(1) 経営方針
常に時代を先取りし、果敢に新たな事業へと挑戦し続ける創業以来の開拓者精神と積極的な創意工夫を行う姿勢は、当社グループの行動指針となっております。お取引先との信頼関係を深め、事業を創造し、社会に価値ある企業となるため、当社グループの企業理念として掲げる、当社創業者である兼松房治郎による創業主意ならびに「われらの信条」(1967年制定)を経営の基本理念としております。
創業主意 「わが国の福利を増進するの分子を播種栽培す」
「われらの信条」
・伝統的開拓者精神と積極的創意工夫をもって業務にあたり、適正利潤を確保し、企業の発展を図る。
・会社の健全なる繁栄を通じて、企業の社会的責任を果し、従業員の福祉を増進する。
・組織とルールに基づいて行動するとともに、会社を愛する精神と、社内相互の人間理解を基本として、業務を遂行する。
(2) 経営環境および対処すべき課題
当社グループは、2025年3月期から中期経営計画「integration 1.0」(2024年4月~2027年3月)を新たにスタートし、より一層の企業の成長を実現するとともに、当社グループを取り巻く経営環境における課題の解決を積極的に推進しております。
具体的には、少子高齢化や2024年問題に起因した「労働力不足」、ESG・SDGsなどの倫理・環境に対する社会的な要請による「持続可能性への対応」、目まぐるしく変化する時代において変化を機微に捉え迅速に対応するための「経営のスピード化」、以上の3つの課題を解決していくことを起点に、目指す姿として「効率的かつ持続可能なサプライチェーンの変革をリードするソリューションプロバイダー」を掲げております。
(基本方針および当連結会計年度末における進捗状況)
中期経営計画「integration 1.0」においては、以下の6つの基本方針を掲げ、着実に推進することにより、当社グループのすべてのステークホルダーに対する価値向上の実現とともに、中長期的な株主価値向上を実現いたします。
① グループ一体経営の推進
当社グループは、人材・知識・取引先などの経営資源を当社グループ全体で共有し、シナジーを最大限に発揮することを目指しております。2023年10月に新設した社長直轄の組織「グループ成長戦略推進室」が中心となり、当社グループの取引先ネットワークに対して、当社グループ各社の強みのある事業を横断的に展開しております。当連結会計年度においては、同室を中心に、主要取引先に対してクロスセルを実施し、複数の企業との間で新たな取引を実現しました。今後も、グループ一体となり、新規案件を創出する活動を推進して参ります。
② 提供価値の拡充
「DX」「GX」「イノベーション」の提供価値を重点的に強化することを目指しております。3つの提供価値を通して、現在そして未来に経済・社会が求めるニーズに応えて参ります。当連結会計年度における主な実績は、次のとおりであります。
・DXの提供価値拡充としては、「日本サイバーセキュリティファンド1号(NCSF)」をパートナーと共同で設立いたしました。日本国内におけるサイバーセキュリティ分野の技術革新と産業基盤の強化を目指しており、業界全体の発展と社会課題の解決の両立を目指したプラットフォームとして機能しております。
・GXの提供価値拡充としては、再生可能エネルギーや食品・農業分野を中心に具体的な案件化が進みました。
・イノベーションの提供価値の拡充としては、宇宙やモビリティ、素材などに関する先進技術を軸とした新規事業を推進しております。
③ 新たな価値創出に向けた組織能力の強化
当社グループにおいては、経営資源である人材の連携を強化しており、知見とネットワークの共有が深まっております。
当連結会計年度においては、各事業セグメントと兼松エレクトロニクス㈱との人材交流に加え、主要グループ会社の人材がグループ成長戦略推進室に参画してグループの知見を有効活用する体制を強化いたしました。
④ 人的資本の強化
中期経営計画「integration 1.0」で目指す姿の実現に向け、経営戦略と人材戦略の連動に取り組んでおります。当連結会計年度においては、人的資本委員会を新設し、新たな価値創出を支える人材ポートフォリオの構築に着手いたしました。
また、従業員の健康を保持・増進する活動を促進し、健康経営優良法人認定制度の大規模法人部門において、「健康経営優良法人2025(ホワイト500)」の認定を受けました。
⑤ 経営機能の強化
ICTソリューション事業を各部門へ浸透し、一体化することを目的に組織を再編し、ICTソリューション部門を新設いたしました。
この組織再編に伴い、当連結会計年度より、「電子・デバイス」セグメントに含まれていたICTソリューション事業を「ICTソリューション」セグメントとして新たに区分いたしました。
また、「鉄鋼・素材・プラント」セグメントに含んでおりました工作機械・産業機械事業を「車両・航空」セグメントに区分し、「電子・デバイス」セグメントおよび「その他」に含んでおりました兼松サステック㈱の事業を「鉄鋼・素材・プラント」セグメントの環境関連事業として区分いたしました。
⑥ 中長期的な株主価値の向上
株主価値の向上の実現に向け、「資本収益性・効率性の向上」「資本コストの低減」「期待利益成長率の向上」に取り組んでおります。当連結会計年度においては、投下資本利益率(ROIC)管理の強化や政策保有株式(注)の縮減に取り組みました。政策保有株式の縮減については、2027年3月末までの中期経営計画期間において連結資本合計に対する政策保有株式の保有比率を2024年3月末の13.9%から10%以下とする目標に対し、当連結会計年度末における保有比率は8.9%となり、2年前倒しで目標を達成いたしました。
(注)有価証券報告書における「保有目的が純投資目的以外の目的である投資株式」の「貸借対照表計上額の合計額」からイノベーション投資目的の株式およびPT.CISARUA MOUNTAIN DAIRY TBKのような海外戦略事業パートナーへの投資を除いたものを「政策保有株式」と呼称しております。
(定量目標)
中期経営計画「integration 1.0」における定量目標は次のとおりであり、中長期的な株主価値向上の実現へ取り組んでおります。
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「integration 1.0」 最終年度 (2027年3月期)目標 |
2025年3月期実績 |
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連結当期利益(注) |
350億円 |
274億円 |
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ROE |
16%~18%程度 |
16.5% |
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ROIC |
8%以上 |
7.6% |
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ネットDER |
1.0倍程度 |
0.69倍 |
(注)連結当期利益は親会社の所有者に帰属する当期利益を億円未満を切り捨てて表示しております。
(資本配分方針)
安定的な基盤事業と成長事業からの営業キャッシュ・フローを基に、更なる株主還元と成長投資を実行して参ります。
キャッシュ・インは、中期経営計画「integration 1.0」の3年累計で、(調整後)営業キャッシュ・フロー(会計上の営業キャッシュ・フロー ± 運転資本増減 - リース負債の返済)1,100億円と資産入れ替えによる調達100億円に対して、キャッシュ・アウトとしては、累進配当による株主還元へ約270億円、ICTソリューションを中心とするDX関連へ約400億円、強みを有する事業分野などへ(GX含む)約200億円、基盤事業の持続的運営と発展へ約330億円を配分する方針としております。
(今後の見通し)
翌連結会計年度においては、米国の関税政策、それを受けた世界各国・地域の対応の不確実性などにより、先行き不透明な情勢が続くと見込まれます。日本経済は、インバウンド需要など内需は引き続き堅調を維持すると見込まれる一方で、先行き不透明な海外経済の減速が下押し圧力となる懸念もあり、景気の回復は緩やかなものに留まる見込みです。
2026年3月期の業績見通しについては、収益1兆1,000億円、営業活動に係る利益500億円、税引前利益460億円、親会社の所有者に帰属する当期利益300億円を見込んでおります。
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2025年3月期実績 |
2026年3月期見通し |
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連結当期利益(注) |
274億円 |
300億円 |
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配当性向(総還元性向) |
31.9% |
32.0% |
(注)連結当期利益は親会社の所有者に帰属する当期利益を億円未満を切り捨てて表示しております。
セグメントの業績見通しおよび成長戦略は、次のとおりであります。
ICTソリューション
事業拡大や競争力強化を目的としたDXや重要性の高まるサイバーセキュリティ強化など、半導体関連を中心とした企業のデジタル投資需要は旺盛で、引き続き好調に推移する一方で、人的資本の強化を目的とした人件費などのコスト負担を見込むことから、収益は1,050億円、営業活動に係る利益は150億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は105億円を見込んでおります。
技術革新とビジネスニーズの変化が速いビジネス環境の中で、兼松エレクトロニクス㈱を中心に、成長市場の動向を把握するとともに適切なソリューションを導入することで事業を拡大させて参ります。具体的な戦略は、次のとおりであります。
・強固な顧客基盤と技術力に裏打ちされたマルチベンダーとしての強みを活かした、ITインフラ基盤の設計、構築から保守、運用まで一貫したサービスをワンストップで提供。
