第2 【事業の状況】

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

(1) 会社の経営の基本方針

 当社グループは、創業以来、「世の中に必要な人間となれ、世の中に必要なものこそ栄える」を企業理念として掲げ、常に世の中が求める新しい価値、お客様が求める価値の創造に努め、社会に貢献することを目指しています。

 この観点から、株主様、お取引先様、従業員などからの信頼と期待に応えることが、会社繁栄の絶対条件と考え日々の事業経営に取り組んでおります。セグメントごとの事業内容は下記のとおりであります。

 総合エネルギー事業は、全国のご家庭にMaruiGasブランドとしてお届けしている民生用LPガスや、工場で使用される産業用のLPガス・LNGを販売しています。また、カセットこんろ・ボンベや富士の湧水などの生活関連商品やガス関連機器・都市ガスの保安サービスなどをお客様に提供し、暮らしのインフラを支えています。特に民生用LPガスについてはLPガスの輸入から小売りまで一貫した供給体制をもち、全国展開している日本で唯一のLPガス事業者で、全国に約400ヶ所の拠点を有しており、その販売・物流・保安体制を活かし、きめ細やかで質の高いサービスを全国で提供しています。

 産業ガス・機械事業は、エアセパレートガス(酸素・窒素・アルゴン)、水素、ヘリウム、炭酸ガス、半導体材料ガスや医療用ガスなどの産業ガス事業と、各種ガス製造・供給設備、FAシステム、溶接装置、半導体製造装置、環境機器などの機械事業を展開しています。長年培ってきた技術力と、ガス・機械の幅広いラインアップによりお客様のニーズに合わせた提案を行い、産業全体を支えています。

 マテリアル事業は、樹脂原料や樹脂製品、ミネラルサンドなどの資源、ステンレスや非鉄金属、二次電池材料等、モノづくりに必要な原料・部材などを取り扱っています。環境商品等の成長分野への拡販や新商品の開発に加え、海外事業の強化に取り組み、事業規模の拡大を図っています。

 

(2) 目標とする経営指標

 2024年3月期を初年度とする5ヵ年に亘る中期経営計画「PLAN27」では、テーマに「水素エネルギー社会の実現に向けて」を掲げ、基本方針を「『社会課題解決』と『持続的成長』に向けた事業拡大」としています。「PLAN27」の経営数値目標としては、利益目標を「営業利益650億円」、収益性目標を「ROE10%以上」「ROIC6%以上」としています。

 

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(3) 中長期的な経営戦略

 当社は、基本方針の実現に資する取り組みとして、中期経営計画「PLAN27」を策定し、「『社会課題解決』と『持続的成長』に向けた事業拡大」に取り組んでいます。

 PLAN27では、投資や人材といったリソースを重点投下する分野を重点施策とし、「水素戦略」、「脱炭素戦略」、「国内エネルギー・サービス戦略」、「海外戦略」、「非財務戦略」の5つを掲げ、経営数値目標の達成に向けて取り組みを推進しています。

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 また、当社の利益配分に関する基本方針につきましては、継続的かつ安定的な配当により株主の皆様へ還元すると同時に、成長戦略を支えるための投資等に活用し、企業価値の最大化を図ることで株主の皆様のご期待に応えてまいります。

 PLAN27では、利益成長に応じて着実に増配し、最終年度にあたる2027年度には配当性向20%以上(市況要因を除く当期純利益ベース)、減配を行わない累進配当という目標を掲げています。

 当社はこれらの取り組みを着実に実行し、「世の中に必要とされる企業」であり続けることにより、当社グループの企業価値の向上、ひいては株主共同の利益の実現に資することができるものと考えております。

 

(4) 当面の対処すべき内容等

 今後の見通しにつきましては、日米の金融政策や中国を中心とした海外経済に先行き不透明感があるものの、雇用・所得環境の改善に伴う個人消費の持ち直しが進むとともに、脱炭素化や省人化、デジタル化への投資が見込まれることから、緩やかな回復が続くと想定されます。

 

 総合エネルギー事業は、引き続きM&A等によるLPガス直売顧客数の拡大と、エネルギー関連機器の販売強化により、LPガス数量の増加に取り組みます。エネルギーの低炭素化に向けては、燃料転換の推進やカーボンオフセットガスの販売強化、グリーンLPガスの開発を推進します。また、物流の最適化に取り組み、事業基盤の強化とコスト低減を図ります。カートリッジガス事業においては、東南アジアを中心に海外事業の拡大に取り組みます。

 産業ガス・機械事業は、エアセパレートガスや特殊ガスの調達・物流コスト上昇への対応を強化するとともに、市場拡大が見込まれる半導体、電子部品業界等への拡販に注力します。また、脱炭素に関連して、水素やアンモニア等の設備販売を強化します。水素エネルギー社会の実現に向けては、CO2フリー水素サプライチェーン構築の取り組みを着実に推進します。

 マテリアル事業は、低環境負荷PET樹脂やバイオマス燃料、二次電池材料等の販売数量増加による収益確保に努めます。また、ミネラルサンド事業や金属加工事業をはじめとする海外事業についても、引き続き強化を図ります。

 

