第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営方針

当社グループは、2018年7月に迎えた創立70周年を機に、第二創業としての強い攻めの気持ちをもって、中期経営計画策定、M&A、生産設備やIT基盤への投資、労働環境の改善など、成長ステージに向けての施策を講じてきました。そして、この施策の一環として、当社グループの理念たるビジョン、ミッション等を次のように定め共有いたしました。

・ビジョン 「今までにない、いろどり豊かなシーンを広げる。」

・ミッション「これが欲しかった!を、アイデアで次々に実現する。」

・スローガン「その手があった!の一手先。」

この理念のもと、これまでのモノづくりの実績を踏まえた上で、持てるネットワークと資源の全体最適を図りながら、新たな成長フェーズへと実績を積み上げてまいります。

 

(2) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは、グループとしての全体最適を図る中でのトップラインの売上高増収を伴った収益力向上を重点課題としており、また財務とのバランスを注視しております。したがって、経常利益及び自己資本の充実を重要な要素と捉え、経営指標としては、ROE8.0%以上を安定的に達成することを目標にしてまいります。

 

(3) 経営環境、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

今後の見通しにつきましては、国内において賃金と物価の好循環が見通せる環境から一転し、米国政権の関税政策による影響が景気を押し下げる懸念材料として強く意識され、地政学リスクやサプライチェーンの再構築等の不安定要素の増加と相まって、経営を取り巻く環境は不確実性が高まると見込んでおります。国内では実質賃金の低迷と物価上昇により個人消費の回復は力強さを欠いており、原材料やエネルギー価格高騰に伴う生産コスト増加の適正な価格転嫁や、慢性的な人手不足への対応など厳しい経営環境が続くものと予想されます。

このような状況の中、当社グループは外部環境の変化を前提とした強固な経営基盤の再構築を引き続き進めながら、事業領域の拡大を着実に前進させるべく、以下の課題に取り組んでまいります。

①顧客価値の追求

持続的な成長と中長期的な企業価値向上を実現するため、モノづくりとサービスを通じた顧客価値を追求し、当社グループのスローガン「その手があった!の一手先。」の姿を具現化する。

②健康経営の推進

健康は個々人の幸せの礎であり、社員とその家族の健康は会社が成長し社会的責務を果たすための源である。健康を経営の最重要課題の一つととらえ、社員とその家族の心身の健康を保持・増進する健康経営に取り組む。

③“美・食・住”の3領域の拡大

SDGsや脱炭素社会の実現を含む様々な社会的な課題を“美・食・住”の視点から探求し、その解決に向け、当社グループをあげて新しい事業、製品及びサービスをデザインする。

④ブランドの強化

社外向けコーポレートブランディング、当社グループ内のインナーブランディング及び採用ブランディングを通じて、魅力あるモノづくり集団としての当社グループの一層の認知度向上を図る。

⑤意識行動の変革

当社グループの理念“エムケーフィロソフィー”を全社員が共有し、人的資本の充実に資する社内組織・制度を改革し、意識行動の変革を通じて、研究開発型の完成品メーカーとして社会に貢献する企業グループの進化を図る。

⑥経営インフラの強化

当社グループを支える人材、財務、IT、生産ラインといった経営インフラを、グループ全体の最適化を踏まえながら整備し強化する。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は以下のとおりです。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

 当社グループは、企画、設計・開発、製造から販売及びアフターサービスまで一貫した体制を有する研究開発型

メーカーであり、モノづくりとサービス提供の高度な融合を目指しております。事業活動の根幹には、ESG経営の実践、人権と多様性の尊重、健康経営の推進を位置づけ、ステークホルダーから永続的に支持されるよう社会の様々な諸課題の解決に貢献していきます。

 

(1)ガバナンス

 当社グループは、気候変動及び人的資本を重要なサステナビリティ項目と認識しております。体制と役割につきましては、気候変動に関するリスクを社長室、人的資本に関するリスクを管理本部人事部が所管し、重要リスクの特定、評価、及び個別施策の立案を行います。それらの結果は、執行役員会に報告、審議され、毎月開催される取締役会にて管理、監督を行っております。

