第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(1)経営方針

・世界の子どもたちに「夢」と「希望」を提供する“創発企業”となる。

 

当社はこの経営理念の下、1956年の創業以来半世紀以上の長きにわたり、日本アニメーション界のパイオニアとして、テレビアニメ作品237タイトル、劇場アニメ作品269タイトル、総コンテンツ数約13,800本に及ぶ日本最大・世界有数の規模のアニメーション作品を製作して参りました。

 

これらの多彩なライブラリー作品群、そして今後創作する新作品/新作話からなる魅力的かつインパクトのある「IP(=intellectual property)」を事業戦略の軸とし、世界を魅了する“新たな映像表現”を創造し続けグローバルに展開する、世界有数の映像製作・事業会社になることを目指しております。

 

(2)経営指標

アニメーションビジネスは不確定要素が多く、作品により予想と結果が著しく乖離する場合があります。

特定の指標をもって経営目標とすることはしておりませんが、堅牢な財務基盤の維持を大前提に、「IPを戦略の軸に据えたグローバル事業展開」をより一層強化し、持続的成長と中長期的な企業価値向上に資する事業機会やグローバル企画に積極的に戦略的投資を行って参ります。また配当については、安定配当を基本方針としつつ、投資戦略や業績動向に応じて柔軟に、総合的な判断を行って参ります。

 

(3)対処すべき課題

当社グループでは、「IPを戦略の軸に据えたグローバル事業展開」をより一層強化し、持続的成長と中長期的な企業価値向上を目指します。

日本最大・世界有数の作品数を有するアニメーション製作会社としての競争優位性を基盤に、魅力的でインパクトのある新たな作品を創作し世界に届けることを梃子に、収益化の機会を限りなく広げていくことを最重要課題として掲げています。

 

① IP増強:新規IP創出数の増強とIPライフサイクルの長期化

新規IP創出を加速すると共に、産み出した作品を自ら育成・発展させ、IPライフサイクルを長期化することで、作品ファンの親子二世代化・三世代化(エバーグリーン化)を目指します。

 

② 事業拡張:顧客接点の拡大とIP当たり収益規模の伸張

これまでに当社が獲得してきた作品製作や権利運用のノウハウを活かし、既存ライセンス事業に加えて、IPの育成・発展に寄与する自社事業にも注力し、IP当たりの収益規模の最大化を目指します。

 

③ 地域展開拡大:日本発IPの増強と海外発IPの強化

国内市場から海外市場へと作品展開を加速し、マーケットシェアを拡大させ、世界に冠たる「東映アニメーションブランド」の確立を目指します。

日本発IPの海外輸出は、従来からの取組みをより一層強化すると共に、新たな有望国や地域を見定め、ビジネスの拡大を図ります。海外においては、メジャースタジオとの連携等によるグローバルな配信・配給流通網を活用し、当社の指揮・統括の下、海外で企画製作した作品を、全世界に一斉展開し、関連ビジネス全体で収益獲得を目指すハリウッド型ビジネスに本格参入します。また、欧州・中東・中国市場等では、現地有力パートナーと手を組み、展開地域の文化・慣習・規制等の事業障壁を乗り越え作品展開し、ヒットを目指す地産地消型ビジネスを推進します。

 

④ 製作能力の進化:IP別に目的特化した製作体制構築と2D/3D先端技術の統合

IP・顧客セグメント別の訴求ポイントを明確化すると共に、国内外の提携スタジオのノウハウ・人材ネットワークの有効化と最適化により、子どもから大人まで幅広いファンを魅了する作品を創作していきます。

また、独自の演出・作画技法をはじめとする当社の伝統技術とCG・AI等の革新技術を融合し、全く新たな映像表現を産み出す製作スタジオを目指します。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

「世界の子どもたちに「夢」と「希望」を提供する“創発企業”となる。」

 

経営理念の実現に向けて、サステナビリティ活動は重要な取組であると認識しており、幅広いステークホルダーの皆さまと協働し、持続可能な社会へ貢献することで、企業価値向上を図ってまいります。

 

