文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営方針
当社グループは創業以来「社業の発展を通じ社会に貢献する」を社是として経営を行なっております。
お客様である電力業界や多岐に亘る各産業界においては、環境等の社会課題に対しての関心や意志が高まるとともに、継続的な改善等の積み上げと飛躍的な技術革新等を背景にして、たゆまぬ進化・変貌が続いておりますが、当社グループは、こうしたお客様と社会の要請や期待に応えるべく、常に、先進性と多様性を備え、更に、永年培ってきた知見と機能を活かし、産業設備・機器等の商取引を通じ社会に貢献してまいる所存です。
(2)グループポリシー、グループ行動規範、グループミッション
当社グループは、結束力やグループ経営を推進していくため、「グループポリシー」、「グループ行動規範」、「グループミッション」を定め、グループに属する各社および、そこで働く社員一人ひとりがこれらを共有し、日々の行動に繋げ、グループ全体で企業価値の向上を目指しております。
(3)長期経営ビジョン「VIORB 2030」
当社グループは、気候変動への対策としてのカーボンニュートラルの取り組みなど「環境」をめぐる変化の流れのなかにこそ、貢献すべきことがあるはずと考え、以下を基本戦略とする2030年に向けた長期経営ビジョン「VIORB 2030」を策定しました。
1)当社の存在意義
エネルギーおよび産業のインフラ分野に強みを持つ商社を核とする企業グループとして、地球環境と調和したサステナブルなエネルギー創出・産業活動を支援する。
2)事業面での重点分野
以下の4点をキーワードとして掲げ、時代の流れに応じたユーザーニーズと技術を的確に捉えて対応することで、ビジネスを創り上げていく。
① 脱炭素のユーザーニーズと技術革新を機敏に捉えビジネス化
② 省エネ・省人化に関する産業界の恒久ニーズへの支援を拡大
③ サーキュラーエコノミーの進展・実現の動きへの対応を強化
④ デジタルトランスフォーメーションを広義に捉え商機を探求
3)経営面での主要施策
上述の事業展開を支え、現実性のあるものとするため、経営面では当面の主要施策として以下のことを実行する。
① キャッシュマネジメントの仕組みの整備による資金余力の最大化
② 100億円規模の事業投資による既存事業の深化と事業領域の拡張
③ SDGsに資すると判断される事業や活動を応援するため10億円のファンドを設定
④ 組織スリム化と生産性向上による重点分野への人的リソース投入
⑤ グループ各社毎の特性を踏まえた強みを明確にし経営資源を集中
(4)中期経営計画「VIORB2030 Phase1」
2023年4月から2027年3月までの4ヵ年計画として、中期経営計画「VIORB2030 Phase1」を策定し推進しております。長期経営ビジョン「VIORB 2030」の前半部を担い、当社グループが飛躍的に成長する礎を築くための計画として位置付けております。
1)成長戦略
以下の基本戦略を軸とし、持続的な収益構造を確立、グループ全体の強靭化を図ります。
(5)長期経営ビジョンおよび中期経営計画の最終年度目標の修正
2022年4月22日に公表、2023年4月20日に一部修正した長期経営ビジョンおよび2023年5月26日に公表した中期経営計画の最終年度達成目標を、下記の通り上方修正いたしました。
1)長期経営ビジョン 最終年度到達目標
2)中期経営計画 最終年度達成目標
(6)会社の対処すべき課題
当社は、中期経営計画において『環境』をテーマとして掲げており、地球と調和したサステナブルなエネルギーの創出と産業活動を支援するとともに、それを成長ドライバーとして当社自身の持続的成長と企業価値向上に繋げることを最大のミッションとしております。
中期経営計画に基づき事業を進めるなか、三菱重工業の原子力事業の代理店となったことなどにより基礎収益力が向上し、加えて連結子会社各社の業績が好調に推移したことから、前期および当期において中期経営計画の最終年度の目標数値を達成致しました。
それに伴い、長期経営ビジョンならびに中期経営計画における売上高、営業利益、経常利益の最終年度目標を上方修正すると共に、以下の追加戦略を策定し、更なる企業価値の向上に向け取り組んでおります。
①事業戦略
各事業セグメントの特性を踏まえた戦略を設定し、事業環境の分析や成長性のモニタリングを効果的に行う体制を整え、中長期的視点での事業最適化を推進することで収益力を向上させる
ⅰ成長領域での事業拡大
既存事業の補完的M&Aの加速
ⅱ低成長・低収益事業の構造改革断行
必要な経営リソースを機動的に投入し、収益性を改善
ⅲグループ会社の耐性強化
資本収益性向上への意識を常に持ち、経営の革新、戦略的な資源配分、リスクマネジメント、事業ポートフォリオの最適化、適確な情報開示を行う
②経営戦略
