第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)会社の経営の基本方針

 当社グループは、「誠実と信用」「進取と創造」「人間尊重」の3つを経営理念としております。社会的存在としての企業にとり継続性は主要な命題のひとつと考えますが、「誠実と信用」の理念のもと、当社グループは「産業とくらし」分野における技術専門集団として、長年にわたり株主さまや取引先さまをはじめ多くのステークホルダーから厚い信頼をいただいております。

 創業以来350年を超える長い歴史と伝統をもつ当社グループは、「進取と創造」の理念のもと、経営環境の変化に臨機に対応し、常に積極果敢の経営を心掛けております。

 また、当社グループは「人間尊重」をあらゆる企業活動の基本と位置づけ、CS(顧客満足度)向上を最優先とする経営戦略を展開し、多くのお客さまからご支持をいただいております。

 

(2)経営環境及び対処すべき課題

 今後の経済情勢につきましては、世界的な通商政策の動向や地政学リスク、原材料・エネルギー価格の変動による影響など、国内・海外ともに不透明な経済環境が続くと思われます。特に、国内においては労働人口の減少が進むことが見込まれる中、デジタル技術を活用した自動化・省人化の進展やカーボンニュートラル実現に向けたグリーンビジネスは一層の拡大が見込まれます。また、激甚化する自然災害に対応した安心・安全な社会インフラ構築に向けたレジリエンス対応の必要性が高まると思われます。

 このような状況の中、2023年4月よりスタートし、今期最終年度を迎える中期経営計画「Growing Together 2026」の達成に向け、収益性の向上と成長戦略の推進によるビジネス変革を通じた取引先ネットワークの拡大に取り組んでまいります。具体的には、「つなぐ」イノベーションによる社会課題の解決を推進するとともに、コア事業の拡大のために注力する分野を、海外、グリーン、デジタル、レジリエンス&セキュリティ、新流通、シェアリングとし、さらなる強化に努めてまいります。また、既存事業で培ってきた商品やサービスを積極的に展開する分野として、介護・医療、食品、農業を新事業と位置づけ、成長ドライバーとして積極的に推進します。

 さらに、「風土改革」「DX推進」「サステナビリティ推進」をベースとしてビジネス変革を推進し、モノづくり、すまいづくり、環境づくり、まちづくりの分野において既存取引ネットワークを発展させ、「モノ売り」と「コト売り」の両面においてマーケットアウト型のビジネスを展開することで、企業価値向上を実現してまいります。

 

1.「ユアサビジョン360」の概要

 創業360周年を迎える2026年に向け、提案型ビジネスを推進し、人・モノ・カネ・情報・データ・技術などあらゆるものを「つなぐ」ことで社会課題を解決していく「つなぐ」複合専門商社グループとして企業価値向上を目指します。また、2026年3月期の定量目標としては、連結売上高5,760億円(収益認識基準適用前6,000億円)、連結経常利益200億円、収益認識基準適用前の連結売上高を用いた連結経常利益率3.3%を目指します。なお、2026年3月期の連結業績予想は、連結売上高5,500億円、連結経常利益180億円、連結経常利益率3.3%として、「2025年3月期  決算短信〔日本基準〕(連結)」において2025年5月9日に公表しております。

 

2.中期経営計画「Growing Together 2026」の概要

 「風土改革」「DX推進」「サステナビリティ推進」をベースとしてビジネス変革を推進し、モノづくり、すまいづくり、環境づくり、まちづくりの分野において既存取引ネットワークを発展させ、「モノ売り」と「コト売り」の両面においてマーケットアウト型のビジネスを展開することで、企業価値向上を実現します。

(1)基本方針

モノづくり、すまいづくり、環境づくり、まちづくりの分野において、お取引先さまとともに「つなぐ」イノベーションにより社会課題を解決し、新たな市場を創り、国内&海外に展開することで、企業価値向上を実現します。

(2)ビジネス改革

①「つなぐ」イノベーションの常態化

人・モノ・カネ・情報・データ・技術などあらゆるものを「つなぐ」ことで社会課題を解決し、「モノ売り」と「コト売り」の両方を拡大させ、マーケットアウト型のビジネスモデルを確立します。

②成長戦略の推進

コア事業を拡大していくために注力する分野を、海外、グリーン、デジタル、レジリエンス&セキュリティ、新流通、シェアリングとし、既存事業で培ってきた商品やサービスを積極的に展開する事業として、介護・医療、食品、農業を新事業と位置づけ成長のためのドライバーとして積極的に推進します。

 

③既存取引先ネットワークの発展

主要仕入先約6,000社、主要販売先約20,000社からなるネットワークを、双方向かつ業界横断型のプラットフォームへ発展させ、国内及び海外で拡大いたします。

(3)変革を支える3つの施策

①風土改革

各種プロジェクトを通じ、人事制度・諸施策、働きやすい職場環境などについて従業員から意見を募り、「社員エンゲージメント向上」「『つなぐ』イノベーション」、「ビジネス変革の加速」を推進します。

②DX推進

「データ活用基盤構築」「DX人材育成」「業務プロセス改革」「イノベーションの創出」などを推進します。

③サステナビリティ推進

当社グループのCO2削減と社会課題解決ビジネスの推進に注力してまいります。

(4)投資・資本政策

①投資

3年間(2023年4月~2026年3月)の投資枠としてキャッシュ・フロー全体の半分強にあたる212億円を成長投資に配分します。そのうち海外・デジタル・グリーンで合計60億円、その他の成長戦略とコア事業で合計40億円を予定しております。

②株主還元

自己株式の取得を含め株主還元率33%以上、DOE(株主資本配当率)3.5%以上を目標に掲げ、安定的な株主還元を継続してまいります。

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2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

