(1)基本理念
当社グループ(以下、NAGASE)は、グループ共通の価値観として、経営理念、ビジョン、ありたい姿およびサステナビリティ基本方針を掲げております。
なお、NAGASEは、2032年(創業200年)の「ありたい姿」“温もりある未来を創造するビジネスデザイナー”の実現に向け、NAGASEにとって重要なステークホルダーと各ステークホルダーに提供したい価値、それらを実現するためのマテリアリティ(重要課題)を下記のとおり特定しております。
(2)中期経営計画 ACE 2.0
NAGASEは、2032年(創業200年)の「ありたい姿」を実現するため、2032年からバックキャスティングし、5ヶ年の中期経営計画ACE 2.0を策定しました。ACE 2.0の位置づけを“質の追求”と掲げ2021年4月から始動しており、ACE 2.0に掲げる事項を対処すべき課題と捉えております。
※“ACE”は、Accountability(主体性)、Commitment(必達)、Efficiency(効率性)を表します。
ACE 2.0の定量目標
ACE 2.0の定量目標は、下表のとおりです。
2021年度は、市況高騰等の外部環境の影響もあり、収益力の拡大のKGI(Key Goal Indicator)として掲げる営業利益350億円に到達しました。ACE 2.0では、“質の追求”を実現することで各定量目標を恒常的に実績化できることを目指しており、下記基本方針のもと、引き続きACE 2.0を推進していきます。
ACE 2.0基本方針
ACE 2.0では、NAGASEの持続的な成長を可能にするため、すべてのステークホルダーが期待する“想い”を具体的な“形”(事業・仕組み・風土)として創出し、“温もりある未来を創造するビジネスデザイナー”を目指し、「収益構造の変革」と「企業風土の変革」の2つの変革と、両変革を支える機能として、DXのさらなる加速、サステナビリティの推進およびコーポレート機能の強化を図ります。
収益構造の変革‐“ありたい姿”に向けた収益基盤の構築
経営資源の最大効率化を図るために、経営資源の確保と再投下を実行いたします。効率性および成長性の観点から、事業を「注力」、「育成」、「基盤」、「改善」の4つの領域に分類し、各領域に応じて戦略を実行し、さらにリソースシフトを加速させるべく、全社投下資本の10%を確保した上で注力/育成領域に再投下していきます。また既存事業の強化にあたり、グローバリゼーションによる事業機会の拡大および製造業の生産性向上と技術革新による付加価値の拡大を図ります。加えて、DXの活用等により顧客、社会との接点を増やし、そこから見つけた新たな課題に対し、「利益を生み出す解決策」を提供することで、社会・環境価値向上に向けた“持続可能な事業”(=N-Sustainable事業)の創出を図っていきます。
(事業ポートフォリオの考え方)
[取組み状況]
(注力領域)
フード関連事業は、Prinovaグループにおいて、取扱い品目の拡充およびビジネス領域の拡大を目的とした甘味料専門ディストリビューター“The Ingredient House, LLC”の買収や、受託製造ビジネスにおける製造キャパシティ増強を目的とした投資を実行し、さらなる収益基盤の強化を進めました。また、Prinovaグループの持つ顧客基盤を活用した㈱林原の食品素材の販売拡大、Prinovaグループの取扱い製品とアジアを中心としたNAGASEの顧客基盤を組み合わせたシナジーの実現・強化およびグローバル戦略立案に関する議論の深化を図るため、事業部トップを米国に配置する等、経営基盤の強化を進めました。
半導体関連事業は、半導体戦略推進チームを創設し、前工程から後工程のサプライチェーン全体での情報共有・連携強化の促進、技術革新・最新の開発トレンドの理解と将来におけるビジネスの企画・立案サポートを通じて競争力の強化を進めました。
バイオ関連事業は、NAGASEが有するバイオテクノロジーに関する知見・ノウハウを結集し、NAGASEバイオテック室を創設しました。また、ナガセR&Dセンターをナガセバイオイノベーションセンターに名称変更し、バイオ関連技術を有するグループ会社等との連携を強化し、グループ全体のバイオイノベーションの創出を推進する体制を構築しました。今後、グループの中核となる事業とすべく資本投下し、ライフサイエンスに加え工業および農業等の分野への展開を図り、新規素材の開発および事業創出を推進していきます。
(育成領域)
次世代通信、新規素材開発等の分野での優れた技術や、新規ビジネス創出が期待できる分野でノウハウを持つスタートアップ企業への投資・提携を通じて、将来の収益貢献が期待される分野への資源投下を進めました。
(基盤領域)
収益性改善に向けた取組み等により効率性の向上を図りました。また、デジタル技術を活用したマーケティング・営業活動の効率化を推進し、それらが顧客との新たな接点となり、提供価値の拡大に繋がりました。
(改善領域)
改善が必要と判断したビジネスについては、改善方針の決定・KPIの設定を行う等、PDCAの徹底を図っています。なお2021年度は、一部不採算事業からの撤退および子会社売却による資本の確保等を行いました。
2021年度は、上記のとおり改善領域において一部事業からの撤退による資本の確保、また注力領域に対する資本投下を推進しました。ただし、事業の入替えは不十分であると認識しており、2022年度はコーポレート主導で全社規模での事業の入替えを検討していきます。また2021年度は、育成領域において様々なスタートアップ企業への投資等を行いましたが、投資・モニタリングの仕組みの見直しを改めて行い、これら投資によって生まれるビジネスが早期に収益貢献できるよう推進していきます。
なお、Prinovaグループのビジネスが拡大したこと等により、ナガセケムテックス㈱、㈱林原およびPrinovaグループを中心とするグループ製造業の利益は過去最高となりました(製造業営業利益169億円(単純合算値))。拡大する製造ビジネスにおいて、さらなる生産性の向上および付加価値の拡大を図るべく、グループ製造業各社の製造能力、生産技術、研究開発、品質管理、エンジニアリング、投資評価等を俯瞰し、製造業の強化・拡充を推進することを目的として、2022年4月1日にグループ製造業経営革新室を創設し、基盤強化を図りました。
企業風土の変革‐“ありたい姿”に向けたマインドセット
「質の追求」を実現するためには、経済価値と社会価値を両輪で追求していくことが必要と考え、財務情報に加え非財務情報のKPIを設定し、両KPI達成に向け徹底したモニタリングを行います。また効率性の追求に向け、コア業務の生産性の改善を図り、また事業戦略によるROICの向上、財務戦略によるWACCの低減を行い、ROICスプレッドの改善を図ります。ROICがWACCを上回る状態を常態化させ、企業価値の向上を目指します。加えて、変革を推進する人財の強化が必要と考えており、社員と会社のエンゲージメントを向上させ、双方の持続的な成長と発展を実現します。
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(効率性の追求) |
(エンゲージメントの向上) |
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[取組み状況]
