当社は、グループ社員全員が共有し、すべての活動の基本となる理念体系として「KPPグループウェイ」を定めています。「KPPグループウェイ」は「ミッション」「ビジョン」「バリュー」の3層から形成されています。

KPPグループホールディングスの理念体系のうち、ビジョンである「GIFT」に基づき、2030年に向けて策定した長期経営ビジョンが「GIFT 2030」です。このビジョンの下、当社ではグループ全体で環境負荷低減に資する商品やサービスの開発・流通、さらには循環型ビジネスの構築・提案に取り組み、株主や顧客、取引先などの様々なステークホルダーへ貢献するとともに、経営情報の適時・適切な開示を進め、社会に開かれた企業としてグローバルに成長していきます。
紙パルプ産業の国内市場においては、デジタル化の進展により、情報媒体としての紙(いわゆるグラフィック用紙)の需要の減少が続いています。また、パッケージング用紙についても飲料向け等で一部堅調な分野があるものの、全体として需要は伸び悩んでいます。海外市場でもグラフィック用紙の需要低下のトレンドは変わらず、また欧州の一部や中国における景気の低迷が紙の需要を下振れさせています。一方で、海洋プラスチック汚染に対する世界的な問題意識から、代替素材としての「紙化」需要の高まりが引き続き見られます。バイオマス素材由来の紙資源や、石油由来のプラスチック使用量を削減した製品へのシフトが見られるようになってきています。
このような状況下、当社グループは、「グローバル展開」「DXへの対応」「グリーンビジネスの展開」「気候変動対策」「人的資本経営の推進」「ガバナンスの強化」「資本コストを意識した経営」を課題として取り組んでおります。
情報媒体は先進国を中心に、「紙」から「電子」への移行が進み、特に新聞、雑誌、カタログ、帳票類などの需要減は業界の構造改革を促しています。一方で、世界の紙・板紙市場は2040年にかけて年率1.7%の成長が見込まれるとも言われています。
今後の紙パルプ市場を牽引するのは段ボール原紙、紙器用板紙などパッケージ系の紙と衛生用紙であり、地域的には中国、インド、アセアンを含むアジア市場及びアフリカ諸国になります。当社グループはこのような紙パルプ産業の転換期に、地域戦略と事業ポートフォリオ戦略を着実に進めるとともに、事業会社間の事業シナジーを追求することでグループの総合力の強化を図っていきます。
デジタル技術の活用による生産性向上やサービスの改善はグループの各事業会社に共通する課題であり、各社の状況に合わせ、内部管理システムの高度化・共通化やeコマース事業の基盤強化・利用推進等を進めています。
また、グループ社員のコミュニケーションツールの導入やグループ会計システムの共通化検討等、グループ横断での施策も進展しています。
当社グループは、ミッションである「循環型社会の実現に貢献する」を具体化するべく、環境対応商品・ソリューションの展開を強化しています。具体的には、日本における紙を代替素材とする衣料品・人工芝の販売や、企業の製品から発生する古紙の再利用ソリューションを提供する「クローズドリサイクル」等が挙げられます。
また、新規事業として、最新のテクノロジーを活用したデータ分析によって発電プラントの稼働率を向上させるソリューション提供や、バイオマス発電所への燃料供給、バイオエタノール原料のソルガムの生産・販売等、新しい分野にも積極的に展開を図っています。
気候変動は、事業の継続性や財務状況に影響を及ぼす重要な経営課題であると認識しています。当社は2022年にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言に賛同し、気候関連リスクおよび機会の分析結果を経営戦略に反映しています。今後は、グループ全体でGHG排出量の削減を実効的に進めるべく、本年度中にスコープ1およびスコープ2の排出量を連結ベースで可視化する予定です。併せて、第4次中期経営計画において設定した排出原単位の削減目標に基づき、物流効率の向上や再生可能エネルギーの導入など、具体的施策を推進していきます。
当社は、「人」を最も重要な経営資源と捉え、これを人的資本として位置づけています。トップマネジメントで構成される人事委員会の主導のもと、人的資本戦略の策定を進めるとともに、採用・育成・評価に関する制度整備を推進しています。また、グループ全体での人的資本の可視化を目的として、リスキリング分野では「教育にかける時間」、労働安全分野では「休業災害強度率」といったKPIの策定に取り組んでいます。エンゲージメントについては、各拠点で調査を実施し、その結果を加重平均することで、グループ全体の指標として反映していく方針です。
2022年のホールディングス化以降、当社は取締役への多様な人材登用を含め、コーポレートガバナンスの強化を進めてきました。グループガバナンスに関しては、リスク管理やコンプライアンスに関する共通基盤や投資基準などの整備は完了しており、今後は本社と各拠点の役割分担をさらに明確化し、自律性と統制の両立を図ることが重要な課題です。このため、本社によるガイドライン策定と現地判断の尊重を両立させる体制の構築を進めており、具体的には、各拠点の権限明確化やモニタリングKPIの整備などに取り組んでいます。今後も、地域起点での価値創出とグループ全体の持続的成長を両立するガバナンス体制の強化に取り組んでいきます。
当社グループは、各事業会社の事業活動を通じて、「ROE8%以上」及び「資本コスト(WACC)<ROIC」を継続的に達成することで、持続的な株主価値創造の実現を図っていきます。具体的には、利益率の高い事業の拡大、資本コストを上回る事業や将来を見据えた成長事業への投資を推進していく他、株主資本と有利子負債の最適資本構成の構築による資本コストの低減及び資本コスト経営の情報開示の充実を今後も図っていきます。