「資本コストや株価を意識した経営の実現」に向け、投下資本の効率運用を行う
ⅳキャッシュアロケーションの検証
事業投資・人的資本投資・株主還元の最適化を図る
ⅴ人事戦略の高度化
多様な人材の採用、健康経営の実現、人材の育成を計画的に実行する
中長期的な当社の成長戦略と、長期経営ビジョンおよび中期経営計画の修正目標数値は、以下のモデル図の通りです。
当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、以下の通りです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)基本的な考え方
当社グループは、「地球環境と調和したサステナブルなエネルギー創出・産業活動を支援する」というパーパスを実践し、豊かな社会の実現に貢献するため、2030年に向けた長期経営ビジョン「VIORB 2030」を策定致しました。環境・社会・経済の観点から持続可能な社会にしていくこと、気候変動への取組みを通じて当社が地球環境に貢献できることを追求しながら、企業の成長との両立を進めてまいります。また、当社において最も重要な資本である人材の確保や育成に係る取組みを通じ、その価値を最大限に引き出すことで中長期的な企業価値向上につなげてまいります。

(2)ガバナンス
サステナビリティに関する基本方針やモニタリング体制の整備など重要事項は経営会議や取締役会に付議・報告し、取締役会の監督のもとで進められています。
個別に設置・対応してきた各部、各委員会・プロジェクトチーム等を、サステナビリティ基本方針に沿って全社網羅的・機能的に運営させること、またそれにより様々な社会的課題を解決することを目的とし、各機関を「環境対応」「人を大切にする経営」「経営品質の向上」の3つのカテゴリーに整理・集約し、それらの取り組み方針を策定し推進するための部会を設置し、モニタリングする上部機関として、サステナビリティ委員会を設置しています。

(3)戦略
また当社グループは、様々な社会課題と当社事業との関連性や影響度合を分析し、優先的に取り組むべき4つの「マテリアリティテーマ」と12の重要課題を特定致しました。マテリアリティを経営戦略やサステナビリティ委員会の施策と連携させることで、事業活動を通じこれらの課題解決を目指しています。
マテリアリティを通じた具体的な取り組みやKPIについては、(5)指標と目標のマテリアリティ図をご参照ください。
(4)リスク管理
当社では、気候変動を中心とした地球環境問題への配慮、従業員の労働環境の整備、地域社会との共存・共栄といったサステナビリティ全般に関する協議、方針決定の場としてサステナビリティ委員会を年4回開催しております。サステナビリティに関するリスクはサステナビリティ委員会で特定・分析を行い、対応策を協議・実施します。また重要なリスクについては、全社リスク管理のプロセスと同様に、経営会議による分析を経てその影響度や管理状況について適宜取締役会への報告を行っています。
(5)指標と目標
長期経営ビジョン「VIORB 2030」では、「環境」を事業重点テーマとして掲げ、取引先の温室効果ガス排出削減や産業の持続的成長を支援することをミッションとしております。その成果を測るため、「グリーンイノベーション関連商品※」の取扱売上高目標およびマテリアリティを通じた取り組みに対するKPIを設定しております。
「グリーンイノベーション関連商品」取扱売上高の当期における実績および推移は下表のとおりです。
2026年度および2030年度の当初目標は2024年度において前倒しで達成しており、新たなKPIの設定を検討してまいります。
※脱炭素、クリーンエネルギー、省エネ・省資源、公害防止、リサイクル・リユースなど、環境配慮や環境保全に貢献
しうる商品の取扱売上高
当社のマテリアリティとその実現に向けた具体的な取り組みおよびKPIは以下の通りです。

(気候変動に関する取り組み)
(1)ガバナンス
気候変動に関するガバナンスは、サステナビリティに関するガバナンスに組み込まれており、重要事項は経営会議や取締役会の監督のもとで進めております。気候変動対応推進の実務は企画部・営業部門・子会社等が連携し、気候変動リスク・機会の特定、事業戦略への落とし込み、管理指標および目標の検討などを行い、管掌役員を通じて経営会議や取締役会へ報告しております。

(2)戦略
気候変動が当社事業・業績に与える影響について、TCFDフレームワークに基づき、以下2つのシナリオ分析を行っております。
2℃未満シナリオ:低炭素経済へ移行するシナリオ
4℃シナリオ:物理的気候変動リスクが高まるシナリオ
気候変動シナリオはIPCC SSP1-2.6、IPCC SSP5-8.5を使用しています。
なお、分析の時間軸は基本的に移行リスクについては2030年、物理的リスクは2050年を基準としています。