 

(2)リスク管理

 当社グループは、リスク管理規程に則り、サステナビリティに関するリスクについて、社長室と管理本部人事部が、企業価値の向上及び経営目標の達成を阻害するリスクと機会の抽出、識別を行い、重要リスクを特定、評価します。その結果は、執行役員会に報告、審議され、取締役会が当社グループの活動として意思決定します。

 

(3)気候変動

① 戦略

 当社グループは、企業の社会的責任と地球環境の保全の重要性を認識して、省エネルギー活動を推進し、使用エネルギーの削減、省エネ設備への更新、CO2フリー電気の導入、産業廃棄物の低減への取組み、及び環境に配慮した自社製品の開発を行っていきます。

 

気候変動に係るリスク・機会及び対応策

区分

大分類

小分類

リスク・機会(想定される事象)

対応策

移行に
伴う
影響

政策・
規制

炭素税
の導入

リスク

・炭素税、排出量取引制度の導入による事業
 コストの増加及び材料調達コストの増加

・2030年までに国内事業所にCO2フ

 リー電気を導入
・省エネルギー活動の推進
・使用エネルギーの削減
・省エネ設備への更新
・産業廃棄物の削減

・製品に関するGHG排出量開示の要求

・排出量算出に対応する体制及び仕組

 み整備

機会

・CO2削減等環境に配慮した製品の発売に
 よる売上増加

・環境に配慮した省エネ製品の開発

GHG排出
規制への
対応

リスク

・サプライヤーの炭素価格転嫁による材料
 調達コスト増加

・製品VEの推進

機会

・CO2削減等環境に配慮した製品の発売に
 よる売上増加

・環境に配慮した省エネ製品の開発

技術

再エネ・
省エネ政策

リスク

・再生可能エネルギー価格上昇による事業コ
 スト及び省エネ設備への更新によるコスト
 の増加

・省エネルギー活動の推進
・代替エネルギーへの転換
・製品VEの推進

・化石燃料使用製品の電気化への設計変更

・電動製品の開発、製品化

・化石燃料使用量減少による関連製品の
 売上減少

・新製品、代替製品の開発

機会

・再生可能エネルギーの導入によるCO2
 削減等環境への貢献

・2030年までに国内事業所にCO2フ

 リー電気を導入
・環境に配慮した省エネ製品の開発

市場

原材料・部品のコスト上昇

リスク

・原材料の価格上昇による材料調達費用の
 増加

・製品VEの推進

顧客行動
の変化

リスク

・低消費エネルギー製品への急激な需要の
 シフトに対応できなかった場合の売上減少

・環境に配慮した省エネ製品の開発

機会

・再生可能エネルギーにより動作する応用
 製品を含む低消費エネルギー製品の開発
 製品化による事業機会の拡大

・再生可能エネルギー使用製品、環境

 に配慮した省エネ製品の開発

評判

低炭素技術
の進展

リスク

・GHG排出目標の未達成によるステーク
 ホルダーからの評価低下

・目標対応の実行に対するPDCAサイク

 ルの適正実行

機会

・再生可能エネルギーにより動作する応用
 製品を含む低消費エネルギー製品の開発

 製品化による事業機会の拡大

・再生可能エネルギー使用製品、環境

 に配慮した省エネ製品の開発

物理的
な影響

急性

異常気象
の激甚化

リスク

・災害による生産拠点、販売拠点の被災や
 サプライチェーンの機能停止による生産、
 販売の停止

・生産拠点、販売拠点のBCP強化

慢性

製品動作
環境の変化

リスク

・平均気温上昇等環境変化による製品品質に
 関わる問題が懸念

・製品仕様の改良

機会

・平均気温上昇等環境変化による製品の耐
 熱対策、防水性能向上の必要性への対応

・製品仕様の改良

移行に伴う影響によるリスク:気候変動の緩和を目的とした低炭素社会への移行に伴うリスク

物理的な影響によるリスク:気候変動による災害等により顕在化するリスク

 