当社グループは、長期経営計画である「長期経営ビジョン GIFT 2030」の期間における中期的な経営戦略として、第4次中期経営計画(2026年3月期~2028年3月期)を策定しています。
「第4次中期経営計画の基本方針」
(テーマ)
業界トップクラスのグローバル企業へ
(基本戦略)
「事業戦略」
・事業領域の拡大
・事業ポートフォリオの転換
・グローバルシナジーの追求
・Eビジネスの拡大・DXの推進
「サステナビリティ戦略」
・グリーンビジネスの展開
・気候変動対策
・人的資本経営の推進
・ガバナンスの強化
「財務戦略」
・成長投資資金の確保
・資本効率と財務健全性の両立
・株主還元の充実
目標とする経営指標と数値は、以下のとおりです。
※EBITDA:経常利益+減価償却費+のれん償却費+支払利息等
ROIC:投下資本利益率
WACC:加重平均資本コスト
DOE:連結株主資本配当率
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末時点において、当社グループが判断したものであります。
気候変動や海洋プラスチック汚染などに代表される環境問題は、持続可能な社会の実現に向けた世界共通の課題であり、環境問題が世界経済に与える中長期的な影響を低減していくには企業活動のレベルから改善を図っていく必要があります。また、当社は「サステナビリティ経営」を「環境・社会・経済の持続可能性へ配慮することによって、中長期で利益を出し続け、事業の持続可能性を向上させる経営」と定義し、「紙でつなぐ、未来をつくる」をコーポレートメッセージとして掲げ、その実現のため2022年にグループの理念体系であるKPPグループウェイを刷新しました。
当社では、KPPグループウェイを起点に、マテリアリティを長期経営ビジョンのインプットとすることで社会と事業のサステナビリティを同期させていき、企業価値向上につなげています。経営とサステナビリティマネジメントが分離していては意味がなく、KPPグループウェイ、マテリアリティ、長期経営ビジョン、サステナビリティ戦略、サステナビリティ課題をつなげ、企業価値向上のためのサステナビリティマネジメントを実現することが重要であると考えています。

当社は、KPPグループウェイのもとに、環境だけでなく、社会やガバナンスにも配慮した「KPPグループサステナビリティ基本方針」を策定し、サステナブルな社会づくりに貢献することで企業価値の向上を図っています。
<KPPグループサステナビリティ基本方針>
私たちKPPグループは「KPPグループウェイ」の基本理念に基づき、総合循環型経営の展開を通して、持続可能な社会の実現に貢献します。また、私たちは環境や社会、そしてガバナンスを経営の重要事項として捉え、事業活動に関わるマテリアリティを特定し、課題の解決に取り組みます。
当社は、上述のとおりKPPグループウェイのもとに、KPPグループサステナビリティ基本方針を策定し、サステナブルな社会づくりに貢献することで企業価値の向上を図っています。ESG委員会は、代表取締役会長兼CEO、田辺円を委員長、代表取締役社長兼COO、坂田保之を副委員長として、委員は取締役3名及びESG委員会関連組織である各委員会委員長等で構成されています。原則年2回開催し、必要に応じて随時同委員会を開催することとしています(2024年度実績:2回)。取締役会は、当社のマテリアリティ((2)具体的な取り組み ②戦略の欄に記載)の解決に向けた取組みを適切にモニタリングできるスキルを備えた人材で構成されており、監督の責務を担っています。ESG委員会の関連組織として、コンプライアンス委員会、リスク管理委員会、環境管理委員会、労働安全委員会、情報セキュリティ委員会を設置し、各委員会において課題、アクションプラン、KPIを設定し、海外グループ企業を含めてグローバルに継続的な改善を図っています。

当社はサステナビリティ経営を推進するにあたって、持続的に新たな価値を生み出すために、マテリアリティを特定しました。特定したマテリアリティは経営ビジョン「GIFT」(

また、外部環境の変化から機会と脅威を抽出し、特定したマテリアリティが企業価値向上にどのようにつながっていくのかを下図にて示しています。マテリアリティから抽出されたサステナビリティ課題にも定量的なKPIや定性的な目標を設定し、PDCAを回すことによって、企業価値向上へのパスウェイが妥当なものであるかどうかを検証していきます。これにより、サステナビリティと経営の統合を進め、投資家等のステークホルダーに対する当社戦略の意味をよりよく伝えることを目指しています。

2027年度までの第4次中期経営計画におけるサステナビリティKPIは下表の通りです。

<リスク管理体制と管理プロセス>
当社は、激しく変化する外部環境の中で適切に事業活動を推進していくために、グループ全体でリスクマネジメントを展開しています。当社のサステナビリティに関するリスクについては、ESG委員会関連組織である5つの委員会が当該リスクについて検証し、重大なリスクについてはESG委員会にて報告、討議の上、必要に応じてグローバルにリスク対応を進めます。
また、当社のリスク管理体制の維持、向上を図るため、リスク管理委員会を設置し、リスク管理委員会規則に従い、ESG委員会委員長がリスク管理委員会委員長および副委員長を任命しています。リスク管理委員会は、中核事業会社におけるリスク分析の結果を受け、グループ経営上重要なリスクの抽出・評価を行い、重点対応策を決定し、重点対応策の実行状況のモニタリングを定期的に行い、その結果についてESG委員会へ報告を行っています。
なお、外部環境の変化によって生じる機会やリスクについては、企業価値向上へのパスウェイにて記載しております。
■ 当社のリスク管理体制

当社におけるサステナビリティ関連のリスク(および機会)を含む各種リスクの識別・評価・管理体制については、
