第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)経営方針

当社グループは住宅資材の流通業を主要事業とし、「快適で豊かな住環境の創造」という企業理念の下、より良い住宅資材を、適正価格で、お客様の要望される場所へタイムリーにお届けすることを目標に営業活動を展開しております。また、単にモノを販売するだけでなく、お取引先である建材販売店や工務店などに住宅建築関連の様々なサービスを提供するほか、企業経営ノウハウを提供することで、お取引先との共存共栄を図る仕組みづくりにも取り組んでおります。

純粋持株会社である当社がグループの戦略立案機能及び経営管理機能を一段と強化し、事業展開の判断の迅速化と経営の透明性の向上に努めるとともに、グループ各社が連携して高い総合力を発揮できる企業グループを形成し、株主価値の更なる向上を目指したグループ経営を推進してまいります。

 

(2)経営戦略等

当社グループは、2030年度をターゲットイヤーとする長期ビジョン『Brand-New JKHD 2030』を掲げ、より魅力的な企業グループとして生まれ変わることを目指しています。

この達成に向けた第一フェーズとして、当社グループは、2022~2024年度を対象年度とする中期経営計画『Further Growth 24』を策定し、「更なる成長へ向けた第一歩」を踏み出すべく、①持続的成長を目指した連結経営基盤強化、②コア事業における競争力強化、③社会課題解決型ビジネスの推進を経営目標とし、事業活動を推進してまいりました。

後述するように、今後の経営環境も不安定な状況が継続するものと見込まれます。このような認識の下、前中期経営計画での取組を踏まえ、当社グループは、長期ビジョン達成の第二フェーズとして2025年度からの3ヵ年を対象とする新たな新中期経営計画『Value Proposition 27』を策定いたしました。新中期経営計画は「価値提案によるパートナーとの結びつき強化」を実現するフェーズとし、中核事業である建築資材流通事業のシェア拡大と事業領域の拡張を通じた成長拡大路線を堅持しつつ、次の4つの柱からなる基本方針を立て、4つの柱ごとに諸施策を展開してまいります。

 

① 基盤事業の強化

中核事業と位置付ける木質建材流通事業における更なるシェア拡大を目指した積極的拡販施策の実施と同時に、グループ内における各種経営合理化施策の推進

・社会環境の変化に対応する新たな価値提案の推進

・全体最適視点での業務改革の推進

・M&Aを通じた拠点整備と経営合理化を目的とした組織再編

 

② 事業領域の拡張と深耕

木質建材流通にとらわれない新たな商材・業態への挑戦と、海外マーケットにおける建材卸売事業の拡張

・製造業、工事業、EC事業等の既存隣接事業の収益最大化

・ワンストップ体制構築と木質建材にとらわれない周辺建築資材の拡販

・海外建材卸売事業の拡張

 

③ 持続可能な経営基盤構築

持続可能な社会実現に向けた脱炭素への取組を継続すると共に、社会の公器として高いレベルでのコンプライアンス意識の醸成と様々なステークホルダーとのリレーションシップ強化

・取締役会の実効性向上を通じたガバナンス強化とコンプライアンス徹底

・業務効率化とレジリエントな運営を目指したITシステム・インフラ整備

・ステークホルダーコミュニケーションの強化と透明性向上

 

④ 人的資本経営の実践

経営戦略を確実に実行するための人材育成と「働きがい(働きやすさ+やりがい)」を追求した組織運営基盤の構築

・基礎教育プログラムの充実によるスキル底上げ

・「自立・協働・共創型人材」の育成

・人材ポートフォリオの可視化及び育成方針策定

・グループ全体を含めた経営理念浸透と「当社らしい」良好な企業風土醸成

 

(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標

当社グループは、成長拡大路線を維持することにしておりますので、経営指標としては、第一に対前年比売上高成長率を重視しております。また、質的な成長を図る指標としては、各段階の利益率、とりわけ各利益のベースとなる売上高総利益率の向上を重視しております。

加えて、資本コストや資本収益性を的確に把握し、その内容や市場評価を踏まえて経営改善に向けた計画や施策を講じ、その実践や開示を実施するなど一連のPDCAを構築すべく検討を進めています。

このような考え方の下、新中期経営計画期間中の経営目標を次のように定めました。

〈経営目標〉                                     (単位:億円)

 

2025年度

2026年度

2027年度

売  上  高

4,050

4,100

4,200

営 業 利 益

80

90

100

経 常 利 益

80

90

100

親会社株主に帰属する当期純利益

50

55

65

ROE(自己資本利益率)

最終年度(2027年度)9%以上を目標

配 当 性 向

期間中の配当性向は30%以上を目安

DOE(純資産配当率)

最終年度(2027年度)3%を目指す

 

(4)経営環境

新中期経営計画の対象年度となるこれからの3ヵ年は、「穏やかなインフレ」の定着に向かい経済好循環の兆しが垣間見える一方で、構造的な人口減少と高齢化の進行などの社会課題に加え、世界的な経済情勢の変化など、依然として先行き不透明かつ不確実性が高い状況が続くものと見込んでおります。

 

(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

<資産価値が残る家づくりへの貢献>

今後のサステナブルな住環境を展望し、省エネ、耐震、耐久性等の性能が高く、安心、安全、快適で資産価値が残る家づくりに貢献するため、その実現に必要となる住宅資材の開発や品揃えの拡大に努めるほか、情報提供を含む関連サービスを充実してまいります。

 