 当社は1941年に水素の取り扱いを開始し、長い歴史に基づく経験とノウハウを有しています。液化水素の国内シェアは100%で、圧縮水素を含む水素の国内シェアは約70%となっております。水素事業は将来の資源エネルギー事業であり、大量で安価なCO2フリー水素源の獲得が最も重要だと考えています。当社グループは液化水素製造能力をさらに増強するとともに、再生可能エネルギーからの水素製造や海外からのCO2フリー水素の輸入などに取り組み、企業理念に沿った経営を進めてまいります。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

 

(1)サステナビリティ共通

 当社は、「世の中に必要な人間となれ、世の中に必要なものこそ栄える」という企業理念のもと、ガス&エネルギーを軸とした事業を通じて、持続可能な成長と社会課題の解決に取り組んでおります。また、「住みよい地球がイワタニの願いです」をスローガンに、脱炭素社会の実現及び環境との共生を目指す企業活動を行っています。

 

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 加えて、2023年度に開始した中期経営計画「PLAN27」の発表とともに、創業100周年を迎える2030年の姿を「『住みよい地球』の実現に貢献し続ける企業グループ」とし、事業に関する3つの施策「CO2フリー水素サプライチェーン構築」、「循環型社会の推進」、「地域社会を支えるインフラ・サービスの提供」と、これらの施策を下支えする「持続的成長を推進する経営基盤の強化」を長期ビジョンとして策定しました。

 長期ビジョンに向けた取り組みを通じて、持続的な社会への貢献と企業価値の向上を実現してまいります。

 

①ガバナンスとサステナビリティ推進体制

 経営の重要な意思決定及び監督機関である取締役会については、社外取締役が3分の1以上を占める構成としており、透明性のある意思決定、管理監督の実効性強化に取り組んでいます。

 また、サステナビリティを推進する施策の企画や海外を含めたグループ内浸透を担当する部署として「サステナビリティ推進部」を設置しています。加えて、グループ全体のリスクを統合的に管理する「危機管理委員会」の傘下に「サステナビリティ推進委員会」を設置し、当社グループにおける気候変動をはじめとするサステナビリティに関する課題についての審議ならびに当該事業に関する進捗状況の確認を行っています。なお、重要な事項については、取締役会に報告し、適切な監督を受ける体制となっています。

(2024年3月31日現在)

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(2)重要なサステナビリティ項目

①気候変動

 当社は、気候関連リスクを回避・低減し、また気候関連機会を実現するための戦略を重要な経営課題と位置付けており、企業として適切に対応することで持続的な成長につながると考えています。

 当社は2022年にTCFD(※)提言への賛同を表明し、気候変動が事業に与える影響とそれによるリスクと機会をシナリオに基づいて分析し、事業戦略へ反映していくよう検討を進めるなど、事業の持続的な成長へとつなげる取り組みを推進しています。

 

 (※)TCFDとは、G20の要請を受け、金融安定理事会(FSB)により、気候関連の情報開示などについて検討するため設立された「気候変動関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」です。

 

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(a)ガバナンス

 「(1)サステナビリティ共通 ①ガバナンスとサステナビリティ推進体制」をご参照ください。

 

(b)リスク管理(評価と特定・管理プロセス)

 気候変動に関するリスクと機会については、「発生の可能性」と「事業への影響度」の2軸により重要度を評価した上で、気候変動に関する「リスク」への対応と「機会」に向けた取り組みの強化を進めています。また、気候変動に関する事業影響については、財務的な影響度合いに分けて評価をしており、特に気候変動問題という特性から長期視点においてシナリオ分析を用いて将来の事業環境を評価しています。

 

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(c)戦略

 気候変動が事業に及ぼす影響の把握と気候関連の機会とリスクを具体化するために、国際エネルギー機関(IEA)や気候変動に関する政府間パネル(IPCC)のシナリオをベンチマークとして参照し、シナリオ分析を実施いたしました。

 政策・規制や市場変化による移行リスク、異常気象などによる物理リスクの中で、特に事業への影響が大きいと想定されるリスクと機会を特定し、その財務影響を可能な限り定量化し、加えて、当社グループの戦略に反映させることで、事業の持続的成長や将来のリスクの低減につなげています。

 

<主なリスク>

シナリオ

主なリスク

財務的な影響度

2℃シナリオ

化石燃料賦課金や排出権取引などの政策や規制が導入され、消費者意識の変化が進み、化石燃料の需要が大きく減少する。

生産設備への自然災害による物理的被害が拡大する。

4℃シナリオ

気温上昇により生産性が低下する。

気温上昇によりLPガスの販売が減少する。

 

<主な機会>

シナリオ

主な機会

財務的な影響度

2℃シナリオ

化石燃料代替の需要をメインとして、国内外の水素需要が大きく増加する。また水素需要の拡大に伴い水素関連設備の需要も大きく増加する。

大(※)

グリーンLPガスの開発・普及を促進すれば、大きな事業機会になる。

EVや定置式バッテリーの普及が進むことで、リチウム、コバルトなどの二次電池材料の需要が増加する。

4℃シナリオ

LPガス非常用発電機など、災害対応・BCP対応機器の販売が増加する。

(※)気候変動対応の進展度合いによっては非常に大きな成長機会となる可能性があります。

 

<財務的な影響度>

大:売上高 数百億円以上相当

中:売上高 数百億円~数十億円相当

小:売上高 数十億円相当

 

