第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営方針等

a.企業理念

≪社是≫

一.社業を通じて社会に貢献せん

二.和をもって最善をつくさん

三.善意と良識を身上として日々を全うせん

 

当社の企業理念は、社是にあるとおり事業活動を通じて社会生活の向上並びに社会基盤等の整備に貢献することにあり、そのために全役職員が良心に恥じることなく「善意と良識を身上として」事業活動を全うすることであります。また、すべてのステークホルダーや環境との「和をもって」その関係に最善を尽くし、社会の発展に資することを目的としております。

当社は1897年の創業以来、一貫として社是の精神で事業活動を行ってまいりました。社会、経済、環境など大きな変革を遂げている現代社会において、この社是の精神をカノークスグループ社員全員の『行動規範』に据えて事業活動を全うしていく所存であります。

 

≪パーパス≫

「地域社会と地域産業の持続的成長に信頼のサプライチェーンで貢献する」

 

創業より当社グループを支えて頂いた地域への感謝であり、サプライチェーンを通じて地域社会を元気にしたい、という想いで、その土地やその地域の経済・社会にしっかり根を生やし、一緒になって持続的成長に取り組んでいくことが当社グループの社会的存在意義であります。

 

b. 経営理念

「常にお客様から第一に求められる企業に」

 

社是の精神によって当社グループがお客様の繁栄の礎となり、常にお客様から選ばれ、それも一番に求められる企業になることを目指して、役職員全員が日々の事業活動に精進しております。

 

(2)経営環境

当社グループを取り巻く経営環境は、約3年に及ぶコロナ・パンデミックから抜け出たものの、ウィズ・コロナ社会への対応や、第二次世界大戦後の世界秩序の崩壊、ウクライナ、中東の地政学リスクの増大が、世界経済をより不透明かつ不安定なものにしております。それらの影響として資材高騰と安全保障のあり方など、様々な新たな課題が顕在化している状況です。不透明な環境下だからこそ、当社グループを今日まで育ててくれた地域社会・経済に信頼のサプライチェーンで貢献すべく、機能の一層の充実強化と、企業としての持続的成長を目指してまいります。

 

(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは、事業活動の成果を示す経常利益を重要な経営指標と位置付け、企業経営に取り組んでおります。また、近年の鋼材価格の大幅な上昇を背景に当社グループの運転資金ニーズが増加したことから、有利子負債は大きく増加しております。持続的成長による収益の拡大とともに、安定的、効率的な財務基盤を構築する事が肝要であり、財務的視点からROE、D/Eレシオについても重要な指標ととらえております。

 

(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

①中長期の経営課題

2022年度より新たな3か年計画、第10次中期経営計画がスタートしております。本中計のテーマとして「カノークス第二の創業 ~持続的成長に向けて再起動~」を掲げました。社会全体が大きな変革期を迎えている中、もう一度、原点に立ち帰り、信頼のサプライチェーンを堅持しつつ、大胆に新たな分野への挑戦をグループ一丸となって臨みます。

 

 このような環境下、当社グループが対処すべき課題は大きく3点であります。

 まず1つ目は、自動車のEVシフトへの対応であり、それが今後加速しても、当社グループがなくてはならない存在であるための事業戦略を検討推進してまいります。EVシフトの流れに沿った鉄の需要変化を的確に捉え、現行の鉄鋼製品のサプライチェーンをしっかり堅持するとともに、鉄以外の素材の取扱いを検討し(マルチマテリアル化)、事業領域の拡大に挑戦してまいります。

2つ目は、カーボンニュートラル・脱炭素に向けた事業戦略の展開であります。当社グループ独自での環境負荷低減への取り組みに加え、電炉材の取扱いの拡大をしてまいります。主原料となる鉄スクラップを溶かし再利用する電炉材は、鉄鉱石や石炭等の原材料から鉄を作る高炉材に比べ、製造時のCO2排出量が1/5程度である利点があり、脱炭素型鉄鋼製品として電炉材の拡販を積極的に進め、取引先と共にサプライチェーン全体でカーボンニュートラルの促進に取り組んでまいります。

