(1)経営方針
当社グループは、「人・社会・地球との共存共栄を図り、豊かな社会づくりに貢献する価値創造企業を目指す」という企業理念のもと、オープンでフェアな企業活動に努めるとともに、社会的責任の遂行と地球環境の保全に取り組み、創造性を発揮して、お客さま、株主、従業員、地域社会等、すべてのステークホルダーにご満足いただける付加価値の提供を経営の基本理念としております。
(2)経営環境
地政学面では、保護主義政策による貿易摩擦の拡大や移民政策転換による経済成長への懸念、国内外の政治不安により先行きが見通しづらくなっております。また、経済面ではインフレ抑制を目的とした金融引き締めが成長の足かせとなるなど、不確実性の高い状況が続いております。
(3)経営戦略等
当社グループは、2016年5月に「Global Vision」を策定し、あるべき姿として「Be the Right ONE」を掲げ、当社グループらしい事業を広げております。また「未来の子供たちへより良い地球を届ける」というスローガンのもと、産業ライフサイクルを通じて温室効果ガス(Greenhouse Gas、以下GHG)排出削減に貢献する事業を加速・推進してまいります。GHG排出量(Scope1、2)(※1)を2030年までに2019年比で50%削減し、2050年には実質カーボンニュートラルとする目標実現に向けてグローバルでの脱炭素社会への移行に貢献してまいります。
※1 Scope1:自社での燃料の使用などによるGHGの直接排出(石油・ガスなど)
Scope2:自社が購入した電気・熱の使用などによるGHGの間接排出
(4)事業上及び財務上の対処すべき課題
当社グループは成長戦略の実現を目指し、事業を通じた地球課題の解決に取り組んでおります。これまで培ってきたモビリティを中心としたCore Value領域、資源循環など社会課題解決に貢献するSocial Value領域、再生可能エネルギーなど地球環境課題の解決に貢献するNature Value領域で次元上昇を実現いたします。また、それぞれの領域を掛け合わせることで新たな事業を創出し、社会やお客さまへ唯一無二の価値を提供してまいります。
当社グループでは、世界120以上の国と地域の多様性に富む約7万人の社員一人ひとりが、個性を活かし豊田通商DNAを覚醒させ、「Be the Right ONE」を追求しております。「未来の子供たちに、より良い地球を届ける」というミッションに向かって、ひとつの生命体として当社グループ全社員の多様な力を結集し、サステナブルな成長を目指してまいります。
当社グループの基本理念は、「人・社会・地球との共存共栄を図り、豊かな社会づくりに貢献する価値創造企業を目指す」という企業理念と行動指針(グローバル行動倫理規範(COCE)として具体化)で構成されております。この基本理念を「恒久的に変化しない、世代を通じて継承すべき最高概念」と位置付け、当社はこれまで地球環境に配慮したビジネスの展開、社会に貢献する人づくりを通して、企業価値を高めてまいりました。
現在、私たちが住む世界は気候変動に伴う異常気象、森林破壊、資源枯渇、人権問題等さまざまな問題に直面しております。企業活動を行う上で社会や環境は配慮するだけではなく、ビジネスを進めるにあたっての前提条件であり、「ビジネスの対象そのもの」になってきております。より良い社会と地球環境を皆さまと共に創り上げていくことが当社のサステナビリティの本質であり、まさに「経営そのもの」と考えております。
(1)ガバナンス
当社グループのサステナビリティ経営の推進体制は下図のとおり、取締役会の監督の下、社長がサステナビリティ推進委員会を招集し、その議論・決定事項を取締役会に報告する体制になっております。また、取締役はESGに関する豊富な能力・経験を有しており、取締役会による適切な監督が行われる体制を整えております。さらに、各関連会議体にてサステナビリティに関する個別のテーマについての議論を行っており、特に気候変動については社長を議長として毎月開催されるカーボンニュートラル推進会議で脱炭素社会への移行に向けた戦略を議論しております。サステナビリティ推進委員会では、サステナビリティ担当役員であるCSOの下、経営企画部サステナビリティ推進室が事務局となり、各営業本部・コーポレート部門・グループ会社と協働しながら、サステナビリティ推進施策を実行しております。
サステナビリティ推進体制(2025年3月現在)
(2)リスク管理
当社ではサステナビリティ推進委員会を年1回開催しております。社長が同委員会の委員長を務め、副社長、営業本部CEO、コーポレートの関連役員に加え、アドバイザーとして社外取締役4名、オブザーバーとして会長と常勤監査役を招集しております。同委員会ではサステナビリティに関する重要な方針を決定するとともに、社会動向の把握と当社の対応等について議論・決定しております。2024年12月に開催された同委員会の主な議題は以下のとおりであり、審議内容については2024年12月の取締役会で報告を行っております。
<主な議題>
・当社のサステナビリティの基本的な考え方について
・当社グループのみならず、サプライヤーまで含めた取り組みの必要性と対応について
・海外拠点特有の課題報告と対応について
<委員長と社外取締役からの主な講評>
・成長戦略にサステナビリティの要素が組み込まれていることを適切にステークホルダーへ伝えていくこと
・サステナビリティの取り組みは、サプライヤーにまで広げた活動を進めること
・サプライヤーとの取り組みは、寄り添う姿勢で同じ目線に立つこと
・外部からの要求事項や社会へのインパクトの定量化を意識して推進し続けること
<今後の取り組み>
・サプライチェーンの人権や環境に関する課題の把握とリスク低減に向けた取り組み実施
・適切な情報開示及び社内外ステークホルダーとの対話強化
・外部環境の変化を踏まえたマテリアリティKPIの継続的な見直し
サステナビリティ推進年表
(3)重要な課題への対応
当社グループは経営戦略に基づき注力する社会課題を明確にするために、「企業理念」「Global Vision」の実現に向けて意識すべき重要課題(マテリアリティ)を特定しております。
「社会課題の解決と会社の成長を両立する最重要課題」
・交通死傷者ゼロを目指し、安全で快適なモビリティ社会の実現に貢献
・クリーンエネルギーや革新的技術を活用し、自動車/工場・プラントCO₂を削減することで、脱炭素社会移行に貢献
・廃棄物を資源化することで、モノづくりを支え、循環型社会に貢献
・アフリカをはじめとした開発途上国と共に成長し、事業を通じて社会課題の解決に取り組む
「会社の成長を支える土台となる最重要課題」
・安全とコンプライアンスの遵守をビジネスの入口とし、社会に信頼される組織であり続ける
・人権を尊重し、人を育て、活かし、「社会に貢献する人づくり」に積極的に取り組む
社会課題の解決と会社の成長を両立する4つのマテリアリティの一つである「クリーンエネルギーや革新的技術を活用し、自動車/工場・プラントCO₂を削減することで、脱炭素社会移行に貢献」では、気候変動を重要な経営課題の一つと認識し、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の枠組みに基づいた取り組みの拡充を図り、カーボンニュートラル・サーキュラーエコノミーを推進し解決に向け取り組んでおります。
また、会社の成長を支える土台となる2つのマテリアリティの一つである「人権を尊重し、人を育て、活かし、『社会に貢献する人づくり』に積極的に取り組む」では、グローバルな視点で事業創造ができる人財、世界の市場で活躍できる人財の育成に注力するとともに、地域コミュニティでの職業訓練機会の提供などを通じ、社内外で社会に有用かつ貢献する人づくりに積極的に取り組んでおります。
①気候変動
(a)ガバナンス
当社グループでは気候変動に関わる事業リスク・機会をマテリアリティの一つとして選定しております。マテリアリティについては、社長を委員長とするサステナビリティ推進委員会(年1回開催)(※1)でその取り組み内容を確認し、同委員会の構成メンバーである各営業本部CEOを通じて、事業戦略に反映させております。2020年よりマテリアリティに係るKPIを設定し、同委員会がその進捗を確認、議論内容を取締役会へ報告しております。また取締役は気候変動も含めたESGに関する豊富な能力・経験を有しており、適切な監督が行われる体制を整えております。
