文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは、創業以来、「世の中に必要な人間となれ、世の中に必要なものこそ栄える」を企業理念として掲げ、常に世の中が求める新しい価値、お客様が求める価値の創造に努め、社会に貢献することを目指しています。
この観点から、株主様、お取引先様、従業員などからの信頼と期待に応えることが、会社繁栄の絶対条件と考え日々の事業経営に取り組んでおります。セグメントごとの事業内容は下記のとおりであります。
総合エネルギー事業は、全国のご家庭にMaruiGasブランドとしてお届けしている民生用LPガスや、工場で使用される産業用のLPガス・LNGを販売しています。また、カセットこんろ・ボンベや富士の湧水などの生活関連商品やガス関連機器・都市ガスの保安サービスなどをお客様に提供し、暮らしのインフラを支えています。特に民生用LPガスについてはLPガスの輸入から小売りまで一貫した供給体制をもち、全国展開している日本で唯一のLPガス事業者で、全国に約300ヶ所の拠点を有しており、その販売・物流・保安体制を活かし、きめ細やかで質の高いサービスを全国で提供しています。
産業ガス・機械事業は、エアセパレートガス(酸素・窒素・アルゴン)、水素、ヘリウム、炭酸ガス、半導体材料ガスや医療用ガスなどの産業ガス事業と、各種ガス製造・供給設備、FAシステム、溶接装置、半導体製造装置、環境機器などの機械事業を展開しています。長年培ってきた技術力と、ガス・機械の幅広いラインアップによりお客様のニーズに合わせた提案を行い、産業全体を支えています。
マテリアル事業は、樹脂原料や樹脂製品、ミネラルサンドなどの資源、ステンレスや非鉄金属、二次電池材料等、モノづくりに必要な原料・部材などを取り扱っています。環境商品等の成長分野への拡販や新商品の開発に加え、海外事業の強化に取り組み、事業規模の拡大を図っています。
(2) 目標とする経営指標
2024年3月期を初年度とする5ヵ年に亘る中期経営計画「PLAN27」では、テーマに「水素エネルギー社会の実現に向けて」を掲げ、基本方針を「『社会課題解決』と『持続的成長』に向けた事業拡大」としています。「PLAN27」の経営数値目標としては、利益目標を「営業利益650億円」、収益性目標を「ROE10%以上」「ROIC6%以上」としています。
(3) 中長期的な経営戦略
当社は、基本方針の実現に資する取り組みとして、中期経営計画「PLAN27」を策定し、「『社会課題解決』と『持続的成長』に向けた事業拡大」に取り組んでいます。
PLAN27では、投資や人材といったリソースを重点投下する分野を重点施策とし、「水素戦略」、「脱炭素戦略」、「国内エネルギー・サービス戦略」、「海外戦略」、「非財務戦略」の5つを掲げ、経営数値目標の達成に向けて取り組みを推進しています。
また、当社の利益配分に関する基本方針につきましては、継続的かつ安定的な配当により株主の皆様へ還元すると同時に、成長戦略を支えるための投資等に活用し、企業価値の最大化を図ることで株主の皆様のご期待に応えてまいります。
PLAN27では、利益成長に応じて着実に増配し、最終年度にあたる2027年度には配当性向20%以上(市況要因を除く当期純利益ベース)、減配を行わない累進配当という目標を掲げています。
当社はこれらの取り組みを着実に実行し、「世の中に必要とされる企業」であり続けることにより、当社グループの企業価値の向上、ひいては株主共同の利益の実現に資することができるものと考えております。
(4) 当面の対処すべき内容等
今後の見通しについては、雇用・所得環境の改善に伴う個人消費の増加や、堅調な企業業績と人手不足を背景とした設備投資の拡大により、緩やかな回復が続く見通しであるものの、米国の通商政策を受けて世界経済の先行きに不透明感が高まっています。
総合エネルギー事業は、引き続きM&A等によるLPガス直売顧客数の拡大と、エネルギー関連機器等の拡販による販売数量の増加に加え、物流合理化により収益性の改善に努めます。エネルギーの低炭素化に向けた取り組みでは、燃料転換の推進やカーボンオフセットガスの販売強化、グリーンLPガスの開発を推進します。カートリッジガス事業においては、東南アジアを中心に地域のニーズに合わせた新商品の開発に努め、海外事業の拡大に取り組みます。
産業ガス・機械事業は、エアセパレートガスや特殊ガスの調達・物流コスト上昇への対応を強化するとともに、拡大が見込まれるデータセンターやAI市場向けの拡販に注力します。また、脱炭素に関連した水素やアンモニア等の設備販売を強化します。水素エネルギー社会の実現に向けては、脱炭素需要の着実な取り込みと、CO2フリー水素サプライチェーンの事業化を推進します。
マテリアル事業は、ノルウェー産グリーンチタン鉱石の販売開始、バイオマス燃料の拡販に加え、リサイクルPET事業を推進していきます。ステンレスについては国内加工拠点を活用し、販売数量の拡大を図ります。また、重要鉱物資源の確保に向けて、引き続き取り組みを進めていきます。
当社は1941年に水素の取り扱いを開始し、長い歴史に基づく経験とノウハウを有しています。液化水素の国内シェアは100%で、圧縮水素を含む水素の国内シェアは約70%となっております。水素事業は将来の資源エネルギー事業であり、大量で安価なCO2フリー水素源の獲得が最も重要だと考えています。当社グループは液化水素製造能力をさらに増強するとともに、再生可能エネルギーからの水素製造や海外からのCO2フリー水素の輸入などに取り組み、企業理念に沿った経営を進めてまいります。
当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
(1)サステナビリティ共通
当社は、「世の中に必要な人間となれ、世の中に必要なものこそ栄える」という企業理念のもと、ガス&エネルギーを軸とした事業を通じて、持続可能な成長と社会課題の解決に取り組んでおります。また、「住みよい地球がイワタニの願いです」をスローガンに、脱炭素社会の実現及び環境との共生を目指す企業活動を行っています。
加えて、2023年度に開始した中期経営計画「PLAN27」の発表とともに、創業100周年を迎える2030年の姿を「『住みよい地球』の実現に貢献し続ける企業グループ」とし、事業に関する3つの施策「CO2フリー水素サプライチェーン構築」、「循環型社会の推進」、「地域社会を支えるインフラ・サービスの提供」と、これらの施策を下支えする「持続的成長を推進する経営基盤の強化」を長期ビジョンとして策定しました。
長期ビジョンに向けた取り組みを通じて、持続的な社会への貢献と企業価値の向上を実現してまいります。
①ガバナンスとサステナビリティ推進体制
経営の重要な意思決定及び監督機関である取締役会については、社外取締役が3分の1以上を占める構成としており、透明性のある意思決定、管理監督の実効性強化に取り組んでおります。
