当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針等
a.経営理念
一、人命の根源たる食品の流通を通して社会に奉仕し、衆知を結集して価値ある流通機能の創造に努めよう。
一、会社は、社会の公器であり、社員の福祉向上を願う開かれた広場である。私心を捨てて、真に生きがいの場としよう。
b.経営方針
当社は1951年、四方を山に囲まれ、新鮮な魚を求めることが困難だった長野市に㈱長野中央魚市場を設立し、水産物の卸売事業を開始しました。以来、「人命の根源たる食品の流通を通して社会に奉仕し、衆知を結集して価値ある流通機能の創造に努めよう」の経営理念に基づき、豊かな食生活を支えるべく、美味しさと安全・安心をお届けすることを社会的使命に事業を推進しております。
創業時に制定した屋号の「
」の丸は日本を表し、そこに一の字が大書されているのは「日本一」になりたいという願望が込められています。「長野県のマルイチ」から「日本の中のマルイチ」への脱皮は、創業時から語り継いできた当社の普遍的な経営方針でもあります。
c.事業展開方針
当社グループは、長野県を中心とする甲信越及び北関東を含む首都圏、中京圏を主な販売エリアとして、水産物をはじめ畜産物、デイリー食品、冷凍食品、一般食品、菓子、業務用商品などの食品をフルラインで取り扱う総合食品卸売事業を展開しています。お客様にとって価値ある食品とサービスの提供を通じ、地域社会において、ゆたかな食と生活文化を創造することを目指し、事業活動を進めております。主力販売エリアである甲信越地域では地域密着の強みを活かした提案営業活動によりマーケットの深耕化を進め、首都圏・中京圏エリアでは生鮮流通網の拡大による事業エリアの拡大を進めております。
(2) 経営環境及び中期経営計画
a.経営環境
(環境分析)
わが国経済の動向は、雇用・所得環境の改善やインバウンド需要の拡大などを背景に緩やかな回復基調が期待される一方で、関税を巡る保護主義的な動きや地政学リスクの高まりなどによる不安定な国際情勢と、それに伴う物価上昇や為替変動など、依然として先行き不透明な状況が予想されます。食品流通業界では、人件費や物流費等のコスト上昇や、物価上昇に伴う個人消費の停滞が予想されるなど、厳しい経営環境が継続するものと思われます。
当社グループのコアビジネスであります水産事業を取り巻く環境では、生産及び調達面において世界的に水産物生産(天然及び養殖)が頭打ちとなる一方で、世界的な人口増加等による水産タンパク質への需要が増大する中で日本市場の相対的地位の低下もあり、水産物の安定的な調達は大きな課題となっております。販売面では、成熟消費社会・高齢化社会が急速に進み、生活者のライフスタイルや年齢・家族構成の変化による食へのニーズの多様化など、変化への対応力が重要となることが予想されます。
また、社会・環境問題をはじめとするサステナビリティ(持続可能性)経営の推進や、SDGsへの取組みの必要性が世界的な共通課題として認識されており、企業としてリスクの減少のみならず、収益機会にも繋がる重要な経営課題として、積極的・能動的に取り組むことが求められております。
(環境認識の全体観)
(環境変化への対応)
当社グループは、生鮮品を基軸としたフルライン食品卸売事業を進化させることで持続的成長を目指しております。具体的な戦略及び施策につきましては、b.中期経営計画に記載しております。
さらに、サステナブル経営を全社グループにて戦略的に推進すべく、環境問題等に対して中長期的な視点で基本方針と目標を定め、具現化に向けた施策を検討し、実行しております。具体的には、節電対策や太陽光パネル設置など事業価値向上に向けた普遍的な取り組みと、小学校での食育活動やブルーカーボン事業への参画などの社会・環境価値向上に向けた当社グループ独自の取り組みを両輪で推進しております。
b.中期経営計画
■中長期的経営ビジョン「ビジョン2030」
当社グループは未来に向けた経営ビジョンの策定に際し、経営理念をベースに、「経済/社会価値の同時実現」「共感者(パートナー)の輪を拡大」「マルイチの独自性を発揮」「エンゲージメント経営の推進」をキーワードに定めました。
そして2030年度をゴールとする中長期的な経営ビジョンに「地域のスペシャルパートナー」を掲げ、当社グループの独自機能の提供とステークホルダーとの協業を通じて、日本全国の地域における食品流通の問題・課題を共に解決し、共に成長することを目指してまいります。具体的には、「信州」「顧客」「産地」の3つの事業領域をつなぐプラットフォーマーとして、当社グループのコアコンピタンスを磨きながらステークホルダーとの「共生」を図ってまいります。
(「ビジョン2030」の全体像)
(3つの事業領域)
c.中期経営計画2025
■「中期経営計画2025」の位置づけ
ビジョンの達成に向け、2026年3月期を目標年度とする「中期経営計画2025」を策定しました。現在の当社グループの位置付けを「ユニークな存在」と定義し、2030年度に「スペシャルな存在」へなる為のステップとして、「3つの事業領域において必要とされる存在になる」ことを中期経営計画期間における到達すべきステージと位置付け、企業価値の向上を目指します。
(「中期経営計画2025」の位置付け)
■事業戦略
達成に向けた具体的な5つの経営戦略としまして「多面的・多角的な事業インフラの拡充」「信州事業の再強化・グループ最適化」「非効率事業・資産の見直し」「業務構造改革の推進」「サステナブル経営の取組み」を掲げ、各施策を実行してまいります。
また、経営戦略の推進を下支えする組織運営方針としまして、「エンゲージメント経営の実践」「連結経営の推進」「ガバナンス体制の強化」に取り組んでまいります。
(「中期経営計画2025」の全体像)
(「中期経営計画2025」の定量目標及びKPI)
戦略施策の実行により、2026年度時点の実力値として連結営業利益25億円+αを目指します。
(2026年3月期の経営方針)
当社グループは2030年度をゴールとする経営ビジョンの達成に向けた2025年度を目標年度とする「中期経営計画2025」の最終年度として、「信州」「顧客」「産地」の3領域別方針と、定量目標の達成に向けた重点施策として「業務構造改革の実行」「エンゲージメント経営の実践」「サステナブル経営の推進」に取り組んでまいります。
■領域別方針
「信州(長野・山梨)」
子会社㈱丸水長野県水との経営統合における最重要課題であります信州域内における水産事業と本社機能の再編について、統合効果の最大化と生産性向上に向け、新体制の構築と間接系業務の効率化を進めてまいります。成長分野であります惣菜・業務用分野については、競合他社との差別化やマーケット拡大に向け、フードサービス部門と冷食部門を母体に事業の強化を図ります。
また、今年4月に組織再編した畜産事業については、製造・加工機能を拡大した子会社大信畜産工業㈱のさらなる生産性向上と、販売機能の強化による新たな販路開拓など、ビジネスモデルの再構築を推進いたします。
