当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
① 経営理念
当社グループは、エンジニアリングをコアとしたトータルソリューションプロバイダーとして、顧客企業が求める多様なニーズにお応えすることをビジネスとしております。当社グループの基本方針として、以下の「我々が目指すもの」を常に念頭に置いた企業活動を行っております。
「我々が目指すもの」
・エレクトロニクスビジネスを通じて、人々の生活を豊かで快適なものにし、「未来社会に貢献」する
・創造力を駆使、携わるエレクトロニクス業界の技術の進歩に寄与し、「不可欠な存在」になる
・我々の真の事業は「問題を解決」することであり、顧客に満足いただく労苦を惜しまない
・先端技術に挑戦し続ける「パイオニア」になる
・創造力を発揮できる会社の仕組みづくりに心血を注ぐ、「誇りの持てる会社を実現」する
② ビジョン、方針
「未来を変えテック、イノテック ~Innovation Technology~」
社名の由来でもあるInnovationとTechnologyを経営の根幹に据え、経営理念のひとつである「未来社会に貢献する」という命題にチャレンジいたします。革新的な技術により未来を変えていくことで持続可能な社会の実現のために不可欠な存在となることを目指します。
そのために、以下のミッションに取り組んでまいります。
・最先端技術と人を繋ぎ、豊かで快適な未来社会に貢献する
・顧客に寄り添い、ともに課題を解決する
・イノテックならではの付加価値の提供を目指す
(2)経営戦略等
① 前中期経営計画について
当社グループは創業以来の商社から転換し、「自社製品/サービスを軸に、顧客企業の設計・開発・検証・テストをサポートするソリューションプロバイダー」としての成長を目指しております。商社ビジネスで培った顧客のニーズを把握する力を土台とし、最先端の技術を採用した様々なハードウェア・ソフトウェア・サービスの提供を可能とするのが当社グループの強みであると認識しており、利益成長の機会が豊富に存在していると考えております。2019年2月に公表した2019年度から2023年度までの中期経営計画(以下「前中計」という。)においては、多様化する顧客ニーズを読み取り、最適なソリューションを取り揃え提供していくことで、顧客にとって不可欠なパートナーであり続けることを目指し、数値目標としてROE8%超を掲げ、以下の5つの戦略に取り組んでまいりました。
利益成長の追求を図る戦略
・テストソリューション事業の成長
・自社製品売上の増加/メーカー機能の強化
・顧客ベースの拡大/海外市場開拓
・新規分野への積極的な取組
資本政策・投資戦略
・「資本政策に関する基本方針」(2018年2月7日公表)に則した資本効率の向上(資本コストを意識した投資)
また、長期的に企業価値向上に繋がる施策として、ESG/SDGs分野の活動も充実させる。
前中計期間では、事業面においてハードウェア・ソフトウェア・受託事業などを含めた自社製品/サービスの割合を高めることで事業ポートフォリオの改革を進めたほか、資本構成の大胆な変更や業績の拡大によりROEは向上したものの、安定的に目標を超える収益力の構築には至りませんでした。
② 新中期経営計画について
当社グループは2024年3月21日に2024年度から2026年度までの新たな中期経営計画(以下「新中計」という。)を公表いたしました。
新中計では、資本コストを上回る資本効率性と株価/企業価値の向上を意識した目標設定が肝要と考えており、ROEに関して安定的に8%を上回る水準を達成するとともに10%を目指すことを最大の目標とし、以下の戦略に取り組んでまいります。
当社グループ共通の事業戦略
・営業利益率の向上
・経営資源の再配分による事業ポートフォリオの最適化
・業績の安定性向上
各事業セグメントの事業戦略
・テストソリューション事業
製品ポートフォリオの拡充と最適化
・半導体設計関連事業
グループ経営の基盤を固める強固な安定収益の拡大
・システム・サービス事業
マスカスタマイゼーションの推進
(3)経営環境
当社グループが参画する半導体/エレクトロニクス業界は、半導体業界に対する日本政府の支援や海外企業の誘致、生成AIの普及やデジタル化の進展などにより今後好転していくものと期待されます。一方、地政学的リスクの顕在化への対応など、リスク管理にも十分な配慮が必要と認識しております。
翌連結会計年度のわが国経済は、賃上げ等による所得環境の改善や好調な企業業績を背景とした設備投資の増加などにより緩やかな回復基調が継続するものと思われます。一方、人件費の上昇や円安の進行、資源価格の高止まりや政府の物価対策の終了等が景気に与える影響が懸念されるほか、ウクライナや中東情勢など地政学的リスクの高まり、中国経済の減速や欧米の景気後退懸念など、先行き不透明な状況も続くことが予想されます。
当社グループの事業活動においては、テストソリューション事業は、イメージセンサー向けデコーダーボードの販売増や中国半導体市場における設備投資の増加による信頼性評価装置の需要増が見込まれるものの、メモリー向けテスターの需要回復には未だ時間を要するものと思われ、後工程用検査ボードの販売も当期実績には及ばない見込みであります。
半導体設計関連事業は、EDAソフトウェアにおいては、当連結会計年度に既存顧客との契約更改が順調に進んだことや、引き続き新規分野の顧客開拓などへ注力することにより堅調に推移するものと見込んでおります。また、LSI設計受託においては中国経済減速の影響により海外事業が落ち込むものの、国内大手顧客の稼働率は回復傾向で進捗するものと予想されます。
システム・サービス事業は、引き続きCPUボードやBOX型コンピューターの社会インフラ向け需要が高いことや、決済端末の出荷台数も新機種リリースなどにより好調に推移するものと見込まれるほか、車載関連の組込みソフト検証ツール及び検証サービスも既存顧客を中心に伸長するものと予想されます。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
① 前中期経営計画について
当社グループは、前中計において以下の事項に取り組み、企業価値の向上に努めてまいりました。
イ.テストソリューション事業の成長
テストソリューション事業は、強みである顧客ニーズの把握とそれに応じた柔軟な設計に基づく専用テスターや信頼性評価装置、プローブカードの開発により、限られた分野ではあるものの確固たるポジションを築いております。こうした強みを他の用途のテスター等に応用し製品ラインナップを拡充するとともに、海外顧客の獲得にも注力し事業の安定化とさらなる成長を目指し、積極的な研究開発や人材増強等に取り組んだ結果、売上高は前中計の5年間で大きく伸長いたしました。MEMS型プローブカードや後工程用検査ボードなどの新製品も売上拡大に貢献し、市況悪化時においても一定の収益を確保したものの、事業の安定化については引き続き取り組みが必要と考えております。