 3つ目は、持続的成長SDGsに資する取り組みの充実を図っていくことであります。SDGsと紐付けした当社グループの活動を更にレベルアップさせ推進強化してまいります。地域社会への貢献、人材教育と平等で健康な職場の実現、生産性向上を通じたイノベーションと環境負荷の低減、間接的であれ世界の貧困飢餓の問題解決を支援する活動など、様々な可能性を「Think Global,Act Local」の標語のもと、全社員が共有し、積極的に取り組んでまいります。

 

②経常利益の拡大

当社グループは自前の加工機能を充実させ、受注、発注、加工、品質・在庫管理、タイムリーな小口納入など、一気通貫できめ細かな供給対応を構築してまいりました。

取引に付加価値を付け、鉄鋼メーカーと顧客の間にあって、「なくてはならない存在」になることを目指し、取引によるスプレッド確保に加えて、販売量そのものの増加により経常利益の拡大に取り組んでまいります。

 

③財務面への対処

自動車関連の減産影響に伴う在庫量の増加は解消してきているものの、近年の鋼材価格の大幅な上昇による運転資金ニーズの増加を受け、有利子負債は大きく増加しております。借入余力の確保とともに新たな資金調達方法の検討、発注・在庫管理の徹底による適正在庫の維持等を通じ、健全な財務基盤の構築を図ってまいります。

 

④流動性の確保と企業価値の拡大

 当社は、当社株式の流動性の向上に努めることを重要な経営課題と位置付けております。

 大株主とは当社株式の持分比率を下げていく方針であることを確認済であり、2024年2月1日には当社が設定した株式需給緩衝信託を通じて大株主が保有する当社株式の一部を取得しており、順次市場への売却を進めております。

 2023年3月31日時点において流通株式比率は26.27%、直近の2024年3月31日時点では36.21%であり東証スタンダード市場基準の25%以上を上回っている状況であります。今後一般市場における幅広い投資家の参加を通じ、流通株式比率を30%超とすることをベンチマークとして当社企業価値の向上と積極的なIR活動を展開してまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)ガバナンス

 現在、私たちが住む地球は急速に進行する温暖化、生態系の破壊、止むことのない地域紛争、広がる格差・貧困・飢餓など、多くの深刻な問題に直面しております。サステナブルな未来を実現するためには、現在だけのことや自社だけの利益に目を向けるのではなく、地球規模での全体の豊かさや成長を考えていく必要があります。地球規模の問題の大きさと比べると、ひとり一人にできることは小さいものかもしれませんが、どんなに小さなことでもひとり一人が行動を起こすことで世界は変わります。

「私たちの日々の生活にあっても、地域・日本・世界・地球へと思いを馳せながら、ひとり一人が出来ることを積み上げていく。」

 日々の仕事が直接、間接に地球の持続的な成長に繋がっているという役職員の意識と行動こそが、カノークスグループがこれからも持続可能な会社であり続ける絶対条件であると考えております。

 当社グループは、サステナビリティ経営を実現するために、IR推進チーム、SDGs推進チーム、DX推進チームの3つのチームを組成しており、ESG(環境・社会・ガバナンス)の3つの観点から、長期的な視野を持って社会の持続的な成長に資する取り組みを実践してまいります。

 取締役会は、サステナビリティ経営を実現するための3つのチームの活動内容を重要事項と認識し、取り組み状況や目標の達成状況の報告を受け、モニタリングをしております。

 

「サステナビリティビジョン」

 

 ①環境:Environment

(2030年度目標)

・温室効果ガス排出量     2020年度比 50%削減(Scope1及びScope2)

・再生可能エネルギー導入比率 2020年度比 30%向上

・電炉材調達比率       2020年度比 30%向上

・廃棄ロス低減及びリサイクル品の使用促進

 

 ②社会:Social

・研修の充実を図り「人財育成」

・働き方改革を推進し「働きやすさ」と「働きがい」の両立

・顧客へ「信頼のサプライチェーンで貢献」し、地域へは「SDGs推進や社員の地域おこし活動で貢献」

 

