当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
① 経営理念
当社グループは建設業界のニーズに応えた資機材及び技術・工事・加工の提供を通じて社会資本の整備に貢献します。
a.安心・安全を守り、公正で誠実な企業活動により、全てのステークホルダーの期待に応えます。
b.優れた技術力を追求し、価値ある商品・サービスを提供して社会に貢献します。
c.人を大切にして人を育て、信用と信頼を基礎に、魅力ある企業を目指します。
② 中長期ビジョン(2030Vision)
当社グループは、中長期ビジョン(2030Vision)として、「コア事業の基盤強化と次の100年の創造」を掲げ、以下の実現を目指してまいります。
1) 重仮設のパイオニアとして揺るぎない存在感
2) 新たな事業領域などへのチャレンジ
3) 当社の成長を通じて、社会の発展に貢献、ステークホルダーとの共生
4) 多様な強い人材『個』が活躍できる企業
以上の中長期ビジョンの実現のためのマイルストーンとして2024年5月に発表しました中期経営計画(2024-2026年度)では、以下の基本方針を定めました。
③ 中期経営計画期間中(2024-2026年度)の基本方針・経営戦略
<基本方針>
持続的な企業価値向上のため、外部環境の変化に的確に対応し、人材育成ほかの経営力を強化しつつ、事業基盤の強化、事業構造の変革・進化をさらに推進する。
<経営戦略>
コア事業を強化し、次の100年を創るための進化と変革の3年間
1) 2030年に向けた中長期ビジョン達成のため、コア事業のゆるぎないポジション確立と将来の飛躍的な企業価値向上を展望する経営基盤の構築
2) 本業の重仮設という幹を強く太くするために自ら変革し、成長の種をまき、将来に向けてステップアップするための3年間
④ 主要な取り組み状況
2024年5月に公表しました中期経営計画(2024-2026)の初年度の2024年度では、最終年度の定量的目標の総売上高400億円に対しましては約89%進捗の355億円で終えましたが、経常利益20億円の目標に対しましては20億77百万円と約104%の進捗で終えております。
稼ぐ力の強化に向けた取り組みとして、工事部門では各現場での最適かつ現場のニーズを見定めた様々な工法・工種の提案を実施し、収益の拡大を図っております。更なる強化のために機械設備の入替および新規導入を進めております。加工部門では現場の建築分野・土木分野のなかの特殊な受注加工物件の拡大・強化に取り組んでおります。また、橋梁分野では建設後50年以上経過するインフラ構造物の橋梁の架け替え工事や災害復旧工事などのあらゆる需要に対応できる製品のラインアップを揃え、機動的な人的リソース体制の強化を図っております。
当社が保有する建設資材を管理する工場部門では、就労者の高齢化・将来の人手不足に考慮し、整備ラインのオートメーション化に取り組んでおります。2025年度末までには茨城工場で自動整備ラインの稼働に向けた設備投資を実施しております。現場で使用した建設資材の再利用のための洗浄や塗装、乾燥を自動化することで人員数の軽減が実現化できます。鋼矢板の自動洗浄機も名古屋工場で導入し成果が実証されていることから、今後、他工場にも導入を展開してまいります。
中期経営計画期間中におきましては、経営目標を達成していくために経営基盤の強化と成長に向けた投資を計画し実施してまいります。株主還元の取り組みでは、投資とのバランスを考慮し、資本効率や財務状況を総合的に勘案しながら、配当性向30%程度を視野に入れた利益配分を実施してまいります。
(2)経営環境
当連結会計年度のわが国経済は、インバウンド需要の拡大や雇用・所得環境が改善するなかで、緩やかな回復基調が続きました。一方で、物価上昇の継続や金融資本市場の変動に加え、不安定な国際情勢と米国の通商政策による影響が国内経済の下押しリスクとなっており、景気の先行きは不透明な状況が続いております。
当社グループが属する建設業界におきましては、公共投資や設備投資に底堅さが見られるものの、鋼材価格の高止まりや労務費の高騰による建設コストの上昇に加え、建設従事者の高齢化や人手不足による労務需給の逼迫、時間外労働の上限規制の適用による工事の着工遅延や進捗遅れ等の影響が懸念されました。また、激甚化する自然災害やインフラ設備の老朽化による災害事故の急増など、環境変化への迅速な対応が実施されました。
今後の国内経済につきましては、企業の賃上げ促進等による雇用所得水準の改善や設備投資の堅調な推移により、引き続き緩やかな回復が続くことが見込まれます。一方で、物価上昇の継続や金融資本市場の変動、不安定な国際情勢および米国の通商政策による影響が国内景気の下押しリスクとなっており、依然として不透明な状況が続いております。
建設業界におきましては、従来からの技能労働者不足、建設従事者の高齢化、鋼材価格の高止まり、労務費の高騰、時間外労働の上限規制の適用による建設コストの上昇の影響で懸念される工事の着工遅延、進捗遅れには引き続き注視する必要があり、採算面での厳しさは一層増すものと予想されます。一方で、都市部の再開発事業や民間設備投資プロジェクトに加え、国土強靭化対策やインフラの維持管理・老朽化対策など政府が進める公共投資の下支えが期待され、底堅い建設需要の推移が見込まれます。
