●中期経営計画2026の進捗
中期経営計画2026では、「No.1事業群」をテーマに掲げ、競争優位を磨き、社会課題解決を通じた飛躍的な成長を実現すべく、「強みを核とした成長」及び「成長の原動力の強化」に重点的に取り組み、「事業ポートフォリオ変革」を加速させております。
中期経営計画2026の一年目となる2024年度は、政治的混乱や地政学的緊張の高まり、主要先進国の成長鈍化等、事業環境の不確実性はより高まりましたが、「No.1事業群」の実現に向けた各施策を着実に実行し、期初計画を上回る利益成長を果たしました。

(1) 中期経営計画2026における取組の状況
・主な成長分野を中心に過去最高レベルの7,300億円の投資を実行
(SCSKによるネットワンシステムズ買収 等)
・資産入替が着実に進捗し、事業ポートフォリオの新陳代謝を加速
(ティーガイアの売却、米国タイヤ販売事業におけるマイダス社の売却(注)等)
(注)2025年度中を目途に売却完了予定
・主な成長分野について、建機やアグリ事業等足元低調なビジネスもあるがリースや都市総合開発、デジタル等で収益基盤を拡大
・主な成長分野における進捗と今後の方針は以下のとおり

・親和性のあるビジネスを同一グループに再編したことにより、都市総合開発ではインフラ事業の知見やノウハウを活かした海外不動産案件の投資実行等のシナジーが拡大
・WILL選考(注)の実施、社内公募制の拡大のように多様な“個”の意志・ポテンシャルを最大限に引き出す施策に加え、経営人財を計画的に育成する人財マネジメントサイクルと、積極的なキャリア採用や女性・若手の登用等、(属性に囚われず)真にビジネスの成長戦略を後押しする人財配置を推進
(注)初期配属組織を確約する新卒向け採用選考
① 経営環境
全般
世界経済は、米国の関税措置を背景に先行きの不透明感が強まっており、家計や企業の経済活動に慎重姿勢が見られる中、成長ペースは鈍化していく見通しです。
先進国経済では、米国は関税措置が、今後の経済活動全般に悪影響を及ぼすことが懸念されています。ユーロ圏では、物価の安定に伴い、政策当局は金融緩和方針を強めており、主要国における積極的な財政政策と相まって、景気は緩やかな回復基調を維持する見通しです。日本経済は、米国の関税措置の影響が懸念されるものの、実質賃金の改善に伴う個人消費の回復を背景に景気は緩やかな持ち直しの動きが続くと見られます。新興国経済では、中国は財政支援が景気の下支え要因となる一方で、不動産市場の低迷や米国との通商関係を巡る先行き不透明感により、成長ペースの鈍化が継続する見通しです。アジア諸国は米国の関税措置の影響により、回復の足取りは重くなると見られております。
今後のリスク要因としては、政策運営の不透明感、金融市場の混乱、ロシア・ウクライナやイスラエル・パレスチナ情勢の再緊迫化、関税引き上げによる物価への影響、新興国の債務問題、アジアやアフリカなどにおける地政学的リスクの高まりなどが挙げられます。
鉄鋼グループ
当グループは、鋼管・鋼材などの鉄鋼製品を幅広く取り扱っております。
鋼管分野では、米国では鋼管価格が足元回復傾向にあるものの、今後の原油価格次第では鋼管需要減退の恐れもあります。その他地域向けでは一部プロジェクトの端境期となっております。また、世界各国でエネルギー安定供給の重要性から石油・ガス開発は維持され、加えて脱炭素に向けたエナジートランジションの動きも継続するものとみられます。
鋼材分野では、米国では鋼材価格が上昇傾向にあるものの、物価高や景気動向による鋼材需要への影響が出る可能性があります。その他地域では中国での需要低迷が継続し、中国からの鋼材が東南アジア等に流入しており、各地市況が押し下げられております。他方、欧州洋上風力発電用の基礎構造物事業への出資等、収益基盤の拡大に取り組んでおります。
このような環境を踏まえ、当グループとしては既存事業を堅持しつつ、当グループが強みを有する事業・地域に経営資本を傾注し、収益力を強化してまいります。また、DXを通じた新たな価値提供、再生可能エネルギー・CCSなどカーボンニュートラル化に資する鉄鋼製品・サービスの供給による産業のGX実現への貢献にも取り組んでいきます。
自動車グループ
当グループは、自動車業界のバリューチェーンを俯瞰し、自動車、タイヤ、及びその他関連商品の製造、販売、リース並びにこれらの関連サービス・周辺事業を行っております。
当グループを取り巻く環境では、各国の経済発展、人・モノの移動の増加を支える自動車ニーズの伸長、所有から利活用(リース・レンタル・サブスクリプション等)へのシフト、カーボンニュートラル実現へ向けた環境車の普及、循環型経済の構築へ向けた再利用・リサイクル促進へのニーズが高まっております。一方で、米国の関税措置の影響や地政学リスクがもたらすサプライチェーンの混乱、原材料コスト・人件費・金利等の上昇による経済の成長鈍化懸念があり、動向を注視しております。
このような環境を踏まえ、足元の市場環境の変化への備えを確実にするとともに、自動車流通販売事業における商品や販売・サービス網の拡充による成長促進、自動車リース事業を軸とするモビリティサービス領域におけるサービス拡大と新たな事業機会の取り込み、部品製造事業・販売金融事業・タイヤ販売事業のバリューアップによる収益規模拡大、Beyond Mobility(移動から発生する、移動を越えた領域)の新規事業の創出・育成に取り組んでいきます。
輸送機・建機グループ
当グループは、リース・ファイナンス事業、グローバルにバリューチェーンを展開する航空機・船舶海洋・建設機械事業、高い専門性を持つ防衛宇宙・安全保障ビジネスを中心に、各種取引及び事業投資を行っております。
当グループを取り巻く事業環境は、米国の関税措置の影響や金利高止まりによる景気減速懸念はありますが、航空機リース市況は引き続き好況に推移し、海上貨物輸送やインフラ建設・更新の需要は堅調で、いずれも引き続き成長が見込まれます。同時に、脱炭素社会や循環経済の実現に向けた社会的な要請が一層高まっております。
こうした環境を踏まえ、当グループは強みを持つ事業の収益性向上に注力します。リース・ファイナンス事業では優良資産の積み上げと資産効率の向上を図り、建設機械事業では米国の関税措置といった不確実性への影響を注視しつつ、コスト削減やフリートマネジメントを柱とした収益改善施策を進めます。
また、航空機事業における退役機の部品販売を始めとするアフターマーケット事業、船舶海洋事業における洋上風力で使用される構造物の製造など、社会的な課題やニーズに応える事業を積極的に進め、成長を加速していきます。
都市総合開発グループ
当グループは、不動産・工業団地・サステナブルシティ・基幹インフラの開発・運営・アセットマネジメント事業、建材、セメントなどの建設資材関連事業、産業用設備などの機電設備関連事業、物流・保険関連事業を展開しております。
不動産分野では国内不動産事業や米国住宅案件が好調に推移し、期初予想を上回る水準となりました。また、国内の建設資機材及び機械設備のトレード事業や物流、保険事業においても堅調を維持しました。世界の都市開発需要は引き続き旺盛なるも、マクロ環境としては気候変動等災害や地政学リスク、各国の金利動向やコスト上昇に対するレジリエンスの重要性が増しております。
このような認識のもと、流動性の高さや金融ストラクチャリングを導入しうる優良案件・市場に注力し、自然環境に配慮した安心安全で災害に強いインフラ開発及び街づくりのグローバル展開を目指していきます。
メディア・デジタルグループ
当グループは、デジタルソリューション事業、情報通信事業、携帯端末流通事業、第5世代移動通信システム(5G)事業、ケーブルテレビ事業、テレビ通販事業、映像コンテンツ関連事業、グローバルCVC事業(スタートアップ投資)を行っております。
デジタルソリューション事業では、デジタルやデータ活用の重要性の高まりにより、IT投資需要が拡大しており、デジタル技術の社会実装による新市場の創出・拡大も進行しております。こうした事業機会の広がりを着実に捉えるべく、国内外デジタル事業の領域拡大・機能強化に取り組んでいきます。
ケーブルテレビ事業及びテレビ通販事業では、顧客や消費者のニーズ、購買行動・形態の多様化が見込まれております。こうした事業環境の変化を踏まえ、ケーブルテレビ事業では新規サービスの拡充、テレビ通販事業ではTV・デジタル・リアルを連携させたエンタメショッピングへの変革・進化に取り組んでいきます。映像コンテンツ関連事業では、日本コンテンツに対するグローバルな需要の高まりを踏まえ、アニメ等の日本コンテンツの海外事業展開を推し進めていきます。
ライフスタイルグループ
当グループは、食品スーパー・ブランドなどのリテイル事業、食品・食品原料や青果などの食料事業、ドラッグストア・調剤薬局及びマネージドケア・クリニックなどのヘルスケア事業を展開しております。
リテイル及び食料分野では、消費者の価値観やライフスタイルの多様化・ニーズの細分化、食と健康に関する消費者意識の高まりが見込まれます。ヘルスケア分野においては、高齢化加速に伴う医療費適正化ニーズが加速する見通しであります。また、全般的に気候変動や地政学リスクの継続や人件費・燃料費の高止まりの懸念があり、動向を注視していきますが、生活を支える事業としての社会的重要性は引き続き高いものになっていくものと見ております。
このような環境を踏まえ、リテイル事業を中心に圧倒的な顧客へのアクセスを持つ強みを生かし、データ活用によるマーケティング及びDX・AI活用によるオペレーションの高度化や新規事業拡大に取り組みます。食料分野では、食料・食品の調達・加工・販売のノウハウとネットワークを生かした収益基盤の拡大と成長が見込まれる分野への事業展開を図ります。また、ヘルスケア分野では、国内外の医療費高騰の解決に向け、医療費抑制・適正化に資するビジネス実現を目指します。
資源グループ
当グループは、金属資源等の開発・操業・生産、製品の製造・販売を展開し、トレード分野でも当社事業とのシナジー発揮や、商品デリバティブの活用等、多様な機能を提供しております。
資源価格は、地政学リスク等を背景に先行きの不透明感が強まっておりますが、中長期の市況変動サイクル、業界におけるプレイヤー・地域の偏在性、経済安全保障・技術革新を含むバリューチェーンや需給バランスの環境変化、資源案件開発の高難度化等の諸環境を踏まえ、当社ならではの経験・強みを発揮し、社会課題解決を通じた成長を図る事業ポートフォリオ、基盤の改善・強化を進めております。
下振れ耐性強化と収益基盤拡充の観点から、足元では、マダガスカル・ニッケル事業の一層の体質改善並びにそれを踏まえた方針見定めに注力すると共に、基幹産業を支えるベースメタルを中心に権益積み増し、市況影響を受けにくい製造業・トレード等の中下流ビジネス拡充に取り組み、環境負荷低減に資する投資や機能提供の促進、気候変動緩和に寄与するバリューチェーン構築を推進しております。これら取り組みを通じて、日本及び世界の産業発展と持続可能な社会の実現に貢献し、人々の豊かな未来を創造することを目指します。
化学品・エレクトロニクス・農業グループ
当グループは、基礎化学品、農業資材、医薬、化粧品、動物薬、エレクトロニクス材料・製品の開発、製造、販売事業を展開しております。
2024年度は、農業資材分野はブラジルでの天候不順や市況下落に起因する需要減や貸倒損失により低調な推移となりましたが、エレクトロニクス材料・製品分野、医薬品関連分野等では需要の増加を捉え業績が堅調に推移しました。2025年度は、米国の関税措置等の外的要因に起因する景況感や市況の悪化 は懸念されるものの、グループ全体では農業資材分野での業績回復による収益増を見込んでおります。
このような環境を踏まえ、農業資材分野では下振れ耐性にも資するべく、更なる機能強化やバイオ農薬等の高付加価値製品の販売強化に取り組みます。基礎化学品分野では、ディストリビューション・物流の機能を更に強化して、需給バランスやトレードフローの変化を捉えたビジネス拡大に注力します。グリーンケミカル分野では、環境負荷低減や経済安全保障のニーズを踏まえた新規事業開発を継続します。エレクトロニクス分野やライフサイエンス分野においても既存事業の強化・拡大に取り組むとともに新規ビジネス創出により更なる成長を目指します。
エネルギートランスフォーメーショングループ
当グループは、国内外における発電事業、国内電力小売事業、天然ガス・LNGなどのエネルギー権益開発・生産及び販売事業、海洋インフラ・船舶燃料供給事業、カーボンニュートラル社会実現に資する次世代エネルギー分野での事業開発を行っております。
海外発電事業は堅調に推移しており、アジア・欧米事業を中心に収益が増加しました。また、国内電力小売事業は、猛暑の影響もあり電力需要は堅調でしたが、前年度好調だったこともあり反動減となっております。
エネルギー分野においては、一部トレード事業において前年度好調の反動減があったものの、市況の高止まりや価格変動を上手く収益化したことにより、エネルギートレードビジネスは好業績で推移しました。このような環境を踏まえ、当グループでは世界的な地政学リスクの高まりに備えるためにも市況変動リスク管理を一層強化いたします。
