第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)経営の基本方針

 当社グループは、「水産物をコアとし、お客様に価値ある商品とサービスを提供することにより、食文化の発展に貢献します。」を経営理念としております。

 また、生産者から消費者までの水産物流通のトータルシステムである「新しい水産物流通サービス業を創造し、お客様に安全・安心と満足を提供することにより、社会に貢献することを通じて企業価値の最大化を図る。」ことをグループ経営の基本方針としております。

(2)経営環境

 所得情勢には実質賃金の改善に足踏みがみられるものの、個人消費、設備投資、生産活動、雇用情勢には総じて持ち直しの動きがみられ、緩やかに回復しております。

 消費者心理は、消費者物価の上昇に賃金の伸びが追いつかず、生活防衛意識を反映し、節約志向が継続しております。

 水産物流通業界におきましては、需要動向については、外食・宿泊・インバウンド関連需要は回復しているものの、内食関連需要は物価高騰も反映し総じて伸び悩んでおります。

 また、景気は、一部に足踏みが残るものの、緩やかに回復していくものと見込まれますが、米国の通商政策等による不透明感も存在します。

 水産物流通業界におきましては、需要動向については、内食関連需要は節約志向の継続により総じて伸び悩むものと予測されるものの、外食・宿泊・インバウンド関連需要は好調に推移するものと期待されます。

(3)経営戦略及び優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 当社グループは、2024年度から2026年度まで(3カ年)を対象とした『OUGグループ中期経営計画2024』(以下「中計」という。)(2024年5月10日公表)を策定し、中計達成に向け下記のテーマにグループ一体となって取り組んでおります。

 Ⅰ.事業系では、1.「鮮魚事業の強化」、2.「商品力の強化」、3.「関東マーケットの深耕・拡大」、4.「海外事業の拡大」、5.「サステナブルな事業活動」のテーマについて、バリューチェーンの最適化を意識したグループ役職員の個々の行動変容を通じ取り組んでおります。

 Ⅱ.非事業系(経営基盤の整備・強化)では、1.「事業ポートフォリオの見直し等の財務関連」、2.「人的資本充実等の人事関連」、3.「基幹業務システム導入等のシステム関連」、4.「IRの体制整備・充実」、5.「品質保証活動の充実・高度化」、6.「サステナビリティの推進」、7.「共通機能の高度化」のテーマについて取り組んでおります。

 また、このような企業活動を通じ、「資本コストや株価を意識した経営の実現」に向けて取り組むとともに、お客様に価値ある商品とサービスを提供することにより食文化の発展に貢献し、企業価値を最大化してまいります。

(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 中計における当社グループの経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標は、事業規模の拡大及び利益率の向上を目的として、売上高、営業利益、経常利益を重要な経営指標と位置づけ、また、資本効率の向上と財務体質の強化を目的として、自己資本利益率(ROE)、投下資本利益率(ROIC)を重要な経営指標と位置づけております。

 中計の最終年度である2026年度の目標値は、売上高341,000百万円、営業利益4,300百万円、経常利益4,300百万円、自己資本利益率(ROE)8.0%維持、投下資本利益率(ROIC)5.0%であります。

(5)その他、会社の経営上重要な事項

 特記すべき事項はありません。

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)基本方針

 当社グループは、グループの経営理念「水産物をコアとし、お客様に価値ある商品とサービスを提供することにより、食文化の発展に貢献します。」を実現するために、適正な企業統治の下、水産物の源泉となる海の環境と資源を守り、社会性も踏まえ持続可能な水産物の流通に寄与していくことが社会的使命・責任であると認識しております。

 当社グループは、この使命・責任を経営活動(本業)及び社会貢献活動を通じ果たしていくことにより、持続可能な社会の実現及びグループの持続的な成長並びに企業価値の向上を図ってまいります。

(2)「ガバナンス」、「戦略」、「リスク管理」、「指標及び目標」に関する考え方及び取組

①ガバナンス

 当社は気候変動をはじめとするサステナビリティの対応を経営上の重要課題と認識し、サステナビリティ委員会を中心とするガバナンス体制を構築するとともに、取締役会による監督を行っております。

≪取締役会による監督体制≫

 取締役会は、当社グループのサステナビリティに関する重要課題(以下、「マテリアリティ」という。)について、サステナビリティ委員会より取組状況等の報告を受け、モニタリングを行ってまいります。

