当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針
当社グループは、「感動する作品や楽しめる作品を創り続ける」ことを理念とし、「多くの視聴者や読者等に感動を与え、また、クライアントに満足していただける作品を創る」ことを経営方針としております。
(2) 経営戦略
当社グループは、原作を創出するコミック出版とアニメーションを中心とした映像化を行うコンテンツ制作の企業集団として、中長期的なキャッシュ・フローを生みだすため、以下の4つのプロセスに傾注し、投資拡大の好循環を実現してまいります。
・自社コミック原作の創出
・映像化したものをマルチメディア化
・事業の中核となるコンテンツのシリーズ化を推進
・NFT(非代替性トークン)化した商品、オリジナルキャラクター商品等を海外販売(インターネットでつながる世界マーケットに向けダイレクトアプローチ)
(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループの連結数値目標として、ROE(自己資本利益率)8%以上を指標とし、中長期的な経営戦略を基に投資を進め、事業の拡大を図ってまいります。
映像制作事業と出版事業については、制作・進行管理を行うことで、版権事業については、ヒットする作品を検討して出資することで、また、当社グループ内のコンテンツを映像制作事業や出版事業で利用することにより利益の最大化を図ってまいります。
(4) 経営環境
経営環境につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概況 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載しております。
(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
① クリエイターの発掘、協力会社の獲得
次世代を担うコミック作家や映像クリエイターの発掘・育成のために、人材の交流、作品公募、制作環境やサポート体制の整備、教育者の確保に対応してまいります。また、優秀な人材や協力会社の獲得のために、透明性のある契約と成功報酬制度等、法務面の充実にも継続して取り組んでまいります。
② 映像制作事業の予算見積りと管理
映像制作費用は、CG制作費や優秀なクリエイター等の外注費が高騰し、また、制作期間が長くなっていることから人件費を含む固定費が増加し、当初予算見積りより超過するようになりました。現況に合った確度の高い映像制作予算の見積りを策定し、管理体制を整え映像制作事業の収益改善に継続して取り組んでまいります。
③ 映像技術の進歩
コンピュータを使用したアニメーション制作、映画のデジタル上映化等、映像技術は著しく進歩しております。これに伴い、コンピュータを使った画像処理、ネットワークやサーバ等の制作環境、工程やデータの管理等、技術の習得と人材の育成及び情報インフラの整備に継続して取り組んでまいります。
④ メディアの多様化
動画配信サービスの急激な普及により、テレビやPC、スマートフォン等のメディアで視聴できる環境となり、国境を越え圧倒的な量のコンテンツを享受できる時代を迎えております。数多くのメディアで視聴できるようパートナー企業と協力し、分配金・印税の獲得に継続して取り組んでまいります。
⑤ 海外展開
海外パートナーとの協力関係を築き、映像制作の受注や配信等、海外市場拡大に継続して取り組んでまいります。
当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
サステナビリティ基本方針
当社グループでは、「感動する作品や楽しめる作品を創り続ける」という経営理念の下、事業活動を通じた当社自身の企業価値向上やブランド価値向上はもちろん、日本の文化でもあるアニメや漫画を世界へ創り出すことでコンテンツ市場に寄与することを目指しております。視聴者・読者(ファン)やステークホルダーとともに、持続可能な社会の実現に向けたサステナブルな活動を推進し、グローバル展開を含めた更なる事業拡大を進めていきます。
(1)ガバナンス
当社グループでは、IGポート取締役及び子会社の取締役等で構成するサステナビリティ委員会を2023年6月に新設しました。サステナビリティ委員会では、グループ全体で連携した取組みを推進するために、重要なサステナビリティ事項に関する戦略や方針の設定、目標管理、リスク管理等を目的とした議論を行い、定期的に取締役会へ活動状況の報告を行います。
<サステナビリティ委員会体制図>
(2)リスク管理