<物流の効率化>

長く、大きく、重く、加えて不定形な各種の住宅資材を、必要な場所にタイミングよく届けるために、グループ各社の拠点からなるネットワークをよりきめ細かなものとする一方、DXを最大限活用しつつ、グループ内の物流機能の一元的な高度化及び効率化を図ってまいります。

 

<事業承継問題への対応>

人手不足による経営資源の不足、経営者の高齢化や後継者難等から、住宅業界においても、特に小売店や工務店を中心に事業の継続や承継に課題を抱えるお客さまが増加しています。当社グループでは、企業のマネジメントに有用な情報を提供するだけでなく、営業に不可欠な行政や技術に関連する情報の提供にも努めています。さらに、書類申請等様々な機能面での代行サービスや関連サービスを提供し、お客さまの事業継続を支えています。併せて、後継者の不在から事業継続が困難なお客さまには、当社グループが事業や雇用の受け皿となることで、事業承継問題にも貢献しています。当社グループでは、これらの活動を今後一層拡充してまいります。

 

<IT>

新基幹システム「ASView」の開発及び中核子会社ジャパン建材株式会社全営業所、一部の子会社への導入は完了しました。今後は、この「ASView」を他の子会社に順次導入するとともに、「ASView」の機能拡充に向けた開発を実施してまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)サステナビリティの基本方針と取組

当社グループは、サステナビリティを巡る課題への対応について、その積極的な取組が、事業運営におけるリスク低減のみならず、収益獲得の機会にもつながり、また当社が企業理念として掲げる「快適で豊かな住環境の創造」の実現に不可欠の重要事項であると認識しております。

この考えの下、サステナビリティ基本方針の策定や、サステナビリティ経営を推し進める体制整備を行うとともに、中期経営計画「Further Growth24」の柱として「持続的成長を目指した連結経営基盤強化」「社会課題解決型ビジネスの推進」を掲げ、循環型社会構築に向けた取組を強化しました。

また、新たな中期経営計画『Value Proposition 27』においても「持続可能な経営基盤構築」を掲げ脱炭素社会実現に向けた取組や、人的資本経営を実践してまいります。

 

(2)気候変動に対する取組(TCFD提言に沿った気候変動関連の情報開示)

① ガバナンス

当社グループではサステナビリティ推進基本方針に基づき、事業機会の拡大と社会課題の解決を目的とした活動方針を定める「サステナビリティ委員会」を取締役会の諮問機関として設置し、3ヵ月に1回開催しております。当委員会は代表取締役社長が委員長を務め、委員長が指名するメンバーにて構成されております。 気候変動対応は当委員会の重要課題の一つとして位置付けられており、当委員会の事務局を担い、サステナビリティを巡る課題への取組の推進主体であるサステナビリティ推進室より提案・報告された活動方針の妥当性や、進捗状況の評価を行うとともに、当委員会にて決定された事項については取締役会に適宜、報告をしております。

 

② 戦略

当社グループは気候変動を含むサステナビリティの幅広い課題に対して議論を深めるべく、サステナビリティ委員会の下部組織として「サステナビリティ検討部会」を設置し、気候変動対応に伴う事業運営上のリスクと機会・戦略の検討について当部会に属する「営業推進ワーキンググループ」で議論を行いました。当ワーキンググループにおいては今後の中長期的環境変化を見据えた戦略の妥当性や課題を把握すべく、事業活動および資源の固有の状況や、物理的リスクについて想定される事業活動・期間・資産の耐用年数などを考慮したシナリオ分析を行いました。

また、移行リスクについては法制化、技術開発、市況に係わる潜在的なシナリオに基づき評価し、事業活動に与える気候関連のリスク(物理リスクおよび移行リスク)と機会を抽出し、対応しております。

 

<主な移行リスク>

[影響]世界的に導入が検討されている炭素税の導入及びその他環境規制によるコスト増加の可能性があります。

[対応]当社グループにおける中核事業は建築資材の卸売業・小売業であるものの、電力使用に付随したGHG排出量の相対的に多い製造業を有することから、炭素税の導入による財務影響は大きいものと認識しております。当社グループ全体として省エネ設備への入れ替えや、太陽光パネル等の創エネ設備の導入、効率的な物流網構築を推進することにより、当社グループにおけるGHG排出量を削減し、この影響をできるだけ早期に減らしていく考えであります。

[影響]当社グループが主力商材とする木材、合板等において、輸入材では各国の森林保護政策強化、国内材においては、林業の課題でもある、再造林コスト上昇や及び再造林率の低下によって、将来的に出材の減少や木材調達コスト増加の可能性があります。

[対応]当社グループは木材を原材料とする合板・集成材の製造販売及びそれら製品の流通を全国的に実施しております。また、木材流通の川上である原木調達、森林経営サポート機能を持つ事業会社物林㈱があります。上記国内の林業課題に対処していくために、2025年1月当社と物林㈱は森林所有者及び民間企業と共に有限責任事業組合(LLP)「鮎貝きずなの森」を組成しました。対象地において協働する造林スキーム「フレンドシップ造林」によって資源循環型の持続可能な林業モデルの実証に着手しました。これら川上におけるサプライヤーとの協業・提携による量・価格共に安定した木材の調達を実施していく考えであります。

 

<主な物理的リスク>

[影響]全国規模での災害激甚化により、当社グループで保有、運営する工場・営業所などの事業拠点に加え、生産設備・車両が罹災し、事業継続リスクが発生します。またこれら資産の災害に起因した補修・交換のための大きなコストが発生する可能性があります。また、当社グループの中核事業が建築資材の卸売業・小売業であることから、気象災害によるサプライチェーン寸断は事業継続を不安定なものとする可能性があります。