●ガバナンス

当社は、2022年6月に独立社外役員と社外有識者で構成される特別委員会を設置し、サステナビリティに関するガバナンス体制を強化しました。

特別委員会は、取締役会の諮問機関として、サステナビリティ全般に関わる事項を審議の上、取締役会に答申し、取締役会での議論深化に貢献しております。

 

●戦略

当社の経営理念の実現に向けた、サステナビリティに関する重点領域は下記表のとおりです。それぞれの領域に関する具体的な取り組みは、統合報告書にて紹介しております。

(https://corp.toei-anim.co.jp/ja/ir/library/PEROS_REPORT.html)

 

E(環境)

気候変動への対応

S(社会)

人的資本の開発

コンテンツ管理・運用

DX

地域との共生

G(ガバナンス)

ガバナンス体制の強化

コンプライアンス遵守

 

 

「人材育成方針」および「社内環境整備方針」

・人材の育成方針

近時、アニメーション作品の視聴者ニーズが多様化しており、同変化に柔軟に且つ戦略的に応えていくためには、従業員それぞれの多様性を尊重し、得意分野・専門性を高めながら、モチベーション高く働くことのできる職場環境・仕組みを整備・推進することが重要であると考えております。

今後とも持続的な成長と中長期的な企業価値向上に向け、人材多様化・専門性強化に向けた一層の取組みを推進してまいります。

[人材育成の取り組み(「東映アニメーション作画アカデミー」)]

優秀なクリエイターを養成するため、2023年4月に「東映アニメーション作画アカデミー」を開講しました。作画アカデミーでは、第一線で活躍するトップアニメーターが講師を務め、1年間の研修期間後、審査合格者は当社の専属アニメーターとなることができます。

 

・社内環境整備に関する方針

企業価値向上に向けて、多様性を尊重し、働く環境や仕組みを積極的に整備しております。

多様性の観点では、女性管理職も年々増加傾向にあり、現時点で女性管理職比率は23.2%となっております。管理職候補である係長の女性比率は50.8%で、全社での女性管理職比率は今後上昇する見込みです。

労働環境の整備については、産休・育休制度等の拡充等を取り組み、男性育休取得率は44.4%となっております。

このほかにも、テレワーク勤務・フレックス勤務・時差出勤導入や、従業員が働きやすいオフィス設計を工夫するなど、従業員が多様な働き方をできるよう取り組みをしております。

 

●リスク管理

サステナビリティ関連のリスク及び機会に関する識別・評価・管理については、取締役会の諮問に応じて、特別委員会で討議され、その答申内容を踏まえて取締役会で議論する体制となっております。

 

●指標及び目標

当社グループのサステナビリティに関する指標及び目標は現時点では設定しておりません。今後、企業価値向上に向けたサステナビリティに関する指標及び目標については、社内で議論を深めてまいります。

なお、女性管理職比率、男性育児休業等取得率、男女間賃金格差については、「従業員の状況」で記載のとおりです。

 

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

① アニメーションビジネスについて

当社グループはアニメーションを主軸として各事業を展開しております。当社では常に高品質なアニメーションを企画・製作することを心がけておりますが、アニメーションの人気は経済環境・市場環境のほか消費者の嗜好に左右され、事前にそれを正確に予測することは困難であるため、作品により人気の差異が大きく、当社の製作する作品が全てヒットするとは限りません。また、アニメーション製作には多額の先行費用を要するため、人気が出ず二次利用による収益が伸びない場合には、業績に大きな悪影響が生じます。そのため、当社が魅力的な作品を定期的かつ適時に投入できない場合や複数の新規投入作品が一定の成績に達しない場合、当社グループの経営成績、財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 企業間競争について

アニメーション業界においては、メディアの多様化やターゲットの拡大等により展開されるコンテンツ数が増える一方で厳しい市場環境により、企業間での原作やアニメーターを始めとする人材の獲得競争が激しくなってきております。また、海外においては韓国や中国企業等が力をつけてきており、日本にも進出しています。当社は長年の経験と実績に裏付けされた、優れた企画力・製作力・展開力を擁して、成長戦略を推進しておりますが、競合企業が急速に成長した場合は、当社の競争力が低下し、当社グループの経営成績、財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 技術革新について

