第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(1)会社の経営の基本方針

当社グループは、「人づくり、製品(物)づくりを通して広く社会に貢献する」を経営理念としています。

顧客満足度を高め、企業価値を向上させることにより、持続可能な企業としての責任を果たしていくことを経営の基本方針としています。

《経営理念の3本柱》

① 社会から頼られる企業を目指します
・役に立つ製品やサービスの提供による顧客・消費者並びに社会への貢献
・適正な利益獲得による株主・投資家・従業員へのバランスの取れた還元と納税
・法令や社会的規範の遵守(コンプライアンス)と積極的な情報開示
・環境や雇用問題への取り組みと地域貢献・共生
 ② 社会から求められる製品やサービスを提供します
・製造原価の低減による価格競争力の強化
・製品やサービスの品質向上による差別化・高付加価値化とクレームの削減
・物流及び医療・介護等様々な分野における新製品の開発やサービスの企画
・海外商品の調達と海外市場の開拓
 ③ 社会から愛される人材の育成に努めます
・顧客ニーズをつかむ情報感応度・商品知識・提案型セールス
・顧客の要望やクレームへの誠実で迅速な対応

 

 (2) 経営戦略と対処すべき課題

世界的に景気回復への不透明感が拭えない中、産業構造の変化に伴い、物流に関するニーズも大きく変わっていくことが予想されます。

このような環境認識の下、当社グループは、持続的な成長軌道の確保に向け、以下の課題に取り組んでまいります。

① 経営基盤の再構築
・ 選択と集中

当社グループの強みを活かした製品に経営資源を集中配分し、安定した高い品質の維持とともに、顧客満足度の向上を図ります。
・ 収益力の改善

原材料価格上昇など外部環境の変化に適応するため、継続的に事業全体の効率改善によるコストダウンに努めるとともに、必要に応じ適正なマージン確保に向けた価格改定にも取り組みます。

② 成長への投資
・ 新製品の展開

開発体制を強化し、広く社会に求められる製品づくりに取り組みます。
・ 海外事業の強化

ASEANを中心に、当社グループ製品の強みを活かせる産業分野の顧客開拓に努めます。
・ 人財の育成

コミュニケーションの活性化と学びの機会提供に積極的に取り組み、次世代に向けた人財の充実を図ります。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります

 

(1)サステナビリティに関する「ガバナンス」及び「リスク管理」

 ①ガバナンス(基本姿勢並びに体制)

ナンシングループは、「人造り、製品造り、を通して広く社会に貢献する。」を経営理念に、社会から頼られ、愛される企業となるため、世の中から求められる価値を実現し、笑顔をお届けすることに喜びを感じる「人造り」に全力を尽くします。また、「SUSTAINABLE GROWTH」をスローガンに、笑顔あふれる会社を目指し、全社一丸となって精進し、お客様や様々なパートナーと共に、持続的な成長を目指すことを宣言しております。

サステナビリティ推進への取り組みは、ナンシングループの重要な経営課題との認識の下、取締役会の諮問機関であるリスク管理委員会で評価し、優先順位を決めて必要な対応をしてまいります。リスク管理委員会での対応事項は取締役会に報告され、確認・精査・議論を行い、必要に応じて意思決定を行っております。

 

 ②リスク管理(行動指針)

a. サステナビリティの実行

ナンシングループでは、ESGの観点から、脱炭素社会の実現に貢献できる製品ラインナップを強化しています。重量物を扱うメーカーの製造現場におけるエネルギー消費量を減らすことで「CO2削減」に貢献します。今後、活動量の把握、排出係数の適用、削減効果の算出などにより具体的な削減量を算出できるように活動してまいります。

b.教育とコミュニケーション

本指針を全役員・従業員に周知するとともに、教育を行うことで、サステナビリティへの認識を高め、社会に貢献できる人材を育成します。また、ステークホルダーへの情報開示を積極的に行い、説明責任を果たすとともに、コミュニケーションを強化し、サステナビリティでのパートナーシップを推進してまいります。

(2) 人的資本に関する「戦略」並びに「指標及び目標」

 ①戦略

a. 人材育成方針

・経営理念:「人造り」をメインに置いた経営理念を明確にし、浸透させることで企業価値の持続的な向上を目指しております。

・人事評価:公平かつ透明性が高く、本人が成長を感じられる人事評価制度により、モチベーションの向上やスキルアップ・成長を促す運用を行っております。

・人事異動:活発な人事異動を行うことで、経験の幅を広げ、リーダーとして必要な多角的な視点と問題解決能力の向上等の成長機会を提供、次世代リーダーの育成を図っております。

