文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであり、その達成を当社として約束する趣旨のものではありません。また、実際の業績等は様々な要因により大きく異なる可能性があります。
当社は、2023年5月に策定した2026年3月期(2025年度)を最終年度とする「中期経営計画2023」にて掲げた2030年目標に向けて計画の実行段階にありますが、外部環境の変化を含む現状の課題認識に鑑み、目標達成への取り組みを更に力強く推進するべく、2026年3月期を初年度とする5か年計画「中期経営計画 Road to 2030」へと同計画をアップデートいたしました。
「中期経営計画 Road to 2030」の位置付け

2023年3月 2026年3月 2030年3月
本計画最終年度である2030年3月期は、売上高3,000億円、営業利益75億円、親会社株主に帰属する当期純利益45億円を定量目標としております。
また、本計画の主要な財務指標として、計画期間中の投資活動を踏まえ、減価償却費及びのれん償却額を営業利益に加算して本業の収益力を示すEBITDA、資産の効率性を示すROAを設定しております。
※ EBITDA:営業利益+減価償却費+のれん償却額
[資本コストに対する現状分析]
当社の株主資本コストの水準は、CAPMによる推計で5~6%と認識しています。WACCについては、CAPMによる株主資本コストと負債コストを加重平均して2.3~3.4%と算出しています。ROE向上への取り組みを推進し、株主資本コストを上回るROEの実現を目指してまいります。
また、PERは6~7倍程度にとどまっています。これは、当社を取り巻く経営環境や事業の成長可能性に係る将来に向けての株式市場からの評価と考えられることから、当社はこれを真摯に受け止め、PERを向上させるため、本計画に掲げる成長ドライバーを下記「(5) 取り組みの進捗報告と課題認識に基づく成長ドライバー」のとおり選定し、より収益性の高い事業への経営資源の配分に注力してまいります。
「中期経営計画2023」において事業の成長性と収益性に加え、投下資本に対する収益性の観点に基づく管理を目的として、ROICを経営管理指標に取り入れ、グループにおける資本収益性の意識向上に努めてまいりました。なお、投下資本が不可欠な事業については、資金回転速度の向上を強化するなど、事業特性に応じた資本効率の向上を更に強化してまいります。
株主の皆様への利益還元を安定かつ充実させるため、今後の成長と競争力強化のための資金需要等を勘案しつつ、中長期的な持続的成長を通じた累進配当を導入しております。本計画では2030年3月期まで毎期7円増配していく計画としております。
※1 1株当たり配当額65円のうち、期末配当40円については、2025年6月27日開催予定の定時株主総会の決議事項として上程しております。
※2 配当金の総額は、1株当たり配当額×2025年3月期末発行済み株式数(自己株式控除後)により算出しております。
また、株主の皆様の日頃からのご支援に感謝するとともに、当社株式への投資魅力を高め、より多くの株主の皆様に、より長く当社株式を保有していただくことを目的に、株主優待制度を導入いたしました。
本制度の内容については、「第6 提出会社の株式事務の概要 株主に対する特典」または、当社ホームページに掲載しております「株主優待制度導入に関するお知らせ」(https://www.nice.co.jp/uploads/2024_06_27_01.pdf)をご覧ください。
(4) 外部環境の変化と現状の課題認識
当社は、2030年目標の達成に向けて、着実に取り組みを進めており、M&A投資をはじめとする新規事業投資についても計画通りに進捗しております。一方、当社を取り巻く経営環境は、金利の上昇や貿易摩擦の激化といった経済情勢に加え、人口減少や世帯構成の変化等により新設住宅着工戸数が長期的に減少傾向にある中、2024年の着工戸数が15年ぶりに80万戸を割り込むなど、その変化は著しいものとなっています。こうした変化を捉え、事業領域を新築住宅市場から既存住宅流通市場や非住宅市場へ、更には暮らし領域まで拡大していくべく、事業ポートフォリオの見直しを図ってまいります。
(5) 取り組みの進捗報告と課題認識に基づく成長ドライバー
当社は、2024年12月20日開示「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について(進捗報告)」にて提示した中長期的な事業ポートフォリオの方向性に基づき、収益基盤である既存のコア事業の深化と、成長性が見込まれるコア事業の周辺事業への投資、更には将来的な成長基盤を見据えた投資を行ってまいります。
これらを踏まえ、かつ現状の課題認識に基づき、2030年目標の達成に向けて、次に掲げる成長ドライバーで取り組みの更なる推進を図ります。

①「超・新築」
主要マーケットである新築住宅市場が長期的に縮小傾向にある中、環境貢献度の高い木材の活用や国産材の取り扱い強化を推進するとともに、住宅ストックビジネスの拡大に取り組み、収益基盤の更なる安定に努めてまいります。
②「超・物流」
国を挙げてZEH化の動きが加速する中、エネルギー関連商品を含め、躯体・住宅設備機器等、トータルでの提案販売を強化してまいります。また、規制強化をはじめ変革が進む物流業界において、全国の物流拠点を活用し、建築現場へのラストワンマイル機能を発揮するとともに、部位別施工への対応等、機能強化を図ってまいります。
[成長ドライバーの業績貢献]
③「超・領域」
国産材の更なる利活用に向けて、多様な分野でコンポーネントとしての用途を拡大し、付加価値の高い木質マテリアルメーカーを目指します。また、木造建築において設計、積算、発注、施工、物流に至るデータの共有化を図り、業界全体の業務効率化に貢献します。
④主体的な風土の確立
⑤社会的使命の達成
(6) 環境目標の進捗状況
環境目標の進捗状況については、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2) 重要なサステナビリティ項目 ① 気候変動への対応(TCFD) d 指標と目標」に記載しております。
(7) キャッシュ・アロケーション
2024年5月24日、「中期経営計画2023」達成に向けた取り組みとして、中長期的な財務健全性を維持しながら、営業活動によるキャッシュの創出、保有資産の整理、有利子負債の効果的な活用を通じて生み出した原資を様々な成長投資に分配しつつ、社員や株主への還元を実行するため、キャッシュ・アロケーションを策定しました。それぞれの実施状況は次に示す通りです。
[実施状況]
[Road to 2030 キャッシュ・アロケーション]
