第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 この文中には、将来に関する記述が含まれております。それらの記述は、当連結会計年度末時点において、入手可能な情報に基づいて当社グループが判断したものであり、不確定な要素を含んでおります。

 

(1)社是・経営理念

 当社は、「愛」(I)、「敬」(K)を社是と定め、「人を愛し、敬う」という人間尊重の精神に基づき、社会の発展に貢献することを経営理念としております。グローバルに事業を展開する商社グループとして、高い専門性や複合機能を活用して、顧客や社会のニーズに応えることで価値ある存在として常に進化を続けることを目指しています。

 

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(2)長期ビジョン「IK Vision 2030」

 この経営理念や目指す姿を踏まえ、2030年頃の当社グループの「ありたい姿」として、長期ビジョン「IK Vision 2030」を公表しています。この「IK Vision 2030」において、当社の根本が商社であることを再確認するとともに、創業以来、長年培ってきた専門知識を持つ人材、商社業のツールとなる製造・物流・金融機能、そして海外19カ国約70拠点で展開する拠点網などの経営資源を最大限活用することで商社機能の複合化と高度化を図り、顧客への付加価値の提供を更に進めて参ります。

 

長期ビジョン「IK Vision 2030」

連結売上高

1兆円以上を早期に実現

複合機能の高度化

商社機能を基本としつつも、製造・物流・ファイナンス等の複合的な機能の一層の高度化を図る

事業ポートフォリオ

情報電子・合成樹脂以外の事業の比率を1/3以上に

海外比率

70%以上

 

(3)中期経営計画「New Challenge 2026」

 当社グループは、長期ビジョン「IK Vision 2030」に向けた中期経営計画の第3ステージとして、2024年4月より、2027年3月期を最終年度とする3カ年の中期経営計画「New Challenge 2026(以下、「NC2026」)」をスタートしております。「NC2026」では、これまでから更に成長に軸足を移し、“投資による成長の加速”をメインテーマとしております。「NC2026」の概要は以下のとおりです。

 

■ 中期経営計画「NC2026」の概要

 ● 最終年度の目標数値・指標

 

2027年3月期

売上高

9,500億円

営業利益

270億円

経常利益

260億円

親会社株主に帰属する当期純利益

190億円

ROE

10%以上

ネットD/Eレシオ

0.5倍以下

自己資本比率

概ね50%前後

想定為替レート

145.00円/USD

 ※1 目標数値・指標は、2024年5月9日公表。

 ※2 ネットD/Eレシオ=(有利子負債-現預金)/自己資本

 

  ● キャピタルアロケーション(資本配分)

 「NC2026」期間中の3カ年のキャピタルアロケーション(資本配分)計画については、営業キャッシュフロー等による650億円程度のキャッシュインを想定しており、このうち50~60%程度を投資等に、40~50%程度を株主還元に配分する計画です。

 

   ● 株主還元の基本方針と政策保有株式の縮減方針

 株主還元については、以下のとおりです。政策保有株式の縮減方針については、2022年5月に公表した縮減方針にもとづき、着実に実施してまいります。

 

株主還元の基本方針

「NC2026」の期間中、

・一株当たりの配当額については前年度実績を下限とし、減配は行わず、継続的に増加させていくことを基本とする。(累進配当)

・総還元性向の目安としては概ね50%程度とする。

政策保有株式の

縮減方針

・中長期的に政策保有株式の縮減を更に進め、2027年3月末までに2021年3月末残高に対して概ね80%削減する。

※当初の方針である「「NC2023」期間中の3年間で政策保有株式の残高を2021年3月

 末残高に対して50%削減する」については既に達成済み

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ● 戦略の全体像

 「成長戦略」と「経営基盤戦略(財務戦略、サステナビリティ戦略、デジタル戦略)」に分類しており、それぞれの戦略の概要は以下のとおりです。成長戦略は、長期ビジョン「IK Vision 2030」に沿った形で展開しております。

 

成長戦略

長期ビジョン

戦略

連結売上高

1兆円以上

手段:投資の積極化による収益拡大

事業領域:環境関連ビジネス、食品等生活産業ビジネスの拡大

複合機能の高度化

複合機能(特に製造・物流)強化による差別化・収益性向上

事業ポートフォリオ

主要セグメント(合成樹脂・情報電子)の深耕

主要セグメントに並ぶ収益の柱の確立

海外比率70%以上

成長エリア(従来のアジア拠点に加え、特にインド、メキシコなど米州)の深耕

未開拓エリア(東欧等)への進出

 

経営基盤戦略

経営基盤

戦略

財務戦略

資本効率の更なる向上と累進配当を始めとする株主還元の重視

「資本コストや株価を意識した経営」の実践

(PBR1倍を常態的に超える株価水準の早期達成)

サステナビリティ戦略

全社推進の土台となるサステナビリティマネジメントの整備:

マテリアリティに沿った戦略とKPI・目標の設定及びモニタリング

デジタル戦略

経営情報インフラの高度化とグループ全体のセキュリティ強化

 

 

(4)2026年3月期連結業績予想

 2026年3月期の経営環境といたしましては、世界経済は一部の地域に足踏みがみられるものの、総じて緩やかな景気回復が続くとみております。一方で、米国の関税措置の影響による景気減速が懸念され、それらに伴う物価上昇の継続や金融資本市場の変動、また、ロシア・ウクライナや中東地域を巡る情勢の変動など、不透明な状況が続くと想定されます。

 米国の関税措置については、足元では事業や業績に対して特段の影響は生じておりません。今後については、関税措置の対象国や対象品目、発動日など流動的な状況であり、また卸売業という特性上、顧客の対応によって影響が大きく変化する可能性もあるため、現時点では、合理的な影響度合いや影響額の見積もりが困難であり、2026年3月期の連結業績見通しには織り込んでおりません。各セグメント・地域で、顧客との情報交換をより緊密に行うなど、情報の収集に努めてまいります。

 2026年3月期の連結業績見通しにつきましては、売上高870,000百万円、営業利益25,500百万円、経常利益25,500百万円、親会社株主に帰属する当期純利益19,500百万円を予想しております。

 なお、業績見通しの前提となる為替レートにつきましては、1USD=143.00円を想定しております。

 

連結

2026年3月期

売上高

8,700億円

営業利益

255億円

経常利益

255億円

親会社株主に帰属する

当期純利益

195億円

 

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが合理的であると判断する一定の前提に基づいており、実際の結果とは様々な要因により大きく異なる可能性があります。

 

(1)ガバナンス

 当社グループでは、サステナビリティ課題について全社的に取り組みをより推進するため、2021年10月に代表取締役社長執行役員を委員長とする「サステナビリティ委員会」を設置しました。

 同委員会は、副委員長をサステナビリティ担当の代表取締役専務執行役員が務めるとともに、4つのセグメントをそれぞれ担当する取締役1名及び執行役員2名と、主な管理部門長6名が委員を務めております。また、オブザーバーとして社外取締役7名、非業務執行取締役2名も同委員会に参加し、必要な意見を述べております。全取締役が同委員会に参加することで、同委員会を通して、取締役会としての監督機能を果たしております。

 同委員会は最低年1回開催(必要に応じて臨時開催)することを原則とし、当社グループのサステナビリティに関する方針及び施策の策定・承認・モニタリングを実施しております。