 ③ガバナンス:Governance

・タイムリーな企業情報の開示と働きがいと風通しの良い職場環境の整備

・経営インフラ4委員会(コンプライアンス・リスク管理・内部統制・安全衛生)の活動の充実

 

(2)戦略

 当社グループは、「地域社会と地域経済の持続的成長に信頼のサプライチェーンで貢献する」をPURPOSE(社会的存在意義)として掲げており、激変する事業環境とニーズに機敏に対応すべく、個の力を育て尊重し、レジリエンスのある企業体質の確立を目指します。また、鉄鋼を基盤としながら、マルチマテリアル化(MM化)を追求し、変革と成長を通じて地域社会の発展とすべてのステークホルダーへの貢献にも取り組んでまいります。レジリエンスの精神をもって社会経済環境の変化を受け止め、これからの在り姿(ビジョン)を役職員でしっかりと共有し、果断な経営判断と今まで以上のスピードで立案・実行をしてまいります。

 第10次中期経営計画における事業戦略の重点テーマは、EVシフトへの対応マルチマテリアル化の推進そしてカーボンニュートラル対応の3点でありますその中でも動きが活発化しているのが車の完全電動化(BEV化)であり、自動車メーカー各社はここ数年でBEV化対応の規模スピードを数段上方修正し世界市場での覇権争いを本格化させております当社の強みであるマフラー用鋼管に代表される排気系部品は将来的には減少することを前提に優良顧客への新たな部材の取引を推進しております変革が迫られるTier1部品メーカー各社とは当社の機能提供に裏打ちされた信頼を勝ち得ながらEVシフトに紐付いた新規取引が急速に増加しており、将来減少していくであろう取引以上のビジネスチャンスを確実に捕捉してまいります

 

人的資本・多様性に関する考え方及び取組

 当社グループの人材の育成は、「多様性を尊重した能力発揮の場を提供し 自ら考え主体的にやり抜く人財を求め育て報いる」を人事理念として掲げております。「人」は当社グループの「財産」であり、人の成長は企業の成長と考え、継続的な企業価値向上を目指して「人財」育成に力を入れております。入社後の新入社員研修では社会人の基礎を学び、配属後のOJTを通じて実際の仕事のノウハウを身に付けるとともに、各種階層別フォローアップ研修や資格取得支援制度も整備されており、ひとり一人の成長をしっかりと見届け、きめ細やかな対応を推進しております。

 このほかにも組織や人財変革に向けた取り組みとして、以下の取り組み等を継続して実施いたしました。

 

 ・女性活躍の推進とワーク・ライフ・バランスに関する取り組み

 イノベーションを生み出す多様性ある集団となることを目指し、従来の固定的な性別による役割分担に捉われないジェンダーフリーの考え方を強力に推進しております。SDGs推進チーム、IR推進チームへの女性社員の積極的参画や女性向けリーダーシップ研修の実施、一般職が総合職への職掌転換を目指す準総合職の設定など、新たな施策も積極的に実施、画策しております。現時点で一般職から準総合職への職掌転換はありませんが、今後も女性が生き生きと活躍できる環境づくりへの取り組みを推進してまいります。

 また、ワーク・ライフ・バランスでは、有給休暇扱いでの子の看護休暇制度、取得可能期間を拡充した時短勤務制度、テレワーク勤務の推進やRPAの活用による業務効率化等、サステナビリティ経営の推進に注力しております。2024年3月現在、「名古屋市ワーク・ライフ・バランス推進企業」認証のほか、各団体の認証を取得しております。

 

 

 ・健康経営宣言

 社員の健康管理を経営的視点から捉え、戦略的に健康経営を実践することで、社員一人ひとりが心身ともに健康で生き生きと安心して働き続けることができるよう「健康経営宣言」を制定しております。健康診断項目をワングレードアップさせ、従業員の配偶者も含めた健診費用の全額会社負担や、全役職員とその扶養家族を対象とした三大疾病保険の全額会社負担等の健康経営を推進し、2024年3月現在、経済産業省の「健康経営優良法人」に認定されております。

 

