第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1) 会社の経営の基本方針

当社は、間仕切の専門メーカーとして、ビルの高層化・建物の工期短縮という建設業界の要請に即して、受注から設計、製造、販売、施工、サービスまでの「自社一貫システム」をもって、様々な新製品を社会に送り出し高い評価を得てまいりました。今後においても当社の専門分野である間仕切関連製品を中心に、新製品の開発、サービスの向上を通じて、着実な業容の拡大と安定した収益を継続して上げることにより、取引先・従業員・株主との共存共栄を図って社会への一層の貢献を行うことを経営指針として活動してまいります。

 

(2) 中長期的な会社の経営戦略及び目標とする経営指標

当社は事業領域における経営環境の変化及び過年度の業績達成状況等を踏まえたうえで、次なる成長を見据えた戦略をもとに、2024年3月期から2028年3月期までの5ヶ年を対象とする中期経営計画「NEXT VISION 2028」を2023年4月27日に公表しております。

中期経営計画「NEXT VISION 2028」では、「Value Up from Creativity」をテーマに、以下の基本方針のもと、施策を実行してまいります。

① 基本方針

(既存間仕切事業の成長)

オフィス市場への更なる進出

市場規模の大きい首都圏を中心に、顧客領域を拡大・深耕

新たな営業拠点の展開

更なる全国展開に向けた空白エリアへの新規営業拠点を増設

製品用途の拡大

当社の主力製品である移動間仕切製品のブラッシュアップ

ブランディングの強化

ショールームの新規オープンや、当社ウェブサイト及びカタログの刷新

 

 

(新規製品の創出)

製品企画人材の採用・育成

採用促進に向けた人事部門の強化と社内環境の整備

製品技術力の向上

製品企画部門における体制強化と業務プロセス改革の推進

デザイン性の向上

共同推進するパートナー企業との更なる連携強化

マーケティングの強化

顧客ニーズや市場調査結果を製品企画に反映する仕組みの構築

 

 

(生産・物流オペレーションの高度化)

生産ラインの生産性改善

更なる自動化に向けた設備導入と工程レイアウトの見直し

協力会社とのリレーション強化

施工人材を確保するための協力会社との連携強化

生産拠点の環境対策

コスト削減を含めたグリーントランスフォーメーション推進

物流網の再構築

2024年問題対策と物流増を見込んだ物流倉庫やルート見直し

 

 

② 目標とする経営指標

中期経営計画の最終年度である2028年3月期の定量目標は以下のとおりであります。

売上高年平均成長率

4%~6%※1

売上高営業利益率

8%~10%

ROE

8%以上

 

※1 2023年3月期を基準とし、2028年3月期までの年平均成長率

 

 

③ 投資計画

2028年3月期に目指す将来像に向けて、中期経営計画期間中において、累計150億円以上の積極的な投資を計画しております。

 

④ 資本政策

株主の皆様へ安定的かつ継続的な利益還元を行うことが最も重要であると考えており、資本効率の重要性を認識するとともに、財務体質の健全性を維持した上で、純資産配当率(DOE)6%を目安とする配当を実施すること、また、持続的な成長の実現等により配当水準の安定的向上を目指すことを株主還元方針として掲げております。

 

⑤ サステナビリティ推進

社会課題の解決と当社が持続的に成長するために特定した重要課題に取り組み、ESG経営を推進してまいります。

環境(E)

環境問題及び気候変動問題への対応

社会(S)

快適で働きやすく多様な人材が活躍できる職場環境の整備

ガバナンス(G)

ガバナンスとリスク管理体制の更なる強化

 

 

(3) 経営環境及び会社の対処すべき課題

今後の経済見通しにつきましては、物価上昇や通商政策などアメリカの政策動向、金融資本市場の変動等による影響が懸念される一方で、雇用の改善や賃上げによる所得環境の改善を背景に、緩やかな景気回復が続くことが期待されます。

