第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 経営の基本方針

当社グループの理念体系は、パーパス「次代の生活品質を高める 事業の創造者として 人びとの幸せを実現する」を最上位概念と定めるとともに、存在理念、経営理念、行動理念から構成されております。当社グループは「次代の生活品質を追求するビジネスプロデューサー」として、「株主」「取引先」「従業員」をはじめとするすべての当事者の信頼と期待に応え、その幸せを実現することを経営の基本方針としております。

 

(2) 経営戦略と対処すべき課題

・中期経営計画「GSI CONNECT 2024」総括

当社グループは、理念体系の最上位に位置するパーパスのもと、変化の著しい事業環境において、当社グループの更なる「進化と成長」を目指し、事業創造型商社としての「ありたい姿」の実現に向けた中期経営計画 “GSI CONNECT 2024” を推進し、当会計年度末はその最終年度にあたりました。

同計画を公表した2021年11月とは著しく事業環境が変化したものの、「ニッチな分野で新しい価値を提供し、サステナブルな社会に貢献する」というビジョンのもと、グループ一丸となり、最終目標である「過去最高純利益の更新」を達成いたしました。また、既存事業の深耕はもとより、国内外における拠点の拡充やそれらを活かしたグループ連携の強化による高付加価値事業の拡大、トリアセテート繊維事業の譲受をはじめとした事業投資、人的資本経営の加速的な推進に向けた人事コンサルとの提携やDX認定事業者としてのデジタル基盤構築に向けた人材・インフラ投資などに取り組んでまいりました。加えて、継続課題として認識しております不採算事業の収益性の改善や撤退の見極めとなる事業ポートフォリオ再編にも着手することができ、一定の成果を得ることができました。

 


 

 


 

 


 

 


 

 


 

中期経営計画 “GSI CONNECT Phase2”(2025-2027)の詳細につきましては、当社ウェブサイト“IR情報”内に掲載しております。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) サステナビリティに関する考え方

当社グループは、パーパス「次代の生活品質を高める 事業の創造者として 人びとの幸せを実現する」のもと、「社員とともに」「株主とともに」「取引先とともに」「市場とともに」「地球環境のために」「会社組織のために」という6つの経営理念を掲げ、すべてのステークホルダーとの共存を目指して事業活動を行っております。

また、社会や企業のサステナビリティを巡る課題解決を事業機会と捉え、ESG経営の推進に向けた取り組みを進めております。

加えて、当社は「環境マネジメントシステム・スタンダード ステップ2」に登録されており、持続可能な社会に向け地球環境の改善活動に取り組んでおります。

 

(2) 具体的な取り組み

① ガバナンス

当社グループは、気候変動をはじめとした地球規模の環境問題への配慮、人権の尊重、従業員を含む全てのステークホルダーへの公正・適正な事業活動など、社会や企業のサステナビリティを巡る課題解決を事業機会と捉え、これに向けた取り組みを推進するため「サステナビリティ委員会」を運営しており、気候変動対応については、2023年5月に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言 への賛同を表明しております。 

 

サステナビリティ委員会は、社長執行役員を委員長とし、事業部門および管理部門統括役員、経営企画部長、人事総務部長、財経部長、事業戦略室長を委員として構成されており、当委員会にて決定した内容については、管理部門統括役員より直接取締役会に報告されます。

 


 

 

② 戦略

当社グループは、パーパス「次代の生活品質を高める 事業の創造者として 人びとの幸せを実現する」のもと、事業創造型商社として新しい価値を創造し続けるとともに、ESG経営の推進により、社会課題の解決とその先にある人びとの幸せの実現に取り組んでおります。

そのような取り組みのなか、中期経営計画“GSI CONNECT 2024”で掲げたESG経営の推進に向けた3つの重点施策「サステナブル事業分野への積極的投資」「人材の充実と新しい働き方の推進」「実効性の高いガバナンス体制の強化」を踏まえて、当社グループに関係する課題を抽出し、「事業を通じた社会課題の解決」および「社会課題解決のための経営基盤強化」の2つの側面から分析を行い、当社グループのマテリアリティ(重要課題)を特定しております。

