第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1)会社の経営の基本方針

当社は、「美と健康」に関する生活必需品をフルラインで安定的に供給する企業として、高品質・ローコストの物流機能と小売業の利益経営に貢献する営業機能を両軸に、メーカーから小売業に至るまでのサプライチェーン全体の最適化・効率化に貢献する中間流通業を目指すことを基本方針としております。

 

(2)経営環境及び優先的に対処すべき課題等

当社は、持続的成長に向けた事業運営において、労働人口減少、少子高齢化、価値観の多様化、気候変動や資源エネルギーの不足を重要な環境の変化と捉えております。これらの変化により、国内経済縮小による収益の減少や事業運営コスト高騰による収益性の低下などのリスクが高まる可能性がある一方で、高効率物流に対するニーズの高まりやデータを活用した流通ソリューションの浸透などにより、新たな機能提供に伴う収益機会が生まれると考えております。これらの変化を捉え持続的成長を果たすために、「つなぐ力で人と社会のミライを創る」をスローガンとする長期ビジョンにおいて、当社の存在意義、収益機会の獲得、リスクの低減の観点から、以下の4つを優先的に対処すべき課題と認識しております。

 

長期ビジョンのスローガンと重要課題

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(3)経営戦略等

当社は、優先的に対処すべき課題の解決に向け、長期ビジョンと足許の現状との双方からのアプローチにより2027年3月期までの3か年の中期経営計画「PALTAC VISION 2027」を策定いたしました。この3か年を、長期ビジョン実現に向けた「構造改革による変革基盤の構築」の期間と位置づけ、既存事業の収益性改善、新たな価値創造に向けた挑戦、サステナビリティの向上、資本効率を意識した経営の実践に取り組んでまいります。

また、取り組みの達成状況を判断するための指標として、事業活動の成果を示す財務指標や企業の持続可能性や社会的責任など財務的な側面以外の成果を示す非財務指標を定めております。中期経営計画の最終年度である2027年3月期は以下の目標を設定しております。

 

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中期経営計画「PALTAC VISION 2027」の位置づけ

 

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変革基盤構築のポイント

 

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なお、中期経営計画の具体的な取り組みについては、2024年5月13日公表の「中期経営計画に関するお知らせ」、または当社ウェブサイトの「長期ビジョン・中期経営計画」をご覧ください。

(長期ビジョン・中期経営計画) https://www.paltac.co.jp/ir/management/plan/

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社のサステナビリティに対する考え方及び取組は以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

 当社は、いつの時代も「人々の豊かで快適な生活の実現」を目指して、流通の最適化・効率化を通じて社会課題の解決に取り組んでまいりました。社会が目まぐるしく変化を続ける現在、この先のミライにおいても人々の豊かで快適な生活を実現していくためには、流通にさらなるイノベーションを起こすことが必要不可欠と考えております。当社は、お取引先さまをはじめとするすべてのステークホルダーのみなさまとの「つながり」、創業以来125年以上にわたり築き上げた「つなぐ力」を活かして流通のイノベーションに挑戦いたします。社会全体の課題と当社の事業成長における課題との関連性を踏まえて特定した重要課題(マテリアリティ)の解決により、社会や環境における新たな価値の創造を通じた持続可能な社会の実現に貢献してまいります。

 

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サステナビリティに関する考え方や取り組みは当社ウェブサイトにも掲載しております。

(https://www.paltac.co.jp/sustainability/)

 

 

(1)ガバナンス

 当社は、気候変動への適切な対応や人的資本の向上といったサステナビリティ課題への対応に向けて、代表取締役社長の監督・指示のもと、担当取締役直下に設置したサステナビリティプロジェクトを中心に全社横断的な取り組みを進めております。サステナビリティプロジェクトでは、事業に影響を及ぼすリスク・機会の特定、及びそれらへの対応方針の立案を行っております。これらの結果は、プロジェクトの事務局を担うCSR推進本部が定期的に取締役会に報告し、取締役会において当該報告内容に関する管理・監督を行っております。

 

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(2)リスク管理

 当社は、経営目標の達成に向けて、事業遂行上に存在し得るリスク要因に適切に対応し、企業の社会的責任を果たすことを目的に「リスクマネジメント基本規則」を制定しております。リスク管理体制については、リスク管理の統括部署であるCSR推進本部が中心となり、経営層・各部門と連携し、気候変動や人的資本投資などサステナビリティの観点を含む事業運営に影響を及ぼすリスクの抽出・分析、影響度・発生可能性等を基準とした重要性の評価、及び対応方針の立案を行っております。これらのプロセスを経て特定した「重要なリスク」は、定期的に取締役会に報告され、取締役会において管理・監督を行い、中期経営計画の戦略に織り込んで対応を進めております。

