの低温環境下でも貼付可能で、繰り返し貼って剥がせる再剥離性・再貼付性を有したラベル素材「RE CHILL」を発売しました。また、表面基材と粘着剤にポリエステル系樹脂を使用することで、日用品や食品、飲料などに使用されるPET製容器とのモノマテリアル化(単一素材化)を実現したラベル素材「MMP」に続き、シャンプーボトルなどの容器に使用されるオレフィン系樹脂を使用したモノマテリアルラベル素材の開発を進めています。引き続き環境配慮製品の開発・提供に努めてまいります。

(2) 産業工業材料分野

さまざまな産業向けや建築物用の機能性粘着素材の開発を継続しています。高機能化の検討を継続し、各種印字方式に対応するデジタルプリント対応ビジュアルマーキングフィルム(LAG製品)を開発しています。さらに環境配慮の観点からバイオマス材料を用いたビジュアルマーキングフィルム素材も開発しました。ウインドーフィルムにおいては、自動車向けに高透明性と高遮熱性を両立した製品や建築向けにリサイクル材料を用いた製品を開発しました。引き続き、高機能化と環境負荷の低減を実現する製品の開発を進めていきます。 

その他の研究開発活動を含め、当セグメントの研究開発費は3,226百万円となりました。

 

(電子・光学関連)

(1) 半導体・電子部品関連材料分野

スマートフォン等に用いられるウェハレベルパッケージ半導体向けに、生産性向上などの機能を付与したチップ裏面保護テープを開発しています。当期は、半導体チップと基板をつなぐ電極としての「バンプ」を樹脂で保護し、亀裂のリスクを減らすフィルム状の新製品を開発しました。同製品を使用しない場合に比べて温度変化に対する強さ(耐久性)を2.5~3倍に向上でき、半導体製品の寿命を延ばす効果が期待できます。

ダイシングテープ、バックグラインドテープを中心に環境負荷の少ない樹脂に帯電防止性能を付与した製品を開発し、製品群の拡充を進めて参りました。加えて、生成AI向けデバイスやHBM製造プロセス向けテープの開発・提案に注力すると共に、薄型ウェハが使用されるインテリジェントセンサーや3D NANDフラッシュメモリーの製造に不可欠な高機能ダイシングテープ、バックグラインドテープ、ダイシング・ダイボンディングテープなどの開発・上市を継続し、急速に進むDXやAI、次世代通信に対応する製品の開発を進めてまいります。

また、スマートフォンやデータセンター向けの積層セラミックコンデンサ(MLCC)の需要が拡大し、MLCC製造用剥離フィルム市場が活況です。現在は、MLCCの小型化・高性能化に伴う剥離フィルムの品質改善と高機能化、新規アイテムに対応した剥離フィルムの開発に取り組んでいます。

(2) 光学機能材料分野

各種ディスプレイに用いられる機能性粘着剤と機能性コート剤の開発を継続しています。車載ディスプレイ用では、曲面パネルや高い段差にも対応可能で環境にも配慮した超厚膜(~500μm)の無溶剤型粘着剤を開発しました。さらに、着色、光拡散性などの機能を付与した製品も含めて拡販が進んでいます。また、タブレットPCやスマートフォンのタッチセンサーに使用される金属細線の腐食を抑制し、かつ紫外線の遮蔽性を兼ね備えた粘着剤や、フレキシブルディスプレイに使用される耐折り曲げ性を付与した粘着剤など、新規のディスプレイ製品に対応した開発を進めています。

そのほか光の拡散領域が制御可能な光拡散フィルムは、顧客要求にマッチした特性にカスタマイズすることでさらに優位性を発現し、従来のスマートウォッチだけでなく、より面積の広いタブレットPC用途としての採用が加速しました。そのほか、電子看板や空間ディスプレイなど新規用途でのデモ試験を活発に継続しています。これら製品のさらなる拡販を目指すとともに、新たな機能性粘着剤と機能性コート剤の開発を進めてまいります。

その他の研究開発活動を含め、当セグメントの研究開発費は5,569百万円となりました。

 

(洋紙・加工材関連)

包装容器をはじめとした消費材の環境負荷低減に貢献できる特殊紙の開発に取り組んでいます。具体的にはポリエチレンのラミネートを必要としない脱プラスチック要求に応える特殊紙や、食の安全性への期待に応えるフッ素系樹脂を使用しない特殊紙の開発を進めています。

靴やかばんなどに使われる合成皮革は、その表面に柄を付与するために工程紙を用いて製造されています。当社はトレンドに合わせた様々な柄の工程紙を開発しています。

 

一般ラベル用剥離紙では、プラスチック使用量削減の観点から、当社独自のコーティング加工をすることで、ポリエチレンラミネート加工をせずに高平滑性を実現した剥離紙を開発しました。従来のポリエチレンラミネート加工した剥離紙と同程度の平滑性を実現し、ラベルの透明性や意匠性の確保に寄与します。

また、剥離紙や剥離フィルムに塗布されている剥離処理層は、ナノメートルオーダーという極薄膜である必要性から、これまでは有機溶剤を用いた希釈塗布が主流でした。しかし、環境保全の面から積極的なVOC排出量削減策として高濃度化や無溶剤化に取り組み、その処方開発に注力しました。今後も、無溶剤化された剥離紙の展開を積極的に推進してまいります。

その他の研究開発活動を含め、当セグメントの研究開発費は1,269百万円となりました。