文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
当社グループは、「全ては健康を願う人々のために」をコーポレートスローガンとして掲げ、「わたしたちは社会・顧客と共生し、独創的なサービスの提供を通じて新しい価値を共創し、世界の人々の医療と健康に貢献します。」との経営理念のもと、常に健康を願う人々を第一に考え、その満足度を高めるべく顧客価値の創造に取り組むことで、持続的な成長による中長期的な企業価値の向上とコーポレートブランドの確立を目指しております。
我が国においては現在、国民の健康寿命の延伸と超高齢社会、総人口の減少における持続可能な社会保障制度の構築・維持を目的に、薬価の毎年改定や長期収載品への選定療養の導入など医療費抑制のための様々な施策が導入されております。また、国民が良質な医療やケアを受けられるために、医療DXの促進や、「地域包括ケアシステム」の構築への取り組み等が進められております。さらに、近年は、遺伝子治療医薬品や再生医療等製品をはじめとした、高額で厳密な管理が必要とされる医薬品が多く登場するなど医薬品のモダリティ(注)が大きく変化しており、医薬品等の多様性に対応できる営業・物流体制の構築が求められております。
このように医療ならびに医薬品業界の環境変化がますます加速しているなか、この先の次代においても医療機関・健康を願う人々をはじめとするステークホルダーへの付加価値を提供し、社会に貢献する企業であり続けるべく、2023年5月に2025年度を最終年度とする、中期経営計画2023-2025「次代を創る」を策定いたしました。さらに、2024年11月には当中期経営計画の実効性を高めるための実行計画を定め、ロードマップに沿った取り組みを着実に進めております。
また、当社グループは企業の安定的かつ長期的な成長と、持続可能な社会の実現に向けて、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)、およびコンプライアンスのそれぞれの領域における課題を洗いだし、その解決に向けて取り組むサステナビリティ経営を推進しております。医薬品等の流通を担う立場として、環境保全と事業活動の両立を最重要課題と捉え、温室効果ガス排出量の短期および中長期的な削減目標を設定し、配送管理システムの導入による配送効率の向上や太陽光パネルの設置、EV車の導入、再生可能エネルギー由来の電力プランへの切り替え等に取り組んでおります。
当社グループは、社員は会社の財産、すなわち「人財」であるとの考えのもと、人財によって成長してきた歴史と、社員の自由な発想を尊重してきた企業文化を大切に継承するとともに、性別・国籍・年齢・価値観等を問わない幅広い人財活用と、各種研修やプロジェクトへの参画を通じた人財育成、働き方改革の推進にも取り組んでおります。今後も社員一人ひとりの声に耳を傾け、その人権・人格を尊重することで、自由闊達な企業風土を醸成するとともに、人的資本価値の最大化を図ってまいります。
さらに、健全な事業活動を行うべく、ガバナンスの一層の強化を図るとともに、全ての役職員が「関連法規の遵守」と「コンプライアンス・リスクマネジメント」を最優先事項として行動してまいります。加えて、医療および健康関連企業としての公共性と社会インフラとしての使命を認識し、非常時においても医療提供体制を維持するため、震災・パンデミック対策など医薬品の安定供給に必要な投資を各ステークホルダーからの信頼と共感をベースに進めてまいります。
このような取り組みを推進することで、健康を願う人々、顧客、地域社会、株主、社員など全てのステークホルダーから必要とされ、継続して支持される企業集団を目指してまいります。
(注)モダリティとは、創薬技術や手法等の治療手段の種別のことであります。
当社グループは、「社会・顧客と共生し、独創的なサービスの提供を通じて新しい価値を共創し、世界の人々の医療と健康に貢献します」という経営理念に基づき、医療・健康・介護分野に携わる企業集団として、事業を通じた社会課題の解決に取り組み、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
なお、サステナビリティに関する詳細な方針は当社ホームページ(
(1)ガバナンス体制について
当社はサステナビリティに係る対応を経営上の重要課題と認識し、サステナビリティ推進委員会を中心とするガバナンス体制を構築するとともに、取締役会による監督を行っております。
≪取締役会による監督体制≫
取締役会は、サステナビリティや気候変動に関するリスクと機会に係る課題について、サステナビリティ推進委員会より取り組み状況や目標の達成状況の報告を受け、モニタリングします。また、新たに設定した対応策や目標を監督します。