・「セキュリティ」を中心とした当社グループ独自の「as a Service」を提供するサービスビジネスの更なる拡販。
・当社グループの幅広い業種・業態の顧客基盤に対するクロスセルと顧客課題に応じたソリューションの提供。
電子・デバイス
モバイル事業は販路拡大や販売台数の回復により堅調なことに加え、電子機器・電子材料事業におけるのれんの減損損失の一過性要因の剥落により、収益は2,750億円、営業活動に係る利益は137億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は89億円を見込んでおります。
業界再編や法改正による販売体制の変化などの影響を受けるモバイル事業や、高い性能を備えた製品とグローバルな市場展開が求められる半導体部品・製造装置事業などは、複数の要因を受けやすいビジネス環境の中で、高度な技術革新の追求に加え、製品販売のみならずソリューション提供へ発展させることにより事業を成長させて参ります。具体的な戦略は、次のとおりであります。
・全国販売ネットワークを活用し、モバイル関連商品の販売から管理、運用、回収までのトータルサービスを提供するとともに、SaaSなどのリカリングサービス、次世代半導体・次世代電池用の材料提案など、幅広いサービスの展開とソリューション提供。
・半導体装置や半導体製品、電子部品・素材、プリンター、バッテリーなどを含むエレクトロニクス産業全般において、革新的なソリューションと高度な技術力を組み合わせたグローバルな事業展開。
食料
食糧事業は大豆などの取引が堅調なことに加え、飲料原料を中心に販売が堅調に推移した食品事業も引き続き堅調に推移する一方で、海外市況高や円安によるコスト増加、国内市況の低迷の影響を受けた畜産事業の反動により、収益は3,850億円、営業活動に係る利益は81億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は35億円を見込んでおります。
食品事業は、消費者の人口動態やライフスタイル、健康志向などの価値観の変化、オンライン販売の拡大など、市場ニーズが多様化し、また、海外市場の成長を見込むビジネス環境にあり、マーケットインによるグローバルなアプローチで成長させて参ります。具体的な戦略は、次のとおりであります。
・「食の安全・安心」をテーマに、メーカーの視点で原料の調達から製品加工までの一貫供給体制を構築。
・農産物、水産物、コーヒー、飲料・酒類、調理食品など幅広い商品ラインナップで市場の多様なニーズに対応。
・顧客のニーズを先取りした市場性の高い原料や製品の開発推進や、市場が拡大するインドネシアなどアジア諸国におけるバリューチェーンの横展開を通じたビジネス拡大。
畜産事業は、安定供給を目的とした海外サプライヤーの確保および特にアジアを中心とした海外市場の成長を背景に、国内外のビジネスパートナーとの信頼関係の維持・深化により事業を成長させて参ります。具体的な戦略は、次のとおりであります。
・原料から畜産加工品まで幅広い商品群を取り扱い、加工・物流機能を組み合わせ、顧客ニーズに合った付加価値の高い商品とソリューションの提案。
・商品の安定確保を目的とした、国内外のパートナー企業との提携・出資によるバリューチェーン(生産・加工・物流・販売)の横展開と強化。
食糧事業は、年々、世界的な穀物需要は増大する一方、天候リスクや地政学的リスクなどにより安定供給へのリスクが高まっております。これらの課題を機会と捉え、供給においては、産地の多様化、持続的な生産体制の構築、生産性向上のためのデジタル化などを進めて参ります。需要においては、日本市場に加えて中国・アセアン市場への参入を進めて参ります。
また、持続的生産体制の構築において、魚粉・魚油などの水産養殖原料については、近年、特に資源管理や環境負荷に配慮した原料の供給が求められており、各種認証プログラムへの参画を含め供給体制の強化に力を入れております。
鉄鋼・素材・プラント
市況の影響を受ける鋼管事業やエネルギー事業により、収益は2,000億円、営業活動に係る利益は75億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は38億円を見込んでおります。
GXに代表される世界的な環境問題への意識の高まりの影響を受けるビジネス環境にあり、顧客の「脱炭素」への様々な支援により事業を成長させて参ります。具体的な戦略は、次のとおりであります。
・社会インフラを支える部門として、幅広い分野において高い専門知識を備えた人材による、GXを中心としたバリューチェーンへのソリューションの提供。
・サーキュラーエコノミーの実現に向けた持続可能な原料・素材や環境配慮商品の取扱い。
車両・航空
航空宇宙事業は、航空業界や宇宙・防衛産業の需要の増加を見込んでおります。車両・車載部品事業は、部品需要が堅調に推移する見通しで、工作機械・産業機械事業では、自動車向け工作機械や産業機械の需要に一定の回復が見られます。これらにより、収益は1,300億円、営業活動に係る利益は58億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は34億円を見込んでおります。
次世代モビリティや空飛ぶクルマ、ドローンの普及、モビリティ関連製品全般の軽量化や電動化などの技術革新による脱炭素化の動きも加速するビジネス環境にあり、新たなモビリティ事業の創造で事業を成長させて参ります。また、民間宇宙産業の勃興に伴い、地球低軌道を利用した商用宇宙ステーションの事業開発などにも取り組んで参ります。具体的な戦略は、次のとおりであります。
・「環境」「安全」「快適」をテーマにし、次世代モビリティや素材、宇宙、データビジネスなどの領域で事業創造を推進。
・幅広い製品ラインナップと様々な機械関連サービス、さらに環境ビジネスから海外進出支援までをカバーし、顧客の多様なニーズにお応えするエンジニアリング・ソリューションの提供。
(業績見通し算定にあたっての前提条件)
・為替レート : 1米ドル=150円
・金利水準 : 円金利:上昇を見込む 外貨金利:下落を見込む
(注意事項)
上記の見通しなどの将来に関する記述は、当社グループが有価証券報告書提出日現在入手している情報および合理的であると判断する一定の前提に基づいており、その達成を当社として約束する趣旨のものではありません。また、実際の業績等は様々な要因により大きく異なる可能性があります。
当社グループは、創業者兼松房治郎の創業主意を基本理念としており、国際社会や経済の発展に寄与していくことを使命とし、国内のみならず広くグローバルにビジネスを展開しております。多岐にわたる事業において、あらゆるモノ・機能・サービスを提供し、多様なサプライチェーンを構築する中で、地球環境や人権への対応が喫緊の課題であると認識しております。当社グループは、お客さまやパートナーとの共生・発展を念頭に、これまでの長い歴史の中で培ってきた知見やノウハウを活かし、付加価値のあるモノやサービスを提供する企業活動を通じて、地球環境や社会・経済と、当社グループの持続的な発展を目指して参ります。なお、このサステナビリティに関する考え方及び取組の記載内容は有価証券報告書提出日現在のものとなります。
(1) サステナビリティ全般
① ガバナンス
当社では、サステナビリティ経営を推進していく体制として、サステナビリティに関する基本的な方針、戦略、調査、業務の推進等についてサステナビリティ推進室が企画・立案し、サステナビリティ推進委員会にて討議・決定しております。サステナビリティ推進委員会は、営業部門の責任者および企画担当役員を中心に構成され、サステナビリティ推進室が事務局となり、定期的に開催しております。また、サステナビリティ推進委員会での討議内容は四半期ごとに取締役会へ報告されております。取締役会は、サステナビリティ推進委員会の委員長である取締役をはじめ、ESG思考を有する社外取締役等による学術的な観点からの助言もあわせて、当社のサステナビリティ経営を監視監督しております。当社が社会から期待される役割や課題を把握し、これを営業部門の意見とすり合わせるとともに、今後の事業活動の方向性に反映することでサステナビリティ経営の推進に活かしております。
サステナビリティ推進委員会での主な討議内容(2025年3月期)
・サステナビリティに関する取組みの情報開示(人権、生物多様性、気候変動(CDP)など)
・2024年3月期GHG排出量報告と増減分析
・GHG排出削減貢献に関する取組みと貢献量の進捗確認
・企業サステナビリティ報告指令(CSRD)対応の進捗確認
② 戦略
当社は、持続可能な開発目標(SDGs)など国際社会の動向やステークホルダーからの期待、当社の基本理念、経営にとっての重要性を踏まえ、当社グループが企業活動を通じて注力する5つの重要課題(マテリアリティ)を設定しております。
当社は、事業活動を通じて「持続可能なサプライチェーンの構築」、「脱炭素社会に向けた取組み」、「地域社会との共生」に取り組むとともに、それらの事業活動を支える重要な経営基盤として「多様な働き方を実現する環境づくり」および「ガバナンスの強化&コンプライアンスの徹底」に取り組んで参ります。
③ リスク管理
(執行)
当社グループにおける事業活動は、営業部門(7部門)を中心に推進・執行され、気候関連のリスク識別および評価についても、各営業部門が事業活動と照らし合わせて行っております。
(管理)
当社は、事業内容を熟知する執行機関である営業部門の責任者(執行役員)と、当社グループの基本的な経営方針、経営戦略、および経営資源の配分を主管する企画担当役員(執行役員)でサステナビリティ推進委員会を構成し、企画担当役員が委員長を務めております。サステナビリティ推進委員会は、営業部門において識別・評価された気候関連のリスクについて討議しております。また当社グループのCO₂排出量を定期的に算定し、その増減要因や対策の方向性を協議することで総合的なリスク管理を行っております。
(監視監督)
取締役会は、サステナビリティ推進委員会より定期的な報告を受け、当社グループにおける気候関連の総合的なリスク管理について監視監督を行っております。
(2) 気候変動に関する取組み
