第2 【事業の状況】

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1) 会社の経営の基本方針

当社は、1927年の創業以来約100年にわたって、時代の変化をとらえ、世の中にないものをつくり続けてまいりました。経営理念を「独創的な商品を開発し、新たな文化の創造をもって社会に貢献する」と定め、新しい価値の提供を目指して事業を展開しております。これまで事業の中心であった文具事務用品に加えて、インテリアライフスタイルの分野に事業領域を広げ、グループ経営を推進する中で、2021年にコーポレートメッセージ「おどろき、快適、仕事と暮らし」を制定しました。今後も仕事と暮らしを快適にし、「あたらしさ」にこだわり続けてまいります。

また、サステナビリティ向上のための基本的な指針を明示するものとして「キングジムグループ サステナビリティ基本方針」を定めております。

キングジムグループ サステナビリティ基本方針

キングジムグループは、企業活動を通じて持続可能な社会の実現と当社グループの持続的な発展を目指します。

■仕事と暮らしを便利で快適にする商品を開発し、世の中に新しい価値を提供することで社会に貢献します。

■社会の責任ある一員として資源の有効活用を積極的に行い、企業活動の全域で地球環境の保全につとめます。

■多様な人材がそれぞれの能力を最大限に発揮し、自分らしく活躍するための職場環境づくりを推進します。

■健全なガバナンスにより社会から信頼される経営を行い、継続的な企業価値の向上を目指します。

 当社グループは、上記経営方針の実践によって、引き続き企業価値を高めてまいります。

 

(2) 経営環境

当社グループを取り巻く経営環境としては、DXの加速によるペーパーレスが進行する中、主力のファイル市場が縮小しており、ファイル依存の収益構造からの脱却が課題となっております。

一方でEC市場の伸長により、EC事業は業績を伸ばしております。

このような環境のもと、当社グループは第11次中期経営計画の達成に向けて、課題に取り組んでまいります。

 

(3) 目標とする経営指標

当社グループは、2027年6月期を最終年度とする第11次中期経営計画において、売上高 520億円、経常利益 28億円、経常利益率 5.4%、自己資本当期純利益率(ROE)8.0%を目標としております。

 

 

(4) 会社の中長期的な経営戦略と対処すべき課題

当社の経営理念およびサステナビリティの考え方に基づき、ESGの観点から当社の事業活動と社会課題の関連性が高い4つの項目、「独創的な商品の開発による社会貢献」「環境への配慮」「多様な人材の活躍推進」「ガバナンスの充実」をマテリアリティ(重要課題)として特定しております。マテリアリティ(重要課題)の解決を通して、持続可能な社会の実現と更なる企業価値の向上を目指してまいります。

当社グループは、2027年6月期を最終年度とする第11次中期経営計画において、「社会の変化の波をチャンスと捉え新たな成長へ」をテーマに掲げ、既存ビジネスを強化しながら、「サービス事業への展開」「ライフスタイル分野の拡大」「海外事業の強化」の3つの骨太の方針を遂行してまいります。

 


 

初年度である当連結会計年度におきましては、施策は概ね計画通りに進行し、2年目に向けた基盤を構築いたしました。売上高は410億円の計画に対し、文具事務用品事業での厚型ファイルの売上減少もあり、396億3,950万円(計画比3.3%減)と計画未達となりました。一方で、経常利益は7億円の計画に対し、売上総利益率の改善、販売費及び一般管理費率の改善により8億3,624万円(計画比19.5%増)となり、自己資本当期純利益率(ROE)は1.8%となりました。

2年目である2026年6月期については、既存ビジネスの強化として、社会の変化に合わせ、働く現場と暮らしに寄り添う開発戦略と、お客様と商品の特性に合った販売チャネルに商品を提供する販売戦略を進めてまいります。営業と開発、2つの機能を併せ持つ新部門 (デマンドチェーンクリエーション部)により、販路開拓とマーケットイン型の商品開発を並行して行い、新たな価値を提供してまいります。また、デザイン力による企業価値の向上を目指し、国内外のアーティストやデザイナーを巻き込み、キングジムデザインを総合的にプロデュースするデザイン・ブランドコミッティ構想を進めてまいります。

サービス事業への展開は、デザイン×デジタルを活用した新サービスの開始を目指します。デザインデジタルプラットフォームを構築し、「表示」ニーズをビジネスに結び付ける事業の立ち上げや、AIをサービスに活用し、「表示」のお客様ニーズを分析し、新しい価値を創造します。

ライフスタイル分野の拡大は、グループ各社の成長とグループシナジー強化を進めます。グループ会社間で成功事例や強み、課題を共有しあうグループマネジメントコミッティにより、各社の成長とグループシナジーを高めます。また、M&Aによるライフスタイル用品のジャンルの拡大も検討いたします。

海外事業の強化は、海外向けにマーケットインでの商品展開を進めます。お客様・商品・チャネル・生産の一気通貫モデルを実現し、海外売上比率の向上を目指します。また、海外販路を強化する戦略的M&Aも検討します。

 

当社グループの資源については、海外工場の活用として「ファイル+ライフスタイル用品の工場」へと進めてまいります。ファンとのコミュニケーション展開では、新価値を創造するカスタマーエンゲージメントの向上を目指し、強みのSNSとECを連動させ、お客様中心のブランディング・商品づくりを推進します。人的資本経営においては、会社と社員が共に成長し、挑戦し続ける組織を目指します。

上記の施策により、第11次中期経営計画の最終年度である2027年6月期における経営数値目標は、売上高520億円、経常利益28億円、経常利益率5.4%、自己資本当期純利益率(ROE)8.0%といたします。

 