当社事業を取り巻く市場環境としては、首都圏を中心とした都市再開発事業が進行する中、新しい働き方に対応したオフィス環境への投資は引き続き堅調に推移することが見込まれます。一方、中長期的には国内少子高齢化と生産年齢人口の減少に伴う労働力不足の深刻化、原材料やエネルギー価格の高騰、急速なデジタル化の進展など、社会環境が大きく変化する中、変化に柔軟に対応していく必要性が高まっております。

このような状況にあって当社は、中期経営計画「NEXT VISION 2028」の3年目として、3つの基本方針「既存間仕切事業の成長」「新規製品の創出」「生産・物流オペレーションの高度化」に基づく施策を着実に実行してまいります。当社の強みを活かした既存事業の深耕・高度化と、新しい空間価値を創造する新規製品の開発、最新設備の導入やDXの推進等により業績の拡大に努め、持続的な企業価値向上を目指してまいります。社会課題の解決と当社が持続的に成長するための重要課題への取り組みを通じて、ESG経営を推進するとともに、持続可能な社会の構築に貢献してまいります。

また、当社は「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について」を2025年4月28日に公表いたしました。株主資本コストを上回るROEの達成が必要不可欠であるとの認識のもと、中期経営計画の定量目標を上方修正し、企業価値向上に向けて施策を推進してまいります。具体的には、資本収益性に基づく投資判断を徹底するとともに、戦略検討チームを設立し、M&Aを含む成長戦略の立案と実行を行います。これらにより売上高成長率と利益率の向上を目指す一方、株主還元を強化し、純資産の増加を抑制することで資本収益性の向上を図ってまいります。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

1.サステナビリティ全般

当社は「我が社の基本理念」に基づき、間仕切の専門メーカーとしてお客様の声やニーズを製品・サービスに反映し、より安心で快適な空間を提供することで社会に貢献するという基本姿勢を創業当初より受け継いできました。一方で、気候変動や人権といった社会課題の深刻化により、当社の事業領域における経営環境は創業当初と比べ大きく変わりつつあります。これを受け当社では、持続的な成長のロードマップとして2024年3月期から2028年3月期までの5ヶ年を対象とする中期経営計画「NEXT VISION 2028」を策定しました。計画達成に向けESG重要課題(マテリアリティ)をはじめとする様々な施策に取り組むことで、更なる企業価値の向上と社会課題の解決に努めてまいります。

 

(1) ガバナンス

当社では、代表取締役社長をサステナビリティ課題に関する経営判断の最終責任者とするサステナビリティ推進体制を構築しております。

サステナビリティに係る当社の在り方を協議し、サステナビリティ経営を促進するため、サステナビリティ委員会(年4回開催)を設置しております。委員長は取締役常務執行役員管理本部長、委員は代表取締役社長及び各業務部門の責任者で構成されています。

サステナビリティ委員会は以下の内容の協議等を行い、取締役会へ報告します。

① サステナビリティに関する重要課題の特定

② ①で特定した重要課題のリスク及び機会の識別

③ ②で識別されたリスク及び機会に対応するための戦略・方針・目標の策定、成果の確認及び見直し

取締役会はサステナビリティ全般に関するリスク及び機会の監督に対する責任と権限を有しております。サステナビリティ委員会で協議・決定された内容の報告を受け、当社のサステナビリティのリスク及び機会への対応方針および実行計画等についての審議・監督を行っております。

 


 

(2) 戦略

当社は、企業価値向上と社会課題の解決のため、重点的に取り組む事項をマテリアリティとして掲げています。また、中期経営計画「NEXT VISION 2028」の推進力を高める観点から、2024年度から各テーマに関する目標値の定量化を進めています。

 

 


 

