この文中には、将来に関する記述が含まれております。それらの記述は、当連結会計年度末時点において、入手可能な情報に基づいて当社グループが判断したものであり、不確定な要素を含んでおります。
(1)社是・経営理念
当社は、「愛」(I)、「敬」(K)を社是と定め、「人を愛し、敬う」という人間尊重の精神に基づき、社会の発展に貢献することを経営理念としております。グローバルに事業を展開する商社グループとして、高い専門性や複合機能を活用して、顧客や社会のニーズに応えることで価値ある存在として常に進化を続けることを目指しています。
(2)長期ビジョン「IK Vision 2030」
この経営理念や目指す姿を踏まえ、2030年頃の当社グループの「ありたい姿」として、長期ビジョン「IK Vision 2030」を公表しています。この「IK Vision 2030」において、当社の根本が商社であることを再確認するとともに、創業以来、長年培ってきた専門知識を持つ人材、商社業のツールとなる製造・物流・金融機能、そして海外19カ国約70拠点で展開する拠点網などの経営資源を最大限活用することで商社機能の複合化と高度化を図り、顧客への付加価値の提供を更に進めて参ります。
長期ビジョン「IK Vision 2030」
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連結売上高 |
1兆円以上を早期に実現 |
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複合機能の高度化 |
商社機能を基本としつつも、製造・物流・ファイナンス等の複合的な機能の一層の高度化を図る |
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事業ポートフォリオ |
情報電子・合成樹脂以外の事業の比率を1/3以上に |
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海外比率 |
70%以上 |
(3)中期経営計画「New Challenge 2023」
当社グループは、長期ビジョン「IK Vision 2030」に向けた中期経営計画の第2ステージとして、2024年3月期を最終年度とする3カ年の中期経営計画「New Challenge 2023(以下、「NC2023」)」に取り組んでまいりました。「NC2023」の最終年度となる2024年3月期の目標数値・指標は、以下のとおりです。
■ 中期経営計画「NC2023」
● 最終年度の目標数値・指標
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目標数値・指標 |
2024年3月期 |
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売上高 |
8,000億円 |
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営業利益 |
205億円 |
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経常利益 |
215億円 |
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親会社株主に帰属する当期純利益 |
225億円 |
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ROE |
10%以上 |
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ネットD/Eレシオ |
0.5倍以下 |
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自己資本比率 |
概ね40~50% |
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想定為替レート |
120.00円/USD |
※1 目標数値・指標は、2022年5月10日公表。
※2 ネットD/Eレシオ=(有利子負債-現預金)/自己資本
● 主要重点施策
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1. |
主力ビジネスの更なる深掘りと成長分野への横展開 |
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2. |
将来の成長が見込める市場への多面的な取り組みと確実な収益化 |
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3. |
将来の成長に向けた投資の積極化 |
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4. |
グローバルな経営情報インフラの一層の高度化 |
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5. |
保有資産の継続的見直しと資金・資産の更なる効率化 |
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6. |
人的資本活用に向けた取り組みの強化 |
● 株主還元の基本方針と政策保有株式の縮減方針
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株主還元の基本方針 |
NC2023の期間中、 ・ 一株当たりの配当額については前年度実績を下限とし、減配は行わず、継続的に増加させていくことを基本とする。(累進配当) ・ 総還元性向の目安としては概ね50%程度とする。ただし、政策保有株式を売却し、相当程度のキャッシュインが発生した事業年度においては、今後の資金需要や会社の財務状況、株価、マーケットの状況などを総合的に勘案し、上記の総還元性向の目安には必ずしもとらわれずに、株主還元を実施する。 |
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政策保有株式の縮減方針 |
・ NC2023期間中の3年間で政策保有株式の残高を2021年3月末残高に対して50%削減する。 ・ 中長期的に政策保有株式の縮減を更に進め、2027年3月末までに2021年3月末残高に対して概ね80%削減する。 |
(4)「NC2023」の達成状況
当連結会計年度は「NC2023」の最終年度となりました。定量目標の達成状況については、以下のとおりです。
● 最終年度の目標数値・指標
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2024年3月期 |
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実績 |
目標数値・指標 |
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売上高 |
7,660億円 |
8,000億円 |
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営業利益 |
211億円 |
205億円 |
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経常利益 |
213億円 |
215億円 |
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親会社株主に帰属する当期純利益 |
200億円 |
225億円 |
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ROE |
10.5% |
10%以上 |
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ネットD/Eレシオ |
0.06倍 |
0.5倍以下 |
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自己資本比率 |
46.8% |
概ね40~50% |
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想定為替レート |
144.59円/USD |
120.00円/USD |
定量面では、売上高がやや未達となりましたが、営業利益は目標を達成し、売上高、営業利益とも3期連続で過去最高を更新することができました。
定性面では、自動車向け樹脂や再生可能エネルギー関連、リサイクル樹脂など環境負荷低減商材の売上拡大など、主力ビジネスが総じて順調に進捗しました。また、米国におけるリチウムイオン電池関連材料の新会社設立や、うなぎなど農水産加工品の製造・販売を主業とする食品関連企業の子会社化などを実施し、今後の収益拡大に向けた準備を進めました。
(5)新中期経営計画「New Challenge 2026」
