第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営方針

当社グループは、「高い企業倫理観のもとで、真に社会に貢献できる企業となることを目指す」とする当社グループの経営理念に沿って、長年培ってきた独自のコア技術を更に強化するとともに、これら技術を総合的に活用して独自の事業領域を構築し、顧客に存在価値を認められる開発型企業としての位置づけを更に高めてまいります。

また、グローバルに通用する企業品質を心がけ、将来に向けた成長分野と市場で重点的な事業展開を行うとともに、未来を切り拓く次世代技術にも積極的にチャレンジしてまいります。

 

(2)経営戦略等

当社グループが長年関わってきた電子回路基板や自動車電装部品、更にはデジタル光学機器部品などを中心とするエレクトロニクス関連分野は、当社グループ独自のコア技術が特に活用でき、今後も成長が見込まれる重要分野と位置づけており、市場の拡大が期待できる海外新興市場や堅調な成長が続く北米や欧州市場などでの事業活動を積極的に推進してまいります。その中で、当社グループは、「メーカー機能」と「商社機能」を併せ持ちながら、それぞれの機能を相乗的に高め、複雑・多様な課題解決に向けて、適時・適切な提案を行ってまいります。加えて、事業領域を拡げる新たな市場の開拓や技術開発にも果敢にチャレンジして、共同開発やOEM製品の提供、更には受託製造といった「テクノロジーパートナー」としての存在価値を高め、企業の社会的責任を果たしてまいります。

 

(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは、継続的な企業価値の増大を最も重要な経営課題として認識し、売上高営業利益率や総資産経常利益率といった事業や資本の効率性の指標を重視しながら、営業利益等の各利益金額の増加及びキャッシュ・フローの創出等を重要な経営指標として掲げております。

 

高付加価値製品の拡販や新製品の開発などを進展させつつ、グローバル展開を更に強化し、海外地域における事業活動を活発化させることで、今後とも経営指標の向上に向けて諸施策を実施し、業績の拡大及び企業価値の増大を図ってまいります。

 

(重視する経営指標等)

 

達成目標

実績

第78期

(当連結会計年度)

第77期

(前連結会計年度)

売上高営業利益率

4.0%

8.5%

6.7%

総資産経常利益率(ROA)

5.0%

9.4%

7.5%

自己資本比率

60.0%

65.1%

64.2%

海外地域売上比率

20.0%

29.8%

25.5%

 

(4)経営環境

当連結会計年度におけるわが国経済は、コロナ禍からの経済活動の正常化が進展し、雇用・所得環境が改善するなかで、各種政策の効果もあり、国内景気は回復の兆しを見せ始めている一方、海外では各国での金融引き締めや、ウクライナ侵攻問題の長期化によるエネルギー・資源価格の大幅な上昇、長期的な円安傾向、物価や金利の上昇、中東問題、中国の不動産不況などによる経済活動や個人消費への影響から、当社グループの経営環境は、先行き不透明な状況が続くものと想定しております。

当社グループは、人々の暮らしに直結した幅広い業界に関わっておりますが、なかでも、スマートフォンやデジタルカメラといった情報端末機器で代表されるエレクトロニクス関係業界や、IT化・自動化が一段と進展する自動車関係業界、更には、製紙や食品といった業界などに深く関わってまいりました。そうした業界では、経済のグローバル化やわが国の少子高齢化を背景として国内需要の縮小が進行し、そのため、事業の軸足を海外市場へと移行させております。これに加えて、とりわけエレクトロニクスや自動車の業界では、人々の価値観の多様化の進展に伴い関連する製商品やサービスに対する要求が複雑・高度化し、かつ、その変化のスピードが一段と速まっており、その結果として、競合各社間の競争が益々激しさを増す厳しい経営環境となっております。

(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当社グループは、業績の持続的な向上と社会への更なる貢献を目指して、社会が求める課題の解決や新たな価値の創造に取り組み、長年培ってきた経営資源をベースにして、事業の重点化と他社との差別化を重視した事業運営を積極的に推進してまいりました。

今後は引き続き、当社グループの経営方針に沿って、当社グループ独自の技術や情報を総合的に活用し、国内市場はもとより、グローバルな成長市場で積極的な事業展開を推進してまいります。とりわけ次に記載する事項は、当社グループが次のステージへと飛躍するために取り組むべき重要な課題と認識し、スピーディーな経営判断と各施策の着実な実施を通して成果を積み重ねながら、企業価値の向上に努めてまいります。

 

① 当社グループの経営資源を生かした新規事業領域の育成

当社グループの収益を高め、持続的な成長を果たしていくためには、当社グループの強みを生かした既存事業の強化は勿論のこと、特長ある新たな事業領域の開拓が不可欠です。

当社グループの中核事業である高機能材料事業では、例えば、長年深く関わってきた電子部品や自動車電装部品などの業界に加え、これまで培ってきた独自の技術や情報を活用して、新たに高速5G通信や半導体等の領域にもビジネスをスタートさせました。更に、安定した需要が見込まれる機能性食品、バイオマテリアルの素材を活用した化粧品、食品機能性材料を使ったアイスクリームを含んだデザート、産学連携で取り組んでいるバイオマテリアルの早期上市を目指しております。