2021年度は、事業全体として業績が好調に推移したことによる運転資本の積み上がりにより投下資本は増加しましたが、運転資本については適正化に向けた在庫管理の徹底を実施し、また市況の高騰、高付加価値商材の販売等による利益率の改善、加えて政策保有株式の売却を推進したこと等により、ROICは5.3%となりました。また運転資本の増加に伴う資金需要を受け負債による資金調達を行ったこと、加えて株主資本の適正化に向け、株主還元方針に沿って増配および自己株式の取得を継続的に行った結果として、WACCが5.5%まで低減しました。なお有利子負債が増加したこと等により、Net DEレシオは0.3倍となりました。
2021年度は、半導体などサプライチェーン上でのモノ不足、物流網の混乱など厳しい市場環境が続く中、NAGASEの強みである広域なネットワーク、技術知見ならびに課題解決力・人財を活かしビジネスを維持・拡大させ、また需給バランスの崩れによる市況高騰等もあり業績は伸長しましたが、効率性の観点において課題認識しており、「質の追求」をすべく、引き続きACE 2.0のもと推進していきます。
(政策保有株式の売却実績)
ROICについては、事業毎に定量化・可視化を進めモニタリングができる体制を構築し、定期的なモニタリングを開始しました。
またコア業務の生産性の改善に向け、シェアードサービス会社である長瀬ビジネスエキスパート㈱においてBPR(Business Process Reengineering)を行い、業務効率化を図りました。加えてBIツール(Business Intelligence tools)やCRM(Customer Relationship Management)等を活用した間接業務ならびに営業・販売活動の効率化を促進しました。
変革を推進する人財の強化については、社員と会社のエンゲージメントを向上させるべく、現状把握と向上施策の策定を目的に従業員エンゲージメントサーベイを実施しました。現状の課題を認識し、エンゲージメントの向上に向けた施策を全社・各組織で開始しました。
変革を支える機能
両変革を実現するために、DX、サステナビリティおよびコーポレート機能はグループ横断的に必要な機能であり、これらの機能を拡充します。
DXを手段として活用することで、NAGASEの強みである「広域なネットワーク」、「技術知見」および「課題解決力・人財」をさらなる強みとし、顧客や社会の課題を解決できるビジネスモデルの深化・探索、イノベーションの創出および生産性の向上等を図ります。
またサステナビリティ基本方針を根幹に置き、「ありたい姿」の実現に向け、経済価値と社会価値の追求を実現すべく、グループ全体に機能を提供していきます。
[取組み状況]
デジタルマーケティングによる顧客基盤の強化・拡大に向け、マーケティングプラットフォームを構築し、まずPrinovaグループなど米州のグループ会社において顧客体験型のWEBサイトをリリースいたしました。これらを他地域にも展開すべく、引き続き推進しています。
また、「ありたい姿」の実現に向け、経済価値と社会価値の追求を実現すべくサステナビリティ推進体制を下記のとおり構築しました。なお、2022年4月1日付でコーポレートコミュニケーション本部はサステナビリティ推進本部に改名し、代表取締役社長直下の組織としました。
(サステナビリティ推進体制)
2021年度、サステナビリティ推進委員会は、グループ全体で取組むべき優先順位の高いマテリアリティ(重要課題)を従業員エンゲージメント向上とカーボンニュートラルと決定し、その行動計画とKPIの策定を目的に2つのコーポレートプロジェクトを設置しました。また、各プロジェクトはACE 2.0の期間中にモニタリングしていく非財務目標(KPI)の原案を策定し、取締役会が意思決定を行いました。
非財務目標(KPI)
※連結子会社を対象とし、Prinovaグループは1社として算定。
※2021年度:グループ会社の実施割合は41%(24社(1回のみの実施含む))。長瀬産業(単体)のエンゲージメントサーベイトータルスコアは、52.4。
従業員エンゲージメント向上
NAGASEでは、持続的成長を実現するためには従業員エンゲージメントの向上が最重要と認識し、従業員エンゲージメントを「会社(組織)と従業員が相互に理解し合い、お互いを高め合う状態」と定義しました。ACE 2.0の初年度にあたる2021年9月に、当社では現状把握と向上施策の策定を目的として、対会社8領域、対上司4領域、対職場4領域の合計16領域で構成されるエンゲージメントサーベイを実施しました。また、トップマネジメントの関与、主体性や透明性等に関わる事項を定めた実施ガイドラインを定め、グループ全体で着実に施策を進めてまいります。
(従業員エンゲージメントサーベイの内容)
カーボンニュートラル
NAGASEは、マテリアリティ(重要課題)において「社会・環境課題の解決とグローバリゼーション」を掲げています。NAGASEにとって、気候変動への対応は重要な課題と認識しており、2050年までにGHG(温室効果ガス)排出量を実質ゼロとするカーボンニュートラルの達成(Scope1,2)を掲げています。NAGASEは商社機能に加え、製造・加工機能を有することから、「商社業/製造業」と「可視化/削減」の2軸4象限に分類し、目標達成に向け取り組んでいきます。
なお、NAGASEはTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)への賛同表明を行いました。TCFDが推奨する項目に沿った開示内容は下記のとおりです。
≪ガバナンス≫
気候関連のリスクおよび機会についての取締役会による監視体制
NAGASEでは、気候変動を重要な経営課題の一つとして認識しており、取締役会の監督のもと、サステナビリティ推進委員会、リスク・コンプライアンス委員会を設置し、方針や課題等を検討・協議しています。また取締役会において、NAGASEカーボンニュートラル宣言、TCFD賛同表明およびACE 2.0の非財務目標(KPI)について決議いたしました。このように、気候変動は取締役会による定期的、直接的な監督を受ける体制となっております。
≪戦略≫
リスクと機会
気候変動に関する様々なリスク・機会がある中で、NAGASEにとって重要なリスク・機会を以下のとおり特定しました。
戦略
NAGASEは商社機能に加え、製造・加工機能を有することから、「商社業/製造業」と「可視化/削減」の2軸4象限に分類し、全体施策および施策①~④からなる「NAGASEグループカーボンニュートラル宣言」のもと、目標達成に向け取り組んでおります。
なお2021年度は、サプライチェーン上のCO2排出量の算出・可視化に向け、企業の脱炭素経営の支援を目的とし株式会社ゼロボードが開発したCO2排出量・可視化クラウドサービス「zeroboard」の販売・事業展開を開始しました。NAGASEの有する国内外のネットワークを活用し、化学業界を中心に普及拡大を図ります。また顧客のニーズを収集した上でCO2排出量削減ソリューションの開発・提供等を行っていきます。
≪リスク管理≫
リスク・コンプライアンス委員会のもとで環境ISO運営組織を展開し、環境マネジメントシステムISO14001の継続的な活動を行っています。またサステナビリティ推進委員会において、気候変動による事業リスク・機会や対策を共有し、進捗管理を行っています。