当社グループは、長期ビジョン「IK Vision 2030」に向けた中期経営計画の第3ステージとして、2024年4月より、2027年3月期を最終年度とする3カ年の新中期経営計画「New Challenge 2026(以下、「NC2026」)」をスタートしました。「NC2026」では、「NC2023」から更に成長に軸足を移し、“投資による成長の加速”をメインテーマとしています。「NC2026」の概要は以下のとおりです。
■ 新中期経営計画「NC2026」の概要
● 最終年度の目標数値・指標
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2027年3月期 |
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売上高 |
9,500億円 |
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営業利益 |
270億円 |
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経常利益 |
260億円 |
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親会社株主に帰属する当期純利益 |
190億円 |
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ROE |
10%以上 |
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ネットD/Eレシオ |
0.5倍以下 |
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自己資本比率 |
概ね50%前後 |
※ 想定為替レート:145.00円/USD
● キャピタルアロケーション(資本配分)
「NC2026」期間中の3カ年のキャピタルアロケーション(資本配分)計画については、営業キャッシュフロー等による650億円程度のキャッシュインを想定しており、このうち50~60%程度を投資等に、40~50%程度を株主還元に配分する計画です。
● 株主還元の基本方針と政策保有株式の縮減方針
株主還元については、以下のとおりです。政策保有株式の縮減方針については、2022年5月に公表した縮減方針にもとづき、着実に実施してまいります。
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株主還元の基本方針 |
「NC2026」の期間中、 ・一株当たりの配当額については前年度実績を下限とし、減配は行わず、継続的に増加させていくことを基本とする。(累進配当) ・総還元性向の目安としては概ね50%程度とする。 |
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政策保有株式の 縮減方針 |
・中長期的に政策保有株式の縮減を更に進め、2027年3月末までに2021年3月末残高に対して概ね80%削減する。 ※当初の方針である「「NC2023」期間中の3年間で政策保有株式の残高を2021年3月 末残高に対して50%削減する」については既に達成済み |
● 戦略の全体像
「成長戦略」と「経営基盤戦略(財務、サステナビリティ、デジタル戦略)」に分類しており、それぞれの戦略の概要は以下のとおりです。成長戦略は、長期ビジョン「IK Vision 2030」に沿った形で展開しています。
成長戦略
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長期ビジョン |
戦略 |
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連結売上高 1兆円以上 |
手段:投資の積極化による収益拡大 |
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事業領域:環境関連ビジネス、食品等生活産業ビジネスの拡大 |
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複合機能の高度化 |
複合機能(特に製造・物流)強化による差別化・収益性向上 |
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事業ポートフォリオ |
主要セグメント(合成樹脂・情報電子)の深耕 |
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主要セグメントに並ぶ収益の柱の確立 |
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海外比率70%以上 |
成長エリア(従来のアジア拠点に加え、特にインド、メキシコなど米州)の深耕 |
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未開拓エリア(東欧等)への進出 |
経営基盤戦略
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経営基盤 |
戦略 |
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財務 |
資本効率の更なる向上と累進配当を始めとする株主還元の重視 |
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「資本コストや株価を意識した経営」の実践 (PBR1倍を常態的に超える株価水準の早期達成) |
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サステナビリティ |
全社推進の土台となるサステナビリティマネジメントの整備: マテリアリティに沿った戦略とKPI・目標の設定及びモニタリング |
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デジタル戦略 |
経営情報インフラの高度化とグループ全体のセキュリティ強化 |
(6)2025年3月期連結業績予想
2025年3月期の経営環境といたしましては、一部の地域に弱さがみられるものの、総じて景気回復が続くとみていますが、一方で、物価上昇や金融資本市場の変動、中国経済の先行き懸念、中東地域を巡る情勢など、不透明な状況が続くと想定されます。
2025年3月期の連結業績見通しにつきましては、足元の経済環境や事業の状況、為替・金利の見通し等を考慮し、売上高830,000百万円、営業利益22,500百万円、経常利益21,500百万円、親会社株主に帰属する当期純利益17,000百万円を予想しております。
なお、業績見通しの前提となる為替レートにつきましては、1USD=145.00円を想定しております。
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連結 |
2025年3月期 |
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売上高 |
8,300億円 |
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営業利益 |
225億円 |
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経常利益 |
215億円 |
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親会社株主に帰属する 当期純利益 |
170億円 |
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが合理的であると判断する一定の前提に基づいており、実際の結果とは様々な要因により大きく異なる可能性があります。
(1)ガバナンス
当社グループでは、サステナビリティ課題について全社的に取り組みをより推進するため、2021年10月に代表取締役社長執行役員を委員長とする「サステナビリティ委員会」を設置しました。
同委員会は、副委員長をサステナビリティ担当の代表取締役専務執行役員が務めるとともに、4つのセグメントをそれぞれ担当する取締役1名及び執行役員2名と、主な管理部門長6名が委員を務めています。また、オブザーバーとして社外取締役7名、非業務執行取締役2名も同委員会に参加し、必要な意見を述べています。全取締役が同委員会に参加することで、同委員会を通して、取締役会としての監督機能を果たしています。
同委員会は最低年1回開催(必要に応じて臨時開催)することを原則とし、当社グループのサステナビリティに関する方針及び施策の策定・承認・モニタリングを実施しています。
