文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) サンリオの経営の基本方針
当社はホームページにおいて、企業理念を下記のとおり公表しております。


(2) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
① ボラティリティ(業績の変動性)の抑制
当社グループはこれまで、『ハローキティ』をはじめとしたキャラクターをブランドとして育て、他社にライセンスし、また、ギフト商品の企画・製造・販売を行うことで利益を獲得し事業を拡大してまいりました。その主たる収益獲得の要因は商品化権ビジネス、いわゆるプロダクトライセンスであり、『ハローキティ』を中心とするものでした。また、2015年3月期から2021年3月期まで7期連続で営業減益となるなど、過去の歴史において業績のアップダウンを繰り返してきました。その大きな要因の一つが、欧州・米州におけるプロダクトライセンスと、『ハローキティ』中心のビジネス展開に偏ったことであったと考えております。
しかしながら、2022年3月期以降は複数キャラクター展開が奏功し業績がV字回復し、2025年3月期におきましては、過去最高の営業利益を更新するなど大きな飛躍を遂げることができました。今後も成長を止めることなく、ボラティリティ(業績の変動性)の小さい事業体制を確立することを経営課題として認識しております。
業績を安定化させるには、欧米での話題性を高めること、成長をストック化させていくこと、キャラクターをはじめとするIPの属性の幅を広げていくことが必要だと考えています。欧米での話題性を高めるために映像等の投資を行っていきます。成長をストック化させていくためにファンのエンゲージメントを高めロイヤリティを向上するための取り組みを実施してきます。IPの属性の幅を広げるために従来以上に機能を強化し、他社IPやクリエイターを巻き込み、IPプラットフォームを構築していきます。
② マーケティング・営業戦略の見直しによるグローバルでEvergreenなIP化
当社グループが今後長期安定成長を図る上では、IPが外的要因に依拠したブームに左右されることから脱却し、当社IPの“ブランディングを変える”ことが重要と認識しております。特に海外ではボラティリティに耐える基盤がなかったことから、マーケティング・営業戦略を見直し、グローバルでEvergreenなIP化を実現してまいりたいと考えております。EvergreenなIPとは、「常緑樹のように季節が変わっても長期間にわたって色あせることなく人々に必要とされ続けるIP」を指しており、当社のIPが外的要因のブームに左右されない、市場の中で常に認知や好意度が新鮮で維持され続ける状態を創ることを通じて市場の環境変化に耐える持続的なブランド価値を有するIPの育成に注力してまいりたいと考えております。“ブランディングを変える”取り組みとして、大型周年イベントなどの「グローバルコンテンツへの投資」や、動画配信チャンネルとの取り組みとして「グローバルプラットフォーマーとの連携」、グローバルのキャラクター横断マーケティングなどの「グローバル規模でのブランディング監修の強化」、海外各地域のニーズを起点とした「現地デザイン/現地クリエイティブの強化」を中心とする施策を実行してまいります。
③ グローバル成長基盤の構築
当社グループが今後長期安定成長を図る上では、北米地域や中国を中心としたアジア地域のさらなる事業拡大、現地マネジメントの強化、欧州市場の再成長、そして中東、東欧、インド、アセアン諸国、アフリカ及び中南米などの新規市場の開拓を実行していくことが求められます。海外展開の強化には、グローバルな視点によるマネジメント体制の構築、市場の変化に対応し当社の経営資本を適切にアロケートできる財務戦略及びグループガバナンスの確立が不可欠と考えております。
また、海外戦略の遂行を支えていく上で、「グローバル人材」「クリエイティブ人材」の創出といった「人的基盤の構築」、さらに、海外におけるM&Aや資本提携を含む非連続投資、またその投資を適正に測る仕組みをグローバルに導入し、当社に不足しているリソースを積極的に具備していく「攻めの財務とガバナンス」という大きな2つの成長基盤を構築することを課題として認識しております。
④ IPポートフォリオ拡充とマネタイズ多層化
当社グループでは、業績のボラティリティの主因を「海外におけるキティ構成比の高さ」「グッズ中心」という「価値提供の狭さ」にあると分析しており、ボラティリティの小さい長期成長の実現には、IPポートフォリオ拡充とマネタイズの多層化が不可欠であり、IPの提供価値の幅とマーケット/ターゲットの幅を拡げていく取り組みが必要と考えております。
IPの提供価値の幅を拡げていく取り組みに関しては、これまでの「グッズ中心」から、推し活等の付加価値提供、映像・ゲーム接点でのストーリー型IPの確立、教育・リアル体験等を通じたIP体験の創出といったグッズに依拠しない価値提供へと拡げていくことを考えております。
また、マーケット/ターゲットの幅を拡げていく取り組みに関しては、サンリオキャラクターのマルチIP展開の他、UGX*を活用した創作支援・二次創作関連事業の創出、マーケット起点の新規IP創造、キッズ・男児などの空白セグメントの開拓を進めてまいります。
上記を通じて創造とプロデュースの幅をさらに拡げ、IPポートフォリオとマネタイズの幅を拡げることを考えて取り組んでまいります。
*UGX: User Generated Xの略称:User Generated Content,User Generated intellectual propertyなどの総称
⑤ ダイバーシティ・マネジメントの活用
当社グループは130の国と地域にキャラクタービジネスを展開しており、今後もさらに地域を拡げていこうと考えております。また、キャラクタービジネスはお子様からお年寄りまで年齢に関係なくマーケットが拡がっており、ダイバーシティの考えに根差した商品開発と企業との密接な協業が必須となると考えております。一方で、地域・文化・思想で分断された戦略ではグローバルな人材の確保、商品の流れ、流行への迅速な対応が困難となります。そこで、グローバルに一体化した情報管理システムとダイバーシティ・マネジメントによるマーケティング体制と連結グループ経営の確立が必須と認識しております。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日時点において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、「人は一人では生きていけない」という創業当時からの思いのもと、お互いにおもいやりを持って、支え合い、助け合う心を大切にしております。また、サステナビリティに関する考え方として、『世界中をみんなの笑顔でつなぐ』∼Sustainability for Smiles∼を掲げ、私たちは世界中のすべての人と社会に寄り添う取り組みを通じて、次世代に続く笑顔を共創します。
