当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
① 経営理念
当社グループは、エンジニアリングをコアとしたトータルソリューションプロバイダーとして、顧客企業が求める多様なニーズにお応えすることをビジネスとしております。当社グループの基本方針として、以下の「我々が目指すもの」を常に念頭に置いた企業活動を行っております。
「我々が目指すもの」
・エレクトロニクスビジネスを通じて、人々の生活を豊かで快適なものにし、「未来社会に貢献」する
・創造力を駆使、携わるエレクトロニクス業界の技術の進歩に寄与し、「不可欠な存在」になる
・我々の真の事業は「問題を解決」することであり、顧客に満足いただく労苦を惜しまない
・先端技術に挑戦し続ける「パイオニア」になる
・創造力を発揮できる会社の仕組みづくりに心血を注ぐ、「誇りの持てる会社を実現」する
② ビジョン、方針
「未来を変えテック、イノテック ~Innovation Technology~」
社名の由来でもあるInnovationとTechnologyを経営の根幹に据え、経営理念のひとつである「未来社会に貢献する」という命題にチャレンジいたします。革新的な技術により未来を変えていくことで持続可能な社会の実現のために不可欠な存在となることを目指します。
そのために、以下のミッションに取り組んでまいります。
・最先端技術と人を繋ぎ、豊かで快適な未来社会に貢献する
・顧客に寄り添い、ともに課題を解決する
・イノテックならではの付加価値の提供を目指す
(2)経営戦略等
当社グループは2024年3月21日に2024年度から2026年度までの中期経営計画(以下「中計」という。)を公表いたしました。
中計では、資本コストを上回る資本効率性と株価/企業価値の向上を意識した目標設定が肝要と考えており、ROEに関して安定的に8%を上回る水準を達成するとともに10%を目指すことを最大の目標とし、以下の戦略に取り組んでまいります。
当社グループ共通の事業戦略
・営業利益率の向上
・経営資源の再配分による事業ポートフォリオの最適化
・業績の安定性向上
各事業セグメントの事業戦略
・テストソリューション事業
製品ポートフォリオの拡充と最適化
・半導体設計関連事業
グループ経営の基盤を固める強固な安定収益の拡大
・システム・サービス事業
マスカスタマイゼーションの推進
(3)経営環境
当社グループが参画する半導体/エレクトロニクス業界は、半導体業界に対する日本政府の支援や海外企業の誘致、生成AIの普及やデジタル化の進展などにより今後好転していくものと期待されます。一方、地政学的リスクの顕在化への対応など、リスク管理にも十分な配慮が必要と認識しております。
翌連結会計年度のわが国経済は、賃金の上昇や雇用の改善による個人消費の持ち直しやデジタル化・脱炭素を背景とした設備投資の拡大などにより緩やかな回復基調で推移するものと思われます。一方、物価動向が個人消費に与える影響が懸念されるほか、地政学的リスクや米国の通商政策動向など先行き不透明な状況が継続するものと予想されます。
当社グループの事業活動においては、テストソリューション事業は、国内のメモリー向けテスターの需要回復には不透明感が継続するものの、海外向け新製品の販売伸長が期待されるほか、信頼性評価装置やプローブカード事業も概ね堅調に推移するものと見込まれます。
半導体設計関連事業は、EDAソフトウェアにおいては既存顧客との契約更改が引き続き順調に進むことに加え、パッケージ/プリント基板設計までを取り込むシステム協調解析ソリューションや受託開発などの付加価値提案に注力する取組などにより堅調に推移するものと見込んでおります。また、LSI設計受託においては、海外におけるAI関連事業の需要が一服するものの、国内事業の稼働率は回復傾向で推移するものと予想されます。
システム・サービス事業は、自社製CPUボードやBOX型コンピューターの社会インフラ・防衛向けの需要が引き続き高いことに加え、産業機械向けの回復期待により好調が継続するものと見込まれます。また、決済端末の販売拡大に伴うクラウド決済サービス収入や車載関連の組込みソフト検証ツール及び検証サービスも底堅く推移するものと見込んでおります。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
中計において掲げた上記目標を実現するため、当社グループは以下の施策に取り組んでまいります。
①事業戦略
当社グループ全体として、以下の3つの戦略に取り組んでまいります。
a.営業利益率の向上
ROE等の向上には、第一に売上高営業利益率をはじめとした本業の採算向上が求められます。当社グループは自社製品比率の向上/メーカー化により利益率の向上を図ってまいりましたが、さらに付加価値の高い製品やサービスの提供を目指してまいります。
b.経営資源の再配分による事業ポートフォリオの最適化
当社グループの事業の中で注力分野、成長分野を見定め、経営資源の再配分を検討し、グループ内の組織再編や事業撤退を含め、事業ポートフォリオを今一度見直し、採算性や成長性のさらなる向上が実現できるものと考えております。
c.業績の安定性向上
半導体業界への売上比率の高い当社グループにとって業績の安定性向上は、資本コストの低下にも繋がる重要なテーマと捉えております。特定業界、特定顧客依存からの脱却のため、製品等の充実を図るとともに、定期的に収入が見込めるストック型ビジネスの強化にも取り組む方針であります。
これら当社グループ全体の事業戦略実現のため、各事業セグメントにおいては以下の戦略を中心に事業を発展させていく計画であります。
「テストソリューション事業 ~製品ポートフォリオの拡充と最適化~」
テストソリューション事業は、特定顧客への依存や収益変動の大きさが課題となっております。引き続きNANDフラッシュメモリー向けテスターを主軸としながら、CMOSイメージセンサーなど他のデバイス向けテスターへの展開や、テストシステムの一部を担う機能の提供(後工程用検査ボード、イメージセンサー向けデコーダーボードなど)に事業範囲を広げてまいります。連結子会社のSTAr Technologies, Inc.は、強みであり比較的安定した収益が見込めるファウンドリ向け信頼性評価装置や研究開発用プローブカードに経営資源を集中するとともに、高周波、化合物半導体、パワー半導体など成長性の高い分野への展開を進めてまいります。