「Road to 2030」期間(2026年3月期~2030年3月期)におけるキャッシュ・フロー及び資金調達を原資とし、株主還元に50億円以上、新規事業投資に145億円以上、既存事業の成長投資に120億円以上を充ててまいります。

(8) 会社の対処すべき課題
住宅・建築業界においては、少子高齢化による人口減少や単身世帯の増加に伴い、新設住宅着工戸数は長期的に減少傾向にあります。建築費や人件費の上昇等による住宅価格の高騰に加え、住宅ローン金利上昇への懸念から住宅取得マインドの低下が憂慮されるほか、法改正に伴う業務負担の増加等も危惧されています。このように外部環境が著しく変化する中、企業経営においては迅速な対応が求められます。
当社は、2023年5月に策定した「中期経営計画2023」にて掲げた2030年目標に向けて計画の実行段階にありますが、こうした外部環境の変化を含む現状の課題認識に鑑み、目標達成への取り組みを力強く推進するべく、2026年3月期を初年度とする5か年計画「中期経営計画 Road to 2030」へとアップデートいたしました。本計画において、当社が有する国産木材の調達力や全国規模の販売網、川上から川下までのサプライチェーン、建築物の木造化・木質化提案機能といった競争優位性を発揮し、成長を一層加速するべく、「超・新築」「超・物流」「超・領域」をキーワードとする成長ドライバーを掲げました。
「超・新築」では、新築住宅市場が縮小傾向にある中、環境貢献度の高い木材の活用や国産材の取り扱い強化を推進するとともに、住宅ストックビジネスの拡大に取り組み、収益基盤の更なる安定に努めてまいります。「超・物流」では、国を挙げてZEH化の動きが加速する中、エネルギー関連商品を含め、躯体・住宅設備機器など、トータルでの提案販売を強化していきます。また、全国の物流拠点を活用し、建築現場へのラストワンマイル機能を発揮するとともに、部位別施工への対応など、機能強化を図ってまいります。「超・領域」では、国産材の更なる利活用に向けて、多様な分野でコンポーネントとしての用途を拡大し、付加価値の高い木質マテリアルメーカーを目指すとともに、木造建築における設計から積算、物流に至るデータの共有化を図り、業界全体の業務効率化に貢献してまいります。
当社は、「樹とともに、人と暮らしをつなぎ、はぐくみ、彩りある未来をつくります」を社会的存在意義と定義しています。地球温暖化対策として重要な役割を担う森林資源の循環利用に向け、当社のルーツであり、エコマテリアルである木材の利活用を通じて、経済価値のみならず、社会価値及び環境価値の向上と社会課題解決の一翼を担うべく、「中期経営計画 Road to 2030」に掲げた諸施策を確実に実行していくことで、成長の加速と飛躍的進化を図り、更なる企業価値の向上を実現してまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) サステナビリティ
① サステナビリティに関する考え方
当社は、持続的な成長及び更なる企業価値の向上を目指し、社会的存在意義として「樹とともに、人と暮らしをつなぎ、はぐくみ、彩りある未来をつくります」を掲げております。役職員をはじめとしたステークホルダーの「彩りある未来」の実現を目指し、社会的存在意義をサステナブル推進方針と位置付けることで、サステナビリティへの取組をより一層強化するとともに、経営の中核にサステナビリティ視点を導入し、事業成長と社会のサステナビリティへの貢献の両立を実現してまいります。
「① サステナビリティに関する考え方」に掲げた方針に基づき、当社の取締役会は、サステナビリティに関するリスク及び機会について監督を行うこととしております。また、当社代表取締役社長を委員長とし、取締役らを委員とする「サステナビリティ委員会」を設置しております。同委員会は、原則毎月1回開催され、コンプライアンスやリスク管理、労働安全衛生等を含めたサステナビリティに関する事項全般を統括し、当社グループのサステナビリティの推進に関する基本方針や戦略、事業活動等に関する計画及び進捗について審議し、重要事項は取締役会へ報告・提言を行っております。
サステナビリティの取組については、同委員会の配下に設置した専門部会であるマテリアリティ部会、コンプライアンス・リスク管理部会、ナイスグループ中央安全衛生委員会が所管しております。また、人的資本経営をより一層推進するため、2025年6月に専門部会の一つとして人的資本部会を新設いたしました。各部会と事業部門が連携することで、全社一体となったサステナビリティ関連活動を推進してまいります。
a サステナビリティの推進体制(概略)

b サステナビリティ委員会の活動内容(2025年3月期)
c サステナビリティ関連の各種方針等
当社グループは、持続的な成長に向けて優先的に取り組むべき課題として、下記のとおり9つのマテリアリティを特定しております。本マテリアリティへの取組を通じて、環境・社会・経済の持続可能性に配慮したサステナビリティ経営を一層推進し、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図ってまいります。
a 当社グループのマテリアリティ(重要課題)と2025年3月期の主要な活動
b マテリアリティの特定プロセス
イ ESG課題の抽出
マテリアリティを特定するに当たり、国際的なサステナビリティ・フレームワークとなる、GRIスタンダード、SDGs、ISO26000、SASB、ESG評価機関の評価項目などを踏まえて、検討すべきESG課題を500項目以上抽出しました。
ロ ESG課題の重要度評価
マテリアリティを「企業経営において最も重要視すべきESG課題」と定義し、ステークホルダー視点及び自社の事業インパクトの大きさ、産業特性などの視点から重要度評価を行い、数あるESG課題から対応優先度の高い項目を抽出しました。
ハ ESG課題の妥当性評価
「ロ ESG課題の重要度評価」で抽出した優先度の高い項目を、更に「事業インパクト及び企業価値への影響」と「社会及びステークホルダーからの期待/ニーズ」の2つの視点から再度整理し、当社にとっての重要度の高いESG課題をマッピングして選定しました。これらのESG課題について、外部有識者を含めて社内で妥当性の議論を行い、マテリアリティを特定しました。
ニ マテリアリティの決定
特定されたマテリアリティについて、取締役会を経て2023年5月に決定しました。
ホ 目標設定と見直し
マテリアリティと経営戦略との統合を行うとともに、社会の変化に合わせてマテリアリティや目標を定期的に見直すことで、継続的な企業価値向上を果たしていきます。
2025年5月には、「中期経営計画2023」をアップデートした「中期経営計画 Road to 2030」の策定に伴う見直しを実施し、各マテリアリティについて新たな目標を設定しております。