また、2050年のカーボンニュートラルを達成すべく、当社発電ポートフォリオの低炭素化を促進する新たな電力・エネルギーサービスの事業化を進め、次世代エネルギー関連事業の開発にも引き続き取り組んでいきます。
不可逆的なGX潮流を事業機会と捉え、脱炭素・循環型エネルギーシステムの構築やサステナブルなカーボンサイクル実現を通じて、住友商事グループ全体のエネルギートランスフォーメーション事業を牽引していきます。
・利益計画
2025年度は、成長分野で昨年度低調だった鉄鋼、建機、アグリ事業の改善に加え、強みのある事業に経営資源を更に投入することで530億円の増益を計画しているほか、米国タイヤ販売事業におけるマイダス社売却などの資産入替関連及び特殊損益で400億円の利益を見込んでおり、積上げで6,100億円の利益となります。一方、米国関税措置を含めた不透明な事業環境を踏まえ△400億円のバッファーを設定し、通期業績予想は5,700億円としております。
米国の関税措置が事業及び業績に与える影響等については、現時点で見積ることが困難ではあるものの、クロスボーダー取引における契約当事者としての当社への直接的な関税負担の影響は限定的ながら、間接的な影響は一定程度生じる可能性があり、その他のリスク要因も含めて、△400億円のバッファーに織り込んでおります。

*「資産入替関連及び特殊損益」は従来の一過性損益を呼び変えたもの。
・キャッシュ・フローアロケーション
株主還元後フリーキャッシュ・フロー黒字の基本方針、キャッシュ・フローアロケーション方針の変更はありません。
2024年度の実績及び中期経営計画2026中の計画については以下のとおりです。

2024年度から開始した中期経営計画2026以降の株主還元方針については以下のとおりです。
・総還元性向を40%以上として、配当及び柔軟かつ機動的な自己株取得を実施
・累進配当(注)により、配当の更なる安定性向上及び利益成長に応じた増配を目指す
(注)1株当たり年間配当金の前期実績に対して、配当維持または増配を行うことを指します。
2025年度の年間配当金は2025年度通期連結業績予想5,700億円を踏まえ、前期比10円増配となる1株当たり140円とする予定です。また、2025年5月1日の取締役会決議において、800億円(うち、2025年度の株主還元:600億円)を上限とする自己株式の取得を決定しました。
今後も、持続的な利益成長及び更なる収益基盤の強化に努めることで、株主還元の充実を図り、株主価値上を目指してまいります。

詳細については、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」を参照願います。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は以下のとおりであります。
● サステナビリティに関する考え方
当社グループでは、「Enriching lives and the world」をコーポレートメッセージとして掲げ、持続可能な社会の実現と豊かな暮らしづくりをめざし、世界各国で事業を展開しております。このメッセージの背景には、「自利利他公私一如」という住友グループの事業精神を伝える言葉があり、「住友の事業は、住友自身を利するとともに、国家を利し、かつ社会を利するほどの事業でなければならない」という想いが込められているものです。この考えは、当社グループのサステナビリティ経営の源泉であり、社会課題をめぐる長期的な事業環境変化を見通して戦略的に経営資源を配分し、当社の強みを活かしながら社会が真に必要とする価値を創造し続けること、それこそが持続可能な社会と住友商事の持続的な成長を実現するとの信念で、サステナビリティ経営を進めております。
● サステナビリティに関する取組
サステナビリティ経営の全体像、及び、気候変動、人権尊重、人的資本のそれぞれの項目に分けて、当社の取組を以下に記載します。なお、各項目それぞれにおいて、①ガバナンス、②戦略、③リスク管理、④指標及び目標の4段構成で当社の取組を説明します。
(1) サステナビリティ経営の全体像
① ガバナンス
取締役会は、当社グループの幅広い事業活動において、サステナビリティ関連の多様な機会とリスクを踏まえて、重要な経営事項を決定するとともに、経営会議及び執行役員が行う意思決定及び業務執行を監督しております。
重要な経営事項の意思決定については、取締役会が、経営会議やその諮問機関である全社投融資委員会、サステナビリティ推進委員会、全社経営戦略推進サポート委員会等での検討を経て取締役会に付議された、サステナビリティ関連方針・目標の策定・改訂、サステナビリティ関連を含む事業ポートフォリオ全体のリスクと機会、サステナビリティ推進に係る重要な取組、重要な個別案件の実施の是非等についての審議・決定を行っております。
また、取締役会は、各事業分野の戦略とその進捗状況、並びにサステナビリティ関連を含む事業ポートフォリオ全体のリスクと機会の状況について定期的に報告を受けております。具体的には、マテリアリティに基づく中長期目標の進捗状況のレビューやサステナビリティ関連方針の遵守状況に関するレビュー、サステナビリティ関連のリスクと機会などの全社的な施策・テーマに関する報告を年に複数回受けており、取締役会として業務執行側の取組状況を監督しております。
なお、取締役会は、その役割を十分に果たすため、取締役会として備えるべき知識・経験・能力等(以下、「スキル」)を特定しており、そのスキルの一つにサステナビリティを設定しております。各取締役が有するスキルは、その経歴、知識、経験、能力、保有資格、具体的な成果等を総合的に考慮し、各取締役と協議の上で決定しており、サステナビリティに係るスキルを有する複数の取締役を含み、取締役会を構成しております。詳細は
加えて、取締役を含む当社役員がサステナビリティ経営へのコミットメントをより強く意識できるよう、非財務指標「気候変動問題対応」、「女性活躍推進」、「従業員エンゲージメント」の評価結果を役員の報酬に反映しております。詳細は、「
当社グループのサステナビリティ関連の重要な経営事項の意思決定及び業務執行は、社内規程の定めに応じて経営会議及び執行役員が行っております。経営会議はサステナビリティ関連の多様なリスク及び機会を評価・管理し、効果的な意思決定を行うため、サステナビリティ推進委員会等に諮問した上で、総合的な意思決定を行っております。
また、サステナビリティ関連の取組やリスクと機会への対応については、サステナビリティを推進する施策の企画や社内浸透を担当する専門組織であるサステナビリティ推進部と、当社の経営計画全体や重要施策の企画を行う経営企画部等の関連コーポレート組織、各営業グループ、海外地域組織のサステナビリティ推進担当者が連携し、グループ内の調査機関や各営業組織、海外拠点等からもたらされる情報等を基に、全社的企画や施策の立案や推進を行っております。
加えて、ESGに関する社外有識者で構成される「サステナビリティ・アドバイザリーボード」を設置し、当社のサステナビリティ経営全般について助言・提言を得て取り進めております。
当社のサステナビリティ経営におけるガバナンス体制図は次の通りです。
当社のサステナビリティ経営を含むコーポレート・ガバナンスの状況等の詳細は、「

② 戦略
一方で、各SBU、各事業会社がサステナビリティの重要性を認識した事業活動を怠れば、ステークホルダーからの信頼を喪失し、長期的には顧客喪失や事業運営に必要な人材確保に影響が生じる等により、企業価値を棄損するリスクもあります。
当社グループとしては、今後も引き続き持続可能な成長・発展につながる事業活動を推進すべく、当社グループ内のみならず、バリューチェーン上の多くの関係者と協力し、バリューチェーン全体でサステナビリティ関連のリスクと機会を特定し、対応していく必要があると認識して、以下のような取組を行っております。
(a) マテリアリティの特定と中長期目標の設定・実践
当社グループが取り組むべき重要な社会課題とその解決に向けた一歩進んだ中長期のコミットメントとして、6つのマテリアリティを特定しております。“安心で豊かな暮らしを実現する”、“気候変動問題を克服する”、“自然資本を保全・再生する”、“人権を尊重する”、“人材育成とDE&Iを推進する”、“ガバナンスを維持・強化する”というそれぞれのマテリアリティ毎に設定した長期・中期目標に対してアクションプランを策定・実行し、進捗レビューを行うPDCAサイクルを継続することで、社会課題の解決を通じた持続的な成長を実現していきます。詳細は後述の「④ 指標及び目標」を参照ください。

(b) サステナビリティ関連の方針策定
当社グループの活動は広範な分野、地域に分散した事業から成り立ち、様々な社会課題と関わりを持っております。常にそれらの社会課題を考慮に入れ、当社グループは、国際行動規範を尊重し、持続可能な社会の実現に向けて取引先や事業パートナーとともに社会的責任を果たすべく、「環境方針」、「気候変動問題に対する方針」、「人権方針」、「サプライチェーンCSR行動指針」、並びに「森林経営方針」や「林産物調達方針」等、持続可能な調達を要する主要な天然資源に関する個別のサステナビリティ関連の方針を策定・周知し、事業活動に取組んでおります。
③ リスク管理
(a) 全社のサステナビリティ関連リスクの管理
当社グループでは、全社ポートフォリオ戦略の検討における様々なリスクへ対応するため、営業活動に含まれる複数のリスクファクターを選別し管理を行っております。この全社リスク管理プロセスの中で、サステナビリティを重要なファクターの一つと捉え、その他のリスクと同様に経営会議および取締役会に付議・報告を行っております。
具体的には、中期経営計画に基づく当社グループ全体の経営状況の定期レビューにおいて、サステナビリティ関連及び他の種類のリスクに関して、今後の管理・対応方針につき経営会議や取締役会にて議論し、中期経営計画における具体的な施策の検討等に反映しております。
当社グループ全体でのサステナビリティ関連のリスク及び機会の分析の中でも、気候変動についてはセクター毎にシナリオ分析を実施し、事業におけるリスク及び機会の確認を行っております。詳細は、「(2) 気候変動問題に関する取組 ② 戦略」を参照ください。
(b) 個別事業におけるサステナビリティ関連のリスク管理
新規事業に関しては、デューデリジェンスの際に、事業の性格やリスクを踏まえ、環境コンサルタントによる環境評価や法律事務所等による人権・労働問題の評価によって、事業が健全に経営されているか、環境や地域社会、従業員等のステークホルダーに深刻な影響を与えていないかを確認しております。事業実施に関する審査過程においては、サステナビリティ関連のリスク及び機会に関する評価シートを各SBUが作成し、同一のセクターや国に属する先行事例等から、潜在的なリスク及び機会の発生可能性や顕在化時に生じる社会・環境、並びに自社事業に与える影響をSBU自らが特定・評価した上で、サステナビリティ推進部が関連する外部情報を参照の上レビューしております。全社投融資委員会は、特定・評価したサステナビリティ関連のリスク及び機会を踏まえ、対象事業の価値創造及び価値棄損に関する重要な対応策の検討・確認を行っております。
既存事業に関しては、各事業における社会・環境関連を含むリスク及び機会の全般的な管理状況を定期的に確認しております。具体的には、事業会社との対話を通じた定期的なモニタリングや、内部監査等のプロセスを通じ、社会・環境関連リスク及び機会の管理状況を確認し、課題がある場合はその事業の特性に応じて改善を進めます。当社グループの事業活動の影響について、地域住民やNGO等、ステークホルダーから問題の指摘を受けた場合は、実態を踏まえて、対話・協議を行い、改善に努めております。

なお、サステナビリティ関連のリスク管理のプロセスについては、前報告期間から変更はありません。
④ 指標及び目標
特定した6つのマテリアリティに関して、長期及び中期目標を下表のとおり設定し取組んでおります。中期目標に対する取組の進捗状況は、サステナビリティ推進委員会でのモニタリングを経て、経営会議や取締役会に報告され、そこで議論がされております。それら含む長期目標・中期目標に対する取組の2024年度末時点の進捗は、2025年9月に当社HPの
マテリアリティに対する長期目標・中期目標

(*1) 住友商事グループの社員参加型の社会貢献活動プログラム
(*2) 他者のエネルギー資源使用に伴う間接排出量
(*3) 個別事業で目標を設定し削減に注力
(*4) サプライチェーンを含む事業活動全体に関し、人権侵害等に関する従業員・地域住民等ステークホルダーからの訴えを受け付け、問題解決につなげる仕組み
(2) 気候変動問題に対する取組
当社は、パリ協定における世界的合意を重視し、同協定に掲げられた社会のカーボンニュートラル化目標の達成により積極的な役割を果たすため、「気候変動問題に対する方針」を掲げ、事業活動を行っております。