こうした新たな事業領域を切り開くための開発の芽を今後も積極的に育てながら、かかる芽を事業の1つの柱となるまで大きく成長させていくことが急務であります。

そのためには、次代を担うグローバルな人材を積極的に登用・育成し、社会が直面する様々な課題の解決能力を強化しながら、一方では、社内の経営資源のみに頼ることなく、他企業との連携や産学連携、更にはM&Aといった様々な選択肢も視野に入れながら、引き続き積極的なチャレンジを続けてまいります。

 

② 経済のグローバル化に対応した独自の情報・生産・物流網の強化

経済のグローバル化とともに、当社グループの主要な取引先も生産拠点を海外の成長市場へと積極的に移転を進め、これに呼応して当社グループも、取引先からの様々な要望に適切に応えていくため、グローバルなサプライチェーンの構築に鋭意努めてまいりました。

その結果として、当社グループの当連結会計年度の海外地域売上高は、連結売上高の29.8%を占めるまでに成長し、海外市場の重要性が一段と高まっております。当社グループが得意とする自動車電装部品の業界や様々な電子部品の業界は、まさしく世界規模でのビジネス活動を展開しており、かかる業界の需要をよりグローバル視点で的確に捉え対応していくため、当社グループは2018年12月にはオランダに、2019年2月にはベトナムに新たな拠点を構築し、また、2020年7月にはシンガポールに海外事業の資本再編を目的とした中間持株会社を設立し、当社グループの発展に生かすべく活動を始めました。

今後は、当社グループが持つこうしたグローバル拠点を通じて、海外市場の様々な情報をスピーディーかつ的確に把握し、各市場の潜在的なニーズも掘り起こしながら、顧客の課題解決に応えるサプライチェーンを構築して、引き続きその機能強化に努めてまいります。

 

③ 当社グループの競争力を高め社会への貢献に資するガバナンス体制の強化

政府の成長戦略の一環として策定されたコーポレートガバナンス・コードが、2015年6月から上場企業に適用され、企業のガバナンスの重要性が益々社会に認識されるようになっております。しかしながら、企業の不祥事は様々な形で継続し後を絶つことがありません。企業の存立は様々なステークホルダーとの信頼の上に成り立っており、かかる認識に立脚した企業経営が益々求められております。

わが国企業の最近の不祥事発生事例では、とりわけ大企業におけるリスクマネジメントが注目を浴びており、発生の場は国内に留まらず、経営の目が届きにくい海外の子会社にも広く及んでおります。

こうした状況に鑑み、グローバルに事業を拡大している当社グループとしましては、引き続きグローバル視点でガバナンス体制の強化に取り組んでまいります。

当社グループが長年培ってきた良き経営理念を大切にし、役員自ら率先垂範してその経営理念を生かした行動を実践し、当社グループのあるべき姿と価値観を全社員が共有して事業活動ができるよう、経営者自ら様々なコミュニケーションに努めております。

当社グループは、引き続き社外取締役や社外監査役といった独立性の高い社外役員などによる経営監視のもとで、コーポレートガバナンス・コードの趣旨を生かした経営に努め、当社グループの持続的発展と企業価値の向上に資するガバナンス体制となるよう、今後も継続した改善に取り組んでまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)サステナビリティ

ガバナンス・リスク管理

当社は化学材料を取り扱う企業であるため、持続可能な事業活動を行うために、まずは地球環境への強い配慮が必要との立場から、国内全拠点でISO 14001の認証を取得し、全従業員が環境への意識を持つよう促しています。

当社グループのマザー工場である草加事業所では環境委員会を設置し、廃棄物排出量の削減や廃溶剤の再生利用などに取り組むほか、製品ごとに製造による環境負荷の程度を算出する仕組みづくりや省エネ機器への更新といった温室効果ガス削減にも取り組んでおります。

特に温室効果ガス削減への取り組みでは、事業所内に自家使用型の太陽光パネルを設置し、再生可能エネルギーの利用をはじめており、今年度は更に増設を実施してその利用増を図っております。また、事業所内使用量の98%を占める高圧電力については、非化石由来の原料を使用した電力を使用して、温室効果ガスの排出を削減しております。

事業に係わるリスクと機会については、各部門の重要案件を把握し、コーポレートマターとして経営層にて対応策を図っております。法令に係わる件については、最新情報を入手後速やかに関連部署に周知し、対応を行っております。

また全社的な取り組みとして、健康経営プロジェクトを立ち上げ、外部の専門機関と連携してラインケア研修を実施するほか、職場BGMを実施するなどして従業員の心身健康を高め、社会貢献できる企業となることを目指してまいります。

継続的な企業価値の増大と安定的な配当を実現する事がステークホルダーに対する使命と認識しており、そのために健全で透明性が高く公正な経営体制を構築し、監査役会及び内部監査部門の監視・監督のもとで迅速な意思決定を行うことでコーポレート・ガバナンスの充実を図っております。