気候変動については社長を議長とするカーボンニュートラル(CN)推進会議(毎月開催)(※2)において脱炭素社会への移行に向けた戦略を議論するとともに、当社が排出するGHG削減の進捗管理も行っております。同会議の事務局は2022年4月に設置されたカーボンニュートラル推進部が務めており、同部は専門組織として脱炭素への取り組みをさらに加速させる役割を担っております。
省エネに関する目標達成状況や気候変動に関する法令改正及び新たな要求事項への対応状況については、年に1回、安全・環境会議(※3)で審議し、その進捗の確認を行っております。その審議内容は、同会議の構成メンバーである各営業本部・グループ会社担当者を通じて、事業活動に反映しております。
なお、当社はGHG排出削減を促進するために、社内カーボンプライシング制度を導入しております。この制度では、GHG排出削減への各営業本部の取り組みの進捗状況をその責任者である本部CEOの業績・報酬に反映させております。
※1
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サステナビリティ推進委員会 |
気候変動を含むマテリアリティに係る方針、重要事項の決定 |
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委員長 |
貸谷 伊知郎(取締役社長) |
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担当役員 |
富永 浩史(取締役・CSO) |
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事務局 |
経営企画部 サステナビリティ推進室 |
※2
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カーボンニュートラル推進会議 |
カーボンニュートラル実現に向けた戦略の決定 |
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議長 |
貸谷 伊知郎(取締役社長) |
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担当役員 |
今井 斗志光(副社長・CTO) |
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事務局 |
カーボンニュートラル推進部 |
※3
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安全・環境会議 |
気候変動に関する法令対応などの進捗管理 |
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議長 |
綿貫 辰也(副社長) |
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担当役員 |
綿貫 辰也(副社長) |
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事務局 |
安全・環境推進部 |
(注)2025年3月現在
(b)戦略
[ⅰ]シナリオ分析
当社は、気候変動の影響が大きい事業を選定し、TCFD提言に沿った形でシナリオ分析を実施しております。
事業への影響については、影響が大きい要素を選定してシナリオ分析を実施いたしました。リスクでは移行リスク(政策・規制、技術、市場、評判)及び物理リスク(急性・慢性)を、機会では資源効率、エネルギー源、製品及びサービス、並びに市場を考慮しております。
また、当社グループでは2030年にGHG排出量(Scope1、2)を2019年比50%削減することを目指しており、今回のシナリオ分析においても同様に2030年を分析のタイムフレームとしております。
<参照シナリオ>
気候変動に起因して、当社グループの事業環境が大きく変化した際に、新たなビジネスの機会及び事業レジリエンスを評価し、事業への影響を分析することを目的として、IEA(International Energy Agency:国際エネルギー機関)及びIPCC(気候変動に関する政府間パネル)などの下記シナリオを参照しております。
<対象事業選定>
当社グループ事業のうち、気候変動の影響が大きい事業(下記A~Dの観点)を対象事業として選定し、リチウム事業、資源循環事業、再生可能エネルギー事業、自動車販売事業、自動車部品物流事業についてシナリオ分析を行いました。なお、2024年3月期まではアルミ溶湯事業を選定していましたが、GHG排出量、シナリオ分析の対象範囲拡大の観点から、2025年3月期よりアルミ溶湯事業を含む資源循環事業として選定し、分析範囲を拡大しております。また、同様の観点から新たに自動車部品物流事業を選定し、シナリオ分析に追加いたしました。
当シナリオ分析におけるシナリオ・事業環境認識は、国際的な機関などが提示する主なシナリオを基にしており、当社グループの中長期の見通しではありません。
[ⅱ]各事業におけるシナリオ分析結果
<リチウム事業>
当社グループは、電動車に不可欠な車載用リチウムイオン電池の原料を供給するため、アルゼンチンのオラロス塩湖で炭酸リチウムの生産を2014年に開始しております。また、日本国内では、福島県双葉郡楢葉町において水酸化リチウムの製造工場を建設しており、2022年に生産を開始しております。
当社グループの対応策
電動車の本格的な普及に伴うリチウムの需要増加に対し、既存能力の増強により長期安定的な供給体制構築を目指しております。また、今後の電池高容量化に伴う水酸化リチウムの需要増加を見込み、事業領域を拡大し、安定供給に向けた体制構築を進めてまいります。
<資源循環事業>
当社グループのリサイクルの歴史は古く、1970年代から約50年にわたり、サーキュラーエコノミー(CE)を事業として推進してまいりました。当社グループは、「全てのモノは資源」と考えており、廃棄物を回収し、それを選別、再資源化し、モノづくりを支える「資源循環」を推進しております。
2024年3月期まではアルミ溶湯事業を選定しておりましたが、GHG排出量、シナリオ分析の対象範囲拡大の観点から、2025年3月期よりアルミ溶湯事業を含む資源循環事業として選定し、分析範囲を拡大しております。
当社グループの対応策
当事業は重点分野である「循環型静脈」の主要事業と位置付けられており、リサイクルバリューチェーンの川上から川下までの機能強化を図り、クローズドループの構築を進めてまいります。
<再生可能エネルギー事業>
当社グループは、風力、太陽光、水力、地熱、バイオマスなどの発電事業をグローバルで展開しており、アフリカ、新興国での開発促進、洋上風力開発などの事業にも注力しております。
当社グループの対応策
当事業は当社グループの重点分野である「再生可能エネルギー・エネルギーマネジメント」と位置付けられており、既存ビジネスモデルを強化してグローバル展開を加速させるとともに、電源メニューの多様化やエネルギーマネジメントなど、事業領域の拡大を図っております。競争力のある再生可能エネルギーの安定供給で、より良い地球環境づくりに貢献してまいります。
<自動車販売事業>
当社グループは、トヨタグループを中心とした自動車・輸送用機器メーカーが国内外で生産する乗用車、バス・トラックなどの商用車、産業車輌、補給部品を世界各国へ輸出しております。また、世界150カ国に及ぶグローバルネットワークを通じて、輸入販売総代理店や販売店の事業を展開しております。
当社グループの対応策
新車販売市場は新興国を中心に今後も拡大していくことが想定されていることから、当社グループは全世界での販売体制を強化してまいります。また、電動車ラインアップの拡充に併せて、その基幹部品である電池素材の資源確保や電池の3R(リビルト、リユース、リサイクル)の事業領域を開拓し、電動車の普及を促進いたします。
<自動車部品物流事業>
当社グループは世界中に現地法人及び事業体を展開し、各拠点・物流網を駆使し、最適な部品の一貫物流体制を整えることにより、グローバル規模での自動車部品サプライチェーンを構築しております。
2025年3月期より、GHG排出量、シナリオ分析の対象範囲拡大の観点から新たに自動車部品物流事業を選定、分析いたしました。
当社グループの対応策
グローバルでの自動車生産台数の増加に伴い、自動車部品市場は今後も拡大することが予想されております。当社グループは電動化における新たな部品パートナーとの連携強化・グリーンな物流を推進し、自動車部品サプライチェーンの持続的な成長に貢献してまいります。
(c)リスク管理