「顧客(信州域外)」
水産部門では、豊洲市場の機能活用や消費地加工機能の拡充による首都圏エリアの更なる拡大と深耕化を図ります。また、昨年11月に子会社化した㈱ダイニチの機能を付加しながら、関西をはじめとしたエリア戦略を加速してまいります。
デイリー部門は、首都圏生鮮流通センターを有効活用した販路拡大と、ドラッグストアへの販売戦略を推進してまいります。
「産地」
養殖魚事業については、当社グループベースで生産や加工、物流、販売等のあらゆる分野でのシナジーの最大化を目指します。子会社信田缶詰㈱については、当社グループの強みである鮮魚調達力を活用した生原料商品の製造・販売を強化することで業績回復を目指します。
また、生産領域における事業ポートフォリオ分析に基づく効率的なリソース配分と、新たな販路構築に向けた取り組みを進めてまいります。水産分野における国内天然魚と養殖魚の2本柱で当社グループ独自のビジネスモデル構築を加速してまいります。
■重点施策
「業務構造改革の実行」
新基幹システム「M-BASE」の運用定着と、WEB請求書や電子契約の拡大や、RPAを活用した業務の標準化と効率化、生成AIの活用範囲の拡大とノウハウの社内展開などにより、業務の合理化による生産性向上を進めてまいります。
「エンゲージメント経営の実践」
経営と従業員との双方向コミュニケーションの充実による組織風土改革の推進と、人材育成に向けた階層別・職能別の教育・研修の充実、ライフイベントに直面する社員が安心して働き続けることを目的とした人事諸制度の改定を進めてまいります。
「サステナブル経営の推進」
CO2削減に向けた施策の推進など事業価値向上に向けた普遍的な取り組みと、食育活動やブルーカーボン事業など社会・環境価値向上に向けた当社グループ独自の取り組みの両輪を継続して推進いたします。
(3) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループでは、本書提出日現在において、以下のような全社として優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題を認識しております。
1.SCM(サプライ・チェーン・マネジメント)の強化
生鮮全般における生産者との連携と加工・流通機能との一元化によるSCM(サプライ・チェーン・マネジメント)の構築を推進してまいります。
2.安定的な事業の継続
安定した事業の継続を可能とするため、BCPの策定と実行を推進してまいります。
3.与信管理の徹底
得意先をはじめとする取引先とは十分なコミュニケーション取りつつ、与信管理を徹底してまいります。
4.在庫管理の徹底
商品相場の急激な変動や需給状況の変化等、過剰在庫及び調達不足の原因となり得るリスクを想定した販売計画策定と商品調達を行うことによる在庫コントロールを徹底してまいります。
セグメントごとの具体的な課題及び施策は以下のとおりです。
(水産事業)
水産事業を取り巻く環境は、長引く国内天然魚の水揚量減少と小型化傾向や、世界的な魚食需要の増加と円安の継続により水産物全般の相場高が継続しており、安定的な商品供給の維持と拡大が求められております。
水産事業セグメントにおきましては、水産部門では、養殖事業領域を従来のトレードモデル(集荷・販売)から生産分野へと拡大することで収益力の強化を図ってまいります。デイリー部門では、営業力と物流機能の更なる強化と、エリア卸とのアライアンス戦略を推進いたします。
(一般食品事業)
一般食品事業を取り巻く環境は、原材料価格の高騰に伴う商品の値上げが続き、消費者の生活防衛意識が強まることで買上点数が減少する中、さらなる収益力の向上が課題となっております。
一般食品事業セグメントにおきましては、収益体質の改善に向けたコスト構造の見直しや、全国卸とのアライアンスによる自社開発商品の販路拡大を進めます。また子会社信田缶詰㈱については、製造利益の改善施策の実行により業績回復を目指します。
(畜産事業)
畜産事業を取り巻く環境は、飼料価格の高騰などコスト高による国産の牛肉・豚肉の高値傾向と、円安による輸入畜肉の仕入価格の高止まりが継続する環境下、収益力の向上が課題となっております。
畜産事業セグメントにおきましては、4月にグループ内の畜産事業を組織再編し、経営資源の集約による事業の合理化と、製販一体の収益モデルによる製造・加工機能の強化を推進いたします。
(丸水長野県水グループ)
現在、2025年度を目途とする子会社㈱丸水長野県水との経営統合によるグループ内の組織再編を進めております。これによりグループ内に同一形態の会社が存在することで発生している非効率性を解消し、経営資源を集約することで合理化と効率化を図り、長野県内における経営基盤の強化を図ってまいります。
(4) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、成長戦略による事業規模の拡大と付加価値による収益力の向上の観点から、事業規模を示す指標である連結ベースの売上高と稼ぐ力の指標である営業利益を経営指標としております。
(2026年3月期の定量目標)
(単位:百万円)
|
|
2025年3月期実績 |
2026年3月期目標 |
|
売上高 |
269,141 |
290,000 |
|
営業利益 |
1,027 (営業利益率0.4%) |
2,200 (営業利益率0.8%) |
|
経常利益 |
1,727 (経常利益率0.6%) |
2,500 (経常利益率0.9%) |
|
親会社株主に帰属する 当期純利益 |
540 (親会社株主に帰属する 当期純利益率0.2%) |
1,500 (親会社株主に帰属する 当期純利益率0.5%) |
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当該連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)サステナビリティ
当社グループは、サステナビリティの基本スタンスを「社員一人ひとりが当事者意識を持って環境・社会課題と向き合い、経営理念に則り、食品の流通を通した社会奉仕と、経営戦略の達成に向けて行動します。」と定め、サステナブル経営の実践を目指してまいります。具体的な推進内容は以下のとおりです。
①ガバナンス
当社グループでは、サステナブル経営を全社グループにて戦略的に推進すべく、2022年4月に立ち上げた「SDGs推進委員会」を改組し、2024年6月に「サステナブル経営推進委員会」を設置いたしました。サステナブル経営推進委員会は、コーポレート部門担当取締役を担当役員、コーポレート部門担当執行役員を委員長に、事業部門及びコーポレート部門の担当者をメンバー、SDGs推進担当を事務局として構成しております。