■ 当社のリスク管理プロセス

当社は、気候変動による事業への影響を重要な問題と認識し、リスク・機会について、評価・分析を行い、経営戦略に反映しました。また、2022年6月に「気候変動関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言に賛同しました。今後も、継続的に気候変動課題への対応を推進し、自然環境との共生、調和を図り、社会・経済の持続可能な発展の実現に取り組みます。これに加えて、経産省が主導する「GXリーグ」にも参画し、2050年カーボンニュートラルに向けた取り組みを進めています。KPPグループは紙パルプ産業における主力プレイヤーとして「紙」というリサイクル可能な素材を軸に、これからもグループ全体で、GHG(温室効果ガス)排出量の削減等、環境負荷低減に貢献していきます。
温室効果ガス濃度上昇にともなう気候変動により、平均気温や海水面の上昇、そしてこれによる自然環境への影響まで様々な変化が生じています。市場においてもプラスチック・フリーの潮流が世界中に広がっており、環境負荷低減の動きが加速しています。今後、気候変動が与える事業へのリスク・機会を反映した経営戦略を推進することで、自然環境との共生、調和を図り、社会・経済の持続可能な発展の実現に取り組んでいきます。
当社グループの取締役会は、気候関連課題に対する最終責任を負っており、気候変動対応を含むサステナビリティに関する事項について、ESG委員会より年2回の報告を受けています。2024年度にも気候変動に関わる事項について報告を受け、それらの進捗状況を監督しています。ESG委員会の委員長には、代表取締役会長兼CEOが担当し、ESG委員会は、環境管理委員会より年2回、気候関連課題に関する報告を受け、GHG排出量削減などの課題への取り組みについて、助言・指導しています。また、25年度より、取締役インセンティブKPIにGHG排出量削減に関するKPIを設定いたしました。具体的にはグループ全体で排出原単位を前年比3.3%下げることを目標としております。
当社では、事業影響、財務影響を与える気候関連リスク・機会の特定にあたり、IEA(※)の気候変動シナリオを参考に、脱炭素社会に向けた2℃シナリオと化石燃料に依存した4℃シナリオの状況を考慮し、当社に影響を与える可能性のある様々なリスクと機会の要因を抽出・整理しました。主なものは、以下のとおりです。
(※)IEA: International Energy Agency(国際エネルギー機関)
「想定シナリオと事業に影響を与える可能性のある主な気候関連リスク・機会の要因」
抽出・整理した要因について、「事業・財務への影響度」、「リスク発現・機会実現までの期間」、「発現・実現の可能性」の観点で評価を行い、当社として重要なリスク・機会、およびそれらに対する今後の対応策・機会獲得のための施策を整理しました。
「移行リスク/物理的リスク」
「機会」
シナリオ分析を行った結果、移行リスクでは仕入先のパルプメーカーや製紙会社の炭素税、GHG削減対応の負担は小さくなく、仕入価格への転嫁も想定されることから、調達コスト増の可能性があると考えています。そのため、今後当社としても、当該影響の小さい環境負荷低減製品の選定を積極的に検討することが必要であると考えています。中長期的なサプライチェーンからのGHG排出量削減のため、足元では排出量の算定に取り組んでいます。今後、算定の精緻化ならびに具体的な目標設定、削減対策の立案・推進に、サプライチェーン全体で取り組んでいきます。
また、物理的リスクでは、台風・豪雨といった激甚災害が増加すると、自社の施設のみならず、サプライチェーンである取引先の被災や操業停止が考えられ、商品供給に支障が生じる場合、事業・財務に大きな影響を及ぼす可能性があり、幅広い仕入ソースを引き続き確保していきます。
機会としては、エコ包装の普及により包装材としての紙素材の需要が増加しています。当社ではパッケージング事業をはじめ、事業領域の拡大を図っており、2022年にも紙の緩衝材ソリューションを提供するオランダのランパック社と販売代理店契約を締結し、環境負荷低減型包装資材の拡販に取り組んでいます。
また、非化石エネルギー利用拡大や循環型社会の形成を見越し、バイオマス発電所運転支援システム「BMecomo」の開発や提供、古紙回収ソリューション「ecomo」の展開、大手企業に向けたクローズドリサイクルサービスの提供を通じた循環型事業モデルの構築を目指す等、ビジネス機会の獲得にむけた対策を積極的に進めます。
気候関連リスク・機会を評価するプロセスとして、事業への影響度や発生可能性、事業戦略との関連性、ステークホルダーの関心度等を勘案し、重要度を評価しています。気候関連リスクの管理プロセスについては、環境管理委員会によって評価された重要度の高いリスクはリスク管理委員会に報告され、全社的なリスク管理体制として、「リスク管理規程」に基づき、経営に対して特に重大な影響を及ぼすと判断されたリスクについて、対策委員会の設置等の対応をすることで管理していきます。

「温室効果ガス(GHG)排出量に関する目標」
当社は持続可能な社会の実現に向けて、総合循環型ビジネスモデルを展開しています。気候変動の緩和に向けて、2050年までにグローバルでScope1及び2を対象に、GHG排出量を実質ゼロにすることを目指します。まずは、国内のScope1及び2を対象に、省エネの徹底や再生可能エネルギーの導入により、2031年3月期のGHG排出量を2021年3月期基準で33%削減することを目指します。グローバル全体では、2027年度まで毎年、GHG排出原単位を前年比で3.3%削減することを目標としています。将来的には顧客やサプライヤー等のステークホルダーと協議の上、バリューチェーン全体でのGHG排出量削減に取り組みたいと考えています。なお、2024年度のデータにつきましては2025年度上半期中に開示する準備を進めています。