≪経営者の役割≫

 代表取締役社長はサステナビリティ委員会の委員長として、サステナビリティに関するリスクと機会が事業に与える影響について評価し、対応策の立案等を行い、その達成状況の管理を統括いたします。

≪サステナビリティ委員会≫

 サステナビリティ委員会は、代表取締役社長を委員長とし、委員は取締役(社外取締役を含む)および執行役員で構成されており、当社グループのサステナビリティ全般の取り組みを推進しております。

②戦略

 当社グループは、企業価値の向上と社会課題の解決のために取り組むべきマテリアリティを4つのステップを経て特定しております。

・STEP1:国際的なサステナビリティフレームワークをもとに、社会課題を抽出します。

・STEP2:抽出した課題を「当社グループにとっての重要度」と「ステークホルダーにとっての重要度」の2つの視点から評価します。特にステークホルダーにとっての重要度については、主要なステークホルダーへのアンケート調査を通じて、当社グループに対する意見や期待をフィードバックとして受け取ります。

・STEP3:STEP2で評価した課題を、リスクと機会の観点からさらに検討し、取り組むべき優先度を決定します。

・STEP4:サステナビリティ委員会においてマテリアリティを特定し、取締役会で最終決定を行います。決定したマテリアリティは定期的に再評価し、必要に応じて見直しを行います。

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 マテリアリティの特定にあたり、現時点で当社グループが想定するインパクト(リスク・機会)は下表のとおりであります。今後さらにリスク・機会およびその対応策の検討を深め、グループ全体で、サステナビリティ活動を推進してまいります。

マテリアリティ

マテリアリティの特定理由

現時点の当社グループが想定するインパクト

●リスク

〇機会

気候変動による地球環境への対応

・気候変動による海洋生態系への大きな影響

・漁業資源への悪影響

・持続可能な漁業による水産物の安定供給

・環境保護への取組み

・環境に配慮した商品を求める消費者への対応

(物理的リスク)

海洋環境の変化や異常気象による自然災害によって引き起されるリスク

●水産資源の減少による供給能力の低下

●自然災害の増加によるサプライチェーンへの影響

(移行リスク)