 ・障がい者雇用と子ども食堂への野菜の寄付

 安定した障がい者雇用の職場環境づくりのため障がい者の方がそれぞれの能力特性を活かしながら働くことができる取り組みとして、2020年12月より、エスプールプラスが運営する「わーくはぴねす農園あいち小牧」において障がい者の方の雇用をしております。また、2023年10月には、「わーくはぴねす農園Plus名古屋第2ファーム」を開設しました。SDGsの地域・社会貢献活動の一環として、農園で収穫できた野菜は名古屋市内で子ども食堂を運営する「一般社団法人つなぐ子ども未来」へ継続的に寄付しております。障がい者の方が生き生きと働ける職場環境を整備することで社員のダイバーシティー意識が高まるだけでなくアットホームで社員同士が助け合う社風が形成されることを期待しております

 

(3)リスク管理

 当社グループは、企業活動に伴うリスクを把握・分析し、リスク顕在化の未然防止、影響を最小限に留めるべく「リスク管理組織・運営規程」を制定しております。リスク管理を統括する組織としてリスク管理委員会を設置しており、会社存続に関わる重大なリスクが発生した場合は対策本部を設置し、対応しております。なお、リスク管理委員会は、経営インフラ統括管掌、管理本部長、経営企画部長、総務部長、人事部長、財経部長、審査部長をもって構成されております。

 

(4)指標及び目標

 当社グループの事業環境の変化を認識したうえで、事業戦略の重点テーマの長期的な指標及び目標を以下のとおり設定いたしました。

 

課題項目

KPI

第10次中計

2022年度

2023年度

2024年度

計画

実績

計画

実績

計画

EVシフト

当社EV受注比率

0.6%

1.0%

1.0%

2.0%

1.0%

マルチマテリアル

鉄/MM比率

0.05%

0.02%

0.5%

0.01%

1.0%

カーボンニュートラル

電炉材比率

6.0%

6.0%

7.0%

4.8%

8.0%

 

 上記に記載の指標及び目標以外にも、以下のとおりカーボンニュートラルへの取組みとして温室効果ガス排出量の削減を進めております。

(単位:t-CO2

課題項目

KPI

2020年度

2023年度

2024年度

2030年度

実績

実績

20年度比

見通し

20年度比

見通し

20年度比

カーボンニュートラル

GHG排出量

1,452

1,380

△5%

806

△44%

726

△50%

※温室効果ガス排出量は、電気、ガソリン、軽油の使用実績より算出しております。

 

 当社グループでは、上記「(2)戦略」において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。なお、現時点では連結グループに属する全ての会社では行われていないため、連結グループにおける記載が困難であります。このため、当該指標に関する目標及び実績は、当社グループで主要な事業を営む当社(単体)におけるものを記載しており、次のとおりであります。

 

(当社(単体)における目標及び実績)

指標

実績(当事業年度)

目標

健康経営優良法人の認定

取得済み

2030年度まで、継続取得

女性管理職数

0

2030年度まで1名以上

障がい者の法定雇用率達成

達成

2030年度まで、継続達成

 

 なお、「サステナビリティに関する考え方及び取組」に記載された数値、予測及び将来の見通しについては、本内容の発表日現在までに入手可能な情報、一定の前提や予測に基づくものです。そのため、実際の業績、結果等は、今後の経済動向、市場価格等の様々な不確定要素によって大きく異なる可能性があります。

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末日現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)鋼材価格変動による業績への影響について

 当社グループは、鋼板、鋼管、ステンレス及びその他の一般鋼材を素材のまま、あるいは子会社、関連会社及び一般外注先で剪断加工もしくは切断加工して各得意先へ販売しております。当社グループの業績は、鋼材価格の変動に影響を受ける側面を有しており、鋼材価格の市況動向把握に日々努めておりますが、急激かつ大幅に鋼材価格が変動し、価格転嫁が困難な場合には、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。併せて、これらの流通過程で発生し得る在庫過多、品切れ、資金調達等のリスクについても、販売先の使用量及び仕入メーカーの生産量等の情報を迅速に分析し、合理的に対応するよう努めております。

 