≪指標と目標≫
NAGASEは、2050年までにGHG排出量を実質ゼロとするカーボンニュートラルの達成を掲げています(Scope1,2)。加えて、2030年までにScope1,2を46%削減(2013年比)、Scope3を12.3%以上削減(2020年比)することとしています。ACE 2.0の期間中の目標については、前段記載の「非財務目標(KPI)」に記載のとおりです。
なお、Scope3は今後のサプライチェーンとの対話により目標値の更新も検討します。
(NAGASE温室効果ガス排出量実績と目標(Scope1,2))
当社グループは、機能素材、加工材料、電子・エネルギー、モビリティ、生活関連、その他のセグメントにおいて、トレーディング機能、マーケティング機能、研究開発機能、製造・加工機能を活用し、グローバルかつ多角的に事業展開をしております。これらの事業の性質上、様々なリスクにさらされており、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項を記載しております。
本項においては、将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は当連結会計年度末において判断したものであります。
(1)マクロ経済環境の変化によるリスク
当社グループは、化学を基盤として、機能素材、加工材料、電子・エネルギー、モビリティ、生活関連のセグメントにおいて、顔料・着色剤、塗料・インキ、界面活性剤、OA、電機、家電、自動車、ディスプレイ、半導体、医薬・医療、食品・飲料業界向け等に広範に事業を推進しております。従って、日本および世界におけるマクロ経済環境の変化、とりわけ化学工業全般の動向に著しい変化が生じた際には、当社グループが取り扱う商品・サービスの需要減少、市場価格の下落などにより、当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。
(2)商品市況の変動に係るリスク
当社グループは、ナフサを原料として製造される石油化学製品の取扱いを機能素材、加工材料、モビリティセグメントを中心に広範に行っております。石油化学製品はこれら原料市況ならびに需給バランスの要因から、商品ごとに固有の市況を形成しております。直送取引においては、仕入と売上を紐づけて計上すること等によりリスクの最小化を図っております。在庫取引においては、顧客の引取り保証の確保に努めるとともに、長年にわたる当該市場での取引経験などから需要予測を行い、在庫水準の適正化を図っております。しかしながら、その価格変動により、当該取引の売上と損益に影響を与える可能性があります。また、当社グループにおいて製造する一部製品に穀物由来の原料を使用しております。当該原料の価格は穀物相場の価格により大きく変動する場合があり、原料の上昇分を販売価格に転嫁できない場合には、損益に影響を与える可能性があります。
(3)為替変動に係るリスク
当社グループは、外貨建てによる輸出入、および貿易外取引を行っており、これら外貨建て取引については為替の変動により円換算後の価額に影響を与えます。これらの取引に対し為替予約によるヘッジを行い為替変動リスクを最小限に止める努力をしておりますが、当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。また、当社グループは海外に現地法人を有しており、外貨建て財務諸表(主に米国ドルおよび人民元)を作成しております。連結財務諸表の作成にあたっては、これらを日本円に換算する際の為替レート変動に伴う換算リスクがあります。
(4)金利変動に係るリスク
当社グループは、営業活動や投資活動に係る資金を金融機関からの借入等により資金調達しておりますが、有利子負債には変動金利条件となっているものがあります。変動金利による調達に関しましては、金利スワップ契約等を活用することで金利変動に伴うリスクの軽減に努めておりますが、今後の金利動向によっては、当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。
また、金利変動によって退職給付債務の割引率および年金資産の運用収益が変動し、当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。
(5)カントリーリスク
当社グループの事業活動はグレーターチャイナ、アセアン、米州、欧州を中心とした海外での割合が高くなっております。そのため、現地の政治・経済・社会情勢の変化および法的規制や慣習等に起因する予測不能な事態が発生し、当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。特に米中貿易摩擦や地域紛争などに代表される国際情勢の変化に伴い、輸出規制強化、技術移転制限、関税の引き上げなど自国製品を優先する政策の強化が進むことにより、当社グループの事業活動が一部制限されるなどの影響が生じる可能性があります。当社グループはグローバルで政治・経済情勢や法規制の動向を把握し、取引形態やサプライチェーンの見直しを随時検討・実施することによりリスクの低減に努めております。
(6)株価変動に係るリスク
当社グループは、主に取引先との良好な関係維持、取引の強化および事業の拡大を図るため、市場性のある株式を保有しており、これらは株価の変動によるリスクを負っております。保有する株式の合理性については、関連取引利益や受取配当金による収益が資本コストを基礎とした社内ハードルレートに見合うかどうか、また事業の拡大見込みやシナジーの状況、若しくは当社グループの企業活動に欠かせないサービスの安定的な確保が見込めるか等を精査しております。保有の合理性が認められない場合は、各種状況を勘案しながら段階的に売却を進め積極的に縮減を図っておりますが、株価の動向によっては、当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。また、株価の下落により年金資産の運用が悪化した場合には、退職給付費用の増加により損益に影響を与える可能性があります。
(7)取引先の信用に係るリスク
当社グループは、多様な商取引により国内外の販売先に対して信用供与を行っており、信用リスクを負っております。これら信用リスクの低減のため、販売先ごとに信用供与の限度額を設定するとともに、必要に応じて担保・保証・保険等の取得等の対策を講じております。また、安定かつ継続的な商品の調達に努めているものの、仕入先等の信用状況の悪化や経営破綻等により、取扱商品の継続的な供給が困難となる場合もあります。これらのリスクが顕在化することによって、当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。
(8)投資に係るリスク
