第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)会社の経営の基本方針

 当社グループは、「誠実と信用」「進取と創造」「人間尊重」の3つを経営理念としております。社会的存在としての企業にとり継続性は主要な命題のひとつと考えますが、「誠実と信用」の理念のもと、当社グループは「産業とくらし」分野における技術専門集団として、長年にわたり株主様や取引先様をはじめ多くのステークホルダーから厚い信頼をいただいております。

 創業以来350年を超える長い歴史と伝統をもつ当社グループは、「進取と創造」の理念のもと、経営環境の変化に臨機に対応し、常に積極果敢の経営を心掛けております。

 また、当社グループは「人間尊重」をあらゆる企業活動の基本と位置づけ、CS(顧客満足度)向上を最優先とする経営戦略を展開し、多くのお客様からご支持をいただいております。

 

(2)経営環境及び対処すべき課題

 今後の経済情勢につきましては、経済活動は正常化するものの、地政学リスクや原材料・エネルギー価格の上昇による影響など、国内・世界ともに不透明な経済環境が続くと思われます。一方、デジタル技術を活用した自動化・省人化の進展やカーボンニュートラル実現に向けたグリーンビジネスは一層の拡大が見込まれます。また、安心・安全な社会インフラ構築に向けたレジリエンス対応の必要性が高まると思われます。

 このような状況の中、2023年4月よりスタートしております中期経営計画「Growing Together 2026」の達成に向け、収益性の向上と成長戦略の推進によるビジネス変革を通じた取引先ネットワークの拡大に取り組んでまいります。具体的には、「つなぐ」イノベーションによる社会課題の解決を推進するとともに、コア事業の拡大のために注力する分野を、海外、グリーン、デジタル、レジリエンス&セキュリティ、新流通、シェアリングとし、さらなる強化に努めてまいります。また、既存事業で培ってきた商品やサービスを積極的に展開する分野として、介護・医療、食品、農業を新事業と位置づけ、成長ドライバーとして積極的に推進します。

 さらに、「風土改革」「DX推進」「サステナビリティ推進」をベースとしてビジネス変革を推進し、モノづくり、すまいづくり、環境づくり、まちづくりの分野において既存取引ネットワークを発展させ、「モノ売り」と「コト売り」の両面においてマーケットアウト型のビジネスを展開することで、企業価値向上を実現してまいります。

 

1.「ユアサビジョン360」の概要

 創業360周年を迎える2026年に向け、提案型ビジネスを推進し、人・モノ・カネ・情報・データ・技術などあらゆるものを「つなぐ」ことで社会課題を解決していく「つなぐ」複合専門商社グループとして企業価値向上を目指します。また、2026年3月期の定量計画としては、連結売上高5,760億円、連結経常利益200億円、連結経常利益率3.3%を目指します。

※連結売上高:収益認識基準適用前6,000億円

 

2.中期経営計画「Growing Together 2026」の概要

 「風土改革」「DX推進」「サステナビリティ推進」をベースとしてビジネス変革を推進し、モノづくり、すまいづくり、環境づくり、まちづくりの分野において既存取引ネットワークを発展させ、「モノ売り」と「コト売り」の両面においてマーケットアウト型のビジネスを展開することで、企業価値向上を実現します。

(1)基本方針

モノづくり、すまいづくり、環境づくり、まちづくりの分野において、お取引先様とともに「つなぐ」イノベーションにより社会課題を解決し、新たな市場を創り、国内&海外に展開することで、企業価値向上を実現します。

(2)ビジネス改革

①「つなぐ」イノベーションの常態化

人・モノ・カネ・情報・データ・技術などあらゆるものを「つなぐ」ことで社会課題を解決し、「モノ売り」と「コト売り」の両方を拡大させ、マーケットアウト型のビジネスモデルを確立します。

②成長戦略の推進

コア事業を拡大していくために注力する分野を、海外、グリーン、デジタル、レジリエンス&セキュリティ、新流通、シェアリングとし、既存事業で培ってきた商品やサービスを積極的に展開する事業として、介護・医療、食品、農業を新事業と位置づけ成長のためのドライバーとして積極的に推進します。

③既存取引先ネットワークの発展

主要仕入先約6,000社、主要販売先約20,000社からなるネットワークを、双方向かつ業界横断型のプラットフォームへ発展させ、国内及び海外で拡大いたします。

 

(3)変革を支える3つの施策

①風土改革

各種プロジェクトを通じ、人事制度・諸施策、働きやすい職場環境などについて従業員から意見を募り、「社員エンゲージメント向上」「『つなぐ』イノベーション」、「ビジネス変革の加速」を推進します。

②DX推進

「データ活用基盤構築」「DX人材育成」「業務プロセス改革」「イノベーションの創出」などを推進します。

③サステナビリティ推進

当社グループのCO₂削減と社会課題解決ビジネスの推進に注力してまいります。

(4)投資・資本政策

①投資

3年間(2023年4月~2026年3月)の投資枠としてキャッシュ・フロー全体の半分強にあたる212億円を成長投資に配分します。そのうち海外・デジタル・グリーンで合計60億円、その他の成長戦略とコア事業で合計40億円を予定しております。