「半導体設計関連事業 ~グループ経営の基盤を固める強固な安定収益~」
半導体設計関連事業は、安定的な収益が見込める現在のビジネスモデルをベースに、さらなる成長や収益性の向上を目指し、事業領域を拡大してまいります。米国ケイデンス社のEDAソフトウェアや各種シミュレーション/解析ツールを駆使し、従来のIC設計から基板設計やシステム製品の設計に範囲を広げ、効率的な設計開発をサポートする体制を目指してまいります。さらに、ツールの提供にとどまらず、設計自体をサポートするサービスの提供を連結子会社の三栄ハイテックス株式会社や株式会社モーデックとの連携により実現してまいります。
「システム・サービス事業 ~マスカスタマイゼーション~」
システム・サービス事業は、ハード、ソフト、コンサルなど様々な形で顧客の製品への付加価値提供を目指しております。顧客ニーズを的確に捉えたパーソナライズドサービスを念頭に、BtoB分野における「マスカスタマイゼーション」を基本的な戦略として掲げ、ビジネス拡大を行ってまいります。キャッシュレス決済端末、エッジコンピューティング、画像処理など特徴的な技術により、イノテックらしく顧客満足度の高いソリューション提供に尽力してまいります。また、決済端末のサービス収入のようなストック型ビジネスの拡大にも注力してまいります。
また、事業セグメントを超えたシナジーとしてシミュレーションプラットフォームの活用を目指してまいります。半導体設計や自動車開発の場で、当社グループの事業セグメントを跨ぐ形で強みとなっているのが、シミュレーション/解析、検証のためのツールやコンサルティングサービスです。デジタルツインが注目されるなか、当社の提供するシミュレーション関連の製品やサービスが、顧客の開発効率の改善や製品付加価値の向上に資することを目指し、ノウハウの蓄積を進めてまいります。
②資本政策
2018年2月に公表した「イノテックグループの資本政策に関する基本方針」を中計においても踏襲し、ROE目標の実現や株主還元の充実に引き続き注力するため、以下に掲げる具体的な数値の目安や施策を念頭に推進してまいります。
・D/Eレシオ0.5倍以下
・現預金保有は月商の2か月以内
・配当性向は50%程度
・取引銀行との政策保有株式の見直し
・在庫水準の適正化と運転資金管理
③サステナビリティ
当社グループでは「ヒューマンキャピタルマネジメント」、「サプライチェーンマネジメント」、「エレクトロニクス技術を通じた社会課題の解決」、「社会との共生と持続可能な未来への貢献」、「経営基盤の整備」の5つのマテリアリティを特定し、それぞれにKPIを設定、開示しております。
ヒューマンキャピタルマネジメントに関しては、ダイバーシティの推進に加え、モチベーション向上のための報酬制度見直しや福利厚生の充実策を段階的に講じております。女性管理職については中計期間中の2025年に5%、2030年に10%とすることを目標として掲げております。
気候変動への対応については、本社ビル屋上への太陽光パネル設置工事の実施を完了し、さらに2050年までにScope1・2の温室効果ガス排出量を実質ゼロにするという目標達成に向け、施策を検討中であります。
(5)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
中計では、資本コストを上回る資本効率性と株価/企業価値の向上のため、ROEに関して安定的に8%を上回る水準を達成するとともに10%を目指すことを最大の数値目標としております。また、「資本政策に関する基本方針」については、中計においても踏襲する方針としております。
当社グループが中計において掲げた主な数値目標は以下のとおりであります。
・自己資本当期純利益率(ROE):10%を目指す(8%以上を維持)
・投下資本利益率(ROIC):8%を目指す(6%以上を維持)
・負債資本倍率(D/Eレシオ):財務健全性維持と機動的な成長投資を図るため、0.5倍を上限とする
・配当性向:連結配当性向30%を下回らないこととし、急激な業績変化等が起こらなければ50%程度を目安とする。また、自己株式取得を機動的に行い、総還元性向を高め、自己資本額を適正に保つ
中計期間における実績は次のとおりであります。
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中計目標 |
2024年度 (第39期) |
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ROE |
8%以上 |
4.8% |
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ROIC |
6%以上 |
3.4% |
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D/Eレシオ |
0.5倍以下 |
0.38倍 |
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配当性向 |
30%以上 |
78.2% |
当連結会計年度においては、主にテストソリューション事業の低迷によりROE、ROICの目標が未達となりましたが、引き続き中計にて掲げた戦略の着実な実行により上記目標の達成を目指してまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、持続可能な社会の実現や企業価値の向上に向け、経営理念やサステナビリティ基本方針をベースとしたサステナビリティに関する5つの重要課題(マテリアリティ)を特定し、事業活動を通じてマテリアリティに掲げた課題に積極的に取り組むことにより、当社グループのサステナビリティ活動のさらなる充実を図ってまいります。
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マテリアリティ |
重点テーマ |
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ヒューマンキャピタルマネジメント |
・人材確保・育成、ナレッジマネジメント ・ダイバーシティ&インクルージョン ・モチベーションの向上 ・労働安全衛生、働き方改革・業務効率化 |