・学びの機会の提供:ビジネスに関わる多くの学びのコンテンツやWebセミナーを受講できるシステムを導入し、各種通信教育講座や資格取得の費用補助制度も設立しています。いつでも・どこでも自己啓発・スキルアップが図れるよう社員をバックアップしています。

b. 社内環境整備方針

・ダイバーシティへの対応:当グループはマレーシア・中国に海外子会社を有し、海外顧客も多く、多種多様な能力を持った人材を中途採用中心に採用しております。そういった人材が生き生きと働き、能力を発揮できるように環境を整備しております。

・社員のエンゲージメントの把握:社員のエンゲージメントレベルを定期的に把握し、組織力の向上やモチベーションの向上を図ってまいります。

・リモートワークへの対応:ノートPC・スマートフォンで、いつでも・どこでも社内ネットワークにセキュアにアクセスできる環境を整備しております。社内コミュニケーションや社内決裁のクラウドシステムも導入、組織と個人の生産性の向上を図っております。

 

 

 

 

 

②指標及び目標

人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備について、次の指標を用いております。

当該指標に関する目標及び実績は、次のとおりであります。

 

指標

目標

実績(当事業年度)

女性管理職人数

2028年3月末までに2023年3月末時点

より1名増員する(2

1

(管理職に占める女性労働者の割合4.5%)

女性役員人数

2028年3月末までに2023年3月末時点

より1名増員する(1

0

男性労働者の育児休業取得率

2023年3月末から2028年3月末まで

50.0%以上を維持する(50.0%

100.0%(50.0%から50.0%向上)

平均勤続年数

2028年3月末までに2023年3月末時点

より1.13年向上する(12.7

12.47年(11.57年から0.9年向上)

 

 

3 【事業等のリスク】

当社グループの経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があると経営者が認識しているリスクには以下のようなものがあります。但し、以下は当社グループに関する全てのリスクを網羅したものではなく、記載されたリスク以外のリスクも存在します。

かかるリスク要因のいずれによっても、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

なお、将来に関する事項については別段の記載がない限り、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

① 戦争・テロ・政治不安・治安の悪影響

当社グループでは、日本をはじめマレーシア、中国で事業を展開しており、これらグローバルな事業展開に関するリスクとして、事業を展開している国及び地域における政治経済情勢の悪化、輸出入・外資の規制、予期せぬ法令の改変、治安の悪化、国家間の経済制裁、テロ・戦争・感染症の発生その他の要因による社会的混乱等の地政学リスクが考えられます。これらの事象の発生により、海外における当社グループの事業活動に支障をきたし、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 事業を取り巻く経済情勢

当社グループは、日本をはじめマレーシア、中国で事業を展開しており、それぞれの市場における景気動向や需要変動に影響を受けます。市場において、景気の減速、需要構造の変化、価格競争の激化が進むことにより、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 
③ 特定調達先への依存

当社グループは、原材料及び部品等を可能な限り多数の取引先から調達するようにしています。しかしながら、より高い品質のものを競争力のある価格で調達しようとする場合、特定の調達先に集中することがあります。また特別な技術や性能を要する材料、部品等については、供給可能な調達先が限定されることがあります。

そのため予期せぬ事由によって、それらの調達先からの供給が停止した場合、又は適時に調達ができない場合、当社製品の生産停止やコストの増加をもたらす可能性があります。これらのリスクは、一次調達先、及び二次以降の調達先における予期せぬ事由の他に、自然災害や火災、テロ等の非常事態、感染症流行等の影響により顕在化する可能性があります。

当社グループとしては、サプライヤーとの連携を強化し、影響を極小化すべく努めていますが、想定を上回る需給の逼迫やこの影響が更に長期化した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。


④ 製品の品質

当社グループでは、製品の特性に応じた最適な品質の確保に全力を挙げて取り組んでおります。しかしながら、製品の欠陥又は不具合による大規模なリコールや改善対策等が発生した場合、多額の費用負担、製品評価の低下、企業イメージ及び販売低下等により、当社グループの経営成績又は財政状態に影響を及ぼす可能性があります。


⑤ 法的手続き

当社グループは、国内及び海外事業に関連して、訴訟その他の法的手続きの対象となる可能性があります。それらの法的手続きにおいて、不利な判断がなされた場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。