 取締役会においては、取締役会規程にてサステナビリティを巡る諸課題(気候変動などの地球環境問題への配慮、人権の尊重、従業員の健康・労働環境への配慮や公正・適切な処遇、取引先との公正・適正な取引、自然災害等への危機管理など)への取り組み状況を、最低年1回、担当取締役から取締役会へ報告することが定められております。加えて、四半期ごとに業務執行報告書を通じて、サステナビリティに関する取り組み状況を取締役会に報告しており、同委員会で審議・検討された内容も上記プロセスの中で報告が行われ、取締役会の監督を受けております。

 また、当社ではサステナビリティへの対応は当社の重要な経営課題と認識していることから、取締役の業績連動報酬※1の指標として「複数の外部評価機関(FTSE Russell及びMSCI)によるESGスコア」を設定して、取締役会のサステナビリティ課題への実効性を高めております。※2

 同委員会で決議された事項は、専任組織であるサステナビリティ推進部と主な管理部門員からなるサステナビリティ委員会事務局とが連携しながら実行・運営し、グループ全体のサステナビリティ活動を推進しております。また、サステナビリティ推進部では同委員会の有効な議論のために、各営業本部員及び主な管理部門員をメンバーとするサステナビリティ推進委員とともに、全社のサステナビリティに関連する情報を取りまとめ、提供しております。

 

※1 役職別固定報酬をベースに税金等調整前当期純利益(投資有価証券売却益を除く。)、資本収益性(ROICと

  ROE)、株価及び複数の外部評価機関(FTSE Russell及びMSCI)によるESGスコアの各水準に応じた係数を掛け

  て業績連動報酬を計算しております。

※2 従来、株式給付信託(BBT)の業績係数は連結売上高目標達成率と連結営業利益目標達成率により決定されておりましたが、2025年6月17日開催予定の取締役会にて、業績係数の算定指標の変更を付議する予定です。これが承認された場合、業績係数は連結営業利益目標達成率とグループエンゲージメントサーベイ達成率により決定されることとなります。連結営業利益目標達成率とは対外的に公表した中期経営計画に対する実績のことをいい、グループエンゲージメントサーベイ達成率とはサステナビリティ中期計画における従業員エンゲージメントサーベイKPI平均値に対する達成率のことをいいます。

 

サステナビリティ推進体制図

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サステナビリティ委員会で議論され、取締役会に報告された主なサステナビリティ関連事項

2021年度

サステナビリティ基本方針及び行動指針の制定/人権方針の制定

2022年度

国連グローバル・コンパクトの参加/マテリアリティの特定/2050年カーボンニュートラル宣言/TCFD提言に沿った情報開示/外部ESG評価状況(FTSE・MSCI等)/GHG 排出量算定(Scope1,2,3)/TCFD(シナリオ分析)進捗/人権デュー・ディリジェンス進捗

2023年度

TCFD及びTCFDコンソーシアムへの賛同/TCFD提言に基づく情報開示/GHG 排出量算定(Scope1,2,3)/人権デュー・ディリジェンス進捗

2024年度

サステナビリティ中期計画2026策定/カーボンニュートラル移行計画/外部ESG評価状況(FTSE・MSCI等)/人権方針改定および持続可能なサプライチェーン方針制定/サステナビリティ中期計画2026に対する2023年度実績/再エネ電力証書の購入計画

 

(2)戦略

 当社グループでは、経営理念「『愛』『敬』の精神に基づき、人を尊重し、社会の発展に貢献する」を掲げ、信頼を礎とする人間尊重の経営を続けてまいりました。「人、そして社会を大切にしたい」という当社グループの想いは、国際社会が目指す「持続可能な社会の実現」にも貢献するものと考えます。2021年11月、社会の要請に応えサステナビリティの取り組みをより強化していくため、人間尊重の経営理念を基本としながら環境・社会の課題や国際的な潮流を踏まえて、新たに「サステナビリティ基本方針」と9つの項目から構成される「サステナビリティ行動指針」を策定しました。

 また、2022年6月には、地球や社会の様々な課題の解決と持続的な企業価値の向上に向けて、6つのマテリアリティ(優先的に取り組むべき重要課題)を特定しました。当社グループは、気候変動・資源循環・自然資本などの環境に関する課題や、人権・労働などの社会に関する課題について、事業を継続する上でのリスクであると認識しているとともに、新たな成長機会にもなると考えております。そのため、サステナビリティを経営の重要課題の一つとして注力しております。サステナビリティの取り組みをさらに強化し、持続可能な社会の実現と当社グループの持続的な成長という長期的なゴールに向かい着実に歩を進めるため、マテリアリティを定めました。

 マテリアリティの特定プロセス及びマテリアリティマップについては、当社webサイトに掲載しております。

 

■稲畑産業グループのマテリアリティ

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 2024年5月には、マテリアリティに対処すべく、新たに「サステナビリティ中期計画2026」を策定しました。概要については、以下のとおりです。詳細につきましては、当社webサイトをご参照ください。なお、中期計画の「4.マテリアリティに関わる長期的なビジョン、戦略及びKPI・目標」につきましては、(4)指標及び目標において記載しております。

 中期計画のKPI・目標に対する進捗をサステナビリティ委員会で毎年モニタリングするとともに、取締役会の監督を受けることで、達成に向けて着実に取り組みを進めております。進捗については、各種媒体で報告してまいります。2024年度の実績については、2025年夏頃を目途に開示を予定しております。

 

 

■「サステナビリティ中期計画2026」概要

稲畑産業グループのサステナビリティ

マテリアリティ・解説と関連セグメント

マテリアリティに関わるリスク・機会と主な取り組み

マテリアリティに関わる長期的なビジョン、戦略及びKPI・目標

 

 また、当社グループにおける人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針については、以下のとおりです。

 稲畑産業グループにとって人材は最も重要な財産であり、多様な背景や強みを持つ従業員がそれぞれの能力を最大限に発揮できることが、当社グループの競争力を高め、持続的な成長につながると考えております。そのため、人材の価値を最大限に引き出す環境整備や人材開発を重要な経営課題の1つとしております。

 グローバルな競争が激化するなかで、事業を持続的に発展させるためには多様な価値観が重要であるとの認識に立ち、当社グループでは様々なバックグラウンドを持つ社員が、グローバルで活躍しております。個々の持つ力を存分に発揮するために、人種・宗教・国籍・年齢・性別・性的指向や障がいの有無などを問わず、採用・配置・評価・処遇・登用が公平であるための施策・制度強化に注力しております。社員一人ひとりの個性や能力を尊重し、多様性を受け入れて生かし、一体感を持って働ける組織風土の醸成に努めております。

 当社の人材育成・能力開発は、「愛」「敬」の精神と「経営理念 Mission」を土台とし、「価値観 IK Values」を共有し、「目指す姿 Vision」を実現できる人材を育てることに他なりません。多様な業務経験と成長機会の提供、役割に応じた研修の実施を通して、専門性を有し、国内外で組織・事業を牽引する人材を育成します。世界中で事業を行う当社グループにとって、国境を問わずグローバルな視野で国際社会と共生し、新しい価値を生み出すことができる「グローバル人材」の育成は重要な課題です。

 「価値創造を担う人的資本の育成・強化」を当社グループのマテリアリティとし、新たな働き方改革やダイバーシティ&インクルージョン、従業員エンゲージメント、人材育成・能力開発、労働安全衛生等の推進を掲げ、制度の一層の拡充や教育などの取り組みの充実を図っております。