当社では、環境問題等に対して当社グループにおけるリスク及び機会からマテリアリティを特定し、中長期的な視点で基本方針と目標を「中期経営計画2025」におけるサステナブル経営の方針として定めております。当社グループの経営方針等につきましては、
また、当該サステナブル経営の方針に基づく、各施策の取組状況については、半期毎に経営会議及び取締役会へ報告することとしております。
なお、当社グループのコーポレート・ガバナンスの状況等につきましては、
②リスク管理
当社グループは、全社重要リスクについて、課題に応じて経営会議、コンプライアンス委員会、サステナブル経営推進委員会等で対応策の立案を行い、規程に定める基準等に則り、取締役会へ上程・報告することとしております。
当社グループの経営成績及びサステナビリティ全般に対して重要な影響を与える要因につきましては
特にサステナブル経営の取組に関係するのは以下の項目であり、施策の進捗状況等について、定期的に経営会議及び取締役会へ報告することとしております。
a.食の安全性について
当社グループでは、食の安全性の確保のために安全・安心な商品及びサービスを提供することが最重要課題であると認識し、品質管理体制の強化等に取り組んでおります。具体例としましては、食品衛生管理規程を定め、品質管理部が定期的に食品及び施設の衛生検査を実施しております。また、食品品質安全連絡会やグループ品質管理担当者会議を開催し、品質管理に関する指示事項の徹底や、事例の共有、研修等を実施しております。
b.環境に関するリスク
当社グループは環境問題に関して、その関連法令を遵守するとともに、廃棄物削減や省エネルギー、二酸化炭素排出の削減に取組むなど、環境に配慮した事業活動を行っております。総務部が全社グループの削減計画を取り纏め、実績管理を行い、施策の進捗状況を含め半期毎に経営会議及び取締役会へ報告しております。
c.人材の確保・育成
当社グループが持続的な成長を実現していくためには、営業や企画系、管理系等の各方面において優秀な人材を確保し、育成していくことが重要な課題と認識しており、必要な施策を実施しております。
③戦略
当社グループは、パーパス(経営理念及び経営理念から導き出される4つのキーワード)に基づき、具体的な取組み課題の中からリスク及び機会を、対象領域と経済価値のマトリクスからマテリアリティを特定し、それらを「事業活動の中で取組むべき普遍的な課題」と「意識して取組むべき当社グループ独自の課題」の2つに分類し、両輪で推進しております。具体的には以下の「普遍的な取組テーマ」と「マルイチ独自の取組テーマ」を設定しております。
当社グループの経営理念及び経営理念から導き出される4つのキーワードにつきましては
(サステナブル経営の取組の全体像)
a.普遍的な取組テーマ
|
テーマ |
取組内容 |
主な施策 |
|
事業活動を通した社会的課題の解決 |
①限りある食糧の持続的利用 |
事業活動の中でSDGsを意識して行う活動を設定 |
|
②食の安定供給に向けたサプライチェーンの最適化 |
サーキュラーフードへの取組、廃棄物削減 |
|
|
③製品・サービスの安全性 |
安心・安全な食品の供給に向けた活動 |
|
|
環境負荷低減への取り組み |
④温室効果ガス削減 |
節電対策による電気使用量の削減、ブルーカーボン事業への参画 |
|
多様な人財づくり |
⑤ダイバーシティ&インクルージョン経営 |
エンゲージメント経営の推進、働きやすい環境作り、女性管理職の増加 |
b.マルイチ独自の取組テーマ
|
テーマ |
取組内容 |
主な施策 |
|
産地のパートナー |
①豊かな海とおいしい魚を未来へ |
「さかなの日」など需要拡大に向けた取組の推進 |
|
地域のパートナー |
②信州を元気に! |
信州ブランドのアンバサダー、地域イベントやスポーツへの協賛 |
|
③信州の食を支える |
食品の寄付(フードバンク)、地域生産者の支援と技術開発支援 |
④指標及び目標
a.中期経営計画2025
当社グループでは、「中期経営計画2025」で掲げるサステナブル経営の取組テーマのうち、環境負荷低減への取組みに関して、温室効果ガス削減に向けた施策として使用電力量の削減を掲げております。なお、事業活動を通した社会的課題の解決、産地のパートナー、地域のパートナーにおける各施策の具体的な推進計画を検討中であり、作成後に目標を設定し、具現化へ向けて実行してまいります。
b.SDGsの取組
当社は2019年に「長野県SDGs推進企業登録制度」の認証を受けており、SDGs達成に向けた経営方針等として「弊社の経営理念にあります「人命の根源たる食品の流通を通して社会に奉仕し」は、SDGsの達成と目的を同じくするものであり、社員一人ひとりがそのことを自覚し、事業活動等を通じてそれぞれの役割を果たしていくことにより、SDGsの達成に貢献していきます。」を掲げ、SDGs達成に向けた重点的な取組課題として指標及び目標を公表しております。
(サステナブル経営の取組の全体像)
当社グループにおいて、サステナブル経営の取組状況に関して設定している指標及び目標(「(2)人的資本」に記載するものを除く。)は、次のとおりです
|
取組内容 |
指標 |
目標 |
|
温室効果ガス削減 |
使用電力量 |
2025年度までに10%の削減 |
|
エネルギー使用量 |
87,373t(2030年) (原単位あたり1%/年以上の削減) |
|
|
廃棄物排出量の削減 |
紙の資源化率 |
90%(2030年) |
(2)人的資本
当社グループにおける、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針は、以下のとおりであります。
①戦略
a.当社グループの目指す人材像
・人を最大の経営資源と捉え、人の成長を支援できる人
・状況変化を的確に捉え、柔軟な発想で課題解決に繋げられる人
・失敗を恐れずに一歩を踏み出し、自分自身と周囲をリードできる人
b.採用方針
・求める人材像は、常に変化を求め、自分自身の鮮度に挑戦できる人
c.ダイバーシティの取組
・多様な人材が活躍できる人事制度(コース変更・キャリアアップ制度)を設置
・「女性活躍推進行動計画」や「次世代育成推進行動計画」を策定し、取組内容をHPや広報誌等から発信
・障害者雇用促進の取組
d.人材育成
・職務や役割に応じた能力開発に向け、研修体系を整備
・受講対象者を指定する一律研修や、本人の申込みによって自主的に受講するスキルアップ研修の実施等、
従業員へ幅広く研修機会を提供
(主な研修内容)
|
研修テーマ |
研修内容 |
|
新入社員研修 |
新入社員を対象とした基礎研修 |
|
2年目/3年目社員研修 |
当該社員と対象とした研修。コミュニケーションや会計・財務がテーマ |
|
キャリアデザイン研修 |
32歳/55歳の社員を対象に、今後のキャリアデザインを改めて見つめ直す研修 |
|
女性社員対象研修 |