当社は、2021年6月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)へ賛同し、気候変動がもたらす事業へのリスクと機会について、より分かりやすくお伝えできるようTCFDのフレームワークに沿った情報開示に努めております。
当社は、創業以降、事業の選択と集中を経て取組みを進めた結果、現在は火力発電や石炭事業をはじめとする環境負荷の高い事業のない事業ポートフォリオとなっております。また、すべての投資案件の実行、重要な契約の締結、および重要な資産の取得に際しては、当社グループのサステナビリティの考え方および重要課題(マテリアリティ)を踏まえており、今後も環境負荷の高い事業に取り組むことを回避できるよう、その執行を管理、監督するガバナンス体制も構築しております。
こうした長年にわたる環境負荷に対する管理・制御が奏功し、当社グループの事業活動におけるCO₂排出量(Scope1、2)は当社の事業規模に照らし合わせて極めて低い水準にあるため、SBT(Science Based Targets)に基づく更なる削減目標を設定することは現実的でなく、困難であると考えております。今後も大きくは増加させない仕組みとしてこのガバナンス体制を維持して参ります。
一方、当社グループは、近年、森林保全事業、二国間クレジット事業、および再生可能エネルギー関連事業等を積極的に推進しており、これらの事業活動を通じて創出するクレジット、CO₂削減貢献量が当社グループのCO₂排出量を大幅に上回る水準を目指して取り組みます。その結果として地球全体の排出削減に貢献し、世界の脱炭素に資することが、サプライチェーンを繋ぐ商社としての役割であり、使命であると考えます。当社のこの考え方は、SBTをはじめとする国際基準が示す定義とは一線を画すものですが、商社としての業態、ビジネス、そしてあるべき姿を鑑みた際に、わが国および国際社会に貢献し続ける企業グループであり続けることを志向するものです。
① ガバナンス
「
② 戦略
当社グループは、当社グループが行う事業のうち、気候変動の影響が大きい事業を選定してシナリオ分析を行った結果、いずれのシナリオにおいてもリスクと機会が存在するものの、リスクの影響度を機会の影響度が上回ると捉えております。
当社グループは、中期経営計画「integration 1.0」の基本方針のひとつに顧客に提供する最適なソリューションとしての提供価値の拡充を掲げ、そのなかでサプライチェーンの脱炭素化、サーキュラーエコノミーの創出等を重点的に強化することとしており、気候変動を積極的な事業機会と捉えております。
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TCFD開示推奨項目 |
当社の事業 |
リスク |
機会 |
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(a) 短・中・長期の気候関連のリスクおよび機会
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北米牛肉事業 |
平均気温上昇による飼料・牧草の価格上昇(物理リスク) |
新技術の開発・普及に伴う新たな機会(植物由来肉) |
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鋼管事業 |
化石燃料の需要減少(移行リスク) |
新技術の開発・普及に伴う新たな機会(CCUS、EOR) |
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トウモロコシ事業 |
畜肉需要の低下に伴う売上高の減少、および飼料用途以外の需要拡大による調達コストの増加(移行リスク)、平均気温上昇や干ばつによる調達コストの増加(物理リスク) |
新技術の開発普及に伴う新たな機会(バイオプラスチック) |
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灯油事業 |
規制の強化による需要減少(移行リスク)、海面上昇に伴うサプライチェーンの分断(物理リスク) |
再生可能エネルギー事業の拡大と低GHG排出製品の販売 |
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コーヒー事業 |
法規制強化による調達コストの増加(移行リスク)、異常気象の激甚化によるサプライチェーン分断に伴う売上の減少(物理リスク) |
サステナブルコーヒーの販売拡大 |
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二輪部品事業 |
原材料の価格高騰に伴う調達コストの増加、規制強化に伴う小型エンジン車部品の売上の減少(移行リスク) |
消費者の嗜好・意識変化による小型ZEV部品の売上増加 |
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(b) 気候関連のリスクおよび機会のビジネス・戦略・財務計画に及ぼす影響 |
(影響) 気候関連のリスクと機会による影響度(財務インパクト)は当社全体に対するものではなく、それぞれのシナリオ分析対象事業の収益または費用に対するインパクトで、次の定量的基準により、大/中/小で整理しております。
(定量的基準) 大 : 10億円以上 中 : 5億円以上、10億円未満 小 : 5億円未満 |
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(c) 複数シナリオを活用したシナリオ分析および気候変動に対する戦略のレジリエンス |
(分析結果) 北米牛肉事業、鋼管事業、トウモロコシ事業、灯油事業、コーヒー事業、二輪部品事業いずれのシナリオにおいても、リスクと機会が存在し得ます。分析を踏まえ、当社としては気候変動を機会と捉えて事業戦略を策定しております。 当社の中期経営計画「integration 1.0」の基本方針のひとつに、顧客に提供する最適なソリューションとしての提供価値の拡充を掲げ、そのなかでサプライチェーンの脱炭素化、サーキュラーエコノミーの創出等を重点的に強化しております。 |
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③ リスク管理
「
④ 指標及び目標
(指標)
当社グループは、工場等の所有も少なく、CO₂以外の温室効果ガスの排出が少ない事から、気候関連のリスクと機会の評価指標にCO₂排出量を用いております。
(目標)
今後の目標として、再生可能エネルギーへの転換でCO₂排出量の削減を行い、当社グループ会社数の増加がある場合でも、CO₂排出量を30,000t-CO₂以下に抑制すべく取り組みます。また、当連結会計年度において、削減貢献量が1,000,000t-CO₂を超えたことから今回、将来の削減貢献量の目標値を1,000,000t-CO₂から1,500,000t-CO₂に引き上げます。
REDD+等の森林保全事業や二国間クレジット事業、および再生可能エネルギー関連事業を拡大し、削減貢献量を積み増すことで、2050年には当社グループのCO₂排出量の50倍程度に相当する1,500,000t-CO₂の削減貢献量を目指し、わが国および国際社会のGHG排出削減に寄与して参ります。
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TCFD開示推奨項目 |
当社の取組み(要約) |
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(a) 気候関連のリスクおよび機会を評価する際に用いる指標 |
(指標) CO₂排出量、CO₂削減貢献量 |
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(b) Scope1Scope2および当てはまる場合はScope3の温室効果ガス(GHG)排出量とその関連リスク |
注1:CO₂削減貢献量の算定は、2025年3月期より開始 注2:Scope3については、カテゴリー1、2、3、6、7、15を対象として部分的に算定 |
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(c) 気候関連リスクおよび機会を管理するために用いる目標および目標に対するリスク |
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(3) 人的資本・多様性に関する取組み
数ある経営資源の中でも、人材は当社にとって大切な財産であります。以下の記載内容に沿って企業価値の向上を推し進めて参ります。
① ガバナンス
目指す姿の実現に向けて経営戦略と人材戦略を連動させ、価値創造の源泉となる人的資本を強化するため、人事担当役員を委員長とし、代表取締役社長・企画担当役員・財務担当役員の4名からなる人的資本委員会を2024年4月1日から発足し、人的資本経営の実行体制を整えております。
本委員会では「新たな価値創出を支える兼松パーソンの定義・見直し」、「経営戦略に基づいたグループ全体の人材ポートフォリオの最適化」、「人的資本投資プログラムの策定検討」等を行っております。
② 戦略
当社の戦略については、次のとおりであります。
なお、当社の人材戦略は、経営戦略に基づいて策定されており、企業の成長と持続可能性を支える重要な指標と位置付けております。経営戦略の目標を実現するためには、質の高い人材の確保、育成、そして適切な配置が不可欠であり、そのため、当社は常に経営戦略と連動した人材戦略を構築し、柔軟かつ迅速に対応できる体制を整えております。
前述のとおり、当社は2024年4月~2027年3月を対象期間とする中期経営計画「integration 1.0」を策定しましたので、それに伴い新たに人材戦略を構築し、また各種重点テーマ、指標および目標も見直しております。
(ⅰ)人的資本基本方針
(方針)
新たな価値創造の源泉となる人材(兼松パーソン)を確保・育成し、人材の能力が十分に発揮される組織を作ることで持続的に企業価値を向上させる
(概要)
「お客さまやお取引先に愛され、選ばれる人」これが兼松パーソンです。創業当時より大切にする以下の価値観を一人ひとりが主体的に体現し、兼松パーソンとして持続的な価値の創造を目指しております。