当社グループは、全社横断的な視点からサステナビリティ方針の策定及びサステナビリティに関連するアクションの推進、モニタリングを実施することを目的として、サステナビリティ委員会を設置し、持続可能な事業活動に向けた議論を行っております。
また、10年先にわたる事業環境分析を行い、創出価値により解決に取り組んでいく重要課題「Well-Beingの充足」等と、ESGの観点で解決に取り組んでいく重要課題「地球環境への配慮」等、10の「サンリオ・マテリアリティ」を特定しました。事業活動の創出価値を最大化させるとともに、重要課題の解決に貢献し、世界中で笑顔が生まれる持続可能な社会の発展に貢献することを目指してまいります。「サンリオ・マテリアリティ」のアプローチについては、それぞれの項目にKPIを設定し、進捗を管理しております。
サンリオ・マテリアリティ(10の重要課題)
<「創出価値」の観点で取り組む重点テーマ>
<「ESG」の観点で取り組む重点テーマ>
当社グループは「みんななかよく」を企業理念としており、環境・社会問題、労働慣行・人権への配慮を含むサステナビリティは、長年に亘り重要視してきた経営課題であります。グループとして持続可能な社会の実現に貢献することを目的に、解決すべき10の重要課題「サンリオ・マテリアリティ」を特定し、企業価値向上の視点からも積極的に取り組んでおります。具体的には、当社グループのサステナビリティ経営への取組強化を目的として、委員長を代表取締役社長、経営戦略本部担当取締役を副委員長とする「サステナビリティ委員会」を設置しております(年4回)。営業部門等の担当役員、GM、グループ子会社社長等も含むメンバーで構成され、サステナビリティ課題の特定や見直しを始めとして、気候変動などの「環境問題」、ダイバーシティや労働環境・人権などの「社会問題」に関する施策・方針、取り組み状況などについて同委員会で定期的に議論を行っております。重要事項等については、経営会議での審議・議論を経て、取締役会へ報告されております(年4回)。なお、取締役会は、目標設定や取り組みの進捗状況等について監督の役割を担っております。
体制図

① サステナビリティ全般
当社グループは、ビジョン実現のための創出価値を「心を癒し、人と環境に寄りそう」「生活に楽しみを増やす」「人と人とをつなげる」「人々の自己表現を後押しする」「エンタメの力で社会課題を解決する」と定め、また、その価値創出の基盤として「価値創造を行うヒトそのもの」「異なるバックグラウンド・ケイパビリティのヒトによる共創」を重要視しております。そして、それらの創出価値を持って対処していくべき重要課題(マテリアリティ)を「Well-Beingの充足」「クリエイティブの民主化」「子どもの教育水準の向上」、「国境・世代を超えた社会のつながり強化」「社内外のヒトへの投資」「ダイバーシティの実現」と定め、創出価値の拡大と重要課題の解決に貢献するための取り組みを推進しております。
② 気候変動
当社グループは、TCFD提言に沿ってシナリオ分析などを行い、気候変動にともなうリスクと機会を特定しています。2023年のシナリオ分析では、2035年時点における「脱炭素へ向けた移行リスク・機会」「気候変動の進行による物理リスク・機会」それぞれについて影響度評価を実施しました。
(影響度評価に用いたシナリオ)
③ リスクと機会
移行リスクについては、炭素税の導入や温室効果ガス(GHG)排出規制の強化、再エネ賦課金の負担増加、エネルギーコストの上昇などによって、施設・店舗の運営やサプライチェーンなどにおける財務負担が増加する可能性があると分析しています。また、物理リスクについては、異常気象が増加することで施設・店舗の被害や営業機会の損失が生じる可能性があると分析しています。
一方、機会については、「サンリオピューロランド」のような屋内型テーマパークは、異常気象増加の影響を受けにくいため、競争優位性が向上する可能性があります。また、ショップ展開、商品、デザイン、ライセンスビジネス、価値体験ビジネス、それらを包括するエンターテイメントビジネスすべてにおいて、時代に対応し、先進していくことで、気候変動を含む社会的変化へのレジリエンスが高い組織をつくり競争優位性を向上させられるよう努めていきます。
サンリオグループに影響を与える主要な気候変動リスク
④ 生物多様性への対応
当社は、生物多様性の重要性および生物多様性への負荷軽減に取り組む必要性を把握しています。報告年度において生物多様性関連課題のガバナンス構築に至っておりませんが、今後の課題として認識しています。
⑤ リスク管理
当社は、環境、災害、品質、情報セキュリティ、輸出入管理といった事業全般に関わるリスクマネジメントとコンプライアンス領域を全社ベースで統合的に管理することを目的として、内部管理本部長を委員長とする「サンリオ合同コンプライアンス委員会」を設置し、当社グループにおけるリスク対応を強化しています。
当社は、気候変動に起因する移行リスクならびに物理的リスクが、環境面のみならず経済面や事業運営面に影響を与えうることを認識しています。これらを含むサステナビリティに関わるリスクについては、「サステナビリティ委員会」でもモニタリングを実施しており、対応が必要なリスクが発見された場合はサンリオ合同コンプライアンス委員会と連携して対策を検討・実施することとしています。今後もサンリオ合同コンプライアンス委員会とサステナビリティ委員会が連携の上、事業面に及ぼす影響を評価・分析し、そのリスクを管理する体制の構築に努めます。
環境データ
(注)1. 株式会社サンリオ、株式会社サンリオエンターテイメント、三麗鷗(上海)国際貿易有限公司、Sanrio, Inc.にて集計しております。
2. 燃料・電力使用量が不明な場合、電力使用金額から使用量を推計し、使用金額も不明な場合、延床面積から算定を行っております。
3. 電力使用量の分かる拠点は、ロケーション基準にてScope2を算定した結果を集計しております。
4. 三麗鷗(上海)国際貿易有限公司、Sanrio, Inc.はScope1,2のみ算定し、集計に含めております。
⑥ 人材の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略
私たちは「One World,Connecting Smiles.」というビジョンに基づき、一人でも多くの人を笑顔にし、幸せの輪を広げていきます。そのためにも従業員一人ひとりがキャリアを通して成長し、自分らしく働くことが出来る職場環境を実現します。
中期経営計画で掲げるグローバル成長基盤の構築を目指して、強固な人的基盤を整備するべく、人材への投資を継続して参ります。具体的には、人材育成とDE&I推進を重要な軸に据え、人材育成に関しましては、グローバル×クリエイティブ人材を創出するべく、戦略的ジョブローテーションの設計、研修プログラムの高度化、海外との人材交流の強化等を計画、実行していくことで、人材育成に向けた幅広い機会を提供してまいります。また、DEI推進に関しましては、一人ひとりの主体的な成長を促進するべく、多様なキャリアや働き方を支える制度、環境を整備することで、キャリアパスの明示、多様な働き方を可能にする制度の充実化を実現することで、中期経営計画で掲げる上級管理職の女性比率の達成等を進めてまいります。
