第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営方針・経営戦略等

(会社の経営の基本方針)

当社グループは、「協カ一致、堅実運営、積極活動」の社是三原則を掲げ、商事会社として経済社会の流通機構の一翼を担い、以て社会の繁栄に寄与することを目的として協カ一致して積極的に活動し、堅実に連営して企業を安定成長せしめ、株主及び取引先をはじめステークホルダーすべての信頼と期待に応え、相互繁栄を図るとともに役職員の生活の向上、幸福の増進を図ることを基本方針としております。

 

(中長期的な会社の経営戦略)

当社グループは、2019年4月から2022年3月までの3年間にわたる中期経営計画「FACE2021」において、「困難にも向き合いながらさらなる成長を促進し、新たな価値を創造し、会社の『品質』を向上させる。」をビジョンとし、営業と技術サービスの一体化、事業間交流における新たな価値の創造等、時流に適合した事業軸体制の進化により、収益力のさらなる向上を図ってまいりました。また、これまで以上にリスク管理の徹底を行うとともに、M&A、企業アライアンスの手段を検討する等、事業企画力の強化と経営資源の有効活用により、ダイナミックな経営を目指してまいりました。

中期経営計画「FACE2021」は、新型コロナウイルス感染症の拡大とそれに伴う行動制限、半導体の供給不足、原材料価格の高騰、自動車の減産など厳しい状況下で推移いたしましたが、そのような環境において、最終年度における定量目標の計画値には未達ながらも、親会社株主に帰属する当期純利益は過去最高を更新いたしました。また、持続的成長に向けた経営基盤の強化を推進し、「次世代型エンジニアリング商社」につながる基礎固めをすることができました。

一方、目まぐるしく変化する情勢、また、この中期経営計画「FACE2021」の振り返りの中で、社会・事業環境において大きな変革が続く昨今の状況を踏まえ、企業運営の抜本的な見直しと、より長期的視野に立った戦略立案の必要性をこれまで以上に認識いたしました。そこで、当社の存在価値や使命は何であるかをいま一度見直すこととし、社会から求められる考え方への対応も含め、新たな経営理念と2030年のあるべき姿を見据えた成長戦略「V2030」を策定いたしました。さらに、当社のあるべき姿「次世代型エンジニアリング商社」の実現に向け、「V2030」からのバックキャスティングにより、2022年度から2030年度までの各3年間を「創造」「成長」「飛躍」の期と位置づけ、中期経営計画「MT2024」(創造期)を策定し、目下取り組んでおります。

 

 

(2) 目標とする経営指標

中期経営計画「MT2024」                                             

                             (単位:百万円)

 

2023年3月期(実績)

2024年3月期(計画)

2024年3月期(実績)

2025年3月期(計画)

受注高

244,296

180,000

203,986

200,000

売上高

153,674

170,000

187,790

185,000

営業利益

6,717

7,000

9,090

8,500

経常利益

7,108

7,200

9,004

8,700

親会社株主に帰属
する当期純利益

6,316

4,800

7,461

5,800

ROE

10.35%

10.00%

10.91%

10.00%

 

 注 表中の計画数値は、2022年5月12日に開示しました中期経営計画の数値となります。

 

成長戦略「V2030」                                             

                (単位:百万円)

 

2030年度目標

売上高

300,000

営業利益

12,500

ROE

10%

 

 

(3) 経営環境及び対処すべき課題

今後の我が国経済の見通しにつきましては、コロナ禍で先送りにされてきた設備投資のほか、脱炭素・DX・省力化などの重要性が高まっている投資への需要も下支えとなり、回復への期待も高まっておりますが、世界経済の減速懸念、種々の地政学リスクの顕在化、人手不足のさらなる深刻化、為替相場の先行き不透明感など、引き続き楽観を許さない状況にあります。

当社グループは、こうした短期的な経営環境の推移に対し柔軟かつ適切に対応することであらゆるステークホルダーへの貢献をするだけでなく、中長期的な環境の変化や課題を見据え、前述した成長戦略「V2030」及び中期経営計画「MT2024」において、次のとおり理念、戦略、定性目標を掲げており、それらを着実に遂行することにより、次世代をリードするような独自のエンジニアリングに重きを置いた商社を目指してまいります。

 

 

I.経営理念と成長戦略「Ⅴ2030」(Ⅴ:Ⅴision)


経営理念

 

Mission(果たすべき使命)

 人をつなぎ、技術をつなぎ、世界を豊かに

 

Ⅴision(あるべき姿)

 <次世代型エンジニアリング商社>

 時代の一歩先を行くモノづくりパートナーを目指し、当社のエンジニアリング機能を核として継続的な価値の提供によりグローバルにお客様事業の成長と持続可能な社会の実現に貢献します。

 

Ⅴalue(価値基準)

<信頼> 社内外の関係者と協調し、ステークホルダーからの期待や社会的責任と当社目標を一致させながら、

    やりがいに溢れ、個人が尊重され、成長を実感できる会社を目指します。

<成長> 独自のエンジニアリング機能によるモノづくりへの貢献とともに、積極的な成長市場への投資・

    事業領域の拡大により継続的な成長を目指します。

<貢献> 経営の透明性と会社の継続的な品質の向上を通じて、重要な社会課題に積極的に取り組むことで

    持続可能な社会の実現に貢献します。

 

 これら経営理念を実現させるため、6つの基本戦略と2030年度の目標を掲げました。

 

1.「Ⅴ2030」 基本戦略
① 積極的な投資
② PL経営+BS経営
③ マルチステークホルダーを意識した経営
④ モノ売りから「モノ×コト」売り
⑤ グローバルの成長を取り込む
⑥ DX推進

 

2.「Ⅴ2030」 定量目標(連結)
売上高:300,000百万円、営業利益:12,500百万円、ROE:10%

 