[対応]当社グループは日本全国で事業展開をしていますが、当社グループの中核企業であり、国内約100拠点の事業所を構えるジャパン建材㈱においては一部エリアで災害が発生した場合、被害のないエリアがサポートすべく、事業継続のBCPプランを策定済みです。さらに、災害時における他グループ会社も含めた速やかな連携・相互サポートの仕組みづくりを推進していく考えであります。

 

<主な機会>

[影響]環境負荷低減を目的として日本政府は2030年以降に新築されるすべての建物でZEH水準以上の省エネルギー性能を求める考えであり、当社グループが主力マーケットとする持家住宅においても、断熱性能の向上をはじめとする住宅の高性能化が期待されます。また、一部地域においては一定条件の下、住宅における太陽光パネルが設置義務化されるなど、建築資材のマーケットにおいて需要が拡大することが予測されます。これら住宅の高性能化により、当社グループにおける建築資材取扱量の増加のみならず、販売商品の高付加価値化に伴う販売単価の上昇が予測されます。

[対応]当社グループは2,000社を超える建材メーカーを仕入先として持ち、これら仕入先との協業を通じ、ジャパン建材㈱が提供する「HEAT20 G2パッケージ」を例とした高性能建材のパッケージ商品の提案拡大を推し進めていきます。また、木質系建材卸に捉われずに新規需要を獲得するべく、同社においてはエアコン・太陽光・照明機器を取り扱う電材課を設立済みであり、今後需要の拡大が予測される太陽光パネルや省エネ設備の拡販を推進していく考えであります。

[影響]一部の公共物件では林野庁の「建築物に利用した木材に係る炭素貯蔵量の表示に関するガイドライン」に基づき炭素貯蔵量が明記されています。これは木材利用が地球温暖化防止に寄与していることを具体的に対外的に示す指標のひとつです。消費者の環境に対する意識が年々高まっていることもあり、公共物件同様、一般住宅も環境貢献度の見える化が求められつつあります。

[対応]ジャパン建材㈱は、2023年11月より、環境貢献度の“見える化”の一環として、一部の木質商品について、商品ごとの炭素貯蔵量を伝票等に表示しています。これにより、工務店が、木造住宅一棟当たりの炭素貯蔵量を把握し、顧客である施主様に環境貢献度を分かりやすく示すことができます。木材が持つ炭素貯蔵機能は、脱炭素社会の中で注目されています。この機能を広く認知させ、木造住宅需要の増加につなげます。

 

③ リスク管理

当社グループでは、グループ横断のリスク管理の一環として、気候変動関連リスク及び機会を判断するための評価をTCFDの提言に基づき実施しています。リスクと機会の抽出は当社グループの主要セグメントである卸売業・製造業・小売業の各事業セグメントの代表によって構成されるサステナビリティ委員会の下部組織「営業推進ワーキンググループ」を中心に行い、その財務影響評価はサステナビリティ推進室にて分析を行っております。このプロセスに基づき特定した主要なリスクと機会については、取締役会の諮問機関であるサステナビリティ委員会において検討した後に、取締役会に報告しております。また、これら気候変動に関するリスク管理の結果は、コンプライアンス・リスク管理委員会にも共有し、グループ全体のリスク管理体制の中で検討・管理しております。

 

④ 指標とターゲット

当社グループは、事業活動に伴う温室効果ガス排出量の削減を、地球規模での温暖化防止につながる重要な課題として認識しています。2022年度から自社の排出であるScope1,2の排出量の測定を開始しました。その結果を受け、排出傾向を分析し、グループ全体の削減目標、事業部門別の削減目標を決定しました。まずはさまざまな削減策を検討し、実現可能性、事業インパクトを総合的に勘案し、2030年まで2022年度比20.0%(年率2.5%)の削減目標を設定しました。今後進捗をモニタリングし、更なる削減にむけて検討を進めていきます。

※温室効果ガス排出量及び削減の進捗については当社ホームページをご参照ください。

https://www.jkhd.co.jp/sustainability/tcfd/metrics-and-targets/

 

(3)人的資本経営への取組

当社及び中核企業であるジャパン建材株式会社における、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針は、「働きがいのある組織の追求」を柱とし、それを構成する「働きやすさ」と「やりがい」を両軸として進め、快適に働き続けるための働きやすさと、仕事に対するやる気や成長実感等のやりがいとを併せ持つ組織の実現に取り組んでおります。社員一人ひとりが持っている能力と無限の可能性を存分に発揮できる環境を整えることが、企業の持続的発展と高いレジリエンスにつながると考えています。また、その方針を柱として構成する「働きやすさ」と「やりがい」に加え、より多様な人材が活躍できる環境を構築していくために「D&Iの推進」を3つ目の軸として、より良い企業風土の醸成及びエンゲージメント向上を目指してまいります。

 

① 働きやすさ

「健康経営」「柔軟な働き方」を推進

・「健康経営」

社員の健康管理問題を経営課題として正面からとらえ、社員の健康保持・増進に積極的に関わることで、社員一人ひとりが持てる力を最大限発揮できる環境を整えています。定期健康診断やストレスチェックの全社員の確実な受診、産業医の意見聴取に基づいた社員の健康管理、有給休暇の取得促進等により、社員の健康保持・増進に取り組んでおります。

