第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 この経営方針、経営環境、対処すべき課題等には、将来に関する記述が含まれています。こうした記述は、現時点で当社が入手している情報を踏まえた仮定、予期及び見解に基づくものであり、既知及び未知のリスクや不確実性及びその他の要素を内包するものです。3「事業等のリスク」などに記載された事項及びその他の要素によって、当社の実際の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況が、こうした将来に関する記述とは大きく異なる可能性があります。

 

(1)中期経営計画の進捗状況

 2023年5月に公表した中期経営計画2026「Creating Sustainable Futures」の2年目となった2025年3月期は、早期収益貢献に資する案件及び長期にわたり安定収益貢献を見込む案件への成長投資を実行・決定しました。また、世界の事業環境が一段と不確実性を増しつつある中でも、適切なリスク管理のもと、トレーディング機能の発揮、既存事業の良質化、戦略的な資産の入替え等の基礎収益力の拡充に向けた施策を着実に実行しました。主な進捗は以下のとおりです。

 

①グローバル・産業横断的取組み

 顧客やパートナーとの間で長年培ってきた信頼関係を活かし、以下のとおり、世界中で新たな事業機会を獲得する

ことができました。

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現中期経営計画の3つの攻め筋に沿った取組みの進捗は、以下のとおりです。

 

(a)Industrial Business Solutions

 長期的な収益基盤の一層の強化及び早期収益貢献に向け、厳選した投資の決定と実行に進捗がありました。世界最大級の未開発鉄鉱石鉱床を有し、長年のパートナーがオペレーターを担う豪州Rhodes Ridge鉄鉱石事業の権益取得を通じ、長期収益基盤を更に強固なものとしました。また、早期収益貢献に資する投資として、米国大手トラックオークション会社Taylor & Martinの全株式取得を通じ、米国におけるバリューチェーンの強化と北米自動車事業群の拡充を進めました。

 

(b)Global Energy Transition

 1970年代より強固な信頼関係を築いてきたアブダビ石油公社がアラブ首長国連邦で推進するRuwais LNGプロジェクトへの最終投資決断、及び本プロジェクトで生産されるLNGの引取りに基本合意し、長期的な安定収益基盤構築に向けた取組みを進めました。また、当社の強みを活かした横断的取組みの一環として、化学品及びエネルギーセグメントの知見を融合させた米国低炭素アンモニア製造事業Blue Pointへの出資参画を決定し、パートナーとともに最終投資決断を行いました。

 

(c)Wellness Ecosystem Creation

 タンパク質領域ではエビ養殖や鶏事業への投資を進め、既存の畜産・水産・飼料事業等と組み合わせた動物タンパク質事業群の形成を進めました。また、アジア最大の民間病院グループであるマレーシアIHH Healthcareを中核としたアジア市場での付加価値の高いヘルスケア事業の取組みを着実に進めています。東南アジア最大のシンガポール漢方薬製造販売企業Eu Yan Sangへの出資参画等を通じ、医療、未病・予防に加え、健康に通じる食の提供により、多様化する消費者のライフスタイルの質向上に貢献します。

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②ポートフォリオ経営の深化

 ポートフォリオマネジメントの観点では、前中期経営計画で導入したROIC(投下資本に対する利益率の指標)も活用し、資産・資本効率を重視した経営の浸透を進め、また、経営レベルでの案件厳選を深化させました。産業・時間軸・地域・リスクリターン・商品特性等のバランスを勘案し、多軸でのポートフォリオマネジメントにより、事業ポートフォリオの良質化を進めました。

 

③基礎収益力向上への取組み

 既存事業強化、効率化・ターンアラウンドや新規事業の推進により、現中期経営計画では1,700億円の基礎収益力向上を目指しています。このターゲットに対し、2025年3月期時点では、既存事業強化により500億円、ターンアラウンドと赤字事業からの撤退により350億円、新規事業の収益貢献により350億円を実現し、基礎収益力拡大は1,200億円まで進捗しています。現中期経営計画最終年度でのターゲット達成に向け、引き続き各施策を推進します。

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④サステナビリティ経営の更なる深化

 社会と当社が持続的に成長するための重要な経営課題として特定しているマテリアリティの見直しを実施しました。詳細は「第 2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組(2)マテリアリティの見直し」をご参照ください。

 現中期経営計画で掲げたNature Positive達成への貢献の取組みに進捗があり、自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)へ賛同しました。TNFD提言に基づき、事業における自然関連の依存・影響分析を進めています。

 新たな気候変動目標として2030年総排出量の30%削減を設定し、パートナー・顧客とともにバリューチェーンを通じた社会全体の排出量削減取組みを推進しています。収益性及び温室効果ガス(GHG)排出削減の両立に向けた事業ポートフォリオの組替えを促進する中で、パイトン石炭火力発電事業をはじめとする複数の火力発電資産の売却を実行し、GHG排出量の削減を進めました。気候変動に関する取組みの詳細は「第 2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組(5)気候変動対応」をご参照ください。

 

⑤グローバルでの多様な個の活躍推進

 グローバルでの適材配置と社員の自律的なキャリア形成を支える人材データプラットフォーム「Bloom」が約9,000名を対象として本格稼働しました。「個」の把握を通じて事業戦略に沿ったグローバルでの適材適所を実現し、当社の多様なタレントが活躍できる体制を深化させます。また、当社社員が業務を通じて自らのスキル形成やキャリアに対する志向を実現し、新たな挑戦と創造に取り組むための基本方針として、グローバルタレントマネジメントポリシーを策定しました。当社は、人材を持続的な価値向上を生み出す重要な経営資本(人的資本)と位置づけ、未来をつくる人を育て、力を引き出します。人材戦略に関する取組みの詳細は「第 2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組(8)人材戦略」をご参照ください。

 

 

(2)経営環境

①全般

 注:本項目は、2025年5月の決算公表時点の経営環境認識を掲載したものであり、当社の現在の経営環境認識と異なる記載が含まれている場合があります。

 

 当連結会計年度の世界経済は、2024年中は米国が牽引する形で緩やかに回復しましたが、2025年に入ってから米国新政権による関税引き上げや今後の政策の不確実性の高まり等を受けて米国経済に変調が現れ始め、中国も低調な動きが続いたこと等から、全体として減速感が出てきました。

 

 米国経済は、2024年中は粘り強い個人消費に支えられて堅調に推移しましたが、2025年に入ってから関税引き上げを巡る政策に対する不確実性の高まり等から、消費者心理が悪化するなど変調が現れ始めました。欧州経済は、牽引役のドイツが製造業を中心に停滞しましたが、スペイン等南欧は比較的好調に推移し、ECBによる利下げもあり、景気に持ち直しの動きがみられました。日本経済は、企業収益が高水準で推移する中、雇用・所得環境も改善し、個人消費が持ち直しつつあることから、景気は緩やかに回復しました。中国経済は、不動産市場の低迷が続く中、内需の不振が続き、景気は低調な動きとなりました。

 

 世界経済の先行きは、米国による広範かつ高率の関税引き上げ政策やこれを受けた米中対立の激化が世界経済全般に悪影響を与えることに加えて、米国の政策展開の不確実性も設備投資の先送りにつながることから、景気悪化のリスクが懸念されます。

 

②事業セグメント

上記経営環境を踏まえた各事業セグメントにおける環境認識並びにリスクと機会は、以下のとおりです。

 

(a) 金属資源セグメント

環境認識

・人口増加・世界経済の成長に伴う素材・資源需要の継続的増加

・EV化・電動化をはじめとする低炭素社会に向けたEnergy Transitionと、地域偏在性ある重要鉱物の必要性

・鉱山操業やサプライチェーンにおける気候変動・自然資本・人権関連対応の拡大

リスク

機会

・中国経済減速による資源需要への影響

・インフレ・高金利による事業コスト影響

・技術革新や各国政策展開による商品の需給や価格への影響

・リサイクルを含むグリーン鉄源・素材の需要増加

・金属資源需要地としてのインド・東南アジアの継続的成長、資源供給地としてのアフリカの将来的可能性

 

 

(b) エネルギーセグメント

環境認識

・ 人口増加・世界経済の成長に伴い、中長期的にエネルギー需要は増加する見込み

・ エネルギーの安定供給と低炭素化の両立に対する社会ニーズの高まり

リスク

機会

・地政学的リスクの高まりや、景気後退に伴う需要減退等に起因するエネルギー需給・価格の大幅な変動

・流動的なEnergy Transition進捗の時間軸

・エネルギー安全保障・安定供給の観点で底堅い化石燃料需要、現実解としての天然ガス・LNG需要の増加

・低炭素化の進展によるクリーンエネルギーや次世代エネルギー需要の増加、それに伴うエネルギーソリューション事業機会の拡大

 

 

 

(c) 機械・インフラセグメント

環境認識

・低炭素化に向けたEnergy Transition期間の長期化、国・地域ごとの電源多様化、デジタル化に伴う電力・デジタルインフラ需要増

・半導体不足による自動車供給不足は正常化

・国・地域ごとに速度は異なるが、環境負荷の低いモビリティへのシフトは引続き進む見込み

・ばら積み船需要は安定的に推移、またタンカー需要は継続見込み

リスク

機会

・米国新政権による関税をはじめとする今後の政策に起因する不確実性の高まり

・社会ニーズの変化や技術の発展を受けた産業構造の変化

・AI、次世代燃料、半導体など新技術活用の進展、デジタルインフラ需要増加

・気候変動対応に伴う再エネ電源や、次世代燃料・電動化などに関連するサービス需要拡大・多様化

 

(d) 化学品セグメント

環境認識

・気候変動対応に伴う環境配慮型事業に対する社会からの要請の高まり

・人口増加や経済成長に伴う食料やエネルギー由来の化学品需要の増大

・健康意識の高まりによる食の高付加価値化ニーズの増大

リスク

機会

・気候変動対応に伴う石油化学産業の構造変化の加速

・サプライチェーン再編と地産地消化

・エネルギー価格高騰、金利上昇、労働力不足によるコスト増加と商品需要の低迷

・サプライチェーンの変化による安定供給需要の増大

・次世代燃料・リサイクル素材をはじめとする環境配慮型素材・製品・事業の需要増加

・健康・ウェルネス、Quality of Life向上への関心の高まり

 

(e) 鉄鋼製品セグメント

環境認識

・低炭素化に向けた技術革新による段階的なグリーン化の進展

・地政学的リスクの継続と関税政策による地産地消化への転換

・北米・インド・東南アジア等を牽引役とした中期的な世界鉄鋼需要の増加見込み

リスク

機会

・地政学的リスクの高まりと関税政策の変動によるサプライチェーンの影響

・人件費高騰・労働力不足による企業のコスト押し上げ

・国内粗鋼生産減少を背景とした流通構造の変化

・脱炭素や地産地消ニーズに伴う新たなサプライチェーン構築への需要の拡大

・成長市場・新興市場からの鉄鋼製品需要増加の補足

・循環型経済の加速によるインフラ長寿命化・メンテナンス需要の高まり

 

 

 

(f) 生活産業セグメント

環境認識

・先進国でのライフスタイル多様化と健康志向、サステナビリティなど社会価値への関心の高まり

・新興国での人口増・経済成長・所得増・高齢化による高度先進ヘルスケアニーズの拡大

・原材料費・労務費の上昇が継続する見通し

リスク

機会

・気候変動による伝統的産地の移動

・地政学的リスクによる貿易・産業構造・医療規制の変化

・日本労働人口の減少・高齢化及び最低賃金上昇

・価値観の多様化・細分化、消費行動の多様化、健康への行動様式変化

・アジアをはじめとした新興国における高度先進医療需給ギャップ継続拡大

・従業員確保を背景としたエンゲージメント対応の需要増加

 

 

 

(g) 次世代・機能推進セグメント

環境認識

・生成AI・クラウドを用いたサービスの普及や、サイバーセキュリティ対応関連ニーズの高まり

・サステナビリティ意識の高まり等の市場環境・ニーズの変化を捉えた投資判断の重要性増大

リスク

機会

・株価変動などの市場価格変動リスク

・金利上昇、インフレに伴う景況感、企業業績の悪化

・技術進化に伴うICTソリューションニーズの高まり

・ライフスタイルの多様化に伴うデジタルサービスの普及とデータセンター需要の拡大

・サステナビリティ対応に伴う金融商品組成機会、ボラティリティ上昇によるヘッジニーズ増加

 

(3)2026年3月期事業計画

 2026年3月期は「Creating Sustainable Futures」をテーマとする現中期経営計画の最終年度となります。定量計画については、直近の事業環境の変化を反映し、基礎営業キャッシュ・フロー8,200億円、当期利益(親会社の所有者に帰属)7,700億円を計画します。現中期経営計画の集大成の年とすると同時に、その先の未来を見据え、更に強固な収益基盤を構築すべく、グループ一体となって取組みを進めます。

 

①現中期経営計画の最終年度にあたり

 引き続き、産業や地域にまたがる事業ポートフォリオと当社のコア機能を活用し、事業で得た知見を産業・地域横断的に組み合わせることで、産業・地域・パートナーの課題に対し最適な現実解を提供します。

 

(a)基礎収益力拡大に向けて

 2025年3月期は、早期収益貢献に資する事業、長期にわたり安定収益貢献を見込む事業への厳選した成長投資を実行・決定しました。2026年3月期は、投資実行後の収益力強化や既存事業良質化による基礎収益力の一層の底上げを進めます。また、日々変化する世界情勢の中で高度なリスクマネジメントを継続し、トレーディング機能の発揮による収益拡大等を通じ、基礎収益力の拡大に取り組みます。

 

(b)ポートフォリオ経営の深化

 事業環境の不確実性が高まる中、当社の強みである産業・地域ごとにバランスよく分散されたグローバルなポートフォリオを発展させていきます。加えて、資産・資本効率を意識しながら、戦略的に資産を入れ替え、ポートフォリオマネジメントの実践を継続します。早期収益貢献と長期収益基盤の構築を両立させることで、当社の収益基盤をより強固なものとしていきます。

 

(c)キャッシュ・フロー・アロケーション

 当社は、再現性の高いキャッシュ創出力と強固な財務基盤を維持しています。経営の選択肢を広く確保し、さまざまなシナリオに柔軟に対応しながら、投資と株主還元のバランスを考慮した最適な資金配分を実現していきます。

 

②米国における事業展開

 当社の米国事業を、米国内完結型、輸出型、輸入・販売型の3つの事業形態に分けると、米国内完結型の利益割合が最も大きいことが特徴です。事業環境の変化に伴うサプライチェーンの変化については、これを機会と捉え、グローバルなネットワークを駆使して、トレーディング機能を発揮していきます。

 

③キャッシュ・フロー・アロケーションの最新見通し(現中期経営計画3年累計)

 2025年3月期の実績と2026年3月期の計画を踏まえた現中期経営計画3年累計のキャッシュ・フロー・アロケーションの見通しとして、キャッシュ・インは基礎営業キャッシュ・フローから2兆8,500億円、資産リサイクルから1兆5,200億円で合計4兆3,700億円を見込みます。一方、キャッシュ・アウトは事業維持と成長投資のための投資で2兆9,700億円、株主還元で1兆4,000億円、合計4兆3,700億円を見込みます。また、更なる成長投資と株主還元を可能とすべく、上記のキャッシュ・フローに加え、強固なバランスシートから4,000億円の資金を追加で活用可能とする方針を定めました。

 

(4)利益配分に関する基本方針

 株主還元策については第 4 提出会社の状況 3 配当政策をご参照ください。

 

(5)2026年3月期連結業績予想

①2026年3月期連結業績予想

 

<業績予想の前提条件>

2026年3月期

業績予想

2025年3月期

実績

期中平均米ドル為替レート

140.00

152.57

原油価格(JCC)(USD/bbl)

67ドル

83ドル

期ずれを考慮した当社連結決算に反映される原油価格(USD/bbl)

75ドル

86ドル

 

単位:億円

2026年3月期

業績予想

2025年3月期

実績

増減

増減要因

売上総利益

13,000

12,884

+116

生活産業

販売費及び一般管理費

△8,800

△8,877

+77

 

有価証券・固定資産

関係損益等

1,500

1,701

△201

資産リサイクル

利息収支

△1,400

△1,140

△260

金属資源

受取配当金

1,400

1,843

△443

エネルギー

持分法による投資損益

4,600

4,941

△341

商品価格下落

法人所得税前利益

10,300

11,352

△1,052

 

法人所得税

△2,300

△2,137

△163

 

非支配持分

△300

△212

△88

 

当期利益

(親会社の所有者に帰属)

7,700

9,003

△1,303

 

 

 

 

 

 

減価償却費・無形資産等償却費

3,200

3,137

+63

 

 

 

 

 

 

基礎営業キャッシュ・フロー

8,200

10,275

△2,075

 

 

・為替レートは2025年3月期の152.57円/米ドル及び99.27円/豪ドルに対し、2026年3月期はそれぞれ140.00円/米ドル及び90.00円/豪ドルを想定します。また、2026年3月期の原油価格(JCC)を67米ドル/バレルと仮定し、期ずれを考慮した当社の連結決算に適用される原油価格の平均を75米ドル/バレル(2025年3月期比11米ドル/バレル下落)と想定します。

 

 

オペレーティング・セグメント別での業績予想(当期利益(親会社の所有者に帰属))は以下のとおりです。

(単位:億円)

2026年3月期

業績予想

2025年3月期

実績

増減

増減要因

金属資源

2,000

2,854

△854

鉄鉱石・原料炭価格、
支払金利

エネルギー

1,400

1,735

△335

LNG配当、原油価格

機械・インフラ

1,900

2,329

△429

前期資産リサイクル益反動

化学品

850

759

+91

 

鉄鋼製品

150

132

+18

 

生活産業

700

537

+163

食料トレーディング、関係会社業績改善

次世代・機能推進

650

873

△223

前期資産リサイクル益反動

その他/調整・消去

50

△216

+266

前期退職給付制度改定反動

連結合計

7,700

9,003

△1,303

 

 

オペレーティング・セグメント別での基礎営業キャッシュ・フロー予想は以下のとおりです。

(単位:億円)

2026年3月期

業績予想

2025年3月期

実績

増減

増減要因

金属資源

2,600

3,579

△979

鉄鉱石・原料炭価格、
関連会社配当

エネルギー

2,200

3,634

△1,434

LNG配当

機械・インフラ

1,400

1,452

△52

 

化学品

950

906

+44

 

鉄鋼製品

100

60

+40

 

生活産業

250

181

+69

 

次世代・機能推進

400

270

+130

前期資産リサイクルに伴う税金負担の反動

その他/調整・消去

300

193

+107

各セグメントに賦課しない経費・利息・税金等

連結合計

8,200

10,275

△2,075

 

 

 

② 2026年3月期連結業績予想における前提条件

 2026年3月期連結業績予想における商品市況及び為替の前提と価格及び為替変動による当期利益(親会社の所有者に帰属)への影響額は以下のとおりです。

価格変動の2026年3月期

当期利益(親会社の所有者に帰属)への影響額

2026年3月期

前提

 

2025年3月期

実績

市況商品

原油/JCC

67

 

83

連結油価*1

24

億円(US$1/バレル)

75

 

86

米国ガス*2

19

億円(US$0.1/mmBtu)

3.50

 

2.41*3

鉄鉱石*4

31

億円(US$1/トン)

*5

 

105*6

原料炭

3

億円(US$1/トン)

*5

 

218*7

*8

5

億円(US$100/トン)

9,100

 

9,144*9

為替*10

米ドル

41

億円(1円変動あたり)

140.00

 

152.57

豪ドル

21

億円(1円変動あたり)

90.00

 

99.27

*1 原油価格は期ずれで当社連結業績に反映されるため、それを考慮した連結業績に反映される原油価格を連結油価として推計している。2026年3月期には約35%が4~6カ月遅れ、約30%が1~3カ月遅れ、約30%が1年超遅れ、約5%が遅れ無しで反映されると想定される。上記感応度は、連結油価に対する年間インパクト。

*2 当社が米国で取り扱う天然ガスはその多くがHenry Hub(HH)に連動しない為、上記感応度はHH価格の変動に対するものではなく、加重平均ガス販売価格に対するインパクト。

*3 米国ガスの2025年3月期実績欄には、2024年1月~12月のNYMEXにて取引されるHenry Hub Natural Gas Futuresの直近限月終値のdaily平均値を記載。

*4 Valeからの受取配当金に対する影響は含まない。

*5 鉄鉱石・原料炭の前提価格は非開示。

*6 鉄鉱石の2025年3月期実績欄には、2024年4月~2025年3月の複数業界紙によるスポット価格指標Fe 62% CFR North Chinaのdaily平均値(参考値)を記載。

*7 原料炭の2025年3月期実績欄には、対日代表銘柄石炭価格(US$/MT)の四半期価格の平均値を記載。

*8 銅価格は3ヶ月遅れで当社連結業績に反映される為、上記感応度は、2025年3月~12月のLME cash settlement price平均価格がUS$100/トン変動した場合に対するインパクト。

*9 銅の2025年3月期実績欄には、2024年1月~12月のLME cash settlement priceのmonthly averageの平均値を記載。

*10 上記感応度は、各国所在の関係会社が報告する機能通貨建て当期利益に対するインパクト及び一部海外出資先からの受取配当金の影響。円安は機能通貨建て当期利益の円貨換算を通じて増益要因となる。
関係会社における販売契約上の通貨である米ドルと機能通貨の豪ドルの為替変動、及び為替ヘッジによる影響を含まない。

(注)経営成績に対する外国為替相場の影響について

 2024年3月期及び2025年3月期の海外の連結子会社及び持分法適用会社の当期利益(親会社の所有者に帰属)の合計はそれぞれ7,688億円及び7,540億円です。これらの海外所在の連結子会社及び持分法適用会社の機能通貨は、主として米ドル及び豪ドルです。2026年3月期連結業績予想の当期利益(親会社の所有者に帰属)に対する為替変動の影響について、当社は簡便的な推定を行っています。