取締役会においては、取締役会規程にてサステナビリティを巡る諸課題(気候変動などの地球環境問題への配慮、人権の尊重、従業員の健康・労働環境への配慮や公正・適切な処遇、取引先との公正・適正な取引、自然災害等への危機管理など)への取り組み状況を、最低年1回、担当取締役から取締役会へ報告することが定められています。加えて、四半期ごとに業務執行報告書を通じて、サステナビリティに関する取り組み状況を取締役会に報告しており、同委員会で審議・検討された内容も上記プロセスの中で報告が行われ、取締役会の監督を受けています。
また、当社ではサステナビリティへの対応は当社の重要な経営課題と認識していることから、取締役の業績連動報酬※の指標として「複数の外部評価機関(FTSE Russell及びMSCI)によるESGスコア」を設定して、取締役会のサステナビリティ課題への実効性を高めております。
同委員会で決議された事項は、専任組織であるサステナビリティ推進部と主な管理部門員からなるサステナビリティ委員会事務局とが連携しながら実行・運営し、グループ全体のサステナビリティ活動を推進しています。また、サステナビリティ推進部では同委員会の有効な議論のために、各営業本部員及び主な管理部門員をメンバーとするサステナビリティ推進委員とともに、全社のサステナビリティに関連する情報を取りまとめ、提供しています。
※役職別固定報酬をベースに税金等調整前当期純利益(投資有価証券売却益を除く。)、資本収益性(ROICとROE)、株価及び複数の外部評価機関(FTSE Russell及びMSCI)によるESGスコアの各水準に応じた係数を掛けて業績連動報酬を計算しております。
サステナビリティ推進体制図
(2)戦略
当社グループでは、経営理念「『愛』『敬』の精神に基づき、人を尊重し、社会の発展に貢献する」を掲げ、信頼を礎とする人間尊重の経営を続けてまいりました。「人、そして社会を大切にしたい」という当社グループの想いは、国際社会が目指す「持続可能な社会の実現」にも貢献するものと考えます。2021年11月、社会の要請に応えサステナビリティの取り組みをより強化していくため、人間尊重の経営理念を基本としながら環境・社会の課題や国際的な潮流を踏まえて、新たに「サステナビリティ基本方針」と9つの項目から構成される「サステナビリティ行動指針」を策定しました。
また、2022年6月には、地球や社会の様々な課題の解決と持続的な企業価値の向上に向けて、6つのマテリアリティ(優先的に取り組むべき重要課題)を特定しました。当社グループは、気候変動・資源循環・自然資本などの環境に関する課題や、人権・労働などの社会に関する課題について、事業を継続する上でのリスクであると認識しているとともに、新たな成長機会にもなると考えています。そのため、サステナビリティを経営の重要課題の一つとして注力しています。サステナビリティの取り組みをさらに強化し、持続可能な社会の実現と当社グループの持続的な成長という長期的なゴールに向かい着実に歩を進めるため、マテリアリティを定めました。
■稲畑産業グループのマテリアリティ
2024年5月には、マテリアリティに対処すべく、新たに「サステナビリティ中期計画2026」を策定しました。概要については、以下のとおりです。詳細につきましては、当社webサイトに掲載しております「サステナビリティ中期計画2026」(2024年5月9日発表)をご参照ください。なお、「4.マテリアリティに関わる長期的なビジョン、戦略及びKPI・目標」につきましては、(4)指標及び目標において記載しております。
今後は、中期計画の進捗をサステナビリティ委員会でモニタリングするとともに、取締役会の監督を受けることで、着実に取り組みを進めてまいります。進捗については、各種媒体で報告してまいります。
■「サステナビリティ中期計画2026」概要
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1 |
稲畑産業グループのサステナビリティ |
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2 |
マテリアリティ・解説と関連セグメント |
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3 |
マテリアリティに関わるリスク・機会と主な取り組み |
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4 |
マテリアリティに関わる長期的なビジョン、戦略及びKPI・目標 |
また、当社グループにおける人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針については、以下のとおりです。
稲畑産業グループにとって人材は最も重要な財産であり、多様な背景や強みを持つ従業員がそれぞれの能力を最大限に発揮できることが、当社グループの競争力を高め、持続的な成長につながると考えています。そのため、人材の価値を最大限に引き出す環境整備や人材開発を重要な経営課題の1つとしています。
グローバルな競争が激化するなかで、事業を持続的に発展させるためには多様な価値観が重要であるとの認識に立ち、当社グループでは様々なバックグラウンドを持つ社員が、グローバルで活躍しています。個々の持つ力を存分に発揮するために、人種・宗教・国籍・年齢・性別・性的指向や障がいの有無などを問わず、採用・配置・評価・処遇・登用が公平であるための施策・制度強化に注力しています。社員一人ひとりの個性や能力を尊重し、多様性を受け入れて生かし、一体感を持って働ける組織風土の醸成に努めています。
当社の人材育成・能力開発は、「愛」「敬」の精神と「経営理念 Mission」を土台とし、「価値観 IK Values」を共有し、「目指す姿 Vision」を実現できる人材を育てることに他なりません。多様な業務経験と成長機会の提供、役割に応じた研修の実施を通して、専門性を有し、国内外で組織・事業を牽引する人材を育成します。世界中で事業を行う当社グループにとって、国境を問わずグローバルな視野で国際社会と共生し、新しい価値を生み出すことができる「グローバル人材」の育成は重要な課題です。
「価値創造を担う人的資本の育成・強化」を当社グループのマテリアリティとし、新たな働き方改革やダイバーシティ&インクルージョン、従業員エンゲージメント、人材育成・能力開発、労働安全衛生等の推進を掲げ、制度の一層の拡充や教育などの取り組みの充実を図っております。
2024年5月に発表した「サステナビリティ中期計画2026」においては、人的資本戦略の中でも「持続的な成長を支える従業員のwell-being(身体的・精神的・社会的に満足な状態)の向上」「多様な個を最大限に活かすダイバーシティ&インクルージョンの推進」「健康経営の更なる推進」「人的資本投資への注力」を3カ年の注力戦略として掲げ、KPI・目標を設定しました。KPI・目標については、(4)指標及び目標をご参照ください。
※MVV:「経営理念 Mission」「目指す姿 Vision」「価値観 IK Values」の略
また、当社グループは、気候変動の影響及び対策の必要性を十分認識し、事業を通じて地球環境の保全に努めることを「サステナビリティ基本方針・行動指針」や「稲畑産業コンプライアンス宣言」で表明しています。2022年6月に発表したマテリアリティにおいても「脱炭素社会・循環型社会への貢献」を掲げ、気候変動をはじめとする地球環境問題を経営の重要課題の1つとしています。
気候変動は、当社グループにとってリスクである一方、新たな事業機会をもたらすものでもあると考えており、GHGの排出量削減に努めるとともに、脱炭素社会に貢献する商材やソリューションの提供を進めております。
2024年5月に発表した「サステナビリティ中期計画2026」においては、「事業活動におけるカーボンニュートラルの達成」「事業を通じた地球環境への貢献」を戦略として掲げ、KPI・目標を設定しました。中でも、GHG排出量削減については、2022年6月に発表した「2050年度カーボンニュートラル達成」という長期目標に向けて、2026年度・2030年度の中間目標を定めました。本目標は、パリ協定で示された1.5℃目標に整合する設定としました。
当社は金融安定理事会(FSB)が設置した気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)が2017年6月に公表した提言に賛同するとともに、気候変動起因による自社事業活動への影響を適切に把握し、その内容を開示しています。
※TCFD:G20の要請を受け、2015年に設立された「気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」の略称。気候変動が金融市場に重大な影響をもたらすとの認識を背景に、2017年に公表された最終報告書(TCFD提言)では、企業等に気候変動に伴うリスクと機会等の情報開示を求めている。
■TCFD提言が求める開示推奨項目と当社対応のサマリー
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要求項目 |
項目の詳細 |
当社対応 |