・お客さま・お取引先、社会の課題を解決する使命感、責任感
・一粒の種をまくための創意工夫と挑戦心
・お客さま・お取引先との共創共栄を大切にする誠実心
・働く情熱と共に同じ目的に向かって邁進する団結心
(ⅱ)人材戦略
(方針)
当社が目指す姿(ソリューションプロバイダー)に向けて活躍できる人材を確保、育成し、人材の能力が充分に発揮されるよう社内環境を整備する
(概要)
当社は中期経営計画「integration 1.0」において、兼松が5年後に目指す姿として「効率的かつ持続可能なサプライチェーンの変革をリードするソリューションプロバイダー」を掲げております。ソリューションプロバイダーとして活躍できる人材になるためには、「①深い現場知見に根差した最適な解決策をデザインする力」「②顧客課題解決に向け複数のレイヤーに跨り様々な外部パートナーとの最適な組合せでソリューションを実装・運用する力」の大きく2つの力が必要だと考えております。
後述する人材育成方針、環境整備方針に基づいた取組みを行うことで、中期経営計画「integration 1.0」“組織能力・人的資本の強化”のモニタリング指標として掲げている「新たな行動様式を実践する従業員」、「組織横断プロジェクトに従事する従業員」も増加すると考えております。
当社の人材戦略イメージ
(ⅲ)人材育成方針
(方針)
新しいビジネスと持続可能な社会を築く商社として、変化を機微に捉えて素早く対応することで、多くのお客さま・取引先の皆さまに愛され選ばれる兼松パーソンとなる人材の採用・研修・育成を実施する
(概要)
上述の兼松パーソンが大切にする価値観を体現するためには、どのような環境下でも実行力を発揮し、最後まで責任を持ってやり遂げる意欲を持ち、取引先や社内関係者と適切なコミュニケーションを取ることができる優れた人格が必要であると考えております。
当社の人材は、新規ビジネスを事業化していく熱意、挑戦心のある旺盛な冒険心、新たなビジネスモデルの構築や既存の概念に捉われない新しい発想の展開ができる革新的な思考を大切にしております。
当社では、持続的な価値創造のために、優れた人格を基盤として、人材戦略に合わせた人材育成を行って参ります。
(重点テーマ)
人材育成に関する重点テーマは、次のとおりであります。
(a)深い現場知見に根差した最適な解決策をデザインする力
・OJT(On the Job Training)制度
深い現場知見を養うために日常の業務を通じて教育するOJT制度を取り入れております。新入社員1名に対し、直接実務を指導する実務指導員に加え、部署の中枢を担う中堅社員がOJTサポーターとしてアサインされ、2名体制で教育をしております。実務指導員、OJTサポーターには研修を実施し、新入社員の育成において必要となる情報提供を行うことで、業務知識のみならず、社会人としての基礎を効果的に指導できる体制を整えております。東京本社の座席には、新入社員+実務指導員+OJTサポーター3名で利用できる優先席を設け、新入社員がいち早く現場知見を身に付けられるようチーム一体となって育成しております。
・若手海外実習制度
グローバルな深い現場知見を養うための初期教育として、若手のうちに実務を通じた海外経験を積むことができる若手海外実習制度を設けております。多様な文化や価値観を体感することはもちろん、海外駐在員としてグローバルな環境でも深く現場に入り込んでいくために求められるスキルと自身の能力のギャップを認識することで、若手社員の自己啓発を促しております。
・兼松ユニバーシティ
従来の研修制度を強化・体系化した「兼松ユニバーシティ」(以下「KGU」という。)を、2019年7月より開講しております。KGUのカリキュラムは、教養、対人知識・対人スキル、業務知識・業務スキルの3カテゴリーで構成されており、内容によってe-learningと集合研修に振り分けた豊富な講座を受講できる仕組みになっております。ビジネスマナーや語学など基礎的なものから、事業投資や法務、アンガーマネジメントなど専門的な知識も身に付けることができる内容となっており、次世代のマネジメント層となる人材の育成に努めております。
・ビジネスプラン策定研修
事業創造に必要な「新たなビジネスを生み出し、具体化していく」ためのスキルの習得を目的として、2007年よりビジネスプラン策定研修を行っております。本研修では事業創造を行うための知識や学びを「分かる」状態から「活用できる」状態へと昇華・強化するために、事前学習編と学びの活用編(グループワーク)の2つから構成されております。学びの活用編では現実のビジネス課題をテーマに設定し、ビジネスプランを約半年にわたりチームごとに練り上げ、社内で最終発表会を開いております。
(b)最適な組合せでソリューションを実装・運用する力
・DX人材の育成
当社が関わるサプライチェーンにおいて、デジタル技術や自動化技術を活用しながら次世代に適合したビジネスへのシフトを目指し、取引先と協力して共に変革への困難を克服するDXを推進しております。当社が求めるDX人材には、デジタルの知見だけではなく、ビジネスの知見との掛け合わせが必要と考えており、ITリテラシー向上のための研修のみならず、デジタル技術を扱うグループ内企業との人材交流等も通じて、取引先などのデジタル化段階に合わせたDXを推進できる人材を育成しております。
・GXアクセラレーター
グループ内での環境関連ビジネスの推進に向け、新規案件の企画・立案から、グループ内GX機運の醸成に向けたあらゆるサポート活動を行う「GXアクセラレーター」を組織しております。GXアクセラレーターは、当社グループ各社において高い業界知識を有し活躍している社員で構成されております。
(ⅳ)環境整備方針
(方針)
・新たな事業や既存事業の刷新が次々と生まれるとともに、常に進化することを楽しむ個人/組織/風土に向けて、個々人の能力を活かし、お互いが尊重し合い、団結する組織を目指す。
・これらの実現に向けてオフィス環境や業務フローを継続的に見直し、時間や場所に捉われない環境、基盤となる従業員の健康維持・増進および安全に働くことができる環境を整備し、従業員エンゲージメントをさらに高める。
(概要)
ソリューションプロバイダーとして活躍する人材を活かしサポートするためには、組織の環境を充実させる必要があります。多様な人材がフラットな関係でお互いを尊重・協力し合い、多様なキャリアを築くことができ、チャレンジを促し、チャレンジした人が報われる環境が必要であると考えております。
当社では人材の能力を活かす組織を作るためにはDE&Iの考え方が根底にあると考えております。また、社員エンゲージメント等の観点から、下図のとおり組織・会社作りをしていくうえで重要な価値観(コアバリュー)を4つ(個性を活かす、フラット&リスペクト、チャレンジをサポート、働き方にも選択肢)定めております。コアバリューは一人ひとりの能力を最大化させるために必要に応じて見直して参ります。
人材の能力を活かす組織作りのコアバリューイメージ
(重点テーマ)
環境整備方針に関する重点テーマは、次のとおりであります。
(a)多様な個性を活かすDE&I
・DE&Iチームの取組み
当社ではDE&Iチームを組成し、多様な価値観や考えを尊重し受け入れることで、誰もがより働きやすく、より能力を発揮できる職場環境の整備を進めております。当事者意識の醸成を目的に、全社向けe-learningや情報発信を行っております。また国際女性デーやLGBTQ+の理解促進を目的としたプライドウィーク、社員のご家族をオフィスに招くファミリーデー等の企画を通して、多様な社員同士の理解を深める取組みを行っております。
・ダイバーシティ採用、キャリア採用
当社内部の知識・経験だけではアプローチできない市場・商材・顧客にも進出していくため、世界中から多様なバックグラウンドを持つ人材の確保に努めております。新卒採用では女性や日本における外国籍留学生に対して目標値を持って採用活動を実施しております。また当社内部とは異なる知識・経験の獲得を期待したキャリア採用の拡大も進めております。
・タレントマネジメント
属人的な人材配置から脱却すべく、人材プールの可視化を目的としてタレントマネジメントを推進しております。一人ひとりのスキル、経験、特性といった人材情報を一元管理し、どのような人材が社内にいるのか適切に把握するよう努めて参ります。
(b)エンゲージメント向上によるパフォーマンスの最大化
・エンゲージメント調査
当社では、中期ビジョン「future 135」から継続して従業員エンゲージメントの向上を重視しております。2021年度に2回目となるエンゲージメント調査を実施し、第1回目の調査と比較して、エンゲージメントの改善が見られたものの、協力体制などいまだ複数の課題が残っていることも分かり、これらの課題に対する施策を検討・実行することにより、部門や組織の壁に縛られないチャレンジを奨励する会社となり更なるエンゲージメントの向上を図って参ります。
なお、エンゲージメント調査自体は2024年度に第3回目を実施しており、その結果に対する施策の検討も今後あわせて進めて参ります。
・エンゲージメント向上のための施策
(ヒトツブクラブ)
新規事業のためのアイデア創出・事業化推進を行うコミュニティである「ヒトツブクラブ」を発足しております。研修ではなく、参加型イベントやTeamsグループを通じて、新規事業の創造に挑戦する「時間」と「場」を設けるだけでなく、参加者の熱意さえあれば、アイデアの具現化に向けた支援・サポートを実施しております。
(新人事制度)
2024年4月より新人事制度を導入し、各々がチャレンジングな目標を掲げ、組織全体の底上げを図るような土壌形成と、その取組み・成果に報いる仕組み作りを行っております。
(TANEMATSU ~カルチャーデザインプロジェクト~)
創業主意「わが国の福利を増進するの分子を播種栽培す」の更なる浸透・再解釈を土台とした「兼松らしい企業文化づくり」を目指す全社横断プロジェクトを2023年12月から開始しております。当社が大切にする価値観に共感することで従業員のエンゲージメントを高め、その結果、新たな事業や既存事業・業務の刷新と改善が次々と生まれる企業文化にするべく、当社ひいては当社グループ会社一体となって企業理念に向き合い、未来を考える機会を創出して参ります。
(c)多様な働き方