当社は、リスクを全社的観点から管理する会議体として、委員長(内部管理本部長)1名、副委員長(経営管理本部長)1名、社外取締役1名、社外監査役1名、社外弁護士1名で構成されるサンリオ合同コンプライアンス委員会を設置しています。各年度初に、当社において発生しうるリスクを社内外からの情報、内部監査室の監査結果等から洗い出し、その重要性及び発生可能性、財務報告に与える影響度合い等を分析して評価し、リスク対応策を構築しています。同時に、リスクの大小を俯瞰的な視点で閲覧、比較、理解できるようにする為に、全社リスクマップの作成及び更新を行っています。
サンリオ合同コンプライアンス委員会の下部組織として、IT委員会、商品安全対策委員会、防火防災委員会等を設置しています。いずれの委員会も原則として年4回定例会を開催し、社内リスクに関するモニタリング、対応、管理を行っています。また、コンプライアンス室がサンリオ合同コンプライアンス委員会の事務局として、日々のリスク対応を担っています。
コンプライアンス室によって各部署に配置されているコンプライアンス担当者は、自部署のビジネスにおいてリスクを発見した際は、当該部署の担当役員と対応を検討、実施し、サンリオ合同コンプライアンス委員会に報告する仕組みになっています。全社的な対応が必要なリスクについては、サンリオ合同コンプライアンス委員会が関係各部と連携してリスクに関する情報を収集し、必要に応じて経営会議や取締役会における意思決定に繋げます。
コンプライアンス担当者は、各部署におけるリスクの網羅的な洗い出しに協力し、またリスク対応の構築が不十分であれば対応策の強化を行う等、リスクマネジメントの主体として活動します。このようにリスクマネジメント活動のPDCAサイクルを回すと同時に、リスクマップも最新状態にアップデートされています。
これらの本社内で実施しているリスク管理態勢を、海外を含む当社グループ全体に拡張していくための体制整備を行っています。
当社は、気候変動に起因する移行リスク並びに物理的リスクが、環境面のみならず経済面や事業運営面に影響を与えうることを認識しています。これらを含むサステナビリティに係わるリスクについては、サステナビリティ委員会でもモニタリングを実施しており、対応が必要なリスクが発見された場合は、サンリオ合同コンプライアンス委員会と連携して対策を検討・実施します。
海外を含むグループ会社は、それぞれ年2回リスク管理会議を開催しています。本社から最新のリスクに関する情報を共有すると共に、グループ会社における固有のリスクと対応について検討しています。各社からのリスク管理会議議事録は、サンリオ合同コンプライアンス委員会に共有されます。
内部統制委員会は、金融商品取引法に基づき当社グループ全体の財務報告に係わるリスクと統制について毎年評価を実施し、取締役会に報告しています。
内部監査室は、海外を含むグループ会社および本社内の各部門を対象とした監査、或いは、テーマを設定した監査を実施することによって、内在するリスクと統制について独立・客観的な評価を実施し、改善点があれば監査対象部門に対して勧告しています。監査結果は、サンリオ合同コンプライアンス委員会を通して取締役会にも報告されます。
中期経営計画の成長戦略に沿って、当社は教育、ゲーム並びにデジタル分野をはじめ、新しいビジネスにチャレンジしています。これに伴い、これまで経験がないビジネスにおけるリスクを検知し、理解する必要性が高まっています。ノウハウや要員を増強しつつ、必要に応じて外部のリソースを有効に活用しながら、今後もリスクマネジメントを徹底していきます。
① 気候変動
本社物販事業においては、厳格な在庫管理や廃棄の削減を進めることで二酸化炭素の排出削減を実現し、廃棄額に関しては、2025年3月期までに2021年3月期対比で80%以上削減する目標を掲げ、90%超の削減を達成しました。また、当社は、2027年3月期末を目標年度とする温室効果ガス(GHG)排出量の削減目標を設定しています。
そして、今後サステナブルに「One World, Connecting Smiles.」を達成すべく各種ステークホルダーと協業し、2027年3月期末までに、Scope1-2にかかるGHG排出量を2019年3月期比から60%削減し、2027年3月期末までに、Scope3にかかる売上高あたりのGHG排出量を2019年3月期比から10%以上削減することを目指しております。
② 人材の育成及び社内環境整備に関する方針に関する指標の内容並びに当該指標を用いた目標及び実績、指標及び目標
当社は、前中期経営計画にて、女性管理職比率の目標であった43%を達成し、現中期経営計画では、最終年度である2027年3月末までに、上級管理職(執行役員、GM)の女性比率30%以上を目標として掲げております。本目標は政府目標であるプライム市場上場企業の女性役員比率目標30%以上を達成するための先行指標として、役員候補となる上級管理職層の女性比率を30%以上とし、内部から女性役員を育成・登用することを企図して設定しました。提出会社の役員の登用に関わる指標であるため、目標及び実績共に提出会社の数値を記載しております。
(女性活躍推進目標)
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) キャラクタービジネスについてのリスク
当社グループの売上高の大半はキャラクターに関連しております。当社グループの業績は、キャラクター及びそれを用いた商品の人気及び需要に依存しており、また、日本における「推し活」をはじめ、当社グループが事
業を展開する各国、各地域における消費者の嗜好及び消費パターンの変化の影響を受けます。当社グループは、日本におけるサンリオショップの展開のほか、IP価値の向上につながるライセンシーやパートナーシップを通してブランディングを行う「価値創造サイクル」等、市場に応じた戦略を通じて世界中の消費者に当社グループのキャラクター及びそれを用いた商品が普及するよう努めていますが、それらの戦略が奏功する保証はありません。
また、当社グループの『ハローキティ』を中心とする少数のキャラクターへの依存度は依然として高く、また、当社グループのキャラクターは、女性に人気が集中していることから、主要キャラクターの人気の低下、女性の間での認知度の低下・購買行動の変化、主要市場における長期的な人口動態等が、当社グループの財務状態や業績に影響を与える可能性があります。