サステナビリティ委員会は、サステナビリティに関するリスクと機会について、当社グループの事業や財政状態に対する影響を検討し、その重大性の評価を実施しております。また、評価したリスクの最小化と機会の獲得に向けた施策を策定するほか、その施策に関わる各部署の実施状況について報告を受け、実施状況の監督を行っております。なお、同委員会において検討されたリスクや機会及びそれらに対する施策のうち、重要事項は取締役会に報告することとしております。
当社のリスクマネジメントの詳細につきましては、
当社は、マテリアリティの達成に向けて、主要な指標(KPI)及び目標を設定し、達成度についてモニタリングを進めております。各マテリアリティにおけるKPI及び目標は以下に記載のとおりです。KPI及び目標の詳細につきましては、今後、ホームページ等で開示いたします。
※1 詳細については、「(2) 重要なサステナビリティ項目 ②人的資本への対応」に記載しております。
※2 詳細については、「(2) 重要なサステナビリティ項目 ①気候変動への対応(TCFD)」に記載しております。
※3 ナイス株式会社が主体となって供給するマンション・一戸建住宅が対象。強耐震構造は耐震等級2を取得した構造のことです。
※4 「死亡災害及び負傷または疾病により障害等級1~7級に該当する労働災害」を「重大な労働災害」と定義しています。
(2) 重要なサステナビリティ項目
① 気候変動への対応(TCFD)
a 気候変動に関する考え方
当社は、気候変動への対応を経営上の重要課題として認識しております。木材流通をルーツとする企業として、国内の豊富な森林資源の循環利用によって課題解決に貢献すべく、住宅・建築物の木造化・木質化の推進等を通じて木材の利用促進を図っております。併せて、住宅・建築物の省エネ化・ゼロエネ化に資する環境配慮型商品やサービスの提供により、温室効果ガス排出量の削減に貢献するなど、事業活動による気候変動対策を推進しております。
当社のTCFDに関する開示情報の詳細については、
URL https://www.nice.co.jp/sustainability/tcfd/
b ガバナンス・リスク管理
気候変動に関するガバナンス・リスク管理は、サステナビリティのガバナンス・リスク管理に組み込まれております。詳細については、「(1) サステナビリティ ②ガバナンス 及び ④リスク管理」に記載しております。
c 戦略
イ シナリオ分析
当社グループにおいて主要な売上高を占める、当社の木材の販売、建材及び住宅設備機器の販売、マンション・一戸建住宅の販売の3分野における2030年の気候変動の影響について、シナリオ分析を実施しております。
当社が採用したシナリオ及び参照したデータは、以下のとおりです。
ロ シナリオ分析の結果
(ⅰ)分析結果の概要
上記シナリオ分析の結果、2℃未満シナリオについては、企業活動に伴う温室効果ガスの排出量に応じて税金を課す炭素税の導入や、エネルギー価格の上昇が、主なリスクになると認識いたしました。これらは、再エネの導入促進や自社施設の省エネ化の推進等により、温室効果ガス排出量を削減することでリスクの軽減が可能です。一方で、ZEHの普及に伴う創エネや省エネに資する建材・設備機器の需要や、木材の需要の増加、既存住宅市場の活性化など、リスクを上回る事業拡大の機会が発生することを見込んでおります。
4℃シナリオについては、温室効果ガスの排出量規制への対応コストが生じない一方、自然災害の激甚化によるサプライチェーンの分断や、平均気温の上昇による森林の生態系の変化などを、大きなリスクとして認識しました。また、今回のシナリオ分析においては事業インパクトの特定ができなかったため、「(ⅱ)気候変動リスク・機会」の表に記載していないものの、防災集団移転やインフラ強靭化、災害からの復興需要といったニーズが新たに発生する可能性があります。
(ⅱ)気候変動リスク・機会
当社における重要度が高い気候変動リスク及び機会は以下のとおりです。
顕在化時期は短(2025年まで)・中(2026年から2030年まで)・長(2031年以降)の3段階、事業への関連度合いは●(大いに関連がある)、▲(関連がある)、―(あまり関連がない)の3段階、影響度は財務へのインパクトの大きさに鑑みた1~5の5段階で評価しております。
d 指標と目標
イ 環境目標
当社は、事業活動を通じた社会全体の環境負荷の低減に向けて、自社の事業活動における温室効果ガス排出量の削減に取り組むとともに、木材の循環利用やZEHの普及促進などを通じて社会全体の温室効果ガス排出量を削減するなど、「削減貢献量」の創出を推進してまいりました。
取引先様やお客様をはじめとしたステークホルダーとの連携によって、バリューチェーン全体での温室効果ガス排出量について、2050年までに実質ゼロに挑戦することを宣言し、以下のとおり「ナイスグループ環境目標」を策定しております。
ナイスグループ環境目標
※5 国産木材の利用による炭素貯蔵量や、太陽光発電等の再生可能エネルギー由来電力の提供量など、ナイスグループの事業活動等によって社会全体で削減された温室効果ガス排出量を「削減貢献量」と定義しております。本目標は、上記削減貢献量及び社有林の二酸化炭素吸収量によるオフセットを含みます。
※6 社有林の二酸化炭素吸収量によるオフセットを含みます。
このうち、2026年目標につきましては、以下「ロ 温室効果ガス排出量の実績」「ハ 社有林「ナイスの森」の二酸化炭素吸収量の実績」に記載のとおり、2025年3月期の自社排出量(Scope1・Scope2の合計)が7,205t-CO2、同社有林「ナイスの森」等の二酸化炭素吸収量が11,768t-CO2となったことから、排出量を吸収量が上回り、2024年3月期に引き続き自社排出量のカーボンニュートラルを達成いたしました。
今後、継続して自社排出量のカーボンニュートラルを維持するとともに、2030年目標である「森林育成と木材利活用によるカーボンニュートラル社会実現への貢献(Scope1・Scope2・Scope3のカーボンニュートラルの達成)」の達成に向けて取組んでまいります。なお、自社排出量につきましては、2030年3月期に、2022年3月期比で50%削減することを目標としております。
ロ 温室効果ガス排出量の実績
当社は、GHGプロトコルに則り、当社グループの事業活動に伴う温室効果ガス排出量の算定をしております。2025年3月期における当社グループの温室効果ガス排出量は、以下「Scope1・Scope2の実績推移」に記載のとおり、7,205t-CO2(Scope1:2,933t-CO2、Scope2:4,272t-CO2)となり、2022年3月期比で37.4%の削減となりました。
Scope1・Scope2の実績推移(t-CO2)(※7)
※7 原則として、ナイス株式会社及び国内にある連結子会社を対象に算出しておりますが、2025年3月期は重要性に鑑みて一部の持分法適用子会社を対象に加えております。
ハ 社有林「ナイスの森」の二酸化炭素吸収量の実績