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ガバナンス |
気候関連のリスク及び機会に係る組織のガバナンス体制の開示 |
気候変動を含むサステナビリティ課題について、代表取締役社長執行役員を委員長とする「サステナビリティ委員会」にて審議・検討しています。全取締役が同委員会に参加することで、同委員会を通して、取締役会としての監督機能を果たしています。 取締役会では、取締役会規程にてサステナビリティ課題への取り組み状況を担当取締役から取締役会へ報告することが定められております。同委員会で審議・検討された内容も上記プロセスの中で適切に報告が行われ、取締役会の監督を受けています。 |
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戦略 |
気候関連のリスク及び機会に係る事業(ビジネス・戦略・財務計画)への影響の開示 |
4℃シナリオについては、異常気象の激甚化による国内外拠点への被害が想定されましたが、事業を大きく揺るがすほどのリスクではないと想定されました。また、機会として気温上昇や気象パターンの変化に対する「適応商材」の需要増加が見込まれ、自社のレジリエンス性は保たれるという結論に至りました。 1.5℃シナリオについては、カーボンプライシングの導入や電力価格の高騰による操業コストの増加がリスクとして挙げられましたが、それ以上に低炭素や環境配慮に寄与する技術や商材の将来的な成長による収益機会の獲得が大きいことが確認されました。 中期経営計画「NC2026」で掲げられた成長戦略である「環境関連ビジネスの拡大」及び「サステナビリティ中期計画2026」で掲げられた「事業を通じた地球環境への貢献」という戦略が、今後の脱炭素社会における自社の成長に大きく関連する事項であることを再認識しております。 |
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リスク管理 |
気候関連のリスクに対する組織の識別・評価・管理プロセスの開示 |
当社では気候変動リスクに関して、サステナビリティ委員会においてリスク管理を行っています。同委員会にてシナリオ分析を元に定性・定量の両面から抽出・検討されたリスクを審議し、必要に応じて取締役会に報告し、監督を受けています。 取締役会では、同委員会からの報告に加え、リスク管理室や財務経営管理室、コンプライアンス委員会などから報告されるその他リスクを加味し、統合的に重要性の高い全社リスクを監督しています。 |
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指標と目標 |
気候関連のリスク及び機会を評価する際に用いる指標と目標の開示 |
当社グループでは、パリ協定で掲げられた「気温上昇を1.5℃未満に抑える」という世界的な目標達成にコミットすべく、2050年度カーボンニュートラルという長期目標を設定しています。(連結グループのスコープ1,2が対象)また、「サステナビリティ中期計画2026」の中で「GHG排出量を2022年度比2026年度までに25%削減、2030年度までに42%削減(連結グループのスコープ1,2が対象)」という中間目標を定めました。本目標は、パリ協定で示された1.5℃目標に整合する設定としました。 2022年3月期からは当社のサプライチェーン全体の排出量を把握するため、スコープ3の算定を行っています。現在は単体のみですが、今後は算定対象範囲を広げていきます。 |
なお、
(3)リスク管理
当社では、従来のリスク管理手法だけでは不確実な要素を含む長期的な影響を管理するには十分ではないと考え、サステナビリティ関連のリスクに関しては、サステナビリティ委員会において管理を行っています。定性・定量の両面から抽出・検討されたリスクを審議し、進捗をモニタリングするとともに、必要に応じて取締役会に報告し、監督を受けています。
「サステナビリティ中期計画2026」では、マテリアリティごとのリスク・機会とそれらに対応する主な取り組みを整理し、記載しました。詳細につきましては、当社webサイトに掲載しております「サステナビリティ中期計画2026」をご参照ください。
なお、
(4)指標及び目標
「サステナビリティ中期計画2026」において、以下のとおり、GHG排出量削減の2030年度・2050年度目標を含む2030~2050年度頃の長期的なビジョンを示すとともに、長期的なビジョンからバックキャストし、マテリアリティに沿った2024年度~2026年度の3カ年のKPI・目標を設定しました。
今後は、中期計画の進捗をサステナビリティ委員会でモニタリングするとともに、取締役会の監督を受けることで、着実に取り組みを進めてまいります。進捗については、各種媒体で報告してまいります。
■長期的なビジョン
<長期目標>
GHG排出量(スコープ1,2):2030年度までに2022年度比42%削減/2050年度カーボンニュートラル達成
<長期的な目指す姿>
・脱炭素社会/循環型社会/豊かな自然資本が実現している社会・地球。
・人々が人権を尊重され、安全・安心を実感し、各々のwell-beingが保たれている社会。
・ビジネスパートナーと共創して生み出される、当社の提供する価値が、社会において「なくてはならない価
値」として選ばれ、持続的に成長している状態。
・持続的な成長に欠かせない国内外のすべての従業員が、心身共に健康であり、各々にフィットした働き方・適
切な役割でイキイキと働き、well-beingが高い状態。
<関連するSDGs>
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■マテリアリティに沿った戦略及びKPI・目標
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持続的な価値創出 |
・ 脱炭素社会・循環型社会への貢献/自然資本の持続可能な利活用 ・ 安全・安心で豊かな生活への貢献 ・ レジリエントな調達・供給機能を通じた価値提供 |
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戦略 |
KPI・目標(2024年4月~2027年3月) |
バウンダリー |
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事業活動における カーボンニュートラルの達成 |
GHG排出量(スコープ1,2)を2022年度比25%削減 |
連結 |
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事業を通じた 地球環境への貢献 |
環境関連ビジネスの売上高1,000億円※1を達成 |
連結 |
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化学物質規制管理の強化による安全・安心な品質の確保 |
国内外における化学物質規制の動向をタイムリーに把握・共有し、管理体制を強化 |
連結 |
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サプライチェーンマネジメントの強化による 調達・供給機能の強靭化 |
責任ある調達に関する当社姿勢を明確にし、社内外に浸透 |
単体 |
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人権に配慮した サプライチェーンの確立 |
選定した事業について人権DDのサイクル※2をモデルケースとして確立 |
単体 |
※1 「サステナビリティ中期計画2026」の最終年度で想定している環境関連ビジネスの分野別比率は以下のとおり。
・ エネルギー・電力(再生可能エネルギー関連、電池関連など):約70%
・ 資源・環境(持続可能な原材料、リサイクル、水関連など):約20%
・ 素材・化学、農業・食料、交通・物流、環境認証 :約10%
※2 人権DDに関するサイクルとは、「責任ある企業行動のためのOECDデュー・ディリジェンス・ガイダンス」で示されている以下の「デュー・ディリジェンス・プロセス及びこれを支える手段」のこと。
① 責任ある企業行動を企業方針及び経営システムに組み込む
② 企業の事業、サプライチェーン及びビジネス上の関係における負の影響を特定し、評価する
③ 負の影響を停止、防止及び軽減する
④ 実施状況及び結果を追跡調査する
⑤ 影響にどのように対処したかを伝える
⑥ 適切な場合是正措置を行う、または是正のために協力する
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事業継続の基盤 |
・ 「愛」「敬」の精神に基づく人権尊重と地域社会との共生 ・ 価値創造を担う人的資本の育成・強化 ・ ガバナンス・リスクマネジメントの強化 |
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戦略 |
KPI・目標(2024年4月~2027年3月) |