 2024年5月に発表した「サステナビリティ中期計画2026」においては、人的資本戦略の中でも「持続的な成長を支える従業員のwell-being(身体的・精神的・社会的に満足な状態)の向上」「多様な個を最大限に活かすダイバーシティ&インクルージョンの推進」「健康経営の更なる推進」「人的資本投資への注力」を3カ年の注力戦略として掲げ、KPI・目標を設定しました。KPI・目標については、(4)指標及び目標をご参照ください。

 

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 また、当社グループは、気候変動の影響及び対策の必要性を十分認識し、事業を通じて地球環境の保全に努めることを「サステナビリティ基本方針・行動指針」や「稲畑産業コンプライアンス宣言」で表明しております。2022年6月に発表したマテリアリティにおいても「脱炭素社会・循環型社会への貢献」を掲げ、気候変動をはじめとする地球環境問題を経営の重要課題の1つとしております。

 気候変動は、当社グループにとってリスクである一方、新たな事業機会をもたらすものでもあると考えており、GHGの排出量削減に努めるとともに、脱炭素社会に貢献する商材やソリューションの提供を進めております。

 2024年5月に発表した「サステナビリティ中期計画2026」においては、「事業活動におけるカーボンニュートラルの達成」「事業を通じた地球環境への貢献」を戦略として掲げ、KPI・目標を設定しました。中でも、GHG排出量削減については、2022年6月に発表した「2050年度カーボンニュートラル達成」という長期目標に向けて、2026年度・2030年度の中間目標を定めました。本目標は、パリ協定で示された1.5℃目標に整合する設定としました。2024年度からは非化石証書の購入を通じた再エネ電力の導入を開始し、着実にGHG排出量削減を進めております。

 同年度からサステナブルファイナンスへの取り組みも開始しました。「NC2026」で財務戦略の一つとして掲げた「サステナビリティ・ファイナンスを含めた資金調達手段の多様化」に沿ったもので、いずれも当社初となるグリーンローンの契約締結およびグリーンボンドの発行を行いました。調達した資金は、バイオマス発電所の建設資金や、環境負荷低減、防災対応力を高めた東京本社ビルの新築(建替え)資金に充当します。

 加えて、当社は金融安定理事会(FSB)が設置した気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)が2017年6月に公表した提言に賛同するとともに、気候変動起因による自社事業活動への影響を適切に把握し、その内容を開示しております。

 

※TCFD:G20の要請を受け、2015年に設立された「気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」の略称。気候変動が金融市場に重大な影響をもたらすとの認識を背景に、2017年に公表された最終報告書(TCFD提言)では、企業等に気候変動に伴うリスクと機会等の情報開示を求めている。

 

■TCFD提言が求める開示推奨項目と当社対応のサマリー

要求項目

項目の詳細

当社対応

ガバナンス

気候関連のリスク及び機会に係る組織のガバナンス体制の開示

気候変動を含むサステナビリティ課題について、代表取締役社長執行役員を委員長とする「サステナビリティ委員会」にて審議・検討しております。全取締役が同委員会に参加することで、同委員会を通して、取締役会としての監督機能を果たしております。

取締役会では、取締役会規程にてサステナビリティ課題への取り組み状況を担当取締役から取締役会へ報告することが定められております。同委員会で審議・検討された内容も上記プロセスの中で適切に報告が行われ、取締役会の監督を受けております。

戦略

気候関連のリスク及び機会に係る事業(ビジネス・戦略・財務計画)への影響の開示

4℃シナリオについては、異常気象の激甚化による国内外拠点への被害が想定されましたが、事業を大きく揺るがすほどのリスクではないと想定されました。また、機会として気温上昇や気象パターンの変化に対する「適応商材」の需要増加が見込まれ、自社のレジリエンス性は保たれるという結論に至りました。

1.5℃シナリオについては、カーボンプライシングの導入や電力価格の高騰による操業コストの増加がリスクとして挙げられましたが、それ以上に低炭素や環境配慮に寄与する技術や商材の将来的な成長による収益機会の獲得が大きいことが確認されました。

中期経営計画「NC2026」で掲げられた成長戦略である「環境関連ビジネスの拡大」及び「サステナビリティ中期計画2026」で掲げられた「事業を通じた地球環境への貢献」という戦略が、今後の脱炭素社会における自社の成長に大きく関連する事項であることを再認識しております。

リスク管理

気候関連のリスクに対する組織の識別・評価・管理プロセスの開示

当社では気候変動リスク及び機会に関して、サステナビリティ委員会において管理を行っております。同委員会にてシナリオ分析等を元に定性・定量の両面から抽出・検討されたリスク及び機会を識別・評価・管理し、必要に応じて取締役会に報告し、監督を受けております。

取締役会では、同委員会からの報告に加え、リスク管理室や財務経営管理室、コンプライアンス委員会などから報告されるその他リスクを加味し、統合的に重要性の高い全社リスクを監督しております。

指標と目標

気候関連のリスク及び機会を評価する際に用いる指標と目標の開示

当社グループでは、パリ協定で掲げられた「気温上昇を1.5℃未満に抑える」という世界的な目標達成にコミットすべく、2050年度カーボンニュートラルという長期目標を設定しております。(連結グループのスコープ1,2が対象)また、「サステナビリティ中期計画2026」の中で「GHG排出量を2022年度比2026年度までに25%削減、2030年度までに42%削減(連結グループのスコープ1,2が対象)」という中間目標を定めました。本目標は、パリ協定で示された1.5℃目標に整合する設定としました。

2022年3月期からは当社のサプライチェーン全体の排出量を把握するため、スコープ3の算定を行っております。現在は単体のみですが、今後は算定対象範囲を広げていきます。

 

なお、TCFD提言に基づく情報開示の詳細については、コーポレート・ガバナンス報告書(2025年6月18日開示予定)をご参照ください。

 

(3)リスク管理

 当社では、従来のリスク管理手法だけでは不確実な要素を含む長期的な影響を管理するには十分ではないと考え、サステナビリティ関連のリスク及び機会に関しては、サステナビリティ委員会において管理を行っております。シナリオ分析等を基に定性・定量の両面から抽出・検討されたリスク及び機会を同委員会にて識別・評価し、それらを中期計画の指標・目標に反映し、目標に対する進捗を同委員会にてモニタリングすることで、当該リスク及び機会を管理しております。また、全取締役が同委員会に参加することで、同委員会を通して、取締役会としての監督機能を果たすとともに、必要に応じて取締役会に報告し、監督を受けております。

 「サステナビリティ中期計画2026」において、改めて、マテリアリティごとのリスク及び機会とそれらに対応する主な取り組みを整理し、指標・目標に反映しました。詳細につきましては、当社webサイトに掲載しております「サステナビリティ中期計画2026」をご参照ください。

 

 全社に関わる多様なリスクについては、発生の未然防止および発生時の対応を図るために、各対応組織が継続的に識別・評価・管理するとともに、関連する委員会・会議体が連携して適切な対応が可能となるマネジメント体制を構築しております。また、重要な内容については、必要に応じて取締役会に報告を行っております。サステナビリティに関するリスク及び機会については、上記の通り同委員会において識別・評価・管理を行い、適宜取締役会へ報告しております。

 取締役会は、同委員会から報告されるサステナビリティに関するリスク及び機会に加え、各委員会や担当組織から報告されるその他のリスクを加味し、統合的に重要性の高い全社リスクを監督しております。

 なお、統合的に重要性の高いリスクについては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」をご参照ください。

 