ロ.自社製品売上の増加/メーカー機能の強化
近年、当社グループは先端的な自社ソリューション、自社製品の開発・展開を図ってまいりました。売上高研究開発費比率も上昇してきており、優秀な技術者の確保や品質管理の強化などメーカーとしての機能を充実させるため、採用活動や品質管理の社内規則の制定などに積極的に取り組んできた結果、自社製品売上高の比率は自社サービスを含め7割超を占めるまでになりました。
ハ.顧客ベースの拡大/海外市場開拓
当社グループの顧客は、従来の輸入商社ビジネスにおいては国内の大手エレクトロニクス企業に大きく偏っておりましたが、テリトリー制限のない自社製品/サービス事業の推進による製品の多様化が顧客の多様化に繋がり、テストソリューション事業のアジア・北米への進出や連結子会社の三栄ハイテックス株式会社の海外進出が進展いたしました。
ニ.新規分野への積極的な取組
コーポレートベンチャーキャピタルとして設立したFenox Innotech Venture Company VI, L.P.によるベンチャー企業への投資を含め、様々なビジネスチャンスを模索し、産業用ロボット向けの物体認識・アーム制御AI事業の立ち上げを中心に一定の成果を得ました。
ホ.資本効率の向上
前中計期間において、ROEが目標の8%を超えたのは2021年度のみに留まりましたが、2018年2月に公表した「イノテックグループの資本政策に関する基本方針」に沿った施策を実施し、自社株買いによる資本構成の大胆な変更や業績の拡大により、ROEやROICが向上、資本コストも低下し、さらには増配の効果もあり株価は上昇いたしました。
ヘ.ESG活動の推進
当社グループでは国際的なビジネスに対応するためのガバナンス体制の構築、地域社会への貢献、社員に対する教育の充実、気候変動や環境への配慮等に関して、これまで以上に積極的に取り組んでおり、女性採用比率の向上や本社ビル屋上における太陽光パネルの設置などの施策を実施いたしました。また、こうした活動について当社ウェブサイトに専用ページを開設し情報開示の充実を図っており、当社グループが社会にとって不可欠な存在であるということを理解していただけるよう努め、中長期の持続的成長の実現へと繋げてまいります。
② 新中期経営計画について
新中計において掲げた上記目標を実現するため、当社グループは以下の施策に取り組んでまいります。
イ.事業戦略
当社グループ全体として、以下の3つの戦略に取り組んでまいります。
a.営業利益率の向上
ROE等の向上には、第一に売上高営業利益率をはじめとした本業の採算向上が求められます。当社グループは自社製品比率の向上/メーカー化により利益率の向上を図ってまいりましたが、さらに付加価値の高い製品やサービスの提供を目指してまいります。
b.経営資源の再配分による事業ポートフォリオの最適化
当社グループの事業の中で注力分野、成長分野を見定め、経営資源の再配分を検討し、グループ内の組織再編や事業撤退を含め、事業ポートフォリオを今一度見直し、採算性や成長性のさらなる向上が実現できるものと考えております。
c.業績の安定性向上
半導体業界への売上比率の高い当社グループにとって業績の安定性向上は、資本コストの低下にも繋がる重要なテーマと捉えております。特定業界、特定顧客依存からの脱却のため、製品等の充実を図るとともに、定期的に収入が見込めるストック型ビジネスの強化にも取り組む方針であります。
これら当社グループ全体の事業戦略実現のため、各事業セグメントにおいては以下の戦略を中心に事業を発展させていく計画であります。
「テストソリューション事業 ~製品ポートフォリオの拡充と最適化~」
テストソリューション事業は、特定顧客への依存や収益変動の大きさが課題となっております。引き続きNANDフラッシュメモリー向けテスターを主軸としながら、CMOSイメージセンサーなど他のデバイス向けテスターへの展開や、テストシステムの一部を担う機能の提供(後工程用検査ボード、イメージセンサー向けデコーダーボードなど)に事業範囲を広げてまいります。連結子会社のSTAr Technologies, Inc.は、強みであり比較的安定した収益が見込めるファウンドリ向け信頼性評価装置や研究開発用プローブカードに経営資源を集中するとともに、高周波、化合物半導体、パワー半導体など成長性の高い分野への展開を進めてまいります。
「半導体設計関連事業 ~グループ経営の基盤を固める強固な安定収益~」
半導体設計関連事業は、安定的な収益が見込める現在のビジネスモデルをベースに、さらなる成長や収益性の向上を目指し、事業領域を拡大してまいります。米国ケイデンス社のEDAソフトウェアや各種シミュレーション/解析ツールを駆使し、従来のIC設計から基板設計やシステム製品の設計に範囲を広げ、効率的な設計開発をサポートする体制を目指してまいります。さらに、ツールの提供にとどまらず、設計自体をサポートするサービスの提供を連結子会社の三栄ハイテックス株式会社や株式会社モーデックとの連携により実現してまいります。
「システム・サービス事業 ~マスカスタマイゼーション~」
システム・サービス事業は、ハード、ソフト、コンサルなど様々な形で顧客の製品への付加価値提供を目指しております。顧客ニーズを的確に捉えたパーソナライズドサービスを念頭に、BtoB分野における「マスカスタマイゼーション」を基本的な戦略として掲げ、ビジネス拡大を行ってまいります。キャッシュレス決済端末、エッジコンピューティング、画像処理など特徴的な技術により、イノテックらしく顧客満足度の高いソリューション提供に尽力してまいります。また、決済端末のサービス収入のようなストック型ビジネスの拡大にも注力してまいります。
また、事業セグメントを超えたシナジーとしてシミュレーションプラットフォームの活用を目指してまいります。半導体設計や自動車開発の場で、当社グループの事業セグメントを跨ぐ形で強みとなっているのが、シミュレーション/解析、検証のためのツールやコンサルティングサービスです。デジタルツインが注目されるなか、当社の提供するシミュレーション関連の製品やサービスが、顧客の開発効率の改善や製品付加価値の向上に資することを目指し、ノウハウの蓄積を進めてまいります。
ロ.資本政策
2018年2月に公表した「イノテックグループの資本政策に関する基本方針」を新中計においても踏襲し、ROE目標の実現や株主還元の充実に引き続き注力するため、以下に掲げる具体的な数値の目安や施策を念頭に推進してまいります。
・D/Eレシオ0.5倍以下
・現預金保有は月商の2か月以内
・配当性向は50%程度
・取引銀行との政策保有株式の見直し
・在庫水準の適正化と運転資金管理
ハ.サステナビリティ
当社グループでは「ヒューマンキャピタルマネジメント」、「サプライチェーンマネジメント」、「エレクトロニクス技術を通じた社会課題の解決」、「社会との共生と持続可能な未来への貢献」、「経営基盤の整備」の5つのマテリアリティを特定し、それぞれにKPIを設定、開示しております。