当社グループは気候変動を含む環境リスクを高い基準で管理しております。気候変動に関わる事業機会とリスクは、CN推進会議、安全・環境会議とサステナビリティ推進委員会で審議され、その構成メンバーが事業戦略策定や活動に取り入れております。特に、CN推進会議は社長を議長として毎月開催、外部環境を踏まえた気候変動のリスク・機会の識別や当社への影響の評価、また気候変動に関連する事業の進捗を確認しております。統合リスク管理委員会では、グローバルなリスクマネジメント状況を検証するために、最も注力すべき10のリスク項目を定義、その一つとして、環境を掲げ、全社的なリスク管理プロセスの中でも気候変動リスクを管理しております。さらに、そのリスク管理プロセスをモニタリングするために、当社は環境マネジメントシステムに関する国際規格であるISO14001を取得しており、3年に1度国内外の連結子会社を対象に本社による環境内部監査を実施しております。
<投融資案件>
投融資委員会には副社長・CSO・CFOが、投融資協議会にはCSO補佐・CFO補佐が、また、投資戦略会議には社長・副社長・CSO・CFO・経営企画部長がメンバーとして参加することで、投資案件がESGに与える影響を確認しております。投融資委員会・協議会の評価項目の中には環境リスクがあり、投融資委員会または投融資協議会に上げられた一定要件以上の案件は、CNに関する事前評価を必須としており、投資に伴って増加するScope1、Scope2の排出量の把握とその削減方法、また、その投資によるScope3(※1)の削減効果、社会のGHG削減に貢献する効果について確認をしております。
※1 Scope3:製品の原材料調達、製造、販売、消費、廃棄までの過程における排出温室効果ガス
(d)指標及び目標
[ⅰ]GHG排出削減目標と今後の取り組み
社会のCNへの貢献と同様に、自社が排出するGHGのCNは不可欠であります。当社はパリ協定を支持し、脱炭素社会移行に貢献するための具体的な方針として、GHG排出量(Scope1、2)を、2030年までに2019年比で50%削減し、2050年にカーボンニュートラルとする目標を策定しております。また、サプライチェーン全体のGHG排出量を把握するためにScope3排出量を算定し、2023年実績から全量開示しております。当社グループは徹底的な省エネ・再エネ推進(LED化、太陽光発電設備の設置等)を実施しております。また、生産プロセスや物流における燃料転換・消費効率化・技術革新・サプライヤー各社さまやお客さまとの協働によるGHG排出量削減を進めることで、この目標の実現を目指してまいります。産業ライフサイクルを通じてGHG削減に貢献する事業を、全社レベルで加速・推進できるのは当社グループの強みであります。当社グループの全従業員が一丸となり、全力で取り組んでいくことで、社会課題の解決に貢献してまいります。
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[ⅱ]GHG排出量データ
2024年 Scope 1、2 排出量
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排出量(千t-CO₂) |
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Scope1、2 |
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上記数値は速報値であり、確定値については第三者保証と共に別途当社ウェブサイトにて開示いたします。
(ご参考)2023年 Scope3 排出量
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カテゴリー |
排出量(千t-CO₂) |
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1 購入した製品・サービス |
77,588 |
|
2 資本財 |
596 |
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3 燃料・エネルギー関連 |
137 |
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4 輸送・配送(上流) |
3,460 |
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5 事業から出る廃棄物 |
19 |
|
6 出張 |
9 |
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7 雇用者の通勤 |
29 |
|
8 リース資産(上流) |
対象外 |
|
9 輸送・配送(下流) |
4,695 |
|
10 販売した製品の加工 |
143 |
|
11 販売した製品の使用 |
34,245 |
|
12 販売した製品の廃棄 |
18 |
|
13 リース資産 |
23 |
|
14 フランチャイズ |
6 |
|
15 投資 |
3,160 |
|
合計 |
|
2024年 Scope3 排出量については、第三者保証と共に当社ウェブサイトにて開示いたします。
②人的資本
(a)戦略
当社グループは、経営戦略実現の基盤となる事業戦略と人事戦略をコインの裏表と捉え、事業戦略と連動した人事戦略を推進することが成長のカギと考えております。社員はHuman Capital(人的資本)であり、持続的にその価値を高める環境・文化風土、個を活かす仕組みづくりに邁進しております。人財の価値を高めることを通じて、社会づくりに貢献する価値創造企業「People Company Toyotsu(人の豊通)」を実現することが、私たちの目指す姿であります。
当社は、この人的資本経営の中核を担う「ヒト」の力を最大化させるため、「事業に必要な人財の質と量を確保する」ことと、「個々が十分に能力を発揮できる環境をつくる」ことが最も重要であると考え、「人財の強化」と「人財の活躍推進」の2つの柱を掲げております。人事に関する全ての取り組みは、この2つの柱に基づいており、以下観点で施策を推進しております。
[ⅰ]経営人財・事業創造人財の輩出
経営環境の変化に柔軟に対応し、パートナーとともに、絶えず価値創造を継続するために、事業経営や事業創造のできるグローバル人財の育成に注力しております。人の成長は7割が仕事の経験、2割が上司・先輩からのアドバイスやフィードバック、1割が研修・書籍からの学びによるものというロミンガーの法則に基づき、業務を通じた成長機会を最大化させつつ、グローバルでの選抜研修を初めとする様々な研修機会を提供し、アクションラーニングにより業務と連動させることで、豊通パーソンらしい成長を加速させるサイクルを仕組み化しております。
[ⅱ]適所適材、適材適所
人財のキャリア志向に基づき、能力が最大限発揮される最適なポストに登用する適材適所に取り組んでおります。それに加え、事業戦略と人事戦略を連動させるために、事業上重要なポストとその役割を明確にし、最適な人財を配置する適所適材を重視しております。
[ⅲ]DE&I
当社グループは、歴史的にさまざまな企業との統合やパートナーシップにより事業やその展開地域を拡大してきており、グローバルに多様性に富む約7万人の社員が働いております。このような状況から、「多様な人財の活躍の場と機会の拡大」「多様性を活かす会社風土の醸成と個人の意識改革」「ワークインライフの実現」という3つのテーマを軸としてDE&Iの取り組みを加速させております。
[ⅳ]健康経営
当社グループにとって、社員の心身の健康は会社の一番の財産であります。その上で、健康保持・増進が、社員のエンゲージメント向上や組織の活性化に寄与し、結果として企業の生産性向上につながると考えております。一人ひとりが自立的に自身の健康を保持・増進する「ヘルスリテラシーの向上(注)」を最重要課題と定め、従業員の健康、職場活力の向上、社会への貢献という「健康経営のための3つの指針」に基づき、各種施策を推進しております。
(注)社員一人ひとりが自立的に自身の健康を保持・増進すること
(注)2025年3月現在
[ⅴ]人権尊重
当社グループは、企業理念において「人・社会・地球との共存共栄を図り、豊かな社会づくりに貢献する価値創造企業を目指す」ことを掲げ、事業活動を通じて社会課題の解決に取り組んでおります。その中で、私たちが「Be the Right ONE」となるため、事業展開する国・地域の人権課題を理解し、適切な行動をとっていくことが極めて重要な責任であると認識しております。左記の責任を果たすために、当社グループはサステナビリティ重要課題(マテリアリティ)への取り組みの一つとして「人権を尊重し、人を育て、活かし、『社会に貢献する人づくり』に積極的に取り組む」ことを掲げております。