 具体的な取り組み内容については、当社ウェブサイトをご参照ください。

 (https://www.iwatani.co.jp/jpn/sustainability/environment/climate/

 

 また、これらの項目は、IEAやIPCCなどのシナリオ群に基づくものであり、多くの不確実な要素を含んでいます。刻々と変わる社会動向や技術革新など外部環境の変化に合わせて柔軟に対応していきます。

 

(d)指標と目標

 2050年までにカーボンニュートラルを目指すことを表明するとともに、そのマイルストーンとして、国内で当社グループが排出するCO2について2030年度に、2019年度比で50%削減することを目指しています。

 当社グループのCO2排出量の実績については、当社ウェブサイトをご参照ください。

https://www.iwatani.co.jp/jpn/sustainability/environment/env-data/

なお、2023年度の実績は、2024年9月頃に掲載予定です。

 

(3)その他のサステナビリティ項目

①人的資本・多様性

(a)戦略

<人材の育成に関する方針>

 当社は、事業環境の変化に対応した、持続的な成長と企業価値創造のためには「ダイバーシティ&インクルージョン」が必要と考えています。「多様な価値観を受け入れ 互いを尊重し高め合える組織へ」という、社長メッセージを発信し、ダイバーシティ&インクルージョン推進に向けた諸施策を講じています。また当社社員の行動規範となる「イワタニ企業倫理綱領」において、「ゆとりと豊かさを実現するため、多様な価値観を尊重し、能力を充分発揮できる環境をつくる」とし、個性や自立性を活かしたチームワークで、自由な発想と豊かな創造性を発揮できる人材育成に努めるとしております。

 

<社内環境整備に関する方針>

 社内体制としては2017年度からダイバーシティ担当を設置し、女性活躍推進をはじめとした多様な人材の活躍支援を行っております。当社のダイバーシティに関する考え方や方針、取り組みについては、当社ウェブサイトをご参照ください。

https://www.iwatani.co.jp/jpn/sustainability/society/diversity/

 今後も、多様な価値観を受け入れて互いを尊重し高め合える組織に向けて、ダイバーシティ経営をより一層推進します。

 

(b)指標と目標

<女性管理職比率>

 当社はこれまで、ダイバーシティ経営の一環として、仕事とライフイベントの両立支援や女性活躍推進の取り組みを推進し、「プラチナくるみん」認定と、「えるぼし」認定<2つ星>を取得しています。今後も柔軟な働き方や育児・介護関連の制度をさらに拡充し、多様な個が活躍できる風土の醸成を図り、2027年度には女性管理職比率10%以上を目指します。

 

<教育投資額>

 企業理念にある「世の中に必要な人間」となり続けるためには、社員の自律的な成長が不可欠です。神戸市に新設する研修所を活用し、社員の自律的なキャリア形成を支援する多様な経験の機会や研修プログラムを提供していきます。2027年度には現在の約2倍にあたる社員1人当たり年間150千円の教育投資を目標としています。

 

<男性社員の育児休業取得率>

 新たな価値を創出し続けられる組織であるために、女性の活躍推進に加えて、男性の育児参画を推進しています。仕事とライフイベントを両立できる柔軟な働き方の実現と、「育児ハンドブック」の発行や「パパたちの育休レポート」の発信などの取り組みを通じて風土を醸成し、2027年度には男性の育児休業取得率100%を目指します。

 

各指標の実績については、当社ウェブサイトをご参照ください。

https://www.iwatani.co.jp/jpn/sustainability/society/data/

なお、2023年度の実績は、2024年6月頃に掲載予定です。

 

3 【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 季節的な要因及び天候の変動について

 LPガスの消費量は、気温や水温の影響を受けますので、当社グループの主力商品であるLPガスの販売量は夏季に減少し、冬季に増加します。このため当社グループは利益が下半期に偏る収益構造を有しています。また、特異な天候の変動によっても、当社グループのLPガス販売量に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) LPガス輸入価格による影響について

 当社はLPガスを中東と米国から輸入しており、輸入価格の変動による影響を平準化するため、多くの卸売先との間で、販売価格をCP(Contract Price)とMB(Mont Belvieu)に連動する価格体系としています。ただし、当社では在庫評価について「先入先出法」を採用しており、LPガスの輸入から販売までのタイムラグが約3ヶ月あるため、輸入価格の上昇時には安い原価の在庫を高く売ることから増益要因となる一方、下落時には高い原価の在庫を安く売ることから減益要因となります。

 なお、当連結会計年度は7億円の増益効果(前連結会計年度は31億円の減益効果)が生じております。

 

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(3) 気候変動に係るリスクについて

 当社グループは、化石燃料であるLPガスを主力商品としている一方で、水素など脱炭素化に資する商品の普及拡大にも注力しており、今後の気候変動に係る規制等の動向によっては、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。このため、グループ全体のリスクを統合的に管理する「危機管理委員会」の傘下に設置している「サステナビリティ推進委員会」にて、気候変動に係るリスク・機会、取り組み方針、目標などについての議論や実績の進捗確認を行っています。

 気候変動に係る詳細は、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」に記載のとおりであります。

 

(4) 為替変動による影響について

 当社グループは貿易取引において為替リスクを負うことがありますが、為替予約等を行うことにより、為替相場の変動によるリスクを回避しています。なお、急激な為替の変動が起きた場合には、このリスクを完全に排除することは困難であるため、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) 災害等について