「気候変動問題に対する方針」は、2019年に取締役会にて決議・制定後、随時見直しを行っております。2024年5月には、気候変動対策やエネルギー安全保障といった各種外部環境の変化を受けて、当社グループの気候関連目標のうち、持分発電容量ベースの比率目標の更新を行いました。また、一般炭鉱山から生じる間接的CO2排出量を2020年代後半までにゼロとすること、及び、天然ガス開発事業については社会のエネルギー・トランジションに資する案件に限り取組むことを明確に示しました。
■ TCFD提言に基づく情報開示
当社は、気候変動がもたらすリスク及び機会を把握し、事業活動に活かすべく、2019年3月に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に賛同し、以降TCFDのフレームワークに基づいた開示を行ってきました。2024年度の開示については、
① ガバナンス
(a) 監督
当社グループの気候変動関連のリスク及び機会を踏まえた重要な経営事項の決定と、業務執行の監督については、取締役会が責任を持って行っております。詳細は、「(1) サステナビリティ経営の全体像 ① ガバナンス (a) サステナビリティ経営の監督」を参照ください。
気候変動関連の重要な経営事項の意思決定については、取締役会規程等において明確に定められた権限分担に基づいて、取締役会が、経営会議等での検討を経て取締役会に付議された、気候変動関連の方針・目標の策定・改訂、気候変動関連を含む事業ポートフォリオ全体のリスクと機会、重要な個別案件の実施の是非等について、審議・決定を行っております。
取締役会は、気候変動問題に対する取組として、マクロ環境の分析及びその対応状況等の報告を年に複数回受けており、業務執行側の取組状況を監督しております。
なお、当社取締役報酬に関する気候関連のパフォーマンス指標については、「
(b) 業務執行
気候関連のリスク及び機会の評価、管理、それらを踏まえた重要な経営事項の意思決定及び業務執行は、経営会議及び執行役員が行っております。詳細は、「(1) サステナビリティ経営の全体像 ① ガバナンス (b) サステナビリティ経営の業務執行」を参照ください。
② 戦略
当社は、以下のとおり、TCFD提言に沿った形でシナリオ分析を実施しております。2023年度においては、「エネルギー」「資源」「輸送」「素材」「不動産」「その他(森林)」等の当社ビジネス・モデルへの影響を分析しました。
事業環境が大きく変化した際に、新たなビジネス機会及び事業の耐性を客観的に評価する観点から、主にIEA及びPRI等のシナリオを用いて、主に2050年までのビジネス・モデルに対する移行リスク及び機会の影響を分析しております。リスク及び機会の影響が及び得る時間軸として、中期:2030年、長期:2050年を設定の上、分析を行っております。2024年度の分析内容詳細は、
なお、これらのシナリオは、世界的な気候変動緩和の長期的な動向について、複数のシナリオを想定した場合に、各セクターにおいて起こりうる事業環境変化の一例として参照したものであり、当社の経営方針や事業戦略の前提を示すものではありません。

<特定した当社グループのビジネス・モデル>
<特定した気候関連のリスク及び機会>
当社グループの活動は広範な分野、地域に分散した事業から成り立ち、様々な社会課題と関わりを持っております。当社は、常にそれらの社会課題を考慮に入れるため、グループ全体の事業活動から生じる社会・環境への影響を適切にコントロールするための方針を設定し、グループ内で周知・徹底を図っております。具体的には、当社では新規事業を検討・実施する際の審査過程において、社会・環境に関するリスクの評価や対応策の確認を行っております。特に気候変動問題については、多様な気候変動影響や社会の気候変動対応に起因する事業環境の変化によって発生し得る、事業の持続可能性が妨げられるリスク及び機会について、主に以下の点を確認し、社内規程の定めに応じて経営会議や取締役会で議論しております。
・気候の変動あるいは自然災害・異常気象の頻発による影響
・規制の導入による影響
・技術の変化等による影響
・気候変動緩和や気候変動への適応の進展による事業の拡大や業績の改善余地
既存事業に関しても、当社は各事業における社会・環境関連を含むリスクの全般的な管理状況を定期的にモニタリングしており、個別事業に関するリスク管理に加え、当社全体が抱える社会・環境関連リスクの状況を把握し、経営の戦略的判断への活用を可能にする体制を整えております。また、気候変動問題に係るリスクへの対応については、各営業グループにおいて、関連する事業分野における規制の導入や市場変化を把握した上で事業展開を行うことに加えて、全社ポートフォリオ管理の一環として、サステナビリティ推進部が気候変動問題に対する世界的取組や各種規制の動向を踏まえた、当社グループの主要なリスクの状況を収集・分析し、定期的に経営会議、取締役会に報告しております。その上で、ポートフォリオ全体の確認を行い、許容できないリスクがあれば、関連コーポレート部署と共同でエクスポージャーの削減を含む対応を検討する体制となっております。
④ 指標及び目標
(a) 温室効果ガス排出量及びその他気候関連の指標
■ カーボンニュートラル化対象 CO2排出量
当社グループは、2019年に「気候変動問題に対する方針」を制定しており、2050年にカーボンニュートラル化することを目指しております。同方針の下、カーボンニュートラル化の対象範囲には、提出会社及び子会社のScope1・2に加え、発電事業及び化石エネルギー権益事業も含めております。うち発電事業については、基準年も含めて、建設中の案件であっても完工・稼働後に見込まれる推計値も含めております。
住友商事グループカーボンニュートラル化対象CO2排出量についての速報値は以下のとおりです。なお、確定値については2025年9月に
<住友商事グループ カーボンニュートラル化対象 CO2排出量> (集計対象範囲※)
(単位:千t-CO2e)
(※) 具体的な集計対象範囲は、以下のとおりです。
・提出会社及び子会社の直接的CO2排出と、各社の使用するエネルギーの生成に伴う間接的CO2排出。
(ただし、発電事業については持分法適用関連会社の排出も対象に含む)
・提出会社及び子会社、持分法適用関連会社の化石エネルギー権益事業で生産されたエネルギー資源の、他者の使用に伴う間接的CO2排出。
尚、カーボンニュートラル化とは、当社グループの事業によるCO2排出と、CO2排出削減への貢献を合わせたネットCO2排出量をゼロとすることを指す。
■ 温室効果ガス排出量(GHGプロトコルに基づいた算出実績)
温室効果ガス(GHG)排出量の実績(速報値)は以下の通りです。なお、確定値については2025年9月に当社HPの
GHG排出量は、GHGプロトコルを参考に策定した会社方針に基づき算定しております。
排出原単位は、環境省が公表する温室効果ガス排出量算定・報告公表制度の排出係数を使用しているほか、IEAが発行する「Emissions Factors 2024」に掲載された2022年の国別の排出係数等を使用しております。
<GHG排出量(Scope1/2)> (集計対象範囲※)
(単位:千t-CO2e)
(※) 提出会社及び子会社
集計対象範囲の決定においては、2023年度よりGHGプロトコルの経営支配力基準を適用しております。
2023年4月より、当社内で内部炭素価格制度(ICP)を運用し炭素排出コストを算出しております。カーボンニュートラル社会の実現に資する新たな事業機会創出に向けた全社の施策検討や投資判断時の将来事業への影響等の確認に活用しております。
当社ICPにおいては、IEAが発行するWorld Energy Outlook 2024のNet Zero Emission Scenario(NZEシナリオ)の炭素価格の見通しを使用し、新規及び既存案件の所在地に応じたシナリオ分析を行っております。
<当社ICPにおける炭素価格>
(単位:$/t-CO2)
当社グループとして、2050年度にカーボンニュートラル化を目指す目標を設定しており、中間目標としてグループのCO2排出量の総量を、基準年の2019年度比で2035年度までに、原則として50%以上削減する目標を設定しております。当該目標は、当社グループとして、パリ協定及び関連する世界的な合意を重視し、同協定に掲げられた社会のカーボンニュートラル化目標の達成に、より積極的な役割を果たすことを目的としております。
2050年カーボンニュートラル化目標の対象範囲は、当社単体及び子会社の直接的CO2排出と各社の使用するエネルギーの生成に伴う間接的CO2排出(ただし、発電事業については持分法適用関連会社の排出も対象に含める。)及び当社単体及び子会社、持分法適用関連会社の化石エネルギー権益事業で生産されたエネルギー資源の、他者の使用に伴う間接的CO2排出となっております。
当社グループの気候変動関連目標のレビューは、経営会議を経た上で、取締役会にて行っております。詳細は「(1) サステナビリティ経営の全体像 ① ガバナンス」の項目を参照ください。
当社グループの気候変動関連目標の進捗モニタリング指標としては、Scope1、Scope2排出量の推移のほか、2035年度目標のモニタリング指標として、火力発電事業のCO2排出量、再生可能エネルギー発電事業の発電容量、化石エネルギー権益事業のうち、一般炭鉱山から生じる間接的CO2排出量を設定しております。
(3) 人権尊重に関する開示
当社は、従来、人間尊重を経営姿勢の基本とすることを経営理念の中で掲げておりますが、改めて住友商事グループ人権方針を制定し、人権を尊重する責任を果たすことを明確に示しております。取組に当たっては、「国際人権章典」及び国際労働機関(ILO)の「労働における基本的原則及び権利に関する宣言」が定める人権を尊重し、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に則って活動しております。
① ガバナンス
当社グループの人権に関するガバナンスは、サステナビリティ経営全般のガバナンスに組込まれております。詳細は、「(1) サステナビリティ経営の全体像 ① ガバナンス」を参照ください。
② 戦略
(a) 人権尊重意識の徹底と理解の浸透
当社グループは、幅広い国・地域、産業分野で事業活動を展開しており、その事業活動において人権の尊重を実現するためには、当社グループの役職員がビジネスと人権の考えを理解し、サプライヤーをはじめとする取引先や事業パートナーに働きかけることで、サプライチェーン全体で人権の尊重に努める必要があります。それらサプライチェーンにおける関係者がビジネスと人権に関する理解が進まない場合には、関連する従業員や地域コミュニティ等ライツホルダーへの負の影響が見落とされ、事業活動によってその負の影響のさらなる悪化につながり、結果的に製品やサービス供給の停滞による企業業績の悪化や、レピュテーションの悪化により企業価値が棄損するリスクがあります。逆に当社グループ内、さらにはサプライチェーンに働きかけることで、サプライチェーンのレジリエンス強化やレピュテーション向上による人材の獲得及びリテンションなどの効果が期待されます。
当社グループでは、上述の「住友商事グループ人権方針」や「住友商事グループのサプライチェーンCSR行動指針」を策定し、当社従業員への周知・徹底を図るとともに、当社グループ会社や取引先へ理解・賛同を求めるよう努めております。
また、特に持続可能な調達を要する主要な天然資源については個別の方針を制定して取組んでおり、2022年3月に持続可能な森林経営、及び林産物の調達に関して、「森林経営方針」、「林産物調達方針」を策定しました。これら方針に基づき、森林事業を行う事業会社、林産物調達を行うサプライヤーに対して、人権を含めた調達方針に定めるコミットメントにつき確認しております。
(b) 人権デューデリジェンス
当社は、当社グループの事業活動が与える人権へのリスクを特定・防止・是正するために、2020年より人権デューデリジェンスを開始しております。2020年度は、その最初のステップとして、グループ全体の人権への影響・リスクを評価するために、優先的に対応すべき顕著な人権課題の特定に取組みました。2021年度から2024年度にかけては、全事業を対象に人権デューデリジェンスを実施し、人権リスクの特定と評価を行いました。本取組により人権リスクの特定・評価に加えて、従業員へのビジネスと人権に関する理解の浸透にもつながっております。これまでの人権デューデリジェンスの結果については、
全事業を対象とする人権デューデリジェンスが一巡したことから、2024年度は、これまでの人権デューデリジェンスの結果及び各事業の特性・リスク等も踏まえた全社的なリスクマッピングをおこない、当社グループにおいて人権リスクが高い事業の特定に取り組みました。