(a)具体的には、業績予想策定の過程で、海外関係会社の予想当期利益(親会社の所有者に帰属)を各社の機能通貨別に集計し、まず米ドル及び豪ドル建ての予想当期利益(親会社の所有者に帰属)の合計額を算出しました。これら2つの通貨別に表示された海外関係会社の予想当期利益(親会社の所有者に帰属)に一部の海外出資先からの通貨別の配当金を合計した金額に対して為替変動の影響を評価しました。これによれば米ドルに対する円高/円安は、1円あたり41億円程度、豪ドルに対する円高/円安の影響は、1円あたり21億円程度、当期利益(親会社の所有者に帰属)の減少/増加をもたらすと試算されます。

(b)なお、豪ドルを機能通貨とする資源・エネルギー関連生産会社の当期利益(親会社の所有者に帰属)は、両通貨と契約上の建値通貨である米ドルとの間での為替変動の影響を大きく受けます。この影響額は、(a)に述べた2つの通貨毎の当期利益(親会社の所有者に帰属)合計の円相当評価による感応度と別に勘案する必要があります。

(c)ただし、資源・エネルギー関連生産会社などでは、一部において、販売契約の契約通貨である米ドルと機能通貨の為替ヘッジを行っているほか、外貨建の当期利益(親会社の所有者に帰属)の円貨相当評価に係る為替ヘッジを行っている場合があります。これらの影響額についても、(a)に述べた2つの通貨毎の当期利益(親会社の所有者に帰属)合計の円相当評価による感応度と別に勘案する必要があります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 

(1)サステナビリティ基本方針

 三井物産は、大切な地球と人びとの豊かで夢あふれる明日を実現し、「世界中の未来をつくる」ことを経営理念に掲げています。この理念のもと、本方針においてサステナビリティへの取組みを重要な経営課題と位置づけ、三井物産グループ行動指針—With Integrityや本方針、サステナビリティ関連方針等に従い、サステナビリティを重視した経営を行います。三井物産グループは事業活動を通じ、地球規模の課題解決に挑み、持続可能な社会と経済成長の実現に寄与していきます。

 

-マテリアリティの特定と取組推進-

当社は、社会と当社の持続的な発展のために、当社及びステークホルダーに影響を与える重要な課題をマテリアリティとして特定しています。マテリアリティは中長期的にリスクまたは機会となる事項であることから、中期経営計画や事業計画等、当社の事業方針・戦略策定の基軸とし、本方針を実践します。

 

-取締役会の役割-

取締役会は、当社のサステナビリティへの取組みを適切に監督し、中長期的な企業価値向上に努めます。サステナビリティに関する重要な事項はサステナビリティ委員会、経営会議を経て、取締役会に付議または報告の上決定します。

 

-ステークホルダーエンゲージメントと情報開示-

当社は、ステークホルダーとの対話を重視し、適切な情報開示に努め、信頼と期待に真摯にそして誠実に応えます。

 

(2)マテリアリティの見直し

 当社は、Missionとして掲げている「世界中の未来をつくる」の実現に向けて、重要な経営課題であるマテリアリティを特定し、それと紐づく形で企業活動を推進しています。当社は、2015年に5つのマテリアリティを特定し、2019年に最初の見直しを行いました。その後、さまざまな外部環境が変容する中で、当社が認識する社会課題が時代に即しているかを確認することを目的に、ダブルマテリアリティの視点も踏まえて社会課題を抽出し、ステークホルダーとの対話を重ね、各社会課題についての重要性をあらためて評価しました。その結果を基に、社外役員や社外有識者との意見交換、役職員へのアンケート、社内外で議論を重ね、経営会議、取締役会での承認を経て、2025年5月に以下のとおり6つのマテリアリティを特定しました。なお、今回の見直しにおいては、人権に関するマテリアリティを新たに独立した項目として追加しています。当社は、これまでも国際基準に則った人権に対する配慮はサステナビリティ経営の基盤であると考え、人権尊重への取組みを推進しており、従来のマテリアリティでも人権を重要な社会課題と認識していたものの、ステークホルダーとの対話を通じ、人権の尊重を大前提とした事業運営の重要性がより一層高まっていることが確認されたことを踏まえ、当社の企業活動に携わる人々の人権について、当社の姿勢や取組みをあらためて明確化したものです。

 当社は、マテリアリティとSDGsを関連づけて事業・活動を推進していくことで、引き続き国連「持続可能な開発目標(SDGs)」の17目標達成にも貢献していきます。

*環境・社会が企業に与える財務的な影響(財務的マテリアリティ)と、企業活動が環境・社会に与える影響(環境・
 社会マテリアリティ)という2つの側面から重要性を検討する考え方


 0102010_004.png
 
 マテリアリティの見直しは以下のプロセスで実施しました。
 
 0102010_005.png
 
 各マテリアリティと組織ごとの具体的な方針、目標、取組み、進捗状況に関してはマテリアリティアクションプランとして整理のうえ、進捗を管理し、開示しています。2024年3月期のマテリアリティアクションプランの詳細につきましては、サステナビリティレポート2024をご参照ください。なお、今回のマテリアリティの見直しを踏まえた、マテリアリティアクションプランは2025年9月頃に当社サステナビリティウェブサイトにおいて公表する予定です。
 
サステナビリティレポート2024:
 0102010_006.png https://www.mitsui.com/jp/ja/sustainability/sustainabilityreport/2024/pdf/ja_sustainability_2024.pdf
サステナビリティウェブサイト内 マテリアリティ > マテリアリティアクションプラン
 0102010_007.png https://www.mitsui.com/jp/ja/sustainability/materiality/action_plans/materiality.html

 

(3) サステナビリティ情報

 当社グループを取り巻くサステナビリティの課題は上記のとおり、多岐にわたります。その中でも、気候変動対応、サプライチェーンと人権、情報セキュリティ並びに人材戦略については、当連結会計年度末において発生頻度と想定損害規模及び全社リスク許容度に鑑み特定した重要なリスクとして、3. 事業等のリスクにおいて特定しています。それぞれの課題に関する詳細については、(5)気候変動対応、(6)サプライチェーンと人権、(7)情報セキュリティ及び(8)人材戦略をご参照ください。また、自然資本、地域コミュニティ等の対応につきましては、サステナビリティレポート2024をご参照ください。
 
サステナビリティレポート2024:
 0102010_008.png https://www.mitsui.com/jp/ja/sustainability/sustainabilityreport/2024/pdf/ja_sustainability_2024.pdf

 

 なお、当社は2023年5月に公表した中期経営計画2026において5つのCorporate Strategyを設定しています。「サステナビリティ経営の更なる深化」と「グローバルでの多様な個の活躍推進」がCorporate Strategyに含まれており、3か年の重点取組項目として特定しています。「サステナビリティ経営の更なる深化」においては「気候変動」、「自然資本」、「ビジネスと人権」といった社会課題に対して、サプライチェーン全体を通じた対応を進めます。また、「グローバルでの多様な個の活躍推進」においては自律的なキャリア形成を後押しすべく、人への投資を加速していきます。中期経営計画の詳細につきましては、当社ウェブサイトをご参照ください。
 
中期経営計画2026:
 0102010_009.png https://www.mitsui.com/jp/ja/ir/library/meeting/pdf/ja_233_4q_chukei.pdf

 

(4) 気候変動対応・サプライチェーンと人権に関するガバナンス

 気候変動対応・サプライチェーンと人権に関するガバナンスの状況は、以下のとおりです。

・経営会議の下部組織であるサステナビリティ委員会が企画・立案・提言を行うとともに必要な事項を決定します。サステナビリティ委員会はコーポレートスタッフ部門担当役員であるCSO及び複数の取締役に加えて、事業本部長及びコーポレートスタッフ部門部長により構成され、また、常勤監査役がオブザーバーとして参加しています。

・2025年3月期のサステナビリティ委員会(計7回開催)では、気候変動関連目標、制度開示に関する対応方針、人権管理体制に関する規程制定・今後の取組方針等について審議・報告を行いました。

・経営上の重要課題の一つである気候変動対応や、人権に関する基本方針の遵守に関する対応方針や重要事項は、サステナビリティ委員会での審議を経て、定期的に経営会議及び取締役会に付議・報告しています。2025年3月期は取締役会での年2回のサステナビリティ推進活動に関する定例報告に加えて、「エネルギートランジション・ネットゼロエミッションに向けたポートフォリオ戦略」をテーマに、社外役員も含めた取締役・監査役がフリーディスカッションを行いました。

・外部有識者から構成されるサステナビリティアドバイザリーボードを設置し、メンバーからの情報や助言をサステナビリティ委員会の審議に活用しており、2025年3月期には、オンライン形式でのミーティングも含めマテリアリティの見直しについて12回(社会課題の抽出・特定に関する協議、ステークホルダー意見聴取前の見直し案に関する協議、ステークホルダー意見聴取後の見直し最終案に関する意見交換の3段階に分けて実施)、ビジネスと人権に関連したサプライチェーン評価プラットフォームについて1回、ステークホルダーとの対話取組状況、課題と今後のあるべき姿について1回の諮問・意見交換を実施しました。なお、マテリアリティの見直しに関しては、世界自然保護基金(WWF)とも対話を行いました。

・サステナビリティ経営を推進するにあたり、さまざまなステークホルダーとの対話を行い、外部からの意見を尊重した事業活動を実践することが重要と考え、毎年ステークホルダーダイアログを開催しています。2025年3月期は、日本ファンドレイジング協会代表理事/当社サステナビリティアドバイザリーボードメンバーの鵜尾雅隆氏を招致し、気候変動・人権を含むさまざまな社会課題の解決に向け、環境・社会インパクトを計測・管理していく知見の蓄積や共有を進めることの重要性等について、同氏とサステナビリティ委員会メンバー間で活発な意見交換を行いました。

 (7)情報セキュリティ及び(8)人材戦略に関するガバナンスはそれぞれの項目をご参照ください。

 

(5) 気候変動対応

 当社が特定したマテリアリティには、「持続可能な安定供給の基盤をつくる」、「環境と共生する世界をつくる」や「健康で豊かな暮らしをつくる」が含まれ、環境方針においては、GHG削減や気候変動の緩和と適応に貢献する事業の推進に努めることを掲げています。また、中期経営計画2026においては、気候変動をサステナビリティ経営における課題の一つに特定しています。当社グループは国際的な枠組みであるパリ協定や日本の中長期的な削減目標に寄与すべく、世界のさまざまな国・地域の経済・社会の発展と、気候変動の緩和及び適応といった地球規模の課題の解決の両方に、幅広い事業活動を通じて貢献していきます。

 

 気候変動対応に関する具体的な、①ガバナンス、②戦略、③リスク管理、④指標及び目標は以下のとおりです。

 

①ガバナンス

・気候変動対応に関するガバナンスについては、(4) 気候変動対応・サプライチェーンと人権に関するガバナンスをご参照ください。

 

②戦略

・当社グループでは、短期、中期、長期の時間軸に分けて、最長2050年までのシナリオ分析を実施しています。移行リスク・機会の特定は、IEA(国際エネルギー機関)が発行するWorld Energy Outlook(WEO)に記載のあるシナリオ等を参照、物理的リスクの特定はIPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)で採用されているRCP(代表的濃度経路)も参考にしつつ、シナリオ分析を実施しています。

・移行リスク分析は連結業績予想策定を含む事業計画プロセス等において実施しており、分析結果は事業ポートフォリオ戦略にも反映しています。事業規模と気候変動インパクト(GHG排出量または削減・吸収量)を勘案し、シナリオ分析の対象として、石油・ガス開発事業及びLNG事業、原料炭事業、火力発電事業、鉄鉱石事業、海洋油・ガス田生産設備事業、ガス配給事業、LNG船事業、再生可能エネルギー事業、次世代エネルギー事業、森林資源事業を優先度の高い10事業としてシナリオ分析の対象事業に選定しています。

・シナリオ分析の対象事業のうち、特に重要度が高いと判断した石油・ガス開発事業及びLNG事業、原料炭事業、火力発電事業の3事業については、事業環境認識や各種シナリオを踏まえた当社が想定するベースケースを基にした既存事業への2030年3月期、2040年3月期、2050年3月期における当期利益への影響額を分析し3段階で表示しています。

・一方、物理的リスクに関しては、現状のリスク対応の妥当性を検証するために、物理的リスクの影響が高い投資先65社の主要資産所在地をマッピングし、洪水(内水氾濫、外水氾濫、高潮浸水)、厳寒、猛暑、熱帯低気圧、地滑り、山火事、水ストレス(渇水)・干ばつを対象に、2030年及び2050年での4℃シナリオ下の物理的リスクの影響を分析しました。

・総合商社である当社は、各産業において、バリューチェーンの上流から下流まで幅広く事業を推進しており、パートナーや顧客と共に、社会の排出量削減に資する取組みを進めています。また、バリューチェーン全体のGHG排出量を把握することを目的に、Scope3排出量を算定しています。

・移行リスク分析結果及び物理的リスク分析結果の詳細、バリューチェーン上のGHG削減取組については以下、
当社サステナビリティウェブサイト内「TCFD提言に基づく情報開示」をご参照ください。
 
 0102010_010.png https://www.mitsui.com/jp/ja/sustainability/environment/climate_change/pdf/ja_202412tcfd.pdf

 

③リスク管理

・気候変動によるリスク(移行・物理的)を、当社の重要なリスクにおいて、事業投資に関わるリスクや地政学的リスク、カントリーリスクに次ぐ重要度と位置づけ、対応策を講じています。詳細については、3. 事業等のリスクをご参照ください。

 

 

④指標及び目標

・当社は、2050年の「あり姿」としてのネットゼロエミッションを掲げ、その道筋として2030年に以下の目標達成を目指しています。

 

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(a) 単体+連結子会社(含むUn-inco JV*1)のScope1+2及びScope3カテゴリー15(投資):
2030年のGHGインパクトを2020年3月期34百万トンから半減する(目標値:17百万トン)。

(b) 単体+連結子会社(含むUn-inco JV*1)のScope1+2及びScope3カテゴリー15(投資):
2030年のGHG排出量を2020年3月期44百万トン*2から30%削減する(目標値:31百万トン)。

(c) 単体+連結子会社(除くUn-inco JV*1)のScope1+2:
2030年のGHG排出量を2020年3月期0.8百万トンから半減する(目標値:0.4百万トン)。

(d) 発電事業における再生可能エネルギー比率:
2030年までに30%超に引き上げる。

*1 Un-inco JV: Un-incorporated Joint Venture(共同支配事業)

*2 基準年排出量には、GHG排出量36百万トンに、2020年3月期時点でFID(最終投資決断)済みの火力発電事業で稼働開始後通常操業時に見込まれる排出増加分8百万トンを加味

 

・気候変動関連目標のうち、以下の目標に関する達成度合いについて、取締役(除く社外取締役)を対象とした報酬制度の一要素としています。取締役の報酬の詳細は、「第4 提出会社の状況 4. コーポレート・ガバナンスの状況等 (4)役員の報酬等」をご参照ください。

(ⅰ)単体+連結子会社(含むUn-inco JV*1)のScope1+2及びScope3カテゴリー15(投資):

2030年のGHGインパクトを2020年3月期34百万トンから半減する(目標値:17百万トン)

(ⅱ)単体+連結子会社(除くUn-inco JV*1)のScope1+2:

2030年のGHG排出量を2020年3月期0.8百万トンから半減する(目標値:0.4百万トン)

*1 Un-inco JV:Un-incorporated Joint Venture(共同支配事業)

・GHGを多く排出する事業の中長期的なレジリエンスの向上、また、当社及び社会のGHG排出削減に貢献する事業の促進を目的に、2020年4月から社内カーボンプライシング制度を導入しています。

 当社グループのGHG排出量及び関連する数値は以下のとおりです。

(a)Scope1、Scope2及びScope3カテゴリー15(投資)排出量

単位:千トン-CO2e

 

2025年3月期

2024年3月期

Scope1+2

3,196

3,049

Scope3カテゴリー15(投資)

25,883

30,903

 

(b)Scope3排出量

単位:百万トン-CO2e

カテゴリー

2025年3月期

2024年3月期

1. 購入した製品・サービス

33.4

33.5

2. 資本財

1.0

0.9

3. Scope1、2に含まれない燃料及びエネルギー関連活動

4.1

2.9

4. 輸送、配送(上流)

1.9

1.5

5. 事業から出る廃棄物

0.0

0.0

6. 出張

0.1

0.1

7. 雇用者の通勤

0.0

0.0

8. リース資産(上流)

対象外

対象外

9. 輸送、配送(下流)

カテゴリー4に含む

カテゴリー4に含む

10. 販売した製品の加工

31.9

31.0

11. 販売した製品の使用

97.9

98.8

12. 販売した製品の廃棄

0.2

0.2

13. リース資産(下流)

0.7

0.5

14. フランチャイズ

対象外

対象外

15. 投資

25.9

30.9

合計

197.1

200.3

 

(c)吸収量

単位:百万トン-CO2e

 

2025年3月期

2024年3月期

吸収量

0.5

0.3

 

(d)削減貢献量

単位:百万トン-CO2e

 

2025年3月期

2024年3月期

削減貢献量

3.5

4.4

 

 Scope1及び2、一部のScope3(カテゴリー4(輸送)のうち、当社(単体)の国内輸送)の排出量についてはサステナビリティウェブサイトにおいて別途限定的保証業務に基づく第三者保証を受け、無限定の結論を得ています。保証業務実施者の名称や独立性、保証範囲等、詳細についてはサステナビリティウェブサイトをご参照ください。

 また、Scope3排出量の各カテゴリーの算定範囲等の詳細についても、サステナビリティウェブサイトをご参照ください。
 

サステナビリティウェブサイト「独立した第三者保証報告書」:

0102010_012.png https://www.mitsui.com/jp/ja/sustainability/sustainabilityreport/pdf/Assurance_Report_2025_ja.pdf

 

(6) サプライチェーンと人権

 当社は、世界中の国や地域でグローバルに事業を展開していることから、自社のみならずサプライチェーンも含めた人権の尊重への取組みが求められていることを認識しています。国際基準に則った人権に対する配慮はサステナビリティ経営の基盤であると考え、これまでも三井物産グループ行動指針や三井物産役職員行動規範に人権の尊重を謳い、取組みを推進してきました。

 企業の人権尊重への取組みの重要性は年々増しており、当社の人権に対する考え方をより明確にした上で取組みを推進すべく、2020年8月に人権方針を策定しました(2022年2月改定)。本方針策定にあたっては、経営会議に付議・承認の上、取締役会でも報告されています。また、2025年5月に人権に関するマテリアリティである「人権を尊重する社会をつくる」を新たに独立した項目として追加し、当社が企業活動において人権を尊重し、ビジネスパートナーを含むさまざまな関係者に人権尊重への理解と実践を期待する姿勢をより明確化しています。

 サプライチェーンと人権の対応に関する具体的な①ガバナンス、②戦略、③リスク管理、④指標及び目標は以下のとおりです。

 

①ガバナンス

・サプライチェーンと人権に関するガバナンスについては、(4) 気候変動対応・サプライチェーンと人権に関するガバナンスをご参照ください。

 

②戦略

・当社グループでは、サステナビリティ基本方針及び人権方針に則り、世界中の国や地域における三井物産グループの事業活動を通じて人権の尊重に取り組みます。また、ビジネスパートナーを含むさまざまな関係者に対し、各方針に則った人権尊重への理解と実践を期待し、協働して人権の尊重を推進することを目指します。

・当社では、事業活動において、自らが人権侵害をしないことに加え、サプライチェーン等の取引関係を通じて人権侵害を助長しないよう努めます。また、「世界人権宣言」を含む国際人権章典、「労働における基本的原則及び権利に関するILO(国際労働機関)宣言」 の中核的労働基準に表明されている人権を尊重し、「ビジネスと人権に関する指導原則」及び「国連グローバル・コンパクトの10原則」を支持し、これらの国際規範を踏まえて、人権方針、環境方針、持続可能なサプライチェーン取組方針を定めています。

・当社は、ビジネスとサステナビリティの融合を掲げる中期経営計画2026の中で、ビジネスと人権をサステナビリティ経営の更なる深化に向けた重要テーマの一つに位置づけ、人権デューデリジェンス(人権DD)の実効性向上、サプライヤーとの協働、社内プロセス拡充を掲げており、当社事業のリスク低減と企業価値の向上につながるビジネスと人権への取組みを進めていきます。

 

③リスク管理

・当社は、上記のとおり各種国際規範を踏まえて、2020年3月期に外部専門家を起用し、当社及び海外現地法人の取扱商品、連結子会社の主要事業を対象にサプライチェーン上の人権について、リスクの評価を行い、当社のサプライチェーン上において、主に食料・衣服・建材・鉱物の商品で、東南アジア、アフリカ、南米等の新興国を中心とした原産地が一般的に強制労働や児童労働等の人権問題が生じる可能性が高い分野と評価し(「高リスク分野」)、人権DDを開始しました。

・当社グループの人権DDでは、具体的には以下の図のとおり「周知」、「特定」、「調査」、「開示・改善」の取組みを行うことで、サプライチェーンにおける課題の把握と解決を目指しています。
 

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(a)前連結会計年度までの取組み

・2020年3月期に特定した高リスク分野におけるすべての主要サプライヤーについて、2023年3月期までにサプライヤーアンケートを実施した結果、重大な人権問題は確認されませんでしたが、人権方針を策定していないサプライヤーや法令等の理解が不十分なサプライヤーに対してあらためて当社取組の説明を行うなど、サプライヤーと共に、サプライチェーン全体での人権尊重の理解促進と実践を進めることで、人権問題リスクの低減に努めました。

・2024年3月期は、上記に追加し、事業本部による関係会社自主監査や内部監査における人権要素の導入、商品売買契約への人権条項の追加等、サプライチェーンも含む人権リスクの低減に資する施策に取り組みました。また、意識浸透策としてキャリア段階別研修(新人/ラインマネージャー)にビジネスと人権の内容を追加しました。