Ⅱ.中期経営計画「MT2024」(MT:Medium-Term Business Plan)

 

   定性目標

1.成長に向けた事業戦略            2.経営基盤の強化
① エンジニアリング機能の強化          ① ガバナンスの深化
② 戦略的事業投資                ② リスクマネジメントの強化
③ グローバル企業とのビジネス拡大        ③ 財務戦略の強化
④ DX強化                   ④ 人材戦略の強化

                           ⑤ サステナビリティ経営の推進

 

今後とも、役職員が法令はもとより社会的規範を遵守するため「第一実業株式会社行動規範」に則り行動し、企業としての社会的責任を果たすとともに社会に貢献していくことにも注力してまいります。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

1 サスティナビリティ全般

当社グループは、「人をつなぎ、技術をつなぎ、世界を豊かに」を経営理念に掲げ、新しい時代を担う商社として、世界の様々な現場に寄り添うビジネスを展開しております。経営基盤を強化し、環境・社会・ガバナンスの重要課題に、事業活動を通じて積極的に取り組むことで企業価値を高めてまいります。さらに、当社グループは、企業の社会的責任を果たしながら持続的かつ利益ある成長を追求し、ステークホルダーの皆さまとともに、発展していくことを目指してまいります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) ガバナンス

当社では、持続的な成長を確保することを目的として、サステナビリティ委員会を設置し、気候変動を含むサステナビリティに関する事項を審議しております。

サステナビリティ委員会は、社長執行役員を委員長とし、CSuO(Chief Sustainability Officer) である専務執行役員が推進責任者を務めております。同委員会は、年2回程度開催され、サステナビリティに関する方針を定めるとともに、社内の取組みを定期的にモニタリングし、今後の取組みに対する審議・検討を行っております。また、審議内容については取締役会に報告され、取締役会では独立社外取締役の視点も入れた上で、サステナビリティの取組みの評価を行っております。

また、2023年4月にサステナビリティ推進部を設置し、CSuOのもと同委員会の事務局を担うとともに、当社グループ全体の取組みを加速させております。

 

(2) リスク管理

当社のリスク管理は、リスク管理委員会を中心として行われ、サステナビリティに係るリスクについても、同委員会の議案として取り上げられております。但し、気候変動リスクを含む重要かつ優先的に取り組むべきリスクについては、サステナビリティ委員会のモニタリングを受けております。また、リスク管理委員会は、リスク管理を効果的かつ効率的に実施するために、リスク管理規程に基づき、その他のリスクと併せて、当社戦略に沿った気候変動リスクの管理を行っております。

 

(3) 戦略

持続的な成長を維持していくために重点的に取り組むマテリアリティについて、2022年度に次の手順にて特定しました。

 

STEP1:SDGsやISO26000等の国際的なガイドラインを参照しつつ、ステークホルダーの視点と、当社

グループにおける各セグメントの事業戦略をもとに課題を広範囲に抽出し、環境(E)、社会・経済

(S)、ガバナンス(G)の側面で分類しました。

STEP2:STEP1でリストアップした課題について、ステークホルダーにとっての重要度(縦軸)と当社グルー

プにとっての重要度(横軸)の2軸からなるマトリックスを用い、重要性の高い課題から並べて優先順位付けを行いました。

STEP3:特定プロセス、マテリアリティ及びマトリックスについて経営会議、取締役会において意見交換を行

い、妥当性を確認しました。取締役会での審議を経て承認を得たマテリアリティは、以下のとおりであります。

     ・持続可能な地球環境への貢献

     ・産業の持続的な発展への貢献

     ・健康で安全、安心な暮らしへの貢献

     ・多様な人材の活躍推進

     ・経営品質の向上

 

上記のマテリアリティに対処するために、次のページに記載のとおり個別に戦略を立案し推進しております。

 

当社グループは事業活動を通じて、SDGsやESGといった社会的価値と経済的価値を同時に追求してまいります。

 

(4) 指標及び目標

マテリアリティに対する目標は以下のとおりです。気候変動及び人的資本に関連する指標については、本報告書に記載のとおりですが、その他の指標ついても、今後開示を進めてまいります。

マテリアリティ

目標

戦略

持続可能な地球環境への貢献

・脱炭素社会の実現

・資源循環型社会の実現

・自然環境の保護

自社GHG排出削減はもとより、脱炭素商材を含む環境配慮型製品の拡販に積極的に取組み、事業を通じた環境貢献を続ける。当社グループのエンジニアリング機能を活用し、ワンストップで環境価値及び付加価値の高いソリューションを提案する。

産業の持続的発展への貢献

・AIと次世代通信技術の活用

・スマートファクトリーの推進

・安全、安心な製品の提供

「労働人口減少」、「熟練技術者からの技術伝承」といった社会課題の解決に貢献する製品の拡販を強化し、先端技術による業務プロセスの改革、品質・生産性向上に貢献する。

健康で安全・安心な暮らし

への貢献

・社会インフラによる安全性向上

・高品質製品の開発と安心の提供

グローバルネットワークを活用し、付加価値のあるヘルスケア関連製品を世界各国に販売するとともに、生活を支えるインフラの整備に欠かせない特殊車両を含む商材の取り扱いを強化し、インバウンド・アウトバウンドの両面で安全・安心な暮らしに貢献する。

多様な人材の活躍推進

・健全な職場環境

・持続的な能力開発

・タレントマネジメント

多様性推進を目的とした人材戦略として、女性、外国籍人材、経験者などの人材採用を推進する。ライフステージに合った多様な働き方の実現へ向けた第一歩として、女性が活躍できる環境整備に積極的に取組み、中核人材の多角化につなげる。