当社グループの重要課題である①「人的資本(人材)」に関する事項、②「コンテンツ(IP)(以降、「IP」という。)の投資、利用と保護」に関する事項に関するリスクについては、随時各子会社の取締役・プロデューサー間のコミュニケーションにより議論しております。今後は、その中でも特に重大であると考えられるリスクについて、サステナビリティ委員会に議題として提出し、対応方針を決定していきます。
この他、当社及び子会社間で事業戦略および経営状況について密に情報交換を行う子会社管理プロジェクトや、IPの適正利用を目的とするコンテンツ作成ガイドラインの遵守徹底等、当社グループのリスク管理を支える取組みを進めています。
(3)戦略
①人的資本(人材)
「感動する作品や楽しめる作品を創り続ける」という理念のもと、経営方針を達成して企業価値向上を目指すためには、多様な人材が最大限に能力を発揮することが不可欠です。また、労働市場の流動性が激しく、人材獲得競争の時代といわれる中で、必要な人材を採用するためには、分かりやすい人事制度・仕組みの構築が求められます。当社グループでは、人材の採用・育成・評価や労働環境に関する方針を明示し、方針に基づいた取組を実施しております。
■人材育成方針
当社グループでは、経営戦略の要件を充たす人材を採用し、個人の専門性向上を重視した人材育成(企業文化の定着を目的とした研修を含む)や人事評価を行っていきます。中核人材の登用については、従業員・管理職・役員における中途・女性・外国籍従業員の割合をコーポレートガバナンス報告書において開示しております。
〇主な取組
(a)採用
中期経営計画や経営戦略(映像制作、出版編集、IP管理(投資・利用・保護)、管理系)に合わせ、性別・国籍・新卒・中途採用等の区別なく、個人を尊重した採用を推進しております。
(b)人材配置
適切な人材配置を行うため、グループ子会社間における配置転換も積極的に行っていきます。従業員の異動希望を募り、人材の適正配置に努めるとともに、従業員エンゲージメントの向上を図っています。
(c)評価
各子会社において、経営戦略に合わせた評価制度を設定し、性別・国籍・中途採用等の区別なく、仕事の難易度や責任の大きさによる評価を可能としております。また、評価基準を明確に設け、社内に公開しております。
(子会社による評価制度の例)
・プロダクション・アイジー:責任等級制度
・マッグガーデン:人事評価シートによる評価制度
(d)育成
アニメーション業界を支えるスキルの高いアニメーター育成を目的として2021年に『アニメーター塾』を開講しました。また、新たなアニメーション演出家や新たな分野の専門家を育成するための部署を作りベテランの演出家を指導係として採用する、そのほか研修費を負担する等の取組を推進しております。
また、新人教育、管理職研修としてeラーニングや講師による研修を行っていきます。
■環境整備方針
働き方改革の一環として、リモートワーク・フレックスタイム・時短勤務を導入するとともに、従業員の意見調査を行いエンゲージメントの向上を図っていきます。
継続的なイノベーションを生み出し、持続可能な会社を創るため、人材多様性の推進を行うとともに、健康診断や産業医面談等による従業員ケアを行っていきます。
〇主な取組
(e)柔軟な働き方
部署や職種、家庭環境等を配慮したうえで、従業員の補充や配置転換も含め柔軟に検討し、従業員がベストな状態で能力を発揮できる職場環境を作っていきます。
(f)従業員の健康を重視した取組み
健康診断や産業医面談等による従業員の健康維持やメンタルヘルスケアを行っていきます。
(g)アニメーターの社員化
労働環境を鑑み、評価要素(①期待役割②受命/段取り③就業活動④業務効率⑤成果)の基準を満たしたアニメーターについては社員化を図っていきます。
(h)従業員の意見調査
就業報告である月報(回答率100%)において、従業員の意見を吸い上げる仕組みを整備しております。従業員の意見については、プロデューサーや各子会社の役員に共有し、職場環境の改善に役立てていきます。
②IPの投資、利用と保護
経営理念・経経営方針の実現のためには、強力なIPの創出が不可欠です。当社グループは、コンテンツ企業として新規のIP創出や獲得のため投資を積極的に行い、IPの適切な利用及び保護を推進することで、自社グループの価値向上につなげると共に、コンテンツ市場の持続的な発展に寄与することを目指しております。
(4)指標及び目標
当社グループでは、戦略に対する具体的な指標や目標は以下の通りです。
現時点で一部の取組には指標と目標を定めておりませんが、今後、サステナビリティ委員会における協議を踏まえて、設定をしていきます。
①人的資本(人材)
(a)配属先の仕事内容に合った、優秀な人材の獲得を目指しております。
(b)(c)(d)(e)(g)(h)従業員エンゲージメントの向上を目指しております。収集した従業員の意見のうち、重要性の高いものについては、サステナビリティ委員会で議論し、モニタリングしていきます。