低炭素・脱炭素社会への移行にともなう規制に起因するリスク

●規制強化に対する対応コストの増加

●漁獲規制の強化による買付量の減少

●気候変動対策の遅れによる環境意識の高い取引企業との信頼関係の損失

〇持続可能な海面養殖の探究と実現

〇新技術による生産方法への挑戦

〇持続可能な商品やサービスの提供と新しい市場の開拓

〇再生可能エネルギーの導入による長期的なコスト削減

環境負荷低減による持続可能な調達

・環境負荷低減による持続可能な漁業支援

・トレース可能なサプライヤーからの調達

・環境に配慮した漁業や養殖業を証明する認証水産物の調達

●海洋プラスチックによる漁業への悪影響

●環境負荷を減らす技術やプロセスの導入による初期投資や運用コストの増加

●持続可能な資源を調達するためのサプライチェーンの見直しによる影響

〇環境負荷を低減する商品やサービスの提供による新しい市場への参入

〇認証水産物の調達や環境ラベルの包装資材の使用による需要の獲得

食品ロス・廃棄物の削減

・食品ロスや廃棄物の削減による廃棄物処理に必要なエネルギーや水などの資源の節約

・食品ロスや廃棄物の削減による温室効果ガスの削減

・プラスチックごみ削減による海洋生態系の保護

●食品ロスや廃棄物を減らすための設備や技術導入によるコスト増加

●食品ロス削減を目指した効率的な物流や在庫管理の再構築

〇食品ロスの削減による無駄なコストの削減

〇食品ロス削減の取り組みによる環境意識の高い取引先企業の支持

〇食品廃棄物の再利用による新たなビジネスチャンスの可能性

安全・安心な食品の提供

・安全で安心な食品の提供による消費者の健康保護

・安全で安心な食品の提供による企業価値向上

・社会やステークホルダーとの信頼構築

●食品のクレーム・トラブルによるお客様からの信頼低下・失墜

●食品の安全性に関する法規制の厳格化によるリコールなどの法的対応の必要性

●品質管理や安全基準を満たすための設備導入や従業員教育によるコストの増加

●安全性向上のためのサプライチェーン管理の複雑化

〇安全で安心な食品の提供によるブランド価値の向上

〇ステークホルダーへの適切な情報公開による信頼獲得

〇健康志向の高い消費者や規制の厳しい市場での競争力の強化

〇国際的な食品安全基準の満足による輸出機会の増加

多様な人材の活躍と社内環境の調整

・多様なバックグラウンドを持つ人材による新しい視点やアイデアの創出

・企業のイノベーション促進および競争力の向上

・多様な人材が活躍できる環境整備による優秀な人材の引きつけと長期的な確保

●人材の受け入れや教育による追加コストの発生

●多様な人材の受け入れのための企業ポリシーや制度の見直しの必要性

〇多様なバックグラウンドと視点を持つ人材による革新的な発想の創出と企業競争力の向上

〇多様な人材が活躍できる職場環境の整備による優秀な人材の引きつけ効果の期待

人権問題への対応

・労働者の人権保護のための国際的な規制や基準の厳格化

・サプライチェーン全体での人権に配慮した取り組みの必要性

・従業員のモラルやエンゲージメント向上のための人権に配慮した職場環境の整備

●サプライチェーン全体の監査など人権保護への取り組みにともなうコスト

●人権問題への対応が不十分な場合の法的罰則や社会的制裁のリスク

●企業イメージへの悪影響

〇人権問題への取り組みによる取引先企業や投資家からの信頼獲得

〇人権に配慮した活動の推進による法的リスクの回避とコンプライアンスの確保

〇国際的な人権基準の満足によるグローバル市場での評価向上と輸出機会の増加

 

 

 当社グループは、経営理念に基づき、役職員が社会の責任ある一員として行動するための指針として「グループ行動規範」を定めております。また、多様性ある人材を育成する仕組みや、働きやすい社内環境の整備を進めるために、「人材育成方針」および「社内環境整備方針」を次のように定めております。

≪人材育成方針≫

 当社グループは、環境変化が激しい複雑系の社会にあって異なる視点、価値観、経験、資質等を備えた多様な人材を確保し、当該人材が活躍することは、事業を成功裏に推進していくうえで重要な要素であると認識しております。したがって、多様性を有する人材がその能力を十分に発揮できるよう育成していくことを方針としております。

 具体的な取り組みとして、事業遂行に必要とされる専門知識・ノウハウについて、個々のパフォーマンスを向上させるため、OJTおよび階層別研修等のOff-JTを実施しております。

 また、自己啓発や資格取得などの学習機会の提供も行っており、キャリア形成と能力開発を支援しております。さらに、法令や社内規程の遵守および当社グループが定める行動規範の浸透を図るためのコンプライアンス研修を実施しております。

≪社内環境整備方針≫

 当社グループは、仕事と子育て・介護との両立の支援、ハラスメント行為の防止を図るための研修の実施および内部通報窓口の設置、異動に関する申告制度を設けるなど、安心して働くことができる職場の環境整備を図っております。

 また、生活習慣病予防健診や人間ドック、保健指導等により社員の健康づくりを推進しております。

③リスク管理

 サステナビリティに関するリスクは、サステナビリティ委員会において識別・評価し、取締役会に報告してまいります。

≪サステナビリティに関するリスクを識別・評価・管理するプロセス≫

 サステナビリティ委員会は、当社グループにおけるリスクと機会の特定を行い、リスクを識別し、識別されたリスクについては、潜在的な影響の大きさを評価し、最小化に向けた方針やその対応策を当社の関係部署およびグループ会社に指示してまいります。

 また、識別・評価したリスクの対応策の進捗については、取締役会に報告してまいります。取締役会は、サステナビリティ委員会から報告を受け、監督を行ってまいります。

④指標及び目標

 気候変動による地球環境の変化に対応するため、温室効果ガス排出量の削減に関する国際的な合意が強化され、社会からの要請も高まっております。当社グループは、事業を通じてその社会的責任を果たすとともに、気候変動にともなうリスクと機会を分析するため、2025年度から以下の取り組みを開始してまいります。

・Scope1(自社による温室効果ガスの直接排出)の算定

・Scope2(他社から供給された電気や熱・蒸気使用にともなう間接排出)の算定

 また、日本政府が掲げる温室効果ガス排出量の削減目標に基づき、2030年度を見据えた目標の設定を検討してまいります。

 当社グループでは、前記「②戦略」において記載した、人材育成方針および社内環境整備方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標および実績は、次のとおりであります。

人材育成方針及び社内環境整備方針に関する指標、目標及び実績

指標

目標(当連結会計年度)