(3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループが対処すべき事業上の課題と具体的取り組みは以下のとおりであります。
① 企業リスクの管理とコンプライアンスの徹底
当社グループは、企業理念に掲げる「安全・安心を守る」ことを最重要課題と位置付けております。安全・品質・人材の確保は企業存続の根幹であります。基本に立ち返り、「安全管理活動の強化と意識改革への取組み」「不安全行動の撲滅」および「心と身体の健康確保」の安全目標を掲げ、社員・協力会社のすべての関係者が一体となり、安全管理、リスク低減を実施し、労働災害撲滅、無事故・無災害を目指してまいります。また、大規模自然災害等で役職員の身体・生命の安全確保と、事業資産の損害を最小限にとどめ、事業の継続あるいは早期復旧を可能にしていくためのBCP(事業継続計画)を策定し、実施・運用してまいります。
また、様々な企業リスクに対応するための徹底した危機管理体制を整備・構築し、コンプライアンス意識の深化に取り組んでまいります。コンプライアンス体制の内部通報制度の意義・重要性を高く捉え、組織の自浄作用を健全に発揮させるために通報対応の仕組みの整備・運用の見直しを行いました。売上や利益計画達成、工期厳守のために法律や規則、安全を無視・軽視するような行為は企業の信頼と存続を極めて危うくするということを深く認識し、グループ会社並びに協力会社の全役職員でコンプライアンス意識の向上に取り組んでまいります。また、内部統制システムの実効性の強化を更に高めてまいります。
② 中期経営計画(2024-2026) 「事業構造の変革」・「成長」・「経営力」
当社グループは、2024年にスタートした中期経営計画(2024-2026年度)において、重仮設資材の販売・賃貸及び技術・工事・加工を提供するコア事業の基盤強化と収益構造の変革と強靭化に取り組んでまいります。建設業界のニーズに応える重仮設資材の提供に重心を置きつつ、現場の潜在需要を見定めた新工種の提案、加工案件の受注拡大を図ってまいります。
また、整備能力・生産性の向上を図るため工場設備への積極的な投資を進め、建設資材の保有量を適切に維持・管理し資産の効率性を高めてまいります。加えて、技術力強化・業務プロセス改革のためのIT関連投資を進め、成長へ繋げてまいります。
経営力を強化するためには当社グループの成長・変革を担う人材の確保・育成が必要となります。人的資本への投資を増やし、社内研修制度をさらに充実させ、社員一人ひとりが能力を向上させ、成長に向かうことができる「魅力ある企業」を目指し、更には、「経営幹部との対話ミーティング」を社内のあらゆる役職者や非管理職の小グループと実施する事を通じて、会社の方針を直接説明すると同時に社員の声を直接拾い上げ、「人を大切にして人を育て」の企業理念の実現に向けて多様な強い人材『個』が活躍できる企業を目指してまいります。
なお、当中期経営計画期間中の定量目標は以下のとおりであります。
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定量的目標 |
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収益目標(2027年3月期 連結ベース) |
売上高400億円 |
経常利益20億円 |
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株主還元 |
配当性向30%程度を視野に入れた利益配分 |
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③ SDGsへの取り組み
当社グループは「建設業界のニーズに応えた資機材および技術・工事・加工の提供を通じて社会資本の整備に貢献する」ことを企業理念として掲げております。鋼材の反復利用を行う重仮設リースは環境に優しい事業モデルであり、常に「リサイクル」・「リユース」を意識した事業展開に努めております。
運送部門では、効率的な物流管理システムを構築しております。配車状況、運転手情報を一元管理し、現場までのルートの最適化などで運送距離を短縮化し、運転手の労働負荷を減らすこととCO₂排出量削減を実現してまいります。当社やグループ会社を含めた運送会社が連携して物流の効率化に取り組み、より安全で快適な運送業務を目指すことで環境への影響を軽減してまいります。
また、高強度材を用いた山留・構台・桟橋関連商品や仮桟橋商品は再利用が可能で、現場の多様なニーズに対応可能なリース商品として提供しております。基礎工事の工法では工期短縮、削孔時のセメント材不要、建設残土の削減など、環境への負荷の大幅な軽減を実現し現場の工期進捗に貢献しております。
当社は工事部門および工場部門で着用するユニフォームを20年ぶりにリニューアルいたしました。素材をCO₂排出削減に貢献する植物由来のストレッチ素材を採用しました。機能面でも現場ニーズを多数採用し、環境性、機能性、安全性を徹底追求した仕様・デザインとなっております。
