第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社企業グループが判断したものであります。

 

(1) 会社の経営の基本方針

当社企業グループは、「電機、機械、電子、情報を扱う技術商社として、優れた商品を最新の技術とともに産業界のお客様にお届けすることを通じて、社会の発展に貢献する」との企業理念に基づき、グループ各社が持つ力を集結してお客様に満足いただける製品・サービスの提供をしてまいります。

 

(2) 中長期的な経営戦略と対処すべき課題

 米国政府における関税政策の影響により、中国を中心とするアジア地域の経済活動に不透明感が増しており、国内では人手不足や物価高騰による原価アップ、金利上昇や急激な為替変動が加わり、依然として先行きは不透明な状況が続くことが予想されます。

 このような環境において当社企業グループは、中長期経営計画で推し進めているソリューションビジネスに注力すると共に、DX推進と人財への投資を積極的に進めることで、次の中長期経営計画の足場固めとし、200年企業に向けた経営基盤の強化に取り組んでおります。

 

[主要な取組み内容]

① 各事業の重点取組み

FAシステム事業

 ・自動化・省人化のニーズに応えるロボットやシステムのソリューション提案を強化

 ・広域顧客の深掘りを推進し、新領域のビジネスを展開

半導体デバイス事業

 ・取り扱い商材のすそ野を広げ、既存顧客の深掘りと新規顧客を開拓

 ・人員の増強と育成によって営業力、技術力の向上を図り、顧客や仕入先との関係強化

施設事業 

 ・拠点間の「サービスレベルの均一化」をさらに推進し、安定拡大に向けた人員の増強

 ・需要が高まるカーボンニュートラルの領域で、提案から施工までワンストップで対応する現場力の養成

MS事業

 ・アジアにおける新規製造受託先の開拓と安定した生産・品質保証体制の維持発展

海外事業

 ・拠点ローカル化の更なる推進とエンジニアリングセンター拡充による技術提案力の強化

 ・ローカル商社との協業及び技術部隊を中心とした新規顧客の開拓

 ・成長市場への積極的な進出により、グローバル対応を強化

 
② 経営基盤の構築、強化

a DXの推進

・販売拡大、コスト削減、CS向上などを目的とした「攻めのDX」を推進

・全社データの共通化、自動集計、見える化による業務効率の向上と営業活動支援

・属人化を排除したシステム構築によるガバナンスの強化

b 人事制度改革の推進

・年功序列型から能力主義型へのシフトを基軸とする人事制度改革を推進

・男女差のない職種別・職能別人事体系への段階的移行

・将来を見据えた積極的な人財投資としての採用と育成

c リスクマネジメントの強化

・コロナ禍における各種支援策の縮小、物価高騰や人手不足に起因する企業業績の悪化に備えて債権管理を強化

・適正な在庫水準を維持するための在庫マネジメントの強化

・拡大する工事需要に対応すべく、工事安全衛生管理体制を再編し、建設業法遵守に向けた体制を強化

d 資本政策

・2023年から3か年で300万株の自社株買いを実施し、資本効率を上げて企業価値を向上

・政策保有株の縮減による資本効率の向上

e 経営課題への迅速な対応

・新設した「グローバル戦略室」が主導して、グローバル、中長期の観点から経営課題の解決と戦略立案を加速

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

(1) サステナビリティに関する基本方針

当社企業グループは、「電機、機械、電子、情報を扱う技術商社として、優れた商品を最新の技術と共に産業界のお客様にお届けすることを通じて、社会の発展に貢献する」ことを企業理念に掲げています。

この理念のもと、持続可能な環境や社会への貢献と持続的な企業価値向上が重要な経営課題であるとの認識に立ち、事業活動を通じて社会課題を解決し、持続可能な環境や社会の実現に貢献してまいります。

更に、当社独自のサービスやソリューションを提供することで、お客様の満足度向上とより良い社会の実現を目指します。

 

① 環境

 ・省エネルギー・省資源に対応した環境配慮型製品の販売及びソリューションの提供を拡大します。

 ・事業活動を通じて、省エネルギー、省資源、廃棄物削減を積極的に推進し、環境負荷を低減します。

 