女性自身に対してのバイアス等についての理解を深める研修や、多様性・チームワークについて考え、個人のライフキャリアプラン、アクションプランを検討し、実践を行うことで変革に向けた変容を体感する研修を予定 |
|
マネジメント基礎研修 |
次期管理職候補を対象に、管理職昇格前にマネジメントの基礎研修を実施。実践経験を積んだ上で管理職昇格へ繋げる |
|
管理職研修 |
マネジメントスタイルを変革(指示命令型のリーダーシップから支援型のリーダーシップへ)するため、管理職を対象とし研修を実施 |
|
部長研修 |
風土改革・意識改革を目指し、社内内製化研修にて社内課題やマネジメントに関する内容を実施。部署長のリーダーシップを進化させるために、これまで培ってきたマネジメントスタイルに新たな気付きを加え、行動変容や視野拡大に繋げ、組織マネジメントや部下とのコミュニケーションに変化を促す |
|
役員及び全管理職対象研修 |
アンコンシャス・バイアス研修。異なる価値観の受容や性別によるバイアスに対して、ダイバーシティ推進の要である取締役・執行役員・全管理職を対象に、推進の意義や無意識バイアスについての知識付与を行うことで、異なる意見を安心して発言できる環境作りに取り組む |
|
選択型集合研修 |
学ぶ意欲の高い社員同士が集まり相互に刺激を与えながら学習できる環境を用意し、スキル別にテーマを設定し、テーマ別に研修を実施 |
|
ステップアップ通信教育 |
自己啓発と人材育成を目的とする通信教育制度 |
②指標及び目標
当社グループでは、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する中期経営計画で掲げた目標及び当連結会計年度の実績は、次のとおりであります。なお、当該指標は当社に関するものであり、他のグループ会社において同様の管理は実施しておりません。
|
指標 |
目標 |
実績(当連結会計年度) |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
2025年度までに30%削減 (2022年度比) |
|
|
|
|
|
|
|
2025年度までに10%向上 (2020年度比) |
― |
※ 正社員平均
当社グループでは、事業活動に関わるあらゆるリスクを適時に把握し、対応する社内規程等を整備・運用するほか、予め取り決めた個々の責任部署において適切な管理を行っております。そのうえで、リスクの影響度や発生可能性を踏まえて重要と判断されるリスクについては、経営会議において状況確認と対策措置を検討し、取締役会へ報告しております。以下では、有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクを記載しております。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 自然災害・感染症について
当社グループでは、広域にわたり営業・物流拠点を設置し事業展開しているため、大規模な自然災害が発生した地域においては、物流やサービスの提供等に支障が生じる可能性が想定されます。当社グループといたしましては、社員の人命安全確保と優先業務の継続、基幹コンピュータシステムのバックアップ体制の構築等、危機管理体制に万全を期しております。しかしながら、想定を超える自然災害により甚大な被害が発生し、復旧までに相当な時間を要するなど事業継続に多大な支障が生じる場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、新型コロナウイルス感染症やインフルエンザ等の感染症の拡大が社会経済活動に影響を及ぼす可能性がある中、当社グループでは食のライフラインを守ることを社会的使命に、地域のインフラとしての機能を高めながら事業活動を継続しております。しかしながら、当社グループ内で感染症が発生した場合で、特に生産現場や物流センターの構内物流業務に従事している従業員の多数が感染し、生産及び入荷、出荷等の物流業務が長期的に停止する、または業務再開までに長期間を要する場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
新型コロナウイルス感染症やインフルエンザ等の感染拡大の防止に向けましては、当社グループでは継続して対応にあたっております。具体的には、感染拡大防止と事業継続の両立を図るために制定したガイドラインに基づき、感染予防及び職場での二次感染防止のための対策を徹底しております。
(2) 食の安全性について
生活者の食の安全性に対する意識は一段と高まっており、例えば水産物におけるアニサキス問題や、畜産物におけるBSEやCSF(豚熱)等、風評も含めた食の安全を揺るがす問題が発生した場合には、生活者の買い控え等の行動により需要が減退することが想定されます。また、当社グループにおいて偶発的な事由によるものを含めた異物混入や誤表示などの商品事故が発生した場合には、商品回収・廃棄等の想定外の費用発生や信用力低下等が想定されます。これらの食の安全性に関する事案が発生することにより、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、食の安全性の確保のために安全・安心な商品及びサービスを提供することが最重要課題であると認識し、品質管理体制の強化等に取り組んでおります。具体例としましては、食品衛生管理規程を定め、品質管理部が定期的に食品及び施設の衛生検査を実施しております。また、食品品質安全連絡会やグループ品質管理担当者会議を開催し、品質管理に関する指示事項の徹底や、事例の共有、研修等を実施しております。
(3) 食品の安定供給について
世界的な天然水産資源の減少及び欧米・中国等の魚食拡大に起因する水産物の需給問題、穀物も含めた食品全般にわたる原材料の供給量の減少、国内の畜産生産者の高齢化や輸入畜産物の増加に伴う生産農家数の減少、また為替相場の影響等により食品の供給が不安定となる可能性など、安定的な商品の仕入・調達が困難となった場合には当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、食品の安定供給に向け、水産物については全国の産地との強固な取引関係の構築や、養殖魚事業への参入、三菱商事グループとの連携によるチリ銀鮭やマグロ等の安定供給など、商品調達力を確保しております。畜産物については、長野県内の牛肉・豚肉生産者の支援体制や、国内各地の生産者からの調達ルートの構築、商社との連携による輸入商品の調達強化により、安定供給体制を確保しております。
(4) 債権の貸倒れについて
食品流通業界においては、生活者の低価格・節約志向を背景とする店頭での低価格競争や、大手小売業の出店攻勢と異業種の食品市場への参入により企業間競争が激化するなど、厳しい経営環境が続くものと予想されます。当社グループにおきましては、与信管理の徹底を一層強化しておりますが、不測の事態が生じた場合は、業績に影響を及ぼす可能性があります。