・フルフレックス制度
柔軟な働き方を推奨するため、2021年度よりコアタイムのないフルフレックスタイム制度を導入しております。従業員が業務の繁閑に合わせて出社・退社時刻を原則自由に設定でき、今まで以上に自身の業務に合わせた効率的な働き方が可能となりました。
・テレワーク制度
従業員のWell-beingの観点や、外出時の移動時間削減等による業務効率化の観点から、テレワーク(在宅勤務・サテライトオフィス勤務)を制度化いたしました。「従業員の自律的な働き方の尊重」と「会社業績の向上」を両輪で実現することを目指し、働き方の選択肢としてテレワーク(在宅勤務・サテライトオフィス勤務)を位置付けております。
・有給休暇取得推奨
「働きやすく、働きがいのある職場環境」の実現を目指し、従業員が有給休暇を取得しやすい制度として、年次有給休暇の計画的付与制度「ブロンズウィーク・プラス制度」を導入しております。より働きやすい職場環境を整え、公私のメリハリをつけて業務にあたることを目指しております。
(d)従業員のWell-beingを追求する健康経営、安心して働ける労働慣行
・健康経営宣言
従業員が能力を拡大し可能性を育てながら生き生きと働くためには、健康経営の推進が必須であると考えております。当社は2025年3月に、経済産業省および日本健康会議が実施する健康経営優良法人認定制度の大規模法人部門において「健康経営優良法人2025(ホワイト500)」の認定を受けております。
・健康状態の把握
当社では従業員の健康に関するデータを可視化するため健康管理システムを2024年3月に導入いたしました。同システムを用いて、兼松健康保険組合と連携してデータ分析を行い、従業員の健康状態に即した健康施策を実施し、効果を測定しております。また、従業員自身も同システムを使うことで、自身の健康課題の把握、健康的な生活の習慣づけが可能となっており、全従業員の健康意識向上を図っております。
・安全衛生委員会
従業員の健康を守り、明朗な職場環境をつくるため安全衛生委員会を設置しております。同委員会は総括安全衛生管理者(人事部長)の監督の下、産業医、安全管理者、衛生管理者、会社推薦の社員、そして労働組合が推薦した社員で構成されております。月に1度、委員会を開催し、産業医から助言を受けながら、労使共同で各施策を協議し、推進しております。
・ハラスメント対策
ハラスメントについては、社内相談窓口を設置しており、ハンドブックの配布による啓蒙活動に加え、ハラスメント防止のための研修を実施しております。
③ リスク管理
人的資本・多様性に関する取組みの強化とあわせて、近年、従業員・組織を取り巻く多様なリスクへの備えが一層重要となっております。
当社では、人的資本に係るリスク管理体制も強化しており、例えばコンプライアンス違反・ハラスメント・人権に関する問題や、人的流出・健康起因のリスク、またDX推進や働き方改革等に伴う新たなストレスへの脅威への認識を高めております。具体的には、人事部を中心にリスク事象の早期発見・相談体制の整備、エンゲージメントサーベイ・ストレスチェックの分析や職場環境のモニタリング、社内研修や情報発信による予防策の徹底等を実施しております。あわせて、社内通報・相談窓口や産業医と連携し、メンタルヘルスから不正・ハラスメントまで幅広く対応しております。
これらを通じて、「人」に起因する事業継続・価値創造上のリスクを最小化し、従業員一人ひとりが安心して高パフォーマンスを発揮できる健全な組織風土の醸成を目指して参ります。
④ 指標及び目標
当社の人材育成および環境整備に関する指標及び目標は、次のとおりであります。
なお、連結グループでの集計が困難な指標であるため、当社単体の数値を記載しております。
(ⅰ)人材育成方針 (目標及び実績/当社)
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重点テーマ |
KPI |
2025年3月期実績 |
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深い現場知見に根差した最適な解決策をデザインする力 |
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最適な組合せでソリューションを実装・運用する力 |
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(注) |
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(注)Business Process Management研修、DXプロジェクト推進研修、プロセスアドバイザー研修、データ利活用研修、ビジネスアナリティクス研修、KGUのDXカリキュラムのいずれかを受講した割合であります。
(ⅱ)環境整備方針 (目標及び実績/当社)
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重点テーマ |
KPI |
2025年3月期実績 |
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多様な個性を活かす DE&I |
(注)1 |
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(注)2 |
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(4年平均) |
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エンゲージメント向上によるパフォーマンスの最大化 |
(注)3 |
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グローバル企業 上位 |
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多様な働き方 |
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従業員のWell-beingを追求する健康経営、安心して働ける労働慣行 |
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(注)1.有価証券報告書提出日現在において当初の目標であった7%を上回ったため、10%に上方修正いたしました。
2.新卒採用における2023年度から4年間の平均を目標値としております。そのうちの2年目のため、過去2年の平均の値を記載しております。
3.グローバル平均のデータベースに含まれる企業数は約700社、社員数約700万人(各業界で際立った財務実績を有するグローバル企業上位10%の平均スコア)であり、2024年の実績値は72%であります。
(ⅲ)中期経営計画における戦略目標
中期経営計画「integration 1.0」“組織能力・人的資本の強化”のモニタリング指標として「新たな行動様式を実践する従業員」または「組織横断プロジェクトに従事する従業員」を戦略目標に掲げております。
(注意事項)
上記の「指標及び目標」などの将来に関する記述は、当社グループが有価証券報告書提出日現在入手している情報および合理的であると判断する一定の前提に基づいており、その達成を当社として約束する趣旨のものではありません。また、実数値等は様々な要因により大きく異なる可能性があります。
当社グループは、グローバルで幅広く事業活動を行っているため、市場リスク・信用リスク・投資リスクなど様々なリスクにさらされております。当社グループでは、それぞれのリスクに対して管理手法を整備し、リスクのコントロールを行っておりますが、事業を推進するうえで予測困難な不確実性を内包していることから、当社グループの財政状態や経営成績が影響を受ける可能性があります。また、当社グループは、親会社の所有者に帰属する持分(自己資本)を積み上げて財務基盤を拡充することを基本方針としており、個々の事業における環境の悪化に起因する想定損失の最大額に対するリスクバッファーの観点から、リスクアセット倍率の上限を定めており、リスクアセットに対する自己資本の規模の妥当性を検証し、取締役会および経営会議に定期的に報告しております。
しかしながら、これらのリスクを完全に排除することは困難なため、事業の状況、経理の状況等に記載した事項のうち、有価証券報告書提出日現在において、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると経営者が認識している主なリスクは、次のとおりであります。
(1) マクロ経済環境の変化によるリスク
当社グループは、国内外における各種商品の商取引、事業投資、サービスの提供等多岐にわたる事業をグローバルに展開しております。このため、日本、米国、中国、欧州およびアジア新興国や世界経済全般の景気が減速した場合、需要の停滞による売上減少や市場価格の大幅な落ち込みなどにより、当社グループの経営成績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
なお、提出日現在で当社グループが認識しているマクロ経済環境は「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」に記載しております。
(2) 市場リスク
当社グループにおいて、営業取引に付随する為替変動リスク、金利変動リスクおよび取扱商品の価格変動リスクは多くの場合、取引先等との取引条件の中でヘッジしております。あわせて、為替・商品やそれらの派生商品について、社内組織単位および会社ごとにリスク量と収益を勘案のうえ、ポジション枠(限度枠)と損失限度額を定め、これらの限度を超えた場合には速やかにポジションを縮減する体制を整備しております。また、ヘッジ手段として派生商品を活用することで、これらのポジションの価格変動リスクを軽減させております。これらのポジションの状況については、定期的に経営会議宛に報告され、ポジション枠を超過している場合は、速やかにその内容を分析のうえ、縮減させております。