② 社会

・社員がやりがいを持って働き、自らの成長を実感できる会社であれば社員は幸せを感じられるという「人基軸経営」の考え方に立ち、自立型人財の育成に積極的に取り組むとともに、労働環境の持続的向上を行います。

・地域社会と連携し、社会貢献活動を拡大してまいります。

 

③ ガバナンス

 ・法令、規則を遵守し、社会的規範・良識に基づいた企業活動を行います。

 ・適切なリスクマネジメントを行い、全てのステークホルダーからの期待に誠実に応えてまいります。

 

(2) 具体的な取組み

上記の基本方針に則り、以下の取組みを行っております。

 

① ガバナンス

当社の環境・社会・ガバナンスへの取組みをより一層強化するため、サステナビリティ委員会を設置しております。

委員会は、取締役会の監督・指示のもとでサステナビリティに関する基本方針の策定や重要課題(マテリアリティ)の特定と、それに基づく目標設定、それらの進捗管理を行うことで、全社的なサステナビリティへの取組みを推進いたします。

委員会は、年に1回以上開催される本委員会と、年4回開催されるサブ委員会により構成され、本委員会では取締役会長を委員長とし、委員は執行役員により構成されます。サブ委員会では管理本部長を事務局長とし、各事業の代表、東日本支社・中部支社代表、総務コンプライアンス部長、人事部長、経営企画部長、広報IR部長により構成され、このサブ委員会でサステナビリティの諸課題を検討し、本委員会で施策を立案・審議し、取締役会で決定する体制としております。

また、取締役会からの指示を受け、委員会が施策や指標のモニタリングを行ない、その効果を分析することで、サステナビリティ推進を牽引しております。

 


 

② 戦略

a マテリアリティ

当社では、さまざまな社会的責任に関わる項目について「ステークホルダーにとっての重要度」と「当社における重要度」の観点から、環境、社会、ガバナンスの3区分でマテリアリティを特定し、それぞれのマテリアリティにおいて取り組むべき重点テーマを設定しております。

 


 

また、CO2削減については、当社独自の社内活動として、家族を含めた社員全員のCO2削減に対する意識高揚のための運動を進めております。

 

b 気候変動

当社の得意先であるFA、半導体関連のエンドユーザー、セットメーカー、販売店等にとっては、脱炭素への対応は喫緊の課題であり、気候変動に対応した環境配慮型製品の拡販に取り組んでいる当社にとって、好機であると考えております。以下は、気候関連のリスク及び機会が当社ビジネスに与える影響を整理したものです。

 

気候関連のリスク及び機会が当社ビジネスに及ぼす影響

 

分類

当社ビジネスへの影響

リスク

機会

移行
リスク

規制

・炭素税の導入

・その他、温室効果ガスを規制する政策の導入

・再生可能エネルギー需要の増加に伴う、当社での太陽光ビジネスの機会の増加

技術

・水素やアンモニア等の新たな技術革新による脱炭素エネルギーが普及することによる調達コストの増加

・高効率機器やシステム等の開発遅れによる販売量の低下

・環境配慮型製品の需要増加とソリューション提供機会の拡大に伴う販売高の増加

・メーカーとタイアップした高効率機器の開発による販売機会の増加

市場

・マーケットの変化への対応の遅れによる成長機会や売上の減少

・再生可能エネルギー需要増による調達コストの増加

・環境配慮型製品の需要増加とソリューション提供機会の拡大に伴う販売高の増加

・自社での太陽光発電によるエネルギーの調達

評判

・高効率なFAや半導体製品への対応遅れによる社会的評価の低下

・投資家からの開示要求への対応不備によるレピュテーションの低下

・積極的な情報開示によるレピュテーションの向上

物理的
リスク

急性

・気候変動による自然災害による事業所の損害や物流ルート断絶に伴う販売機会の喪失

・気候変動に起因する感染症リスクの増加

・人員減に対応できるロボットや遠隔監視機器等の販売機会の増加

慢性

・地球規模での平均気温の上昇

・環境配慮型製品の需要増加とソリューション提供機会の拡大に伴う販売高の増加

・再生可能エネルギー需要の増加に伴う、当社での太陽光ビジネスの機会の増加

 