ヒューマンキャピタルマネジメントに関しては、ダイバーシティの推進に加え、モチベーション向上のための報酬制度見直しや福利厚生の充実策を段階的に講じております。女性管理職については新中計期間中の2025年に5%、2030年に10%とすることを目標として掲げております。
気候変動への対応については、本社ビル屋上への太陽光パネル設置工事の実施を完了し、さらに2050年までにScope1・2の温室効果ガス排出量を実質ゼロにするという目標達成に向け、具体的な計画を策定中であります。
(5)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
① 前中期経営計画について
前中計では「利益成長に伴う企業価値の拡大」を目指し、具体的な数値目標としてROE8%超を掲げ、利益やキャッシュ・フローの拡大と同時に「資本政策に関する基本方針」に基づいた適切な資本政策の実行により資本効率の向上を図り、両面からROE目標の達成を目指してまいりました。
当社グループが前中計において掲げた主な数値目標は以下のとおりであります。
・自己資本当期純利益率(ROE):中期8%超
・投下資本利益率(ROIC):ROICと加重平均資本コスト(WACC)のスプレッド拡大を実現し、8%を目指す
・負債資本倍率(D/Eレシオ):有利子負債による資金調達を行う場合においては0.5倍以下を目安とする
・配当性向:連結配当性向30%を下回らないこととし、急激な業績変化等が起こらなければ50%程度を目安とする。また、自己株式取得を機動的に行い、総還元性向を高め、自己資本額を適正に保つ
前中計期間における実績は次のとおりであります。
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2019年度 (第34期) |
2020年度 (第35期) |
2021年度 (第36期) |
2022年度 (第37期) |
2023年度 (第38期) |
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ROE |
5.8% |
7.8% |
10.4% |
7.3% |
6.1% |
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ROIC |
4.5% |
4.7% |
6.7% |
5.0% |
4.7% |
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D/Eレシオ |
35.7% |
42.5% |
38.7% |
38.7% |
46.2% |
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配当性向 |
49.4% |
41.4% |
38.5% |
55.1% |
63.3% |
② 新中期経営計画について
新中計では、資本コストを上回る資本効率性と株価/企業価値の向上のため、ROEに関して安定的に8%を上回る水準を達成するとともに10%を目指すことを最大の数値目標としております。また、「資本政策に関する基本方針」については、新中計においても踏襲する方針としております。
当社グループが新中計において掲げた主な数値目標は以下のとおりであります。
・自己資本当期純利益率(ROE):10%を目指す(8%以上を維持)
・投下資本利益率(ROIC):8%を目指す(6%以上を維持)
・負債資本倍率(D/Eレシオ):財務健全性維持と機動的な成長投資を図るため、0.5倍を上限とする
・配当性向:連結配当性向30%を下回らないこととし、急激な業績変化等が起こらなければ50%程度を目安とする。また、自己株式取得を機動的に行い、総還元性向を高め、自己資本額を適正に保つ
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、持続可能な社会の実現や企業価値の向上に向け、経営理念やサステナビリティ基本方針をベースとしたサステナビリティに関する5つの重要課題(マテリアリティ)を特定し、事業活動を通じてマテリアリティに掲げた課題に積極的に取り組むことにより、当社グループのサステナビリティ活動のさらなる充実を図ってまいります。
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マテリアリティ |
重点テーマ |
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ヒューマンキャピタルマネジメント |
・人材確保・育成、ナレッジマネジメント ・ダイバーシティ&インクルージョン ・モチベーションの向上 ・労働安全衛生、働き方改革・業務効率化 |
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サプライチェーンマネジメント |
・部材調達と製品供給の安定化 ・持続可能エネルギーへのアクセス確保 ・サプライヤーCSR行動基準 |
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エレクトロニクス技術を通じた社会課題の解決 |
・環境負荷低減製品での環境貢献 ・顧客企業の生産性向上 ・新規技術・分野への取組 ・品質マネジメントによる生産性の改善 ・ディーセントワークの実現 |
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社会との共生と持続可能な未来への貢献 |
・地球環境・気候変動への配慮、貢献 ・イノベーション・価値創造の促進 ・取引先とのパートナーシップ |
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経営基盤の整備 |
・資本効率の向上 ・サクセッションプランニング ・情報セキュリティ、コンプライアンス |
(1)サステナビリティ
①ガバナンス
当社グループは、当社の代表取締役社長執行役員をCSO(Chief Sustainability Officer:最高サステナビリティ責任者、以下「CSO」という。)、代表取締役専務執行役員をサステナビリティ推進担当取締役(以下「担当取締役」という。)とし、サステナビリティに関する基本方針及びそれらに関する重要事項等を審議する場としてCSOが主催する「サステナビリティ推進会議」(以下「推進会議」という。)を設置、原則として毎月開催することによりサステナビリティに関する取組を推進しております。推進会議の主な参加者は、CSO、担当取締役のほか、常勤執行役員、各事業部門長及び国内連結子会社の代表者であります。