人的資本に関しては、人的資本に係る投資、主要部署における責任者以上の職位の任免、ならびに重要な労働条件の基準に関する決定および変更について、取締役会の承認を受けております。また、その他の社員の任免や労務管理、健康経営推進をはじめとする各施策の推進についても取締役会に報告され、監督を受けております。
≪サステナビリティ推進委員会≫
サステナビリティ推進委員会は、営業・物流・薬事・管理部門のメンバーで構成され、気候変動に係る事項を含むマテリアリティ(重要課題)の特定や環境(E)・社会(S)・ガバナンス(G)、DX等への対応を含むサステナビリティ戦略について審議し、取締役会に答申します。
サステナビリティ推進委員会は、委員長を専務取締役COOが務め、サステナビリティ方針に基づく行動計画の立案、目標設定、進捗管理、効果検証を行うとともに、気候変動が事業に与える影響について、毎年評価を行い、識別したリスクの最小化と機会の獲得に向けた方針をもとに、対応策の策定および目標の設定を行います。また、目標の達成状況を定期的に確認するとともに、継続的に改善に向けた取り組みを実施しています。
◆当事業年度におけるサステナビリティ推進委員会での協議・検討内容
当事業年度においては、サステナビリティ推進委員会を2回開催し、グループ全体のサステナビリティに関する方針や重要事項について協議・検討を行い、取締役会に報告しました。
サステナビリティ推進委員会での主な協議内容
なお、当社グループのサステナビリティ方針やマテリアリティ(重要課題)は当社ホームページに掲載しております。
≪気候変動に係る所管部署≫
経営戦略本部は、サステナビリティ推進委員会の事務局を担当するとともに、関連部署との連携や全社的な気候変動に係る対応の推進を担い、気候変動に係る事項を含むサステナビリティ戦略を検討し、サステナビリティ推進委員会に提言します。
≪人的資本に係る所管部署≫
総務人事本部および経営戦略本部が各施策の検討・立案および推進を担い、代表取締役やサステナビリティ推進委員会に提言します。
≪サステナビリティ推進体制≫
当社グループのサステナビリティに係るガバナンス体制図は、以下のとおりです。

(2)リスク管理について
当社グループでは、経営上のリスクもしくは経営上のリスクに発展しかねない事態が発生した場合の対応と、経営上のリスクの発生を未然に防止するためにリスク管理基本規程を定めております。リスク管理基本規程および関連マニュアルは、グループ・コンプライアンス・リスク管理委員会において定期的に検証・改善を行っております。グループ・コンプライアンス・リスク管理委員会は、代表取締役CEOが委員長の任にあたり、リスク要因の早期発見・把握、リスク発生防止体制の改善、リスク発生時の対応策の策定などを定期的に行っております。
サステナビリティや気候変動に関連するリスクにつきましては、サステナビリティ推進委員会にて、サステナビリティ課題がもたらす事業リスクおよび収益機会を識別・評価し、グループ・コンプライアンス・リスク管理委員会やグループ災害対策等委員会と連携の上、取締役会に報告します。
なお、具体的な事業のリスクについては
(3)人的資本に関する取り組み
当社グループは、社員は会社の財産、すなわち「人財」であるとの考えのもと、人財によって成長してきた歴史と、社員の自由な発想を尊重してきた企業文化を大切に継承するとともに、当社グループが必要とする人財の育成と人事制度の整備、働き方改革の推進により人的資本の価値最大化に取り組んでおります。なお、当社は2024年11月に発表した、中期経営計画2023-2025「次代を創る」を加速させ、その実効性を高めるための実行計画において、2029年3月までに人的資本へ100億円の投資を計画しております。
① ガバナンス
人的資本に係る投資、主要部署における責任者以上の職位の任免、ならびに重要な労働条件の基準に関する決定および変更については、取締役会に付議し承認を受けております。また、その他の一定職位以上の社員の任免やエンゲージメントサーベイの結果、健康経営推進をはじめとする人的資本に関する各施策についても適宜、取締役会で報告を行い、監督を受けております。
② リスク管理
人的資本におけるリスクについては、労働災害の発生、役職員による法令違反行為、人材流出等が挙げられますが、安全および衛生や災害補償をはじめとする各規程を定めるとともに、コンプライアンス研修の実施、人事制度の充実、職場環境の整備等を通じてリスクの発現を防止しております。
③ 戦略
≪人材育成方針≫