⑥ 知的財産権侵害

当社グループは、他社製品との差別化を図るため、事業に有用な知的財産の取得に努める一方、第三者の知的財産権に対する侵害の予防に努めています。しかしながら、第三者から知的財産に関する訴訟等を提起されたり、知的財産権を侵害したりする可能性は皆無とはいえず、この場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。


⑦ 情報セキュリティ

当社グループの事業活動におけるネットワーク、システム等の技術進展の重要性は非常に高まっています。当社グループは、ハードウエア・ソフトウエアの安全管理対策を実施するほか、当社グループ従業員への情報セキュリティ教育を実施しております。しかしながら、災害、サイバー攻撃、不正アクセスその他不測の事態により、機密情報・個人情報等の漏えい、重要な業務の停止、不適切な事務処理等が発生した場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 
⑧ 製品の材料価格上昇

需給状況の急激な変動や、災害、産出国における政情の変化などにより、材料価格が高騰し、製造コストが上昇する可能性があります。予測を超えた需要及び市況変動により、当社製品の製造コストが上昇した場合、当社グループの経営成績又は財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
 
⑨ 為替レートの変動
 大幅な為替変動が発生した場合には、当社グループの営業成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 
⑩ 自然災害や事故、感染症等による影響

当社グループは、日本及びマレーシア、中国に開発、製造、販売等の拠点の施設を有しています。

当該各地で大規模な地震・台風・豪雨・洪水等の自然災害や火災等の事故、感染症の発生により、当社グループ又はその取引先の操業の中断等の重大な支障をきたす場合があります。

想定を超える規模で自然災害や事故、感染症が発生し、開発、製造、販売等の拠点の施設の損壊、又は部品調達、製品の生産や販売、物流等が遅延若しくは停止する場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、経営成績等という)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析、検討内容は次のとおりです。なお、当社はキャスター、台車等を主とする単一セグメントであるため、セグメント別の記載はしておりません。

 

 (経営成績等の状況の概要)

(1)財政状態及び経営成績の状況

 当連結会計年度における我が国経済は、米国などで一定の景況感が見られた一方、中国の景気減速やロシア・ウクライナ情勢をはじめとする地政学的リスクが影を落とし、世界的な経済回復は緩やかなものにとどまりました。一方で、日本市場を中心に物流機械を取り扱う当社グループにとって、国際情勢の不安定化や政府の金融施策の転換による不透明感が拭えない中、消費の伸び悩みの影響は依然として強く、今後も厳しい経営環境が続くと予想されます。

こうした状況下、当社グループは効率的な生産・販売に向けた製品の絞り込みを進めるとともに、適切なマージン確保に向けた価格改定を実施しました。さらに、新しいニーズに対応する新製品の開発を進め、持続的な成長軌道の回復に向けた基盤づくりに取り組みました。
 

セグメントの業績を示すと、次のとおりであります。

○日本

 売上高は、9,303,715千円(前年同期比9.9%増)、セグメント損失(営業損失)は、73,057千円(前年同期のセグメント損失は71,794千円)となりました。

○マレーシア

 売上高は、3,214,611千円(前年同期比18.6%増)、セグメント損失(営業損失)は、54,870千円(前年同期のセグメント利益は115,980千円)となりました。

○中国

 売上高は、1,956,462千円(前年同期比24.1%増)、セグメント利益(営業利益)は、218,349千円(前年同期比 70.4%増)となりました。

 

資産、負債及び純資産の状況を示すと、次のとおりであります。

(資産)

流動資産は、前連結会計年度末に比べて9.0%減少し、9,890,736千円となりました。これは主に、現金及び預金が1,196,685千円減少したことによります。固定資産は、前連結会計年度末に比べて7.4%減少し、4,557,071千円となりました。これは主に、自社ビル売却に伴う土地建物等145,039千円、並びに保険解約に伴う積立金196,574千円が減少したことによります。この結果、総資産は、前連結会計年度末に比べて8.5%減少し、14,447,808千円となりました。

(負債)

流動負債は、前連結会計年度末に比べて47.1%減少し、1,729,504千円となりました。これは主に、短期借入金が1,400,000千円減少したことによります。固定負債は、前連結会計年度末に比べて5.7%減少し、976,923千円となりました。これは主に、役員退職慰労引当金が197,588千円減少したことによります。この結果、負債合計は、前連結会計年度末に比べて37.2%減少し、2,706,428千円となりました。

(純資産)

純資産合計は、前連結会計年度末に比べて2.3%増加し、11,741,379千円となりました。これは主に、為替換算調整勘定が194,121千円増加したことによります。この結果、自己資本比率は81.3%となりました。