 

(b)当連結会計年度の取組み

・2025年3月期にはサプライチェーンと人権に関する取組みの実効性向上を図るために、人権DDの「周知」、「特定」、「調査」、「開示・改善」それぞれの実施要領を整備し、人権DDを中心とした人権に関するリスク管理の強化と役割分担の明確化を目的とした規程を制定しました。また、人権DDについては、従来の食品原料・食料品、建材に加え、鉱業、石油/ガス、化学品、産業金属、化学品の東南アジア、アフリカ、南米等の新興国を中心とした原産地対象取引が高リスク分野に該当すると判断し、対象とすることとしました。

・これら高リスク分野のサプライヤーにアンケートを実施しましたが、重大な人権問題は確認されませんでした。また、マレーシアにおけるパーム油の当社サプライヤーの精製会社、及び二次以降の上流サプライヤーである内陸搾油工場・農園運営会社・農家を訪問し、対話を実施しました。

・パーム油の生産にあたっては、従前より農園開発による森林破壊や、人権労働問題が指摘・懸念されていますが、当社サプライヤーとの対話を通じて、持続可能なパーム油生産を促進するための認証制度であるRSPO認証に基づく取組みが行われていることを確認しています。重大な指摘事項は確認されませんでしたが、地域・業界固有の課題もあると認識しており、引き続き当社はパーム油を取り扱う事業者として、現地パートナーとの対話と協業を通じ、持続可能なサプライチェーン構築に向けて取り組んでいきます 。

・この他、2025年3月期も人権研修を継続し、人権に関して幅広い知見を有する有識者を講師として招き、取引先も参加可能な形での研修を実施しました。また、キャリア入社者向け研修にビジネスと人権の内容を追加し、人権をテーマにした役職員向け意識浸透動画の配信、さらに、人権を対象に含むe-Learningコンテンツを拡充し、一部受講を義務化するなど、意識浸透策の拡充も図りました。

・苦情処理メカニズムも当社ウェブサイトに掲載しています。


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④指標及び目標

・中期経営計画2026では、事業活動における人権尊重取組を更に強化することを掲げ、人権DDの範囲拡大、サプライヤーとの協働、社内プロセスの拡充を図ります。

・当社及び連結子会社の新規調達先に対しては、持続可能なサプライチェーン取組方針の周知100%を目標として掲げています。

・当社は特に森林破壊や環境負荷、人権リスク等の高い分野の以下4種の原材料・商品については、NGO等ステークホルダーとも協議し、各方針に加えて個別に調達方針を策定し、トレーサビリティや認証品調達率の目標と実績を開示するとともに、取引先に方針を送付・周知し、持続可能な原材料・商品の調達に努めています。本方針は定期的に見直し、必要に応じて改定していきます。

・2024年3月期には連結子会社の三井物産シーフーズにおいて水産物の個別調達方針を策定しました。環境負荷の範囲は、気候変動、水資源、生物多様性等多岐にわたるため、今後も個別調達方針対象商品の拡充を図るとともに、サプライヤーと協働しサプライチェーン上の環境、人権リスク評価を進めていきます。

 

 

商品

内容

2023年3月期

2024年3月期

2025年3月期

2030年目標

天然ゴム

原産地までのトレーサビリティ

100%

100%

該当なし*1

100%

パーム油

ミルレベルまでのトレーサビリティ

100%

100%

100%

100%

RSPOを始めとする持続可能認証品取扱比率

12.2%

18.6%

21.8%

100%

木材

国際的に認められた認証材・または準じる材の取扱比率 [製材]

77%

0%*2

0%*2

100%

同上

[製紙用ウッドチップ]

100%

100%

100%

100%

紙製品

違法性のない原料で製造された製品であることのトレーサビリティ

100%

100%

100%

100%

*1 天然ゴムについては、2025年3月期は取扱いなし

*2 認証団体のFSCが特定産地国材に対する認証付与を取りやめたことによるもの。認証付与が取りやめになった当該製材については2024年4月時点で新規受注を終了しており、2024年6月に履行完了済み

 

(7) 情報セキュリティ

 当社グループでは、以下の情報セキュリティ方針を掲げ、情報セキュリティに関するリスクマネジメントに取り組んでいます。

 

・情報セキュリティ方針

(a) 情報セキュリティへの取組み

当社は、情報セキュリティの重要性を認識し、「三井物産コーポレート・ガバナンス及び内部統制原則」に則り情報の適時・有効な活用を図るため、関連規程の整備・実施を通じて、連結グローバル・グループベースで情報資産(情報及びITシステム)に対する適切な管理を行い、これを継続的に改善していきます。

(b) 法令等の遵守(コンプライアンスの確立)

当社は、情報セキュリティに関連する法令、確立された規格、その他の規範を遵守し、これらに準拠・適合した情報セキュリティの構築・確保に向け取り組みます。

(c) 情報資産の保護

当社は、情報資産の機密性、完全性及び可用性を確保するための適切な管理を行い、これらを脅かす全ての脅威から情報資産を保護することに努めます。

(d) 事故への対応

当社は、情報セキュリティに関する事故の発生予防に努めるとともに、万一事故が発生した場合は、事故対応のみならず再発防止策を含む適切な対策を速やかに講じます。

 

 情報セキュリティに係る具体的な、①ガバナンス、②戦略、③リスク管理、④指標及び目標は以下のとおりです。

 

①ガバナンス

 当社のグローバル・グループ情報戦略に係る重要方針は、経営会議の諮問機関である「情報戦略委員会規程」に基づいて設置されたCDIO(チーフ・デジタル・インフォメーション・オフィサー)を委員長とする情報戦略委員会の審議を経て経営方針に沿い策定されています。

 2025年3月期は、情報戦略委員会を合計9回開催しました。2021年3月期に策定したDX事業戦略・Data Driven(DD)経営戦略・DX人材戦略からなる「DX総合戦略」の進捗をモニタリングしたほか、当社グローバル・グループシステムのあるべき姿を具体化する「デジタル・グランドデザイン」、サイバー攻撃に対応するためのサイバーセキュリティ戦略・体制拡充・点検・訓練方針、グローバルネットワーク、次世代人事システム、アジャイル開発内製化、生成AI活用・セキュリティ、IT/DX R&D、戦略的DX支援制度等に関する討議を行いました。

 同委員会を中心とした体制のもと、情報システムの構築運営や情報セキュリティ面で必要となる以下の各規程の整備を通じて、情報漏洩やサイバー攻撃等の想定される各リスクの管理を含む内部統制体制の強化を進めています。

・「情報システム管理規程」:情報資産の調達・導入からその運用方法を規定

・「ITセキュリティ規程」:ITセキュリティの面でのシステム主管部の行動原則を規定

・「情報管理規程」:情報リスク管理体制、情報管理に関する基本事項を規定

・「個人情報保護規程」:事業遂行上必要となる個人情報の取扱に関する規程(国内のみが対象)

・「サイバーセキュリティ対策に関する規程」:サイバー攻撃等への予防及び事件発生時の緊急対策に関する規程

・「三井物産グループサイバーセキュリティ原則」:当社グループ各社が共通的に実施することを目指す、基本的なサイバーセキュリティ対策

 また、特定の企業・組織を狙い撃ちする標的型攻撃、ランサムウェア(ファイルが暗号化され復号と引き換えに身代金を要求)、BEC(Business Email Compromise:ビジネスメール詐欺)、及び不特定多数を狙ったばらまき型メール攻撃など、日々発生するサイバー攻撃は巧妙化・高度化・深刻化する中、当社グループでのサイバーセキュリティ対策は重要性を増しており、年1回、情報戦略委員会並びに経営会議での審議を経た後、取締役会に報告しています。

 

②戦略

 当社では、内外環境に応じたサイバーセキュリティリスクに関する重要性の高まりに応じ、全社的なデジタル・グランドデザイン戦略の一環として「三井物産サイバーセキュリティ戦略」を2025年3月期に策定しました。サイバーセキュリティ専門子会社である三井物産セキュアディレクション及び情報システム子会社である三井情報の知見を活用しながら、同戦略に基づくサイバーセキュリティ対策強化をグローバル・グループで推進しています。

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(a) <トップダウン>サイバーセキュリティの経営アジェンダ化

サイバーセキュリティ対策の実行にあたっては内部統制の重要要素として位置付け、経営層(特に、関係会社)を巻込み、グループ全体の統合リスク管理の一部として推進しています。具体的には、毎年情報戦略委員会、経営会議、取締役会への報告・議論を行うと共に、関係会社経営層に向けても年次の説明会、ワークショップを通じた啓発等を行っています。

 

(b) <守り>全社共通・最低限のセキュリティ対策(Baseline)確保

グループ全体のサイバーセキュリティに係るBaselineの確保・最適化を進めています。具体的には米国国立標準技術研究所(National Institute of Standards and Technology)のサイバーセキュリティフレームワークに沿って対策を立案・実行し、三井物産セキュアディレクションの知見を活用しながら、「予防」「鍛錬」「処置」の3つのステップに分けて対策を講じています。

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予防:サイバーハイジーン(IT公衆衛生)が重要と考えており、IT環境を健全な状態に保つ活動として、IT資産の状態把握のためのインベントリの適切な管理や、攻撃の糸口になる箇所を掌握する脆弱性管理などに取り組んでいます。

鍛錬:「ゼロトラスト」(ネットワークの内部と外部を区別することなく、守るべき情報資産やシステムにアクセスするものは全て信用せずに検証するセキュリティ対策)の考え方に基づき、ID、デバイス、データ、ネットワーク、クラウド等の各IT領域でのセキュリティ対策を強化しています。また、グローバルでの24時間365日のセキュリティ監視、及び有事の際の対応体制を構築・維持・拡充しています。

処置:MBK-CSIRT(Computer Security Incident Response Team)を中心に各部門のサイバーセキュリティ担当と連携し、報告・支援する仕組を確立、組織的・継続的なインシデント対応、再発防止を実現しています。また、被害の規模や深刻度に応じたセキュリティインシデント発生時の対応を定め、必要に応じた有効性確認のための訓練を定期的に実施しています。

 

(c) <攻め>事業価値の維持・継続と成長への貢献

当社DXに係るサイバーセキュリティ対策へのプロアクティブな個別支援による競争力確保・付加価値向上を進めています。具体的には、当社DX案件に関するセキュリティ相談窓口の設置による案件組成段階からの助言・支援(セキュリティ・バイ・デザイン)を実施しています。また、昨今の生成AIの急速な進化を受け、当社における生産性及び事業価値の向上を目指し生成AIの活用を進めており、今期、全社共通AIとしてMicrosoft 365 Copilotの利用を開始しました。さらに、各業務や事業に特化した生成AIプロジェクトを推進中です。これら生成AIの活用にあたり、社内データにおけるアクセス権管理の再点検、生成AIの利用及び提供に関するリスクガイドラインの策定や生成AI利用上の注意点をまとめたe-Learningを受講必須とする等のリスク対策を実施しています。また、当社標準外の生成AIを社員が利用する際には申請制とし、AIモデルによる入力情報の再学習、サービス提供者による入力・出力情報の監視が無い生成AIの利用を推奨しています。これら活動を通じて当社グループでのDXや生成AIの安全な利活用促進に貢献しています。

 

(d) <ボトムアップ>サイバーセキュリティアウェアネスが定着した文化の醸成

各階層・役割に向けた教育・啓発を通じてセキュリティ対策は“当たり前”といった文化・風土の醸成とその仕組みづくりを進めています。具体的にはサイバーセキュリティに関する意識向上、攻撃被害拡大防止を目的として、関係会社を含む役職員に「サイバーセキュリティポータル」を公開し、サイバーセキュリティに関する最近の動向、事例や役職員が取るべき対策等の各種情報を発信しています。また、一般役職員向けとセキュリティ担当者向けそれぞれの「サイバーセキュリティe-Learning」を作成、活用しています。

 

③リスク管理

 情報システム及び情報セキュリティに関するリスクは、「3.事業等のリスク」において重要なリスクの一つと位置づけ、以下の対応策を講じています。

・情報システムの安全性及び情報セキュリティ強化のため、関連規程を整備し、当社及び連結子会社が保有する情報及び情報システムにおける機密性、完全性及び可用性を適切に確保し、またリスク管理水準を改善するための指針を継続的に示して情報漏洩等のリスクを管理しています。

・当社グローバル・グループでのサイバーセキュリティ対策強化のため、当社グループ各社が準拠すべき「三井物産グループサイバーセキュリティ原則」を定めています。また、関係会社各社にて年1回実施する「サイバーセキュリティベースライン調査」にて準拠状況をセルフチェックすると共に、「サイバーセキュリティリスクアセスメント」による第三者評価も実施しています。

・当社では、サイバーBCP(事業継続計画)として、被害の規模や深刻度に応じたセキュリティインシデント発生時の対応を予め定めています。

 

④指標及び目標

 2023年3月期に、当社グループ各社が共通的に実施することを目指す基本的なサイバーセキュリティ対策として、「三井物産グループサイバーセキュリティ原則」を策定しました。当社では、サイバーセキュリティ上の重要な関係会社を毎年指定し、当該原則への準拠状況をモニタリングしており、2025年3月末現在、準拠率は80%となっています。

 

(8) 人材戦略

 人材戦略に係る具体的な、①ガバナンス、②戦略、③リスク管理、④指標及び目標は以下のとおりです。なお、本項目において記載のある「海外採用社員」は、海外現地法人及び海外事務所において採用する社員を示し、海外連結子会社において採用する社員は含みません。

 

①ガバナンス

当社のコーポレート・ガバナンスの基本方針及び全社のコーポレート・ガバナンス体制の概要については、「第4 提出会社の状況 4.コーポレート・ガバナンスの状況等」をご参照ください。

 

(a)人的資本に関するガバナンス体制

 当社は代表取締役CHRO(チーフ・ヒューマン・リソース・オフィサー)を人的資本経営の実行・実現を担う責任者として設置し、事業戦略を実行するための人的資本の最大化に向けた人材戦略として、インクルージョンやウェルビーイング経営の推進、人材の確保、育成、活躍推進、評価、報酬などの領域を管掌する一方、人材の離職や定着率の管理など人的資本に関わるリスクを把握し、適切なリスクマネジメントを行います。

 人的資本に関わる経営の基本方針・計画・制度及び事業活動方針・戦略については、その重要性に応じ、経営会議の諮問委員会において議論された後、社長及びCHROを含む経営会議に付議・報告されます。重要事項については個別に取締役会にも付議・報告され、全体の活動については、定期的な取締役会報告を通じて取締役会による監督が適切に図られる体制となっています。

 

ダイバーシティ推進委員会

 当社では、経営会議の諮問委員会として、CHROを委員長とし、人事総務第二部長、経営企画部長に加え、委員長が別途指名する委員から構成されるダイバーシティ推進委員会を設置しています。2025年3月期は「別途指名する委員」として、海外現地法人取締役や事業本部長を含む6名(内、女性3名、外国籍2名)が指名され、計9名の多様なバックグラウンドを有するメンバーで以下記載のテーマについて討議を行いました。各議事録はイントラネットを通じて従業員に公開しています。

 

日程

主要なテーマ

第1回

2024年6月20日

年間活動計画、女性活躍推進に向けた施策・女性管理職比率2031年3月期目標値確認、男性育児休業に関する討議

第2回

2024年12月4日

女性活躍推進に関する討議

第3回

2025年3月12日

海外採用社員の活躍推進に関する討議

 

(b)業務執行体制

 人的資本に関する取組みの基盤として、CHROが中心となり、16事業本部・コーポレートスタッフ部門の人事管理担当者、海外ユニットのCHRO、及び各グループ会社の人事総務担当者が連携するグローバル・グループ人事体制を構築しています。グローバル・グループ人事体制は、以下の図のとおり、CoE(Center of Excellence)とHRBP(HR Business Partners)、OPE(Operational Excellence)からなり、これら組織機能が三位一体となって、価値創造を担う世界中の多様な社員の育成や活用を推進する戦略や施策・環境整備に取り組んでいます。日本に拠点を置く各事業本部、コーポレート部署及び海外拠点を司る地域本部や地域ブロックは、CoE、HRBP、OPEと連携し、当該専門領域(HRコード)で活躍する人材をプロフェッショナルに育てる役割を担っています。これらのグローバルマトリクス体制での人材マネジメントの取組みは、CHROを通して経営層に定期的にレポートされ、人材戦略や人事体制の改善・決定につながっています。このグローバル・グループ人事体制のもと、人材戦

 

略の策定や、多様性とインクルージョンの推進など、グローバル・グループ全体で取組みを行っています。

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②戦略

 当社グループは、「挑戦と創造」のDNAを継承し、常に時代の潮流を先取りしてさまざまな分野や国で新たな事業を創出してきました。当社グループの最大の資産は人材であり、「人」こそが持続的な価値創造の源泉です。社会課題の解決を通じ新たな価値創造を続けるために、変化に即応し未来の戦略をつくることができる人材を育て、それぞれの力を引き出していくことが重要と考えています。その実現に向け、三井物産のタレントマネジメントについて社員と会社が目指すべき姿を共に理解し実現するためのグローバル共通の基本方針として「グローバルタレントマネジメントポリシー」を2024年7月に策定し、当社グループの求める人材像を以下に定義しています。

 

・自律的な成長:自身の実現したいことを明確にし、ゴールの実現に向けた具体的なロードマップを自ら描き、それを実現するために必要な経験やスキルを自律的に積み上げる人材

・強い「個」:グローバルで幅広く自分の担当する領域に精通し、他者と協働を通じて更なる高みを目指し、主体的にビジネスを創り、育て、展(ひろ)げ、世界中で新たな価値を生み出す人材

・インクルーシブ:自由に発想し、異なる考えを受け入れ、周囲の仲間と共に多様性を活かし、違いを受け入れ共創できる環境で新たなイノベーションを生み出す人材

*「グローバルタレントマネジメントポリシー」については、以下ウェブサイトをご参照ください。

0102010_018.png https://www.mitsui.com/jp/ja/company/outline/human_resource_management/management_policy/index.html

 

 これらの多様なバックグラウンドを持つ人材が、多様な現場でグローバルに活躍する姿を後押しすることが当社グループの人材戦略の根幹であり、中期経営計画2026の重点施策の1つとして位置づけられています。自律的なキャリア形成(挑戦・経験・学び)を支援し、従業員一人ひとりの活躍を支える諸施策・環境整備のために更なる投資を推進します。上記の取組みを通じた、社員の成長とより付加価値の高い業務へのシフトが、事業ポートフォリオの変革を支えると考えています。

* 中期経営計画の詳細は、当社ウェブサイトに掲載している説明会資料をご参照ください。

0102010_019.png https://www.mitsui.com/jp/ja/ir/library/meeting/pdf/ja_233_4q_chukei.pdf

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 経営戦略と人材戦略の着実な実行を進めるにあたっては、社員一人ひとりが各自の取り組んでいる業務と関連付けてその目的を理解し、持続的な企業価値の向上につなげていくサイクルが重要と考えています。このサイクルを適切に実行していくため、社員エンゲージメントを人材戦略の成果を測る重要な経営指標の一つと位置づけ、定点観測を行い、組織の課題と向き合うツールとして、三井物産グループ全体を対象にMitsui Engagement Survey (MES)を毎年実施しています(関係会社の実施は任意)。

 本サーベイは客観性・透明性を担保するため、社外の業務委託先へ対象者が匿名で直接回答する形式で年1回実施しています。MESの結果は各地域・組織単位での分析とアクションプランを通じて、社員が当事者となって現場での組織開発に活用しています。また同時に経営会議メンバーも、経営会議での結果の分析・討議を通じた人材戦略の策定や施策の見直しなどの重要な役割を担うことから、「社員エンゲージメント」及び「社員を活かす環境」の肯定的回答率の前期対比での増減は、取締役(除く社外取締役)を対象とした報酬制度の一要素としています。

取締役の報酬の詳細は、「第4 提出会社の状況 4. コーポレート・ガバナンスの状況等 (4) 役員の報酬等」をご参照ください。

 当社(単体)及び海外現地法人の結果は以下のとおりです。また、サーベイ対象者数などの詳細については、「④指標及び目標」をご参照ください。

 

 

 

2023年3月期

2024年3月期

2025年3月期

社員エンゲージメント*1

72%

73%

75%

社員を活かす環境*2

69%

69%

71%

戦略・方向性の理解・共感*3

80%

81%

80%

スキル・能力の発揮機会*3

76%

76%

77%

リーダーシップに対する信頼*3

71%

73%

75%

*1 「会社に対して貢献意欲やロイヤルティがあり、自発的努力をしようという気持ち」についての複数の関連設問における肯定的回答率

*2 「自分のスキルや能力を活かす機会があり、働きやすい環境が整備されているか」についての複数の関連設問における肯定的回答率

*3 「社員エンゲージメント」「社員を活かす環境」のドライバー設問となる12カテゴリーのうちの3つ。各項目における関連設問についての肯定的回答率

 

(a) 強い「個」の育成

 当社グループの「世界中の未来をつくる」というMissionの達成に向けては、従業員一人ひとりが変革をリードし、自らの強みを活かして世界標準で成果を積み上げることが重要です。各現場でのOJT(On the Job Training:業務を通じて知識などを身につける教育方法)を軸としつつ、それを補完する体系的な人材育成プログラムや、従業員の志向を起点にしたグローバルなキャリア開発のための各種制度や基盤を提供し、強い「個」を育成します。

 

(i) グローバル・グループでの人材育成

 当社グループは新入社員からリーダー層に至るまで、役割期待別研修、選択型研修、選抜型研修等、豊富な人材育成プログラムを実施しています。

 当社では、若手社員を対象とした各地域のエキスパートを育成する海外修業生や専門性を高める部門研修員制度、中堅層社員対象のビジネススクールへの派遣制度を実施すると共に、国内グループ社員を対象とした節目研修や「物産アカデミー」等の選択研修の実施等を通じて、人材の育成・人的ネットワークの構築を支援しています。