(5) 相場及び市況動向について
見越取引(市場相場や需給状況により価格が変動する商品や、調達時期と販売時期が異なる商品において、将来の相場や需要の予測に基づいて販売前にあらかじめ一定数量の商品を確保するための成約を行う取引のこと)において、相場や需要の予測を見誤った場合や、急激な相場変動等の不可抗力が発生した場合に、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、販売計画や販売先からの受注状況を踏まえた商品調達を行い、過大な在庫を抱えることなく、且つ販売チャンスロスを発生させないことを基本的な方針としています。また、政策・対策商品などの季節商品や一括仕入商品は臨時見越取引商品と位置付け、相場動向を注視しながら在庫ポジションをコントロールすることで在庫リスクを一元的に管理しており、特に取扱金額が大きい商品群については経営会議や取締役会にて進捗状況を検証しております。
(6) 食品流通業界の再編について
食品流通業界における厳しい競争環境を背景とした企業再編やグループ化、さらには小売業による取引卸の集約化や帳合変更の動きが依然継続しており、これにより当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループとしましては、生鮮食品を基軸とするフルライン食品卸売業というユニークな機能を活かし、三菱商事グループや全国卸と商品調達面や販売面で連携しながら事業拡大を図っております。また、長野県を地盤とした地方卸として、地域に根差した商品調達力や提案力の優位性を生かしたきめ細やかなサービスの提供等により、基盤商圏での持続的成長を図っております。
(7) 法的規制について
当社グループの事業活動は、卸売市場法や食品衛生法、JAS法など各種の法令・規制等の適用、行政の許認可等を受けております。当社グループでは従業員を対象に法令・規則に関する研修会やe-ラーニング等による学習機会を設けて知識の習得や啓蒙活動を推進し、法令遵守の徹底に努めております。しかしながら、万一、法令に違反する事由が生じた場合や許認可等が取消され又はそれらの更新が認められない場合には、当社グループの社会的信用の低下や、事業活動が制限される可能性があり、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(8) 経営成績の季節的変動について
当社グループの売上構成比の過半数を占める水産品は、お歳暮やお正月用食品購入の時期である12月の年末商戦に売上高及び利益が高くなる傾向があります。万一、12月の業績が悪化した場合には当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
なお、連結業績に占める第3四半期(10~12月)の売上高及び営業利益の割合は以下のとおりであります。
|
|
2023年3月期 (10~12月) |
2024年3月期 (10~12月) |
2025年3月期 (10~12月) |
|
売上高 |
28.1% |
27.7% |
28.2% |
|
営業利益 |
70.1% |
49.1% |
104.5% |
(9) 減損に係るリスク
当社グループは、事業用の不動産やのれんをはじめとする様々な固定資産等を保有しておりますが、これらの資産につき時価の下落や期待しているキャッシュ・フローを生み出さない状況になるなど、その収益性の低下により減損会計の適用を受ける可能性があり、多額の減損損失が発生した場合には当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(10) 情報システムに関するリスク
当社グループでは、コンピューターウイルス感染などによるシステム障害や情報漏洩に対し、ウイルス対策ソフトの導入等、適切な対策を講じております。しかしながら、予測不能なウイルスの侵入や情報システムへの不正アクセス及び運用上のトラブル等により、情報システムの一定期間の停止や内部情報の漏洩等の事態が発生した場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。
(11) 環境に関するリスク
当社グループは環境問題に関して、その関連法令を遵守するとともに、廃棄物削減や省エネルギー、二酸化炭素排出の削減に取り組むなど、環境に配慮した事業活動を行っております。しかしながら、関連法令等の変更や社会的な要求の高度化等、それらへの対応に費用負担が増加した場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。
(12) 三菱商事グループとの関係
2025年3月末現在、当社は三菱商事㈱が筆頭株主であり、同社は当社株式の11.64%を保有しておりますが、当社グループの方針・政策決定及び事業展開については、独自の意思決定によって進めております。当社グループと同社グループとの資本関係、取引関係については関連当事者情報に記載のとおりであり、人的関係については下記のとおりであります。
なお、同社から招聘している役員、受け入れている出向者の概要は以下のとおりであります。
a.役員の兼務状況(2025年3月31日現在)
|
役職 |
氏名 |
三菱商事㈱における役職 |
|
社外取締役 |
古賀 隆宏 |
食品産業グループ CEOオフィス |
(13) M&Aに係るリスク
当社グループは事業の成長に必要な技術、販売網、顧客基盤等を所有する他社の買収や他社との資本提携を通じた事業規模の拡大を目指しております。M&Aに際しては、被買収企業の財務内容や契約関係等についての詳細な事前審査を行い、十分にリスクを吟味した上で決定しております。しかしながら、被買収企業に偶発債務の発生や未認識債務の判明等事前の調査で把握できなかった問題が生じた場合には、当社グループの事業展開、財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。また、買収により、当社グループが従来行っていない新規事業が加わる際には、その事業固有のリスク要因が加わります。
(14) 人材の確保・育成
当社グループが持続的な成長を実現していくためには、営業や企画系、管理系等の各方面において優秀な人材を確保し、育成していくことが重要な課題と認識しており、必要な施策を実施しております。しかしながら、人材の確保・育成ができなかった場合には、事業目的の達成が困難になる可能性があります。
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、雇用・所得環境の改善やインバウンド需要の拡大などを背景に概ね緩やかな回復基調となりました。しかしながら、関税を巡る保護主義的な動きや地政学リスクの高まりなど世界情勢の不確実性などから、景気の先行きは依然として不透明な状況にあります。食品流通業界では、物価上昇による消費者の節約志向が強まるなか、物流費や光熱費、人件費等のコスト上昇が継続しており、厳しい経営環境が続いております。