 

(2)キャッシュ・フローの状況

  当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ1,258,809千円減少し、2,552,972千円となりました。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動による資金の増加は、112,328千円(前年同期は713,841千円の増加)となりました。これは主に、減価償却費267,458千円によるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動による資金の増加は、194,412千円(前年同期は321,956千円の減少)となりました。これは主に、有形固定資産の売却による収入253,195千円によるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動による資金の減少は、1,612,459千円(前年同期は338,047千円の減少)となりました。これは主に、短期借入金の返済額1,400,000千円によるものであります。

 

(生産、受注及び販売の状況)

(1) 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

生産高(千円)

前年同期比(%)

日本

2,017,388

8.0

マレーシア

3,148,078

15.0

中国

1,608,201

23.4

合計

6,773,669

14.6

 

(注) 1 金額は販売価格によっており、セグメント間の内部振替え前の数値によっております。

 

(2) 受注実績

販売実績に基づいて生産計画をたて、これにより生産をしているため、受注生産は行っておりません。

 

(3) 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

販売高(千円)

前年同期比(%)

日本

9,172,035

9.8

マレーシア

123,504

51.7

中国

522,675

7.9

合計

9,818,215

10.1

 

(注)  1 セグメント間取引については、相殺消去しております。

2  主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。 

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

㈱山善

1,432,447

16.07

1,632,479

16.63

 

3 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1)重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。その作成には、経営者による会計方針の選択・適用と、資産・負債や収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断していますが、実際の結果は不確実性があるためこれらの見積りと異なる場合があります。
 当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、第5[経理の状況]の連結財務諸表の「連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載していますが、特に次の重要な会計方針が連結財務諸表作成における重要な見積りの判断に大きな影響を及ぼすものと考えております。

 

① 貸倒引当金

当社グループは、売上債権等の貸倒損失に備えて回収不能となる見積額を貸倒引当金として計上しております。将来、顧客の財務状況が悪化し支払能力が低下した場合には、引当金の追加計上または貸倒損失が発生する可能性があります。

 

② 繰延税金資産

当社グループは、繰延税金資産の回収可能性の評価に際して、将来の課税所得を合理的に見積っております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するので、その見積額が減少した場合は繰延税金資産が取り崩され損失が発生する可能性があります。

 

(2)当連結会計年度の経営成績の分析

当社グループの当連結会計年度の経営成績は、下記のとおりであります。

(単位:千円)

 

2024年3月

2025年3月

前期比

金額

金額

増減額

増減率

売上高

8,915,543

9,818,215

902,671

10.1%

営業利益

199,299

122,296

△77,003

△38.6%

経常利益

246,403

246,711

307

0.1%

親会社株主に帰属する当期純利益

155,810

212,726

56,916

36.5%

1株当たり当期純利益金額

23.32円

31.91円

8.59円

36.8%

 

 

当連結会計年度における我が国経済は、米国等の一部地域において持ち直しの動きが見られた一方で、中国の景気低迷やロシア・ウクライナ情勢をはじめとする地政学的なリスク、欧米の金融引き締めなどの影響を受け、回復基調は足踏み状況が続きました。物流機械を取り扱う当社グループにとって、サプライチェーンの停滞が正常化した一方、物価高に賃金上昇が追いつかないことによる個人消費が伸び悩んだことで、景気の回復は緩やかにとどまり、今後とも厳しい経営環境が続くと思われます。

こうした状況下、当社グループは、適正なマージン確保に向けた効率的な生産計画や製品の絞り込みを進めるとともに、新しいニーズに対応する新製品の開発などを進め、持続的な成長軌道の回復に向けた基盤づくりに取り組みました。

その結果、当連結会計年度の売上高は9,818,215千円(前年同期比10.1%増)となりました。一方で、円安の進行によるコストアップの影響は大きく、営業利益は122,296千円(前年同期比38.6%減)、経常利益は246,711千円(前年同期比0.1%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は212,726千円(前年同期比36.5%増)となりました。

 

① 事業の種類別売上高の分析

キャスター事業の売上高は6,337,786千円(前年同期比11.6%増)となりました。
 その他事業の売上高は3,480,429千円(前年同期比7.5%増)となりました。

 

② 営業外損益及び特別損益の分析

(営業外損益)

営業外収益として、受取賃貸料44,772千円等を計上しております。
 営業外費用として、賃貸収入原価11,185千円等を計上しております。

 

(特別損益)