実績(当連結会計年度)

コンプライアンス研修(管理職)の受講率(注)1

100

100

グループ取締役・監査役・執行役員研修の受講率(注)2

100

100

グループ部長職研修の受講率(注)3

100

100

(注)1.当連結会計年度におけるコンプライアンス研修(管理職)の受講率については、当社の連結子会社の管理職を対象に実施したものであります。

2.当連結会計年度におけるグループ取締役・監査役・執行役員研修の受講率については、当社の連結子会社の取締役、監査役及び執行役員を対象に実施したものであります。

3.当連結会計年度におけるグループ部長職研修の受講率については、当社の連結子会社の部長職を対象に実施したものであります。

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 ただし、当社グループに関するすべてのリスクを網羅したものではなく、記載いたしましたリスク以外のリスクも存在し、その要因のいずれによっても、投資家の判断に影響を及ぼす可能性があります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)需給動向及び市況に関するリスク

 当社グループは、水産物等の卸売事業を主たる事業とし、当該事業に関連する事業としてブリ、マグロ等の養殖事業、水産物の加工事業等を行っております。

 水産物は、その性質上、天然資源であり、漁獲量や養殖生産量等の供給量と需要量のバランスにより市況が形成される傾向にあることから、需給バランスの変動による取引価格等の変動を可能な限り見極めるため、漁獲量、養殖生産量の動向等の生産者情報や選好指向、購買行動等の消費者情報、及び市況情報等を精緻に収集・分析し営業活動を行っております。

 しかしながら、将来において、海洋環境の変化等による漁獲量、養殖生産量等の急激な変化により需給バランスが崩れ、市況が大幅に変化する場合は、消費動向の急激な変化により販売計画に齟齬が生じる可能性があり、特に多大な売上高の減少、利益率の低下等があった時は、経営成績等が悪影響を受けるリスクがあります。

(2)食品の安全性に関するリスク

 当社グループでは、「お客様に安全・安心、満足をお届けする」旨を経営ビジョンの一つとして位置付けております。この考えのもと、取扱商品・製品の安全性や品質等を確保するため、品質管理部門を設置するなどして品質管理体制を構築するとともに加工部門、委託加工先においては一層の衛生管理水準の向上や異物混入の排除等に努めております。

 しかしながら、将来において、当社グループの経験値に基づく想定を超える事象が発生した場合は、販売・製造活動の停止、商品・製品の回収・廃棄、信用力の低下等により、グループ全体の業務遂行に支障が生じる可能性があり、多大な売上高の減少、商品・製品の回収・廃棄費用、損害賠償費用等の計上により、経営成績等が悪影響を受けるリスクがあります。

(3)自然災害に関するリスク

 当社グループは、全国に営業拠点を配置し営業活動を行っております。

 このため、南海トラフ等の地震、台風、大雨などの自然災害の発生に備え、事業を継続的に行えるよう、営業拠点候補地の選定にあたっては災害等の顕在化する可能性等を勘案して行うとともに、建物の建設にあたっても災害等に対する構造・強度、耐震性、耐火性等も勘案して行うよう努めております。また、災害発生時には速やかな復旧に努めることはもとより、その後の災害も見通した対策を講じてきております。

 しかしながら、将来において、当社グループの経験値に基づく想定を超える大規模な自然災害が発生した場合あるいは複合的な事象が重なった場合は、人的・物理的な被害や停電等により業務遂行に支障が生じる可能性があり、多大な売上高の減少、施設等改修費用、商品・製品在庫の廃棄損等の計上により経営成績等が悪影響を受けるリスクがあります。

(4)感染症の流行に関するリスク

 当社グループは、水産物を国内外から調達して、必要に応じて国内で加工等を施し、国内外の顧客に販売することなどを主たる営業活動の形態としております。

 主たる販売先は、卸売市場仲卸業者、加工業者、量販店、外食業者、宿泊業者等であります。

 感染症の流行に備え、役職員への感染防止の徹底、調達・販売ルートの分散化等に注力しております。

 しかしながら、将来において、重篤な症状に至る感染症のパンデミックが起きた場合は、感染による役職員の就業禁止、外出自粛や入国規制に伴う販売先の休業、輸送停止に伴う海外取引の停止等により業務遂行に支障が生じる可能性があり、多大な売上高の減少等により、経営成績等が悪影響を受けるリスクがあります。