当社グループは、新会社の設立、製造子会社における設備投資および企業買収等の投資活動を行っております。このような投資活動においては、当初計画した水準まで収益を計上出来ないことによる回収リスク、追加の資金拠出が発生するリスク、また、当社グループが希望する時期や方法で撤退出来ないリスク等を有しております。新規投資においては、投資ガイドラインに沿って投資チェックリストと投資採算表を作成し、戦略適合性、市場規模・成長性、参入障壁、競争優位性、事業運営リスク、事業継続リスク、資金調達、撤退条件などの様々な要因と事業の採算性を幅広い視点から評価・分析し、定量基準や定性評価に基づき意思決定しております。投資実行後は、定期的にモニタリングを実施し、当初計画通りに進行していない案件は、再建プランを策定し、投資価値の評価・見直しを行うことで、損失の極小化に努めております。このように、投資決定プロセスおよびモニタリングに係る体制、手続きを整備してはおりますが、こうした管理を行ったとしても投資リスクを完全に回避することは困難であり、投下資金の回収不能、撤退の場合の追加損失の発生など当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。
(9)固定資産に係る減損のリスク
当社グループは、製造子会社における事業用資産やのれん等の固定資産を有しております。これらの資産の減損の兆候が認識された場合には、当該資産の回収可能価額を正味売却価額と使用価値のいずれか高い方として算出した上で、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。今後、事業の採算性悪化等により更に減損処理が必要となった場合は、当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。
(10)製品の品質に係るリスク
当社グループは、より高い付加価値を顧客に提供するためにナガセケムテックス㈱、㈱林原をはじめとした製造子会社およびナガセバイオイノベーションセンター等の研究開発拠点を有しており、それらの提供する技術・製品の品質には細心の注意を払っております。また、輸入品や委託加工製品等、製造物責任を負う製品の取扱いを行っており、その製品の品質に関しましても、同様の注意を払っております。当社グループでは、お客様に安全な製品を供給し、安全・安心な社会を構築するため、製品安全・品質管理を社会的責任の重要課題の一つと位置付けており、「NAGASEグループ製品安全自主行動指針」に基づき、グループ全体での方針策定や啓蒙活動を通じた製品の安全性確保に努めております。また、「グループ製造業連携委員会」において、グループ製造会社間でメーカーとしての基盤を強化することを目的に、安全・品質・環境などの非財務情報を共有・活用し、連携して諸課題の解決に取り組んでおります。しかしながら、こうした管理を行ったとしても製品の品質に係るリスクを完全に回避することは困難であり、当該製品の不具合等による販売停止および製品回収あるいは損害賠償等が発生した場合、当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。
(11)法令・規制等に係るリスク
当社グループは、国内外において多岐にわたる事業を行っております。事業活動を行う各国・地域のあらゆる適用法令、規則を遵守し、社会的規範、社会的良識に基づいた企業活動を行う旨を、「コンプライアンス基本方針」および「コンプライアンス行動基準」に定めており、グループ内にて啓蒙しております。
特に、当社グループは、化学品を主体として広範な用途向けに多種類の商品の輸出、輸入、国内販売を行っております。輸出については、国際的な平和や安全の維持等を目的とした「外国為替および外国貿易法」や「輸出貿易管理令」等、輸入・国内販売については、「化学物質の審査および製造等の規制に関する法律(化審法)」等の法規制の適用を受けるほか、海外各国においても、同様の規制が存在し、適用を受けております。これらに対し安全保障貿易管理規程、化学品・製品管理規程等を定め、商品に係る法規制の遵守活動に努めておりますが、これらの法規制等に抵触した場合、事業活動に制約を受け、当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。
(12)情報システムおよび情報セキュリティに関するリスク
当社グループは、顧客のサプライチェーンにおける重要な役割を担っていることから、情報システムの安全性および情報セキュリティレベルの確保を重要事項と認識しております。その為、関連規程や体制を整備し、情報システムの安定稼働および情報セキュリティレベルの向上のために、様々な対策を継続的に実施しております。しかしながら、こうした対策を行ったとしても、情報システム基盤や通信回線等の重大な障害の発生、サイバー攻撃等による不正アクセスやコンピューターウイルス侵入等による情報の漏洩、改ざん、破壊等を完全に排除することはできず、この様な場合、事業活動の一時停止等、当社グループの事業活動に重大な影響を及ぼすことから、当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。
(13)自然災害等のリスク
当社グループは、グループ各社において災害時における業務継続計画(BCP)の策定、安否確認システムの導入、在宅勤務インフラの整備、災害対策マニュアルの作成、耐震対策、防災訓練等、自然災害発生時への備えを講じております。しかしながら、当社グループは国内外の広範な地域にわたって営業活動を行っており、大規模な自然災害や新型コロナウイルス・新型インフルエンザ等の感染症が発生した場合には、サプライチェーンの寸断による販売活動の停滞や、工場設備の被災に伴う生産活動の停止による機会損失等によって、当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。
(14)気候変動に関するリスク
当社グループは、社会・環境課題の解決に貢献する企業活動を継続することにより、持続的な成長が可能になると認識し、「サステナビリティ基本方針」を定めて積極的に活動に取り組んでおります。また、本基本方針に基づいて活動することを目的として、代表取締役社長を委員長とする「サステナビリティ推進委員会」を設置しております。当社グループでは、2050年のカーボンニュートラル実現に向けた方針(NAGASEグループカーボンニュートラル宣言)を策定しており、また、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)への賛同表明も行っております(詳細については、 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)中期経営計画 ACE 2.0をご覧ください)。しかしながら、気候変動による自然災害の激甚化を含めた異常気象の深刻化や、温暖化に伴う海面上昇等の物理的なリスクが顕在化した場合には、当社グループの事業活動に重大な影響を及ぼす可能性があり、当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 経営成績の状況
当連結会計年度における世界経済は、各国でワクチンの3回目接種が進んだこと等により規制の撤廃や緩和が進み、新型コロナウイルス感染拡大で停滞してきた経済活動に全般的に回復がみられました。年間を通して原材料市況の高騰、半導体不足の影響、物流の混乱が続いたことに加え、ウクライナ情勢の深刻化等により不透明感は強まりましたが、そのような中でもニューノーマル時代への突入を感じさせる一年となりました。