近時、アニメーション業界において技術革新が進んでおり、例えばアニメーションの配信方法等に影響が生じております。また、当社においても、アニメーションの製作過程において、2Dと3D技術の融合などの新たな映像表現の開発に努めております。しかしながら、新技術の導入に伴い、追加の規制対応や人材確保が必要となりうるほか、当社グループがこれらの技術革新に適時適切に対応できなかった場合には、当社グループの競争力が低下し、当社グループの経営成績、財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 著作権の侵害について

当社グループは保有するアニメーションの著作権をもとにビジネスを展開しておりますが、海賊版や模倣品、違法配信等の権利侵害が確認されています。それらについてはケースごとに適切な対応をとるよう努めておりますが、著作権保護を十分に受けられない場合もあります。著作権侵害により正規商品やサービスの売上が阻害されるのはもちろんのこと、将来における機会逸失が見込まれ、また、第三者より著作権の侵害等のクレームを受ける可能性もあり、そのような場合には、当社グループの経営成績、財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤ 海外展開について

当社グループは、国内市場のみならず海外市場に向けてもアニメーション作品を展開しております。しかしながら、海外における事業展開は、各国の地政学リスクの影響を受けることに加え、当社グループのアニメーション作品が現地で受け入れられない可能性、法規制、商慣習及び言語の違いによるトラブル、現地企業との協業が奏功しない可能性、現地従業員の採用その他労働問題等の様々なリスクがあります。これらのリスクが顕在化した場合には、当社グループの海外事業に支障が生じ、当社グループの経営成績、財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

⑥ 人材の採用等について

当社グループの事業の継続的な成長においては、優秀なアニメーター等の採用、確保及び育成が重要となります。しかしながら、近時アニメーション業界においては、新規参入企業の増加や業界全体の製作量の増加により、アニメーター等の獲得競争が激化しております。当社グループは人材の採用、確保及び育成のために諸施策を講じておりますが、かかる施策が奏功せず、事業に必要なアニメーター等を採用、確保及び育成できなかった場合や、当社グループのアニメーター等が他社へ流出した場合には、当社グループの競争力が低下し、当社グループの経営成績、財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑦ 第三者との関係について

当社グループは、テレビ放映局、映画配給会社及び配信プラットフォーム業者、原作者及び出版社、アニメーションに係る権利のライセンス先、アニメーション製作過程における外注先等様々な第三者との事業上の関係があります。これら第三者との関係が悪化し、事業上の関係が解消された場合には、当社グループの事業遂行に重大な支障が生じ、当社グループの経営成績、財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑧ 為替変動について

当社グループの事業には、海外におけるアニメーションの製作と販売が含まれており、海外企業(海外子会社を含む)との外貨建取引において、急激な為替の変動等により、当社グループの経営成績、財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑨ 情報セキュリティについて

当社グループでは、情報管理を徹底し、適切なセキュリティ対策を行い、関連する各種規程を整備しております。しかしながら、予測の範囲を超えたサイバー攻撃、不正なアクセス、コンピュータウィルスへの感染等により情報システムや情報通信ネットワークに重大な障害が発生した場合には、当社グループの社会的信用やブランドイメージが毀損される可能性があります。

かかるリスクへの対応として、当社では、従業員への情報セキュリティに関する知識の向上に向けた教育及び不正アクセスへの対応体制の強化などを行っています。

 

⑩ 自然災害・感染症等について

当社グループは、日本をはじめ世界各国で事業を展開しておりますが、地震等の大規模な自然災害、新型インフルエンザや新型コロナウイルス感染症等の世界的流行(パンデミック)が発生した場合には、当社グループの事業活動の一部又は全体に大きな支障をきたすことが考えられ、当社グループの経営成績、財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑪ 社会的信用について