当社グループのキャラクタービジネスは、各事業において競合他社及びその商品・キャラクターとの間で激しい競争に晒されております。当社グループは、他社のキャラクターとのコラボレーション等の戦略も展開し、当社グループのキャラクターの認知度向上を図っておりますが、このような戦略が奏功する保証はありません。さらに、キャラクタービジネスは参入障壁が低く、他社のキャラクターがSNSをはじめとするデジタルメディア等を用いて急速に人気を獲得し、その結果、当社グループのキャラクターの人気が低下する可能性があり、当社グループの財務状態や業績に影響を与える可能性があります。また、当社グループは、キャラクターを用いて新たにゲーム事業、デジタル事業及びエンターテイメントと教育をかけあわせたエデュテイメント事業にも進出しております。これらの事業における競争は激しく、競争環境も異なるため、当社グループが成功を収められる保証はなく、外部への委託費用を含めた開発等に係る費用及び投資を回収できず、当社グループの財務状態や業績に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 市場リスク
当社グループは、グローバルに事業展開していることから、当社グループのキャラクターを用いた商品を製
造・販売している各国、各地域の経済状況の影響を受けます。顧客にとって当社グループのキャラクターを用いた商品は、日常生活において必ずしも必要不可欠のものではないので、景気低迷やインフレーション等の消費者の可処分所得に影響を及ぼす経済状況の変化等、様々な市場の影響を受けて売上高が変動することがあります。
また、当社の日本における物販事業や国内ライセンス事業の成長は、円安等を背景としたインバウンド需要の拡大が貢献していますが、このようなインバウンド需要の拡大傾向が続く保証はありません。加えて、燃料費や原材料費、人件費の高騰等の経済状況の変化が、当社グループのキャラクターを用いた商品の製造又は運搬等に係るコストの増加をもたらすことにより、当社グループの財務状態や業績に影響を及ぼす可能性があります。
(3) 経営戦略及び経営計画についてのリスク
当社グループは、2024年5月に2027年3月期までの3年間の経営戦略及び経営計画を定めた中期経営計画を策定し、これに基づき各種施策を実行し、企業価値向上に取り組んでおります。
しかしながら、当該中期経営計画の前提とした経済や市場の状況の変化、当社グループが所期したコストコントロールや効率性の未達成、他社の動向等当社グループがコントロールできない事象の発生、その他本「事業等のリスク」に記載された事項を含むリスク要因の発生等により、当社グループがこれらの施策を実行できない可能性や、計画を達成できない可能性があり、また、当社グループが当該中期経営計画とは異なる内容で事業戦略の調整等を行う可能性があります。
(4) 新キャラクター開発力及び人材の確保等事業リスク
当社グループは、キャラクターの開発、育成にあたって、短期の爆発的な人気を追うことよりも、長期的に安定した人気を得る方針で、経営を行っております。また、当社グループは、常に新キャラクターの開発のための努力を重ねるとともに、既存キャラクターへの投資や各国、各地域の趣向に合わせたキャラクターのローカル化、ゲーム等の従前とは異なるデジタル媒体でのストーリー型IPの創出にも力を入れております。しかしながら、これらの施策が成功するとは限らず、また、各キャラクターの人気には移り変わりがあり、それに伴い既存キャラクターの人気を維持できない、又は新キャラクターの人気を獲得することができない可能性があり、そのことにより当社グループの財務状態や業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループのキャラクター開発は、原則として当社グループの社員が担当しております。そして、開発されたキャラクターは、当社グループ各部門の協力を得て市場に出ることとなります。この場合、著作権は全て当社グループに帰属します。当社グループは、キャラクター開発部門をはじめとする重要な人材の安定的な雇用に向けて、各種のインセンティブを付与する等万全を期しておりますが、雇用を長期に亘って持続できるとは限りません。また、特に海外における賃金上昇等に伴い、キャラクター開発に係る人材をはじめとする人材等の獲得競争は国内外で激しさを増しており、当社グループは優秀な人材を獲得し、雇用を持続することができない可能性があります。それらにより、当社グループのキャラクター開発力が低下する可能性があります。また、当社グループにおける豊富な経験やノウハウを有する従業員が他社に移籍することにより、他社との開発競争に不利な影響を及ぼす可能性があります。
(5) 海外事業展開についてのリスク
当社グループは、グローバルに事業を展開しているため、当社グループの各事業は、その事業を展開する各国、各地域における地政学リスクの影響を受けることに加え、商慣習、言語、文化等の違い、法規制若しくは輸出入規制等様々なリスクがあります。当社グループは、その成長戦略の一環として、特に中国及び北米において事業の拡大を目指しておりますが、当社グループのそのような戦略が成功を収める保証はありません。中国においては、アリババグループのアリフィッシュに当社グループのキャラクターにおける商品の製造・販売に関する独占的ライセンス権を付与しておりますが、事業拡大が成功する保証はなく、また、中国における景気減速や競争の激化、台湾・南シナ海における緊張関係の激化、輸出入規制等により、当社グループの中国における売上が減少する可能性があります。北米においては、専門店や量販店、ディスカウントストアにおいて商品を販売するライセンシーとパートナー関係を構築して、キャラクターの認知度向上を目指しております。しかしながら、当社グループのキャラクターを用いた商品がそれらの店舗において販売されず、また、ライセンシーと当該商品の販売を維持・拡大するために必要な関係性を維持できない等の可能性があります。これらのリスクが顕在化した場合には、当社グループの財務状態や業績に影響を与える可能性があります。
(6) 為替リスク
当社グループは、2025年3月期の物販事業における商品の製造の8割程度を中国を中心とした海外に委託しております。一方、当社グループの2025年3月期の海外売上高比率は約3割であり、売上総利益の3割程度が海外地域で発生しております。そのほとんどは海外子会社におけるライセンス事業によるもので、その海外子会社の連結決算過程、またその他本社の外貨建て収支計上において為替変動の影響を受けております。このため外貨収支予測をして債権債務のポジション調整をしておりますが、これにより為替リスクを完全に回避できるとは限らず、また連結財務諸表の作成にあたって適用される為替換算レートにより、海外連結子会社の売上高、売上原価、販売費及び一般管理費等連結財務諸表の各項目について、換算上の影響が生じます。また、円高が進行した場合、インバウンド需要が減退し、日本における物販事業や国内ライセンス事業の売上高に悪影響を及ぼす可能性があります。これらによって、当社グループの財務状態や業績に影響を与える可能性があります。
(7) 需要予測及び季節性についてのリスク