(注)1.当連結会計年度より、従来の「インテリアライフスタイル事業」を「ライフスタイル用品事業」に名称変更いたしました。

2.経営管理区分を見直し、従来「文具事務用品事業」に含めていた当社の連結子会社であるウインセス㈱は、「ライフスタイル用品事業」に区分を変更しております。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループは、企業活動を通じて持続可能な社会の実現と当社グループの持続的な発展を目指しており、ESGに関するさまざまな施策や国際社会共通の目標であるSDGsの達成につながる取り組みを推進しております。また、気候変動課題への取り組みを進めるにあたり、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同を表明しております。以下、TCFDの枠組みに沿ってサステナビリティの情報を開示いたします。

なお、文中の将来に関する事項は、当該会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) ガバナンス

サステナビリティに対する取り組みについては、サステナビリティ担当役員を推進委員長とするサステナビリティ委員会において、各種方針や課題の解決に向けた詳細な目標の設定、それらを実践するための体制および具体的な施策を決定しております。サステナビリティ委員会における重要な検討・決定事項は、必要に応じて経営会議で事前に審議した上で、取締役会に付議・報告されており、経営における意思決定や取り組み状況に対する監督が適切に行われる体制を整備しております。

 

(2) 戦略

サステナビリティの向上を推進するにあたり、「キングジムグループ サステナビリティ基本方針」を定めております。基本方針に沿って、ESGの観点から当社の事業活動と社会課題の関連性が高い項目をマテリアリティ(重要課題)として特定し、これらに紐づく重要テーマを選定いたしました。特定したマテリアリティ(重要課題)をSDGsと関連付け、マテリアリティ(重要課題)の解決に向けた取り組みを通してSDGsの達成に貢献してまいります。

 

●マテリアリティ(重要課題)・SDGs対照表


 

<人的資本・多様性に関する取り組み>

当社グループは、性別、年齢、ワークスタイル、障がいの有無など多様な背景を持つ従業員に対応した労働環境を提供し、その従業員の発想を取り入れることが事業環境の変化への対応と会社の成長につながると考えております。

多様な人材がより自分らしく、より高いモチベーションを保ちながら働ける会社を目指し、変化に対応した制度の導入や従業員のサポートを行っております。

 

当社グループでは従業員ひとりひとりと会社が成長することを目指して、「人材育成・社内環境整備方針」を以下のとおり定めております。

 

 

「人材育成・社内環境整備方針」

キングジムグループは、従業員を会社の最も大切な資産かつ成長の原動力であると考え、新たな価値の創造に挑戦するイノベーション人材を育成します。また、従業員ひとりひとりが最大限に力を発揮し、自分らしく活躍するための社内環境を整備します。

 

■公正で公平な採用

・イノベーションの実現、会社の成長、ダイバーシティの観点から、公正で公平な選考・採用を行います。

■チャレンジ精神の奨励

・従業員の成長意欲を刺激し、自らイノベーションに挑戦することを奨励します。

・失敗を恐れず、果敢にチャレンジする姿勢を高く評価します。失敗から得た学びは成長の糧になります。

・従業員が切磋琢磨し、自らの成長と会社への貢献を実感することによりエンゲージメントを高めます。

■学習の機会と実践の場の提供

・自発的な学習を支援し、クリエイティブな発想力やグローバルなマインドを養成するための機会を提供します。

■適正な人事評価

・従業員を適正に評価し、成果に報いるための表彰、処遇決定を行います。

■健康的な職場環境

・従業員の安全の確保と、心身の健康の増進に取り組みます。

・風通しの良い健全な職場環境を整え、活発なコミュニケーションを促進します。

■ダイバーシティの推進

・年齢、性別、人種、国籍、障がいの有無などにかかわらず、多様な人材が活躍できる職場環境を整備し、職場の活性化をはかります。

■ワークライフバランスの向上

・仕事へのモチベーションを最大限に引き出し、従業員の発想を豊かにするため、ひとりひとりのライフスタイルを尊重した制度を導入し、従業員のワークライフバランスを実現します。

 

 

 

●具体的な取り組み

当社では「人材育成・社内環境設備方針」に基づき、以下の取り組みを行っております。

 

①人材育成

当社では従業員の能力開発を促進し、チャレンジ意欲を高めることで、生きがい・働きがいを感じ、自己実現が可能になると考えています。また、従業員個々の自己実現と成長が会社の業績向上にも不可欠なことから、人材育成を積極的に行っております。

チャレンジ精神の奨励を目的とした「キャリアチャレンジ制度」や「改善提案制度」のほか、グローバル人材を育成するための「海外派遣研修制度」などを設けております。その他にもeラーニングや外部集合研修、通信教育、社員自己啓発支援など学習の機会を幅広く提供しております。

 

②労働安全衛生

当社は従業員の安全を第一に考え、労働安全衛生の向上に努めております。安全衛生委員会を設置し、当社本社と松戸事業所において事業所総括安全衛生管理者が安全管理者、衛生管理者などを指揮し、従業員の安全と健康を守る取り組みを行っております。従業員の健康増進企画として「ヘルシーウォーキング」を年2回、産業医による講話を年1~2回実施しております。

 

 

③DE&Iの推進

当社は年齢・性別・人種・国籍・障がいの有無・LGBTQ+などの違いを受け入れ、多様な価値観やパーソナリティを尊重し、ひとりひとりが最大限に力を発揮できる会社を目指し、取り組んでおります。DE&Iの理解促進を目的に、「DE&I」「アンコンシャス・バイアス」に関するeラーニングを利用した教育を全社員向けに実施するとともに、階層別の研修を実施いたしました。

また従業員が柔軟な働き方を実現できるよう、時差勤務制度やテレワーク勤務制度、時間単位年休制度を導入しているほか、ノー残業デーや最終退社時刻の設定を行い、時間外労働の削減と有給休暇の取得促進に取り組んでおります。そのほかにも男性育児休業取得率の目標値を「2027年までに70%」と設定しており、育児休業のうち5日間を有給休暇とし、取得を促進しております。2025年6月期の男性育児休業取得率は120%(女性は100%)となっております。育児による短時間勤務制度は法定以上の「小学校3年生を修了まで」を対象としており、介護が事由の場合も利用が可能です。