気候変動への戦略については、環境配慮型製品の拡販と太陽光ビジネスの拡大を重点施策とし、事業(営業)部門と管理部門で横断的に施策を検討できるサステナビリティサブ委員会にて検討し、本委員会に上申し、本委員会にて審議する体制で進めてまいります。

 

c 人財育成方針

(人財の育成及び社内環境整備に関する方針)

当社では、かねてから「人基軸経営」の考え方に基づき、人財の育成に取り組んでまいりました。これは、「社員がやりがいを持って働き、自らの成長を実感できる会社であれば、社員は幸せを感じられる。そして、社員が少しでも多く幸せを感じている会社は発展する。」という考え方です。今後の人財の育成及び社内の体制や環境整備においても、この「人基軸経営」の考え方に基づき、「‟人の為に”、‟人から信頼を”、‟人と一緒に喜びを”、‟人の育成を”」を指針として、社員には難しい課題への積極的なチャレンジを促し、これを乗り越えることで成長実感が持てるように、取り組んでまいります。

また、この先の労働人口減少を鑑みれば、女性にはこれまで以上に活躍してもらうべく取り組んでいくことが必須であると考えております。同時に、社会全体として人事制度がメンバーシップ型からジョブ型へと移行しつつあるなどのさまざまな経営環境の変化に対応し、社員にとって魅力ある会社にしていくことを目指して、社内の体制や環境整備に取り組んでまいります。

 

(人財の育成に関する戦略及び取組み)

(a)人事制度改革

    当社ではこれまでも能力・実力を重視した人事制度の下、実行力とマネジメント能力のある社員の育成を図ってまいりました。社会全体でジョブ型雇用が浸透しつつある状況を踏まえて、ジョブ型人事制度への将来的な移行を見据えて、仕事の難易度と実績に基づく等級基準の整備を段階的に進めております。これにより、社員の努力目標と、上司の部下育成目標を明確化し、キャリアアップの道筋をつけてまいります。当事業年度においては、全社員を対象に、人事制度改革の方向性に関する説明会を実施しました。また、ジョブ型新人事制度への移行を見据えて、営業職・技術職・事務職の職種別での採用活動を前会計年度から継続して行いました。

 

(b)研修体系の刷新

    今後の新たな人事制度移行を見据えて、階層別研修体系を整備し、計画的に実施してまいります。既に、管理職、若手社員、女性リーダーを対象とした研修等を実施しておりますが、今後はさらに多くの研修を体系的に実施し、社員の能力開発と人財育成に努めてまいります。

    また、当社の保有する宿泊研修施設「立志館」では、人間力の醸成から知識研修まで総合的な社員教育を行っております。当研修センターには24畳の「人間道場」(和室)があり、座学の研修とは全く違う雰囲気の中、懇談会スタイルで意見交換ができます。この懇談会での飲食については会社が全面費用負担することで社員の積極的な利用を促し、経営層から一般社員まで年齢や役職の隔たりなく、膝を突き合わせての懇親を行っており、こうした場は、社員にとって、知見や人間としての幅を拡げる貴重な機会となっております。コロナ禍の期間においては「人間道場」の活用機会は大きく減少しましたが、現在は積極的な活用を再開しており、当事業年度においては、合計33回の「人間道場」を開催し、社内コミュニケーションの活性化と、社員の人間力醸成に努めました。

 

(社内の体制、環境整備に関する戦略及び取組み)

(a)女性のキャリアアップ支援

    当社では、これまでも事務職を取りまとめる女性リーダーが複数名居り、さらに当事業年度においては新たに3名の女性課長が誕生し、それぞれの職場で活躍しております。また、女性社員のキャリアアップと部署や拠点を超えた交流を促進するための人間道場も実施しました。今後は、仕事の内容に基づく職種体系の再構築等の人事制度改革を通じて、これまで以上に女性社員が能力を発揮出来る環境(文化、風土作り)の整備を進め、女性の幅広い活躍を一層推進してまいります。