また、企業全体のリスクを統合的に管理するため、危機管理委員会を設置しています。当委員会の傘下には、コンプライアンス、工場保安などの想定される主要なリスクに対応する個別委員会を設け、顕在ないし潜在する企業危機への総合的な対応を行っています。危機管理委員会は、危機管理委員会委員長のもと、定期的に開催され、その内容は経営層に報告され、関連法令の遵守も含め企業全体のリスク管理に努めています。また、各個別委員会についても定期的に開催され、関連リスクの遵守状況や取り組み状況を確認し、その内容は各個別委員会委員長より危機管理委員会にて報告されています。
また、危機管理委員会の傘下にサステナビリティ推進委員会を設置し、当社グループにおける気候変動をはじめとするサステナビリティに関する課題についての審議ならびに当該事業に関する進捗状況の確認を行っています。サステナビリティ推進委員会は、代表取締役から委任を受けた取締役が委員長を務め、本部長、管理部門長、関係会社役員などで構成されています。サステナビリティ推進部が事務局を担うとともに、委員会での決定事項についての実務遂行を担っております。当社グループのCO2排出量の削減状況など、委員会において議題となった重要な事項や方針については、経営の最高責任者として会社経営を統括する代表取締役に報告され、適宜、助言・指示を得ております。また、サステナビリティに関連して、経営上の重要な意思決定や監督が必要な事項については、取締役会に報告され、取締役会より適切な監督を受ける体制となっています。
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(2025年3月31日現在) |
(2)重要なサステナビリティ項目
①気候変動
当社は、気候関連リスクを回避・低減し、また気候関連機会を実現するための戦略を重要な経営課題と位置付けており、企業として適切に対応することで持続的な成長につながると考えています。
当社は2022年にTCFD(※)提言への賛同を表明し、気候変動が事業に与える影響とそれによるリスクと機会をシナリオに基づいて分析し、事業戦略へ反映していくよう検討を進めるなど、事業の持続的な成長へとつなげる取り組みを推進しています。
(※)TCFDとは、G20の要請を受け、金融安定理事会(FSB)により、気候関連の情報開示などについて検討するため設立された「気候変動関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」です。
(a)ガバナンス
「
(b)リスク管理(評価と特定・管理プロセス)
気候変動に関するリスクと機会については、「発生の可能性」と「事業への影響度」の2軸により重要度を評価した上で、気候変動に関する「リスク」への対応と「機会」に向けた取り組みの強化を進めています。また、気候変動に関する事業影響については、財務的な影響度合いに分けて評価しており、特に気候変動問題という特性から長期視点においてシナリオ分析を用いて将来の事業環境を評価しています。
なお、企業全体のリスク管理体制については、「
(c)戦略
気候変動が事業に及ぼす影響の把握と気候関連の機会とリスクを具体化するために、国際エネルギー機関(IEA)や気候変動に関する政府間パネル(IPCC)のシナリオをベンチマークとして参照し、シナリオ分析を実施いたしました。
政策・規制や市場変化による移行リスク、異常気象などによる物理リスクの中で、特に事業への影響が大きいと想定されるリスクと機会を特定し、その財務影響を可能な限り定量化し、加えて、当社グループの戦略に反映させることで、事業の持続的成長や将来のリスクの低減につなげています。
<主なリスク>
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シナリオ |
主なリスク |
財務的な影響度 |
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2℃シナリオ |
化石燃料賦課金や排出権取引などの政策や規制が導入され、消費者意識の変化が進み、化石燃料の需要が大きく減少する。 |
大 |
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生産設備への自然災害による物理的被害が拡大する。 |
小 |
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4℃シナリオ |
気温上昇により生産性が低下する。 |
中 |
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気温上昇によりLPガスの販売が減少する。 |
小 |
<主な機会>
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シナリオ |
主な機会 |
財務的な影響度 |
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2℃シナリオ |
化石燃料代替の需要をメインとして、国内外の水素需要が大きく増加する。また水素需要の拡大に伴い水素関連設備の需要も大きく増加する。 |
大(※) |
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グリーンLPガスの開発・普及を促進すれば、大きな事業機会になる。 |
大 |
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EVや定置式バッテリーの普及が進むことで、リチウム、コバルトなどの二次電池材料の需要が増加する。 |
大 |
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4℃シナリオ |
LPガス非常用発電機など、災害対応・BCP対応機器の販売が増加する。 |
小 |
(※)気候変動対応の進展度合いによっては非常に大きな成長機会となる可能性があります。
<財務的な影響度>
大:売上高 数百億円以上相当
中:売上高 数百億円~数十億円相当
小:売上高 数十億円相当
<主な具体的な取り組み>
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事業 |
主な取り組み |
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総合エネルギー事業 |
●グリーンLPガスの製造・供給への挑戦 LPガス輸入元売りの大手5社で、「一般社団法人日本グリーンLPガス推進協議会」を設立。北九州市立大学と連携し、水素とCO2を合成させLPガスを製造する新たな技術の確立と早期の社会実装を目指しています。