経営品質の向上

・内部統制とガバナンス強化

・リスクマネジメント

・社会への貢献と調和

指名・報酬を含む、取締役会の機能強化を図るとともに、リスクマネジメント委員会、サステナビリティ委員会等の、全社委員会を通じて、中長期の課題を経営判断に取り込む。資本効率性を意識した事業ポートフォリオ戦略を策定し、遂行する。

 

 

2 気候変動

(1) ガバナンス

当社は、2004年1月よりISO14001に基づく、環境マネジメントシステム(EMS)を運用し、環境負荷低減を組織的に推進しております。トップマネジメントは社長執行役員、管理責任者は総務本部長と定め、環境方針に基づき、PDCAサイクルによる継続的な改善に取り組んでおります。こうした仕組みを通じて、気候変動についても、リスクと機会の両面から取組みを加速させております。

 

(2) 戦略

当社は、2022年に「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の最終報告書(TCFD提言)への賛同を表明しております。2023年度は、当社7つの事業ポートフォリオのうち、資源、石油精製、化学分野におけるビジネスが多く、相対的に気候変動による財務的影響を受けやすいプラント・エネルギー事業 (セグメント)を対象とし、気候変動が当社の事業活動に与えるリスク及び機会を抽出し、シナリオ分析を実施いたしました。その概要は以下のとおりです。

 

■参照したシナリオ

設定シナリオ

1.5℃シナリオ

4℃シナリオ

将来社会像

脱炭素化により化石燃料関連のビジネスが減少し、新素材・新技術等による製品需要が増加

脱炭素・低炭素の動きは一部に止まり、気候変動に起因する自然災害が頻発、激甚化

移行リスクシナリオ

「Net Zero Emissions by 2050 Scenario」

(IEA WEO2022)

「Stated Policies Scenario」

(IEA WEO2022)

物理リスクシナリオ

RCP2.6(IPCC AR5)

SSP1-1.9/SSP1-2.6(IPCC AR6)

RCP8.5(IPCC AR5)

SSP5-8.5/SSP1-2.6(IPCC AR6)

 

 

■気候管理のリスク及び機会

リスク・機会の種類

トリガー

自社への影響

時間軸

財務影響

1.5℃

4℃

リスク

移行

リスク

政策/法規制

カーボンプライシングの導入

営業活動にかかるコストの増加

中期

各国の炭素規制、GHG排出量報告義務の強化

取引手続き・モニタリング調査等におけるコストの増加

短期

市場

原材料価格高騰

取扱商材の仕入価格高騰による利幅の低下

中期

化石燃料ビジネスの衰退

関連業界・市場規模縮小により従来の設備需要の減少

中期

新規事業の失敗

新しい脱炭素技術を活用した商材への投資の失敗による減収

中期

評判

環境対応への遅れによるステークホルダーからの評判低下

人員不足、労働生産性の低下

中期

物理的リスク

急性

異常気象の激甚化

洪水によるサプライチェーン寸断に伴う販売機会の喪失

長期

慢性

気温の上昇

バイオマス原料等の調達困難

長期

機会

資源の効率性

カーボンニュートラル政策

補助金による取引機会の増加

中期

新たなエネルギー源

新市場における取引機会の増加

中期

市場

CCS等の新たな機会

掘削事業の横展開による取引機会の増加

長期

レジリエンス

気候変動への取組みの外部評価

脱炭素化への取組みの本気度により企業価値が向上し外部評価が向上、社員エンゲージメントの上昇

中期

 

※ 短期/3年以内、中期/4~9年以内、長期/10年以上

 

当社は、持続可能な地球環境への貢献をマテリアリティの一つとして特定し、脱炭素社会の実現を目標として掲げております。自社の削減目標として、Scope1、2の削減率を定めるとともに、成長戦略V2030の投資戦略に脱酸素を取り込むなど、事業を通じた取組みを開始しております。 

 

<具体例1>

2023年7月に㈱ウエイブエンジニアリングの株式を取得し連結子会社化いたしました。同社ではカーボンニュートラルの潮流を受け「水素」や「アンモニア」に関する検討を多数行っております。今後はカーボンニュートラルに貢献する製造プロセスの検討やプラント設計などを通じて、脱炭素社会の実現・自然環境の保護への貢献を目指してまいります。

 

<具体例2>

佐賀県にて長年の地域課題であった家畜排せつ物を利用し発電を行うバイオマス発電所に対して、ガスエンジン発電機等の主要機器を納入いたしました。この発電所稼働により、一般家庭約 4,500 世帯分の年間消費量に相当する電気が発電され、年間約 3,700 トンの CO2を削減する効果が期待されております。

 

(3) 指標及び目標

当社グループの気候変動リスクに関する指標及び目標並びに実績は、次のとおりであります。

項目

目標

2021年度実績

(t-CO2)

2022年度実績

(t-CO2)

Scope1及びScope2

2030年度までに2020年度の温室効果ガスの排出量(1,617.37t-CO2)を46%削減、2050年度までにネットゼロを目指す。

1,617.09

1,773.16

 

注 Scope1:事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)

Scope2:他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出

排出量の算定に関しては、当社及び国内外連結子会社を範囲としますが、小規模で全体への影響が限定的な拠点については除外しております。

Scope2は、「地球温暖化対策の推進に関する法律」で定められた電気事業者別の調整後排出係数(令和5年度報告用)に基づき算定しております。

 

 また、今年度は、温室効果ガス排出量の計測範囲の拡大に向けた取組みとして、当社グループ社員の出張・通勤に伴う排出量を算出いたしました。

 

 

計測項目

2022年度実績(t-CO2)

Scope3

カテゴリー6 (出張)

172.88

カテゴリー7 (通勤)

425.08

 

 

 

3 人的資本

 人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針

当社は、2022年に「人をつなぎ、技術をつなぎ、世界を豊かに」をミッションとする新たな経営理念を制定しており、多様化するニーズにあって、先進的な技術や高品位なサービスを活かした提案力により、「次世代型エンジニアリング商社」をあるべき姿として目指しております。