当社グループの事業の拡大のためには、社会的信用並びに広く認知されたブランドが非常に重要ですが、当社グループ及びその事業等に否定的な主張や風評がなされ、また、ソーシャルメディアで拡散された場合には、仮にかかる主張や風評が真実でないとしても、当社グループの社会的信用やブランドに重大な悪影響を及ぼす可能性があります。かかる事態が生じた場合には、当社グループの事業、人材獲得、株価、経営成績、財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑫ M&Aや提携等について

当社グループは、更なる事業成長のためにM&Aや提携等を実施する可能性があります。しかしながら、M&Aや提携等の実施に際しては、当初期待したシナジーや収益が得られる保証はなく、相手方により解消を求められる可能性もあります。また、M&Aや提携等の実施後に、当初想定していなかった新たな問題点が発見される可能性もあります。かかる事態が生じた場合には、当社グループの経営成績、財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

⑬ 法規制について

当社グループは、グローバルに事業を展開していることから、国内外で様々な法規制の適用を受けております。当社グループは関連法令等の遵守に係る体制整備に努めておりますが、今後、法規制の新設又は改正が行われた場合には、当社グループの経営成績、財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑭ 訴訟等について

当社グループは、事業活動を行う中で、消費者、顧客、提携先、ライセンス元、ライセンス先、外注先、従業員、当局を含む様々な第三者から訴訟その他法的手段の提起等やクレームを受ける可能性があります。かかる事態が生じた場合には、それ自体当社グループの社会的信用を棄損する可能性があるうえ、仮に当社グループに不利益な決定がなされた場合には、金銭的な負担に加え、当社グループの社会的信用、経営成績、財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。

 

※当社は東映グループとして、リスクマネジメント体制においてもその優先すべきリスクについて共有し、グループ全体としての優先すべきリスクについて適切に対処しております。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度において、当社グループでは「ワンピース」、「ドラゴンボール」シリーズ、「スラムダンク」、「プリキュア」シリーズ、「デジモンアドベンチャー」シリーズといった主力作品群からの安定的な収益の確保・拡大を図りました。特に商品販売事業、海外配信権販売に注力しました。

この結果、当連結会計年度における売上高は886億54百万円(前連結会計年度比1.4%増)、営業利益は233億64百万円(同18.5%減)、経常利益は264億53百万円(同11.2%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は187億95百万円(同10.1%減)となりました。

 

セグメントごとの経営成績は次のとおりであります(セグメント間取引金額を含む)。

なお、セグメント損益は、営業利益ベースの数値であります。

 

[映像製作・販売事業]

劇場アニメ部門では、4月に「聖闘士星矢 The Beginning」、6月に劇場版「美少女戦士セーラームーンCosmos《前編》」、劇場版「美少女戦士セーラームーンCosmos《後編》」、9月に「映画プリキュアオールスターズF」、10月に「デジモンアドベンチャー 02 THE BEGINNING」、11月に映画「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」、3月に「映画おしりたんてい さらば愛しき相棒(おしり)よ」を公開しました。前年から継続して公開しておりました映画「THE FIRST SLAM DUNK」や、当期公開の「映画プリキュアオールスターズF」、映画「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」が好調に推移しましたが、前年同期に公開した映画「ドラゴンボール超 スーパーヒーロー」、「ONE PIECE FILM RED」、映画「THE FIRST SLAM DUNK」程には至らず、大幅な減収となりました。

テレビアニメ部門では、「ワンピース」、「ひろがるスカイ!プリキュア」(2024年2月より「わんだふるぷりきゅあ!」)、「逃走中 グレートミッション」、「キボウノチカラ~オトナプリキュア'23~」、「ふしぎ駄菓子屋 銭天堂」、「おしりたんてい」、「いきものさん」の7作品を放映しました。前年同期と比較して放映作品数が減少したこと等から、若干の減収となりました。

コンテンツ部門では、映画「THE FIRST SLAM DUNK」のブルーレイ・DVDが好調に推移し、大幅な増収となりました。

海外映像部門では、前年同期に好調に稼働した映画「ドラゴンボール超スーパーヒーロー」の海外上映権販売の反動があったものの、「ワンピース」の海外配信権販売、映画「THE FIRST SLAM DUNK」の海外上映権販売が好調に推移したことから、若干の増収となりました。