分析対象として、西華産業本社及び連結子会社である日本ダイヤバルブ、敷島機器、セイカダイヤエンジン、Tsurumi(Europe)の計5社を選定しています。上記分析対象企業で当社連結売上高、営業利益のそれぞれ90%以上を占めています。
特定したリスクと機会に関しては、リスクへの対応や機会の最大化に向けて、中期経営計画で掲げた取組を推進しております。
(3)リスク管理
気候変動問題に関して、気候変動等の社会・環境問題に起因する事業環境の変化に適切に対応出来ないことにより事業の持続性が妨げられるリスクを認識し、経営の戦略的判断に活用出来る体制を整えています。
気候変動リスクの対応は、サステナビリティ委員会傘下の「環境対応」部会が主要なリスクの状況をまとめ、定期的に経営会議や取締役会に報告しております。
(4)指標と目標
2020年度より西華産業単体のCO2排出量の捕捉を行ってまいりましたが、2023年度より主要グループ企業4社(※1)を含めたScope1、Scope2(※2)の温室効果ガス(GHG)排出量の捕捉を開始致しました。集計したデータを元に排出削減に向けた取り組みおよび削減目標を設定しています。今後は、グループを通じた目標設定につきましても検討してまいります。
2024年度 西華産業グループGHG排出量 (単位:t-CO2)
※1 日本ダイヤバルブ、敷島機器、セイカダイヤエンジン、Tsurumi(Europe)
※2 Scope1:事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)
Scope2:他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出
※3 一般廃棄物の処理に伴うCO2換算排出量
(人的資本経営の取り組み)
当社は、社員を最も重要な財産と捉え、人材価値を最大限に引き出し、きらきらと輝く活気に満ちた人材と組織の実現を通じて、会社の持続的な成長と企業価値の向上につなげていくこととしております。サステナブルな社会の構築に向けた施策を確実に実行し、積極的な人的資本投資を掛け合わせることでグループの強靭化を図り、その取り組みを次世代につなげてまいります。
(1)人材戦略に関する基本的な考え方
当社の人材戦略は以下の体系図に基づいて整理されており、目的を明確にしたうえで各施策を推進しております。社員の成長意欲を高めるとともに、高度な専門性や高い実務能力、幅広い知識を有するなど社員一人ひとりの個性・特性を尊重しながら、経営戦略の実現を担う人材の育成に取り組んでいます。
[人材戦略の体系図]

近年、人的資本経営の重要性が急速に高まるなか、当社としての持続的成長を支えるには、多様な背景や能力を有する人材の獲得と育成が不可欠であり、人的資本投資の強化が大きな課題となっております。こうした認識から、事業戦略と連動した人材の採用、成長機会を通じた人材の育成、働きがいのある職場環境づくりなど新たな人材強化策に着手しております。
(2)事業戦略を下支えする「多様な人材の採用」
「人材の採用」においては、各事業セグメントに必要となる人材要件を明確にしたうえで、定期的な採用に加え、専門性によるキャリア採用のほか、当社への勤務経験があり能力や経験、人柄について把握できている人材向けのキャリア・リターン採用など、以下の方針のもと、中長期かつ各事業の特徴を考慮した多様な視点での採用を推進しております。
1.当社グループの持続的成長を担い、その事業を強靭化するために必要な人材を採用する
2.足元の人的需要だけではなく、中長期的な事業の成長を見据える
3.事業の急拡大や想定外の離職による人員不足へ対処できるよう、エネルギー事業等の基礎収益事業向けを中心に、中長期的な視野で、計画的に人材を採用する
4.グループ経営の高度化を図るため、コーポレート部門の機能に必要な人材は、専門性や職種への適合性を考慮のうえ採用する
(3)成長機会の提供を通じた計画的な「人材の育成」
「人材の育成」においては、経営人材の育成、経営参画意識の向上、女性管理職の育成・登用などが課題となっており、OJT指導経験者数、管理職・経営職務経験者数の増加や社長直轄の経営幹部育成プロジェクト等を通じて社員の成長を支援してまいります。
2025年度(103期)においては、前年通り充分な育成予算を投じるとともに、現行の人材育成プログラムを更に改善し、事業計画と連動した人材を育成・輩出すべく、体系化された教育・研修制度を社員に対して提供してまいります。
[現行の人材育成プログラム]

[人材育成に関するパフォーマンス]
※1 当該年度において実施した「階層別研修」および「目的別研修」の延べ実施時間を合算
※2 人材育成プログラムにおける各種費用(外部機関への研修委託料、セミナー受講料、各種公的資格受験料およびこれらに付随する諸費用)の合計金額
(4)健康経営の実現