当社グループは、コーポレートスローガン「全ては健康を願う人々のために」を羅針盤として、グループにとって必要な人財を①人財育成と研修、②人事制度の整備、③働き方改革の推進により育成します。
当社グループが必要と考える人財は以下の通りです。
また、性別、国籍・年齢等を問わない幅広い人財活用と、社員の個性や能力、チームワークを尊重することで、自由闊達な企業風土を醸成してまいります。
≪社内環境整備方針≫
④ 指標及び目標
当社は多様性を確保するため、女性管理職比率を指標としております。女性管理職比率は東邦ホールディングス単体において「2020年代の可能な限り早期に30%にする」という目標を定めており、当事業年度の女性管理職比率は16.7%(前事業年度16.0%)となっております。また、当社グループ全体(連結)での女性管理職比率は21.2%(前事業年度20.9%)となっております。引き続き女性の活躍推進をはじめとした多様な人財の活用に取り組んでまいります。
◆当事業年度における主な取り組み
[従業員エンゲージメントの向上]
当社グループは、従業員の会社組織や企業風土、業務に対する満足度および意欲を把握し、経営に活かすことを目的として、2024年度にグループ全従業員を対象としたエンゲージメントサーベイを実施いたしました。本サーベイは、従業員の意識や企業が抱える課題を可視化し、組織改善に繋げることを主眼に置いております。高い関心のもと、9,309名中8,159名から回答があり87.6%という高い回答率を得ることができました。サーベイ結果に基づき、具体的な改善策を検討・実行し、従業員エンゲージメントのさらなる向上に努めてまいります。
[人財育成・研修]
・全役職員を対象としたコンプライアンス研修:受講率 100%
・全役職員を対象とした独占禁止法、贈収賄防止をはじめとする専門研修:受講率 100%
・全役職員を対象に、コンプライアンスの話題に関するメールマガジンを隔週で配信
・管理職研修(営業所長対象):受講者 161名
・新任管理職研修(営業所長対象):受講者 32名
・新任管理職研修(課長対象):受講者 52名
・新入社員研修:受講者 77名
・新人MSフォロー研修:受講者 54名
・MTP研修(顧客支援システムを中心に様々な提案ができる社員を育成する自主参加型研修):受講者 46名
・SeniorMTP研修(MTP研修修了生のためのスキルアップ研修):受講者 29名
・MSを対象としたリスキリング研修:受講者 延べ1,145名
・国立研究開発法人産業技術総合研究所との共同研究:参加人数 22名(出向者 8名、社内研究員14名)
[人事制度の整備]
・目標管理制度の導入
・評価制度の見直しの着手
・女性社員の管理職への積極登用:東邦ホールディングス㈱ 新規管理職登用者数(男性3名、女性2名)
・中途採用の拡大
・契約社員の正社員登用
・シニアエンゲージメント向上施策の実施
50歳以上を対象とした金融リテラシー教育(シニアライフプランセミナー)
定年再雇用者の報酬改善
[働き方改革の推進]
・平均4.6%の給与水準の引き上げ
・初任給の引き上げ
修士了: 219,000円→229,000円
四大卒、専門卒(高度専門士): 205,000円→215,000円
短大卒、専門卒(専門士): 191,000円→211,000円
・健康経営推進:東邦ホールディングス㈱、東邦薬品㈱、㈱セイエル、㈱幸燿、九州東邦㈱、㈱J.みらいメディカル、共創未来ファーマ㈱、㈱ネグジット総研が健康経営優良法人2025を取得(前事業年度より2社増加)
(4)気候変動への取り組み
当社グループは、気候変動への取り組みを重要課題の一つと位置付け、サステナビリティ推進委員会を中心に気候変動に関するリスクと機会の特定、当社に与える影響、具体的な対応策等の検討を進めております。また、必要なデータの収集と分析を進めており、その内容につきましてはTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)が提言する情報開示フレームワークに沿った開示を推進してまいります。
なお、詳細については、当社ホームページ(
① ガバナンス
≪ガバナンス体制≫
当社グループは、サステナビリティ推進委員会を中心とするガバナンス体制を構築するとともに、取締役会による監督を行っております。
≪取締役会による監督体制≫
取締役会は、気候変動に関するリスクと機会に係る課題について、サステナビリティ推進委員会より取り組み状況や目標の達成状況の報告を受け、モニタリングしております。また、新たに設定した対応策や目標を監督しております。
≪気候変動に係るサステナビリティ推進委員会の役割≫