 

② 指標及び目標

 当社は、経済産業省の省エネ法定期報告に基づく「事業者クラス分け評価制度(SABC評価制度)」において、省エネが優良な事業者とされるSクラス(最高ランク)に認定されました。2015年から10年連続の認定になります。

 この取組みをさらに進めていくため、当社グループの温室効果ガス(GHG)排出量削減活動の取組みにおける測定可能な目標設定を以下のとおりとしております。

 

 <GHG排出量削減目標>

 当社グループの国内事業拠点におけるスコープ1、スコープ2のGHG排出量を、2030年度までに2021年度比40%削減する。

 

・スコープ1:燃料の使用に伴う直接排出

・スコープ2:購入した電力などの使用に伴う間接排出

 

 

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(4)人的資本

① 戦略

 当社は、お客様から信頼される創造力と開発力を有したプロフェッショナル人材こそが最大の経営資源であり、多様な人材が互いの個性を尊重し、自分の個性を伸ばしてこそ、新たなる価値を創造できると考えております。

 以下の方針のもと、心理的安全性を高めた風通しの良い健全な環境の整備と継続的な人材育成を実施してまいります。

1) 人材の育成

(ⅰ)人材育成方針

1.エムケー精工は、「エムケーフィロソフィー」の企業理念のもと、当社と社会の発展に貢献できる人材を長期的な視点で育成します。

2.「モノづくりとサービスのプロフェッショナル」を目指す社員像と位置づけ、以下の能力向上を重視した様々な研修・教育を実施していきます。

・基礎力

・業務を推進する力

・チームを維持・強化する力

3.一人ひとりの大事にしたい価値観を尊重し、「知のめぐり」による社員の成長が当社の成長の原動力となるように、研修・教育を通じて支援していきます。

 

(ⅱ)人材育成・研修制度

人材育成は業務を通じた育成(On the Job Training:OJT)を基礎に研修体系を整備し、階層別研修や職種別研修など専門分野の教育のほか、キャリア開発など全社員が対象となる研修を実施しております。また、製造業の基礎知識28科目を学ぶ時間(飛躍塾:基礎知識コース)を設けるなど、入社1年目からプロ

フェッショナル人材の育成に取り組んでおります。

担当業務に必要なスキルを一覧表にまとめたスキルマップを2023年度から導入し、継続的なスキル習得のための見える化を図っております。

研修をポイント化する研修マイレージ制度や通信教育制度、助成金制度、社内勉強会、社員の目標設定などにより自己啓発を促し、社員が自主的に学べる環境を整備しております。また、業務上有益かつ重要な資格を保有する社員には、「プロフェッショナル手当」を毎月支給しております。

 

研修体系図

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2) 社内環境整備

(ⅰ)社内環境整備方針

エムケー精工では新たな価値を絶えず創造していくために、社員一人ひとりの健康を大切にし、ワークライフバランスを踏まえた柔軟な働き方ができる各種制度をボトムアップ、トップダウンの両面からつくり進めていくことで、多様な人材が互いの個性を尊重しあえる職場環境を目指します。

(ⅱ)健康経営の取組

代表取締役社長を最高責任者とし、担当役員と推進部門が中心となり、関係者と連携して体制・制度の構築・改善を進め、健康診断・保健指導、各種の支援・啓発活動などを通じて、社員と会社が一丸となって健康で安心して生き生きと働くことができる職場を目指しております。

健康経営で解決したい経営上の課題、期待する効果、具体的な取組みのつながりを見える化した健康経営戦略マップを作成し、「禁煙化」、「生活習慣病などの疾病、高リスク者に対する重症化予防」、「こころの健康づくり」を重点テーマとして取り組んでおります。