当社では、社員の健康を重視し、そのために積極投資することが、活力や生産性の向上など組織の活性化をもたらし、結果的に業績や企業価値の向上に繋がるという考えのもと、様々な取り組みを進めてまいります。
社員の健康維持・増進の観点において、福利厚生面では、法定健康診断に加えて、希望する従業員および役員に対して、生活習慣病健診・人間ドック・腫瘍マーカー検査・インフルエンザ予防接種の費用を負担しております。また、定期健康診断の一環として全従業員を対象とするストレス診断を実施し、希望者には医師との面談を設けることで、医師の助言のもと改善対策を講じております。
2025年度(103期)においては、健康経営優良法人の認定取得を目指して、特に次の3項目に取り組んでまいります。
・取引先に対する健康経営の取り組み推奨と実施状況の把握
・産業機械健保組合との連携強化(健康経営推進のための協議・連携)
・社員にヘルスリテラシー向上に資する教育・研修機会の提供
(5)給与のベースアップ、新卒初任給の引き上げ
社員のモチベーションアップと働き甲斐を持てる環境づくりに取り組んでおります。昨今の物価上昇等社会情勢を鑑みるとともに、優秀な人材の確保を目的として、2024年度に引き続き、2025年度給与において月額で社員一律12,000円のベースアップを実施しました。これにより、新卒(大卒)初任給についても2024年度の262,000円から274,000円へ引き上げとなります。人材への「投資」は最重要課題の一つと捉えており、給与のベースアップはその方針を施策として具体化したものとなっております。
[新卒初任給の引き上げ]
(6)職場環境整備への取り組み
(7)次世代法・女性活躍推進法に基づく行動計画
2023年4月より、次世代法・女性活躍推進法に基づく3ヵ年の行動計画を推進しております。多様な人材を適材適所に配置し、個人の能力を発揮させることが会社の持続的な成長・発展には不可欠であると考えております。今後も、育児や介護と仕事を両立しながら、その能力や適性を発揮できるよう、更なる職場環境の整備を行うとともに、積極的に女性の活躍を推進し、社員がより生き生きと働ける環境の構築に努めてまいります。
(計画期間:2023年4月1日~2026年3月31日までの3年間)
(8)その他
人的資本経営の取り組みについては、規模と制度の違いにより、連結グループに属する全ての会社では行われていないため、連結ベースでの記載が困難であります。このため、前述の指標に関する目標および実績は、当社単体における情報を記載しております。
(1)リスク管理体制
経営に重大な影響を及ぼすリスクに対して、リスクの未然防止およびリスクの最小化を図るため、社長執行役員が議長となり取締役会が指名する者で構成する経営会議にてリスク情報を統括・集約し統括管理する体制としております。また、年2回、執行役員集中討議会において当社および当社グループ会社のリスクマネジメント「リスク特定、リスク分析、リスク評価、リスク対応」につき検討、並びに協議を行い、対処すべき重大なリスクを決定しております。重大リスクのうち特に優先度の高いリスクについては、具体的な施策を講じ、日常よりリスクの低減活動に取り組んでおります。
≪リスク管理体制図≫

(2)リスクマネジメントの取り組み
当社グループにわたるリスク管理体制の強化とプロセス改善を継続的に推進しております。経営プロセス・事業内容プロセス・事業周辺プロセス・外部環境の4つの区分において、当社が注視すべきリスクを以下のカテゴリーの通り設定し、更にカテゴリーを細分化し具体性を伴ったリスク区分も設定しております。当該区分に基づき、当社および当社グループ会社において認識されている各々のリスクを分類し、リスク対応の重要性を「経営への影響度」と「発生可能性」の2軸によって可視化するリスクマップに落とし込んでおります。当社グループ会社のリスクモニタリングおよび対応策の検討には、当社より主体的に支援を行い、連携強化を図ることで、西華産業グループ全体のリスク管理体制の構築を進めております。

(3)主な個別のリスク
(業績等の概要)
当連結会計年度におけるわが国経済は、雇用・所得環境の改善やインバウンド需要の高まりなどにより景気は緩やかな回復の動きが見られる一方で、資源・原材料価格の高騰や消費者物価の上昇、地政学的リスクの高止まり、各国の金融政策などに伴う経済への影響懸念など、先行きは依然として不透明な状況が続いております。
このような経済環境のもと、当連結会計年度における当社グループの業績につきましては、エネルギー事業における好調な業績推移や、プロダクト事業における連結子会社各社の堅調な業績推移が牽引し、売上高は前年同期比8.0%増の937億34百万円、営業利益は前年同期比16.3%増の64億87百万円、経常利益は前年同期比32.7%増の82億99百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は前年同期比73.7%増の77億99百万円と何れも増加しました。