今後は、ライツホルダーとのエンゲージメント等も含め強化した人権デューデリジェンスの実践などを通じて、リスクベースアプローチで取り組んでいきます。
また、サプライチェーン全体での人権尊重への取組の必要性や事業活動を行う上で注意を要する人権問題に関するe-learningを当社単体の全従業員に展開しており、2024年度は、海外地域組織及び連結子会社まで対象を拡大し、展開を完了しております。
(c) グリーバンスメカニズム(社外ステークホルダー向け通報窓口)の設置
人権尊重に関する意識の徹底や人権デューデリジェンス等の取組を通じて、事業活動に伴う人権リスクの特定や負の影響の防止・軽減を図っておりますが、すべての人権リスクを回避することは難しく、発生した負の影響につき速やかに是正することが重要と認識しております。
当社は、従業員を対象にした内部通報窓口のほか、一般の方やお客様を含む社外ステークホルダーの方々からのご意見やお問合せを受付け対応しております。
2024年度からは、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に準拠して苦情処理プラットフォームを提供する一般社団法人ビジネスと人権対話救済機構(JaCER)に正会員企業として加盟し、JaCERが提供する苦情処理プラットフォームでステークホルダーの方々から人権に関する様々な意見を受付けております。専門性を有する第三者を介して意見を受付け、公平性・透明性を向上し、受付けた事案については、サステナビリティ・DE&I推進グループ長を含む経営陣やサステナビリティ推進委員会に報告のうえ、適時・適切に是正、再発防止を徹底しております。
③ リスク管理
(a) 新規投資に係るリスク評価
新規投資に係るデューデリジェンスの際には、事業の性格を踏まえ、環境評価や、人権・労働問題の評価をおこないます。リスク管理の実効性をさらに高めるため、投資申請時に、SASB等のリスク情報をもとに作成した社会・環境関連リスクの評価シートを作成し、各事業の内容・地域特性等から想定されるリスク及び機会を洗い出すとともに、全社投融資委員会などでの会議体においても社会・環境への影響を踏まえた意思決定が行われる体制を整えております。
(b) 既存事業に係るリスク評価
上述のとおり、2020年より人権デューデリジェンスを開始しております。
<人権デューデリジェンスのプロセス>
2021年度から2024年度にかけては、外部専門家を起用し、全てのSBUに対してインタビューを実施し、それぞれの事業におけるサプライチェーンや事業活動に関連する地域住民等、ステークホルダーへの影響を含めたビジネスの実態や顕在化事例を確認するとともに、想定される潜在的リスクについても特定し、それらに対する対応状況もヒアリングしました。ヒアリング結果を踏まえて、人権リスクの発生可能性と発生した場合に生じる深刻度の観点から、優先してリスク低減に取り組むべきSBU、あるいはSBU内の個別事業を特定しました。サステナビリティ推進部と対象SBU・対象事業会社が協力し、特定された人権リスクに対する具体的な防止・軽減策の検討・実行を進めております。
今後、リスクベースアプローチで人権デューデリジェンスに取り組むためには人権リスクが高い事業の特定が必要なことから、2024年度は、上述の通りこれまでの人権デューデリジェンスの結果及び各事業の特性・リスク等も踏まえた全社的なリスクマッピングをおこないました。具体的には、OECDが定めるデューデリジェンスのガイダンスに基づき、4つのリスク要因(セクター、製品、地理的、企業固有)を踏まえつつ、社外有識者の意見を得ながら、当社グループにおける人権リスクが高い事業の特定に取り組みました。
人権リスクへの対応については、そのリスクの深刻度や事業への関与度合い等、さまざまな要因によって対応方法や時間軸が異なることから、各SBUや事業会社が主体となり実施する必要があります。特定・評価した人権リスクについては、その重要性に基づき、各SBU・事業会社が優先順位付けをした上で、具体的なアクションプランに落とし込みPDCAサイクルを回しております。その進捗については、住友商事グループのマテリアリティの長期目標・中期目標達成に向けた具体的な取組として継続的にフォローし、定期的にサステナビリティ推進委員会から経営会議や取締役会へ報告し、議論しております。

(c) 受付けた事案への対応
当社のグリーバンスメカニズムやグループ会社を通じて、社内外のステークホルダーの方々から受け付けた人権事案については、サステナビリティ推進部や関連する営業部署よりサステナビリティ・DE&I推進グループ長を含む経営陣やサステナビリティ推進委員会に直ちに事態が報告され、事実把握と最善の対応を速やかに実施しております。その進捗状況や対応策については、重要性に応じて、サステナビリティ推進委員会から経営会議や取締役会等へ報告、議論しております。
④ 指標及び目標
2024年度に新たに定めたマテリアリティの一つに「人権を尊重する」を設定し、以下のとおり長期目標・中期目標を設定しております。詳細は「(1) サステナビリティ経営の全体像 ④ 指標及び目標」を参照ください。
なお、人権に関する取組進捗の詳細は、
(4) 人的資本に関する開示
① ガバナンス
当社では、重要な人材マネジメントに関する方針・戦略・施策は、経営会議で議論し、取締役会で重要な方向性の決定と監督・モニタリングを実施しております。
② 戦略
(a) 人的資本の方針・考え方
当社グループには400年以上にわたる歴史の中で受け継がれてきた住友の事業精神があり、その一つである「事業は人なり」は、当社グループの競争力の源泉、成長の原動力は「人」であるとする揺るぎない価値観です。こうした社員を大切にする文化は、当社グループのDNAとして受け継がれてきており、当社グループの経営理念や行動指針にも反映されています。また、グローバル人材マネジメントポリシーにて示しているグローバルベースでのタレントマネジメントに関するビジョンや考え方を実践しております。
グローバルに多種多様なビジネスを展開する当社グループは、経営資本を最大限活用し、社会課題の解決を通じて、新たな価値を創造し、中長期的かつ持続可能な企業価値の向上を目指しています。この価値創造モデルを牽引するのは、さまざまな知識・経験を持って事業を構想・推進する一人ひとりの社員、すなわち人的資本です。従い、当社グループは、多様な人財一人ひとりが働きがいを感じ、未来を拓く挑戦に邁進できるよう、この人的資本に継続的な投資を行い、その進化を図っていきます。
(b) 人的資本に対する取り組み
まず、当社グループのDNAと企業文化の共有・浸透を図ることで、社員のモチベーションや帰属意識を高めています。これにより、組織を超えて共通の目標に向かって一丸となる組織風土が醸成されております。
また、多様な人財を確保し、一人ひとりの違いを認め、尊重し、誰もが自分らしく活躍できる環境づくりを推進しています。これにより、多様な発想やイノベーションを生み出す土壌を醸成しております。
さらに、ビジネス戦略実行に必要なスキル・経験・能力を有する人財を育成し、グローバルに活躍できる経営人財のパイプラインを構築しています。こうした社員への成長機会への投資は、個々人の市場価値を高めるとともに、組織力の強化にも繋がっております。
加えて、社員の生産性向上とパフォーマンスの最大化に向けては、働きやすい環境と心身の健康をサポートする体制を整備しています。また、金銭的な報酬のみならず、非金銭的なキャリア開発の機会等を含めた、フェアで透明性の高いトータル・リワードを提供しております。
こうした取り組みにより、社員の成長がビジネスの成長を牽引し、その成果により創出された新たな成長機会が社員に還元される好循環の実現を目指しています。この人財を原動力とした持続的な好循環こそが、当社グループの成長の礎であると考えております。
<多様性の確保>
グローバルに事業を展開する当社グループでは、多様な視点や考え方を持つ一人ひとりが自分らしく力を発揮できる組織文化の醸成に取り組んでいます。こうした環境づくりは、個々の力を最大限に引き出し、新たな価値や革新を生み出す源泉となり、企業価値の向上にもつながると考えています。具体的には、以下のような様々な施策に取り組んでおります。
・年齢、ジェンダー、国籍等の属性に捉われない登用やキャリア支援:Pay for Job, Pay for Performance に基づいた職務等級制度、自律的なキャリア形成を支援するキャリア開発プログラム等。
・多様性への理解浸透のための社内啓発:Diversity Weeksを継続的に開催。社長対談や経営陣によるメッセージ発信、各種研修、介護・育児に関する社員座談会、アラムナイによるセミナー、労働組合との共催のファミリーデー等を実施。
・女性の活躍支援:社内メンター制度、社内外マネジメント研修への積極派遣、社内で相談し合える女性のコミュニティ形成、配偶者の転勤時等のライフイベントに応じたアサイメントの柔軟対応等。
・障がい者の活躍支援:障がい者の働く環境の整備とさらなる雇用促進を目的に2014年に特例子会社住商ウェルサポート株式会社を設立。同社では一人ひとりの障がい、能力特性に合わせた活躍の場を創出し、基本動作やスキルが身につけられる指導環境を整備する等、職場への定着支援を積極的に実施。
・LGBTQ+への取り組み:同性パートナーに福利厚生・人事制度を適用可、通称名の利用可、ユニバーサルトイレや相談窓口の設置等。
(補足)当社グループでは、Diversity, Equity and Inclusion(DE&I)を「価値創造、イノベーション、競争力の源泉」と位置づけております。人財の採用・登用においても、各国の雇用関連法規を遵守し、いかなる属性(人種、国籍、性別、年齢、性的指向、性自認、性表現等)に基づく不当な優遇・差別を行わず、適性と能力に基づく機会の提供を重視することを基本としております。
<健康経営と働き方改革>
社員一人ひとりが最大限に力を発揮するためには、心身の「健康」が最重要であり、これを基盤としてこそ、新たな価値創造を続けていくことができるという考えのもと、「イキイキワクワク健康経営宣言」を策定しております。また、高い付加価値を生み出すアウトプット志向の働き方を実現するため、社員の自立的且つ柔軟な働き方を促進しています。具体的には、以下のような様々な施策に取り組んでおります。
・心身の健康を支えるインフラ整備:社内診療所(内科・歯科・心療内科)、カウンセリングセンター、マッサージルームの設置等。
・女性特有の健康課題に対する理解促進:フェムテック展示会の開催。
・ヘルスリテラシー向上・健康維持に向けた施策:未病・予防の観点から、各種健康セミナーを実施するとともに、健康保険組合との協働による健康施策を展開。ストレスチェックは海外組織も含めて実施し、その分析結果を職場環境の改善に活用。また、海外赴任者向けにはグローバル医療サポートを提供。さらに、長時間労働者に対する面談による原因解明と改善策の速やかな実行を通じた長時間労働防止の徹底。
・各種補助:健康診断・人間ドックの費用補助、高度医療見舞金制度の導入、福利厚生のカフェテリアプランにおける健康・育児・介護に関する支援の強化等。
・柔軟な働き方の促進:テレワーク制度、コアタイムの無いスーパーフレックス制度、ドレスコードフリー等。
・多様なライフとキャリアを支援する制度:子のみを帯同する海外駐在への支援、男性の育児休業取得の促進、配偶者の転勤同行後の復職制度(配偶者転勤時退職制度)、保育施設との提携、介護セミナーや専門家による個別相談等。
(c) 人財戦略ロードマップ
長期的な観点のみならず、中期経営計画の実現に向け、戦略実行力を高めるため、戦略ステージ毎に注力すべき施策も特定したうえで、人財戦略を推進しております。
前中計においては、経営基盤のシフトとして、人事諸制度の基盤整備に取り組みました。具体的には、年次管理を撤廃し職務の大きさに基づき等級を決定する「職務等級制度の導入」、他者との比較による相対評価から個々人の育成に主眼を置いた絶対評価に転換した「評価制度の改革」、コース別人事管理を撤廃し、プロフェッショナル職に統一した「職掌一本化」です。この3つの打ち手を講じ、旧来あった壁を撤廃し、適所適材の実現と一人ひとりが持っている力を発揮できる状態を目指しておりました。
2024年からスタートした中期経営計画2026では、「人と組織のエンパワーメント」をNo.1事業群を目指すための重要な要素の一つとして掲げております。成長のステージに大きく舵をきった現中計において、人と組織の力をこれまで以上に引き出すことで、戦略実行力を高めていきます。変化が激しく複雑で予測がつかないビジネス環境において、“Unlock Your Power”を標榜し、多様な知識・経験を持つ社員一人ひとりが、これまで以上にエンパワーされ、Enriching lives and the worldの実現に向けて夢中になれる職場で、新たなビジネス創出や課題解決に当たることを追求します。特に、当社グループにおける、人と組織が具備すべきケイパビリティとして、「事業構想力」「リーダーシップ」「スピード」を優先事項とし、飛躍的成長を確実なものにしていくため、さまざまな施策を講じております。具体的な取り組み事例は以下のとおりです。