今後も持続可能な社会の実現に向けた環境意識の向上を図り、技術力・開発力を強化し、新商品および新工法を提供していくことで更なる社会資本の整備と充実に貢献してまいります。
④ 資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた取り組み
当社グループでは、対処すべき課題も含めた中期経営計画の達成に向けて取り組みながら、持続的な成長と中長期的な企業価値向上を目指してまいります。業績面での売上や利益水準の向上とともに、財務の健全性を維持し資本コストや資本収益性を意識した最適な資本構成の実現に向けた取り組みを実施してまいります。当社の資機材を管理する工場部門では、働き手の高齢化と将来の人手不足に対応し、同時に生産性を追求した設備投資を積極的に推進してまいります。工事部門と加工部門では環境負荷軽減と工期短縮、現場の潜在需要を見定めた新工種および加工案件の更なる研究と機械への投資を継続し、必要に応じてM&A(企業合併・買収等)やアライアンス(業務提携等)を検討しながら収益力拡大を目指してまいります。
業績に裏付けられた安定且つ適正な配当を継続しつつ、中期経営計画の達成に着実に取り組むことで、定量的指標の改善を目指し、全てのステークホルダーの期待に応えてまいります。
サステナビリティ全般
当社グループは、「地下エンジニアリング」企業として様々な社会課題の解決に貢献し、サステナブルな社会を実現したいと考えております。2024年度からスタートした「中期経営計画(2024-2026)」の策定にあたっては、前中期経営計画から引き継いだ課題事項に加えて、当社を取り巻く社会情勢や経営環境における新たな課題を洗い出しました。その中でも、地球温暖化がもたらす気候変動が極めて危機的な状況になりつつあることを再認識し、それを回避すべく、脱炭素社会の実現に向けて様々な取り組みを行っております。
当社グループは、経営方針、対処すべき課題と事業等のリスクのうち、特に重要性が高いと認識しているサステナビリティは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)ガバナンス
当社グループでは、サステナビリティ関連のリスク及び機会を専門に扱う委員会等は設置しておりません。関係部門が必要に応じてリスク及び機会の識別・評価を行い、取締役会・経営会議・コンプライアンス委員会等への報告を通して、重大リスクの回避・低減・移転等の対策を決定しております。
(2)戦略
当社グループは、建設現場への資材供給を通じて二酸化炭素の排出削減と脱炭素社会の実現に寄与する取り組みを重ねてまいりました。賃貸契約により鋼矢板等の鋼材の反復利用を行う重仮設事業は、元より環境負荷の少ない循環型モデルであります。また、付帯する工事施工においても、セメント材の使用及び残土の発生を抑える新工法を展開し、二酸化炭素の排出削減、環境負荷の軽減に取り組んでおりますが、今後、当社が鉄鋼製品等を購入する際には環境に配慮した製品を優先することや当該製品を反復利用する事業を継続・拡大していくことで、鉄鋼業界のサステナビリティへの取り組みにも寄与してまいります。SDGsへの取り組みに関しましては、「
また、生産拠点である工場の建屋屋上を利用した「太陽光発電事業」を2015年からスタートしており、再生可能エネルギーの利用促進および温室効果ガス排出量の削減に貢献しております。
(3)リスク管理
当社グループは、鋼矢板等の賃貸契約を主業としておりますが、現場工期や土質等の諸条件により売却契約となる場合があります。また、建設現場では様々な原因で着工遅延や工期延長が発生する場合があり、保有量は目まぐるしく変動しております。当社では、在庫不足による失注のリスクを避けるため営業部門からの出入庫情報を一元管理しております。業務統括部では各工場が適正な在庫量を維持するための調整と集中購買を実施しております。また工場統括部では、工場で建設資材を整備する工場協力会社社員の高齢化と人手不足のリスクを軽減していくために、工場設備の積極的な更新や手作業を軽減していくための機械による自動化、及び再利用を高めていくための加工設備の投資を促進し、整備能力・生産性の向上と資産の効率性を高めてまいります。
今後も当社グループが事業を継続していくうえでは人材の確保と育成が重要課題と認識しております。少子高齢化による人口減少に伴った人材の確保と育成及び採用リスクの対応につきましては、「
(4)指標及び目標
国内外のサステナビリティ開示で広く利用されている気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)と整合的な数値が算出できないため、開示を省略いたします。
(5)人的資本
当社グループでは、中長期ビジョン(2030Vision)として「コア事業の基盤強化と次の100年の創造」を掲げ、その重点項目として「多様な強い人材『個』が活躍できる企業」を目指してまいります。少子高齢化による 就労人口の減少、建設業界の慢性的な人手不足が問題化するなかで、優秀な人材を確保するためにはダイバーシティ人材の活用が不可欠となっております。当社では、「女性社員の活躍拡大」「障がい者雇用」「海外人材の活用」を3つの柱として働きやすい職場環境を制度面から整備してまいりました。