 

(b)若手のキャリアアップ支援

    体系的な階層別研修の計画と同時並行で、当事業年度においては、若手社員の今後のキャリアアップを支援するための研修を全4回実施し、100名以上の若手社員が参加しました。研修では、若手社員に求められる仕事の基礎力強化と共に、今後のキャリアアップについて若手社員同士で考える機会を作りました。また当該研修は、新卒採用者、中途採用者を問わず、全ての事業交えて実施し、若手社員同士の積極的な交流も促進しました。

 

(c)人財の多様性確保

    当社では、新卒採用者、中途採用者を問わず、実力・実績に基づいて昇格や管理職登用を行っております。また、当事業年度においては、積極的に中途採用を行った結果、年間67名の採用人数のうち、6割以上を占める42名が中途採用となりました。さらに、女性の営業職、技術職採用も積極的に進め、当事業年度においては、9名の女性営業職、技術職の採用に至りました。今後も、入社形態や性別によらず、専門的な能力や技能を持つ人財を幅広く採用し、育成してまいります。加えて、SNSの活用や、社員からの紹介を通じた採用等、採用活動でも多様な手法を取り入れております。結果として、様々な専門性、技能、経験を持つ社員を採用し、存分に能力を発揮して活躍してもらうことで、会社の発展の原動力にしてまいります。

 

(d)ワークライフバランスへの取り組み

    社員が仕事と育児や介護と両立しやすく、働きやすい雇用環境の整備にも努めております。当事業年度においては、仕事と育児や介護との両立を支援するために、始業終業時刻の変更や、育児・介護に従事する社員向けの新たな休暇制度を導入しました。今後もこうした取り組みに力を入れてまいります。

 

(e)「なごみ会」の設立

    2023年4月に「社員が自慢に思える会社」を目指して活動することを目的に、社内組織として「なごみ会」を発足しました。「なごみ会」は社員の自己研鑽費用の援助や社員親睦活動の推進、公益団体への寄付などを通じた社会貢献活動にも取り組んでいます。最近では、共に働く仲間として派遣・出向社員の方々に対する慶弔支援、従業員組合やOB会が行なう行事への費用援助、能登半島地震や豪雨災害に遭われた方々へ義援金拠出を行ないました。また、文化活動の一環としてフェンシング世界選手権で活躍中の松山恭助選手へのスポーツ支援や、介護休業取得者が安心して制度を利用できるよう見舞金を提供するなど、様々な活動を広げています。今後も社内意見箱に寄せられる社員の要望に寄り添い、積極的に活動してまいります。

 

③ リスク管理

サステナビリティについては、上述のように、気候関連のリスク及び機会が当社ビジネスに与える影響を整理し、リスクを把握・認識しております。これらのリスク管理については、取締役会の監督の下で、サステナビリティ委員会にて対応しております。

 

④ 指標及び目標

a マテリアリティ

マテリアリティについての指標及び目標は、当社ウェブサイトに掲載しておりますので、ご参照ください。

https://www.tachibana.co.jp/csr/materiality/

 

(E)環境のマテリアリティにおける数値目標につきましては進捗が好調に推移していることもあり、2024年度

 の実績を踏まえて2025年度の目標を上方修正しております。

 活動の成果として、ここに主なトピックを2点挙げます。

1)紙使用量の削減

 出力帳票類の見直しによる廃止や電子化、社員の意識改革の啓蒙活動によって、直近6年間で年間ベースで

 約7.4百万枚の紙使用量を削減し、ペーパレス化が大きく進捗しました。

2)太陽光発電設備のリニューアル

  2025年5月に南大阪支店の太陽光発電設備をリニューアルしました。これにより従来の発電容量が約2倍に

 増え、CO2削減量も倍増します。蓄電池も設置することにより、万一災害があった場合のBCP対策としての機

 能も期待できます。

 