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サプライチェーンマネジメント |
・部材調達と製品供給の安定化 ・持続可能エネルギーへのアクセス確保 ・サプライヤーCSR行動基準 |
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エレクトロニクス技術を通じた社会課題の解決 |
・環境負荷低減製品での環境貢献 ・顧客企業の生産性向上 ・新規技術・分野への取組 ・品質マネジメントによる生産性の改善 ・ディーセントワークの実現 |
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社会との共生と持続可能な未来への貢献 |
・地球環境・気候変動への配慮、貢献 ・イノベーション・価値創造の促進 ・取引先とのパートナーシップ |
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経営基盤の整備 |
・資本効率の向上 ・サクセッションプランニング ・情報セキュリティ、コンプライアンス |
(1)サステナビリティ
①ガバナンス
当社グループは、当社の代表取締役社長執行役員をCSO(Chief Sustainability Officer:最高サステナビリティ責任者、以下「CSO」という。)、代表取締役専務執行役員をサステナビリティ推進担当取締役(以下「担当取締役」という。)とし、サステナビリティに関する基本方針及びそれらに関する重要事項等を審議する場としてCSOが主催する「サステナビリティ推進会議」(以下「推進会議」という。)を設置、定期的に開催することによりサステナビリティに関する取組を推進しております。推進会議の主な参加者は、CSO、担当取締役のほか、常勤執行役員、各事業部門長及び国内連結子会社の代表者であります。
推進会議では、定期的に(年1回以上)サステナビリティに関するリスク分析を行い、最新の状況を踏まえた対応方針や具体的な取組を協議し、同様に機会の識別、評価も実施しながら事業戦略に反映するとともに、当社グループが掲げる目標や取組について進捗状況をモニタリングしております。CSO及び担当取締役は、サステナビリティに関するリスクと機会の状況について定期的に(年1回以上)取締役会へ報告し、リスクの管理状況を取締役会が適切に監視、監督できる体制を整えております。なお、取締役会は各種の経営判断を行う上で、サステナビリティに関する問題を考慮しております。
また、当社の常勤執行役員及び連結子会社の役員等が参加する経営会議や、全従業員が参加する年4回のコミュニケーションミーティング等を通じてサステナビリティに関する知識やESG投資等に関する投資家動向の認識の共有、外部環境の把握に努めております。これらにおいて、優先度や重要度が高い論点、重要課題が認められた場合には、必要に応じて取締役会に議題として上程し、社外取締役を含む役員全体で議論を進めております。
②リスク管理
当社は、サステナビリティに関するリスクを的確に識別、評価、分析し、適切に対応することが、中長期の持続的な成長と企業価値の拡大に繋がると考えており、推進会議において、当社グループにとって重要なリスクを特定した上で対策を検討し、その進捗を管理しております。また、抽出したリスクの変化や、新たなリスク発生の有無を定期的に(年1回以上)確認し、発生の可能性と影響額の大きさをもとにあらためて評価、分析して重要なリスクの見直しを行った上で、対策の検討と進捗の管理を実施することにより、リスク管理水準の向上に努めております。推進会議で議論された内容は、定期的に(年1回以上)取締役会に報告され、リスクの管理状況を適切に監視、監督できる体制を整えております。
(2)人的資本
①戦略
当社は、従業員一人ひとりが意欲を持ち、それぞれが多様な個性を発揮し、それぞれの多様な働き方で、新しいことに挑戦できる職場環境を目指すとともに、全ての従業員を尊重し、ダイバーシティの浸透を図ってまいります。
イ.中核人材の登用方針
当社は、年齢、性別、性的自認や性的指向、国籍、障がいの有無、新卒・中途採用の別にかかわらず、中核人材である「管理職」に登用することでダイバーシティの浸透を図ってまいります。
ロ.人材育成方針
当社は、当社グループの企業価値向上や成長は、個々の従業員の成長が基盤となって実現されるものと考え、事業規模の拡大に伴って必要となる人材の確保と教育、研修、人事制度の整備に加え、個々の従業員が実力を発揮できる組織づくりに積極的に取り組んでおります。また、個人の能力を最大限に尊重し、様々な価値観を評価し採用及び登用の判断を行っております。
ハ.人材育成や能力開発への取組
当社は、さらなる成長を実現するために、次の3つの視点から事業構造改革を推進しております。第1は「製品ビジネスからソリューション・ビジネスへ」、第2は「国内ビジネスからグローバルビジネスへ」、第3は「半導体市場から最終製品市場へ」であり、これらの事業変革を実現するために必要と考える人材像として次の7項目を設定し、人材育成及び能力開発を進めております。
・新規ビジネス開拓等、失敗を恐れず自ら進んで新しいことに取り組む意欲のある人
・高い専門知識・能力をベースに、グローバルな視点を持ち、臆することなく海外展開できる人
・将来の見通しや具体策を明示し、決断、実行できる人
・当事者意識/自覚、責任意識を持ち、逃げずに前向きにやり遂げる人
・リーダーシップを持ち、チームで協力しながら目標を達成できる人
・相手の立場を理解し、謙虚さ・真摯さ・他者(社)への敬意を示し、良好な関係を築ける人
・成長意欲、自分の意見・意思を持ち、上司・顧客を問わず、臆せずに進言・提言できる人
また、当社は事業領域の変化に対応する人材育成基盤となる研修制度を構築し、その円滑な運用と継続的な改善を統括する組織として2019年10月に「教育委員会」を発足させております。人材育成や能力開発には継続的な教育が不可欠であり、従業員が成長するためには、社会人としての汎用的なスキルである「基礎力」と、事業や業務に特化したスキルである「専門力」の両方を高めていく必要があるとの考えから、当社では、日々の業務を通じて「専門力」を磨く一方、「基礎力」向上のためのツールとして、全従業員を対象に教育研修プログラムを導入しているほか、管理職や全従業員向けのハラスメント防止研修を実施しております。