②株主還元

自己株式の取得を含め株主還元率33%以上、DOE(株主資本配当率)3.5%以上を目標に掲げ、安定的な株主還元を継続してまいります。

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●中期経営計画「Growing Together 2026」の詳細については、以下の当社ホームページ「IR・株主情報」に掲載しておりますので、併せてご参照ください。

 

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2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

(1)サステナビリティ全般

  当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりです。

  なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

① ガバナンス

 当社グループは、サステナビリティに資する経営の推進を図るため、代表取締役を委員長とするサステナビリティ推進委員会を設置しています。当委員会は、気候変動を含むサステナビリティ全般のリスク及び機会、影響についての審議、リスク低減のための対応方針の検討を定期的に行い、取締役会に答申します。取締役会では、それらを事業戦略及びサステナビリティに関する重要事項として審議し、方針などを決定しています。

 サステナビリティに関する各指標のモニタリングや目標管理、リスク管理を全社グループで進めるため、グループ会社を含む各事業部門・拠点にサステナビリティ推進担当者を配置し、グループ全体での管理を行っており、それらの進捗状況は、総務部内にあるIR・サステナビリティ推進室の専任担当者が事務局となり、サステナビリティ推進委員会へ報告しています。

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 ユアサ商事グループのサステナビリティ推進については以下のウェブサイトをご参照ください。

 https://www.yuasa.co.jp/sustainability/

 

② 戦略

 当社グループは、「誠実と信用」「進取と創造」「人間尊重」を企業理念として掲げ、350年以上受け継がれてきた経営基盤をさらに進化させるため、以下「サステナビリティ宣言」を軸としたマテリアリティの特定、及び具体的なアクションプランを策定しています。地球環境との調和を機軸として、世界のいかなる国、地域においても双利共生の関係を重視し、企業活動を通じて、より人間らしい豊かな社会づくり、持続的な社会の構築に向け積極的に貢献していきます。

 

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(注) サステナビリティに関する取り組みの優先事項を特定するため、マテリアリティマトリックスを作成しています。重要性の高い事項については、事業環境及び当社の事業計画を踏まえ、随時見直しを行います。

 

③ リスク管理

 当社グループは、気候変動を含むサステナビリティ全般のリスク管理について、リスク管理統括責任者や各委員会(倫理・コンプライアンス委員会、内部統制委員会、環境・レジリエンス委員会等)とサステナビリティ推進委員会との連携により、リスクの特定及び評価・管理を行っており、必要に応じてリスク管理状況を取締役会へ報告しています。また、関連する社内諸規則・通達等に基づき当社グループの事業活動上の様々なリスクの把握、情報収集、予防対策の立案、研修を行うなどリスクを横断的に管理しています。

 

④ 指標及び目標

 中期経営計画「Growing Together 2026」において、環境・ダイバーシティ・働き方改革・人材育成に関する定量計画を設定しました。詳細は(2)「地球環境との調和」に向けた取り組みの④ 指標と目標、(4)「人間尊重の経営」に向けた取り組みの② 指標と目標をそれぞれ参照ください。

 

(2)「地球環境との調和」に向けた取り組み

重要課題:気候変動への対応、創エネ・省エネノウハウによる脱炭素社会への貢献

① ガバナンス

 (1)サステナビリティ全般の① ガバナンスを参照ください。

 

② 戦略

 当社グループは、すべての事業活動を通じ、地球環境の健全な維持と経済成長の調和を目指す「持続可能な発展」の実現に向け、環境方針を定めています。環境マネジメントの国際規格であるISO14001マルチ認証を活用し、環境パフォーマンスの改善に向けた組織活動、製品及びサービスにおける環境負荷の低減を行っています。

《環境マネジメント推進体制》

 環境マネジメントの推進に向けて、当社グループは「環境マネジメント推進体制」を構築し、環境方針に基づき、PDCAサイクル(計画、実施・運用、点検、見直し)を図っています。代表取締役社長を最高責任者とし、「環境管理責任者」を設置し、環境管理委員会がグループ全体の環境マネジメント推進の運営を行っています。当社の各営業本部長、経営管理部門長、グループ企業代表が各組織内の環境管理委員と連携をとりながら環境マネジメントの実施・維持を行っています。

 

環境方針・環境マネジメント推進体制の詳細については以下のウェブサイトをご参照ください。

https://www.yuasa.co.jp/sustainability/environment/management/

 

■気候変動によるリスクと機会

 当社グループは、「モノづくり」「すまいづくり」「環境づくり」「まちづくり」の分野で複合専門商社として多様な商品・サービスを取り扱っており、気候変動に関する影響や事業環境の変化によるリスクや機会があります。

 事業部門の代表者や管理部門のサステナビリティ推進担当者と議論を行い、気候変動によるリスクと機会の整理を行いました。影響を受ける事業や分野について、変革やリスク管理を進めるとともに、今後の政策や規制、市場環境の変化に応じた移行期の事業機会を積極的に捉え、持続的な成長を目指していきます。