推進会議では、定期的に(年1回以上)サステナビリティに関するリスク分析を行い、最新の状況を踏まえた対応方針や具体的な取組を協議し、同様に機会の識別、評価も実施しながら事業戦略に反映するとともに、当社グループが掲げる目標や取組について進捗状況をモニタリングしております。CSO及び担当取締役は、サステナビリティに関するリスクと機会の状況について定期的に(年1回以上)取締役会へ報告し、リスクの管理状況を取締役会が適切に監視、監督できる体制を整えております。なお、取締役会は各種の経営判断を行う上で、サステナビリティに関する問題を考慮しております。
また、当社の常勤執行役員及び連結子会社の役員等が参加する経営会議や、全従業員が参加する年4回のコミュニケーションミーティング等を通じてサステナビリティに関する知識やESG投資等に関する投資家動向の認識の共有、外部環境の把握に努めております。これらにおいて、優先度や重要度が高い論点、重要課題が認められた場合には、必要に応じて取締役会に議題として上程し、社外取締役を含む役員全体で議論を進めております。
②リスク管理
当社は、サステナビリティに関するリスクを的確に識別、評価、分析し、適切に対応することが、中長期の持続的な成長と企業価値の拡大に繋がると考えており、推進会議において、当社グループにとって重要なリスクを特定した上で対策を検討し、その進捗を管理しております。また、抽出したリスクの変化や、新たなリスク発生の有無を定期的に(年1回以上)確認し、発生の可能性と影響額の大きさをもとにあらためて評価、分析して重要なリスクの見直しを行った上で、対策の検討と進捗の管理を実施することにより、リスク管理水準の向上に努めております。推進会議で議論された内容は、定期的に(年1回以上)取締役会に報告され、リスクの管理状況を適切に監視、監督できる体制を整えております。
(2)人的資本
①戦略
当社は、従業員一人ひとりが意欲を持ち、それぞれが多様な個性を発揮し、それぞれの多様な働き方で、新しいことに挑戦できる職場環境を目指すとともに、全ての従業員を尊重し、ダイバーシティの浸透を図ってまいります。
イ.中核人材の登用方針
当社は、年齢、性別、性的自認や性的指向、国籍、障がいの有無、新卒・中途採用の別にかかわらず、中核人材である「管理職」に登用することでダイバーシティの浸透を図ってまいります。
ロ.人材育成方針
当社は、当社グループの企業価値向上や成長は、個々の従業員の成長が基盤となって実現されるものと考え、事業規模の拡大に伴って必要となる人材の確保と教育、研修、人事制度の整備に加え、個々の従業員が実力を発揮できる組織づくりに積極的に取り組んでおります。また、個人の能力を最大限に尊重し、様々な価値観を評価し採用及び登用の判断を行っております。
ハ.人材育成や能力開発への取組
当社は、さらなる成長を実現するために、次の3つの視点から事業構造改革を推進しております。第1は「製品ビジネスからソリューション・ビジネスへ」、第2は「国内ビジネスからグローバルビジネスへ」、第3は「半導体市場から最終製品市場へ」であり、これらの事業変革を実現するために必要と考える人材像として次の7項目を設定し、人材育成及び能力開発を進めております。
・新規ビジネス開拓等、失敗を恐れず自ら進んで新しいことに取り組む意欲のある人
・高い専門知識・能力をベースに、グローバルな視点を持ち、臆することなく海外展開できる人
・将来の見通しや具体策を明示し、決断、実行できる人
・当事者意識/自覚、責任意識を持ち、逃げずに前向きにやり遂げる人
・リーダーシップを持ち、チームで協力しながら目標を達成できる人
・相手の立場を理解し、謙虚さ・真摯さ・他者(社)への敬意を示し、良好な関係を築ける人
・成長意欲、自分の意見・意思を持ち、上司・顧客を問わず、臆せずに進言・提言できる人
また、当社は事業領域の変化に対応する人材育成基盤となる研修制度を構築し、その円滑な運用と継続的な改善を統括する組織として2019年10月に「教育委員会」を発足させております。人材育成や能力開発には継続的な教育が不可欠であり、従業員が成長するためには、社会人としての汎用的なスキルである「基礎力」と、事業や業務に特化したスキルである「専門力」の両方を高めていく必要があるとの考えから、当社では、日々の業務を通じて「専門力」を磨く一方、「基礎力」向上のためのツールとして、全従業員を対象に教育研修プログラムを導入しております。
さらに、従業員とのエンゲージメントは重要な活動であるという考えのもと、当社では外部のコンサルティング会社に委託して匿名式の従業員エンゲージメント調査を定期的に実施し、従業員が会社や職場についてどのように考えているかを調査・分析し、会社と従業員が同じ方向を向いて持続的な信頼関係を築けるように努めているほか、2014年から全従業員を対象とした記名式の人事に関するアンケート(年1回)を自社で実施しており、従業員一人ひとりの要望・悩み等の把握に努め、アンケート結果や改善策については、社外取締役の客観的な意見も交えつつ、様々な角度で議論され、状況改善に取り組んでおります。
②指標及び目標
当社は、人材の多様性を確保する上で、当社及び国内連結子会社において管理職登用に男女差があることを課題として捉え、当社及び国内連結子会社の女性管理職比率を主要KPIとして設定し、これを実現するための施策を講じてまいります。
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2023年度(実績) |
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2030年度(目標) |
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10.0% |
なお、当社では人材の多様性を確保する上で、国籍によって管理職登用のプロセスに特段の差が生じているとは認識していないため、現時点では外国人について管理職登用の目標策定は行っておりません。また、管理職に占める中途採用者の割合は既に過半数に達しております。
上記の目標を達成するため、当社では以下の重点施策を講じてまいります。
・女性社員と経営陣との間で定期的な意見交換の機会を設ける
・定期的なダイバーシティ推進研修を開催する
・新卒女性採用比率を30%以上とする
・年次有給休暇取得率向上、育児短時間勤務制度、在宅勤務など柔軟で効率的な働き方を推進する
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
当社グループは、以下のリスクに対応するため「リスク管理規程」を整備するとともに、代表取締役社長執行役員が委員長を務める「リスク管理委員会」を設置することにより業務遂行上のリスクの適切な管理や未然防止を図っております。リスク管理委員会は、リスク管理基本方針の立案やリスク情報の収集、抽出されたリスクの分析・評価(重要性の判断)、各部門における業務遂行上のリスク管理の監督等を行っております。複数の部門に係る重要度の高いリスクについては、各種委員会や事務局とも連携し、全社横断的なリスク対策を推進しております。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2024年6月25日)現在において当社グループが判断したものであります。