(1)サステナビリティ全般

  当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりです。

  なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

① ガバナンス

 当社グループは、サステナビリティに資する経営の推進を図るため、代表取締役を委員長とするサステナビリティ推進委員会を設置しています。当委員会は、気候変動を含むサステナビリティ全般のリスク及び機会、影響についての審議、リスク低減のための対応方針の検討を定期的に行い、取締役会に答申します。取締役会では、それらを事業戦略及びサステナビリティに関する重要事項として審議し、方針などを決定しています。

 サステナビリティに関する各指標のモニタリングや目標管理、リスク管理を全社グループで進めるため、グループ会社を含む各事業部門・拠点にサステナビリティ推進担当者を配置し、グループ全体での管理を行っており、それらの進捗状況は、総務部内にあるIR・サステナビリティ推進室の専任担当者が事務局となり、サステナビリティ推進委員会へ報告しています。

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 ユアサ商事グループのサステナビリティ推進については以下のウェブサイトをご参照ください。

 https://www.yuasa.co.jp/sustainability/

 

② 戦略

 当社グループは、「誠実と信用」「進取と創造」「人間尊重」を企業理念として掲げ、350年以上受け継がれてきた経営基盤をさらに進化させるため、以下「サステナビリティ宣言」を軸としたマテリアリティの特定、及び具体的なアクションプランを策定しています。地球環境との調和を機軸として、世界のいかなる国、地域においても双利共生の関係を重視し、企業活動を通じて、より人間らしい豊かな社会づくり、持続的な社会の構築に向け積極的に貢献していきます。

 

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(注) サステナビリティに関する取り組みの優先事項を特定するため、マテリアリティマトリックスを作成しています。重要性の高い事項については、事業環境及び当社の事業計画を踏まえ、随時見直しを行います。

 

③ リスク管理

 当社グループは、気候変動を含むサステナビリティ全般のリスク管理について、リスク管理統括責任者や各委員会(倫理・コンプライアンス委員会、内部統制委員会、環境・レジリエンス委員会等)とサステナビリティ推進委員会との連携により、リスクの特定及び評価・管理を行っており、必要に応じてリスク管理状況を取締役会へ報告しています。また、関連する社内諸規則・通達等に基づき当社グループの事業活動上の様々なリスクの把握、情報収集、予防対策の立案、研修を行うなどリスクを横断的に管理しています。

 

④ 指標及び目標

 中期経営計画「Growing Together 2026」において、環境・ダイバーシティ・働き方改革・人材育成に関する定量計画を設定しました。詳細は(2)「地球環境との調和」に向けた取り組みの④ 指標と目標、(4)「人間尊重の経営」に向けた取り組みの② 指標と目標をそれぞれ参照ください。

 

(2)「地球環境との調和」に向けた取り組み

重要課題:気候変動への対応、創エネ・省エネノウハウによる脱炭素社会への貢献

① ガバナンス

 (1)サステナビリティ全般の① ガバナンスを参照ください。

 

② 戦略

 当社グループは、全ての事業活動を通じ、地球環境の健全な維持と経済成長の調和を目指す「持続可能な発展」の実現に向け、環境方針を定めています。環境マネジメントの国際規格であるISO14001マルチ認証を活用し、環境パフォーマンスの改善に向けた組織活動、製品及びサービスにおける環境負荷の低減を行っています。

《環境マネジメント推進体制》

 環境マネジメントの推進に向けて、当社グループは「環境マネジメント推進体制」を構築し、環境方針に基づき、PDCAサイクル(計画、実施・運用、点検、見直し)を図っています。環境・気候変動に関する重要な事項や進捗については、サステナビリティ推進委員会において報告・審議し、必要に応じて取締役会に報告しています。

 

環境方針・環境マネジメント推進体制の詳細については以下のウェブサイトをご参照ください。

https://www.yuasa.co.jp/sustainability/environment/management/

 

■気候変動によるリスクと機会

 当社グループは、「モノづくり」「すまいづくり」「環境づくり」「まちづくり」の分野で複合専門商社として多様な商品・サービスを取り扱っており、気候変動に関する影響や事業環境の変化によるリスクや機会があります。

 気候変動に関する影響や事業環境の変化をより客観的に評価するため、事業部門の代表者や管理部門のサステナビリティ推進担当者と議論を重ね、シナリオ分析を実施しています。影響を受ける事業や分野について、変革やリスク管理を進めるとともに、今後の政策や規制、市場環境の変化に応じた移行期の事業機会を積極的に捉え、持続的な成長を目指していきます。

区分

主な内容

移行リスク

政策・法規則

・炭素税の導入等、政府規制を起因とするコスト増

・製品に対する環境規制強化によるコスト増

技術

・低炭素技術による既存商品の需要減

市場・評判

・脱炭素化に伴う原材料等の価格高騰やエネルギー価格上昇によるコスト増

・対応遅れや情報開示不足による対外評価下落とサプライチェーンの競争力低下

物理的リスク

急性的

・大規模な自然災害による自社グループ拠点及びサプライチェーンの分断等

慢性的

・水不足や電力不足による生産活動の停滞

機会

製品・サービス

・エネルギー効率の高い製品の需要拡大

・レジリエンス商品の需要拡大

・資源循環に関する製品の需要拡大

市場

・再生可能エネルギー需要の拡大

・エネルギー価格上昇による省エネ商材や高効率機器への切り替え需要増

・政府によるGX(グリーントランスフォーメーション)の推進

 

■機会をとらえる取り組みの強化

 社会全体での環境負荷低減に貢献していくため、取扱い製品・サービスの製造や使用時のCO2排出量の削減を進めることが重要です。当社グループでは2009年より、省エネコンサルティングの専門部隊を設置し、仕入先の製造工場等への省エネ機器や再生可能エネルギーの導入支援を行うとともに、販売先やそのお客さまによる製品使用時のCO2排出量の削減を進めるため、省エネ製品や脱炭素関連製品の提案・販売を推進してきました。また、海外市場に対する省エネ・脱炭素に関する取り組みも強化しており、世界全体での環境負荷低減に貢献できるようカーボンニュートラルセミナーの開催や二国間クレジット制度(JCM)を活用した省エネ提案を推進しています。