これらを基に、下記のとおり方針を策定し推進しております。

 

■人材育成方針

 「環境の変化に対応できる、しなやかさと強さを兼ね備えた人材の育成と組織形成」

■社内環境整備方針

 「高度専門性」「自律」「多様性」「健康経営」を軸に「採用」「研修・教育」「制度」の深化・充実を図る

 

(1) 戦略

①人的資本経営戦略

社員一人ひとりを「自ら考え、周囲に働きかけながら、実現に結び付ける」ビジネスパーソン志向を備えた人材とするべく、長期的な視点で育成してまいります。人的資本経営による社員の成長を、当社事業における基礎体力の向上と従業員の労働意欲に結び付けることで会社の成長エンジンとし、当社の企業価値向上につなげ、ステークホルダーの皆さまへ還元してまいります。

 

・当社事業基礎体力の向上

 入社5年目までの人材については、ビジネス基礎の習得を目的として公的資格取得に向けた研修や階層別教育を実施いたします。中堅人材については、ビジネス応用力の習得を目的として、キャリアデザインに応じたリスキル講習や当社風土に基づいた研修を実施いたします。

 また、当社が標榜する次世代型エンジニアリング商社の実現を目的として、新入社員研修の段階から設備納品時に必要とされる項目について安全教育を実施し、専門性を高めてまいります。

・従業員の労働意欲や成長意欲の向上

 当社は7つの事業領域において事業を行っており、様々な市場・業界でビジネスを推進していることから顧客や仕入先の風土も多岐にわたっており、多様性への理解を深めることが「稼ぐ力」となります。

 そのため、多様性推進を目的とし、女性活躍の環境整備と採用活動の多角化を進め、中核的人材における女性比率の向上と外国籍人材や中途人材の採用を推進してまいります。

 また、従業員のエンゲージメントや健康の増進を目的に、働き方改革に係る各種の施策を推進し、エンゲージメント調査を進めてまいります。

・幹部候補の経営力向上

 上記に加えて、幹部候補の育成を目的に、実践経験の場として海外駐在を計画的に推進し、経営感覚を持った人材の増進を進めてまいります。

 

②人材戦略

上記人的資本経営戦略を受けた人材戦略の一環として、当社は従来型のメンバーシップ的な人事制度から、各々の職責が持つ役割を明確にした「新人事制度」を2021年度より運用しております。「次世代を担う人材育成」「働きがいの向上」をメインテーマに据え、総合職群の先のマネジメント職群のほか、新たにプロフェッショナル職群、テクニカル職群を設け、個々の適性に応じた職群を選択できる仕組みです。

人材戦略における施策の実効性はエンゲージメント調査や自己申告書に基づく人事部による個人面談により、社員からの声を集約することで検証を行い、人材戦略の修正や新たな施策の立案に活用できるよう、サイクルを回しております。2023年3月実施のエンゲージメント調査においては、中期的な教育施策の不足に対する社員の声が抽出されたことを受け、自己申告面談時に長期キャリアパスを話し合えるよう運用を改善しております。また、より自律的なキャリア形成に向けて、社内議論を進めております。

 

(3) 指標及び目標

 人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針に係る指標

人的資本経営戦略

期待される効果

手段

関連指標

2023年度実績

当社事業基礎体力

の向上

・入社5年以内人材への

ビジネス基礎の習得

・企業理念、歴史の共有

・階層別集団研修の実施

・e-lerning教育支援

・公的資格取得支援、

  手当支給

従業員一人当たり教育費

社員一人当たり平均研修時間

階層別集合研修受講率

職群別研修延べ時間

96千円

16.1時間

83.3%

1,315.5時間

・ビジネス応用力の習得

・中堅人材の自立性醸成

・職群別研修

・スキル向上e-lerning

  教育支援

・次世代型エンジニアリング

 商社実現に向けた高度

 専門性強化

・新卒理系、経験者採用

  強化

・技術系職群の等級見直し

・工事安全衛生教育の充実

・技術系公的資格拡充

職長教育受講者数

全社員に占める技術系職群の割合

34

5.6%

従業員の労働意欲や成長意欲の向上

・多様性推進

→異文化理解

→世界市場で「稼ぐ力」に

・女性、外国籍人材採用

  強化

・職群転換制度の運用促進

・採用活動の多角化

・職群等級の給与体系見直し

・社内公募制度の新設

中途入社者比率

外国籍社員比率

管理職に占める女性労働者の割合

43.3%

0.8%

2.6%

・従業員

エンゲージメント向上

・従業員の健康増進

・残業時間適正化

・有給休暇取得促進

・エンゲージメント調査

・グループ保険料の

  費用負担

エンゲージメント調査 総合満足度

有給休暇取得率

一月当たりの労働者の平均残業時間

健康診断受診率

ストレスチェック受検率

労働災害件数

69.2%

59.7%

16.4時間

90.7%

88.4

6

幹部候補の

経営力向上

・経営感覚を持った

幹部候補育成

・P/L経営+B/S経営

・国内外関連会社経営

  機会創出

・多様化実現のための異動

  機会創出

海外駐在経験者比率

28.0%

 

注 提出会社を範囲としており、連結グループに占める人員比率は44.4%です。単体:623名、連結1,402名

 (2024年3月31日現在)

 

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが数年以内に顕在化する可能性があると判断したリスクでありますが、ここに掲げられている項目に限定されるものではなく、予見が困難なリスクも存在します。そのため、記載内容と実際の結果が異なる場合があります。

 

(マクロ経済環境の変化によるリスク)