バウンダリー |
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持続的な成長を支える従業員のwell-being (身体的・精神的・社会的に満足な状態)の向上 |
①従業員エンゲージメントサーベイの回答率90%以上、「今の会社 で働いていることに満足している」「会社の理念・ビジョン・ 経営方針に共感でき、その達成に参加したいと思える」の肯定 的回答率80%以上、全項目の肯定的回答率70%以上※3 ②人権DDデジタルサーベイの実施バウンダリーをグループまで拡 大 |
連結 |
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多様な個を最大限に活かすダイバーシティ&インクルージョンの推進 |
① 10% ② ③ ④障害者法定雇用率を上回る状態の維持 ⑤海外現地法人におけるナショナルスタッフの幹部登用の積極化 |
①~④ 単体 ⑤ 連結 |
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健康経営の更なる推進 |
① ②ストレスチェックの総合健康リスクを現状維持※4 |
単体 |
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人的資本投資への注力 |
①従業員一人当たりの教育研修費用※5を、毎年、前年度実績を上 回る ② |
単体 |
※3 従業員エンゲージメントサーベイの肯定的回答率とは、従業員による5段階評価(5.とてもそう思う/4.そう思う/3.可もなく不可もなく/2.そう思わない/1.全くそう思わない)のうち、肯定的な回答である5と4
の占める割合のこと。
※4 精密検査受診率とは、健康診断後の要精密検査受診対象従業員のうち、実際の精密検査受診従業員の割合のこと。
総合健康リスクとは、厚生労働省がストレス評価の方法として提供しているもので、ストレスチェックから得 られた「心理的な仕事の負担(量)」「仕事の裁量度」/「上司からの支援度」「同僚からの支援度」の4尺度を用いて算出される、職場の環境が従業員の健康にどの程度影響を与えるかを総合的に評価する指標。全国平均の値を100として計算されており、100を超えると職場の健康リスクが高い状態、下回るとリスクが低い状態と考えられる。当社は現状100を下回る状態。
※5 教育研修費用は、稲畑産業単体で実施する集合研修や外部研修、動画研修等にかかる費用。2022年度の教育研 修費用は、50,776円/人。(2023年度実績は、2024年夏頃開示予定。)
当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を及ぼす可能性のある主要なリスクには以下のようなものがあります。当連結会計年度に実施した「取締役会の実効性評価」(第三者評価)におけるリスク評価分析の結果を踏まえ、当社グループの経営成績等への影響や発現可能性という観点から、重要性が高いと考えられるリスクから順に記載しております。
なお、これらのリスクは必ずしも全てのリスクを網羅したものではなく、想定外のリスクや重要性が低いと考えられる他のリスクの影響を将来的に受ける可能性があります。また、この文中には、将来に関する記述が含まれております。それらの記述は、当連結会計年度末時点において、入手可能な情報に基づいて当社グループが判断したものであり、不確定な要素を含んでおります。
(1)海外活動に潜在するリスク
当社グループの海外における生産及び販売活動は、東南アジアや北東アジア、北米、欧州と多数の地域に及びます。これらの海外市場への事業進出には、予期しない法律または規制の変更、不利な政治または経済要因、人材の採用と確保の難しさ、未整備の技術インフラ、潜在的に不利な税制の影響、その他の要因による社会的混乱などのリスクが内在しております。
当社グループは、各国法令、環境法規制、社会情勢・取引先動向等に注視し、変化に合わせた迅速な対応を実施できるよう体制を整備し、それらリスクの低減に努めております。
当連結会計年度における地域ごとの売上高では、アジア合計が47%であり、最も影響を受ける地域であります。
感染症流行等の非常時の対策としては、海外の主要な拠点において事業継続計画(BCP)を策定、運用しております。
(2)取引先の信用リスク
当社グループ事業は国内外の多数の取引先に対して信用を供与しております。当社グループにおいては海外取引先も含めたグローバルな与信管理を行ってはおりますが、必ずしも全額の回収が行われる保証はありません。従いまして、取引先の不測の倒産・民事再生手続等による貸倒損失や貸倒引当金の計上を通して、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当連結会計年度末時点において、当社グループの受取手形及び電子記録債権の金額は31,198百万円、売掛金は175,264百万円、棚卸資産の金額は85,068百万円であり、その合計額は総資産の68%を占めております。重要性が高い与信供与については、経営者がメンバーとなる審査会議で審議を行います。売掛金及び棚卸資産については、連結グループ各社の残高推移を月次ベースでモニタリング管理しております。
(3)事業投資に係るリスク
当社グループでは、事業展開をするにあたり、合弁・ジョイントベンチャーなど実際に出資を行い、持分を取得するケースが多々あります。特に連結対象となる関係会社に対する投資については当該グループ会社の財政状態及び経営成績の動向により、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、商社ビジネス拡大を主たる目的としたマイノリティー投資を基本としており、マジョリティー投資については、リスク・金額を限定して行っております。
NC2023では「将来の成長に向けた投資の積極化」を重点施策として推進すると共に、M&Aを行う専門部署を設置しました。重要性の高い新規投資案件については、同部署が営業部門等と連携して定量面・定性面からリスク等の評価・分析を行ったうえで、経営者がメンバーとなる審査会議で審議を行います。投資実行後、定期的にモニタリングを行い、一定の基準に満たない案件などについては、適宜、対策を講じるよう努めております。
(4)事業再構築に係るリスク
当社グループは、事業の選択と集中の推進のため、不採算事業からの撤退、子会社や関連会社の売却・再編による事業の再構築を継続しております。これらの施策に関連して、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。各国政府の規制や雇用問題等によって、事業再構築の計画が適時に実行できない可能性もあります。また、当社グループが事業再構築の実施により、当初の目的の全部または一部を達成できる保証はありません。なお、撤退検討基準を設けて、該当する当社グループ会社に対しては審査会議において撤退等の審議を行っております。
(5)商品市場の変動リスク
当社グループが取り扱う、情報電子材料、ケミカル原料、食品、合成樹脂の多くは商品相場の変動に影響を受けます。そのため市況の変動への弾力的な対応ができなかった場合、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性が生じることになります。各営業部門にて、市場の情報を収集して、価格動向を注視するとともに、在庫管理を徹底しております。
当連結会計年度においては、生活産業事業における食品ビジネスで在庫取引を行っており、米国市場での水産加工品などの日本食向け商材の価格下落の影響を受けました。
(6)為替の変動リスク
当社グループは、海外の事業展開における製品、原材料の生産と販売活動及び貿易活動を行っております。原則として為替予約等によるヘッジ取引を行っておりますが、外貨建取引等に伴う為替レート変動の影響を受ける可能性があります。また、各地域における売上、費用、資産を含む現地通貨建ての項目は、連結財務諸表の作成のために円換算されており、換算時の為替レートにより、円換算後の価値が影響を受ける可能性があります。
当連結会計年度における為替差損は204百万円となり、為替換算調整勘定は28,541百万円となりました。
(7)金利に係るリスク
当社グループは、営業活動や事業投資等の資金を金融機関からの借入又は社債発行等を通じて調達しております。国内外の金利動向を把握し、固定・変動調達比率を調整することなどで金利リスク管理を行い、支払利息の低減に努めておりますが、金利水準の急上昇等により当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当連結会計年度における支払利息は1,873百万円となりました。
(8)人材の育成・確保に係るリスク
商社事業を核とする当社グループにとって、人材は最も重要な財産であり価値創造の源泉です。持続的な企業価値向上のためには、展開する4つの事業分野のみならず、経営・財務・ITなど経営基盤を支える専門分野に精通した優れた多様な人材の育成・確保が日本及び海外拠点において必要です。