・経営人財の育成:将来の重要ポジションの後継候補を計画的に育成するため、必要なスキル・経験を確実に身につけた候補者を多く輩出することを目指しております。ノミネーションを通じてポテンシャルのある人財を早期に特定し、タレントプールを構築、育成のためのタフアサイメントポジションを設定・マッチングし、育成のサイクルを回すことで、経営人財を確実に輩出していきます。
・多様な“個”の意志・ポテンシャルを最大限引き出す施策:社員一人ひとりの意志を尊重し、自律的なキャリア形成を支援するため、社内公募制をより柔軟に利用できる制度に改定し、拡大させております。また、平等なキャリア開発機会の提供の一環として、「いつでもどこでも誰でも」自ら学べるe-learningプラットフォームを2024年4月に導入しております。将来の社員に向けては、新卒採用において、一人ひとりの「WILL(意欲)」を大切にすることを意図した、初期配属を入社前に確定できる「WILL選考」を行っております。
・ラインマネージャーエンパワーメント:任用・異動・評価等の人事関係事項をラインマネージャーに権限委譲し、より一層、一人ひとりの社員に向き合い、戦略に合致した効率的かつ効果的な組織運営を推進しております。ラインマネージャーに求められるスキル向上に注力しており、ラインマネージャー向けサイトの開設や、e-learningを提供しております。

③ リスク管理
詳細については、「
④ 指標及び目標
(※)1 当社グループに属する全ての会社において指標及び目標を設定しているものではありません。
働きがいある職場と社員エンゲージメントにつきましては、当社単体及び当社の国内外拠点における
指標及び目標を記載しております。
(※)2 同様に、女性活躍推進につきましては、当社単体における指標及び目標(該当年度の翌年度4月1日時点)
を記載しております。
(※)3 日本経済団体連合会が2021年3月に公表した「2030年30%へのチャレンジ」に賛同し、設定したもの。
(a) 働きがいある職場と社員エンゲージメント
2023年度から当社の国内海外拠点を含めたグローバルベースで、年1回のエンゲージメントサーベイを実施しております。上記の人的資本の方針・考え方に基づき、人的資本に対する取り組みを実行する過程で、エンゲージメントサーベイで計測する「社員エンゲージメント」「社員を活かす環境」が向上していくと考えており、当社における目標を上表のとおり設定しております。
本サーベイでは、①組織へのコミットメントの度合いや仕事に対する自発的な取り組み意欲を示す社員エンゲージメント、及び、②社員一人ひとりの持つ能力を発揮するための働く環境について調査しております。結果は、社員と共有し、各現場でさまざまな取り組みを行っております。また、執行役員の毎年の目標においても、エンゲージメント及びDE&Iにかかる目標数値を設定し、その結果は、譲渡制限付業績連動型株式報酬の株式交付割合に反映しております。
(b) 女性活躍推進
グローバルベースで様々な領域で活躍する女性を育成していくため、足下での状況を踏まえた上で、2030年度達成に向けた当社における目標を上表のとおり設定し、継続的に取り組みを進めております。
2022年には、コース別人事管理を廃止し、職掌を一本化することで、職掌にとらわれず、個々人のスキル・能力・意欲等に応じてキャリア形成が可能な制度へと移行しました。また、従来整備しているライフイベントと就業の両立支援策に加え、女性リーダーの登用・育成を一層加速させていくための強化策を、シニアマネジメント層の議論を経て実行に移しております。具体的には、配偶者の転勤時等のライフイベントに応じたアサインメントの柔軟な個別対応や、社内で相談し合える女性のコミュニティ形成等、活躍の阻害要因を極力排除し、真に力を発揮し成長できる機会を提供しております。さらに、各組織においても、個別の課題に応じて、メンター・コーチング制度やネットワーキング施策等に取り組んでおります。
当社の事業その他に関するリスクとして投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる事項には以下のようなものがあります。
なお、文中における将来に関する情報は、別段の記載がない限り、当期末時点における当社の判断、目標、一定の前提または仮定に基づく予測等であり、多くの要因によって実現しない可能性があり、また、予測等に基づき策定した中期経営計画を修正する可能性や達成できない可能性もあります。
当社においては、「リスク」を「あらかじめ予測し若しくは予測していない事態の発生により損失を被る可能性」及び「事業活動から得られるリターンが予想から外れる可能性」と定義し、以下3点をリスクマネジメントの目的としております。
当社は、営業活動を投資と商取引に大別の上、それぞれに固有のリスクファクター及び双方に共通するリスクファクターを特定し、その発生する蓋然性及び発生した時の影響を分析・評価しております。

当期末現在、当社は315社の連結子会社及び192社の持分法適用会社を有しています(注)。当社では連結子会社及び持分法適用会社への投資に関しては、技術革新等を含む事業環境の変化や、主要顧客の喪失、原料価格の上昇等により、計画した利益が獲得できず、投下資金の回収不能や撤退時における追加の資金負担といったリスクが考えられます。当社ではこれらリスクを管理するため、新規投資実行時及び実行後のモニタリングに大別して様々な制度を導入しています。
(注) 連結子会社が保有する関係会社のうち、当該連結子会社にて連結または持分法処理されているもの(当期末現在、子会社339社、持分法適用会社72社)については、上記会社数から除外しています。
取り組みの初期段階から「投資テーマ」を明確にし、デューデリジェンスによって重点的に検証しています。加えて、当該事業リスクに応じた割引率を適用することにより、投資対象の「適正な価格」を算定するとともに、2021年には、過去の大型投資案件の計画未達・損失発生等の要因を網羅的に分析し、新たに投資規範を設定、新規投資検討の際には常にこの規範に照らして議論するなど、定性・定量の両面から評価を実施しています。また、投資案件の意思決定に際しては、案件の規模や重要性に応じて、検討・実行の各段階において、経営会議及びその諮問機関である全社投融資委員会、またはグループ経営会議(各営業グループにおける投資意思決定機関)を開催し、個別案件の戦略上の位置付け、案件選定の背景・理由、並びに投資後のバリューアップ施策の前提とその確からしさなど、投資の成否を左右する諸条件について早い段階から課題の特定、議論の深掘りを行うとともに、その対応策も踏まえた案件実行可否につき審議しています。
投資実行後の支援にあたっては、投資の意思決定時点において課題を明確にし、投資実行後もスムーズに課題解決に取り組める体制を整えています。特に重要な案件については、統合支援機能として「100日プラン(注)実行支援制度」を設けています。更に、投資先のモニタリング制度として、2018年度より「フルポテンシャルプラン」を導入し、ROIC/WACCなど複数の定量指標に基づくスコアリングによって投資先を分類、課題先は明確な時間軸に基づき改善、又は撤退を促し、投資ポートフォリオの質の向上を進めてきました。その結果、一定の改善、成果が得られたことから、2025年度より本制度を改定し、一定の定量基準にて撤退候補先を洗い出すとともに、営業グループの自律経営という方針のもと、投資先の成長性や収益性、新規投資案件の進捗状況にフォーカスした投資先レビューの枠組みへ高度化させ、従来以上にポートフォリオの入れ替え、最適化に取り組んでいます。
また、ガバナンスの高度化を目的とし、投資先の事業に則したKAI、KPI設定を通じた経営の可視化、最適なマネジメントチームの組成、及び事業価値向上を促進するマネジメント報酬の設計等を通じ、事業会社における業務品質の向上を図っています。
さらに、価値向上実現へのコミットメントを高めるべく、投資パフォーマンスに連動した報酬制度を導入しました。
(注) 投資実行後の早い段階で、投資先のマネジメントと目標とすべき経営指標や財務指標を含めた事業価値最大化を図る中期計画を策定すべく、経営インフラの構築・整備を行う活動のこと。

② 鉱物資源、ガス開発・生産事業に係るリスク
当社は、鉱物資源、ガス等の開発事業を各国で展開しており、以下に例示するようなリスクを負っています。これらが顕在化することにより、当社の業績及び財政状態が悪影響を受ける可能性があることから、当社では、マーケット情報の収集や分析に取り組み、当該事業のプロジェクトマネジメントの強化に努めています。
(a) 開発事業において、計画を超えた開発費用の増加や工期の遅延が起こること
(b) 事業参画前には専門家を起用して十分な地質調査を実施しますが、それにもかかわらず事業開始後に埋蔵量が変動すること
(c) 操業にかかわる技術的問題等に起因して、生産量が計画を下回り、あるいは生産コストが上昇すること
(d) 許認可の取得・更新の遅延、税制の変更、事業資産の接収や権利の侵害等、事業所在国の政府にかかわる事由に起因して計画が実現しないこと
当社は取引先に対し、売掛債権、前渡金、貸付金、保証その他の形で信用供与を行っており、信用リスクを負っています。また、当社は、主としてヘッジを目的とするデリバティブ取引を活用しており、当該取引にも契約相手先の信用リスクが存在します。
当社では、内部格付制度に基づく取引先等の信用力チェックや担保・保証等の取得、取引先の分散等により、かかるリスクの管理に努めており、また、上記の信用リスクが顕在化した場合に備えるため、取引先の信用力、担保価値その他一定の前提、見積り及び評価に基づいて貸倒引当金を設定していますが、予期せぬ要因等によりこれら取引先、契約相手先が、支払不能、契約不履行等に陥る場合、当社の業績及び財政状態が悪影響を受ける可能性があります。
当社グループは金属・エネルギーを始めとする各種商品の売買を行っており、当該商品の価格変動リスクを負っています。
当社は、商品ごとの枠設定による管理体制の構築や、ヘッジ取引等によりリスクの軽減に努めており、主要な商品については、ポジション枠及び損失限度枠の設定、ミドル・バックオフィスの設置により職務分離を確保しています。
また、当社グループは直接・間接的に鉱物・原油及びガス資源権益を保有しており、生産物の価格変動リスクを負っています。これら事業については、ヘッジポリシーを定め、ヘッジが必要と判断される場合は、デリバティブ取引等を用いてヘッジを実施することにより業績の下振れリスクを抑制しています。
当社は、日本を含む60ヶ国以上において商取引及び事業活動を行っており、関係各国の政治・経済・社会情勢等の事業環境の変化に起因して生じる事業遅延・停止等が当社の業績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。
当社は、案件ごとに保険を付保するなどのリスク回避策を講じるとともに、社内国格付に応じたエクスポージャーの上限目安額を設定し、国ごとのエクスポージャー管理を実施することにより事業ポートフォリオが適切な分散を保つよう管理しています。
ロシア及びウクライナ関連ビジネスにおいては、住友商事グループの役職員とその家族、取引先をはじめとする、すべてのステークホルダーの安心と安全を最優先事項として掲げています。また、取引先を含む事業パートナーやステークホルダーとの協議を踏まえ、社長を議長とする経営会議の管理の下で、住友商事の危機対応方針に即し対処しています。
当社は、事業資金を金融機関からの借入または社債・コマーシャルペーパーの発行等により調達しています。また、当社は取引先に対し、売掛債権、前渡金、貸付金、保証その他の形で信用を供与する場合があります。これらの取引により生ずる収益・費用及び資産・負債の公正価値は、金利変動の影響を受ける場合があります。
また、当社が行う外貨建投資並びに外貨建取引により生ずる収益・費用及び外貨建債権・債務の円貨換算額、並びに外貨建で作成されている海外連結対象会社の財務諸表の円貨換算額は、外国為替レートの変動の影響を受ける場合があります。
当社ではこれら金利変動、外国為替レートの変動によるリスクを回避するため、デリバティブ等を活用していますが、これらによりリスクが十分に回避できる保証はありません。
当社が保有する市場性のある有価証券は、日本企業が発行する株式への投資が大きな割合を占めており、日本の株式市場が今後低迷した場合には、有価証券の公正価値の変動によって、当社の業績及び財政状態が悪影響を受ける可能性があります。また、当社の企業年金では、年金資産の一部を市場性のある株式により運用しています。よって、株価の下落は年金資産を目減りさせるリスクがあります。