(3) リスク管理

当社において、全社的なリスク管理は、コンプライアンス・リスク管理委員会で行っておりますが、サステナビリティに係るリスク及び機会の識別、優先的に対応すべきリスク及び機会の絞り込みについては、サステナビリティ委員会の中でより詳細な検討を行っております。重要と識別されたリスク及び機会は、取締役会へ報告され、協議を経て戦略、計画に反映されます。対応状況はサステナビリティ委員会においてモニタリングされ、その内容は取締役会へ報告されます。

 

2.気候変動への対応(TCFDに基づく情報開示)

(1) ガバナンス

気候変動に関するリスク及び機会に係る課題については「1.サステナビリティ全般」と同様に取締役会の監督の下、サステナビリティ委員会にて抽出・議論する体制を構築しております。

 

(2) 戦略

気候変動に関する重要な物理的リスク・移行リスクと機会を認識し、対応方針を定めております。

シナリオ分析については当社の全ての製品について移行リスクを算出しております。物理的リスクに関しては気候変動に起因する大規模水害が発生した場合の損害と売上減少の影響を分析しております。

リスク項目

主なリスク・機会

リスク

機会

影響度

移行

リスク

政策・

法規制

リスク

炭素税・炭素価格

・GHG排出に炭素税がかかる。

 

環境配慮商品

・環境配慮製品の需要動向が売上高や営業利益に影響を与える。

技術

リスク

低炭素技術への

移行コスト(設備)

・設備投資の遅れにより生産コストが増加する。

・低炭素技術への移行の先行コストは多額を要する。

 

市場

リスク

生産原価増大

・調達コストが増加する。

 

物理的

リスク

急性

リスク

異常気象の激甚化

・豪雨や台風により生産拠点や営業拠点が被災することにより、建物・機械・什器備品・製品材料に被害が発生するとともに、売上の低下が起きる。

 

 

 

 

シナリオ分析

移行リスク算定フロー図


 

移行リスク

・全ての製品に対し、下記の項目における脱炭素社会への移行に向けた影響を分析しました。

①炭素税 ②環境配慮製品 ③エネルギーコスト ④調達コスト

・上記の項目を考慮し移行の影響を分析した結果、政策・法規制のリスク、市場リスクに関する影響度が大きくなる見込みとなりました。

物理的リスク

・IPCCの4℃シナリオ及び2℃シナリオを参考に、気候変動に起因する100年に1度の大規模水害が発生した場合の損害と売上減少の影響を分析しました。

・2050年までを対象期間とし、想定浸水深に基づく被害推計を分析した結果、影響度は大きくなる見込みとなりました。

 

 

(3) リスク管理

気候変動に関するリスク及び機会の識別・評価についてはサステナビリティ委員会を中心に管理を行い、必要に応じて取締役会にて審議します。アセスメント対象となるリスク及び機会の認識については、今後活用策を検討していきます。

 

(4) 指標と目標

当社では気候変動への対応として、2025年度末CO²排出量25.2%削減(2019年度比)、2050年カーボンニュートラルを目標としております。その他の気候変動の評価指標に関しては今後検討していきます。

 

※Scope1,2の実績は当社ウェブサイトにて開示しております。https://www.komatsuwall.co.jp/sustainability/environment/index.html

 

 

3.人的資本に関する取り組み

当社は、性別・国籍・雇用形態に関わらず多様な価値観をもった人材を登用し、従業員一人ひとりが個々人の能力を最大限に発揮し活躍することが、持続的な成長と中長期的な企業価値向上において極めて重要であると考えています。特に、製造業・建設業の業界特性上、職場のマイノリティになりやすい女性従業員に対しては、生き生きと働ける環境整備の他、トレーニング機会の提供など、従来以上の活躍支援が必要です。このような考えの下、女性管理職者数の目標を定め、目標達成に向け人材育成方針及び社内環境整備方針を制定しております。

 