(2) セグメント別の状況
「エネルギー事業」
西日本各地区の原子力発電所向け防災・保安設備更新、火力発電所向け主要設備更新などの工事案件の受け渡しが順調に進み、また持分法適用関連会社化した株式会社TVEや日本フェンオール株式会社との営業シナジーも加わり、売上高は前年同期比18.4%増の351億58百万円、セグメント利益は前年同期比65.7%増の32億89百万円と大幅増益となりました。
「産業機械事業」
米国・タイの海外現地法人の業績は好調に推移したものの、ドイツ・中国の現地法人の業績が低迷し、加えて単体の受注は拡大したものの大型案件の受け渡しが少なかったことから、売上高は前年同期比10.1%減の248億18百万円、セグメント損失は3億25百万円(前年同期は1億50百万円のセグメント利益)となりました。
「プロダクト事業」
単体はUTドローンによるプラント設備点検商談や半導体関連商談などが拡大したことで堅調に推移し、欧州Tsurumi (Europe) GmbHグループの業績も好調に推移したことから、売上高は前年同期比14.5%増の337億57百万円、セグメント利益は前年同期比3.4%増の34億91百万円となりました。
なお、当社グループの海外売上高は、前年同期比4.6%減の160億69百万円となり、当社グループ全体の売上高に占める割合が17.1%となりました。
(3) 目標とする経営指標の達成状況等
当社グループにおける中期経営計画VIORB2030 Phase1の中で目標とする経営指標および経営数値目標は、最終年度(2027年3月期)の連結「営業利益」70億円および「営業利益」76億円としており、2025年3月期の実績は連結営業利益64億87百万円、経常利益82億99百万円となりました。
(4) 財政状態
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ109億90百万円(9.3%)増加し、1,295億33百万円となりました。
当連結会計年度末の負債の合計は、前連結会計年度末に比べ65億3百万円(8.6%)増加し、818億65百万円となりました。
当連結会計年度末の純資産は、前連結会計年度末に比べ44億86百万円(10.4%)増加し、476億67百万円となりました。
この結果、自己資本比率は前連結会計年度末の35.7%から36.3%となりました。
当連結会計年度末における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ63億47百万円増加し167億75百万円となりました。
なお、当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。
当連結会計年度における営業活動によって、資金は、80億74百万円増加(前連結会計年度25億41百万円)しております。
当連結会計年度における投資活動によって、資金は、8億12百万円増加(前連結会計年度88百万円の減少)しております。
当連結会計年度における財務活動によって、資金は、29億16百万円減少(前連結会計年度34億62百万円)しております。
(生産、受注及び販売の状況)
当連結会計年度において、生産実績に著しい変動はありません。
当連結会計年度の受注状況をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 上記記載の金額は、百万円未満を切り捨てて表示しております。
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)1.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績および当該販売実績の総販売実績に対する割合は総販売実績
の100分の10未満であるため記載を省略しております。
(注)2.上記記載の金額は、百万円未満を切り捨てて表示しております。
(財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析)
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループ(当社および連結子会社)が判断したものであります。
(1) 財政状態
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ109億90百万円(9.3%)増加し、1,295億33百万円となりました。これは、流動資産が102億33百万円、固定資産が7億56百万円増加したことによるものであります。流動資産の増加は、前渡金が54億88百万円減少した一方で、現金及び預金が64億円、受取手形、売掛金及び契約資産が51億89百万円、商品及び製品が36億65百万円増加したこと等によるものであります。また、固定資産の増加は、投資有価証券が5億9百万円、建物及び構築物が1億60百万円増加したこと等によるものであります。