 サステナビリティに関する事項を含む具体的なリスクに関しては「3.事業等のリスク」を参照ください。

 

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(3)戦略並びに指標及び目標

①気候変動対応

イ.戦略

 異なるシナリオ(2℃未満、4℃)における事業インパクトを評価するとともに、気候関連リスク・機会に対する自社戦略のレジリエンスを評価することを目的として、国際エネルギー機関(IEA)や、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が公表する複数のシナリオを参照し、2030年時点における気候変動の影響について分析を実施いたしました。

 分析の結果、2℃未満シナリオでは、炭素税等の導入や気候変動対応への取り組み遅延による取引縮小等のリスクが高まる一方で、エシカル商材等の需要拡大が見込まれると認識いたしました。4℃シナリオでは、主なリスクとして自然災害による供給網への被害が想定されます。しかし、当社は平時より大規模災害等の様々なリスクを想定した実効性のあるBCPを策定しており、その一つとして、1つのセンターが被災により出荷不能に陥ったとしても、他センターから配送を補完するバックアップ体制を整えております。そのため、2030年時点での自然災害による物理的リスクの影響は大きくないと考えております。

 一方で、機会については、気温上昇に伴う夏物商材や災害対策商材等の需要拡大が見込まれると認識いたしました。また、いずれのシナリオにおいてもコスト上昇圧力が強まることが見込まれますが、これはリスクである一方、当社が築き上げてきた「強み」であるローコストかつ高効率物流網を活かす機会でもあると考えております。当業界は、店舗における人手不足や配送ドライバー不足への対応など喫緊の課題に直面しており、気候変動以外を要因とするコスト上昇圧力も強まっております。当社は、このような環境下において、強みである「物流機能」、中間流通で培った「つながり」にイノベーションを起こすことで、負担を生まない流通づくりに努め、リスクの低減および収益機会の獲得を図ってまいります。

 

■リスクと機会

区 分

内 容

影響度

2℃未満

4℃

リスク

移行

政策・

法規制

・炭素税等の導入によるコスト増加

・配送業者のコスト増加による配送単価の上昇

評判

・気候変動対応への取り組み遅延による取引縮小

物理

慢性

・気温上昇による季節商材(冬物)等の需要減少

・気象パターンの変化による原材料費の高騰

(仕入原価の上昇)

小~中

小~中

急性

・異常気象の激甚化による供給網への被害(物的・人的)

機 会

販売機会の

増加

・生活者のエシカル消費ニーズの拡大

・災害対策商材の需要増加

小~中

・気温上昇による季節商材(夏物)や熱ストレス対策商材

等の需要増加

相対的

競争力の上昇

・気候変動対策に伴うコスト上昇効果を最小限に抑える

ローコスト物流網へのニーズ上昇

小~中

・安定供給を維持する物流基盤へのニーズ上昇

(BCP対策及び全国RDC物流網)

小~中

小~中

事業/財務影響度の評価    大:事業戦略への影響または財務的影響が大きいことが想定される

    中:事業戦略への影響または財務的影響が中程度と想定される

    小:事業戦略への影響または財務的影響が小さいことが想定される

 

 

ロ.指標と目標

 当社は、今世紀末までの気温上昇2℃未満実現に貢献するため、Scope1・2について「2030年度(2031年3月期)にCO2排出量2020年度(2021年3月期)比50%削減」「2050年度(2051年3月期)にCO2排出量実質ゼロ」の目標を設定しております。目標達成に向けた指標としては、「PALTAC VISION 2027」における重要な非財務目標として「2026年度(2027年3月期)にCO2排出量2020年度(2021年3月期)比28%削減」を設定しております。当社のScope1・2においては、物流センターの電力使用による排出が大半を占めておりますが、商品出荷を止めることはできないため、電力使用量を大幅に減らせないなか排出削減を実現する必要があり、再エネを「創る」「買う」施策を中心に目標達成に向けた取り組みを進めております。具体的には、太陽光発電システムを設置可能な物流センターの屋上へ順次設置するとともに、環境証書の購入や再エネ電力プランへの切り替えにより再エネ電力を調達し、段階的な削減を進めてまいります。当事業年度においては、環境証書の購入や物流センター(FDC広島)屋上への太陽光発電システム設置、営業車の環境配慮車(ハイブリッド車等)への切り替えなどを進めてまいりました。また、これらの取り組みに向けた資金に充当することを目的に、2024年7月29日に公表いたしましたとおり「ESG自己株式取得」の手法を用いて自己株式の取得を実施いたしました。