森林は、土砂災害の防止、生物多様性の保全、水源の涵養などの多面的機能を有しています。更に、大気中の二酸化炭素を吸収し、炭素を貯蔵しながら成長することから、地球温暖化の原因である二酸化炭素の吸収源・貯蔵庫としても重要な役割を発揮しています。
当社は、木材流通をルーツとする企業として、利益の一部を山林取得に充て、社有林の保全・育成を通じて地球環境保護に貢献してまいりたいとの考えから、1980年より社有林「ナイスの森」の取得を開始しております。現在の総面積は2,428.4ヘクタールに及び、2025年3月期における二酸化炭素吸収量は、以下「社有林「ナイスの森」の概要と2025年3月期の二酸化炭素吸収量」に記載のとおり、合計11,768t-CO2となりました。
社有林「ナイスの森」の概要と2025年3月期の二酸化炭素吸収量(※8)
※8 社有林の二酸化炭素吸収量は、2025年5月末時点で入手している最新の森林簿に基づき計算しております。二酸化炭素吸収量は、小数点第一位を切り捨てているため合計の数値は一致しません。
※9 連結子会社等が所有する森林について、その他の森林としてまとめております。
② 人的資本への対応
a 人的資本に関する考え方
当社は、事業戦略の実行における人材の重要性を深く認識し、人材戦略を経営戦略の中核に位置付けます。人材こそが当社グループの最大の財産であり、人材の成長がグループの成長につながるという考えのもと、「働きやすさ」と「働きがい」を高めるための投資を通じて、多様な人材一人ひとりが仕事を通じた幸せと成長を実感できる経営の実現に努めております。当社グループの持続的な成長及び更なる企業価値向上の実現のために、自律的なキャリア形成と成長をサポートすることで、多様な人材一人ひとりがそれぞれの個性を生かし、自らの能力や強みを発揮し活躍する「主体的な風土の確立」を目指してまいります。また、DXや経営などの分野に精通した外部人材の登用やキャリア採用の拡充を通じて多様な経験やスキルを持った人材を獲得していくことで、当社グループにおける人材のケイパビリティを高め、コア事業の成長と「中期経営計画 Road to 2030」で掲げた成長ドライバーの取組みを力強く推進していくための原動力にしてまいります。
b ガバナンス・リスク管理
人的資本に関するガバナンス・リスク管理は、サステナビリティのガバナンス・リスク管理に組み込まれております。なお、人的資本経営をより一層推進するため、2025年6月にサステナビリティ委員会の専門部会の一つとして人的資本部会を新設いたしました。今後、各部門と連携しながら施策の企画・実行・評価を行います。
c 戦略
イ 事業戦略を実行するために必要な人材戦略
「住まいと暮らし」の領域に必要な専門スキルの拡充を図るため、従業員の資格取得に向けた取組みを支援するとともに、キャリア開発や戦略的な人員配置を行うことで、計画的かつ継続的な人材育成に努めます。事業戦略を実行し、更なる企業価値向上を実現するために、サクセッションプランを通じた次世代経営層の育成を推進してまいります。また、タレントマネジメントシステムを活用し、従業員一人ひとりのスキルや強み、経験等の情報を一元管理し、分析及び活用できる仕組みを整備するとともに、従業員が自らのキャリア志向について自己申告をすることでキャリア自律を促し、戦略的な人員配置により多様な人材が適材適所で活躍できる環境を整備してまいります。
ロ 人材育成の取組
当社グループが目指す成長に向けて、従業員のスキルアップとリスキリング、キャリア自律を目的として、2025年3月期よりグループ共通のeラーニングによる自己啓発プログラムを導入し、延べ339名が参加いたしました。今後も、自らが学びたい分野について自律的かつ主体的に学習できる環境を整えてまいります。また、当社では、従業員の主体的な学習や能力開発への取組みを後押しするため「スキルアップ手当」を新設いたしました。このほか、マネジメント層の能力開発のために360度評価とフィードバック研修を行い、組織の成長と業績の向上、部下の育成などにつなげてまいります。
ハ エンゲージメントの向上
当社は、従業員の企業理念や経営方針への共感度並びに企業価値の向上に対する貢献意欲を可視化することで課題を特定し、その解決に向けた施策を検討するために、2024年3月期よりエンゲージメントサーベイを実施しております。本サーベイの結果は、重要な経営指標として取締役会に報告し、心理的安全性が確保されたフラットな組織風土の醸成に向けた組織開発や人事戦略の策定に活用しております。今後も定期的なエンゲージメントサーベイの実施を通じて、各組織の状態を確認・検証し、組織風土の継続的な改善活動に取組んでまいります。
ニ DE&Iの推進
事業戦略の実行に向けて、チーム力、課題解決力、変化適応力等の組織能力を強化いたします。性別・国籍・年齢・障がい・価値観・雇用形態などによる無意識の偏見や思い込みにとらわれず、お互いの考え方や価値観に誠実に向き合い、多様な人材の採用・育成・登用を推進することで、新たな視点やイノベーションを生む基盤を築いてまいります。加えて、従業員が安心して長く働きたいと思えるような魅力ある会社づくりを進めるため、働き方の多様化に向けた取組みとして、子育て、家族の介護、自身の病気治療を目的に取得できる「ライフサポート休暇」制度の新設や、育児休業の取得可能期間の延長、育児短時間勤務の利用可能期間の延長などに取組みました。引き続き、多様な人材のワークライフバランスとウェルビーイングの向上に努めてまいります。
ホ 健康経営の実践
当社は、会社が健全であるためには従業員一人ひとりが心身ともに健康であることが重要であると考えています。そのため、健康意識を向上させる「健康経営」の実践を通じて、健康リスクの低減とハイリスク者の減少を実現するなど、従業員とその家族が心身ともに健康で、安心して働ける健全な職場環境の実現を目指してまいります。なお、前期に続き「健康経営優良法人2025」認定制度において、当社は大規模法人部門、当社子会社のナイスコンピュータシステム株式会社及びナイス沖縄株式会社は中小規模法人部門の認定を受けております。
d 指標と目標
住まいと暮らし領域における専門スキルを拡充し、建築士、建築施工管理技士、宅地建物取引士、管理業務主任者、構造設計建築士などの建築関連有資格者延べ1,500人体制の構築を目指してまいります。これら有資格者のほか、多様な経験やスキルを持った人材を獲得していくことで人材のケイパビリティを高めるために、キャリア採用を拡充し、2030年までに累計100名の採用を目指してまいります。更に、エンゲージメントサーベイスコアについては、2030年3月期までに2024年3月期比で10ptアップを目指してまいります。
「ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン基本方針」に則した多様な働き方に対応する施策の導入などを通じて、女性管理職比率の向上や男性の育児休業取得率向上にも取り組みます。