当社は、日本及び海外において、オフィスビルや商業用施設、居住用不動産の開発、賃貸、保守・管理事業等の不動産事業を行っており、不動産市況が悪化した場合には、業績及び財政状態が悪影響を受ける可能性があります。
また、地価及び賃貸価格の下落が生じた場合には、当社が保有する賃貸用の土地及び建物、並びに開発用の土地及びその他の不動産の評価額について、減損処理を行う必要が生ずる可能性があります。
不動産のほか、当社が所有する他の固定資産についても減損のリスクに晒されており、当社の業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社は、情報セキュリティの重要性を認識しており、関連規程の整備や役職員への啓発、情報セキュリティを確保するための技術的な対策等を施し、情報資産を管理することに努めています。また、テレワーク環境等、情報システム利用環境の多様化に応じた情報セキュリティの強化も図っています。さらに、当社は事業活動の多くを情報システムの機能に依存していることから、情報システム運営の上でも安全性の確保に努めています。しかしながら、サイバー攻撃が年々巧妙化する中、予期せぬ外部からのサイバー攻撃や不正アクセス、ウィルスやマルウェアの侵入、情報システムの機能不全等により、情報の漏洩・滅失・毀損、事業活動の一時的停止等、当社の事業活動が重大な悪影響を受ける可能性があります。
これらのリスクに適切に対応するため、チーフ・インフォメーション・オフィサーを委員長とするIT戦略委員会を中心に、2017年10月制定の「情報セキュリティ基本方針」に沿って、情報資産の適切な管理に努めています。また、外部からのサイバー攻撃や不正アクセス等に対してはシステム上の対策に加え、外部専門機関とも連携の上、最新情報を入手し、適切かつ迅速に対応できるように努めています。
当社は、日本及び海外において、多種多様な事業活動を手掛けているため、広範な法律及び規制に服しています。これらの法律及び規制は、事業及び投資認可、輸出入活動(国家安全保障上の規制を含む)、競争法制、汚職・腐敗行為防止、為替管理、金融商品取引、個人情報・データ保護、人権保護、環境保護、消費者保護、関税及びその他の租税等の分野にわたることに加え、国によっては追加的または将来制定され得る関係の法律及び規制に新たに服する可能性があります。また、新興国においては、法令の欠如、法令の予期し得ない変更、並びに司法機関及び行政機関等による規制実務の変更によって、法令遵守のための当社における負担がより増加する可能性があります。
これらの法律及び規制の遵守を徹底するため、当社は、コンプライアンスに関する最高責任者としてチーフ・コンプライアンス・オフィサーを置いており、チーフ・コンプライアンス・オフィサーは、コンプライアンス施策の企画、立案及びその実施につきコンプライアンス委員会から助言を受け、コンプライアンスに関する適切な施策を策定・実行しています。また、コンプライアンスの基本方針を住友商事グループ全体に明確に示すために、当社は、「住友商事グループ・コンプライアンスポリシー」を制定し、セミナー等の継続的な啓発活動を通じて、グループ全体への「コンプライアンス最優先」及び、万一、コンプライアンス上の問題が発生したときは直ちに上司あるいは関係部署に対して事態を報告し、最善の措置をとること、すなわち「即一報」の意識の浸透・徹底を図っており、コンプライアンス問題の発生防止に努めています。
しかしながら、このような取り組みをもってしても、当社または当社グループに属する役職員が、現在または将来の法律及び規制を遵守できなかった場合には、罰金等のペナルティの対象になるとともに、事業が制約され、信用の低下を被る可能性があるため、当社の事業展開、業績、財政状態及び社会的信用に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
当社は、日本及び海外において訴訟等の係争案件に関わっています。また、事業遂行上、偶発的に発生する訴訟等やそれに至らない請求等を受ける可能性があります。
訴訟等に固有の不確実性を考慮すると、現時点において、当社の関わる訴訟等の結果を予測することはできません。また、これらの訴訟等で当社が勝訴するという保証や、将来において当社の社会的信用や当社の業績及び財務状況がそれらの訴訟等による悪影響を受けないという保証はありません。
当社グループは、世界中の異なる国・地域で、複数の分野に跨り事業を展開しており、その事業活動は、地球環境や地域社会、顧客、役職員等のステークホルダーにさまざまな影響をもたらします。そのため、当社グループの事業活動が、人々の人権や地球環境に負の影響を与えた場合には、その影響の解消・緩和や損害の賠償等による追加的費用の発生や事業の停止等によって、財政状態の悪化、信用の毀損等の影響を受ける可能性があります。
当社は、社会・環境に配慮し、社会とともに持続的に成長することを目指し、「環境方針」「人権方針」「サプライチェーンCSR行動指針」を制定して、社会・環境問題に関する考え方を明確にしています。持続可能な調達を要する主要な天然資源についても、個別の方針を制定して取り組んでいます。事業活動が与える社会・環境面への影響を適切に管理するために、新規投資の際には、各事業の社会・環境への関わりや影響、それらの管理の状況を確認し、投資実行後も、定期的なモニタリングを行うなど、社会・環境リスク管理の全社的なフレームワークを整えています。
世界的な重要課題である気候変動に関しては、事業を通じて、社会の持続可能な発展に必要な気候変動問題の解決、カーボンニュートラルな社会の実現に貢献する方針を掲げ、発電事業における再生可能エネルギーへのシフトなど、より環境負荷の低い事業ポートフォリオへの継続的なシフト等の取り組みを進めています。
また、人権の尊重に関しては、当社グループの全事業とサプライチェーンにおいて人権が尊重されるよう努めることを目標に掲げています。当社全事業・サプライチェーンを対象として実施した人権デューデリジェンスの結果などを踏まえ、全社的なリスクマッピングをおこない、当社グループにおける人権リスクが高い事業を特定しております。各SBUや事業会社が主体となり、引き続き人権リスクの低減・防止に努めます。
当社が事業活動を展開する国や地域において地震、津波、大雨、洪水等の自然災害、または新型インフルエンザ等の感染症が発生した場合に、当社の事業に悪影響を与える可能性があります。当社では地震災害等に備え、災害対策マニュアルや事業継続計画(BCP)の作成、社員の安否確認システムの構築、災害用物資の備蓄、防災訓練、建物・システムの耐震化及びデータのバック・アップ等の対策を講じていますが、これによって災害による被害を十分に回避できる保証はありません。
当社は、営業グループ、国内外の地域組織及び全世界のグループ会社を通じて、幅広い分野でビジネスを展開しており、それぞれの組織において内部統制を適切に構築する必要があります。しかしながら、当社が内部統制を適切に構築したとしても、役職員の事務処理ミスや不正行為等のオペレーショナルリスクを完全に防止することができる保証はありません。事務処理ミスや不正行為等が発生した場合、当社は財政状態の悪化、信用の毀損等の悪影響を受ける可能性があります。これらのリスクをできる限り抑えるために、内部統制に関する基本規程を定め、適正な内部統制の構築・運用・評価・改善を通じて、グループガバナンスの向上及びグループ全体の業務品質向上に取り組んでいます。
当社は、事業資金を金融機関からの借入または社債・コマーシャルペーパーの発行等により調達しています。金融市場の混乱や、金融機関が貸出を圧縮した場合、また、格付会社による当社の信用格付の大幅な引下げ等の事態が生じた場合、当社は、必要な資金を必要な時期に、希望する条件で調達できない等、資金調達が制約されるとともに、調達コストが増加する可能性があり、当社の業績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。
そのため、現預金、コミットメントライン等の活用により十分な流動性を確保するとともに、調達先の分散や調達手段の多様化に努めており、これにより、財務健全性の維持・向上を図ります。
当社及び連結子会社は繰延税金資産の回収可能性の評価を、有税償却に関する無税化の実現可能性やその時期、当社及び連結子会社の課税所得の予想など、現状入手可能なすべての将来情報を用いて判断しています。当社及び連結子会社は、回収可能性を見込めると判断した部分について繰延税金資産を計上していますが、将来における課税所得の見積りの変更や法定税率の変更を含む税制改正等により回収可能額が変動する可能性があります。
また、経営環境悪化に伴う事業計画の目標未達等により、将来の課税所得の見込みが、現在のタックス・プランニング上の見込みよりも低下した場合、繰延税金資産の回収可能額が減少し、繰延税金資産を減額することになり、当社及び連結子会社の業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループが事業を展開する地域・分野及びビジネスモデルは劇的に多様化しており、環境は非連続かつ相当なスピードで変化しています。ビジネスを展開するにあたって、特定分野に高度な専門性及び経験を持った人財が必要となる可能性は常にあります。当社では、タイムリーに社内外のTop Tierプロフェッショナル人財を確保するために、通年採用を実施し、また人材育成、健康経営・働き方改革の推進、競争力のある報酬やキャリア開発の機会の提供等を通じて、多様な人財一人ひとりが働きがいを感じ、未来を拓く挑戦に邁進できる、魅力的な職場環境の整備に取り組んでいます。
しかしながら、ビジネスモデルの急激な変化により特定の専門人材に対する需要が急増する、あるいは当該専門人材に対する労働市場が成熟しておらず、加えて当社の人財の確保・育成の取り組みをもっても十分な対応が想定通りに進まない場合、当社の事業が悪影響を受ける可能性があります。
当社グループの商取引及び投資活動において、特定の国、分野、または取引先に対するエクスポージャーが集中するリスクがあります。事業環境の悪化等により当社が期待するリターンが得られない、もしくは損失を被る場合は、当社の業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社は、特定の国・地域に対するリスクエクスポージャーの過度な集中を防ぐために、カントリーリスク管理制度を設けています。また、特定分野への過度な集中を避け、バランスの取れた事業ポートフォリオを構築するために、戦略会議や大型・重要案件の審議機関である投融資委員会において、営業グループやビジネスラインへ配分する投下資本額について十分なディスカッションを行っています。また、当社グループとして成約残及び債権残が高額になる取引先については定期的に状況をモニターしています。具体的な取り組みは以下のとおりです。
・当社が抱えるエクスポージャーが大きい特定の国については、前述のカントリーリスク管理制度に則りきめ細かく管理しています。
・資源・エネルギー上流案件については、定期的なプロジェクト価値のモニタリングを実施しています。
・定期的に大口債権残・成約残のある先との取引状況や当該取引先の経営状況等の情報を把握し、管理しています。
(1) 企業環境
当期の世界経済は、緩やかな持ち直しの動きが続きましたが、多くの国での政権交代により、政策の不確実性が高まりました。特に米国の大統領選以降は、世界の政治経済の不透明感が増し、経済見通しの重しとなりました。米国は、堅調な雇用情勢を受けて家計消費が経済活動をけん引した一方で、投資活動の伸び悩みを受けて、金融政策は約2年半ぶりに緩和へと転じました。欧州ではエネルギー価格の高止まりやグリーン投資の停滞などにより景気回復は遅れ、財政支出増で対応するなど成長回帰に向けて政策を転換しました。中国は、不動産問題が依然として景気回復の重しとなり、内需は力強さを欠いています。アジア諸国は、中国からの輸出圧力の強まりや米国の関税引き上げへの対応もあって、回復基調は続いているものの、減速感が強まりました。
紛争が続いているロシア・ウクライナやイスラエル・ハマス情勢については、停戦合意へ向けて歩み出す動きもあるものの、予断を許さない状況が続いています。米国がパリ協定、WHOやIPEF(インド太平洋経済枠組み)などの国際的枠組みから離脱し、また、NATOへの関与を減衰させることは、多くの企業の経営判断に影響を及ぼし、世界の貿易や投資に変化をもたらし始めました。さらに、米国を中心に反ESGや反DE&Iの動きが強まり、欧州においてもサステナビリティ関連施策の見直しが行われていることは、金融機関や事業会社による再生可能エネルギー・サステナビリティ関連投融資に影響を及ぼしました。
国際商品市況は、先行き不安を反映して金価格が史上最高値を更新しました。エネルギー関連では、厳寒の影響で欧州の天然ガス価格が上昇したものの、一時的な動きに留まりました。石油では、協調減産にもかかわらず、総じて低位安定した値動きとなりました。一方、気候変動や安全保障にかかわる重要鉱物では供給不安が高まりましたが、EVや風力発電などの需要が弱まり、需給状況は不安定となっています。