区分

主な内容

移行リスク

政策・法規則

・炭素税の導入等、政府規制を起因とするコスト増

・製品に対する環境規制強化によるコスト増

技術

・低炭素技術による既存商品の需要減

市場・評判

・脱炭素化に伴う原材料等の価格高騰やエネルギー価格上昇によるコスト増

・対応遅れや情報開示不足による対外評価下落とサプライチェーンの競争力低下

物理的リスク

急性的

・大規模な自然災害による自社グループ拠点及びサプライチェーンの分断等

慢性的

・水不足や電力不足による生産活動の停滞

機会

製品・サービス

・エネルギー効率の高い製品の需要拡大

・レジリエンス商品の需要拡大

・資源循環に関する製品の需要拡大

市場

・再生可能エネルギー需要の拡大

・エネルギー価格上昇による省エネ商材や高効率機器への切り替え需要増

・政府によるGX(グリーントランスフォーメーション)の推進

 

■機会をとらえる取り組みの強化

 社会全体での環境負荷低減に貢献していくため、取扱い製品・サービスの製造や使用時のCO2排出量の削減を進めることが重要です。当社グループでは2009年より、省エネコンサルティングの専門部隊を設置し、仕入先の製造工場等への省エネ機器や再生可能エネルギーの導入支援を行うとともに、販売先やそのお客様による製品使用時のCO2排出量の削減を進めるため、省エネ製品や脱炭素関連製品の提案・販売を推進してきました。現在は海外市場に対する省エネ・脱炭素に関する取り組みを強化しており、世界全体での環境負荷低減に貢献できるようカーボンニュートラルセミナーの開催や二国間クレジット制度(JCM)を活用した省エネ提案を推進しています。

 また、甚大化する自然災害等、気候変動の物理的リスクに対応するビジネスとして、2012年よりレジリエンス&セキュリティ事業を展開しています。防災・減災・BCP(事業継続計画)をキーワードに、社会インフラの強靭化(レジリエンス)につながる商品・サービスの普及に取り組むとともに、深刻化する自然災害や感染症といった社会課題に対応すべく、新たなソリューション開発を推進しています。

部門名・事業名

気候変動への対応につながる主な対象商品・サービス

産業機器

コンプレッサ、発電機、電動シリンダ 等

工業機械

省エネ型工作機械  等

住設・管材・空調

高効率空調設備、太陽光発電システム、蓄電池 等

建築・エクステリア

LED照明、暑熱環境対策商品 等

建設機械

コンプレッサ、発電機 等

グリーン

再生可能エネルギーの導入支援、ソフトウェア販売 等

レジリエンス&セキュリティ

遠隔起動排水システム『つなぐBCPパッケージ』、防災電源倉庫 等

 

 今後はリスクと機会の重要度評価やシナリオ分析を行うとともに、機会をとらえた取り組みを強化し、持続的な成長を目指していきます。

 

③ リスク管理

 (1)サステナビリティ全般の③ リスク管理を参照ください。

 当社の事業は、主に国内の多様な産業分野にわたる大企業、中小・中堅企業との取引から成り立っており、気候変動に関するリスクは、法規制や政策の変化、顧客需要の変化、経済社会情勢の変化など多岐にわたります。

当社事業に関わるリスクについては、各事業部門において規制や市場環境の変化を評価し、対応しています。

 また当社グループの国内拠点における物理的リスクの評価を行い、社内のBCP(事業継続計画)との整合性を踏まえたリスク管理を進めています。

 

④ 指標と目標

 2030年度までに当社グループ全体のカーボンニュートラルを目指すとともに、サプライチェーン全体での環境負荷低減に努めています。当社グループのカーボンニュートラルに向けた第一ステップとして、中期経営計画の最終年度である2026年3月期までにCO2排出量30%削減(2023年3月期比)を目指します。

 2022年より国内外のグループ各社で排出量の算定をはじめ、排出削減に向けた各種施策を開始しています。また、事業を通じたサプライチェーン全体の排出削減を進めるため、Scope3についても算定を開始しています。

■中期経営計画「Growing Together 2026」における環境に関する目標

CO2排出量

(単位:t-CO2)

 

Scope

2023年3月期実績

2024年3月期実績

2024年3月期計画

2026年3月期計画

単体

Scope1

1,025

算定中

Scope2

1,232

Scope1,2計

2,257

グループ

Scope1

3,020

Scope2

1,405

Scope1,2計

4,425

連結

Scope1,2計

6,682

2023年3月期比

10%削減

2023年3月期比

30%削減

 (注) Scope3に関しては、カテゴリー1(取扱い製品の製造時の排出量)、3(Scope1,2に含まれない燃料及びエネルギー活動)、7(自社社員の通勤にかかる排出量)について算定中です。また、2024年3月期のデータは統合報告書に掲載予定です。

 

 統合報告書については以下のウェブサイトをご参照ください。

 なお、統合報告書の更新は2024年9月頃を予定しています。

https://www.yuasa.co.jp/ir/library/corporate-report/

 

(3)「良品奉仕の事業活動」に向けた取り組み

重要課題:「良品奉仕」による安心&安全な社会の形成

 当社グループは、創業から続く「良品奉仕」の精神に基づき、公正かつ堅実・誠実な商取引を行ってきました。様々なステークホルダーとともに、地球環境との調和をはじめとするサステナビリティを重視した経営をより推進するため、「ユアサ商事グループ取引方針」を策定しています。お取引先様とともに本取引方針に取り組むため、定期的な確認を実施していきます。