(5)養殖事業に関するリスク

 当社グループは、九州・四国において、ブリ、マグロ等の養殖事業を行っております。

 このため、台風、津波、赤潮、魚病等の発生による養殖魚の海洋流出、斃死等に備え、養殖漁場を6カ所に分散するとともに、自然災害の影響縮小化に対応した養殖施設の設置、海洋環境の保全に対応した投餌方法の採用、養殖密度の低減、養殖魚生育管理の充実等に注力した事業運営を行っております。

 しかしながら、将来において、大規模な自然災害、予防困難な魚病等が発生した場合は、大量の養殖魚の海洋流出、斃死等により業務遂行に支障が生じる可能性があり、多大な売上高の減少、在庫の評価損・廃棄損等の計上により経営成績等が悪影響を受けるリスクがあります。

 

(6)情報システムに関するリスク

 当社グループは、主要連結子会社においては全国に営業拠点を配置し、コンピュータセンターで集中処理を行う全国的なネットワークシステムを構築しております。

 このため、自然災害によるデータの紛失・損壊、コンピュータウイルスの侵入によるシステム障害、不正アクセスによる情報流出等に備え、インフラの冗長化、データのバックアップ、データセンターの利用、セキュリティーの強化等の対策を講じております。

 しかしながら、将来において、大規模な自然災害、未知のコンピュータウイルスの侵入・不正アクセス等が発生した場合は、情報システムの停止、信用力の低下等により、グループの業務遂行の継続に支障が生じる可能性があり、多大な売上高の減少、復旧費用の計上等により経営成績等が悪影響を受けるリスクがあります。

(7)金利情勢に関するリスク

 当社グループは、仕入・販売活動及び設備投資等に要する資金の一部を金融機関から借入により調達しております。2025年3月末日における借入金残高は連結ベース24,521百万円であります。

 このため、金利の上昇に備え、借入金の絶対量の縮減に努めるとともに、資金使途に対応した適切な資金調達方法を都度、選択しております。

 しかしながら、将来において、経済情勢の急激な変化等により金利が大幅に上昇した場合は、仕入・販売活動及び設備投資等の縮小・延期等により業務遂行に支障が生じる可能性があり、多大な売上高の減少、支払利息の計上等により経営成績等が悪影響を受けるリスクがあります。

(8)為替レートの変動に関するリスク

 当社グループが行う事業の取引形態においては、海外から直接調達する輸入水産物や海外へ直接販売する輸出水産物の取扱いが一定量含まれております。

 このため、為替レートの変動による一定の為替差損の要素をヘッジするため、基本的に、取引ごとに為替予約を行っております。

 しかしながら、将来において、急激な為替レートの変動が発生した場合は、調達価額や販売価額が大幅に高騰すること等により業務遂行に支障が生じる可能性があり、多大な売上高の減少等により経営成績等が悪影響を受けるリスクがあります。

(9)退職給付制度に関するリスク

 当社グループの一部の連結子会社においては、退職給付制度として確定給付企業年金制度を採用しております。

 このため、確定給付企業年金制度における国内外の株式・債券市場等の低迷による年金資産の時価下方変動に備え、当該制度と年金資産の時価下方変動を考慮する必要のない退職一時金制度とを併用して運用しております。また、確定給付企業年金制度の運用にあたっては、専門性と運用得意分野が異なる複数の運用機関に委託し、運用効率の向上及び運用リスクの分散に努めております。

 しかしながら、将来において、大幅な年金資産の時価下方変動や退職給付債務の算定に用いる割引率及び年金資産の期待運用収益率等の前提条件と実際の運用結果に大幅な乖離が生じる可能性があり、実際の退職給付費用が見積額に比して大幅に増加することにより、経営成績等が悪影響を受けるリスクがあります。

(10)不正に関するリスク

 当社グループは、全国に営業拠点を配置し営業活動を行っており、業務遂行に係る直接的な管理業務は拠点ごとに分散化せざるを得ない状況にあります。

 このような状況下において、当社は、内部統制を整備するとともに、役職員の不正・不法行為を未然に防止するため、「グループ行動規範」を制定し、コンプライアンス研修・意識調査を実施するとともに、連結子会社からはコンプライアンスに関する計画及び実施状況について報告を求め、内部通報窓口を設置するなどコンプライアンスの遵守の徹底に努めております。