なお、それぞれのリスクが一定の前提の中で変動した際に当社グループの経営成績に与える影響は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記30 金融商品 (5) 市場リスク管理」に記載しております。
① 為替変動リスク
当社グループは、輸出入取引などに付随して、様々な通貨・条件での外国通貨取引を行っており、これらの為替変動リスクを軽減するため、為替予約等のデリバティブ取引を行っております。
また、当社グループは海外に現地法人や事業会社を有しており、連結財務諸表上それらの会社の残高は期末日の為替レートにて換算されるため、為替レートの変動により在外営業活動体の換算差額を通じて、親会社の所有者に帰属する持分を増減させる可能性があり、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
② 金利変動リスク
当社グループは、営業活動や財務活動に係る資金の大半を金融機関からの借入金により調達しており、これらの借入金の一部は変動金利となっております。これらの借入金や資金運用については金利変動リスクがあり、金利上昇によって支払利息が増加する可能性があります。
③ 取扱商品の需給・価格変動リスク
当社グループの主たる事業である国内外での商品売買取引においては、市況の影響を受ける穀物・畜産物・石油製品等の取扱いがあります。一部の相場商品は商品先物取引を利用し価格変動リスクの軽減を図っておりますが、これらの商品ポジションが拡大した場合に、商品相場の乱高下や需要の減少等によって、予期しない損失が発生し、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
④ 市場性のある有価証券等の価格変動リスク
当社グループは、取引先との関係強化などの目的で有価証券を保有することがあります。これらには株価変動リスクが存在し、その他の包括利益を通じて公正価値で測定する金融資産の変動により、当社グループの財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(3) 信用リスク
当社グループは、国内外の取引先と多様な商取引を行う中で売掛金、前渡金、貸付金、保証その他の様々な形態での信用供与を行っており、取引先の財政状態の悪化などにより、回収遅延や債務不履行などが発生する可能性があります。また、商品供給契約、請負契約、業務委託契約等の締結・履行においては、理由の如何を問わず、取引先の債務不履行や契約不履行が発生した場合に、金銭的損失を伴う履行責任を負う可能性があります。これらの損失負担については、会計上、一定の見積りを用いて引当金の設定を行っておりますが、結果として損失が引当金の範囲を超え、追加的に損失が生じる可能性もあり、当社グループの経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
国内外の取引先への信用供与を行うにあたっては、定期的に取引先の財務データやその他の情報に基づき取引先ごとに格付けを付与し、取引の内容に応じた与信種別と与信限度を設定のうえ、必要に応じて保険を付保しています。また、通常の営業取引から生じる取引与信のほか、融資、保証行為など、これらの信用供与の総額が与信限度内に収まるよう運営し、定期的に回収状況や滞留状況をモニタリングし、必要な保全策を講じることによってコントロールしておりますが、信用リスクが完全に回避される保証はありません。また、取引先の信用状態悪化に対しては取引縮小や債権保全策を講じ、取引先の破綻に対しては処理方針を立てて債権回収に努めていますが、債権等が回収不能になった場合には当社グループの経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
なお、当社グループの信用リスク管理の管理手法およびその予想信用損失の測定については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記30 金融商品 (3) 信用リスク管理」に記載しております。
(4) カントリーリスク
当社グループは、海外における取引や投融資を展開しており、その国の政治・経済情勢に起因する代金回収の遅延や不能が生じる可能性があります。こうしたカントリーリスクの顕在化による損失を極小化するため、定期的に各国・地域ごとのカントリーリスクの大きさに応じた格付けを付与したうえで限度額を設定し、特定の国・地域に対するエクスポージャーの集中を避けるべく運営しております。格付けや案件の内容に応じて貿易保険の付保などによる回収リスクの回避策も講じておりますが、実際に特定の国・地域においてこれらのリスクが顕在化した場合には、当該事業および取引の継続が困難となり、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
なお、当社グループにおける各国・地域に対する外部顧客からの収益および非流動資産の金額は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記6 セグメント情報 (4) 地域別情報」に記載しております。
(5) 事業投資等のリスク
当社グループは、中期経営計画「integration 1.0」の資本配分方針において、安定的な基盤事業と成長事業からの営業キャッシュ・フローをもとに、成長投資を実行することを目標に掲げております。
これら事業投資等の実行にあたっては、投資基準を定め強みのある事業分野への投資を主として、投資目的・内容およびキャッシュ・フローをベースにした事業の採算性と様々なリスク要因の評価・分析等を踏まえた審議を各職能部門が行い、一定規模以上の重要な案件については案件審議会での審議を行っております。また、事業撤退の基準も定めたうえで、投資実行後も定期的に案件審議会において、その事業性と投資価値の評価・見直しを行うことで、損失の極小化に努めております。しかしながら、投資先の財政状態や事業の成否によって、投資価値が変動する可能性があります。
また、現地の法令やパートナーなどとの関係において、当社グループの方針どおりに事業展開あるいは撤退ができない可能性もある中、投資の一部または全部が損失となる、あるいは追加資金拠出が必要となるリスクがあり、当社グループの経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(6) 固定資産に関する減損リスク
当社グループが保有する有形固定資産、のれんおよび無形資産は減損リスクにさらされております。対象資産の資産価値が減少した場合、必要な減損処理を行うため、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。特に、中期経営計画「integration 1.0」において事業投資による成長を掲げており、企業結合に伴うのれんおよび識別可能な無形資産の金額が、今後増加する可能性があります。
対象となる固定資産および使用権資産については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記9 有形固定資産」および「同 注記10 のれんおよび無形資産」に記載しております。また、認識した減損損失については、「同 注記22 減損損失」に記載しております。
(7) 資金調達に関するリスク
当社グループは、事業資金を国内外に所在する金融機関からの借入金および社債等により調達しております。金融機関との良好な取引関係の維持およびアセット・ライアビリティ・マネジメントに努め、資産の内容に応じた調達を実施することで流動性リスクの最小化を図っておりますが、金融市場の混乱や格付機関による当社信用格付けの大幅な引き下げ等の事態が生じた場合、当社グループの資金調達に制約が課される可能性や、調達コストが増加する可能性があります。
なお、当社グループの資金調達の状況については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記15 社債及び借入金等」および「同 注記30 金融商品 (4) 流動性リスク管理」に記載しております。
(8) 法令変更等に関するリスク
当社グループの国内外における事業活動は、日本および諸外国における広範な法規制の対象となっております。これらの遵守には最大限の注意を払っておりますが、予期し得ない各種法令等の変更、国際政治・情勢等の変化によって一方的に実施される懲罰的関税措置を含む輸出入規制および商品販売・取扱いに係る許認可等の規制変更などにより、当該取引を継続できなくなる可能性ならびに訴訟や当局の命令などから予期せぬ費用が発生する可能性があります。この中には、国際課税における当局や国家間の取決めおよび税率の変更による税務リスクも含まれており、これら法規制の変更は当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(9) 訴訟・係争等に関するリスク
当社グループが国内外で事業活動を行うにあたっては、その営業活動や事業運営上の資産・負債等が様々な形で、訴訟等の法的手続上の、あるいはその他の係争の対象となることがあります。これらの訴訟・係争等の発生は予測困難であり、またそのような訴訟・係争等が発生した場合において、その解決には相当の時間を要することが多く、結果を予想することには不確実性が伴います。このような訴訟・係争等が発生し、予期せぬ結果となった場合には、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
なお、当社グループにおける訴訟・係争等については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記33 偶発債務」に記載しております。
(10) 法令遵守・不正行為に関するリスク
当社グループは、多岐にわたる商品・サービスを国内外で売買・提供する事業を営んでおり、その商品・サービスに対して我が国を含む世界各国で制定、施行されている安全保障貿易管理関連法令など輸出入関連法規をはじめとする各種法令および規則に最大限の注意を払って事業を行っております。