当社の主な事業は各種機械・器具・部品の販売及び各種機械·器具の賃貸等であり、国内販売並びに輸出入を行っております。海外においては、2022年4月から2025年3月までの3年間にわたる中期経営計画「MT2024」において、世界4軸体制による海外事業展開を加速させていくとともに、グローバル企業とのビジネス拡大を図り、収益力の強化に取り組んでおります。従いまして、国内はもとより世界的な景気動向によっては、当社グループの業績が変動する可能性があります。中国、アジア地域、北中南米、欧州の政治動向又は経済動向は、当社グループの事業機会を拡大させる可能性がある一方で、各国に広がりつつある保護主義、中国や新興国経済の成長鈍化、米中対立の影響による世界経済の減速懸念や世界的な地政学リスクの発現など、これらの地域における経済活動の停滞は当社グループの業績を悪化させる要因となる可能性もあります。とりわけ中国に偏りつつあったサプライチェーンの再編や米国の政治動向、地域を問わない政治的・経済的紛争により投資が左右されることは当社グループの業績に関わる重要度の高いリスクと認識しております。

当社では、世界4軸体制による海外事業展開に伴い連携を強化した海外各国の当社グループ会社との密なコミュニケーションにより、迅速な情報の入手と展開を行う体制を構築しております。また、事業ポートフォリオの機動性を活かして速やかに事業シフトを行うとともに、政治的不安定地域、経済減速地域の取引先を最大限にサポートすることにより、業績悪化のリスクを最小限にとどめる体制となっております。

 

(海外売上高比率増大に伴うリスク)

我が国企業は海外市場への進出や生産拠点の海外移転を依然進めております。これに対応し、当社グループも海外拠点の拡充等によりグローバル化を推進し、ビジネスチャンスの拡大を図っております。それに向けて、商社としてのコーディネート力を活かし、国内外の取引先に対して日本及び海外の商品やサービスの提供を支援し、クロスボーダー取引の展開にも注力しております。当連結会計年度における連結売上高に占める海外売上高の割合は前期の53.6%から48.2%へと減少したものの、今後も中期経営計画の着実な実行により海外売上高比率は高まっていく傾向にあるものと予想されます。このため、国際的な金融環境、税制、為替レート動向、原油や原材料価格・輸送費用の動向、顧客企業の生産拠点への設備投資動向などが当社グループの業績に影態を及ぼす可能性があります。また、海外での事業活動には予期できない政治体制・経済環境の変動、法律·規制の変更等による社会的混乱等のリスクが存在いたします。

このことに対し当社では、当社グループのグローバルネットワークや幅広い取引先との関係を活かして迅速に情報・動向を把握し、最適な取引形態を選択することにより収益減少のリスクを最小限にとどめるように努めております。

 

(金利・資金調達に関わるリスク)

当社グループは、取引銀行5行と貸出コミットメント契約を締結し、必要に応じて資金を調達しております。当連結会計年度における当社グループの有利子負債は73億39百万円となっており、今後も運転資金の機動的かつ安定的な調達と金利コストの削減を目指してまいります。しかし、金融市場が不安定な場合や、当社グループの信用カの悪化により格付機関から当社に付与されている信用格付が引き下げられた場合等においては、当社グループにとって好ましい条件で適時に資金調達をできる保証はなく、当社グループの営業活動の制約要因となる可能性があるほか、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、今後の売上高及び金利動向によっては金融収支が悪化し、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性もあります。加えて、国内外の主要金融市場において大きな混乱が生じた場合には、資金調達コストが増大する可能性もあります。

 

このことに対して当社グループでは、金融機関との良好な関係の継続や、適時の対話による機関投資家との関係の構築と深化に努めるとともに、資金調達先の多様化を図ってまいります。また、不測の事態に備えた資金政策や、良好な財政状態の維持による格付けの維持や向上により、運転資金の機動的かつ安定的な調達、資金調達コストや金利コストの削減に努めてまいります。

 

(IT・システムリスク)

当社グループの事業活動におけるシステム・ネットワークヘの依存度は年々拡大しており、セキュリティの高度化、コンピュータシステムデータのバックアップ等によりシステムやデータの保護に努めておりますが、自然災害、コンピュータ・ウイルス、不正アクセス、電力供給の制約や大規模停電、故障や不具合等によりシステムや通信ネットワークに甚大な障害が発生した場合、取引先との受発注業務をはじめ、事業活動に支障をきたすほか、多額のコストや当社グループの評価に重大な影響を与え、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、事業継続対策の一つとして十分な安全性を備えたデータセンター及びクラウドサービスを利用しシステムやデータの保護を図っており、また従業員が使用するコンピュータ等の末端機器への監視システムを導入することでコンピュータ・ウイルスや不正アクセスへの対応を行っております。電力・通信インフラの不具合による事業活動への影響に対しては、当社グループが定める緊急時対応プランにおいて、速やかに安全な地域に移動し事業停止期間を最短に抑える等の対策を講じております。

 

(事業の展開に関わるリスク)

当社グループのビジネスモデルは機械メーカーの代理店業に特化したものから、技術革新に伴う取引先工場の生産支援、技術サポート等へとサービスの幅を広げております。それに伴い、モノ(商品)のみの取引からコト(役務)としての取引へと事業範囲が拡大しており、同時に個々の案件の取引規模も拡大し、また取引が複雑化、長納期化しております。とりわけ、リチウムイオン電池(LIB)に関わる事業においては、その製造における材料工程、製造工程、検査工程などあらゆる装置・役務を取り扱っております。LIB市場については、内燃機関エンジン車の販売禁止が協議されている自動車業界やバッテリー機能の向上・効率化を志向する電子デバイス業界を中心に需要が依然増加しており、欧州・米州をはじめ世界各国で設備投資が行われております。市場・事業に対するリスクとして、大型工事案件の増加による事故の発生、それに伴う法的責任や費用の発生、技術の陳腐化に伴う市場価値の下落などが想定されます。それらに対し、当社では十分な技量を備えたエンジニアの採用とその人事評価制度の整備、経営企画本部内に設置したグローバル戦略推進部門や契約締結に関わる法務・経営管理部門の強化など、リスク回避とビジネスチャンス獲得に向けた市場への対応力、競争力を高める取組みを行っております。加えて、ここ数年で増大した、納入設備のリモー卜立上げ・試運転・検収立会い等に関して、検収後に不具合、要調整項目や未確認項目が発覚し、設備の不具合解消や調整のみならず契約上の責任、費用が発生することが想定されます。そのことに対しては、これまでに積みあがったノウハウのさらなる蓄積、成功事例の迅速な検証とともに、法務・経営管理部門の機能強化を通じて、リスクの回避を図ってまいります。しかしながら、上記を含めリスクを完全に排除することはできず、リスクが発生した場合には当社グループの業績及び財政状態へ影響を及ぼす可能性があります。