 


 

当社グループは、マテリアリティへの取り組みを推進することにより、中長期的なグループの成長と持続可能な国際社会の実現を目指します。

 

a) 気候変動

・参照シナリオ

気候変動のリスクと機会を明確にするために2つのシナリオを設定しました。「気候変動対策が進まず成行きのまま気温が上昇し、それによる物理的リスク・機会が発生するシナリオ」を4℃シナリオとして「急性」「慢性」について分析を行いました。

一方、「温暖化防止に向けて様々な活動が実施され、脱炭素社会への移行に伴うリスク・機会が発生するシナリオ」を2℃未満シナリオとして「政策・規制」「技術」「市場」「評判」について分析を行いました。

 

 

区分

シナリオの概要

分析対象としてリスクのタイプ

4℃シナリオ

気候変動対策が進まず成行きのまま気温が上昇し、それによる物理的リスク・機会が発生するシナリオ

物理的リスクの「急性」「慢性」

2℃未満シナリオ

温暖化防止に向けて様々な活動が実施され、脱炭素社会への移行に伴うリスク・機会が発生するシナリオ

移行リスクの「政策・規制」

「技術」「市場」「評判」

 

 

 

・シナリオ分析ステップ

シナリオ分析を行う上で、当社の事業部門(繊維および工業製品事業)ごとに具体的な検討を行い、以下のフローの通り主要なリスクおよび機会による財務インパクトの算定、対応策の検討を行いました。

 


 

・気候変動リスクと機会の種類の特定

事業のレジリエンス評価のため、複数シナリオのもとで重要な気候変動リスク・機会について特定を行いました。

 

・気候変動リスクに対する財務影響と対応策

特定された重要な気候変動リスク・機会についてシナリオ分析を行い、財務影響およびその対応策を考案しました。

 

 

リスク

シナリオ項目

事業における

インパクト

事業部門

時間軸

影響

レベル

当社における

対応策

繊維

工業
製品

炭素税導入・炭素税率の上昇

炭素税が導入され、負担コストが発生する可能性がある。

短~中期

Scope1,2の排出量を把握するとともに、削減目標を設定

地球温暖化に伴い、原材料が高騰する可能性がある。

短~中期

・リサイクル原料の活用、環境配慮型商材の拡大

・原材料調達手段の多様化

・サプライヤーに対する長期的なGHG削減目標の設定依頼

工場の電気料金高騰による調達価格の高騰が発生する可能性がある。

短期

プラスチック製品規制

環境関連情報の計測・表示が要件化され、それらに対応することにより価格競争力が下がる可能性がある。

短~中期

・リサイクル原料の活用、環境配慮型商材の拡大

・脱炭素ニーズに応えるラインナップの拡大(生分解性樹脂など)

製品・原材料に関する規制対策

環境関連情報の計測・表示が要件化され、それらに対応することにより価格競争力が下がる可能性がある。

短~中期

Scope1,2,3など気候変動関係の情報開示の推進

平均気温上昇、降水パターンの変動、海面上昇

水不足や電力供給制限、関連工場の施設・設備被害による輸送の遅延または停止にともない、間接的に調達が困難となり収益性を損なう可能性がある。

中~長期

・関連工場へのBCP策定要請/継続的な見直し

・サプライチェーンの強化

・有事に備えた事前対応強化(在庫水準見直し、複数購買や拠点化の検討等)

リサイクル率向上、未利用資源の価値化

未利用資源を効率よく使うことで廃棄物の減少が実現する循環型ビジネスモデルの構築により、需要拡大の可能性がある。

 

短~中期

工場や製造設備プロセスなどの再利用および供給サービスにおける情報収集や売買交渉のサポート業務の開始

気候変動や環境配慮に適用するサービス

環境に配慮した商材の需要が増加する可能性がある。

 