●水素・LPガス混合導管供給 当社は、相馬ガス株式会社などと共同で、NEDO*の委託事業「水素社会構築技術開発事業/地域水素利活用技術開発/水素製造・利活用ポテンシャル調査」に採択されました。 本事業では、相馬ガス株式会社が供給しているLPガスベースの都市ガスに水素を20%程度混合させて導管供給することを目的に、水素の混合技術や安全性の検証を行います。 *NEDO:国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構 (New Energy and Industrial Technology Development Organization)
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水素事業 |
●液化水素サプライチェーンの商用化実証プロジェクト 当社は、NEDOの実証事業において、液化水素運搬船による日豪間の海上輸送・荷役を行う実証実験を2022年2月に成功させました。また、CO2フリー水素サプライチェーンの本格的な社会実装に向けて、グリーンイノベーション基金からの助成を受け、水素の液化・輸送技術を世界に先駆けて確立し、水素製造・液化・出荷・輸送・受入までの一貫した液化水素サプライチェーン実証を行います。
●エンジニアリング機能の強化及び水素ステーション事業などの協業 FCV向け水素ディスペンサーなどエネルギー供給設備に強みを持つトキコシステムソリューションズ株式会社の株式を100%取得し、メーカー及びエンジニアリング機能の強化を進めています。加えて、コスモエネルギーホールディングス株式会社との間で、水素ステーション事業や水素製造に関わるエンジニアリング分野などでの協業検討に関する基本合意書を締結しました。両社がそれぞれ培った技術や知見を生かし、脱炭素社会の実現に貢献するために、水素事業の協業に関して具体的な検討を進めています。
(イワタニ水素ステーション東京有明)
●水素燃料電池船「まほろば」の運行を開始 水素燃料電池船「まほろば」は、2021年にNEDOの助成事業として採択されており、従来の内燃機関船と違い、走行時にCO2や環境負荷物質を排出しない水素燃料電池を使用し、高い環境性能を有するだけでなく、においがなく、騒音・振動の少ない優れた快適性を実現しています。2025年4月から大阪・関西万博の海上輸送として運航を開始し、「動くパビリオン」として水素の魅力を世界へ発信する拠点となることを目指しています。
(水素燃料電池船「まほろば」) |
より詳細な取り組み内容については、当社ウェブサイトをご参照ください。
(
また、これらの項目は、IEAやIPCCなどのシナリオ群に基づくものであり、多くの不確実な要素を含んでいます。刻々と変わる社会動向や技術革新など外部環境の変化に合わせて柔軟に対応していきます。
(d)指標と目標
2050年までにカーボンニュートラルを目指すことを表明するとともに、そのマイルストーンとして、国内で当社グループが排出するCO2(スコープ1+スコープ2)について2030年度に、2019年度比で50%削減することを目指しています。
当社グループのCO2排出量の実績については、当社ウェブサイトをご参照ください。(
なお、2024年度の実績は、2025年9月頃に掲載予定です。
(3)その他のサステナビリティ項目
①人的資本・多様性
(a)戦略
持続的な成長と企業価値創造のためには人材の獲得、成長、活躍を通して、組織として成長していく必要があると考えます。昨今の外部環境の変化により、企業がこれまで通りの価値を提供するだけでは、顧客から選ばれにくくなっており、企業は従来とは異なる新たな価値を創造することが求められております。そのため、これまでの「正しい方法を遂行する人材」だけではなく、変化に応じた新たな「価値創造に自ら挑戦する人材」が必要になっています。また、個人の価値観も多様化しており、企業として多様な価値観を持った人材が活躍できる組織であることが求められています。そのために、当社としては「ダイバーシティ&インクルージョン推進」「人材育成の強化」「やりがいのある職場づくり」を戦略として掲げ、『自律的に成長し続ける多様な個が、活きる組織』を目指します。
<ダイバーシティ&インクルージョン推進に関する方針>
事業環境の変化に対応した、新たな価値創造のためには「ダイバーシティ&インクルージョン」が必要と考えています。「多様な価値観を受け入れ 互いを尊重し高め合える組織へ」という社長メッセージを発信し、ダイバーシティ&インクルージョン推進に向けた諸施策を講じています。社内体制としては2017年度からダイバーシティ担当を設置し、女性活躍推進をはじめとした多様な人材の活躍支援を行っております。今後も、多様な価値観を受け入れて互いを尊重し高め合える組織に向けて、ダイバーシティ経営をより一層推進します。当社のダイバーシティに関する考え方や方針、取り組みについては、当社ウェブサイトをご参照ください。(
<人材育成の強化に関する方針>
当社社員の行動規範となる「イワタニ企業倫理綱領」において、個性や自立性を活かしたチームワークで、自由な発想と豊かな創造性を発揮できる人材育成に努めるとしております。外部環境の変化が激しく、価値観も多様化しているため、企業としては全社員に一律にプログラムを提供するだけでなく、研修や経験についての多様な機会を提供していくことが求められていると考えています。2023年に設立した企業内大学であるイワタニ技術・保安大学や2024年に竣工した神戸研修所を活用し、社員個人のニーズに合わせて自主的に受講できる選択研修等、多様な機会を提供することで、社員が自律的に成長し続けることができる体制を整備していきます。
<やりがいのある職場づくりに関する方針>
多様な個を活かすことができる組織となるためには、仕事とライフイベントを両立できる柔軟な働き方を実現する環境を整える必要があります。そのために当社では女性活躍の推進だけでなく、男性の育児参画を推進しています。「育児ハンドブック」の発行や「パパたちの育休レポート」の発信などの取り組みを通じて風土を醸成していきます。また、社員が能力を存分に発揮するためには、健康維持・増進はもちろんのこと、心理的安全性の確保やエンゲージメントを向上させることも不可欠になってくると考えています。当社においては制度の改定、社員教育、エンゲージメント調査とそれに伴う改善活動等の諸施策を通じて「やりがいのある職場」をつくっていきます。
(b)指標と目標
<ダイバーシティ&インクルージョン推進>
ダイバーシティ&インクルージョン推進の一環として、女性活躍推進に取り組んでいます。当社では、仕事とライフイベントの両立支援を目的に「プラチナくるみん」認定と、「えるぼし」認定<2つ星>を取得しています。今後も柔軟な働き方や育児・介護関連の制度をさらに拡充し、多様な個が活躍できる風土の醸成を図り、2025年度には総合コース新卒採用に占める女性社員比率25%以上、2027年度には女性管理職比率10%以上を目指します。