(1)特定取引先や業界への依存について
①特定の顧客への依存
テストソリューション事業における主力製品である半導体メモリー向け自社製テストシステムの販売事業の顧客は、特定の半導体メモリー製造企業であり、当該セグメントの売上高に占める主要顧客への依存度が高い水準となっております。
当社グループが2024年3月に公表した2024年度から2026年度までの新たな中期経営計画(以下「新中計」という。)では、事業戦略の1つとして「業績の安定性向上」を掲げておりますが、同事業における特定顧客への依存が課題となっております。
同事業は、技術の進歩等により大きく成長する反面、当社グループが管理不能な事由で半導体市場の需給バランスが崩れ、一時的な市場収縮による顧客の設備投資の抑制、生産活動の停滞や、業界再編等に伴う顧客の事業撤退や事業売却により、当社グループの事業計画遂行や経営成績に多大な影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクに対処するため、製品ラインナップの拡充や多様なアプリケーションの開拓による市場の拡大、顧客との密なコミュニケーション、最適なビジネスモデルの構築、新規顧客開拓(顧客ベースの拡大)等に努めております。
②特定の業界への依存
システム・サービス事業や半導体設計関連事業において取り扱う製商品・サービスの主要取引先には、国内の自動車メーカー及びその関連企業が含まれます。
当社グループは、新中計における「業績の安定性向上」実現のため、自動車関連市場向け事業のさらなる成長を目指しておりますが、パリ協定の合意以降、世界的に脱炭素化の流れが加速しており、ガソリン車の販売規制や世界的な自動車のEV化が進行するなか、急速なEV化への対応の遅れによる国内自動車メーカーの競争力低下や業界再編による市場の縮小などにより、当社グループの事業計画遂行や経営成績に多大な影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクに対処するため、EV向け製商品・サービスの強化や海外自動車メーカー等への販路拡大、新規事業開発や新規市場開拓(他業界への進出)などに努めております。
③特定の仕入先及び製造委託先への依存
当社グループは、取扱製商品や部材等を様々な企業から調達(仕入)しておりますが、半導体設計関連事業における主力商品である半導体設計用(EDA)ソフトウェアやテストソリューション事業における半導体メモリー向け自社製テストシステムの販売事業は、特定の仕入先及び製造委託先に依存しており、当該仕入先や製造委託先の予期せぬ企業再編行為や代理店契約の解消等により、当社グループの事業展開や経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクに対処するため、仕入先及び製造委託先との良好な関係の維持や定期的な情報交換に努めるとともに、取り扱いベンダーの拡充や複数社購買を推進しております。
(2)人財確保に関するリスクについて
当社グループが参画する事業領域は、技術革新が激しく、顧客ニーズを汲み取り最適なソリューションを提供するためには高度な技術力を必要とします。
また、当社グループは「営業利益率の向上」を新中計における事業戦略の1つとして掲げ、自社製品売上の拡大及びメーカー機能の強化を推進中であり、特に製品の研究開発に必要な能力を満たす人財の採用や育成がますます重要になっておりますが、技術者の獲得競争は激しいものとなっており、仮に充分な技術者を採用できない場合や優秀な技術者が流出した場合には、事業計画の遂行や将来の経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクに対処するため、海外の技術者を含めた積極的な採用活動を実施するとともに、報酬水準の向上や福利厚生、教育制度の充実、働きやすい就労環境の整備により人財に対する訴求力の強化と流出の防止を図り、スキルや知見の継承と長期的な人財育成を推進しているほか、外部の協力会社及び派遣社員を活用した効率的なリソース配分に努めております。
(3)自然災害や地政学的リスク等について
当社グループは、日本国内のみならず、アジアや北米を中心とした海外において事業活動を展開しており、さらなる拡大を目指しておりますが、それらの地域において地震、台風、水害等の自然災害や重大な感染症の世界的流行、地政学的リスクの顕在化等が発生した場合には、販売活動の停滞や商材・部材の調達困難、従業員の人命に係る事態等により、事業計画の遂行や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクに対処するため、事業継続計画(BCP)の見直しや管理体制の整備、サプライチェーンの強化、安否確認システムの導入、防災訓練の実施、産業医と連携した感染予防・拡大防止策の策定等の対策を講じております。
(4)自社製品等の品質に関するリスクについて
当社グループは、自社製品売上の拡大及びメーカー機能の強化を推進しており、テストシステムや組込み関連などにおいて自社製品やサービス事業を展開しておりますが、製品等の不良による顧客生産ラインへの支障や顧客開発計画の遅延、クラウドサービスに係るサーバー障害等によるサービスの停止や情報の喪失などの損害が発生する可能性があります。特に半導体製造企業や自動車関連企業に対する損害賠償は甚大なものとなることも想定されます。また、全世界的に脱炭素への取組みが活発化しており、当社製品の製造過程やサプライチェーンにおいても脱炭素が求められることが想定されますが、対応の遅れ等により顧客との取引が継続できなくなった場合、事業計画や経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクに対処するため、製造物賠償責任保険等への加入のほか、品質保証委員会や担当部門の設置による品質保証体制の強化、製造委託先の複数化等を推進しております。
(5)コーポレート・ガバナンス、内部統制について