当社グループがビジネスを展開する地域におきましては、特にグレーターチャイナで経済活動が堅調に推移し、大きな回復がみられました。北米では雇用の回復や個人消費の拡大により、経済活動全体が底堅い状況で推移しました。日本では企業業績の改善がみられましたが、感染防止対策が個人消費の抑制に繋がり、大幅な景気回復には至りませんでした。
このような状況の下、当社グループは、関連する業界におけるサプライチェーンの維持に貢献し、業績は伸長しました。以上の結果、当連結会計年度の業績は次のとおりとなりました。
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|
(単位:百万円) |
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前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
増減額 |
増減率 (%) |
|
売上高 |
625,245 |
780,557 |
155,312 |
24.8 |
|
売上総利益 |
114,600 |
139,494 |
24,894 |
21.7 |
|
営業利益 |
21,916 |
35,263 |
13,346 |
60.9 |
|
経常利益 |
22,854 |
36,497 |
13,643 |
59.7 |
|
税金等調整前当期純利益 |
29,272 |
39,557 |
10,284 |
35.1 |
|
親会社株主に帰属する 当期純利益 |
18,829 |
25,939 |
7,109 |
37.8 |
※「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を当連結会計年度の期首から適用しており、前連結会計年度に係る各数値は当該会計基準等を遡って適用した後の指標となっております。
・当連結会計年度の業績は、すべてのセグメントで増益となった結果、売上総利益以下すべての各段階利益での過去最高益を更新いたしました。
・増益要因は、前連結会計年度上期に新型コロナウイルスの影響を強く受けた自動車関連ビジネスの復調に加え、前連結会計年度下期から引き続きエレクトロニクス関連ビジネス・樹脂ビジネスが好調に推移したことや、生活関連セグメントにおいてPrinovaグループの業績が牽引したこと等であります。詳細は「② セグメント別の概況」をご覧ください。
・親会社株主に帰属する当期純利益については、経常利益が136億円増加した影響があったものの、投資有価証券評価損や減損損失の影響等により、71億円増加の259億円となりました。
セグメント別の業績は、次のとおりであります。
なお、当連結会計年度より報告セグメントの名称および区分を一部変更しており、前連結会計年度の情報は当連結会計年度の報告セグメントの区分に組み替えて算出しております。
機能素材
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(単位:百万円) |
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前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
増減額 |
増減率 (%) |
|
売上高 |
75,294 |
99,874 |
24,580 |
32.6 |
|
売上総利益 |
15,562 |
19,819 |
4,256 |
27.4 |
|
営業利益 |
4,712 |
7,823 |
3,111 |
66.0 |
主な要因は以下のとおりです。
・自動車生産台数の回復を受けて塗料・ウレタン原料や、加工油剤関連・樹脂関連の原料販売が増加
・半導体関連等の電子業界向けのエレクトロニクスケミカル等の販売が堅調
・営業利益は売上総利益の増加を受け、増益
加工材料
|
|
|
|
|
(単位:百万円) |
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前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
増減額 |
増減率 (%) |
|
売上高 |
209,715 |
257,283 |
47,568 |
22.7 |
|
売上総利益 |
26,816 |
32,313 |
5,497 |
20.5 |
|
営業利益 |
7,311 |
10,858 |
3,546 |
48.5 |
主な要因は以下のとおりです。
・OA・ゲーム機器業界等への樹脂の販売は市況の高騰により収益性が改善
・工業用・包装材料用途の樹脂、顔料・添加剤の販売は需要の回復により増加
・情報印刷関連材料、導電材料等の販売は減少
・営業利益は売上総利益の増加を受け、増益
電子・エネルギー
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(単位:百万円) |
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前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
増減額 |
増減率 (%) |
|
売上高 |
110,770 |
128,131 |
17,360 |
15.7 |
|
売上総利益 |
25,581 |
29,767 |
4,185 |
16.4 |
|
営業利益 |
8,408 |
10,278 |
1,870 |
22.2 |
主な要因は以下のとおりです。
・ディスプレイ材料および半導体用途の精密加工関連の販売が増加
・モバイル機器および半導体用途等を中心とした変性エポキシ樹脂関連の販売が増加
・ディスプレイ需要の増加を受け、フォトリソ材料関連の販売が増加
・営業利益は売上総利益の増加を受け、増益
モビリティ
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|
(単位:百万円) |
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前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
増減額 |
増減率 (%) |
|
売上高 |
78,783 |
103,389 |
24,605 |
31.2 |
|
売上総利益 |
8,983 |
12,718 |
3,734 |
41.6 |
|
営業利益 |
1,851 |
4,131 |
2,280 |
123.2 |
主な要因は以下のとおりです。
・樹脂の販売は、自動車生産台数の回復により国内およびアセアンを中心とした海外において増加し、さらに市況の高騰により収益性が改善
・内外装・電動化用途の機能素材・機能部品の販売が増加
・営業利益は売上総利益の増加を受け、増益
生活関連
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|
(単位:百万円) |
|
|
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
増減額 |
増減率 (%) |
|
売上高 |
150,331 |
191,634 |
41,303 |
27.5 |
|
売上総利益 |
37,471 |
44,757 |
7,285 |
19.4 |
|
営業利益 |