短~中期

従来の石油由来よりCO2を大幅に軽減するサトウキビを原料とする再生可能なポリエチレン素材の拡販

 

短~中期

プラスチックごみ問題の解決に寄与する生分解性樹脂の拡販

 

短~中期

次世代の再生エネルギーである有機太陽電池の開発と普及活動

季節変動による需要増

急激な気温の変化が購買意欲や需要を左右する可能性がある。

 

短~中期

・季節性商品の販売拡大

・機能性素材を活かした衣類の拡充

 

 

時間軸(目安)

長期

10~30年

中期

3~10年

短期

0~3年

 

影響レベル(目安)

事業戦略や財務への影響が非常に大きくなることが想定される。

事業戦略や財務への影響がやや大きくなることが想定される。

事業戦略や財務への影響が軽微であることが想定される。

 

 

 

b) 人材戦略

・当社グループでは、中期経営計画の重点施策として、「人材の充実」と「新しい働き方の推進」を掲げ、人的資本を核とした事業競争力の強化を目指しています。

 この度、人的資本経営を加速的に推進するため、新たに戦略人事専任執行役員を任命しました。

 

・戦略的人材開発

  人材育成のための教育制度の充実化、グローバルかつプロフェッショナルなリーダーの計画的育成、DX人材の育成と活用を進めています。

 これまで実施した具体的取組としては、社員が進化し成長するためのスローガン「Learn the Future(次代を学ぶ)」を掲げ、これまでの教育・研修制度を体系化したクレオスアカデミーを開講しています。

 また、DX人材の育成と活用を図るべく、全社員向けにデジタルリテラシー向上とイノベーション指向の意識改革を図る研修を実施するとともに、選抜者に対してDX実践プログラム研修を実施し、推進リーダーの計画的育成と適正配置を行っています。

 

・挑戦する組織風土の醸成

  人事制度・賃金制度の改革、多様な人材が活躍する仕組み・制度の充実化、グループ社員全員が活躍できる環境の整備を進めています。

 具体的取組としては、貢献に応じた給与体系や職群制度の再構築、女性管理職の登用推進と両立支援制度、在宅勤務制度、モバイルワーク勤務制度、フレックスタイム勤務制度を実施しています。

 また、グループ人事方針の統一を図り、グループ企業間でのジョブローテーションや教育・研修の共有化を図ってまいります。

 さらに、社員の幸福度を高めることが企業の成長には不可欠と考え、職場の幸福度や社員エンゲージメントを構築する基盤となる項目について指数を測定するハピネスサーベイを毎年実施しています。

 

・今後も、当社の経営理念の第一に掲げております、人的資本こそが企業価値を創造する源泉と捉え、プロフェッショナル人材の開発に投資をおしまず、社員一人ひとりが、発揮した能力と意欲に応じて喜びと誇りを享受しながら、企業価値の創造に参画できる経営を実行してまいります。

 


 

 

③ リスク管理
気候変動に関するリスク管理

・リスクの識別・評価プロセス

当社グループは、サステナビリティ委員会の運営を通じて、気候変動に伴う経営・財務・事業などへの影響を考慮のうえ現状のリスクの再評価を行うとともに、新規リスクの抽出・評価を行うことで、重要リスクの特定・見直しを行っております。また、重要リスクについては、リスク対策およびその対策実施のための管理項目・管理目標値を設定のうえ取締役会に報告し、管理・監督する体制を構築しております。 

 

・リスクの軽減プロセス

特定したリスクについて、そのリスクの軽減のためにサステナビリティ委員会で対応方針と施策(対応策)を検討・決定し、関係部署に展開のうえ、その対応状況をモニタリングしております。 

 

・全社リスク管理への統合

サステナビリティ委員会が取締役会に報告した気候変動に伴うリスクに対して、その中で特に重要と判断した項目については、全社リスクを検討するリスク管理部会と連携して対応策の検討・実施いたします。

 

④ 指標及び目標
a) 気候変動

当社グループは、2022年度よりScope1および,Scope2のGHG(温室効果ガス)の排出量(単体)の算出を開始し、2023年度からは対象範囲を連結子会社に拡大しております。