こうした環境下、当社グループは2030年度をゴールとする中長期的な経営ビジョンに「地域のスペシャルパートナー」を掲げ、当社グループの独自機能の提供とステークホルダーとの協業を通じて、日本全国の地域における食品流通の問題・課題を共に解決し、共に成長することを目指しております。2025年度を目標年度とする「中期経営計画2025」は、経営ビジョンの達成に向け、当社グループが「ユニークな存在」から「スペシャルな存在」へと進化するためのステップとして位置付け、3つの事業領域(信州、顧客、産地)において「必要とされる存在」になることを到達すべきステージとし、企業価値の向上を目指しております。
当期は中期経営計画の2年目として、「信州」「顧客」「産地」の3領域別方針と、「エンゲージメント経営」「業務構造改革」「サステナブル経営」の重点施策に取り組んでまいりました。
(経営戦略の進捗状況)
<領域別方針>
①「信州」
2025年度を目途とする子会社㈱丸水長野県水との経営統合によるグループ再編を進めております。その一環として、畜産事業において、今年4月1日付で㈱丸水長野県水の畜産事業部を吸収分割し、当社が同事業部の販売事業を、畜産品製造・加工会社の大信畜産工業㈱が同事業部の製造・加工事業およびそれに付随する販売事業を承継いたしました。
また、業務用マーケットに対する営業体制や物流機能など、機能とリソースを集約することで信州域内における総合力の強化を進めております。
②「顧客」
当社グループの強みであります品揃え機能、商品開発機能、物流機能を活かせる信州外近隣エリアにおいて、アライアンスによる販売面や物流面での協業体制を構築しながら、首都圏エリアの深耕化など、戦略的に販売マーケット拡大を進めております。
③「産地」
国内養殖魚の事業領域を従来のトレードモデル(集荷・販売)から、利益獲得が見込める生産・加工分野へ拡大することで構造的な収益力強化を目指しております。この養殖魚事業の利益構造の変化への抜本的な対応策として、㈱ダイニチの株式を取得し、昨年11月1日に子会社化いたしました。同社との事業シナジーの創出により「協業型」の国内養殖ビジネスモデルを強化し、国産養殖魚の流通に革新をもたらすことを目指しております。
<重点施策>
①「エンゲージメント経営」
社員一人ひとりの力を最大限発揮するための環境整備と組織風土改革を推進しております。具体的には、全従業員に向けた動画による社長メッセージの配信や、役員と社員との座談会実施、各階層別の研修メニューの充実と実施、働きやすい職場づくりに向けた人事諸制度の見直しなどを進めております。
②「業務構造改革」
業務プロセスの標準化や効率化による生産性向上を目指し、昨年7月に新基幹システム「M-BASE」の運用を開始しました。稼働直後に顕在化した問題・課題への対応で、一過性ながら事業推進に影響を及ぼしましたが、商圏の棄損は回避でき、現在はシステムのさらなる運用改善と、導入目的であります業務の標準化と効率化に向け、全社を挙げて取り組んでおります。また、RPA(Robotic Process Automation)や生成AIを活用しながら仕事のやり方を抜本的に見直し、業務の生産性向上に取り組んでいます。
③「サステナブル経営」
節電対策や太陽光パネル設置など事業価値向上に向けた普遍的な取り組みと、小学校での食育活動やブルーカーボン事業への参画などの社会・環境価値向上に向けた当社グループ独自の取り組みを両輪で推進しております。また、昨年1月に発生した能登半島地震の復興支援の一環としまして、㈱スギヨ(本社:石川県七尾市)が製造する「ビタミンちくわ」の昨年6月1日からの販売再開に合わせ、石川県食品協会が実施している「食べて復興支援 がんばろう!能登」と連動した販促企画「ビタミンちくわ復活祭」を企画・運営し、ご賛同いただいたメーカー様と長野県全域の小売業様にご協力いただきながら、メディアと連携したプロモーションを展開いたしました。
この結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。
a.財政状態
(資産合計)
当連結会計年度末における総資産は770億87百万円となり、前連結会計年度末と比較して97億76百万円の増加となりました。主な要因は、商品及び製品が33億87百万円、のれんが67億55百万円増加したことによります。
(負債合計)
負債は532億円となり、前連結会計年度末と比較して120億82百万円の増加となりました。主な要因は、支払手形及び買掛金が57億円減少し、短期借入金(1年以内返済予定の長期借入金含む)が58億65百万円、長期借入金が122億98百万円の増加したことによります。
(純資産合計)
純資産合計は238億87百万円となり、前連結会計年度末と比較して23億5百万円の減少となりました。主な要因は、自己株式を26億77百万円取得したことによります。
以上の結果、自己資本比率は30.2%となりました。
b.経営成績
(売上高)
当連結会計年度の業績につきましては、売上高は第3四半期連結会計期間より㈱ダイニチ及びその子会社6社を連結の範囲に加えたことや、商品の値上げに伴う販売単価の上昇もあり2,691億41百万円(前期比5.6%増)となりました。2024年5月10日に開示しております連結業績予想における売上高目標2,550億円に対しては5.5%上回りました。
(利益面)
売上高の増加に伴い売上総利益が増加したものの、物流関連コストの上昇、新基幹システムの稼働に伴う減価償却費の増加と稼働直後における一過性の経費増等により収益を圧迫したことから、営業利益は10億27百万円(前期比43.8%減)、経常利益は17億27百万円(同27.1%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は5億40百万円(前期比65.2%減)となりました。
連結業績予想に対しては、営業利益目標21億円に対して51.1%下回り、経常利益目標26億円に対して33.6%下回り、親会社株主に帰属する当期純利益目標16億円に対して66.2%下回りました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
※ 各セグメントの売上高については、セグメント間の内部売上高を除いて記載しております。
※ 「注記事項(セグメント情報等)」に記載のとおり、報告セグメントの区分を変更しておりますので、
下記の前期比には、前期の数値を変更後の報告セグメントの区分に組み替えた数値の比較となっております。
また、当連結会計年度で連結の範囲に加えた㈱ダイニチ及びその子会社6社を報告セグメント「水産事業」に
含めております。
(水産事業)