(1) 戦略

人材育成方針及び環境整備方針

1.積極的な女性採用を推進します。

2.女性従業員の育成を進め、管理職登用を推進します。

3.仕事と家庭の両立を支援し、働きやすい職場環境を構築します。

また、多様な背景をもとに生み出される新しい視点や自由な発想への期待から、中途採用者の活躍を推進するべく、リファラル採用を含めた採用活動に取り組んでいます。

 

(2) 指標と目標

当社では、上記「(1) 戦略」において記載した、人材の多様性の確保を含む人材育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。

・新卒女性採用比率

目標:30%程度

実績:29.8%(2025年3月末日時点)

・女性管理職者数

目標:2030年3月末までに2021年3月末比3倍以上(33名以上)

実績:36名(2025年3月末日時点)

・中途採用管理職者の割合

目標:40%以上(現状維持)

実績:54.6%(2025年3月末日時点)

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。なお、当該リスクが顕在化する可能性の程度やその期間、当該リスクが明らかになった場合に当社の業績へ与える影響につきましては、合理的に見通しを立てることが困難であることから記載しておりません。当社は、コンプライアンス体制の確立、浸透、定着及びリスク管理体制の整備と適切なリスク対応を図るためにコンプライアンス・リスク管理委員会を設置しており、リスクの未然防止を図っております。

なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

 

(1) 国内情勢及び経済動向について

当社は建物に使用される間仕切の製造及び販売、施工を行っております。当社製品を用途別に分類すると、当事業年度においては、売上高の約23%が官公庁向け、約77%が民間向けとなっております。官公庁向けについては、公共投資の動向は日本国政府及び地方自治体の政策によって決定されるものであり、安定的に推移するものとは限りません。したがって、民間設備投資が減少する場合及び公共投資が削減される場合、当社の業績は民間設備投資動向及び公共投資動向の影響を受ける可能性があります。

 

(2) 原材料等の価格について

当社は、継続的かつ積極的な生産性向上に努め、費用の低減を意識した体制を取っております。原材料等の仕入価格上昇に伴う費用増額、自然災害に起因する原材料等の高騰などに備え、仕入先の分散、重要資材の政策的在庫の確保等により対策を講じておりますが、価格上昇分を販売価格に転嫁できない場合は、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 施工能力について

当社は首都圏をはじめとした都市再開発等の需要に対応するため、人材採用・育成に努めております。特に施工現場における人員増加への対処及び更なる施工能力向上に向け、新卒採用枠を設け、毎年一定数の人員確保を行い、スキル向上を見込んだ社内教育等を徹底してまいりました。しかしながら、想定以上の現場数であった際に、現場数に見合う人員数の確保ができず少人数での現場対応が余儀なくされる場合は、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 自然災害等について

当社は、地震・集中豪雨等の天災や火災等の災害により社会的混乱等が発生した場合、事業活動の停止や機会損失、復旧のための費用負担により、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し当社では、このような大規模災害等により、業務停止が長期にわたり継続する場合を想定し、早期の事業回復を実現するためのBCP(事業継続計画)を策定しており、人命と安全確保を最優先としつつ、顧客サービス維持を図り、企業の社会的責任を果たしてまいります。

 

(5) 製品・サービスについて

当社は、製品の設計、製造、施工にあたり、品質マネジメントシステムの継続的改善を通じて、顧客の要求品質を満たした製品・サービスの提供に努めておりますが、製品・サービスに重大な欠陥・瑕疵がある場合は、相応の費用負担が生じるため、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6) 内部統制について

当社は、内部統制システム構築に関する基本方針に基づき、内部統制に関する財務報告の信頼性や業務の有効性と効率性を確保するための体制を整備・運用しておりますが、内部統制が有効に機能していないと評価される事態が生じた場合には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(7) 情報セキュリティについて

当社は、情報セキュリティ基本方針や情報セキュリティに関する各種内部規定に基づき、情報セキュリティ管理体制を整備・運用しておりますが、情報漏洩等の事態が発生した場合には、当社の信用低下、顧客等に対する損害賠償責任が発生する恐れがあります。また、サイバー攻撃やコンピュータウイルスの感染等により重大な情報システム障害が発生した場合には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8) 気候変動について