 海外採用社員に対しても、現地事情に合わせたリーダーシッププログラムやスキル系研修を実施しているほか、日本への派遣プログラムとして、短期でのJapan Trainee Programや、1~2年間の長期にわたるJapanese Language & Business Program及びJapan Business Integration Programを設けています。

 その他、重要パートナー企業までに対象を広げ、社会課題を解決するビジネスを創出し、事業において困難な局面を乗り越えるためのリーダーシップを発揮するグローバルリーダーの育成を目的とするHarvard Business Schoolの協力を得て開発した当社独自のGlobal Management Academy Program(GMA)及び若手社員を対象としたGlobal Future Leader Academy(GFA)を設けています。GMAとGFAは原則一年おきに開催し、2025年3月期はGFAに16カ国から40名が参加しました。累計参加者数はGMA及びGFA合計で過去12回開催し438名となります。

(ii)自律的なキャリア形成

 当社は、社員の意欲や志向を起点にしたキャリアプラン実現の基盤として、所定の任用・昇格要件や年齢に関わらず、適任者が上位ポジションでより大きな役割・職務にチャレンジできるキャリアチャレンジ制度を導入しています。挑戦意欲ある社員が、より早く、その能力と適性に応じてストレッチできる環境で経験を積むことを後押しし、事業経営人材を含む次世代リーダーの早期育成につなげることを狙いとしています。

 当社グループは、管理職を対象に、360°多面観察であるMitsui Management Review(MMR)を毎年実施しています。部下や協働する同僚からのフィードバックを受け、自身のマネジメント力の振り返りとリーダーシップの強化のほか、組織の多様な個の力を活かす組織づくりにも活用し、時代に即したリーダーの育成につなげています。MMRの結果は上司にも提供し、職制を通じた人材育成や、ラインマネージャー任用の参考としても活用しています。また同時に所属組織のMESの結果とも連携させ、組織開発への課題取組みへの実行サイクルを強化する取組みも行っています。

 当社グループでは、今の人員でより大きな仕事をするためのDXによるパフォーマンスの向上と、デジタルやAIを活用したビジネスの創出という2つの大きな変革を進めています。当社事業に関するオペレーションのノウハウとDX を掛け合わせ新たなビジネスモデルの創出を行うために、当社独自のDX人材戦略を策定の上、実施しています。DXについて学ぶMitsui DX Academy(基礎Ⅰ、基礎Ⅱ)や、DXプロジェクトの実践を通じたOJTにてDX人材を育成する「ブートキャンプ」、最先端のDXスキルや知見の獲得と高度DX専門人材とのネットワーキング構築を目的に海外大学コースへ派遣する「DX Executive Education」など、目的やレベルに応じた研修体系を整備しています。またビジネスとDXの双方を深く理解した上で実践する社員をDX人材として認定する「DX人材認定制度」を設け、“総DX戦力化”を進めています。

 

(b) インクルージョン

 当社グループは、多様な個性を有する従業員が、自分らしく自由に発想し、異なる考えを受け入れ、最大限に力を活かすことができる会社を目指します。インクルージョンの推進を加速させる環境を整えると共に、無意識のうちに暗黙的な排他や区別を行うことがないよう、従業員一人ひとりの意識醸成を支援し、グローバル・グループでのインクルージョンを実現します。採用地や性別によらず、社員一人ひとりがお互いを認め合い、恒常的に異なる考えや新しい考え方が入ることで刺激を受け合いながら能力を最大限に発揮し、イノベーションを生み出すことでビジネスに新たな価値をもたらし、当社グループの価値向上につなげます。

 

(i) 女性の活躍推進

 当社グループでは、採用地や属性を問わず社員の能力に基づく適材配置を進めています。適材配置における現状の課題は当社(単体)の女性活躍推進であり、女性管理職比率は11.0%で、連結会社ベースの20.7%、現地法人及び海外事務所における海外採用社員の約4割と比較しても低い状況にあります。そのため女性活躍推進法に基づく行動計画において2031年3月期の女性管理職比率の目標を20%とし、達成に向けて取組みを行っています。2020年3月期から管理職の女性を対象にしたWomen Leadership Initiativeプログラムを実施し、ライン長候補の育成を促進しています。また2022年3月期から経営会議メンバーがスポンサーとなり、シニアリーダー候補の女性社員を対象とするSponsorship Programを実施し、これら取組みを通じて女性管理職におけるラインマネージャーやシニアマネージャーへの登用を着実に進めています。

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(ii) 海外採用社員の管理職登用

 当社グループでは、各国や地域に根を深く張ったビジネスを展開するため、当社グループの海外拠点(現地法人・海外事務所)において人材の活躍推進に力を入れています。世界各国から選抜された社員を対象に、2019年3月期から変革を積極的に推し進める先導者を育成するChange Leader Programを実施しています。2025年3月期は計12名が参加し、過去5回の開催で累計67名が参加しました。このプログラム参加者の中から、現地法人の役員や部長クラスのポジションに任用されるなど、更なる活躍推進に向けた取組みになっており、現地法人・海外事務所における海外採用社員の管理職比率は19%となっています。また、三井物産人材開発では、当社グループの海外拠点だけではなく、グループ各社で働く世界中の社員を対象とした教育・研修の企画運営の提供も行っています。

 

(iii) 両立支援(ワークライフマネジメント)

 当社グループでは、多様な価値観・バックグラウンドを持つ社員が働いており、一人ひとりの生活(ライフ)に対する考え方や果たすべき責任もさまざまです。それぞれに抱える事情は異なりますが、仕事(ワーク)ではプロフェッショナルとしての自律性と責任をもって最大限の力を発揮して活躍しながら、ライフとの両立を可能とする取組みを行っています。

 自らの「ワーク」と「ライフ」のマネジャーとなって両立を可能とする「ワークライフマネジメント」の考え方をベースに、特に大きなライフイベントである育児・介護について、当社では法定基準を上回る各種制度・支援策を導入しています。男性育児休業については、各自の自律的な選択に基づく働き方推進がベースとなり、休業を取得する男性社員の半数以上が4週間以上の休業を取得するなど、各自・各家庭の育児に関する考え方を尊重し、必要な期間しっかりと休業が取れる環境を整えています。

 また両立を支える働き方については、リモートワークやフレックスタイムを導入するなど、育児・介護の特定の事情に限定せず、全社員が自律的に最適な形で組み合わせて仕事とプライベートの両立を可能とする各種施策を整備しています。有給休暇についても取得率目標を70%とし、休暇奨励期間の設定等による社員の更なる積極的な取得を促進していきます。

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(iv) 採用

 当社グループでは、「世界中の未来をつくる」というミッションを実現すべく、インクルーシブな風土を根底で支える高い志とフェアネスをもった人材の多様性を重視しています。そのため、国籍・性別・年齢・出身大学・宗教・人種等は問わず、多様な価値観・知見・能力を重視する人物本位の採用選考を行っており、公正な採用活動を基本方針としています。その一環として当社は国内でのキャリア採用をいち早く導入しました。2025年3月期に当社(単体)へ入社した総合職社員220名(新卒・キャリア採用合計)のうち、キャリア採用は91名(41%)となります。

 

(単位:名)

2023年3月期

2024年3月期

2025年3月期

新卒(内、女性)

111(44)

124(54)

129(57)

キャリア(同上)

92(31)

85(36)

91(30)

新卒・キャリア合計(同上)

203(75)

209(90)

220(87)

キャリア採用比率

45%

41%

41%

*ライフイベントでの退職者を対象とするキャリア・リスタート制度による再雇用入社9名を含む

 

(c) 戦略的適材配置

 当社グループは、16事業本部を中心としてグローバル展開をしています。国や地域毎に強みを発揮していくために、事業と地域を2軸としたグローバルマトリクス制を採用しています。事業戦略に連動した活躍の場を用意し、従業員は新しい仕事への挑戦を通じてスキルや専門性を身につけ、会社と共に成長します。このような戦略的適材配置と自律的なキャリア形成をグローバル規模で推進します。

 

(i)グローバルベースの後継者育成計画

 社長とCHRO、人事総務第一部長、人事総務第二部長、各事業本部長・コーポレートスタッフ部門各部長が参加し、毎年Human Resources Strategy Meeting(人材戦略会議)を開催しています。本会議では、当社グループの重要ポジションのサクセッションプラン(後継者育成計画)についての議論や、女性や海外採用社員等の活躍状況と育成方針の確認を行っています。多様な社内人材から形成される後継者人材プールの状況を継続的に把握し、戦略的な適材配置 による組織パフォーマンスの最大化を図る狙いです。また、想定外の事態への備えとしてのBCP(事業継続計画)策定により組織マネジメントの連続性も担保しています。

 

(ii)グローバルタレントマネジメントの深化

 採用地を問わず、社員一人ひとりの経験・能力・知識やキャリアの志向といった人材データを活用し、適所で適材が活躍するフィールドの醸成と、社員の自律的なキャリア形成を支えるグローバルデータプラットフォームBloomの全世界での稼働を、2024年12月より開始しています。機動的な適材適所の実現や、職務・役割に求められる能力や経験を可視化し社員自身による自律的なキャリア形成を後押しします。

 

(iii)グローバルベースでの転勤プロセスの標準化

 事業を牽引する人材を戦略的に配置するため、海外採用社員の転勤プロセスを標準化すべくグローバルモビリティプログラムを2022年10月に策定し、2023年4月の転勤者から全世界で導入しました。導入以前は転勤時の諸条件が転勤者ごとに個別決定となっておりプロセスが煩雑かつ調整に時間を要していましたが、統一ルールを導入することで海外採用社員の国を超える異動の難易度を低減し、グローバルベースでの戦略的配置を実践します。

 

(iv)スキル・専門性を活用した適材配置

 当社は、機動的で実効性の高い全社最適の適材適所と、社員の自律的キャリア選択の両方をマッチングさせる仕組みとして、社員のキャリア志向と適正を踏まえ、従来のラインマネージャーを前提とした職群に加えて、高度な専門性を蓄えた人材のための複線型キャリアパスであるExpertバンドを設定しています。

 当社は、上司を経由せず、意欲ある社員が自らの意思で能力・スキル・専門性を最大限に発揮できる職務に挑戦できる人事ブリテンボード制度を導入しています。組織の壁を越えた「会社のニーズ」と「社員の意思」のマッチングのプラットフォームとして、より機動的で実効性の高い全社最適の適材適所と、社員の自律的なキャリア選択と挑戦を後押しします。

 

(d) ウェルビーイング・健康と安全

(i) 健康経営からウェルビーイング経営へ

当社は2017年に「健康宣言」を策定し、社員の健康管理を重要な経営課題と位置付け、健康経営に取り組んできました。近年、身体の健康だけではなく、精神的にも社会的にも満たされている状態がウェルビーイングとして大切にされるように世の中の価値観も変わってきました。当社では、このような変化を踏まえ“一人ひとりが活力にあふれ「挑戦と創造」を実践できる状態”をウェルビーイングと定義し、前述の「健康宣言」を2023年7月に「ウェルビーイング経営宣言」へ刷新しました。本宣言に基づき、治療と仕事の両立支援やメンタルヘルス予防施策、女性社員を対象としたアンケートに基づいた診療所への婦人科設置やその他施策など、社員が自分らしく互いの価値観を尊重しつつやりがいを持って活き活きと働けるような職場環境を整備する具体的施策を、CHROを責任者とする推進体制のもとで一層充実させていきます。

 

(ii) ウェルビーイング推進会議

ウェルビーイング経営の推進にあたっては、CHROを責任者とし、人事総務第一部長、産業医、保健師、三井物産健康保険組合をメンバーに、ウェルビーイング推進会議を審議機関として、生活習慣病予防やがん対策等、社員の健康維持・増進に向けた施策の企画・決定・実行に取り組んでいます。各議事録はイントラネットを通じて従業員に公開しています。

 

(iii) 労働災害のない安心・安全な職場づくり

当社は、その事業活動において、三井物産グループ役職員と事業に関わる仲間の健康と安全を常に最優先します。そのために全ての関係者とより高いレベルで価値創造ができるよう、各々の法令に基づく施策はもとより、さまざまな健康維持・増進に向けた取組みを進めていきます。また、私たちが事業を展開する各国・地域社会において労働災害のない、全従業員と、共働するさまざまな仲間が安全に働ける職場や作業環境づくりを推進するために、現地の法律・規制の遵守はもちろん、それぞれの業界特有のベストプラクティスを取り入れながら継続的な改善を図り、必要とされるリソースとトレーニングを提供していきます。

全てのビジネスにおいて安全衛生を高め、当社グループ及びコントラクターの従業員の労働災害を未然に防ぐことを目指し、CHROを責任者とする労働安全衛生推進体制のもとで、全社各ユニットの事業特性に合わせた施策を推進していきます。2023年11月にはコントラクター選定における取組指針となる三井物産グローバル・グループコントラクター選定方針を策定しました。

 

③リスク管理

・人的資源の制約に関するリスクを当社は認識しており、対応策を講じています。詳細については、「3. 事業等のリスク」をご参照ください。また以下の点についてもリスクを識別し、対応策を講じています。

 

リスクタイプ

リスクマネジメント(対応策)

リスク全般

・CCO(チーフ・コンプライアンス・オフィサー)の指揮・監督の下、コンプライアンス・プログラム統括部署である法務統括部コンプライアンス・インテグリティ推進室が中心となって、人事総務第一部、人事総務第二部や国内外の各本部及び支社等のコンプライアンス統括責任者(事業本部長、支社長等)と連携しながら、グローバル・グループベースで「三井物産グループ行動指針-With Integrity」を浸透させ、コンプライアンスの徹底、コンプライアンス・プログラムの整備・強化、コンプライアンス関連案件への対応を行っています。

・コンプライアンスに関する職制ライン及び職制外の報告・相談ルートとして、社外弁護士や第三者機関(匿名可)も含めた8つのルートを設置しています。当社役職員のほか、派遣社員、業務委託先の役職員のうち、当社の委託した業務に従事した、または、している役職員を対象としており、電話、メール、ウェブフォーム、書簡等を通じて受け付けています(電話を除き、24時間受付可)。

雇用プロセスに関する

リスク

・能力・人物本位の採用選考を行い、公正な採用活動を基本方針としています。国籍・性別・年齢・出身大学・宗教・人種等、本人の能力・適性に関連のない事項に関しては不問として、グローバルで応募の機会を提供しています。

・適任者を採用するために、幅広い候補者の中から適任な者を採用しています。公正な採用選考のため、面接に当たる関係者に対してトレーニングを実施しています。

業務承継に関するリスク

・事業継続に必要な人員計画の見直しを年次で行い、適切な採用人数を維持しています。

・Human Resources Strategy Meetingにおいて、重要ポジションの後継者候補となる人材プールを確認し、重要ポジションの後継者育成計画を年1回確認しています。

・当社グループのビジネスモデルを支える多様な人材確保のため、キャリア採用に積極的に取り組んでいます。

報酬の公平・公正性に
関するリスク

・従業員各自のパフォーマンスに対する適切な評価制度・報酬制度を導入しています。

・評価は設定した目標に対する進捗Reviewを期中に3回実施し、事業年度終了時点で上司との評価面談を行います。評価面談及び評価フィードバックが適切に実施されたことをサーベイにて確認しています。

・報酬は社員一人ひとりの貢献並びに事業を展開する各国の法律などに即しながら、競争力ある水準を保ちつつ、発揮した能力、成し遂げた成果と貢献に報いるPay for Performanceの考え方を採用しています。

労働法に関するリスク

・労働基準法・労働安全衛生法に準拠した適正な労働時間管理により、過重な長時間労働を回避します。

・社員の安全・健康をしっかりと保持し安心して働き続けられる職場環境の整備として、衛生委員会で議論を行っています。

差別またはハラスメントに関するリスク

・事業活動推進にあたっては、「三井物産役職員行動規範」に基づき、人権を尊重し、差別やハラスメントを行わないことを規定しています。

・性別・国籍・年齢・障がい等を問わず多様な人材の更なる活躍を引き出す制度・支援策を導入しています。

・社内告知や各種イベントを通じ、多様性を受け入れ、尊重するダイバーシティ&インクルージョンを実現する風土・文化の醸成に取り組んでいます。

健康及び安全に
関するリスク

・世界中の国や地域で当社グループの事業活動を行う上で、従業員が自らの持てる力を最大限発揮し、一人ひとりが活き活きと健康に、そして安全に働き続けられる職場環境の整備をしています。また、自主的に事業活動における健康と安全の推進に取り組むべく、自己と周囲の安全と健康への責任を果たせる文化を醸成します。

・当社グループ及びコントラクターの従業員の労働災害を未然に防ぐことを目指し、CHROを責任者とする労働安全衛生推進体制のもとで、全社各ユニットの事業特性に合わせた施策を推進しています。また取締役会にて健康と労働安全衛生に関する報告を行っています。

・当社グループで事業を展開する各国・地域社会において各地の法律・規制を把握し遵守することはもちろん、それぞれの業界特有のベストプラクティスを取り入れながら継続的な改善を図っています。また労働災害のない、全従業員と、共働するさまざまな仲間が安全に働ける職場や作業環境づくりを推進するために必要とされるリソースとトレーニングを提供しています。

・2023年11月にはコントラクター選定における取組指針となる三井物産グローバル・グループコントラクター選定方針を策定しました。

 

 

 

④指標及び目標

当社グループでは以下のとおり各種環境指標や目標を設定、モニタリングを継続して実施しています。なお、「第1 企業の概況 5. 従業員の状況」において国内連結子会社における多様性に関する指標を記載しています。

 

(a) 社員エンゲージメント強化

(i) Mitsui Engagement Survey(MES)実施状況

サーベイ対象

2023年3月期

2024年3月期

2025年3月期

目標

対象者総数

12,218名

15,247名

17,776名

エンゲージメント強化

・年1回実施

・回答率90%以上

・分析+組織開発の着実な実行

・連結グループでの対象拡大

単体社員対象者率*1

100%

100%

100%

海外採用社員対象者率*2

100%

100%

100%

参加関係会社数*3

20社

29社

30社

サーベイ結果*4

2023年3月期

2024年3月期

2025年3月期

回答率

92%

91%

91%

社員エンゲージメント*5

72%

73%

75%

社員を活かす環境*6

69%

69%

71%

戦略・方向性の理解・
共感*7

80%

81%

80%

スキル・能力の発揮機会*7

76%

76%

77%

リーダーシップに対する
信頼*7

71%

73%

75%

*1 休職中の従業員及び海外研修員・修業生は除く

*2 海外現地法人及び海外事務所において採用する社員

*3 国内関係会社でサーベイを実施した会社数

*4 当社(単体)及び海外現地法人・海外事務所の結果

*5 「会社に対して貢献意欲やロイヤルティがあり、自発的努力をしようという気持ち」についての複数の関連設問における肯定的回答率

*6 「自分のスキルや能力を活かす機会があり、働きやすい環境が整備されているか」についての複数の関連設問における肯定的回答率

*7 「社員エンゲージメント」「社員を活かす環境」のドライバー設問となる12カテゴリーのうちの3つ。各項目における関連設問についての肯定的回答率

 

(ii) 自発的離職率

 

2023年3月期

2024年3月期

2025年3月期

目標

自発的離職率(単体)

1.41%

1.08%

0.96%

-

 

(b) 人材戦略

(i) 強い「個」の育成

 

2023年3月期

2024年3月期

2025年3月期

目標

人材開発・研修の費用

27.5億円

30.5億円

31.5億円

-

海外派遣研修者数
(単体従業員)

159名

209名

210

-

日本派遣研修者数
(海外採用従業員)

15名

17名

12

-

DX人材(累計認定者数)*1

82名

231名

592

2026年3月期:1,000

*1 当社(単体)及び海外現地法人・海外事務所の社員

 

 

(ii) インクルージョン

 

2023年3月期

2024年3月期

2025年3月期

目標

キャリア採用比率*1

45%

41%

41%

女性管理職比率

2031年3月期:20%

女性採用比率*1
(新卒+キャリア採用)

37%

43%

40%

女性従業員比率*1

30%

30%

30%

女性管理職比率*1

8.5%

9.2%

11.0%

海外採用社員
ライン長比率

17%

18%

19%

-

男性育児休業取得率*1*2

65%

70%

91%

男性育児休業取得率

100%

男性育児休業取得日数*1

36.5日

45.0日

42.4日

*1 当社(単体)数値

*2 海外勤務中・出向中の者を含む
 

(iii) 戦略的適材配置

 

2023年3月期

2024年3月期

2025年3月期

目標

Global People Data Platform (Bloom)
導入実績

20%

20%

100%

Bloom全世界導入

2025年3月期:100%

(単体+海外採用社員全員)

海外採用社員国外転勤者数

75名

81名

97

 

(c) ウェルビーイング

(i)健康

 

2023年3月期

2024年3月期

2025年3月期

目標

健康診断受診率*1

100%

100%

100%

健康診断受診率

100%

プレゼンティーズム*1*2

12.6%

12.3%

12.2%

*1 当社(単体)数値

*2 健康問題による出勤時の生産性低下率

 

(ii)労働安全衛生

 

 

2023年3月期

2024年3月期

2025年3月期

目標

当社

(単体)

労働災害件数*1

0件

1件

0件*2

労働災害件数:0件

死亡災害件数:0件

死亡災害件数*1

0件

0件

0件

連結*3

重傷災害件数*4

自社従業員:5件

コントラクター従業員:3件

自社従業員:4件

コントラクター従業員:0件

自社従業員:9件

コントラクター従業員:1件

重傷災害件数:
前年度対比減少

死亡災害件数:0件

死亡災害件数

自社従業員:1件

コントラクター従業員:5件

自社従業員:1件

コントラクター従業員:1件

自社従業員:0件

コントラクター従業員:2件

*1 厚生労働省の定義に基づく

*2 提出日現在

*3 連結グループ(当社(単体)、現地法人、議決権50%超で労働者雇用のある子会社)数値

*4 死亡には至らぬも6カ月以内に回復しない負傷事故

 