豊田通商グループ人権方針については、当社ウェブサイトをご確認ください。
(b)指標及び目標
女性管理職比率(注)
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指標 |
指標の説明 |
前事業年度実績 |
当事業年度実績 |
目標 |
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豊田通商㈱における 管理職の女性割合 |
7.4% |
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女性の次世代管理職候補者層の育成・拡大を目的に、2015年より女性社員を対象としたウィメンズメンタリングプログラム(WMP)を継続的に実施しております。本プログラムを通じて、社内の他本部の部長や社外の女性管理職経験者がメンターとなり、キャリア意識の啓発、視野の拡大、課題解決の支援を行っております。
また女性管理職の継続的な輩出に向けて2021年より個別育成計画の策定及びレビューを実施しております。本育成計画を通じて、女性のライフイベントも考慮に入れ、早期海外派遣や、管理職への登用を行っております。毎年のDE&I役員報告の場では、各本部が女性活躍推進に向けた活動内容を報告し、進捗を確認しております。
育児休業等取得率(注)
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指標 |
指標の説明 |
前事業年度実績 |
当事業年度実績 |
目標 |
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育児休業及び育児の為の休暇制度の利用率 |
91.6% 内、男性84.3% |
内、男性96.4% |
内、男性100% |
2023年4月より育児から学ぶ「育習」を推奨するとともに、育児休業期間のうち最大20営業日を有給化することで、育児休業制度の理解と利用しやすい風土作りを行っております。また子どもが生まれた男性社員全員とその上長宛に育児休業取得を勧める個別案内を送付し、男性の育児参画を促進しております。
(注)現時点では、当社のみの管理としているため、指標及び目標は、当社に限ります。
(1)当社グループのリスク管理
①リスク管理基本方針
当社グループは、「リスク管理基本方針」において「リスク」を「業務に不測の損失を生じさせ、当社グループの財産、信用等を毀損する可能性を有するもの」と定義し、業務から生じる様々な「リスク」について認識・検討を行い、経営の安全性を確保し、企業価値を高めるため、適切かつ統制された範囲内でリスクを取ることを基本的な考え方としております。
また、同方針に基づき、連結ベースのリスクエクスポージャー(RA元本)に与信格付やカントリーリスク等に基づく最大予想損失率であるリスクウェイト(RW)を乗じてリスクアセット(RA)を算出し、当社の財務的な企業体力であるリスクバッファー(RB) との均衡を図る「リスクアセットマネジメント」に取り組んでおります。
財務基本方針である「RA÷RB<1.0」を堅持するため、投資パイプライン等を踏まえたRA÷RBのシミュレーションを行い、投資と財務健全性の両立を図っております。相対的にカントリーリスクが高い新興国へのエクスポージャーについては、NEXI(㈱日本貿易保険)の保険等によるリスクヘッジのほか、リスクバッファーに応じて国別の上限値を設定し、特定国への過度な集中を防ぐカントリーリスク管理を行っております。
また、取引審査や投資案件の協議ではRVA(Risk adjusted Value Added)による評価を実施し、リスクに対する十分なリターン確保の意識付けを図っております。
これらの取り組みによるRAの管理とRBの継続的な積み上げの結果、2025年3月期は引き続きRAがRBの範囲内(RA÷RB=0.6<1.0)となっており、健全かつ安定した財務体質を維持しております。
[地域別RAの分散状況(2025年3月末)]
②リスク管理体制
リスク管理基本方針を具体的に遂行する体制として、COSO-ERMフレームワークなどの考え方を参考に、従来各リスクに対してリスク主管部が個別に行ってきたリスク管理に加えて、よりグローバルなリスク管理を推進するため、2020年4月に「統合リスク管理委員会」を発足いたしました。同委員会は、CFOを委員長とし、海外各地域のリスク担当ヘッドである地域CFOを中心に、営業本部企画部長や各リスク主管担当役員・部長により構成されております。
当社グループの経営に重大な影響を及ぼすリスクを明確化し、経営目標に関する全社的な重要リスクの特定及び対応方針の協議・決定と、リスク管理プロセスの有効性検証を行い、社長への報告及び取締役会へリスクマネジメントに関する議題の提言を行っております。取締役会はその提言に基づいてリスク管理プロセスの有効性を継続的に監督し、変更が必要な場合は適切な措置を講じております。
[当社グループのリスクマネジメント体制]

同委員会では、「Check10」「安全とコンプライアンスの総点検」「戦略/BCP」「サステナビリティ」の4つの活動を通じてリスク管理を推進しております。
まず、「Check10」は当社として特に注力すべき10のリスク項目を抽出し、毎年各リスクに対してグループ会社各社が当該項目の達成度を自己点検し、グループ会社の所在する地域の中心となる地域統括部門が点検結果をレビュー、その結果を踏まえてグループ会社各社が改善活動を行う仕組みであります。Check10では、リスク項目ごとにリスクの大きさと管理体制の2軸評価による評点を付けてヒートマップを作成、グループ会社各社のリスク項目ごとのリスク管理状況を視える化することで、脆弱な部分をあぶり出し、適切に改善策を打つことを狙いとしております。改善には必要に応じてリスク主管部が支援を行っております。
「安全とコンプライアンス総点検」は、当社グループ全体で共有している「安全とコンプライアンスはすべての仕事の入口」との価値観に基づき、当社単体の全部署・国内外拠点及びグループ会社各社において、自部署・自社の事業運営に必要な許認可・登録等の取得状況、並びに法令等に基づく品質・認証基準の遵守状況の点検を自ら実施すると共に、そのプロセスと結果を所管本部の役員等が現地現物でチェックする活動であります。「Check10」と「安全とコンプライアンス総点検」の活動を拡充することにより、本社のリスク主管部とグループ会社各社の連携強化のみならず、当該地域内での関係強化も図り、連結ベースでの統合的なリスク管理体制の構築を図っております。
「戦略/BCP」の取り組みについては、外部環境の変化に伴う不確実性の高まりにより、当社への事業影響が増加する中、外部環境(PEST)分析を基にして事業戦略及びBCPに与えるリスクと機会を考察の上、シナリオごとの対策を講じてまいります。
「サステナビリティ」の取り組みについては、サステナビリティに関連するリスク・機会について当社の成長戦略と連動させることを目的とした分析と対策を講じてまいります。
以上のとおり、当社グループ事業遂行上に存在する重要性・緊急性の高いリスクを要素ごとに分類し、それぞれの性質に応じた社内管理体制を構築し、統合リスク管理委員会へ報告するプロセスを適切に遂行してまいります。
[Check10のリスク項目]
[Check10 リスク影響度と管理体制による2軸評価]
[リスク評価結果(ヒートマップ)のイメージ]
(2)個別のリスクについて
当有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のようなものがあります。なお、文中における将来に関する事項は、当有価証券報告書提出日現在において入手可能な情報に基づき、当社グループが合理的であると判断したものであります。
<全社管理が必要なリスク>
①カントリーリスク
当社グループは、海外の多岐の地域にわたり、商取引及び事業活動を行っており、各国の政府による規制・政治的不安・資金移動の規制等による製品の製造・購買に伴うリスクに加え、投資の損失またはその他の資産が毀損するリスクが存在しております。当社グループは、カントリーリスクが高い国における商取引及び投資については、貿易保険等によりリスクを低減することに努めております。また、最大想定損失額であるリスクアセットの上限値を各国ごとに設定し、定めた上限値の範囲内に抑えることで、特定の地域または国に対するリスクの過度な集中を防ぐことに努めております。しかしながらこうした管理やヘッジ策を講じていてもなお、取引先所在国や当社グループが事業活動を行う国の環境の悪化によるリスクを完全に回避することは難しく、状況によっては債権回収や事業遂行の遅延・不能等により当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