こうした取組みが評価され、当社は「健康経営優良法人2025(大規模法人部門 ホワイト500)」に認定されました。2020年から6年連続の認定となります。

(ⅲ)ワークライフバランス

一人ひとりのワークライフバランスを踏まえた柔軟な働き方ができる環境整備を目指し、各種施策を

トップダウンとボトムアップの両面から展開しております。PDCAサイクルを回しながらより良い制度づくりを進めており、具体的には、結婚、出産や育児・介護・治療(不妊治療含む)と仕事の両立、配偶者の転勤などを踏まえ、法定以上の各種休暇(ライフサポート休暇、アニバーサリー休暇、ワンオペレーション支援休暇など)、手当・応援金、時短勤務や在宅勤務(雇用型/非雇用型)などを整備しております。

 

② 指標及び目標

 人材育成方針及び社内環境整備方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は、次のとおりであります。

 なお、当社グループでは、上記「①戦略」において記載した、人材育成方針及び社内環境整備方針について、当社において関連する指標のデータ管理とともに、主要な事業を営む会社において独自の制度を導入するなど、積極的な取組みが行われているものの、連結グループにおけるすべての会社では行われていないため、連結グ

ループにおける記載が困難であります。このため、次の指標に関する目標及び実績は、提出会社のものを記載しております。

戦略

指標

実績

目標

2022年度

2023年度

2024年度

人材育成

研修受講率

81%

148%

191

2025年度100%以上

一人当たり教育投資額

11,401円

15,098円

25,949

2027年度25,000

健康経営の取組

健康経営優良法人

(大規模法人部門)認定

ホワイト500認定

ホワイト500認定

ホワイト500認定

ホワイト500認定

継続取得

喫煙率(注)3

28.4%

27.1%

(未確定)

2025年度20以下

精密検査受診率

54.8%

65.5%

(未確定)

2025年度70以上

ワークライフ

バランス

女性管理職比率

2.5%

2.7%

2.8

2028年度末10
プラチナえるぼし

認定取得

女性育児休業復帰率

100%

100%

100

2025年度100

男性育児休業取得率

61.1%

100%

100

2025年度100

プラチナくるみんプラス認定

2025年2月

26日認定

2024年度認定取得

目標達成

年次有給休暇

一人当たり平均取得日数

11.6日

11.8日

13.2

2025年度12日以上

(注)1.当社は、法令に基づき主要な連結子会社における「管理職に占める女性労働者の割合」、「男性労働者の育児休業取得率」及び「労働者の男女の賃金の差異」を公表しております。

2.主要な連結子会社における「管理職に占める女性労働者の割合」、「男性労働者の育児休業取得率」及び「労働者の男女の賃金の差異」は、「第1 企業の概況 5 従業員の状況」に記載しております。

3.喫煙率は、35歳以上について集計しております。

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 なお、本文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 経済情勢及び景気動向について

 当社グループは、売上のほとんどが民需を主体とした国内であり、直接的には国内景気の動向による業績への影響は避けられません。“美・食・住”を主要な事業領域と位置付け、当社グループの関係する業界を多岐にするなどリスク分散を図り、経営の安定化に努めております。

(2) 原材料価格及び為替レート等の変動

 原油価格の高騰及び為替レートが円安方向へ変動した場合、原材料価格、その他燃料費、運送費など市況品等への影響は必至で、当社グループ事業の主要原材料及び輸入製品の仕入価格値上げと経費増という形で収益圧迫の懸念があります。また、地政学的リスクや調達先の事業継続リスクを認識し、サプライチェーン及び物流網の混乱を想定しておく必要があります。

 調達先の見直しや生産合理化をはじめ間接部門の生産性向上を含む全部門を挙げての徹底したコスト削減及び製品価格への一部転嫁(値上げ)などによりカバーしていく考えであります。

(3) 金利動向

 当社グループは、金融機関からの借入金にて資金調達を行っており、市場金利が上昇した場合の業績への影響の可能性があります。資産の効率的運用と収益力の向上を一段と図り、借入金などの有利子負債の圧縮を一層進めていく所存であります。

(4) 競合について

 当社グループは、いずれの市場においても厳しい競合環境にあり、価格低減による業績への影響の可能性があります。オンリーワンなど高付加価値の差別化商品開発、全国に配置したメンテナンス体制を通じた顧客との関係強化、及び生産合理化をはじめとする各部門の生産性向上によるコスト競争力のアップが課題であると認識しております。