(4)指標及び目標

 「サステナビリティ中期計画2026」において、以下のとおり、GHG排出量削減の2030年度・2050年度目標を含む2030~2050年度頃の長期的なビジョンを示すとともに、長期的なビジョンからバックキャストし、マテリアリティに沿った2024年度~2026年度の3カ年のKPI・目標を設定しました。

 中期計画の進捗については、サステナビリティ委員会においてモニタリングするとともに、取締役会の監督を受けることで、着実に取り組みを進めております。進捗については、各種媒体で報告してまいります。2024年度の実績については、2025年夏頃を目途に開示を予定しております。

 

 

■長期的なビジョン

 <長期目標>

 GHG排出量(スコープ1,2):2030年度までに2022年度比42%削減/2050年度カーボンニュートラル達成

 

 <長期的な目指す姿>

・脱炭素社会/循環型社会/豊かな自然資本が実現している社会・地球。

・人々が人権を尊重され、安全・安心を実感し、各々のwell-beingが保たれている社会。

・ビジネスパートナーと共創して生み出される、当社の提供する価値が、社会において「なくてはならない価

 値」として選ばれ、持続的に成長している状態。

・持続的な成長に欠かせない国内外のすべての従業員が、心身共に健康であり、各々にフィットした働き方・適

 切な役割でイキイキと働き、well-beingが高い状態。

 

<関連するSDGs>

 

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■マテリアリティに沿った戦略及びKPI・目標

持続的な価値創出

・ 脱炭素社会・循環型社会への貢献/自然資本の持続可能な利活用

・ 安全・安心で豊かな生活への貢献

・ レジリエントな調達・供給機能を通じた価値提供

 

戦略

KPI・目標(2024年4月~2027年3月)

バウンダリー

事業活動における

カーボンニュートラルの達成

GHG排出量(スコープ1,2)を2022年度比25%削減

連結

事業を通じた

地球環境への貢献

環境関連ビジネスの売上高1,000億円※1を達成

連結

化学物質規制管理の強化による安全・安心な品質の確保

国内外における化学物質規制の動向をタイムリーに把握・共有し、管理体制を強化

連結

サプライチェーンマネジメントの強化による

調達・供給機能の強靭化

責任ある調達に関する当社姿勢を明確にし、社内外に浸透

単体

人権に配慮した

サプライチェーンの確立

選定した事業について人権DDのサイクル※2をモデルケースとして確立

単体

 

※1 「サステナビリティ中期計画2026」の最終年度で想定している環境関連ビジネスの分野別比率は以下のとおり。

・ エネルギー・電力(再生可能エネルギー関連、電池関連など):約70%

・ 資源・環境(持続可能な原材料、リサイクル、水関連など):約20%

・ 素材・化学、農業・食料、交通・物流、環境認証 :約10%

※2 人権DDに関するサイクルとは、「責任ある企業行動のためのOECDデュー・ディリジェンス・ガイダンス」で示されている以下の「デュー・ディリジェンス・プロセス及びこれを支える手段」のこと。

① 責任ある企業行動を企業方針及び経営システムに組み込む

② 企業の事業、サプライチェーン及びビジネス上の関係における負の影響を特定し、評価する

③ 負の影響を停止、防止及び軽減する

④ 実施状況及び結果を追跡調査する

⑤ 影響にどのように対処したかを伝える

⑥ 適切な場合是正措置を行う、または是正のために協力する

 

 

事業継続の基盤

・ 「愛」「敬」の精神に基づく人権尊重と地域社会との共生

・ 価値創造を担う人的資本の育成・強化

・ ガバナンス・リスクマネジメントの強化

 

戦略

KPI・目標(2024年4月~2027年3月)

バウンダリー

持続的な成長を支える従業員のwell-being (身体的・精神的・社会的に満足な状態)の向上

①従業員エンゲージメントサーベイの回答率90%以上、「今の会社

 で働いていることに満足している」「会社の理念・ビジョン・

 経営方針に共感でき、その達成に参加したいと思える」の肯定

 的回答率80%以上、全項目の肯定的回答率70%以上※3

②人権DDデジタルサーベイの実施バウンダリーをグループまで拡

 大

連結

多様な個を最大限に活かすダイバーシティ&インクルージョンの推進

女性管理職比率2028年3月まで8以上、2030年までに

 10%

キャリア採用比率50程度を維持

男性育休取得率100※4

④障害者法定雇用率を上回る状態の維持

⑤海外現地法人におけるナショナルスタッフの幹部登用の積極化

①~④ 単体 ⑤

連結

健康経営の更なる推進

精密検査受診率100※5

②ストレスチェックの総合健康リスクを現状維持※5

単体

人的資本投資への注力

①従業員一人当たりの教育研修費用※6を、毎年、前年度実績を上

 回る

海外駐在経験率40程度を維持

単体

 

※3 従業員エンゲージメントサーベイの肯定的回答率とは、従業員による5段階評価(5.とてもそう思う/4.そう思う/3.可もなく不可もなく/2.そう思わない/1.全くそう思わない)のうち、肯定的な回答である5と4

の占める割合のこと。

※4 当社では育休取得可能期間を「子どもが3歳になるまで」としていることを踏まえ、配偶者が出産した男性従業員のうち全員が、子どもが生まれた年度を含む3カ年度以内に育休を取得した場合を100%とする。

※5 精密検査受診率とは、健康診断後の要精密検査受診対象従業員のうち、実際の精密検査受診従業員の割合のこと。

総合健康リスクとは、厚生労働省がストレス評価の方法として提供しているもので、ストレスチェックから得 られた「心理的な仕事の負担(量)」「仕事の裁量度」/「上司からの支援度」「同僚からの支援度」の4尺度を用いて算出される、職場の環境が従業員の健康にどの程度影響を与えるかを総合的に評価する指標。全国平均の値を100として計算されており、100を超えると職場の健康リスクが高い状態、下回るとリスクが低い状態と考えられるため、数値が低いほど高評価。当社は現状100を下回る状態。

※6 教育研修費用は、稲畑産業単体で実施する集合研修や外部研修、動画研修等にかかる費用。2023年度の教育研 修費用は、67,496円/人。(2024年度実績は、2025年夏頃開示予定。)

 

3【事業等のリスク】

当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を及ぼす可能性のある主要なリスクには以下のようなものがあります。当連結会計年度に実施した「取締役会の実効性評価」(自己評価)におけるリスク評価分析の結果を踏まえ、当社グループの経営成績等への影響や発現可能性という観点から、重要性が高いと考えられるリスクから順に記載しております。

なお、これらのリスクは必ずしも全てのリスクを網羅したものではなく、想定外のリスクや重要性が低いと考えられる他のリスクの影響を将来的に受ける可能性があります。また、この文中には、将来に関する記述が含まれております。それらの記述は、当連結会計年度末時点において、入手可能な情報に基づいて当社グループが判断したものであり、不確定な要素を含んでおります。

 

(1)海外活動に潜在するリスク

 当社グループの海外における生産及び販売活動は、東南アジアや北東アジア、北米、欧州と多数の地域に及びます。これらの海外市場への事業進出には、予期しない法律または規制の変更、不利な政治または経済要因、人材の採用と確保の難しさ、未整備の技術インフラ、潜在的に不利な税制の影響、その他の要因による社会的混乱などのリスクが内在しております。