その他部門では、「金色のガッシュベル!! 永遠の絆の仲間たち」等の自社企画アプリゲーム事業が好調に稼働したことから、前年同期と比較して大幅な増収となりました。

この結果、映像製作・販売事業全体では、売上高は348億28百万円(前連結会計年度比6.5%減)、セグメント利益については、「聖闘士星矢 The Beginning」の棚卸資産の評価損を計上したこと等により、68億32百万円(同36.0%減)と減収減益となりました。

 

 

[版権事業]

国内版権部門では、「ワンピース」の商品化権販売が好調に稼働したものの、「ドラゴンボール」シリーズのゲーム化権販売が前年同期の勢いには至らなかったこと等から、ほぼ横ばいとなりました。

海外版権部門では、「ワンピース」の商品化権販売が好調に稼働したものの、「デジモン」シリーズ、「ドラゴンボール」シリーズの商品化権販売が前年同期の勢いには至らなかったこと等から、減収となりました。

この結果、版権事業全体では、売上高は396億71百万円(前連結会計年度比5.7%減)、セグメント利益は189億56百万円(同9.5%減)と減収減益となりました。

 

 

[商品販売事業]

商品販売部門では、映画「THE FIRST SLAM DUNK」の商品販売や、「ワンピース」のショップ事業が好調に稼働したこと等から大幅な増収となりました。

この結果、売上高は106億81百万円(前連結会計年度比73.7%増)、セグメント利益は18億25百万円(同181.8%増)と増収増益となりました。

 

[その他事業]

その他部門では、催事イベントやキャラクターショー等を展開しました。「プリキュア」シリーズの催事が好調に稼働したことから、大幅な増収となりました。

この結果、売上高は39億22百万円(前連結会計年度比77.0%増)、セグメント利益は1億34百万円(同30.8%増)と増収増益となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)の残高は、前連結会計年度末に比べ72億17百万円増加し、521億2百万円となりました。

その要因は以下のとおりであります。

なお、連結貸借対照表に掲記されている現金及び預金勘定790億7百万円との差異は、預入期間3ヶ月超の定期預金269億68百万円等であります。

 

[営業活動によるキャッシュ・フロー]

営業活動の結果得られた資金は、162億84百万円(前連結会計年度は152億60百万円の獲得)となりました。資金の増加の主な内訳は、税金等調整前当期純利益267億7百万円、棚卸資産の減少31億46百万円、売上債権の減少16億18百万円、資金の減少の主な内訳は、法人税等の支払額106億2百万円、仕入債務の減少32億34百万円であります。なお、減価償却費7億90百万円は、資金流出の発生しない費用であるため、キャッシュ・フロー計算書では資金増の要因となっております。

 

[投資活動によるキャッシュ・フロー]

投資活動の結果使用した資金は、45億42百万円(前連結会計年度は29億54百万円の使用)となりました。資金の増加の主な内訳は、定期預金の払戻による収入224億91百万円、資金の減少の主な内訳は、定期預金の預入による支出263億43百万円であります。

 

[財務活動によるキャッシュ・フロー]

財務活動の結果使用した資金は、64億10百万円(前連結会計年度は45億41百万円の使用)となりました。これは、主に配当の支払によるものであります。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

イ 受注製作事業実績

当社グループは、映像製作・販売事業において、劇場アニメ作品・テレビアニメ作品の受注製作を行っており、当連結会計年度の製作実績及び受注実績を示すと次のとおりであります。

 

a.製作実績

区分

製作高(百万円)

前期比(%)

劇場アニメ作品

1,405

55.3

テレビアニメ作品

6,400

119.0

合計

7,805

98.6

 

(注) アニメ作品製作について、作業の一部を外注に依存しております。
(主な外注先:㈱青二プロダクション、㈱ぎゃろっぷ、㈱スタジオディーン)
なお、当連結会計年度における外注費は、5,466百万円であります。

 

b.受注実績

区分

本数

受注高(百万円)

前期比(%)

受注残高(百万円)

前期比(%)