当社グループ及びそのライセンシーは、消費者の需要に応じた適切な商品の供給を実現するために必要な在庫を予測する必要があります。特に、例年年末商戦前の10月から12月にかけては、当社グループのキャラクターを用いた商品の販売量が増加しますが、これに対応するために商品の製造又は購入に運転資本が必要となり、需要に見合った供給を確保するために正確な需要の予測が必要となります。そのような需要の予測に失敗した場合、潜在的な販売機会の喪失や過大な在庫によって当社グループの利益を減少させるなど、当社グループの財務状態や業績に影響を及ぼす可能性があります。また、このような時期に、テロ等の個人の消費行動に影響を与える事態が生じた場合や、ストライキ等の商品の製造・輸送に影響を与える事態が発生した場合には、当社グループの財務状態や業績に影響を及ぼす可能性があります。
(8) 災害、事故等テーマパークについてのリスク
当社グループは、国内2箇所でテーマパークを営業しており、テーマパーク事業の営業利益はこれらのテーマパークが担っています。人口減少や高齢化、インバウンド観光客の減少等による来場者数の減少のほか、各テーマパークにおいて地震等の災害による休園や、アクセスに用いられる公共交通機関の運休、屋外テーマパークであるハーモニーランドにおいては悪天候や猛暑といった事態が発生した場合には、テーマパークにおける売上が減少し、当社グループの財務状態や業績に影響を及ぼす可能性があります。
テーマパークは当社グループのキャラクター及びブランドを発展させるための消費者とのタッチポイントとしても重要であり、当社グループは、テーマパークの安全性を慎重に維持・管理しておりますが、災害や事故、食品の安全や品質に関する問題による人身への被害が起こる可能性があります。当社グループは、施設における耐震性確保等安全管理には万全を期しておりますが、予測不能な事態に対しては対応できるとは限りません。これらの事象がメディアの注目を集めたり、ソーシャルメディアで取り上げられた場合には、当社グループのブランドやレピュテーションが毀損するとともに、来場者数の減少等を通じて、当社グループの財務状態や業績に影響を及ぼす可能性があります。
(9) 不良品発生リスク
競合他社との価格競争に対抗すべく商品調達コストの削減をめざして、当社グループは、国内のみならず、中国を中心とした海外メーカーにも商品の製造を委託しております。各メーカーに対しては、当社グループ指定の品質基準に従って製造・検品を行い、且つ商品部を通しての安全性や品質向上に向けて最善の注意をいたしております。しかし、不測の品質上の問題が発生した場合には、製造物責任等を負う可能性があり、リコールや交換等のための費用や負担、ブランド力やレピュテーションの低下等の影響による売上高の減少、行政機関による監督上の措置、安全性や品質テストの追加等、競合他社より競争上不利な立場に置かれることなどにより、当社グループの財務状態や業績に影響を及ぼす可能性があります。
(10) 知的財産権についてのリスク
当社グループにとって、キャラクターに係る著作権や商標権等の知的財産権は極めて重要です。当社グループは、競業他社と差別化を図り優位性を保つため、知的財産権の確保及び保護のための体制を整備しております。しかしながら、知的財産権の保護期間の経過や、第三者から知的財産権の侵害を受ける可能性は排除できません。特に、第三者の模倣品によって正規品の販売機会を喪失したり、模倣品が正規品と誤認されることで、当社グループのブランド及びレピュテーションが毀損されるおそれもあります。当社グループは、第三者による知的財産権侵害への対策を強化していますが、これには多額の費用を要し、また、そのような対策が奏功する保証はありません。これらによって、当社グループの財務状態や業績に影響を与える可能性があります。
また、当社グループは、第三者の知的財産権に対する侵害を防止するよう努めておりますが、第三者から知的財産権の侵害を理由とする訴訟が提起され又はクレームを受ける可能性は否定できず、そのような場合には防御に多大なコストがかかり、また、キャラクターの使用の差止めや不利なライセンス契約の締結のほか、多額の賠償責任やレピュテーションへの悪影響のおそれもあり、当社グループの財務状態や業績に影響を与える可能性があります。
(11) ブランド等についてのリスク
当社グループは、そのブランド及びレピュテーションを維持し強化することが、顧客の維持・獲得や人材の確保にあたって重要であると考えております。しかしながら、当社グループのブランド及びレピュテーションは、顧客との紛争やマネジメント・従業員・コラボレーション先の行為等により毀損される可能性があるのに加え、ソーシャルメディアにより当社グループに関する否定的な見解が広範囲に広まるリスクがあり、一度毀損されたブランド及びレピュテーションの回復には多大な費用及び時間を要します。また、当社グループの事業においては、キャラクターのイメージが特に重要ですが、これらの結果、当社グループのブランドやレピュテーションのみならず、キャラクターのイメージが毀損する可能性もあります。これらの場合、価格競争力、新規顧客の獲得や既存顧客の維持、パートナー関係の維持・構築、人材の確保等に支障をきたすなど、当社グループの財務状態や業績に影響を与える可能性があります。
(12) 感染症等による偶発的リスクについて
当社グループでは、日本全国に店舗、東京都あきる野市に物流拠点、そして、東京都多摩市と大分県にテーマパーク、海外各地にも拠点となる子会社が存在しているほか、販売先、ライセンス契約先、そのお取引先についても、日本全国及び海外に広がっております。そのため、大地震や豪雨、竜巻等の自然災害や疫病が想定を超えて発生した場合、人的被害、設備の損壊、電力・水・ガス等の供給停止、交通や通信の停止、サプライチェーンの被害等により、取引先への商品・製品の出荷遅延や停止等、また取引先の一時的な営業停止等により、当社グループの財務状態や業績に影響を及ぼす可能性があります。また、取引国間での紛争の発生や、天候不順や自然災害の発生、世界中に感染が拡大した新型コロナウイルス感染症のような新種の疫病発生に伴い、政府による行動制限や社会的な混乱、心理的要因により、消費者の消費行動や購買内容に重大な変化が生じた場合、当社グループの財務状態や業績に影響を及ぼす可能性があります。さらに、それらの影響による将来の収益見込の悪化等により固定資産の減損等が発生し、当社グループの財務状態や業績に影響を及ぼす可能性があります。
(13) M&Aリスク
当社グループは、当社グループのビジネスを補完・拡大し、更なる事業成長を遂げるために、M&Aや提携等を実施する可能性があります。M&Aや提携等の実施に際しては、その過程で様々な費用が生じますが、M&Aや提携等が成立する保証はなく、成立したとしても実施後のビジネスの統合が成功裏に達成される保証はありません。M&Aや提携等の成立後に想定外の問題が発見されたり、当初想定していた収益水準を達成できない可能性もあります。これらの場合には、当社グループの財務状態や業績に影響を及ぼす可能性があります。
(14) 固定資産の減損についてのリスク