 

(与信リスク)

当連結会計年度末における当社グループの売上債権の合計額は617億2百万円と、総資産の31.8%を占めており、取引先の信用悪化や経営破綻等により損失が発生する信用リスクを負っております。また、得意先からの商品及びサービスの受注に伴い、各種機械・器具等の製造を各仕入先に対して発注しております。これらのことに対し当社グループでは、取引権限やリスク管理に関する規程に則り、与信限度額・成約限度額について必要な承認手続きを行うこと、与信先の信用状態に応じて必要な担保・保証等の取り付けをすること、債権の流動化等のリスクヘッジを講じております。しかしながら、経済環境の悪化等による取引先の流動性危機、連鎖倒産、もしくは特定の大口与信先の経営不安等が発生し債権等が回収不能になった場合など、発生しうるリスクを完全に排除することはできず、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(長期戦略や中期経営計画におけるリスク)

当社グループは、長期の成長戦略、また2022年度からの中期経営計画を策定しております。これらの戦略や計画は中長期に及ぶことから、従来の事業においてここに記載しているリスクが潜在する期間も中長期にわたることに加え、積極的に推進を図っていく事業関連投資やその他投資においても、十分な効果が現れなかった場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、機能を強化している経営企画部門を中心として投資検討能力の向上によるリスクの最小化を図っており、投資実行後は、定期的検証に基づく進捗分析、変更是非の検討と判断、速やかな開示を行ってまいります。

 

(災害リスク)

地震、台風、火災、感染症の流行等の災害発生により、当社グループの事務所、工場、役職員などに対する被害が発生し、営業・生産活動に支障が生じる可能性があります。当社グループでは事業継続計画基本書を策定しており、加えてこれらの災害に対するリスク管理マニュアルの作成、安否確認システムの導入、防災訓錬などの対策を講じてきております。しかしながら、これらによって災害による被害を完全に回避できる保証はなく、重大な被害が発生した場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、災害により当社グループの主要な取引先に重大な被害が発生した場合には、取引先の営業・生産活動の停滞が当社グループの業績を悪化させる要因となる可能性もあります。

 

(サステナビリティに関するリスク)

昨今大きな影響が懸念されている気候変動に関して、当社グループでは、TCFDの提言にある種々のリスクが、当社グループのみならずサプライチェーンにおいても重要な影響を及ぼすものと認識しており、税負担の増大等による直接的かつ財務的な影響のみならず、取扱商品・製品の技術的問題や市場での需要の減少、それに伴う企業評価の低下等が当社グループの業績及び財政状態を悪化させる要因となる可能性があります。当社グループではこの課題を専門的に取り扱う組織体を設置し、シナリオの設定や影響額の算定、また継続的なモニタリングを行っていくと同時に、当社グループの置かれたサプライチェーンにおいて、環境配慮製品やサービスを当社グループのお客様であるものづくり企業へ提供することにより、脱炭素社会の実現と環境課題に積極的に取り組んでまいります。また、気候変動に関連する課題以外でも、環境破壊、人権、ダイバーシティなどに関連する様々な基準や市場の変化に伴って当社のビジネス領域での需要や競争原理が変化し、それらの変化への対応が遅れた場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があると認識しており、グローバル企業が実施する様々なサプライチェーンデューデリジェンスに適合する会社基準の策定に取り組んでまいります。

 

なお当社では、上述した項目をはじめとした事業推進上のリスクを統合的に取り扱う実務専門部署を創設しており、複数の階層によりリスクの監視・管理を行う統合リスクマネジメント体制を整備しております。

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1) 経営成績

当連結会計年度における我が国経済は、半導体などの供給制約緩和に伴う生産活動の持ち直しや経済活動の正常化が進む中、円安の進行、価格転嫁の進展、インバウンド需要の拡大等を背景として緩やかな回復傾向をたどりました。しかしながら、中国など海外経済の減速懸念、中東情勢の不安定化をはじめとした地政学リスクの増大、物価上昇に伴う需要の減少、人件費高騰によるコストの増加、人手不足の深刻化への懸念など、先行きの景況感については依然として慎重にならざるを得ない状況となっております。

 

このような状況の中、当社グループでは新たな経営理念、成長戦略「V2030」のもと、「創造期」の位置付けである中期経営計画「MT2024」において、「次世代型エンジニアリング商社」への実現に向け、「成長に向けた事業戦略」「経営基盤の強化」を基本方針として、技術・サービス力のさらなる強化、DXによる新たなビジネスモデルの構築を図るとともに、人的資本等の充実、サステナビリティ経営に注力しております。この結果、業績は年度を通じて好調に推移し、当連結会計年度の売上高は、1,877億90百万円前期比22.2%増)となりました。

 

売上原価は、289億7百万円増加1,559億10百万円前期比22.8%増)となりました。なお、売上総利益率は、ヘルスケア事業の粗利益率低下などにより、前期の17.4%から17.0%へと減少しました。この結果、売上総利益は52億8百万円増加318億79百万円前期比19.5%増)となりました。