当社は、かけがえのない地球環境を守るため、「企業活動と環境保全の調和」を経営の重要課題のひとつとしており、企業活動における環境負荷の低減活動に取り組んでおります。また、気候変動によるリスク及び機会が当社の業績に与える影響について分析を行っております。詳細につきましては、「第2 事業の状況 サステナビリティに関する考え方及び取組 2.気候変動への対応(TCFDに基づく情報開示)」に記載のとおりであります。

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

  なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1) 経営成績

当事業年度のわが国経済は、欧米における高い金利水準が継続する中、海外景気の下振れがわが国景気を下押しするリスクとなっているものの、雇用や所得環境が改善する中で景気は緩やかに回復しております。

このような状況にあって当社は、中期経営計画「NEXT VISION 2028」に基づき、3つの基本方針「既存間仕切事業の成長」「新規製品の創出」「生産・物流オペレーションの高度化」に取り組んでまいりました。

「既存間仕切事業の成長」につきましては、オフィス需要の更なる開拓を目的に、東京ショールームの増床リニューアル、大阪ショールームの移転増床リニューアルを行いました。また、当社が技術に強みをもつ移動間仕切のオフィス分野での用途開発を目指し、中心一点吊りのダブルガラススライディングウォール「PIVO」を開発、トイレブースでは表面材とエッジにオレフィンシートを採用し、シンプルかつ洗練されたデザインの「haremo」を開発いたしました。

「新規製品の創出」につきましては、高い意匠性と遮音性を実現したスチールパーティション「STEERA」を開発いたしました。大判タイル、天然木化粧板、ファブリックパネルなど、豊富な表面仕上げ材をラインナップしており、エグゼクティブな空間を演出いたします。仕上げ材も含めてすべての部材が解体・移設が可能で、環境に配慮した製品となっております。

「生産・物流オペレーションの高度化」につきましては、可動間仕切の生産能力の増強と出荷能力の強化等を目的とした加賀工場2号棟(仮称)の建設計画を進めてまいりました。2025年1月30日に公表いたしましたとおり、建設開始時期と操業開始時期の見直しを行いましたが、2025年5月の建設開始に向けて順調に進行しております。

経営成績につきましては、オフィスの底堅い移転需要により主力の可動間仕切並びに固定間仕切が堅調に推移し、売上高は446億16百万円(前事業年度比2.4%増)となりました。受注高は468億33百万円(前事業年度比7.2%増)、受注残高は188億97百万円(前事業年度比13.3%増)となり、その他を除く全ての品目で増加しております。

利益面につきましては、売上総利益率が35.3%(前事業年度比1.4ポイント改善)となりましたが、ショールームの増床に伴う賃借料の増加や物流費の増加などにより販売費および一般管理費が増加したため、営業利益36億35百万円(前事業年度比0.1%減)、経常利益37億56百万円(前事業年度比0.6%増)、当期純利益26億50百万円(前事業年度比4.5%減)となりました。

なお、当事業年度の品目別の売上高、受注高及び受注残高の状況は以下のとおりです。

 

 

① 生産実績

当事業年度における品目別生産実績は次のとおりであります。

 

品目

生産高(百万円)

前事業年度比(%)

可動間仕切

19,655

107.3

固定間仕切

9,398

102.3

トイレブース

7,753

96.5

移動間仕切

6,012

100.8

ロー間仕切

609

95.1

その他

1,182

83.9

合計

44,611

102.4

 

(注) 1  金額は販売価格で表示しています。

2  その他の主なものは、既存間仕切の解体・移設組立であります。

 

② 受注実績

当事業年度における品目別受注実績は次のとおりであります。

 

品目

受注高

受注残高

金額(百万円)

前事業年度比(%)

金額(百万円)