(注)男性育児休業取得率は当該年度内の「取得した男性の人数÷配偶者が出産した男性の人数」で計算しております。

 

 

<気候変動への対応>

気候変動が及ぼす事業へのリスク・機会による中長期的な影響の把握、対応策の検討のため、売上高構成比の高い「文具事務用品事業」を対象に、IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change)やIEA(International Energy Agency)の報告書を参照し、シナリオ分析を実施いたしました。

 

●当社が考えるシナリオ

シナリオ

概要

2℃未満シナリオ

産業革命以前と比較し、2100年までの地球の平均気温上昇が2℃未満に抑えられている世界

・炭素税などのカーボンプライシングの導入、再生可能エネルギーへの転換など、

 各国の政策や法規制が強化される

・脱炭素社会への移行リスクが顕在化する

4℃シナリオ

産業革命以前と比較し、2100年までの地球の平均気温が4℃以上上昇している世界

・気候変動により異常気象の激甚化、慢性化が進み、原材料調達難や生産性の低下などの

 物理リスクが発生し、事業活動への負の影響が大きくなる

・新たな政策や法規制は導入されず、脱炭素社会への移行は進まずCO₂排出量は継続的に

 増加する

 

 

シナリオ分析の結果、政策・法規制の強化などによる「移行リスク」、異常気象の激甚化・慢性化による「物理リスク」ともに、事業・財務への影響が大きいことが判明すると同時に、事業拡大の「機会」も存在していることが明らかになりました。

それぞれの対応策を講じることで、気候変動リスクを低減し、成長のための機会を積極的に活用してまいります。

 

 

●気候変動における事業リスクと機会、事業/財務影響への評価とその対応策

区分

分類

要因

影響内容

事業/

財務影響

対応策

2℃

4℃

リスク

移行

リスク

政策・

法規制

プラスチック資源循環促進法への対応による製品原価上昇

・代替原材料への切替え

・資源循環のしくみの検討

炭素税などの導入による各種コスト増加

CO₂排出量低減目標策定、および低減のための施策実施

技術

環境配慮商品対応のための原材料などの

コスト増加

・調達先の見直し、原材料の見直し

・原材料メーカーとの関係強化

市場

ペーパーレス化、デジタル化によるファイルの売上減

ペーパーレス化、デジタル化に影響を受けない商品群の拡大

評判

脱プラスチック機運の高まりによるPP製品の売上減少

・再生プラスチック使用製品の開発検討

・代替商品の提案

気候変動対応の遅れによる消費者、投資家、サプライヤーからの評価低下、人材獲得機会の喪失

・気候変動対策の立案・公表、実施

・気候変動対応イニシアチブへの参加

物理

リスク

急性

生産・物流の遅延、寸断による販売機会喪失

・各拠点の災害リスクのモニタリング

・協力工場との関係強化

・生産・物流拠点の分散化

従業員被災による労働力の低下

慢性

化石燃料調達難による原材料コスト上昇

・原材料市場動向のモニタリング

・代替原材料の検討

・調達先の多様化

ヒートストレス、感染症増加による生産性

低下

・病気予防対策の実施

・気温変化に応じた作業環境整備

機会

製品/

サービス

環境配慮商品などの販売機会増

環境配慮商品売上高比率80%以上の持続

災害対策商品、衛生・健康用品などの

販売機会増

営業体制強化

市場

気候変動対策における新たな市場・事業での売上創出

・新規事業創出活動継続

・開発・営業体制強化

 

 

(3) リスク管理

当社グループが留意すべき気候変動をはじめとする環境課題を含むサステナビリティに係るリスクは、サステナビリティ委員会にて特定・評価し、対応策を決定しております。対応策は、各部門・グループ会社に展開し、サステナビリティ委員会がリスク状況のモニタリングを行っております。経営に重大な影響をおよぼす事象が発生するおそれが生じた場合には、直ちに代表取締役社長を委員長とするリスクマネジメント委員会に報告しております。報告を受け、リスクマネジメント委員会で対応を検討いたします。

 

(4) 指標と目標

「人的資本・多様性に関する取り組み」「気候変動への対応」を含む、サステナビリティに関する5つの指標と目標を設定し、それぞれの達成に向けて、活動に取り組んでおります。

なお、今後、サステナビリティの充実を図るために新たな指標と目標を検討・設定してまいります。

 

●サステナビリティに関する指標と目標

指標

目標

2025年6月期実績

環境配慮商品売上高比率

2030年6月期に80%達成

72%

CO₂排出量<Scope1+2>低減

2030年6月期に2021年6月期比32%低減

2021年6月期比31.4%低減

リサイクル・リユース率

回収した「テプラ」使用済みPROテープカートリッジのリサイクル・リユース率76%維持

76%

女性管理職比率

2030年6月期に30%達成

13.8%

有給休暇取得日数

2030年6月期に平均13.5日取得

12.6日

 

(注)1.CO₂排出量はScope1とScope2を対象にしております。

   2.有給休暇取得日数の実績集計期間は2024年6月16日~2025年6月15日となります。

    3.「CO₂排出量低減」以外の指標と目標は、当社のみが対象となっております。

 

 

<CO₂排出量実績>

対象:株式会社キングジムおよび国内グループ会社5社、海外グループ会社5社

●Scope1、Scope2(単位:t-CO₂

 

基準年度

2021年

6月期

 

2022年

6月期

 

2023年

6月期

 

2024年

6月期

 

2025年

6月期

 

2021年

6月期比

 

目標年度

2030年

6月期

Scope1

286

291

281

261

261

91.2%

 