特別利益として、固定資産売却益97,684千円を計上しております。
特別損失として、保険解約損28,019千円等を計上しております。

 

(3)資本の財源及び資金の流動性についての分析

当社グループの資金状況は、下記のとおりであります。

(単位:千円)

 

2024年3月

2025年3月

増減額

営業活動によるキャッシュ・フロー

713,841

112,328

△601,512

投資活動によるキャッシュ・フロー

△321,956

194,412

516,368

財務活動によるキャッシュ・フロー

△338,047

△1,612,459

△1,274,411

現金及び現金同等物に係る換算差額

30,909

46,908

15,999

現金及び現金同等物の増減額

84,746

△1,258,809

△1,343,556

現金及び現金同等物の期首残高

3,727,035

3,811,782

84,746

現金及び現金同等物の期末残高

3,811,782

2,552,972

△1,258,809

 

 

 当社の主な資金需要は、人件費、販売費及び一般管理費等の営業費用並びに固定資産等にかかる投資であります。これらの資金需要につきましては、主に自己資金により賄えるものと判断しております。しかし、昨今の経済環境の不透明感を鑑み、手許資金を常に一定水準以上を保つように取締役会にて議論し、必要に応じ銀行借入等により対応してまいります。

 

当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ1,258,809千円減少し、2,552,972千円となりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動による資金の増加は、112,328千円(前年同期は713,841千円の増加)となりました。これは主に、減価償却費267,458千円によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動による資金の増加は、194,412千円(前年同期は321,956千円の減少)となりました。これは主に、有形固定資産の売却による収入253,195千円によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動による資金の減少は、1,612,459千円(前年同期は338,047千円の減少)となりました。これは主に、短期借入金の返済額1,400,000千円によるものであります。

 

(4)今後の見通し

 国際情勢の不安定化や政府の金融政策の転換による不透明感が拭えない中、消費の伸び悩みの影響は依然強く、今後とも収益を圧迫する状況は続くと思われます。

このような厳しい経営環境下、生産の更なる効率化に取り組む一方、自社製品の認知向上に向けたプロモーションを強化し、収益力の回復に努めます。

 また、持続的な成長軌道を確保するため、製造業としての原点に帰り、選択と集中による経営基盤の再構築に取り組むと同時に、人財への投資を中心に開発力や営業力の強化にも取り組みます。

 

5 【重要な契約等】

当連結会計年度における重要な契約等はありません。

 

 

6 【研究開発活動】

当社グループの研究開発活動は、海外工場と連携しながら、主に日本で行っています。

車輪、キャスター、台車他物流機器について、ユーザー様の求める新製品の開発に迅速かつ果敢に取り組んでいます。

従来品についても、性能・品質の向上に努め、ラインナップ全体の強化を図るとともに、コストダウンの可能性追求にも力を入れています。

当連結会計年度の研究開発費の総額は110,546千円で、主な成果は、次のとおりです。

 

(1) キャスター

1) 一般キャスター

低床重量搬送用キャスターとして「THHSシリーズ」を開発し、販売を開始いたしました。

「THHSシリーズ」は自動搬送用途への採用を見込み低床化および双輪タイプを採用しました。

性能面では「STMSシリーズ」同様に始動抵抗の低さと高い旋回性に加え、耐久性や静音性の面でも従来品を遥かに上回る性能を兼ね備えています。

従来品においては、マレーシア工場に生産移管を進める中で、コストダウンと同時に、更なる性能アップのための改良も併せて進めています。

 

2)車輪

従来品のマレーシア工場への生産移管に合わせて、より性能を向上させたモデルへの移行を進めています。

また、新型車輪についても、回転や旋回性および衝撃吸収性、強度アップなど、あらゆる側面からの性能の向上に向け、新しい材料や配合、構造、デザインから見直す形で、開発を継続しています。

 

(2) 物流機器

重量搬送業務の改善や効率化への貢献の一環として、シニア・女性層でも扱える台車の開発を行っています。

また、新たな価値観を提案し、潜在的な需要を掘り起こすべく、高品質でデザイン性に富んだ新製品開発にも着手しました。

従来品につきましては、引き続き、品質と利便性の向上に向けた改良を進めてまいります。

 

(3) 医療用機器及びキャスター

性能向上やデザイン性、物流効率や環境への配慮など、ユーザー様の様々なご要望に応じつつ、従来品のモデルチェンジに柔軟に取り組んでいます。また、ラインナップの見直しと合わせて、使用部材の共用化を図るなど、コストダウンにも力を入れています。