①女性社員の活躍拡大
当社では、現在32名の女性総合職が就業しております。新入社員の中でも施工管理や工場勤務を希望する女性総合職が増えており、これまで男性中心であった工事部門、工場部門でも女性が働きやすい職場環境を整備し能力が発揮できる場を提供しております。2024年度の新卒の女性総合職の内1名は工事部門に配属、2025年度の新卒の女性総合職5名の内、2名を工場部門、3名を技術部門に配属を予定しております。
当社では、これまで女性の取締役、執行役員および部長職への登用実績はございません。グループ長クラスも全社で1名のみでありましたが、2024年、2025年と女性社員で構成する新組織を設置し、女性管理職は3名に増えました。今後も女性総合職の中から管理職への登用を推進しつつ、経営幹部となる人材の育成を図ってまいります。
②障がい者雇用
当社は、2023年に障がい者雇用を推進するための社外農園事業をスタートさせ、2025年1月には事業拡大による追加雇用を実施いたしました。今後も共に働く社員として就労支援を行いながら、ノーマライゼーションの理解促進のための取り組み、社会貢献活動の一環として推進してまいります。
③海外人材の活用
当社は、外国人従業員採用について具体的な目標は定めておりませんが、将来的には「育成就労制度」等を活用した外国人従業員の採用も検討してまいります。現在、1名の外国人従業員が就業しております。
また、当社は優秀な人材の採用、人材育成戦略として以下の取り組みも実施しております。
当社は、新卒採用においてはWEB説明会やオンデマンド配信を導入、就活生が地域や時間に制約されずに応募できる採用活動を展開しております。また、幅広い人材へのアプローチ方法としてリファラル採用やアルムナイ採用等を積極的に取り入れております。
当社は、2024年度に全従業員を対象に各部門の業務内容および基礎的知識の理解を深める社内研修を実施いたしました。部門間の業務の流れを体系的に習得すると同時にコミュニケーションを図る機会を提供しながら、様々な部門・分野の状況を共有した中で、個々の能力を発揮しビジネスにつなげることでの成長発展を目指してまいります。更に2025年度では、階層別の研修プログラムを刷新し、組織や事業経営の知識と経験を深化させることを進めております。また、介護研修や定年後のマネープランニング研修などを実施し、社員のワークライフバランスやセカンドライフステージの支援の機会を設けております。
<指標及び目標>
また、当社グループでは、上記において記載した人的資本に関する方針については、当社においては、関連する指標のデータ管理とともに、具体的な取り組みが行われているものの、連結グループに属するすべての会社では行われてはいないため、連結グループにおける記載が困難であります。このため、次の指標に関する目標及び実績は、連結グループにおける主要な事業を営む提出会社のものを記載しております。
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指標 |
目標 |
実績(当事業年度) |
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有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)建設市場の変動リスク
当社グループの業績は建設業界を取り巻く環境に左右されます。主たる取引先が国内の建設会社であり国内建設市場への依存度が高いことから、民間建設投資、公共事業投資の動向によっては当社グループの受注高及び収益性等に影響を受ける可能性があります。採算を重視した受注活動に努めるとともに、顧客ニーズへの迅速かつ丁寧な営業活動を展開してまいります。
(2)仕入価格および労務費の変動リスク
鋼矢板、H形鋼、鋼製山留材等の供給を主とする重仮設資材リースの市場は、鋼材仕入れ時の市況価格に影響を受ける可能性があります。国際情勢や為替相場等の影響で原材料価格が高騰するリスクのほか、景況感と需給バランスにより労務費が上昇するリスクもあります。これら建設コストの動向次第では採算性が悪化する可能性がありますが、それぞれ係数等を見積もり、収益予測を立てるなどの対策を実施しております。
(3)取引先の信用リスク
取引先が信用不安に陥った場合は、売上代金の回収不能など貸倒損失が発生する可能性があります。貸倒れの発生リスクを最小限に抑えるため、審査部門を中心に取引先の信用情報と与信管理を厳密に行い、関係部門への周知を行っております。
(4)事故等の発生リスク
当社グループが提供する資機材及び設計・施工・受注加工等の各種サービスや自社工場における資材整備作業のなかで重大災害や事故が発生した場合、社会的信頼の毀損に加え損害賠償、損失補填を求められる可能性があります。また、関係法令や諸規則の改変により原価の負担増を強いられる可能性があります。
当社グループでは、常に「安全と安心を守る」ことを最優先事項に掲げております。安全作業の徹底と労働災害撲滅に向けた安全管理活動の改善と強化を図るとともに、関係法令等の制定・改正について周知活動を徹底し、無事故・無災害を実現してまいります。