(iii)働き方(単体)

 

2023年3月期

2024年3月期

2025年3月期

目標

有給休暇年間平均取得日数

13.8日

13.6日

13.2

有給休暇年間平均取得率

70%

有給休暇年間平均取得率

71.4%

70.3%

69.0%

 

3【事業等のリスク】

 

 当社及び連結子会社を取り巻く多種多様な定量・定性リスクに対し、関係のコーポレートスタッフ部門各部がそれぞれの職掌に定めるリスク管理分野において各種社内規程等の制定を行うと共に、事前審査もしくは事後モニタリングを通じ、相互連携して対応しています。関係会社経営においては、リスクと統制の有効性を評価・改善し、適切なリスクマネジメントを図るCSA(Control Self-Assessment)に取り組んでいます。また、経営会議及び経営会議の諮問機関であるポートフォリオ管理委員会を核として、全社一元的に管理する統合リスク管理体制を構築し、全社リスクを横断的に見て、発生頻度と想定損害規模及び全社リスク許容度に鑑み、重要なリスクを特定、対策を講じています。

 当連結会計年度末における重要なリスクは以下のとおりです。

 

(1)事業投資リスク

 当社及び連結子会社は、さまざまな事業に対する投資活動を行っていますが、この事業投資に関連して投下資金が回収不能となるリスク、撤退の場合に損失が発生するリスク、及び計画した利益があがらないなどのリスクを負っています。

 また、当社及び連結子会社は第三者との合弁事業、あるいは、第三者に対する戦略的投資を通じて多様な事業分野に参入しています。しかしながら、その結果の予測は困難なことがあります。すなわち、

・これらの事業の成否は、合弁事業のパートナーや戦略的投資先企業の業績や財政状態といった当社及び連結子会社が制御し得ない事象が決定的な要因となる場合があります。

・持分法適用会社での事業において、経営、業務運営、資産処分に関する適切な統制ができない、あるいはパートナーと事業目的及び戦略的課題を共有できないために重要な決定ができなくなる可能性があります。

こうした事態の発生は、当社及び連結子会社の経営成績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 また、当社及び連結子会社の経営成績及び財政状態において重要な割合を占める金属資源や石油・ガスの探鉱・開発・生産事業の一部において、当社及び連結子会社はノンオペレーターの立場で参画しています。この場合、当社及び連結子会社はオペレーターである事業参加者が作成した情報に基づき事業性を検討しますが、開発及び生産に係る意思決定を含めた事業の運営はオペレーターの定める方針に影響を受けます。オペレーターによる事業運営が適切に行われない場合、当社及び連結子会社の経営成績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 そのため、新規投資の実行については収益率等の定量基準や定性評価に基づき意思決定するとともに、全事業の保有意義を定期的にモニタリングし、不振事業やアラート基準に抵触する事業の改善計画や撤退方針を擦り合わせながら資産の入替えを行っています。また、連結財政状態計算書上の資産に内在するリスクに加えて、マーケットリスクや保証債務等のオフバランスのリスクを一定の基準で評価し、リスクアセットとして定期的にモニタリングしています。また、一定の前提の下にストレステストを定期的に実施しリスクアセットと株主資本の比率への影響も検証しています。

* 営業債権や投資、固定資産等の連結財政状態計算書上の残高及び保証債務等のオフバランスシート・ポジションに、その潜在的な損失リスクに応じ当社が独自に設定したリスクウェイトを乗じることにより算出している想定損失の最大額。

 

(2)地政学的リスク

 ロシア・ウクライナ情勢や米中関係・中東情勢等、国・地域間の政治的・社会的緊張の高まりにより、当社及び連結子会社が当該国・地域に展開する事業の業績が悪化、または継続が困難となるリスクを負っています。

 地政学的な不確実性により、当社及び連結子会社の事業を取り巻く環境が大きく変わる中、難易度の高い組織運営と責任のある主体的な行動が一層求められており、各事業に関わるステークホルダーとの緊密なコミュニケーションも必須となっています。こうした地政学的リスクの高まりによる不確実な情勢の中で機動的に対応するために、当社では以下のようなリスクヘッジ策を講じていますが、全ての地政学的リスクを回避することは困難であり、当社業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

・事業を展開する国・地域の政治・経済情勢等の動向を定期的にモニタリングし、その国や地域に存在するリスクや事業環境について動向を注視しています。

・地政学的リスクが高いとされる地域へ事業を展開する際は、保険・各国輸出信用機関によるファイナンス等の金融的手段によりリスクを低減しています。

・有事の際の対応についてのノウハウを蓄積し、国・地域をまたぎ複数の現地法人が連携、従業員の安全を図り、日本国内または海外で事業を継続する体制を構築しています。

 

 ロシア・ウクライナ情勢に関して、当社は国際社会が協調し制裁措置を取る中で、それらを遵守しつつ各事業に取り組んでいます。ロシア向けの投融資保証残高は2025年3月末時点で2,385億円となり、当社及び連結子会社の投融資保証残高の約2%となりますが、将来の不確実なロシア・ウクライナ情勢によって影響を受ける可能性があります。また、ウクライナ向けの投融資保証残高は僅少です。なお、2025年3月期決算における影響については、連結財務諸表注記事項29.「ロシア・ウクライナ情勢のロシアLNG事業への影響」をご参照ください。

 

(3)カントリーリスク

 当社及び連結子会社が世界各地で展開する事業は、各国の政治・経済・社会状況の変化により、当該国に所在する取引先等に対する債権や、出資先もしくは進行中のプロジェクトに関する投融資等の回収が不能になる、もしくは在庫・固定資産等の価値が毀損するリスクを負っています。

 さらに、当社及び連結子会社の事業活動は、特定の国または地域の特定の分野に一定程度集中しています。例えば、当社及び連結子会社は、

 

・ブラジル、チリ、ロシアにおいて金属資源・エネルギーの探鉱・開発・採掘・液化に係る投融資残高があります。

・マレーシアにおいて、アジア広域のヘルスケア事業に係る投融資残高があります。

・モザンビークにおいて、エネルギーの開発・生産・液化に係る投融資残高があります。

・台湾において、再生可能エネルギー発電事業に係る投融資残高があります。

 

そのため、カントリーリスクについては、保険・各国輸出信用機関によるファイナンス等、案件の内容に応じて適切なリスクヘッジ策を講じています。

 また、当社が有するすべての債権、投融資、保証等のエクスポージャーを国別に定期的に把握するとともに、原則として先進国を除く国を対象に、カントリーリスクの定性・定量的なモニタリングを行い、年1回及び必要と判断する都度、カントリーリスク管理上の対応方針を策定しています。全社ポートフォリオの定期的なモニタリングにおいては、事業分野別だけでなく国別のアセットサイズが適切なレベルかどうかについても検証しています。

 

(4)気候変動に関するリスク

 気候変動による将来影響を把握し、また成長機会として取り込むことで、事業ポートフォリオをより良質化すべく、2050年の「あり姿」としてネットゼロエミッションを掲げ、2030年はその「あり姿」に向けた道筋として、単体+連結子会社(含むUn-inco JV*1)のScope1+2及びScope3カテゴリー15(投資)について2020年比GHGインパクト半減及びGHG排出量30%削減*2、単体+連結子会社のScope1+2(除くUn-inco JV*1)についてはGHG排出量半減を目指しています。

 

 グローバルな経営環境の変化に対して柔軟に対応し、戦略のレジリエンスを高めるため、中長期的なシナリオ分析を実施しています。シナリオ分析に際しては国際エネルギー機関(IEA)等の複数のシナリオを活用して移行リスクの分析を行い、国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)にて採用される代表的濃度経路(RCP)も参考に物理的リスクの分析を行いました。

*1 Un-incorporated joint venture(共同支配事業)

*2 GHG排出量30%削減の基準年排出量は、2020年3月期のGHG排出量36百万トンに、2020年3月期時点でFID(最終投資決断)済みの火力発電事業で稼働開始後通常操業時に見込まれる排出増加分8百万トンを加味した合計44百万トン

 

 中長期的に発現する可能性がある移行リスクとしては、主に以下を認識しており、既存ポートフォリオを維持する前提では、長期的には保有権益・資産の価値毀損により当社及び連結子会社の経営成績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。

・政策・法規制リスク:各国・地域の政策によるエネルギー・電源構成の変更や、炭素税の賦課等の排出規制は、当社及び連結子会社が出資するGHG排出量が多い事業の経営成績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。

・技術リスク:気候変動に適応した新技術の導入による既存商材・サービスの需給の変化や既存製造設備の陳腐化が生じる可能性があります。

・市場リスク:化石燃料関連製品・サービス需給の変化や保有権益の価値毀損の可能性、金融機関・保険会社の低・脱炭素方針により資金調達上のリスクが発生する可能性があります。

 

 現在から2050年までの4℃シナリオ下において、猛暑、山火事、水ストレス(渇水)・干ばつ、熱帯低気圧の四つが当社への影響が大きい物理的リスクと認識しています。分析対象企業65社のうち、2050年にリスクが高い企業数は、猛暑に関しては約8割、山火事、水ストレス・干ばつ、熱帯低気圧に関しては、半数近くになります。中でも、山火事のリスクが高い企業は現在から約2倍に増加します。また、熱帯低気圧は、現在もリスクが高い企業が多く、新たにリスクが高まる企業は少ないものの、その発生頻度や巨大化により、被害の深刻化が懸念されます。当社及び連結子会社各社において、保険付保、複数サプライヤーの確保、危機管理方針策定、設備増強等の対策は取っていますが、物理的リスクを完全に回避できるものではなく、将来の当社及び連結子会社の経営成績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

 なお、当社では、レジリエンスの向上とGHG排出削減効果のある取組みの促進を目的に社内カーボンプライシング制度を導入し、案件審査の一要素としています。

 

 各事業セグメントにおける気候変動に関するリスクと機会については、「1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(2)経営環境 ②事業セグメント」を、リスクの対応策を含めた気候変動に関する当社及び連結子会社の取組みについては「2. サステナビリティに関する考え方及び取組 (5)気候変動対応」をご参照ください。

 

(5)商品価格リスク

 鉄鉱石、原料炭、銅、原油、天然ガス・LNG等をはじめとする各種市況商品の生産及び売買は、当社及び連結子会社の重要な事業分野です。これらの商品価格は、需給の不均衡、景気変動、在庫調整、為替変動等の当社及び連結子会社にとって制御不能な要因により、短期的に乱高下あるいは周期的に変動します。

 価格変動は、連結子会社及び持分法適用会社が保有する権益持分相当の生産量からの販売収入に直接的な影響を及ぼします。2026年3月期において、連結損益計算書における当期利益(親会社の所有者に帰属)への影響額は、原油価格でUS$1/バレルあたりの価格変動により24億円、鉄鉱石でUS$1/トンあたりの価格変動により31億円と推定しています。詳細は、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (5)2026年3月期連結業績予想」及び「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (4)経営成績に係る検討と分析」をご参照ください。

 そのため、当社及び連結子会社は、商品価格リスクを含む市場リスク管理方針を策定し、さまざまな階層において管理体制を構築しています。特に商品価格リスクに関しては、各事業本部長及び海外地域本部長は、各本部におけるポジション限度及び損失限度の設定、管理体制等を定めたリスク管理方針を策定し、担当役員の承認を受け、その承認内容に従って管理・報告を行う一義的な責任を負っています。また、取引部署から独立したリスク管理部署において、市場リスクの状況を管理、評価及び分析し、その結果を定期的に担当役員に報告しています。

 

 また、当社及び連結子会社は、市況商品に係る営業活動を行うにあたり、約定残高のキャッシュ・フローを固定化することを目的として、主に商品スワップ等のデリバティブを用いてヘッジを行っており、その一部についてはヘッジ会計を適用しています。詳細は、連結財務諸表注記事項8.「金融商品及び関連する開示 (6)リスク関連、(7)デリバティブ取引及びヘッジ会計」をご参照ください。

 また、予想外の相場変動は、以下に示すように当社及び連結子会社の事業、経営成績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。

・多額の投資を行ってきた金属資源・エネルギー生産事業等で、販売価格の下落により、生産した商品の販売を通じた投下資金の回収が困難になる、あるいは許容しうる価額での当社出資持分の売却が困難になることがあります。

・評価差額をその他の包括利益に認識する資本性金融資産(以下、FVTOCI)に区分するLNGプロジェクト等に対する投資の価値の下落により、当社及び連結子会社の包括利益に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6)為替リスク

 当社及び連結子会社は外国通貨で表示された資産及び負債の換算リスクを負います。また、海外の関係会社に対する投資やFVTOCIに区分する投資は、為替変動によりその価値を減じ、当社の包括利益及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 2026年3月期において、連結損益計算書における当期利益(親会社の所有者に帰属)への影響額は、米ドル/円で1円の変動により41億円、豪ドル/円で1円の変動により21億円と推定しています。詳細は、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (5)2026年3月期連結業績予想」及び「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (4)経営成績に係る検討と分析」をご参照ください。

 当社及び連結子会社は、為替リスクを含む市場リスク管理方針を策定し、さまざまな階層において管理体制を構築しています。特に為替リスクに関しては、各事業本部長及び海外地域本部長は、各本部におけるポジション限度及び損失限度の設定、管理体制等を定めたリスク管理方針を策定し、担当役員の承認を受け、その承認内容に従って管理・報告を行う一義的な責任を負っています。また、取引部署から独立したリスク管理部署において、為替リスクの状況を管理、評価及び分析し、その結果を定期的に担当役員に報告しています。

 当社及び連結子会社は、世界各国で多種多様な営業活動を行っており、所在国通貨以外での売買取引より生じる外貨建金銭債権債務及びファイナンス取引より生じる外貨建長期金銭債権債務等のキャッシュ・フローを固定化することを目的として、主に為替予約や通貨スワップ等のデリバティブ取引を用いてヘッジを行っており、その一部についてはヘッジ会計を適用しています。さらに、当社及び連結子会社は、主に在外営業活動体に対する純投資の為替変動リスクを回避することを目的として、主に外貨建借入金を用いてヘッジを行うとともにヘッジ会計を適用しています。

 詳細は、連結財務諸表注記事項8.「金融商品及び関連する開示 (6)リスク関連、(7)デリバティブ取引及びヘッジ会計」をご参照ください。

 

(7)保有上場株式の株価リスク

 当社及び連結子会社は、事業機会の創出や取引・協業関係の構築・維持・強化を図るため、市場性ある資本性金融資産への投資を行っており、株価リスクを有しています。当連結会計年度末において、当社及び連結子会社はFVTOCIに区分する市場性のある資本性金融資産を9,851億円保有しており、総資産の5.9%に相当します。当社及び連結子会社は、全銘柄を対象に株式ポートフォリオの見直しを定期的に行っていますが、株式市場の価格変動や相場の下落は投資ポートフォリオを毀損し、その他の包括利益の悪化により、当社及び連結子会社の財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 当社及び連結子会社は、株価リスクを含む市場リスク管理方針を策定し、さまざまな階層において管理体制を構築しています。特に株価リスクに関しては、時価総額の増減要因の把握を行うことにより管理しています。

詳細は、連結財務諸表注記事項8.「金融商品及び関連する開示(6)リスク関連」をご参照ください。

 

(8)与信リスク

 当社及び連結子会社は商取引や融資取引のあるさまざまな顧客や事業に係る多額の与信リスクにさらされています。

 当社及び連結子会社は、多数の取引先に後払い条件で商品・サービスを販売し、あるいは販売契約に付随する融資プログラムや顧客の借入に係る支払保証を供与することがあります。当連結会計年度末において当社及び連結子会社の損失評価引当金控除後の流動売上債権等は2兆2,250億円であり、総資産の13.2%を占めています。控除した損失評価引当金残高(流動)は171億円となっています。

 さまざまなプロジェクトにおけるファイナンスのため、回収リスクを伴う多額の貸付や保証を行っています。

そのため、定期的に取引先の状況を確認し、適切な決裁者により承認されたクレジットライン管理を行うと共に、債権等の回収期日経過状況をモニタリングしています。また、必要に応じて取引先に担保等の提供を要求しています。詳細は、連結財務諸表注記事項8.「金融商品及び関連する開示 (6)リスク関連」をご参照ください。

 しかしながら、こうした管理を行ったとしても、当社及び連結子会社における与信管理政策は、与信先の財政状態悪化により発生しうるリスクを完全に排除することはできません。加えて、流動性危機の発生、不動産や株式等の市場価格急落による取引先の支払不能、あるいは企業倒産の増加等によって、当社及び連結子会社の債権回収が困難となる可能性があり、将来の当社及び連結子会社の経営成績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(9)資金調達に関するリスク

 金融市場の混乱や当社格付けの引下げ、あるいは金融機関及び機関投資家の融資及び投資方針の変更は、当社及び連結子会社の資金調達に制約を課すとともに、調達コストを増大させ、当社及び連結子会社の財政状態や流動性に影響を及ぼす可能性があります。

 当社は、10年程度の長期資金を中心とした資金調達を行うと同時に、長期資金の年度別償還額の集中を避けることで借換えリスクの低減を図っています。また、事業展開に伴う資金需要に対する機動的な対応と、当社の有利子負債返済における金融情勢悪化の影響を最小限に抑えるためにも、十分な現金及び現金同等物を保有しています。

資金調達及び格付けについては、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(5)流動性と資金調達の源泉」をご参照ください。

 

(10)オペレーショナルリスク

 当社及び連結子会社は、金属資源、エネルギー、機械・インフラ、化学品、鉄鋼製品、生活産業、次世代・機能推進の各セグメントにおいて、グローバルなネットワークを活用し、多種多様な商品の売買、製造、輸送、ファイナンス等の各種事業を多角的に行っており、さらには資源・インフラ開発プロジェクトの構築、環境・新技術・次世代燃料やウェルネスに関連する事業投資やデジタルを活用した価値創出等の幅広い取組みを展開しています。これらの事業は、火災、爆発、事故、輸出入制限、自然災害等のさまざまな操業上のリスクを伴っており、事故・災害等が発生した場合には、当社及び連結子会社の経営成績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 環境事故が生じると、当社及び連結子会社は資源・エネルギー権益の所有者として、またノンオペレーターとして操業に全く関与していない場合であっても、当該事故への寄与度や過失の有無にかかわらず、清掃費用、環境破壊への賠償、事故被害者への健康・財産被害や休業補償・逸失利益補填等のための損害賠償費用、環境当局からの罰金や補償金等の負担を強いられることで、当社及び連結子会社の経営成績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 当社及び連結子会社は、リスク軽減策・損害防止策を検討するほか、可能かつ妥当な範囲において、事故、災害等に関する保険を付していますが、それらによってもすべての損害を填補し得ない可能性があります。

 

(11)役職員による法令及び社内規定の遵守違反に関するリスク

 当社及び連結子会社は、その規模、業務範囲及び活動領域が広範にわたっていることから、役職員による法令及び社内ルールの遵守も含め、グループ全体で共有すべきインテグリティやコンプライアンスに関する考え方を示す「三井物産グループ行動指針-With Integrity」を2024年6月に改定し、継続的に経営幹部がメッセージを発信し、コンプライアンスに関する職制ライン及び職制外の報告・相談ルートを設置すると共に、スピークアップ文化を醸成し、コンプライアンス違反に対して厳正に対処する等、さまざまな取組みを行っています。詳細は、第4 提出会社の状況 4. コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要「③内部統制システムの整備状況 (d)コンプライアンス体制」をご参照ください。

 しかしながら、このような取組みをもってしても、全ての違法行為を完全に排除することはできず、日本又は外国における貿易・投資規制、独占禁止法、汚職防止法、税法等の法令違反や社内ルールを逸脱した取引が発生した場合には、予測不能な損失や管理不能なリスクにつながり、その内容次第で当社及び連結子会社の事業、社会的信用、経営成績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(12)情報システム及び情報セキュリティに関するリスク

 通信ネットワークのグローバル規模での運用が進展、またサイバー攻撃が全世界的に増加する中、ITシステムの適切な運用と情報価値の把握並びに適切な取扱いが重要です。当社は、情報システムの安全性及び情報セキュリティ強化のため、関連規程を整備し、当社及び連結子会社が保有する情報及び情報システムにおける機密性、完全性及び可用性を適切に確保し、またリスク管理水準を改善するための指針を継続的に示して情報漏洩等のリスクを管理し、通信ネットワーク監視等を通じた外部からの攻撃への対応や非常時を想定した定期的な訓練に努めています。

 しかしながら、予期できない水準の情報システム基盤や通信回線の重大な障害、あるいは経営に関わる機密情報の破壊・窃取が発生する可能性を完全に排除することはできず、この様な場合、業務効率の著しい低下が避けられず、事業継続あるいはビジネスの伸長に困難をきたすことから、当社及び連結子会社の事業、経営成績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。また、可能かつ妥当な範囲において、外部からの攻撃に伴う被害等に関する保険を付していますが、それらによってもすべての損害を填補し得ない可能性があります。

 なお、サイバーセキュリティ、生成AIの活用等に関する議論を踏まえたガバナンス、戦略については、「2. サステナビリティに関する考え方及び取組 (7)情報セキュリティ」をご参照ください。

 

(13)人的資本の制約に関するリスク

 当社及び連結子会社は、「人」こそが持続的な価値創造の源泉であるとの考えのもと、人材の確保と育成、評価、報酬等の人材マネジメントに取り組み、事業の立案・評価及び実行や人員の指揮・監督等にあたる人的資本を投入しています。しかしながら、事業分野や国・地域によっては求められる人材が不足し、事業価値創出機会の逸失や、安定的なオペレーションに支障をきたす可能性があります。事業に対するこうした人的資本の制約は、当社及び連結子会社の事業展開と経営成績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。なお、リスクの対応策を含めた人材戦略に関する当社の状況については「2. サステナビリティに関する考え方及び取組 (8) 人材戦略」をご参照ください。

 