現在、サプライチェーン全体の排出量削減に向け、Scope3の算出および過去の算出結果を踏まえた削減策の検討を開始しております。また、当社グループの経営理念のひとつである「地球環境のために」のもと、2050年までにカーボンニュートラルの達成を目指します。

    (単位:tCO2e)

項目

2022年度※1

2023年度

2024年度

Scope1(直接排出)

15

122

108

Scope2(間接排出)

188

2,284

2,143

 

  (注)※1 2022年度は単体のみの集計となります。

      2 算出方法の変更に伴い、2023年度データを遡及して修正しています。

 

b) 人的資本・多様性

人材の多様性施策の一環として、管理職に占める女性を増やすべく、女性活躍推進法に基づく自主行動計画を実行しています。

 

管理職に占める女性の人数(単体)

2024年度実績

2025年度目標

6

10

 

 

 

3 【事業等のリスク】

当社グループは、素材から製品までの繊維事業及び機械、化成品、その他商品の工業製品事業を営んでおり、北米をはじめアジア、ヨーロッパなど広く海外との取引を行っております。

そのため、当社グループは、将来の経営成績、財政状態に影響を及ぼすと考えられる様々なリスクをかかえており、それらのリスクを十分認識しながら、事業運営に携わっております。

 

有価証券報告書に記載しました事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。経営者は、これらの事項を含めたすべての事象が経営活動におけるリスクと認識し、リスクの発生を未然に防ぐとともに、発生した場合の的確な対応に努めております。

なお、当該事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経済情勢変動によるリスク

当社グループは、上記のとおり、様々な国や地域で事業を展開しております。したがって、日本、北米、アジア、ヨーロッパなどを含む当社グループの主要な市場や調達先において、景気後退及び金融危機など経済情勢の急激な変動が生じ、需要が縮小あるいは当社グループの商品調達力が低下した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 為替レート変動によるリスク

当社グループは、様々な通貨で取引を行っております。外貨建金銭債権債務等に係る為替変動リスクを最小限に止めるため、為替予約を行っておりますが、為替レートに急激な変動が生じた場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 金利変動によるリスク

当社グループは、主として金融機関からの借入金によって事業資金を調達しております。営業資産の多くは借入金利の変動リスクを転嫁できるものですが、金利に急激な変動が生じた場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 株価変動によるリスク

当社グループは、取引先を中心に市場性のある株式を保有しております。これらの株式については、価格変動リスクがあり、今後の株価の動向によっては、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) 退職給付債務に関するリスク

当社グループの退職給付制度は、一部を除いて確定給付型制度を採用しております。退職給付債務は、退職給付債務の割引率や年金資産の長期期待運用収益率などの数理計算上の前提にもとづいて算出されておりますが、数理計算上の前提を変更する必要が生じた場合や株式市場の低迷などにより、年金資産が毀損した場合には、将来の当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6) 信用リスク

当社グループは、国内外で多様な取引を行っており、取引先に対して売上債権や保証等の形で信用供与を行っております。信用供与の実施に際しては、一定のルールに基づき、適切な信用限度額を設定するとともに、回収の状況を定期的に確認し必要な貸倒引当金を計上するなど、厳格かつ機敏な与信管理を行っておりますが、これら信用リスクを完全に回避できる保証はなく、特定取引先において不測の倒産などによる債務不履行が生じた場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(7) 消費者の嗜好変化及び気候不順によるリスク

当社グループは、流行や消費者の嗜好を追求する衣料品やファッション商品を取り扱っております。シーズン商品を主体に短サイクルでの営業展開を図るとともに、商品企画精度の向上や生産期間の短縮化に取り組んでおりますが、ファッショントレンドや消費者嗜好の短期的変化及び冷夏・暖冬などの気候不順により、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8) 品質に関するリスク