各種の法規制や規則遵守に関して、内部統制・コンプライアンス委員会が法令遵守体制の整備・運用状況についての定期的なレビューを行うとともに、突発的に発生する諸問題に対応しております。しかしながら、複数の当事者を介して行う各種取引オペレーションにあたって、常に完全な手続を実施することは難しく、複数の予防的措置を講じているにもかかわらず、結果として法令違反や不正行為を見逃し、それらの違反や不正行為が重大なものであった場合には当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(11) 情報セキュリティに関するリスク
当社グループは、情報共有や業務の効率化、事業の拡大発展のために情報システムを構築・運用しており、情報システム運営上の安全性確保のため、情報セキュリティ管理に関する規程を定め、危機管理対応の徹底に取り組んでおります。しかしながら、年々サイバー攻撃の手法が巧妙化し、件数も増加する中、外部からの予期せぬ不正アクセス、コンピュータウイルス侵入等による企業機密情報・個人情報の漏洩、更には、自然災害、事故等による情報システム設備の損壊や通信回線のトラブルなどにより情報システムが不稼動となる可能性を完全に排除することはできません。このような場合は、システムに依存している業務の効率性の低下を招くほか、被害の規模によっては当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(12) 自然災害等に関するリスク
当社グループは、国内外における地震、大雨、洪水などの自然災害・異常気象や、インフルエンザ・新型コロナウイルス感染症等の感染症、大規模事故、テロ・暴動、その他予期せぬ事態が発生した場合、当社グループの社員ならびに事業所、倉庫、工場などの設備機器、システム等といった資産が影響を受け、営業・生産活動に支障が生じる可能性があります。また、国内外に保管中または輸送中の貨物を有しており、これらの保有する資産が自然災害や偶発的事故等によって毀損・劣化する可能性に加え、地震・火災・洪水・暴動等により事業が中断する可能性があります。当社では、社員の安否確認システムの導入、災害マニュアルおよびBCP(事業継続計画)の策定、建物・設備・システム等の耐震対策(データ等のバックアップを含む。)、防災訓練、必要物資の備蓄、国内外の拠点や関係会社との連携・情報共有などの対策を講じておりますが、被害の規模によっては当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(13) 気候変動、社会・環境問題に関するリスク
当社グループは、国内外の幅広い分野で事業活動を行っており、気候変動や人権の尊重など、深刻化する社会・環境問題等の影響を受け、事業の継続に制限を受ける可能性があるほか、当社グループの事業に起因した環境汚染や労務問題等が発生した場合、事業の停止、汚染除去費用や損害賠償費用の発生、社会的評価の低下につながる可能性があります。
企業活動にあたっては、注力すべき重要課題(市場の変化への対応、地域社会との共生、地球環境への配慮、ガバナンスの充実、人権の尊重、人材育成・ダイバーシティの推進)を設定・周知するとともに、サステナビリティ推進委員会を設置し主体的に課題解決を行う体制を構築しておりますが、予期せぬ事案の発生により、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(1) 経営成績等の状況の概要
① 経営成績の状況
当連結会計年度の世界経済は、米国は堅調な景気を維持した一方、長期化する中国の景気低迷や中東情勢の悪化など地政学リスクの高止まりによって先行き不透明な情勢が続きました。
米国では、個人消費が堅調に推移したものの、関税引き上げをはじめとした第2次トランプ政権の政策の不確実性に対する警戒感の高まりにより、景気を下押しするリスクが高まっている状況です。
欧州では、インフレ鈍化を受けた実質所得の増加により個人消費が持ち直し、景気は緩やかな回復の動きが見られたものの、米国の関税政策を巡る先行き不透明感が景気回復の重石となることが懸念されます。
中国では、長期化する不動産不況や個人消費の減速などにより低調な景気が続いていることに加え、米中間の関税引き上げによる内外需の悪化が懸念されます。
日本経済は、堅調な企業収益や雇用・所得環境の改善などを背景に景気は緩やかに回復した一方で、利上げや米国の関税政策による直接的・間接的な影響など先行きは注視が必要な状況です。
このような環境のもと、当連結会計年度の当社グループの業績は、次のとおりとなりました。
販売が好調なモバイル事業や、航空機・防衛関連の取引が好調に推移した航空宇宙事業を中心に増収となりました。市況の低迷の影響や減損損失を計上した鋼管事業などが減益となった一方、モバイル事業や前期に持分法投資の減損損失を計上した鉄鋼事業などが増益となりました。
その結果、収益は、前連結会計年度比649億43百万円(6.6%)増加の1兆509億36百万円となり、売上総利益は、前連結会計年度比124億50百万円(8.7%)増加の1,550億7百万円となりました。営業活動に係る利益は、当連結会計年度はのれんの減損損失の計上などにより、前連結会計年度比18億19百万円(4.1%)減少の420億51百万円となりました。一方、税引前利益は、前連結会計年度に計上した持分法による投資の減損損失が無くなったことなどにより、前連結会計年度比9億92百万円(2.7%)増加の382億33百万円となり、親会社の所有者に帰属する当期利益は、前連結会計年度比42億51百万円(18.3%)増加の274億69百万円となりました。また、親会社の所有者に帰属する持分(自己資本)に対する親会社の所有者に帰属する当期利益率(ROE)は、16.5%、投下資本利益率(ROIC)※は、7.6%となりました。
※ROIC = 当期利益 ÷ 投下資本(有利子負債 + 自己資本)
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況については、営業活動によるキャッシュ・フローが583億29百万円の収入、投資活動によるキャッシュ・フローが13億63百万円の収入、財務活動によるキャッシュ・フローが546億58百万円の支出となりました。これらに、現金及び現金同等物に係る換算差額を調整した結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は567億79百万円となり、前連結会計年度末比33億48百万円の増加となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、営業収入の積上げなどにより、583億29百万円の収入(前連結会計年度は355億82百万円の収入)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得や子会社の取得等の事業投資の実行などによる支出があった一方で、政策保有株式(その他の投資)の売却などにより、13億63百万円の収入(前連結会計年度は124億23百万円の支出)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、借入金およびリース負債の返済や配当金の支払いなどにより、546億58百万円の支出(前連結会計年度は501億2百万円の支出)となりました。
③ 仕入、成約及び販売の実績
(ⅰ) 仕入実績
仕入は販売と概ね連動しているため、記載は省略しております。
(ⅱ) 成約実績
成約は販売と概ね連動しているため、記載は省略しております。
(ⅲ) 販売実績
「(1) 経営成績等の状況の概要」および「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記6 セグメント情報」に記載しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成にあたっては、決算日における資産・負債、偶発資産・偶発負債の開示および報告期間における収益・費用の金額を認識する際に、必要に応じて会計上の見積りおよび仮定を用いることが必要となります。この会計上の見積りや仮定は、決算日時点で入手可能な合理的な情報等に基づき設定しておりますが、不確実性を伴うため、その変動により将来の実績との間で差異が生じる可能性があります。
当社グループにおける重要な会計方針及び見積りについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記2 作成の基礎」および「同 注記3 重要性がある会計方針」に記載しております。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の経営成績等は、次のとおりであります。
収益
収益は、電子・デバイスセグメント、車両・航空セグメントを中心に前連結会計年度比649億43百万円増加の1兆509億36百万円となりました。
売上総利益
売上総利益は、電子・デバイスセグメントを中心に前連結会計年度比124億50百万円増加の1,550億7百万円となりました。
営業活動に係る利益
営業活動に係る利益は、のれんの減損損失の計上などにより、前連結会計年度比18億19百万円減少の420億51百万円となりました。
税引前利益
税引前利益は、前連結会計年度に計上した持分法による投資の減損損失が無くなったことなどにより、前連結会計年度比9億92百万円増加の382億33百万円となりました。
親会社の所有者に帰属する当期利益
税引前利益から法人所得税費用117億95百万円を控除した結果、当期利益は264億38百万円となり、親会社の所有者に帰属する当期利益は、前連結会計年度比42億51百万円増加の274億69百万円となりました。
財政状態
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末比360億10百万円減少の6,893億37百万円となりました。
有利子負債については、前連結会計年度末比356億45百万円減少の1,789億1百万円となりました。現預金を差し引いたネット有利子負債は、前連結会計年度末比390億89百万円減少の1,203億36百万円となりました。なお、有利子負債にはリース負債を含めておりません。
資本のうち、親会社の所有者に帰属する持分については、親会社の所有者に帰属する当期利益の積上げなどにより、前連結会計年度末比146億24百万円増加の1,739億42百万円となりました。