 当社グループは、高圧ガス保安法等に基づくLPガス・産業ガス等を取り扱っております。そのため、法律に基づいた定期的な法定検査及び自主的な検査・点検を行っております。ただし、大規模な地震等の天災により基地などの出荷設備やお客様側の消費設備に甚大な被害があった場合や感染症の大規模な流行などにより、安定供給ができなくなる可能性があります。

 

(6) 規制緩和等による競争激化について

 電力・ガス小売事業の全面自由化や国内の人口減少・地方都市の過疎化等に伴い、同業者間及びエネルギー間の競争環境が変化し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7) カントリーリスクの影響について

 当社グループは、貿易取引やアジアを中心とする海外事業展開を行っていますので、その地域における政治・経済情勢の悪化や、予期しない法律・規則・税制の変更、治安の悪化等の状況によっては業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8) 金利変動による影響について

 当社グループは、M&AによるLPガス直売顧客数の拡大や産業ガス事業拡大に向けた設備投資など、戦略的な投資に対する資金需要があり、金利変動が業績に影響を与える可能性があります。

 

(9) 取引先の信用リスクの影響について

 当社グループは、取引先に対して様々な形で信用供与を行っており、債権の回収が不可能となるなどの信用リスクを負っております。これらの信用リスクを回避するため、当社グループでは取引先の信用状態に応じて、信用限度額の設定や必要な担保・保証の取得などの対応策を講じております。しかしながら、取引先の信用状態の悪化や経営破綻等により債権が回収不能となった場合などには、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10) 保有有価証券価格の変動による影響について

 当社グループは、グループ企業の株式を保有するとともに、事業上の関係緊密化を図るために取引先などの有価証券を保有しております。今後の株式市場の変動によっては、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。政策保有の目的で保有する株式については、毎年取締役会において個別に保有の適否を判断しております。

 

(11) 商品の欠陥について

 当社グループが提供する製品・サービスについては、適切な品質管理体制のもと対応しておりますが、製造物責任賠償やリコール等が発生した場合には、当社グループの社会的信用や企業イメージの低下、多額の費用負担が発生するなど、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(12) 個人情報の取り扱いについて

 当社グループは、LPガス事業をはじめとした各種事業において多くの個人情報を取り扱っており、個人情報保護法に定める個人情報取扱事業者として、個人情報の取扱状況について適切な管理を行い、法の遵守に努めております。ただし、当社グループの取り組みにもかかわらず、個人情報の流出が発生した場合には、当社グループの社会的信用の低下、顧客からの損害賠償請求など、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(13) コンプライアンスに係るリスクについて

 当社グループは、国内外で各種の法令・規制・社会規範の下で事業を展開していることから、コンプライアンス委員会を設置して遵法体制の強化に努めております。さらに、当社グループの全構成員が遵守すべき規範として「イワタニ企業倫理綱領」を制定・周知するなど、コンプライアンスの徹底を図っております。ただし、当社グループの取り組みにもかかわらず、法令等に抵触する事態が発生した場合には、当局からの行政処分、利害関係者からの訴訟、当社グループの社会的信用の低下などにより、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(経営成績等の状況の概要)

 当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

(1) 経営成績の状況

 当連結会計年度における日本経済は、世界的な金融引き締めや海外景気の下振れリスクがあるものの、コロナ禍からの社会経済活動の正常化が進行し、企業収益が改善すると共に設備投資も堅調に推移したことで、緩やかな回復が続きました。

 このような状況のもと、当社グループは2024年3月期を初年度とする5ヵ年に亘る中期経営計画「PLAN

27」に基づき、基本方針である「社会課題解決」と「持続的成長」に向けた事業拡大に取り組みました。

 

 水素エネルギー社会の実現に向けては、福島県南相馬市で一般住宅を対象に水素混合LPガスを既存の導管で供給する実証事業が国立研究開発法人「新エネルギー・産業技術総合開発機構」(NEDO)の助成事業に採択されました。また、港湾ターミナルの脱炭素化に向けては、燃料となる水素を供給することで、阪神港コンテナターミナルで使用される荷役機械を水素エンジン発電機で動かす実証事業に参画します。

 総合エネルギー事業では、LPガス直売顧客数の拡大や配送拠点の統廃合等による配送合理化に継続して取り組みました。カートリッジガス事業は、当社では最高級モデルとなるカセットこんろを発売し、新たな顧客層を開拓しました。

 産業ガス・機械事業では、東南アジアでの需要が高まる冷媒について、タイ、インドネシアに充填工場の増設を行うと共に、回収・再生事業もあわせて開始し、事業規模の拡大を図りました。

 マテリアル事業では、兵庫県を中心にステンレスの加工・販売を手掛ける太平工材株式会社と太平金属株式会社の株式を100%取得したことにより、国内でのステンレスの調達・販売に加え、加工事業を強化することで、顧客への提案力の向上を図りました。

 

 当連結会計年度の経営成績については、売上高8,478億88百万円(前年度比583億72百万円の減収)、営業利益506億35百万円(同106億円の増益)、経常利益662億2百万円(同191億90百万円の増益)、親会社株主に帰属する当期純利益473億63百万円(同153億41百万円の増益)となりました。

 