(5) 新商品開発力について

 当社グループは開発型企業を志向しておりますので、新製品の開発は将来の成長の絶対条件であると考えております。今後とも、優秀な人材の採用を強化し顧客ニーズを的確に捉え、コア技術を生かした魅力ある商品開発を継続できるものと考えておりますが、開発、新製品誕生のプロセスは複雑かつ不確実なものであり、ユーザー、市場が真に求める魅力ある新製品を送り出せなかった場合、成長性と収益性を低下させる可能性があります。

(6) 自然災害等の発生

 大規模な台風、地震等の自然災害あるいは火災などの事故によって、当社グループの製造拠点等の設備が壊滅的な被害を被った場合、操業に支障が生じ、業績に悪影響を与える可能性があります。この場合、製造拠点等の修復又は代替のために巨額の費用を要することになる可能性があります。また、新型コロナウイルス感染症のような大規模な感染症拡大による社会的混乱が発生した場合、サプライチェーンの停滞や市場低迷などにより、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(7) サイバーセキュリティについて

 サイバー攻撃は年々高度化、巧妙化しており、サイバー攻撃によるシステム障害が発生した場合、業績への影響の可能性があります。また、情報漏えいや情報の不適切利用により損害を与えた場合、社会やステークホルダーから法的責任を問われる可能性もあります。さらに、IoT、AI、ビッグデータなどを活用した新たな商品・サービスの開発や新しいIT社会環境への適応が求められています。情報管理態勢強化のため継続的なシステム投資と社員の情報リテラシー教育が重要であると認識しております。

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度におけるわが国経済は、雇用・所得環境の改善や企業の堅調な設備投資により、穏やかながら回復基調で推移しました。一方で、米国の経済政策の不確実性や中国経済の先行き懸念、世界的な資源価格の高騰による継続的な物価上昇、地政学リスクの高まりなどによる海外景気の下振れなど、先行き不透明な状況が続いております。

当社グループが関連する業界におきましては、オート機器及び情報機器の分野では、設備投資が底堅く推移したものの、生活機器の分野では、物価上昇の長期化に伴う生活防衛意識の高まりから消費マインドの改善に足踏みが見られ、厳しい経営環境が継続しております。

このような状況の中、当社グループは外部環境の変化を前提とした強固な経営基盤の再構築と次の成長フェーズに向けた構造改革を加速させ、グループ全体の最適化とシナジー強化、収益力の向上に努めてまいりました。また、社会における多様なニーズやその変化に応えるべく、高付加価値商品の研究開発に注力するとともにメンテナンス体制の強化を図り、モノづくりとサービスの高度化に取り組んでおります。そして、SDGsや脱炭素社会の実現を含む様々な課題を“美・食・住”の視点から探求し、新しい事業、製品及びサービスのデザインを通じて、持続可能な社会の実現と中長期的な企業価値の向上を目指しております。

この結果、当連結会計年度の売上高は282億6千8百万円(前期比0.7%減)、経常利益は21億1千1百万円(前期比6.3%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は13億3千4百万円(前期比87.0%増)となりました。

 

セグメント別の経営成績は、次のとおりであります。

(モビリティ&サービス事業)

主力の門型洗車機は、SS(サービスステーション)向けでは、政府助成事業の補助金制度により売上げが大幅に増加した前年度に比べ、今年度は同助成事業の対象外となり低調に推移しました。カーディーラー向けでは、整備作業の省力化需要取込により売上げが伸長しました。また、オイル機器はローリーの売上げが伸び悩んだものの、エアコンフレッシャーが堅調に推移しました。情報機器は主にLED表示機を製造・販売しています。工事用保安機器は新製品投入が奏功し、売上げを伸ばしました。大型ビジョンに関しては大手顧客からの受注が増え売上げを伸ばしました。またSS向け表示機は政府補助金効果もあり売上げが堅調に推移し、情報機器全体の売上げは前年度を大きく上回りました。