 

(2)人的資本

戦略・指標及び目標

当社グループは人を重要な資産ととらえ、個人の能力伸長、働く環境の整備に努めております。

各部門においては、期首に教育訓練計画を立案、期末に結果を確認し、翌年からの計画立案の参考にしており、人事担当部署が主体となって、全社員対象の教育計画に加え、部門長、管理職、新任管理職別の教育プログラムを同様に策定しております。健康経営の一環として、職場環境の整備、ハラスメント撲滅活動、上司・部下とのコミュニケーションの取り易い環境づくりなどについてセミナー等も行っております。全社員対象のストレスチェックの結果を踏まえ、高ストレス部門に対しては経営層、人事担当部署及び対象部門がともに解決策を模索し、解決対応をしております。

子供を持つ、或いはこれからといった社員に対しては、育児・出産休暇を100%使用できる環境の構築に加え、二度目以降の出産に関しても同じ職場に復帰できる体制を整えております。父親に関しても、産後パパ育休及び育児休業も申し出があれば取得できる体制になっております。又、親或いは子の介護についても国の指針に準じ、必要な休暇を取得できる体制になっております。

女性の役員の登用については現在検討中であります。2024年度において、一般職から基幹職へと昇任した女性の割合は12.5%であり、4年以内にその割合を15%以上に増やす予定です。賃金に関し、性別での格差は無く、かつ昨年に比べラインマネージメントにおける女性活用を推進した結果、次のとおり昨年に比べ賃金格差が2%~3%減少となっております。

男女間賃金格差(男性の賃金に対する女性の賃金の割合) 全労働者89% 正社員87% パート97%

また有給休暇取得率は昨年同様高い比率で取得され、休みを取りやすい状況となっております。加えて、積立有給休暇制度を導入し、これまで以上に病気療養などでも長期有給休暇を取得できるようになりました。

一労働者の各月ごとの平均残業時間も約7.8時間と、仕事とワークライフバランスを取り易い結果になっております。更に、全ての部門において女性が活躍できる職場環境を構築するとともに、その中で女性は積極的に活動しており、当社の活動の重要な役割をはたしております。海外顧客、海外拠点へも出張ベースで訪問もしており、男女の区別はございません。又、外国籍の社員の登用も積極的に行っており、国内営業・事務等の職に就いております。

海外子会社においては、上述した指標の管理は行われていないため、指標に関する目標及び実績については当社のものを記載しております。

 

3【事業等のリスク】

当社グループの経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性のあるリスクは以下のようなものがあり、これらのリスクは投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項と考えております。それ故当社グループは、これらのリスクの発生の可能性を認識したうえで、発生の回避及び発生した場合の迅速な対応に鋭意努めてまいります。

なお、当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクが顕在化した場合に当社グループの経営成績等の状況に与える影響につきましては、合理的に予見することが困難ではありますが、リスクの顕在化の低減に向けて個別の施策を実施・検討しております。

文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)全般的事項

当社グループは、コーティング製品・高機能樹脂製品・ファインケミカルズ等の製造販売及び電子材料・機能性樹脂・製紙用化学品・食品素材等の仕入販売に係る業務を行っております。

製造販売については、競合他社との品質や価格の競争激化に加え、国際的な原油価格の市況や為替レートの変動等により当社グループの原材料の購入価格が上昇した場合、技術開発部門が研究開発の成果として販売先の要求や市場動向に合わせてタイムリーに新製品を投入できない場合、製品に欠陥が生じた場合等には、販売数量の減少、販売価格の下落及び製造原価の上昇により、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。

仕入販売については、販売先の業界及び最終製品を製造する業界全体の動向に加えて、当社グループの仕入先の生産供給体制により販売数量及び価格が変動する可能性があります。また、競合他社が同種品を廉価で販売したり、高機能・高付加価値の新商品を市場に新規投入する等によって価格競争が激化した場合、仕入先と販売先が直取引を行った場合等には、販売数量の減少及び販売価格の下落により、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。

上記以外に、国内の景気変動だけでなく海外における景気変動や政治情勢の変化、通貨価値の変動、社会的混乱、自然災害や火災等の災害、知的財産権をめぐる紛争・訴訟、情報漏洩による損害、製造物責任賠償、技術革新による研究開発変化、環境・リサイクル・食品の安全性等に係る当社グループの取扱製品・商品への規制を含めた法制度の変化等により、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。

 

(2)債権の回収可能性について

営業活動を通じた情報収集等による与信管理を行い、必要十分な債権管理は実施しておりますが、当社グループの取引先が債権の弁済に重大な問題が生じた場合等には、引当金の追加計上又は貸倒損失の発生により、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。

 

(3)特定の取引先への依存について

当社グループは、仕入販売に係る製紙用化学品(とりわけ紙塗工用バインダー)や回路基板材料用の電子材料及び機能性樹脂の一定割合を、特定の取引先から購入しております。

当社グループと回路基板材料用の電子材料及び機能性樹脂に係る特定の取引先とは、これまで長年に亘り緊密かつ良好な関係にあり、今後もこれまでの取引関係を維持・発展させていく方針でありますが、特定の取引先の今後の経営方針が当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