さらに、従業員とのエンゲージメントは重要な活動であるという考えのもと、当社では外部のコンサルティング会社に委託して匿名式の従業員エンゲージメント調査を定期的に実施し、従業員が会社や職場についてどのように考えているかを調査・分析し、会社と従業員が同じ方向を向いて持続的な信頼関係を築けるように努めているほか、2014年から全従業員を対象とした記名式の人事に関するアンケート(年1回)を自社で実施しており、従業員一人ひとりの要望・悩み等の把握に努め、アンケート結果や改善策については、社外取締役の客観的な意見も交えつつ、様々な角度で議論され、状況改善に取り組んでおります。
②指標及び目標
当社は、人材の多様性を確保する上で、当社及び国内連結子会社において管理職登用に男女差があることを課題として捉え、当社及び国内連結子会社の女性管理職比率を主要KPIとして設定し、これを実現するための施策を講じてまいります。
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2024年度(実績) |
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2030年度(目標) |
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10.0% |
なお、当社では人材の多様性を確保する上で、国籍によって管理職登用のプロセスに特段の差が生じているとは認識していないため、現時点では外国人について管理職登用の目標策定は行っておりません。また、管理職に占める中途採用者の割合は既に過半数に達しております。
上記の目標を達成するため、当社では以下の重点施策を講じてまいります。
・女性社員と経営陣との間で定期的な意見交換の機会を設ける
・定期的なダイバーシティ推進研修を開催する
・新卒女性採用比率を30%以上とする
・年次有給休暇取得率向上、育児短時間勤務制度、在宅勤務など柔軟で効率的な働き方を推進する
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
当社グループは、以下のリスクに対応するため「リスク管理規程」を整備するとともに、代表取締役社長執行役員が委員長を務める「リスク管理委員会」を設置することにより業務遂行上のリスクの適切な管理や未然防止を図っております。リスク管理委員会は、リスク管理基本方針の立案やリスク情報の収集、抽出されたリスクの分析・評価(重要性の判断)、各部門における業務遂行上のリスク管理の監督等を行っております。複数の部門に係る重要度の高いリスクについては、各種委員会や事務局とも連携し、全社横断的なリスク対策を推進しております。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2025年6月25日)現在において当社グループが判断したものであります。
(1)特定取引先や業界への依存について
①特定の顧客への依存
テストソリューション事業における主力製品である半導体メモリー向け自社製テストシステムの販売事業の顧客は、特定の半導体メモリー製造企業であり、当該セグメントの売上高に占める主要顧客への依存度が高い水準となっております。
当社グループが2024年3月に公表した2024年度から2026年度までの中期経営計画(以下「中計」という。)では、事業戦略の1つとして「業績の安定性向上」を掲げておりますが、同事業における特定顧客への依存が課題となっております。
同事業は、技術の進歩等により大きく成長する反面、当社グループが管理不能な事由で半導体市場の需給バランスが崩れ、一時的な市場収縮による顧客の設備投資の抑制、生産活動の停滞や、業界再編等に伴う顧客の事業撤退や事業売却により、当社グループの事業計画遂行や経営成績に多大な影響を及ぼす可能性があります。また、当社は半導体市況や主要顧客の投資見込みに基づき、納期の遵守等を目的として一定の在庫を保有しておりますが、顧客の生産計画の変更や中止等により当該在庫保有が長期化し、過剰在庫となって回収が見込まれない棚卸資産の評価損を計上する可能性があります。
当該リスクに対処するため、製品ラインナップの拡充や多様なアプリケーションの開拓による市場の拡大、顧客との密なコミュニケーション、最適なビジネスモデルの構築、新規顧客開拓(顧客ベースの拡大)等に努めております。
②特定の業界への依存
システム・サービス事業や半導体設計関連事業において取り扱う製商品・サービスの主要取引先には、国内の自動車メーカー及びその関連企業が含まれます。
当社グループは、中計における「業績の安定性向上」実現のため、自動車関連市場向け事業のさらなる成長を目指しておりますが、気候変動対策としてのEV化の促進やガソリン車の販売規制が策定される状況において、国内自動車メーカーの対応遅れによる競争力低下や業界再編による市場の縮小などにより、当社グループの事業計画遂行や経営成績に多大な影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクに対処するため、EV向け製商品・サービスの強化や海外自動車メーカー等への販路拡大、新規事業開発や新規市場開拓(他業界への進出)などに努めております。
③特定の仕入先及び製造委託先への依存
当社グループは、取扱製商品や部材等を様々な企業から調達(仕入)しておりますが、半導体設計関連事業における主力商品である半導体設計用(EDA)ソフトウェアやテストソリューション事業における半導体メモリー向け自社製テストシステムの販売事業は、特定の仕入先及び製造委託先に依存しており、当該仕入先や製造委託先の予期せぬ企業再編行為や代理店契約の解消等により、当社グループの事業展開や経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクに対処するため、仕入先及び製造委託先との良好な関係の維持や定期的な情報交換に努めるとともに、取り扱いベンダーの拡充や複数社購買を推進しております。
(2)人財確保に関するリスクについて
当社グループが参画する事業領域は、技術革新が激しく、顧客ニーズを汲み取り最適なソリューションを提供するためには高度な技術力を必要とします。