 しかしながら、将来において、役職員が重大な不正・不法行為を行い、当社グループの複数の内部統制がことごとく看過した場合は、信用力の低下に加えて当該事案に係る調査による事業の制約等によりグループ全体の業務遂行に支障が生じる可能性があり、多大な売上高の減少、不正・不法行為に係る損失等の計上により、経営成績等が悪影響を受けるリスクがあります。

(11)法規制等に関するリスク

 当社グループは、国内外で事業を遂行していくうえで、卸売市場法、漁業法、食品衛生法等の様々の法規制の適用を受けております。

 このため、当社グループは、品質管理部門を設置し、食品関係法令に対応するとともに、企画、総務、人事、経理部門等が各々関係する法令の改正動向に対応しております。

 また、「グループ行動規範」を制定し、コンプライアンス研修・意識調査を実施するとともに、連結子会社からはコンプライアンスに関する計画及び実施状況について報告を求め、内部通報窓口を設置するなど、コンプライアンスの遵守の徹底に努めております。

 しかしながら、将来において、これらの法令への対応、職場での徹底が不充分なこと等により法令に違反する事案が発生した場合、事業活動の停止等の制約によりグループ全体の業務遂行に支障が生じる可能性があり、多大な売上高の減少、不法行為等に係る損失等の計上等により経営成績等が悪影響を受けるリスクがあります。

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。

①経営成績の状況

 当連結会計年度におけるわが国経済は、所得情勢には実質賃金の改善に足踏みがみられるものの、個人消費、設備投資、生産活動、雇用情勢には総じて持ち直しの動きがみられ、緩やかに回復しております。

 消費者心理は、消費者物価の上昇に賃金の伸びが追いつかず、生活防衛意識を反映し、節約志向が継続しております。

 水産物流通業界におきましては、需要動向については、外食・宿泊・インバウンド関連需要は回復しているものの、内食関連需要は物価高騰も反映し総じて伸び悩んでおります。

 このような環境にあって、当社グループは、販売力・調達力の強化、顧客起点志向の追求、地域に対応したソリューションの提供、業務の効率化、諸経費の削減などに注力し事業活動を展開しております。

 また、中計に従い、継続してバリューチェーンの最適化を意識したグループ役職員の個々の行動変容を通じ、1.「鮮魚事業の強化」、2.「商品力の強化」、3.「関東マーケットの深耕・拡大」、4.「海外事業の拡大」、5.「サステナブルな事業活動」の事業テーマにグループ一体となって取り組んでまいりました。

 この結果、当連結会計年度の経営成績は、売上高は350,092百万円(前年同期比105.1%)となりました。損益面では、売上総利益は31,346百万円(前年同期比111.1%)となり、営業利益5,100百万円(前年同期比163.4%)、経常利益5,891百万円(前年同期比150.6%)、親会社株主に帰属する当期純利益4,527百万円(前年同期比125.1%)となりました。

 セグメントごとの経営成績は次のとおりです。

<水産物荷受事業>

 中央卸売市場を核とする集荷販売機能をもつ水産物荷受事業は、物流費を中心に販管費は増加しましたが、販売単価の上昇及び販売数量の増加による増収と売上総利益率の上昇により、売上高213,419百万円(前年同期比105.8%)、セグメント利益3,585百万円(前年同期比178.4%)となりました。

<市場外水産物卸売事業>

 全国各地を網羅する販売拠点を活かした幅広い流通網をもつ市場外水産物卸売事業は、外食・宿泊・インバウンド関連需要が好調に推移する中、物流費を中心に販管費は増加しましたが、商品調達コストの上昇を販売価格に転嫁したことにより売上総利益率は上昇し、売上高135,992百万円(前年同期比103.5%)、セグメント利益1,922百万円(前年同期比133.7%)となりました。

<養殖事業>

 九州、四国にて、ブリ、マグロの養殖を展開する養殖事業は、販売面では、販売単価の上昇、販売数量の大幅な増加により増収となりました。利益面では、餌料の高騰、酷暑による生育遅れ等により生産原価は上昇しました。この結果、売上高10,991百万円(前年同期比119.8%)、セグメント損失451百万円(前年同期はセグメント損失453百万円)となりました。

<食品加工事業>

 消費地にある食品加工センターでの水産加工、量販店向けの米飯加工、カット野菜加工、飲食事業者向けの加工・調理サービスなどを行う食品加工事業は、販売面では、連結子会社1社の解散により減収となりました。利益面では、原材料の高騰等により生産原価は上昇しました。この結果、売上高3,943百万円(前年同期比90.3%)、セグメント損失73百万円(前年同期はセグメント損失91百万円)となりました。