当社グループは、繊維から工業製品まで幅広い分野にわたる事業を営んでおります。衣料品に係る品質基準に加え、衣料品以外の商品についても適切な基準をもって対応しておりますが、今後自社又は仕入先などに原因が存する事由により、商品の製造物責任に係る事故が発生した場合には、企業・ブランドイメージの低下や多額の損害賠償の請求などにより、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(9) 事業投資リスク

当社グループは、業容拡大を目的として、国内外で事業投資を行っております。新規の事業投資を行う場合には、その意義・目的を明確にした上で、一定のルールに基づき、意思決定をしております。また、投資実行後も、事業投資先ごとのモニタリングを定期的に行い、投資価値の評価・見直しを実施しております。

しかしながら、これら事業投資については、期待収益が上がらないというリスクを完全に回避することは難しく、当該案件から撤退する場合や事業パートナーとの関係など個別の事由により、当社グループが意図したとおりの撤退ができない場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10) カントリ-リスク

当社グループは、広く海外でも事業展開を図っております。予測可能なリスクについては、過去のノウハウや知り得る情報をもとに細心の対応を行っておりますが、テロ又は戦争等による予期不能な政治・経済の混乱あるいは法律等の変更が起こった場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(11) 法規制に関するリスク

当社グループは、繊維関連と工業製品関連の様々な商品を取り扱っており、国内外の各種法令・規制の適用を受けております。そのため、コンプライアンス体制の強化により法規制の遵守に努めておりますが、これら法令・規制等に抵触し事業活動に制約・制限を受けた場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(12) 情報システム及び情報セキュリティに関するリスク

当社グループは、業務効率化や情報共有のため、情報システムを構築・運用しております。情報システム運営上の安全確保のため、情報セキュリティに関する管理規定を定め、サイバー攻撃を検知するシステムを導入するなど危機管理対応に取り組んでおりますが、当社グループの想定を超えるウイルス感染やサイバー攻撃等により企業機密・個人情報の漏洩が発生した場合や、自然災害・事故等により情報システムの不稼動が発生した場合には、業務効率性の低下を招くほか、被害の規模によっては、将来の当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(13) 自然災害等によるリスク

当社グループは、地震・風水害等の不測の自然災害や突発的な火災や事故、感染症の発生などにより、事務所・設備・システムや従業員などに被害が発生し、営業活動に影響を与える可能性を認識しております。これらの事態に備え、災害対策マニュアルの策定や、対策本部の設置など諸施策を講じておりますが、想定を超える被害が発生した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(14)気候変動等によるリスク

当社グループは、気候変動をはじめとする地球規模の環境の変化が、それに伴う政策や規制により、人々の経済活動のみならず企業の事業活動に影響を及ぼす可能性を認識しております。これらの事態に備え、サステナビリティ委員会を設置のうえ気候変動対策を含むサステナビリティ全般の取り組みを進めるとともに、2023年5月に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言への賛同を表明しており、前記「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」でその諸施策を示しておりますが、想定を超える事態が発生した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

(1) 経営成績等の状況の概要

① 財政状態及び経営成績の状況
a.経営成績

当連結会計年度におけるわが国経済は、原材料や資源価格の高止まりにより一部で停滞感が残るものの、雇用や所得環境の改善を背景に緩やかな回復基調が続きました。一方、世界経済に目を向けると、長期化する地政学的リスクや中国経済の低迷、さらには米国政権交代に伴う通商政策の変動の影響などにより、今後の事業環境は依然として見通しが立ちにくい状況が続いております。

こうした中、当連結会計年度の業績につきましては、売上高は、前期比19,346百万円13.2%増収165,541百万円となり、過去最高を更新いたしました。売上総利益は、前期比706百万円4.4%増益16,858百万円となり、営業利益は、事業ポートフォリオ再編に伴う一部費用を計上したものの、前期比68百万円2.4%増益2,950百万円となりました。経常利益は、急激な為替変動の影響等により、前期比450百万円15.0%減益2,548百万円となり、親会社株主に帰属する当期純利益は、不採算事業からの撤退損失などを特別損失として計上しましたが、トリアセテート繊維事業の譲受に伴う負ののれん発生による特別利益が寄与し、前期比339百万円16.8%増益2,358百万円となり、過去最高の当期純利益を計上いたしました。