製紙用化学品につきましては、特定の取引先に該当する旭化成株式会社より、2025年5月27日付で事業撤退に係る発表があり、同社はSBラテックス事業に係る製品の販売を2027年12月に終了することとなりました。これに伴い、当社と同社との当該事業に係る取引が終了する見込みとなります。当社グループは同社及び販売先各社と協議を行い、様々な可能性を模索しながら、業績に与える影響を低減させる施策を検討してまいりますが、今後の対応次第では当社グループの業績及び財政状態に影響が生じる可能性があります。

「メーカー機能」と「商社機能」を併せ持つ当社グループは、その特性を活かして、顧客ニーズの把握に努めるとともに、ビジネスの差別化を図ること等で、新規顧客の開拓や、取り扱い製商品の多様化を推進し、収益基盤の安定化を目指しております。

 

(4)保有する有価証券の価格変動について

当社は、金融機関や取引に関連する会社等の株式等を政策的に保有しており、株式市場の動向や投資先企業の状況等によっては、当社の業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

 

(5)減損損失のリスクについて

当社グループの固定資産の時価が著しく低下した場合や収益性が悪化した場合には、固定資産減損会計の適用により減損損失が発生し、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

 

(6)繰延税金資産の回収可能性について

当社グループは、繰延税金資産に対して、将来の課税所得の予測等に照らし、定期的に回収可能性の検証を行っております。しかし、経営環境悪化に伴う事業計画の目標未達等により課税所得の見積りの変更が必要となった場合や、税率の変動を伴う税制の変更等があった場合には、繰延税金資産が減額され、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

業績等の概要

(1)業績

当連結会計年度におけるわが国経済は、雇用・所得環境の改善、各種政策の効果により、国内景気は緩やかな回復の動きがみられるものの、円安の進行による物価上昇や、金利の上昇などによる企業の経済活動や個人消費への影響が懸念され、海外では、欧米主要国の政策金利が高水準で推移したこと等により一時的な変動がありながらも円安基調となったことや、ウクライナ侵攻問題の長期化によるエネルギー・資源価格の大幅な上昇、長期的な円安傾向、物価や金利の上昇、中東問題、中国の不動産不況、米国の関税政策による下振れリスクなどの影響から、当社グループの経営環境は、依然として先行き不透明な状況が続くものと想定しております。

こうした状況下で当社グループは、引き続きグループの特長を生かした事業運営とスピーディーな経営判断を心がけ、関係するグローバルな成長市場とともに、今後市場拡大が見込まれる高速5G通信・半導体・次世代自動車・自然エネルギー分野・建材、化粧品、介護食、特殊素材を用いたアパレル等への差別化した製商品の拡販、新規顧客の開拓、バイオマテリアルを含めた国内外の産学連携の加速に注力しつつ、顧客に密着した生産・物流体制の更なる改善にも取り組んでまいりました。又、昨年立ち上げました、自動車向け高機能樹脂製品を製造する、米国ウエストバージニア州の新工場の顧客への早期販売開始に向けて、鋭意活動しております。更に、当社の水分を保つ働きをする保湿成分を配合した化粧品、及び機能性材料を使ったスイーツビジネスも開始いたしました。

その結果、自動車部品業界向け高機能樹脂製品の販売が新規顧客の獲得等により海外において大きく伸長したことや、スマートフォン向けコーティング製品の受注動向が順調に推移したことで、営業利益が前年同期を大幅に上回りました。

当連結会計年度の経営成績は、売上高が303億6千3百万円(前年同期比13.9%増)、営業利益が25億7千万円(前年同期比43.0%増)、経常利益が27億1千万円(前年同期比42.0%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は25億8千6百万円(前年同期比88.7%増)となりました。

 

セグメントの経営成績は、以下のとおりであります。

 

[高機能材料事業]

電子機器業界向け関連製商品の販売では、受注環境が緩やかに回復傾向であり、スマートフォン市場向けの取引が引き続き好調だったこと、モビリティ市場及びAI関連市場向けの需要も旺盛になっており遮光部材等の販売が増加し売上高は前年同期を上回りました。自動車部品業界向け製商品の販売では、EV関連向け部品の需要が用途により大きく変化しており、特定部品の需要が低迷いたしましたが新規顧客の獲得等により北米や欧州の受注が増加いたしました。その結果、当事業全体の売上高は210億4千9百万円(前年同期比8.8%増)、営業利益は24億6千4百万円(前年同期比46.0%増)となりました。

 

(主な製商品群の概況)

製商品群

概況(数値は前年同期との対比)

コーティング製品

電子機器業界向けの販売が順調に推移し、車載・家電関係にも販売が伸びたこと、工程用粘着フィルムにおいても半導体業界が回復傾向にあることから、14.5%の増収となりました。