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指 標 |
2024年度実績 |
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指 標 |
2024年度実績 |
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女性管理職は当社の人事制度において一定の職能資格以上の女性社員としており、その職能要件は以下のいずれかとしています。
・小単位の組織(課)を統括し、部下を指導しつつ組織目標を達成できる。または部門責任者の補佐を担う高度な企画業務を遂行できる。
・小単位の組織(課)の中で、事務的、補助的業務を統括し、部下を指導しつつ高度な職務知識と実務能力を発揮して組織目標を達成できる。
<人材育成の強化>
企業内大学であるイワタニ技術・保安大学、2024年に竣工した神戸研修所を活用し、社員の自律的な成長を促すための多様な経験の機会や研修プログラムを提供していきます。2027年度には2022年度比で約2倍となる、社員1人当たり年間150千円の教育投資を目標としています。
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指 標 |
2024年度実績 |
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<やりがいのある職場づくり>
新たな価値を創出し続けられる組織であるために、女性の活躍推進に加えて、男性の育児参画を推進しています。仕事とライフイベントを両立できる柔軟な働き方の実現のため、2027年度には男性の育児休業取得率100%を目指します。また、社員が能力を存分に発揮するための健康維持・増進には適切な有給休暇の取得が必要であると考えており、2025年度には60%以上の取得率を目指します。
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指 標 |
2024年度実績 |
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指 標 |
2024年度実績 |
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各指標の詳細については、当社ウェブサイトをご参照ください。
(
なお、2024年度の数値に関しては、2025年6月頃に掲載予定です。
人的資本に関する指標、目標及び実績については全て提出会社のみを対象としており、連結子会社は対象に含まれていません。会社の業態や機能の違いによって労働環境が異なるため、一律の目標値を定めることが困難なためです。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 季節的な要因及び天候の変動について
LPガスの消費量は、気温や水温の影響を受けますので、当社グループの主力商品であるLPガスの販売量は夏季に減少し、冬季に増加します。このため当社グループは利益が下半期に偏る収益構造を有しています。また、特異な天候の変動によっても、当社グループのLPガス販売量に影響を及ぼす可能性があります。
(2) LPガス輸入価格による影響について
当社はLPガスを中東と米国から輸入しており、輸入価格の変動による影響を平準化するため、多くの卸売先との間で、販売価格をCP(Contract Price)とMB(Mont Belvieu)に連動する価格体系としています。ただし、当社では在庫評価について「先入先出法」を採用しており、LPガスの輸入から販売までのタイムラグが約3ヶ月あるため、輸入価格の上昇時には安い原価の在庫を高く売ることから増益要因となる一方、下落時には高い原価の在庫を安く売ることから減益要因となります。
なお、当連結会計年度は2億円の増益効果(前連結会計年度は7億円の増益効果)が生じております。
(3) 気候変動に係るリスクについて
当社グループは、化石燃料であるLPガスを主力商品としている一方で、水素など脱炭素化に資する商品の普及拡大にも注力しており、今後の気候変動に係る規制等の動向によっては、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。このため、グループ全体のリスクを統合的に管理する「危機管理委員会」の傘下に設置している「サステナビリティ推進委員会」にて、気候変動に係るリスク・機会、取り組み方針、目標などについての議論や実績の進捗確認を行っています。
気候変動に係る詳細は、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」に記載のとおりであります。
(4) 為替変動による影響について
当社グループは貿易取引において為替リスクを負うことがありますが、為替予約等を行うことにより、為替相場の変動によるリスクを回避しています。なお、急激な為替の変動が起きた場合には、このリスクを完全に排除することは困難であるため、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(5) 災害等について
当社グループは、高圧ガス保安法等に基づくLPガス・産業ガス等を取り扱っております。そのため、法律に基づいた定期的な法定検査及び自主的な検査・点検を行っております。ただし、大規模な地震等の天災により基地などの出荷設備やお客様側の消費設備に甚大な被害があった場合や感染症の大規模な流行などにより、安定供給ができなくなる可能性があります。
(6) 規制緩和等による競争激化について
電力・ガス小売事業の全面自由化や国内の人口減少・地方都市の過疎化等に伴い、同業者間及びエネルギー間の競争環境が変化し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(7) カントリーリスクの影響について
当社グループは、貿易取引やアジアを中心とする海外事業展開を行っていますので、その地域における政治・経済情勢の悪化や、予期しない法律・規則・税制の変更、治安の悪化等の状況によっては業績に影響を及ぼす可能性があります。
(8) 金利変動による影響について
当社グループは、LPガス直売顧客数の拡大を目的としたM&Aや産業ガス事業拡大に向けた設備投資など、戦略的な投資に対する資金需要があり、金利変動が業績に影響を与える可能性があります。
(9) 取引先の信用リスクの影響について
