文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社は、お客様に常に国内および海外から厳選された安全・安心な食品を提供することで、新たな食文化を創造し、社会に貢献することを目指しており、そのために、原料調達、生産・加工、流通・販売という一貫した機能を強化し、お客様の変化するニーズに的確にお応えしていくことを当社経営の基本方針としております。また、企業価値の最大化と企業の持続的成長を実現し、株主・取引先・従業員・地域社会等様々なステークホルダーとの適切な協働を図ってまいります。
売上高に関しては、作柄や需要の変化を反映した現地価格の変動や為替相場の変動により、輸入食材の仕入単価が変動し、これを反映し販売価格も変動することから、販売量の増減とは別に売上高の増減要因となります。従って、経営指標としては、売上高よりも、売上総利益や営業利益での増益を主要な経営目標としております。また、企業価値の持続的な向上を目指し、資本コストを勘案し、ROE(株主資本利益率)で8%を目指す方針としております。工場の新設等の設備投資を積極的に行っており、減価償却費の計上等により現在は8%を下回っておりますが、中長期的に8%の達成を目指します。
当社の中長期的な経営戦略は以下のとおりです。
・主要商品におけるサプライチェーンの持続可能性の追求のため、新規開拓および産地多様化・分散化による仕入先多様化を進めてまいります。また、品質管理基準やリスク管理の共有、工程監査、定期会議、訪問等を通して仕入先との間での長期協力関係の実現に向けて取組みます。
・健康で豊かな食生活に向けた食の多様性提案に努め、健康志向、ヴィーガン、完全栄養食等の新しい需要へ対応した営業活動を積極的に進めます。また、健康素材の発掘を進め、食の多様性提案に向けた営業活動を強化してまいります。
・グローバル展開の強化を目指し、既存海外事業における中国ビジネスの黒字安定化および米国事業の強化を図るとともに、新興国市場の成長に合わせた輸出事業の開拓推進に取組みます。さらに海外現地需要に特化した商品開発に注力し、競争力のある商品群の構築を図ってまいります。
・市場ニーズにマッチした付加価値商品の選定および設備投資による自社加工品の増産体制の構築を図ります。また、自社加工品の販売地域の拡張、新たな販路の開拓に注力してまいります。
・再生可能エネルギーの使用を検討し、食品ロス・廃棄物の削減および歩留り改善による廃材削減に努め、さらにリサイクル品の導入等、環境への負荷を減らす取組みを積極的に進めてまいります。
・持続可能な物流網の構築維持を目指し、物流課題への取組みをスタートさせ、既存物流網の見直しや「2024年物流問題」への適切な対策を図ってまいります。
・自社工場の品質管理・保証体制の強化を進めるとともに、協力工場、仕入先への品質監査体制の強化に注力し、安心・安全な食品の提供体制を維持してまいります。
・カーボンニュートラルの実現に向けCO2排出量の蓄積データに基づき削減目標を設定し、CO2排出量の削減に努めます。仕入先の人権・環境対応等に関するCSR(企業の社会的責任)調査も継続的に実施し、職場における人権に関わる諸課題への対応も強化してまいります。
・ステークホルダーとの協働を目指し、環境への配慮、社会貢献、公正・透明な企業運営等のCSRへの対応を推進し、働き易い職場環境の整備、労働条件の改善や福利厚生の充実を図るとともに、地域社会への貢献を継続して促進してまいります。また、企業価値の向上を目指したIR活動の強化に努めます。
・情報開示の強化による企業の透明性と説明責任の確保に努め、ガバナンス委員会の活用と取締役会の実効性向上によるコーポレート・ガバナンス体制の一層の充実を図ります。リスク管理・コンプライアンスの徹底にも注力してまいります。
・DX推進による業務効率化の向上や自社社員のDXレベルの向上を目指すとともに、人事制度の再構築、人材多様性の追求、育成プログラムの構築を通して人的資本の最大限の活用を目指してまいります。経営戦略の実現に適合する人材戦略の構築を目指し、経営基盤の強化を図ります。
コロナ感染症の5類への移行に伴い、行動制約が緩和され外食需要が回復となりましたが、物価高の影響による節約志向への切替も予想されており、自炊や家庭内での食品需要が増え、単価の安いものにシフトする可能性が高くなっております。消費者の購買行動が鈍化する反面、健康志向や食品への安全・安心意識は高まり続けています。さらに環境問題への関心が高まり、ヴィーガン食、プラントベースフード等新しいトレンドが登場し、消費スタイルにもエシカル消費が増え、フェアトレード商品や環境に配慮した商品の購入が増加傾向となっております。健康で豊かな食生活に向けた食の多様性提案に貢献できるよう、需要に合った商品開発や業界ニーズへの対応に引き続き注力してまいります。