②世界マクロ経済環境の変化によるリスク
当社グループは、国内及び海外における自動車関連商品、その他各種商品の販売を主要事業として、これらの商品の製造・加工・販売、事業投資、サービスの提供等多岐にわたる事業を行っております。このため、日本及び関係諸国の政治経済状況の影響を受けております。ロシア・ウクライナや中東情勢、米国や中国等の影響による世界的な景気後退に伴う個人消費や設備投資の低迷が、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
③自然災害等による影響について
2011年3月の東日本大震災と同年10月のタイ大洪水でサプライチェーンが深刻な影響を受けたため、2012年4月に専門組織として総務部内にBCP推進室を設置いたしました。現在はコンプライアンス・危機管理部の危機管理・BCM推進室が、「豊田通商グループ事業継続基本方針」に従い、地震、台風等の自然災害、テロ、パンデミック等、あらゆるシナリオにおいても社員が出社不可、本社が入館不可、IT使用不可、長期停電のように重要な経営資源が使用不可になった場合のリスクへの対応として、国内外210事業でオールハザードの事業継続計画(BCP)により平時の対策と有事の対策を文書化し、事業継続マネジメント(BCM)の運用を実施しております。また、毎年3月と9月には、大規模地震によって名古屋本社または東京本社が重度に被災するシナリオで状況付与訓練(参加者にシナリオを開示せず臨機応変に対応させる訓練)を実施し、災害対策初動マニュアル並びに対策の継続的改善を実施しております。しかしながら、地震・洪水等の自然災害により、当社グループの事業活動に支障が生じ、追加の対策コストが必要となった場合、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
④特定の販売先への依存
当社グループの収益のうち、トヨタ自動車㈱グループへの収益が占める比率は18.6%であります。従いまして、トヨタ自動車㈱グループとの取引の動向が、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑤金利変動リスク
当社グループは、営業債権等による信用供与・有価証券取得・固定資産取得等のために金融機関からの借入及びコマーシャル・ペーパー、社債の発行等により事業資金を手当てしておりますが、一部が変動金利条件となっており、金利上昇局面では利息負担が増加するリスクがあります。ただし、その相当部分は、変動による影響を転嫁できる営業資産に見合っております。また当社グループでは、アセット・ライアビリティ・マネジメント(ALM)を通じて金利変動リスクをミニマイズすべく取り組んでおりますが、完全に金利変動リスクを回避できるものではなく、今後の金利動向によっては当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
⑥上場有価証券の価格変動リスク
当社グループは、取引先との関係維持・強化、事業収益拡大及び企業価値向上を目的に、活発な市場で取引されている有価証券を保有しております。活発な市場で取引されている有価証券は価格変動の影響を受けることがあり、価格下落の場合には当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
<Check10にて注視しているリスク>
①商品リスク
当社グループが取り扱う非鉄金属・レアアース・食料・繊維等の相場商品には価格変動のリスクが存在いたします。そのため、商品ごとにポジション限度枠を設定し、限度枠内での運用状況を定期的にモニタリングしております。こうした価格変動のリスクを低減する施策を講じておりますが、必ずしも価格変動リスクを完全に回避できるものではなく、商品市況や相場の動向によっては、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
②信用リスク
当社グループは多様な営業活動により生じた国内外の取引先に対する金銭債権回収に関するリスクが存在いたします。こうした信用リスクに対応するため、当社グループでは取引先に対し、売掛金・前払金等の取引種別ごとに債権限度、約定限度枠を設定、全社システムによりグループの信用リスクを把握しております。また、財務内容を基にした当社独自基準の格付(8段階)を定め定期的に取引先の状況を確認し、低格付の取引先に対しては、取引条件の見直し、債権保全、撤退等の取引方針を定め、個別に重点管理を行い、損失発生の防止に努めております。このような与信管理を行っておりますが、取引先の財務内容が悪化した場合や予期せぬ事態発生によるリスクを完全に回避することは難しく、取引先の倒産等による債権回収が困難となった場合、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
③事業投資リスク
当連結会計年度末現在、当社は770社の連結子会社及び227社の持分法適用会社を有しており、既存提携関係の強化や新規提携を行うことにより既存事業の拡大や機能強化または新規事業への参入を目指しております。
当社グループの投資スタンスは、短期的な利益を狙うのではなく中長期的に事業を育て、当社グループのバリューチェーンの拡大・強化に繋がるような戦略的投資を基本としております。「当社ならでは」の強みを発揮できる事業に経営資源を集中するため、全社方針を踏まえて営業本部の方針や投資パイプラインを方針会議で協議し、一定額を超える投資は投資戦略会議で戦略性・優先順位付けを協議し、推進可否の見極めを行っております。
投資案件の検討過程では、コーポレート部門が専門的観点で事業計画を検証しております。投資案件ごとにリスク評価と低減策の協議・意見出しを行い、投融資協議会・委員会の議論を経て最終的な機関決定に至っております。また、投資意思決定の迅速化を目的に、一定の条件や金額的重要性に応じた決裁権者の設定や、国内外の一部の関係会社への決裁権限の委譲を進めております。投資実行後は、課題のある案件について、コーポレート部門と営業本部共働で課題の進捗管理・支援を継続的に実施しております(チェック&サポート活動)。また、業績悪化兆候、事業計画進捗、撤退条件等の投資モニタリングを実施し、計画どおりに進行していない案件に対する再建・撤退ルールを厳格に運用しております。
当社はかねてより、投下資本(使用資金)に求める期待収益率(使用資金コスト率)を超えた付加価値を測る TVA(※1)とリスクを測るRVA(※2)を投資の定量評価指標に活用しておりました。
企業価値への貢献度を評価できるTVAを活用しつつ、投下資本から生まれるリターンの効率性をより強く意識するため、投資案件審議のKPIとしてROIC(※3)を採用しております。ROICと対比関係にある「使用資金コスト率」は、株主資本と有利子負債のコストの加重平均としております。株主資本を当社のROE目標を意識したコストとして設定することで、資金効率の改善や利益率の改善、売上拡大を通じたROIC向上が、ROE目標達成に結びつくよう設計しております。また、カントリーリスクに応じた調整を加えることで、グローバルな当社の事業に応じた目線設定を行っております。
しかしながら、事業環境の変化や技術革新、その他不測の事態により投資先企業の価値または株式の市場価値が低迷した場合には、当社グループが投資金額の全部もしくは相当部分を失う、またはこれらの投資先企業に対する追加の資金提供を余儀なくされることがあります。このような場合、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
[投資サイクル]
※1 TVA:Toyotsu Value Achievementの略称=(基礎収益-利息収支)×(1-各国税率)-使用資金×
国別使用資金コスト率
-基礎収益とは、営業活動以外から発生した、非経常的で臨時的、かつ多額の損益を調整した税引前
当期利益であり、営業本部・事業体の「稼ぐ力」を示す
-国別使用資金コスト率とは、営業活動・事業活動に要する使用資金から生じる、国別資本コストと