 また、当社グループの事業活動において、人権の尊重は重要な要素の一つと考え、「ユアサ商事グループ人権方針」を策定しています。本人権方針を実践するとともに、サプライヤーをはじめとするビジネスパートナーに対しても、人権を尊重し、侵害しないよう求めていきます。

 なお、人権デューデリジェンスの具体的な実施方針については、現在検討を進めています。

 

  ユアサ商事グループ 取引方針・人権方針については以下のウェブサイトをご参照ください。

  取引方針: https://www.yuasa.co.jp/sustainability/society/supply-chain/

  人権方針: https://www.yuasa.co.jp/sustainability/society/human-rights/

 

(4)「人間尊重の経営」に向けた取り組み

重要課題:創業400周年に向けた健康経営&働きやすさの推進、ダイバーシティ推進、教育研修の充実

① 戦略

 人材戦略における基本的な考え方として、当社グループは社員を人財=資本と捉え、企業価値の向上に欠くことができない重要な資本だと考えています。会社への貢献を通じて社員一人ひとりが個の能力の向上を実現できるよう機会を提供し、社員が成長を果たす為の組織・環境づくりに取り組むことで、持続的な企業価値の向上につなげていきます。

 

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 当社グループは「総合力」「チャレンジ」「コミュニケーション」をキーワードに、「つなぐ」イノベーションにより社会課題を解決し、新たな市場創出と成長戦略の推進を目指しています。そのために、ビジネス変革は欠かせないものであり、その変革を加速させるため、「つなぐ」イノベーションが常態化する企業風土は必要不可欠です。2026年に当社グループが目指す姿『「つなぐ」イノベーションが常態化した組織』に向け、会社と社員の持続的な成長の両立を果たし、企業価値の向上をさらに加速させていきます。

 

 会社と社員の持続的な成長の両立を果たすため、当社グループでは「働きがいの向上」「働きやすさの向上」の2つを重点課題としています。

 そこで、現在推進している風土改革※の一つの施策である人事制度改革において、これらの課題に取り組むため、2023年3月より2026年3月までの3年間、全社員参加型プロジェクト「YUASA PRIDE プロジェクト」を実行しています。具体的には、働きがい向上ワークショップにおいて、取引先の課題解決への貢献を通じた働きがいの醸成に向けた議論を行うとともに、人間尊重ワークショップにおいて、自分との違いや多様性を尊重できる人材となるために必要な考え方について議論しました。

 ※風土改革について:企業理念に立脚して定めた求める人材像の集団とすることで、働きがいと働きやすさが高まり、イノベーションが常態化し、企業の競争力の向上につながります。中期経営計画で目指す「つなぐ」イノベーションが常態化する風土づくりを目的に、人事制度改革、環境づくり、ガバナンス強化を推進していきます。

 

 

《社員の働きがいにおける課題と具体的な取り組み》

 当社では、定期的に社員意識調査を実施しています。分析の結果、社員の会社に対するエンゲージメントと働きがいは大きく関係しており、働きがいは仕事を通した自身の成長、特にマネジメント経験や個々の能力向上に起因しています。人事諸制度の改革や人材育成などにより、社員の働きがいの向上に取り組んでいきます。

■人材育成

 当社グループでは、上記の求める人材像を育成するための研修体系を策定中です。

 具体的には、マネージャー層全員を対象に、ビジネススクールを活用したマネジメントスキル研修を実施しています。今後はそれらを中堅社員、一般社員に対象を広げていきます。また、本部研修や業界資格取得支援などの専門スキル研修、研修などのデジタルスキル研修、海外研修生制度や語学研修などのグローバルスキル研修を実施しています。

 

《社員の働きやすさにおける課題と具体的な取り組み》

 社員が個々の能力を高めイノベーションを生み出すためはDE&Iを推進することで、性別・年齢・国籍・障がいの有無・様々なライフスタイル・価値観等、多様なバックグランドを持つ社員が、互いの価値観を尊重し、共に高め合う企業風土の醸成が必要です。また、社員の健康増進や労働時間の削減など、労働環境整備の推進にも取り組んでいきます。

 

  ユアサ商事グループ ダイバーシティ方針については以下のウェブサイトをご参照ください。

  https://www.yuasa.co.jp/sustainability/society/diversity/

 

■ダイバーシティと働き方改革

 アンコンシャスバイアスへの理解と正しい向き合い方について全社員が参加するワークショップで社員と意見交換しました。多様な人材が活躍し、誰もが安心して意見を発信できる環境を整えることで、イノベーションが起こりやすい企業風土を醸成していきます。

■健康経営

 2018年8月に健康宣言を制定し、社員の安全と心身の健康維持・増進に取り組んでおり、2019年から経済産業省より健康経営優良法人として認定されています。今後も、健康経営優良法人認定企業として、社員の健康維持・増進をより一層支援します。

 

② 指標と目標

■中期経営計画「Growing Together 2026」におけるダイバーシティ、働き方改革、人材育成に関する目標

 以下、提出会社を対象とした指標です。

 