・「柔軟な働き方」

 多様な人材の一人ひとりが持つ能力を最大限発揮してもらうには、柔軟な働き方ができる環境が不可欠です。当社では地域限定総合職制度や中学校就学まで選択できる時短勤務制度を活用する社員も増えています。また、新基幹システムASViewの導入や積極的なデジタルシフトによる業務効率化を進めるとともに、パソコンの自動シャットダウンやノー残業デーの実施等により、労働時間の適正化を図っております。また、導入したツールや仕組みの運用レベル向上にも注力することで生産性を高め、より柔軟性のある働き方を進めております。

 

② やりがい

「生涯学習」「コミュニケーション機会の増加と質の向上」を推進

・「生涯学習」

変化の激しい社会環境だからこそ、社員一人ひとりが自分の人生に責任を持ち、新しいマインドやスキル、知識を学び続ける必要があると考えています。私たちは「会社が社員を育てる」のではなく、「人は育つものである」と信じ、非正規社員も含めたすべての社員に対して、自ら学ぶための幅広い学習機会を提供していくことで、人材の成長を促進しております。

社員が自らの好奇心や置かれた環境によって、自らの学びを選べるよう、公募型研修やeラーニング環境整備を中心に置き、主体的に考えて行動することができる自立的な人材の育成に取り組んでおります。また、社員一人ひとりが自分に必要な学びを客観的に把握できるよう、別業界・別業種の方々と一緒に学ぶ越境学習の機会や、自身の経験や能力、興味等を棚卸するキャリア教育の機会を充実させていきます。また、目指すべき人材像を「自律・協働・共創型人材」とし、1on1ミーティング実施の推奨等、心理的安全性の高い職場環境を整えていくことで、多様な個性や考え方を受容・尊重できる組織をつくってまいります。

・「コミュニケーション機会の増加と質の向上」

当社は「他者からの学び」を推奨しており、部署を越えた多様な人材が集う交流の場を積極的に提供しております。仕事上のコミュニケーションだけでは、部署内や同質のグループ内に交流機会が限定されがちなこともあり、様々な属性を持った社員同士の横のつながりを深めることも意識した多種多様な交流会や研修会などを実施することで、共感や他者から学ぶ機会を拡げ、エンゲージメント向上につなげております。また、多様な価値観を認め合う風土づくりを進めるために、社外の方と交流する越境学習にも取り組んでおります。

 

③ D&Iの推進

「表層的ダイバーシティ」「深層的ダイバーシティ」「インクルージョン」の追求

・「表層的ダイバーシティ」

 性別、年齢、国籍、障がいなどの表層的ダイバーシティは日本の企業における大きな課題であり、当社としても女性社員比率の拡大(過去10年で29.3%から35.3%)、外国人技能実習生の受入れ、障がい者支援体制の充実化、シニアの雇用継続など、積極的に取り組んでおります。

・「深層的ダイバーシティ」

 職歴、経歴、スキル、価値観、考え方、仕事観などの深層的ダイバーシティもあわせて推進してまいります。採用については、新卒に限定することなく多様な価値観や経歴を持つ人材の採用にも力を入れており、非正規社員も含めて約半数がキャリア採用社員となっております。また、これまで多くの企業がグループの一員として加わってきた経緯もあって多様な経験を持つ人材が多く存在していることも組織活性化に寄与しております。

・「インクルージョン」

多様な人材が個性や個々の能力を存分に発揮するだけでなく、よりインクルーシブ(一枚岩)な集団となるよう、アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)の自覚を促し、様々な施策と並行しながら行動変革につなげております。2024年度は、女性活躍をメインテーマとしたD&I推進プロジェクト『JK-DIALOG2024』を開催、営業現場で活躍する女性社員20名とその上長が参加しました。自己理解の促進など参加者の学びの場にするとともに、女性視点から経営陣へのエンゲージメント向上施策の提言などを行いました。また、インクルーシブな風土を醸成し、深く根付かせていくために、様々な取組について社内外へ情報発信することにも力を入れております。

 

上記に記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は、次のとおりであります。

指標

目標

実績(当連結会計年度)

管理職に占める女性労働者の割合

2030年3月まで3.0

1.3

男性労働者の育児休業取得率

2030年3月まで80.0

13.8

労働者の男女賃金差異

全体

2030年3月まで55.0

56.1

正規

2030年3月までに70.0%

65.6%

非正規

2030年3月までに61.0%

60.1%

 

変化の激しい社会環境のなかで企業が持続発展していくためには、同質的な価値観で統制された組織ではなく、多様な人材が意見を交わし、多様な価値観が尊重・調和される組織が不可欠であると考えており、女性社員、外国人社員、キャリア採用社員等多様な人材の採用を積極的に行っています。なお、当社の属する業界において女性の活躍が相対的に遅れている実状に鑑み、特に女性の活躍推進の重要性を強く感じており、当社としても女性の持つ可能性を発揮する取組を積極的に推進することとしております。

当社は、2012年より女性総合職の採用を強化しており、採用した正社員に占める女性の比率は、2022~2024年度3年間の合計で35.0%と着実に増加しております。これにより女性の管理職候補の母集団も順調に増加しておりますが、管理職に育つまでには期間を要するため、管理職に占める女性の比率は、2025年3月時点で1.3%とまだまだ低いのが実状です。このため、採用における女性総合職の割合について今後も現状程度以上の水準を維持するとともに、管理職に占める女性比率を2030年度に3%にすることを目標として女性管理職の積極登用を行います。

さらに、多様性の確保には、「男性だから~/女性だから~」といった古い性別役割分業意識の払拭も重要であると考えており、男性の育児休業取得を推進することで、誰もが適切な働き方を選べる風土を醸成してまいります。男性の育児休業取得率は、2022年度12.5%、2023年度18.2%及び2024年度13.8%となっており、引き続き働き方改革推進による男性社員が育児休業を取りやすい環境の整備と、管理職層を中心とした男性育休取得に対する理解の啓蒙を図ってまいります。