国債利回りの加重平均によるコスト率を示す
※2 RVA:Risk adjusted Value Addedの略称=税引後基礎収益-リスクアセット×リスクコスト率
-リスクアセットとは、不測の事態が起こった場合に発生し得る最大予想損失額
-リスクコスト率とは、当社の株主資本利益率(ROE)目標値13%以上を目線とした株主期待収益率
※3 ROIC:Return on Invested Capitalの略称=(基礎収益-利息収支)×(1-各国税率)÷使用資金
④外国為替リスク
当社グループが行っている商品の売買及び投資活動等のうち、外国通貨建ての取引については、外国為替の変動による影響を受けることがあります。当社グループはこうした外国為替のリスクを一定程度まで低減するよう為替予約等によるヘッジ策を講じておりますが、必ずしも完全に回避できるものではありません。
また、当社は海外に多くのグループ会社が存在しており、各社の財務諸表を円貨に換算する際に、為替変動により、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
⑤資金調達リスク
当社グループは、事業資金を国内外の金融機関からの借入及びコマーシャル・ペーパー、社債の発行等により調達しているため、金融市場の混乱や格付機関による当社信用格付けの大幅な引き下げ、取引金融機関の融資方針変更等の事態が生じた場合、当社グループの資金調達に制約が課される可能性や、調達コストが増加する可能性があります。そのため、資産構成に合わせた最適資金調達を行うと同時に、長期資金の返済・償還時期の分散を図ることで借り換えリスクの低減を図っております。また、現預金、コミットメントライン等の活用により、安定的な流動性を確保すると同時に、金融機関との良好な取引関係の維持に努めておりますが、リスクを完全に回避できるものではありません。このようなリスクが顕在化した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑥人事労務リスク・人権リスク
(a)人事労務リスク
当社グループは、各国・各地域で事業を行うにあたり、本社及び海外拠点にて研修実施やツールの提供などによる労務管理知識向上や事業継続計画(BCP)整備による体制強化を働きかけておりますが、ストライキなどの労働争議を原因として操業が停止・制限される事態が発生した場合には、サプライチェーンや当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(b)人権リスク
当社グループは、各国・各地域で事業を行うにあたり、全連結子会社への人権デューデリジェンスを通じた人権尊重に取り組んでいるほか、国連「世界人権宣言」を含む国際人権章典、「ビジネスと人権に関する指導原則」などの国際基準に則った「豊田通商グループ人権方針」を定め、サプライヤーを含むすべてのビジネスパートナーの皆さまに対し、当該方針を遵守いただくことを働きかけております。しかしながら、不測の事態が発生した場合、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑦情報セキュリティリスク
当社グループは、トヨタグループ及び豊田通商グループ標準の情報セキュリティ規程・ガイドラインを制定し、グループ全体の対応状況の可視化と継続的な改善を実施しております。また、本ガイドラインに合わせ、ネットワークやメールセキュリティ等のITインフラ領域については、システム共通化によって、グループ全体で効率的に有効性を高める施策を実施しております。サイバー攻撃対応体制も構築し、定常的に製品脆弱性情報やセキュリティ事故等の脅威情報の収集と、迅速な対策・予防措置を実施しております。また、昨今のサイバー攻撃トレンドに鑑み、攻撃を受けた際に被害を最小化する施策として、常時通信監視及び端末のふるまい監視・自動隔離を導入しております。しかしながら、外部からの予期せぬ不正アクセスやコンピューターウイルス侵入等による機密情報・個人情報の漏洩、設備・通信障害等による情報システム停止等の可能性は排除できず、この場合、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑧コンプライアンスリスク
当社グループは、国内外において多岐にわたる事業を行っており、日本における会社法、税法、独占禁止法、金融商品取引法、贈収賄関連諸法、安全保障貿易管理等貿易関連及び制裁関連諸法等の各種法令、事業活動を行う各国・地域の各種法令・規制といった様々な分野における広範な法律及び規制に服しております。当社では、役職員の職務の執行がこれら法令、規制及び企業倫理に適合することをコンプライアンスの基本方針としております。コンプライアンス専任部署であるコンプライアンス・危機管理部は、同部をハブとしたグローバルネットワークを通じてグループ全体のコンプライアンス体制を強化し、法務部等、関連するコーポレート部署の協力を得て、各種コンプライアンス施策(コンプライアンストップメッセージ、階層別コンプライアンス教育、グローバル内部通報制度整備等)を策定・実施することで、法令遵守の徹底等コンプライアンス意識の向上を図っております。
なお、物流関連のコンプライアンスリスクについては、国内の外国為替及び外国貿易法・関税法等、海外では当該国の法令、それに加えて国内・海外共に米国制裁法・米国再輸出規制等を遵守する貿易管理体制を整えることや、国内外において輸入通関時のHSコード誤りによる事後追徴を回避するための適切なHSコード判定規程の制定に努めております。また、物流業者の起用においては当社の管理規則に則った物流業者選定ルールの浸透を図り、物流業者の関与する不正・異常損等の発生を阻止する対策を行っております。
しかしながら、このような施策を講じても、事業活動におけるコンプライアンスリスクは完全に排除できるものではなく、役職員が不正・不法行為を行った場合、社会的な信用を毀損する可能性があります。このような場合、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑨安全関連リスク
従業員並びに委託者の労働災害、及び火災・爆発により、当社グループの事業活動に支障が生じる可能性があります。災害未然防止に関する設備、作業標準の整備、教育、日常管理を行っておりますが、大規模な労働災害、及び火災・爆発の発生等により追加の対策コストが必要となった場合、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑩環境関連リスク
気候変動、水資源、生物多様性保全を含む環境関連のリスクは、当社グループ経営に与える影響が高いと判断し、安全・環境会議やサステナビリティ推進委員会で審議、取締役会へ適宜報告され、担当部門や構成メンバーを通じて事業戦略や活動に組み込まれております。
気候変動については、影響が大きい事業を選定し、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言に沿った形でシナリオ分析を実施しております。「リスク」では、移行リスク及び物理リスクを、「機会」では、資源効率・エネルギー源・製品及びサービス・市場を考慮しております。また、当社単体・国内海外連結子会社における、当社グループの事業活動を通じたGHG排出量(Scope1、2)を、2030年までに2019年比で50%削減を目指し、2050年にカーボンニュートラルとする目標を策定しております。加えて、2018年に策定したサステナビリティ重要課題(マテリアリティ)においても、「クリーンエネルギーや革新的技術を活用し、自動車/工場・プラントCO₂を削減することで脱炭素社会移行に貢献」することを掲げております。
気候変動や森林破壊、人口増加等に伴い世界規模で水不足、水質悪化、洪水、生物多様性の毀損が深刻化しております。水資源の持続可能な利用・生物多様性の維持は、当社事業活動に多大な影響を及ぼすリスクであり、重要課題と認識しております。水リスクについては、連結子会社を対象にAQUEDUCT(世界資源研究所(WRI)が提供する水リスクに関するグローバルな基準となっている評価ツールの一つ)で調査し、利用効率の改善や使用量削減等を含むリスクに応じた対応を行っております。
生物多様性については、新規の投資案件に対し生態系サービスへの影響を事前に調査・評価し、森林保全、環境負荷低減に努めております。既存事業に対しては、ISO14001に基づく環境マネジメントシステム内部監査により、水及び生物多様性を含むリスク評価を実施しております。しかしながら、このような施策を講じても、不測の事態が発生した場合、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(1)業績等の概要