 セグメント別の経営成績は次のとおりです。

 なお、当連結会計年度より、会社組織の変更に伴い、事業セグメントの区分方法の変更を行っており、当連結会計年度の比較・分析は、変更後の区分に基づいております。

 

①総合エネルギー事業

 総合エネルギー事業は、LPガス輸入価格が前年度を下回り販売価格が低下したことに加え、大口顧客向けを中心にLPガスの販売が減少し、減収となりました。一方、利益面においては、LPガス小売部門での収益性改善や市況要因がプラス(前年度比38億94百万円の増益)となり、またカセットガスやガス保安機器の販売が堅調に推移したことで、増益となりました。

 この結果、当事業分野の売上高は3,571億33百万円(前年度比360億85百万円の減収)、営業利益は201億73百万円(同58億71百万円の増益)となりました。

 

②産業ガス・機械事業

 産業ガス・機械事業は、エアセパレートガス及び水素ガスについては、半導体、電子部品業界向けを中心に販売数量が減少しましたが、製造コストの圧縮に努めたことにより収益性は改善しました。特殊ガスについては、ヘリウムガス及び炭酸ガスの安定供給に努めました。機械設備は、パワー半導体向け設備やガス供給設備の販売が好調に推移しました。

 この結果、当事業分野の売上高は2,621億69百万円(前年度比217億66百万円の増収)、営業利益は217億5百万円(同51億44百万円の増益)となりました。

 

 

 

③マテリアル事業

 マテリアル事業は、飲料ボトル向けPET樹脂やバイオマス燃料、スマートフォン向け機能性フィルムが好調に推移したことに加え、ステンレスが堅調に推移しました。ミネラルサンドは、海外の自社鉱区での生産・販売は好調に推移しましたが、国内では需要低下に伴い販売が減少しました。また、次世代自動車向け二次電池材料は、市況下落や販売先での在庫調整の影響等により販売が低迷しました。

 この結果、当事業分野の売上高は1,982億43百万円(前年度比441億86百万円の減収)、営業利益は123億5百万円(同2億98百万円の減益)となりました。

 

④その他

 売上高は303億41百万円(前年度比1億32百万円の増収)、営業利益は27億76百万円(同7億81百万円の増益)となりました。

 

(2) 財政状態の状況

①総資産

 当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末と比べ1,783億87百万円増加の8,343億91百万円となりました。これは、コスモエネルギーホールディングス株式の追加取得等により投資有価証券が1,397億37百万円、設備投資等の拡大により有形固定資産が179億69百万円それぞれ増加したこと等によるものです。

 

②負債

 当連結会計年度末の負債は、前連結会計年度末と比べ1,176億87百万円増加の4,614億61百万円となりました。これは、コスモエネルギーホールディングス株式の追加取得等に伴い短期借入金が1,034億14百万円、サステナビリティボンドの発行により社債が100億円それぞれ増加したこと等によるものです。

 なお、当連結会計年度末のリース債務等を含めた有利子負債額は、前連結会計年度末と比べ1,150億67百万円増加の2,545億21百万円となりました。

 

③純資産

 当連結会計年度末の純資産は、前連結会計年度末と比べ606億99百万円増加の3,729億30百万円となりました。これは、利益剰余金が418億93百万円、その他有価証券評価差額金が132億27百万円、為替換算調整勘定が24億37百万円それぞれ増加したこと等によるものです。

 

(3) キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末と比べ3億58百万円増加の336億14百万円となりました。

 

①営業活動によるキャッシュ・フロー

 当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度と比べ収入が33億83百万円増加したことにより548億54百万円の収入となりました。

 これは主に、税金等調整前当期純利益672億10百万円、減価償却費260億32百万円等による資金の増加と、法人税等の支払額147億45百万円、仕入債務の減少額137億55百万円、持分法による投資損益101億5百万円等による資金の減少によるものです。

 

②投資活動によるキャッシュ・フロー

 当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度と比べ支出が1,009億80百万円増加したことにより1,612億66百万円の支出となりました。

 これは主に、投資有価証券の取得1,122億88百万円、有形固定資産の取得344億53百万円等による資金の減少によるものです。

 

③財務活動によるキャッシュ・フロー

 当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度と比べ収入が944億円増加したことにより1,054億33百万円の収入となりました。

 これは主に、借入金の純増加額1,035億33百万円、社債の発行による収入100億円等による資金の増加と、配当金の支払額54億58百万円等による資金の減少によるものです。

 

 

(4) 生産、受注及び販売の実績

 当社グループの事業形態は主に商品の仕入による販売を主要業務としているため、生産実績及び受注状況に代えて仕入実績を記載しております。

 

①仕入実績

 当連結会計年度における外部からのセグメントごとの仕入実績(役務原価等を含む)は次のとおりであります。

 

セグメントの名称

金額(百万円)

前年度比(%)

総合エネルギー事業

236,240

△15.4

産業ガス・機械事業

183,410

6.0

マテリアル事業

166,397

△23.4

その他

37,217

△0.2

合計

623,266

△11.8

 

②販売実績

 当連結会計年度における外部顧客へのセグメントごとの販売実績(役務収益等を含む)は次のとおりであります。

 

セグメントの名称

金額(百万円)

前年度比(%)

総合エネルギー事業

357,133

△9.2

産業ガス・機械事業

262,169

9.1

マテリアル事業

198,243

△18.2

その他

30,341

0.4

合計

847,888

△6.4

(注) 販売実績が総販売実績の100分の10以上を占める相手先はありません。

 