高機能樹脂製品

自動車関連において輸出案件が減少となったことと、建材関連での工期遅れの影響から粉体の樹脂製品の販売量は減少しましたが、液状の樹脂製品において、HEV駆動モーター用樹脂が堅調であり、北米・欧州向けなど増産傾向となりました。 国内向けについては、年度初頭の減産から徐々に回復し、当初の計画を上回ることとなり、全体として18.8%の増収となりました。

電子材料

基板業界向け材料が減少しており前年を下回ったこと、産業用モーター及び大型トランス向けも縮小傾向にあり、結果として3.9%の減収となりました。

機能性樹脂

仕入れ先の価格改定や販売中止などで市場が縮小したこと、また半導体製造装置、5G関連電子部品等の減産が影響し、8.4%の減収となりました。

 

[環境材料事業]

主要な販売先である製紙業界では、印刷情報用紙・新聞用紙の市場は継続して縮小しています。一方、板紙は落ち込みが少なく比較的堅調であるとは言え、事業を取り巻く環境は厳しいものとなっています。このような環境下、当社グループにおいては、市場ニーズに応じて、特長を生かした差別化製商品の拡販と新たな用途や周辺市場の開拓等に取り組んでまいりました。製品販売では工業用殺菌剤が製紙会社での安価品への切替え等で減少したものの、製紙用ケミカルズが板紙分野を中心に顧客ニーズに対応した差別化製品の国内外への市場開拓や販売促進等により売上が順調に推移したことで前年同期を上回りました。商品販売では、塗工用バインダーが一部顧客での商流変更に伴う取引の増加により、前年同期を大幅に上回りました。その結果、当事業全体の売上高は67億1千6百万円(前年同期比44.0%増)、営業利益は2億2千7百万円(前年同期比11.0%増)となりました。

 

(主な製商品群の概況)

製商品群

概況(数値は前年同期との対比)

ファインケミカルズ

製紙用ケミカルズでは、他社と差別化できる新規ポリマーを導入した多機能凝集剤・歩留剤の市場開発に注力した結果、7.1%の増加となりましたが、工業用殺菌剤の販売が製紙会社の稼働日減少により販売数量減少となり、結果として2.9%の増収にとどまりました。

製紙用化学品

主要取扱商品の塗工用バインダーが一部顧客での商流変更により、取引が大幅に増加したことで、58.5%の増収となりました。

 

[食品材料事業]

食品材料事業では、健康に優しく特長ある天然の食品素材を主要な取扱商品としており、的を絞った施策を推進し、食品業界などへの拡販に鋭意注力してまいりました。これに加えて、これまでの営業活動で蓄積した食品に係る様々な情報や技術を活用して、新規商材の発掘や市場の開拓、更には、独自性の発揮できる新規複合食品素材の開発といった新たなテーマにも積極的に取り組んでおります。このような状況下で増粘安定剤はアラビアガムの安定供給を継続して確保できたことで大幅にシェアを拡大したものの、ローカストビーンガムの市場価格が乱高下したことにより使用量の削減や代替品への切替え等、需要が急減し市場が大幅に縮小する環境下、販売先からの受注が減少したことで販売数量・価格は前年を大きく下回りました。乾燥野菜は、安定した需要に下支えられたことや新規商材の販売も順調に推移しました。またコスト上昇等による輸入原材料価格の高騰に伴う販売価格の値上げ効果もあり前年同期を上回りました。その結果、当事業全体の売上高は25億1千1百万円(前年同期比1.1%減)、営業利益は1億4千万円(前年同期比16.4%減)となりました。

 

(主な製商品群の概況)

製商品群

概況(数値は前年同期との対比)

食品素材等

乾燥野菜は安定した需要や新規商材の投入・開発により、15.2%の増収となりました。増粘安定剤は、アラビアガムの安定供給を継続できたことで、大幅にシェアを拡大しましたが、ローカストビーンガムの市場価格乱高下による顧客での代替品への切替えや需要減により、9.4%の減収となりました。結果、食品素材等全体では、1.1%の減収となりました。

 

[その他の事業]

当社グループの成長を支える新たな事業領域を開発・育成すべく取り組んでいる「その他の事業」では、アフリカから輸入した切り花の国内販売や、新市場開発用途の商材を発掘しつつ、新規ビジネスの可能性を追求する活動に積極的に取り組んでおり、試販等による事業化への検討を進めております。輸入生花の販売は、期初の繁忙期に輸送トラブル等で販売数を伸ばすことができず、前年度を下回る結果となりました。新たに化粧品ビジネスを第4四半期から立ち上げましたが、結果として「その他の事業」の売上高は8千6百万円(前年同期比14.8%減)、営業損失は1千9百万円(前年同期は営業損失4百万円)となりました。

 

 

(2)資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当社グループは、主に営業活動によって得られるキャッシュ・フローの創出を図るとともに、事業運営において必要な長期運転資金として金融機関からの借入れを行い、資金を調達しております。また、営業活動、設備投資、借入金の返済等の資金需要に備えて、十分な資金を確保するために、資金の流動性及び資金調達の多様化に努めております。

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末と比較して26億3千4百万円増加して、89億7千8百万円となりました。