6,512 |
9,429 |
2,916 |
44.8 |
主な要因は以下のとおりです。
・ニュートリション関連は素材販売、製造加工ともに好調に推移
・トレハ®等を中心とした食品素材、AA2G®等を中心とした香粧品素材は需要の回復を受けて販売が増加
・中間体・医薬品原料の販売が増加
・営業利益は売上総利益の増加を受け、増益
その他
特記すべき事項はありません。
② 財政状態の状況
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前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
増減 |
増減率 (%) |
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流動資産(百万円) |
401,751 |
514,286 |
112,534 |
28.0 |
|
固定資産(百万円) |
238,835 |
225,434 |
△13,401 |
△5.6 |
|
総資産(百万円) |
640,587 |
739,720 |
99,133 |
15.5 |
|
負債(百万円) |
302,155 |
384,628 |
82,472 |
27.3 |
|
純資産(百万円) |
338,431 |
355,092 |
16,661 |
4.9 |
|
自己資本比率(%) |
51.5 |
46.5 |
△5.0ポイント |
- |
・流動資産は、棚卸資産および売掛金の増加等により増加
・固定資産は、投資有価証券の時価下落および売却による減少等により減少
・負債は、買掛金および短期借入金の増加等により増加
・純資産は、その他有価証券評価差額金の減少があったものの、親会社株主に帰属する当期純利益の計上および為替換算調整勘定の増加により増加
・以上の結果、自己資本比率は前連結会計年度末の51.5%から46.5%へ5.0ポイント低下
③ キャッシュ・フローの状況
(単位:百万円)
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前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
|
営業活動によるキャッシュ・フロー |
20,391 |
△17,776 |
|
投資活動によるキャッシュ・フロー |
2,643 |
△7,664 |
|
財務活動によるキャッシュ・フロー |
△25,866 |
27,282 |
・営業活動による資金の減少額は、税金等調整前当期純利益395億円の計上があったものの、運転資本の増加による資金の減少631億円があったこと等によるもの
・投資活動による資金の減少額は、投資有価証券の売却による収入77億円があったものの、有形固定資産の取得による支出88億円および連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出38億円があったこと等によるもの
・財務活動による資金の増加額は、長期借入金の返済による支出120億円および自己株式の取得による支出60億円があったものの、短期借入金の純増加333億円およびコマーシャル・ペーパーの純増加170億円があったこと等によるもの
④ 販売の状況
「① 経営成績の状況」および「第5経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(セグメント情報等)」をご参照願います。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
① 重要な会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に際し、資産、負債、収益、費用の報告数値に影響を与える見積りおよび仮定を用いておりますが、見積り特有の不確実性があるため実際の結果は異なる可能性があります。連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
・ 有形固定資産および無形固定資産の減損評価
当社は、のれんを含む有形・無形固定資産の価値が毀損していないかどうかを確認するために、各資産または資産グループの減損兆候の有無を調査した上で、割引前将来キャッシュ・フローに基づき減損損失の認識の判定を行っております。その結果、減損損失の認識が必要と判断された場合には、資産の帳簿価額のうち回収不能部分について減損損失を計上しております。
この減損損失の認識・測定に用いる将来キャッシュ・フローの基礎となる事業計画や使用価値の算定に用いる割引率等は、その性質上会計上の判断や仮定を伴うものでありますが、割引前将来キャッシュ・フローや回収可能価額の下落を引き起こすような事業環境の変化により見積りの見直しが必要になった場合には、追加的な減損損失が発生する可能性があります。
当連結会計年度においては、INTERFACIAL CONSULTANTS LLC(加工材料セグメントに属する連結子会社。以下、IFC)が手掛ける樹脂分野の製品・製造プロセス開発事業に係るのれんおよびその他の無形資産等について減損損失を計上しました。IFCは樹脂等の分野において革新的な技術プラットフォームおよび顧客ニーズに合わせた製品・技術・製造プロセス開発能力を有しており、それらを当社グループに取り込むことを目的として2020年3月にIFCの持分の75%を取得することにより同社を連結子会社化しました。IFCの持分の取得時点における事業計画では、IFCが保有する技術プラットフォームや製品・技術・製造プロセス開発能力を活かした製品の製造・販売による収益の拡大を見込んでいましたが、北米での新型コロナウイルス感染症拡大や、それに伴う半導体の供給不足の影響を受け、2020年12月期および2021年12月期のIFCの経営成績は当初の事業計画を下回り継続して営業損失を計上しました。
上記の状況を受け、当連結会計年度においてIFCの事業に関連する資産グループについて減損兆候を識別し、また回収可能価額が当該資産グループの帳簿価額を下回ったことから減損損失を計上しました。なお、回収可能価額には使用価値(当社の取締役会で承認されたIFCの最新の事業計画を基礎とした将来キャッシュ・フローの割引現在価値)を用いております。使用価値の算定における主要な仮定は事業計画における主要顧客への販売数量、売上原価率、割引率であります。主要顧客への販売数量、売上原価率については過年度の事業計画と実績の乖離状況およびその要因、現在入手し得る将来予測情報の内容を踏まえその合理性を評価し、割引率については貨幣の時間価値およびIFCが営む事業特有のリスクを反映しております。
詳細については「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記情報(連結損益計算書関連)および (セグメント情報等) 関連情報 報告セグメントごとの固定資産の減損損失に関する情報」をご参照ください。
・ 繰延税金資産の回収可能性の判断
繰延税金資産は、事業計画に基づき納税主体毎の将来の課税所得の見積りを行った上で、将来の税金支払額を軽減する効果が認められる範囲において計上しております。したがって、将来の課税所得が大きく減少するような事業環境の変化が生じた場合には、繰延税金資産を取崩し、当該期間の税金費用を増加させる可能性があります。