(2)商品(寄託在庫)の実在性及び網羅性について

 当社グループの扱う鉄鋼製品は、自社倉庫及び寄託倉庫に保管されております。商品残高は、当社グループの総資産の約2~3割を占めるため、帳簿残高と現物に大きな差異が発生し、それが調整されず商品の帳簿残高に誤りが含まれている場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。このリスクの最小化のため、自社倉庫については半期ごとに実地棚卸を実施し、寄託倉庫では在庫保管証明書と帳簿残高との照合を行うことに加え、当社が作成をしている「棚卸実施基準」に応じて実地棚卸を行い、商品の実在性の確認に努めております。

 

(3)取引先について

 当社グループの売上高は、約6割が自動車業界向けのものであり、その中でもトヨタ自動車様系列との取引が最も大きく、当社グループの売上高の約4割を占めております。また、ほとんどの取引が国内取引となっております。顧客のニーズを的確に捉え、事業戦略を展開しておりますが、自動車業界のEVシフトによる既存鋼材需要の減少及び、海外生産シフトによる国内生産の減少並びに顧客の生産動向等、当社グループを取り巻く国内の環境が悪化した場合、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。当社としてはEVシフトで新たに需要家が求める鉄以外の新素材にも対応すべくアルミ、チタン、樹脂といったマルチマテリアルの供給体制の基盤構築を現行の第10次中期経営計画でも重点取り組みとしております。この将来基盤を固めつつ、部品メーカーとの関係強化を一層図り新規受注を図ってまいります。

 

(4)与信リスクについて

 当社グループの国内及び海外の取引先に対する売掛債権等については信用リスクが存在します。売掛債権等は「取引限度枠管理規程」に基づき慎重に与信管理を行っておりますので、現時点で売掛債権等の回収に関して巨額な回収不能額が発生する兆候はありませんが、取引先の信用状態が悪化し、多額の債務履行に問題が生じた場合には、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。要注意先については、相手先の経営トップを含むヒアリングを通じたモニタリング強化を図る等、メリハリを効かせた与信管理を行っております。

 

(5)株価変動リスクについて

 当社グループは、取引先を中心として株式を保有しており株価変動リスクが存在します。

 政策保有株については保有意義を定期的に確認し縮減の方針で臨んでいると共に、保有株式の株価のモニタリングを継続して行っております。現時点では保有株式の巨額な減損処理等は発生しておりませんが、市場の変動や保有株式の企業グループの経営成績の悪化等の要因により急激な株価の下落が生じ、保有株式の減損等が発生した場合には、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6)金利変動リスクについて

 当社グループの有利子負債の支払利息は、変動金利及び固定金利を組み合わせることによって、金利変動によるリスクの低減に努めております。当社グループの変動金利は全てTibor連動であります。今後、日銀のマイナス金利政策解除の影響による大幅な金利変動が生じた場合には、金利上昇は支払利息の増加を招き当社の経営成績に影響を及ぼす可能性があります。有利子負債の総額および長期・短期の妥当性をモニタリングすると共に、フリーキャッシュ・フローの改善に努めております。

 

(7)オペレーショナルリスクについて

 当社グループは、コンプライアンス、安全衛生、内部統制、リスク管理を経営上の重要課題と位置付けており、それぞれの委員会活動の実効性を高め、牽制機能の強化を図っております。業務運営において役員・社員の不正及び不法行為、事故発生の防止に万全を期すべく取り組んでおりますが、有効なリスク管理体制を構築している状況においても、従業員等の悪意、重大な過失に基づく行動、事故に繋がる想定外の事象等、様々な要因により、万一、重大な不正行為、事故が発生した場合には、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8)自然災害その他リスクについて

 自然災害等のリスクは発生可能性を見積もることが困難なリスクとなりますが、当社はそのようなリスクに備え、損害保険の加入、耐震工事の実施、リモートワークの推進等、出来うる対応をとっております。ただし、実際に地震・洪水等の自然災害や火災等の事故災害、感染症の流行、テロや戦争、その他要因により社会的混乱等が発生して、事業活動の停止や機会損失、復旧のための多額の費用負担等により、現在想定している以上の損害が発生する場合には、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(9)不動産に対する減損のリスク