今後も、社員一丸となって啓蒙活動を続け、サステナビリティ活動を推進していきます。

 

b 気候変動

項目

指標(単体ベース)

実績
(2020年度)

 実績
(2022年度)

 実績
(2023年度)

実績

(当事業年度)

目標値
(2025年度)

スコープ1

ガソリン使用によるGHG排出量

319トン

317トン

335トン

319トン

300トン

削減率(2020年度比)

▲0.6%

+5.0%

±0.0%

▲6.0%

売上高比率(トン/億円)

28.3%

21.1%

20.8%

20.9%

スコープ2

電気使用によるGHG排出量

865トン

772トン

960トン

937トン

750トン

削減率(2020年度比)

▲10.8%

+11.0%

+8.3%

▲13.3%

<参考情報>

単体売上高

1,127億円

1,500億円

1,609億円

1,520億円

 

(注) 削減率につきましては、2020年度の排出量を100として算出しております。

 

c 人財育成

主な戦略

指標(単体ベース)

実績

(前事業年度)

実績

(当事業年度)

目標値

(2025年度)

人財育成に資する

主な研修

管理職向け研修

5回

11

15

女性のキャリアアップを推進する研修

1回

2

10

若手を対象とするキャリアアップ研修

8回

9

10

専門的な能力・技能向上を目的とする研修

23回

24

30

人間道場実施回数

26回

33

50

 

 

3 【事業等のリスク】

当社企業グループの経営成績及び財務状況などに影響を及ぼす可能性のあるリスクには以下のようなものがあります。

なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社企業グループが判断したものであります。

 

(1)経済状況の変動について

当社企業グループは、FA機器製品・半導体デバイス製品、設備機器製品のシステム販売を主な事業とする企業であり、取引先は製造業を中心として幅広い業種に及んでおります。各取引先の状況は、経済状況の変動により、その各々の業界における需要の低下や設備投資の減少などにより影響を受けるため、当社企業グループの経営成績及び財政状況もその影響を受ける可能性があります。

 

(2)主要取引先との関係について

当社企業グループの主な取扱品目は、インバーター、サーボ、プログラマブルコントローラーなどのFA機器製品とマイコン、ASIC、パワーモジュール、密着イメージセンサーなどの半導体製品であり、仕入先としては、三菱電機株式会社及びルネサスエレクトロニクス株式会社からの仕入が中心となっております。従いまして、当社企業グループの経営成績及び財政状況は、これら主要仕入先の事業戦略などにより影響を受ける可能性があります。また、商品を供給している主要販売先につきましても、その市場戦略及び商品戦略の動向により同様に影響を受ける可能性があります。

 

(3)製品の品質と責任について

当社企業グループでは、自社設計によるハードウェア・ソフトウェアや生産受託サービスを提供しております。またその製品作りにおいて、一部外部の会社を活用する場合があります。

製品の品質管理については、品質管理に万全を期すために専門部署を設置し、仕入先工場監査や品質管理システムの構築と継続的改善に取り組んでおりますが、提供した製品やサービスに欠陥などの問題があった場合には、そのことによって生じた損害の責任を負う可能性があります。

 

(4)大規模災害の発生について

当社企業グループは、大規模な地震、台風、火災などの大規模災害が発生した場合、社屋の損壊、本社機能をはじめ物流機能及び営業機能に支障が生じるリスクがあります。これに加えて、仕入先・販売先の被災状況や社会インフラ復旧の遅れ等により商品調達並びに販売が大きな影響を受ける場合には、当社企業グループの経営成績及び財政状況に悪影響が及ぶリスクがあります。

 

(5)社会、政治の混乱について

当社企業グループは、テロや国際紛争、新型感染症の流行等によって社会的、政治的に大きな混乱が発生し事業活動の停滞が長期化した場合、経営全般に悪影響が及ぶリスクがあります。

 