 Scope3については、商品輸送に伴うCO2排出量(GHGプロトコル:カテゴリー4)の削減に向けて、配送効率化に向けた既存の取り組みを加速させるとともに、お取引先様との連携・協働により取り組みの幅を拡大することで、事業活動を通じたCO2排出量の削減を進めております。その他のカテゴリーにおいては、当社事業との関連度を考慮したうえで、CO2排出量の算定及び算定精度の向上に努めるとともに、削減可能性の調査・情報収集を行い、順次対応してまいります。

 

目標

指標

実績

脱炭素社会移行への貢献・

 CO2排出量 Scope1・2

2031年3月期 50%削減

 (2021年3月期比)

2051年3月期 実質ゼロ


2027年3月期 28%削減

 (2021年3月期比)

 


2024年3月期 14.8%削減

2025年3月期 18.7%削減

        (速報値*)

* 2025年3月期におけるCO2排出量削減率につきましては、環境証書(FIT非化石証書)の取得による削減効果を含んでおりますが、当該削減量の算定に用いるFIT補正率が未公表(2025年7月頃公表予定)であるため、速報値として示しております。確定値は、FIT補正率の公表後に、当社ウェブサイト等で公表いたします。

 

気候変動への対応に関する取り組みは、当社ウェブサイトにも掲載しております。

(https://www.paltac.co.jp/sustainability/environment/)

 

 

②人的資本・多様性

イ.戦略

 当社は、人財こそが価値創造の源泉かつ最も重要な資産であると考えており、長期ビジョンにおいて、多様な人財が互いを尊重し合い、自律・自発の活躍を通じて、組織ひいては社会とともに成長していくことを目指しております。ビジョンの実現に向けては、「多様な人財の育成・確保」、「活躍を促す環境の整備」、「健康経営の推進」に積極的な投資を実行することで、各取り組みの相乗作用により、自律・自発の組織風土の醸成と従業員エンゲージメントの向上を図ってまいります。

 多様な人財の育成・確保については、既存の枠組みにとらわれず、新たな流通の形をデザインできる人財や、デジタル技術を最適な形で活用し、アイデアを具現化できる人財など、長期ビジョンの実現に向けて必要となる人財のポートフォリオを構築し、ポートフォリオに沿った能力開発プログラムの設計と運用および柔軟な採用を進めてまいります。また、育成においては、ジョブポスティングやジョブローテーションの活性化を通じて、新たな学習の機会を提供するとともに、異なる部門という視点での「知と経験のダイバーシティ」にもつなげていく考えです。

 活躍を促す環境の整備については、自律的なキャリア形成をサポートする制度の整備、タレントマネジメントを活用した人財一人ひとりの特性に応じた最適配置などにより「働きがい」を高めてまいります。加えて、性別などの属性を問わず活躍を促すための各種制度の整備や働き方改革、オフィスの快適性向上などのワークプレイス最適化により、多様な価値観を最大限活かせる「働きやすい環境」を構築してまいります。

 健康経営の推進については、セミナーや研修の充実による一人ひとりの意識向上、心と身体の健康を守る各種サポートの充実、職場の労働安全衛生を守る専門チームの強化などを通じて、すべての取り組みの根幹となる従業員の健康と安全をトータルでケアする体制を強化してまいります。

 

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ロ.指標と目標

 当社は、長期ビジョンにおいて、「多様な人財が自律・自発で活躍する組織の構築」を目標としております。当事業年度においては、従業員一人ひとりの主体的な活躍を後押しするために、上記の戦略に沿って各種制度や業務の見直しに着手いたしました。働きやすい環境づくりにおいては、業務の特性やライフスタイルに応じた柔軟な働き方を実現するため、フレックスタイム制度についての検討を進め、2025年4月1日に導入いたしました。また、女性社員が集まり、働き方やキャリアなどについて議論し、制度や職場環境に関する具体的な改善提案を行うといったボトムアップ型の取り組みも推進しております。人財育成においては、専門性を高めるための各本部主催の研修や、公募型研修の拡充を通じて、従業員の主体的な学びの機会を広げております。健康経営の推進に向けては、従業員の健康情報管理システムを導入し、健康診断結果の効率的な管理や定期的な健康情報の発信を通じて、従業員の健康意識の向上と組織全体の健康増進を図っております。