 

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは、15億3千9百万円の資金増加(前連結会計年度は23億3百万円の資金増加)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益33億3千9百万円、減価償却費4億5千2百万円等の資金増加要因が、投資有価証券売却益6億5千7百万円、売上債権の増加額2億5千8百万円、仕入債務の減少額7億4千2百万円、法人税等の支払額5億4千2百万円等の資金減少要因を上回ったことによるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは、2億8千8百万円の資金減少(前連結会計年度は9億9千5百万円の資金減少)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出10億4千万円等の資金減少要因が、投資有価証券の売却による収入7億8千3百万円等の資金増加要因を上回ったことによるものです。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは、8億5千9百万円の資金増加(前連結会計年度は9千9百万円の資金減少)となりました。これは主に、長期借入れによる収入10億円等の資金増加要因が、配当金の支払額1億3千5百万円等の資金減少要因を上回ったことによるものです。

 

(3)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当該事項につきましては、「第一部 企業情報 第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)重要な会計方針及び見積り」及び「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

生産、受注及び販売の実績

(1)生産実績

当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

前年同期比(%)

高機能材料事業(千円)

7,846,403

108.8

環境材料事業(千円)

896,416

114.5

食品材料事業(千円)

982

57.5

報告セグメント計(千円)

8,743,802

109.4

その他の事業(千円)

合計(千円)

8,743,802

109.4

(注)金額は製造原価によって表示しております。

 

(2)受注実績

当社グループは一部を除いて受注生産は行っておりません。

 

(3)販売実績

当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

前年同期比(%)

高機能材料事業(千円)

21,049,415

108.8

環境材料事業(千円)

6,716,193

144.0

食品材料事業(千円)

2,511,768

98.9

報告セグメント計(千円)

30,277,377

114.0

その他の事業(千円)

86,134

85.2

合計(千円)

30,363,512

113.9

 

財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている企業会計の基準に準拠して作成しております。その作成には経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の金額及び記載内容に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)4.会計方針に関する事項」において記載しておりますが、特に以下に記載する重要な会計方針が連結財務諸表における重要な見積りの判断に大きな影響を及ぼすと考えております。

 

① 有価証券の減損処理

当社は、金融機関や取引に関連する会社等の株式等を政策的に保有しておりますが、これらの有価証券は株式市場の変動リスクを負っています。当社は、合理的な評価基準に基づき有価証券の減損処理を実施しております。

 

② 貸倒引当金の計上基準

当社グループは、売上債権等の貸倒損失に備えて回収不能となる見積額を貸倒引当金として計上しております。

 

③ 有形固定資産の減損損失について

当社グループは、事業の種類を基礎とした管理会計上の区分に従ってグルーピングを行っております。当該資産グループについて収益性が著しく低下した場合には、回収可能価額まで減損損失を計上しております。

 

④ 繰延税金資産の回収可能性の評価

当社グループは、繰延税金資産の回収可能性を評価するに際して、将来の課税所得を合理的に見積り、繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産の回収可能性は、将来の課税所得の見積りに依存し、その見積額が減少した場合は、繰延税金資産が減額され税金費用が追加計上される可能性があります。

 

(2)当連結会計年度の経営成績の分析

当社グループの当連結会計年度の経営成績は、売上高が303億6千3百万円(前年同期比13.9%増)、営業利益が25億7千万円(前年同期比43.0%増)、経常利益が27億1千万円(前年同期比42.0%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は25億8千6百万円(前年同期比88.7%増)となりました。

 

① 売上高の分析

当連結会計年度におけるわが国経済は、雇用・所得環境の改善、各種政策の効果により、国内景気は緩やかな回復の動きがみられるものの、円安の進行による物価上昇や、金利の上昇などによる企業の経済活動や個人消費への影響が懸念され、海外では、欧米主要国の政策金利が高水準で推移したこと等により一時的な変動がありながらも円安基調となったことや、ウクライナ侵攻問題の長期化によるエネルギー・資源価格の大幅な上昇、長期的な円安傾向、物価や金利の上昇、中東問題、中国の不動産不況、米国の関税政策による下振れリスクなどの影響から、当社グループの経営環境は、依然として先行き不透明な状況が続くものと想定しております。

こうした状況下で当社グループは、引き続きグループの特長を生かした事業運営とスピーディーな経営判断を心がけ、関係するグローバルな成長市場とともに、今後市場拡大が見込まれる高速5G通信・半導体・次世代自動車・自然エネルギー分野・建材、化粧品、介護食、特殊素材を用いたアパレル等への差別化した製商品の拡販、新規顧客の開拓、バイオマテリアルを含めた国内外の産学連携の加速に注力しつつ、顧客に密着した生産・物流体制の更なる改善にも取り組んでまいりました。又、昨年立ち上げました、自動車向け高機能樹脂製品を製造する、米国ウエストバージニア州の新工場の顧客への早期販売開始に向けて、鋭意活動しております。更に、当社の水分を保つ働きをする保湿成分を配合した化粧品、及び機能性材料を使ったスイーツビジネスも開始いたしました。