250

Scope2

11,462

10,580

8,939

7,904

7,801

68.1%

 

7,735

合計

11,748

10,871

9,220

8,164

8,062

68.6%

 

7,985

 

 

●Scope3(単位:t-CO₂

2024年6月期より、連結での算定を始めました。

 

2024年6月期

2025年6月期

Scope3

91,865

94,345

 

 

3 【事業等のリスク】

当社は、当社グループの事業活動に影響を与える可能性のあるリスクを洗い出し、リスク項目ごとに所管部を定めて常時リスクを管理しております。各所管部は、担当するリスクの危険度をモニタリングし、経営上重要と思われる事象が発生するおそれが生じた場合は、直ちに担当役員を通じてリスクマネジメント委員会に報告するとともに、リスクマネジメント委員会が対応策を協議・承認しております。各所管部は、毎年1回、リスクの発生回避、対策、管理状況等を取締役会へ報告しております。また、リスク項目については、当社グループの事業活動を取り巻く環境の変化、影響度合いや発生頻度に応じて見直しております。

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。

なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 研究開発投資

当社グループの事業環境は、デジタル化の進展に伴うペーパーレス化により、主力のファイル市場が縮小傾向にあります。こうした環境変化に対応すべく、当社グループでは、多様化するワークスタイルやライフスタイルに適応した、新たな商品開発に積極的な投資を行っております。しかしながら、これらすべての開発投資が市場に受け入れられるとは限らず、その結果によっては当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

リスクへの対応として当社グループは、新たな市場の創出を目指した商品開発や、働く人々の安全を守る商品、さらにはサステナビリティの観点から環境に配慮した商品の開発に注力しております。これにより、「キングファイル」「テプラ」に続く第3の柱の構築を模索してまいります。

 

(2) 知的財産の保護

当社グループは、第三者の知的財産権を侵害することがないように、侵害回避のための体制を整えております。また、当社グループが販売する商品の形態が模倣等されないように、知的財産保護のための体制を整えております。しかしながら、第三者から知的財産権を侵害する旨の訴訟が提起されたり、第三者により商品の形態が模倣等されたりする可能性があります。このような事態は、当社グループの業績に影響を与えるおそれがあります。

リスクへの対応として当社グループは、商品化に際して、第三者の知的財産権の有無等を調査するとともに、第三者から訴訟を提起されたときは、社外の弁護士・弁理士と連携して対応しております。また、当社グループの知的財産権を侵害する疑いがある商品を発見した場合は、警告文を送る等、販売停止や製造中止を求める対応を行っております。

 

(3) 製造物責任

当社グループは、定められた品質管理基準に従って管理体制を確立し運用しております。しかしながら、予期せぬ欠陥が生じ顧客に損害が発生した場合には、顧客の信頼を喪失する可能性があり、また、製造物責任保険に加入しておりますが、保険で賠償額をカバーできない可能性もあるため、このような事態が生じた場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

リスクへの対応として当社グループは、品質管理基準を適宜アップデートし、その基準に従った管理体制の整備・構築と運用の遵守・徹底を図ってまいります。

 

(4) 原材料等の価格変動

当社グループの製品は、主な原材料として合成樹脂、紙、鋼板、半導体等を使用しており、これらは原油価格の市況や、世界的な需給バランスの乱れによる原料不足により、価格が大きく変動する場合があります。原油価格や原材料価格が予期せず急激に高騰し、原材料の安定的な調達が困難となった場合は、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

リスクへの対応として当社グループは、原材料の複数社購買、仕入先との連携、代替品対応、生産の効率化による原価低減等の施策を実施し、リスク低減に取り組んでおります。

 

 

(5) 海外情勢

当社グループの製品は、主に海外で生産を行っております。海外における経済情勢や政治情勢の変動、戦争やテロに起因する輸送障害、感染症拡大による操業停止等により部品の調達や製造が困難になり、当社グループ製品の安定的供給に支障をきたし、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

リスクへの対応として当社グループは、主要商品の調達先については特定の国や地域に集中せず分散化を図っており、また部品の市場動向等の情報を収集して安全在庫を確保しております。

また、当社グループはアジアを中心に世界各国へ営業活動を展開しております。予測できない急激な政治的・経済的変動、法規制の大幅な改定、テロや戦争の勃発、感染症による混乱は、海外における販売状況に影響を与える可能性があります。

リスクへの対応として当社グループは、海外事業担当部門および海外現地法人が連携を図ることによって、営業活動を展開している国のカントリーリスクを事前に調査、把握し対処するよう努めております。

さらに、当社グループは各国の税法に準拠し適正な納税を行っておりますが、税務申告における税務当局との見解の相違等により、追加での税負担が生じ、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

リスクへの対応として当社グループは、特に移転価格税制等の国際税務リスクに対しては、外部専門家の助言を受け、移転価格文書の整備等を行っております。

 

(6) 為替変動

当社グループは、主に海外で生産を行っており、製品および原材料等の輸出入において、一部外貨建取引を行っております。また、外貨建債権債務を保有しているため、大幅な為替変動が生じた場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

リスクへの対応として当社グループは、為替予約取引等を行っております。

 

(7) 棚卸資産

当社グループでは、需要予測に基づいた生産計画等を行い、適切な在庫管理に努めております。しかしながら、市場環境の変化や販売見込みの相違により、販売実績が当初の予測を大きく下回る結果となる場合もあります。市場環境の変化や商品の陳腐化等による価値の大幅な減少や、収益性低下により、正味売却価額が取得原価よりも下落した場合、棚卸資産の評価損を計上することとなり、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

リスクへの対応として当社グループは、外部環境や営業情報などを適宜収集し需要予測の精度を向上させるとともに、在庫水準を随時監視し生産調整を図っております。

 