サステナビリティ推進委員会は気候変動が事業に与える影響について、毎年評価を行い、識別したリスクの最小化と機会の獲得に向けた方針をもとに、対応策の策定および目標の設定を行うとともに、目標の達成状況を定期的に確認し、継続的に改善に向けた取り組みを実施しております。
② リスク管理
気候変動に係るリスクについては、サステナビリティ推進委員会にてリスクと機会の識別、評価、対応検討と目標の設定、対応策の推進を行い、定期的に取締役会に報告します。
なお、気候変動に係るリスクを識別・評価・管理するプロセスについては、当社ホームページに掲載しております。
③ 戦略
当社グループは、気候変動関連を含むサステナビリティに係る対応を経営上の重要課題と認識しております。特に、生命に係る医薬品の流通を担う立場として、自然災害の激甚化に伴うサプライチェーンの寸断や医薬品供給能力の低下は大きな事業リスクであり、社会リスクでもあります。また、事業から直接排出されるScope1とScope2の排出量は少なく、サプライチェーンから排出されるScope3の排出量が多いことが特徴です。このような認識に基づき、気候変動に伴う当社グループの事業への影響を把握し、対応策を策定するため、シナリオ分析を実施しました。
医薬品卸売事業を対象組織として、IPCC第5次評価報告書やIEA WEO2020 NZE等のシナリオを参照の上、気候変動が2030年時点で1.5℃上昇する世界におけるシナリオ(移行シナリオ)と、2050年時点で4℃上昇する世界におけるシナリオ(物理シナリオ)を想定しております。影響度が高いと考えるリスクと機会を特定し、事業および財務への影響を定量・定性の両面から評価したものを以下の表にまとめております。
リスク
機会
(注)1.影響度の評価基準については、営業利益に与える影響を基準とし、以下の通り設定しております。
大:10億円以上、中:5億円~10億円未満、小:5億円未満
定量的な評価が困難な項目につきましては、定性的(*)に評価しております。
2.時間軸は、短期(~2025年まで)、中期(~2030年まで)、長期(~2050年まで)に設定しております。
④ 指標と目標
当社グループは、温室効果ガス(Scope1・2・3)の排出量を指標とし、温室効果ガスの排出量の大きい領域や削減対象を把握し、環境負荷の低減に努めております。社会的環境の変化を踏まえ、自社の直接的な排出を対象とするScope1・2については、以下の通り短中長期的な削減目標を定めております。また、カーボンネガティブの実現に向けて、Scope3に対する取り組みも重要であると認識し、具体的な削減目標の策定に向けて検討を進めております。今後も仕入先や顧客との協働を進め、温室効果ガス排出量削減に向けた取り組みを進めてまいります。
温室効果ガス排出量の削減目標および実績(Scope1・2)
Scope1・2・3における排出量の実績の詳細な情報については、ホームページに掲載しております。
なお、当事業年度の温室効果ガス排出量の算定に際し、一部の新電力会社については、2025年6月25日現在で2024年度の排出係数が公表されていないため、前事業年度(2023年度)の排出係数を利用しております。当該新電力会社から2024年度の排出係数が公表された段階で、温室効果ガス排出量を再計算し、当社のウェブサイトにて開示する予定です。更新は2025年7月頃を予定しております。
◆当事業年度および今後の取り組み
当社グループは、政府が掲げる目標「カーボンニュートラル」の実現に向けて、高効率設備への改修による「省エネ」、太陽光発電設備の導入による「創エネ」、再生可能エネルギーの調達による「再エネ」などを計画的に実施してまいります。当事業年度における取り組みは以下の通りです。
・配送回数の適正化をはじめとする配送効率の向上
・太陽光パネルの設置
・EV車およびEV充電スポットの導入
・物流センターにおいて、再生可能エネルギー電力プランへの切替を実施
当社および当社グループの事業その他に関する主なリスクは以下のとおりであります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであり、当社および当社グループの事業その他に関する全てのリスクを網羅したものではありません。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当社グループは、2023年5月に2023年度からの3カ年を期間とする中期経営計画2023-2025「次代を創る」を策定し、(1)事業変革、(2)成長投資・収益性向上、(3)サステナビリティ経営、(4)資本効率の改善と株主還元の向上、の4つを基本方針として掲げ、積極的なアライアンスやDXの推進などにより持続的成長と企業価値向上のための具体的施策に取り組んでおります。