(5)保有資産の価格変動リスク
当社グループが保有する工場設備資産、投資不動産(賃貸等不動産)、投資有価証券等の時価評価が著しく低下した場合、評価損や減損損失の計上等により当社グループの業績及び財務基盤に影響を及ぼす可能性があります。
工場設備資産は、保有する土地評価額の著しい下落や当該地域の収益性の急激な低下によっては減損損失が発生する可能性があります。当社グループでは、取締役会・経営会議において各地域及び各部門の業績及び事業活動が報告され、収益性の分析が行われております。
なお、投資有価証券のうち政策保有株式につきましては、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (5)株式の保有状況 ②保有目的が純投資目的外の目的である投資株式」に記載のとおり、保有の合理性を検証してまいります。
(6)コンプライアンスに関するリスク
当社グループはコンプライアンス体制を整備し、コンプライアンス委員会において定期的なリスク管理を行っておりますが、法令等に抵触した場合には、業績に影響を与える可能性があります。
当社グループの役職員は、コンプライアンス行動規範に基づき、日常業務において関連する諸法令・社内規則及び企業倫理の遵守、徹底を図ってまいります。当社グループの役職員を対象とした情報発信、℮ラーニング等を用いた教育体制を整備し、コンプライアンス意識を高めることに努めております。
(7)情報セキュリティに関するリスク
当社グループは日常業務に係る情報、個人情報その他の様々な情報をシステム上で取り扱っており、大規模災害や外部からのサイバー攻撃の他、コンピュータウイルス感染や従業員の過失等によってシステム障害、情報漏洩またはデータの消失等が発生した場合、社会的信頼の毀損、損害賠償や復旧費用等の発生により、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは事業活動を正常かつ円滑に行う上で、情報セキュリティの確保は重要課題のひとつであると考えております。情報セキュリティポリシーを策定し、継続的かつ網羅的に情報資産の機密性、安全性、可用性を維持することに努めております。
(8)自然災害等によるリスク
地震・台風・津波等の大規模な自然災害によって当社グループの主要な事業拠点が被災した場合には、操業停止や資機材の出入庫の遅延、設備の復旧等に伴う損失が発生する可能性があります。関係者の安全確保を最優先に安否確認システムによる状況把握を迅速に行うとともに、公共交通機関の輸送障害を想定したサテライト勤務、在宅勤務の基盤整備と基幹業務維持のための事業継続計画の更新を進めてまいります。
(9)感染症の大流行等が及ぼすリスク
感染症の大流行または新型感染症が発生した場合には、施工中の建設工事の工程が大幅に遅延する可能性があります。また、民間企業の設備投資及び公共工事の公示・入札等において新規工事の発注見直しや、設計業務等の遅れに伴う着工遅延・延期等の影響が予想されます。感染症流行時の対策として基幹業務に携わる各部門が「基本行動手順書」を策定しております。社員及び関係者の感染防止を最優先とするテレワーク勤務等へのシフトを速やかに実行し、基幹業務を維持する体制を整備しております。今後、感染症の大流行または新型感染症等が発生した場合には、政府の対処方針と密接連携しながら当該体制を適時適確に運用してまいります。
(10)金利変動リスク
当社グループの運転資金の一部は金融機関からの借入金を原資としており、金利が急激に上昇した場合、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当社グループは金融市場動向を注視しながら、安定的なキャッシュ・フロー経営を行い、財務体質の一層の改善を図ってまいります。
(11)少子高齢化に伴った労働人口減少に関するリスク
当社グループが属する建設業界では技術者や技能労働者の不足により工事の着工遅延や計画見直しが発生した場合、業績に影響を与える可能性があります。建設業界では、官民が連携し建設業の担い手確保・育成、処遇改善等に取り組んでおり、働き方改革や建設キャリアアップシステムの普及、ICT活用等に対して当社グループも積極的な対応を図ってまいります。
今後、少子高齢化の進行により労働人口が更に減少していくことが予想されており、社員の新規採用が著しく停滞した場合、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、計画的な新卒採用に加え、必要に応じて専門職の中途採用も実施し、人材の確保に注力しております。また、女性社員の活躍推進策として総合職採用の拡大、一般職から総合職への職制転換と管理職への登用を推進しております。また、自己都合退職者の再雇用や外国人技術者の採用など、多様な人材の活躍推進に努めております。
当社では、優れた人材の採用と確保に注力する一方、優れた人材の育成に向けて社内研修プログラムを刷新しました。経営理念にある「人を大切にして人を育て」を実践し、人材が集まる魅力的な企業を目指してまいります。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー
(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
a.財政状態
・当連結会計年度末の資産合計は439億69百万円となり、前連結会計年度末と比較して6億23百万円の増加となりました。その主な内訳は、機械装置及び運搬具やその他の有形固定資産が増加したことによるものであります。
・当連結会計年度末の負債合計は130億43百万円となり、前連結会計年度末と比較して4億89百万円の減少となりました。その主な内訳は、納税による未払法人税等の減少と、支払手形及び買掛金と電子記録債務を合わせた仕入債務が減少したことによります。
・当連結会計年度末の純資産合計は309億26百万円となり、前連結会計年度末と比較して11億12百万円の増加となりました。その主な内訳は、親会社株主に帰属する当期純利益による利益剰余金の増加によるものであります。
b.経営成績
当連結会計年度の経営成績は、売上高355億85百万円(前年同期比3.0%増)となりました。利益につきましては、営業利益15億79百万円(前年同期比11.9%増)、経常利益20億77百万円(前年同期比7.9%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は15億34百万円(前年同期比11.8%増)となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は前連結会計年度末に比べ、2億37百万円増加の50億92百万円となりました。当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動による資金は14億47百万円の増加(前年同期は32億円の増加)となりました。主な増加項目は税金等調整前当期純利益21億73百万円、売上債権及び契約資産の減少による資金の増加額5億51百万円であり、主な減少項目は棚卸資産の増加による資金の減少額2億31百万円であります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動による資金は8億5百万円の減少(前年同期は2億97百万円の減少)となりました。主な減少項目は有形及び無形固定資産の取得による支出額10億50百万円であります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動による資金は4億4百万円の減少(前年同期は13億77百万円の減少)となりました。主な減少項目は配当の支払額3億93百万円であります。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績を事業の部門で示すと、次のとおりであります。
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部門の名称 |
生産高(百万円) |
前年同期比(%) |
|
工場部門 |
1,480 |
0.1 |
(注)金額は受注加工製作額であり、販売価格によっております。
b.受注実績
工事及び製作加工は、取引先との契約締結後、ごく短い期間で工事施工開始又は製作加工品を納入するという業界の慣習・取引形態の特殊性により、受注高の集計は行っておりません。
c.販売実績
営業部門は取扱商品別に分かれておりません。当連結会計年度における売上形態区分別内訳は次のとおりであります。
|
区分 |
金額(百万円) |
前年同期比(%) |
|
販売 |
12,353 |
△6.4 |
|
賃貸 |
4,656 |
5.8 |
|
工事 |
12,590 |
11.1 |
|
加工料 |
2,768 |
1.5 |
|
運送 |
3,216 |
11.4 |
|
合計 |
35,585 |
3.0 |
(注)最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
|
相手先 |
前連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
||
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金額(百万円) |
割合(%) |
金額(百万円) |
割合(%) |
|
|
鹿島建設株式会社 |
3,890 |
11.3 |
5,334 |
15.0 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.財政状態の分析
(資産)
当連結会計年度末の資産合計は439億69百万円となり、前連結会計年度末と比べ6億23百万円の増加となりました。
流動資産につきましては、当連結会計年度末の合計は328億54百万円となり、前連結会計年度末と比べ54百万円の減少となりました。その主な内訳は、翌事業年度に予定している出庫用の在庫調達により建設資材が前連結会計年度末と比べ1億67百万円増加した一方で、回収サイト短縮により受取手形、売掛金及び契約資産と電子記録債権をあわせた売上債権が前連結会計年度末と比べ5億51百万円減少したことによります。