・ 退職給付に係る負債および資産の測定
当社グループの従業員に対する確定給付型退職給付制度について、退職給付債務と年金資産の差額を連結貸借対照表上退職給付に係る負債(または資産)に計上しております。退職給付債務は、簡便法を採用している場合を除き、退職率、死亡率、割引率等の基礎率を設定して算定しますが、特に割引率が重要な仮定であります。割引率は安全性の高い債券(一定格付以上の社債)の利回りを基礎として適宜見直しを行っております。なお、当連結会計年度末では0.8%(加重平均値)を設定しています。
年金資産に係る主な仮定は長期期待運用収益率であり、現在および予想される年金資産の配分と、年金資産を構成する多様な資産からの現在および将来期待される長期の収益率を考慮して適宜見直しを行っております。なお、当連結会計年度末では2.0%を設定しております。
この割引率を含む基礎率を見直した場合や、見積りと実績に差額が生じた場合は数理計算上の差異が発生し、主に発生時の翌連結会計年度に全額費用処理しております。従って、多額の数理計算上の差異が発生した場合には、将来の経営成績に影響を及ぼす可能性があります。詳細については「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記情報(退職給付関係)」をご参照ください。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、下記文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
A)財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の経営成績等につきましては、新型コロナウイルス感染症拡大による前年度落ち込みからの急回復に加えて、主に樹脂ビジネスにおける市況価格の急騰によって収益性が改善されたことにより、第1四半期当初から上期にかけて業績が大きく伸長しました。第3四半期以降においては、樹脂ビジネスにおける収益性の正常化、海上運賃の高騰に起因する物流コストの増加、経済活動制限の緩和に伴う経費執行の増加等により上期に比べて業績伸長のペースはやや減速しましたが、通期では全体としては当初想定していた業績を大きく上回り、各段階利益で過去最高値を更新する結果となりました。詳細については、 「(1)経営成績等の状況の概況 ①経営成績の状況 ②財政状態の状況 ③キャッシュ・フローの状況 ④販売の状況」をご参照ください。
事業ポートフォリオの観点では、Prinovaグループを中心とするニュートリション関連ビジネスの素材販売および製造・加工が高い収益性のもと通年で好調に推移し、中期経営計画ACE 2.0での注力領域であるフード関連ビジネスが一層伸長いたしました。同じくACE 2.0の注力領域であるバイオ関連事業においては、新規素材の開発および事業創出に向けて、NAGASEバイオテック室の創設や、ナガセR&Dセンターにおいてはその内部組織としてバイオテックを活用した独自の新素材の調査・探索とグループ連携を担うイノベーション推進室を設置し、名称をナガセバイオイノベーションセンターに変更するなど、グループ全体のバイオイノベーション創出を推進する体制を構築しました。また基盤領域である汎用材料販売におきましては、樹脂ビジネスの市況高騰やOA機器・自動車生産台数の回復により、樹脂販売の収益性が大きく改善する等、全社の収益構造の改善が図られました。更に、収益構造の変革に向けて一部の不採算および低効率事業からの撤退を実施しポートフォリオの改善を進めました。
また、前年度から引き続き政策保有株式の売却を実施し、特別利益を計上しています。なお、ここから得られた資金は将来に向けた成長投資や株主還元等に効果的・効率的に活用してまいります。
成長投資の観点では、デジタルトランスフォーメーション(DX)・先端技術関連投資・研究開発関連投資等、中長期的な成長に向けた新しいビジネスモデルの構築に必要な投資を継続しております。
B)当社グループの経営成績等に重要な影響を与える要因
「2.事業等のリスク」をご参照ください。
C)キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に関する情報
当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績の状況 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきましては、以下のとおりであります。
当社グループの資金需要は商品の仕入、製造費、販売費、研究開発などの一般管理費、設備投資、デジタルマーケティングなどへの新規成長投資、M&Aによる株式や営業権取得が主なものです。持続的成長の実現に向け、これらの資金需要に対応するための安定的かつ機動的な資金の確保は重要な戦略と考えています。
資本の財源としましては、営業活動によるキャッシュ・フローに加え、資金調達手段として金融機関からの借入の実施、社債ならびにコマーシャル・ペーパーの機動的な発行による資本市場からの調達など、多様化を図りながらバランスの良い調達を実施しております。
また、金融・資本市場における不測の事態や急な資金需要が発生した場合に備え、複数の金融機関と長期・短期のコミットメントライン契約を締結し流動性を確保しております。
当社グループの資金管理については日本国内における当社と国内子会社間においては日本円、中国国内の現地法人間においては人民元およびUSドル、また米国と一部アジア地区およびメキシコにおける現地法人間においてはUSドルのキャッシュ・マネジメント・システムを導入しており、資金の効率化を図ることで、流動性確保と金融費用の削減に努めております。
本報告書提出時点における格付けについては、株式会社格付投資情報センター(R&I)から発行体格付と長期債格付ともに「A」(シングルAフラット)を、短期格付で「a-1」(aワン)を取得しており、また取引先金融機関とは良好な関係を維持しております。
現状の資金調達および資金繰りに問題はないと認識しておりますが、新型コロナウイルス感染症の再拡大、ウクライナ情勢の深刻化などで当社グループのビジネスに影響が及ぶ場合は、手元流動性を厚めに保有するなどの手段を講じる場合があります。
D)経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の達成・進捗状況について
中期経営計画「ACE 2.0」における重要指標は以下のとおりです。
当社グループでは資本効率性の向上と収益力の拡大を課題としており、ROEおよび営業利益をKGI(Key Goal Indicator)として掲げております。ACE 2.0の初年度にあたる当年度は、旺盛な需要による注力領域における事業の伸長や市況の高騰による収益性の改善等に加え、株主還元を進めたことにより、ROEは7.7%と目標に向けて大きく改善し、営業利益は352億円と目標の350億円に到達しました。ACE 2.0では、“質の追求”を実現することで各定量目標を恒常的に実績化できることを目指しており、引き続きACE 2.0を推進していきます。