 また、甚大化する自然災害等、気候変動の物理的リスクに対応するビジネスとして、レジリエンス&セキュリティ事業を展開しています。防災・減災・BCP(事業継続計画)をキーワードに、社会インフラの強靭化(レジリエンス)につながる商品・サービスの普及に取り組むとともに、深刻化する自然災害や感染症といった社会課題に対応すべく、新たなソリューション開発を推進しています。

部門名・事業名

気候変動への対応につながる主な対象商品・サービス

産業機器

節電ユニット 等

工業機械

省エネ型工作機械 等

住設・管材・空調

高効率空調設備、太陽光発電システム、蓄電池 等

建築・エクステリア

ソーラーカーポート、ソーラーハウス 等

建設機械

省エネ型建設機械、CO2モニタリングシステム 等

グリーン

再生可能エネルギーの導入支援 等

レジリエンス&セキュリティ

遠隔起動排水システム『つなぐBCPパッケージ』、防災電源倉庫 等

 

気候変動への対応の詳細については以下のウェブサイトをご参照ください。

https://www.yuasa.co.jp/sustainability/environment/climate/

 

③ リスク管理

 (1)サステナビリティ全般の③ リスク管理を参照ください。

 当社の事業は、主に国内の多様な産業分野にわたる大企業、中小・中堅企業との取引から成り立っており、気候変動に関するリスクは、法規制や政策の変化、顧客需要の変化、経済社会情勢の変化など多岐にわたります。

当社事業に関わるリスクについては、各事業部門において規制や市場環境の変化を評価し、対応しています。

 また当社グループの拠点における物理的リスクの評価を行い、社内のBCP(事業継続計画)との整合性を踏まえたリスク管理を進めています。

 

④ 指標と目標

 2030年度までに当社グループ全体のScope1,2においてカーボンニュートラルを目指すとともに、サプライチェーン全体での環境負荷低減に努めています。当社グループのカーボンニュートラルに向けた第一ステップとして、中期経営計画の最終年度である2026年3月期までにCO2排出量30%削減(2023年3月期比)を目指します。

 また、事業を通じたサプライチェーン全体の排出削減を進めるため、Scope3についても算定を開始しています。

■中期経営計画「Growing Together 2026」における環境に関する目標

CO2排出量

(単位:t-CO2)

 

Scope

2023年3月期実績

2024年3月期実績

2025年3月期実績

2026年3月期計画

単体

Scope1

1,025

995

算定中

Scope2

1,232

813

Scope1,2計

2,257

1,808

グループ

Scope1

3,020

3,094

Scope2

1,405

1,431

Scope1,2計

4,425

4,526

連結

Scope1,2計

6,682

6,335

2023年3月期比

30%削減

 (注) Scope3に関しては現在算定中です。2025年3月期のScope1,2,3に関するデータは、当社ホームページ「ESGデータ」に掲載予定です。

 

 当社ホームページ「ESGデータ」については以下のウェブサイトをご参照ください。

 https://www.yuasa.co.jp/sustainability/esg/

 

(3)「良品奉仕の事業活動」に向けた取り組み

重要課題:「良品奉仕」による安心&安全な社会の形成

 当社グループは、創業から続く「良品奉仕」の精神に基づき、公正かつ堅実・誠実な商取引を行ってきました。様々なステークホルダーとともに、地球環境との調和をはじめとするサステナビリティを重視した経営をより推進するため、「ユアサ商事グループ取引方針」を策定しています。お取引先様とともに本取引方針に取り組むため、主要取引先に対するアンケートを毎年実施し、定期的に状況確認をすると共に、取引先を通じたバリューチェーン全体の取り組みを推進しています。アンケート項目には、環境・気候変動、労働安全、コンプライアンス、人権などの項目がふくまれます。

 

■人権への取り組み

 当社グループの事業活動において、人権の尊重は重要な要素の一つと考え、「ユアサ商事グループ人権方針」を策定しています。

 

《推進体制》

 当社グループでは、総務部 IR・サステナビリティ推進室及び法務部、審査部、内部監査室が参加する分科会において、人権に対する方針案の策定、デュー・デリジェンスを実施しており、リスク・影響評価、教育研修、実施計画の策定などを実施しています。必要に応じ、倫理・コンプライアンス委員会と連携し、グループ全体のリスク管理を進めています。

 分科会の内容は、取締役会の諮問委員会であるサステナビリティ推進委員会に報告し、当社グループの人権に関する取り組み及び重要性の高いリスク等に関する報告・審議を行い、定期的に取締役会へ答申及び報告しています。取締役会は優先度の高い人権リスクへの対応や方針を決定します。

 

 

《人権デュー・デリジェンス》

 当社グループの人権方針を推進するため、事業全体における人権リスクを評価し、負の影響を防止・軽減するための取り組みを進めています。

 

① リスクの把握と評価手法

 事業活動全体における人権リスクを把握するため、社内外から情報収集を行い、リスクの洗い出しをしたうえで、「発生頻度」と「深刻度」の観点からリスク評価を行いました。

 当社グループでは工業機械、住宅設備機器、建設機械やエネルギー関連など約6,000社から様々な製品を仕入れ、これらの製品を約20,000社に販売しています。主要製品の業界特性や製品のバリューチェーンにおいて、どのような人権リスクがあるかについて社内分科会で議論し、発生頻度や深刻度を評価しました。

 業界別の人権リスクの評価にあたっては、経済産業省「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のための実務参照資料」(令和5年)を参考に、当社グループの取引先へのアンケート調査を踏まえて評価しました。

 

② リスク評価結果(重要性の高いリスクについて)