当連結会計年度末の負債の合計は、前連結会計年度末に比べ65億3百万円(8.6%)増加し、818億65百万円となりました。これは、前受金が49億30百万円、繰延税金負債が5億65百万円減少した一方で、支払手形及び買掛金が106億99百万円、未払法人税等が14億81百万円増加したこと等によるものであります。
当連結会計年度末の純資産は、前連結会計年度末に比べ44億86百万円(10.4%)増加し、476億67百万円となりました。これは、その他の包括利益累計額が7億25百万円減少した一方で、株主資本が54億47百万円増加したこと等によるものであります。
株主資本の増加は、自己株式が2億30百万円増加した一方で、利益剰余金が56億21百万円増加したこと等によるものであります。利益剰余金の増加は、剰余金の配当21億75百万円による減少と、親会社株主に帰属する当期純利益77億99百万円を計上したこと等によるものであります。
その他の包括利益累計額の減少は、為替換算調整勘定が5億48百万円増加した一方で、その他有価証券評価差額金が12億88百万円減少したこと等によるものであります。
この結果、自己資本比率は前連結会計年度末の35.7%から36.3%となりました。
(2) 当連結会計年度の経営成績の分析
当連結会計年度における当社グループの業績につきましては、エネルギー事業における好調な業績推移や、プロダクト事業における連結子会社各社の堅調な業績推移が牽引し、売上高は前年同期比8.0%増の937億34百万円、営業利益は前年同期比16.3%増の64億87百万円、経常利益は前年同期比32.7%増の82億99百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は前年同期比73.7%増の77億99百万円と何れも増加しました。
(3) 経営成績に重要な影響を与える要因について
雇用・所得環境の改善やインバウンド需要の高まりなどにより景気は緩やかな回復の動きが見られる一方で、資源・原材料価格の高騰や消費者物価の上昇、地政学的リスクの高止まり、各国の金融政策などに伴う経済への影響懸念など、先行き不透明なビジネス環境が続くことが予想されます。一方で、昨今のデータセンター建設計画などに伴う電力需要の増加が予想され、当社の基礎収益分野であるエネルギー事業においては、原子力発電関連業務の他、火力発電の高効率化や再エネ商材の取扱い拡大等の営業機会拡大が期待されます。
(4) 資本の財源及び資金の流動性について
当社グループは、主たる資金需要として、営業活動上の運転資金に加えて長期経営ビジョン「VIORB 2030」遂行のための資金投資や、配当支払等を見込んでおります。
当社においては、換金性の高い金融資産を相当量保有していることに加え、当社および主要な国内グループ会社間でキャッシュ・マネジメント・システム(CMS)を導入しており、グループ内の資金効率化に努めております。また、金融機関との間で総額50億のコミットメントライン契約の締結並びに総額111億円の当座貸越枠の設定をしていることから、将来の当社グループの資金需要に対して不足が生じる懸念は極めて少ないものと認識しております。
当連結会計年度における営業活動上の運転資金を除く主な資金使途としては、戦略的事業投資の一環として、当社において日本フェンオール株式会社の株式の追加取得を実施しております。
また、当社における配当につきましては、当連結会計年度において1株当たり年間180円、総額21億75百万円の配当の支払を実施しました。更に、2025年6月24日に開催予定の当社の定時株主総会において2025年3月31日現在の株主に対し、2025年6月25日に1株当たり130円、総額15億71百万円の期末配当の実施を予定しております。
当連結会計年度末の流動資産は1,058億33百万円と、前連結会計年度末に対し102億33百万円増加し、また、流動負債は771億19百万円と、前連結会計年度末に対し69億72百万円増加しております。これは主に、現金及び預金並びに受取手形、売掛金及び契約資産が増加したことや、支払手形及び買掛金が増加したこと等によります。(詳細は、前述の「(1) 財政状態」を参照下さい。)その結果、流動比率は137.2%となり、引き続き健全な財務状態を維持しております。
以上の結果、翌連結会計年度においても、営業活動から得られるキャッシュ・フロー、金融機関からの借入等により、当社グループの資金需要に対応できると考えております。