また、当中期経営計画の実効性を高め、その取り組みを加速させるため、2024年4月に経営戦略委員会を立ち上げ、利益成長戦略の検証等を行い、新たな数値目標やロードマップを織り込んだ実行計画を2024年11月に策定いたしました。具体的には、2029年3月期に連結ベースで営業利益率1.5%以上、及び、ROE8%以上を達成することを目標に掲げ、事業戦略の実行と数値目標の達成に必要な投資とその資金の確保に向けたキャピタルアロケーションを明確化しております。さらに、本実行計画をトランスフォーメーションプロジェクトと名付け、代表取締役CEOをプロジェクトオーナーとした推進体制を構築し、全社一丸となった取り組みを開始いたしました。
中期経営計画、ならびにその実行計画に基づき、以下の具体的な取り組みを着実に進めております。
基幹事業である医薬品卸売事業においては、2026年4月のスタートを目指し、二次医療圏を軸とした「チーム制」への移行に向けた準備を進めており、医薬MSと検査薬MSによる共同施策の展開や、事業拠点の統廃合などを推進いたしました。また、営業担当者の業務効率化と医療機関・薬局等のお得意先の利便性向上を図るため、過去の注文履歴、納品予定、欠品状況などを一目で確認できる「共創未来ポータル」の提供を開始いたしました。
成長が期待されるスペシャリティ製品については、その競争優位を確立するため、サイノスバイオ株式会社の再生医療等製品「サクラシー®」の流通を受託するとともに、同社の事業開発および生産能力向上を支援するための出資を実施いたしました。また、スペシャリティ製品の取り扱い拡大を見据え、医薬品の定温輸送容器をはじめとした物流機器の製造・販売を行うワコン株式会社と資本業務提携を締結いたしました。さらに、スペシャリティ製品のフルラインサービス拡充を目指し、TBCダイナベースと同一施設内に、共創未来ファーマ株式会社の医薬品二次包装施設「羽田パッケージングセンター」を新設いたしました。TBCダイナベースにCDMO機能、メーカー倉庫機能、卸倉庫機能を集約することで、効率的なワンストップサプライチェーンを構築するとともに、一部のスペシャリティ医薬品や希少疾病用医薬品に求められる厳格な温度管理や振動リスクの低減を実現し、医療機関や患者様への迅速かつ安定的な医薬品供給に貢献してまいります。
「地域ヘルスケアデザインの構築」および「顧客支援ビジネスの進化」に向けては、薬局向けICT事業を展開する株式会社ファルモと業務提携を行い、同社のクラウド型ピッキング監査システム「EveryPick」の取り扱いを開始いたしました。
また、物流の質的向上と生産性向上を図るため、配送業務の合理化と効率化を目的とした新しい配送端末と計画配送システムを導入いたしました。これにより、配送状況の可視化と最適な配送スケジュールの策定が可能となっております。さらに、新たな配送手段の確立に向け、ドローン・ロボットを活用したDXソリューションを開発・提供するブルーイノベーション株式会社と戦略的業務提携を締結し、大規模災害時の被災地や遠隔地、アクセス困難な地域への医薬品・医療機器の安定的な配送体制構築に向けた検討を開始いたしました。加えて、株式会社 T2 と戦略的パートナーシップを構築し、医薬品流通における自動運転トラックの可能性と、よりシームレスな輸送方法の研究・開発に着手いたしました。
株主還元については、「2026年3月期までにDOE(株主資本配当率)2%以上」との配当方針に基づき、前年度より25円増配し、年間配当を65円といたしました。また、資本政策においては、150億円の自己株式取得を実施し、取得した全株式を消却いたしました。政策保有株式については継続的な縮減を進めており、2025年3月末時点での政策保有株式の純資産比率は16.2%となっております。
サステナビリティ経営においては、お取引先の皆様との信頼関係をより一層深め、責任ある調達活動を推進するため、「グループ調達方針」を策定し公表するとともに、その実行体制を強化するべく「購買管理室」を新設いたしました。また、サプライチェーン全体における共存共栄関係を構築することを目的とした「パートナーシップ構築宣言」に、当社グループより13社が参画いたしました。