 また、事業活動を支える基盤であり、企業の持続的成長につながる人権の尊重に取り組む方針としてPALTAC人権方針を策定いたしました。従業員をはじめとするすべてのステークホルダーの人権を尊重する取り組みを推進することで、多様な人財が活躍できる環境づくりをさらに進めてまいります。

 目標達成に向けた指標としては、「PALTAC VISION 2027」における重要な非財務目標として、多様性確保の観点から、「管理職に占める女性労働者の割合」、「男性労働者の育児休業取得率」、エンゲージメント向上の観点から、「エンゲージメントスコア」を設定しております。当事業年度における実績については、以下のとおりとなっております。

 

目標

指標

実績

多様な人財が自律・自発で

活躍する組織の構築

管理職に占める女性労働者の割合

 2027年3月期 8.4

男性労働者の育児休業取得率

 2027年3月期 60

エンゲージメントスコア

 2027年3月期 55.0

・管理職に占める女性労働者の割合

 2024年3月期 6.7

 2025年3月期 6.9

・男性労働者の育児休業取得率

 2024年3月期 30.0

 2025年3月期 47.9

・エンゲージメントスコア

 2024年3月期 48.1

 2025年3月期 51.2

 

人的資本に関する取り組みは、当社ウェブサイトにも掲載しております。

(https://www.paltac.co.jp/sustainability/social/)

 

3【事業等のリスク】

当社では、経営目標の達成に向けて、事業遂行上に存在し得るリスク要因に適切に対応し、企業の社会的責任を果たすことを目的に「リスクマネジメント基本規則」を制定しております。リスク管理体制については、リスク管理の統括部署であるCSR推進本部が中心となり、経営層・各部門と連携し、事業運営に影響を及ぼすリスクの抽出・分析、影響度・発生可能性等を基準とした重要性の評価、及び対応方針の立案を行っております。これらのプロセスを経て特定した「重要なリスク」は、定期的に取締役会に報告され、取締役会において管理・監督を行い、中期経営計画の戦略に織り込んで対応を進めております。

 

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投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。

なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1)労働人口減少に関するリスク

 当社は、多くの従業員により事業活動を行っていることから、昨今の労働人口減少は、持続的成長の実現に向けて

対応すべき重要な環境変化の1つと認識しております。労働人口減少は、人件費の高騰や人材の確保が困難となるな

ど、当社のみならず業界全体に大きな影響を及ぼします。このため、魅力ある職場環境や人事制度の構築、従業員の

スキル向上に向けた継続的な育成やキャリア人材の積極採用、既存物流センターの改善活動による生産性の向上、及

び大幅に生産性を向上させる新物流モデルの開発などに取り組み、労働人口減少に向けた対応を行っております。し

かしながら、想定を超える労働市場の逼迫により、さらなる人件費の高騰や計画どおりに人材を確保できない場合

は、事業活動及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)配送に関するリスク

当社は、物流センターを起点として小売業へ商品配送を行っております。配送については、外部の配送業者へ委託しておりますが、労働人口の減少に伴うドライバーの人手不足が懸念されるなか、商品の安定供給を維持するため、配送業者や小売業をはじめとするパートナー企業との連携・協働により配送改善・効率化を進めております。しかしながら、今後の配送業者における人手不足が、新たな法改正などによりさらに深刻化する場合には、当社が負担する配送費の増大や安定供給に支障をきたすなど事業活動及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)事業環境の変化に関するリスク

当社が属する化粧品・日用品、一般用医薬品業界において、業種・業態を超えた競争の激化やM&Aによる規模拡大が続いております。このため、当社では取引先のニーズを捉え、環境の変化に即座に対応できる組織を構築しております。しかしながら、今後さらなる競争の激化や取引先の企業再編等により取引先の政策や取引条件が大幅に変更された場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)情報システム・情報セキュリティに関するリスク