(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いております。なお、見積り及び判断・評価については、過去の実績や状況に応じて合理的と考えられる要因等に基づいて行っておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果は異なる場合があります。連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

(2) 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

①経営成績の分析

(a) 売上高及び売上総利益

 売上高は、前連結会計年度と比べ6.4%減収の8,478億88百万円となりました。これは主に、LPガス輸入価格が低位に推移したことや二次電池材料の市況下落や販売低調等の影響によるもので、詳細は「(経営成績等の状況の概要) (1)経営成績の状況」のセグメント別の経営成績をご参照ください。

 売上総利益は、LPガス市況要因がプラスに転じたことや、LPガスの小売分野における収益性改善に加え、産業ガス・機械事業が製造コスト上昇への対応を進めたこと等により、前連結会計年度と比べ7.8%増益の2,294億75百万円となりました。

 

(b) 営業利益

 販売費及び一般管理費は、前連結会計年度と比べ3.4%増加の1,788億39百万円となりました。これは主に、人件費や投資拡大による減価償却費等の増加によるものです。この結果、営業利益は、前連結会計年度と比べ26.5%増益の506億35百万円となりました。

 

(c) 経常利益

 営業外損益は、155億67百万円の収益(純額)となり、前連結会計年度の69億76百万円の収益(純額)と比べ85億90百万円増加しました。これは主に、コスモエネルギーホールディングス株式会社の持分法適用に伴う負ののれん相当額の発生により持分法による投資利益が増加したこと等によるものです。

 この結果、経常利益は、前連結会計年度と比べ40.8%増益の662億2百万円となりました。

 

(d) 親会社株主に帰属する当期純利益

 特別損益は、10億8百万円の収益(純額)となり、前連結会計年度の3億10百万円の収益(純額)と比べ 6億97百万円の増益要因となりました。これは主に、投資有価証券売却益が増加したこと等によるものです。

 

 以上の結果、親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度と比べ47.9%増益の473億63百万円となり、 1株当たりの当期純利益は、前連結会計年度の556.69円に対し823.31円となりました。

 

 当社は、中期経営計画「PLAN27」において、最終年度の2028年3月期に、営業利益650億円、ROE10%以上、ROIC6%以上を目標としております。前連結会計年度及び当連結会計年度、PLAN27最終年度目標の営業利益、ROE、ROICは次のとおりであります。

 

(PLAN27との比較)

項目

第80期実績

第81期実績

PLAN27

最終年度目標

営業利益(億円)

400

506

650

ROE

11.2%

14.3%

10%以上

ROIC

6.8%

6.7%

6%以上

 

(第81期業績予想との比較)

項目

第80期実績

第81期実績

第81期業績予想(注)

売上高(億円)

9,062

8,478

9,070

営業利益(億円)

400

506

450

経常利益(億円)

470

662

503

親会社株主に帰属する

当期純利益(億円)

320

473

335

 

(LPガス輸入価格変動要因(市況要因)を除いた営業利益)

項目

第80期実績

第81期実績

第81期業績予想(注)

営業利益(億円)

400

506

450

市況要因(億円)

△31

7

市況要因を除く

営業利益(億円)

431

498

450

(注) 第81期業績予想は、2023年5月15日に公表した数値を表示しております。

 

 第81期(2024年3月期)実績は、LPガスの小売分野における収益性改善に加え、産業ガス・機械事業が前期から製造コスト上昇への対応を進めたこと等により、営業利益は506億円、ROEは14.3%、ROICは6.7%となりました。

 今後につきましては、引き続き重点施策に基づいた戦略を実行し、PLAN27の経営数値目標である営業利益650億円、ROE10%以上、ROIC6%以上の達成を図ります。

 

②資本の財源及び資金の流動性についての分析

 キャッシュ・フローの状況については、「(経営成績等の状況の概要) (3)キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。

 

(a) 資金需要

 当社グループの事業活動における運転資金の主なものは、商品の仕入、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、設備投資、M&Aによる株式取得のためのものであります。当社グループにおいては、安心・安全を支えるインフラ整備については事業全体の収益を考慮して、将来の成長投資については資本コスト等を考慮して多角的かつ慎重に投資判断を行う方針であります。

 

(b) 財務政策

 当社グループは、財務の健全性を保ちつつ、安定的に営業活動によるキャッシュ・フローを生み出すことで、事業運営上必要な資本の財源及び資金の流動性を確保することを基本方針としております。短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入、コマーシャル・ペーパー(CP)により調達を行っております。設備投資や長期運転資金は、自己資金並びに金融機関からの長期借入、社債の発行等により調達を行っております。また、グループ内資金の効率化を目的として、グループ会社間で貸付等を行っております。

 社債については、2021年12月のグリーンボンド、2022年9月の普通社債に引き続き、2024年1月に「CO2フリー水素サプライチェーン構築」、「地域社会を支えるインフラ・サービスの提供」に係る設備投資資金、投融資資金及び当該資金の調達のために借り入れた借入金の返済資金への充当を資金使途とする、サステナビリティボンド100億円(期間7年・10年、各50億円)を発行いたしました。株式会社日本格付研究所(JCR)より、債券格付「A+」を取得しており、CP発行に必要な国内CP格付についても、「A+」に対応する「J-1」を取得しております。引き続き、水素エネルギー社会並びに脱炭素社会の実現に取り組むとともに、地域社会を支えるインフラ・サービスの提供を進めてまいります。