人的資本の育成・強化を重要な経営課題と捉え、社内体制の整備を進め、当社グループの価値創造を担う人材の育成・確保に努めておりますが、一方で少子高齢化の進行や人材の流動化の影響により必要な人材確保が困難となる場合や、人材育成が順調に進まない場合、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(9)環境に係るリスク
当社グループは、国内外において4つの事業分野で幅広い商材を取り扱っており、これら商材の製造・販売は当該地域の環境規制やエコ商材への変更等の影響を受ける可能性があります。合成樹脂事業においては、脱プラスチック商材への変更の影響を受ける可能性があります。仕入先の分散化に取り組むと共に、脱炭素社会・循環型社会への貢献に向けて、リサイクル商材など環境負荷を低減する商材の販売に各事業において注力しております。
また、気候変動リスクについては、2023年4月に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)に賛同すると共に気候変動起因による自社事業活動への影響を適切に把握し、その内容を開示しております。詳細は、コーポレート・ガバナンス報告書(2024年6月24日)をご参照ください。
(10)情報システム・情報セキュリティに係るリスク
当社グループは、商社グループとして事業を展開する上で、取引先の機密情報や個人情報及び当社グループの機密情報や個人情報を有しています。これら情報の外部流出や破壊、改ざん等が無いように、「情報セキュリティ規程」を制定し、情報管理手続きを定めたマニュアルを整備して、グループ全体で管理体制を構築し、徹底した管理と情報セキュリティ強化、従業員教育等の施策を実行しています。規程・マニュアル等については、随時見直しを行い、新たなリスクやテクノロジーに対応するよう努めています。
また、働き方改革の推進等によりリモート環境での業務が増加する傾向にあることを踏まえ、従来のウィルス対策ソフトだけではなく、端末の挙動を監視するエンドポイントセキュリティシステムを導入する等、ゼロトラストの考え方に沿ったセキュリティ強化に努めております。さらには、セキュリティインシデントに対して、迅速かつ正確に対応するために社内に対応チームとしてのCSIRT(Computer Security Incident Response Team)を立ちあげて社内外の情報連携を強化するとともに、外部セキュリティオペレーションセンター(SOC)による24時間/365日の監視を行っております。しかしながら、昨今サイバー攻撃はますます高度化しているため、外部からの予期せぬ不正アクセス等を完全に排除することは困難であり、そのような不測の事態が発生した場合、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(11)品質に係るリスク
当社グループは商社グループでありますが、合成樹脂コンパウンド、プラスチックフィルム、医薬品原料、水産加工品等の製造・加工会社を国内外に有しています。それらで製造・加工する製品については、信頼性や安全性を確保できるよう品質管理に努めております。また、商社として情報電子、化学品、生活産業、合成樹脂の4つの事業分野において取引先より仕入・販売する多様な原料・商材についても、グローバルに変化するそれら原料・商材に係る環境や安全関連の法規制、規格の動向等を把握して、品質管理に努めております。
しかしながら、品質問題を完全に回避することは困難であり、当該問題により生じた損失について、当社グループが責任を負う可能性があります。その場合、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(12)自然災害等のリスク
当社グループが事業を展開する国や地域において、地震、津波、台風等の自然災害、または感染力の強い感染症が発生した場合には、当社グループの社員・事務所・設備の被害により、当社事業に悪影響を及ぼす可能性があります。また、これらの災害による、サプライチェーンの分断や当社グループが取り扱う商材の市場における需給変動等により、当社グループの経営成績及び財政状況に影響を及ぼす可能性があります。
これら災害の悪影響に対しては、当社グループの危機対応の基本方針に基づいた事業継続計画(BCP)を策定し、社員の安全確保を最優先に事業継続を行いますが、全ての被害や悪影響を回避できるとは限らず、将来の当社グループの事業に悪影響を及ぼす可能性があります。
(13)法規制に係るリスク
当社グループは、事業展開する各国において、事業・投資の許可、国家安全保障またはその他の理由による輸出制限、関税をはじめとするその他輸出入規制等、様々な政府規制の適用を受けております。これらの制限を遵守できなかった場合は、コストの増加につながる可能性があります。従いまして、これらの規制は当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当連結会計年度における海外売上高比率は55%と高く、輸出入規制に大きな影響を受ける可能性があります。そのため、社内に輸出管理委員会を設置し、リスクの軽減に努めております。
(14)保有有価証券の時価下落に係るリスク
当社グループではビジネス戦略上多数の会社の株式等に出資または投資しております。株式市場の動向悪化、または出資先の財政状態の悪化により、保有有価証券の減損リスクがあります。
当連結会計年度末における投資有価証券の計上額は34,872百万円となりました。また、特定投資株式の保有方針や保有の合理性、銘柄ごとの詳細については「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (5)株式の保有状況」に記載しております。
(15)退職給付債務の変動リスク
当社グループの従業員退職給付費用及び債務は、割引率等数理計算上で設定される前提条件や年金資産の期待収益率に基づいて算出されております。実際の結果が前提条件と異なる場合、または前提条件が変更された場合、その影響は計上される債務に影響を及ぼします。また、損益面では、当該影響額は累積され、将来にわたって規則的に認識されるため、一般的には将来期間において認識される費用に影響を及ぼします。また、年金資産には退職給付信託として上場有価証券を信託しているため株価の変動の影響を受けやすく、割引率の変動及び年金資産運用の結果による損益のブレにより当社グループの年金費用は増減します。株価の下落、割引率の低下や年金資産運用利回りの悪化は当社グループの業績と財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
当連結会計年度末における退職給付に係る負債の計上額は2,343百万円となりました。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①経済環境
当連結会計年度における世界経済は、世界的に金融引き締めが続くなか、一部の地域では弱さがみられましたが、総じて景気は緩やかに回復しました。
米国では、個人消費や設備投資を中心に景気は回復しました。中国では、消費や固定資産投資などを中心に回復に足踏みがみられました。アジア新興国では、インドの景気は回復、インドネシアも緩やかに回復し、タイでも持ち直しの動きがみられました。欧州では、ユーロ圏、英国とも消費や生産を中心に景気は弱含みました。
一方、日本経済は、設備投資などが緩やかに回復し、企業収益や雇用情勢も総じて改善しました。
②財政状態及び経営成績の状況
a.財政状態
(資産)
当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末に比べ46,876百万円増加(対前期比12.3%増)し、427,320百万円となりました。
流動資産の増加38,632百万円は、主に売掛金並びに現金及び預金が増加したこと等によるものであります。
固定資産の増加8,243百万円は、主に投資有価証券、有形固定資産、無形固定資産並びにその他が増加したこと等によるものであります。
(負債)
当連結会計年度末における負債合計は、前連結会計年度末に比べ21,628百万円増加(同10.9%増)し、220,565百万円となりました。
流動負債の増加15,704百万円は、主に短期借入金が減少したものの、支払手形及び買掛金が増加したこと等によるものであります。
固定負債の増加5,924百万円は、主に長期借入金並びに繰延税金負債が増加したこと等によるものであります。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産合計は、前連結会計年度末に比べ25,247百万円増加(同13.9%増)し、206,754百万円となりました。これは、主に為替換算調整勘定、利益剰余金並びに非支配株主持分が増加したこと等によるものであります。
この結果、自己資本比率は46.8%(前連結会計年度末より0.3ポイント減少)となりました。期末発行済株式総数に基づく1株当たり純資産額は3,624円1銭(前連結会計年度末より409円59銭増加)となりました。