世界的な景気停滞や貿易摩擦、戦争等の国際情勢への不安や自然災害や気候変動の拡大、為替相場の大きな変動により、輸入原料・資源価格が大きく変動する状況が継続しております。商品仕入の産地多様化、分散化を進め、サプライヤーとの協力関係の強化により安定調達の確保に努めてまいります。
社会全体でAI(人工知能)の積極的利用が既に開始されております。人手不足やエネルギー価格の上昇等により人件費、物流費等のコストが上昇しておりますので、これらへの対応のため、経営・営業戦略のDX化を早期に推進する必要があります。社員全体のDXレベルの向上を図り、DX推進による業務効率化を一層進めてまいります。
経営環境が急速に変化する中、持続的に企業価値を向上させるためには、経営戦略の実現を支える人材戦略が問われています。デジタル化の進展やサステナビリティ経営の推進によって、人材に求められるスキル・能力が急速に変化しており、高度な専門性はもちろん、多様な視点から新たな発想を生み出せる人材がますます求められるようになっています。企業の競争力の源泉とも言える人材確保のため、公正的な人事評価制度の構築が必須となっていますので、経営戦略の実現に向けた人材育成も合わせて中長期人材戦略の構築を図ってまいります。
サステナビリティ経営は今では社会全体に求められている取組みであり、企業に関わる様々な人が持続可能性に注目し始めているのが現状です。持続可能な経済発展、社会開発、環境保護の3つの柱に沿って、環境や社会へ配慮した中長期戦略を立案し、継続的な企業成長の実現を目指して取組んでまいります。当社では「サステナビリティ基本方針」に基づき、仕入先との間で公正で適正な取引を行い、ともに繁栄できる関係の構築を目指しており、多様なステークホルダーと人権・労働環境・環境負荷等のサステナビリティ課題についてともに取組むことで、持続可能な社会への貢献を目指してまいります。コーポレート・ガバナンスについても一層の体制強化を図ってまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方および取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは2021年12月、持続可能な社会・環境の実現に対する社会的な意識の高まりを受け、「正栄食品工業グループ サステナビリティ基本方針」を策定しており、「経営理念」と「正栄食品工業グループ 行動規範」に基づく企業活動を通じて、当社グループを支えていただいている全てのステークホルダーと持続的成長と持続可能な社会・環境の実現に貢献するとともに、当社グループの中長期的な企業価値の向上、「サステナビリティ経営」の実現に努めます。
当社では、独立社外取締役が半数以上で構成するガバナンス委員会を設置し、取締役会への諮問機関として年に4回以上開催し、当社コーポレート・ガバナンス関連事項全般にわたり議論することで諮問機能を果たしています。
サステナビリティに関しては代表取締役社長を委員長とするサステナビリティ委員会を設置し、サステナビリティ基本方針に基づき、マテリアリティの特定および重点テーマの設定を行い、活動の計画・推進・管理に関する事項について、協議・報告を行っています。また、外部の客観的・合理的な評価をいただくために、この委員会には独立社外取締役も委員として参画しています。
そして、その内容を取締役会に年に2回以上答申し、取締役会では総合的な視点に立ち意思決定を行っています。
当社グループでは、世界各地より農産物・乳製品の加工原材料、商品を輸入調達しています。従って、気候変動により、干ばつや日照り、害虫の大量発生、受粉作業に不可欠な虫媒の不活動、作柄への影響による供給不安・価格の変動、品質不良、消費者の嗜好の変化、農産適地の変更等、多岐に影響が及ぶと考えられます。グループ全体でこれらの変化に注視し、随時、調達先の多様化を検討しリスクの分散、移行リスクに関してはマーケットの分析、他、新興産地の動向調査を行い、顧客に安定供給、代替商品の提案等を図っております。
また、気候変動に伴う消費者のエシカル消費の拡大、健康意識の向上等に対応し、新市場に向けた商品の調達・開発を行ってまいります。
(2) 人材育成方針および社内環境整備方針
『サステナビリティ経営』を実施していくうえで、人材の育成と多様化は推進していかなければならないテーマとなっています。