この結果、モビリティ&サービス事業の売上高は、188億8千1百万円(前期比3.5%減)となりました。

(ライフ&サポート事業)

低温貯蔵庫は前年並みに推移し、保冷米びつ、精米機などの米関連商品は、米不足を契機とする米保管需要の高まりなどにより好調でした。また、音響関連商品は、特定顧客向け製品の受注増加により、売上げが伸長しまし

た。一方、もちつき機をはじめとする家電商品やレンジ台などの収納商品は、需要の回復が見られず、売上げが前年度実績を下回りました。法人向け事業では、撹拌機は官公需案件の受注が増加し、食品加工機は海外市場での好調を維持し、それぞれ売上げが前年度を上回りました。

この結果、ライフ&サポート事業の売上高は、62億3千5百万円(前期比0.9%増)となりました。

(住設機器事業)

住設機器としては、主に木・アルミ複合断熱建具、鋼製防火扉、反射板式消音装置等を製造・販売しています。建築資材価格の高騰による入札不調や建築計画の見直しなどがありましたが、前年度の受注物件が売上げに貢献したことに加え、木・アルミ複合断熱建具については、脱炭素社会の実現に向けた木材利用の加速が追い風となり、首都圏を中心に大型公共物件が好調を維持し売上げが伸長しました。消音装置についても、都市部の再開発事業、データセンター、ホテル、学校関係での需要が増加し計画を上回りました。

この結果、住設機器事業の売上高は、28億8千2百万円(前期比15.7%増)となりました。

 

(その他の事業)

保険代理業、不動産管理・賃貸業、長野リンデンプラザホテルの運営に係るホテル業、IoT関連機器の企画・開発・販売業などを行っております。ホテル業は、インバウンド需要に頼ることなく、ビジネス客を中心に観光客や各種イベント、スポーツ大会に参加する団体の宿泊需要の取り込みに注力してまいりました。同業他社との競争が激化する中、その他の事業全体としては、2億6千9百万円(前期比9.3%増)となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は、前連結会計年度末に比べ9千6百万円増加し、25億1千5百万円となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果得られた資金は、5億1千6百万円(前年同期比19億4千1百万円の減少)となりました。主な要因は、税金等調整前当期純利益20億2千3百万円、棚卸資産の減少額6億2千1百万円、減価償却費4億9千8百万円等により資金が増加した一方、仕入債務の減少額19億2千6百万円と法人税等の支払額8億5千2百万円等により資金が減少したことによるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果使用した資金は、2億5千6百万円(前年同期比2億9千5百万円の減少)となりました。主な要因は、定期預金の払戻による収入32億2千4百万円により資金が増加した一方、定期預金の預入による支出32億6千8百万円と有形固定資産の取得による支出1億5千4百万円により資金が減少したことによるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果使用した資金は、2億1千6百万円(前年同期比12億円の減少)となりました。主な要因は、短期借入金の純減額3億2千万円、リース債務の返済による支出1億7千万円、長期借入金の返済による支出11億8百万円により資金が減少した一方、長期借入れによる収入15億円により資金が増加したことによるものです。

 

③生産、受注及び販売の実績

1)生産実績

 当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年3月21日

至 2025年3月20日)

前年同期比(%)

モビリティ&サービス事業(千円)

15,857,036

92.0

ライフ&サポート事業(千円)

5,848,065

103.5

住設機器事業(千円)

2,876,205

121.9

合計(千円)

24,581,307

97.3

 (注)金額は販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。

 

2)受注実績

 当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(千円)

前年同期比(%)

受注残高(千円)

前年同期比(%)

住設機器事業

2,435,764

110.7

2,392,390

107.0

 

 

3)販売実績

 当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年3月21日

至 2025年3月20日)

前年同期比(%)

モビリティ&サービス事業(千円)

18,881,120

96.5

ライフ&サポート事業(千円)

6,235,162

100.9

住設機器事業(千円)

2,882,012

115.7

その他の事業(千円)