(14)人権に関するリスク

 当社及び連結子会社は、川上から川下まであらゆる機能・サービスを提供しており、世界中で多岐にわたる事業を展開する中で、さまざまなステークホルダーに影響をもたらします。当社及び連結子会社の事業活動が人権への負の影響を引き起こしている、あるいはサプライチェーン等の取引関係を通じて人権侵害を助長していることが明らかになった場合は、レピュテーションリスクに加え、その影響の解消・緩和による追加的費用の発生等によって、経営成績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性や、信用毀損等の影響を受ける可能性があります。

 そのため、自社のみならずサプライチェーンも含めた人権の尊重への取組みが求められていることを認識し、「三井物産グループ行動指針 -With Integrity」においてもあらためてこれを明確化し、グループ各社の経営理念や役職員行動規範にも反映すべく推進していきます。当社及び連結子会社の事業活動に関わる人権への負の影響を特定、評価、防止、軽減するために人権デューデリジェンスを実施するとともに、課題発生時には適切な手続きを通じてその是正・救済に向けた取組みを進めます。また、サプライヤー等の取引先との協働による人権尊重の取組みや、既存の社内プロセスへの人権に関するリスク管理手法の組込み等を通じ、事業活動における人権尊重の一層の強化に取り組んでいます。なお、リスクの対応策を含めた人権に関する当社の状況については「2. サステナビリティに関する考え方及び取組(6) サプライチェーンと人権」をご参照ください。

 

(15)自然災害、テロ・暴動遭遇、感染症等によるリスク

 当社及び連結子会社が事業活動を展開する国や地域において、地震や水害、テロ、感染症、電力不足等が発生した場合には、当社及び連結子会社の事業に影響を及ぼす可能性があります。

 当社及び連結子会社では、災害時事業継続計画(BCP)や災害対策マニュアルをあらかじめ策定するとともに、社員安否確認システムの構築、耐震対策、防災訓練等の対策を講じていますが、全ての被害や影響を完全に排除できるものではなく、当社及び連結子会社の経営成績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

 なお、当連結会計年度末に重要なリスクとして特定したもの以外で、当社及び連結子会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性があると認識している主要なリスクには、以下のようなものがあります。ただし、これらは全てのリスクを網羅したものではありません。

 

・当社固有のリスクではない、一般的なリスク

 

- 世界マクロ経済環境の変化によるリスク

 世界的な、あるいは特定の地域における急速な技術革新や産業構造の変化、これらに対応した経済安全保障や関税等に関する政策変更がもたらす経済情勢の変動は製品・素材の市況、個人消費や設備投資に影響を与える可能性があります。その結果、当社及び連結子会社の商品・サービスに対する需要が変動し、当社及び連結子会社の事業、将来の経営成績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

- 法的規制に関するリスク

 当社及び連結子会社は内外の広範な法令に従い事業活動を展開しています。当社及び連結子会社の事業は、具体的には、各種の商品規制、消費者保護規制、事業及び投資に対する許認可、環境保護規制、外国為替規制、安全保障目的を含む輸出入貿易規制、投資規制、制裁関連法令、各種税法、独占禁止法等の制約の下にあります。また、これらの規制に関しては、法令や規制当局による運用が予告や事業者が受ける不利益に対する補償なしに変更される場合があります。例えば当社及び連結子会社による新興国でのインフラ開発プロジェクトは、十分に整備されていない法基盤の下で遂行されることがあり、包括的な法令体系の欠如や、一貫性のない法令の適用及び解釈、監督当局による規制措置の一方的変更等に対応する費用負担が増大することがあります。また、これらの事業が供給する製品あるいはサービスに賦課される税率、環境規制に係る技術的要件、特定の国・地域における所得税及び関税の税率変更、投資元本及び配当の還流に関する為替規制等の諸法令等について、予想外の変更が行われることがあります。

 当社及び連結子会社は、米国、豪州、ブラジル、チリ、ロシア、中東、モザンビーク等において一連の環境規制の制約を受けていますが、これらの地域における法令は、事業区域の浄化、操業停止あるいは事業終了、重大な環境破壊に対する罰金及び補償金、高額な汚染防止設備の設置、操業方法の変更等を課すことがあります。

 当社及び連結子会社が行う探鉱・開発・採掘事業について、事業権に係る契約の相手方による義務の履行がなされる保証や契約期限到来時に事業権の存続期間が延長される保証は必ずしもありません。また、これら事業に係る規制当局が、金属資源や石油・ガス生産事業における生産量、価格体系、ロイヤリティ、環境保護費用及び借地権等に関する契約条件に関し、一方的な介入あるいは変更を行わない保証はありません。規制当局が一方的に契約条件を変更した場合、あるいは、変更・新設された法令について遵守に対応する費用が増大する場合、当社及び連結子会社の事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、技術・資材調達・資金調達・環境面を含む当局による規制等の変更により、当初の想定より工期が遅延する可能性があります。

 

- 競合リスク

 当社及び連結子会社が提供する商品及びサービスの市場は、概して競争的な環境にあります。他の総合商社をはじめ、各種分野において同様の事業活動を展開する競合他社は、商品によって当社及び連結子会社の内外の顧客に対してより堅固な取引関係を有している場合や、より充実した世界的ネットワーク、特定地域に係る専門知識、広範な海外顧客基盤、金融サービス機能、市場分析能力を有することがありえます。当社及び連結子会社が、顧客の求める革新的かつ総合的なサービスを競争力あるコストにより提供できない場合、市場におけるシェアや顧客との取引関係の喪失につながり、当社及び連結子会社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

- 金利リスク

 当社及び連結子会社は金利変動に係るリスクを有しており、金利変動は営業費用全般、並びに金融資産・負債の価額、とりわけ資本市場及び金融機関借入により調達される負債の価額に影響を及ぼします。金利水準の上昇、特に日本及び米国における上昇は、当社及び連結子会社の経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 当社及び連結子会社の資金調達の状況については、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(5)流動性と資金調達の源泉」及び連結財務諸表注記事項8.「金融商品及び関連する開示」をご参照ください。

 

- 確定給付費用及び確定給付債務に関するリスク

 国内外の国債等の債券や上場株式の価格下落は、当社及び連結子会社の制度資産の価値を減少させます。制度資産の価値の下落あるいは確定給付制度債務の増加は、その他の包括利益及び利益剰余金の悪化により、当社及び連結子会社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 確定給付費用については、4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析「(6)重要な判断を要する会計方針及び見積り」及び連結財務諸表注記事項18.「従業員給付」をご参照ください。

 

- 訴訟及び紛争に関するリスク

世界各地で展開する事業活動において当社及び連結子会社は、訴訟や紛争のリスクにさらされています。また、通常の事業活動において、当社及び連結子会社に対する訴訟その他の紛争が発生し、また訴訟には至らないものの、何らかの請求を受ける可能性があります。

訴訟その他の紛争には不確実性が伴うため、当社及び連結子会社が関与する訴訟その他の紛争の最終的な結果を予測することは不可能です。当社及び連結子会社が、いかなる訴訟その他の紛争にも勝訴し、又は排斥できる保証はなく、また、これらの訴訟その他の紛争が、将来、当社及び連結子会社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性もあります。重要な係争事件については、連結財務諸表注記事項26.「偶発債務 (2)係争事件」をご参照ください。

 

・IFRS会計基準に基づく連結財務諸表の作成にあたっては、経営者の判断の下、一定の前提条件に基づく見積りが必要となる場合があります。この前提条件の置き方等により、当社及び連結子会社の経営成績や財政状態に影響を及ぼすことがあります。詳細は、4「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(6)重要な判断を要する会計方針及び見積り」をご参照ください。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 

 この財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析は、将来のリスク、不確実性及び仮定を伴う予測情報を含んでいます。こうした記述は、現時点で当社が入手している情報を踏まえた仮定、予期及び見解に基づくものであり、3「事業等のリスク」などに記載された事項及びその他の要因により、当社及び連結子会社の実際の業績は、これらの予測情報から予測された内容とは大幅に異なる可能性があります。

 なお、経営上の目標の達成状況については、第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等「(1)中期経営計画の進捗状況」をご参照ください。

 

(1)業績等の概要

①業績

「(4)経営成績に係る検討と分析 ②オペレーティング・セグメント情報」をご参照ください。

②キャッシュ・フロー

「(5)流動性と資金調達の源泉 ⑦キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。

 

 

(2)仕入、成約及び売上の状況

①仕入の状況

各オペレーティング・セグメントにおいて、仕入高と売上高との差額は売上高に比べ僅少であるため、記載は省略しています。

②成約の状況

各オペレーティング・セグメントの成約高と売上高との差額は僅少であるため、記載は省略しています。

③売上の状況

「(4)経営成績に係る検討と分析」及び連結財務諸表注記事項6.「セグメント情報」をご参照ください。

(注)当社グループは、総合商社である当社を中心とした事業活動を展開しており、受注生産形態をとらない事業が多いことから、生産、受注及び販売の状況に替え、仕入、成約及び売上の状況としています。

 

(3)経営者の検討における重要な指標について

 当社及び連結子会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローは、3「事業等のリスク」に述べる各項目の影響を受けますが、当連結会計年度末において当社の経営者は、財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの動向を検討する上で、以下の指標が有用であると考えます。

①売上総利益、持分法による投資損益及び当期利益(親会社の所有者に帰属)

 当社及び連結子会社はさまざまな商品と地域にわたる幅広い事業活動を展開し、そのリスクリターンの形態も仲介取引から金属資源・エネルギーの権益事業まで多岐にわたります。当社及び連結子会社の経営成績及び事業の進捗を把握する上で、オペレーティング・セグメント別の売上総利益、持分法による投資損益及び当期利益(親会社の所有者に帰属)の変動要因に係る分析を重視しています。

②金属資源・エネルギーの価格及び需給の動向

 当社及び連結子会社の経営成績に占める金属資源・エネルギー関連事業の重要性が高いことから、金属資源・エネルギーの市況及び持分生産量は、経営成績の重要な変動要因になります。金属資源・エネルギーの価格及び需給の動向に関する詳細は、以下のとおりです。

 

(a)金属資源

 鉄鋼や非鉄金属は産業の基幹素材であり、世界経済の成長に伴いその原料に対する需要は堅調に推移することが見込まれます。中長期的に、粗鋼生産量は中国で横ばいから減少となるも、インドや東南アジアを中心に右肩上がりで増加し、世界全体でも増加することが見込まれます。また、非鉄金属は産業・社会の低炭素化に向けた電動化や電気自動車・再生可能エネルギーの普及等を背景に、需要が堅調に拡大していくことが見込まれます。供給側では、鉱山操業での資機材・人件費を始めとした開発・生産コストの上昇や、既存鉱山の鉱石の品位低下や埋蔵量の減少が進む一方で、優良未開発案件には限りがあるため、需給は逼迫していく見込みであり、引き続き原料の安定供給が求められます。

 また、社会の持続可能性追求に向け、気候変動対応や人権、生物多様性、サーキュラーエコノミー、水資源や地域社会との共生といった観点を踏まえて、例えば高品位資源やリサイクル原料、低炭素/グリーン素材、バリューチェーン全体でのGHG排出量の削減に寄与する原料へのニーズの高まりなど、原料に対する価値観が変化することにより、金属資源の需給・相場へ影響を及ぼすことが予想されます。

 

(b)エネルギー

 世界的な人口増加・経済成長に伴い、中長期的なエネルギー需要は堅調に推移する見通しです。アジアを中心に従来型エネルギーは当面不可欠との見立ては不変であり、またロシア・ウクライナ情勢に端を発して地政学的リスクが再認識される中、エネルギーの安定供給と低炭素化の両立への社会ニーズが強まっています。

 このような状況下、天然ガス・LNGは、経済合理的なクリーンエネルギーの安定供給に資する現実解として今後ますます重要な役割を担っていくと考えられています。石油についても新興国における底堅い需要が見込まれる一方で、電気自動車の普及、環境規制の強化等による需要減退シナリオも考えられ、今後の市場変化を注視していく必要があります。供給側では、世界的なインフレ・金利上昇に伴う開発·生産コストの上昇、ロシア・ウクライナ情勢などのグローバルな地政学的リスクの高まり、主要国の選挙結果を受けた政策変更、気象等が需給双方に影響を及ぼす可能性があり、エネルギー価格のボラティリティには依然として注意が必要です。

 低炭素化に向けたエネルギートランジションの方向性は不可逆的と言えますが、制度設計や市場形成において国・地域毎に進捗の濃淡があり、時間軸は依然流動的と見られています。今後、再生可能エネルギーの更なる普及、よりクリーンな燃料への転換、モビリティの電動化や水素燃料電池自動車の普及等に伴い、総合エネルギーサービス、次世代燃料など、エネルギーソリューション分野における取組みニーズが拡大する見通しで、こうした取組みの進捗が将来的なエネルギー構成に及ぼす影響を見極めていく必要があります。

 

③キャッシュ・フロー水準、資本効率及び財務レバレッジ

 中期経営計画2026(2023年5月公表)において、基礎営業キャッシュ・フローを、キャッシュ創出力を測定し資金再配分の原資を示す重要な経営指標としています。

 当社は、資本効率と資金調達に係わる安定性の観点から、株主資本の水準及び、親会社所有者帰属持分利益率(ROE)並びに負債・資本構成の方針を定期的に策定し、その履行状況を検証しています。同時に、個々の事業における環境の悪化に起因する想定損失の最大額に対するリスクバッファーの観点から株主資本の規模を検証しているほか、既存の有利子負債の再調達に加え、債務格付けの維持向上と資金調達上の安定性確保の観点から、財務レバレッジに留意しています。当社の資本管理については連結財務諸表注記事項8.「金融商品及び関連する開示(6)リスク関連」を、財務戦略については「(5)流動性と資金調達の源泉」をご参照ください。

*連結財政状態計算書の親会社の所有者に帰属する持分合計を指します。

 

(4)経営成績に係る検討と分析

① 連結損益計算書項目

(単位:億円)

当期

前期

増減

収益

146,626

133,249

+13,377

売上総利益

12,884

13,197

△313

販売費及び一般管理費

△8,877

△7,943

△934

その他の

収益・費用

有価証券損益

1,163

1,981

△818

固定資産評価損益

△358

△670

+312

固定資産処分損益

580

162

+418

雑損益

317

313

+4

金融

収益・費用

受取利息

920

643

+277

受取配当金

1,843

2,107

△264

支払利息

△2,060

△1,681

△379

持分法による投資損益

4,941

4,916

+25

法人所得税

△2,137

△2,219

+82

当期利益

9,216

10,805

△1,589

当期利益(親会社の所有者に帰属)

9,003

10,637

△1,634

(注)四捨五入差異により縦計・横計が合わないことがあります(以下同様)。

 

収益

・収益は14兆6,626億円となり前期の13兆3,249億円から1兆3,377億円の増加となりました。

 

売上総利益

・主に金属資源セグメントで減益となった一方、化学品セグメントで増益となりました。

 

販売費及び一般管理費

・販売費及び一般管理費の費目別内訳は以下のとおりです。

・当期において、退職給付制度の改定に伴い327億円の費用を人件費に計上しました。

 

(単位:億円)

 

費目別内訳

 

当期

 

前期

 

増減額

人件費

 

△4,991

 

△4,371

 

△620

福利厚生費

 

△163

 

△159

 

△4

旅費交通費

 

△341

 

△320

 

△21

交際費会議費

 

△80

 

△75

 

△5

通信情報費

 

△717

 

△620

 

△97

借地借家料

 

△188

 

△139

 

△49

減価償却費

 

△593

 

△505

 

△88

租税公課

 

△152

 

△159

 

+7

損失評価引当金繰入額

 

△101

 

△90

 

△11

諸雑費

 

△1,551

 

△1,505

 

△46

合計

 

△8,877

 

△7,943

 

△934

* △は負担増

・変動の内訳をオペレーティング・セグメント別に見ると以下のとおりです。

 

 

 

 

(単位:億円)

 

オペレーティング

・セグメント

 

当期

 

前期

 

増減額

金属資源

 

△370

 

△359

 

△11

エネルギー

 

△710

 

△586

 

△124

機械・インフラ

 

△1,810

 

△1,818

 

+8

化学品

 

△1,589

 

△1,547

 

△42

鉄鋼製品

 

△360

 

△321

 

△39

生活産業

 

△2,019

 

△1,731

 

△288

次世代・機能推進

 

△985

 

△890

 

△95

その他/調整・消去

 

△1,034

 

△691

 

△343

合計

 

△8,877

 

△7,943

 

△934

* △は負担増

 

その他の収益・費用

有価証券損益:

・当期は、主に機械・インフラセグメント、化学品セグメントで有価証券に関連する損益を計上しました。

・前期は、主に機械・インフラセグメント、生活産業セグメント、エネルギーセグメント、次世代・機能推進セグメントで有価証券に関連する損益を計上しました。

固定資産評価損益:

・当期は、主に化学品セグメント、エネルギーセグメントで固定資産評価損を計上しました。

・前期は、主にエネルギーセグメント、機械・インフラセグメントで固定資産評価損を計上しました。

固定資産処分損益:

・当期及び前期において、主に次世代・機能推進セグメントで固定資産売却益を計上しました。

雑損益:

・当期は、主にエネルギーセグメントで引当金や為替に関する損益を計上しました。

・前期は、主にエネルギーセグメントで引当金取崩益や事業売却益を計上しました。一方、生活産業セグメントでオプション評価損を計上しました。

 

金融収益・費用

受取配当金:

・主に金属資源セグメントで減益となりました。

 

持分法による投資損益

・主に金属資源セグメントで増益となりました。

 

法人所得税

・法人所得税は2,137億円の負担となり、前期の2,219億円の負担から82億円の負担減となりました。また、当期の実効税率は18.8%となり、前期の17.0%から1.8ポイント上昇しました。

 

当期利益(親会社の所有者に帰属)

・上記の結果、前期から1,634億円減益の9,003億円となりました。

 

 

② オペレーティング・セグメント情報

 オペレーティング・セグメント別の経営成績に係る変動要因の分析は以下のとおりです。

 なお、「その他」には、法人所得税が含まれますが、法人所得税前利益の各勘定科目の主な増減要因の説明には、法人所得税の影響は原則として含まれていません。

 

金属資源

(単位:億円)

当期

前期

増減

主な増減要因

当期利益

(親会社の所有者に帰属)

2,854

3,351

△497

 

 

売上総利益

2,639

3,421

△782

・豪州鉄鉱石事業△498(鉄鉱石価格下落)

・Mitsui Resources△323(原料炭価格下落)

 

持分法による投資損益

820

750

+70

・Oriente Copper Netherlands*1+215(前期減損損失*2反動+122、前期チリ新鉱業税成立反動+63他)

・豪州鉄鉱石事業△64(鉄鉱石価格下落)

・オルドス電力冶金△33(合金鉄・化学品価格下落)

 

受取配当金

639

912

△273

・Vale配当金減△246(当期350、前期596)

 

販売費及び一般管理費

△370

△359

△11

 

 

その他

△874

△1,373

+499

・豪州鉄鉱石事業利息収支増益+63

*1 チリ銅鉱山事業会社Anglo American Surを保有するInversiones Mineras Becruxへの投資会社

*2 前期において、Anglo American Surにおける鉱石性状変化並びに生産計画に関わる見積りの変更に伴い、持分法損失を122億円計上

 

鉄鉱石の価格変動による影響及び当社持分生産量

2026年3月期において、鉄鉱石価格の変動が、当社鉄鉱石事業の販売収入の変化を経由して連結損益計算書における当期利益(親会社の所有者に帰属)に及ぼす影響度は、鉄鉱石US$1/トンあたりの価格変動により31億円と概算しています。

当連結会計年度における当社鉄鉱石関連の権益見合い生産量は62.0百万トン(一般社外のVale権益見合い生産量21.9百万トン含む)です。上記の影響額は、当連結会計年度末時点で、当社が保有する権益見合いに対して、2026年3月期の出荷量の増減を織り込み、一定の米ドル及びその他関連通貨の為替相場などを前提条件とした上で算出したものです。なお、一般的に、豪ドルなどの資源産出国の通貨は、輸出商品の市況に連動する傾向があり、この変動により当社連結子会社及び持分法適用会社の現地通貨建ての売上総利益は影響を受けることがあります。
 

 

エネルギー

(単位:億円)

当期

前期

増減

主な増減要因

当期利益

(親会社の所有者に帰属)

1,735

2,817

△1,082

 

 

売上総利益

1,900

1,958

△58

・LNG物流減益

・MOEX North America△37

(前期Kaikias油田事業売却に伴う減益)

・Mitsui & Co. Energy Trading Singapore△36

(前期好調反動)

・三井物産エネルギー△31(燃料油価格下落)

・Mitsui E&P Australia+195(数量増)

・Mitsui E&P Italia B+64(コスト減、数量増)

・MEP Texas Holdings+36(コスト減、数量増)

 

持分法による投資損益

571

681

△110

・Japan Australia LNG(MIMI)減益

(数量減、ガス価格下落)

・Mitsui E&P Mozambique Area 1 △35

(金融資産に係る引当金)

・海外エネルギー関連△31

・Arctic LNG 2 プロジェクト関連

 

受取配当金

857

927

△70

・LNGプロジェクト4案件*1△71

(当期849、前期920)

 

販売費及び一般管理費

△710

△586

△124

・Arctic LNG 2 プロジェクト関連

 

その他

△883

△163

△720

・資産除去債務関連△521(前期取崩益反動△456

(複数連結子会社)、三井エネルギー資源開発当期

△103、Mitsui E&P Australia当期+38)

・Mitsui LNG Nederland*2△373

(前期外貨換算調整勘定実現益反動)

・前期Kaikias油田事業売却益反動△151

 (売却益△118、外貨換算調整勘定実現益△33)

・Mitsui E&P Middle East減損損失*3△49

・三井エネルギー資源開発*4△40(受取利息減少)

・海外エネルギー関連△37

・Mitsui E&P Australia△36(探鉱費)

・MyPower△13(前期発電資産売却益反動△99、

当期発電資産売却益+82)