次に、当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況とそれらの要因は以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動によって、資金は80億74百万円増加(前連結会計年度25億41百万円)しております。これは、前受金の減少50億93百万円(前連結会計年度175億95百万円の増加)、売上債権の増加50億36百万円(前連結会計年度176億11百万円)、棚卸資産の増加35億73百万円(前連結会計年度7億円の減少)、投資有価証券売却益27億81百万円(前連結会計年度2億4百万円)の計上、法人税等の支払額20億1百万円(前連結会計年度24億7百万円)等の資金の減少があった一方で、税金等調整前当期純利益110億81百万円(前連結会計年度64億45百万円)の計上、仕入債務の増加105億58百万円(前連結会計年度133億47百万円)、前渡金の減少55億4百万円(前連結会計年度172億67百万円の増加)等による資金の増加があったことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動によって、資金は8億12百万円増加(前連結会計年度88百万円の減少)しております。これは、関連会社株式の取得による支出18億13百万円(前連結会計年度―百万円)、有形固定資産の取得による支出6億10百万円(前連結会計年度5億19百万円)等の資金の減少があった一方で、投資有価証券の売却による収入32億38百万円(前連結会計年度4億65百万円)等の資金の増加があったことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動によって、資金は29億16百万円減少(前連結会計年度34億62百万円)しております。これは、配当金の支払額21億63百万円(前連結会計年度13億84百万円)、自己株式の取得による支出2億57百万円(前連結会計年度2百万円)、長期借入金の返済による支出1億58百万円(前連結会計年度―百万円)等の資金の減少があったことによるものです。
(5) 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、資産、負債、収益、費用の報告数値および開示に影響を与える見積り、判断および仮定を使用することが必要となります。当社グループの経営陣は過去の実績や状況に応じた合理的な見積り、判断および仮定により継続的に検証し、意思決定を行っております。しかしながら、これらの見積り、判断および仮定は不確実性を伴うため、実際の結果はこれらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表において採用する重要な会計方針および見積りは、「第5 経理の状況」に記載しておりますが、特に次の重要な会計方針が、当社の連結財務諸表の作成に重要な影響を及ぼすと考えております。
① 貸倒引当金
債権の貸倒れによる損失にそなえるため、一般債権については、貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権については、個別に回収可能性を検討して、回収不能見込額を計上しております。
将来、債務者の財務状況が悪化し支払能力が低下した場合には、引当金の追加計上または貸倒損失が発生する可能性があります。
② 繰延税金資産の回収可能性の評価
繰延税金資産の回収可能性の判断に際しては、将来の課税所得を合理的に見積もっております。繰延税金資産の回収可能性は、将来の課税所得の見積りに依存するため、将来において当社グループを取り巻く環境に大きな変化があった場合など、その見積り額が変動した場合は、繰延税金資産の回収可能性が変動する可能性があります。
③ 固定資産の減損処理
固定資産については、資産グループの回収可能価額が帳簿価額を下回った場合に、その差額を減損損失に計上しておりますが、回収可能価額は、資産グループの正味売却価額と割引後将来キャッシュ・フローとして算定される使用価値のいずれか大きい方としていることから、将来、固定資産の使用方法を変更した場合または資産グループを使用している事業の損益の悪化が見られ、短期的にその状況が回復しない場合には、新たに減損損失が発生する可能性があります。
当社は、2024年6月7日開催の取締役会において、日本フェンオール株式会社の普通株式を同社の株主6名から取得し、本株式取得を前提として、日本フェンオール株式会社との間で資本業務提携を行い、同社を持分法適用関連会社とすることを決議し、同日付で株式譲渡契約および資本業務提携契約を締結いたしました。
当社グループにおいては、主としてプロダクト事業に属する日本ダイヤバルブ(株)にて研究開発活動を行っております。同社は、ダイヤフラム弁・ボール弁・バタフライ弁を主体とするメーカーとして、新製品開発および改良による競争力の維持に努めており、当連結会計年度における研究開発費の総額は