グループ全体のGHG排出量(2020年度~2023年度)
集計範囲:
2020年度より継続的にバウンダリーを拡大しており、年度によって大きく集計範囲が異なっている場合がある。集計結果は全て各年度の有価証券報告書発行前の数字で統一しており、統合報告書等の開示物の結果と異なる場合がある。
算定方法:
GHGプロトコルに基づく。Scope2の排出係数については、マーケットベースで算定。
国内事業拠点からのGHG排出量(2019年度~2023年度)
集計範囲:
2023年度よりバウンダリーを拡大したため、GHG排出量が増加している。削減目標の基準年度については現在見直す方向で検討を進めている。集計結果は全て各年度の有価証券報告書発行前の数字で統一しており、統合報告書等の開示物の結果と異なる場合がある。
算定方法:
GHGプロトコルに基づく。Scope2の排出係数については、マーケットベースで算定。
「気候変動の緩和に貢献する製品・サービスの売上高に関する指標」
当社グループは、サステナビリティ戦略の達成に向けたKPIとして、気候変動の緩和に貢献する製品である森林認証紙や森林認証パルプの売上高や販売量も採用しています。また、当社が定義する「グリーンプロダクト」や「グリーンソリューション」も気候変動の緩和に貢献する製品・サービスとして、売上高や販売量をKPIとしています。
環境対応紙及び森林認証パルプの販売(2020年度~2024年度)
集計範囲:国際紙パルプ商事㈱
海洋プラスチック汚染問題の解決に向けて、社内横断的にGreen Biz Projectを 立 ち 上 げ、「Reduce, Reuse, Recycle」の3Rと「Renewable」をコンセプトとした新商品「グリーンプロダクト」の開発と流通に取り組んでいます。また、環境負荷低減に資する新たなソリューションを「グリーンソリューション」として、これまで「BMecomo」開発等に取り組んできました。実績は以下の通りです。
Green Biz Projectの売上高(2022年度~2024年度)
集計範囲:国際紙パルプ商事㈱
KPPグループは、「KPPグループ憲章」を定め、全ての人々の人権を尊重し、人種、性別、宗教、信条などによるいかなる差別も行わないことを掲げています。同憲章に基づき、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に準拠し、人権に関してさらに具体的な内容を盛り込んだ方針を「KPPグループ人権方針」として策定しました。
<KPPグループ人権方針の項目>
1. 人権に対する基本的な考え方
2. 適用範囲
3. 適用法令
4. 人権尊重の責任
5. 人権デュー・ディリジェンス
6. 対話・協議
7. 教育・研修
8. 救済
9. 責任者
10. 情報開示
国際的なNPO法人「コー円卓会議」より専門家を招き、当社及び国際紙パルプ商事社員を対象に「ビジネスと人権」セミナーを開催しました。さらに、人権デュー・ディリジェンスの一環として、人権リスクを洗い出した後、国際紙パルプ商事グループ会社で現地ヒアリングを実施し、人権リスクの洗い出しリスクと評価を行った結果、顕在化した人権リスクがないことを確認しました。今後取り組みを段階的にグループ内やサプライチェーンに広げ、人権課題が顕在化する前に予防措置を講じることができるマネジメント体制の確立を目指します。
<「経営戦略と人材戦略の連動」の考え方 KPPグループの人的資本経営>
当社は「KPPグループウェイ」の基本理念に基づき、総合循環型ビジネスモデルを通して、持続可能な社会の実現に貢献します。当社は商社として最大の資産である人材が意欲的に活躍できる環境こそが持続的な成長の基本であり、総合循環型経営を進める上での要であると考えます。
<当社の総合循環型ビジネスモデル>

総合循環型ビジネスモデルは、製紙原料や紙・板紙などの販売から、古紙などの再生資源を供給するマテリアルリサイクルと、バイオマス発電所運転支援等による再生可能エネルギー供給等によるGHG排出量削減に貢献するビジネスの2つから構成されます。当社は持続的な成長のため、事業ポートフォリオの転換、強化を経営戦略として掲げておりますが、マテリアルリサイクルはその主軸であり、この推進にあたって必要とする人材やその育成についての知見の蓄積があります。GHG排出量削減に貢献するビジネスでは、約100年に渡り紙パルプを中心に関連する業界において培ってきた知見や幅広いネットワークを基盤に、新たに求められる要件を加え、ビジネスの成長に資する人材の育成へとつなげています。
これらビジネスに必要とする人材を人的資本として、トップマネジメントで構成される人事委員会を中心に、グループの組織人事や人的資本に関する調査や分析、人的資本に関する方針や戦略の検討と意思決定を行い、人材育成やエンゲージメント向上につながる施策を策定し、社員一人ひとりの活躍が最終的にグループ全体の成果へとつながる人材戦略へと進めています。また、労働安全委員会を設置し、KPPグループ憲章に基づいて、誰もが安全・安心に働ける職場環境の充実を継続して図っています。
当社創立以来、100年に渡り関わってきた紙販売、その後の古紙回収を加えたマテリアルリサイクルビジネスの継承のために、紙と周辺素材に関する理解から販売のソリューションまでを有する人材を育成しています。また、GHG排出量削減ビジネスの開拓など、将来に向け事業ポートフォリオ改革も進めており、新規領域の開拓や成長に貢献できる専門性を有する人材の確保と育成も求められています。
加えて2019年にSpicers、2020年にAntalisが連結子会社となり、第3次中期経営計画から掲げているグローバル経営と総合循環型企業の確立へとつながる人材の確保と育成も求められています。