①経営環境
当連結会計年度の世界経済を概観いたしますと、堅調を維持した米国経済とは対照的に、欧州の一部や中国等では景気低迷が続く等、各国で景気の基調に差が見られました。また、米欧の利下げや日銀の利上げ等、世界的に金融政策が転換した他、中東情勢の不安定化や第2次トランプ政権による保護主義的政策への懸念等により、地政学的リスクが高まりました。
米国経済は、家賃等のサービス価格を中心にインフレ圧力が根強く残り続けたものの、良好な所得環境と株高による資産効果が個人消費を押し上げました。一方で、新たな関税政策や移民政策の強化等により、景気の先行き不透明感が強まりました。欧州経済は、中国等の外需低迷により製造業の不振が重石となったものの、インフレ率の低下による家計の購買力回復等が個人消費を後押しし、持ち直しの動きが見られました。中国経済は、政府支援策が下支えするも不動産市場の低迷等で内需は弱含み、米国の対中関税引き上げによる輸出減速への懸念もあり、成長に力強さが欠けました。新興国経済は、IT関連輸出の回復や生産移転の加速等を背景に、インド、ASEANを中心に堅調に推移いたしました。
こうした中、わが国経済は、実質賃金の低下が個人消費の重石となったものの、インバウンド需要や輸出の回復等の外需が下支えし、緩やかに回復いたしました。また、日銀の段階的な利上げにより、円高急進による日経平均株価の一時急落や国内銀行の新規貸し出し金利が約12年ぶりの高水準となる等、「金利のある世界」の本格化が進みました。
②セグメント別の事業活動
当社は2024年4月1日より成長戦略の更なる加速のため、組織体制を見直すとともに、明確なミッションに基づいた社会やお客様への提供価値を表す本部名称へ変更いたしました。
(Ⅰ)メタル+(Plus)
日本国内における自動車鋼板事業の競争力強化を目的に、当社の金属事業の一部について、豊田スチールセンター㈱への会社分割と、㈱プロスチールへの事業譲渡を2024年4月に行いました。本取り組みにより、当社グループの各社への国内自動車鋼板事業の移管、集約及び効率化を進めつつ、さらなる商権拡大を目指してまいります。
(Ⅱ)サーキュラーエコノミー
資源循環型社会の実現と環境負荷低減への貢献を目的に、㈱プラニックを核として、日本のプラスチックリサイクルを推進しております。㈱プラニックは2022年に国内最大級規模の御前崎工場を本格稼働させました。ヨーロッパで実用化された高度なプラスチック選別技術を国内で初めて導入し、従来有効利用されていなかった廃車由来等の使用済みプラスチックを使うことで、高品質なリサイクルプラスチックを生産しております。これにより、化石資源への依存度低減やCO₂排出量削減に貢献し、持続可能な社会の実現を目指してまいります。
(Ⅲ)サプライチェーン
ラストマイル配送事業の拡大を目的に、同事業を行う㈱ロジクエストへ2024年10月に出資いたしました。エンドユーザーとの最終接点という重要なインフラとしての役割を担うラストマイル配送は、小型モビリティを活用した最適配送により、物流業界が抱えるドライバー不足やCO₂排出量削減の課題解決に寄与いたします。本取り組みにより、当社が保有する自動車業界を中心とした物流ネットワークと㈱ロジクエストの配送ネットワークを組み合わせ、Economy of Life分野を含む幅広い業界での物流最適化に貢献してまいります。
(Ⅳ)モビリティ
カンボジアにおけるモビリティ産業の発展に貢献することを目的に、車両組立事業会社であるToyota Tsusho Manufacturing (Cambodia) Co., Ltd.は、プノンペン経済特区内の新工場において、トヨタ自動車㈱のピックアップトラック「ハイラックス」及びSUV「フォーチュナー」のSKD(Semi Knock Down)生産を、2024年5月から開始いたしました。本取り組みにより、同国のモビリティバリューチェーンや雇用創出・人財育成にさらに深く関わり、モビリティ産業の発展、そして同国の経済、社会の発展に貢献してまいります。
(Ⅴ)グリーンインフラ
2024年4月にテラスエナジー㈱を完全子会社化し、2025年4月1日に同社と㈱ユーラスエナジーホールディングスを経営統合いたしました。この統合により、国内でNo.1の風力・太陽光の発電容量を有する発電事業者となり、カーボンニュートラル実現を先導し、グローバルに選ばれ続ける再生可能エネルギー事業会社への飛躍を目指してまいります。
(Ⅵ)デジタルソリューション
2025年1月に、電子材料、電子部品、設備等の販売、加工・組立、設計及び製造受託を行うエレマテック㈱を株式公開買付けにより完全子会社化いたしました。今後は商材・市場・地域・機能・人材交流等、あらゆる面での連携を一層強化し、両社のさらなる企業価値の向上に努めてまいります。
(Ⅶ)ライフスタイル
千葉県九十九里町の農業振興と地域活性化を目的に、2024年12月に同町と包括連携協定を締結いたしました。当社が開発に携わった多収米「しきゆたか」の栽培をはじめ、同町と当社が持つ知見やリソースを相互に活用することで、地域農業課題を解決し、持続可能な社会の実現を目指してまいります。
(Ⅷ)アフリカ
アフリカにおける再生可能エネルギー事業の加速を目的に、2024年3月にともに当社の完全子会社であるCFAO SASと㈱ユーラスエナジーホールディングスは、合弁会社AEOLUS SASを設立し、同年8月には、同社を通じチュニジアで合計100MWの太陽光発電所の独立系発電事業(IPP事業)へ参画いたしました。また、同年11月には、当社が㈱ユーラスエナジーホールディングスと進めるエジプトのスエズ湾風力発電所IIを増設し、アフリカ最大の風力発電所となる654MWへ計画変更を行いました。今後もアフリカにおいて、グリーンで持続可能な経済成長に貢献してまいります。
③業績
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(単位:億円) |
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前連結会計年度 (2024年3月期) |
当連結会計年度 (2025年3月期) |
増減 |
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収益 |
101,889 |
103,095 |
1,206 |
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売上総利益 |
10,523 |
11,211 |
688 |
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営業活動に係る利益 |
4,415 |
4,971 |
556 |
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当期利益(親会社所有者帰属) |
3,314 |
3,625 |
311 |
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総資産 |
70,599 |
70,574 |
△25 |
(2)仕入、成約及び販売の実績
①仕入の実績
仕入と販売との差額は僅少であるため、記載は省略しております。
②成約の実績
成約と販売との差額は僅少であるため、記載は省略しております。
③販売の実績
「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)業績等の概要 ③業績」及び「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記4.セグメント情報」を参照してください。
(3)経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析
①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、IFRSに準拠して作成されております。この連結財務諸表を作成するに当たり、重要となる会計方針については「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要性がある会計方針」に記載しております。また、重要な見積り及び判断については「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 2.作成の基礎 (4)重要な会計上の判断、見積り及び仮定」に記載しております。