2023年3月期実績

2024年3月期計画

2024年3月期実績

2026年3月期計画

女性管理職比率

1.9%

2.0

2.0

3.0%

女性総合職比率

4.2%

4.2

4.0

6.0%

女性総合職採用率

10.3%

6.5

6.5

12.0%

男性育休及び

育児目的休暇取得率

78.1%

80.0

72.5

100.0%

有給休暇取得率

62.8%

65.0

67.8

70.0%

平均労働時間

1,955時間

1,940時間

1,934時間

1,920時間

マネジメント人材育成

※研修プログラム受講人数(延べ)

84名

250

280

370名

デジタル人材育成

※当社独自プログラムの合格者

IT人材:100名

(注)1

IT人材:109名

(注)1

IT人材:600名

DX人材:40名

(注)1、2

 (注)1 IT人材…ITツールやデジタル技術を自らの業務に活かし、デジタル施策の実行ができる人材

2 DX人材…データ分析結果を利活用し、マーケティングと経営戦略に特化した知識により新たな企画立案を行い推進する人材

 

《健康経営に資する目標》

当社の健康増進・維持への取り組み

(ⅰ) 定期健康診断及びストレスチェックの受診率向上

受診率目標 100%

(ⅱ) 定期健康診断で高リスクと診断された社員の受診率向上

受診率目標 100%

(ⅲ) 社員の健康意識向上への取り組み

定期的な健康イベントの実施

(ⅳ) 受動喫煙対策への取り組み

全事業所内の完全禁煙または分煙化

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。なお、本項において将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は有価証券報告書提出日現在において判断したものであります。

 

 当社グループでは、リスクに関する統括責任者(以下「リスク管理統括責任者」という)として経営管理部門管掌取締役を定め、想定されるリスクごとに、発生時における迅速かつ適切な情報伝達と緊急事態対応体制を整備しております。リスク管理統括責任者は、必要に応じてリスク管理の状況を取締役会に報告しており、リスクが顕在化した場合の、事業中断及び影響を最小限にとどめ、事業継続マネジメント体制の整備に努めております。

 

(1) 景気変動リスク

 当社グループは産業設備関連投資や新設住宅着工戸数等の建設投資の動向と密接な関連性を有しております。当社グループは新領域及び海外などの新市場の拡大に注力いたしておりますが、上記経済動向に予想外の変動があった場合には経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(2) 株価変動リスク

 当社グループは取引先を中心とした市場性のある株式を保有しており、株価変動のリスクを負っております。これらの株式は中長期的な保有を目的としており、適宜、当社の「有価証券投資に関するガイドライン」に基づき保有株式の見直しを行っておりますが、株価変動が当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(3) 金利変動リスク

 当社グループの有利子負債には、変動金利条件となっているものがあり、総資産に占める借入依存度は低いものの、今後の金利動向によっては当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。当社グループでは、金利変動リスクを回避する目的で、有利子負債の変動金利から固定金利への転換等を行う場合があります。

 

(4) 信用リスク

 当社グループは、多様な営業活動を通じて国内外の取引先に対して信用供与を行っており、信用リスクを負っております。当社グループでは社内管理規程等に基づく与信管理を行い、リスクの軽減に努めておりますが、取引先の予想外の諸事情による債務不履行等が発生した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(5) 為替変動リスク

 当社グループは、外貨による輸出入取引において、為替予約を用いて為替レートの変動リスクの軽減に努めておりますが、為替レートの変動によって当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。また、当社グループは海外現地法人を有しており、連結財務諸表作成の際の為替換算レートの変動によっては、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(6) コンプライアンスリスク

 当社グループは、様々な事業領域で活動を行っており、事業活動に関連する法令・規制は、会社法、税法、汚職等腐敗行為防止のための諸法令、独占禁止法、外為法を含む貿易関連諸法や建築基準法や化学品規制などを含む各種業界法など広範囲にわたっております。これらの法令・規制を遵守するため、当社グループでは倫理方針、行動規範を定めるとともに、代表取締役社長の直轄組織である倫理・コンプライアンス委員会を設け、グループ全体のコンプライアンスの徹底及び指導を図っております。しかしながら、このような取り組みによっても事業活動におけるコンプライアンスリスクを完全に排除することはできるものではなく、関係する法律や規制の大幅な変更、予期しない解釈の適用などが当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

 

(7) 情報システム・情報セキュリティに関するリスク

 当社グループは、情報共有や業務の効率化のため、情報システムを構築・運用しており、情報システム運営上の安全性確保のため、情報セキュリティ運用細則を定め、危機管理対応の徹底に取り組んでおりますが、外部からの予期せぬ不正アクセス、コンピュータウイルス侵入等による企業機密情報・個人情報の漏洩、さらには、自然災害、事故等による情報システム設備の損壊や通信回線のトラブルなどにより情報システムが不稼動となる可能性を完全に排除することはできません。このような場合は、システムに依存している業務の効率性の低下を招くほか、被害の規模によっては、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(8) 製造物責任リスク

 当社グループは、生活家電の製造・販売事業を行っております。これら商品の品質管理には万全を期するとともに製造物責任保険も付保しておりますが、大規模なリコールや製造物責任賠償につながるような商品の欠陥が発生した場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(9) カントリーリスク