2022年10月の持株会社移行に伴い、ガバナンス体制の整備、グループ内の様々なシナジー形成を進めておりますが組織や人材強化が必要であり、専門性と経験を有するキャリア人材の採用も進めています。また既存ビジネスの成長、新規ビジネスの展開、グローバル展開の次の100周年に向けて、当社の事業ノウハウを次の世代へ継承し続けるため、日本国内では国際紙パルプ商事が新卒を15名を目途に継続的に採用していきます。
採用人材については、新入社員からグレード(等級)毎、また昇格時の研修など、執行役員まで、各階層別研修や管理職のマネジメント力強化を主眼とした研修を実施しています。今後はグローバル人材や次世代基幹人材、スキル向上ではソリューション営業スキル研修も加え、人材育成を様々に強化していきます。
研修を通じた人材育成の他、事業年度の始まる4月に、事業戦略と人材の適材適所配置の観点から人事異動を行っています。決定に際して、ジョブローテーションを通じた人材育成なども考慮し、自己申告制度を通じて上司部下で話し合われている将来キャリアの情報も勘案しています。2024年2月設立の新たな事業ポートフォリオのグループ子会社は若手人材の事業発案に基づくものであり、スタートアップ支援を通じた人材育成を今後も行っていきます。
社員の能力発揮を支援するために、当社では、成果、アクティビティ、バリューの三つに分けた評価システムを運用しています。具体的には、社員を複数の職群に設定された基準に基づき職務・役割・能力レベルに応じたグレード(等級)に区分し、評価は、成し遂げた成果・結果を成果評価で評価し、目標を達成するためのプロセスはアクティビティ評価・バリュー評価で評価します。この結果を賞与、昇降給、昇降格へ反映して、社員一人ひとりが次なる目標へとチャレンジを促す制度となっています。また、社員の成果評価制度とは別に、業務上の顕著な功績や功労があった従業員あるいは組織に対して、従業員表彰制度による表彰を行い、2024年度からは特定スキル資格の取得支援も開始し、自律的な人材の更なる活躍と組織による会社への更なる貢献を推進しています。
2022年10月、事業運営の効率化や中核事業会社の経営責任を明確にすることを目的として持株会社体制に移行し、理念体系を刷新しました。社員への浸透を加速させるべく、トップメッセージや理念体系ポスターの社内掲示などに加えてブランドブックを多言語で作成し、KPPグループ全社員へ配布しました。共通の価値観を持って働くことのリファレンスとしての活用を促進しています。
社員のエンゲージメントについて持株会社及び各事業会社では、経営理念、職場環境、ハラスメント、ダイバーシティ、コミュニケーション、評価/報酬、福利厚生、業務量、テレワーク、教育/研修、エンゲージメントなどの設問に基づく独自の社員満足度調査を実施していましたが、2023年度からエンゲージメントサーベイのSaaSを導入し、SaaSならではの強みである速報性と多面的な分析が簡便にできることにより、浮彫となった課題へ速やかに必要な人事施策を実施しました。今後も、様々に活用検討し、人材戦略へと反映させていきます。
また、持株会社および国際紙パルプ商事では、働き方、社員の健康管理や長時間労働においては次の通りの整備をしております。働き方において、新型コロナウィルス感染症拡大時の経験より非常時の事業継続想定を見直し、また社員の多様な働き方への対応も併せ、「テレワーク勤務実施細則」を定めて全ての社員が職場や業務状況に合わせてテレワーク勤務も可能となる就労環境を整えています。また2023年度には時間単位の有給休暇取得制度、2024年度には月間フレキシブルタイム制を導入し、多様な働き方やワークライフバランスに関わる環境の整備をいたしました。
社員の健康管理においては、心身ともに健康な状態で働き続けることができるように、全社員に年1回の定期健康診断を実施し、30歳以上の社員については生活習慣病検診を行い、検査結果に応じた健康アドバイス等を行っています。また2023年から特定保健指導に注視し、受診率向上に努めております。
健康へ影響する長時間労働の対応では、管理職も含めパソコンの稼働状況に基づく勤務実態を把握、時間管理の適正化へ向けて様々な勤怠実績を職場案内と注意喚起し、改善指導も適宜行っております。また健康障害発症リスク回避のため産業医による面談も行っておりますが、2023年度からは面談のオンライン受診できる環境整備です。
ダイバーシティについて当社では3つの観点からなる「ダイバーシティ推進方針」を掲げ、社員の仕事と私生活の両立・性別・年齢・国籍・人種・民族・宗教・社会的身分などの違いを尊重し、社員一人ひとりが意欲的に活躍できる体制を整えています。
1.ワークライフバランスの向上
社員が仕事と育児・介護などの私生活を両立して就業継続しながら、よりレベルの高い仕事にチャレンジできるよう、環境を整備していきます。
2.ダイバーシティの推進
性別・年齢・職掌・障がいの有無・国籍などの区分なく、主体的なチャレンジを促進する能力開発の機会を提供し、全ての社員が最大限の活躍ができる環境を整備していきます。
3.採用の多様化
新卒人材の他、様々な領域の即戦力人材のキャリア採用も行い、グローバル経営の確立とグローバル企業としての価値向上を継続的に努めております。
障がい者の雇用については雇用環境や職域の整備を継続的に行い、障がい者の雇用推進や更なる雇用環境の整備につき努力していきます。
4.新入社員向けOn the Job Training(OJT)指導員制度の導入
国際紙パルプ商事では自社の事業を支える新入社員に対しては、OJT指導員制度を導入しています。学生から社会人への第一歩を踏み出し、社会、会社、生活の変化への戸惑いを覚える社員に対し、OJT指導員との対話を通じて社会人としての考え方や理解整理を支援しながら人材の定着へと導いています。また配属先上司、OJT指導員、新入社員本人、人事部が連携の下、「1年後になっていてほしい姿」を具体化し新入社員育成計画書にまとめ、計画的かつ効果的な育成と支援体制の仕組みを構築しています。