当社グループでは、サステナビリティ基本方針に掲げているように、社員・従業員に対しワークライフバランスや心身の健康管理を推奨し、一人一人が能力を発揮しやすい明るい働きやすい職場環境作りに努めています。また次世代育成のための社員教育、OJTの実施、業務に関わる資格・検定等の取得推奨を行っています。
当社は、社員一人一人の人権を尊重し、その個性を活かし、社員が生き生きと働き成果を高めてもらうことが企業成長の原動力と考えており、企業価値を高める重要な要素と位置付けています。様々な個性・能力・知見を備えた多様な人材を大切にし、チームワークによるダイナミックな価値創造とイノベーションによる成長を最大限に重要視します。また、前例にとらわれずに革新的な行動により、たえず学習し成長し続ける企業風土の醸成を目指しています。
そのために、人事面での公正な評価を踏まえた適所への登用を徹底することで、女性・外国人・中途採用者等の多様な個性・特徴・経験を持つ人材が中核人材として活躍することを促進し、グループの持続的成長に資する人的資本価値につなげる取組みを推進します。これらの施策により、生産性の高い課題解決型組織への変革を目指し、ダイバーシティ&インクルージョンを実現していきます。
女性については、当社グループは食品会社という側面からも女性の視点は大変重要であり、女性の採用を積極的に行っており、採用者に占める女性比率も一定の水準を維持しています。この中で、管理職への登用も進みつつあります。外国人については、海外関係会社では現地採用の社員が主要ポジションを占めており、また国内でも海外とのビジネスを担当する部署では外国人の採用・配属を行っております。中途採用については、即戦力としての期待等から、毎年一定数の採用を実施しており、実践的な実務能力に応じて組織責任者等への登用を進めております。他社での職務経験・経営経験を有し、当社固有の価値観に縛られない意見を通じ、果断な意思決定に貢献してもらっています。
当社グループは、企業に重大な影響を及ぼすリスクに的確に対処するべく、リスク管理委員会、サステナビリティ委員会等を設け、リスクの洗出しやレベル評価、リスクの対応策検討と進捗モニタリングを行い、リスクの適切な管理・対応を実施しております。
その結果を取締役会に答申し、取締役会が監督し、適切に経営へ反映してリスクマネジメントを推進しています。
(1) CO2排出量の削減
当社グループでは国内外の全事業所(支店・生産工場含む)においてCO2排出量の測定を実施し、2030年目標を下記のとおり設定しました。
◆CO2排出量30%の削減(2022年度比 スコープ1,2)
2022年度CO2排出量実績(2022年4月~2023年3月)
※スコープ1とは、自社での燃料の使用や工業プロセスによる直接排出の温室効果ガスの排出量です。
※スコープ2とは、自社で他社から供給された電気、熱、蒸気を使用したことによる間接排出の温室効果ガスの排出量です。
※スコープ3については、今後CO2排出量データの収集整備に努め、主要サプライヤーに対してもCO2排出量削減を働きかけ、協働で削減に取組んでまいる予定としております。
2024年度より、基準年2022年度からのCO2排出量推移を開示していく予定です。
正栄食品工業グループでは、国内外の活動拠点にて中長期的な視点でのCO2削減の取組みを進めています。
具体的な目標につきましては、2021年10月末の119ポイントから3年後の2024年10月末までに125ポイントに引き上げることを目標として設定しておりましたが、2022年10月末で集計したところ、中途採用者や女性の登用が進捗しており127.9ポイントまで上昇いたしましたので、140ポイントへ目標を引き上げております。2023年10月末現在実績は136.6ポイントと順調に推移しております。
なお、これとは別に、女性活躍推進法に基づき、管理職に占める女性割合の目標を設定し開示しております。2023年10月末時点での管理職(課長職以上)に占める女性従業員の割合は11.8%(提出企業単体)とまだまだ低いレベルにありますが、女性の管理職を育てるのは一朝一夕では難しく、まず管理職(課長職以上)になるための分母(係長職)を増やしていくことが重要と考え、2026年10月までに女性係長職の割合45%以上(2023年10月末41.1%)の目標を掲げています。また、男性の育児休業取得率50%以上、短時間勤務制度の対象年齢拡大等の目標を設定し、両立支援のひろば(URL: https://ryouritsu.mhlw.go.jp/hiroba/index.php)において公表しております。