b.経営成績
当連結会計年度における売上高は766,022百万円(対前期比4.1%増)となり、過去最高を更新しました。利益面では、営業利益は21,190百万円(同4.3%増)となり過去最高を更新し、経常利益は21,393百万円(同11.9%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は20,000百万円(同2.7%増)となりました。
なお、当連結会計年度の期首より、大五通商株式会社、丸石化学品株式会社及び同社の完全子会社である丸石テクノ株式会社等を連結子会社化しており、これに伴い、負ののれん発生益等を3,193百万円計上しております。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
《情報電子事業》
情報電子事業は、主に太陽電池や二次電池関連材料の販売増加により、売上が増加しました。
フラットパネルディスプレイ(以下、FPD)関連では、大型TV向けは低調でしたが、車載向け、有機EL関連などは堅調に推移しました。末端需要の回復は鈍いものの、在庫調整の終了や価格上昇などにより、パネルメーカーの稼働は前期と比べて回復しました。
LED関連では、中国や欧州での屋外ディスプレイ向け需要が堅調に推移し、関連部材の販売が好調でした。
インクジェットプリンター関連では、産業向けは堅調に推移しましたが、コンシューマー向けは在庫調整などの影響を受け、トータルでは関連材料の販売は減少しました。
複写機関連では、オフィス向けトナーの在庫調整などにより、関連材料の販売が減少しました。
太陽電池関連は、世界的な市場拡大を背景に、欧米を中心に関連材料の販売が増加しました。
二次電池関連は、欧米を中心に関連材料の販売が増加しました。ただ、足元では世界的なEVの販売鈍化などを背景に、需要は減速しています。
フォトマスク関連は、半導体用、FPD用ともに関連材料の販売が増加しました。
半導体・電子部品関連は、総じて需要回復が鈍く、販売はほぼ横ばいとなりました。
これらの結果、売上高は239,114百万円(同0.5%増)となりました。セグメント利益(営業利益)は6,904百万円(同31.0%増)となりました。
《化学品事業》
化学品事業は、主に新規の連結子会社化の影響により、売上が増加しました。
樹脂原料・添加剤は、ウレタン関連の販売が増加しましたが、米国向けの輸出販売などが減少しました。
自動車部品用の原料は、EV向け放熱材原料の販売が低調でした。
塗料・インキ・接着剤分野では、新規連結により販売が増加しました。
製紙用薬剤は、情報用紙向けの在庫調整の影響もあり、販売がやや減少しました。
建築資材は、輸入木材の販売は減少しましたが、木質ボードやハウスメーカー向けの販売が増加し、全体では横ばいでした。
これらの結果、売上高は112,657百万円(同25.4%増)となりました。セグメント利益(営業利益)は2,788百万円(同0.6%増)となりました。
《生活産業事業》
生活産業事業は、主に新規の連結子会社化の影響により、売上が増加しました。
ライフサイエンス関連では、医薬品・家庭用品・防殺虫剤関連ともに原料販売が堅調に推移し、売上が増加しました。
食品関連では、農産品は量販店・宅配向け冷凍野菜・果実の販売が好調でした。
水産品は、回転寿司・量販店向けが回復し、国内の水産加工品の販売は増加しました。一方、米国市場での水産加工品などの日本食向け商材は、主に競争激化により販売が大きく減少しました。食品関連全体では、新規の連結子会社化の影響もあり、売上が増加しました。
これらの結果、売上高は53,597百万円(同22.8%増)となりました。セグメント利益(営業利益)は米国市場での水産加工品などの日本食向け商材の販売減少と利益率低下などにより、1,480百万円(同23.6%減)となりました。
《合成樹脂事業》
合成樹脂事業は、主に中国における日系自動車向けや、東南アジアにおけるOA・家電関連向けの在庫調整による販売数量減により、売上が減少しました。
汎用樹脂関連では、日用品などを中心に販売が減少しました。
高機能樹脂関連では、OA・家電関連は在庫調整の影響により販売が減少しました。ただ、足元で在庫調整は底を打ったとみています。自動車関連は、中国での日系自動車向け販売が落ち込みましたが、生産台数の回復を背景に、国内は好調、東南アジアは堅調でした。
コンパウンド事業は、OA・家電向けを中心に低調でした。
ポリオレフィン原料の販売は、電線被膜向けなど輸出は好調も、国内が低調で販売は減少しました。
フィルム関連では、軟包装分野は物価上昇による消費停滞などにより、売上は減少しました。一方、国内グループ会社において製袋品の価格転嫁が進み、利益は増加しました。
シート関連は、スポーツ資材関連を中心に堅調でした。
リサイクル原料ビジネスは順調に伸長しました。
これらの結果、売上高は360,471百万円(同1.0%減)となりました。セグメント利益(営業利益)は9,879百万円(同3.2%減)となりました。
③キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、税金等調整前当期純利益、棚卸資産の減少額及び長期借入れによる収入が、短期借入金の純減少額、法人税等の支払額、配当金の支払額及び売上債権の増加額を上回ったこと等により、前連結会計年度末に比べ16,511百万円増加し、46,301百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果獲得した資金は30,187百万円(前連結会計年度は9,915百万円の獲得)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益、棚卸資産の減少額及び仕入債務の増加額が、法人税等の支払額、売上債権の増加額及び投資有価証券売却益を上回ったこと等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は2,386百万円(前連結会計年度は8,278百万円の獲得)となりました。これは主に、投資有価証券の取得による支出、有形固定資産の取得による支出及び無形固定資産の取得による支出が、投資有価証券の売却による収入を上回ったこと等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は13,981百万円(前連結会計年度は17,568百万円の使用)となりました。これは主に、短期借入金の純減少額及び配当金の支払額が、長期借入れによる収入を上回ったこと等によるものであります。
④販売及び仕入の実績
a.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) (百万円) |
前年同期比(%) |
|
情報電子 |
239,114 |
100.5 |
|
化学品 |
112,657 |
125.4 |
|
生活産業 |
53,597 |
122.8 |
|
合成樹脂 |
360,471 |
99.0 |
|
その他 |
181 |
102.1 |
|
合計 |
766,022 |
104.1 |
b.仕入実績
当連結会計年度における仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) (百万円) |
前年同期比(%) |
|
情報電子 |
214,512 |
97.0 |
|
化学品 |
97,019 |
123.3 |
|
生活産業 |
42,642 |
106.4 |
|
合成樹脂 |
314,286 |
96.8 |
|
その他 |
44 |
95.7 |
|
合計 |
668,505 |
100.6 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①中期経営計画「NC2023」達成状況の分析
当連結会計年度は、3カ年の中期経営計画「NC2023」の最終年度となりました。経営成績を踏まえた「NC2023」の達成状況の分析は以下のとおりであります。
|
(百万円) |
NC2023 第163期 最終年度実績 |
NC2023 第163期 最終年度目標 |
|
売上高 |
766,022 |
800,000 |
|
営業利益 |
21,190 |
20,500 |
|
売上高営業利益率 |
2.8% |
2.6% |
|
経常利益 |
21,393 |
21,500 |
|
親会社株主に帰属する 当期純利益 |
20,000 |
22,500 |
|
ROE |
10.5% |
10%以上 |
|
ネットD/Eレシオ (倍) |
0.06倍 |
0.5倍以下 |
|
自己資本比率 |
46.8% |
概ね40~50% |
|
想定為替レート |
144.59円/USD |
120.00円/USD |
※1 「NC2023」最終年度目標数値・指標は、2022年5月10日公表。
※2 ネットD/Eレシオ=(有利子負債-現預金)/自己資本