なお、ACE 2.0の基本方針および取り組み状況については、「1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(2)中期経営計画 ACE 2.0」をご参照ください。
該当事項はありません。
当社グループは、グループの総合力を結集し、新規事業創出のため、マーケティング活動に基づく新技術・新製品の開発と技術情報の発信を目的に研究開発活動を行っております。
NVC(New Value Creation)室はAI、IoTや通信技術の中長期トレンドを見据えた新しい価値を創造することで、これまでグループになかったビジネスの仕組みを作ることを目指しています。SaaS型マテリアルズ・インフォマティクス支援サービス“TABRASA”、5Gネットワークインフラの低遅延化と処理性能をアクセラレートするIPコア“Axonerve”、人間の五感をベースとしたポータブルセンサー、ブロックチェーン技術によるトレーディングサポートシステム、次世代AIハードウェア向け要素技術、AIによる疾患予防技術、等の開発を推進しております。
ナガセバイオイノベーションセンターでは、サステナブル社会の実現に向けて、独自のコア技術(放線菌の育種・発酵技術:N-STePP®(注))と基盤技術を活用して、現在は化学合成困難とされる植物や動物由来の希少有用物質を発酵法で高効率生産できるように「プロセスイノベーション」(=Unavailable Made Available)を目指して取り組んでおります。発酵法は従来の抽出法や化学合成法に比べ、「安全・安心、環境にやさしい」と言う特徴があります。現在は、藻類由来の紫外線吸収物質(マイコスポリン様アミノ酸)、キノコや麦類に含有される希少抗酸化アミノ酸(エルゴチオネイン)、バイオ色素等の放線菌特有の機能性物質の発酵生産を検討しています。これらの有用物質を、機能性食品、化粧品、および工業用品として広く展開されるよう開発を進めると同時に毎年多数の特許を出願・登録しております。また、グループのバイオテクの総力を活かし、イノベーション創出に向けたテーマ創生を推進しております。このように当センターは、グループ独自の技術を活用して、グループの将来の事業を先導する新規事業の芽の創出をミッションとして、活動し続けております。
(注)Nagase Streptomyces Technology for Protein/Precious Productsの略称、弊社の国内登録商標
ナガセアプリケーションワークショップ(NAW)では、プラスチック、コーティング材料の分野で原材料の評価分析、用途開発から、それら原材料を使った最終製品の処方開発を行うことができる設備と専門性の高い技術スタッフを有しております。取引先やグループ製造会社が持つ素材や加工技術を組み合わせ、グループネットワークを活かしたマーケティング機能で得た市場ニーズに応えるソリューション提案を行っております。新規材料や技術の目利きを行い、末端アプリケーションで求められる性能を満たす処方開発を行うことで、CMF(注)、機能性UP、Green材料開発等におけるお客様の課題解決をサポートします。これらの活動により、当社グループ独自の商社業の差別化戦略を支えるとともに、商社が運営するラボならではの自由な発想でサステナブルな新規事業開発に貢献することを目指して活動しています。
(注)モノの表面を表すColor(色) Material(素材) Finish(加工方法)の略
ナガセケムテックス㈱では、「バイオマテリアル」分野を育成事業領域の1つとして注力しております。なかでも、医療材料、医療機器分野における低エンドトキシン化ニーズに応えるべく、独自のエンドトキシン除去・低減化技術を活用したビジネス展開を鋭意進めております。これまで、低エンドトキシンプルラン・ゼラチン・アルギン酸ナトリウムなどの素材をアルコフェリスシリーズとして順次リリースしておりますが、更なるラインナップの拡充へ向け開発を継続中です。また、エンドトキシンを除去低減 “したモノ” に加え、エンドトキシンを除去低減 “するモノ” (エンドトキシン除去低減用ミニカラム) や、エンドトキシンを除去・低減 “するコト” (エンドトキシン除去低減サービス) といった新たなビジネスの創出を進めて参ります。
INKRON Oyでは、独自のシロキサン合成技術により、光学デバイスおよび電子デバイス向け機能性材料の開発・製造を行っております。特に次世代デバイスとして開発が進む拡張現実(AR)/複合現実(MR)ウェアラブルディスプレイ向けの光学部品材料の開発が進捗しており、ガラス基板メーカー、ナノインプリント(NIL)装置メーカーおよび回折導波路設計会社とパートナーシップを結びNIL工法による革新的なソリューションを提供してまいります。ナガセケムテックス㈱にて長年にわたって蓄積してきたナノ粒子分散技術、量産化技術、品質管理システムとの補完的相乗効果により、次世代デバイス向け先端材料のグローバル供給を通じて顧客のイノベーションに貢献してまいります。
㈱林原では、食品はもとより、化粧品、医薬品・医療から、農業、工業分野に至るまで様々な領域において、「トレハ®」・「プルラン」をはじめとする糖質を広くご利用頂くべく、研究開発活動を行っております。注力商品である「ファイバリクサ®」および「林原ヘスペリジン®S」については、消費者の認知度を上げると共に、さらなる機能性表示食品への展開ならびに新規用途開発活動を強化しております。新規素材については、水溶性食物繊維水あめ「テトラリング®」、ヘアケア・スタイリング剤向け新原料「リセナーレ®」の上市を行いました。引続き、微生物からの新規酵素生産菌の探索を行い、独自酵素を用いて生み出される素材、あるいは微生物発酵によって製造される素材の研究開発を進めております。さらに、新たな素材を次世代の主力製品として育成するために、特許・知財戦略も考慮しながら、製法検討を進め、市場分析、有用な利用法の提案、アプリケーション開発等の活動を推進しております。一方、機能性色素の研究開発活動としては、保有する豊富な機能性色素ライブラリーを活用しながら、写真・印刷刷版等の工業分野に加えて、色素の耐久性の改善による用途展開、現在伸びている医薬品や検査薬等のライフサイエンス分野への展開に注力した開発活動を継続しております。
なお、当連結会計年度におけるセグメントごとの研究開発費は次のとおりです。
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セグメントの名称 |
金額(百万円) |
|
機能素材 |
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加工材料 |
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電子・エネルギー |
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モビリティ |
|
|
生活関連 |
|
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全社(共通)(注) |
|
|
合計 |
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(注)全社(共通)は特定のセグメントに関連付けられない基礎研究等に関する費用です。