当社グループは、国際的なビジネスや外部環境に対応するため、コーポレート・ガバナンスや内部統制が適切に機能することが重要であると認識しておりますが、M&Aの推進に伴う事業の急速な拡大等により、十分なガバナンスや内部統制構築の整備が追い付かない状況が生じ、従業員等の故意又は過失による法令違反行為の結果、当社グループの社会的信用の失墜により、財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクに対処するため、新たに買収した子会社等に対しては、規程の整備や会計方針の統一などに親会社が積極的に関与し、早期のガバナンス強化や内部統制構築を図っております。また、当社グループとして「内部統制基本方針」や「イノテックグループ倫理行動基準」を策定し、「イノテックグループ外部通報窓口」を設置するなど、内部統制システムを充実させ適切に運用するとともに、内部統制の啓もう活動や教育の強化にも取り組んでいるほか、当社の役員や従業員を子会社の役員として出向又は兼務させて子会社の経営に関与し、不正等の早期発見と適切な対応を図ることなどにより、法令遵守や財務報告の適正性の確保に努めております。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において判断したものであります。
①財政状態の状況
当連結会計年度末の財政状態につきましては、総資産が47,833百万円となり、前連結会計年度末に比べ4,204百万円増加しました。一方、負債は22,511百万円となり、前連結会計年度末に比べ3,472百万円増加しました。また、純資産は25,322百万円となり、前連結会計年度末に比べ732百万円増加しました。
②経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、雇用や所得環境の改善が進むなか、個人消費や設備投資を中心に緩やかな回復基調で推移したものの、円安の進行や物価上昇の影響が懸念されるほか、ウクライナや中東情勢、米中摩擦など地政学的リスクの高まり、中国経済の減速や欧米での金融引き締めによる景気後退懸念など、先行きについては依然として不透明な状況が続いております。
このような状況の下、当社グループにおける当連結会計年度の業績につきましては、半導体設計関連事業が前期実績に及ばず、テストソリューション事業も減益となった一方、システム・サービス事業は概ね好調に推移したことなどから、売上高41,358百万円(前期比7.1%増)、営業利益2,474百万円(同6.7%増)、経常利益2,880百万円(同16.1%増)、親会社株主に帰属する当期純利益1,477百万円(同11.3%減)となりました。
③キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、投資活動において1,444百万円(前期比14.6%減)を使用した一方、営業活動により2,621百万円(同56.0%増)、財務活動において808百万円(前期は517百万円の使用)の現金及び現金同等物(以下「資金」という。)を得た結果、当社グループの当連結会計年度末における資金の残高は、前連結会計年度末に比べ2,108百万円増加し、8,243百万円となりました。
④生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
前年同期比(%) |
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テストソリューション事業(千円) |
9,954,961 |
101.85 |
|
半導体設計関連事業(千円) |
2,948,226 |
99.21 |
|
システム・サービス事業(千円) |
7,333,502 |
114.20 |
|
合計(千円) |
20,236,690 |
105.58 |
(注)1.セグメント間の取引については、相殺消去しております。
2.一部の自社製品については、社外へ委託生産を行っており、上表の金額は外部委託先からの仕入価格を基準に記載しております。
b.商品仕入実績
当連結会計年度の商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
前年同期比(%) |
|
テストソリューション事業(千円) |
27,961 |
920.52 |
|
半導体設計関連事業(千円) |
6,974,824 |
94.69 |
|
システム・サービス事業(千円) |
1,676,578 |
96.37 |
|
合計(千円) |
8,679,365 |
95.28 |
(注)セグメント間の取引については、相殺消去しております。
c.受注実績
当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
受注高(千円) |
前年同期比(%) |
受注残高(千円) |
前年同期比(%) |
|
テストソリューション事業 |
17,136,838 |
120.29 |
3,993,832 |
145.65 |
|
半導体設計関連事業 |
14,672,721 |
101.04 |
14,256,279 |
114.35 |
|
システム・サービス事業 |
14,075,959 |
115.25 |
5,320,194 |
138.78 |
|
合計 |
45,885,519 |
111.97 |
23,570,306 |
123.77 |
(注)セグメント間の取引については、相殺消去しております。
d.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
前年同期比(%) |
|
テストソリューション事業(千円) |
15,885,082 |
113.97 |
|
半導体設計関連事業(千円) |
12,884,037 |
96.96 |
|
システム・サービス事業(千円) |
12,589,264 |
110.39 |
|
合計(千円) |
41,358,384 |
107.06 |
(注)セグメント間の取引については、相殺消去しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する分析・検討内容
a.財政状態
(流動資産)
当連結会計年度末における流動資産の残高は、30,305百万円となり、前連結会計年度末に比べ4,347百万円増加しました。これは主に、現金及び預金の増加や、今後の需要拡大に向けた部材の確保等による棚卸資産の増加によるものであります。なお、現金及び預金の増加要因については「②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報」に記載のとおりであります。
(固定資産)
当連結会計年度末における固定資産の残高は、17,528百万円となり、前連結会計年度末に比べ143百万円減少しました。これは主に、退職給付に係る資産が増加した一方、連結子会社が保有する投資有価証券を減損処理したことによるものであります。
(流動負債)
当連結会計年度末における流動負債の残高は、20,260百万円となり、前連結会計年度末に比べ3,192百万円増加しました。これは主に、1年内償還予定の社債を償還した一方、短期借入金や前受金が増加したことによるものであります。
(固定負債)