<物流事業>

 物流センターにおいて、搬入された水産物等を量販店等の配送先別に仕分け・配送を行う物流事業は、運送原価の上昇がありましたが、運送売上、センターフィ、ギフト作業売上がともに伸長し、売上高1,891百万円(前年同期比108.4%)、セグメント利益18百万円(前年同期比232.8%)となりました。

<その他>

 グループの水産物流通を補完するリース事業等その他は、売上高4,396百万円(前年同期比89.5%)、セグメント利益14百万円(前年同期比18.1%)となりました。

 

②財政状態の状況

 当連結会計年度末における総資産は、前連結会計年度末と比べて880百万円減少し、90,270百万円となりました。主な要因は、売上債権の減少2,050百万円、棚卸資産の増加683百万円によるものであります。

 負債は、前連結会計年度末と比べて5,442百万円減少し、54,714百万円となりました。主な要因は、支払手形及び買掛金の減少3,757百万円です。

 純資産は、前連結会計年度末と比べて4,561百万円増加し、35,555百万円(自己資本比率39.4%)となりました。主な要因は、利益剰余金の増加4,132百万円によるものです。

セグメントごとの資産は次のとおりです。

水産物荷受事業の資産は、棚卸資産は増加したものの、売掛金の減少により、前連結会計年度末に比べ772百万円減少の39,371百万円となりました。

市場外水産物卸売事業の資産は、売掛金は減少したものの、棚卸資産の増加、土地の増加により、前連結会計年度末に比べ16百万円増加の34,663百万円となりました。

養殖事業の資産は、現金及び預金は増加したものの、売掛金の減少、棚卸資産の減少により、前連結会計年度末に比べ768百万円減少の7,607百万円となりました。

食品加工事業の資産は、売掛金の減少、連結子会社1社の解散により、前連結会計年度末に比べ756百万円減少の1,632百万円となりました。

物流事業の資産は、現金及び預金の増加により、前連結会計年度末に比べ17百万円増加の296百万円となりました。

その他事業の資産は、連結子会社1社の解散による資産の減少、リース投資資産の減少により、前連結会計年度末に比べ213百万円減少の1,699百万円となりました。

③キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末と比べて361百万円増加し、2,787百万円となりました。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は次のとおりです。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動によるキャッシュ・フローは2,716百万円の収入(前年同期は2,007百万円の収入)となりました。仕入債務の減少3,771百万円(前年同期は4,536百万円の増加)による支出がありましたが、税金等調整前当期純利益6,563百万円(前年同期は3,748百万円)の計上、売上債権の減少2,154百万円(前年同期は4,615百万円の増加)が主な資金の増加要因となりました。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動によるキャッシュ・フローは417百万円の支出(前年同期は1,204百万円の支出)となりました。有形固定資産の売却による収入1,448百万円(前年同期は17百万円の収入)がありましたが、有形固定資産の取得による支出1,694百万円(前年同期は613百万円の支出)が主な資金の減少要因となりました。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動によるキャッシュ・フローは1,938百万円の支出(前年同期は1,113百万円の支出)となりました。借入金の減少による純支出1,532百万円(前年同期は735百万円の純支出)が主な資金の減少要因となりました。

 

 

④生産、受注及び販売の実績

a.生産・仕入実績

当連結会計年度における生産・仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

水産物荷受事業

市場外水産物卸売事業

養殖事業

食品加工事業

物流事業

その他

194,876

109,547

8,508

2,984

2,242

104.8

105.4

87.2

102.6

98.8

合計

318,159

104.4

(注)セグメント間の取引については相殺消去しております。

 

b.受注実績

当社グループは受注生産を行っておりません。

 

c.販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

水産物荷受事業

市場外水産物卸売事業

養殖事業

食品加工事業

物流事業

その他

204,073

133,496

6,348

2,405

614

3,153

106.5

103.5

113.7

88.4

107.3

85.6

合計

350,092

105.1

(注)セグメント間の取引については相殺消去しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。

①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。

②経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

(売上高)