・前期Mitsui E&P Italia B減損損失反動*5+236

・LNG関連為替差損益+161

・前期Mitsui E&P South Texas減損損失反動*6+123

・Arctic LNG 2 プロジェクト関連

・三井エネルギー資源開発*4+51

(前期地熱蒸気噴出関連費用の反動)

・国内エネルギー関連+36

・三井物産エネルギー+33

 (燃料油価格激変緩和補助金)

*1 サハリン、ADNOC LNG、オマーンLNG 及びQatarEnergy LNG N(3)

*2 2022年3月期に事業終結したカタールガス1LNG事業投資のための特別目的会社

*3 Mitsui E&P Middle Eastが保有するオマーンにおける原油生産事業において油価下落に起因し固定資産評価損49億円を計上

*4 2025年1月1日付三井石油開発より社名変更

*5 前期にMitsui E&P Italia Bが保有するTempa Rossa油田事業において、可採埋蔵量の減少に起因し固定資産評価損236億円を計上

*6 前期にMitsui E&P South Texasが保有するSouth Texas Vaqueroシェールガス事業において、ガス価格の下落に起因し固定資産評価損123億円を計上

原油·ガスの価格変動による影響及び当社持分生産量

2026年3月期において、原油価格の変動が当社石油·ガス開発事業の販売収入の変化を経由して連結損益計算書における当期利益(親会社の所有者に帰属)に及ぼす影響度はUS$1/バレルあたり24億円と推定しています。

金属資源と同様に、実際の経営成績は、各石油·ガス開発事業における実際の生産量及び生産費用、為替相場の変動などにより影響を受けます。

また、当社の石油·ガスの持分生産量は、2025年3月期において日量205千バレル(ガスは石油換算、換算係数は石油1バレル=天然ガス5,800立方フィート、当社連結子会社·持分法適用会社·非連結先の当社権益保有見合い)となりました。

 

機械・インフラ

(単位:億円)

当期

前期

増減

主な増減要因

当期利益

(親会社の所有者に帰属)

2,329

2,487

△158

 

 

売上総利益

2,001

2,211

△210

・前期BAF関連会社化*1△276

・中南米自動車関連事業減益△39(為替影響)

・中南米産機・建機関連事業増益+58(販売好調)

・Taylor & Martin(新規取得)

 

持分法による投資損益

2,256

2,304

△48

・MBK USA Commercial Vehicles△122

(レンタル需要減、支払利息増)

・MPIC△72(前期一過性評価益反動*2△99他)

・前期International Power(Australia)

 Holdings売却に伴う減益*3△45

・Mainstream Renewable Power+90

(前期固定資産減損損失反動*4+151、当期固定資産

減損損失*5△55他)

・北米自動車関連会社増益

・タイ発電事業+36(順次完工他)

・岡本工作機械(新規取得)

 

受取配当金

167

71

+96

・欧州自動車事業配当増

 

販売費及び一般管理費

△1,810

△1,818

+8

・前期BAF関連会社化*1+239

・海底油田設備設置支援船事業AKOFS引当*6△54

・Taylor & Martin(新規取得)

 

その他

△285

△281

△4

・前期MRCE*7売却益反動△644

・前期International Power(Australia)

Holdings売却益反動△87

・Paiton事業売却に伴う減益△83

・産機・建機事業評価損△74

・前期カナダOntario火力発電事業売却益反動△46

・インド発電事業△45(為替評価損失)

・自動車販売事業売却損△43

・前期BAF有価証券関連損益反動*1△41

・Mainstream Renewable Power△30

 (当期減損損失*8△159、前期減損損失反動9+129)

・Paiton事業売却益+545

・VLI株式売却関連益*10+405

・ブラジル旅客鉄道事業*11+235

(前期反動+305、当期△70)

・豪州Hazelwood炭鉱閉鎖事業+55

(前期引当反動*12+57他)

・再生可能エネルギー発電事業関連+42

・中東発電事業売却益+30

 

*1 前第2四半期におけるBussan Auto Financeの関連会社化に伴い、各勘定科目で生じる損益の反動

*2 前期において、フィリピン総合インフラ会社Metro Pacific Investments Corporation株式取得に伴い、一過性評価益等を99億円計上

*3 前期に売却完了。当期において取込益が発生しないことに伴い、前期比減益となるもの

*4 前期において、主にチリ事業における固定資産の減損として、持分法損失を151億円計上

*5 当期において、チリ事業に関して想定を下回る操業実績継続を背景にした事業環境の不透明性の継続を織り込み、持分法損失を55億円計上

*6 当期において、一部保有船に関する長期貸付金等の回収可能性を見直し、引当金54億円を計上

*7 Mitsui Rail Capital Europe

*8 当期において、外部事業環境に起因した新規案件開発遅延や開発ポートフォリオの選択・集中を主因に有価証券評価損を159億円計上

*9 前期において、金利・開発コスト上昇を背景にした新規案件開発遅延やポートフォリオ組み替えを主因に有価証券評価損を129億円計上

*10 保有していた発行済株式20%の内、持分10%の売却に伴う売却益と残存持分10%における評価益の合計値

*11 前期において、固定資産評価損195億円及び繰延税金資産の取崩損126億円を計上。また、当期において、最新の見積りに基づき固定資産評価損34億円を計上

*12 前期において、炭鉱閉鎖費用見直しに伴う引当を追加で計上

 

化学品

(単位:億円)

当期

前期

増減

主な増減要因

当期利益

(親会社の所有者に帰属)

759

392

+367

 

 

売上総利益

2,564

2,083

+481

・MMTX+114(販売価格上昇、原料価格下落)

・FVTPL関連益+93(Ceva、Eu Yan Sang)

・Novus International+60(販売好調)

・Mitsui AgriScience International+42

 (欧州農薬需要増)

 

持分法による投資損益

231

212

+19

 

 

受取配当金

33

46

△13

 

 

販売費及び一般管理費

△1,589

△1,547

△42

 

 

その他

△480

△402

△78

・海外事業に関わる固定資産減損損失を事業部にて

計上△132

・前期Thorne HealthTech売却益反動△115

・海外事業に関わる引当金△43

・物産フードサイエンス売却益+173

・Hexagon Composites一部売却+54

 

鉄鋼製品

(単位:億円)

当期

前期

増減

主な増減要因

当期利益

(親会社の所有者に帰属)

132

112

+20

 

 

売上総利益

478

435

+43

・STATS+34(前期2Q連結化*、中東事業好調)

・現地法人+30(マージン改善)

 

持分法による投資損益

212

172

+40

・Gestamp+52(前期減損損失反動+41)

 

受取配当金

36

36

0

 

 

販売費及び一般管理費

△360

△321

△39

 

 

その他

△234

△210

△24

 

* 前第2四半期に連結化したため、取込期間の相違に起因する増益

生活産業

(単位:億円)

当期

前期

増減

主な増減要因

当期利益

(親会社の所有者に帰属)

537

941

△404

 

 

売上総利益

1,924

1,853

+71

・ビギホールディングス子会社化+210

・United Grain Corporation+38(取扱数量増)

・コーヒートレーディング△209

 (契約公正価値評価損、為替影響)

 

持分法による投資損益

594

595

△1

・WILSEY FOODS△111

 (前期Ventura Foods一部事業売却益反動)

・IHH Healthcare+63(患者数増、為替影響)

 

受取配当金

61

72

△11

 

 

販売費及び一般管理費

△2,019

△1,731

△288

・ビギホールディングス子会社化△196

 

その他

△23

152

△175

・前期エームサービス公正価値評価益反動*1△434

・前期RGF Staffing Delaware売却益反動△113

・MCL*2公正価値評価△42

・新規投資に係る金利負担増△35

・Alvotech評価損△33

・R-Pharmプットオプション*3+253

(当期124、前期△129)

・XINGU AGRI+101(外貨換算調整勘定実現益)

・コーヒートレーディング+55(為替ヘッジ損益)

*1 エームサービスの持分法適用会社から連結子会社への区分変更に伴い生じた既存持分の再評価益

*2 2019年3月期に連結対象外化したMultigrain Comercio Ltda.の公正価値評価損益

*3 R-Pharmに係るプットオプションの公正価値評価損益

 

次世代・機能推進

(単位:億円)

当期

前期

増減

主な増減要因

当期利益

(親会社の所有者に帰属)

873

538

+335

 

 

売上総利益

1,344

1,184

+160

・本店事業部トレーディング増益(商品価格要因)

・三井物産アセットマネジメント・ホールディングス+32(運用資産取得報酬)

・三井物産都市開発△33(物件売却益減少)

 

持分法による投資損益

251

197

+54

 

 

受取配当金

37

32

+5

 

 

販売費及び一般管理費

△985

△890

△95

・Mitsui Bussan Commodities△34

 

その他

226

15

+211

・国内賃貸用不動産一部売却益+511

・プラスオートメーション公正価値評価益*1+42

・国内土地売却益+32

・本店事業部トレーディング減益(為替要因)

・前期アルティウスリンク公正価値評価反動*2△89

・米国不動産事業金利資産化取崩し△48

*1 当期において、プラスオートメーションは第三者割当増資を実行し、当社持分が希釈化。希釈化により生じた連結子会社から持分法適用会社への区分異動に伴う当社持分の公正価値評価益

*2 KDDIエボルバとりらいあコミュニケーションズの経営統合に伴い発生した、旧りらいあコミュニケーションズ当社持分に関わる公正価値評価益

 

(5)流動性と資金調達の源泉

①会計基準に基づかない財務指標について

(a)現預金差引後の有利子負債比率(ネットDER)

 この流動性と資金調達の源泉の項目を含めて、本報告書では現預金差引後の有利子負債比率(ネットDER)に言及しています。当社は「ネット有利子負債」を株主資本(親会社の所有者に帰属する持分合計)で除した比率を「ネットDER」と呼んでいます。当社は「ネット有利子負債」を以下のとおり定義して、下表のとおり算出しています。

• 短期債務及び長期債務の合計よりリース負債を除外し、有利子負債を算出

• 有利子負債から現金及び現金同等物、定期預金(3ヵ月超1年以内)を控除した金額を「ネット有利子負債」とする

 当社の経営者は、債務返済能力と株主資本利益率(ROE)向上のために有利子負債と株主資本の関係を検討する目的から、ネットDERを財務諸表利用者にとって有益な指標と考えており、下表のとおり「ネット有利子負債」及び「ネットDER」を算出しています。

 

(単位:億円)

当期末

前期末

短期債務

1,639

2,440

長期債務

46,774

45,321

長短債務合計

48,413

47,761

(控除)リース負債

△5,314

△4,753

有利子負債合計

43,099

43,008

(控除)現金及び現金同等物、定期預金(3ヵ月超1年以内)

△9,798

△9,027

ネット有利子負債

33,301

33,981

株主資本(親会社の所有者に帰属する持分合計)

75,466

75,418

ネットDER(倍)

0.44

0.45

 

(b)株主還元後のキャッシュ・フロー

 当社の経営者は、財務基盤の維持・向上において、株主還元後のキャッシュ・フローを有用な指標と考えています。株主還元後のキャッシュ・フローに関しては、⑤「投融資と財務政策」をご参照ください。

 

②資金調達の基本方針

 当社の経営者は、円滑な事業活動に必要なレベルの流動性の確保と財務の健全性・安定性維持を資金調達の基本方針としており、主として本邦生保、銀行等からの長期借入金や社債の発行等により10年程度の長期資金を中心とした資金調達を行っています。同時に、長期資金の年度別償還額の集中を避けることで借り換えリスクの低減を図っています。さらに、プロジェクト案件等では政府系金融機関からの借入やプロジェクトファイナンスも活用しています。

100%子会社については原則として銀行などの外部からの資金調達を行わず、金融子会社、現地法人などの資金調達拠点を通じたキャッシュ・マネジメント・サービスの活用により、資金調達の一元化と資金効率化、流動性の確保を図っています。結果として当連結会計年度末において有利子負債の5分の4程度が当社並びに資金調達拠点による調達となっています。

 また、事業展開に伴う資金需要に対する機動的な対応と、当社の有利子負債返済における金融情勢悪化の影響を最小限に抑えるためにも、十分な現金及び現金同等物を保有しています。現金及び現金同等物の保有額については厳密な目標水準を定めていませんが、金融情勢などを勘案しつつ、安全性並びに流動性の高い短期金融商品で運用しています。

 

③資金調達手段

 当社は、上記の当社資金調達の基本方針に則り、直接金融または間接金融の多様な手段の中から、その時々の市場環境も考慮したうえで当社にとって有利な手段を機動的に選択し、資金調達を行っています。

 当社は、内外金融機関との間で長期間にわたって築き上げてきた幅広く良好な関係に基づき、長期借入を中心に必要資金を調達しています。また、国際協力銀行などの政府系金融機関からも資金調達を行っており、プロジェクト案件ではプロジェクトファイナンス等も活用して必要資金を調達しています。

 これに加えて、当社では2,000億円の社債発行登録枠、コマーシャルペーパー発行枠、並びにユーロ・ミディアム・ターム・ノート発行プログラムという直接金融の調達手段も保有しており、市場環境に応じて有利な条件での資金調達を行っています。当連結会計年度末における(短期社債除く)国内社債及びユーロ・ミディアム・ターム・ノートと海外社債の発行残高は、それぞれ2,293億円及び2,559億円となっています。また海外での短期の資金調達手段として、米国三井物産による米国コマーシャルペーパープログラムとMitsui & Co. Financial Services(Europe)によるユーロコマーシャルペーパープログラムを保有しており、それぞれ時機を見て活用しています。なお、当社は長期かつ安定的な資金調達を一義としており、コマーシャルペーパーや短期借入金等に資金調達を依存していません。その結果として、当連結会計年度末における一年以内に返済予定の有利子負債が有利子負債全体に占める比率は、16.3%となりました。

 当社及び一部の連結子会社は、流動性の確保・維持のため、金融機関に対してコミットメント・フィーを支払い、信用枠(コミットメントライン)を設定しています。当社は、国内外の主要銀行と90億米ドル相当のコミットメントラインを締結しています。

 有利子負債の大半は円建て並びに米ドル建てでの調達によるものです。また、資産側の金利・通貨属性を考慮した上で、負債の金利条件や通貨を変換するために適宜、金利スワップや通貨スワップ、為替予約を締結しています。金利スワップ考慮後の有利子負債における固定金利比率は、現在の当社の資産と負債の状況に見合った水準と認識しています。

 これらのデリバティブ取引に関しては、連結財務諸表注記事項8.「金融商品及び関連する開示」をご参照ください。また、デリバティブ関連の流動性分析については、連結財務諸表注記事項15.「金融債務及び営業債務等に関する開示」をご参照ください。

 

格付け

  当社は、円滑な資金調達を行うため株式会社格付投資情報センター(R&I)、ムーディーズ・ジャパン株式会社(Moody's)、S&P グローバル・レーティング・ジャパン株式会社(S&P)の3社から格付けを取得しています。2025年5月31日現在の格付けは下記のとおりです。

 

R&I

Moody's

S&P

長期(見通し)

AA(安定的)

A3(安定的)

A(安定的)

短期

a-1+

P-2

A-1

 

 当社としては引き続き健全な財務基盤を維持し、格付けの維持・向上に尽力していく方針です。

なお、格付けは当社からの情報あるいは格付会社が信頼できるとする情報に基づく各格付会社自身の判断による信用リスクの分析です。格付けは売買・保有の推奨ではなく、また格付会社によりいつでも変更・取り消しされる可能性があります。また格付け基準も格付会社毎に異なります。

 

④流動性の状況

 当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、9,774億円となりました。この現金及び現金同等物の半分程度は円建てであり、当連結会計年度末の1年以内に返済予定の有利子負債7,025億円の返済に十分な水準であることに加え、当社は機動的な資金の引き出しが可能なコミットメントラインを確保しています。

 当連結会計年度の世界経済は、2024年中は米国がけん引する形で緩やかに回復しましたが、2025年に入ってから米国新政権による関税引き上げや今後の政策の不確実性の高まりなどを受けて米国経済に変調が現れ始め、中国も低調な動きが続いたことなどから、全体として減速感が出てきました。このような状況下、当社は資金調達の基本方針に則り、金融機関との長期にわたる良好な関係や公的金融機関による各種施策、社債発行登録枠等を活用して必要資金の調達を着実に実行しました。

 上述資金調達実行の結果、当連結会計年度末における有利子負債は4兆3,099億円(前連結会計年度末比91億円増)となりました。このうち、4,200億円は劣後特約付シンジケートローンで、格付会社は、残高の50%である2,100億円を資本と同等に扱っています。また、当連結会計年度末の有利子負債の返済年限別内訳は次のとおりです。当連結会計年度末の短期債務及び長期債務の内訳と債務残高の利率については、連結財務諸表注記事項15.「金融債務及び営業債務等に関する開示」をご参照ください。

 

 

返済年限

1年以内

1年超

2年以内

2年超

3年以内

3年超

4年以内

4年超

5年以内

5年超

合計

金額(億円)

7,025

2,899

4,137

5,254

5,942

17,842

43,099

0102010_025.png

 

 当連結会計年度末の株主資本(親会社の所有者に帰属する持分合計)は7兆5,466億円となり前連結会計年度末比で48億円増加しました。ネット有利子負債は3兆3,301億円となり同680億円減少、ネットDERは前連結会計年度末の0.45倍から0.44倍へ0.01ポイント低下しました。

 また流動比率は、前連結会計年度末の148.2%に対し当連結会計年度末は155.6%となっています。

以上のような数値、及び資金調達環境から判断すると、当社の財務の健全性は引き続き確保されており、中期経営計画に沿った投融資を含む当社の円滑な事業活動を行う上で、現時点で大きな支障はないと認識しています。

当社及び連結子会社は、主として第三者及び関連当事者のために、各種の支払保証を行っていますが、これらの保証において当社及び連結子会社の流動性に実質的な影響を及ぼすものはありません。将来の契約履行義務並びに保証等については連結財務諸表注記事項26.「偶発債務」をご参照ください。

 当社及び連結子会社は、個別プロジェクト案件等に対するノンリコースファイナンスなどを除き、金融機関との重要な金融取引において、期限の利益喪失となり得る財務比率制限、担保提供制限、追加債務負担制限、利益処分の制限等の財務制限条項を含む契約を締結しないことを基本方針としていることもあり、これらの財務制限条項において重要なものはありません。

 連結子会社や持分法適用会社からの配当受取に関しては、その配当の有無が当社の流動性に大きな影響を与えるという状況にはないと認識しています。また、当該連結子会社及び持分法適用会社に適用される現地法制に照らして適切な純資産や配当可能利益がある限り、配当等による資金の受領を制限する契約または法制上の制限として重要なものはありません(一般的な源泉課税並びに現地税法に基づくその他の税金を除く)。

 なお、当社及び連結子会社は、翌連結会計年度において、確定給付型年金制度に22億円拠出する見込みです。

 

⑤投融資と財務政策

 当連結会計年度の基礎営業キャッシュ・フローは約1兆280億円の獲得となり、これに資産リサイクルにより獲得した約6,010億円と合わせて約1兆6,290億円のキャッシュ・インとなりました。一方、次世代・機能推進セグメントにおける米国不動産事業、生活産業セグメントにおけるインドの大手ブロイラー事業者であるSneha、機械・インフラセグメントにおける米国トラックオークション会社Taylor & Martin等、投融資*1は約7,650億円となり、総額約6,920億円の株主還元を加味すると、株主還元後キャッシュ・フロー*2は約1,720億円の黒字となりました。

 当社は、再現性の高いキャッシュ創出力と強固な財務基盤を維持しています。経営の選択肢を広く確保し、さまざまなシナリオに柔軟に対応しながら、投資と株主還元のバランスを考慮した最適な資金配分を実現していきます。当連結会計年度のキャッシュ・フロー詳細については、後述の「⑦キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。

*1 定期預金の増減を除外した投資キャッシュ・フローに一部非支配持分からの取得に伴う財務キャッシュ・フローを足したもの

*2 運転資本及び定期預金の増減の影響を除外したフリー・キャッシュ・フロー

0102010_026.png

 既存の債務からの再調達については、前述の「②資金調達の基本方針」、及び「③資金調達手段」をご参照ください。

 

 

⑥資産及び負債並びに資本

(単位:億円)

2025年3月末

2024年3月末

増減

総資産

168,115

168,995

△880

 

流動資産

56,869

57,681

△812

 

非流動資産

111,246

111,314

△68

流動負債

36,542

38,915

△2,373

非流動負債

53,947

52,380

+1,567

親会社の所有者に帰属する持分合計

75,466

75,418

+48

 

資産

流動資産:

(単位:億円)

2025年3月末

2024年3月末

増減

主な増減要因

流動資産

56,869

57,681

△812

 

現金及び現金同等物

9,774

8,982

+792

 

営業債権及びその他の債権

22,250

22,167

+83

 

その他の金融資産

9,391

11,401

△2,010

・(エネルギー、コーポレート、化学

品、機械・インフラ)

未収入金減少

・(コーポレート、エネルギー)

差入証拠金減少

棚卸資産

9,605

9,657

△52

 

前渡金

4,310

3,681

+629

・(化学品、機械・インフラ)

取扱数量増加

未収法人所得税

234

494

△260

 

その他の流動資産

1,307

1,298

+9

 

 

 

非流動資産:

(単位:億円)

2025年3月末

2024年3月末

増減

主な増減要因

非流動資産

111,246

111,314

△68

 