(8) M&A

当社グループは、M&Aを事業拡大の一つの手段と考え、当社グループの成長戦略に十分貢献することができる案件、当社の既存ビジネスとのシナジー効果が期待できる案件を中心に鋭意検討しております。M&Aにあたっては、対象企業の主力商品および事業の競争力、強みと弱み、財務内容、契約関係、特許等の訴訟関係等について事前調査を行い、決定しております。しかしながら、事前調査で把握できなかった偶発債務や未認識債務等が存在した場合や、市場環境の変化等により事業の展開が計画通りに進まなかった場合には、対象企業の投資価値の減損処理を行う等、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

リスクへの対応として当社グループは、M&Aの検討時においては、詳細な事前調査の徹底で調査漏れを防ぎ、経営統合後の事業展開や損益計画について討議・検証を実施し決定します。また、シナジー効果を早期に発揮するために、社内に部門横断の委員会を設置し、経営統合を円滑に進めております。

 

(9) 情報セキュリティ

当社グループは、外部からのサイバー攻撃や不正アクセス、ソフトウエアや情報機器の欠陥および内部からの不正な情報持ち出しによって、情報の流出、改ざん等が発生するおそれがあります。このような事象が発生した場合、事業活動に支障をきたし、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

リスクへの対応として当社グループは、重要な情報の紛失、個人情報・機密情報漏洩等の防止のため、アンチウイルスソフトの導入および社員教育・啓蒙活動を実施しております。また、内部からの不正情報持ち出し対策として外部ストレージの利用についてルールを定めて運用しております。

 

(10) 自然災害・感染症

当社グループは、想定範囲を超えた自然災害等により事業活動の中断や設備の損傷が発生した場合には、商品供給が停止し、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。また、これらの復旧にも多大の費用を要する可能性があります。

リスクへの対応として当社グループは、「キングジムグループ危機管理規程」「危機管理細則」および「緊急災害時行動マニュアル」等を定めております。危機が発生し、またはそのおそれが差し迫ったとの情報を把握した場合は、当該規程等に定める危機管理体制に基づいて、直ちに対策を講じます。また、感染症対策として、感染症対応マニュアルを制定し、テレワークや時差勤務制度を整備しております。

 

(11)人材確保

当社グループは、従業員を会社の最も大切な資産、かつ成長の原動力であると考えております。しかしながら、有能な人材の確保をめぐる競争は激化しており、労働人口が減少する中、必要な人材の獲得・確保ができない可能性があります。また、急激な円安、突発的な景気の変動などによっても、採用数を抑えなければならなくなり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

リスクへの対応策として、個人の知識や能力を最大限に引き出すための教育機会を提供するとともに、適正な評価と成果に応じた報酬、テレワーク等の柔軟な働き方を可能にする勤務体系の提供等、DE&Iの推進に取り組んでおります。また、エンゲージメントサーベイを実施し、組織課題を可視化することで、その改善に取り組んでまいります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

① 財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度における我が国経済は、インバウンド需要の増加や賃上げの一方で、物価上昇や為替変動、米国の新政権発足に伴う関税の引き上げ方針を発端とする世界経済の悪化が懸念され、先行きが依然として不透明な状況にあります。当社がおかれている環境は、国内市場における生産年齢人口の減少やフレキシブルな労働環境、業務の効率化といった働き方の変化に大きな影響を受けております。

このような状況のもと、「社会の変化の波をチャンスと捉え新たな成長へ」をテーマに掲げ、第11次中期経営計画(2025年6月期から2027年6月期)の目標達成に向けた取り組みを実行し、既存ビジネスを強化しながら、「サービス事業への展開」「ライフスタイル分野の拡大」「海外事業の強化」の3つの骨太の方針を遂行してまいりました。

当連結会計年度の業績につきましては、ライフスタイル用品事業の伸長により、売上高は 396億3,950万円(前連結会計年度比 0.2%増)となりました。利益面では、売上総利益率の改善(前連結会計年度比 1.3ポイント増)、販売費及び一般管理費率の改善(前連結会計年度比 0.7ポイント減)により、営業利益5億3,771万円(前連結会計年度は2億4,188万円の損失)、経常利益8億3,624万円(前連結会計年度比 541.9%増)となりました。また、特別利益として政策保有株式の売却に伴う投資有価証券売却益、特別損失としてラチュナ事業に係るのれんの減損損失等があり、親会社株主に帰属する当期純利益は4億2,494万円(前連結会計年度は3億1,806万円の損失)となりました。

 

セグメント別の経営成績は、次のとおりであります。

当連結会計年度より、従来の「インテリアライフスタイル事業」を「ライフスタイル用品事業」に名称変更いたしました。これに伴い、経営管理区分を見直し、従来「文具事務用品事業」に含めていた当社の連結子会社であるウインセス㈱は、「ライフスタイル用品事業」に区分を変更しております。

前連結会計年度との比較は、変更後の区分に基づいております。

 

・文具事務用品事業 

「テプラ」や防災用品等の売上増があったものの、ステーショナリーの売上減により、売上高は 251億7,809万円(前連結会計年度比 0.6%減)となりました。利益面では、売上総利益率の改善や、物流コスト削減プロジェクトなどによる販管費の減少により、営業利益は3億8,266万円(前連結会計年度は4億6,758万円の損失)となりました。

各領域の主な内容は、以下のとおりであります。

ラベルライター「テプラ」では、「テプラ」PROシリーズで環境に配慮した再生材料を本体に初めて使用し、ユニバーサルデザインフォントを搭載した「テプラ」PRO SR-R560を発売いたしました。また、「テプラ」の働く現場での活用術をまとめた「#おねがいテプラ」の動画を公開し、テープの用途拡大を目的に販売パートナーと連携して販売促進を行いました。さらに、導入を検討中の法人に対して、実機をお試しいただける2週間のデモ機無料レンタルサービスを2025年6月より提供開始するとともに、日頃より「テプラ」を活用されている企業に取材して作成した「テプラ活用導入事例集」により新たな需要の掘り起こしを図りました。