水産事業を取り巻く環境は、国内天然魚の水揚げ量の不安定化と、世界的な魚食需要の増加などにより水産物全般の相場高と、タイトな需給構造が継続しており、安定的な商品供給の維持・拡大が求められております。
このような環境下、水産部門では国内養殖魚の安定供給と販売拡大に向け、昨年11月に㈱ダイニチを子会社化するなど、川上領域への戦略投資による養殖事業体制の強化を推進しております。また、産地駐在による商品調達力の強化を進めております。デイリー部門では顧客との協働による商品開発など商品の差別化戦略の推進や、アライアンス戦略による販売エリアの拡大を図っております。フードサービス部門では、業務用マーケットに対する水産及び畜産原料の惣菜商品の強化を進めております。
業績につきましては、売上高は㈱ダイニチの子会社化に加え、相場高による販売単価の上昇もあり1,665億60百万円(前期比10.5%増)となりました。利益面につきましては、新基幹システム稼働直後における一過性の経費増等の影響がありましたが、売上高の増加による売上総利益の増加等により、営業利益は6億5百万円(同11.5%増)となりました。
財政状態につきましては、セグメント資産は491億61百万円となり、前連結会計年度末に比べ158億62百万円の増加となりました。セグメント負債は319億28百万円となり、前連結会計年度末に比べ109億51百万円の増加となりました。
(一般食品事業)
一般食品事業を取り巻く環境は、原材料価格の高騰に伴う商品の値上げが続き、消費者の生活防衛意識が強まることで買上点数の減少と低価格志向が継続しており、さらなる収益力の向上が課題となっております。
このような環境下、信州域内における卸売機能強化と自社開発商品の販路拡大に取り組み、より強固な事業構造の構築を進めております。また、物流費等のコスト上昇に対し、構内物流業務の改善等で販管費の低減に取り組んでおります。
業績につきましては、売上高は消費者の節約志向の影響で販売数量が伸び悩んだことから281億27百万円(前期比2.0%減)となりました。利益面につきましては、価格改定対応の遅れなどによる売上総利益の減少と、新基幹システム稼働直後における一過性の経費増等の影響もあり、3億64百万円の営業損失(前期は1億75百万円の営業損失)となりました。
財政状態につきましては、セグメント資産は91億70百万円となり、前連結会計年度末に比べ10億81百万円の減少となりました。セグメント負債は52億64百万円となり、前連結会計年度末に比べ11億54百万円の減少となりました。
(畜産事業)
畜産事業を取り巻く環境は、飼料価格の高騰に伴う国産の牛肉・豚肉の高値傾向と円安による輸入畜肉の仕入価格の高止まりが継続しております。
このような環境下、信州域内での販売シェア拡大と関東・東海・中京エリアへの販路拡大や製造・流通加工機能の強化に向けた食肉加工分野への重点投資を進めております。
業績につきましては、売上高は畜産物の高値傾向が継続し販売が鈍化したことから404億84百万円(前期比3.2%減)となりました。利益面につきましては、相場高に伴う収益の低下による売上総利益の減少と、新基幹システム稼働直後における一過性の経費増等の影響もあり、営業損失2億3百万円(前期は3億26百万円の営業利益)となりました。
財政状態につきましては、セグメント資産は73億3百万円となり、前連結会計年度末に比べ11億90百万円の減少となりました。セグメント負債は43億72百万円となり、前連結会計年度末に比べ14億85百万円の減少となりました。
(丸水長野県水グループ)
グループ内の経営資源の集約化による信州事業の再強化とグループ最適化の実現を目指し、2025年度を目途とする当社と㈱丸水長野県水との統合作業を進めております。
業績につきましては、売上高は329億16百万円(前期比1.4%増)となりました。営業利益は退職給付費用等の販売管理費の増加により、8億5百万円(同15.6%減)となりました。
財政状態につきましては、セグメント資産は69億24百万円となり、前連結会計年度末に比べ17億円の減少となりました。セグメント負債は39億59百万円となり、前連結会計年度末に比べ12億97百万円の減少となりました。
(その他(物流・冷蔵倉庫事業、OA機器・通信機器販売及び保険代理店事業))
子会社マルイチ・ロジスティクス・サービス㈱は、当社グループの物流業務・冷蔵倉庫事業の品質向上とローコスト体制の構築をグループ内の各事業と連携しながら推進しております。
業績につきましては、売上高は10億51百万円(前期比7.0%減)、営業利益は1億84百万円(同3.2%増)となりました。
財政状態につきましては、セグメント資産は16億16百万円となり、前連結会計年度末比32百万円の減少となりました。セグメント負債は5億65百万円となり、前連結会計年度末に比べ40百万円の減少となりました。
c.経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標
当社グループの経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等につきましては、「1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載しております。また、売上高、営業利益及び経常利益については「b.経営成績」に記載しております。
ROEについては、親会社株主に帰属する当期純利益が5億40百万円(前期比65.2%減)となったため2.2%(前期は6.3%)となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という)の残高は63億99百万円となり、前連結会計年度末と比較して23億3百万円の減少となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況と、それらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果減少した資金は31億83百万円となりました(前連結会計年度に増加した資金は31億42百万円)。これは主に、税金等調整前当期純利益が18億76百万円、減価償却費が12億51百万円となり、売上債権・棚卸資産・仕入債務からなる運転資金が41億81百万円減少し、法人税等の支払額が11億1百万円となったことによります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果減少した資金は105億75百万円となりました(前連結会計年度に減少した資金は12億73百万円)。これは主に、有形固定資産の取得による支出が6億76百万円、無形固定資産の取得による支出が2億31百万円、連結範囲変更を伴う子会社株式の取得による支出が100億11百万円となったことによります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果増加した資金は114億55百万円となりました(前連結会計年度に減少した資金は9億4百万円)。これは主に、短期借入金の純増加額が28億56百万円、長期借入金の借入による収入が127億60百万円、自己株式の取得により支出が26億77百万円となったことによります。
