第2 【事業の状況】

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 経営方針

「挑戦する個人・企業を応援し、すべてのステークホルダーと感動体験を共有し、より良い世界を創造する」ことを企業理念に掲げ、‘Stride with Challengers(挑戦者達と共に闊歩する)’というコーポレートスローガンを合言葉に、子会社7社及び関連会社1社から構成される当社グループでは不動産、ホテル、投資の3事業を主軸として、企業活動を展開しております。

不動産事業は「豊かな居住空間の実現」を、ホテル事業は「地方創生・地域活性化」を、投資事業は「アジアの投資家・スタートアップとの連携」を重要テーマに掲げ、また親会社である当社が日本とアジアをつなぐゲートウェイとしての役割を担いながら、これら3つの事業領域のそれぞれの事業が持つ強みを活かし、時代の変化や社会課題に対応した柔軟な事業展開を進めることにより、持続的な成長と企業価値の向上を目指し、共にシナジーをより高めてまいります。さらに当社グループでは、事業を通じてスポーツ、アート、日本の伝統文化の発展を支援することで、経済だけでなく社会の活性化にも寄与していく所存であります。

他方で、2030年に向けた「持続可能な開発目標」や、サステナブルな循環型社会への移行が求められる中、企業には責任ある役割の果たし方がますます問われております。こうした不確実性が高く変化の激しい時代においては、柔軟かつ能動的に変化へ対応できる人材の育成に加え、外部の専門人材やパートナーとの連携が不可欠であります。当社グループは、これらの取り組みを通じて既存事業の価値をさらに高めるとともに、新たな事業機会の創出にも取り組み、今後も企業理念の実現に向けて挑戦と成長を続けてまいります。

 

(2) 経営戦略

当社グループは、前期に実施した事業ポートフォリオの見直しを経て、不動産、ホテル、投資の3事業を中核とする事業会社体制へと移行いたしました。本年度はこの新たな体制のもと、各事業の収益基盤の強化を図るとともに、グループ全体としての戦略的な連携を推進してまいりました。今後も、当社グループは再編後の基盤強化と成長戦略の両立を図りながら、持続的な企業価値向上を目指してまいります。

 

こうした全社戦略を受けて、主軸となる各事業の事業戦略は以下の通りとなります。

不動産事業の中核であるレジデンス事業においては、「豊かな居住空間の実現」を掲げ、居住用賃貸物件の管理戸数を着実に拡大しながら、安定した収益基盤の構築に取り組んでまいりました。今後はデジタルトランスフォーメーションのさらなる推進と、賃貸管理サービスのラインナップ強化を通じて、より付加価値の高いサービスを提供してまいります。あわせて、家賃保証事業の拡大によりオーナー・入居者双方に安心感を提供するとともに、これまで蓄積してきた賃貸管理のノウハウを活かし、自社保有物件の積極的な取得を進めていく方針により、柔軟かつ高付加価値なサービス提供を目指してまいります。

ホテル事業においては、「地方創生・地域活性化」をテーマに、地域の魅力を引き出す空間づくりと観光資源との連携を通じて、地域社会との共生を図る運営を推進しております。また、インバウンド需要の回復や国内観光の多様化、さらには会議・研修等の法人需要の再拡大を見据え、運営を実施してまいりました。成田ゲートウェイホテルでは、運営効率の見直しと収益性の改善に取り組んでおり、倉敷ロイヤルアートホテルでは、観光地としての魅力を活かした倉敷エリアの集客力向上を目指しております。2024年5月から業務支援を開始しておりますホテル・アローレについては、業務支援体制の整備と将来的なグループ化に向けた準備を進めており、それぞれのホテルが持つ特性を活かした戦略的な運営により、ホテルセグメント全体の企業価値向上と地域社会への貢献を両立してまいります。

投資事業においては、これまで数年にわたり南・東南アジア地域への投資を通じて、ファンド運営に関する知見の蓄積や海外投資家とのネットワーク構築を積極的に進めてまいりました。現在は、南・東南アジアのスタートアップを対象とした新たなファンドの設立準備を進めており、今後は、投資リターン中心の収益構造から、ファンド運営による手数料収入(マネジメントフィー)を重視した安定的な収益モデルへの転換を目指しております。また、国内においても不動産・ホテル分野へのインバウンド投資需要が高まる中、当社グループが投資家と案件をつなぐファシリテーターとしての役割を果たすことで、主力事業である不動産・ホテル事業との相乗効果の創出を図ります。これらの取り組みを通じ、経済的価値の創出にとどまらず、日本の伝統文化の発信や地域活性化にも貢献してまいります。

 

 

(3) 経営環境

わが国経済は個人消費やインバウンド需要の回復により緩やかに回復しましたが、地政学リスクや資源価格高騰、欧米のインフレ長期化に伴う金融引締めにより、不透明な外部環境が続いております。加えて、2024年の米国大統領選挙後の新政権の政策により、世界経済に影響を及ぼす可能性がございます。当社は、価格体系の見直し、人材投資、AI技術の活用を通じた業務革新により、変化に柔軟に対応し、持続的な成長と企業価値向上を目指してまいります。