当社グループは、取引先に対して様々な形で信用供与を行っており、債権の回収が不可能となるなどの信用リスクを負っております。これらの信用リスクを回避するため、当社グループでは取引先の信用状態に応じて、信用限度額の設定や必要な担保・保証の取得などの対応策を講じております。しかしながら、取引先の信用状態の悪化や経営破綻等により債権が回収不能となった場合などには、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(10) 保有有価証券価格の変動による影響について
当社グループは、グループ企業の株式を保有するとともに、事業上の関係緊密化を図るために取引先などの株式を保有しております。今後の株式市場の変動によっては、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。政策保有の目的で保有する株式については、毎年取締役会において個別に保有の適否を判断しております。
(11) 商品の欠陥について
当社グループが提供する製品・サービスについては、適切な品質管理体制のもと対応しておりますが、製造物責任賠償やリコール等が発生した場合には、当社グループの社会的信用や企業イメージの低下、多額の費用負担が発生するなど、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(12) 個人情報の取り扱いについて
当社グループは、LPガス事業をはじめとした各種事業において多くの個人情報を取り扱っており、個人情報保護法に定める個人情報取扱事業者として、個人情報の取扱状況について適切な管理を行い、法の遵守に努めております。ただし、当社グループの取り組みにもかかわらず、個人情報の流出が発生した場合には、当社グループの社会的信用の低下、顧客からの損害賠償請求など、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(13) コンプライアンスに係るリスクについて
当社グループは、国内外で各種の法令・規制・社会規範の下で事業を展開していることから、コンプライアンス委員会を設置して遵法体制の強化に努めております。さらに、当社グループの全構成員が遵守すべき規範として「イワタニ企業倫理綱領」を制定・周知するなど、コンプライアンスの徹底を図っております。ただし、当社グループの取り組みにもかかわらず、法令等に抵触する事態が発生した場合には、当局からの行政処分、利害関係者からの訴訟、当社グループの社会的信用の低下などにより、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(経営成績等の状況の概要)
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
なお、当連結会計年度において、持分法適用に係る暫定的な会計処理の確定を行っており、前連結会計年度との比較・分析については、暫定的な会計処理の確定による取得原価の当初配分額の重要な見直しが反映された後の金額によっております。
(1) 経営成績の状況
当連結会計年度における日本経済は、中国経済の停滞や中東情勢などの地政学的リスクに伴う先行き不透明感があるものの、所得環境の改善により個人消費が持ち直すとともに、企業収益の拡大を背景に設備投資が伸長し、緩やかな回復が続きました。
このような状況のもと、当社グループは2024年3月期を初年度とする5ヵ年に亘る中期経営計画「PLAN
27」に基づき、基本方針である「社会課題解決」と「持続的成長」に向けた事業拡大に取り組みました。
水素エネルギー社会の実現に向けては、燃料電池バス専用の水素ステーション「岩谷コスモ水素ステーション有明自動車営業所」を東京都交通局の営業所内に開所しました。また、水素燃料電池船「まほろば」による2025年大阪・関西万博での旅客運航を開始し、モビリティ用途としての水素活用を推進しました。
脱炭素戦略の一環として、カーボンオフセットカセットガスの販売を開始しました。当社が販売するカセットガスのカーボンフットプリントを算定し、自社で創出したJ-クレジットを活用してCO2をオフセットした商品であり、カセットこんろ用ボンベ業界では初めての取り組みとなりました。また、2025年大阪・関西万博の大阪ヘルスケアパビリオンに対してカーボンオフセットしたLPガスを供給するなど、脱炭素社会に向けた取り組みを推進しました。
重要鉱物資源の安定調達に向けては、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)と合弁会社「日仏レアアース株式会社」を設立し、希少資源であるレア・アースを生産するフランス企業と出資契約を締結しました。これにより、生産する重希土類の50%を長期調達することとなります。当社は1990年代よりレア・アースの輸入・販売を始めており、今後も日本の重要鉱物のサプライチェーン構築に貢献するとともに、安定供給力の強化により事業拡大に取り組みます。
当連結会計年度の経営成績については、売上高8,830億11百万円(前年度比351億23百万円の増収)、営業利益462億28百万円(同44億7百万円の減益)、経常利益614億87百万円(同8億19百万円の減益)、親会社株主に帰属する当期純利益404億48百万円(同30億19百万円の減益)となりました。
セグメント別の経営成績は次のとおりです。
①総合エネルギー事業
総合エネルギー事業は、LPガス輸入価格が高値で推移したことに加え、工業用LPガスの販売が堅調に推移し、増収となりました。利益面においては、エネルギー関連機器等の販売が堅調に推移しました。一方、LPガスは卸売部門で販売数量が減少し、小売部門では新規連結により販売数量が増加したものの、コスト上昇により収益性が低下しました。また、市況要因による増益影響が縮小(前年度比5億40百万円の減益)し、減益となりました。
この結果、当事業分野の売上高は3,787億82百万円(前年度比216億49百万円の増収)、営業利益は195億26百万円(同6億46百万円の減益)となりました。
②産業ガス・機械事業
産業ガス・機械事業は、エアセパレートガスについては、電子部品業界向けを中心に販売数量が堅調に推移しました。水素事業は、宇宙開発や脱炭素用途として、液化水素の販売数量が増加しました。特殊ガスについては、国内外で冷媒事業が拡大したものの、中国を中心にヘリウムの市況が軟化したことにより、収益性が低下しました。また、機械設備については、脱炭素用途・脱硝用途のアンモニア供給設備や、電子部材の販売が伸長しました。
この結果、当事業分野の売上高は2,714億49百万円(前年度比92億79百万円の増収)、営業利益は175億72百万円(同41億33百万円の減益)となりました。
③マテリアル事業
マテリアル事業は、エアコン向け成形品や消費者向け樹脂製品の販売が堅調に推移しました。また、バイオマス燃料や食品包装向けアルミ箔の売上が伸長しました。一方で、ステンレスの販売価格が下落するとともに、次世代自動車向け二次電池材料の売上が低調に推移しました。ミネラルサンドについては、豪州自社鉱区の収益性が低下しました。