さらに、ガバナンスの一層の強化を図るため、2024年8月には取締役会の諮問機関として「ガバナンス強化特別委員会」を設置いたしました。同委員会は、法律、財務、企業経営等の専門性を有し、当社から独立したメンバーで構成されており、客観的かつ専門的な視点から当社グループのコンプライアンス、リスクマネジメントを含むガバナンス全般の課題と改善策について数カ月にわたりご議論いただいております。2025年2月には同委員会より中間答申が報告されており、今夏には最終答申が報告される予定です。当社グループは、この中間答申に基づき、2025年4月に「コンプライアンス推進部」ならびに「関係会社管理部」を新設するなど、改善すべき案件について早急に対応を進めております。
当連結会計年度の経営成績は、売上高1,518,495百万円(前期比2.8%増)、営業利益18,936百万円(前期比2.0%減)、経常利益20,716百万円(前期比4.9%減)、親会社株主に帰属する当期純利益19,844百万円(前期比3.9%減)となりました。
医薬品卸売事業においては、コロナ治療薬・検査薬の需要減少や、選定療養導入による後発医薬品の使用促進に伴う影響がみられました。その一方で、2024年10月からの自治体による新型コロナワクチンの定期接種開始に伴い、ワクチンの売上が増加しました。また、スペシャリティ医薬品をはじめとする取扱卸限定製品の売上が引き続き好調に推移し、全体の売上を牽引しました。医療機関との価格交渉においては、2024年3月に改訂された流通改善ガイドラインを遵守すべく、個々の製品価値と流通コストに見合った単品単価交渉に引き続き取り組むとともに、特に医療上の必要性の高い医薬品については別枠での交渉に努めました。顧客支援システムについては簡易版ミザルや病院なびPRサービス等の新製品・新サービスの提案に努めるとともに、市場ニーズや将来性を精査し、高付加価値製品への注力と、より効率的な資源配分を進めることで、事業全体のさらなる成長を図るべく、製品ポートフォリオの最適化を進めております。これらの結果、当連結会計年度の経営成績は、売上高1,463,520百万円(前期比2.7%増)、セグメント利益(営業利益)19,033百万円(前期比2.2%減)となりました。
調剤薬局事業においては、中期経営計画の重要施策である「調剤薬局事業の変革」を実践すべく、事業会社の再編を進め、2024年3月末時点で24社あったファーマクラスター株式会社傘下の調剤薬局事業会社を、今年4月1日時点で11社にまで再編し、東日本における再編はほぼ完了いたしました。また、採算性を重視した新規開局と閉局を引き続き行いました。さらに、調剤報酬改定への対応を進めるとともに、マイナ保険証の利用促進等による薬局DXの推進や、在宅医療への貢献に向けた変革を推進するため、在宅専門診療所との連携強化に取り組みました。一方で、事業会社の統合に伴う一時的な費用の発生や人件費の増加により、当連結会計年度の経営成績は、売上高は95,553百万円(前期比1.9%増)、セグメント利益(営業利益)は852百万円(前期比44.9%減)となりました。
医薬品製造販売事業においては、自社で構築した独自の検証システムに基づく徹底した品質管理と、計画的な生産・調達体制の構築により、高品質・高付加価値な医薬品の安定供給に取り組みました。また、TBCダイナベースと同一施設内に、低温もしくは抗体医薬品を含むバイアル製剤等を主とした検査・包装および保管業務が行える医療用医薬品二次包装施設として「羽田パッケージングセンター」を開設し、今秋より製薬メーカー様からの受託を行うべく準備を進めております。当連結会計年度の経営成績は、売上高11,459百万円(前期比8.2%増)、セグメント利益(営業利益)729百万円(前期比3.5%減)となりました。
その他周辺事業における当連結会計年度の経営成績は、売上高6,850百万円(前期比11.4%増)、セグメント利益(営業利益)655百万円(前期比46.2%増)となりました。
(注)1.TBCとは、Toho Butsuryu Center(東邦物流センター)の略称であります
2.CDMOとは、製造開発受託のことであります
3.セグメントの売上高には、セグメント間の内部売上高を含んでおります。
生産、受注及び販売の実績は、次のとおりであります。
① 生産実績及び受注実績
当社グループの生産実績及び受注実績は、金額的重要性が乏しいため、記載を省略しております。
② 仕入実績
当連結会計年度における仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) セグメント間の取引については、相殺消去しております。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.セグメント間の取引については、相殺消去しております。
2.前連結会計年度及び当連結会計年度における「主な相手先別販売実績」については、販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10以上の相手先はありませんので記載を省略しております。