 

販売費及び一般管理費は、エンジニアリング機能の強化等に向けた積極的な人材投資のため、給与をはじめとした人件費が増加したことなどにより、28億35百万円増加227億89百万円前期比14.2%増)となりました。

この結果、営業利益は23億72百万円増加90億90百万円前期比35.3%増)となり、営業利益率は前期の4.4%から4.8%へと増加しました

 

営業外損益においては、営業外収益は、受取配当金が増加したことなどにより1億59百万円増加12億34百万円前期比14.9%増)となりました。営業外費用は、為替差損が増加したことなどにより6億36百万円増加13億20百万円前期比93.1%増)となりました。この結果、営業外損益は前期より4億76百万円減少の86百万円の損失となり、経常利益は18億95百万円増加90億4百万円前期比26.7%増)となりました。

 

特別損益においては、特別利益として投資有価証券売却益11億50百万円や受取保険金9億96百万円を計上した一方で、特別損失として災害による損失6億83百万円などを計上したため、差引き14億85百万円の収益(前期比23.1%減)となりました。

 

親会社株主に帰属する当期純利益は、税金等調整前当期純利益104億89百万円から法人税等(法人税等調整額を含む)30億48百万円並びに非支配株主に帰属する当期純損失21百万円を差引き、11億45百万円増加74億61百万円前期比18.1%増)となりました。

 

当連結会計年度における自己資本当期純利益率(ROE)は、前期の10.3%から10.9%へと増加しました。今後も、新中期経営計画の基本方針に則り、さらなる収益性の向上を目指し、自己資本の充実を図りつつ、ROEの維持・向上を目指してまいります。

 

 

セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。

 

プラント・エネルギー事業

国内外向けの各種プラント用設備や地熱・天然ガス開発向け機材等の売上の減少やバイナリー発電事業に係る引当金の計上があったため、売上高は14億69百万円減少157億23百万円前期比8.5%減)となり、セグメント利益(営業利益)は4億48百万円減少4億6百万円前期比52.4%減)となりました。

 

エナジーソリューションズ事業

国内外向けリチウムイオン電池製造設備等の売上が増加し、売上高は156億79百万円増加341億88百万円前期比84.7%増)となり、セグメント損益(営業損益)は11億1百万円増加10億33百万円の利益となりました。

 

産業機械事業

プラスチックス製品・食品関連業界向けの成形機、塗装関連設備及び周辺機器、医療関連器具製造装置等の売上が増加したため、売上高は41億31百万円増加278億97百万円前期比17.4%増)となり、セグメント利益(営業利益)は4億34百万円増加10億76百万円前期比67.6%増)となりました

 

エレクトロニクス事業

IT及びデジタル関連機器製造会社向けの電子部品製造関連設備等の販売が増加したため、売上高は18億80百万円増加504億41百万円前期比3.9%増)となりましたが、セグメント利益(営業利益)は3億42百万円減少28億73百万円前期比10.7%減)となりました。

 

自動車事業

自動車関連業界向けの自動組立ライン、塗装ライン、車載電子部品製造関連設備等の売上が増加したため、売上高は73億59百万円増加388億19百万円前期比23.4%増)となり、セグメント利益(営業利益)は9億64百万円増加18億73百万円(前期比106.0%増)となりました。

 

ヘルスケア事業

錠剤印刷検査装置やパッケージング用機器・装置等の売上が減少したものの、医療機器製造装置の売上が増加したため、売上高は13億45百万円増加127億80百万円前期比11.8%増)となりましたが、セグメント利益(営業利益)は1億93百万円減少9億98百万円前期比16.2%減)となりました。

 

航空・インフラ事業

航空機地上支援機材及び空港施設関連機器や自治体及び官公庁向け特殊車両等の売上が増加したため、売上高は50億10百万円増加75億28百万円前期比199.0%増)となり、セグメント損益(営業損益)は5億37百万円増加4億91百万円の利益となりました。

 

その他

売上高は1億78百万円増加4億10百万円前期比77.2%増)、セグメント損益(営業損益)は1億18百万円増加25百万円の利益となりました。

 

 

 

受注、販売及び仕入の実績は、次のとおりであります。
① 受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

受注高
(百万円)

前期比(%)

受注残高
(百万円)

前期比(%)

プラント・エネルギー事業

22,633

+0.5

26,640

+35.0

エナジーソリューションズ事業

40,871

△43.9

85,097

+8.5

産業機械事業

26,383

△4.4

16,566

△8.4

エレクトロニクス事業

46,830

△5.0

26,905

△11.8

自動車事業

41,380

△13.2

37,017

+7.4

ヘルスケア事業

18,688

+27.3

16,706

+54.7

航空・インフラ事業

6,883

△28.2

7,653

△7.8

その他

315

+99.3

116

△44.9

合計

203,986

△16.5

216,704

+8.1

 

注 セグメント間取引については、相殺消去しております。

 

② 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

販売高(百万円)

前期比(%)

プラント・エネルギー事業

15,723

△8.5

エナジーソリューションズ事業

34,188

+84.7

産業機械事業

27,897

+17.4

エレクトロニクス事業

50,441

+3.9

自動車事業

38,819

+23.4

ヘルスケア事業

12,780

+11.8

航空・インフラ事業

7,528

+199.0

その他

410

+77.2

合計

187,790

+22.2

 

注 セグメント間取引については、相殺消去しております。

 
 
③ 仕入実績
当連結会計年度における仕入実績は、販売実績と概ね連動しているため記載を省略しております
 

 

(2) 財政状態

当連結会計年度末の総資産は、412億60百万円増加1,937億95百万円前期比27.0%増)となりました。流動資産は363億10百万円増加1,715億89百万円(前期比26.8%増)、固定資産は49億49百万円増加222億6百万円前期比28.7%増)となりました。