当社は、重要な営業・物流施設であるRDCの運営・管理において、独自の情報システムやコンピュータネットワークを用いております。自然災害などに対応するため、基幹システムのクラウド化によるデータの分散保管や、免震設備及び自家発電装置を備えたデータセンターの活用など、被災時の早期復旧を可能とする仕組みを整え、事業継続性の向上に努めております。また、情報セキュリティ事故が発生した場合においても、迅速かつ的確に対処し事業への影響を最小限に抑えるために、CSIRTを中心に平時より緊急対応体制の整備を進めております。しかしながら、想定を超える自然災害などの発生により、機能停止した場合などは、販売・物流に大きな支障が生じる可能性があります。また、コンピュータウイルスの侵入を防止するため、ソフトの導入及びシステムの監視体制を構築しておりますが、サイバー攻撃などによるシステム障害や情報漏洩が発生した場合は、事業活動及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(注)CSIRT(Computer Security Incident Response Team)とは、サイバーセキュリティの有識者及び有資格者を中心に構成したセキュリティチームを指し、重大事故発生時は、情報管理委員会や各部門などと連携し、事故の収束までを対応いたします。

 

(5)自然災害・感染症等の発生に関するリスク

当社は、全国に多数の事業所、物流センターを設置し、多くの従業員により事業活動を行っております。自然災害や感染症の拡大等による損失を最小限に抑えるため、一部の事業所の物流機能が不全となった場合においても、他の事業所からバックアップできる体制を敷くなど、事業継続計画(BCP)の整備に努めております。しかしながら、大規模な自然災害の発生等によるライフラインや交通網の寸断、感染症の流行に伴うロックダウンなど予期せぬ事態が発生した場合、物流サービスの提供などに支障が生じ業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6)気候変動に関するリスク

当社が属する生活必需品の流通業界においても、気候変動への対応は業界全体で対応すべき重要なテーマであると認識しております。当社は気候変動をはじめ環境に関する社会的課題を持続的成長に向けて解決すべき重要課題の一つとして捉え、中長期戦略に織り交ぜた対応を進めております。しかしながら、気候変動による自然災害の増加によってもたらされる供給網への被害や原材料費高騰により仕入原価の上昇などの物理的な被害や炭素税等の導入をはじめとする脱炭素社会への移行コストにより当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7)固定資産の減損に関するリスク

他事業者との競合規模や当社の事業領域の拡大、日々進化し続けるデジタル技術の活用など当社を取り巻く環境が変化するなか、持続的成長に向けた物流・情報システム機能を充実・拡大するための設備投資を積極的に実施しております。設備投資の実施に際しては、事業収益性や費用対効果などの見積もりを行い、取締役会などにおける議論を通じて投資の可否を決定しております。しかしながら、事業環境の著しい変化や収益状況の悪化などにより、固定資産の減損損失を計上する必要が生じた場合は、業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8)コンプライアンスに関するリスク

当社は、ステークホルダーのみなさまから信頼され永続的に発展する企業であるためには、一人ひとりが、法令の遵守はもちろんのこと、社会におけるルールやマナーを守り、高い倫理観を持って行動することが重要であると考えております。このため一人ひとりがコンプライアンスの重要性について理解を深められるよう、集合研修やオンライン研修など様々な教育・研修を行っております。しかしながら、コンプライアンス上のリスクは完全に排除することは困難であり、法令等に抵触する事態が発生した場合、当社の社会的信用の低下や発生した損害に対する賠償金の支払いなどにより、事業活動及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(9)特有の法的規制等に係るもの

当社は、一般用医薬品及びその関連商品を取り扱っております。このため主に医薬品医療機器等法などの関連法規の規制を受けており、各事業所が所轄の都道府県知事より必要な許可、登録、指定及び免許を受け、あるいは監督官公庁に届出の後、販売活動を行っております。このため、主管部門であるCSR推進本部において必要な許認可等の取得及び法令遵守の環境維持に努めておりますが、法令違反等によりその許認可等が取り消された場合や許認可等が得られない場合は、当社売上のおよそ1割を占める商品の全部又は一部の販売が制限され事業活動及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10)債権回収リスク

当社は、販売先との継続取引に伴う債権について、当該販売先との密な連携体制の強化や当社内における債権管理の徹底、さらには取引信用保険の加入等により貸倒発生のリスクを抑える活動を行っておりますが、結果として販売先の破産、民事再生等による債務不履行が発生した場合は、業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(11)商品在庫リスク

当社が所有する商品在庫及び販売先からの返品在庫は、ほとんどが仕入先へ返品が可能なため商品在庫リスクを回避することができますが、仕入先の破産や民事再生等が発生した場合、商品在庫の価値低下を招くと同時に返品が不能となるため、業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(12)業績の変動について