その結果、当連結会計年度の売上高は303億6千3百万円(前年同期比13.9%増)となりました。

 

② 販売費及び一般管理費の分析

当社グループにおいて、販売が好調に推移したことに伴う発送配達費及び販売手数料等の増加により、当連結会計年度の販売費及び一般管理費は39億9千7百万円(前年同期比7.3%増)となりました。

 

③ 営業外損益及び特別損益の分析

営業外収益は、前連結会計年度から4千4百万円増加して2億1千3百万円(前年同期比26.3%増)となりました。これは主に、受取利息や受取配当金が増加したことによるものであります。また、営業外費用は、前連結会計年度から1千5百万円増加して7千3百万円(前年同期比26.5%増)となりました。これは主に、為替差損が増加したことによるものであります。

特別利益は、前連結会計年度から6億5千4百万円増加して6億5千7百万円(前年同期は3百万円)となりました。これは主に、投資有価証券売却益が増加したことによるものであります。また、特別損失は、前連結会計年度から3億5千1百万円減少して2千9百万円(前年同期比92.4%減)となりました。これは主に、前連結会計年度において退職給付制度改定損を計上したことによるものであります。

 

(3)経営成績に重要な影響を与える要因について

コロナ禍からの経済活動の正常化が進展し、雇用・所得環境が改善するなかで、各種政策の効果もあり、国内景気は回復の兆しを見せ始めている一方、海外では各国での金融引き締めや、ウクライナ侵攻問題の長期化によるエネルギー・資源価格の大幅な上昇、長期的な円安傾向、物価や金利の上昇、中東問題、中国の不動産不況などの影響から、当社グループの経営環境は、先行き不透明な状況が続くものと想定しております。

製造販売では、高機能材料事業及び環境材料事業において、販売先の個別動向や販売先が属する電子部品・自動車・製紙といった業界動向、更には、各業界に占める販売先の位置づけなどが、当社グループの販売数量や販売価格に大きな影響を与える可能性があります。また、市場における競合各社間の競争激化を反映して、特にコーティング製品や高機能樹脂製品を中心に海外の廉価品の台頭などによって販売価格が下落したり、あるいは、原油価格の高騰などで原材料価格が上昇し製造コストが増加するといった要因により、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。

仕入販売では、商社活動全般において、エレクトロニクス関連業界や製紙業界、更には食品業界といった当社グループの販売先が関係する業界全体の動向に加え、当社グループの仕入先メーカーの生産供給体制と販売先の需要とのバランスが、販売数量及び販売価格に影響を与える可能性があります。また、競合他社による廉価販売や新商品の市場投入で既存の商流・商権が変化することなどにより、当社グループの販売数量の減少及び販売価格の下落を引き起こす可能性があります。

 

(4)戦略的現状と見通し

当社グループは、事業の重点化と他社との差別化を重要な戦略と位置づけて、引き続きグローバルな視野に立って将来的に成長が期待できる事業分野と市場へ、経営資源を重点的に集中させ、研究開発資源の有効かつ効率的な活用と「経営環境の変化に対するスピーディーな対応」で、ビジネスの強化と事業領域の拡大に努めてまいります。

具体的には、製造販売においては、とりわけ電子部品や自動車部品、更にはデジタル光学機器といった業界を中心に、コーティング製品や高機能樹脂製品の差別化戦略、付加価値の高い新規開発製品の市場投入などで拡販と事業領域の拡大を図り、また、仕入販売においては、特長ある既存商品群の物流・販売網強化と顧客ニーズに的確に応えるための仕入先との共同開発その他の協働、更には、新規商権の獲得などにも注力してまいります。

また、当社グループのグローバル展開では、アジア各地の当社子会社を拠点として、中国やタイ・ベトナム・インドを中心としたアジアの新興市場を事業活動のメインに据え、これに加えて、堅調な景気が続く米国や欧州その周辺市場においても、生産・物流・販売の機能強化と更なる情報収集に努めてまいります。

 

(5)経営者の問題認識と今後の方針について

当社グループの経営陣は、最新の経営環境及び入手可能な情報に基づき最善の経営方針を立案すべく尽力しておりますが、米中の貿易摩擦や、中東情勢、為替レート、資源価格、金利の大幅な変動等により、当社グループの経営環境は一段と厳しい状況が予想されます。

当社グループとしましては、今後もこうした状況を正確かつ的確に把握してグループの総合力を効果的に発揮できるよう、引き続きコーポレート・ガバナンスの強化とスピーディーな経営判断を心がけ、業績の向上に努めていく方針であります。

 

(6)経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載のとおり、達成目標は、売上高営業利益率4.0%、総資産経常利益率(ROA)5.0%、自己資本比率60.0%、海外地域売上比率20.0%であります。