当社グループでは、事業の用に供する設備や不動産をはじめとする様々な有形固定資産及び無形固定資産を所有しております。今後減損の兆候が認められ、固定資産の減損損失の計上が必要となった場合には、当社グループの財務状態や業績に影響を及ぼす可能性があります。
(15) ライセンシーその他の第三者との関係についてのリスク
当社グループは、ライセンス契約に基づきライセンシーから受領するロイヤリティが、その収益の重要な部分を占めております。もっとも、当社グループはライセンシーによる商品のマーケティングや販売量をコントロールする権利を限られた範囲でしか有していません。そのため、ライセンシーが商品開発を積極的に行わず、また、開発した商品のマーケティングや販売を十分に行わない可能性があります。また、ライセンシーによるライセンス契約への違反等により、当社グループが受領するロイヤリティが減少する可能性もあります。これらの場合には、当社グループの財務状態や業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループはゲーム事業を開始するなどデジタル分野へ進出していますが、ゲーム等の開発及び配信において、コンテンツ制作者やスタジオ、外部クリエイター等の第三者に依存しております。これらの第三者が当社グループの業務を継続せず若しくは減少させた場合又は当社グループに不利な条件を要求した場合、当社グループの財務状態や業績に影響を及ぼす可能性があります。
さらに、当社グループ及びそのライセンシーの販売する商品の製造・輸送が、経済的、政治的又はその他の要因により妨げられたり、遅延したりした場合、代替供給源が確保されるまでの間、当社グループの事業に悪影響が及ぶ可能性があります。また、当社グループの物販事業は、その販売する商品の全ての製造を第三者に委託しており、特に中国を中心として海外に8割程度の商品の製造を委託しておりますが、当社グループが製造委託先の変更を余儀なくされた場合、従前と同様の品質及び安全性を確保できるとは限りません。製造委託先が商品の安全性等に係る当社グループのポリシーに従わない場合、当社グループのブランド及びレピュテーションに影響を及ぼし、当社グループの財務状態や業績に影響を及ぼす可能性があります。
(16) 情報セキュリティ・技術インフラについてのリスク
当社グループでは、当社グループが保有する個人情報、顧客情報その他の機密情報の流出を防ぐため情報管理を徹底し、適切な情報セキュリティ対策を講じております。しかしながら、外部からのサイバー攻撃や不正アクセス等によってシステムダウンや情報流出等の事態が発生した場合には、個人情報保護法等の法令への違反、規制当局による制裁その他の措置、レピュテーションの毀損や顧客喪失のほか、復旧コストや損害賠償等の多額の費用負担が発生する可能性があります。また、当社グループの技術インフラに、人為的又はソフトウェア上のエラー等により障害が発生した場合には、当社グループの売上高の減少、法的責任の発生、レピュテーションの毀損、顧客満足度の低下等につながる可能性があり、これらの結果、当社グループの財務状態や業績に影響を与える可能性があります。
(17) 法規制及び訴訟リスク
当社グループが展開する各事業は、国内外で様々な法規制の適用を受けております。当社グループは、関連法令等の遵守に努めておりますが、これらの法令等に違反した場合には罰則、事業の停止、損害賠償請求訴訟その他の法的手段への対応を余儀なくされる可能性があります。また、当社グループは、事業の遂行上、訴訟や係争に巻き込まれる可能性もあります。その場合、対応に時間や人材を割く必要が生じるほか、多額の費用等が必要となったり、当社グループのレピュテーションを毀損したり、多額の損害賠償や事業運営方法の変更を余儀なくされる可能性もあるなど、当社グループの財務状態や業績に影響を及ぼす可能性があります。
(18) KPIについてのリスク
当社グループは、当社グループのキャラクターの人気や顧客のキャラクターとの接点を示すサンリオ時間等の指標を利用して、当社グループの成長のトレンドや業績を評価し、経営判断を行っております。かかる指標は、当社グループが合理的と考える方法により独自に算定したものであり、独立した第三者による監査等の対象にはなっておらず、不適切又は不十分である可能性があり、また、他社の類似指標との比較可能性があるとは限りません。また、当社グループは、市場における地位及び獲得可能な最大市場規模等を算出する目的で第三者が提供する市場データを利用していますが、かかるデータは第三者の調査に基づくものであり、不正確又は最新でない可能性があります。
(19) 内部統制についてのリスク
当社グループは、財務報告の適切性及び信頼性の確保のために、内部統制システムの適切な整備・運用を徹底しておりますが、当該内部統制システムのもとでも、当社グループの財務報告に重大な欠陥が発見される可能性は否定できず、また、将来にわたって常に有効な内部統制システムを構築及び運用できる保証はありません。更に、内部統制システムに本質的に内在する固有の限界があるため、今後、当社グループの財務報告に係る内部統制システムが有効に機能しなかった場合や財務報告に係る内部統制システムに重大な不備が発生した場合には、当社グループのレピュテーションや財務報告の信頼性に影響が及ぶ可能性があります。
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態の状況
当連結会計年度末の総資産は2,024億円で、前期末比463億円増加しました。資産の部の主な増加項目は現金及び預金285億円、売掛金87億円、退職給付に係る資産68億円です。
負債の部は947億円で前期末比36億円増加しました。主な増加項目は支払手形及び買掛金5億円、リース債務(流動負債及び固定負債合計)9億円、未払金62億円、未払法人税等34億円、契約負債14億円、流動負債のその他12億円です。主な減少項目は転換社債型新株予約権付社債27億円、長短借入金及び社債(1年内償還予定社債を含む)76億円です。
純資産の部は1,076億円で前期末比427億円増加しました。主な増加項目は、資本剰余金18億円、利益剰余金335億円、為替換算調整勘定33億円、退職給付に係る調整累計額30億円です。
自己資本比率は52.9%で前期末比11.5ポイント上昇しました。
② 経営成績の状況
当連結会計年度における我が国経済は、雇用・所得環境の改善に加えインバウンド需要の高まりにより、一部に足踏みが残るものの緩やかに回復いたしました。一方で、物価高への継続した懸念に加え、地政学リスクや世界経済の減速懸念など、依然として先行き不透明な状況が続いております。
このような状況のなか、当社グループは3ヵ年の中期経営計画「不確実な成長から、安定・永続成長へ」(2025年3月期~2027年3月期)に基づき、主要施策である「マーケティング・営業戦略の見直しによるグローバルでEvergreenなIP化」「グローバル成長基盤の構築」「IPポートフォリオ拡充とマネタイズの多層化」を推し進めてまいりました。また、複数キャラクター戦略の継続に加え、50周年を迎えた『ハローキティ』関連の様々な施策(2023年11月~2024年12月)を実行いたしました。