当社の業績は、第4四半期において、他の各四半期に比べて売上高は減少する傾向にあり、利益も売上高の変動の影響を受けて減少する傾向にあります。

これは主に、1月は年末にかけて日用品をまとめて購入する消費需要が12月に発生する影響により、また2月は営業日数が少ないため他の月に比べて売上高が少なくなることによります。

このため、第3四半期までの業績の傾向が、年間の当社の業績の傾向を示さない可能性があります。

なお、2025年3月期における四半期毎の業績の概要は以下のとおりであります。

 

 

2025年3月期

 

第1四半期

第2四半期

第3四半期

第4四半期

年間

売上高 (百万円)

(構成比 %)

302,914

(25.5)

297,513

(25.0)

310,636

(26.2)

277,033

(23.3)

1,188,097

(100.0)

営業利益 (百万円)

(構成比 %)

7,428

(26.5)

6,548

(23.4)

8,462

(30.2)

5,569

(19.9)

28,008

(100.0)

経常利益 (百万円)

(構成比 %)

8,305

(26.2)

7,874

(24.9)

9,237

(29.1)

6,267

(19.8)

31,684

(100.0)

 

(13)親会社グループとの関係

親会社グループは、「医療と健康、美」の流通で社会に貢献することを目指し、主な事業として「医療用医薬品等卸売事業」、「化粧品・日用品、一般用医薬品卸売事業」、「動物用医薬品・食品加工原材料卸売等関連事業」を営んでおります。当社は、その中で「化粧品・日用品、一般用医薬品卸売事業」を専属的に担っており、他のグループ企業とは取扱商品や流通形態等が大きく異なることから、当社との間に競合関係は存在せず、親会社グループから影響を受けることなく独自に営業活動を行っております。ガバナンス面における当社の事業戦略、人事政策等の経営判断につきましては、全て当社が独立して主体的に検討のうえ決定しており、当社取締役会の決定が、グループ内の最終決定となっております。

また、親会社を有する上場企業として、適正なガバナンス体制の構築に向け、独立した社外役員の積極的な登用を進めており、取締役会の構成は全13名のうち7名が独立社外取締役であり過半数を構成しております。さらに、当社と支配株主等との取引においては、支配株主等との利益相反リスクについて適切に監視・監督し、コーポレート・ガバナンスの充実を図ることを目的に、取締役会の諮問機関として、全ての独立社外取締役及び独立社外監査役で構成する、特別委員会を設置しております。

一方で、親会社においても、少数株主の権利保護をはじめ当社の独立性確保は重要であるとの認識のもと、「グループ会社基本規程」(適切なグループガバナンスの確保に向け制定された規程)のなかで、当社に対しては「独立性を確保し、独自の資金調達、迅速な意思決定のもと積極的に事業展開を図ることで企業価値を向上させることがグループ経営の観点からも望ましい」と明記しており、併せて当社事業にかかわる意思決定については当社の取締役会がグループの中での最終意思決定機関である旨が明確になっております。

現状は、これら親会社グループとの関係については大きな変更を想定しておりませんが、仮に将来において親会社グループが当社と同一の事業に参入し新たな競合関係が発生するなど経営方針を変更した場合、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

なお、当事業年度末現在の親会社グループとの関係につきましては、次のとおりであります。

① 資本関係

当社親会社である株式会社メディパルホールディングスの持株比率は51.65%となっております。

 

② 人的関係

[役員の兼任]

当社役員について、上場企業としての独立性と親会社グループのグループガバナンスとのバランスの最適化を図るため、当社代表取締役社長吉田拓也は親会社の取締役を兼務し、また、親会社の常務取締役左近祐史を当社取締役として選任しております。

 

③ 取引関係

関連当事者取引のうち、親会社グループに関連する取引は以下のとおりであります。

(単位:百万円)

 

会社名

取引内容

取引金額

取引条件等

2024年3月期

2025年3月期

(親会社)

㈱メディパルホールディングス

保険料の支払

14

15

団体保険を親会社グループ一括で運用しており、負担分を支払しております。

保険金等の受取

11

10

保険契約に基づき、保険金等を受取しております。

(兄弟会社)