(f)健康診断の受診率90%以上を目指していきます。
2024年5月末の受診率は71.5%であります。
②IPの投資、利用と保護
有望なコンテンツや事業には積極的に投資を行っていきます。
パートナー企業や行政と連携し、収益の最大化やIPの保護を行っていきます。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 事業内容等について
① 作品の良否について
当社グループは、アニメーション作品及びコミック作品ともに、常に最適な制作体制の構築を心掛け、品質の高い制作に努めております。しかしながら、こうして制作した作品が顧客の嗜好に合致しない場合、又は制作に遅れが生じた場合は、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
② 映像制作事業について
当社グループは、制作の正式受注の前に、プリプロダクション工程が発生する場合があります。企画書や作品のあらすじあるいはキャラクターデザイン、絵コンテ、場合によっては短い動画を作成します。正式受注が不調となった場合には、当社グループに損失が生じる可能性があります。
③ 出版事業について
当社グループが製作・販売している出版物は、「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」(独占禁止法)第23条の規定により、再販売価格維持制度(再販制度)が認められる特定品目に該当しており、書店では定価販売が行われております。公正取引委員会が2001年3月23日に発表した「著作物再販制度の取扱いについて」によると、当面、再販制度は維持・存続される見通しですが、一方で、再販制度を維持しながらも、現行制度の弾力的運用を業界に求めていく方針を発表しております。当該制度が廃止された場合には、出版物の市況が悪化することも考えられ、当社グループの出版物にその影響が及んだ場合、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
④ 版権事業について
当社グループは、制作するアニメーション作品等に対し、著作権等の権利の取得を目的として出資を行う場合がありますが、著作権等の権利を取得できた場合には、作品より得られた収益の分配を受けることができます。しかしながら、制作した作品が顧客の評価を得ることができない場合には、期待した収益を確保することができず、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 経営成績の変動について
① 当社グループでは、経営成績の変動を抑えるべく尽力しておりますが、アニメーションの大型出資において、作品利用(版権)の契約内容や印税や分配の報告により、売上の時期や売上金額が異なります。映像マスターやコンテンツ資産の減価償却費と売上の計上が会計期間と一致しない場合、当社グループの経営成績等は大幅に変動する可能性があり、経営成績の期間比較等をするに際しては、このような点を考慮する必要があります。
② 感染症の拡大や自然災害により、従業員やクリエーター、国内外の取引会社の社員の感染や被災状況により、映像制作のすべての工程(プリプロダクション、プロダクション、ポストプロダクション)で遅れが生じる可能性があります。映像制作の遅れにより納品が納期に間に合わない場合、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
③ 世界的なインフレが続いており、今後、さらに外注費や人件費、公共料金等が高騰した場合、既に受注している作品については制作予算を上回る原価が発生すると予想されることから、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
(3) 他社との競合について
アニメーション市場の拡大により、国内のみならず国際的に新規参入の競合会社が増えており、現在、中国、韓国、フィリピン等をはじめとした低コストのアニメーション制作会社や、優秀なアニメーターを好待遇で雇う会社が台頭してきております。当社グループも受注を確保するため、受注価格の低下が避けられない状況に陥ることや、優秀なアニメーターを確保するため外注費の高騰も想定されます。その場合、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、アフターコロナの社会経済活動の正常化が一段と進んだことや、訪日客の消費が新型コロナウイルス禍前を超える等、景気は緩やかな回復傾向が見られました。一方で、円安、物価高により個人消費が弱く、中国経済の先行き懸念等の海外景気の下振れや、東欧や中東、東アジアでの地政学リスクの高まりが続いていること等、依然として景気の先行きは不透明な状況が続いております。