(6)情報セキュリティについて

当社企業グループは、事業活動を展開する上で、取引先並びに営業、技術に関する機密情報を保有しております。これらの情報については管理体制の強化並びに情報システムのセキュリティ対策を講じておりますが、万が一コンピュータウイルスの感染や不正アクセス等の不測の事態によってデータの滅失や漏洩が起こった場合には、社会的信用の低下や損害賠償責任の発生等により、当社企業グループの経営成績及び財政状況もその影響を受けるリスクがあります。

 

(7)債権回収について

当社企業グループは、取引先の定期調査分析を実施するなど、与信管理に細心の注意を払っておりますが、取引先の資金繰りの急激な悪化や倒産などにより、債権が回収不能となり貸倒損失が発生する可能性があります。

 

(8)為替レートの変動について

当社企業グループの事業には海外顧客への商品販売及び海外仕入先からの調達があります。各地域における売上、費用、資産を含む現地通貨建ての項目は、連結財務諸表上円換算されております。換算時の為替レートにより、これらの項目は現地通貨における価値が変わらなかったとしても、為替相場の変動により円換算後の数値が影響を受ける可能性があります。

当社企業グループは、外国為替相場の変動リスクを軽減するため、先物為替予約等による通貨ヘッジ取引を行い、米ドル及び円を含む主要通貨間の為替レートの変動による影響を最小限に止める努力をしておりますが、為替予約のタイミングや急激な為替変動は、当社企業グループの経営成績及び財政状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(9)退職給付債務について

当社企業グループの従業員退職給付費用及び債務は、割引率等数理計算で設定される前提条件や年金資産の長期期待収益率で算出されます。今後の割引率の低下や運用利回りの変化により、退職給付費用の増加をもたらす可能性があります。

 

(10)環境問題について

将来、環境関連の法規制や環境問題に対する社会的な要求がより厳しくなることによって、法遵守に係る追加コストが生じたり、事業活動が制限される可能性があります。従って、今後の環境関連の法規制の動向によっては当社グループの経営成績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
  なお、サステナビリティに関するリスクについては、「第2 〔事業の状況〕 2〔サステナビリティに関する考え方及び取組〕」に記載しております。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社企業グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社企業グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析の内容は次のとおりであります。

 

(1) 経営成績

当連結会計年度における我が国の経済は、個人消費や設備投資の持ち直しが見られ、景気は回復基調で推移しました。一方で、原材料価格の上昇と為替の変動に加え、中国市場の需要低迷など様々な要因から景気の先行きは依然として厳しい状況が続いております。

当社企業グループが関係する業界におきましては、流通在庫の調整が長期化する中、当社の主力事業であるFAシステム及び半導体デバイスの両事業分野において、成長の勢いが鈍化しました。

このような状況下にあって、当社企業グループは中長期経営計画「NEW C.C.J2200」の施策の実行に一丸となって邁進し、来るべき未来社会に選ばれる技術商社のパイオニアとして、FAシステム事業においてはロボットやM2M技術を活用した工場の自動化・省人化ニーズを捉えたソリューション提案や3Dプリンターによる新しいものづくり技術を普及させる活動を、半導体デバイス事業においてはこれまで培ってきた独自技術をもってお客様のシステム開発を支援するための製品の技術提案活動をグローバルに展開してまいりました。また、当社企業グループの高い技術力を発信する場として、世界最大級の食品製造総合展「FOOMA JAPAN 2024」や「Edge Tech +2024」に出展するなど、お客様の現場の課題解決に向けた当社企業グループのソリューション提案事例を広くアピールしてビジネス拡大に取り組んでおります。当期においては、2024年11月に半導体デバイスやFAシステム分野の需要拡大が見込まれるインドにおいて地域のニーズを捕捉して拡販を図るため「タチバナセールス(インド)社」を設立し、2025年1月より営業を開始いたしました。

また、DXの推進、人財の確保など、中長期を見据えた必要投資については、継続して積極的に実行しております。

これらの活動の成果として、当連結会計年度の業績は、売上高2,201億12百万円(前年度比4.7%減)、営業利益82億22百万円(前年度比23.6%減)、経常利益86億90百万円(前年度比26.9%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は70億46百万円(前年度比16.8%減)となりました。