国内の店舗・テーマパークは、外国人観光客が大幅に増加したことに加え、Z世代を中心に国内客も増加し、売上高を押し上げました。国内外のライセンス事業は複数キャラクター戦略が好調に推移し、50周年の『ハローキティ』のみならず『クロミ』や『シナモロール』などの様々なキャラクターの人気も高まり、売上高の伸長に寄与いたしました。東京国立博物館表慶館で開催された「Hello Kitty展-わたしが変わるとキティも変わる-」(2024年11月1日~2025年2月24日)は、国内外から注目を集め、期間中には35万人を動員するなど連日多くの方にお越しいただきました。
なお、サンリオグループ共通の会員サービス「Sanrio+」の会員数は2025年3月末現在で約252万人となっております。
以上の結果、売上高は1,449億円(前期比44.9%増)と大幅に伸長いたしました。営業利益は518億円(同92.2%増)、経常利益は534億円(同89.1%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は417億円(同137.3%増)の大幅増益となり、各利益とも過去最高を更新しました。
なお、すべての海外連結子会社の決算期は1月~12月であり、当連結会計年度の対象期間は、2024年1月~12月であります。
セグメントの業績を示すと、次のとおりであります。
ⅰ.日本:売上高859億円(前期比24.7%増)、営業利益366億円(同85.4%増)
a. 国内営業本部(物販事業・ライセンス事業)
物販事業は、50周年の『ハローキティ』の様々な施策に加え、2025年1月以降は50周年の『マイメロディ』や20周年の『クロミ』の限定商品の展開が注目を集めるなど、人気キャラクターの周年施策が奏功し、来店客数が大幅に増加いたしました。また、外国人観光客によるお土産需要に加え、自家需要による購入も客単価を押し上げる要因となり、さらに、ここ数年取り組んでまいりました定番商品の自動発注化により供給体制が整い、売れ逃しの防止に努めたことも奏功いたしました。
ライセンス事業は、複数キャラクター戦略が好調に推移し、全カテゴリーにおいて前年実績を大きく上回る結果となりました。特に、50周年の『ハローキティ』に加え、『マイメロディ』と『クロミ』が注目を集めました。商品別でみると、インバウンド需要の高いお土産品や和柄物、他社人気キャラクターとコラボレーションしたアパレル、幅広い世代に人気のカプセルトイなどが人気を博しました。また、大手外食チェーンや食品メーカーのプロモーションとして様々なキャラクターをご活用していただきました。
営業損益は、売上高の大幅な増加により伸長いたしました。
b. テーマパーク
サンリオピューロランド(東京都多摩市)は、同施設最大の人気エンターテイメント「Miracle Gift Parade」や新たにオープンしたシアターアトラクション「シナモロールの小さな大冒険」(2024年7月)、台詞がなく海外の方も没入できるノンバーバルショー「びょんわぁ~beyond words~」(2024年12月)、人気アーティストとのコラボレーションなど様々なイベントが集客に寄与し、来園客数に加え、客単価も増加したことで、売上高が伸長いたしました。また、50周年の『ハローキティ』の人気継続に加え、『マイメロディ』と『クロミ』のアニバーサリーを記念したイベント「My Melody & Kuromi Anniversary Party」(2025年1月17日~2025年12月31日)もスタートし話題を集めております。
ハーモニーランド(大分県)は、「Magical Masquerade」(2024年9月13日~2024年10月31日)や「MERRY WHITE CHRISTMAS」(2024年11月15日~2024年12月31日)などのシーズンイベントが集客に寄与したものの、猛暑などの影響で客数が前期を下回りました。一方で、イベント関連商品が人気を集め、客単価を押し上げたことにより、売上高は伸長いたしました。
営業損益は、人員体制の強化や修繕などにより販売費及び一般管理費が増加したものの、大幅増収により営業利益は過去最高を更新いたしました。
ⅱ. 欧州:売上高62億円(前期比157.1%増)、営業利益16億円(同495.7%増)
ライセンス事業は、複数キャラクター戦略の継続に加え、グローバルブランドとの取り組みやローカルブランドへのアプローチにより、様々なカテゴリーで顧客層が拡大し、売上高が大幅に増加いたしました。イギリスやスペイン、北欧等におけるアパレルカテゴリーや、ヨーロッパ各地やオセアニアにおける玩具カテゴリーが好調に推移いたしました。
営業損益は、売上高の増加に伴い営業利益も拡大いたしました。
ⅲ. 北米:売上高274億円(前期比121.0%増)、営業利益88億円(同212.7%増)
ライセンス事業において、玩具、アパレル、ヘルス&ビューティーカテゴリーの売上高が大幅に伸長いたしました。玩具カテゴリーは、大手玩具メーカーによる『ハローキティ』50周年限定のぬいぐるみや、様々なキャラクターを活用したアドベントカレンダーが好調に推移いたしました。アパレルカテゴリーは、既存ライセンシーとの取り組みによりスペシャルティストア(専門店)に加え、マス市場(量販店など)向けも拡大いたしました。ヘルス&ビューティーカテゴリーは、人気ブランドとの継続的な取り組みや化粧品メーカーによる『ハローキティ』50周年限定商品が人気を集めるなど好調に推移いたしました。デジタルカテゴリーは、大手プラットフォームのゲームコンテンツを通じて、引き続き認知度向上に貢献いたしました。
また、大手百貨店による『ハローキティ』のポップアップショップ展開、玩具メーカーによるコンセプトショップオープン、プロスポーツリーグのMLB(野球)やNWSL(女子サッカーリーグ)とのイベント、新規カフェのオープンによる顧客接点の拡大など様々な施策を実施いたしました。
営業損益は、売上高の大幅増加により大きく伸長いたしました。
ⅳ. 南米:売上高17億円(前期比74.4%増)、営業利益5億円(同140.7%増)
南米全体では、ライセンス事業において、アパレル、ヘルス&ビューティー、文具、バッグ、企業特販カテゴリーが好調に推移いたしました。
メキシコは、衛生商品と香水が人気を博したヘルス&ビューティーカテゴリー、子供向けのノートや色鉛筆セットなどが注目を集めた文具カテゴリーが好調に推移いたしました。ブラジルは、アパレルやヘルス&ビューティーカテゴリーなどが好調に推移いたしました。また、観光名所とコラボレーションするなど認知度向上に努めました。ペルーは、通学バッグの需要が引き続き好調に推移したバッグカテゴリー、『ハローキティ』デザインのデビットカードが好調に推移した企業特販カテゴリーが売上高を牽引いたしました。チリはノートなどの文具カテゴリー、ヘルス&ビューティーカテゴリーが好調に推移いたしました。