この結果、当事業分野の売上高は2,016億85百万円(前年度比34億42百万円の増収)、営業利益は117億48百万円(同5億57百万円の減益)となりました。
④その他
売上高は310億93百万円(前年度比7億51百万円の増収)、営業利益は33億6百万円(同5億30百万円の増益)となりました。
(2) 財政状態の状況
①総資産
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末と比べ416億98百万円増加の8,721億94百万円となりました。これは、投資有価証券が95億93百万円減少したものの、受取手形、売掛金及び契約資産が162億74百万円、有形固定資産が147億94百万円、無形固定資産が112億54百万円それぞれ増加したこと等によるものです。
②負債
当連結会計年度末の負債は、前連結会計年度末と比べ135億40百万円増加の4,750億2百万円となりました。これは、短期借入金が1,047億40百万円減少したものの、長期借入金が415億19百万円、社債が300億円、コマーシャル・ペーパー等の流動負債「その他」が277億66百万円、1年内返済予定の長期借入金が102億29百万円、支払手形及び買掛金が100億35百万円それぞれ増加したこと等によるものです。
なお、当連結会計年度末のリース債務等を含めた有利子負債額は、前連結会計年度末と比べ99億26百万円増加の2,644億47百万円となりました。
③純資産
当連結会計年度末の純資産は、前連結会計年度末と比べ281億57百万円増加の3,971億91百万円となりました。これは、その他有価証券評価差額金が80億40百万円、繰延ヘッジ損益が20億46百万円それぞれ減少したものの、利益剰余金が330億92百万円、為替換算調整勘定が36億38百万円それぞれ増加したこと等によるものです。
(3) キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末と比べ60億26百万円減少の275億88百万円となりました。
①営業活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度と比べ収入が24億35百万円減少したことにより524億19百万円の収入となりました。
これは主に、税金等調整前当期純利益628億38百万円、減価償却費278億77百万円等による資金の増加と、法人税等の支払額229億38百万円、売上債権及び契約資産の増加額116億14百万円、持分法による投資損益100億99百万円等による資金の減少によるものです。
②投資活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度と比べ支出が1,028億52百万円減少したことにより584億14百万円の支出となりました。
これは主に、有形固定資産の取得434億32百万円、無形固定資産の取得112億4百万円等による資金の減少によるものです。
③財務活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度と比べ支出が1,074億49百万円増加したことにより20億16百万円の支出となりました。
これは主に、コマーシャル・ペーパーの純増加額330億円、社債の発行による収入298億39百万円等による資金の増加と、借入金の純減少額552億40百万円、配当金の支払額74億69百万円、リース債務の返済による支出12億84百万円等による資金の減少によるものです。
(4) 生産、受注及び販売の実績
当社グループの事業形態は主に商品の仕入による販売を主要業務としているため、生産実績及び受注状況に代えて仕入実績を記載しております。
①仕入実績
当連結会計年度における外部からのセグメントごとの仕入実績(役務原価等を含む)は次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前年度比(%) |
|
総合エネルギー事業 |
253,630 |
7.4 |
|
産業ガス・機械事業 |
191,371 |
4.3 |
|
マテリアル事業 |
173,651 |
4.4 |
|
その他 |
40,140 |
7.9 |
|
合計 |
658,794 |
5.7 |
②販売実績
当連結会計年度における外部顧客へのセグメントごとの販売実績(役務収益等を含む)は次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前年度比(%) |
|
総合エネルギー事業 |
378,782 |
6.1 |
|
産業ガス・機械事業 |
271,449 |
3.5 |
|
マテリアル事業 |
201,685 |
1.7 |
|
その他 |
31,093 |
2.5 |
|
合計 |
883,011 |
4.1 |
(注) 販売実績が総販売実績の100分の10以上を占める相手先はありません。
(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いております。なお、見積り及び判断・評価については、過去の実績や状況に応じて合理的と考えられる要因等に基づいて行っておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果は異なる場合があります。連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
(2) 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
①経営成績の分析
(a) 売上高及び売上総利益
売上高は、前連結会計年度と比べ4.1%増収の8,830億11百万円となりました。これは主に、LPガス輸入価格が高値で推移したことや、工業分野向け商品が堅調に推移したこと等によるもので、詳細は「(経営成績等の状況の概要) (1)経営成績の状況」のセグメント別の経営成績をご参照ください。
売上総利益は、エアセパレートガスや水素の販売が堅調に推移したことに加え、エネルギー関連機器の販売が伸長したこと等により、前連結会計年度と比べ2.1%増益の2,343億11百万円となりました。
(b) 営業利益
販売費及び一般管理費は、前連結会計年度と比べ5.2%増加の1,880億83百万円となりました。これは主に、人件費や物流費等の増加によるものです。
この結果、営業利益は、前連結会計年度と比べ8.7%減益の462億28百万円となりました。
(c) 経常利益
営業外損益は、152億59百万円の収益(純額)となり、前連結会計年度の116億71百万円の収益(純額)と比べ35億87百万円増加しました。これは主に、コスモエネルギーホールディングス株式会社に係る持分法による投資利益が増加したこと等によるものです。
この結果、経常利益は、前連結会計年度と比べ1.3%減益の614億87百万円となりました。