労働者の男女の賃金の差異は、当連結会計年度において、全労働者56.1%(正規雇用:65.6%、非正規雇用:60.1%)となっておりますが、当社では、同じ役割であれば男女で賃金の差は設けていないため、この差は給与の高い管理職層の社員及び勤続年数の長い社員における男性比率が高いこと、さらに、非正規の男女間においては、定年再雇用で非正規となる社員の男性比率が高いことが原因であると考えております。そのため、男女の賃金の差異の解消の方針として、管理職の女性比率を女性社員比率に対して適性に上げるとともに、女性活躍推進の取組により、女性の定着をさらに向上すること、公平な評価に基づいた非正規雇用者の正社員への積極登用を実行してまいります。

3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項については、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)新設住宅着工戸数が業績に与える影響について

住宅関連業界の業績は、新設住宅着工戸数の増減に大きく左右されます。なかでも当社グループは、木造戸建住宅関連の商品が取扱いの中心であることから、新設住宅のうち利用関係別では持ち家の、構造別では木造の増減の影響を大きく受けます。このため、住宅資材の高騰、住宅ローン金利の上昇、住宅ローン減税制度の縮小・廃止、消費税率の引き上げ等により新設住宅着工戸数が大幅に減少するような状況が生じた場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

一方、住宅資材の流通業界の最大手の一角を占める当社グループであっても、市場全体から見ればそのシェアは必ずしも大きなものではなく、一層のシェア拡大に向け、建て替え需要を含む新設住宅需要の掘り起こしを強化しております。同時に、住宅リフォーム市場や木質系非住宅市場での販路拡大に注力し、木造戸建住宅の新築に依存しない経営体質造りに努めております。

 

(2)気候変動に関するリスクについて

気候変動によって生じるリスクへの対応は、その積極的な取組が、事業運営におけるリスク低減のみならず、収益獲得の機会にもつながり、また当社が企業理念として掲げる「快適で豊かな住環境の創造」の実現に不可欠の重要事項であると認識しております。

当社グループは、サステナビリティ委員会の下部組織「サステナビリティ検討部会」において、サステナビリティの幅広い課題に対して議論を深めていくこととしております。気候変動に関するリスクについては、TCFDのフレームワークに基づき議論しております。結果抽出した移行リスク、物理的リスクについて対応する戦略を議論し、サステナビリティ委員会への報告、取締役会の決定を経て対応を行っています。主な移行リスクと物理的リスク、その対応については、「2サステナビリティに関する考え方及び取組 (2)気候変動に対する取組(TCFD提言に沿った気候変動関連の情報開示)」に記載しております。

 

(3)人材に関するリスクについて

当社グループの持続的な発展は、人材に大きく依存するため、有能な人材を採用及び育成するとともに、それらの人材が継続して働くことができる環境を整備する必要があります。

有能な人材を採用及び育成できない場合や流出を防止できない場合は、当社グループの持続的な発展に影響を及ぼす可能性があります。

このようなリスクに備えるため、「働きがいのある組織の追求」を人事方針とし、快適に働き続けるための働きやすさと、仕事に対するやる気や成長実感等のやりがいとを併せ持つ組織の実現に取り組んでおります。

また、創業当時より「企業は人 人は心」の精神を大切に受け継いできており、「人の心」を大切にする企業風土を守り続けています。

 

(4)法的規制に関するリスクについて

当社グループが属する住宅関連業界は、建設業法、建設基準法等の法的規制を受けております。これらの法令等の新たな制定、改廃、適用基準の変更等により、当社グループの事業活動が影響を受け、業績に影響を及ぼす可能性があります。また、仮にこれら法令等に違反をした場合には、事業運営への規制や信用失墜等により、業績に影響を及ぼす可能性があります。

このリスクに対応するため、各種関連法令の改正情報等を早期に入手し、その影響を検討して対策をとるとともに、関係法令の遵守を徹底するため、役職員のコンプライアンス意識の強化に取り組んでおります。

 

(5)市況商品である合板の価格変動リスクについて

当社グループの主力販売商品の一つである合板は市況商品であり、価格が大きく変動することがあります。

国内の合板市場は、数量ベースで国産品、輸入品各々半々の構成比となっております。国産品は着工戸数等と生産量の需給バランスにより、また、輸入品はこれに加えて原木生産国や製品輸出国の国内事情あるいは製品輸入国の需要動向、さらには為替の動向などから販売量及び価格が大きく左右されるため、国産品、輸入品のいずれにおいても、急激かつ大幅な市況変動が生じた場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

以上のような、価格、数量に対する様々な変動要因によるリスクを軽減するため、国内にあっては、製造子会社における生産調整や販売子会社による仕入れの調整を機動的に実施しています。海外にあっては、マレーシア(ミリ)、インドネシア(ジャカルタ)及びシンガポールに駐在員を派遣、現地メーカー等と常にコンタクトを取り情報収集を行うことにより、価格の安定化や利益の確保に努めております。加えて当社グループでは、木更津市に合板用港湾倉庫として首都圏最大規模の倉庫を所有しており、需給調整の機能も備えることで価格の安定化や利益の確保に努めております。

 