 上記のプロセスを経て、人権リスクを評価した結果、下記のようなリスクの可能性があると考察しています。

 ・取扱製品の一部について、製造時における労働安全衛生上の課題や労働時間等の課題がある可能性

 ・取扱製品の一部について、原材料の生産や製品製造時における労働問題(強制労働や児童労働の可能性)

 ・自社グループにおける労働時間等の課題

 

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《負の影響の防止・軽減と定期的なモニタリング》

当社グループでは、2022年の人権方針策定以降、方針の周知と負の影響の未然防止及び軽減に向けて下記の取り組みを行っています。今後も、定期的なモニタリングを通じ、リスクの軽減に努めてまいります。

 

① 売買基本契約書に人権条項を追加

 2023年4月以降、新規取引の際に取り交わす(当社書式の)基本契約書に、環境保全や労働安全などの人権関係の条項を追加しました。当社グループだけではなく、当社グループのビジネスパートナーの皆様も含め、人権リスク低減に努めます。

 

 

② 従業員相談窓口の設置

 当社グループでは、法令違反や違反するおそれのある事実を発見したときは、速やかに倫理・コンプライアンス委員会に相談・報告することを可能とする窓口(ホットライン)を常設しています。また、当該報告をしたことを理由に不利な取り扱いを受けない体制を確保しています。

 また、2022年6月の公益通報者保護法の改正に伴い、内部通報規程を改定しました。相談・報告窓口を拡充して守秘義務を強化すると共に、退職後1年以内の元社員・役員も窓口を利用できる体制にしました。

 

③ 研修の実施

 2023年度から2024年度にかけて、アンコンシャス・バイアス※に関する取り組みとして、全社員参加型の「人間尊重プロジェクト」を実施しました。事業と人権に関する知見やリスク認識を高め、アンコンシャス・バイアスの低減を目指しています。また、2024年度に全グループ社員を対象にハラスメント防止に関する研修を実施しました。

 今後もグループ全体に「ビジネスと人権」に対しての認知と理解を目的にした研修を継続的に実施します。

※アンコンシャス・バイアス…無意識の偏見・思い込み

 

④ 取引先アンケートによるバリューチェーン全体での取り組み推進

 当社グループでは、バリューチェーン全体において取引方針を推進すると共に、事業全体におけるリスク管理を進めるため、2024年度からお取引先様に対して、サステナビリティ及び人権リスク等への対応状況の確認に向けたアンケートを実施しています。初年度である2024年度は、ユアサ商事単体の取引金額約80%を占める仕入先様にアンケートを実施しました。

 今後も継続的にアンケートを実施していくと同時に、リスク管理の取り組み推進に向けた対話を行っていきます。

 

  ユアサ商事グループ 取引方針・人権方針については以下のウェブサイトをご参照ください。

  取引方針: https://www.yuasa.co.jp/sustainability/society/supply-chain/

  人権方針: https://www.yuasa.co.jp/sustainability/society/human-rights/

 

(4)「人間尊重の経営」に向けた取り組み

重要課題:創業400周年に向けた健康経営&働きやすさの推進、ダイバーシティ推進、教育研修の充実

① 戦略

 人材戦略における基本的な考え方として、当社グループは社員を人財=資本と捉え、企業価値の向上に欠くことができない重要な資本だと考えています。会社への貢献を通じて社員一人ひとりが個の能力の向上を実現できるよう機会を提供し、社員が成長を果たす為の組織・環境づくりに取り組むことで、持続的な企業価値の向上につなげていきます。

 

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 当社グループは「総合力」「チャレンジ」「コミュニケーション」をキーワードに、「つなぐ」イノベーションにより社会課題を解決し、新たな市場創出と成長戦略の推進を目指しています。これを実現するためには、ビジネス変革は不可欠であり、その変革を加速させるため、「つなぐ」イノベーションが常態化する企業風土を醸成します。2026年に当社グループが目指す姿『「つなぐ」イノベーションが常態化した組織』に向け、会社と社員の持続的な成長の両立を果たし、企業価値の向上をさらに加速させていきます。

 

 会社と社員の持続的な成長の両立を果たすため、当社グループでは「働きがいの向上」「働きやすさの向上」の2つを重点課題としています。

 そこで、現在推進している風土改革※の一つの施策である人事制度改革において、これらの課題に取り組むため、2023年3月より2026年3月までの3年間、全社員参加型プロジェクト「YUASA PRIDE プロジェクト」を実行しています。2023年度は全社員を対象にしたワークショップで働きがいと人間尊重に関しての意見を集め、2024年度はタスクフォースメンバーを募りさらに議論を深めていきました。

 

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 ※風土改革について:企業理念に立脚して定めた求める人材像の集団とすることで、働きがいと働きやすさが高まり、イノベーションが常態化し、企業の競争力の向上につながります。中期経営計画で目指す「つなぐ」イノベーションが常態化する風土づくりを目的に、人事制度改革、環境づくり、ガバナンス強化を推進していきます。

 

《社員の働きがいにおける課題と具体的な取り組み》

 当社では、定期的に社員意識調査を実施しています。分析の結果、社員の会社に対するエンゲージメントと働きがいは大きく関係しており、働きがいは仕事を通した自身の成長、特にマネジメント経験や個々の能力向上に起因しています。人事諸制度の改革や人材育成などにより、社員の働きがいの向上に取り組んでいきます。

■人事制度

 会社と社員の持続的な成長の両立を果たすための人事制度を策定中です。

 求める人材要件のひとつを『取引先の課題及び社会課題の解決に貢献できる人材』とし、それらの人材を質・量ともに獲得し、育成するための諸制度を検討しています。マネジメント体系の最適化と、社員に成長機会を提供するため、若手社員から早期にマネジメント経験を得られる制度を検討しています。また、会社が求める行動が評価される制度や、社員の自発的な学びを支援する研修体系を整備していきます。

 