 当社グループは、海外における取引や海外での事業活動を行っております。これら海外の取引相手国における政策変更、政治・経済等の環境変化により、債権または投融資の回収が困難になるようなリスクを有しております。想定し得るカントリーリスクについては、各種の情報に基づき慎重に対応し、貿易保険を付保するなど、リスクの管理・ヘッジに努めておりますが、特定の国または地域に関連して回収不能が発生した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(10) 自然災害等リスク

 地震や大規模な水害などの自然災害や新型ウイルス等の感染症の流行の予期せぬ事態が発生した場合、事業所の機能停止、設備の損壊、電力等の供給停止等により、当社グループの事業活動の継続に影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、事業活動の継続のために、事業継続計画(BCP)の策定、安否確認システムの導入、災害対策マニュアルの作成、耐震対策、防災訓練等の対策を講じておりますが、自然災害及び新型ウイルス等の感染症による被害を完全に回避できるものではなく、これらの被害が発生した場合は、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(11) 気候変動リスク

 地球温暖化をはじめとした世界的な気候変動が顕在化している現在の環境下において、温室効果ガスの排出量削減を目的とした取り組みが世界的に進められておりますが、気候変動にともなう法的な規制強化や製品の供給規制等により、当社グループの事業活動の継続に影響を及ぼす可能性があります。一方、当社グループは、すべての事業活動を通じ、地球環境の健全な維持と経済成長の調和を目指す「持続可能な発展」の実現に向け、地球環境に貢献する機器やシステムを国内外に販売・普及させる環境事業を推進し、社会問題の解決に取り組んでおります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

①経営成績の状況

 当連結会計年度(2023年4月1日~2024年3月31日)におけるわが国経済は、経済活動が正常化し、緩やかな景気の回復がみられたものの、ウクライナ情勢の長期化、中東情勢の緊迫化による地政学リスクの高まりや原材料費・エネルギー価格の高止まり、円安の進行により、先行きが不透明な状況が続きました。

 工業分野では、自動車関連産業は車載用半導体不足が緩和され生産の正常化が進み、EVを中心に堅調な設備投資需要が続きました。建設・住宅分野では、公共・民間設備投資は堅調に推移したものの、戸建てを中心とした新設住宅着工戸数は引き続き弱含みで推移しました。

 海外では、部品・資材の価格や人件費の上昇がみられましたが、米国やタイ、インド、インドネシアなどの東南アジア諸国の景気は緩やかな回復傾向となりました。一方、中国では景気回復の動きに足踏みがみられました。

 このような状況の中、当社グループは創業360周年を迎える2026年のあるべき姿「ユアサビジョン360」の最終(3rd)ステージとして、2023年4月~2026年3月までの3カ年を対象とする中期経営計画「Growing Together 2026」を推進しております。「風土改革」「DX推進」「サステナビリティ推進」をベースとしてビジネス変革を推進し、モノづくり、すまいづくり、環境づくり、まちづくりの分野において、「モノ売り」と「コト売り」の両面でマーケットアウト型のビジネスを展開することで、企業価値の向上を目指してまいります。

 「風土改革」では、YUASA PRIDEプロジェクト(働きがい向上&人間尊重プロジェクト)を進め、社員のエンゲージメントを高め、「つなぐ」イノベーションで社会課題を解決できる人材の育成に取り組んでいます。また、総合力・チャレンジ・コミュニケーションを発揮できる環境づくりの一環として、新本社建設に向けた「統合拠点構築プロジェクト」を進めています。

 「DX推進」では、データ活用基盤構築、DX人材育成、業務プロセス改革、イノベーション創出により、ビジネス変革を支えてまいります。

 「サステナビリティ推進」では2026年3月までに当社グループのCO2排出量30%削減を目指すとともに、カーボンニュートラル推進ビジネスを加速させています。当社グループの取組みとしては、中部支社とグループ会社の富士クオリティハウス株式会社において、自家消費型太陽光発電設備を設置しました。また、2023年7月から9月までの期間に開催した「つなぐ グランドフェア2023」において会場の電気使用により排出されるCO2をカーボンオフセットするなどサステナブルな事業の推進に努めました。

 成長戦略の推進として、ロボットや自動化設備の拡販に取り組み、当社が特許取得済みである自社開発の工作機械向け省エネ制御ソフト「GCCP」や製品検査の自動化・効率化を実現する『AI 外観検査装置 F[ai]ND OUT シリーズEX』の販売を推進しました。また、物流施設の狭小スペースに対応したピッキング用自動搬送システム「ツインピック」を共同で開発し、今後のシステム販売に向けて2024年5月以降、当社関東物流センターにて本システムの公開を予定しております。

 海外戦略では、タイを中心とした地域戦略の強化に向け、南アジアブロックを新設しました。また、2024年3月に東南アジアに展開する機械商社HENKOグループの株式の取得を決議し、ASEAN地域の現地資本企業に対する工場設備販売を強化するとともに、2025年2月開催の『日本の文化とタイの文化を「つなぐ」』をテーマとした総合展示会「YUASA Grand Fair in Thailand」への取り組みなど、海外事業拡大に向けた体制を整備しました。

 これらの結果、当社グループの当連結会計年度の売上高は、5,265億69百万円(前連結会計年度比4.3%増)となりました。営業利益は147億23百万円(前連結会計年度比0.9%増)、経常利益は157億37百万円(前連結会計年度比2.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は118億12百万円(前連結会計年度比17.2%増)となりました。