当社グループを取り巻く経営環境について、アニメーション産業は、一般社団法人日本動画協会による「アニメ産業レポート2023サマリー」2024年1月発表によれば、2022年のアニメ産業市場は過去最高であった2021年から前期比106.8%、1,855億円増の2兆9,277億円となり、市場最高値を更新しました。コロナ禍で一旦先行きを見失いかけたアニメ産業ですが、日常が戻った現在、海外を中心に日本のアニメが、産業的な地力を獲得していることが分かり、この成長はまだ続くであろうと改めて認識されています。
出版産業は、公益社団法人全国出版協会・出版科学研究所によると、2023年(1~12月期累計)の出版市場規模(推定販売金額)は、前年比2.1%減の1兆5,963億円と2年連続の前年割れとなりました。紙と電子を合算したコミック市場は前年比2.5%増の6,937億円となり、内訳は紙のコミックス(単行本)とコミック誌を合わせた推定販売金額は同8.0%減の2,107億円、電子コミックは同7.8%増の4,830億円となっております。
このような情勢のもと当社グループは、テレビ・配信・ビデオ用アニメーション、劇場用アニメーション、その他にゲーム用、プロモーション用、実写等の企画・制作を行う映像制作事業、コミック誌、書籍(コミックス、ノベルス、原作ガイドブックを含む)の企画・製造・販売、電子書籍を含むコミックスの販売を行う出版事業、作品の二次利用による印税・収益分配金等を得る版権事業を中心に行い、前期に比べ増収増益となりました。
これらの結果、当連結会計年度の売上高は11,841,359千円(前期比6.1%増)、経常利益は1,380,218千円(前期比38.1%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は1,158,412千円(前期比51.1%増)となりました。
各セグメントの業績は次のとおりであります。
(映像制作事業)
映像制作事業におきましては、テレビ用アニメーションは「SPY × FAMILY Season 3」「しかのこのこのここしたんたん」「シンカリオン チェンジ ザ ワールド」等、配信用アニメーションは「THE ONE PIECE」「君に届け 3RD SEASON」「ムーンライズ」「ターミネーター 0」等、納品へ向けそれぞれ制作しております。
テレビ用アニメーションは「怪獣8号」等、劇場用アニメーションの「劇場版 ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦」「劇場版 SPY × FAMILY CODE : White」は、納品しテレビ放映や劇場上映となりました。その他プロモーションビデオ・CМ・ゲーム・遊技機のアニメーションを制作・納品しました。
映像制作事業では、物価の高騰により人件費やCG制作費、外注費等が高騰し、制作期間の長期化により、一部の作品については受注損失引当金を計上する作品もありました。
以上により、当事業の売上高は6,206,567千円(前期比1.6%増)、営業損失は940,050千円(前期は87,161千円の営業利益)となりました。
(出版事業)
出版事業におきましては、コミック誌の定期刊行物は「月刊コミックガーデン」(12点)を刊行しました。書籍(コミックス、ノベルス、原作ガイドブックを含む)は、2023年春にアニメ放送された「転生貴族の異世界冒険録」「魔導具師ダリヤはうつむかない~Dahliya Wilts No More~」「王太子に婚約破棄されたので、もうバカのふりはやめようと思います」の最新刊等、147点を刊行しました。電子書籍は前年比10%増の売上となり今期業績に貢献しました。
以上に加え、株式会社リンガ・フランカの清算があった事により、当事業の売上高は2,335,841千円(前期比19.5%減)、営業利益は482,388千円(前期比14.2%減)となりました。
(版権事業)
版権事業におきましては、「ハイキュー!!」「SPY × FAMILY」「進撃の巨人」「攻殻機動隊」「銀河英雄伝説 Die Neue These」等のシリーズタイトルを中心に、二次利用による収益分配を計上しました。
劇場上映しました「劇場版 ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦」は興行収入100億円を超えるヒットとなり、版権事業に大きく貢献しました。
以上により、当事業の売上高は3,004,008千円(前期比62.1%増)、営業利益は1,823,004千円(前期比282.4%増)となりました。
(その他事業)