■人材育成

 当社グループでは、求める人材像を育成するための研修体系を策定中です。

 具体的には、昨年度実施したマネージャー層全員を対象としたビジネススクールを活用したマネジメントスキル研修を、中堅社員にも展開しています。今後は対象を一般社員にも広げていきます。また、本部研修や業界資格取得支援などの専門スキル研修、デジタルスキル研修、海外研修生制度や語学研修などのグローバルスキル研修を実施しています。

 

《社員の働きやすさにおける課題と具体的な取り組み》

 社員が個々の能力を高めイノベーションを生み出すためDE&Iを推進していきます。性別・年齢・国籍・障がいの有無・様々なライフスタイル等、多様なバックグラウンドを持つ社員が、互いの価値観を尊重し、共に高め合う企業風土の醸成が必要だと考えます。また、社員の健康増進や労働時間の削減など、労働環境整備の推進にも取り組んでいきます。

 

  ユアサ商事グループ ダイバーシティ方針については以下のウェブサイトをご参照ください。

  https://www.yuasa.co.jp/sustainability/society/diversity/

 

■ダイバーシティと働き方改革

 アンコンシャス・バイアスへの理解と正しい向き合い方について全社員が参加するワークショップで社員と意見交換しました。多様な人材が活躍し、誰もが安心して意見を発信できる環境を整えることで、イノベーションが起こりやすい企業風土を醸成していきます。

 

■健康経営

 2018年8月に健康宣言を制定し、社員の安全と心身の健康維持・増進に取り組んでおり、2019年から経済産業省より健康経営優良法人として認定されています。今後も、健康経営優良法人認定企業として、社員の健康維持・増進をより一層支援します。

 

② 指標と目標

■中期経営計画「Growing Together 2026」におけるダイバーシティ、働き方改革、人材育成に関する目標

 以下、提出会社を対象とした指標です。

 

2023年3月期実績

2024年3月期実績

2025年3月期実績

2026年3月期計画

女性管理職比率

1.9%

2.0%

1.7

3.0

女性総合職比率

4.2%

4.0%

5.6

6.0

女性総合職採用率

10.3%

6.5%

19.0

12.0

男性育休及び

育児目的休暇取得率

78.1%

72.5%

74.4

100.0

有給休暇取得率

62.8%

67.8%

64.0

70.0

平均労働時間

1,955時間

1,934時間

1,923時間

1,920時間

マネジメント人材育成

※当該年度の対象研修受講者(延べ)

84名

280名

335

370

デジタル人材育成

※当社独自プログラムの合格者

IT人材:109名

(注)1

IT人材:316名

(注)1

IT人材:600名

DX人材:40名

(注)1、2

 (注)1 IT人材…ITツールやデジタル技術を自らの業務に活かし、デジタル施策の実行ができる人材

2 DX人材…データ分析結果を利活用し、マーケティングと経営戦略に特化した知識により新たな企画立案を行い推進する人材

 

《健康経営に資する目標》

当社の健康増進・維持への取り組み

(ⅰ) 定期健康診断及びストレスチェックの受診率向上

受診率目標 100%

(ⅱ) 定期健康診断で高リスクと診断された社員の受診率向上

受診率目標 100%

(ⅲ) 社員の健康意識向上への取り組み

定期的な健康イベントの実施

(ⅳ) 受動喫煙対策への取り組み

全事業所内の完全禁煙または分煙化

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。なお、本項において将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は有価証券報告書提出日現在において判断したものであります。

 

 当社グループでは、リスクに関する統括責任者(以下「リスク管理統括責任者」という)として経営管理部門管掌取締役を定め、想定されるリスクごとに、発生時における迅速かつ適切な情報伝達と緊急事態対応体制を整備しております。リスク管理統括責任者は、必要に応じてリスク管理の状況を取締役会に報告しており、リスクが顕在化した場合の、事業中断及び影響を最小限にとどめ、事業継続マネジメント体制の整備に努めております。

 

(1) 景気変動リスク

 当社グループは産業設備関連投資や新設住宅着工戸数等の建設投資の動向と密接な関連性を有しております。当社グループは新領域及び海外などの新市場の拡大に注力いたしておりますが、上記経済動向に予想外の変動があった場合には経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(2) 株価変動リスク

 当社グループは取引先を中心とした市場性のある株式を保有しており、株価変動のリスクを負っております。これらの株式は中長期的な保有を目的としており、適宜、当社の「有価証券投資に関するガイドライン」に基づき保有株式の見直しを行っておりますが、株価変動が当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(3) 金利変動リスク

 当社グループの有利子負債には、変動金利条件となっているものがあり、総資産に占める借入依存度は低いものの、今後の金利動向によっては当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。当社グループでは、金利変動リスクを回避する目的で、有利子負債の変動金利から固定金利への転換等を行う場合があります。

 

(4) 信用リスク

 当社グループは、多様な営業活動を通じて国内外の取引先に対して信用供与を行っており、信用リスクを負っております。当社グループでは社内管理規程等に基づく与信管理を行い、リスクの軽減に努めておりますが、取引先の予想外の諸事情による債務不履行等が発生した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(5) 為替変動リスク

 当社グループは、外貨による輸出入取引において、為替予約を用いて為替レートの変動リスクの軽減に努めておりますが、為替レートの変動によって当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。また、当社グループは海外現地法人を有しており、連結財務諸表作成の際の為替換算レートの変動によっては、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(6) コンプライアンスリスク

 当社グループは、様々な事業領域で活動を行っており、事業活動に関連する法令・規制は、会社法、税法、汚職等腐敗行為防止のための諸法令、独占禁止法、外為法を含む貿易関連諸法や建築基準法や化学品規制などを含む各種業界法など広範囲にわたっております。これらの法令・規制を遵守するため、当社グループでは倫理方針、行動規範を定めるとともに、代表取締役社長の直轄組織である倫理・コンプライアンス委員会を設け、グループ全体のコンプライアンスの徹底及び指導を図っております。しかしながら、このような取り組みによっても事業活動におけるコンプライアンスリスクを完全に排除することはできるものではなく、関係する法律や規制の大幅な変更、予期しない解釈の適用などが当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