269,919

109.3

合計(千円)

28,268,214

99.3

 (注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

    2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自  2023年3月21日

至  2024年3月20日)

当連結会計年度

(自  2024年3月21日

至  2025年3月21日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

株式会社イヤサカ

2,890,868

10.2

(注)最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績のうち、当該販売実績の総販売実績に対する割合が10%未満の相手先につきましては記載を省略しております。

 

(2) 経営の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①財政状態及び経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

1)経営成績

(売上高及び営業利益)

 売上高につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。

  販売費及び一般管理費は、モビリティ&サービス事業における門型洗車機売上高減少に伴い輸送経費が減少したことから発送運賃が減少しましたが、ベースアップ等の賃上げによる人件費の増加により、前連結会計年度に比べ9千5百万円増加の71億8千2百万円となりました。この結果、営業利益は前連結会計年度比1億3千3百万円減の19億9千3百万円となりました。

(経常利益)

 営業外損益は、営業外収益が前連結会計年度に比べ2千8百万円増加の2億3千3百万円、営業外費用は前連結会計年度に比べ3千6百万円増加の1億1千5百万円となりました。この結果、経常利益は前連結会計年度に比べ1億4千1百万円減少の21億1千1百万円となりました。

(特別損益及び親会社株主に帰属する当期純利益)

特別利益は、固定資産売却益の増加により、前連結会計年度に比べ7百万円増加の9百万円となり、特別損失は減損損失が7億8千5百万円減少したものの、役員退職慰労引当金繰入額を4千6百万円計上したことから、前連結会計年度に比べ7億3千8百万円減少の9千6百万円となりました。この結果、税金等調整前当期純利益は前連結会計年度に比べ6億3百万円増加の20億2千3百万円となり、法人税等合計額6億8千8百万円を計上した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度に比べ6億2千1百万円増加の13億3千4百万円となりました。

 

2)財政状態

(資産)

当連結会計年度末における総資産は、前連結会計年度末に比べ4億9千2百万円減少し262億8千4百万円となりました。流動資産は5億9千9百万円減の168億4千3百万円、固定資産は1億7百万円増の94億4千1百万円となりました。これは主に商品及び製品が4億4千5百万円減少したことと、投資有価証券が2億1千1百万円増加したことによるものであります。

(負債)

当連結会計年度末における負債の合計は、前連結会計年度末に比べ21億5千1百万円減少し95億9千4百万円となりました。流動負債は28億1千9百万円減の70億8千1百万円、固定負債は6億6千8百万円増の25億1千2百万円となりました。これは主に未払金が17億3千6百万円減少したことと、長期借入金が4億5千6百万円増加したことによるものであります。

(純資産)

当連結会計年度末における純資産の合計は、前連結会計年度末に比べ16億5千8百万円増加し、166億9千万円となりました。これは主に親会社株主に帰属する当期純利益の計上等に伴い利益剰余金が12億1千7百万円増加したことによるものであります。

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

1)キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

自己資本及びキャッシュ・フロー関連の指標については以下のとおりであります。

 

2023年3月期

2024年3月期

2025年3月期

 自己資本比率

 52.1%

 56.1%

 63.5%

 時価ベースの自己資本比率

 20.0%

 23.8%

 27.8%

 キャッシュ・フロー対有利子

 負債比率

 2.6年

 1.9年

 8.1年

 インタレスト・カバレッジ・

 レシオ

 56.8倍

 74.2倍

 17.4倍

自己資本比率:自己資本/総資産

時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産

キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー

インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い

※各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により計算しています。

※株式時価総額は自己株式を除く発行済株式をベースに計算しております。

※キャッシュ・フローは、営業活動によるキャッシュ・フローを利用しています。

※有利子負債は連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。

 

2)資本の財源及び資金の流動性

当社グループは、事業の運営に必要な資金を自己資金及び借入金によって調達しており、設備投資や事業環境の変化による投資に備えた健全な財務の構築とキャッシュ・フローの改善を基本方針としております。