②当連結会計年度の経営成績の分析
当社グループの当連結会計年度の収益は、食料事業における市況下落の一方で、円安影響等により、前連結会計年度を1,206億円(1.2%)上回る10兆3,095億円となりました。
利益につきましては、営業活動に係る利益は、販売費及び一般管理費の増加の一方で、売上総利益の増加により、前連結会計年度を556億円(12.6%)上回る4,971億円となりました。当期利益(親会社の所有者に帰属)は、資源市況悪化等による持分法投資損益の減少の一方で、営業活動に係る利益の増加等により、前連結会計年度を311億円(9.4%)上回る3,625億円となりました。
セグメントごとの業績は、次のとおりであります。
(Ⅰ)メタル+(Plus)
当期利益(親会社の所有者に帰属)については、利益率良化及び北米を中心とした自動車生産関連の取り扱い増加等により、前連結会計年度を74億円(20.6%)上回る434億円となりました。
(Ⅱ)サーキュラーエコノミー
当期利益(親会社の所有者に帰属)については、資源市況の悪化等により、前連結会計年度を31億円(6.2%)下回る469億円となりました。
(Ⅲ)サプライチェーン
当期利益(親会社の所有者に帰属)については、北米を中心とした自動車生産関連の取り扱い増加等により、前連結会計年度を37億円(8.2%)上回る492億円となりました。
(Ⅳ)モビリティ
当期利益(親会社の所有者に帰属)については、欧州を中心とした海外自動車販売台数減少の一方で、輸出台数増加等により、前連結会計年度を14億円(2.5%)上回る573億円となりました。
(Ⅴ)グリーンインフラ
当期利益(親会社の所有者に帰属)については、北米発電事業における関係会社株式売却益等により、前連結会計年度を86億円(31.0%)上回る365億円となりました。
(Ⅵ)デジタルソリューション
当期利益(親会社の所有者に帰属)については、前期一過性損失の影響及びICT事業における案件増加等により、前連結会計年度を11億円(3.6%)上回る307億円となりました。
(Ⅶ)ライフスタイル
当期利益(親会社の所有者に帰属)については、南米食料事業における市況下落の一方で、一過性利益等により、前連結会計年度を35億円(30.1%)上回る153億円となりました。
(Ⅷ)アフリカ
当期利益(親会社の所有者に帰属)については、自動車販売台数減少の一方で、モデルミックスの変化等により、前連結会計年度を104億円(15.0%)上回る795億円となりました。
次期の業績の見通しにつきましては、当期利益(親会社の所有者に帰属)は3,400億円となる見込みであります。
③財政状態
資産につきましては、現金及び現金同等物で731億円、有形固定資産で459億円、営業債権及びその他の債権で271億円、持分法で会計処理されている投資で207億円増加した一方で、その他の投資で1,308億円、その他の金融資産で635億円減少したこと等により、前連結会計年度末に比べ25億円減少の7兆574億円となりました。また、資本につきましては、FVTOCIの金融資産が987億円、非支配持分が314億円減少した一方で、当期利益(親会社の所有者に帰属)等により利益剰余金が2,609億円増加したこと等により、前連結会計年度末に比べ1,257億円増加の2兆7,458億円となりました。
その結果、親会社所有者帰属持分比率(自己資本比率)は37.2%、ネットDERは0.4倍となりました。
④資本の財源及び資金の流動性についての分析
(a)キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、営業活動による増加、投資活動及び財務活動による減少等により9,518億円となり、前連結会計年度末より731億円の増加となりました。資金の増減額は前連結会計年度と比べて198億円の増加となっており、この主な増加または減少要因は以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において、営業活動による資金の増加は5,118億円となりました。これは税引前利益等によるものであります。前連結会計年度比では303億円の収入減少となりましたが、これは主に運転資本が287億円増加したこと等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において、投資活動による資金の減少は1,238億円となりました。これは有形固定資産の取得による支出等によるものであります。前連結会計年度比では957億円の支出減少となりましたが、これは主に子会社の取得による支出が728億円減少したこと等によるものであります。
以上の結果、当連結会計年度におけるフリー・キャッシュ・フローは3,880億円の資金の増加となりました。前連結会計年度比では654億円の増加となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において、財務活動による資金の減少は3,090億円となりました。これは長期借入金の返済による支出等によるものであります。前連結会計年度比では458億円の支出増加となりました。
(b)財務戦略
当社グループでは、財務健全性を維持した安定的成長を目指して、「資産の効率化」と「資産の内容に見
合った調達」を柱とする財務戦略を推進しております。
「資産の効率化」については、“最小限の資金で最大限の利益確保”を目指し、売掛債権回収の早期化、在庫の削減等による運転資本の効率化や不稼動・非効率固定資産の削減など、資金の効率化を進めております。これらの活動により得られる資金を、より将来性の高い事業への投資や、有利子負債の圧縮に充当することにしており、“企業価値の向上”と“財務の健全性向上”の両立を目指しております。
一方、「資産の内容に見合った調達」については、固定資産は長期借入金と株主資本でカバーし、運転資本は短期借入金でカバーすることを原則としておりますが、同時に運転資本の底溜り部分も長期資金でまかなうことを方針としております。また、連結ベースでの資金管理体制については、親会社からの国内グループファイナンスに一元化すると共に、海外子会社の資金調達についても、アジア及び欧米の海外現地法人などにおいて集中して資金調達を行い、子会社への資金供給をするというキャッシュマネジメントシステムを活用したグループファイナンスを行うことで、連結ベースでの資金の効率化に努め、資金管理体制の更なる充実を図っております。更には、当社グループの資金調達の安全のため、マルチカレンシー・リボルビング・ファシリティー(複数通貨協調融資枠)等を設定するなど、不測の事態にも対応できるように備えております。
今後の資金調達について、当社グループの営業活動が生み出すキャッシュ・フロー、資産の内容、経済情勢、金融環境などを考慮し、資産の一層の効率化と安定的な資金調達に対応していきたいと考えております。
当連結会計年度末の流動比率は連結ベースで166%となっており、流動性の点で当社の財務健全性を維持しております。また、当社及び連結子会社では、主として現預金及び上述コミットメントラインの設定により、十分な流動性を確保しております。
当連結会計年度末時点での当社の長期及び短期の信用格付けは次のとおりであります。
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長期 |
短期 |
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格付投資情報センター(R&I) |
AA-(安定的) |
a-1+ |
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スタンダード&プアーズ(S&P) |
A(安定的) |
A-1 |
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ムーディーズ(Moody's) |
A3(安定的) |
- |
特記すべき事項はありません。
特記すべき事項はありません。
※将来情報に関するご注意
本資料に記載されている業績見通し等の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において入手可能な情報に基づき、当社グループが合理的であると判断したものであります。実際の業績等は様々な要因により大きく異なる可能性があります。