当連結会計年度を以って、中期経営計画“GSI CONNECT 2024” が終了いたしますが、公表時とは著しく事業環境が変化したものの、目標に掲げた「過去最高純利益の更新」を達成することができました。今後も、中長期的な企業価値の向上を見据え、事業ポートフォリオの見直しと構造改革を着実に推進し、持続可能な成長と利益体質の強化を図ってまいります。

 

セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。

<ファイバー>

主要商材のインナー用機能糸・生地の取引が、最終製品の需要増加を背景に伸長したことに加えて、円安効果により海外売上高が増加したことなどから、売上高は前期比21.9%増収99,258百万円となり、営業利益は前期比31.8%増益631百万円となりました。

 

<アウター>

アパレル関連では、事業撤退を決めた子会社の製品販売が低調に推移したことなどから、売上高は前期比5.7%減収19,590百万円となりました。一方、欧米向けの生地輸出取引は堅調に推移したものの、譲受したトリアセテート繊維事業の取得関連費用を計上したことから、営業利益は前期比12.3%減益817百万円となりました。

 

<インナー>

インナー製品の取引は、機能素材の需要の高まりなどもあり、売上高は前期比3.1%増収12,201百万円となったものの、原材料価格の高騰によるコストアップの影響を受けたことなどから、営業利益は17.2%減益169百万円となりました。

 

<セミコンダクター>

半導体市場は一部で回復基調が見られるものの、依然として調整局面が続く中、製造装置用部材などの需要が安定的に継続したことや中国製ウェハの取引が増加したことなどから、売上高は前期比18.9%増収10,640百万円となり、営業利益は前期比11.5%増益457百万円となりました。

 

 

<ケミカル>

機能性樹脂・フィルムの国内取引が堅調に推移し、海外向けの塗料原料の取引が伸長したことに加えて利益率も改善したことなどから、売上高は前期比7.7%増収13,909百万円となり、営業利益は前期比38.2%増益918百万円となりました。

 

<ホビー&ライフ>

ホビー関連の取引が堅調に推移したことに加え、化粧品原料の取引では、今期投入した新製品が業績に寄与したことなどから、売上高は前期比3.3%増収5,519百万円となり、営業利益は前期比3.5%増益597百万円となりました。

 

<マシナリー&イクイップメント>

理化学関連装置の取引は前期並みで堅調に推移したものの、当期は大型機械装置の受注がなく、売上高は前期比11.1%減収4,420百万円となり、営業利益は前期比54.9%減益135百万円となりました。

 

b.財政状態

当連結会計年度末における総資産は、今期より新たに加わったトリアセテート繊維事業の在庫を含む棚卸資産の増加などにより、前期末比4,629百万円増加79,965百万円となりました。

負債は、未払金の増加などにより、前期末比1,992百万円増加49,879百万円となりました。

純資産は、親会社株主に帰属する当期純利益による株主資本の増加などにより、前期末比2,636百万円増加30,086百万円となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

営業活動によるキャッシュ・フローは、2,713百万円の収入(前年同期は183百万円の収入)となりました。主な要因は売上債権の減少などによるものです。

投資活動によるキャッシュ・フローは、955百万円の支出(前年同期は1,486百万円の収入)となりました。主な要因は連結範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出などによるものです。

財務活動によるキャッシュ・フローは、4,222百万円の支出(前年同期は43百万円の収入)となりました。主な要因は短期借入金の純増減額などによるものです。

これらに換算差額による増加額112百万円を加味した結果、当期末における現金及び現金同等物の残高は前期末比2,351百万円減少7,994百万円となりました。

 

 

③ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

生産高(百万円)

前期比(%)

ファイバー

2,074

3.7

アウター

インナー

89

△19.7

セミコンダクター

ケミカル

ホビー&ライフ

マシナリー&イクイップメント

合計

2,164

2.5

 