劇場アニメ作品

2

255

282.5

テレビアニメ作品

214

1,610

122.9

1,493

120.5

合計

216

1,865

133.2

1,493

85.6

 

 

ロ 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(百万円)

前期比(%)

映像製作・販売事業

34,819

93.5

版権事業

39,419

93.9

商品販売事業

10,624

173.0

その他事業

3,791

180.7

合計

88,654

101.4

 

(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しております。

2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

販売高(百万円)

割合(%)

販売高(百万円)

割合(%)

㈱バンダイナムコエンターテインメント

18,533

21.2

18,095

20.4

東映㈱

9,788

11.2

6,580

7.4

 

3.東映グループ(除く東映㈱及び当社の子会社)に対する販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

販売高(百万円)

割合(%)

販売高(百万円)

割合(%)

東映グループ

475

0.5

2,515

2.8

 

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

(a) 財政状態の分析

(資産の部)

当連結会計年度末の総資産は、前期末比122億30百万円増1,627億39百万円となりました。

流動資産は、前連結会計年度末に比べて8.8%増加し、1,204億55百万円となりました。これは、現金及び預金が120億98百万円、仕掛品が1億44百万円、流動資産のその他が19億25百万円それぞれ増加し、受取手形及び売掛金が9億62百万円、商品及び製品が34億16百万円それぞれ減少したこと等によるものです。

その結果、流動資産合計は前期末比97億53百万円増1,204億55百万円となりました。

固定資産は、前連結会計年度末に比べて6.2%増加し、422億83百万円となりました。これは、ソフトウエアが1億36百万円、投資有価証券が34億円、投資その他の資産のその他が2億36百万円それぞれ増加し、建物及び構築物(純額)が1億75百万円、長期預金が10億円それぞれ減少したこと等によるものです。

その結果、固定資産合計は前期末比24億77百万円増422億83百万円となりました。

(負債の部)

当連結会計年度末の負債合計は、前期末比49億80百万円減310億25百万円となりました。

流動負債は、前連結会計年度末に比べて18.3%減少し、287億30百万円となりました。これは、支払手形及び買掛金が23億93百万円、未払法人税等が32億14百万円、契約負債が5億22百万円、流動負債のその他が2億87百万円それぞれ減少したこと等によるものです。

その結果、流動負債合計は、前期末比64億19百万円減287億30百万円となりました。

固定負債は、前連結会計年度末に比べて168.2%増加し、22億95百万円となりました。これは、固定負債のその他が13億45百万円増加したこと等によるものです。

その結果、固定負債合計は、前期末比14億39百万円増22億95百万円となりました。

(純資産の部)

当連結会計年度末の純資産合計は、前期末比172億10百万円増1,317億13百万円となりました。

株主資本については、利益剰余金が前期に係る剰余金の配当により63億43百万円減少し、親会社株主に帰属する当期純利益により187億95百万円増加いたしました。

その結果、株主資本は、前期末比125億4百万円増1,212億73百万円となりました。

その他の包括利益累計額については、その他有価証券評価差額金が21億41百万円、為替換算調整勘定が25億60百万円それぞれ増加いたしました。

その結果、その他の包括利益累計額は、前期末比47億5百万円増104億40百万円となりました。

 

(b) 経営成績の分析

(売上高)

当連結会計年度の売上高は、映像制作・販売事業、版権事業は減収であったが、一方で商品販売事業で増収であったため、前期比11億97百万円増886億54百万円となりました。

各セグメントの状況につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績等の状況」、海外部門の売上高につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項」の「セグメント情報等 関連情報」をご参照ください。

(売上原価及び売上総利益)

当連結会計年度の売上原価は、前期比47億14百万円増512億5百万円となりました。

増収に伴い売上原価も増加しましたが、原価率は聖闘士星矢 The Beginning」に関する棚卸資産の評価損を計上したこと等により57.8%となりました。

その結果、当連結会計年度の売上総利益は、前期比35億16百万円減374億49百万円となりました。

 

(販売費及び一般管理費並びに営業利益)

当連結会計年度の販売費及び一般管理費は、劇場、TVアニメ作品に係る広告宣伝費の増加や、人件費の増加等により、前期比17億88百万円増140億85百万円となりました。