 当社グループは、各国法令、環境法規制、社会情勢・取引先動向等に注視し、変化に合わせた迅速な対応を実施できるよう体制を整備し、それらリスクの低減に努めております。

 当連結会計年度における所在地別の売上高では、アジア合計が46%であり、最も影響を受ける地域であります。

 感染症流行等の非常時の対策としては、海外の主要な拠点において事業継続計画(BCP)を策定、運用しております。

 

(2)事業投資に係るリスク

 当社グループでは、事業展開をするにあたり、合弁・ジョイントベンチャーなど実際に出資を行い、持分を取得するケースが多々あります。特に連結対象となる関係会社に対する投資については当該グループ会社の財政状態及び経営成績の動向により、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、商社ビジネス拡大を主たる目的としたマイノリティー投資を基本としており、マジョリティー投資については、リスク・金額を限定して行っております。

 NC2026では全社成長戦略として投資の積極化による収益拡大を目指しております。重要性の高い新規投資案件については、M&Aを行う専門部署が営業部門等と連携して定量面・定性面からリスク等の評価・分析を行ったうえで、経営者がメンバーとなる審査会議で審議を行います。投資実行後、定期的にモニタリングを行い、一定の基準に満たない案件などについては、適宜、対策を講じるよう努めております。

 

(3)人材の育成・確保に係るリスク

 商社事業を核とする当社グループにとって、人材は最も重要な財産であり価値創造の源泉です。持続的な企業価値向上のためには、展開する4つの事業分野のみならず、経営・財務・ITなど経営基盤を支える専門分野に精通した優れた多様な人材の育成・確保が日本及び海外拠点において必要です。

 人的資本の育成・強化を重要な経営課題と捉え、社内体制の整備を進め、当社グループの価値創造を担う人材の育成・確保に努めておりますが、一方で少子高齢化の進行や人材の流動化の影響により必要な人材確保が困難となる場合や、人材育成が順調に進まない場合、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)取引先の信用リスク

 当社グループ事業は国内外の多数の取引先に対して信用を供与しております。当社グループにおいては海外取引先も含めたグローバルな与信管理を行ってはおりますが、必ずしも全額の回収が行われる保証はありません。従いまして、取引先の不測の倒産・民事再生手続等による貸倒損失や貸倒引当金の計上を通して、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 当連結会計年度末時点において、当社グループの受取手形及び電子記録債権の金額は29,691百万円、売掛金は173,813百万円、棚卸資産の金額は86,732百万円であり、その合計額は総資産の66%を占めております。重要性が高い与信供与については、経営者がメンバーとなる審査会議で審議を行います。売掛金及び棚卸資産については、連結グループ各社の残高推移を月次ベースでモニタリング管理しております。

 

(5)事業再構築に係るリスク

 当社グループは、事業の選択と集中の推進のため、不採算事業からの撤退、子会社や関連会社の売却・再編による事業の再構築を継続しております。これらの施策に関連して、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。各国政府の規制や雇用問題等によって、事業再構築の計画が適時に実行できない可能性もあります。また、当社グループが事業再構築の実施により、当初の目的の全部または一部を達成できる保証はありません。なお、撤退検討基準を設けて、該当する当社グループ会社に対しては審査会議において撤退等の審議を行っております。

 

(6)商品市場の変動リスク

当社グループが取り扱う、情報電子材料、ケミカル原料、食品、合成樹脂の多くは商品相場の変動に影響を受けます。そのため市況の変動への弾力的な対応ができなかった場合、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性が生じることになります。各営業部門にて、市場の情報を収集して、価格動向を注視するとともに、在庫管理を徹底しております。

当連結会計年度においては、生活産業事業における食品ビジネスで在庫取引を行っており、米国市場での水産加工品などの日本食向け商材の価格下落の影響を受けました。

 

 

(7)品質に係るリスク

当社グループは商社グループでありますが、合成樹脂コンパウンド、プラスチックフィルム、医薬品原料、水産加工品等の製造・加工会社を国内外に有しております。それらで製造・加工する製品については、信頼性や安全性を確保できるよう品質管理に努めております。また、商社として情報電子、化学品、生活産業、合成樹脂の4つの事業分野において取引先より仕入・販売する多様な原料・商材についても、グローバルに変化するそれら原料・商材に係る環境や安全関連の法規制、規格の動向等を把握して、品質管理に努めております。

しかしながら、品質問題を完全に回避することは困難であり、当該問題により生じた損失について、当社グループが責任を負う可能性があります。その場合、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(8)情報システム・情報セキュリティに係るリスク

当社グループは、商社グループとして事業を展開する上で、取引先の機密情報や個人情報及び当社グループの機密情報や個人情報を有しております。これら情報の外部流出や破壊、改ざん等が無いように、「情報セキュリティ規程」を制定し、情報管理手続きを定めたマニュアルを整備して、グループ全体で管理体制を構築し、徹底した管理と情報セキュリティ強化、従業員教育等の施策を実行しております。規程・マニュアル等については、随時見直しを行い、新たなリスクやテクノロジーに対応するよう努めております。

また、働き方改革の推進等によりリモート環境での業務が増加する傾向にあることを踏まえ、従来のウィルス対策ソフトだけではなく、端末の挙動を監視するエンドポイントセキュリティシステムを導入する等、ゼロトラストの考え方に沿ったセキュリティ強化に努めております。まず、セキュリティインシデントに対して、迅速かつ正確に対応するために社内に対応チームとしてのCSIRT(Computer Security Incident Response Team)を立ちあげて社内外の情報連携を強化するとともに、さらに、外部セキュリティオペレーションセンター(SOC)による24時間/365日の監視を行っております。そして、サイバー攻撃等の被害による財政状態への悪影響を低減するために当社グループに対してサイバーセキュリティ保険に加入しております。

しかしながら、昨今サイバー攻撃はますます高度化しているため、外部からの予期せぬ不正アクセス等を完全に排除することは困難であり、そのような不測の事態が発生した場合、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(9)為替の変動リスク

当社グループは、海外の事業展開における製品、原材料の生産と販売活動及び貿易活動を行っております。原則として為替予約等によるヘッジ取引を行っておりますが、外貨建取引等に伴う為替レート変動の影響を受ける可能性があります。また、各地域における売上、費用、資産を含む現地通貨建ての項目は、連結財務諸表の作成のために円換算されており、換算時の為替レートにより、円換算後の価値が影響を受ける可能性があります。

当連結会計年度における為替差損は811百万円となり、為替換算調整勘定は28,148百万円となりました。

 

 

(10)環境に係るリスク

当社グループは、国内外において4つの事業分野で幅広い商材を取り扱っており、これら商材の製造・販売は当該地域の環境規制やエコ商材への変更等の影響を受ける可能性があります。合成樹脂事業においては、脱プラスチック商材への変更の影響を受ける可能性があります。仕入先の分散化に取り組むと共に、脱炭素社会・循環型社会への貢献に向けて、リサイクル商材など環境負荷を低減する商材の販売に各事業において注力しております。

また、気候変動リスクについては、2023年4月に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)に賛同すると共に気候変動起因による自社事業活動への影響を適切に把握し、その内容を開示しております。詳細は、コーポレート・ガバナンス報告書(2025年6月18日開示予定)をご参照ください。

 

(11)金利に係るリスク

当社グループは、営業活動や事業投資等の資金を金融機関からの借入又は社債発行等を通じて調達しております。国内外の金利動向を把握し、固定・変動調達比率を調整することなどで金利リスク管理を行い、支払利息の低減に努めておりますが、金利水準の急上昇等により当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