(注) 1 生産高は、製造会社における生産実績を販売価格により表示しております。

 

 

b.受注実績

当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

受注高(百万円)

前期比(%)

受注残高(百万円)

前期比(%)

ファイバー

96,501

16.1

10,159

△21.3

アウター

20,253

△3.5

3,809

21.1

インナー

12,079

0.0

2,037

△5.6

セミコンダクター

10,063

△1.0

1,417

△28.9

ケミカル

14,076

9.8

217

326.9

ホビー&ライフ

5,323

1.9

209

△48.4

マシナリー&イクイップメント

5,103

△15.7

2,056

49.6

合計

163,401

8.6

19,907

△9.7

 

 

 

c.販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

販売高(百万円)

前期比(%)

ファイバー

99,258

21.9

アウター

19,590

△5.7

インナー

12,201

3.1

セミコンダクター

10,640

18.9

ケミカル

13,909

7.7

ホビー&ライフ

5,519

3.3

マシナリー&イクイップメント

4,420

△11.1

合計

165,541

13.2

 

(注) 1 セグメント間の取引については、相殺消去しております。

2 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

 

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

販売高(百万円)

割合(%)

販売高(百万円)

割合(%)

Toray Industries (HK) Ltd.

38,023

26.01

45,378

27.41

Pacific Textiles Limited

18,260

12.49

24,160

14.59

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.財政状態の分析

財政状態の分析につきましては「4経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。

 

b.経営成績の分析

経営成績の分析につきましては「4経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。

 

セグメントごとの経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容につきましては「4経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」をご参照ください。

 

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
a.キャッシュ・フローの状況の分析

当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローは、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

b.資本の財源及び資金の流動性

当社グループの資金需要の主なものは運転資金及び設備投資並びに事業投資資金であり、これらの資金を自己資金及び金融機関からの借入金で賄っております。財務の健全性、金融環境を考慮し最適と思われる調達手段を選択していくとともに、営業活動によるキャッシュ・フローを生み出すことにより将来必要となる資金の創出に努めてまいります。

なお、当連結会計年度末における有利子負債から現金及び預金を控除したネット有利子負債の残高は、前期末比53百万円減少の5,486百万円となりました。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表を作成するにあたっては、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これら見積り及び仮定と実際の結果は異なる可能性があります。

連結財務諸表の作成にあたり用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。

 

a.繰延税金資産

繰延税金資産については、将来の課税所得を見積り、回収可能性があると判断した将来減算一時差異について繰延税金資産を計上しております。その見積り及び見積りに用いた仮定に変更が生じ減少した場合には、繰延税金資産が減額され税金費用が計上される可能性があります。

 

b.退職給付に係る負債及び退職給付に係る資産

退職給付費用及び債務については、数理計算上で設定される前提に基づき算出されております。これらの前提条件には割引率、年金資産の長期期待運用収益率、昇給率、死亡率等の見積りを用いております。これら見積りに変更が生じ数理計算上の差異が発生した場合には将来の退職給付費用に影響を与える可能性があります。

 

c.固定資産の減損

固定資産のうち減損の兆候がある資産又は資産グループについては、当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローを見積り、その総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能額まで減額することとしております。その見積り及び見積りに用いた仮定に変更が生じた場合には、減損処理が必要となる可能性があります。

 

 

5 【重要な契約等】

当社は2025年3月3日付で三菱ケミカル株式会社(以下「三菱ケミカル」)から、三菱ケミカルが展開するトリアセテート繊維事業、並びに三菱ケミカルが保有する菱光サイジング株式会社(現 株式会社GSIソアロンテキスタイルラボ)の株式を、三菱ケミカルが新たに設立した株式会社ソアロン(以下「ソアロン」)に吸収分割により承継させた上で、全株式を取得し完全子会社化いたしました。詳細は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (企業結合等関係)」に記載のとおりであります。

 

 

6 【研究開発活動】

当連結会計年度における研究開発活動について、特記すべき事項はありません。