その結果、当連結会計年度の営業利益は、前期比53億5百万円減233億64百万円となりました。

また、売上高営業利益率は32.8%から26.4%となりました。

(営業外損益及び経常利益)

当連結会計年度の営業外損益は、為替差益が増加したこと等により、営業外損益の純額では、前期比19億66百万円の増となりました。

その結果、当連結会計年度の経常利益は、前期比33億38百万円減264億53百万円となりました。

また、売上高経常利益率は34.1%から29.8%となりました。

(特別損益)

当連結会計年度の特別損益は、投資有価証券売却益の計上があったことにより、特別損益の純額では、前期比2億53百万円の増となりました。

その結果、当連結会計年度の税金等調整前当期純利益は、前期比30億84百万円減267億7百万円となりました。

(法人税等及び親会社株主に帰属する当期純利益)

当連結会計年度の法人税等合計は、前期比9億79百万円減79億11百万円となりました。また、税効果会計適用後の法人税等の負担率は29.6%となりました。

その結果、当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は、前期比21億4百万円減187億95百万円となりました。

 

当連結会計年度も、事業内容では、売上高、利益に占める国内外のアプリゲーム化権、中国向けの大口映像配信権の割合が引続き大きい状況にあり、作品でも、売上高、利益に占める「ドラゴンボール」シリーズ、「ワンピース」の2タイトルの割合が大きい状況が続いています。

こうした中、当社グループは、海外における展開地域や事業の拡大、新規IPの創出とIPライフサイクルの長期化、映像製作能力の進化等により、持続的成長と中長期的な企業価値向上を目指すべく、「1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(3)対処すべき課題」に記載した方針に基づき、各種課題に取り組んでまいります。

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

(キャッシュ・フローの分析)

当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載しておりますが、営業活動によるキャッシュ・フローの収入から、投資活動によるキャッシュ・フローを差し引いたフリー・キャッシュ・フローは117億42百万円(前連結会計年度は123億5百万円)となりました。

これは、営業活動によるキャッシュ・フローが増加したこと及び定期預金の払戻による収入並びに定期預金の預入による支出が減少したことが主な要因です。

なお、翌連結会計年度において、重要な資本的支出の予定はございません。

 

 

(資本の財源及び資金の流動性に係る情報)

アニメーションビジネスは、先行投資型ビジネスであり、製作段階で、多額の製作資金を投入し、その後、完成した作品の映像著作権をベースに、各種事業を展開し、製作資金を回収していくのが基本的なスキームです。作品によって、回収に要する期間はさまざまであり、複数の作品が、一定の成績に達しない場合、営業活動から創出される資金が減少することも想定されますが、新規作品の企画製作は、当社グループが成長・発展していくために欠かせないものです。

そのため、当社グループは、運転資金、設備投資資金はもとより、新規作品の企画製作費用についても、充分な資金流動性を確保し、堅固な財務体質を維持することに努めております。

また、各子会社の余剰資金につきましては、配当金により当社へ集約することを基本に考えておりますが、将来におけるより効率的な資金運用に向けた施策として、キャッシュ・マネジメント・システムにより、一部の海外子会社より資金を集約しております。

 
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。連結財務諸表の作成にあたり、製品、仕掛品の評価、非上場株式の評価、貸倒引当金の計上、退職給付に係る負債の計上、役員株式給付引当金の計上等について見積り計算を行っております。これらの見積りについては、過去の実績等を勘案して合理的に判断しておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果が見積りと異なる場合があります。

連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

5 【経営上の重要な契約等】

(1) 当社の販売業務委託契約

相手方

契約品目

契約内容

契約期間

東映㈱

テレビシリーズアニメ作品の放映権
テレビシリーズアニメ作品の再放映権
テレビシリーズアニメ作品のビデオ化権

各権利の販売代理業務

1999年4月1日締結
期限の定めなし(注)

 

(注) 当初契約日:放映権については1967年9月1日、再放映権については1974年3月1日。

 

6 【研究開発活動】

該当事項はありません。