流動資産の増加は、現金及び預金の減少があったものの、受取手形、売掛金及び契約資産や前渡金が増加したことが主な要因であります。固定資産の増加は、有形及び無形固定資産の減価償却による減少があったものの、時価評価による投資有価証券の増加やのれんを計上したことが主な要因であります。

 

負債の合計は314億76百万円増加1,203億54百万円前期比35.4%増)となりました。流動負債は303億82百万円増加1,168億94百万円(前期比35.1%増)、固定負債は10億94百万円増加34億59百万円前期比46.2%増)となりました。流動負債の増加は、支払手形及び買掛金や前受金が増加したことが主な要因であります。固定負債の増加は、繰延税金負債が増加したことが主な要因であります。

純資産の合計は97億83百万円増加734億41百万円前期比15.4%増)となりました。これは主に、配当金の支払いがあったものの、親会社株主に帰属する当期純利益74億61百万円を計上したことが主な要因であります。純資産が増加した一方で、総資産も大きく増加した結果、自己資本比率は前期の41.6%から37.8%へと減少しました。

 

有利子負債は、前期比14億56百万円増加の73億39百万円(前期比24.8%増)となりました。内訳は短期借入金67億90百万円(1年内返済予定の長期借入金を含む)、長期借入金1億20百万円、その他4億28百万円であります。長期借入金は新ERPシステム導入に対応するものであります。なお、当連結会計年度末における有利子負債比率(DER)は0.10倍となり、前期の0.09倍から増加しております。

 

新中期経営計画「MT2024」のビジョンと基本方針に沿って、実施計画を着実に実践しながら、当社グループ全体の資金をグローバルレベルで有効に活用することにより、財務体質のさらなる強化を図ってまいります。

 

(3) キャッシュ・フローの状況の分析

当連結会計年度におけるキャッシュ・フローは、20億91百万円の減少となり、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は302億17百万円となりました

 

営業活動によるキャッシュ・フロー

当連結会計年度において、営業活動によるキャッシュ・フローは、17億5百万円の減少(前期比106億45百万円減)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益の計上、前受金の増加があったものの、前渡金の増加、売上債権及び契約資産の増加があったことによるものであります。

 

投資活動によるキャッシュ・フロー

当連結会計年度において、投資活動によるキャッシュ・フローは、4億78百万円の減少(前期比11億39百万円減)となりました。これは主に、投資有価証券の売却による収入があったものの、固定資産の取得による支出、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出があったことによるものであります。

 

財務活動によるキャッシュ・フロー

当連結会計年度において、財務活動によるキャッシュ・フローは、8億60百万円の減少(前期比37億8百万円増)となりました。これは主に、配当金の支払いがあったことによるものであります。

 

(4) 資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当社グループの主要な資金は、商品やサービスの購入のために費やされており、他には販売費及び一般管理費、設備並びに新規事業分野への投資、M&Aやアライアンスにも活用しております。これらの資金需要について、営業活動によるキャッシュ・フロー及び自己資本並びに銀行その他の金融機関からの短期・長期借入による資金調達にて対応していくこととしております

 

資金の流動性については、取引銀行5行と100億円の貸出コミットメント契約を締結し、機動的かつ安定的な調達手段を確保しております。世界情勢の急激な変化等による資金需要に対応するため、また、事業の拡大に伴う受注案件の大型化によるリスクに備えるため必要となる資金を十分確保しております

株主還元については、株主に対する利益還元を経営の重要政策の一つとして位置づけており、親会社株主に帰属する当期純利益の30%を配当性向の目安として、今後の事業展開及び安定配当の継続等を総合的に勘案のうえ、業績に応じた適正な配当を実施してまいります

 

(5) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

特記事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

当社グループは、各種機械・器具・部品の販売等を行っておりますが、一部商品につきましては、子会社が開発・設計・製造を行っております。第一実業ビスウィル㈱は外観検査装置・錠剤印刷機を開発・設計・製造しております。

当連結会計年度における当社グループの研究開発費の総額は358百万円であります。

 

各セグメントの研究開発活動を示すと、次のとおりであります。

 

プラント・エネルギー事業

当セグメントに係る研究開発費は軽微であるため、記載を省略しております。

 

エナジーソリューションズ事業

当セグメントに係る研究開発費は軽微であるため、記載を省略しております。

 

産業機械事業

当セグメントに係る研究開発費は軽微であるため、記載を省略しております。

 

エレクトロニクス事業

当セグメントに係る研究開発費は軽微であるため、記載を省略しております。

 

   自動車事業

     該当事項はありません。

 

ヘルスケア事業

錠剤外観検査システムTVIS-NS-GF型においては、印刷に関わるAI検査機能の搭載開発が完了し、お客様への納入実績を作ることができました。本機能は、従来のルールベース画像処理検査とAI検査を効率的に融合することで、より高速かつ高い精度での検査を実現しております。この結果、インクジェット印刷機の普及により印字が微細化する製剤に対して、高精度な検査の提供が可能となります。

医薬品の検査システムおいては、海外市場拡大に向けた開発にも力を入れております。海外戦略機TVIS-NSR型において海外市場でニーズの高い「錠剤」と「カプセル」という異なる剤型を1台で検査することができる兼用機開発の設計が完了し、これにより海外市場での競争力が格段に上がると見込んでおります。

また、電子部品市場においては、医薬に先行して市場へ投入したAI検査の改良を継続しており、生産現場における検査精度が向上しております。小型化が進む受動部品に対しては、より高い精度で検査するための準備として、高速画像転送のプラットフォーム開発を進めております。

当連結会計年度における研究開発費の金額は318百万円であります。

 

航空・インフラ事業

該当事項はありません。

 

   その他

当セグメントに係る研究開発費は軽微であるため、記載を省略しております。