また、当社グループは「営業利益率の向上」を中計における事業戦略の1つとして掲げ、自社製品売上の拡大及びメーカー機能の強化を推進中であり、特に製品の研究開発に必要な能力を満たす人財の採用や育成がますます重要になっておりますが、技術者の獲得競争は激しいものとなっており、仮に充分な技術者を採用できない場合や優秀な技術者が流出した場合には、事業計画の遂行や将来の経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクに対処するため、海外の技術者を含めた積極的な採用活動を実施するとともに、報酬水準の向上や福利厚生、教育制度の充実、働きやすい就労環境の整備により人財に対する訴求力の強化と流出の防止を図り、スキルや知見の継承と長期的な人財育成を推進しているほか、外部の協力会社及び派遣社員を活用した効率的なリソース配分に努めております。
(3)自然災害や地政学的リスク等について
当社グループは、日本国内のみならず、アジアや北米を中心とした海外において事業活動を展開しており、さらなる拡大を目指しておりますが、それらの地域において地震、台風、水害等の自然災害や重大な感染症の世界的流行、地政学的リスクの顕在化等が発生した場合には、販売活動の停滞や商材・部材の調達困難、従業員の人命に係る事態等により、事業計画の遂行や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクに対処するため、事業継続計画(BCP)の見直しや管理体制の整備、サプライチェーンの強化、安否確認システムの導入、防災訓練の実施、産業医と連携した感染予防・拡大防止策の策定等の対策を講じております。
(4)自社製品等の品質に関するリスクについて
当社グループは、自社製品売上の拡大及びメーカー機能の強化を推進しており、テストシステムや組込み関連などにおいて自社製品やサービス事業を展開しておりますが、製品等の不良による顧客生産ラインへの支障や顧客開発計画の遅延、クラウドサービスに係るサーバー障害等によるサービスの停止や情報の喪失などの損害が発生する可能性があります。特に半導体製造企業や自動車関連企業に対する損害賠償は甚大なものとなることも想定されます。また、脱炭素への取組が活発化しており、当社製品の製造過程やサプライチェーンにおいても脱炭素が求められることが想定されますが、対応の遅れ等により顧客との取引が継続できなくなった場合、事業計画や経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクに対処するため、製造物賠償責任保険等への加入のほか、品質保証委員会や担当部門の設置による品質保証体制の強化、製造委託先の複数化等を推進しております。
(5)コーポレート・ガバナンス、内部統制について
当社グループは、国際的なビジネスや外部環境の変化に対応するため、コーポレート・ガバナンスや内部統制が適切に機能することが重要であると認識しておりますが、M&Aの推進に伴う事業の急速な拡大等により、十分なガバナンスや内部統制構築の整備が追い付かない状況が生じ、従業員等の故意又は過失による法令違反行為の結果、当社グループの社会的信用の失墜により、財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクに対処するため、新たに買収した子会社等に対しては、規程の整備や会計方針の統一などに親会社が積極的に関与し、早期のガバナンス強化や内部統制構築を図っております。また、当社グループとして「内部統制基本方針」や「イノテックグループ倫理行動基準」を策定し、「イノテックグループ外部通報窓口」を設置するなど、内部統制システムを充実させ適切に運用するとともに、内部統制の啓もう活動や教育の強化にも取り組んでいるほか、当社の役員や従業員を子会社の役員として出向又は兼務させて子会社の経営に関与し、不正等の早期発見と適切な対応を図ることなどにより、法令遵守や財務報告の適正性の確保に努めております。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において判断したものであります。
①財政状態の状況
当連結会計年度末の財政状態につきましては、総資産が47,008百万円となり、前連結会計年度末に比べ825百万円減少しました。一方、負債は20,875百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,635百万円減少しました。また、純資産は26,132百万円となり、前連結会計年度末に比べ810百万円増加しました。
②経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、雇用・所得環境の改善に伴う個人消費の持ち直しや好調な企業業績などを背景とした設備投資の拡大がみられるなど、景気は緩やかな回復基調で推移しました。一方、先行きについては、継続的な物価上昇や急激な為替変動の影響が懸念されるほか、米国の通商政策動向や地政学的リスク、中国経済の回復遅れなど、依然として不透明な状況が続いております。
このような状況の下、当社グループにおける当連結会計年度の業績につきましては、システム・サービス事業が堅調に推移したものの、テストソリューション事業が低迷したことや半導体設計関連事業において下期に減速がみられたことから、売上高41,977百万円(前期比1.5%増)、営業利益1,887百万円(同23.7%減)、経常利益1,754百万円(同39.1%減)、親会社株主に帰属する当期純利益1,200百万円(同18.8%減)となりました。
③キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、営業活動によって1,711百万円(前期比34.7%減)を得た一方、投資活動において410百万円(同71.6%減)、財務活動において3,382百万円(前期は808百万円の獲得)の現金及び現金同等物(以下「資金」という。)を使用した結果、当社グループの当連結会計年度末における資金の残高は、前連結会計年度末に比べ1,902百万円減少し、6,340百万円となりました。
④生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
前年同期比(%) |