㈱メディセオ

確定拠出年金信託報酬の支払

2

2

親会社グループ一括で運用しており、負担分を支払しております。

商品の販売等

298

345

卸売業者間の取引条件を勘案して決定しております。

商品の仕入

△603

8

配送コスト等を勘案して双方交渉のうえ決定しております。

(兄弟会社)

㈱アトル

商品の仕入

1

2

配送コスト等を勘案して双方交渉のうえ決定しております。

(兄弟会社)

㈱メディパル保険サービス

保険料の支払

547

166

当社の保険代理店として取引しており、第三者の取引条件と同等であります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

業績等の概要

(1)業績

 当事業年度における事業環境は、人々の行動が活発化したことやインバウンドの増加に伴い相応の需要拡大はあったものの、物価上昇を背景とした節約志向の高まりや物流費高騰などの影響を受ける厳しい環境となりました。

販売面では、コロナ関連商材の需要減少や節約志向に加えて、サプリメントを中心とした一部商材の買い控えなどの影響を受けました。このような状況のなか、積極的なデータ活用により、外出機会やインバウンドの増加、感染症の流行などをきっかけとする市場の変化を捉え、新規商材の投入など的確な販売活動に努めた結果、売上高は前事業年度を上回りました。

利益面では、物流費の高騰や人財への積極投資の推進による販管費の増加はあったものの、売上高の増加に伴う売上総利益の増加や、固定費吸収効果の発揮による販管費率の低下などにより営業利益は前事業年度を上回りました。

 

当事業年度における業績は以下のとおりであります。

(単位:百万円)

 

2024年3月期

2025年3月期

増減

増減率

(%)

売上高

1,151,966

1,188,097

36,131

3.1

売上総利益

(売上総利益率(%))

86,358

(7.50)

88,982

(7.49)

2,624

(△0.01)

3.0

販売費及び一般管理費

(販管費率(%))

59,185

(5.14)

60,973

(5.13)

1,788

(△0.01)

3.0

営業利益

(営業利益率(%))

27,172

(2.36)

28,008

(2.36)

836

(0.00)

3.1

経常利益

(経常利益率(%))

30,545

(2.65)

31,684

(2.67)

1,139

(0.02)

3.7

当期純利益

(当期純利益率(%))

20,638

(1.79)

22,864

(1.92)

2,225

(0.13)

10.8

 

販売の状況

 当事業年度における商品分類別の販売実績は以下のとおりであります。

(単位:百万円)

商品分類別の名称

2024年3月期

2025年3月期

増減

増減率

(%)

化粧品

271,244

281,852

10,608

3.9

日用品

500,452

525,533

25,081

5.0

医薬品

150,793

148,152

△2,641

△1.8

健康・衛生関連品

210,544

212,329

1,785

0.8

その他

18,931

20,229

1,297

6.9

合 計

1,151,966

1,188,097

36,131

3.1

 

 

当事業年度における販売先業態別の販売実績は以下のとおりであります。

(単位:百万円)

販売先業態別の名称

2024年3月期

2025年3月期

増減

増減率

(%)

ドラッグストア

727,889

763,785

35,896

4.9

ディスカウントストア、スーパーセンター

98,597

109,336

10,739

10.9

コンビニエンスストア

91,231

95,214

3,983

4.4

ホームセンター

87,213

84,787

△2,425

△2.8

スーパーマーケット

52,630

53,131

500

1.0

ゼネラルマーチャンダイジングストア

39,287

40,895

1,607

4.1

輸出、EC企業、その他

55,116

40,947

△14,169

△25.7

合 計

1,151,966

1,188,097

36,131

3.1

 

 なお、当社は卸売事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。

 

(2)キャッシュ・フロー

(単位:百万円)

 

2024年3月期

2025年3月期

営業活動による

キャッシュ・フロー

26,790

20,675

投資活動による

キャッシュ・フロー

△6,268

△428

財務活動による

キャッシュ・フロー

△5,520

△11,324

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 売上債権の増加や仕入債務の増加などにより、206億75百万円の収入となりました。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 有形固定資産の取得や投資有価証券の売却などにより、4億28百万円の支出となりました。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 配当金の支払いや自己株式の取得などにより、113億24百万円の支出となりました。

 

  当事業年度における現金及び現金同等物の残高は、前事業年度末より89億22百万円増加し、699億16百万円となりました。

 

生産、受注及び販売の実績

 当社は、卸売事業を営んでいるため生産、受注の実績はありません。このため、販売実績について記載しております。なお、当社は卸売事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。

 