 

 セグメント別の売上高の詳細については、「(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容」に記載しております。

 

②財政状態の状況

 当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末に比べて197億71百万円増加し、2,909億89百万円となりました。これは新本社建設のために取得した土地等が314億20百万円、電子記録債権が81億81百万円増加した一方で、現金及び預金が103億47百万円、退職給付に係る資産が126億67百万円減少したことなどによります。

 当連結会計年度末における負債合計は、前連結会計年度末に比べて126億2百万円増加し、1,885億80百万円となりました。これは、電子記録債務が104億6百万円、長期借入金が29億10百万円増加した一方で、未払法人税等が23億24百万円減少したことなどによります。

 当連結会計年度末における純資産合計は、前連結会計年度末に比べて71億69百万円増加し、1,024億9百万円となりました。主な要因は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上などにより利益剰余金が56億45百万円、自己株式の消却により22億47百万円増加した一方で、退職給付に係る調整累計額が24億18百万円減少したことなどによります。この結果、自己資本比率は、35.0%(前連結会計年度末は34.9%)となりました。

 

③キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、420億44百万円となり、前連結会計年度末より103億51百万円の減少となりました。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度において、営業活動の結果得られた資金は、240億94百万円(前連結会計年度比157億56百万円の収入増)となりました。これは主に、退職給付信託を一部解約したことにより退職給付に係る資産が減少し、資金の増加を106億72百万円、退職給付信託返還益を32億55百万円計上したことに加え、税金等調整前当期純利益169億95百万円、仕入債務の増加額87億6百万円を計上した一方、売上債権の増加額53億68百万円を計上したことなどによります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度において、投資活動の結果使用した資金は、342億40百万円(前連結会計年度比313億94百万円の支出増)となりました。これは有形固定資産の取得による支出315億52百万円を計上したことなどによります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度において、財務活動の結果使用した資金は、4億78百万円(前連結会計年度比64億12百万円の支出減)となりました。これは主に、長期借入れによる収入50億円を取得した一方、配当金の支払額35億28百万円、自己株式の取得による支出5億30百万円をそれぞれ計上したことなどによります。

 

④販売、仕入及び受注の実績

a.販売実績

期間

前連結会計年度

自 2022年4月1日

至 2023年3月31日

当連結会計年度

自 2023年4月1日

至 2024年3月31日

セグメントの名称

金額

(百万円)

前年同期比

(%)

構成比率

(%)

金額

(百万円)

前年同期比

(%)

構成比率

(%)

産業機器

77,440

4.5

15.3

79,742

3.0

15.1

工業機械

118,515

15.9

23.5

118,301

△0.2

22.5

住設・管材・空調

177,915

8.3

35.3

197,688

11.1

37.6

建築・エクステリア

51,638

10.9

10.2

54,404

5.4

10.3

建設機械

36,533

9.0

7.2

37,286

2.1

7.1

エネルギー

19,109

1.2

3.8

19,164

0.3

3.6

その他

23,654

2.1

4.7

19,981

△15.5

3.8

合計

504,806

9.1

100.0

526,569

4.3

100.0

 

b.仕入実績

 仕入実績の金額と販売実績の金額の差額は僅少であるため、記載を省略しております。

 

c.受注実績

 受注実績の金額と販売実績の金額の差額は僅少であるため、記載を省略しております。

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識・検討内容

 当連結会計年度の売上高は、5,265億69百万円(前連結会計年度比4.3%増)となりました。営業利益は147億23百万円(前連結会計年度比0.9%増)、経常利益は157億37百万円(前連結会計年度比2.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は118億12百万円(前連結会計年度比17.2%増)となりました。

 

《産業機器部門》

 産業機器部門につきましては、EVを中心とした自動車関連産業の部品加工需要が伸長したことにより、年明け以降、主力の切削工具の販売が堅調に推移しました。

 このような状況の中、カーボンニュートラルの実現に向けた省エネ商材の拡販、省人化・自動化を実現するスマートファクトリーの構築に向けたローカル5Gソリューションなどの提案に注力した結果、売上高は797億42百万円(前連結会計年度比3.0%増)となりました。

 

《工業機械部門》

 工業機械部門につきましては、EVを中心とした自動車関連産業に加え、第2四半期以降に航空機・防衛関連産業においても設備投資意欲の上昇がみられるとともに、米国や東南アジア諸国の景気は底堅く推移しましたが、中国での景気減速の影響により、国内、海外ともに厳しい販売状況となりました。一方、受注面においては、国内外市場ともに厳しい状況が続きましたが、第4四半期以降、半導体関連産業での大型案件など、ようやく受注環境に改善の兆しがみえてきました。

 このような状況の中、セラミックスやガラスなどの脆性材加工に対応した加工環境ソリューション提案やロボット・AIを活用した自動化・省エネ提案に加え、海外においても工場全体のカーボンニュートラルなどモノづくり全般を見据えた提案の強化に努めた結果、売上高は1,183億1百万円(前連結会計年度比0.2%減)となりました。

 