生活環境用品では、世の中の防災・防犯に対する意識の高まりを受けて、書棚や引き出しに収納可能で個人で管理しやすい「災害対策セット」や、防災対策としても使用できる防犯ブザー付きポータブルライト「ポタラ」を幅広い売り場で展開し、防災・防犯対策用品の売上が大きく伸長いたしました。また、地球温暖化によって職場における熱中症が年々増加していることが深刻な問題となっていることを受けて、排気が熱くなく、持ち運びに便利なコンパクトサイズのスポットクーラー「排気が熱くないポータブルスポットクーラー」を発売いたしました。労働環境を改善する新製品を通して、新しい市場の開拓を目指します。

ステーショナリーでは、「やわらか らせんリング」でリーフの差し替えや追加ができるリングノート「ラセーノ」を発売いたしました。また、一般的なA4ファイルの半分の横幅でスリムに使えるファイルシリーズ「HOSSO(ホッソ)」を発売いたしました。近年、コスパ・タイパに続いて注目されているスぺパ(スペースパフォーマンス)を重視する方に向けて展開しております。

2025年6月には、常日頃キングジムを応援してくださっているファンの皆様と直接お会いするイベント「キングジムファンミーティング2025」を開催いたしました。商品の開発秘話やキングジムクイズ、ワークショップなどを通じて当社についてより深く知っていただくとともに、当社商品についてのご意見を伺うことができました。また、同月にはファンとのコミュニケーション強化ならびに新たな顧客層との接点創出、ブランド価値の向上を目的として、文具女子博に出店いたしました。

EC事業では、自社ECサイトやECモールに出店している複数のEC店舗を運営しております。自社ECサイトでは、セールの実施や新商品の予約受注に加え、防災用品の需要増やSNSで話題となった商品の販売増などにより売上が伸長しました。「Latuna(ラチュナ)」では、まな板やダイニングマットなどの新規商材が好調に推移した一方で、各モールにおける価格競争により既存商材の売上が低下しました。

海外事業では、世界的に経済が先行き不透明な状況で推移する中、当社の海外向け輸出は増加したものの、一部の海外拠点における売上が苦戦している状況にあります。第11次中期経営計画では、海外事業戦略の最重要地域として、中国、およびベトナムを中心としたASEAN諸国を挙げております。中国では、働く20代~40代女性をメインターゲットとした中国オリジナルブランド「可麗塔(クリータ)」シリーズやステーショナリーブランド「HITOTOKI」の販売が好調に推移しています。また、中国のファッショントレンドを取り入れた「PREPPY STYLE」シリーズは、流行のスタイルを提案していることが話題を集めております。ベトナムでは、BtoB流通チャネルの開拓が進展しており、「テプラ」の売上や、自社工場であるKINGJIM(VIETNAM)Co.,Ltd.で生産された事務用ファイルが大きく伸長しています。アメリカでは、日本でも多くの方にご利用いただいている、テキスト入力に特化したデジタルメモ「ポメラ」の現地向けモデル「DM250US」が順調に販売を伸ばしています。韓国では、新規販売パートナーとの取引開始により、「HITOTOKI」を始め当社製品の認知が拡大しております。

(注)「可麗塔(クリータ)」には中国語簡体字を含んでいるため、日本語常用漢字で代用しております。

 

・ライフスタイル用品事業

ライフオンプロダクツ㈱と㈱アスカ商会の売上が好調に推移し、㈱ラドンナの売上が前連結会計年度を大きく上回ったこともあり、売上高は 144億6,140万円(前連結会計年度比 1.7%増)となりました。利益面では、円安や原材料価格高騰などによる売上総利益率の低下、および㈱ぼん家具の販管費が大きく増加したため、営業利益は1億3,137万円(前連結会計年度比 32.3%減)となりました。

各子会社の主な内容は、以下のとおりであります。

㈱ぼん家具は、上期はAmazonでの売上が牽引し、おままごとキッチンや注力カテゴリである照明が売上に貢献したことで好調に推移しましたが、上昇するコストを販売価格に転嫁したことや、市場環境の変化により、主力商材の一部が苦戦したことなどで売上が落ち込み、減収となりました。一方で、グループシナジーを活かしてPT.KING JIM INDONESIAで生産された木製マルチラックなどの販売を開始し、好調に推移しております。利益面についても、廃番商品の廉価販売による利益率の低下や在庫保管料・広告費の拡大により減益となりました。

ライフオンプロダクツ㈱は、3月に夏物商材の販売を開始し順調に推移しています。特に「お弁当用クールファン」は梅雨時期の需要にマッチした商材で、TV・雑誌の露出が急増したことも好調要因のひとつでした。利益面では、依然として円安の影響はあるものの、積極的な新製品投入により売上も大きく増加したことで増益となりました。

㈱ラドンナは、上期は主力のキッチン雑貨でコロナ特需の反動減を引きずり苦戦しました。その後、販路開拓が進んだ電子レンジ用調理器のヒットが牽引し、キッチン雑貨も復調傾向となり、主力ブランドである「Toffy」の新コレクション導入や期末に向け初回導入が進んだハンディファンでの加算により、売上はV字回復しています。一方で、売上不振時の影響が残り、金型償却費の増加および製品評価減の計上により、増益ながら回復途上の状況です。

㈱アスカ商会は、引き続きオフィス装飾関連を中心にグリーン類が関東や近畿で好調でした。また、観葉類も各地域で大幅に前年を上回り推移しています。商品別では、高品質でディテールにこだわった新しい取り組みの「premium collection」が売上加算に貢献しました。増収となったものの、利益面では円安の影響や販管費の増加により減益となりました。