当連結会計年度末における固定負債の残高は、2,250百万円となり、前連結会計年度末に比べ279百万円増加しました。これは主に、長期借入金の調達を実行したことによるものであります。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産合計は、25,322百万円となり、前連結会計年度末に比べ732百万円増加しました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益を計上したことや、新株予約権の行使等により自己株式が減少したことによるものであります。この結果、自己資本比率は51.6%となり、前連結会計年度末に比べ2.5ポイント減少しております。
b.経営成績
(売上高、売上原価、販売費及び一般管理費)
当連結会計年度の売上高は、信頼性評価装置や半導体設計用(EDA)ソフトウェア、クラウド決済サービスの販売が堅調に推移したことなどから41,358百万円となり、前連結会計年度に比べ7.1%増加しました。一方、売上高に対する売上原価の比率は、各セグメントにおける利益率に大きな変化は見られなかったため、ほぼ前期並みの68.2%となりました。また、販売費及び一般管理費は、新製品の開発や業容拡大に伴い研究開発費や給与手当が増加したことなどにより前連結会計年度に比べ7.7%増加し、10,685百万円となりました。
この結果、当連結会計年度の営業利益は、前連結会計年度に比べ6.7%増加し、2,474百万円となりました。
報告セグメント別の経営成績は次のとおりであります。なお、セグメント利益は連結財務諸表の営業利益と調整を行っております。
〔テストソリューション事業〕
テストソリューション事業は、半導体メモリー市場等の顧客を中心に当社グループのエンジニアリング力を活かし、高付加価値製品の提供に注力するとともに、顧客ニーズに対応した製品の開発やメモリー以外の周辺ソリューションの拡大に積極的に取り組んでまいりました。自社製テストシステムは、後工程用検査ボードの販売が堅調だったことにより一定の収益は確保したものの、半導体市況低迷に伴い顧客の投資抑制が続きメモリー向けテスターの需要が回復しなかったことから大幅な減収となりました。台湾のSTAr Technologies, Inc.は、市況低迷によりプローブカードの販売が伸び悩んだものの、信頼性評価装置の販売が堅調に推移し増収増益となりました。
その結果、当事業の売上高は15,885百万円(前期比14.0%増)、セグメント利益は812百万円(同15.2%減)となりました。
〔半導体設計関連事業〕
半導体設計関連事業は、新規顧客の開拓や既存顧客との関係強化を図るなど積極的な営業活動を行い、売上拡大及び収益の安定化に努めてまいりました。EDA他は、一部商品の取り扱い終了の影響により減収となりましたが、主力商品である半導体設計用(EDA)ソフトウェアについては、既存顧客との長期契約の更新が概ね順調だったことや新規顧客向け販売が堅調に推移したことなどから増収となりました。三栄ハイテックス株式会社のLSI設計受託ビジネスは、市況悪化により中国での事業は低調だったものの、国内事業やベトナム子会社は概ね堅調に推移し、ほぼ前期並みの実績となりました。株式会社モーデックのシミュレーションモデル製品販売や設計支援サービスは、半導体や自動車関連向けの受注が伸び悩み前期実績には及びませんでした。
その結果、当事業の売上高は12,884百万円(前期比3.0%減)、セグメント利益は575百万円(同8.9%減)となりました。
〔システム・サービス事業〕
システム・サービス事業は、当社グループのエンジニアリング力を活かし、特徴ある製品の開発やサービスの提供に注力するとともに、展示会やWEBを活用し新規顧客の獲得を図るなど積極的な営業活動を行ってまいりました。自社製CPUボードやBOX型コンピューターなどの組込み製品は、社会インフラや産業機械向けなどを中心とした需要が引き続き高いことに加え、防衛やセキュリティ関連向けも伸長し増収となりました。アイティアクセス株式会社は、決済端末の需要が増加したことに伴いクラウド決済サービスも堅調に推移し増収増益となりました。ガイオ・テクノロジー株式会社の車載向け組込みソフト検証ツール販売及びエンジニアリングサービスは、自動車関連の需要が回復傾向となったことなどにより増収増益となりました。株式会社レグラスは、受託開発が概ね順調に推移したものの、建機やフォークリフト向けAIカメラシステムの立ち上がりが遅れたことなどにより減収となりました。
その結果、当事業の売上高は12,589百万円(前期比10.4%増)、セグメント利益は1,616百万円(同21.3%増)となりました。
(営業外損益)
当連結会計年度の不動産賃貸料は、テナントの入居率をほぼ維持できたことなどから480百万円となり、前連結会計年度に比べ7.5%増加しました。また、主に債権債務の評価替えによる為替差益も増加しました。一方、不動産賃貸費用は、本社ビル維持管理費の増加などにより前連結会計年度に比べ5.2%増加の353百万円となりました。
この結果、当連結会計年度の経常利益は、前連結会計年度に比べ16.1%増加し、2,880百万円となりました。
(特別損益)
当連結会計年度の特別利益は、国内子会社において補助金収入を計上したことなどにより3百万円となりました。一方、特別損失は、海外子会社において投資有価証券評価損を計上したことなどから、534百万円となりました。
この結果、当連結会計年度の税金等調整前当期純利益は、前連結会計年度に比べ5.4%減少し、2,349百万円となりました。
(法人税等)
当連結会計年度の法人税等は、国内子会社の業績が好調だったことなどから、前連結会計年度に比べ6.5%増加し、817百万円となりました。
この結果、当期純利益は、前連結会計年度に比べ10.7%減少し、1,532百万円となりました。
また、法人税等の税金等調整前当期純利益に対する比率は34.8%となり、前連結会計年度に比べ3.9ポイント増加しました。
(非支配株主に帰属する当期純損益)
当連結会計年度の非支配株主に帰属する当期純利益は、主に連結子会社のアイティアクセス株式会社が増益となったことから、前連結会計年度に比べ12.9%増加し、54百万円となりました。
この結果、当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に比べ11.3%減少し、1,477百万円となりました。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
a.キャッシュ・フローの状況