③生産、受注及び販売の実績
当社グループは、食品卸売事業の補完機能として製造加工業務を行っており、生産実績は仕入実績に含めて記載しております。なお、受注生産は行っておりません。
(1) 仕入実績 当連結会計年度の仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
前年同期比(%) |
|
水産事業(百万円) |
155,214 |
112.9 |
|
一般食品事業(百万円) |
25,703 |
98.5 |
|
畜産事業(百万円) |
39,550 |
99.4 |
|
丸水長野県水グループ(百万円) |
26,098 |
92.3 |
|
報告セグメント計(百万円) |
246,567 |
106.4 |
|
その他(百万円) |
5,011 |
127.5 |
|
合計(百万円) |
251,578 |
106.8 |
(2) 販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
前年同期比(%) |
|
水産事業(百万円) |
166,560 |
110.5 |
|
一般食品事業(百万円) |
28,127 |
98.0 |
|
畜産事業(百万円) |
40,484 |
96.8 |
|
丸水長野県水グループ(百万円) |
32,916 |
101.4 |
|
報告セグメント計(百万円) |
268,090 |
105.7 |
|
その他(百万円) |
1,051 |
93.1 |
|
合計(百万円) |
269,141 |
105.6 |
(注)1.販売実績に対して10%以上に該当する販売先はありません。
2.セグメント間の取引については相殺消去しております。
3.各事業の主な内容
水産事業…水産物、水産加工品、日配品及び冷凍食品の販売事業
一般食品事業…一般のドライ食品、一般加工食品及び菓子の販売事業
畜産事業…畜産物及び畜産加工品の販売事業
丸水長野県水グループ…長野県内エリアを中心とする食品卸売事業
その他…物流・冷蔵倉庫事業、OA機器・通信機器販売・保険の代理店事業
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容につきましては「(1) 経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載しております。
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては「3 事業等のリスク」に記載しております。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容及び資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、以下のとおりであります。
(資金需要)
当社グループの事業活動における資金需要の主なものは、商品・原材料の購入費、及び販売運賃・人件費等の営業費用によるものであります。なお、設備の新設等の計画に関する内容につきましては、「3 設備の新設、除却等の計画」に記載しております。
(財務政策)
当社グループでは、事業活動の維持拡大に必要な資金を安定的に確保するため、営業キャッシュ・フローで獲得した内部資金の活用及び金融機関からの借入等により資金調達を行っております。
長期借入金等の長期資金の調達については、事業計画に基づく資金需要、金利動向等の調達環境、既存借入金の償還時期等を考慮の上、調達規模、調達手段を適宜判断して実施していくこととしております。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されており、その作成過程においては経営者による会計上の見積り及び仮定を含んでおります。これらの見積り及び仮定は、過去の実績及び決算日において合理的であると考えられる様々な要因等を勘案した経営者の最善の判断に基づいております。しかし、その性質上、将来において、これらの見積り及び仮定とは異なる結果となる可能性があります。会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、当社グループの経営成績に重要な影響を与える項目は、以下のとおりです。
(のれんの評価)
㈱ダイニチの発行済全株式を取得し、連結子会社化したことにより生じたのれんは、被取得企業の今後の事業によって期待される将来の超過収益力として、企業結合日における当該株式の取得原価と純資産の差額から算出しております。当該のれんについては、取得原価のうち、のれんに配分された金額が相対的に多額であるため、減損の兆候が存在すると判断しましたが、割引前将来キャッシュ・フローがのれんを含む資産グループに係る固定資産の帳簿価額を上回っているため減損損失の認識は不要と判断しております。
将来キャッシュ・フローは取締役会によって承認された事業計画に基づいて見積っております。事業計画においては、国際的な養殖魚の需要見通しや我が国における魚の輸出量の成長率に関する見通しを踏まえた、水産養殖業における海外市場を中心とした販売量の増加に起因する売上高の成長率や、製造原価並びに販売費及び一般管理費に対する各種施策等を織り込んでおりますが、市場環境の変化等により、その見積り額の前提とした条件や家庭に変更が生じた場合、減損損失の認識が必要となる可能性があります。
当社の経営上重要な契約は、次のとおりであります。
(当社の業務提携に関する契約)
|
相手先の名称 |
契約の名称 |
契約内容等 |
契約期間 |
|
三菱食品㈱ |
包括業務提携に関する契約 |
(1)水産品流通におけるサプライチェーン構築に関する取組み (2)人材交流、営業拠点・物流拠点の相互活用 (3)その他、両社で合意した項目 |
毎期自動更新 |
(当社のローン契約の締結に付される財務上の特約)
|
相手先の名称 |
㈱三井住友銀行 |
|
契約の名称 |
金銭消費貸借契約 |
|
契約締結日 |
2024年11月27日 |
|
契約に係る債務の期末残高 |
1年内返済予定の長期借入金:364百万円 長期借入金:4,513百万円 |
|
弁済期限 |
2034年11月30日 |
|
当該債務に付された担保の内容 |
該当なし |
|
特約の内容 |
(1)各連結会計年度の通期の連結損益計算書に記載される経常利益を2期連続損失としないこと。 (2)各連結会計年度の決算期の末日における連結貸借対照表における純資産の部の金額を前年同期比75%未満としないこと。 |
該当事項はありません。