これらの目標の達成に向け、研修を通じた社員(特に女性)の意識醸成、育児・子育て期間にある女性社員の支援、会社全体での意識改革や意識醸成を図ってまいります。
以上の取組みにより、人的資本の価値を最大化し、持続的な企業価値の向上を図ってまいります。
当社グループの財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性のあるリスクには以下のようなものがあり、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性がある事項と考えております。
なお、下記事項の記載において将来に関する事項が含まれておりますが、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当社グループは、国内外の食品メーカーや生産者から商品および原材料を調達し、また、国内および米国、中国に生産子会社を保有しております。品質保証部を中心に国内外の工場も参加した定期的な会議の開催等で品質管理の高度化や食品の安全性確保に努めておりますが、予見しえない問題や、製造および加工工程での不測の事故の発生等から、大規模な商品回収や多額な製造物賠償責任が生じた場合、当社グループの財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、多品種の食品原材料や商品を取扱い、特に輸入原材料・商品を中心に一定量の在庫を維持しております。農産物の収穫時期、各工場での生産時期、販売先への出荷時期、食品の賞味期限等を考慮し、商品別の担当者を配置し販売担当者との密接な情報交換により余剰在庫や賞味期限切れが発生しないよう在庫管理に努めておりますが、販売見込みと実績の乖離等により在庫の廃棄が生じた場合や大きな価格変動が発生した場合には、当社グループの財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、国内外から食品原材料や商品を調達しており、自然災害や気候変動等に起因した凶作等、安定した品質と数量を確保することができないリスクや、需給の変動による農産物の海外相場の変動や為替相場の変動から、仕入原価や生産コストが大きく影響を受ける可能性があります。このため商品別での仕入担当者を配置し、仕入先との密接な情報交換や作柄状況の確認により安定確保に努めておりますが、想定を超える規模での変動が生じた場合には原材料・商品の品質の低下や物量の不足により、当社グループの財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、営業所に加え生産工場等により事業を推進しております。事業継続計画(BCP)の定期的な見直しや保険の利用等でリスクの抑制に努めておりますが、大地震や自然災害等の想定を超える事象や大規模な火災が発生し保有する施設や工場等の損壊・喪失、また、感染症疾患の大流行等が発生した場合、受注・出荷活動による商品供給や工場による生産活動に支障を来たし、当社グループの財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、食品原材料や商品の一部を海外から調達しており、また海外において、生産拠点および販売事業を営んでおります。海外からの仕入や海外グループ会社管理の専門部署を設けリスク管理に努めておりますが、戦争やテロ、政治・社会変化、不利な影響を及ぼす租税制度や諸規制の設定または改廃等、予期せぬ事象が生じた場合や海外グループ会社へのガバナンスに瑕疵が発生した場合には、当社グループの財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは取引先への売掛債権に基づく信用リスクが発生しております。当社グループでは、信用情報の分析に基づき、取引先ごとで信用限度を設定し、限度金額に応じた承認権限に基づき審査を行う等で信用リスクの回避に努めておりますが、取引先の倒産のような予期せぬ事態により債権回収に問題が発生した場合には、当社グループの財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは事業活動を遂行するに当たり、日本においては食品安全基本法や食品衛生法等、その他事業を展開している各国においても同様に法的規制を受けております。当社グループではこれら法的規制の遵守に努め的確な対応を行っておりますが、今後法規制の変更があった場合や法的違反行為等の指摘を受けた場合、当社グループの事業活動が制限され、財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