当連結会計年度における支払利息は1,485百万円となりました。

 

(12)法規制に係るリスク

当社グループは、事業展開する各国において、事業・投資の許可、国家安全保障またはその他の理由による輸出制限、関税をはじめとするその他輸出入規制等、様々な政府規制の適用を受けております。これらの制限を遵守できなかった場合は、コストの増加につながる可能性があります。従いまして、これらの規制は当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

当連結会計年度における海外売上高比率は59%と高く、輸出入規制に大きな影響を受ける可能性があります。そのため、社内に輸出管理委員会を設置し、リスクの軽減に努めております。

 

(13)自然災害等のリスク

当社グループが事業を展開する国や地域において、地震、津波、台風等の自然災害、または感染力の強い感染症が発生した場合には、当社グループの社員・事務所・設備の被害により、当社事業に悪影響を及ぼす可能性があります。また、これらの災害による、サプライチェーンの分断や当社グループが取り扱う商材の市場における需給変動等により、当社グループの経営成績及び財政状況に影響を及ぼす可能性があります。

これら災害の悪影響に対しては、当社グループの危機対応の基本方針に基づいた事業継続計画(BCP)を策定し、社員の安全確保を最優先に事業継続を行いますが、全ての被害や悪影響を回避できるとは限らず、将来の当社グループの事業に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(14)保有有価証券の時価下落に係るリスク

当社グループではビジネス戦略上多数の会社の株式等に出資または投資しております。株式市場の動向悪化、または出資先の財政状態の悪化により、保有有価証券の減損リスクがあります。

当連結会計年度末における投資有価証券の計上額は36,230百万円となりました。また、特定投資株式の保有方針や保有の合理性、銘柄ごとの詳細については「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (5)株式の保有状況」に記載しております。

 

(15)退職給付債務の変動リスク

当社グループの従業員退職給付費用及び債務は、割引率等数理計算上で設定される前提条件や年金資産の期待収益率に基づいて算出されております。実際の結果が前提条件と異なる場合、または前提条件が変更された場合、その影響は計上される債務に影響を及ぼします。また、損益面では、当該影響額は累積され、将来にわたって規則的に認識されるため、一般的には将来期間において認識される費用に影響を及ぼします。また、年金資産には退職給付信託として上場有価証券を信託しているため株価の変動の影響を受けやすく、割引率の変動及び年金資産運用の結果による損益のブレにより当社グループの年金費用は増減します。株価の下落、割引率の低下や年金資産運用利回りの悪化は当社グループの業績と財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

当連結会計年度末における退職給付に係る負債の計上額は2,134百万円となりました。

 

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①経済環境

 当連結会計年度における世界経済は、地域ごとに差はあるものの、総じて回復傾向でした。

 米国では、個人消費や政府支出が増加し、景気は拡大しました。中国では、政策効果により生産や輸出は増加しましたが、消費や設備投資は横ばいにとどまるなど、回復に足踏みがみられました。アジア新興国では、インドの景気は拡大、インドネシアは緩やかに回復しました。一方、タイでは景気が弱含んでいます。欧州では、ユーロ圏では、消費や設備投資を中心に回復の動きがみられましたが、ドイツでは回復に足踏みがみられました。また、英国では、消費や生産を中心に回復に足踏みがみられました。

 日本経済は、設備投資などを中心に緩やかに回復しました。個人消費は一部に足踏みがみられるものの、持ち直しの動きとなりました。また、企業収益や雇用情勢も総じて改善しました。

 

②財政状態及び経営成績の状況

a.財政状態

(資産)

 当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末に比べ14,651百万円増加(対前期比3.4%増)し、441,972百万円となりました。

 流動資産の増加5,971百万円は、主に売掛金並びに電子記録債権が減少したものの、現金及び預金が増加したこと等によるものであります。

 固定資産の増加8,680百万円は、主に無形固定資産、投資有価証券並びに退職給付に係る資産が増加したこと等によるものであります。

 

(負債)

 当連結会計年度末における負債合計は、前連結会計年度末に比べ4,851百万円増加(同2.2%増)し、225,416百万円となりました。

 流動負債の減少20,769百万円は、主に短期借入金並びに支払手形及び買掛金が減少したこと等によるものであります。

 固定負債の増加25,620百万円は、主に社債並びに長期借入金が増加したこと等によるものであります。

 

(純資産)

 当連結会計年度末における純資産合計は、前連結会計年度末に比べ9,800百万円増加(同4.7%増)し、216,555百万円となりました。これは、主にその他有価証券評価差額金が減少したものの、利益剰余金並びに非支配株主持分が増加したこと等によるものであります。

 この結果、自己資本比率は47.1%(前連結会計年度末より0.3ポイント増加)となりました。期末発行済株式総数に基づく1株当たり純資産額は3,827円53銭(前連結会計年度末より203円52銭増加)となりました。

 

b.経営成績

 当連結会計年度における売上高は、837,838百万円(対前期比9.4%増)となり、過去最高を更新しました。利益面では、営業利益は25,824百万円(同21.9%増)、経常利益は26,134百万円(同22.2%増)となり、いずれも過去最高を更新しました。親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に負ののれん発生益等を計上しましたが、当連結会計年度は負ののれん発生益の計上がなかったため、19,833百万円(同0.8%減)となりました。

 セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。

 

《情報電子事業》

 情報電子事業は、フラットパネルディスプレイ(以下、FPD)関連、プリンター、複写機関連材料などの販売が回復し、売上が増加しました。また、全体的に利益率が向上し、セグメント利益(営業利益)は大きく増加しました。

 FPD関連は、中国などで末端需要の回復が鈍く、パネルメーカーが生産調整を実施するなど、大型TV向けは低調でした。一方、モバイル、タブレットなどの有機ELパネルへの移行が進んだこともあり、車載向けや有機EL関連は堅調に推移しました。なお、第4四半期に入り、中国の景気刺激策の効果などにより、パネルメーカーの稼働は回復しています。

 LED関連は、中国での屋外ディスプレイ向けで在庫調整が発生し、販売が減少しました。

 インクジェットプリンター関連は好調に推移しました。コンシューマー向けは、前期までの在庫調整が終了し、消耗品関連原料、部材とも販売が増加しました。産業向けも、食品・飲料パッケージ用途などが好調で、関連材料の販売が増加しました。

 複写機関連では、オフィス向けトナーの在庫調整が終了し、関連材料の販売が増加しました。

 太陽電池関連は、安価なパネルが欧州等に流出した影響などからグローバルで価格競争が激化し、欧米を中心に販売が減少しました。

 二次電池関連は、EVの販売鈍化を背景に、グローバルで販売が大幅に減少しました。

 フォトマスク関連は、半導体向けは堅調、液晶向けも需要は堅調でしたが、顧客によってやや差があり、関連材料の販売はやや減少しました。

 半導体関連は好調に推移しました。主に中国向けの需要増や、AI向け半導体材料の販売が寄与したほか、大型の装置の販売もありました。

 電子部品関連は、在庫調整は一巡しましたが、実需の回復が遅く、販売はほぼ横ばいでした。

 これらの結果、売上高は264,056百万円(同10.4%増)となりました。セグメント利益(営業利益)は8,477百万円(同22.8%増)となりました。

 