 

(7) 情報システム・情報セキュリティに関するリスク

 当社グループは、情報共有や業務の効率化のため、情報システムを構築・運用しており、情報システム運営上の安全性確保のため、情報セキュリティ運用細則を定め、危機管理対応の徹底に取り組んでおりますが、外部からの予期せぬ不正アクセス、コンピュータウイルス侵入等による企業機密情報・個人情報の漏洩、さらには、自然災害、事故等による情報システム設備の損壊や通信回線のトラブルなどにより情報システムが不稼動となる可能性を完全に排除することはできません。このような場合は、システムに依存している業務の効率性の低下を招くほか、被害の規模によっては、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(8) 製造物責任リスク

 当社グループは、生活家電の製造・販売事業を行っております。これら商品の品質管理には万全を期するとともに製造物責任保険も付保しておりますが、大規模なリコールや製造物責任賠償につながるような商品の欠陥が発生した場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(9) カントリーリスク

 当社グループは、海外における取引や海外での事業活動を行っております。これら海外の取引相手国における政策変更、政治・経済等の環境変化により、債権または投融資の回収が困難になるようなリスクを有しております。想定し得るカントリーリスクについては、各種の情報に基づき慎重に対応し、貿易保険を付保するなど、リスクの管理・ヘッジに努めておりますが、特定の国または地域に関連して回収不能が発生した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(10) 自然災害等リスク

 地震や大規模な水害などの自然災害や新型ウイルス等の感染症の流行の予期せぬ事態が発生した場合、事業所の機能停止、設備の損壊、電力等の供給停止等により、当社グループの事業活動の継続に影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、事業活動の継続のために、事業継続計画(BCP)の策定、安否確認システムの導入、災害対策マニュアルの作成、耐震対策、防災訓練等の対策を講じておりますが、自然災害及び新型ウイルス等の感染症による被害を完全に回避できるものではなく、これらの被害が発生した場合は、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(11) 事業投資リスク

 当社グループは、中期経営計画「Growing Together 2026」の投資方針として、機動的な成長戦略投資を実行することを目標に掲げております。これらの投資は、取締役会や経営会議等の重要会議を通じ、十分な検討を行ったうえで実施しており、投資効果について適宜取締役会で報告を行っております。しかしながら、期待どおりの収益が上がらないリスクや事業計画を達成できないリスクを完全に回避することは困難であり、想定どおりに事業が進まない場合、または当該事業の撤退に伴う損失等が発生する可能性があります。

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

①経営成績の状況

 当連結会計年度(2024年4月1日~2025年3月31日)におけるわが国経済は、自動車・半導体関連産業を中心に工作機械をはじめとする設備投資が一部低調に推移したものの、雇用や所得環境の改善がみられるなど景気は緩やかに回復しました。一方、地政学リスクや原材料費の高止まりに加え、為替の変動など先行きが不透明な状況が続きました。また、少子高齢化による生産年齢人口の減少が進む国内においては、働き方改革関連法による労働時間の制限などにより、全産業で人手不足が表面化いたしました。特に建設業や物流業を中心に工事遅延や工期の長期化、事業縮小などの影響が懸念されます。

 工業分野では、AI関連の半導体関連産業などに底堅い設備投資需要が続きました。住宅分野では、戸建てを中心とした新設住宅着工戸数は引き続き弱含みで推移したものの、高機能商品の需要が高まりました。建設分野では、都市部を中心とした再開発や大阪・関西万博関連需要は堅調に推移しました。

 海外では、米国で景気の拡大が続くとともに、タイ、インド、インドネシアなどでも景気が底堅く推移した一方、中国では景気の足踏み状態が続きました。

 このような状況の中、当社グループは創業360周年を迎える2026年のあるべき姿「ユアサビジョン360」の最終(3rd)ステージとして、2023年4月~2026年3月までの3カ年を対象とする中期経営計画「Growing Together 2026」の2年目を迎えました。「風土改革」「DX推進」「サステナビリティ推進」をベースとしてビジネス変革を推進し、モノづくり、すまいづくり、環境づくり、まちづくりの分野において、「モノ売り」と「コト売り」の両面でマーケットアウト型のビジネスを展開することで、企業価値の向上に取り組んでいます。

 「風土改革」では、YUASA PRIDEプロジェクト(働きがい向上&人間尊重プロジェクト)を進め、社員のエンゲージメントを高め、「つなぐ」イノベーションで社会課題を解決できる人材の育成に取り組んでいます。また、「総合力」「チャレンジ」「コミュニケーション」をキーワードに、企業風土改革を推進しています。

 「DX推進」では、データ活用基盤構築、DX人材育成、業務プロセス改革、イノベーション創出を進め、ビジネス変革を支えてまいります。

 「サステナビリティ推進」では、2026年3月までに当社グループのCO2排出量30%削減を目指すとともに、お取引先さまのカーボンニュートラルを支援するグリーン事業を全社で推進しています。

 成長戦略の推進として、ロボット・AIデジタル戦略においては、AI検品ソリューション「F[ai]ND OUTシリーズ」の機能を強化し、さらなる展開を進めております。また、ピッキング用自動搬送システム「ツインピック」をはじめとする物流ソリューションをトータルで提案する「LOGI CRAFT(ロジクラフト)」の提供を開始するなどロボットや自動化装置の拡販に努めました。2025年2月には、シェアリングビジネスの強化を目的とし、イベント設営事業・ファニシング事業等を展開する株式会社ラインナップを子会社化しました。