こうしたなか、当社グループの不動産事業、とりわけ主力のレジデンス事業については、賃貸管理を中心とした安定的な運営を継続しております。首都圏のマンション価格上昇や金利動向の変化といった市況変化の影響は限定的で、市場は概ね安定して推移しています。また、一都三県を主要な営業エリアとすることで、住宅需要も堅調に推移しており、現時点では家賃や稼働率に関する大きなリスクは顕在化しておりません。今後も需要動向を注視しつつ、安定収益の確保に努めてまいります。

ホテル事業については、記録的な円安やコロナ禍の収束を背景に、インバウンド観光需要はコロナ前を上回る水準まで回復しております。一方で、訪日外国人の消費行動の変化や地域ごとの需要の偏在といった新たな課題も顕在化しており、対応は一層高度化・複雑化しております。また、慢性的な人手不足が続く中で、オペレーションの効率化や従業員のマルチタスク化など、サービス提供体制そのものの見直しが不可欠となっております。当社としても、これらの変化に柔軟かつ機動的に対応すべく、体制の再構築と業務改革に取り組んでまいります。

また、投資事業については、依然として不透明な要素は残るものの、南・東南アジアのベンチャーキャピタル市場は徐々に回復基調にあります。一方で、円安の進行や各国との景気格差を背景に、日本国内に対する海外企業・投資家の関心は今後さらに高まっていくものと見込んでおります。

 

(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

① グループ経営管理の強化

機動的な事業展開を可能にするために、7社の連結子会社より構成されたグループ会社の経営状況の適時な把握に努めるほか、グループの経営管理を強化すべく、事業執行権限の見直しと業務報告体制の整備を実施してまいります。また、グループ間の資金管理を一元化等することで、より効率的な事業基盤を確立してまいります。

② 内部経営資源の有効活用

迅速かつ効果的な経営判断をする為に、グループ情報の共有化や幹部間による情報交換等、グループ間のコミュニケーション体制を確保してまいります。また、社員研修等によるグループ共通人材の育成に注力することにより、グループ間の連携強化とグループシナジーを追求してまいります。

③ 内部統制・コンプライアンス体制の構築

会社法・金融商品取引法を踏まえた内部統制の整備については、グループ各社において、業務プロセスの文書化、可視化によるルール整備を進めております。また、コンプライアンスにつきましても、当社グループの企業行動憲章や社員行動規範等をグループ内で周知徹底するとともに、社員研修等による教育を実施しております。

④ 外部経営資源の積極的な活用

当社グループの持続的な発展に向け、当社の企業理念等に適合するM&Aやエクイティ投資に加え、地域の金融機関を含む幅広い内外の企業・機関との提携を積極的に推進してまいります。これにより、外部経営資源の有効活用を図り、事業成長と企業価値の向上を目指してまいります。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は次のとおりであり、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

当社は、2010年に商号を株式会社ストライダーズに変更して以降、投資会社から事業会社へと変遷していく過程で、持続可能な事業を開発し、投資し、運営していくことで、多様性と包摂性に富み、人と社会にとって持続可能でより良い世界を創造することを目指してきました。昨今、投資家が企業に求めるサステナビリティの充実度が年々高まっていることを踏まえ、グループの目指すべき方向をわかりやすく社内外に示すため、以下のとおり、2023年3月にサステナビリティ基本方針を定めました。

 

ストライダーズ サステナビリティ基本方針

「持続可能でより良い世界を創造するための挑戦を続け、社会課題の解決と経済価値の向上に貢献する」

 

環境

・既存事業の環境負荷低減に努めるとともに、事業を通じて環境問題の解決に取り組む

・環境視点を重視した事業投資、グリーンファイナンスを推進する

 

社会

・スポーツや芸術・文化に関わる人々を応援し、豊かな社会づくりに貢献する

・人権や多様性に配慮しながら、ステークホルダーとの連携を深める

・働きがいのある職場づくりを進めることで、社員のウェルビーイングを高め、挑戦の土台を強固にする

 

ガバナンス

・適切な情報開示を進めるとともに、コーポレート・ガバナンスの強化に向けて取り組みを進める

2023年3月制定

 

サステナビリティについて、構成要素ごとの具体的な状況は以下のとおりです。

 

(1) ガバナンス・リスク管理

サステナビリティ関連のリスク及び機会を識別・評価するため、まずはIR・サステナビリティチームが情報収集や分析を行い、定例ミーティングで共有するとともに、日常的な部署間の連携を図っています。その中で特に重要なものについては親会社の取締役会において、適切に情報共有を図るとともに、グループ会社については、各社ごとにサステナビリティ推進担当を設置し、IR・サステナビリティチームと連携しながら、グループ全体でのサステナビリティの推進に向けて取り組んでいます。