(1)販売方法

 当社は化粧品・日用品、一般用医薬品等の卸売業であり、メーカー及び商社から仕入れた商品を量販店、小売店及び卸売業者等へ販売しております。

 

(2)販売実績

 当事業年度の販売実績につきましては、「4.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 業績等の概要 (1)業績 販売の状況」を参照ください。

 なお、最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前事業年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

当事業年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

株式会社マツキヨココカラ&カンパニー

130,503

11.3

132,108

11.1

 

財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析

 文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。

 

(1)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しております。

財務諸表の作成にあたっては、過去の実績や状況に応じ合理的であると考えられる様々な要因に基づき、見積り及び判断を行っており、特に以下の事項は、経営者の会計上の見積り及び判断が財政状態及び経営成績に重要な影響を及ぼすと考えております。

 

(固定資産の減損処理)

当社は、保有する固定資産のうち、営業活動から生じる損益が継続してマイナスである資産及び今後使用が見込まれない資産について、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上することとしております。減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定に当たっては慎重に検討しておりますが、事業計画の変更や市場環境の悪化などにより、その見積りや前提とした仮定に変更が生じた場合、減損処理が必要となる可能性があります。

 

(2)当事業年度の経営成績の分析

「4.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 業績等の概要 (1)業績」を参照ください。

 

(3)経営成績に重要な影響を与える要因について

「3.事業等のリスク」を参照ください。

 

(4)経営戦略の現状と見通し

「1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」及び「4.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 業績等の概要 (1)業績」を参照ください。

 

(5)資本の財源及び資金の流動性についての分析

① 財務方針

 当社は、常に事業活動のための適切な資金確保、流動性の維持並びに健全な財務体質を目指し、安定的な営業活動によるキャッシュ・フローの創出、幅広い資金調達手段の確保に努めております。

 当事業年度末現在において、当社の流動性は十分な水準にあり、財務の柔軟性は高いと考えております。

 今後の設備の新設等に関わる投資予定金額、資金調達方法については、「第3 設備の状況 3.設備の新設、除却等の計画」を参照ください。

 

② 資産、負債及び純資産

当事業年度末の総資産は、5,070億48百万円(前期比2.3%増)となりました。その内訳は主に、現金及び預金699億16百万円、売掛金2,125億49百万円、商品及び製品547億5百万円、未収入金162億84百万円、固定資産1,413億12百万円であります。

負債につきましては、2,193億79百万円(前期比0.8%増)となりました。その内訳は主に、買掛金1,618億36百万円、未払金209億26百万円であります。

純資産につきましては、2,876億69百万円(前期比3.5%増)となりました。その内訳は主に、資本金158億69百万円、資本剰余金250億93百万円、利益剰余金2,403億95百万円であります。

 

③ キャッシュ・フロー

当事業年度の資金の状況として、営業活動の結果得られた資金は206億75百万円(前期比61億14百万円の減少)となりました。これは主に、税引前当期純利益326億89百万円、減価償却費64億95百万円、売上債権の増加額49億56百万円、棚卸資産の増加額33億53百万円、仕入債務の増加額29億71百万円、未払消費税等の減少額25億19百万円、法人税等の支払額95億58百万円によるものであります。

投資活動の結果使用した資金は4億28百万円(前期比58億39百万円の減少)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出14億6百万円、投資有価証券の売却による収入14億15百万円によるものであります。

財務活動の結果使用した資金は113億24百万円(前期比58億3百万円の増加)となりました。これは主に、自己株式の取得による支出49億99百万円、配当金の支払額62億4百万円によるものであります。

以上の結果、当事業年度末における現金及び現金同等物の残高は、699億16百万円となりました。

当社の現在のキャッシュ・フローの状況において、営業活動による資金の創出、金融機関からの円滑な資金の借入及び適正な手元資金の保有が図られており、財務方針に基づく流動性及び財務の柔軟性は確保できていると考えております。

 

(6)経営者の問題意識と今後の方針について

「1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」を参照ください。

 

5【重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

 当社は、労働人口減少が進行し、生産性の高い仕組みを構築することがますます重要である環境下において、物流ノウハウと融合することを目的にAI・ロボットなどの最新技術の研究開発活動を行っております。

 当事業年度の主な研究開発活動は、大きさ、重さ、形状などが異なる何万種もの商品を自動で識別し、ピッキングするロボットアームの設計・開発であり、研究開発費の総額は69百万円となりました。

 なお、当社は卸売事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。