 

セグメント別については以下のとおりであります。

 

〔FAシステム事業〕

売上高:1,086億27百万円(前年度比8.7%減)、営業利益:49億78百万円(前年度比20.5%減)

FA機器分野では、低圧配電制御機器が堅調に推移したものの、前年が製品供給の回復によって大幅伸長したことによる反動から、プログラマブルコントローラー、インバーター及びACサーボは大きく減少しました。

産業機械分野ではレーザー加工機は減少しましたが、工作機械と自動化設備は伸長しました。産業デバイスコンポーネント分野では、在庫調整の影響から特に子会社の接続機器が大幅に減少しました。一方で注力しているシステムソリューションビジネスでは、引き合い案件が増加し、大きく伸長しました。

その結果、当事業全体の売上高は、前年度比8.7%減少いたしました。

 

〔半導体デバイス事業〕

売上高:840億21百万円(前年度比2.2%減)、営業利益:25億8百万円(前年度比38.0%減)

半導体デバイス事業では、半導体分野でメモリーは大幅に伸長したものの、その他の機種については国内外ともに顧客の在庫調整と中国市場の回復遅れから前年同期を下回りました。電子デバイス分野では、SSD(フラッシュメモリーを搭載した半導体記憶装置)並びに液晶は伸長しましたが、その他のデバイス品は減少しました。

その結果、当事業全体の売上高は、前年度比2.2%減少いたしました。

 

 

〔施設事業〕

売上高:212億66百万円(前年度比1.2%増)、営業利益:7億9百万円(前年度比32.3%増)

施設事業では、店舗用パッケージエアコンと設備用パッケージエアコンがリニューアル需要を受けて伸長し、エコキュートも更新需要と補助金効果によって伸長しました。更に、LED照明が旺盛なリニューアル需要と大型案件の獲得もあって好調で、データセンター向け案件についても堅調に推移し、監視制御設備が伸長しました。

また、太陽光発電システムを含むカーボンニュートラル案件で、受注が大きく増加しました。

その結果、当事業全体の売上高は、前年度比1.2%増加し、過去最高となりました。

 

〔その他〕

売上高:61億97百万円(前年度比18.8%増)、営業利益:27百万円(前年度は77百万円の損失)

EMS(電子機器製造受託)分野では、電子部品の物不足が概ね解消したことで、プラットフォーム可動柵を始めとして既存顧客の生産が総じて好調に推移しました。MMS(金属加工製造受託)分野では、期中の円安並びに材料費高騰の影響を受けて利益確保が厳しい環境ながらも、主力の立体駐車場向けの部材が好調に推移しました。

その結果、その他事業の売上高は、前年度比18.8%増加いたしました。

 

上記セグメントの内、海外関連売上高については以下のとおりであります。

 

売上高:397億19百万円(前年度比5.6%増)

海外関連売上高は、中国市場の低迷と主要顧客における在庫増加の影響を受けましたが、為替の影響により売上高は増加しました。結果、海外関連売上高比率は前年から1.7ポイント増加し、18.0%となりました。

 

 

連結損益計算書における売上高以外の項目ごとの分析については、以下のとおりであります。

 

① 売上原価、販売費及び一般管理費

売上高の減少に伴い売上原価は、前連結会計年度より84億92百万円減少し、1,907億83百万円(前期比4.3%減)となりました。また、売上高に対する売上原価の比率については、0.4ポイント増加の86.7%となっております。

販売費及び一般管理費は、前連結会計年度より1億3百万円増加し、211億5百万円(前期比0.5%増)となりました。主な要因は、DX推進に伴う関連費用の増加によるものです。

 

② 営業利益

営業利益は、前連結会計年度より25億41百万円減少し、82億22百万円(前期比23.6%減)となりました。売上高営業利益率は、前連結会計年度より0.9ポイント減少の3.7%となりました。

 

③ 営業外損益

営業外収益は、前連結会計年度より3億66百万円減少し、9億43百万円となりました。一方、営業外費用は、前連結会計年度より2億88百万円増加し、4億75百万円となりました。主な要因は、為替差損の増加によるものです。