デジタル化の進展を背景に、情報通信やデータ処理による受発注処理や会計処理に加え、取引先とのコミュニケーションや社内での情報交換等においても電子的な交信手段が利用されています。このため、情報システムの専門部署を設けリスクの低減に努めておりますが、情報漏洩、データの紛失、ウイルス攻撃等が発生した場合は、企業活動に支障が生じる可能性があり、財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは物流業界の人手不足に対応すべく、トラック輸送から鉄道貨物輸送等へのモーダルシフトの推進や輸入貨物を消費地に近い港への荷揚げ等の取組みを行っていますが、配達ドライバー不足による商品の納期遅延、人件費高騰や燃料費高騰等による物流コストの大幅上昇といった問題が発生した場合、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、世界的に海上輸送に不安定要素が増加しており、輸出入の停滞が発生した場合に、商品調達の遅れや物流コストの上昇等、財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社および持分法適用会社)の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態および経営成績の状況
当連結会計年度における我が国経済は、企業業績は堅調に推移していますが、消費や設備投資は鈍化しており、景気の先行きは不透明な状況が続きました。食品業界におきましては、原材料コストの上昇を反映した値上げが浸透しつつあり業績は改善基調にありますが、食品価格上昇に伴う消費者の節約志向への対応が求められています。このような状況にあって当社グループでは、仕入れ先の多様化やグループ生産工場の活用による付加価値商品の提案を継続することで、適正価格の実現に向けた取組みを行うと同時に、DXの推進による業務の見直し等を進めてまいりました。
これらの結果、売上面につきましては、原材料費・エネルギーコスト等の上昇を反映した価格引上げもあり、乳製品・油脂類、製菓原材料類、菓子・リテール商品類等、日本国内での売上が増加したことから、当連結会計年度の連結売上高は、前年同期比6.2%増の1,095億94百万円となりました。
利益面につきましては、前年は米国でのクルミ事業の利益が大きく拡大したため、前年比では米国セグメントの利益が大きく減少しましたが、値上げの浸透や工場の稼働率の改善等から日本セグメントでは増益となり、中国セグメントでも香港でのビジネスが好調に推移しました。この結果、営業利益は同7.6%増の40億34百万円となり、経常利益は同1.0%増の41億37百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は同0.7%増の28億9百万円となりました。
当期の品目別の業績は次のとおりであります。
(乳製品・油脂類)
国内脱脂粉乳、国内バター製品、輸入バター等の売上が増加したことから、乳製品・油脂類売上高は344億62百万円(前期比7.0%増)となりました。
(製菓原材料類)
製菓用焼き菓子やコンビニエンスストア向け等仕入品の国内販売、香港での日本製抹茶の販売等が増加となりました。この結果、製菓原材料類売上高は200億70百万円(前期比10.8%増)となりました。
(乾果実・缶詰類)
米国でのクルミの売上は市場価格の低下から減少しましたが、日本国内でアーモンド、ココナッツ等のナッツ類やレーズン等のドライフルーツ、外食用食材の売上が好調に推移しました。これらの結果、乾果実・缶詰類売上高は357億60百万円(前期比2.4%増)となりました。
(菓子・リテール商品類)
菓子類については、値上げ効果もあり、売上増となり、ナッツ小袋等のリテール商品の販売も増加しました。これらの結果、菓子・リテール商品類売上高は190億2百万円(前期比7.7%増)となりました。
当期のセグメントの業績は次のとおりであります。
(日本)
当地域の売上高は、円安やコスト上昇を反映した価格引上げもあり、輸入乳製品、製菓用焼き菓子、ナッツ類、レーズン、外食用食材等、総じて売上増加となり、前年同期比6.6%増の997億70百万円となりました。
セグメント利益は、物流費増などのコストアップ要因はありましたが、エネルギー価格や輸入原材料価格の落ち着きによる利益率改善や工場の稼働率上昇等の要因から、前年同期比16.0%増の36億89百万円となりました。
(米国)