有形固定資産につきましては、当連結会計年度末の合計は67億37百万円となり、前連結会計年度末と比べ7億3百万円の増加となりました。その主な内訳は、機械装置及び運搬具が前連結会計年度と比べ4億22百万円、建設仮勘定が前連結会計年度と比べ2億24百万円、それぞれ増加したことによります。当社グループは、中期経営計画で掲げた経営基盤の強化の一環として、工場の整備能力・生産性向上のための整備ラインのオートメーション化および工場内の環境改善に取り組んでおり、建物付属設備や機械装置の取得等を実施しております。また、工事収益強化のために、工事用機械の購入も実施しております。
投資有価証券につきましては政策保有株式の保有のスクリーニングの結果、当連結会計年度におきまして一部銘柄の売却を実施しました。この結果、時価評価も含んだ投資有価証券の残高は前連結会計年度末と比べ39百万円の減少となりました。売却による収入は、工場等の設備投資に運用してまいります。
(負債)
当連結会計年度末の負債合計は130億43百万円となり、前連結会計年度末と比べ4億89百万円の減少となりました。その主な内訳は、納税による未払法人税等の減少と、支払手形及び買掛金と電子記録債務を合わせた仕入債務が減少したことによります。
(純資産)
当連結会計年度末の純資産合計は309億26百万円となり、前連結会計年度末と比べ11億12百万円の増加となりました。株主配当金3億93百万の支払による減少と親会社株主に帰属する当期純利益15億34百万円の剰余金への組み入れによります。この結果、自己資本比率は70.3%となり、前連結会計年度末と比べ1.6ポイント上昇しました。
今後も経営基盤の強化と成長に向けた投資を計画、実施していきながら業績面での利益水準の向上を図り、財務の健全性を維持しつつ資本コストや資本収益性を意識した最適資本構成の実現に向けた取り組みを継続してまいります。
b.経営成績の分析
当連結会計年度の項目別売上は、販売収入が前年同期比6.4%減の123億53百万円、賃貸収入が前年同期比5.8%増の46億56百万円、工事収入が前年同期比11.1%増の125億90百万円、加工収入が前年同期比1.5%増の27億68百万円、運送収入が前年同期比11.4%増の32億16百万円となり、総売上高は前年同期比3.0%増収の355億85百万円となりました。売上原価は前年同期比2.5%増の291億24百万円となりました。売上高総粗利益の段階では前年同期比5.4%増の64億60百万円となりました。建設コストを反映した価格改善の取り組みは概ね順調に浸透しておりますが、採算性を重視した受注活動を展開した結果、販売収入以外の項目で増収となりました。売上高の各項目の構成比では、受注工事拡大に注力した結果、工事収入が全体の35.4%を占めるまでに進捗いたしました。販売費及び一般管理費は前年同期比3.4%増の48億81百万円を計上した結果、営業利益は前年同期比11.9%増の15億79百万円となりました。将来の成長・変革を担う人材の確保・育成に注力し人的資本への投資を実施しており、今後も継続してまいります。この結果、総売上高、営業利益ともに増収・増益の結果となりました。
営業外収益5億92百万円(前年同期比0.1%減)、工場設備の入れ替えに伴う処分損を含む営業外費用93百万円(前年同期比20.5%増)を加減した結果、経常利益は20億77百万円(前年同期比7.9%増)となりました。政策保有株式の売却益を含めた特別利益1億3百万円(前年同期比2.5%増)を計上し、法人税等合計6億39百万円を計上した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は15億34百万円(前年同期比11.8%増)となりました。
c.当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因について
当社グループの業績は建設業界を取り巻く環境に左右されます。従来からの技能労働者不足、建設従事者の高齢化、鋼材価格の高止まり、労務費の高騰、時間外労働の上限規制の適用による建設コストの上昇の影響で工事の着工遅延、進捗遅れが当社グループの経営成績に重要な影響を及ぼします。このような背景から、更なる受注競争の激化による採算面での厳しさが増すものと予想されます。
今後につきましても、建設コストの高止まりが続くと予想されます。一方で、国内の公共投資や設備投資には底堅さが見られ、都市部の再開発事業や民間設備投資プロジェクトと国土強靭化、インフラ対策等の公共投資の下支えが期待されております。当社グループは引き続き採算面での徹底した管理を行いながら受注活動に取り組んでまいります。
d.経営者の問題認識と今後の方針について
当連結会計年度末では最終年度末の目標に掲げた定量的目標数値である連結売上高400億円の目標に対しては89%の進捗となりましたが、経常利益20億円の目標に対しては104%の進捗となりました。定性的に掲げた「事業構造改革」「成長」「経営力」の三本柱を戦略的に展開し、経営基盤を強化し計画を進めております。