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テストソリューション事業(千円) |
8,838,146 |
88.78 |
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半導体設計関連事業(千円) |
2,762,443 |
93.70 |
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システム・サービス事業(千円) |
8,312,838 |
113.35 |
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合計(千円) |
19,913,429 |
98.40 |
(注)1.セグメント間の取引については、相殺消去しております。
2.一部の自社製品については、社外へ委託生産を行っており、上表の金額は外部委託先からの仕入価格を基準に記載しております。
b.商品仕入実績
当連結会計年度の商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
前年同期比(%) |
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テストソリューション事業(千円) |
531 |
1.90 |
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半導体設計関連事業(千円) |
7,310,717 |
104.82 |
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システム・サービス事業(千円) |
2,091,532 |
124.75 |
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合計(千円) |
9,402,780 |
108.33 |
(注)セグメント間の取引については、相殺消去しております。
c.受注実績
当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
受注高(千円) |
前年同期比(%) |
受注残高(千円) |
前年同期比(%) |
|
テストソリューション事業 |
13,924,896 |
81.26 |
2,941,066 |
73.64 |
|
半導体設計関連事業 |
11,106,326 |
75.69 |
12,369,891 |
86.77 |
|
システム・サービス事業 |
14,872,806 |
105.66 |
6,186,265 |
116.28 |
|
合計 |
39,904,029 |
86.96 |
21,497,223 |
91.20 |
(注)セグメント間の取引については、相殺消去しております。
d.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
前年同期比(%) |
|
テストソリューション事業(千円) |
14,977,662 |
94.29 |
|
半導体設計関連事業(千円) |
12,992,715 |
100.84 |
|
システム・サービス事業(千円) |
14,006,734 |
111.26 |
|
合計(千円) |
41,977,111 |
101.50 |
(注)セグメント間の取引については、相殺消去しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する分析・検討内容
a.財政状態
(流動資産)
当連結会計年度末における流動資産の残高は、29,711百万円となり、前連結会計年度末に比べ593百万円減少しました。これは主に、売掛金が増加した一方、現金及び預金が減少したことによるものであります。なお、現金及び預金の減少要因については「②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報」に記載のとおりであります。
(固定資産)
当連結会計年度末における固定資産の残高は、17,296百万円となり、前連結会計年度末に比べ231百万円減少しました。これは主に、関係会社への出資などにより投資有価証券が増加した一方、海外子会社における事業譲渡により機械装置及び運搬具が減少したことによるものであります。
(流動負債)
当連結会計年度末における流動負債の残高は、19,167百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,093百万円減少しました。これは主に、短期借入金を返済したことによるものであります。
(固定負債)
当連結会計年度末における固定負債の残高は、1,708百万円となり、前連結会計年度末に比べ541百万円減少しました。これは主に、長期借入金を返済したことによるものであります。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産合計は、26,132百万円となり、前連結会計年度末に比べ810百万円増加しました。これは主に、自己株式を取得した一方、親会社株主に帰属する当期純利益を計上したことや為替換算調整勘定が増加したことによるものであります。この結果、自己資本比率は54.1%となり、前連結会計年度末に比べ2.5ポイント増加しております。
b.経営成績
(売上高、売上原価、販売費及び一般管理費)
当連結会計年度の売上高は、メモリー向けテスターの販売が低迷したものの、半導体設計用(EDA)ソフトウェアやクラウド決済サービス、車載向けのエンジニアリングサービスなどが堅調に推移したことから41,977百万円となり、前連結会計年度に比べ1.5%増加しました。一方、利益率はメモリー向けテスターの大幅減収の影響などにより悪化したため、売上高に対する売上原価の比率は前連結会計年度に比べ1.7ポイント増加の69.9%となりました。また、販売費及び一般管理費は、テストソリューション事業における事業の一部譲渡などにより研究開発費が減少したものの、昇給などに伴い人件費が増加したことなどから前連結会計年度に比べ0.7%増加し、10,762百万円となりました。
この結果、当連結会計年度の営業利益は、前連結会計年度に比べ23.7%減少し、1,887百万円となりました。