(6)信用リスクについて

中核企業であるジャパン建材株式会社のお取引先は全国約1万先に及ぶなど、グループ各社は、多数のお取引先に企業間信用を供与しています。建材や住宅設備の価格が上昇し持ち家を中心に新設住宅着工戸数が低迷する一方、いわゆる「ゼロゼロ融資」の返済や金利の上昇により資金繰り面の環境も変化する中で、信用リスクは従来に増して高まっており、今後、住宅業界において倒産が大きく増えることとなれば、想定を超える不良債権が発生し、当社グループの業績も大きく影響を受ける可能性があります。

このため、与信の分散化に努めるとともに、グループ全体での与信管理のシステム化や動態観察の重視等、きめ細かい管理と早期対応を実施しております。これらにより不良債権発生の抑制に努めるとともに、様々な債権保全策を講じ、グループ全体での与信管理体制を逐年強化しております。

 

(7)為替リスク及びカントリーリスクについて

当社グループの主力商品である合板については、その材料となる単板、製品を問わず、輸入価格は為替相場の変動及びカントリーリスクの顕在化による影響を受けます。このため、急激かつ大幅な為替変動が生じた場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、合板以外にも、製材品や原材料としての木質系素材を輸入している子会社も複数あり、これらの子会社も、為替リスクのみならず、輸入国のカントリーリスクも負っており、実際に発生しているロシアへの経済制裁により、同国産の製材品や木質系素材の調達が困難となっております。

これらのリスクに対し、合板販売総額の相当程度を直接輸入する中核企業のジャパン建材株式会社は、為替相場の変動に対して契約額の一定比率以上を先物為替予約でヘッジする方針で対応し、為替相場の変動が経営成績に及ぼす影響を軽減するよう努めております。また、調達困難となった素材については、内外を問わず代替材の発掘、調達に努め、供給体制の確保に努めております。

 

(8)企業買収等にかかるリスクについて

当社グループが所属する住宅関連業界は、中長期的な市場規模の縮小が予想されるなか、今後も業界再編等が進むものと見込まれます。当社グループにおきましても、営業基盤の拡充・強化を図る観点から、企業買収等を積極的に推進しております。このため、買収した企業の価値が大幅に減少するような状況が生じた場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

このようなリスクに備えるため、当社内にM&Aの担当部署を設け、専門的な知識、経験の獲得、蓄積を図っており、個別の企業買収等の際には、同部署が中心となって適切なデュー・デリジェンスおよびPMIを実施しております。

 

(9)自然災害・事故等にかかるリスクについて

当社グループは、大規模な自然災害や事故、感染症のパンデミック等が発生した場合、営業・製造拠点や本社、サプライチェーン、従業員等が深刻な被害を被る可能性があります。このような事態に備え、当社グループは事業継続計画(BCP)を定めており、同計画に基づく体制を整備するとともに、実際にBCPが発動される都度、その内容を適切に見直し、その実効性を高めるべくブラッシュアップを図っております。

 

(10)サイバー攻撃にかかるリスクについて

当社グループは、生産、販売、会計、人事その他業務全般をITシステムにより管理しております。また、当社グループは、お取引先の個人情報や営業秘密情報など、業務に必要な重要情報を取り扱っております。

一方、様々なサイバー攻撃が世界中で活発化しており、当社グループのITシステムもその攻撃対象となり得ることを認識しております。想定を超えるレベルで攻撃を受けた場合には、事業活動の混乱、機密情報の喪失、個人情報の漏洩等による事業の中断、損害賠償請求やセキュリティ対策コストの増加等により、当社グループの業績及び財務状況等に影響を与える可能性があります。

このため、社内ネットワーク上で異常が検知された場合は、直ちにアラームを発するとともに必要な対応を行う仕組みを導入しており、また、ハード及びネットワークの冗長化、各種データの定期的なバックアップの実行、各種端末へのセキュリティソフトの導入、セキュリティに関する社員教育等適切に対策することによってリスクの低減に努めております。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①経営成績の状況

当連結会計年度におけるわが国経済は、良好な企業収益やインバウンド需要の拡大等により緩やかな景気回復が続きました。その一方で、海外にあってはウクライナや中東の紛争が未だ終息せず、中国も景気低迷から脱するに至っておりません。国内経済も原材料価格、物流費及び人件費の上昇による物価高騰等が続いております。足元では米国の第2次トランプ政権の発足以降、急激な政策変更の頻発による混乱が全世界に波及しており、先行きの不透明さはむしろその度合いを強めている状況にあります。

当社グループが属する住宅業界では、建材や住宅設備の価格が上昇していることに加え、2024年問題等から運賃や労賃も上昇しており、住宅価格は高騰しております。このため、新設住宅着工戸数は低調に推移し、当連結会計年度で80万戸割れもうかがわれる状況にありました。しかし、2025年3月単月の新設住宅着工戸数が前年同月比39.1%増と大幅な増加となったことなどにより、当連結会計年度の新設住宅着工戸数は81万戸となり、全体でも前期比2.0%増、当社グループが主力とする分野である持ち家も1.6%増、木造も3.6%増となりました。ただし、これは2025年4月1日施行の改正建築基準法・建築物省エネ法の施行を前にした駆け込み着工が多発した結果と推察され、住宅価格の高騰はじめ他の環境に変化があるわけではないことから、依然楽観できる状況にはありません。

このような状況下、当社グループは、前中期経営計画『Further Growth 24』(2022~2024年度)の最終年度の総仕上げとして、その諸施策の実践に注力しました。営業面では、引き続き在庫水準の適正化に取り組むのと同時に、価格や機動性を考慮した商材変更の提案、「資産価値が残る家づくり」に向けた付加価値の高い商材の提案等を推進し、足元のみならず今後の業界環境を見据えた営業活動を強化しております。また、業績不振の子会社の業務改善やM&Aによる新分野への進出など、グループ全体の体質の改善・強化に努めております。