 当社グループは、事業用不動産を所有しており、固定資産の減損会計の適用により、損失を計上する可能性を有しています。現時点では事業用不動産に関し、減損の兆候はありませんが、不動産時価の下落、事業収益性の低下等に伴い資産価値が低減した場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10)情報セキュリティについて

 当社は高まる情報セキュリティのリスクに対して、「情報セキュリティ管理・運営規程」に基づき、外部からのサイバー攻撃への対策、標的型攻撃に対する社員への啓発、教育などを実施しておりますことに加え、サイバー保険にも加入しており、不測の事態が発生した場合には即時システムプロフェッショナルの派遣により復旧作業に臨む体制を取っております。現時点で不測の事態は発生していませんが、万一、外部からのサイバーテロやコンピューターウイルスの侵入などによるインフラ障害等により、機密情報の漏洩または喪失があった場合、被害の規模によっては当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(11)メタルワングループとの関係について

 ㈱メタルワンは当連結会計年度末において、当社発行済株式総数(自己株式を除く)の34.6%を保有しており、同社は当社の大株主に該当します。

 

①メタルワングループにおける当社の位置づけ

 メタルワンは鉄鋼商社であり、当社と同一の事業を営んでおりますが、鉄鋼流通業界の特徴として商社の立場からその取引商流を主体的に変更することは困難であり、同社グループと当社グループの間では商圏及び商流による棲み分けがなされております。

 当社は経営方針や事業計画の策定・実行、日常の事業運営や取引等を独自に行っており、経営の独立性は確保されておりますが、同社は株主総会における議決権行使等により当社の経営等に影響を及ぼし得る立場にあり、同社の経営方針の動向によっては当社グループの経営体制に影響を及ぼす可能性があります。

 

②人的関係

 当連結会計年度末現在、同社グループからの役員や出向者の受け入れや派遣はありません。

 

③取引関係

 当連結会計年度におけるメタルワングループとの取引関係は、販売取引1,652百万円(2024年3月期売上高の0.96%)仕入及び加工取引3,911百万円(2024年3月期売上原価の2.38%)その他営業取引2百万円(2024年3月期販売費及び一般管理費の0.06%)等であり、その主な内訳は以下の通りであります。

 なお、鋼材の販売・仕入価格は市場の実勢価格を基準として取引を行っており、その他の取引については独立第三者取引と同様の一般的な取引条件で行っております。

 

 

 

 

 

 

 

(単位:百万円)

属性

会社等の名称

所在地

資本金又は

出資金

事業の内容

取引の内容

取引金額

その他の

関係会社

メタルワン

東京都

千代田区

100,000

鉄鋼商社

鋼材の販売

鋼材の仕入

その他の営業取引

当社株式の取得

60

2,437

2

2,318

その他の関係

会社の子会社

メタルワングループ会社

(18社)

鋼材の販売

鋼材の仕入及び委託加工

1,592

1,474

合計

 

 

 

 

 

7,885

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

  当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用関連会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況

 当連結会計年度における世界経済は、約3年に及ぶコロナ・パンデミックから抜け出たものの、ウクライナ、中東の地政学リスクが急激に高まる中で資源価格が上昇、加えて先進諸国ではコロナ禍での流動性供給の反動が表面化し、金融引締めによるインフレ抑制対応に苦慮した一年となりました。わが国経済は自動車生産が急速に回復し、旺盛なインバウンド需要の戻りにより飲食・サービス業も回復が見られた一方で、建設・建築分野では人手不足により低迷し、全般的には緩やかな回復基調を辿りました。金融政策においては長年継続してきたゼロ金利政策を維持しながら慎重に出口戦略を探ったことから、先進各国との金利差が広がり、記録的な円安となりました。資源の大半を輸入に依存するわが国は、近年経験したことのないコスト・プッシュ型インフレとなり家計を直撃しました。当社グループを取り巻く鉄鋼業界は、鋼材価格の是正の動きを継続し、輸入鋼材の安値流入も円安によって守られたことから、上昇を続けた市況は値崩れすることなく維持されております。