《化学品事業》

 化学品事業は、樹脂原料・添加剤や製紙用薬剤、建築資材関連などのビジネスが堅調に推移、また、海外への販売が拡大し、売上が増加しました。

 樹脂原料・添加剤は、ウレタン関連の販売は減少しましたが、海外での新規ビジネス獲得などもあり、販売が増加しました。

 自動車部品用の原料は、主にEVの販売鈍化の影響を受け、販売が減少しました。

 塗料・インキ・接着剤分野は、自動車向けや建材向けが低調で数量はやや減少したものの、販売単価の上昇もあり、ほぼ前年並みでした。

 製紙用薬剤は、情報用紙向けの在庫調整が一巡し、販売が増加しました。

 建築資材関連は、新設住宅着工戸数は減少しましたが、ハウスメーカー向けの拡販や、集合住宅向けの増加により、販売が増加しました。

 これらの結果、売上高は118,298百万円(同5.0%増)となりました。セグメント利益(営業利益)は2,948百万円(同5.7%増)となりました。

 

《生活産業事業》

 生活産業事業は、ライフサイエンス関連、食品関連とも、売上はほぼ横ばいでした。

 ライフサイエンス関連は、防殺虫剤の原料販売は堅調でしたが、医薬品関連が顧客の在庫調整などの影響を受けました。

 食品関連は、農産品は国内向け冷凍野菜の販売が好調でしたが、海外向け冷凍果実の販売は低調でした。水産品は、国内の回転寿司・量販店向けは堅調でしたが、米国市場での水産加工品などの日本食向け商材が、外食需要の低迷と競争激化により売上・利益ともに大きく減少しました。また、前期に連結子会社化した大五通商株式会社については、順調に収益面で寄与しました。

 これらの結果、売上高は53,759百万円(同0.3%増)となりました。セグメント利益(営業利益)は1,175百万円(同20.6%減)となりました。

 

《合成樹脂事業》

 合成樹脂事業は、総じて各分野向けで好調に推移し、売上が増加しました。また、コンパウンド事業など製造機能の稼働回復等により利益率が向上し、セグメント利益(営業利益)は大きく増加しました。

 汎用樹脂関連は、日用品、建材など総じて各分野向けの需要が停滞するなか、輸入品の販売や新規開拓に注力し、販売が増加しました。

 高機能樹脂関連では、OA関連は前期までの在庫調整が終了し、販売が大幅に増加しました。自動車関連は、国内の販売はほぼ横ばい、東南アジアはやや減少しましたが、メキシコ、インドは増加しました。中国では、日系自動車向け販売は不振でしたが、現地メーカー向け販売は拡大しました。自動車関連全体では、グローバルで販売がほぼ横ばいとなりました。

 コンパウンド事業は、OA向けの需要回復、また、株式会社ダイセルとの合弁会社であるノバセル株式会社及びその子会社3社の新規連結により、売上が増加しました。

 ポリオレフィン原料の販売は、輸出は減少しましたが、アジアの電線被膜向けは好調に推移しました。国内は、インバウンド需要の増加などを背景に、販売が増加しました。

 フィルム関連は、軟包装分野はインバウンド需要の増加などを背景に好調に推移し、数量、単価ともに増加しました。

 シート関連は、スポーツ向けが国内、海外とも主要顧客向けに増加、新規開拓も寄与し、販売が大幅に増加しました。

 リサイクル原料ビジネスは、生産能力向上も寄与し、大幅に伸長しました。

 これらの結果、売上高は401,541百万円(同11.4%増)となりました。セグメント利益(営業利益)は13,086百万円(同32.5%増)となりました。

 

③キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、税金等調整前当期純利益及び社債の発行による収入が、短期借入金の純減少額、法人税等の支払額、配当金の支払額及び仕入債務の減少額を上回ったこと等により、前連結会計年度末に比べ9,055百万円増加し、55,357百万円となりました。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果獲得した資金は19,903百万円(前連結会計年度は30,187百万円の獲得)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益及び減価償却費が、法人税等の支払額及び仕入債務の減少額を上回ったこと等によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果使用した資金は9,498百万円(前連結会計年度は2,386百万円の使用)となりました。これは主に、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出、有形固定資産の取得による支出、無形固定資産の取得による支出及び投資有価証券の取得による支出が、投資有価証券の売却による収入を上回ったこと等によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果使用した資金は805百万円(前連結会計年度は13,981百万円の使用)となりました。これは主に、短期借入金の純減少額及び配当金の支払額が、社債の発行による収入を上回ったこと等によるものであります。

 

 

④販売及び仕入の実績

a.販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

  至 2025年3月31日)

(百万円)

前年同期比(%)

情報電子

264,056

110.4

化学品

118,298

105.0

生活産業

53,759

100.3

合成樹脂

401,541

111.4

その他

181

100.1

合計

837,838

109.4

 

b.仕入実績

 当連結会計年度における仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

  至 2025年3月31日)

(百万円)

前年同期比(%)

情報電子

237,498

110.7

化学品

97,850

100.9

生活産業

44,368

104.0

合成樹脂

358,831

114.2

その他

45

103.2

合計

738,593

110.5

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①中期経営計画「NC2026」初年度の進捗状況の分析

 当連結会計年度は、3カ年の中期経営計画「NC2026」の初年度となります。経営成績を踏まえた、初年度の進捗状況の分析は以下のとおりであります。

 

(百万円)

NC2026

第164期

初年度実績

NC2026

第164期

初年度計画

NC2026

第166期

最終年度目標

売上高

837,838

830,000

950,000

営業利益

25,824

22,500

27,000

売上高営業利益率

3.1%

2.7%

2.8%

経常利益

26,134

21,500

26,000

親会社株主に帰属する

当期純利益

19,833

17,000

19,000

ROE

9.7%

10%以上

10%以上

ネットD/Eレシオ

(倍)

0.07倍

0.5倍以下

0.5倍以下

自己資本比率

47.1%

概ね50%前後

概ね50%前後

想定為替レート

152.62円/USD

145.00円/USD

145.00円/USD

  ※1 NC2026 初年度計画及び最終年度目標は、2024年5月9日公表。

※2 ネットD/Eレシオ=(有利子負債-現預金)/自己資本

※3 NC2026 初年度実績の為替レートは実績値

 

 売上高は、情報電子事業及び合成樹脂事業が好調に推移したことなどにより、初年度の計画を上回りました。

 営業利益は、売上高総利益率の上昇などにより、初年度の計画を上回りました。

 経常利益は、営業利益が計画を上回ったことなどにより、初年度の計画を上回りました。

 親会社株主に帰属する当期純利益は、経常利益が計画を上回ったことなどにより、初年度の計画を上回りました。

 ROEは、自己株式の取得を実施しましたが、利益剰余金の増加等による株主資本の増加により、初年度の計画に対してやや未達となりました。

 ネットD/Eレシオ、自己資本比率は、最終年度の目標を満たしており、財務の健全性は十分に確保できています。

 

 

 報告セグメント別の進捗は、以下のとおりであります。

 

《情報電子事業》

(百万円)

NC2026

第164期

初年度実績

NC2026

第164期

初年度計画

NC2026

第166期

最終年度目標

売上高

264,056

256,000

312,000

セグメント利益(営業利益)

8,477

6,550

8,450

セグメント利益率

3.2%

2.6%

2.7%

 

 売上高は、ディスプレイ関連、プリンター・複写機関連材料などの販売が伸長し、初年度の計画を上回りました。

 セグメント利益(営業利益)は、全体的に利益率が向上し、初年度の計画を上回りました。

 

 なお、同事業において、NC2026策定時に想定した主なコアビジネス(商材)と成長ビジネス(商材)は以下のとおりです。

コアビジネス(商材)