当社グループの当連結会計年度末における資金の残高は、前連結会計年度末に比べ2,108百万円増加し、8,243百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の営業活動の結果得られた資金は2,621百万円(前期比56.0%増)となりました。これは主に、棚卸資産及び前渡金が999百万円増加したものの、税金等調整前当期純利益を2,349百万円、減価償却費を1,288百万円それぞれ計上したことなどにより資金を得たためであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の投資活動の結果使用した資金は1,444百万円(同14.6%減)となりました。これは主に、有形固定資産の取得に704百万円、無形固定資産の取得に499百万円の資金を使用したことなどによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の財務活動の結果得られた資金は808百万円(前期は517百万円の使用)となりました。これは主に、社債の償還に2,200百万円を使用したものの、短期借入れにより4,055百万円、長期借入れにより1,000百万円を得たことなどによるものであります。
b.資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、商品や原材料等の仕入代金や販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は経常的に発生するものではありませんが、生産設備を有する一部の子会社の設備投資や事業買収に係る費用等があります。これらの資金需要に対しては、まず営業キャッシュ・フローで獲得した資金を使用し、不足分について金融機関からの借入などによる調達を実施することとしております。長期借入金や社債などの長期資金の調達につきましては、金利動向などの調達環境を考慮のうえ、調達規模や調達手段を適宜判断して実施することとしております。
また、自己株式の取得につきましては、「資本政策に関する基本方針」に基づき、実行の是非を判断することとしております。
③経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
「第2 事業の状況、1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (5)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載のとおりであります。
④重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準により作成されております。
連結財務諸表の作成にあたって、経営者が採用した会計基準や、資産・負債及び収益・費用の計上並びに開示に影響を与える見積りについては、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、見積り特有の不確実性により、実際の結果はこれらの見積りと異なる場合があります。
なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しております。
該当事項はありません。
当社グループは、研究開発の充実によって当社グループ自身のエンジニアリング力を高め、市場動向及びニーズを重視しながら自社の新製品・新技術の研究開発を積極的に進めております。
現在の研究開発は、当社グループの各技術部門を中心に推進されており、主に当社においては半導体テストシステムや組込み用途向けのCPUボード及びBOX型コンピューター、子会社においては半導体向けの信頼性評価装置やプローブカード、キャッシュレス決済端末や車載向けの組込みソフト検証ツール等の開発を行っております。
当社グループの当連結会計年度の研究開発費の総額は
なお、当連結会計年度の主な研究開発活動の内容は以下のとおりであります。
(1)テストソリューション事業
当社のテストシステム事業では、前連結会計年度に引き続き、次世代3D NANDデバイスのさらなる多層化や微細化などに向け、超多数個同時測定を可能とするテストシステムの開発に注力いたしました。イメージセンサー分野では、高画素化やインターフェースの高速化に対応したキャプチャーボードの開発や、新しいインターフェースに対応するための基礎研究を株式会社レグラスと共同で行いました。その他、産業用ロボットオートメーション分野では、物体認識・アーム制御AIを活用した物流向けソリューションの基礎研究を行いました。
また、STAr Technologies, Inc.は、化合物パワー半導体など成長性の高い市場に向け、高電圧や広い周波数に対応した信頼性評価装置やスイッチングモジュールの開発に取り組み、プローブカード事業では、最先端半導体プロセスで必要不可欠なプロセスモニタリング用プローブカードの開発を行いました。
(2)システム・サービス事業
自社ブランド「INNINGS」にて展開する当社の組込み用途向けCPUボード製品は、FA・産業機器等を中心とした組込み製品市場やエッジAI市場に向け、前連結会計年度にリリースしたインテル社製CPU「Atomシリーズ」(ElkhartLake)搭載のCPUボード及び当該CPUボード搭載の小型BOX製品をベースとしたカスタマイズ製品や、インテル社製CPU「Coreシリーズ」(TigaerLake)搭載製品の開発を行い、新製品として複数機種をリリースすることができました。これらの新製品は、同市場における顧客へ採用され始めており、翌連結会計年度以降の量産を計画しております。
また、工場などで稼働する産業機器用途向けに、「INNINGS」製品において顔認証(エッジAI顔認証技術)を実現したソリューション製品である「EdgeFace」の開発に取り組みました。「EdgeFace」は、クラウドを介することなく「INNINGS」製品上で顔認証データを処理(エッジ処理)することが可能であり、インテル社製のAI処理に優れたCPUを採用した小型BOX製品を同時に開発することで、顧客の用途に合わせた最適なソリューションの提供を実現しております。
ガイオ・テクノロジー株式会社の組込みソフト検証ツール等の開発については、前連結会計年度に引き続き、車載向けソフトウェアをはじめとした大規模化するソフトウェアに対し、既存製品では網羅できなかったLinux向けのテスト設計、テスト実行支援ツールの試作を進め、顧客デモモデルの開発に取り組んでいるほか、モデルベース開発に係る次世代製品に関連するテストデータの設計、コード解析技術や大規模計算機を利用した技術の研究などに取り組み、翌連結会計年度の製品化を目指しております。
アイティアクセス株式会社の決済端末事業については、多様化・重層化するキャッシュレス決済市場に対応するため、QRコード決済を含む各種電子マネーへの対応や各種認証のためのシステム開発、オフィスコンビニやアミューズメント向けの専用端末の開発などに引き続き注力しております。
株式会社レグラスのAIカメラ画像ソリューションについては、建設機械やフォークリフトなどに装着する安全装置向け人物検知システムの検知機能向上や多様な障害物を検知するシステム開発などに注力し、安全機能のニーズが高まっている建機・フォークリフト市場へ向けた製品開発を推進しております。