健康経営においては、2030年3月期までに健康診断受診率100%、ストレスチェック受検率100%を実現し、健康経営の実践を通じて、健康リスクの低減とハイリスク者の減少を実現いたします。また、今後、中長期的には健康経営優良法人「ホワイト500」の認定取得を目指し、取組を進めてまいります。
(1) リスクマネジメントの考え方
当社は、当社グループ全体の企業価値を持続的に向上させるため、事業活動に関連する内外の様々なリスクを適切に管理するための体制を構築しています。また、事業活動に重大な影響を及ぼすリスクが顕在化した際の損失を低減させるための活動を行います。
(2) リスクマネジメントの体制
当社グループは、スリーラインモデルの考え方に基づくリスクマネジメント体制を構築しており、リスク管理に関する取組は、取締役会が監督するサステナビリティ委員会(委員長:代表取締役、委員:取締役、原則毎月1回開催)が統括しております。
第一ラインとして、当社の各拠点及びグループ各社ごとに任命したリスクマネジメントリーダーが事業にかかる現場部門でのリスクを管理しています。第二ラインとして、コンプライアンス・リスク管理部会がリスクマネジメントリーダーから集約した現場部門でのリスクを評価・把握するとともに、マテリアリティ部会及び2025年6月に新設した人的資本部会が中長期的な全社レベルのリスクや人的リスクを特定し、これらの専門部会の連携により必要な対策をサステナビリティ委員会に報告することとしております。また、第三ラインとして、内部監査室が第一ラインと第二ラインから独立した立場で、リスク管理体制・状況を監査しております。
リスクマネジメント体制の概略

(3) 主要なリスク
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を及ぼす可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクが顕在化した場合に当社グループの経営成績等の状況に及ぼす影響については、具体的な内容を見積もることが困難であるため、記載しておりません。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
① 住宅・不動産市場の動向に関するリスク
当社グループの事業は、国内の経済状況及び住宅・不動産市場の動向に大きく依存しています。そのため、何らかの要因により国内経済が悪化し需要が後退した場合や、将来的に市場構造が大きく変化した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
このようなリスクに対応するため、当社グループでは、環境貢献度の高い木材の活用や国産材の取り扱いの強化、エネルギー関連商品を含めた躯体・住宅設備機器等の1棟当たりの納材量の拡大を図るとともに、住宅ストックビジネスの拡大に取り組み、収益基盤の更なる安定を図ることで、リスクの軽減に努めてまいります。
② 木材、建材・住宅設備機器等の調達及び価格変動に関するリスク
当社グループは、木材を国内外から調達しているほか、建材や住宅設備機器についても、一部の仕入先メーカーが海外拠点において部品の調達や製品の生産を行っています。そのため、国内外における自然災害や社会不安(戦争、感染症の流行、地政学的リスクなど)により、調達が困難となる可能性があります。また、取扱商品の市況や需給の急激な変動により、調達価格が大きく変動した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
このようなリスクに対応するため、当社グループでは、国内外の調達ネットワークを活用し、木材製品や建材・住宅設備機器などの商品を複数の産地・メーカーから調達するとともに、全国に配置した物流拠点のストック機能を生かすことで、安定的かつ適正価格での調達及び供給体制の安定確保に努めています。
③ 法令違反等に関するリスク
当社グループは、宅地建物取引業法、建設業法、建築士法などの法令に基づく許認可を取得し、建築、労働、環境をはじめとする事業遂行に関わる各種法令・条例を遵守し、事業活動を行っております。
しかしながら、当社グループ及び外部協力事業者において、重大な法令違反や不正行為、労働災害などが発生した場合には、是正措置に多額の費用が発生するほか、業務停止等の行政処分を受ける可能性があります。これにより、当社グループの社会的信用やブランドイメージが損なわれ、損害賠償請求や訴訟への対応が必要となるなど、業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
このようなリスクに対応するため、当社グループでは、「行動倫理規範」等を定め、役職員に対して周知・徹底を図るとともに、継続的にコンプライアンス研修や内部通報制度の整備・運用を通じて、コンプライアンス意識の醸成に努めております。また、取締役会直属のサステナビリティ委員会の下に設置された「コンプライアンス・リスク管理部会」では、コンプライアンス関連事案の情報共有・分析、発生防止策や対応策の検討・指導・監督等を行っております。
さらに、安全委員会・衛生委員会とは別に、安全衛生活動をより強化する目的で、物流・製造・施工管理に関わる各部署及びグループ会社が連携し、「ナイスグループ中央安全衛生委員会」を3カ月ごとに開催しています。同委員会では、労働災害の予防に向けた定期点検、発生事案の検証、再発防止策の推進等を行っています。加えて、専門分野の異なる複数の法律事務所と顧問契約を締結し、事案の内容に応じた的確な法的助言を受けられる体制を整備することで、迅速かつ適切な対応を可能としています。
④ 人材に関するリスク
当社グループの持続的成長及び企業価値の向上は、専門性の高い人材の確保と継続的な育成が不可欠です。そのため、必要な人材の確保や従業員の育成が不十分となった場合や重要なポジションを担う人材が予期せず流出した場合、さらには職場の人間関係や設備面などにおける職場環境の改善が不十分で従業員のモチベーションが著しく低下する場合には、当社グループの経営成績や事業継続に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
このようなリスクに対応するため、当社グループでは、「住まいと暮らし」の領域に必要な専門スキルの拡充を図るため、キャリア開発や戦略的な人員配置を行い、計画的かつ継続的な人材育成に努めるとともに、サクセッションプランを通じた次世代経営層の育成を推進してまいります。また、DXや経営などの分野に精通した外部人材の登用やキャリア採用の拡充を図ります。