その他事業におきましては、雑誌のイラスト描きやキャラクターの商品販売等により、当事業の売上高は294,941千円(前期比1.6%減)、営業損失は18,277千円(前期は5,933千円の営業利益)となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は7,746,825千円となり、前期と比べ1,628,533千円(前期比26.6%増)の増加となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動による資金の増加は、3,056,010千円(前期は1,818,782千円の増加)となりました。これは主に税金等調整前当期純利益が1,540,511千円、売上債権の減少が883,885千円、未払印税の増加が621,228千円、減価償却費が607,586千円、受注損失引当金の増加が223,706千円、一方、預り金の減少が596,950千円、法人税等の支払額が232,768千円等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動による資金の減少は、1,284,910千円(前期は966,754千円の減少)となりました。これは主にコンテンツ資産やソフトウェアの無形固定資産の取得による支出が768,115千円、映像マスターや建物及び構築物等の有形固定資産の取得による支出が456,185千円等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動による資金の減少は、146,997千円(前期は33,255千円の減少)となりました。これは主に配当金の支払額が191,945千円等によるものであります。
③ 生産、受注及び販売の実績
a. 受注制作実績
当連結会計年度における映像制作事業の制作実績及び受注状況を映像制作事業の区分ごとに示すと、次のとおりであります。なお、出版事業及び版権事業は、受注制作ではないため、制作実績及び受注実績を記載しておりません。
映像制作実績
|
区分 |
制作高(千円) |
前年同期比(%) |
|
TV・配信・ビデオ用アニメ |
5,341,366 |
25.0 |
|
劇場用アニメ |
599,565 |
△10.7 |
|
その他のアニメ |
808,522 |
7.6 |
|
その他 |
31,811 |
△16.8 |
|
合 計 |
6,781,264 |
18.3 |
(注)金額は、製造原価によっております。
受注実績
|
区分 |
受注高(千円) |
前年同期比(%) |
受注残高(千円) |
前年同期比(%) |
|
TV・配信・ビデオ用アニメ |
4,324,140 |
△44.7 |
16,377,567 |
7.9 |
|
劇場用アニメ |
700,000 |
△54.5 |
1,600,000 |
△14.4 |
|
その他のアニメ |
1,042,293 |
50.3 |
1,156,019 |
53.9 |
|
その他 |
1,900 |
△86.8 |
- |
△100.0 |
|
合 計 |
6,068,333 |
△39.7 |
19,133,586 |
7.4 |
b. 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
販売高(千円) |
前年同期比(%) |
|
映像制作事業 |
6,206,567 |
1.6 |
|
出版事業 |
2,335,841 |
△19.5 |
|
版権事業 |
3,004,008 |
62.1 |
|
その他事業 |
294,941 |
△1.6 |
|
合 計 |
11,841,359 |
6.1 |
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
|
前連結会計年度 (自 2022年6月1日 至 2023年5月31日) |
当連結会計年度 (自 2023年6月1日 至 2024年5月31日) |
||||
|
相手先 |
金額 (千円) |
割合 (%) |
相手先 |
金額 (千円) |
割合 (%) |
|
東宝㈱ |
1,188,409 |
10.6 |
東宝㈱ |
2,827,799 |
23.9 |
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されております。
また、当社経営陣は、連結財務諸表の作成に際し、決算日における資産・負債の報告数値及び偶発資産・負債の開示並びに当該会計期間における収益・費用に影響を与える見積りを合理的に行わなければなりません。経営陣は見積りに影響を与える要因を把握し、把握した要因に関して適切な仮定設定、情報収集を行い、見積り金額を計算しております。実際の結果は、見積り特有の不確実性により、見積りと異なる場合があります。
なお、重要な会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a. 概況