当連結会計年度において、上記全ての指標が達成目標及び前連結会計年度を上回りました。

売上高営業利益率は、ハイブリッド車・EV関連部品向け樹脂製商品の販売が国内外で大きく伸長した結果、営業利益が増加し、総資産経常利益率は、利益水準が上昇したことで達成目標及び前連結会計年度を上回りました。また、海外地域売上比率は、海外子会社の事業活動においてハイブリッド車・EV関連部品向けの受注動向が好調に推移し、中国や欧米市場への販売が伸長したことで海外向けの売上割合が増加しております。

次年度以降は、引き続き、高機能材料事業における製品の販売を伸長させるとともに、新たな用途展開による製品販売の拡充を推進することで、事業所の稼働率を高め、更なるコスト低減に取り組むことにより、当社グループ全体の収益基盤を確立させ、恒常的な目標達成に向け努めてまいります。

 

5【重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

 当社グループでは、市場ニーズの変化に対する的確な対応や技術革新への新たな対応などを通して、事業の持続的な発展を図り、合わせて社会に貢献していくことを目的として、基盤技術開発分野とともに、高機能材料事業、環境材料事業及び食品材料事業の各分野において、積極的な研究開発活動を行っております。

当社グループがこれまで蓄積してきた技術資源やノウハウを基盤として、今後の成長が見込まれる分野に的を絞った市場開発や技術・製品開発、環境配慮型原材料を使用した製品開発、更には生産技術開発などに注力するとともに、これらを支える基盤技術の深耕や新たなビジネス開発のための基礎的研究にも努めております。

当連結会計年度の研究開発費の総額は418百万円となりました。

なお、事業セグメント別の研究の目的、主要課題、研究成果及び研究開発費は次のとおりであります。

 

(1) 基盤技術開発分野

基盤技術開発分野においては、当社のコア技術を活かした新たな機能性材料の開発に取り組んでおります。開発品である溶媒可溶型ポリイミド・機能性接着シート・磁気粘性流体・機能性増粘多糖類のサンプルワークを拡げ、シーズ型開発からお客様の要望を取り込んだニーズ型開発へ移行を進めていくことで、良好な評価が得られております。更に、バイオマテリアルに関する開発も成果を上げつつあり、サンプル提供を開始しております。これら、新規技術により開発された製品を市場における評価を受けながら本格的な製品化に向けて取り組んでおります。

基盤技術開発分野における当連結会計年度の研究開発費は118百万円であります。

 

(2) 高機能材料事業

高機能材料事業では、機能性フィルムに関連した研究開発と高機能樹脂に関連した研究開発とに大別されます。

機能性フィルムに関連した研究開発では、益々多様化・高度化する市場ニーズに応えるため、コーティングやラミネーション、フィルムの表面加工(サンドブラスト・プラズマ処理)技術を駆使し、これまで培った各種関連技術を複合して製品開発を行っております。各種高機能電子機器や先進安全技術を実現するための車載電子機器、更には半導体関連など、これらを構成する部品の生産及び性能を支える粘接着フィルムや遮光フィルム、遮光性黒色塗料の開発に注力しております。

また、高機能樹脂に関連した研究開発では、主に、次世代自動車用の駆動モーターや電装部品、各種小型モーター、バッテリー、電子部品などで使用される電気絶縁材料や接着剤に関する高機能化に取り組むとともに、サーマルコントロールを目的とした絶縁性粉体塗料、注型・封止樹脂の研究開発も行っております。更には、環境対応として、植物由来原料を活用した材料開発や硬化時のエネルギー削減を目的としたUV硬化型・速硬化型の材料開発、土木建築関連部材の防錆用塗料や接着剤の研究開発などにも注力しております。

高機能材料事業における当連結会計年度の研究開発費は256百万円であります。

 

(3) 環境材料事業

環境材料事業では、コアのアクリル合成技術とブレンド技術を基盤技術としています。

当連結会計年度においては、アクリル合成技術を更に深化し、新規ポリマーに改良を加えることでリアクティブポリマーを開発し、新規歩留剤、多機能凝結剤等の製品市場開発に注力してきました。また、ブレンド技術を基盤とする殺菌剤と合体させ、それにセンシング技術を応用した自動薬剤添加システムを開発することで、顧客課題解決に対応し、製品の付加価値アップを進めています。

一方、ブレンド技術の応用は、従来の紙パルプ向け殺菌剤だけではなく、高機能材料分野の洗浄剤、中和剤等へ発展させることで、これら製品の上市に繋がりました。

今後はこの2つのコア技術を更に高め、他社と差別化した製品開発に取り組み、国内のみならず海外においても幅広い分野に技術対応を進めてまいります。

環境材料事業における当連結会計年度の研究開発費は23百万円であります。

 

(4) 食品材料事業

食品材料事業では、加工食品等への使用を目的とした、増粘剤・ゲル化剤などの開発に取り組んでおります。増粘剤・ゲル化剤は、低添加量で、味・風味を損なわず、食感を改善でき、温度変化に合わせて増粘・ゲル化を制御可能な製品の開発に成功しました。一般加工食品・介護/嚥下補助食品などに向けた様々なアプリケーションを提案し、本開発製品の本格販売に向け取り組んでおります。

食品材料事業における当連結会計年度の研究開発費は19百万円であります。