(d) 親会社株主に帰属する当期純利益
特別損益は、13億50百万円の収益(純額)となり、前連結会計年度の10億8百万円の収益(純額)と比べ
3億42百万円の増益要因となりました。これは主に、投資有価証券売却益が増加したこと等によるものです。
法人税等合計は、前連結会計年度と比べ11.7%増加の210億64百万円となりました。
以上の結果、親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度と比べ6.9%減益の404億48百万円となり、1株当たりの当期純利益は、前連結会計年度の188.90円に対し175.76円となりました。なお、2024年10月1日付で普通株式1株につき4株の割合で株式分割を行っております。前連結会計年度の期首に当該株式分割が行われたと仮定して、1株当たり当期純利益を算定しております。
当社は、中期経営計画「PLAN27」において、最終年度の2028年3月期に、営業利益650億円、ROE10%以上、ROIC6%以上を目標としております。前連結会計年度及び当連結会計年度、PLAN27最終年度目標の営業利益、ROE、ROICは次のとおりであります。
(PLAN27との比較)
|
項目 |
第81期実績 |
第82期実績 |
PLAN27 最終年度目標 |
|
営業利益(億円) |
506 |
462 |
650 |
|
ROE |
13.2% |
10.9% |
10%以上 |
|
ROIC |
6.7% |
5.1% |
6%以上 |
(第82期業績予想との比較)
|
項目 |
第81期実績 |
第82期実績 |
第82期業績予想(注) |
|
売上高(億円) |
8,478 |
8,830 |
9,020 |
|
営業利益(億円) |
506 |
462 |
527 |
|
経常利益(億円) |
623 |
614 |
728 |
|
親会社株主に帰属する 当期純利益(億円) |
434 |
404 |
540 |
(LPガス輸入価格変動要因(市況要因)を除いた営業利益)
|
項目 |
第81期実績 |
第82期実績 |
第82期業績予想(注) |
|
営業利益(億円) |
506 |
462 |
527 |
|
市況要因(億円) |
7 |
2 |
- |
|
市況要因を除く 営業利益(億円) |
498 |
460 |
527 |
(注) 第82期業績予想は、2024年5月13日に公表した数値を表示しております。
第82期(2025年3月期)実績は、ヘリウムの市況が中国を中心に軟化したことに加え、次世代自動車向け二次電池材料の販売低迷などにより、営業利益は462億円、ROEは10.9%、ROICは5.1%となりました。
今後につきましては、引き続き重点施策に基づいた戦略を実行し、PLAN27の経営数値目標である営業利益650億円、ROE10%以上、ROIC6%以上の達成を図ります。
②資本の財源及び資金の流動性についての分析
キャッシュ・フローの状況については、「(経営成績等の状況の概要) (3)キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。
(a) 資金需要
当社グループの事業活動における運転資金の主なものは、商品の仕入、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、設備投資、M&Aによる株式取得のためのものであります。当社グループにおいては、安心・安全を支えるインフラ整備については事業全体の収益を考慮して、将来の成長投資については資本コスト等を考慮して多角的かつ慎重に投資判断を行う方針であります。
(b) 財務政策
当社グループは、財務の健全性を保ちつつ、安定的に営業活動によるキャッシュ・フローを生み出すことで、事業運営上必要な資本の財源及び資金の流動性を確保することを基本方針としております。短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入、コマーシャル・ペーパー(CP)により調達を行っております。設備投資や長期運転資金は、自己資金並びに金融機関からの長期借入、社債の発行等により調達を行っております。また、グループ内資金の効率化を目的として、グループ会社間で貸付等を行っております。
前連結会計年度のコスモエネルギーホールディングス株式の追加取得時に調達した短期借入金は、社債300億円並びにシンジケートローン450億円に借り換えを実施し、それ以外の資金についてはCP等で調達しております。
社債については、2024年9月に普通社債(期間5年・200億円、期間10年・100億円)として発行しており、株式会社日本格付研究所(JCR)より、債券格付(A+)を取得しております。また、CP発行に必要な国内CP格付についても、長期発行体格付「A+」に対応する「J-1」を取得いたしました。
なお、当連結会計年度末のリース債務等を含めた有利子負債額は、前連結会計年度末と比べ99億26百万円増加の2,644億47百万円となりました。
(コスモエネルギーホールディングス株式会社との資本業務提携契約)
当社はコスモエネルギーホールディングス株式会社との間で資本業務提携契約を締結しており、その内容は次のとおりであります。
|
契約締結日 |
契約締結先 |
内容 |
業務提携の内容 |
|
2024年4月23日 |
コスモエネルギー ホールディングス 株式会社 |
資本業務提携
当社が保有する 同社株式数 17,709,900株 |
当社とコスモエネルギーホールディングス株式会社との間で、下記の領域について検討を進めることを合意しており、両社間にて設置した提携推進委員会の中で具体的な提携内容について協議し、推進してまいります。
① 脱炭素社会の実現に向けた取り組み ・水素エネルギー社会に向けたインフラ整備 ・国内におけるグリーン水素製造 ・脱炭素関連事業の拡充 ・次世代燃料の開発促進 ② 既存の事業分野における関係強化 ・エネルギー分野における調達機能の強化、効率化 ・産業ガス分野における製造機能の強化 ・化学品・資源分野における製造・販売機能の強化 ・顧客基盤を活用した共同マーケティング
<提携推進委員会の設置> 業務提携の推進を行う組織として、両社の代表取締役を委員長とする提携推進委員会を設置しております。 なお、上記以外の領域における連携についても、両社で検討してまいります。
|
(注)当社の議決権保有割合は20%を超えているため、同社は持分法適用関連会社となっております。
(シンジケートローン契約)
当社はコスモエネルギーホールディングス株式会社の株式取得に係る既存借入の借換資金の調達を目的として、シンジケートローン契約を締結しており、その内容は次のとおりであります。
|
契約締結日 |
2024年10月28日 |
|||
|
契約締結先 |