この結果、当連結会計年度における業績は以下のとおりとなりました。

売上高は3,932億58百万円(前期比1.1%増)と、「ウッドショック」によりレコードを大きく更新した前々期に次ぐ水準となりました。利益面では、総合建材卸売事業及び総合建材小売事業が、厳しい環境下にもかかわらず前期を上回る利益を確保したのに対し、合板製造・木材加工事業が前期に続いて大幅赤字となり、全体でも減益となりました。具体的には、営業利益は73億58百万円(同6.5%減)、経常利益は77億97百万円(同10.1%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は42億83百万円(同15.2%減)です。しかしながら、「ウッドショック」後の諸要因を織り込んだ期初計画との比較では売上はほぼ計画並み、営業利益と経常利益は計画を5~10%程度上回る水準となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は計画比14.3%減となりましたが、これは、前期に廃止することを決議した役員退職慰労金の打ち切り支給に伴う未引き当て部分を追加計上したことや、合板製造・木材加工事業を営む一部子会社についての減損損失を計上したことなどにより特別損失が3億27百万円となったことによるものです。

セグメントの業績は次のとおりであります。

 (総合建材卸売事業)

木材や合板等の素材類は需要が引き続き低調であり、その勢いに力強さはありませんが、木材に続いて合板類の市況にも底打ち感が出てきました。その他建材、住宅設備等の価格上昇は、一旦落ち着きを見せつつありましたが、今後の値上げが予定される品目も増えております。このような中、中核のジャパン建材株式会社をはじめ各社各様に、売上のボリュームを確保しつつ、仕入れのコントロールや販売価格の交渉等に努め、売上は前期比増収に転じ、粗利率も上昇傾向を維持していることから、運賃や人件費の増加を埋めて増益を確保しました。

この結果、当事業の売上高は3,244億92百万円(前期比0.9%増)、営業利益は68億77百万円(同0.5%増)とわずかながら増収増益となりました。

 (合板製造・木材加工事業)

当事業の中核を占める株式会社キーテックは、ロシア産輸入単板の入荷停止により主力のキーラム(LVL)事業が苦戦しておりましたが、製造及び営業両面での努力が実り、前期比で増収増益となっております。一方、国産合板は市況軟化の影響から減収減益となり、同社全体としても減収減益を余儀なくされました。ティンバラム株式会社は、長引く製品価格下落により厳しい状況が続いております。業績改善に向け、グループ挙げての販売協力や在庫の圧縮、より付加価値の高い事業へのシフト等の企業努力を継続しておりますが、未だ減収が続いております。来期の黒字転換に向け同社では、減損損失の計上を含む構造改革を加速することにしております。

この結果、当事業の売上高は118億67百万円(前期比9.3%減)、営業損失は8億83百万円(前期は76百万円の損失)となりました。

 (総合建材小売事業)

総合建材小売事業につきましては、2024年5月に、大阪府を中心に内装材の販売事業を営む太平洋建材株式会社を新たに子会社とし、同年12月に、富山県富山市内を中心に木材・建築資材の販売事業を営む株式会社山田木材を新たに子会社とした一方、同年10月に、当社連結子会社の株式会社ジェイ・ウインズを同株式会社ハラコーに吸収合併しました。総合建材小売事業セグメントでは、積極的にM&Aを推進するとともに適宜組織再編を実施し、各地得意先の事業承継ニーズに応えながら、グループのネットワークをダイナミックに拡大しております。

この結果、当事業の売上高は527億95百万円(前期比5.4%増)、営業利益は11億7百万円(同3.4%増)と増収増益となりました。

 

 (その他)

その他には、建材小売店の経営指導を中心にフランチャイズ事業を展開している株式会社ハウス・デポ・ジャパンのほか、建設工事業の子会社5社(後述の株式会社大和ビケサービスを含む)、物流関係の子会社等8社及び純粋持株会社でありますJKホールディングス株式会社の一部事業等を区分しております。2025年1月に、関東圏においてくさび式足場施工を営む株式会社大和ビケサービス、その子会社で仮設足場機材及び環境部材のレンタル・販売事業を営む有限会社ワイビエスを新たに子会社とし、当社グループの事業拡大と基盤拡充を図りました。

この結果、当事業の売上高は41億2百万円(前期比0.0%増)とほぼ横這いながら、営業利益は58百万円(前期は1億41百万円の損失)となりました。

 

②財政状態の状況

当連結会計年度末における総資産は2,229億68百万円となり、前連結会計年度末に比べて115億95百万円減少いたしました。増減の内訳としては、棚卸資産が2億6百万円増加した一方、現金及び預金が59億62百万円、受取手形、売掛金及び契約資産と電子記録債権の合計額が64億74百万円減少したことにより、流動資産が125億41百万円減少いたしました。

固定資産は、有形固定資産が6億66百万円、無形固定資産が5億38百万円増加した一方、投資その他の資産が2億58百万円減少したことにより、固定資産全体では9億45百万円増加いたしました。

負債は1,572億61百万円となり、前連結会計年度末に比べて141億95百万円減少いたしました。増減の内訳としては、未払法人税等が1億29百万円増加した一方、支払手形及び買掛金と電子記録債務の合計額が93億27百万円、短期借入金と一年以内返済予定長期借入金の合計額が38億8百万円減少したことにより、流動負債が124億70百万円減少いたしました。