① 総資産
当連結会計年度末における当社グループの総資産は、前連結会計年度末に比べて50,621百万円減少し、722,805百万円となりました。
流動資産は、前連結会計年度末に比べて48,941百万円減少し、548,946百万円となりました。これは、商品及び製品が3,679百万円増加し、現金及び預金が46,437百万円、売掛金が5,955百万円それぞれ減少したこと等によります。
固定資産は、前連結会計年度末に比べて1,679百万円減少し、173,858百万円となりました。これは、投資有価証券が6,117百万円減少したこと等によります。
セグメントごとの資産は、次のとおりであります。
医薬品卸売事業のセグメント資産は、前連結会計年度末に比べて12,948百万円減少し、585,328百万円となりました。これは、商品及び製品が増加し、CMS預け金及び売掛金がそれぞれ減少したこと等によります。
調剤薬局事業のセグメント資産は、前連結会計年度末に比べて1,928百万円増加し、58,691百万円となりました。これは、CMS預け金が増加したこと等によります。
医薬品製造販売事業のセグメント資産は、前連結会計年度末に比べて108百万円増加し、19,446百万円となりました。これは、リース資産が増加したこと等によります。
その他周辺事業のセグメント資産は、前連結会計年度末に比べて454百万円増加し、5,863百万円となりました。
② 負債
当連結会計年度末における負債は、前連結会計年度末に比べて58,082百万円減少し、465,907百万円となりました。
流動負債は、前連結会計年度末に比べて47,296百万円減少し、424,008百万円となりました。これは、支払手形及び買掛金が40,349百万円減少したこと等によります。
固定負債は、前連結会計年度末に比べて10,785百万円減少し、41,899百万円となりました。これは、社債が9,010百万円減少したこと等によります。
③ 純資産
当連結会計年度末における純資産は、前連結会計年度末に比べて7,460百万円増加し、256,897百万円となりました。これは、利益剰余金が9,185百万円増加し、自己株式が2,088百万円減少した一方、その他有価証券評価差額金が3,680百万円減少したこと等によります。
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末と比較し50,446百万円減少しました。その結果、当連結会計年度末の資金残高は78,226百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
① 営業活動によるキャッシュ・フロー
営業活動の結果支出した資金は、26,675百万円(営業活動によるキャッシュ・フローが前期比86,609百万円減少)となりました。これは資金増加要因として、税金等調整前当期純利益28,056百万円を計上、減価償却費5,929百万円がありましたが、資金減少要因として、仕入債務の減少額40,755百万円、棚卸資産の増加額3,489百万円、法人税等の支払額10,143百万円があったこと等によるものであります。
② 投資活動によるキャッシュ・フロー
投資活動の結果支出した資金は、4,180百万円(投資活動によるキャッシュ・フローが前期比13,271百万円減少)となりました。これは資金増加要因として、有形固定資産の売却による収入2,980百万円、投資有価証券の売却及び償還による収入7,933百万円がありましたが、資金減少要因として、定期預金の預入による支出5,131百万円、長期性預金の預入による支出4,000百万円、有形固定資産の取得による支出4,056百万円があったこと等によるものであります。
③ 財務活動によるキャッシュ・フロー
財務活動の結果支出した資金は、20,364百万円(財務活動によるキャッシュ・フローが前期比1,830百万円増加)となりました。これは、資金減少要因として、短期借入金の減少額1,269百万円、自己株式の取得による支出15,004百万円、配当金の支払額3,017百万円があったこと等によるものであります。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性について
当社グループの主要な資金需要は、商品の仕入、販売費及び一般管理費等の営業費用並びに当社グループの設備新設、改修等に係る投資であります。これらの資金需要につきましては、営業活動によるキャッシュ・フロー及び自己資金のほか、必要に応じて金融機関からの借入及び社債発行等による資金調達にて対応していくこととしております。