当地域の売上高は、主力のクルミで販売物量は増加しましたが、市場価格の低下により販売単価が低下したことなどから、前年同期比17.3%減の79億50百万円となりました。
セグメント利益につきましては、前期は販売契約後にクルミ価格が大きく低下し、これを反映して農家からの仕入価格を引き下げることができたため利ざやが拡大しましたが、今期は同様の利ざやを確保できなかったことから、前年同期比49.0%減の5億63百万円となりました。
(中国)
当地域の売上高は、コロナ禍が落ち着き、中国および香港での売上が増加したことから、前年同期比14.7%増の89億17百万円となりました。
セグメント利益は、中国産シード類輸出採算の改善や香港での販売好調により、前年のセグメント損失から大きく改善し、92百万円となりました(前年同期は1億82百万円の損失)。
当連結会計年度末の財政状態は次のとおりであります。
(資産)
当連結会計年度末の総資産は、前年同期に比べ46億円増加し、874億52百万円となりました。その主な要因は、流動資産については、「商品及び製品」が10億79百万円、「仕掛品」が1億99百万円それぞれ減少したものの、「現金及び預金」が50億81百万円、「受取手形及び売掛金」が8億38百万円、「前渡金」が2億63百万円それぞれ増加したことから、前年同期に比べ46億55百万円増加し、562億54百万円(構成比64.3%)となりました。固定資産については、投資その他の資産が7億14百万円増加したものの、有形固定資産が7億82百万円減少したことから、前年同期に比べ54百万円減少し、311億98百万円(構成比35.7%)となりました。
(負債)
負債合計は、前年同期に比べ17億23百万円増加し、354億16百万円(構成比40.5%)となりました。その主な要因は、流動負債については、「支払手形及び買掛金」が6億73百万円、「1年内返済予定の長期借入金」が8億80百万円それぞれ減少したものの、「短期借入金」が8億72百万円、「未払法人税等」が3億81百万円それぞれ増加したことから、前年同期に比べ1億円増加し、271億91百万円(構成比31.1%)となりました。固定負債については、「退職給付に係る負債」が2億11百万円減少したものの、「長期借入金」が16億18百万円、「繰延税金負債」が1億83百万円それぞれ増加したことから、前年同期に比べ16億22百万円増加し、82億25百万円(構成比9.4%)となりました。
(純資産)
純資産合計は、前年同期に比べ28億77百万円増加し、520億35百万円(構成比59.5%)となりました。その主な要因は、「繰延ヘッジ損益」が2億12百万円減少したものの、「利益剰余金」が20億円、「その他有価証券評価差額金」が5億6百万円、「為替換算調整勘定」3億29百万円、「退職給付に係る調整累計額」が1億86百万円それぞれ増加したことによるものです。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前期比50億81百万円増の129億48百万円となりました。
各キャッシュ・フローの状況は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は、63億27百万円(前年同期比54億93百万円増)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益41億16百万円、減価償却費29億5百万円、売上債権の増加7億91百万円、棚卸資産の減少13億49百万円、仕入債務の減少7億1百万円、利息及び配当金の受取額2億13百万円、利息の支払額1億25百万円、法人税等の支払額9億44百万円によるものです。
前年同期比で資金が増加となりました要因は、売上債権の増減額が5億8百万円増加、仕入債務の増減額が4億23百万円減少したこと等により資金が減少した一方で、為替差損益が1億61百万円増加、棚卸資産の増減額が55億76百万円減少、利息及び配当金の受取額が1億5百万円増加、法人税等の支払額が5億54百万円減少したこと等によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は、19億98百万円(前年同期比1億76百万円増)となりました。これは主に、有形固定資産の取得によるものです。
前年同期比で使用した資金が増加となりました要因は、有形固定資産の売却による収入が1億18百万円減少したことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果得られた資金は、6億81百万円(前年同期は17億61百万円の支出)となりました。これは主に短期借入金の純増額の8億5百万円、長期借入金の借入による収入41億円、長期借入金の返済による支出33億61百万円、配当金の支払額8億8百万円によるものです。