《住設・管材・空調部門》

 住設・管材・空調部門につきましては、戸建ての新設住宅着工戸数が弱含みで推移する中、マンションやリフォーム需要は堅調に推移し、住宅設備機器、管材商品は底堅い動きとなりました。また、エネルギー価格の高騰、カーボンニュートラルへの対応を見据えた需要の増加により省エネ対応の空調機器や再生可能エネルギー分野の機器販売も堅調に推移しました。

 このような状況の中、首都圏や主要都市の再開発案件の増加や工場などの省エネ投資需要の高まりを受け、非住宅向けの管材商品・高効率空調機器などの販売が増加しました。また、カーボンニュートラル対応に向けた太陽光パネル・産業用蓄電池などのシステム提案とエンジニアリング機能の強化に努めた結果、売上高は1,976億88百万円(前連結会計年度比11.1%増)となりました。

 

《建築・エクステリア部門》

 建築・エクステリア部門につきましては、首都圏を中心とした再開発案件やマンション・ホテルに加えて物流施設の建設が増加したことにより、建築金物やフェンスなどを中心としたエクステリア商材が堅調に推移しました。また、自然災害や交通事故などの対策商品を中心に公共設備投資も底堅さがみられました。

 このような状況の中、水害対策ソリューションなどのレジリエンス製品やウォーカブルな街づくりに貢献する外構・エクステリア製品のパッケージ提案、歩行者保護対策としての防護柵・耐衝撃性車止め及び建築に係わる製作金物の拡販に注力した結果、売上高は544億4百万円(前連結会計年度比5.4%増)となりました。

 

《建設機械部門》

 建設機械部門につきましては、インフラ整備、防災・減災工事などの公共工事とともに、民間設備投資も堅調に推移しました。一方、資材価格の高騰、建設業の働き方改革、建設技能者不足による工事遅延や建設機械の長納期化などの影響が引き続きみられました。

 このような状況の中、建設現場のCO2見える化商品の拡販、建設・農業現場の安全施工のためのソリューション商品や海外輸入商品の販売を強化するとともに、行政機関に対して防災・減災・BCP関連商材の提案を推進しました。また中古建機・農機オークション事業をはじめ、コンテナハウス製造や建設機械の整備・レンタル機能の拡充に努めた結果、売上高は372億86百万円(前連結会計年度比2.1%増)となりました。

 

《エネルギー部門》

 エネルギー部門につきましては、低燃費車の普及によりガソリン需要が減少する中、政府による燃料油補助金が継続されたことなどにより、国内市況の安定化が図られました。

 このような状況の中、東海地方を中心に展開するガソリンスタンド事業では、洗車、車検、コーティングなどの他、レンタカーやカーメンテナンス事業等のサービス強化に努めました。また、京浜地区における船舶用燃料の販売強化に取り組みました結果、売上高は191億64百万円(前連結会計年度比0.3%増)となりました。

 

《その他》

 その他部門につきましては、消費財事業では、調理家電や季節家電の新商品開発と拡販に注力しました。また、EC(電子商取引)事業におきましては、消費者ニーズに対応した商品ラインナップの拡充に努めました。木材事業では、輸入材・国産材ともに需要の低迷が長引く中、輸入材を用いた木枠梱包材などの非住宅製品の販売を強化しました。また、国産材においては、新規仕入先の開拓や販売ネットワークの構築に注力するとともに、PB商品開発に取り組みました。

 この結果、売上高は199億81百万円(前連結会計年度比15.5%減)となりました。

 

 当社グループは創業360周年を迎える2026年を見据えた「ユアサビジョン360」実現の第3ステージとして、2023年4月から2026年3月までの3カ年を対象とする中期経営計画「Growing Together 2026」を推進しております。当連結会計年度の経営成績等を踏まえた、具体的な施策等は「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。

 

②当連結会計年度の財政状態及びキャッシュ・フローの分析

 当連結会計年度の財政状態及びキャッシュ・フローの分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要  ②財政状態の状況」及び「(1)経営成績等の状況の概要  ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 なお、中期経営計画に定める定量目標の進捗状況は下記のとおりであります。

指標

2024年3月期実績

2026年3月期(目標)

売上高

5,459億15百万円

6,000億円

経常利益

157億37百万円

200億円

経常利益率

2.9%

3.3%

(注)2022年3月期の期首より「収益認識に関する会計基準」等を適用しておりますが、上記の売上高は「収益認識に関する会計基準」等を適用しない場合の売上高を記載しております。

 

③当社グループの資本の財源及び資金の流動性

 当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、運転資金、設備投資等の資金需要に対して、短期借入金及び自己資金を充当することを基本方針としております。

 また、当社グループ内でキャッシュ・マネジメント・システムを活用したグループファイナンスを行うことで、連結ベースでの資金の効率化に努め、資金管理体制の充実を図っております。

 当連結会計年度末の「現金及び現金同等物」の残高は、前連結会計年度末より103億51百万円減少し、420億44百万円となっており、充分な流動性を確保していると考えております。

 なお、将来当社グループの成長のために多額の資金需要が生じた場合には借入金の増額も検討いたしますが、財務の健全性を維持しつつ、事業活動を通じて創出した利益を成長分野へ投資することにより、1株当たり当期純利益を増大させ、株主価値の向上を図ってまいります。

 

④重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

5【経営上の重要な契約等】

  特記すべき事項はありません。

 

6【研究開発活動】

 特記すべき事項はありません。