 一方で需要サイドは、自動車の生産回復が順調な反面、建築・店売り分野は力強さに欠け、流通商社は値上がる鋼材価格の顧客への転嫁に苦慮した一年となりました。

 このような環境の中にあって、当社グループは主力顧客であるトヨタ自動車が3年振りに国内生産300万台を超え、昨年度の280万台から332万台と急回復したことで、建材・住宅関連分野の伸び悩みをカバーしました。自動車分野では攻守織り交ぜた営業活動を展開し、この数年の自動車減産で積みあがった在庫の削減にも取り組みました。建材・住宅関連分野は値上がる仕入単価を真摯なコミュニケーションを通じ顧客への転嫁を進めてまいりました。

 その結果、当連結会計年度の当社グループの売上高は、主力の自動車分野向けの販売好調等が寄与したことにより1,724億85百万円(前年同期比13.7%増)となりました。営業利益は25億29百万円(同7.1%増)、経常利益は28億34百万円(同10.4%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は19億52百万円(同9.8%増)となりました。

 当社グループのセグメントの業績については、「第5 経理の状況 1 (1)連結財務諸表 注記事項」のとおり鉄鋼販売事業の単一セグメントであるため、記載を省略しております。

 

②キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、税金等調整前当期純利益の計上、売上債権の減少等の資金増加要因が、仕入債務の減少、短期借入金の返済による支出、株式需給緩衝信託に基づく自己株式の取得等による資金減少要因を上回ったことで、当連結会計年度末残高は前連結会計年度末に比べ1億30百万円増加し、30億83百万円となりました。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益28億34百万円の計上や、売上債権の減少30億56百万円等による資金増加要因が、仕入債務の減少10億78百万円等による資金減少要因を上回ったため、49億63百万円の資金増加(前連結会計年度は64億78百万円の資金減少)となりました。

 

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動によるキャッシュ・フローは、主に有形固定資産の取得による支出84百万円等により、96百万円の資金減少(前連結会計年度は92百万円の資金減少)となりました。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動によるキャッシュ・フローは、主に短期借入金の返済による支出15億円株式需給緩衝信託に基づく自己株式の取得等による支出23億18百万円配当金の支払による支出9億67百万円等により47億36百万円の資金減少(前連結会計年度は66億37百万円の資金増加)となりました

 

③生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 該当事項はありません。

 

b.受注実績

 当連結会計年度における受注状況は、次のとおりであります。

(単位:千円)

 

セグメントの名称

受注高

受注残高

 

前年同期比(%)

 

前年同期比(%)

鉄鋼販売事業

177,545,227

112.5

49,325,917

111.4

(注)当社グループは、鉄鋼販売事業の単一セグメントとなっております。

 

 

c.販売実績

 当連結会計年度における販売実績は、次のとおりであります。

(単位:千円)

 

セグメントの名称

金額

 

品種

 

前年同期比(%)

鉄鋼販売事業

鋼板

108,591,312

116.6

鋼管

26,675,794

104.7

条鋼

2,401,160

79.4

ステンレス等

33,986,354

115.6

その他

830,385

128.1

合計

172,485,005

113.7

(注)1.当社グループは、鉄鋼販売事業の単一セグメントとなっております。

2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

 

相手先

前連結会計年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

トヨタ自動車㈱

2,665,797

1.8

33,429,098

19.4

フタバ産業㈱

19,810,057

13.1

22,452,458

13.0

 

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①財政状態の分析

(資産の部)

 当連結会計年度末における流動資産は725億5百万円となり、前連結会計年度末に比べ30億27百万円減少しました。これは主に売上債権(受取手形、電子記録債権、売掛金)の減少30億56百万円によるものであります。固定資産は188億80百万円となり、前連結会計年度末に比べ59億1百万円増加しました。これは主に投資有価証券の時価の上昇による増加50億86百万円によるものであります。

 この結果、総資産は914億10百万円となり、前連結会計年度末に比べ28億69百万円増加しました。

 

(負債の部)

 当連結会計年度末における流動負債は495億51百万円となり、前連結会計年度末に比べ22億65百万円減少しました。これは主に仕入債務(支払手形及び買掛金、電子記録債務)の減少10億78百万円、短期借入金の減少15億円によるものであります。また、固定負債は122億89百万円となり、前連結会計年度末に比べ20億67百万円増加しました。これは主に繰延税金負債の増加18億47百万円によるものであります。