 

④ 経常利益

経常利益は、前連結会計年度より31億95百万円減少し、86億90百万円(前期比26.9%減)となりました。売上高経常利益率は、前連結会計年度より1.2ポイント減少の3.9%となっております。

 

⑤ 特別損益

特別利益は、前連結会計年度より15億98百万円増加し、16億58百万円となりました。主な要因は、投資有価証券売却益や固定資産売却益の増加によるものです。一方、特別損失は、前連結会計年度より91百万円減少し、39百万円となりました。

 

⑥ 親会社株主に帰属する当期純利益

親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度より14億25百万円減少し、70億46百万円(前期比16.8%減)となりました。

 

生産、受注及び販売の状況については、以下のとおりであります。

 

① 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

FAシステム事業

108,627

91.3

半導体デバイス事業

84,021

97.8

施設事業

21,266

101.2

その他

6,197

118.8

合計

220,112

95.3

 

 

② 当連結会計年度における仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

FAシステム事業

87,364

88.2

半導体デバイス事業

71,873

82.4

施設事業

19,403

98.9

その他

5,552

115.3

合計

184,194

87.4

 

(注) 上記金額は、実際仕入額によっております。

 

(2) 財政状態

当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末に比べて128億65百万円減少の1,654億16百万円となりました。この主な要因は、受取手形、売掛金及び契約資産の減少108億90百万円、商品の減少84億62百万円、現金及び預金の増加91億24百万円であります。

負債合計は、前連結会計年度末に比べて152億85百万円減少の704億23百万円となりました。この主な要因は、支払手形及び買掛金の減少114億51百万円、短期借入金の減少45億16百万円であります。

純資産合計は、前連結会計年度末に比べて24億20百万円増加の949億92百万円となりました。この主な要因は、利益剰余金の増加46億75百万円、自己株式の取得による減少27億35百万円であります。

 

(3) キャッシュ・フロー

当社企業グループの当連結会計年度における現金及び現金同等物の期末残高は、204億22百万円となり前連結会計年度末より63億84百万円増加いたしました。

 

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは、164億62百万円の収入(前連結会計年度は21億26百万円の収入)となりました。主な内容は、税金等調整前当期純利益103億10百万円、売上債権の減少額116億15百万円、棚卸資産の減少額92億71百万円などの増加と仕入債務の減少額124億50百万円などの減少であります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは、8億30百万円の支出(前連結会計年度は12億89百万円の支出)となりました。主な内容は、定期預金の増加による支出27億39百万円、有形固定資産の売却による収入17億52百万円などであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは、93億48百万円の支出(前連結会計年度は22億72百万円の収入)となりました。主な内容は、短期借入金の減少による支出45億96百万円、自己株式の取得による支出27億35百万円などであります。

 

資本の財源及び資金の流動性について

当社企業グループの運転資金需要のうち主なものは、仕入から回収までの資金立替、販売費及び一般管理費等の営業費用等で、自己資金及び金融機関からの借入金にて調達しております。

 

(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社企業グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
  連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
 

 

5 【重要な契約等】

販売及び仕入に関する契約

 

契約会社名

相手先の名称

契約内容

契約期間

㈱立花エレテック

三菱電機㈱

機器事業部扱い製品の特約販売

1984年4月から1か年
(1年ごとの自動更新)

半導体製品の特約販売

1996年4月から1か年
(1年ごとの自動更新)

通信・NTT事業部扱い製品の販売

2000年4月から1か年
(1年ごとの自動更新)

社会システム事業部・社会情報システム事業部扱い製品の販売

2002年4月から1か年
(1年ごとの自動更新)

㈱立花エレテック

ルネサス エレクトロニクス㈱

半導体の特約販売

2020年1月から1か年
(1年ごとの自動更新)

 

(注)契約期間は再契約のものを含めて最新の契約書に基づく契約期間を表示しております。

 

 

6 【研究開発活動】

該当事項はありません。