ウインセス㈱は、エレクトロニクスを始め自動車産業などの牽引により、売上は前年を上回りました。主要市場である電子部品業界向け手袋は、数量、金額ともに前年を僅かに上回り、非製造業を中心に新規販売ルートの開拓も実施しました。全体として増収増益となり、今後は食品・医薬品業界向けなどクリーンルーム関連業界の深堀りを目指してまいります。

 

また、財政状態の状況については、次のとおりであります。

当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末と比較して4億8,813万円増加し、355億1,316万円となりました。これは主に、のれん、投資有価証券が減少した一方、現金及び預金が増加したことによるものであります。

負債は、前連結会計年度末と比較して7億3,718万円増加し、114億6,087万円となりました。これは主に、長期借入金が減少した一方で、短期借入金が増加したことによるものであります。

純資産合計は、前連結会計年度末と比較して2億4,905万円減少し、240億5,228万円となりました。これは主に、為替換算調整勘定、退職給付に係る調整累計額が減少したことによるものであります。

 

  ② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末と比較して7億998万円増加し、63億9,945万円(前連結会計年度比 12.5%増)となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果得られた資金は、前連結会計年度に比べ4億2,178万円増加し、14億6,898万円となりました。これは主に、法人税等の支払額3億6,688万円等があった一方、税金等調整前当期純利益8億2,056万円や減価償却費7億4,488万円等があったことによるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果使用した資金は、前連結会計年度に比べ3億8,130万円増加し、8億2,595万円となりました。これは主に、投資有価証券の売却による収入1億4,695万円があった一方、無形固定資産の取得による支出4億8,687万円等があったことによるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果得られた資金は、1億7,573万円(前連結会計年度は 10億7,172万円の資金使用)となりました。これは主に、長期借入金の返済による支出4億3,780万円や配当金の支払額3億9,394万円等があった一方、短期借入金の純増額 10億1,000万円等があったことによるものであります。

 

③ 生産、受注および販売の状況

イ.生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。なお、文具事務用品のみ生産活動を行っております。

セグメントの名称

生産高(千円)

前年同期比(%)

文具事務用品事業

電子製品

14,771,789

101.9

生活環境用品

1,501,145

133.8

ステーショナリー

8,348,481

102.4

合計

24,621,416

103.6

 

(注)1.金額は標準出荷価格で表示しております。

    2.当連結会計年度より、経営管理区分を見直し、従来の「電子および生活環境用品」を「電子製品」と「生活

      環境用品」に変更いたしました。

      前連結会計年度との比較は、変更後の区分に基づいております。

 

ロ.受注実績

当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(千円)

前年同期比(%)

受注残高(千円)

前年同期比(%)

文具事務用品事業
 ステーショナリー

1,823,583

88.7

7,096

50.6

 

(注) 当社および連結子会社においては、大部分は見込生産であり、特注品のみ受注生産であります。

 

ハ.販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(千円)

前年同期比(%)

文具事務用品事業

電子製品

13,836,560

100.7

生活環境用品

2,921,035

102.5

ステーショナリー

8,420,497

96.2

文具事務用品事業計

25,178,093

99.4

ライフスタイル用品事業

14,461,407

101.7

合計

39,639,500

100.2

 

(注)1.当連結会計年度より、従来の「インテリアライフスタイル事業」を「ライフスタイル用品事業」に名称変更いたしました。これに伴い、経営管理区分を見直し、従来「文具事務用品事業」に含めていた当社の連結子会社であるウインセス㈱は、「ライフスタイル用品事業」に区分を変更しております。

      また、経営管理区分を見直し、従来の「電子および生活環境用品」を「電子製品」と「生活環境用品」に変

           更いたしました。

           前連結会計年度との比較は、変更後の区分に基づいております。

   2.主な相手先別の販売実績および当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

販売高(千円)

割合(%)

販売高(千円)

割合(%)

アスクル㈱

5,256,335

13.3

5,026,272

12.7

エコール流通グループ㈱

4,361,157

11.0

4,344,802

11.0

 

 

 (2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

  ① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容

 イ.売上高

「第2[事業の状況] 4[経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析]   (1) 経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」をご参照ください。

 ロ.売上原価、販売費及び一般管理費

当連結会計年度の売上原価につきましては、売上原価率は 62.5%となり、前連結会計年度の売上原価率 63.8%より 1.3ポイントの低下となりました。

販売費及び一般管理費につきましては、物流コスト削減プロジェクトなどによる販管費の減少により、売上高に対する割合は 36.1%となり、前連結会計年度の 36.8%より 0.7ポイントの低下となりました。

 ハ.営業利益

当連結会計年度につきましては、売上総利益率の改善(前連結会計年度比 1.3ポイント増)、販売費及び一般管理費率の改善(前連結会計年度比 0.7ポイント減)により、営業利益5億3,771万円(前連結会計年度は2億4,188万円の損失)となりました。

 ニ.親会社株主に帰属する当期純利益

当連結会計年度につきましては、特別利益として政策保有株式の売却に伴う投資有価証券売却益1億308万円、特別損失としてラチュナ事業に係るのれんの減損損失1億1,605万円等があり、親会社株主に帰属する当期純利益4億2,494万円(前連結会計年度は3億1,806万円の損失)となりました。

 

  ② 経営成績に重要な影響を与える要因について

    「第2[事業の状況] 3[事業等のリスク]」をご参照ください。

 

 

  ③ キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容ならびに資本の財源および資金の流動性に係る情報

 イ.キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容

「第2[事業の状況] 4[経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析] (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。

 ロ.資本の財源および資金の流動性に係る情報

当社グループの主な資金需要は、原材料調達や製品の製造費用、商品仕入費用、販売費及び一般管理費等の運転資金、企業価値向上を目的とした各種設備投資資金、また、事業拡大の一つの手段として実施しているM&Aのための資金等であります。これらは、自己資金、借入金により調達しております。