前事業年度比(%)

可動間仕切

20,891

115.0

5,283

130.3

固定間仕切

9,989

100.9

5,615

111.8

トイレブース

8,059

100.2

3,444

109.8

移動間仕切

6,120

108.8

4,164

102.7

ロー間仕切

628

100.9

85

127.1

その他

1,145

86.8

303

89.3

合計

46,833

107.2

18,897

113.3

 

(注) 1  金額は販売価格で表示しています。

2  その他の主なものは、既存間仕切の解体・移設組立であります。

 

③ 販売実績

当事業年度における品目別販売実績は次のとおりであります。

 

品目

販売高(百万円)

前事業年度比(%)

可動間仕切

19,661

107.3

固定間仕切

9,398

102.3

トイレブース

7,753

96.5

移動間仕切

6,012

100.8

ロー間仕切

609

95.1

その他

1,181

83.8

合計

44,616

102.4

 

(注) 1  その他の主なものは、既存間仕切の解体・移設組立であります。

2  前事業年度及び当事業年度のいずれにおいても、相手先別販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10以上の相手先はありません。

 

(2) 財政状態

当事業年度末における資産総額は467億56百万円となり、前事業年度末より6億99百万円の減少となりました。これは主に、現金及び預金9億25百万円、受取手形6億69百万円等の減少と、契約資産1億48百万円等の増加による流動資産の減少12億17百万円及び有形固定資産4億93百万円等の増加による固定資産の増加5億17百万円によるものであります。

負債総額は89億65百万円となり、前事業年度末より4億22百万円の減少となりました。これは主に未払費用1億8百万円等の増加と、流動負債「その他」に含まれる未払消費税等7億32百万円等の減少による流動負債の減少5億67百万円及び固定負債の増加1億45百万円によるものであります。

また、純資産につきましては、377億90百万円となり、前事業年度末より2億77百万円の減少となりました。これは主に、利益剰余金5億84百万円の減少と、自己株式の取得と消却等による自己株式の減少(純資産の増加)3億18百万円等によるものであります。

 

(3) キャッシュ・フローの状況

当事業年度におけるキャッシュ・フローにつきましては、内部留保の充実を図りつつ、運転資金、設備投資、株主還元等へ資金を充当しております。

その結果、当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は136億49百万円となり、前事業年度末より1億28百万円増加いたしました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

①  営業活動によるキャッシュ・フロー

営業活動により増加した資金は33億27百万円(前事業年度は42億73百万円の増加)となりました。これは主に、税引前当期純利益38億2百万円の計上、減価償却費11億60百万円、売上債権の減少額3億83百万円等による増加と、法人税等の支払額10億97百万円、「その他」に含まれる未払消費税等の減少額7億32百万円等による減少によるものであります。

 

②  投資活動によるキャッシュ・フロー

投資活動により減少した資金は4億69百万円(前事業年度は11億71百万円の減少)となりました。これは主に、有形及び無形固定資産の取得による支出15億14百万円等による減少と、定期預金の預入及び払戻による純収入10億円等による増加によるものであります。

 

③  財務活動によるキャッシュ・フロー

財務活動により減少した資金は27億29百万円(前事業年度は10億56百万円の減少)となりました。これは主に、自己株式の取得による支出17億17百万円、配当金の支払額12億29百万円等による減少と、自己株式の売却による収入2億32百万円による増加によるものであります。

 

(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成にあたっては、当事業年度における財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与えるような見積り、予測を必要としております。当社は、過去の実績値や状況を踏まえ合理的と判断される前提に基づき、継続的に見積り、予測を行っております。そのため実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

 当社の財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 重要な会計上の見積り」に記載しております。

 

(5) 資本の財源及び資金の流動性

当社の運転資金需要のうち、主なものは製造原価、工事原価、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。また、設備資金需要は、各工場の既存機械装置の維持更新及び本社建屋の維持更新等の設備投資によるものであります。運転資金及び設備資金の資金調達につきましては、主に営業活動によるキャッシュ・フロー及び自己資金で対応しております。