 海外戦略では、地域戦略の強化に向け、タイ(バンコク市)にショールームを兼ね備えた現地法人の新社屋を2024年11月に竣工し、2025年2月に『日本の文化とタイの文化を「つなぐ」』をテーマとした総合展示会「YUASA Grand Fair in Thailand」を開催しました。さらに、モノづくり現場の省エネに貢献する整電ユニットの海外(10カ国・地域)における総代理店権の獲得や営業拠点(インド2カ所、ベトナム1カ所)の整備など、海外事業拡大に向けた体制を整備しました。

 これらの結果、当社グループの当連結会計年度の売上高は、前連結会計年度比0.3%増の5,283億87百万円となりました。利益面につきましては、営業利益は157億61百万円(前連結会計年度比7.0%増)、経常利益は160億10百万円(前連結会計年度比1.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は、前年に退職給付信託返還益を32億55百万円計上したこともあり、前連結会計年度比13.3%減の102億42百万円となりました。

 

 セグメント別の売上高の詳細については、「(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容」に記載しております。

 なお、当連結会計年度において、当社の連結子会社であるYUASA TRADING(THAILAND)CO.,LTD.は、当社の連結子会社であるYUASA ENGINEERING SOLUTION(THAILAND)CO.,LTD.の株式を当社から取得しております。これに伴い、従来「住設・管材・空調」のセグメントに区分しておりましたYUASA ENGINEERING SOLUTION(THAILAND)CO.,LTD.の事業を、「工業機械」の報告セグメントに含めて記載する方法に変更しております。当連結会計年度のセグメント情報については変更後の区分により作成したものを記載しております。

 

②財政状態の状況

 当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末に比べて33億54百万円減少し、2,876億35百万円となりました。これは受取手形、売掛金及び契約資産が132億67百万円減少した一方で、その他の無形固定資産が50億37百万円、現金及び預金が17億52百万円増加したことなどによります。

 当連結会計年度末における負債合計は、前連結会計年度末に比べて103億60百万円減少し、1,782億19百万円となりました。これは、電子記録債務が76億50百万円、支払手形及び買掛金が45億97百万円減少したことなどによります。

 当連結会計年度末における純資産合計は、前連結会計年度末に比べて70億6百万円増加し、1,094億16百万円となりました。主な要因は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上などにより利益剰余金が67億18百万円、為替換算調整勘定が7億79百万円増加した一方で、その他有価証券評価差額金が5億41百万円減少したことなどによります。この結果、自己資本比率は、37.8%(前連結会計年度末は35.0%)となりました。

③キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、437億9百万円となり、前連結会計年度末より16億65百万円の増加となりました。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度において、営業活動の結果得られた資金は、159億82百万円(前連結会計年度比81億11百万円の収入減)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益156億33百万円、売上債権の減少額131億99百万円を計上した一方、仕入債務の減少額124億71百万円を計上したことなどによります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度において、投資活動の結果使用した資金は、99億65百万円(前連結会計年度比242億74百万円の支出減)となりました。これは主に、無形固定資産の取得による支出44億67百万円、有形固定資産の取得による支出21億75百万円、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出19億34百万円を計上したことなどによります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度において、財務活動の結果使用した資金は、47億97百万円(前連結会計年度比43億18百万円の支出増)となりました。これは主に、配当金の支払額による支出35億67百万円、長期借入金の返済による支出10億58百万円をそれぞれ計上したことなどによります。

 

④販売、仕入及び受注の実績

a.販売実績

期間

前連結会計年度

自 2023年4月1日

至 2024年3月31日

当連結会計年度

自 2024年4月1日

至 2025年3月31日

セグメントの名称

金額

(百万円)

前年同期比

(%)

構成比率

(%)

金額

(百万円)

前年同期比

(%)

構成比率

(%)

産業機器

79,742

3.0

15.1

77,767

△2.5

14.7

工業機械

118,683

22.6

107,403

△9.5

20.3

住設・管材・空調

197,306

37.5

209,688

6.3

39.7

建築・エクステリア

54,404

5.4

10.3

57,342

5.4

10.9

建設機械

37,286

2.1

7.1

36,868

△1.1

7.0

エネルギー

19,164

0.3

3.6

18,607

△2.9

3.5

その他

19,981

△15.5

3.8

20,709

3.6

3.9

合計

526,569

4.3

100.0

528,387

0.3

100.0

(注) 前連結会計年度のセグメントごとの販売額は変更後の区分により作成したものを記載しております。

 

b.仕入実績

 仕入実績の金額と販売実績の金額の差額は僅少であるため、記載を省略しております。

 

c.受注実績

 受注実績の金額と販売実績の金額の差額は僅少であるため、記載を省略しております。

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識・検討内容

 当連結会計年度の売上高は、前連結会計年度比0.3%増の5,283億87百万円となりました。利益面につきましては、営業利益は157億61百万円(前連結会計年度比7.0%増)、経常利益は160億10百万円(前連結会計年度比1.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は、前年度に退職給付信託返還益を32億55百万円計上したこともあり、前連結会計年度比13.3%減の102億42百万円となりました。

 

《産業機器部門》

 産業機器部門につきましては、自動車関連産業ではEVを中心に先行きの不透明感が強まり、車載用半導体などの関連分野にも影響がみられ、切削工具などの販売は引き続き低調に推移しました。

 このような状況の中、社会課題解決に向け、脱炭素・省エネなどに貢献する太陽光・蓄電池などのカーボンニュートラル商材や労働人口減少・働き方改革に対応したスマートファクトリーの構築に必要なロボット・物流の自動化アイテムの販売に注力し、関連商材は堅調に推移しましたが、売上高は777億67百万円(前連結会計年度比2.5%減)となりました。

 

《工業機械部門》

 工業機械部門につきましては、国内では、半導体製造装置や医療機器、航空機、防衛関連産業などにおいて設備投資需要に緩やかな回復の傾向がみられ商談は増加したものの、世界情勢の不透明な状況や原材料費・エネルギー高騰の原因により、受注回復は足踏み状態となりました。海外では、世界的な経済政策の不確実性があるものの、現地生産のEV、半導体関連装置、空調機製造の設備投資は堅調に推移しました。