さらに、エンゲージメントの向上を図ることで心理的安全性が確保された組織風土を醸成し、「ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン基本方針」に応じた多様な働き方に対応する施策の導入などを通じて、すべての従業員がその個性や能力、強みを生かして活躍できる「働きやすさ」と「働きがい」のある職場環境の整備に取り組んでまいります。また、健康経営の実践を通じて、健康リスクの低下とハイリスク者の減少を実現するなど、従業員が心身ともに健康で安心して働ける健全な職場環境の実現を目指してまいります。
⑤ 建設技能者の減少に関するリスク
建設業界においては、建設技能労働者の数が長期的に減少傾向にあります。今後、当社グループ及び施工協力会社を含め、必要な建設技能労働者の確保が困難となった場合、施工能力の低下による工期の遅延や長期化、さらには労務費の高騰を招き、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
このようなリスクに対応するため、当社グループでは、建設業関連の部署及び連結子会社の再編を通じて、施工機能の強化と合理化を図るとともに、働き方改革などの処遇改善策を推進してまいります。
また、当社グループが他社に発注する分譲マンションの施工においても、同様に人手不足が深刻化した場合、工期の長期化や遅延、工事費の上昇に加え、施工不良や品質低下などのリスクが高まることが懸念されます。
このようなリスクに対応するため、当社グループでは、発注先選定時の厳格な審査や信頼できる施工会社とのパートナーシップの強化、品質管理体制の強化など、多角的な対策を講じております。
⑥ 自然災害等に伴う事業継続に関するリスク
大規模な地震や風水害などの自然災害により、当社グループの施設・設備等が甚大な被害を受けた場合、あるいは重篤な感染症の急激な拡大などにより事業活動に大きな制約が生じた場合には、当社グループの役職員の安全や業績に影響を及ぼす可能性があります。
このようなリスクに対応するため、当社グループでは、災害等による事業への影響を最小限に抑え、事業の継続を可能とするための事業継続計画(BCP)を策定しております。具体的には、安否確認等に関するマニュアルの整備、定期的な訓練の実施、避難場所の周知、防災備蓄の確保、並びに計画的な設備改修などを通じて、災害時の被害軽減に努めています。
あわせて、感染症の流行を想定した事業継続体制の構築にも取り組み、さまざまな非常時においても安定的な事業運営を維持できる体制の整備を進めております。
⑦ 情報セキュリティに関するリスク
当社グループは、事業上の重要情報に加え、事業の過程で入手した個人情報や取引先等の機密情報を保有しております。これらの情報に関して、当社グループのITシステムがサイバー攻撃やウイルス感染等の被害を受けて業務が停滞した場合、また、個人情報等が漏洩した場合には、社会的信用の低下や損害賠償の発生などを通じて、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
このようなリスクに対応するため、当社グループでは、情報資産を安全かつ適正に管理・運用することを目的として、「情報セキュリティ方針」を定めております。具体的には、情報の漏洩、紛失、不正アクセス、破壊、改ざん、盗難等を防止するための対策を講じており、外部からのサイバー攻撃や不正アクセス、ウイルス等への対策も強化しております。
また、取締役会直属のサステナビリティ委員会の下に設置された「マテリアリティ部会」において、情報セキュリティに関するリスク評価と対策の有効性を定期的にモニタリングしております。さらに、情報資産を取り扱うすべての役職員に対して、必要な教育訓練を定期的に実施することで、情報セキュリティに関する意識と対応力の向上を図り、情報セキュリティ対策の徹底に努めております。
⑧ 品質保証に関するリスク
マンション事業及び一戸建住宅事業において、予期せぬ重大な品質問題が発生した場合、多額の費用が発生するだけでなく、当社グループの評価が大きく毀損され、業績に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
このようなリスクに対応するため、当社グループでは、地盤調査、設計、基礎工事から上棟、竣工に至るまで、各工程に応じて、建築基準法及び住宅の品質確保の促進等に関する法律に準拠した自社検査を実施するとともに、第三者機関による検査も併せて行うことで、設計・施工の品質確保に万全を期しています。あわせて、長期保証制度の導入や定期的な点検の実施により、品質維持・改善に努めております。
⑨ 保有する資産に関するリスク
当社グループは、販売用不動産、有形固定資産及び投資有価証券その他の資産を保有しており、主に時価の下落による評価損又は減損損失の計上によって当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
このようなリスクに対応するため、当社グループでは、販売用不動産については仕入基準に基づく優良な土地を取得しております。なお、一定額を超える場合は取締役会で審議しております。新規設備投資につきましては「⑭ 設備投資及び企業買収、研究開発等に関するリスク」に記載しております。また、政策保有株式については、保有方針及び保有の合理性を毎年取締役会で検証しております。なお、保有する資産については評価損及び減損損失を適宜把握し必要に応じて会計処理しております。
また、全国に保有する木材市場や物流センターなどの施設・設備については、老朽化に伴い安全性を含めた良好な労働環境を確保するために、多額の修繕費が発生する可能性があります。その場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼすおそれがあります。
このようなリスクに対応するため、当社グループでは、中長期的な視点に立って改修計画を策定し、施設・設備の適切な維持管理に努めています。
⑩ 取引先への信用供与に関するリスク
当社グループは、取引先に対して売上債権等の信用供与を行っております。そのため、取引先の経営状況が何らかの要因により悪化した場合には、貸倒れ等による突発的な不良債権が発生し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
このようなリスクに対応するため、当社グループでは、信用リスクの顕在化を防止すべく、適切な債権限度額の設定をはじめとする厳格な与信管理を徹底しております。
⑪ 資金調達に関するリスク
当社グループは、事業に必要な資金を金融機関からの借入により調達しております。そのため、金融市場の混乱や当社の信用格付の引き下げ、あるいは金融機関の融資方針の変更などにより、資金調達に制約が生じる可能性があります。また、将来的に金利が上昇した場合には、資金調達コストが増加し、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼすおそれがあります。