持分法適用会社に対する投資

49,730

48,700

+1,030

・持分法による投資損益見合い+4,941

・Sneha Farms

・Mitsui E&P Mozambique増資+324

・米国不動産+278

・Eu Yan Sang再出資+240

・MTC Business Private+208

・国内データセンター取得+178

・持分法適用会社からの受取配当

 △3,815

・為替変動△841

・Paiton事業売却△764

・VLI一部売却△390

・Mainstream Renewable Power減損損失

 △159

・Hexagon Composites一部売却△123

・三井ガス傘下事業会社減資△102

その他の投資

21,911

23,199

△1,288

・FVTOCI公正価値評価△1,488

・リクルート△168

・Alvotech転換社債△136

・BIPROGY△112

・VLI区分異動+530

・FVTPL公正価値評価+252

・Hexagon Composites区分異動+113

営業債権及びその他の債権

3,072

2,866

+206

・(機械・インフラ)貸付金非流動化

その他の金融資産

2,226

2,108

+118

・(機械・インフラ)区分異動他

有形固定資産

24,696

24,015

+681

・LNG船+503

・ビギホールディングス子会社化+220

・Tatonka+198

 (うち、為替変動△12)

・石油・ガス生産事業△476

 (うち、為替変動△85)

・米国不動産△179

 (うち、為替変動△6)

投資不動産

2,123

2,823

△700

・XINGU AGRI△330

・国内賃貸用不動産一部売却

無形資産

5,054

4,582

+472

・Taylor & Martin取得+390

・三井物産サプライチェーン・ソリューションズ取得+350

繰延税金資産

943

1,081

△138

 

その他の非流動資産

1,490

1,940

△450

・年金関連資産

・LNGプロジェクトなどの公正価値測定で用いている原油価格の前提は、足元の市況水準と、複数の第三者機関の見通しを踏まえて決定しています。ブレント原油1バレルあたり直近の75米ドルから短期間で70米ドルに下落し、その後中長期的に75米ドルで推移する前提としています。

 

 

 2025年3月末及び2024年3月末における持分法適用会社に対する投資をオペレーティング・セグメント別に見ると以下のとおりです。

(単位:億円)

2025年3月末

2024年3月末

増減

金属資源

5,440

5,138

+302

エネルギー

6,869

6,507

+362

機械・インフラ

16,763

17,771

△1,008

化学品

3,467

3,295

+172

鉄鋼製品

3,514

3,564

△50

生活産業

9,500

8,883

+617

次世代・機能推進

4,180

3,550

+630

その他/調整・消去

△3

△8

+5

連結合計

49,730

48,700

+1,030

 

 2025年3月末及び2024年3月末における有形固定資産をオペレーティング・セグメント別に見ると以下のとおりです。

(単位:億円)

2025年3月末

2024年3月末

増減

金属資源

5,636

5,745

△109

エネルギー

8,469

7,787

+682

機械・インフラ

1,798

1,807

△9

化学品

2,913

2,956

△43

鉄鋼製品

250

200

+50

生活産業

2,492

2,290

+202

次世代・機能推進

1,300

1,350

△50

その他/調整・消去

1,838

1,880

△42

連結合計

24,696

24,015

+681

 

 2025年3月末及び2024年3月末におけるオペレーティング・リースに供されている有形固定資産の内訳については、連結財務諸表注記事項9.「リース」をご参照ください。

 

 

負債

(単位:億円)

2025年3月末

2024年3月末

増減

主な増減要因

流動負債

36,542

38,915

△2,373

 

短期債務

1,639

2,440

△801

 

1年以内に返済予定の長期債務

6,297

7,231

△934

 

営業債務及びその他の債務

16,757

16,470

+287

・(エネルギー、生活産業)

 買掛金の増加

その他の金融負債

6,539

7,375

△836

・(コーポレート、機械・インフラ、

 金属資源、エネルギー)

未払法人所得税

356

422

△66

 

前受金

3,675

3,188

+487

・(機械・インフラ)

引当金

707

1,238

△531

・資産除去債務関連

その他の流動負債

573

552

+21

 

非流動負債

53,947

52,380

+1,567

 

長期債務(1年以内返済予定分を除く)

40,477

38,090

+2,387

・LNG船リース負債増加

その他の金融負債

3,187

3,419

△232

 

退職給付に係る負債

419

439

△20

 

引当金

2,586

2,616

△30

 

繰延税金負債

6,828

7,458

△630

 

その他の非流動負債

450

357

+93

 

 

資本

(単位:億円)

2025年3月末

2024年3月末

増減

主な増減要因

資本金

3,434

3,431

+3

 

資本剰余金

4,077

3,919

+158

 

利益剰余金

58,011

55,517

+2,494

 

その他の資本の構成要素

10,736

13,238

△2,502

 

(内訳)

 

 

 

 

FVTOCIの金融資産

1,410

2,656

△1,246

 

外貨換算調整勘定

9,227

10,904

△1,677

・米ドル△1,053

(25/3 149.52←24/3 151.41円/USD)

・豪ドル△636

(25/3 93.97←24/3 98.61円/AUD)

キャッシュ・フロー・ヘッジ

99

△321

+420

 

自己株式

△792

△686

△106

・自己株式取得△4,000

・自己株式消却+3,869

親会社の所有者に帰属する

持分合計

75,466

75,418

+48

 

非支配持分

2,160

2,281

△121

 

 

⑦キャッシュ・フローの状況

(単位:億円)

当期

前期

増減

営業活動によるキャッシュ・フロー

10,175

8,644

+1,531

投資活動によるキャッシュ・フロー

△1,620

△4,275

+2,655

フリー・キャッシュ・フロー

8,555

4,369

+4,186

財務活動によるキャッシュ・フロー

△7,496

△10,131

+2,635

現金及び現金同等物の為替相場変動の影響額

△267

843

△1,110

現金及び現金同等物の増減

792

△4,919

+5,711

 

営業活動によるキャッシュ・フロー

(単位:億円)

当期

前期

増減

営業活動によるキャッシュ・フロー

a

10,175

8,644

+1,531

営業活動に係る資産・負債の増減

b

△1,001

△2,054

+1,053

リース負債の返済による支出

c

△901

△740

△161

基礎営業キャッシュ・フロー

a-b+c

10,275

9,958

+317

・営業活動に係る資産・負債(Working Capital)の増減によるキャッシュ・フローは1,001億円の資金支出、リース負債の返済は901億円の資金支出となり、これらを除いた基礎営業キャッシュ・フローは、10,275億円となりました。

- 持分法適用会社からの配当金を含む配当金の受取額は6,360億円となり、前期の5,508億円から852億円増加

- 減価償却費及び無形資産等償却費は3,137億円となり、前期の2,936億円から201億円増加

 

 基礎営業キャッシュ・フローのオペレーティング・セグメント別の内訳は以下のとおりです。

(単位:億円)

当期

前期

増減

金属資源

3,579

4,091

△512

エネルギー

3,634

2,478

+1,156

機械・インフラ

1,452

1,769

△317

化学品

906

634

+272

鉄鋼製品

60

85

△25

生活産業

181

402

△221

次世代・機能推進

270

454

△184

その他/調整・消去

193

45

+148

連結合計

10,275

9,958

+317

 

 

 減価償却費及び無形資産等償却費のオペレーティング・セグメント別の内訳は以下のとおりです。

(単位:億円)

当期

前期

増減

金属資源

734

661

+73

エネルギー

966

926

+40

機械・インフラ

334

340

△6

化学品

356

329

+27

鉄鋼製品

29

26

+3

生活産業

366

301

+65

次世代・機能推進

165

175

△10

その他/調整・消去

187

178

+9

連結合計

3,137

2,936

+201

 

 

投資活動によるキャッシュ・フロー

(単位:億円)

当期

前期

当期の内訳

投資活動によるキャッシュ・フロー

△1,620

△4,275

 

持分法適用会社に対する投資

△406

△3,061

 

取得

△2,551

△4,498

・Sneha Farms

・Mitsui E&P Mozambique△324

・米国不動産△278

・Eu Yan Sang△240

・MTC Business Private△208

・発電事業△202

・国内データセンター△178

売却・回収

2,145

1,437

・Paiton事業+1,100

・VLI一部売却+526

・中東発電事業売却+109

・三井ガス傘下事業会社減資+102

その他の投資

1,048

201

 

取得

△575

△924

 

売却・償還

1,623

1,126

・LNG関連+312

・MyPower+261

・リクルート+160

・BIPROGY+112

・Alvotech転換社債+103

有形固定資産等

△3,328

△2,443

 

取得

△3,461

△2,948

・石油・ガス生産事業△927

・豪州鉄鉱石事業△614

・発電事業△370

・Tatonka権益△230

・Mitsui Resources△224

・Intercontinental Terminals Company△187

売却

133

505

 

投資不動産

1,075

291

 

取得

△127

△85

・米国不動産△119

売却

1,201

376

・国内賃貸用不動産

・米国不動産+189

・XINGU AGRI農地+176

貸付金の増加及び回収

386

240

・LNG関連+218

定期預金の増減-純額

17

30

 

子会社またはその他の事業の取得による支出

△653

△1,063

・Taylor & Martin△363

・三井物産サプライチェーン・ソリューションズ△290

子会社またはその他の事業の売却による収入

240

1,529

 

 

 

 当期及び前期における上述の投資活動によるキャッシュ・フローをオペレーティング・セグメント別に見ると以下のとおりです。

(単位:億円)

当期

前期

金属資源

△1,408

△731

エネルギー

△1,227

△1,674

機械・インフラ

1,230

1,069

化学品

△383

△933

鉄鋼製品

59

△20

生活産業

△285

△1,397

次世代・機能推進

355

△523

その他/調整・消去

38

△67

連結合計

△1,620

△4,275

 

財務活動によるキャッシュ・フロー

(単位:億円)

当期

前期

当期の内訳

財務活動によるキャッシュ・フロー

△7,496

△10,131

 

短期債務の増減-純額

△819

△2,032

 

長期債務の増加及び返済

1,264

△3,438

 

(長期債務の増加)

14,710

8,608

 

(長期債務の返済)

△13,446

△12,046

 

リース負債の返済による支出

△901

△740

 

自己株式の取得及び売却

△3,998

△1,393

 

配当金支払による支出

△2,742

△2,424

 

非支配持分株主との取引

△301

△105

 

 

 当期の資金調達状況については、前述の「③資金調達手段」をご参照ください。

 

(6)重要な判断を要する会計方針及び見積り

  重要な判断を要する会計方針及び見積りとは、会社の財政状態や経営成績に重要な影響を及ぼす会計方針及び会計上の見積りであり、かつ本質的に不確実な事柄に関する経営者の重要な、あるいは主観的な判断を反映させることを要するものです。重要性がある会計方針は、連結財務諸表注記事項2.「連結財務諸表の作成基準並びに重要性がある会計方針の要約(5)重要性がある会計方針の要約」をご参照ください。

 

 IFRS会計基準に基づく連結財務諸表の作成にあたっては、経営者の判断の下、一定の前提条件に基づく見積りが必要となる場合がありますが、この前提条件の置き方等により、連結財政状態計算書上の資産及び負債、連結損益計算書上の収益及び費用、または開示対象となる偶発債務等に重要な影響を及ぼすことがあります。

 なお、ロシア・ウクライナ情勢及びそれに伴うロシアに対する制裁措置等による影響はグローバルに及び、当社が行うさまざまな事業分野に影響を及ぼす可能性がありますが、商品や事業内容、所在地域によってその影響範囲は異なるため、見積りにおいては個々の状況に鑑み判断しています。また、米国による関税引き上げ政策の不透明性やこれを受けた米中対立等による世界経済の景気悪化の懸念等により、事業を取り巻く環境は不確実性が非常に高く、翌連結会計年度の連結財務諸表において、会計上の見積り金額に重要性がある影響を与える可能性があります。

 

 以下の各項目は、その認識及び測定にあたり、経営者の重要な判断及び会計上の見積りを必要とするものです。

 

①非金融資産及び持分法適用会社に対する投資の減損損失及び減損損失の戻入

・当連結会計年度及び前連結会計年度における、有形固定資産、投資不動産、暖簾及び耐用年数を確定できない無形資産を除く無形資産の減損損失計上額は349億円及び665億円です。また、当連結会計年度及び前連結会計年度における同資産の減損損失の戻入額に重要性はありません。当連結会計年度末及び前連結会計年度末における減価償却累計額及び減損損失累計額控除後の帳簿価額は2兆9,335億円及び2兆9,319億円です。

・当連結会計年度及び前連結会計年度における、持分法適用会社に対する投資の減損損失計上額は242億円及び139億円です。また、当連結会計年度及び前連結会計年度における同資産の減損損失の戻入額は発生していません。当連結会計年度末及び前連結会計年度末における持分法適用会社に対する投資の帳簿価額は4兆9,730億円及び4兆8,700億円です。

・非金融資産の減損損失及び減損損失の戻入(持分法適用会社に対する投資を含む)は、当社の連結損益計算書上の当期利益に対し重要な影響を及ぼすことがあります。

・減損損失は主に連結子会社における事業環境の悪化に伴う収益性の低下、事業内容見直し、及び持分法適用会社に対する投資の市場価格の下落等によるものです。

・非金融資産の減損の兆候の有無の判定を行い、減損の兆候があると判断された場合には、資産または資金生成単位の回収可能価額を算定し、回収可能価額が帳簿価額を下回っている場合に、差額を減損損失として認識しています。

・回収可能価額は処分費用控除後の公正価値と使用価値のうち、いずれか高い金額としています。

・公正価値は市場性のある持分法適用会社に対する投資の場合は市場価格を、それ以外の場合は独立の第三者による評価結果を使用するなど、市場参加者間の秩序ある取引において成立し得る価格を合理的に見積り算定しています。

・使用価値の算定に使用される将来キャッシュ・フローは、経営者により承認された経営計画や、それが入手できない場合は直近の非金融資産の状況を反映した操業計画に基づいて見積っています。この将来キャッシュ・フローの見積り方法として、以下の例があげられます。

- 不動産について、直近の近隣不動産売却価額や賃料が合理的な期間継続するという前提を置く。

- 工場設備にて製造している製品の将来にわたる一定期間の販売価格を、過去における同期間の平均値やアナリストの分析資料等を勘案して見積る。

- 石炭・原油等の資源事業に関わる開発設備及び鉱業権について、直近の確認埋蔵量等に基づく生産計画に沿って当該資産を使用して生産され、減損判定時点における先物価格を基にした価格、第三者による予想価格、もしくは長期販売契約上の販売価格で売却される前提を置く。

- 顧客関係について、将来の一定期間の収益につき、過去における収益への貢献度、解約率、及びアナリストの市況予想等を勘案して見積る。

・使用価値の計算においては、割引率は、資金生成単位の固有のリスクを反映した市場平均と考えられる収益率を合理的に反映する率を使用しています。

・非金融資産は、その性質や、所在地、所有者、操業者、収益性等の操業環境が異なるため、将来キャッシュ・フローの想定や、割引率の算定において考慮すべき各種の要因は、個別の非金融資産ごとに異なります。

・過年度に認識した減損損失が、もはや存在しないまたは減少している可能性を示す兆候の有無に関して、期末日に判定を行っています。こうした兆候が存在する場合、当社及び連結子会社は資産または資金生成単位の回収可能価額の見積りを行い、最後に減損損失が認識されて以降、資産の回収可能価額の決定に用いた仮定に変更がある場合にのみ、過去に認識した減損損失を連結損益計算書上の利益として戻し入れています。

 

②暖簾の減損

・当連結会計年度及び前連結会計年度における暖簾減損損失計上額は7億円及び10億円です。また、対応する当連結会計年度末及び前連結会計年度末における帳簿価額は2,267億円及び1,887億円です。

・暖簾は、企業結合のシナジーから便益を享受できると期待される資金生成単位または資金生成単位グループに配分し、年一回及び減損の兆候を示す事象が発生した時点で、減損テストを実施しています。

・減損テストでは、暖簾及び暖簾を配分した資金生成単位または資金生成単位グループの帳簿価額合計を回収可能価額と比較し、帳簿価額合計が回収可能価額を上回る場合に、その差額を減損損失として認識します。回収可能価額の見積りは、非金融資産の減損と同様の見積り方法を用いています。

 

③公正価値で測定する市場性ない資本性金融資産

・公正価値で測定する市場性ない資本性金融資産については、主に評価差額をその他の包括利益に認識することを選択しています。当連結会計年度末及び前連結会計年度末における、市場性ないFVTOCIの金融資産の公正価値はそれぞれ7,551億円及び7,111億円です。

・市場性ないFVTOCIの金融資産については、主に割引キャッシュ・フロー法、類似企業比較法またはその他の適切な評価方法を用いて評価しており、経営者が金額的重要性が高いと判断する場合には、外部の評価専門家の評価を利用しています。

・重要な観察不能なインプットである原油価格の見積りについては、連結財務諸表注記事項25.「公正価値測定(3)定期的に公正価値で測定される資産及び負債に係る開示」をご参照ください。

・また、割引キャッシュ・フロー法に使用される将来キャッシュ・フローは、非金融資産及び持分法に対する投資の減損と同様に、経営者により承認された経営計画等に基づいて見積っています。これらの見積りや仮定は、当社の連結包括利益計算書上のその他の包括利益に重要な影響を及ぼすことがあります。

 

④繰延税金資産の回収可能性

・繰延税金資産の回収可能性の判断の変更に伴う繰延税金資産の減額は、当社の連結損益計算書上の当期利益及び連結包括利益計算書上のその他の包括利益に重要性がある影響を及ぼすことがあります。

・経営者は、有税償却に関する無税化の実現可能性や当社及び子会社の課税所得の予想等、現状入手可能な全ての将来情報を用いて、繰延税金資産の回収可能性を判断しています。当社は、回収可能と見込めないと判断した部分を除いて繰延税金資産を計上していますが、将来における課税所得の見積りの変更や、法定税率の変更等により、回収可能額が変動する可能性があります。

 

⑤石油・ガス産出活動及び鉱物採掘活動における埋蔵量の見積り

・埋蔵量は、当社及び連結子会社が保有している権益に対応した経済的かつ法的に採掘可能な生産物として見積られた量です。埋蔵量を算出するための見積り及び前提は以下の地質学的、技術的、経済的要因によって左右されます。

- 地質学的要因:鉱物の分量、品位等

- 技術的要因:生産技術、回収率、生産費用、輸送費用等

- 経済的要因:生産物の需要、価格、為替レート等

・埋蔵量の見積りに使用される経済的な前提は毎期変動し、かつ一連の生産活動の中で地質データの更新が行われることにより埋蔵量の見積り額は毎期変動することになります。報告された埋蔵量の変動は、当社及び連結子会社の経営成績及び財政状態に対して各種の影響を及ぼします。具体的には、

- 埋蔵量の変更に伴う将来キャッシュ・フローの見積りの変動により保有資産が減損する可能性があります。

- 生産高比例法の分母の変動または経済的耐用年数の変動に伴い、連結損益計算書上の当該事業に係る減価償却費が変動する可能性があります。

- 埋蔵量の見積りの変更が生産設備の廃棄や、原状回復義務、環境関係の資産除去債務の引当金の発生時期及び債務金額の増減に影響を与える可能性があります。

 

⑥確定給付費用及び確定給付制度債務

・従業員の確定給付費用及び確定給付制度債務は、割引率等の年金数理計算上の基礎率に基づき見積られています。IFRS会計基準では、実績と見積りとの差はその他の包括利益として認識後、即時に利益剰余金に振替えられるため、包括利益及び利益剰余金に影響を及ぼします。経営者は、この数理計算上の仮定を適切であると考えていますが、実績との差異や仮定の変動は将来の確定給付費用及び確定給付制度債務に影響します。

・当社及び連結子会社の割引率は、各年度の測定日における高格付けの固定利付社債の利回りに基づき決定しています。各測定日に決定した割引率は、測定日現在の確定給付制度債務及び翌年度の純期間費用を計算するために使用されます。

・確定給付費用及び確定給付制度債務に関する見積りや前提条件については連結財務諸表注記事項18.「従業員給付」をご参照ください。

 

⑦気候変動による影響

・当社及び連結子会社において、気候変動の影響を受け、関連する資産・負債に金額的重要性があるのはエネルギーセグメントの事業であり、将来の状況が重要性のある影響を及ぼす可能性があります。当連結会計年度末における会計上の重要性がある見積り及び判断については以下のとおりです。

・エネルギーセグメントは、主に石油・ガス開発事業及びLNG事業から構成され、これらの事業は今後、低・脱炭素化の世界的潮流が強まる中で、将来的な制約・規制強化により石油・ガス及びLNGの需要が低下する場合は、既存案件から有形固定資産の減損、持分法適用会社に対する投資の減額、及びその他の投資の公正価値の低下等が生じる可能性があります。これらの評価は主に油価の影響を受け、同前提は、市況水準や複数の第三者機関の公表する中長期見通しを考慮して策定しています。第三者機関のうち、IEAの公表するシナリオについては、STEPS(Stated Policies Scenario)に重点を置いていますが、その他のシナリオも参考にしています。

・当連結会計年度末の連結財政状態計算書に計上したエネルギーセグメントにおける主要な資産及び負債の金額は以下のとおりです。

有形固定資産

846,892百万円

持分法適用会社に対する投資

686,924百万円

その他の投資

230,240百万円

引当金(非流動)

142,358百万円

 

・なお、連結財務諸表における会計上の見積りは、各事業における固有の状況等を総合的に勘案して行っており、気候変動に関連するシナリオ分析のみによって資産及び負債の測定が決定されるものではありません。

 

5【重要な契約等】

(豪州Rhodes Ridge鉄鉱石事業の権益取得に関する契約)

 当連結会計年度において、豪州の未開発鉄鉱床Rhodes Ridgeの権益40%取得に関する譲渡契約を締結しました。本件は以下の2つの取引から構成されており、その合計額は約8,000億円(5,342百万米ドル、1米ドル=150円)となります。

 

・VOC Group Limitedとの間で、同社が保有する本事業の全持分権益25%を取得する旨の譲渡契約を締結しました。取得価額は印紙税込みで約5,000億円(3,339百万米ドル)です。

・AMB Holdings Pty Ltd.との間で、本事業の権益15%を取得する旨の譲渡契約を締結しました。取得価額は印紙税込みで約3,000億円(2,003百万米ドル)です。

 

今後、関連当局の承認等の先行要件の充足を以て2026年3月期中の完了を予定します。

 

6【研究開発活動】

特に記載すべき事項はありません。