固定負債は、長期借入金が16億92百万円減少したことを主因として、17億24百万円減少いたしました。

純資産は657億7百万円となり、前連結会計年度末に比べて25億99百万円増加いたしました。利益剰余金が29億22百万円増加したことによるものであります。

 

③キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ58億49百万円減少し、503億19百万円となりました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果獲得した資金は51億28百万円(前期は220億59百万円の獲得)となりました。税金等調整前当期純利益76億9百万円、減価償却費25億72百万円、売上債権の増減額75億53百万円といった資金獲得要因がありました。一方で、仕入債務の増減額97億47百万円、法人税等の支払額25億80百万円の資金使用要因があったこと等によるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果使用した資金は24億48百万円(前期は38億32百万円の使用)となりました。連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出9億3百万円、固定資産の取得と売却の差額16億55百万円の資金使用要因があったこと等によるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果使用した資金は85億29百万円(前期は44億37百万円の使用)となりました。短期借入金の純減額39億94百万円、長期借入金の純減額27億98百万円、配当金の支払額13億といった資金使用要因があったこと等によるものであります。

 

④生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 セグメントの名称

 当連結会計年度

(自 2024年4月1日

 至 2025年3月31日)

 前年同期比(%)

総合建材卸売事業

(百万円)

合板製造・木材加工事業

(百万円)

12,714

88.3

総合建材小売事業

(百万円)

報告セグメント計

(百万円)

12,714

88.3

その他

(百万円)

合計

(百万円)

12,714

88.3

 (注)金額は販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。

 

b.商品仕入実績

 当連結会計年度の商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 セグメントの名称

 当連結会計年度

(自 2024年4月1日

 至 2025年3月31日)

 前年同期比(%)

総合建材卸売事業

(百万円)

294,735

100.3

合板製造・木材加工事業

(百万円)

1,541

118.3

総合建材小売事業

(百万円)

20,781

119.8

報告セグメント計

(百万円)

317,059

101.5

その他

(百万円)

606

84.0

合計

(百万円)

317,665

101.4

 (注)セグメント間の取引については相殺消去しております。

 

c.受注実績

 当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前年同期比(%)

受注残高(百万円)

前年同期比(%)

総合建材卸売事業

合板製造・木材加工事業

3,247

109.1

239

134.9

総合建材小売事業

報告セグメント計

3,247

109.1

239

134.9

その他

2,657

130.9

1,846

147.3

 合計

5,905

117.9

2,085

145.8

 

d.販売実績

 当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 セグメントの名称

 当連結会計年度

(自 2024年4月1日

 至 2025年3月31日)

 前年同期比(%)

総合建材卸売事業

(百万円)

324,492

100.9

合板製造・木材加工事業

(百万円)

11,867

90.7

総合建材小売事業

(百万円)

52,795

105.4

報告セグメント計

(百万円)

389,156

101.1

その他

(百万円)

4,102

100.0

合計

(百万円)

393,258

101.1

 (注)セグメント間の取引については相殺消去しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

当連結会計年度における財政状態及び経営成績につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績の状況 ②財政状態の状況」に記載のとおりであります。

当連結会計年度においては、売上高は3,932億58百万円と、「ウッドショック」によりレコードを大きく更新した前々期に次ぐ水準となりました。売上規模を維持できた要因は、値下がり基調にあった木材や合板等の素材の在庫一新のほか、資材、エネルギー価格の高騰等が続く建材、住宅設備等について、売価への転嫁が相応にできたこと、小売り部門を中心とするM&Aにより企業規模が拡大していること、そして中核である卸部門をはじめ販売部門の営業努力が実を結んだことなどが挙げられます。

利益面においては、卸、小売りの流通部門が計画を上回る利益を確保する一方、製造部門の子会社の多くが減益となり、全体としても減益を余儀なくされました。

当社グループが属する住宅業界では、建材や住宅設備の価格が上昇していることに加え、2024年問題等から運賃や労賃も上昇しており、住宅価格は高騰しております。当社グループとしては、引き続き在庫水準の適正化に取り組むのと同時に、価格や機動性を考慮した商材変更の提案、「資産価値が残る家づくり」に向けた付加価値の高い商材の提案等を推進し、足元のみならず今後の業界環境を見据えた営業活動を強化しております。また、業績不振の子会社の業務改善やM&Aによる新分野への進出など、グループ全体の体質の改善・強化に努めております。

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当社グループの運転資金は、グループ内の資金を効率的に活用することによって賄うことを基本とし、不足額や緊急に必要となる資金については、当座借越枠、CP枠、中核企業であるジャパン建材株式会社の手形流動化枠等にて対応しております。運転資金以外の資金需要の主なものは、製造子会社の機械等の設備資金や販売子会社の事務所・倉庫等の営業用不動産への投資のほか、M&Aによる会社の取得資金など持株会社である当社の投資に要する資金です。この投資資金については、自己資金を充てることを基本に不足額を銀行借入によって調達しております。銀行借入については、半期ごとに長期資金の調達計画を立て、計画的に調達しております。

当連結会計年度においては、子会社の事務所・倉庫・機械の新増設や補修等の設備投資を行っておりますが、その規模は減価償却の範囲にとどまる一方、グループ各社の業況が比較的に順調に推移しており、グループ内全体では資金余剰となっているため、グループ全体の借入金も減少しました。

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たって採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)並びに(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

5【重要な契約等】

当連結会計年度において、重要な契約等はありません。

 

6【研究開発活動】

 当連結会計年度において、研究開発活動はありません。