 このような状況の中、国内では、精密板金市場や脆性材加工分野の販売強化を目的とした製品開発等を継続しました。また、測定分野ではAIを活用した自動化・DX提案を製品開発とともに進めましたが、売上高は1,074億3百万円(前連結会計年度比9.5%減)となりました。

 

《住設・管材・空調部門》

 住設・管材・空調部門につきましては、人口減少に伴う新設住宅着工戸数の減少に加え、働き方改革や物流問題など建設業界が大きな転換期を迎え、人手不足や資材価格の高止まりによる工期の遅れがみられたものの、マンションやリフォーム需要が堅調に推移し、住宅設備機器は底堅い動きとなりました。また、エネルギー価格の高騰やカーボンニュートラルへの対応を見据えた需要の増加により、管材商品や空調関連機器は堅調に推移しました。

 このような状況の中、特に大都市圏での再開発案件の増加や中小規模の改修工事案件、省エネ関連の設備投資需要により、管材商品・高効率空調機器などの販売が増加しました。また、カーボンニュートラル対応に向けた太陽光パネル・産業用蓄電池などのシステム提案とエンジニアリング機能の強化に努めました結果、売上高は2,096億88百万円(前連結会計年度比6.3%増)となりました。

 

《建築・エクステリア部門》

 建築・エクステリア部門につきましては、引き続き首都圏を中心とした再開発案件と自然災害・交通事故対策商品などの社会インフラ関連投資は底堅く推移しました。また、監視管理システムなどの防犯商品の需要が増加しました。一方、商業施設・店舗や学校向けの公共エクステリア製品の販売が伸び悩みました。

 このような状況の中、豪雨災害対策として水害対策ソリューションなどのレジリエンス製品やウォーカブルな街づくりに貢献する外構・エクステリア製品のパッケージ提案、建築に係わる製作金物や機能提案、及び子育て支援・再配達削減を目的とした宅配ボックスの拡販に注力した結果、売上高は573億42百万円(前連結会計年度比5.4%増)となりました。

 

《建設機械部門》

 建設機械部門につきましては、国土強靭化対策等によるインフラ整備、防災・減災工事などの公共工事とともに、民間設備投資も堅調に推移しました。一方、機械・資材価格の高騰、建設業の働き方改革、建設技能者不足による工事遅延などの影響が引き続きみられました。

 このような状況の中、省人化が実現できるIoT・自動化技術の提案や建設現場のCO2見える化商品の拡販、建設・農業現場の安全施工のためのソリューション商品と新たな機能を搭載した海外輸入商品の販売を強化するとともに、行政機関に対して防災・減災・BCP関連商材の提案を推進しました。また、中古建機・農機オークション事業をはじめ、コンテナハウス製造や建設機械の整備・レンタル機能の拡充に努めましたが、売上高は368億68百万円(前連結会計年度比1.1%減)となりました。

 

 

《エネルギー部門》

 エネルギー部門につきましては、低燃費車の普及によりガソリン需要が引き続き減少する中、政府による燃料油補助金の継続等により、国内市況の安定化が図られました。

 このような状況の中、東海地方を中心に展開するガソリンスタンド事業では、付加価値の高い洗車、車検、コーティングなどの他、レンタカーやカーメンテナンス事業等のサービス強化に努めました。また、京浜地区における船舶用燃料の販売強化に取り組みましたが、売上高は186億7百万円(前連結会計年度比2.9%減)となりました。

 

《その他》

 その他部門につきましては、消費財事業では、物価高騰による個人消費の落ち込みがみられたものの、消費者ニーズを捉え、調理家電等を中心にプライベートブランド商品のラインナップ拡充に努めました。木材事業では、輸入合板の需要低迷と円安の影響を受け販売量が減少した一方、国産材の販売を強化し、国内グループ間の総合力を発揮することにより、新商品、新市場の開拓を進めました。

 この結果、売上高は207億9百万円(前連結会計年度比3.6%増)となりました。

 

 当社グループは創業360周年を迎える2026年を見据えた「ユアサビジョン360」実現の第3ステージとして、2023年4月から2026年3月までの3カ年を対象とする中期経営計画「Growing Together 2026」を推進しております。当連結会計年度の経営成績等を踏まえた、具体的な施策等は「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。

 

②当連結会計年度の財政状態及びキャッシュ・フローの分析

 当連結会計年度の財政状態及びキャッシュ・フローの分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要  ②財政状態の状況」及び「(1)経営成績等の状況の概要  ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 なお、2026年3月期の連結業績予想は下記のとおりであります。

指標

2025年3月期実績

2026年3月期予想

売上高

5,283億87百万円

5,500億円

経常利益

160億1百万円

180億円

経常利益率

3.0%

3.3%

(注)2026年3月期予想は、2025年5月9日公表の「2025年3月期  決算短信〔日本基準〕(連結)」によるものです。

 

③当社グループの資本の財源及び資金の流動性

 当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、運転資金、設備投資等の資金需要に対して、短期借入金及び自己資金を充当することを基本方針としております。

 また、当社グループ内でCMS(キャッシュ・マネジメント・システム)を活用したグループファイナンスを行うことで、連結ベースでの資金の効率化に努め、資金管理体制の充実を図っております。

 当連結会計年度末の「現金及び現金同等物」の残高は、前連結会計年度末より16億65百万円増加し、437億9百万円となっており、充分な流動性を確保していると考えております。

 なお、将来当社グループの成長のために多額の資金需要が生じた場合には借入金の増額も検討いたしますが、財務の健全性を維持しつつ、事業活動を通じて創出した利益を成長分野へ投資することにより、1株当たり当期純利益を増大させ、株主価値の向上を図ってまいります。

 

④重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

5【重要な契約等】

  特記すべき事項はありません。

 

6【研究開発活動】

 特記すべき事項はありません。