国内経済は、緩やかな回復基調が続き、我が国の名目国内総生産(GDP)額は初めて600兆円を超えました。GX(グリーントランスフォーメーション)やDX(デジタルトランスフォーメーション)の取組により、設備投資も回復の動きが続いています。一方、食料品を中心に物価が上昇し、実質賃金がプラス圏で安定しないため、個人消費は横ばい圏内の動きとなりました。
為替レートは、約35年振りに一時1ドル160円まで円安が進行しました。また、好調な企業業績を反映して日経平均株価は最高値となる約42,000円へと上昇したものの、為替市場で一服感が強まったことや長期金利の上昇、先行き不透明感の強まりを受けて反落しました。
当社は戦略を軸とする「Strategic Business Unit」(SBU)を基本単位とし、戦略上の親和性の高いSBUを束ねる組織として9つのセグメント(グループ)に区分しております。
9つのセグメントは鉄鋼グループ、自動車グループ、輸送機・建機グループ、都市総合開発グループ、メディア・デジタルグループ、ライフスタイルグループ、資源グループ、化学品・エレクトロニクス・農業グループ、エネルギートランスフォーメーショングループから構成されております。
当社は、2024年4月1日付で、「事業部門」・「エネルギーイノベーション・イニシアチブ」及び「本部」・ 「部」を廃止し、戦略事業単位であるSBUをベースとした組織運営を行っております。これに伴い、前期のセグメント情報は組替えております。
前期及び当期の売上総利益、当期利益(親会社の所有者に帰属)の事業セグメント別実績は以下のとおりであります。
事業セグメント別売上総利益の内訳
事業セグメント別当期利益(親会社の所有者に帰属)の内訳
① 仕入の状況
仕入は販売と概ね連動しているため、記載は省略しております。
② 成約の状況
成約は販売と概ね連動しているため、記載は省略しております。
③ 販売の状況
当期において、特記事項はありません。上記「(2) 業績」及び「第5 経理の状況 連結財務諸表注記 4 セグメント情報」をご参照ください。
以下は、連結包括利益計算書における主要な項目についての説明であります。
収益
当社では、収益を、商品販売に係る収益とサービス及びその他の販売に係る収益に区分して表示しております。
商品販売に係る収益としては、以下の取引に関連して発生する収益が含まれております。
・卸売、小売、製造・加工を通じた商品の販売
・不動産の開発販売
・長期請負工事契約に係る収益
サービス及びその他の販売に係る収益としては、以下の取引に関連して発生する収益が含まれております。
・ソフトウェアの開発に関連するサービス
・賃貸用不動産、船舶などの貸付金、ファイナンス・リース及びオペレーティング・リース
売上総利益
売上総利益は、以下により構成されております。
・当社が主たる契約当事者として関与する取引における総利益
・当社が代理人等として関与する取引における手数料
固定資産評価損益
棚卸資産、繰延税金資産及び生物資産を除く当社の非金融資産の帳簿価額については、期末日ごとに減損の兆候の有無を判断しております。減損の兆候が存在する場合は、当該資産の回収可能価額を見積り、のれん及び耐用年数を確定できない、または未だ使用可能ではない無形資産については、回収可能価額を少なくとも年1回見積った上で、資産または資金生成単位の帳簿価額が回収可能価額を超過する場合には、減損損失を認識しております。また、減損損失の戻し入れを行った場合は当該戻し入れ金額も含めております。
固定資産売却損益
当社は、資産のポートフォリオの戦略的かつ積極的な入替えを図っております。その結果、不動産等のバリューを実現するために売却する場合や、価格の下落した不動産等を売却する場合、売却損益を計上することになります。
受取配当金
受取配当金には、当社の子会社及び持分法適用会社以外で、当社が株式を保有している会社からの配当金が計上されております。
有価証券損益
当社は事業活動の一環として相応の規模の投資を行っております。これらの投資対象のうち、公正価値で測定し、その変動を当期利益で認識する金融資産(以下、FVTPLの金融資産)は公正価値で当初認識しております。当初認識後は公正価値の変動を当期利益で認識しております。また、償却原価で測定される金融資産は、公正価値(直接帰属する取引費用も含む)で当初認識しております。当初認識後、償却原価で測定される金融資産の帳簿価額については実効金利法を用いて算定し、帳簿価額の変動について、必要な場合には減損損失を認識しております。償却原価で測定される金融資産並びに子会社及び持分法適用会社への投資等を売却する際に、売却損益を認識しております。
持分法による投資損益
投資戦略やビジネスチャンスの拡大に関連して、当社は、各セグメントで状況に応じ、新規または既存の会社の買収や出資、他の企業とのジョイント・ベンチャーの結成、または同業他社とのビジネス・アライアンスの組成を行っております。一般的に、当社は、出資比率が20%以上50%以下である会社の投資に対し、その持分利益や損失を計上しております。
FVTOCIの金融資産
公正価値で測定し、その変動をその他の包括利益で認識する金融資産(以下、FVTOCIの金融資産)は、公正価値(直接帰属する取引費用も含む)で当初認識しております。当初認識後は公正価値で測定し、公正価値の変動をその他の包括利益で認識しております。
確定給付制度の再測定
当社は、確定給付負債(資産)の純額の再測定を、その他の包括利益で認識しております。
在外営業活動体の換算差額
在外営業活動体の資産・負債(取得により発生したのれん及び公正価値の調整を含む)については期末日の為替レート、収益及び費用については期中平均レートを用いて日本円に換算しており、在外営業活動体の財務諸表の換算から生じる為替換算差額はその他の包括利益で認識しております。当社のIFRS移行日以降、当該差額はその他の資本の構成要素である「在外営業活動体の換算差額」として表示しております。
キャッシュ・フロー・ヘッジ
デリバティブを、認識済み資産・負債、または当期利益に影響を与え得る発生可能性の非常に高い予定取引に関連する特定のリスクに起因するキャッシュ・フローの変動をヘッジするためのヘッジ手段として指定した場合、デリバティブの公正価値の変動のうちヘッジ有効部分は、その他の包括利益で認識しております。
IFRSに基づく連結財務諸表の作成にあたり、期末時点の資産・負債の計上や偶発資産及び偶発債務の開示、並びに期中の収益費用の適正な計上を行うため、マネジメントによる見積りや前提が必要とされます。当社は、過去の実績、または、各状況下で最も合理的と判断される前提に基づき、一貫した見積りを実施しております。資産・負債及び収益費用を計上する上で客観的な判断材料が十分でない場合は、このような見積りが当社における判断の基礎となっております。従って、異なる前提条件の下においては、結果が異なる場合があります。以下、当社の財政状態や経営成績にとって重要であり、かつ相当程度の経営判断や見積りを必要とする重要性がある会計方針につき説明します。なお、当社の主な会計方針は、「第5 経理の状況 連結財務諸表注記 3 重要性がある会計方針」を参照願います。
金融資産の減損
当社は、償却原価で測定する金融資産、リース債権、契約資産及びその他の包括利益を通じて公正価値で測定する負債性金融資産に係る減損については、当該金融資産に係る予想信用損失に対して損失評価引当金を認識しております。
当社は、信用リスクの変動及び予想信用損失の算定にあたっては、主に当社独自の信用格付けである Sumisho Credit Rating(SCR)を用いております。これには、債務者の過去の貸倒実績、現在の財務状態及び合理的に利用可能な将来予測情報等が含まれております。
公正価値で測定する金融資産
当社は、有価証券やその他の投資等の金融資産を保有しており、FVTOCIの金融資産と、FVTPLの金融資産とに分類しております。当社は、投資先企業との取引関係の維持・強化による中長期的な収益の拡大などを目的として保有しており、公正価値の変動を業績評価指標としていない金融資産をFVTOCIの金融資産として分類し、公正価値の変動を獲得するために保有し、業績評価指標としている金融資産をFVTPLの金融資産として分類しております。当該金融資産の公正価値は、市場価格、割引将来キャッシュ・フローや純資産に基づく評価モデル等の評価方法により算定しております。
非流動資産の回収可能性
当社は、様々な非流動資産を保有しており、持分法で会計処理されている投資や無形資産などの非流動資産について、帳簿価額の回収可能性を損なうと考えられる企業環境の変化や経済事象が発生した場合には、減損テストを行っております。実際に減損の兆候があるかどうかの判定に際しては、様々な見積りや前提が必要となります。例えば、キャッシュ・フローが直接的に減損の懸念がある資産に関係して発生しているのかどうか、資産の残存耐用年数がキャッシュ・フローを生み出す期間として適切かどうか、生み出すキャッシュ・フローの額が適切かどうか、及び、残存価額が適切かどうか、などを考慮しなければなりません。また、のれん及び耐用年数を確定できない無形資産について、少なくとも年1回、更に減損の発生が予測される場合は、その都度、減損テストを実施しております。減損テスト時には、資産の回収可能価額を見積っております。資産または資金生成単位の回収可能価額は使用価値と処分費用控除後の公正価値のうち、いずれか高い金額としております。使用価値の算定において、見積将来キャッシュ・フローは、貨幣の時間的価値及び当該資産の固有のリスクを反映した割引率を用いて現在価値に割引いております。当社では、過去の経験や社内の事業計画、及び適切な割引率を基礎として将来キャッシュ・フローを見積っております。これらの見積りは、事業戦略の変更や、市場環境の変化により、重要な影響を受ける可能性があります。なお、非流動資産の回収可能性に関連する会計上の見積りのうち、重要なものは以下になります。詳細については、「第5 経理の状況 連結財務諸表注記 11 持分法適用会社に対する投資、注記 13 無形資産」を参照願います。
Ambatovy Minerals S.A.及び Dynatec Madagascar S.A.(以下両社を称して「プロジェクト会社」という)の固定資産に減損の兆候が認められ、かつ、減損テストの結果、回収可能価額が固定資産の帳簿価額を下回った場合には、当社において持分相当額を持分法投資損失として認識いたします。認識した持分法投資損失がプロジェクト会社の株式に対する持分法投資額を超える場合、実質的に純投資と考えられる貸付金等の長期持分に対して配分します。プロジェクト会社における固定資産の回収可能価額を算定する場合は、使用価値と処分コスト控除後の公正価値のいずれか高い方が採用され、その見積りには、プロジェクト会社の生産数量、将来の資源価格(主にニッケル及びコバルト等の中・長期予想価格、割引率といった重要な仮定が使用されております。
当期においては、プロジェクト会社が英国裁判所に申し立てていたRestructuring Plan(英国法に基づく債務整理手続、以下「英国Restructuring Plan」という)が2024年11月に認可され、同年12月に同債務整理手続が完了しております。
プロジェクト会社に対する株主融資について足元の状況を踏まえて回収可能性を考慮した結果、英国Restructuring Planによりコミット済みの未拠出額も含めた全額につき損失計上しております。これに伴い、連結包括利益計算書において14,107百万円の損失を「持分法による投資損益」、4,752百万円の損失を「その他の損益」に計上しております。
② 欧米州青果事業
欧米州青果事業において、のれん及び耐用年数を確定できない無形資産の減損テストは、複数の資金生成単位グループに分けて実施しており、回収可能価額は使用価値に基づき算定しております。使用価値は、取得価額の前提とした事業計画に対して、直近の事業環境を反映させた将来キャッシュ・フローの現在価値を用いて、独立した鑑定人の支援を受け、評価しております。使用価値に大きく影響を及ぼす仮定は、バナナ&パイン事業における販売数量・マージン・割引率等であります。
北欧駐車場事業において、のれん及び耐用年数を確定できない無形資産の減損テストは、事業全体を一つの資金生成単位グループとして実施しており、回収可能価額は使用価値に基づき算定しております。使用価値の見積りにおいては、取得価額の前提とした事業計画に対して、直近の事業環境を反映させた将来キャッシュ・フローの現在価値を用いて、独立した鑑定人の支援を受け、評価しております。使用価値に大きく影響を及ぼす仮定は、駐車場事業の収益、割引率等であります。
繰延税金資産の回収可能性