売上高は、新規の連結子会社化や円安の寄与があったものの、大型TV向けフラットパネルディスプレイ(以下、FPD)の需要低迷などの影響を受け、目標に対して未達となりました。
営業利益は、売上高総利益率の上昇などにより、目標を上回りました。
経常利益は、支払利息など営業外費用が想定以上に増加したことなどにより、目標をやや下回りました。
親会社株主に帰属する当期純利益は、投資有価証券売却益が当初の計画を下回ったことにより、目標を下回りました。
ROEは、自己株式取得の実施等により、最終年度の目標を達成しました。
ネットD/Eレシオ、自己資本比率は、最終年度の目標を満たしており、財務の健全性は十分に確保できています。
報告セグメント別の進捗は、以下のとおりであります。
《情報電子事業》
|
(百万円) |
NC2023 第163期 最終年度実績 |
NC2023 第163期 最終年度目標 |
|
売上高 |
239,114 |
284,000 |
|
セグメント利益 |
6,904 |
6,300 |
|
セグメント利益率 |
2.9% |
2.2% |
売上高は、主に大型TV向けのFPD関連商材の販売が低迷し、目標に対して未達となりました。
セグメント利益(営業利益)は、主にリチウムイオン電池関連や再生可能エネルギー関連商材の売上高が増え、商材の構成が改善したことにより、目標を達成しました。
なお、同事業において、NC2023策定時に想定した主な収益基盤商材と成長分野商材は以下のとおりです。
|
収益基盤商材 |
FPD関連 デジタル印刷関連 |
|
成長分野商材 |
リチウムイオン電池関連 再生可能エネルギー |
《化学品事業》
|
(百万円) |
NC2023 第163期 最終年度実績 |
NC2023 第163期 最終年度目標 |
|
売上高 |
112,657 |
119,000 |
|
セグメント利益 |
2,788 |
2,600 |
|
セグメント利益率 |
2.5% |
2.2% |
売上高は、新規の連結子会社化の影響があったものの、自動車部品用原料の販売低迷などにより、目標に対して未達となりました。
セグメント利益(営業利益)は、販売価格の上昇などにより、目標を達成しました。
なお、同事業において、NC2023策定時に想定した主な収益基盤商材と成長分野商材は以下のとおりです。
|
収益基盤商材 |
樹脂原料・添加剤関連 コーティング(塗料・インキ)関連 |
|
成長分野商材 |
自動車部品原料関連 環境配慮型樹脂原料等 新規商材 |
《生活産業事業》
|
(百万円) |
NC2023 第163期 最終年度実績 |
NC2023 第163期 最終年度目標 |
|
売上高 |
53,597 |
52,000 |
|
セグメント利益 |
1,480 |
2,500 |
|
セグメント利益率 |
2.8% |
4.8% |
売上高は、主に新規の連結子会社化の影響により、目標を達成しました。
セグメント利益(営業利益)は、米国市場での水産加工品などの日本食向け商材の販売低調と利益率低下などにより、目標に対して未達となりました。
なお、同事業において、NC2023策定時に想定した主な収益基盤商材と成長分野商材は以下のとおりです。
|
収益基盤商材 |
医薬原料(新薬) ホームプロダクツ関連原料 |
|
成長分野商材 |
再生医療などの先端医療 ブルーベリーを中心とした農産品 |
《合成樹脂事業》
|
(百万円) |
NC2023 第163期 最終年度実績 |
NC2023 第163期 最終年度目標 |
|
売上高 |
360,471 |
344,800 |
|
セグメント利益 |
9,879 |
9,000 |
|
セグメント利益率 |
2.7% |
2.6% |
売上高は、主に新規の連結子会社化や円安の影響により、目標を達成しました。
セグメント利益(営業利益)は、主に売上高の超過に伴い、目標を達成しました。
なお、同事業において、NC2023策定時に想定した主な収益基盤商材と成長分野商材は以下のとおりです。
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収益基盤商材 |
自動車、OA、家電分野向け樹脂 製造・加工を含むフィルム関連 |
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成長分野商材 |
自動車向け高機能樹脂 スポーツ関連商材(グリップテープ) |
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローは、主に営業活動及び政策保有株式の売却等により獲得した資金を、当社の配当政策に基づく現金配当及び自己株式の取得による株主還元の実施、短期借入金の返済、NC2023の計画達成に向け、事業の拡大・新規ビジネスの開拓・将来の成長に向けた投資等に使用しました。これらの結果、現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末に比べ16,511百万円増加し、46,301百万円となりました。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、各営業部門の事業計画・投融資計画に照らして、必要な資金を内部留保や金融機関からの借入金及び社債を中心に調達し、その資金を運転資金や事業拡大に向けた投融資に使用しており、金融商品での運用や投機的な取引は行わないこととしております。
当連結会計年度は、営業活動と政策保有株式の売却を積極的に進めたことで獲得した資金を事業拡大のための投資や株主還元等に使用しました。
資金の流動性の維持、国内及び海外におけるグループ全体の運転資金の機動的かつ安定的な調達を行うため、取引銀行4行と200百万米ドル相当額の貸出コミットメント契約(複数通貨型)を締結しております。
国内の連結子会社及び海外の一部の連結子会社において、キャッシュ・マネジメント・サービスを導入しており、資金の効率化と流動性の確保を図っております。
これらの施策等により不測の事態に備え資金の流動性を維持しております。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成に当たって、資産、負債、収益、費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
a.棚卸資産の評価
主として移動平均法及び先入先出法による原価法によっており、期末における正味売却価額が取得原価より下落している場合には、正味売却価額をもって貸借対照表価額としております。
正味売却価額の算定方法については、期末前後での販売実績に基づく価額を用いる等、合理的に算定された価額を正味売却価額としております。なお、長期滞留等により営業循環過程から外れた棚卸資産など正味売却価額を合理的に算定することが困難な棚卸資産につきましては、帳簿価額を処分見込価額まで切り下げる等の方法により、収益性の低下を適切に貸借対照表に反映させております。
前期に計上した簿価切下額の戻入れにつきましては、主に洗替え法により当期に戻入れをおこなう方法を採用しております。
b.貸倒引当金の評価
「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
c.退職給付会計について
当社グループの従業員の退職給付に係る資産、退職給付に係る負債及び退職給付費用は、簡便法を採用している連結子会社を除き、割引率、退職率、予想昇給率、長期期待運用収益率、死亡率等の計算基礎を設定の上、数理計算結果に基づき算定しております。
退職給付債務の計算に用いる割引率と年金資産(企業年金制度に対して設定した退職給付信託を含む)の長期期待運用収益率は、特に重要な前提条件であります。割引率は安全性の高い債券(主として長期国債)の利回りを基礎として主として1.0%、年金資産の長期期待運用収益率は年金資産のポートフォリオ、過去の運用実績及び運用方針等を総合的に考慮して主として3.0%を使用しております。
また、他の基礎率も定期的に見直しており、基礎率を見直した場合や、退職給付債務の数理計算に用いた見積り数値と実績との差異、年金資産の期待運用収益と実際の運用収益との差異が生じた場合には、数理計算上の差異が発生し、将来の退職給付に係る負債及び退職給付費用を増加させるおそれがあります。
数理計算上の差異については、平均残存勤務期間以内の一定の年数(主として13年)で按分する方法により費用処理しております。
未認識数理計算上の差異については、税効果会計を適用の上、純資産の部におけるその他の包括利益累計額の退職給付に係る調整累計額に計上しております。
該当事項はありません。
当社グループの生活産業事業に属するPHARMASYNTHESE S.A.S.及びINABATA FRANCE S.A.S.の開発チームにて、主に医薬品原料及び化粧品原料の製造を行うための研究開発を行っております。
これは主に顧客からの依頼によるプロセス最適化とその少量生産、自社化粧品の開発及び技能の蓄積を目的としているものであります。
当事業に係る研究開発費は