事業構造改革では、稼ぐ力の強化のひとつに工事収益力の強化を掲げており、当連結会計年度においては増収増益を達成し、継続的に工事部門の人材確保と新たな工法の進化等に注力していく方針であります。加工収益力強化に向けては、現場の建築分野・土木分野のなかの特殊な受注加工物件の受注拡大に取り組んでまいります。また、橋梁分野では、建設後50年以上経過するインフラ構造物の橋梁の架け替え・災害復旧工事などのあらゆる需要に対応可能な仮桟橋商品のラインアップの充実化を図り、機動的な人的リソース体制の強化に取り組み、受注拡大を図ってまいります。
工場部門では工場の協力会社の高齢化、人員の確保に対応していくことが喫緊の課題と認識しております。将来の収益力を成長させるためにも、工場設備の更新を積極的に進めていき、整備能力・生産性向上に資する機械の導入を進めてまいります。また、工場内の環境改善を進めていく一環として、作業建屋の改築等にも取り組んでまいります。具体的には鋼矢板やH形鋼の自動洗浄ラインの稼働、新たな建屋を設置し覆工板の自動整備機械の導入を進めていきます。これら当社の基幹を担う工場部門への設備投資を促進させ、いわゆる3K(きつい、汚い、危険)作業を低減し、多様な人材が活躍できる環境を整備することで、顧客ニーズに沿った迅速な資材提供と適正な在庫量の維持・管理を徹底してまいります。
工事部門、工場部門以外でも、人材の確保に注力していきます。新卒の採用以外にも中途採用も積極的に行い人材の確保に努めていきます。また、当社では社員のモチベーション向上に繋げる人事制度改革に取り組んでおります。人材育成面では、社員が活躍できるスキルの向上を目的に業務全般に必要な知識を習得していくことが重要と捉え、研修カリキュラムを策定し、継続的に実施してまいります。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容ならびに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
a.キャッシュ・フローの分析
キャッシュ・フローの分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載しているとおりであります。
b.資本の財源及び資金の流動性について
当社グループの資金需要は、営業活動に必要な運転資金として材料費、外注費、修理費、製作加工費、労務費等が主要な内容であります。経常的な運転資金については、一定水準の資金を確保しておく必要があります。設備投資などの資金の財源については、営業活動による収入で得た資金を投入し、不足する場合は有利子負債による資金調達を実施しております。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
特記事項はありません。
当社は建設業界のニーズに応えた資機材および技術・工事・加工の提供を通じて社会資本の整備に貢献する企業理念のもと、優れた技術力を追求し、価値ある商品・サービスを提供して社会に貢献してまいります。大学の研究機関の連携などを継続推進しながら新商品・新技術の開発を強化してまいります。当連結会計年度においては以下の研究開発活動に取り組んでまいりました。なお、研究開発費の総額は、
・ストロング中間パネル製作および組立実験
大型揚重機作業および仮桟橋縦架設施工が可能で、河川や山岳地に適用できるストロングタイプの仮桟橋は、橋長最大18mの対応としておりますが、中間パネルを製作・組立てることで橋長20mから28mの対応可能型にするための実験を実施し、安全性等が確保されましたことから、今後の様々な災害復旧工事への対応に向け製作を開始してまいります。
・覆工板ノンスリップ実験
当社の覆工板は、地下鉄工事をはじめ、地下街の建設・地下配管工事など各種路面掘削工事のほか、仮設構台・桟橋用床板として広く使用される商品です。現在、覆工板の滑り止め用に加工しているナンスライド型の再使用しにくい問題を解消するため、高耐久性と反復使用が可能なノンスリップを塗布した覆工板の商品化に向け試験を実施し、滑り抵抗・摩耗量においても高性能な商品に向け実証検収を行っております。
・引抜撤去工法(筒形)試験
山留壁においては、構造物構築完了に上部H形鋼を1.5mから3.0m程度撤去する必要があります。長ボルトを外すことで上部H形鋼を引き抜く工法を採用することで、重機による掘削や切断を行わず、より安全で効率的な撤去作業を可能にすることを目的としました。引抜き部の接続構造に関する強度試験を実施した結果、事前に検討していた強度と同等以上の性能が確認されました。今後は受注加工商品としての展開を予定しております。
・ランドクロスにおけるC型クランプ(止め金具)使用方法の強度確認試験
ランドクロス(仮桟橋)の鋼材組立用として接合部の締結に使用するC型クランプ(止め金具)の適正な使用を目的とした試験を実施いたしました。圧痕低減を目的とした養生プレートを組み合わせた際の安全性についての検証となります。良好な試験結果が実証された場合、作業の安全性確保、鋼材組立時に自由な取り合いが可能となることで、架設・撤去工事期間が短縮できるなど、施工作業の品質管理も図れるメリットが享受できます。
・仮設構造物の構造合理化に関する研究
仮設構造物の部材の軽量化・省サイズ化を目的に、数値解析を用いた設計を実施し、新たな構造部材の開発と新設計法の構築を行う研究を大学と共同で行っております。