当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性のある事業等のリスクには、以下のようなものがあります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
当社は、当社グループのリスク管理体制の維持、向上を図るため、リスク管理委員会を設置しております。
リスク管理委員会は、グループ経営上重要なリスクの抽出・評価を行い、重点対応策を決定し、重点対応策の実行状況のモニタリングを定期的に行い、その結果についてESG委員会を通じて取締役会へ報告を行うこととしています。
なお、2024年度はリスク管理委員会を2回開催し、重要なリスクについて、2023年度との比較・評価・重点対応策について協議しました。
■ 当社のリスク管理体制

■ 当社のリスク管理プロセス

当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性のある事業等のリスクには、以下のようなものがあります。なお、文中における将来に関する記載は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものです。
最初に、各リスク項目を影響度と発生頻度で評価したリスクマップを掲載いたします。

上記リスクのうち重要と認識しているリスクは以下の通りです。ただし、これらは、当社グループに関するすべてのリスクを網羅したものではなく、現時点において予見できない、あるいは重要とみなされていない他の要因の影響を将来的に受ける可能性があります。また、リスクを低減するための対応を記載しておりますが、リスクを完全に回避することは困難です。
当社グループの当連結会計年度の業績は、売上高6,700億42百万円(前年同期比4.0%増)、営業利益は135億44百万円(前年同期比14.4%減)、経常利益は97億12百万円(前年同期比22.1%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は、79億86百万円(前年同期比24.8%減)となりました。
当連結会計年度の業績については、以下のとおりです。
報告セグメントごとの業績は次のとおりです。
<北東アジア>
国内の紙分野においては、グラフィック用紙の需要減少により販売数量が前年を下回り、減収減益となりました。
板紙分野では、飲料向け段ボール原紙の需要は堅調に推移し、販売数量・売上高・利益ともに前年を上回りました。紙器用板紙は、期待された訪日外国人によるインバウンド需要に勢いが無く、全体で販売数量・売上高ともに前年を下回りましたが、市況維持により利益は前年を上回りました。高級板紙ではトレーディングカードゲーム関連で減収減益となりました。
製紙原料分野では、古紙は販売数量が前年並みを維持しました。また、市況価格の安定により、売上高・利益ともに前年を上回りました。一方、市販パルプは、市況の大幅下落と為替の影響により損失計上となりました。
中国では、紙の需要の低下が年内に回復を見せず、また紙の需給バランスにも大きな改善が見られない中、本格的な業績回復には至りませんでした。
この結果、北東アジア事業の売上高は3,036億49百万円(前年同期比0.3%減)、セグメント利益は28億95百万円(前年同期比15.4%減)となりました。
<欧州/米州>
欧州経済は依然、冴えない状況にあり政治面での不安も加わり消費マインドは冷え込みました。こうした環境の中、ペーパー事業は需要の低迷と価格競争の激化により紙の値上げも浸透せず、むしろ価格は下落となり、売上高・利益共に前年を下回りました。
パッケージング事業では、ドイツを中心とした景気後退の影響から製造業や小売業の業績低迷がありましたが、当期新たに買収した3社が業績を押し上げたことから、売上高・利益ともに前年を上回りました。
ビジュアルコミュニケーション事業では、需要が堅調に推移していることに加え、前期および当期に買収した2社の貢献もあり、売上高・利益ともに前年を上回りました。
一方、南米を含む米州では景気も底堅く推移し、パッケージングの販売が好調となり売上高・利益ともに前年を上回りました。
この結果、欧州/米州事業の売上高は2,984億60百万円(前年同期比4.5%増)、セグメント利益は77億57百万円(前年同期比25.9%減)となりました。
<アジアパシフィック>
ペーパー事業では、オフィス分野やデジタル分野は好調だったものの、オセアニア地域における商業印刷および板紙市場の低迷により、売上高・利益ともに前年を下回りました。
パッケージング事業では、4月に買収したSignet社の業績が堅調に推移し、売上高・利益ともに前年を大きく上回りました。
ビジュアルコミュニケーション事業では、引き続きハードウェア及びロールメディアの販売が寄与し、売上高・利益ともに前年を上回りました。
トレーディング事業は、東南アジア地域や南アジア地域などで好調に推移し、売上高・利益ともに前年を上回りました。
この結果、アジアパシフィック事業の売上高は664億28百万円(前年同期比26.3%増)、セグメント利益は30億円(前年同期比39.5%増)となりました。
<不動産賃貸事業>
好調な企業業績と過熱する人材獲得競争を背景にオフィス需要は増加傾向にあります。新規供給についても迅速に吸収されており、今後も同様の傾向が続くと予想されています。
かかる状況下において、賃料の改定が寄与し、増収となった物件があるものの、一部に空室が発生したため、賃料収入は微減となりましたが、修繕費等の減少により利益面では増益となりました。