なお、当社グループの設備及び研究開発への投資につきましては、「第3 設備の状況」及び「第2 事業の状況 6 研究開発活動」に記載しております。

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表作成に当たり採用しております重要な会計基準は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しているとおりですが、決算における資産・負債の報告数値、報告期間における収入・費用の報告数値に影響を与える見積りは、固定資産の減損、賞与引当金、貸倒引当金、製品補償対策引当金、役員退職慰労引当金、退職給付に係る負債及び法人税等があり、これらは継続的な評価を行っております。なお、固定資産の減損については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 重要な会計上の見積り)」をご参照ください。

 また、損益又は資産の状況に影響を与える見積り、判断・評価は、過去の実績やその時点で入手可能な情報に基づいた合理的と考えられる要因に基づいて行っておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果と異なる場合があります。

 

④経営成績に重要な影響を与える要因

 当社グループは、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおり、事業環境、競合他社との競争の激化、新商品開発力等様々なリスク要因が経営成績に重要な影響を与える可能性があると認識しております。

 特に為替につきましては輸入ウエイトが高く、円安による仕入れコストの増大や原油価格の高騰に伴う関連部材の値上がりによる原価アップが懸念されます。

 経営資源の重点配分など状況変化への柔軟な対応とともに、合理化等による収益改善には不断の企業努力を重ねてまいる所存であります。

 

⑤経営方針・経営戦略・経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等につきましては、「第2 事業の状況1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(2) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載のとおりであります。

 当連結会計年度における売上高経常利益率は7.5%(前期比0.4ポイント減少)となり、自己資本比率は63.5%(前期比7.4ポイント増加)となりました。

 当連結会計年度の状況を認識した上で、引き続きこれらの指標の目標達成に向けて取り組んでまいります。

 

 

5【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

6【研究開発活動】

 市場ニーズが多様化する中、「良いモノをつくれば売れる」といった単純な時代が終焉を迎えて久しいときが経っております。「お客様が本当に困っていることはなにか」、「困っていても現状に甘んじていることはなにか」、さらに言えば「お客様自身でさえ気がついていないような 『こんなものがほしかった!』 といったものはないのか」、研究開発においてもそういったマーケティング思考が極めて重要になっております。

 当社は「その手があった!の一手先。」といった新コーポレートスローガンを掲げ、「お客様に寄り添う

メーカー」から「お客様にとって、なくてはならないメーカー」を目指して、あらゆる研究開発活動を進めてまいります。

 

(モビリティ&サービス事業)

 門型洗車機では、寒冷地における洗車機内の凍結防止を目的として、ビーム式の上下端検出センサーにより動作の信頼性が向上した防寒シャッターを開発しました。

 ドライブスルー門型洗車機のセンサーでは、検出範囲が広く、障害物の形や色の識別機能が向上したソナー式バックセンサーを開発しました。

 LED表示機では、サービスエリアの「短時間限定駐車マス」における駐車時間を監視するシステムを開発しました。駐車時間を色別に分類して情報提供LED表示機に表示することで、ドライバーの意識改善に貢献します。

(ライフ&サポート事業)

 農業資材分野では、低温貯蔵庫「味の新鮮蔵」の設定温度帯やコース機能を限定したエコノミーモデルを開発しました。冷却ユニットを従来機から変更したことにより、冷却能力を向上させつつ省エネを実現しました。さらに冷却ユニットにはダブルコーティングを施すことで腐食しにくい仕様としています。

(住設機器事業)

 アルタスウッドスクリーンシリーズでは、CLT(Cross Laminated Tibmer:直交集成板)をガラスに対して平行に使用することで、日射を遮り建物内への熱取得を軽減するカーテンウォールを開発しました。本製品は富山県の立山町防災児童館複合施設「アカリエ」に採用され、公共施設では北陸初となる「ZEB」(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の認証取得に貢献しました。

 

 なお、当連結会計年度の研究開発費は、モビリティ&サービス事業739百万円、ライフ&サポート事業193百万円、住設機器事業5百万円、総額938百万円であります。