前年同期比で得られた資金が増加となりました要因は、長期借入金の返済による支出が32億10百万円増加した一方で、短期借入金の純増減額が15億52百万円増加、長期借入による収入が41億円増加したこと等によるものです。
③ 生産、受注および販売の実績
(生産実績)
当連結会計年度における生産実績をセグメントの区分に替えて事業の部門別に示すと、次のとおりであります。
(注) 金額は販売価格によっております。
当連結会計年度における仕入実績をセグメントの区分に替えて事業の部門別に示すと、次のとおりであります。
(注) 金額は仕入価格によっております。
当社および連結子会社は需要見込による生産方式をとっているため、該当事項はありません。
当連結会計年度における販売実績をセグメントの区分に替えて事業の部門別に示すと、次のとおりであります。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計方針および見積り
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。
この連結財務諸表の作成に当たっては、当社経営陣による会計方針の選択・適用、資産・負債および収益・費用の報告金額および開示に影響を与える見積りを必要といたします。経営陣は、これらの見積りについて過去の実績や現状等を勘案し、合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 (1) 連結財務諸表 注記事項 重要な会計上の見積り」に記載のとおりであります。
当連結会計年度の経営成績等の分析については、「(1) 経営成績等の状況の概要」に記載のとおりです。
経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「3 事業等のリスク」に記載のとおりですが、中でも、海外も含めた産地からの農産物の調達・仕入れにつきましては、世界的な気候変動や自然災害の影響によって、作柄が影響を受け調達が難しくなる可能性があります。また、これに加え、主要消費地の需要や関税等、貿易の枠組みの変化によって価格が上下する可能性があります。これらの結果、仕入れのタイミング等で仕入価格と販売価格の変動に時間差が発生する場合には、利益の増減要因となります。当社では販売担当とは別に商品別の担当者を置き、産地の状況を常に把握することで、価格変動リスクに備えると同時に、仕入先の分散や販売先の必要量の把握等により、このようなリスクの低減を図っております。
経営上の目標の達成状況については以下のとおりです。当社グループでは、日本、米国、中国の3地域に有している生産拠点を活用し、日本国内のみならず、中国、米国、欧州等の海外での売上拡大を図っております。一方、現地価格や為替相場の変動による輸入食材の単価の変動がある場合には、販売数量が変わらない場合でも売上高の増減要因となります。従って、売上高よりも、売上総利益や営業利益での増益を主要な経営目標としております。また、企業価値の持続的な向上を目指し、資本コストを勘案しROE(株主資本利益率)で8%以上を目指す方針としております。工場の新設等の設備投資を積極的に行っており、減価償却費の計上等により現在は8%を下回っておりますが、中長期的に8%の達成を目指します。
当連結会計年度の達成状況は、下記のとおりであります。
当社グループでは安全・安心に向けた設備投資の継続等で一層の付加価値商品をご提供し、ROE8%以上を早期に達成していきたいと考えております。
③ 資本の財源および資金の流動性についての分析
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、商品及び製品、原材料等の仕入費用や生産子会社の製造費用並びに、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。また、投資を目的とした資金需要は生産施設における建物及び構築物の新改築や機械装置等の充実のための事業投資であります。
当社グループは、事業運営上必要な運転資金および設備投資資金については、自己資金で賄うことを基本方針としつつ、不足分は金融機関からの短期・長期借入金により調達しております。また、一部はグループ内で資金の効率化を目的としてグループ会社間で融資を行っております。
該当事項はありません。
該当事項はありません。