ディスプレイ関連

コンシューマー向けインクジェット関連

成長ビジネス(商材)

環境・エネルギー分野(太陽電池関連、二次電池関連)

半導体・電子部品関連

産業用インクジェット関連

 

《化学品事業》

(百万円)

NC2026

第164期

初年度実績

NC2026

第164期

初年度計画

NC2026

第166期

最終年度目標

売上高

118,298

124,800

139,000

セグメント利益(営業利益)

2,948

2,850

3,250

セグメント利益率

2.5%

2.3%

2.3%

 

 売上高は、EV関連素材などの販売が振るわず、初年度の計画に対して未達となりました。

 セグメント利益(営業利益)は、販売単価の上昇などにより、初年度の計画を上回りました。

 

 なお、同事業において、NC2026策定時に想定した主なコアビジネス(商材)と成長ビジネス(商材)は以下のとおりです。

コアビジネス(商材)

樹脂原料・添加剤、コーティング原料・塗料、建材

成長ビジネス(商材)

EV関連素材

海外展開強化

 

《生活産業事業》

(百万円)

NC2026

第164期

初年度実績

NC2026

第164期

初年度計画

NC2026

第166期

最終年度目標

売上高

53,759

61,000

72,800

セグメント利益(営業利益)

1,175

2,200

3,100

セグメント利益率

2.2%

3.6%

4.3%

 

 売上高は、医薬品原料や、米国市場での水産加工品などの日本食向け商材の販売低調により、初年度の計画に対して未達となりました。

 セグメント利益(営業利益)は、米国市場での水産加工品などの日本食向け商材の販売低調と利益率低下などにより、初年度の計画に対して未達となりました。

 

 なお、同事業において、NC2026策定時に想定した主なコアビジネス(商材)と成長ビジネス(商材)は以下のとおりです。

コアビジネス(商材)

医薬品、家庭用品原料

国内の水産加工品

成長ビジネス(商材)

再生医療分野、核酸・バイオ医薬品関連

海外の水産加工品

 

《合成樹脂事業》

(百万円)

NC2026

第164期

初年度実績

NC2026

第164期

初年度計画

NC2026

第166期

最終年度目標

売上高

401,541

388,000

426,000

セグメント利益(営業利益)

13,086

10,800

12,100

セグメント利益率

3.3%

2.8%

2.8%

 

 売上高は、総じて各ビジネスが好調に推移し、新規の連結子会社化や円安の影響もあり、初年度の計画を上回りました。

 セグメント利益(営業利益)は、総じて各ビジネスが好調に推移したことに加え、コンパウンド事業など製造機能の稼働向上により利益率が向上し、初年度の計画を上回りました。

 

 なお、同事業において、NC2026策定時に想定した主なコアビジネス(商材)と成長ビジネス(商材)は以下のとおりです。

コアビジネス(商材)

自動車、OA向け高機能樹脂

フィルム・シート関連

成長ビジネス(商材)

コンパウンド事業

リサイクル樹脂、グリーンビジネス

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローは、主に営業活動及び政策保有株式の売却等により獲得した資金を、当社の配当政策に基づく現金配当及び自己株式の取得による株主還元の実施、短期借入金の返済、NC2026の計画達成に向け、事業の拡大・新規ビジネスの開拓・将来の成長に向けた投資等に使用しました。これらの結果、現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末に比べ9,055百万円増加し、55,357百万円となりました。

 

 当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、各営業部門の事業計画・投融資計画に照らして、必要な資金を内部留保や金融機関からの借入金及び社債を中心に調達し、その資金を運転資金や事業拡大に向けた投融資に使用しており、金融商品での運用や投機的な取引は行わないこととしております。

 当連結会計年度は、営業活動と社債発行及び政策保有株式の売却を積極的に進めたことで獲得した資金を事業拡大のための投資や株主還元等に使用しました。

 資金の流動性の維持、国内及び海外におけるグループ全体の運転資金の機動的かつ安定的な調達を行うため、取引銀行4行と200百万米ドル相当額(29,904百万円)の貸出コミットメント契約(複数通貨型)を締結しております。

 国内の連結子会社及び海外の一部の連結子会社において、キャッシュ・マネジメント・サービスを導入しており、資金の効率化と流動性の確保を図っております。

 これらの施策等により不測の事態に備え資金の流動性を維持しております。

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成に当たって、資産、負債、収益、費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

 連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。

 

a.棚卸資産の評価

 主として移動平均法及び先入先出法による原価法によっており、期末における正味売却価額が取得原価より下落している場合には、正味売却価額をもって貸借対照表価額としております。

 正味売却価額の算定方法については、期末前後での販売実績に基づく価額を用いる等、合理的に算定された価額を正味売却価額としております。なお、長期滞留等により営業循環過程から外れた棚卸資産など正味売却価額を合理的に算定することが困難な棚卸資産につきましては、帳簿価額を処分見込価額まで切り下げる等の方法により、収益性の低下を適切に貸借対照表に反映させております。

 前期に計上した簿価切下額の戻入れにつきましては、主に洗替え法により当期に戻入れをおこなう方法を採用しております。

 

b.貸倒引当金の評価

 「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

c.退職給付会計について

 当社グループの従業員の退職給付に係る資産、退職給付に係る負債及び退職給付費用は、簡便法を採用している連結子会社を除き、割引率、退職率、予想昇給率、長期期待運用収益率、死亡率等の計算基礎を設定の上、数理計算結果に基づき算定しております。
 退職給付債務の計算に用いる割引率と年金資産(企業年金制度に対して設定した退職給付信託を含む)の長期期待運用収益率は、特に重要な前提条件であります。割引率は安全性の高い債券(主として長期国債)の利回りを基礎として主として2.2%、年金資産の長期期待運用収益率は年金資産のポートフォリオ、過去の運用実績及び運用方針等を総合的に考慮して主として3.0%を使用しております。

 また、他の基礎率も定期的に見直しており、基礎率を見直した場合や、退職給付債務の数理計算に用いた見積り数値と実績との差異、年金資産の期待運用収益と実際の運用収益との差異が生じた場合には、数理計算上の差異が発生し、将来の退職給付に係る負債及び退職給付費用を増加させるおそれがあります。

 数理計算上の差異については、平均残存勤務期間以内の一定の年数(主として13年)で按分する方法により費用処理しております。

 未認識数理計算上の差異については、税効果会計を適用の上、純資産の部におけるその他の包括利益累計額の退職給付に係る調整累計額に計上しております。

 

5【重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

 当社グループの当連結会計年度におけるセグメント別の主な研究開発活動は次のとおりであります。

なお、当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は299百万円であります。

(生活産業事業)

 当社グループのPHARMASYNTHESE S.A.S.及びINABATA FRANCE S.A.S.の開発チームにて、主に医薬品原料及び化粧品原料の製造を行うための研究開発を行っております。

 これは主に顧客からの依頼によるプロセス最適化とその少量生産、自社化粧品の開発及び技能の蓄積を目的としているものであります。

 生活産業事業に係る研究開発費は79百万円であります。

(合成樹脂事業)

 当社グループのノバセル株式会社の研究開発部門にて、主に樹脂コンパウンド製品の製造を行うための研究開発を行っております。

 これは主に顧客の需要に対応するための新たな技術開発及び製品開発を目的としているものであります。

 合成樹脂事業に係る研究開発費は219百万円であります。