このようなリスクに対応するため、当社グループでは、長期資金の確保や金利の固定化を図るとともに、コミットメントライン等の活用により十分な資金流動性を確保するなど、安定的かつ効率的な資金調達体制の構築に努めております。
⑫ 為替に関するリスク
当社グループは、木材及び建材を外貨建てで輸入しているため、為替相場の変動によって想定を超えるコストが発生した場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
このようなリスクに対応するため、当社グループでは、輸出入契約額の一定割合について先物為替予約を活用することで、為替変動が経営成績に及ぼす影響の軽減に努めております。
⑬ 気候変動に関するリスク
当社の取締役会は気候変動を含むサステナビリティに関するリスク及び機会について監督を行っております。また、代表取締役社長を委員長とするサステナビリティ委員会において検討を行った気候変動リスク及び機会について、必要に応じて審議を行い、重要事項を決定しております。
また、当社グループは環境方針に基づき、企業活動を通じた環境負荷の低減に努めております。特に気候変動への対応については、TCFDのフレームワークに基づき取りまとめており、その内容は「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2) 重要なサステナビリティ項目 ① 気候変動への対応(TCFD)」に記載しております。
⑭ 設備投資及び企業買収、研究開発等に関するリスク
当社グループは、事業拡大の有効な手段として、設備投資や企業買収、研究開発の推進を掲げております。しかし、市況の変化や新たなリスクの顕在化により、設備の稼働率低下や対象企業の価値の大幅な減少など、想定した効果が得られない場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
このようなリスクに対応するため、当社グループでは、新規設備投資の妥当性を判断する際には、ハードルレートをWACC(加重平均資本コスト)を上回る水準に設定しております。また、企業買収においては買収監査を実施しております。これらの内容については、取締役会等で十分な議論を行いリスク回避に努めております。
⑮ 業務委託先の倒産等に関するリスク
当社グループは、マンション事業及び一戸建住宅事業において、設計会社や建設会社などの外部業者に対して各種業務の発注・委託を行っております。発注した業務が適切に履行されているかを逐次確認していますが、外部業者が業務を履行しない場合や倒産した場合などには、当社グループが定めたスケジュールや品質基準、法令に基づく業務遂行が困難になるおそれがあります。
特に、顧客に販売するマンションや一戸建住宅の工事完成前に売買契約を締結し、引渡義務を負う場合においては、所定のスケジュールや品質基準、法令を満たした工事が行われないと、売主として顧客に対し債務不履行責任を負うほか、規制当局から是正指導を受ける可能性があります。これらの事態は当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼすおそれがあります。
このようなリスクに対応するため、当社グループでは、売主として保証金の供託や保険への加入を行っております。また、与信など一定の取引条件を満たす複数の事業者と当社の品質基準を共有する体制を構築し、さらに特定の外注先に依存しない体制を整備することで、リスクの最小化に努めております。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」といいます。)の状況の概要は以下のとおりであります。
当連結会計年度における我が国経済は、インバウンド需要の拡大や雇用・所得環境の改善などを受け、緩やかな回復基調を示しました。一方、ウクライナ情勢や中東情勢などの地政学的リスクに加え、米国の政策動向などによる世界経済の下振れリスクにより、国内経済の先行きは不透明な状況です。
住宅関連業界におきましては、新設住宅着工戸数の減少傾向が続く中、2024年の着工戸数はリーマン・ショック以来15年ぶりに80万戸を下回る低水準で推移するなど、今後の動向が懸念されます。
このような状況の中、当連結会計年度の売上高は2,430億54百万円(前連結会計年度比7.6%増加)、営業利益は46億28百万円(前連結会計年度比5.1%増加)、経常利益は43億5百万円(前連結会計年度比0.6%減少)となりました。なお、親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度において固定資産売却益24億37百万円を計上したこともあり、前連結会計年度比で31.7%減少し、28億72百万円となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。なお、各セグメントの売上高は、外部顧客への売上高であります。また、各セグメントの営業利益はセグメント利益であります。
a 建築資材事業
建材・住宅設備機器については、住宅の省エネ性能の見直しが加速する中、エネルギー関連商品の提案営業や工務店様のZEH化の取り組みのサポートに努めました。木材については、昨年11月に木材の利用促進と住宅・非住宅木造建築の普及に資する総合展示会「木と暮らしの博覧会」を開催し、森林資源の循環利用と木材のサプライチェーンにおける当社グループの取り組みを広くPRするとともに、国産材の需要拡大に努めました。
加えて、昨年10月にセレックスホールディングス株式会社を連結子会社化し、木材や建材・住宅設備機器、エネルギー関連商品に加え、サッシやエクステリアにまで取り扱い商材の拡充を図っております。
これらの結果、売上高が増加したものの、輸入木材相場が軟調に推移したことや物流コストの増加等の影響により、当連結会計年度の売上高は1,830億82百万円(前連結会計年度比7.7%増加)、営業利益は22億57百万円(前連結会計年度比21.3%減少)となりました。
b 住宅事業
マンション事業については、「住まいは命を守るもの」という使命のもと、1997年より免震マンションの供給に努めており、当期売上計上予定の免震マンション、耐震等級2の「強耐震」構造を採用したマンションは全戸完売となりました。また、次期以降に売上計上予定の物件の販売も堅調に進捗しました。
一戸建住宅事業については、当社の主力エリアである「横浜・川崎エリア」のほか、仙台市、新潟市、宇都宮市、浜松市、豊田市の各営業拠点における販売が堅調に推移いたしました。
既存住宅流通事業については、中古マンションの買取再販事業の拡大に注力いたしました。首都圏12カ所のネットワークを生かして中古マンションの仕入れを強化したほか、内装木質化による商品力の向上を図りました。
マンション総合管理事業では、ナイスコミュニティー株式会社における管理マンション等の修繕工事の完工等が順調に推移いたしました。