報告セグメント別の経営成績は次のとおりであります。なお、セグメント利益は連結財務諸表の営業利益と調整を行っております。また、当連結会計年度より報告セグメントの利益又は損失の測定方法を変更しており、以下の前期比較については、前期の数値を変更後の利益又は損失の測定方法により組み替えた数値で比較分析しております。
〔テストソリューション事業〕
テストソリューション事業は、半導体メモリー市場等の顧客を中心に当社グループのエンジニアリング力を活かし、高付加価値製品の提供に注力するとともに、顧客ニーズに対応した製品の開発やメモリー以外の周辺ソリューションの拡大に積極的に取り組んでまいりました。自社製テストシステムは、イメージセンサー向けデコーダーボードの販売は伸長したものの、メモリー向けテスターの需要回復は遅れており、引き続き厳しい業況となりました。台湾のSTAr Technologies, Inc.は、信頼性評価装置に係る部材調達の遅れなどの影響があったものの、プローブカード販売が堅調に推移し邦貨換算後では増収増益となりました。
その結果、当事業の売上高は14,977百万円(前期比5.7%減)、セグメント損失は312百万円(前期はセグメント利益542百万円)となりました。
〔半導体設計関連事業〕
半導体設計関連事業は、新規顧客の開拓や既存顧客との関係強化を図るなど積極的な営業活動を行い、売上拡大及び収益の安定化に努めてまいりました。主力商品である半導体設計用(EDA)ソフトウェアについては、既存顧客との長期契約の更新が概ね順調だったことなどから増収となりました。三栄ハイテックス株式会社のLSI設計受託ビジネスは、ベトナム子会社のAI関連事業は堅調に推移したものの、国内事業の減速や中国事業が低調だったことなどにより減収減益となりました。株式会社モーデックのシミュレーションモデル製品販売や設計支援サービスは、自動車関連向けは堅調に推移したものの、顧客プロジェクトの先送りなどにより受注が伸び悩み減収となりました。
その結果、当事業の売上高は12,992百万円(前期比0.8%増)、セグメント利益は457百万円(同13.7%減)となりました。
〔システム・サービス事業〕
システム・サービス事業は、当社グループのエンジニアリング力を活かし、特徴ある製品の開発やサービスの提供に注力するとともに、展示会やWEBを活用し新規顧客の獲得を図るなど積極的な営業活動を行ってまいりました。自社製CPUボードやBOX型コンピューターなどの組込み製品は、社会インフラ向けなどを中心とした需要が引き続き高いことに加え、半導体や防衛向けも伸長し増収となりました。アイティアクセス株式会社は、ライセンス販売や受託開発が堅調に推移し、クラウド決済サービス収入も伸長したことにより増収増益となりました。ガイオ・テクノロジー株式会社の車載向け組込みソフト検証ツール販売及びエンジニアリングサービスは、検証ツール販売が堅調に推移したことに加え、自動車関連の需要増によりエンジニアリングサービスが大幅に伸長し増収増益となりました。株式会社レグラスは、AIカメラシステムの販売が伸び悩んだことや一部製品の販売終了により減収となったものの、販管費の抑制効果などにより一定の利益は確保しました。
その結果、当事業の売上高は14,006百万円(前期比11.3%増)、セグメント利益は1,799百万円(同14.0%増)となりました。
(営業外損益)
当連結会計年度の不動産賃貸料は、テナントの入居率をほぼ維持できたことなどから492百万円となり、前連結会計年度に比べ2.4%増加しました。一方、不動産賃貸費用は、本社ビル維持管理費の増加などにより前連結会計年度に比べ2.8%増加し363百万円となりました。また、海外子会社における投資事業組合運用損や主に債権債務の評価替えによる為替差損を計上しました。
この結果、当連結会計年度の経常利益は、前連結会計年度に比べ39.1%減少し、1,754百万円となりました。
(特別損益)
当連結会計年度の特別利益は、海外子会社において事業譲渡益を計上したことなどにより339百万円となりました。一方、特別損失は、国内子会社において投資有価証券評価損を計上したことにより75百万円となりました。
この結果、当連結会計年度の税金等調整前当期純利益は、前連結会計年度に比べ14.1%減少し、2,018百万円となりました。
(法人税等)
当連結会計年度の法人税等は、主に当社の業績が悪化したことなどから、前連結会計年度に比べ12.7%減少し、713百万円となりました。
この結果、当期純利益は、前連結会計年度に比べ14.9%減少し、1,304百万円となりました。
また、法人税等の税金等調整前当期純利益に対する比率は35.4%となり、前連結会計年度に比べ0.6ポイント増加しました。
(非支配株主に帰属する当期純損益)
当連結会計年度の非支配株主に帰属する当期純利益は、主に連結子会社のSTAr Technologies, Inc.の業績が回復したことから、前連結会計年度に比べ90.7%増加し、104百万円となりました。
この結果、当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に比べ18.8%減少し、1,200百万円となりました。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
a.キャッシュ・フローの状況
当社グループの当連結会計年度末における資金の残高は、前連結会計年度末に比べ1,902百万円減少し、6,340百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の営業活動の結果得られた資金は1,711百万円(前期比34.7%減)となりました。これは主に、売上債権が812百万円増加し、法人税等の支払796百万円があったものの、税金等調整前当期純利益を2,018百万円、減価償却費を1,316百万円それぞれ計上したことなどにより資金を得たためであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の投資活動の結果使用した資金は410百万円(同71.6%減)となりました。これは主に、事業譲渡により1,582百万円を得たものの、関係会社出資金の払込に1,395百万円、無形固定資産の取得に605百万円の資金を使用したことなどによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の財務活動の結果使用した資金は3,382百万円(前期は808百万円の獲得)となりました。これは主に、短期借入金の返済に1,273百万円、配当金の支払に943百万円、長期借入金の返済に690百万円の資金を使用したことなどによるものであります。