株式会社三菱UFJ銀行をアレンジャーとするシンジケート団 |
|||
|
契約金額 (総額45,000百万円) |
10,000百万円 |
10,000百万円 |
15,000百万円 |
10,000百万円 |
|
期末残高 (総額44,465百万円) |
10,000百万円 |
10,000百万円 |
14,465百万円 |
10,000百万円 |
|
弁済期日 |
2028年10月31日 |
2030年10月31日 |
2031年10月31日 |
2032年10月29日 |
|
担保・保証 |
無し |
|||
|
財務制限条項 |
①2025年3月に終了する決算期以降の各年度の決算期の末日における連結貸借対照表における純資産の部の金額を、当該決算期の直前の決算期の末日又は2024年3月に終了する決算期の末日における連結貸借対照表における純資産の部の金額のいずれか大きい方の75%の金額以上にそれぞれ維持すること。
②2025年3月に終了する決算期以降の各年度の決算期に係る連結損益計算書上の営業損益に関して、それぞれ2期連続して営業損失を計上しないこと。 |
|||
当連結会計年度の研究開発は、「ガス&エネルギー」を基軸に総合エネルギー、産業ガス・機械からマテリアルまでの事業領域を対象として取り組むとともに、「水素のイワタニ」としての地位を強固なものにするべく水素サプライチェーンの構築に向けた技術開発、さらには脱炭素に向けた新技術開発に注力しました。
当社グループは、兵庫県尼崎市の中央研究所及び岩谷水素技術研究所を中心に研究開発活動を行っております。中央研究所はグループ全体の成長ビジョンを見据え、新事業・新商品の開発に繋がる研究開発に取り組みました。また、お客さまへの技術サービス、当社取扱製品の品質管理、商品開発効率を高めるため、分析を主体とした基盤技術の強化にも取り組みました。
岩谷水素技術研究所では、最新鋭の水素試験研究設備を活用し、極低温の液化水素や超高圧圧縮水素ガスに適合した材料や機器の評価を行いながら、水素ステーション建設コストの低減や保安強化につながる研究開発を進めました。また、液化水素の冷熱を回収するための熱交換器の開発や将来の液化水素ステーションの実用化に向けた充填技術開発を推進しました。さらに、バイオ燃料や水素と二酸化炭素からプロパンなどの炭化水素燃料を合成する研究を進めています。
当連結会計年度における当社グループ全体の研究開発費は
主な研究開発内容は水素関連で、その金額は434百万円です。その他の研究開発費用をセグメント別に分けると、総合エネルギー事業
なお、セグメントごとの研究開発活動は次のとおりです。
(水素エネルギー関連)
水素・燃料電池戦略ロードマップ及び水素基本戦略に基づき、水素ステーションの整備や新たな水素エネルギー・アプリケーションの開発等の水素エネルギーの利用拡大に繋がる活動に取り組みました。さらに、水素エネルギー社会の実現を見据えたCO2フリー水素サプライチェーンの構築にも重点を置き研究開発を推進しました。
具体的には、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)との取り組みにおいて、豪州の未利用褐炭を用いた大規模水素サプライチェーンを構築する実証事業に参画し、これまでに液化水素運搬船や受入基地に関するエンジニアリングデータなど様々なデータを蓄積してきました。今後は液化水素運搬船に関する規格の国際標準化と商用時のターミナルの運営費・建設費削減に資するデータ収集を行っていきます。
「福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R)」(福島県浪江町)では、引き続き商用水素ステーションや県内施設に設置される燃料電池への水素ガス供給を行いました。NEDOとの契約は2025年度まで延長となり、水素製造コストを低減するための水素製造設備の運用最適化や水素需給管理の最適化に取り組みます。
大阪・関西万博において、国内初となる水素燃料電池船の旅客運航を開始しました。万博会場までの航路は、大阪の中心地である中之島ゲートからユニバーサル・シティポートを経由し、万博会場の夢洲を繋ぐルートで運航しております。研究所のカーボンニュートラル化を目指して導入した100kW純水素型燃料電池発電設備については順調に稼働しており、研究所のCO2排出量削減に貢献しています。
(総合エネルギー事業)
カーボンニュートラル社会の実現に向けた取り組みの一環として、LPガスの脱炭素化につながるグリーンLPガスの製造技術に関する調査研究を進め、岩谷水素技術研究所にてラボレベルでの基礎技術を確立しました。グリーンLPガスの合成触媒開発を進めており、今後小型製造実証設備での検証を行っていきます。
また、NEDO委託事業として、岩谷水素技術研究所での水素混合LPガスに対するガス機器の安全性検証を完了させ、2025年度に株式会社グリージョンおよび相馬ガス株式会社と共同で、福島県南相馬市の集合住宅にて既存インフラを利用した水素混合LPガスの導管供給の実証試験を行います。
さらに、当社主力のコンシューマープロダクツであるカセットガスの拡販に繋がる新商品の開発に向け、ガスコンロ以外の応用商品や熱電発電素子を使った製品開発を進めています。
(産業ガス・機械事業)
再生医療分野に力点を置き、大阪大学との共同研究で得られた細胞凍結・解凍プロセスの最適化研究成果を活かし、細胞保管輸送容器や凍結装置の開発を進めました。また、「再生医療・バイオ研究開発拠点」である中央研究所のバイオ研究専用クリーンルームを活用し、細胞構造体(3D細胞)製品への実用化が期待できる新たな凍結技術を確立しました。共同研究先と事業化の検討を進めていきます。
陸上養殖分野における酸素ガスなどの事業拡大に向け、中央研究所に導入した陸上養殖の研究設備を活用し、バナメイエビ養殖における酸素富化効果を確認しました。今後は養殖条件の見極めに加え、センサーやカメラなどデジタル技術を活用した養殖向け飼育システムの開発を行っていきます。
中央研究所で確立した半導体向け重水素ガス製造技術を基に、岩谷瓦斯株式会社三重工場内で稼働させた重水素プラントは順調に稼働しています。更なるプラントの運転効率化、製造ロス削減に寄与する技術開発を行うとともに、新たな付加価値の高い半導体材料ガスの開発を進めています。
溶接・溶断分野では、銅とステンレスの異種金属接合技術を確立しました。高価な銅の使用量削減を目的に、エアコン業界等への提案を進めています。また、電気自動車等の車両軽量化に需要が高まっているアルミダイキャストの溶接技術を開発しました。
(マテリアル事業)
携帯電話やパソコン向けに需要が拡大する積層セラミックコンデンサー(MLCC)に使われるナノニッケルの合成技術開発を推進しました。大手ユーザーにサンプルを出荷し、評価を受けながら品質を高めるとともに、量産移管に向けた自動化や製造コストの削減技術の開発に取り組んでいます。