 売上高は、販売単価の上昇、販売数量の増加により前連結会計年度に比べ16,894百万円増収の350,092百万円となりました。

 セグメント別の主な増減内訳は、水産物荷受事業で11,695百万円増収の213,419百万円、市場外水産物卸売事業で4,610百万円増収の135,992百万円、養殖事業で1,816百万円増収の10,991百万円となりました。

(売上総利益)

 売上総利益は、売上高の増加及び売上総利益率の上昇により前連結会計年度に比べ3,131百万円増益の31,346百万円となりました。

 セグメント別の主な増減内訳は、水産物荷受事業で1,919百万円増益の13,591百万円、市場外水産物卸売事業で906百万円増益の16,480百万円、養殖事業で150百万円増益の702百万円となりました。

(販売費及び一般管理費)

 販売費及び一般管理費は、主に運賃・保管料等直接経費の増加により、前連結会計年度に比べ1,153百万円増加の26,245百万円となりました。

 セグメント別の主な増減内訳は、水産物荷受事業で343百万円増加の10,005百万円、市場外水産物卸売事業で421百万円増加の14,557百万円、養殖事業で148百万円増加の1,154百万円となりました。

 

 

(営業利益)

 営業利益は、販売費及び一般管理費は増加したものの売上総利益の増加により前連結会計年度に比べ1,978百万円増益の5,100百万円となりました。

 セグメント別の主な増減内訳は、水産物荷受事業で1,575百万円増益の3,585百万円、市場外水産物卸売事業で484百万円増益の1,922百万円、養殖事業で1百万円増益の△451百万円となりました。

(経常利益)

 営業外損益は、前連結会計年度から0百万円増加(純額)の790百万円の収益(純額)となりました。

 主な増減内容は、受取配当金の増加23百万円、養殖事業における養殖用配合飼料の価格の高騰などによる補助金収入の増加12百万円、支払利息の増加62百万円によるものです。

この結果、経常利益は前連結会計年度に比べ1,979百万円増益の5,891百万円となりました。

(税金等調整前当期純利益)

 特別損益は、前連結会計年度から835百万円増加(純額)の671百万円の収益(純額)となりました。

当連結会計年度に計上した主な内容は、特別利益として固定資産売却益696百万円、投資有価証券売却益265百万円があり、特別損失として減損損失216百万円の計上がありました。

この結果、税金等調整前当期純利益は前連結会計年度に比べ2,814百万円増益の6,563百万円となりました。

(親会社株主に帰属する当期純利益)

 法人税等は、前連結会計年度から1,905百万円増加し2,036百万円となりました。

主な増加内容は、前連結会計年度に債務超過の連結子会社2社の解散・清算及び過年度に減損した不動産の売却の意思決定を行ったことにより繰延税金資産を1,200百万円計上し、当連結会計年度に実現したことにより当該繰延税金資産を取崩したことによるものです。

この結果、親会社株主に帰属する当期純利益は908百万円増益の4,527百万円となりました。

③財政状態の状況に関する認識及び分析・検討内容

 財政状態の状況の分析・検討内容につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②財政状態の状況」に記載のとおりです。

④キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。

 当社グループの運転資金需要の主なものは、商品・原材料仕入費用、販売費及び一般管理費等の営業費用です。グループ内でキャッシュマネージメントシステムを活用するなど運転資金の効率的な管理により、事業活動における資金効率の向上を目指しています。また、投資を目的とした資金需要の主なものは、情報システムの高度化、営業拠点の確保です。

 運転資金及び設備投資資金につきましては、内部資金又は銀行借入により資金調達することとしております。このうち、銀行借入による資金調達につきましては、基本的に運転資金は短期借入、設備投資などの長期資金は固定金利の長期借入で調達しております。

 当連結会計年度末における借入金の残高は、前連結会計年度末と比べて1,532百万円減少し、24,521百万円となりました。

⑤経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当連結会計年度は中計の初年度にあたり、中計達成に向けグループ一体となって取り組んでおります。

 中計の当連結会計年度の経営目標は、売上高335,000百万円、営業利益3,700百万円、経常利益3,700百万円、自己資本利益率(ROE)8.0%維持、投下資本利益率(ROIC)5.0%です。

 当連結会計年度の実績は、売上高350,092百万円、営業利益5,100百万円、経常利益5,891百万円、自己資本利益率(ROE)13.6%、投下資本利益率(ROIC)6.4%となり、全ての経営目標を大幅に上回る実績となりました。

 

5【重要な契約等】

該当事項はありません。

6【研究開発活動】

該当事項はありません。