概況につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載しております。
b. セグメント別の状況(売上高、営業利益の分析)
セグメント別の状況につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載しております。
c. 営業外収益(費用)
営業外収益は199,351千円(前期比279.4%増)となりました。
主な要因は投資事業組合運用益が117,336千円、受取手数料が26,244千円増加したことであります。
営業外費用は44,869千円(前期比1.5%増)となりました。
主な要因は賃貸収入原価6,437千円減少したことであります。
d. 特別利益
特別利益は202,000千円(前期の特別利益の計上はありません。)
主な要因は受取補償金が200,000千円増加したことであります。
e. 特別損失
特別損失は41,706千円(前期は729千円)となりました。
主な要因は棚卸資産廃棄損が32,886千円、減損損失が7,952千円増加したことであります。
f. 税金等調整前当期純利益
以上の結果、税金等調整前当期純利益は1,540,511千円(前期54.2%増)となりました。
g. 法人税、住民税及び事業税(法人税等調整額)
法人税、住民税及び事業税の負担額は法人税等調整額を含め408,676千円(前期比73.2%増)となりました。
h. 親会社株主に帰属する当期純利益
以上の結果、親会社株主に帰属する当期純利益は1,158,412千円(前期比51.1%増)となりました。
③ 当連結会計年度の財政状態の分析
a. 資産
資産合計は、14,001,674千円(前期比11.6%増)となりました。
流動資産につきましては、主に現金及び預金が1,628,533千円増加し、一方、受取手形、売掛金及び契約資産が879,521千円減少し、結果、10,712,542千円となりました。
固定資産につきましては、主にコンテンツ資産が683,994千円増加し、一方、映像マスターが111,473千円減少し、結果、3,289,131千円となりました。
b. 負債
負債合計は、6,683,625千円(前期比5.5%増)となりました。
流動負債につきましては、主に未払印税が621,228千円、受注損失引当金が223,706千円、買掛金が162,063千円、未払法人税等が162,018千円増加し、一方、預り金が596,950千円、株式給付引当金が105,966千円減少し、結果、6,282,669千円となりました。
固定負債につきましては、主に株式給付引当金が34,626千円、退職給付に係る負債が18,780千円増加し、結果、400,955千円となりました。
c. 純資産
純資産は、7,318,048千円(前期比17.9%増)となりました。
主な要因は、親会社株主に帰属する当期純利益及び剰余金の配当により利益剰余金が965,484千円増加し、一方、株式給付信託(J-ESOP)制度による自己株式の給付により自己株式が118,588千円減少したことであります。
④ 経営成績に重要な影響を与える要因について
「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
⑤ 資本の財源及び資金の流動性についての分析
キャッシュ・フローの状況
キャッシュ・フローの状況につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
⑥ 資本の財源及び資金の流動性
a. 資金需要
当社グループの運転資金需要の主なものは、映像制作事業並びに出版事業に係わる売上原価及び、労務費、業務委託費及び外注費が主な部分を占めております。また、版権事業における権利取得のための出資金があります。
設備資金といたしましては、編集機器、コンピュータ購入費やネットワーク費等があります。
b. 財務政策
運転資金につきましては、自己資金で対応することを原則としておりますが、自己資金で賄えない急な資金需要が発生する等の場合は、金利動向を踏まえ必要に応じ長期・短期借入金で調達しております。
設備資金及び作品への出資金につきましては、社債の発行、長期借入金により最適な調達を行っていく方針であり、調達時期、条件について最も有利な手段を選択するべく検討することとしております。
⑦ 経営者の問題認識と今後の方針について
「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等及び3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
特記すべき事項はありません。
特記すべき事項はありません。