 なお、当連結会計年度末のリース債務等を含めた有利子負債額は、前連結会計年度末と比べ1,150億67百万円増加の2,545億21百万円となりました。これは主に、コスモエネルギーホールディングス株式の追加取得に伴い短期借入金が増加したこと等によるものです。

 

5 【経営上の重要な契約等】

(コスモエネルギーホールディングス株式会社の株式追加取得及び資金の借入)

 当社は、2023年12月1日開催の取締役会において、コスモエネルギーホールディングス株式会社(以下「コスモエネルギーHD」)の株式を、株式会社シティインデックスイレブンス、株式会社南青山不動産及び野村絢氏より追加取得すること、及び本株式取得を目的とした資金の借入を行うことを決議し、同日付で株式譲渡契約及び当座貸越契約を締結いたしました。

 その後、公正取引委員会の審査の結果、排除措置命令を行わない旨の通知を受領し、2024年3月27日にコスモエネルギーHDの株式を株式会社シティインデックスイレブンスより250,000株追加取得いたしました。

 この結果、当社の議決権保有割合(注)1は20.07%になり、当連結会計年度においてコスモエネルギーHDが関連会社となり、持分法適用の範囲に含めています。

 (注)1 コスモエネルギーHDが2024年2月8日に公表した「四半期報告書(第9期第3四半期)」に

          記載された2023年12月31日現在のコスモエネルギーHDの総株主の議決権の数(882,208個)に

          対して当社が保有する議決権数の割合(小数点以下第三位を四捨五入)をいいます。

 

(1)コスモエネルギーHDの株式追加取得

①株式取得の相手先の名称

・株式会社シティインデックスイレブンス

・株式会社南青山不動産

・野村絢氏

 

 

②コスモエネルギーHDの概要

名称

コスモエネルギーホールディングス株式会社

所在地

東京都港区芝浦一丁目1番1号

事業内容

総合石油事業等を行う傘下グループ会社の経営管理及び

それに付帯する業務

資本金

46,435百万円

 

③取得株式数、取得価額及び取得前後の所有株式の状況

取得前の合算所有株式数(注)2

  59,375株(持分比率(注)3:0.07%)

取得株式数

17,650,525株(12月取得17,400,525株、3月取得250,000株)

取得価額

1,068億円(12月取得1,053億円、3月取得15億円)

取得後の合算所有株式数(注)2

17,709,900株(持分比率(注)4:20.22%)

 (注)2 当社が59,000株、当社の連結子会社である関東プロパン瓦斯株式会社(現・イワタニ関東株式会社)

      が375株を所有しており、取得後は当社の所有株式数が増加します。

3 コスモエネルギーHDが2023年11月8日に公表した「四半期報告書(第9期第2四半期)」に記載

  された2023年9月30日現在のコスモエネルギーHDの発行済株式総数(88,353,761株)から、

   コスモエネルギーHDが同年11月8日に公表した「2024年3月期第2四半期決算短信〔日本基準〕

  (連結)」に記載された同年9月30日現在のコスモエネルギーHDの自己株式数(766,047株)を控除

   した数(87,587,714株)に対する割合(小数点以下第三位を四捨五入)をいいます。

4 コスモエネルギーHDが2024年2月8日に公表した「四半期報告書(第9期第3四半期)」に

   記載された2023年12月31日現在のコスモエネルギーHDの発行済株式総数(88,353,761株)から、

   コスモエネルギーHDが2024年2月8日に公表した「2024年3月期第3四半期決算短信〔日本基準〕

   (連結)」に記載された2023年12月31日現在のコスモエネルギーHDの自己株式数(766,172株)を

   控除した株式数(87,587,589株)に対する割合(小数点以下第三位を四捨五入)をいいます。

 

④コスモエネルギーHDの持分法適用に伴う当社業績への影響

 コスモエネルギーHDの持分法適用に伴う当社業績への影響については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(追加情報)(株式取得による持分法適用関連会社化)」に記載のとおりであります。

 

(2)資金の借入

資金の借入の理由

本株式取得のために行うもの

借入金融機関

株式会社三菱UFJ銀行

借入金額

1,053億円

契約締結日

2023年12月1日

借入実行日

2023年12月1日

返済期日

契約締結日より1年以内

借入金利

Tibor+0.2%

返済方法

期日一括

担保

無し

 

(コスモエネルギーHDとの資本業務提携)

 当社は、2024年4月23日開催の取締役会において、コスモエネルギーHDとの資本業務提携契約を締結することを決議いたしました。

 詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な後発事象)(コスモエネルギーホールディングス株式会社との資本業務提携契約)」に記載のとおりであります。

 

6 【研究開発活動】

 当連結会計年度の研究開発は、「ガス&エネルギー」を基軸に総合エネルギー、産業ガス・機械からマテリアルまでの事業領域を対象として取り組むとともに、「水素のイワタニ」としての地位を強固なものにするべく水素サプライチェーンの構築に向けた技術開発、さらには脱炭素に向けた新技術開発に注力しました。