営業損益については、売上高の大幅伸長により営業利益が増加いたしました。
ⅴ. アジア:売上高234億円(前期比54.6%増)、営業利益67億円(同12.4%増)
中国は、ライセンス事業において、トイ&ホビーやアパレル・アクセサリー、家庭用品カテゴリーが好調に推移いたしました。また、複数キャラクター戦略の継続により、『クロミ』や『マイメロディ』、人気急上昇中の『ハンギョドン』が注目を集めました。物販事業は、新店舗オープンやECの新規チャネル開拓により、売上高が増加いたしました。
韓国は、ライセンス事業において、新規案件獲得が売上高の増加を牽引いたしました。特に大手通信会社が発売した『シナモロール』の子ども用携帯電話、『ハローキティ』とコラボレーションしたコスメアイテムが好調に推移いたしました。
台湾は、ライセンス事業において、企業特販、玩具、文具カテゴリーが好調に推移いたしました。また、複数キャラクター戦略が奏功し、『クロミ』や『ハンギョドン』の人気が高まり、売上高の伸長に寄与いたしました。
香港・マカオ地区は、ライセンス事業において、マカオの商業施設との取り組みが奏功した企業特販カテゴリー、人気アクセサリーとの取り組みが奏功したアクセサリーカテゴリーが、売上高の伸長に貢献いたしました。
東南アジアは、ライセンス事業において、雑貨ライセンシーとの複数地域展開により、玩具カテゴリーが好調に推移し、売上高の伸長に寄与いたしました。
営業損益については、各地域の売上高が大幅に伸長し増加いたしました。
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前連結会計年度末より343億円増の1,022億円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、408億円の収入(前期比186億円の収入増)となりました。これは、税金等調整前当期純利益が554億円(前期比268億円増)、減価償却費が23億円(前期比4億円増)、その他の負債の増加額が64億円(前期比33億円の収入増)であった一方、投資有価証券売却損益の利益が24億円(前期は12百万円の損失)、売上債権の増加額が76億円(前期比29億円の収入減)、法人税等の支払額が134億円(前期比87億円の支出増)であったことなどによるものです。
投資活動によるキャッシュ・フローは、82億円の収入(前期は34億円の支出)となりました。これは、定期預金預入払戻の差である74億円の収入(前期は11億円の支出)、投資有価証券の取得売却による差額33億円の収入(前期比24億円の収入増)に対し、有形固定資産の取得売却の差額24億円の支出(前期比7億円の支出増)であったことなどによるものです。
財務活動によるキャッシュ・フローは168億円の支出(前期は157億円の収入)となりました。これは、長期借入金の返済による支出が75億円(前期比12億円の支出減)、配当金の支払額81億円(前期比47億円の支出増)、財務活動その他の収支による10億円の支出(前期比3億円の支出増)などによるものです。
④ 販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
ⅰ. 経営成績の分析
(売上高)
当連結会計年度における売上高は、前連結会計年度に比べ449億円増加し、1,449億円(前期比44.9%増)となりました。売上高に占める報告セグメント別の割合は、日本が59.3%(前期比9.7ポイント減)、欧州が4.3%(同1.9ポイント増)、北米が19.0%(同6.6ポイント増)、南米が1.2%(同0.2%増)、アジアは1.62%(同1.1ポイント増)となりました。なお、報告セグメント別の経営成績の分析については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ② 経営成績の状況」に記載しております。
(営業利益)
当連結会計年度における営業利益は、518億円(前期比92.2%増)となりました。主な増加要因としましては、全てのセグメントにおける売上高の増加によるものと、原価率の低減等によるものであります。
(経常利益)
当連結会計年度における営業外収益は、受取利息13億円、投資事業組合運用益1億円等を計上したことにより、21億円(同11.3%増)となりました。営業外費用は、支払利息1億円、支払手数料1億円、増値税等1億円等を計上したことにより、5億円(同18.2%減)となりました。
以上の結果、経常利益は、534億円(同89.1%増)となりました。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
当連結会計年度における特別利益は、投資有価証券売却益24億円等を計上したことにより、24億円(同320.2%増)となりました。特別損失は、減損損失3億円等を計上したことにより、4億円(同117.1%増)となりました。
以上の結果、親会社株主に帰属する当期純利益は、417億円(同137.3%増)となりました。
ⅱ. 財政状態の分析
当連結会計年度における財政状態の分析につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ①財政状態の状況」に記載のとおりであります。
ⅲ. キャッシュ・フローの分析・検証内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきましては、次のとおりであります。
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、商品の仕入れのほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、設備投資及び戦略投資等によるものであります。
当社グループは、事業運営上必要な資金の流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としており、運転資金は自己資金、金融機関からの借入及び社債を基本としております。
なお、当連結会計年度末における借入金及び社債、転換社債型新株予約権付社債を含む有利子負債の残高は402億円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は1,022億円となっております。
契約会社名:㈱サンリオ(当社)
契約会社名:Sanrio,Inc. (在外連結子会社)
契約会社名:Sanrio Do Brasil Comercio e Representacoes Ltda. (在外連結子会社)
契約会社名:Sanrio Wave Hong Kong Co.,Ltd. (在外連結子会社)
契約会社名:三麗鴎股イ分有限公司(在外連結子会社)
契約会社名:Sanrio GmbH (在外連結子会社)
契約会社名:三麗鴎(上海)国際貿易有限公司 (在外連結子会社)
契約会社名:SANRIO SOUTHEAST ASIA PTE.LTD. (在外連結子会社)
該当事項はありません。