当社は、繰延税金資産の全部または一部について、回収が不確実となった場合に、マネジメントの判断により、減額しております。繰延税金資産の回収可能性の評価にあたっては、繰延税金資産計上の根拠となっている将来の一時差異の解消が見込まれる期間内、または、繰越欠損金の繰越可能期間内に、納税地において将来十分な課税所得を生み出せるかどうかを評価しなければなりません。当社では、有利・不利に関わらず、入手可能なすべての根拠・確証を用いてこの評価を実施しております。繰延税金資産の評価は、見積りと判断に基づいております。納税地での将来の課税所得に影響を与える当社の収益力に変化があった場合、現状の繰延税金資産の回収可能性の評価も変わる場合があります。
引当金の測定
引当金は、過去の事象の結果として、当社が、現在の法的または推定的債務を負っており、当該債務を決済するために経済的資源の流出が生じる可能性が高く、その債務の金額が合理的に見積り可能である場合に認識しております。引当金は、見積将来キャッシュ・フローを貨幣の時間的価値及び当該負債に特有のリスクを反映した税引前の利率を用いて現在価値に割引いております。
確定給付債務の測定
確定給付型年金制度は、確定拠出型年金制度以外の退職後給付制度であります。確定給付型年金制度に関連する当社の純債務は、制度ごとに区別して、従業員が過年度及び当年度において提供したサービスの対価として獲得した将来給付額を見積り、当該金額を現在価値に割引き、制度資産の公正価値を差し引くことによって算定しております。割引率は、当社の債務と概ね同じ満期日を有するもので、期末日において信用格付AAの債券の利回りであります。この計算は、毎年、年金数理人によって予測単位積増方式を用いて行っております。
当社の財務運営は財務健全性の維持・向上を基本方針とし、低利かつ中長期にわたり、安定的な資金調達を行うこと、及び十分な流動性の保持を図ることとしております。当社グループ内での資金管理については、グループファイナンスを整備し、資金調達を当社及び金融子会社、海外現地法人に集中した上で、キャッシュ・マネジメント・システムを通じて、当社グループ内で資金を効率的に活用する体制を整えております。
当社は総額3兆2,547億円の社債及び借入金を有しており、このうち短期の借入金は、前期比65億円増加の2,925億円で、内訳は全額が短期借入金(主として銀行借入金)となっております。
一年以内に期限の到来する社債及び長期借入金2,876億円を含めた当期の社債及び長期借入金は、前期比465億円増加の2兆9,623億円となっております。このうち、銀行及び保険会社からの長期借入残高は、前期比711億円減少の2兆3,109億円、社債残高は前期比1,176億円増加の6,513億円となっております。
当社の銀行からの借入の多くは、日本の商慣行上の規定に基づいております。当社は、このような規定が当社の営業活動や財務活動の柔軟性を制限しないと確信しておりますが、いくつかの借入契約においては、特定の財務比率及び純資産の一定水準の維持が求められております。さらに、主に政府系金融機関との契約においては、当社が株式及び社債の発行等により資金を調達した際に、当該金融機関から、当該借入金の期限前返済を求められる可能性があり、また、一部の契約では当社の剰余金の配当等について当該金融機関の事前承認を請求される可能性があります。当社は、このような請求を受けたことはなく、今後も受けることはないと判断しております。
詳細は、「3 事業等のリスク (3) タイプ別リスク ⑬ 資金の流動性に関するリスク」を参照願います。
資金調達については、各金融機関との良好な関係に基づく銀行借入等の間接金融を中心に、コマーシャルペーパーや社債等の直接金融との適切なバランスに留意し、調達期間の長期化を通じた償還期日の分散等による安定的な調達構造を構築しております。外貨建ての資金調達については、銀行借入や外貨建て社債発行、通貨スワップの他、金融子会社、海外現地法人におけるコマーシャルペーパー、ユーロMTN等の活用によって資金調達ソースの多様化に取り組んでおります。また、2022年3月にグリーンファイナンス・フレームワークを策定し、本フレームワークに基づきグリーンボンドを発行しております。2024年2月には、本フレームワークの対象事業の拡大及びソーシャル対象事業の追加を行い、サステナブルファイナンス・フレームワークとして改定しております。
なお、当社は、資本市場での直接調達を目的として、以下の資金調達プログラムを設定しており、当期末時点での当社の長期及び短期の信用格付は、ムーディーズでBaa1(見通し安定的)/P-2、スタンダード&プアーズでA-(見通し安定的)/A-2、格付投資情報センターでAA-(見通し安定的)/a-1+となっております。
・3,000億円の国内及び海外公募普通社債発行登録枠
・国内における5,000億円のコマーシャルペーパー発行枠
・米州住友商事により設定された、1,500百万米ドルのコマーシャルペーパープログラム
・当社及び英国のSumitomo Corporation Capital Europe(以下、「SCCE」という。) が共同で設定した3,000百万米ドルのユーロMTNプログラム
・SCCEが設定した1,500百万米ドルのユーロコマーシャルペーパープログラム
保有流動性については、金融市場の混乱等、複数の有事シナリオを想定し、当期末時点で現預金と国内外の主要な金融機関との総額1,210百万米ドル、及び2,850億円を上限とする以下の長期コミットメントラインを中心に、当社及び当社子会社における資金需要や一年以内に期日が到来する借入や社債の償還資金等を補完する十分な流動性を確保しております。なお、当有価証券報告書の提出日までに、これらのコミットメントラインに基づく借入はありません。また、これらのコミットメントラインには、借入の実行を制限する重大なコベナンツ、格付トリガー条項などは付されておりません。なお、これらのコミットメントラインのほかに、当社は、コミットメントベースでない借入枠を有しております。
・米国及び欧州の大手銀行によるシンジケート団との間で締結した、1,060百万米ドルのマルチ・カレンシー(円・米ドル・ユーロ建)/マルチ・ボロワー(住友商事及び英国、米国、シンガポールにおける当社子会社への融資)型長期コミットメントライン
・大手米銀との間に締結した、米州住友商事への100百万米ドルの長期コミットメントライン
・大手欧銀との間に締結した、SCCEへの50百万米ドルのマルチ・カレンシー(円・米ドル・ユーロ・ポンド建)型長期コミットメントライン
・大手邦銀のシンジケート団による1,500億円の長期コミットメントライン(内、790億円はマルチ・カレンシー型)
・有力地方銀行のシンジケート団による1,350億円の長期コミットメントライン
資金調達の内訳
当期末時点での当社の期限別の支払債務は、以下のとおりであります。
期限別内訳
当社は、資金供与に関する契約(貸付契約、出資契約)及び設備使用契約等を締結しており、当期末における契約残高は、9,018億円です。
当期末時点では、資本的支出に対する重要な契約はありません。
上述の契約に加えて、当社のビジネスに関連して、当社は、顧客の債務に対する保証などの様々な偶発債務を負っています。また、当社は、訴訟による偶発債務の影響を受ける可能性があります。これらの偶発債務に関する詳細は、「(10) 偶発債務」及び「第5 経理の状況 連結財務諸表注記 36 契約及び偶発債務」を参照願います。当社は、現状においては、それらの偶発債務がもたらす資金需要が重大なものとはならないと判断しておりますが、仮に予想に反して、当社が保証を行っている債務に重大な不履行が生じた場合、また、訴訟の結果が、当社に大きく不利なものであった場合には、新たに、大きな資金調達が必要となる可能性があります。
当社は、主に、ワーキング・キャピタル、新規や既存ビジネスへの投資や債務の返済のために、将来にわたり継続的な資金調達を行う必要があります。当社は、成長戦略として買収、株式取得または貸付による投資を行っており、当期は、有形固定資産及び投資不動産の取得に1,237億円、また、事業の取得及びその他の投資の取得に5,622億円の投資を行いました。当社は、現在、全てのセグメントにおいて、既存のコア・ビジネス及び周辺分野を中心に追加投資を検討しております。
しかしながら、これらの投資は、現在、予備調査段階のものや、今後の様々な条件により、その実施が左右されるものであり、結果的に実現されない可能性もあります。また当社は、手許の現金、現在の借入枠や営業活動によるキャッシュ・インで当面必要とされる資金需要を十分に満たせると考えておりますが、それは保証されている訳ではありません。当社の営業活動によるキャッシュ・インが想定より少なかった場合、当社は、追加借入の実施、他の資金調達手段の検討、または投資計画の修正を行う可能性があります。
当社の取引に関連して、顧客の債務に対する保証履行のような偶発債務を負うことがあります。当社は、世界各国のサプライヤーや顧客と多種多様な営業活動を行うことにより、営業債権及び保証等に係る信用リスクを分散させており、これらに関し重大な追加損失は発生しないものと見込んでおります。
当社の当期末における保証に対する偶発債務の残高(最長期限2050年)は1,940億円で、このうち持分法適用会社の債務に対する保証が1,313億円、第三者の債務に対する保証が627億円です。これらの保証は主に持分法適用会社、サプライヤー、及び顧客の信用を補完するために行っているものであります。
当社のビジネスは、金利、外国為替レート、商品価格、株価の変動リスクを伴い、これらのリスクマネジメントを行うため、為替予約取引、通貨スワップ・オプション取引、金利スワップ・先物・オプション取引、商品先物・先渡・スワップ・オプション取引等のデリバティブを利用しております。また、後述のリスク管理体制の下、予め決められたポジション限度・損失限度枠内で、トレーディング目的のデリバティブ取引も限定的に実施しております。
金利変動リスク
当社は、事業活動の中で様々な金利変動リスクに晒されております。コーポレートグループの財務・経理・リスクマネジメントグループ長が管掌する部署では、当社のビジネスに伴う金利変動リスクをモニタリングしております。特に、金利の変動は借入コストに影響を与えます。これは、当社の借入金には変動金利で借り入れているものがあり、また、都度借換えを行う短期借入金があるためです。
しかしながら、金利変動が借入コストに与える影響は、金利変動の影響を受ける資産からの収益により相殺されます。また、当社は、金利変動リスクをミニマイズするために資産・負債の金利を調整・マッチングさせるよう、金利スワップ等のデリバティブ取引を利用しております。
為替変動リスク
当社は、グローバルなビジネス活動を行っており、各拠点の外貨建による売買取引、ファイナンス及び投資によって、為替変動リスクに晒されている場合があります。これらのうち、永続性の高い投資等を除いた取引については、為替変動リスクを軽減するために、各拠点において外貨借入・外貨預金等に加えて、第三者との間で、為替予約取引・通貨スワップ取引・通貨オプション取引等のデリバティブ取引を必要に応じ行っております。
商品市況変動リスク
当社は、貴金属、非鉄金属、燃料、及び農産物等の現物取引、並びに鉱物、石油、及びガス開発プロジェクトへの投資を行っており、関連する商品価格の変動リスクに晒されております。当社は、商品の売り繋ぎや売り買い数量・時期等のマッチング、デリバティブ等の活用によって、商品価格の変動によるリスクを減少させるよう努めております。また、予め決められたポジション限度・損失限度枠内で、トレーディング目的のデリバティブ取引も限定的に実施しております。
株価変動リスク
当社は、戦略的な目的で金融機関や顧客・サプライヤーが発行する株式等への投資を行っておりますが、これらの株式投資には株価変動リスクが伴います。これらの株式投資に関しては、継続的なヘッジ手段を講じておりません。当社が保有する市場性のある株式の当期末における公正価値は、1,968億円であります。
リスク管理体制
デリバティブや市場リスクを伴う取引を行う営業グループは、取引規模に応じてマネジメントの承認を事前に取得しなければなりません。マネジメントは、場合によってはデリバティブについて専門的知識を有するスタッフのサポートを得て、案件の要否を判断し、当該申請における、取引の目的、利用市場、取引相手先、与信限度、取引限度、損失限度を明確にします。
財務・経理・リスクマネジメントグループ長が管掌する部署は、取引の実施・モニタリングに際して、以下の機能を提供しております。
・金融商品及び市況商品のデリバティブに関する口座開設、取引確認、代金決済と引渡し、帳簿記録の保管等のバックオフィス業務
・ポジション残高の照合
・ポジションのモニタリングと全社ベースでの関連取引のリスク分析・計測、シニアマネジメントへの定期的な報告
当社の子会社が市況商品取引を行う際には、上記のリスク管理体制に沿うことを要求しております。
特記事項はありません。
特記事項はありません。