 研究開発活動の中心となる中央研究所(兵庫県尼崎市)は、グループ全体の成長ビジョンを見据え、新事業・新商品の開発に繋がる研究開発に取り組みました。また、お客さまへの技術サービス、当社取扱製品の品質管理、商品開発効率を高めるため、分析を主体とした基盤技術の強化にも取り組みました。

 岩谷水素技術研究所では、最新鋭の水素試験研究設備を活用し、極低温の液化水素や超高圧圧縮水素ガスに適合した材料や機器の評価を行いながら、水素ステーション建設コストの低減や保安強化につながる研究開発を進めました。また、液化水素の冷熱を回収し研究所内建物で利用する技術や将来の液化水素ステーションの実用化に向けた充填技術開発を推進しました。さらに、水素と二酸化炭素からプロパンなどの炭化水素燃料を合成する研究を進めています。

 当連結会計年度における当社グループ全体の研究開発費は2,248百万円となりました。また、当社の研究開発費は1,819百万円であります。

 主な研究開発内容は水素関連で、その金額は390百万円です。その他の研究開発費用をセグメント別に分けると、総合エネルギー事業331百万円、産業ガス・機械事業78百万円、マテリアル事業146百万円、その他1,301百万円となっております。その他には、研究開発拠点である当社中央研究所の共有費用が含まれています。

 なお、セグメントごとの研究開発活動は次のとおりです。

 

(水素エネルギー関連)

 水素・燃料電池戦略ロードマップ及び水素基本戦略に基づき、水素ステーションの整備や新たな水素エネルギー・アプリケーションの開発等の水素エネルギーの利用拡大に繋がる活動に取り組みました。さらに、水素エネルギー社会の実現を見据えたCO2フリー水素サプライチェーンの構築にも重点を置き研究開発を推進しました。

 具体的には、経済産業省/新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)との取り組みにおいて、豪州の未利用褐炭を用いた大規模水素サプライチェーンを構築する実証事業に参画し、海上輸送実証や海上からの受入基地でのローディングアームの試験などを通じ、液化水素運搬船や受入基地に関するエンジニアリングデータを蓄積しました。「福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R)」(福島県浪江町)では、NEDOとの契約を2025年度まで延長し、商用水素ステーションや県内施設に設置される燃料電池への供給を継続するとともに、水素需給管理の最適化など水素製造コスト低減に向けた取り組みにも着手しました。

 2025年に開催される大阪・関西万博での商用運航を目指し、水素燃料電池船のデザインや仕様を決定し建造を進めるとともに、船舶用水素ステーションを建設しました。また、日揮ホールディングス株式会社や豊田通商株式会社と共同で、廃プラスチックを原料とした水素製造技術に関する調査を完了し、詳細な事業化の検討を進めました。さらに株式会社大林組と共同で、液化水素冷熱を回収し事務所空調などへ利用する研究開発を進めるとともに、カーボンニュートラル化への取り組みとして、研究所に100kW純水素型燃料電池発電設備を導入し、稼働させました。

 

(総合エネルギー事業)

 カーボンニュートラル社会の実現に向けた取り組みの一環として、LPガスの脱炭素化につながるグリーンLPガスの製造技術に関する調査研究を進め、岩谷水素技術研究所にてラボレベルの基礎技術の確立を進めています。

 また、NEDO委託事業として、相馬ガスホールディングス株式会社他と共同で、既存インフラを利用した水素混合LPガスの導管供給の実証試験に向けたF/Sを完了させ、新たに相馬ガス株式会社の事業エリアでの実証試験がNEDO助成事業に採択されました。2024年度中に設備を完成させ、実証試験を開始します。

 さらに、当社主力のコンシューマープロダクツであるカセットガスの拡販に繋がる新商品の開発に向け、熱電発電素子や燃料電池を使った発電機能を生かした製品開発を進めています。

 

(産業ガス・機械事業)

 再生医療分野に力点を置き、大阪大学との共同研究講座で得られた細胞凍結・解凍プロセスの最適化研究成果を活かし、細胞保管輸送容器の開発や凍結装置の開発を進めました。また、「再生医療・バイオ研究開発拠点」である中央研究所のバイオ研究専用クリーンルームを活用し、人工血管を凍結・解凍できることを確認しました。共同研究先と事業化の検討を進めていきます。

 陸上養殖分野における酸素ガスなどの事業拡大に向け、中央研究所に導入した陸上養殖の研究設備を活用し、ヒラメ養殖における酸素富化効果を確認しました。今後更に魚種を拡大し、魚種ごとの最適養殖条件を見極めていきます。

 中央研究所で確立した半導体向け重水素ガス製造技術を基に、岩谷瓦斯株式会社三重工場内で稼働させた重水素プラントは順調に稼働しており、プラントの運転効率化、製造ロス削減に寄与しています。

 溶接・溶断分野では、コータキ精機株式会社と共同で100%の水素ガスを使用して鋼板を切断する水素切断機を開発し商品化するとともに、銅とステンレスの異種金属接合技術を開発しました。

 

(マテリアル事業)

 携帯電話やパソコン向けに需要が拡大する積層セラミックコンデンサー(MLCC)に使われるナノニッケルの合成技術開発を推進しました。大手ユーザーにサンプルを出荷し、評価を受けながら品質を高めるとともに、事業化に向け、自動化による生産量のアップや製造コストの削減技術の開発に取り組んでいます。