これらの結果、当連結会計年度の売上高は507億96百万円(前連結会計年度比11.4%増加)、営業利益は35億82百万円(前連結会計年度比23.5%増加)となりました。
c その他の事業
その他の事業について、ソフトウェア開発事業及びシステム提供事業を行うナイスコンピュータシステム株式会社において、販売店様向け経営管理システム「木太郎®」シリーズの受注が進んだほか、一般放送事業(有線テレビ放送事業)や電気通信事業等を行うYOUテレビ株式会社におけるインターネットサービス「Netyou光」の新規加入が進捗しました。また、物流事業を行うSDロジ株式会社の業績が堅調に推移しました。
これらの結果、当連結会計年度の売上高は91億74百万円(前連結会計年度比11.2%減少)、営業利益は6億17百万円(前連結会計年度比42.8%増加)となりました。
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ97億28百万円増加し、1,710億37百万円となりました。これは、売上債権、棚卸資産、有形固定資産及び投資有価証券が増加し、現金及び預金、有価証券が減少したことなどによるものです。
負債は、前連結会計年度末に比べ50億40百万円増加し、1,093億76百万円となりました。これは、仕入債務及び借入金が増加したことなどによるものです。
純資産は、前連結会計年度末に比べ46億87百万円増加し、616億61百万円となりました。これは、親会社株主に帰属する当期純利益の計上及び非支配株主持分の増加などによるものです。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」といいます。)は、前連結会計年度末に比べ124億22百万円減少し、290億78百万円となりました。
当連結会計年度における営業活動による資金は49億31百万円の減少(前連結会計年度は101億3百万円の増加)となりました。主な内訳は、税金等調整前当期純利益43億50百万円、棚卸資産の増加70億23百万円、仕入債務の減少22億36百万円です。
当連結会計年度における投資活動による資金は75億22百万円の減少(前連結会計年度は6億14百万円の増加)となりました。主な内訳は、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出73億25百万円です。
当連結会計年度における財務活動による資金は45百万円の増加(前連結会計年度は66億24百万円の減少)となりました。主な内訳は、借入金の純増加額9億9百万円及び配当金の支払額7億66百万円です。
仕入及び販売の状況
a 仕入実績
当連結会計年度における仕入実績等をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(ⅰ)建築資材
(ⅱ)住宅
販売用不動産の受払状況
(注) 当期増加額欄の( )は内数で、保有目的の変更による有形固定資産からの振替額であります。
(ⅲ)その他
事業の内容が多岐にわたるため、記載を省略しております。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 外部顧客への売上高であります。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容等
経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 経営成績
当連結会計年度における売上高は2,430億54百万円(前連結会計年度比7.6%増加)となりました。建築資材事業では、当連結会計年度に連結子会社とした株式会社セレックスの寄与もあり建材・住宅設備機器の売上が伸長し、住宅事業ではマンションをはじめ全部門が増収となりました。
利益面では、売上総利益は売上高の増加に伴い346億82百万円(前連結会計年度比7.2%増加)、営業利益は販売費及び一般管理費の増加を吸収して46億28百万円(前連結会計年度比5.1%増加)、経常利益は主に為替差損益の影響により43億5百万円(前連結会計年度比0.6%減少)、親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に固定資産売却益24億37百万円を計上したこと等により、28億72百万円(前連結会計年度比31.7%減少)となりました。
連結売上高、連結営業利益等をセグメントごとに示すと次のとおりであります。
(注) 外部顧客への売上高であります。
② 財政状態及びキャッシュ・フローの状況の分析
財政状態及びキャッシュ・フローの状況の分析は「(1) 経営成績等の状況の概要 ② 財政状態の状況」及び「(1) 経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
③ 資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社グループは現在、必要な運転資金及び設備投資資金については、自己資金のほか、借入金、社債及び増資等により調達することとしております。今後も営業活動により得られるキャッシュ・フローを基本に将来必要な運転資金及び設備投資資金を調達していく考えであります。来年度以降の住宅事業における販売用不動産の取得に係る機動的かつ安定的な資金調達手段の確保を目的として、2025年3月31日までに主要取引金融機関との間で、総額152億80百万円のコミットメントライン契約を締結しております。
④ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
⑤ 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2) 定量目標」に記載しております。
当社は、2025年3月27日付で締結した財務上の特約が付されたコミットメントライン契約(シンジケート方式)に基づき、個別借入契約(以下、「本契約」といいます。)を締結しました。
(1)本契約の締結日
2025年3月27日
(2)本契約の相手方の属性
都市銀行1行、地方銀行3行、協同組織金融機関1行
(3)本契約に係る債務の期末残高及び弁済期限並びに当該債務に付された担保の内容
債務の期末残高 7,387百万円
(コミットメントライン契約(シンジケート方式)極度額15,280百万円)
弁済期限 2025年4月30日
担保の内容 販売用不動産
(4)財務上の特約の内容
① 2025年3月期決算以降、各年度の決算期の末日における連結の貸借対照表上の純資産の部の金額を2024年3月決算期末日における連結の貸借対照表上の純資産の部の金額の75%以上に維持すること。
② 2025年3月期決算における連結の損益計算書に示される経常損益が損失とならないようにすること。
該当事項はありません。