この結果、不動産賃貸事業の売上高は15億4百万円(前年同月比1.1%減)、セグメント利益は6億2百万円(前年同期比4.0%増)となりました。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、主に税金等調整前当期純利益の計上、売上債権の減少及び短期借入金の増加により獲得した資金を、子会社株式の取得及び長期借入金の返済に充当したことにより、前連結会計年度末比149億28百万円減少し、113億16百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果獲得した資金は111億69百万円(前期は198億17百万円の獲得)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益の計上及び売上債権の減少によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は166億44百万円(前期は55億8百万円の使用)となりました。これは主に、子会社株式の取得及び固定資産の取得によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は111億90百万円(前期は223億75百万円の使用)となりました。これは主に、長期借入金及びリース債務の返済によるものであります。
③ 仕入及び販売の実績
当社グループは卸売事業が主な事業のため、生産実績の重要性が乏しいことから仕入実績を記載し、受注実績については受注から納品まで短期であるため、受注残高は僅少であり、期中の受注高と販売実績とがほぼ対応するため、記載を省略しております。
当連結会計年度の仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 当連結会計年度における仕入実績の著しい変動の要因は、「(1) 経営成績等の状況の概要 ① 経営成績の状況」に記載のとおりであります。
(2) 販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.当連結会計年度における販売実績の著しい変動の要因は、「(1) 経営成績等の状況の概要 ① 経営成績の状況」に記載のとおりであります。
(参考情報)
当社グループの品種別販売実績は以下のとおりであります。
(注) 1.「その他」の数量は各単位が相違するのでその記載を省略し、「合計」の数量からも除いております。
2.賃貸収入は「その他」に含まれております。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当連結会計年度における当社グループの経営成績につきましては、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ①経営成績の状況」に記載のとおりです。
当社グループは長期経営ビジョン『GIFT 2030』に則り、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (1) 経営の基本方針」に記載のとおり、対処すべき課題に対応してまいります。
当連結会計年度における、北東アジアセグメントの業績については「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ①経営成績の状況」に記載のとおりです。
2025年3月期の日本市場については、紙分野では、グラフィック用紙の構造的な需要減少により、数量・売上高・利益のいずれも前年を下回りました。紙板分野では、段ボール原紙が飲料向けの需要が堅調に推移したことから増収・増益となりましたが、高級板紙の減収により、板紙分野全体としては減収・増益となりました。製紙原料分野では、古紙は市況価格が安定したことから売上高・利益とも前年を上回った一方、パルプは市況の大幅下落と為替の影響により損失となりました。
このような状況下、当社は以下の基本戦略に基づき、日本での事業拡大を目指す所存です。
[国内基本戦略]
1.営業力強化やクロスセル推進等により、基幹ビジネスにおけるシェア向上を図る。
2.古紙・化成品分野において既存事業を拡大するとともに、インオーガニック戦略を通じてパッケージング・ビジュアルコミュニケーションを新たな事業の柱とすることを目指し、事業ポートフォリオ構造改革を進める。
3.DXによる業務改革を強力に推進し、バックオフィスの効率化を図る。
2025年3月期の中国市場については、前年から継続する紙の需要低下が年内に回復せず、また需給バランスにも大きな改善が見られなかったことから、本格的な業績回復には至りませんでした。
このような状況下、当社は以下の基本戦略に基づき、中国での事業拡大を目指す所存です。
[中国基本戦略]
1.大手メーカーのシェア拡大と商材強化、新規顧客開拓により国内紙卸売事業を推進する。
2.サプライソース開拓、商材強化およびKPPグループ各拠点とのコミュニケーション強化を通じて輸出事業を推進する。
当連結会計年度における、欧州/米州セグメントの業績については「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ①経営成績の状況」に記載のとおりです。
2025年3月期の欧州経済は依然として低迷が続いており、また、政治的不安も重なったことで、消費マインドは一段と冷え込みました。ペーパー事業では、需要の低迷と価格競争の激化により紙の値上げが浸透せず、むしろ販売価格は下落し、売上高・利益ともに前年を下回りました。パッケージング事業では、ドイツを中心とした景気後退の影響により製造業や小売業の業績が低迷しましたが、当期に新たに買収した会社(3社)が業績を押し上げたことにより、売上高・利益ともに前年を上回りました。ビジュアルコミュニケーション事業では、需要が堅調に推移したことに加え、前期および当期に買収した会社(2社)の業績貢献もあり、売上高・利益ともに前年を上回りました。一方、南米を含む米州では、景気が底堅く推移し、パッケージングの販売が好調となったことから、売上高・利益ともに 前年を上回りました。