その結果、親会社所有者帰属持分比率(自己資本比率)は25.2%、ネット有利子負債資本倍率(ネットDER)は0.69倍となりました。
親会社の所有者に帰属する持分(自己資本)に対する親会社の所有者に帰属する当期利益率(ROE)
当連結会計年度の親会社の所有者に帰属する持分(自己資本)1,739億42百万円に対して、親会社の所有者に帰属する当期利益274億69百万円となったためROEは前連結会計年度末比0.4ポイント上昇の16.5%となりました。
セグメントの業績は、次のとおりであります。
ICTソリューション
収益は、セキュリティ関連の案件や、製造業向けを中心としたネットワークやストレージ関連の案件が堅調に推移したことにより、前連結会計年度比107億13百万円増加の995億28百万円、営業活動に係る利益は、7億45百万円増加の146億79百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益は、6億34百万円増加の99億70百万円となりました。
親会社の所有者に帰属する当期利益についての概況は、次のとおりであります。ICTソリューション事業は、人件費やオフィスリニューアル費用などの経費が増加した一方、セキュリティ関連の案件や、製造業向けを中心としたネットワークやストレージ関連の案件が堅調に推移しました。
電子・デバイス
収益は、モバイル事業や半導体部品・製造装置事業などの増収により、前連結会計年度比349億88百万円増加の2,713億73百万円、営業活動に係る利益は、モバイル事業などの増益により、27億80百万円増加の113億95百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益は、17億13百万円増加の70億31百万円となりました。
親会社の所有者に帰属する当期利益についての概況は、次のとおりであります。モバイル事業は、直営店舗の増加や販路拡大の効果、販売台数増加に加え、法人向け事業の伸長もあり、店舗再編などにかかるコストが先行した前期と比較すると好調に推移しました。半導体部品事業は、好調に推移した前期と比較すると減速した一方で、半導体製造装置事業は、半導体市況の回復の遅れに伴い苦戦したもののM&Aによる効果もあり堅調に推移しました。電子機器・電子材料事業は、のれんの減損損失を計上したため、前期と比較すると低調に推移しました。
食料
収益は、畜産事業や食品事業の増収により、前連結会計年度比158億40百万円増加の3,575億36百万円、営業活動に係る利益は、畜産事業の減益により、1億26百万円減少の78億42百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益は、4億17百万円減少の30億63百万円となりました。
親会社の所有者に帰属する当期利益についての概況は、次のとおりであります。食品事業は、リテール向け取引や飲料原料などの販売が堅調に推移しました。畜産事業は、海外市況高や円安によるコスト増加、国内市況の低迷などの影響を受け低調に推移しました。食糧事業は、大豆の販売などが堅調に推移しました。
鉄鋼・素材・プラント
収益は、鋼管事業やエネルギー事業の減収により、前連結会計年度比133億35百万円減少の1,984億8百万円、営業活動に係る利益は、鋼管事業やエネルギー事業などの減益により、49億26百万円減少の35億24百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益は、20億88百万円増加の40億15百万円となりました。
親会社の所有者に帰属する当期利益についての概況は、次のとおりであります。鉄鋼事業は、北米鋼管取引が減速した一方で、持分法で会計処理されている投資の減損損失を計上した前期と比較すると好調に推移しました。エネルギー事業は、需要の低迷により、好調に推移した前期と比較すると低調に推移しました。
車両・航空
収益は、航空宇宙事業などの増収により、前連結会計年度比165億29百万円増加の1,219億12百万円、営業活動に係る利益は、車両・車載部品事業や工作機械・産業機械事業などの減益により、50百万円減少の48億2百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益は、2億33百万円増加の31億84百万円となりました。
親会社の所有者に帰属する当期利益についての概況は、次のとおりであります。航空宇宙事業は、航空・防衛関連取引が好調に推移しました。
その他
収益は、前連結会計年度比2億8百万円増加の21億77百万円、営業活動に係る損失は、2億30百万円悪化の2億6百万円、親会社の所有者に帰属する当期損失は、2億4百万円悪化の27百万円となりました。
③ キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容および資本の財源および資金の流動性についての分析
キャッシュ・フロー
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況の分析・検討内容は、「(1) 経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
資金調達
当社グループは、中期経営計画「integration 1.0」の基本方針のひとつに掲げる「株主価値の向上」を実現するために必要な、低コストで安定的な資金調達を基本方針として資金調達活動に取り組んでおります。
当社グループの資金調達については、各取引銀行、生損保等の金融機関との良好な関係を背景とした間接金融をベースとしております。また、長期資金の調達手段のひとつとして普通社債を発行し、資本市場からの調達も実施しております。当連結会計年度では、120億円の普通社債を発行し、連結有利子負債に占める直接金融からの負債調達割合は12%となりました。
これらの円滑な資金調達を行うため、㈱日本格付研究所(JCR)、ならびに㈱格付投資情報センター(R&I)の2社から格付けを取得しており、当連結会計年度末の当社グループに対する格付け(長期)は、JCRが前年からワンノッチ格上げとなるA(安定的)、R&IがA-(安定的)となっております。
加えて、手元流動性の確保を図るため、十分な規模の現金及び現金同等物を保有するほか、主要金融機関においてコミットメントラインを設定しており、当連結会計年度末における流動比率は142%となりました。
連結ベースでの効率的な資金調達を実施するために、国内主要関係会社の資金調達を親会社に集中したうえで、資金需要に応じて配分を行うキャッシュマネジメントシステムを導入しております。当連結会計年度末では、連結有利子負債に占める当社の有利子負債の割合は74%と、資金調達の大半を親会社に集中しております。
このような資金調達活動の結果、当連結会計年度末におけるグロス有利子負債残高は1,789億1百万円で、前連結会計年度末と比べ356億45百万円減少いたしました。現金及び現金同等物の残高が前連結会計年度末に比べ増加したため、当連結会計年度末におけるネット有利子負債残高は1,203億36百万円となり、前連結会計年度末に比べ390億89百万円減少いたしました。その結果、ネット有利子負債資本倍率(ネットDER)は0.69倍となりました。
また、当連結会計年度末の有利子負債残高に占める社債および長期借入金(1年以内に返済予定の社債および長期借入金を含む。)の比率は70%(当社では90%)であり、長期資金を中心とした資金調達により、安定した調達基盤を維持しております。
配当性向(総還元性向)
当社グループは、中期経営計画「integration 1.0」期間の中で、年間配当金を下限90円から105円に引き上げることを定め、累進配当を実施いたします。総還元性向は30%~35%として、親会社の所有者に帰属する当期利益の成長に応じて増配を行う方針です。これを達成するために、創出される営業キャッシュ・フローおよび金融機関や資本市場から調達する財務キャッシュ・フローを重点分野への成長投資に充てるとともに、安定的かつ継続的に株主還元を実施し、資本の効率性と財務バランスにも目を配って参ります。
なお、当連結会計年度における配当性向(総還元性向)は31.9%となりました。
(注意事項)
上記の見通しなどの将来に関する記述は、当社グループが有価証券報告書提出日現在入手している情報および合理的であると判断する一定の前提に基づいており、その達成を当社として約束する趣旨のものではありません。また、実際の業績等は様々な要因により大きく異なる可能性があります。
当社は、金融機関とシンジケートローン契約を締結しており、その内容は、次のとおりであります。
2025年3月31日現在
|
契約 |
契約締結日 |
契約締結先 |
契約金額 |
期末残高 |
担保 |
弁済期限 |
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トランシェA |
2023年3月14日 |
金融機関 |
15,000百万円 |
11,250百万円 |
なし |
2029年8月31日 |
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トランシェB |
2023年3月14日 |
金融機関 |
10,000百万円 |
6,250百万円 |
なし |
2027年8月31日 |
|
トランシェC |
2023年3月14日 |
金融機関 |
10,000百万円 |
10,000百万円 |
なし |
2030年8月30日 |
上記の契約には財務制限条項が付されており、その内容は、次のとおりであります。
・当社グループの2023年3月に終了する連結会計年度以降の各連結会計年度に係る連結損益計算書上の営業活動に係る利益に関して、2期連続して損失を計上しないこと。
・当社グループの各連結会計年度に係る連結財政状態計算書の資本合計に関して、2024年3月に終了する連結会計年度以降、前連結会計年度の額の75%以上とすること。
なお、当連結会計年度末において、財務制限条項に抵触している事実はありません。
当連結会計年度における研究開発費の総額は