b.資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、商品や原材料等の仕入代金や販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は経常的に発生するものではありませんが、生産設備を有する一部の子会社の設備投資や事業買収に係る費用等があります。これらの資金需要に対しては、まず営業キャッシュ・フローで獲得した資金を使用し、不足分について金融機関からの借入などによる調達を実施することとしております。長期借入金や社債などの長期資金の調達につきましては、金利動向などの調達環境を考慮の上、調達規模や調達手段を適宜判断して実施することとしております。
また、自己株式の取得につきましては、「資本政策に関する基本方針」に基づき、実行の是非を判断することとしております。
③経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
「第2 事業の状況、1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (5)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載のとおりであります。
④重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準により作成されております。
連結財務諸表の作成に当たって、経営者が採用した会計基準や、資産・負債及び収益・費用の計上並びに開示に影響を与える見積りについては、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、見積り特有の不確実性により、実際の結果はこれらの見積りと異なる場合があります。
なお、連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
該当事項はありません。
当社グループは、研究開発の充実によって当社グループ自身のエンジニアリング力を高め、市場動向及びニーズを重視しながら自社の新製品・新技術の研究開発を積極的に進めております。
現在の研究開発は、当社グループの各技術部門を中心に推進されており、主に当社においては半導体テストシステムや組込み用途向けのCPUボード及びBOX型コンピューター、子会社においては半導体向けの信頼性評価装置やプローブカード、キャッシュレス決済端末や車載向けの組込みソフト検証ツール等の開発を行っております。
当社グループの当連結会計年度の研究開発費の総額は
なお、当連結会計年度の主な研究開発活動の内容は以下のとおりであります。
(1)テストソリューション事業
当社のテストシステム事業では、前連結会計年度に引き続き、次世代3D NANDデバイスのさらなる多層化や微細化などに向け、超多数個同時測定を可能とするテストシステムの開発に注力するとともに、テストプログラムの開発効率向上を実現するため、新テスタプラットフォームの開発に取り組みました。また、これまでのテストシステム開発実績を活かし、DRAM向けテストシステムへの機能拡張を実現するための基礎研究を行いました。イメージセンサー分野では、前連結会計年度に取り組んだ高画素化やインターフェースの高速化に対応したキャプチャーボードの基礎研究成果をもとに、製品化に向けた実証機の開発を株式会社レグラスと共同で行いました。その他、産業用ロボットオートメーション分野では、物体認識・アーム制御AIを活用した物流向けソリューションの製品化に取り組み、同市場の顧客へ納入することができました。
また、STAr Technologies, Inc.は、前連結会計年度に引き続き、化合物パワー半導体など成長性の高い市場に向け、高電圧や幅広い周波数に対応した信頼性評価装置やスイッチングモジュールの開発に取り組みました。プローブカード事業では、低ノイズに対応したプローブステーションや、パラメトリック用の新型MEMSプローブカードの開発を行いました。
(2)システム・サービス事業
自社ブランド「INNINGS」にて展開する当社の組込み用途向けCPUボード及びBOX型コンピューター製品では、FA・産業機器等を中心とした組込み製品市場に向け、インテル社製CPU「Atomシリーズ」の最新世代(AmstonLake)搭載製品の開発を進めており、ファンレス可能な低消費電力でありながら、顧客からの多様な要求に対応可能な製品として、翌連結会計年度内のリリースを計画しております。
また、前連結会計年度にリリースした「INNINGS」の顔認証(エッジAI顔認証技術)ソリューション製品である「EdgeFace」については、DXを推進する顧客のオフィスや工場を対象とした実証実験を開始いたしました。翌連結会計年度では、製品に関連した周辺ソフトウェアの開発に取り組み、顧客要求に応えるソリューション開発を進めてまいります。
ガイオ・テクノロジー株式会社の組込みソフト検証ツール等の開発については、前連結会計年度に引き続き、車載向けソフトウェアをはじめとした大規模化するソフトウェアに対し、既存製品では網羅できなかったLinux向けのテスト設計やテスト実行支援ツールの試作開発に取り組んでいるほか、モデルベース開発に係る次世代製品に関連するテストデータの設計、コード解析技術や大規模計算機を利用した技術、生成AIを活用したテスト手法技術の研究などにも取り組み、既存製品への応用を検討してまいります。
アイティアクセス株式会社の決済端末事業については、前連結会計年度に引き続き、オフィスコンビニや駐車場向けの専用端末の開発に注力したほか、導入コストを低減するエントリー機の開発などを行いました。
株式会社レグラスのAIカメラ画像ソリューションについては、フォークリフトや建設機械などに装着する安全装置向け人物検知システムの検知機能向上や多様な障害物を検知するシステム開発などに引き続き注力し、安全機能のニーズに応じた製品開発を推進しました。