手許の運転資金につきましては、当社及び一部の連結子会社等においてCMS(キャッシュ・マネジメント・サービス)を導入することにより、各社における余剰資金を当社に集中し、一元管理を行うことで、資金効率の向上を図っております。また、突発的な資金需要に対しては、迅速かつ確実に資金を調達できるようコミットメントライン契約を締結しております。
(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
① 市場価格のないその他有価証券の評価
当社グループは、市場価格のないその他有価証券は移動平均法による原価法を採用し、その評価は1株当たり純資産額と取得価額とを比較して1株当たり純資産額が50%を下回っている場合に減損処理の要否を検討しております。減損処理の要否を検討するに当たっては、投資先から事業計画等を入手し、これまでの実績等を勘案してその実質価額が合理的な期間内に回復可能であるか判断しております。
なお、将来の超過収益力等を反映した価額を実質価額とすることが合理的と判断される場合には、当該金額を純資産額に代えて減損処理の要否を検討しております。減損処理の要否を検討するに当たっては、投資先から事業計画等を入手し、これまでの実績等を勘案して、超過収益力等の毀損が生じていないか、または当社グループの投資価値回復計画を作成し、実質価額が取得価額に比して50%超下回るものの、実行可能で合理的な投資価値回復計画があり回復可能性が十分な証拠によって裏付けられるかにより判断しております。
従って、事業計画等が達成されない場合、投資有価証券の減損処理を実施し当社グループの業績を悪化させる可能性があります。
市場価格のないその他有価証券の評価のうち、市場価格のない非連結子会社株式の評価は、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
② 独占禁止法関連損失引当金
「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
③ 繰延税金資産の回収可能性の判断
当社グループは、繰延税金資産について四半期毎に回収可能性を検討し、回収可能性がないと考えられる金額に対しては評価性引当額を計上しております。回収可能性の判断は、業績を踏まえた将来の課税所得見込額と実行可能なタックス・プランニングを考慮して、将来の税金負担額を軽減する効果を有すると考えられる範囲で繰延税金資産を計上しております。「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」の企業分類が分類2、分類3に該当する会社は、繰延税金資産の回収可能性を判断する際に、課税所得見込額やタックス・プランニングは予測不能な前提条件の変化など見積り特有な不確実性があるため、見積可能期間は3年でスケジューリングを行っております。
将来の課税所得見込額は業績等により変動するため、課税所得の見積りに影響を与える要因が発生した場合は、繰延税金資産の見直しを行うため法人税等調整額の金額に影響を与える可能性があります。
④ 固定資産の減損
当社グループは、固定資産の評価にあたり、各社ごとに資産のグルーピングを行い、収益性が著しく低下した資産グループについて固定資産の帳簿価額を回収可能価額まで減損処理を実施することとしております。回収可能価額の算定において用いられる資産グループごとの割引前将来キャッシュ・フローは事業計画に基づいて見積りを実施しており、当該事業計画は予測不能な前提条件の変化など見積り特有な不確実性があるため長期的な売上成長率を見込まずに作成しております。固定資産の回収可能価額の評価にあたっては、見積った将来キャッシュ・フローに貨幣の時間価値等を考慮した割引率を用いて算出した割引後将来キャッシュフローもしくは正味売却価額を用いております。
これらの主要な仮定について、市場環境の変化等により見直しが必要となる場合、固定資産の減損が発生し、当社グループの業績を悪化させる可能性があります。
⑤ 貸倒引当金の見積り
当社グループは、債権の貸倒損失に備えるため、一般債権については過去3年間の貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権については、個別に回収可能性を勘案し、回収不能見込額を計上しております。
相手先の財政状態が悪化しその支払能力が低下した場合、追加引当処理が必要となり、当社グループの業績を悪化させる可能性があります。
該当事項はありません。
当連結会計年度の研究開発費の総額は、