 この結果、負債は618億40百万円となり、前連結会計年度末に比べ1億98百万円減少しました。

 

(純資産の部)

 当連結会計年度末における純資産は295億70百万円となり、前連結会計年度末に比べ30億67百万円増加しました。これは主に親会社株主に帰属する当期純利益の計上19億52百万円、その他有価証券評価差額金の増加35億18百万円、自己株式の増加21億10百万円等によるものであります。

 この結果、自己資本比率は32.3%(前連結会計年度末は29.9%)となりました。

 

 当連結会計年度末においては、自己資本比率が前連結会計年度と比較して2.4ポイント増加して32.3%となり、財務体質は改善化の傾向であります。1株当たり純資産額におきましては、前連結会計年度末に比べ624円13銭の増加となりました。今後も成長戦略に基づく投資を通じて安定的な収益確保を推進し、それを株主還元及び財務基盤の強化へつなげていくことが当社グループにおける課題であります。

 

②経営成績の分析

 当連結会計年度の当社グループの経営成績は、主力の自動車分野向けの販売好調等が寄与したことにより、売上高は、前連結会計年度と比較し208億10百万円増加の1,724億85百万円となりました。一方で、物価上昇等に伴う運賃諸掛をはじめとした諸経費の増加により、販売費及び一般管理費は、前連結会計年度と比較し1億27百万円増加の52億95百万円となりました。これを控除した営業利益は、前連結会計年度と比較して1億68百万円増加し25億29百万円となり、経常利益は、前連結会計年度と比較して2億66百万円増加の28億34百万円となりました。

 当連結会計年度においては、新型コロナウイルス感染症の5類移行に伴い行動制約の多くが解除されたことから、個人消費やインバウンド需要が持ち直し、経済は緩やかな回復基調を辿りました。その一方で、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化に加え、中東におけるイスラエル・パレスチナの軍事的衝突による地政学的リスクの高まりや中国経済の減速の影響等により、経済の見通しは依然として不透明な状況が続いております。

 このような状況下、当社グループはPURPOSE(社会的存在意義)に掲げた「地域社会と地域産業の持続的成長に信頼のサプライチェーンで貢献する」を念頭に、第10次中期経営計画の着実な推進と丁寧に顧客ニーズへお応えしながら安定的な鋼材供給に努めてまいりました。社会全体が大きな変革期にある中で、「カノークス第二の創業~持続的成長に向けて再起動~」をテーマに、グループ一丸となって取り組んでまいります。

 

③キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 キャッシュ・フローの増減分析は、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。

短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資や長期運転資金の調達につきましては、金融機関からの長期借入を基本としております。

 なお、現時点で資金は十分な水準で推移しており、資金繰りに問題はないと判断しております。

 

 

④重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。

 国際紛争の長期化や急激な為替変動リスクなど依然として不透明な状況が続くとともに物価上昇等に伴う諸コストの増大化及び今後の金利上昇による支払利息の増加等による収益への圧迫が想定されます一方で当社主力の販売先となる自動車分野では生産が好調に推移する想定をしております。

 依然として不確実な経営環境下ではありますが、当社グループは足元の受注状況及び当社グループと関連性の高い業界団体の予測値等を参考にした上で、2024年度の日本経済は概ね安定的に推移すると仮定しております。

 この連結財務諸表の作成にあたっては、以上の前提を基に繰延税金資産の回収可能性の評価、固定資産の減損損失の有無等の会計上の見積りを検証しておりますが、提出日現在では連結財務諸表に与える重大な影響金額を計上する発生可能性は低いと認識しております。

 

5【経営上の重要な契約等】

 当社は、2024年1月31日開催の取締役会において、当社のコーポレート・ガバナンス強化および流通株式比率の向上を目的とする株式需給緩衝信託(以下「本信託」という。)の設定を決議し、野村信託銀行株式会社と本信託に関する契約を締結いたしました。

 詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(追加情報)」に記載のとおりであります。

6【研究開発活動】

 該当事項はありません。