このような状況下、当社は以下の基本戦略に基づき、欧州/米州での事業拡大を目指す所存です。
[欧州/米州基本戦略]
1.ペーパー&ボード事業は注力分野における市場シェアの拡大を図るとともに、適正な価格設定とコスト削減により売上と利益率を確保する。パッケージング分野およびビジュアルコミュニケーション分野は売上の回復のため、M&Aによるシナジーを最大限に活用する。
2.Eビジネスにおいて、ペーパー&ボード分野の既存顧客の利用推進を図るとともに、パッケージング分野とビジュアルコミュニケーション分野の新規顧客の獲得を進め、利益率のさらなる向上と業務効率の改善を図る。
3.人材の維持・育成、新しいスキルを持った人材の採用強化により、社内のモチベーションを高く維持する。
当連結会計年度における、アジアパシフィックセグメントの業績については「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ①経営成績の状況」に記載のとおりです。
2025年3月期のアジアパシフィック市場については、ペーパー&ペーパーボード事業では、オフィス分野やデジタル分野は好調だったものの、オセアニア地域における商業印刷および板紙 市場の低迷により、売上高・利益ともに前年を下回りました。パッケージング事業では、2024年4月に買収したSignet社の業績が堅調に推移し、売上高・利益ともに前年を大きく上回りました。ビジュアルコミュニケーション事業では、引き続きハードウェア及びロールメディアの販売が寄与し、売上高・利益ともに前年を上回りました。トレーディング事業では、東南アジア地域や南アジア地域などで好調に推移し、売上高・利益ともに前年を上回りました。
このような状況下、当社は以下の基本戦略に基づき、アジアパシフィックでの事業拡大を目指す所存です。
[アジアパシフィック基本戦略]
1.ペーパー&ボード事業においては、豪州等で市場規模の縮小が見込まれる中、アジアでの取扱量増により売上の維持を目指す。
2.パッケージ事業やビジュアルコミュニケーション事業はペーパー&ボードに比し利益率が高く、M&Aとオーガニック成長により利益全体に占める両事業の割合を増加させていく。
3.豪州にeコマース・プラットフォームを展開し、Eビジネスの強化を図る。
当連結会計年度における、不動産賃貸事業の業績については「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ①経営成績の状況」に記載のとおりです。
当該事業セグメントにつきましては、所有不動産の有効活用による安定的な収益獲得を基本方針としております。引き続き、物件ごとの将来性を勘案した上で再開発や修繕等の投資判断を行い、安定的な収益獲得に努めてまいります。
当連結会計年度末の総資産は、3,520億35百万円となり、前連結会計年度末に比べ74億73百万円増加しました。これは主に、商品及び製品、使用権資産等の増加によるものであります。
負債は、2,658億18百万円となり、前連結会計年度末に比べ31億56百万円増加しました。これは主に、リース債務、コマーシャル・ペーパー等の増加によるものであります。
純資産は、862億16百万円となり、前連結会計年度末に比べ43億16百万円増加し、自己資本比率は24.5%となり、前連結会計年度末に比べ0.8ポイント増加しました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益、為替換算調整勘定の増加によるものであります。
当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況は、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、商品の仕入のほか、販売費及び一般管理費等の営業費用です。投資を目的とした資金需要は、設備投資、子会社株式の取得等によるものです。また、株主還元については、財務の健全性等に留意しつつ、配当政策に基づき実施してまいります。
当社グループは、長期経営ビジョン『GIFT 2030』に基づく第4次中期経営計画(2025年度~2027年度)を推進中ですが、事業で創出される営業活動によるキャッシュ・フローや政策保有株式の売却、有利子負債を活用し、M&Aを中心とした成長投資や株主還元を実施していく方針です。
株主還元への支出については、安定的かつ継続的な配当に加え業績に応じた利益還元を図ることを目的として、2025年3月期より連結配当性向30%を目安にするとともに、 DOE(連結株主資本配当率)3.0%を下限とする配当方針を採用しています。また、自己株式の取得については、政策保有株式の売却によって得た資金の一部に加え、成長投資に充てる資金に余剰が生じた際には、その相当額を自己株式取得の原資として充当する方針としています。
なお、現在当社グループにおいて重要な資金繰りの懸念はございません。当連結会計年度末現在の現金及び現金同等物の残高は、国内で8億93百万円、海外で104億23百万円となっており、当社が考える適正な残高水準を上回る資金を確保しております。また、予定されている資金支出につきましても、資金調達の目途は立っております。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成しています。この連結財務諸表の作成にあたり採用した会計方針及びその適用方法並びに見積りの評価については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項、重要な会計上の見積り」に記載しているとおりです。
該当事項はありません。
該当事項はありません。