 

  ④ 重要な会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり、見積りが必要な事項につきましては、合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っております。

詳細につきましては、「第5[経理の状況] 1[連結財務諸表等] (1)連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」をご参照ください。

連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積りのうち、特に重要なものは以下のとおりであります。

 

(棚卸資産)

「第5[経理の状況] 1[連結財務諸表等] (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」をご参照ください。

 

(固定資産の減損)

当社グループは、原則として継続的に収支の把握を行っている管理会計上の区分を考慮し資産のグルーピングを行い、遊休資産については個別に資産のグルーピングを行っております。固定資産のうち減損の兆候がある資産または資産グループについて、この検討は一定の仮定に基づき見積もった割引前将来キャッシュ・フロー等を基に行っております。対象となる資産または資産グループの帳簿価額に減損が生じていると判断した場合、その帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上します。

減損の兆候の把握、減損損失の認識および測定にあたっては、将来キャッシュ・フロー等の見積りやその前提となる仮定を用いており、今後、経営環境等の変化により前提条件や仮定に変動が生じた場合には、固定資産の減損処理に影響を及ぼす可能性があります。

 

(繰延税金資産の回収可能性)

繰延税金資産については、将来の利益計画に基づく課税所得を合理的に見積り、回収可能性を判断した上で計上しております。市場環境の変化等により、課税所得の見積額が減少した場合は、繰延税金資産が減額され、税金費用が計上される可能性があります。

 

    ⑤ 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは、2027年6月期を最終年度とする第11次中期経営計画において、「社会の変化の波をチャンスと捉え新たな成長へ」をテーマに掲げ、既存ビジネスを強化しながら、「サービス事業への展開」「ライフスタイル分野の拡大」「海外事業の強化」の3つの骨太の方針に基づき、売上高520億円、経常利益28億円、経常利益率5.4%、自己資本当期純利益率(ROE)8.0%を目標としております。

初年度である当連結会計年度においては、売上高396億円、経常利益8億円、経常利益率2.1%、自己資本当期純利益率(ROE) 1.8%となりました。

 なお、経営者の問題認識、今後の方針については、「第2[事業の状況] 1[経営方針、経営環境及び対処すべき課題等] (4)会社の中長期的な経営戦略と対処すべき課題」をご参照ください。

 

5 【重要な契約等】

  該当事項はありません。

 

 

6 【研究開発活動】

当連結会計年度の研究開発活動につきましては、トレンドを取り入れたシリーズ商品や機能性・デザイン性に優れた商品のラインアップ強化、新たな需要獲得のため従来手掛けていなかったジャンルの研究開発を行い、当連結会計年度は研究開発活動に対して総額 528,260千円を投入しました。

当連結会計年度中の主な新製品開発の成果は、次のとおりであります。

(1) 文具事務用品事業

① 電子製品

「テプラ」では、シリーズで初めて再生材料を使用し、ユニバーサルデザインフォントを搭載した「テプラ」 PRO SR-R560を開発いたしました。

デジタル文具では、防犯ブザー付きポータブルライト「ポタラ」を開発いたしました。ライトと防犯ブザーの二つの機能でフェーズフリーアイテムとして幅広いシーンで使用できます。また、ブギーボードシリーズ最大の画面サイズの「ブギーボード」 BB-19を開発いたしました。

 

② 生活環境用品

扉の反対側に人がいることを知らせる、人感センサー付きライト「扉につけるお知らせライト」を、さらに小さく使いやすいようリニューアルいたしました。さらに、暑熱対策として、「排気が熱くないポータブルスポットクーラー」を開発いたしました。

防災用品では、地震発生時に棚から収納物が落下することを防ぐ「収納棚につける落下防止ネット」や、主力商品である「災害対策セット」の新たなシリーズとして「差替え式 災害対策セット」を加え、ラインアップの拡大に努めてまいりました。

 

③ ステーショナリー

柔らかいらせんリングを採用し、リーフの差し替えが簡単にできる新感覚のリングノート「ラセーノ」や、既存文具を実用的にミニチュア化し人気を博しているキングミニシリーズの第3弾を開発いたしました。

スタイル文具ブランド「HITOTOKI(ヒトトキ)」では、手帳のように使える「HITOTOKI NOTE」、小さく持てるマスキングテープ「KITTA」の新シリーズを開発し、ラインアップ拡大による新たなファン層の獲得に努めてまいりました。

 

 文具事務用品事業に係る研究開発費は 444,019千円であります。

 

(2) ライフスタイル用品事業

㈱ぼん家具では、主力商品の収納商品に加えて、照明用品、ペット用品、トラベル用品の研究開発に取り組みました。トラベル用品では、子供が乗って移動できるキッズキャリーを開発し、実用新案登録をいたしました。ライフオンプロダクツ㈱では、高単価家電のオーブンレンジと食器洗い乾燥機を開発いたしました。また、自社の得意商材であるハンディファンを応用し、現在のニーズに沿った時短家電として「お弁当用クールファン」を開発いたしました。㈱ラドンナでは、好調な電子レンジ用調理器へのアイテム追加や、キッチン家電の新コレクション投入に取り組みました。加えて、需要の高まりを受け、本格的な市場再参入を狙ったハンディファンのアイテム拡充を行っています。㈱アスカ商会では、屋外で使用可能なグリーン類として、グリーンマットを開発いたしました。屋外自然環境による劣化などの変質を抑制する素材を使用した対候性に優れた用品で用途の拡大を図ります。ウインセス㈱では、自動編み機を1台追加し、シルクやコットンなど天然繊維製手袋の生産を開始しました。また、サービス業界向けに黒色のマイクロファイバー手袋を新たに開発しました。

 

 ライフスタイル用品事業に係る研究開発費は 84,240千円であります。