 

 

(6) 当事業年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

当社は、事業効率向上と株主価値の最大化を図るため資本効率重視の経営を目指しており、中期経営計画「NEXT VISION 2028」においては売上高年平均成長率、売上高営業利益率、ROEの3つを経営指標として定めており、その定量目標と当事業年度における実績については、以下のとおりであります。

経営指標

2025年3月期実績

2028年3月期目標

売上高年平均成長率

 8.7%※1

 4%~6%※1

売上高営業利益率

8.1%

8%~10%

ROE

7.0%

8%以上

 

※1 2023年3月期を基準とした年平均成長率

 

5 【重要な契約等】

該当事項はありません。

 

 

6 【研究開発活動】

当社においては、お客様へ快適な空間を提供するため、時流に即した、間仕切の新しい可能性を研究しながら開発を行っております。

当事業年度における研究開発活動といたしましては、下記の通り新製品6製品を発売いたしました。

 

(1) みんなが集まるコミュニケーションスポット「Agora(アゴラ)」

Agoraは、最大5人で使用できる天井付きミーティングブースです。皆で向き合って話せるよう、ブースの形は特徴的な六角形となっております。ダブルガラスパーティションをベースとした置き型のブースで、周囲に気兼ねなく話しやすい遮音性を有しています。また、天井の半面がガラスとなっており、開放感があることで会話も弾みやすくなっています。

 

(2) やさしさと美しさが調和するトイレブース「haremo(ハレモ)」

表面仕上げに、環境にやさしいオレフィンシートを採用したトイレブースです。オレフィンシートは、製造時に排出される二酸化炭素が塩ビシートよりも少なく、焼却時に有害物質を発生しにくい特性も持つため、環境に配慮した化粧シートと言えます。また、表面材とエッジは同色柄となっており、一体感のあるデザインとなっております。やさしさと美しさが調和したトイレブースで、訪れた方の心が晴れやかになるような、心地よいひとときを提供いたします。

 

(3) 新時代のスティールパーティション「STEERA(スティーラ)」

STEERAは、遮音性と意匠性を兼ね備えたハイエンドなダブルガラスパーティションです。パネル面には、大自然から着想を得たタイルや天然木化粧板などの仕上げ材を取付でき、こだわりの空間を演出します。また、仕上げ材も含め全ての部材が解体・移設可能で、建築壁と比べて環境にも配慮した製品となっております。

 

(4) 空間と可能性を開く「hirako(ヒラコ)」

hirakoは、学校向けを主とした大開口対応の多連引戸です。通常は両端の扉を出入口として使用し、必要に応じ多連引戸を端に寄せることで大開口を確保できます。扉を開放し、空間を繋げることで、スペースを広く活用したグループ学習などが可能となります。

 

(5) 美しくまわる、大胆につながる「PIVO(ピボ)」

中心一点吊りのダブルガラススライディングウォールです。自由な角度や位置にセット可能で、全て仕切ってクローズに、少し回転させてセミオープン、端に寄せてフルオープンなど、使う人に合わせた様々なレイアウトを、美しくシンプルな意匠で叶えます。

 

(6) 変化を後押し、ワンタッチ式スライディングウォール「セルフィナ」

パネルを押すだけでセットできる機構を備えたスライディングウォールです。丸落し固定が必要なスライディングウォールと比べて操作性が向上し、より気軽に空間を仕切ることができます。表面は豊富な塗装カラーの鋼板と、汎用性の高いMDF(中質繊維板)のタイプから選べ、空間に合わせてご使用いただけます。

 

今後もお客様に信頼いただけるよう、高品質且つ独創的な製品や環境に配慮した製品の開発に日々取り組んでまいります。

なお、当事業年度の研究開発費の金額は、343百万円であります。