今後は、こうしたサステナビリティに関する社内の動きを一定期間ごとに総括し、取締役会に報告・議論し、その過程等について見直し・改善を行うなど、サステナビリティに関するガバナンスを強化してまいります。

 

(2) 戦略・指標及び目標

当社はこれまで各事業セグメントで具体的な案件ごとに、サステナビリティの視点を重視しながら事業活動を展開してまいりました。その一例として、不動産事業ではペーパレス化や社内環境の整備、ホテル事業では環境に配慮したホテル運営や新型コロナウイルス感染症の無症状者・軽症者向け宿泊施設としての貸し出し、投資事業ではインパクト投資の実施、投資先選定時のサステナビリティ基準のチェックや女性起業家の支援などがあります。

 

2025年3月期の新たな取り組みといたしましては、環境負荷の低減と業務効率の向上を統合的に捉えた運営戦略のもと、業務設計から見直しを行いながら、省力化と省資源化を両立する施策を段階的に導入しております。具体的には、ホテル事業に置いて、アメニティ提供方式の変更やルーム清掃のオプション化、デジタルサイネージによる告知などを通じ、業務の標準化と持続可能性の高い運用を目指しています。顧客、従業員、地域社会との信頼関係を基盤とし、多様な価値観を尊重した事業活動を展開するとともに、地域貢献や人材育成を通じた持続可能な社会の構築に貢献してまいります。

 

コーポレート・ガバナンスの視点からは、ホールディングス企業である株式会社ストライダーズの監査等委員会設置会社への移行に伴うガバナンスの強化や、当社子会社であった株式会社グローバルホールディングスの吸収合併に関連する組織再編による事業運営の効率化など、グループ全体の機関設計の見直しを推し進めております。さらに、機関投資家に向けて決算説明会をオンライン開催するなど、外部へのディスクロージャーも強化しております。

 

なお、人材の多様性の確保を含む人材の育成及び社内環境整備に関する現況といたしましては、女性、外国人、中途採用者など、多様な人材の採用、起用を積極的かつ継続的に行いつつ、それぞれの特性や能力を最大限活かせる職場環境の整備やマネジメント層の教育などを進めております。

2025年3月末日において、当社連結従業員総数115名のうち女性は49名でその割合は42.6%、当社単体従業員総数10名のうち女性は2名でその割合は20%ですが、今後この比率の拡大を目指します。

 

人員数

全体に占める比率

備考

女性従業員

49

42.6%

連結

女性従業員

2

20%

単体

 

 

また、その他の取り組みとしては、資格取得などの費用を補助する自己啓発経費補助規程を設け、従業員の挑戦を支援するほか、コンプライアンス研修や健康をテーマにしたセミナーなども実施し、働きやすい社内環境づくりに取り組んでいます。

 

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 不動産事業に関するリスク

① 法的規制等に関するリスクについて

当社グループの不動産事業については、当社連結子会社である株式会社トラストアドバイザーズが不動産事業者として、「宅地建物取引業法」及び「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」等に基づく免許を受け、事業展開しており、当該法令の法的規制等を受けております。当社グループではこれらの法的規制等を遵守するよう努めておりますが、法令違反が発生した場合や今後、これらの法令の改廃や新たな法的規制等が設けられる場合には事業活動に制約を受ける可能性があり、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 競争環境の激化

当社グループの不動産事業については、新規参入等により競合他社が他業種と比べ多く存在し、不動産分野においてはIT技術、とりわけAIエージェントを活用した新しいサービスが次々に開発されるなど、技術革新も進んでいます。当社連結子会社である株式会社トラストアドバイザーズにおいても、こうした競合環境の中、新しい取り組みを進め、顧客満足を高めるサービスを展開しておりますが、競争激化により、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 賃料収入の減少

当社グループの不動産事業では、当社連結子会社である株式会社トラストアドバイザーズが不動産オーナーから借上げた賃貸不動産を入居者へ転貸し、入居者から得られる賃料収入を収入源としております。賃貸不動産に対するニーズは景気の変動に影響を受けやすく、今後、経済情勢の悪化や都心部からの人口流出などにより、入居率が低下した場合、賃料収入が減少し、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 礼金・敷引金・更新料制度の変更・廃止

当社グループの不動産事業では、当社連結子会社である株式会社トラストアドバイザーズが、賃貸不動産入居者との賃貸借契約において、新規入居時に礼金や敷引金を、契約更新時に更新料を設定し、礼金・敷引金・更新料を受領しています。これは不動産業界の一般的な慣行であり、最高裁判所の判決では一定の条件のもとで更新料の有効性等が認められておりますが、仮に上記金銭を返還しなければならなくなった場合、もしくは将来、これら金銭を受領することができなくなった場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤ 不動産市況の悪化

当社グループの不動産事業において、不動産に関連する税制改正や金融機関の融資姿勢の変化など、不動産投資にマイナスの影響が出る事象が発生し、不動産取引が低迷した場合、不動産売買事業における販売額・件数等が減少し、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(2) ホテル事業に関するリスク

① 自然災害

近い将来、その発生の切迫性が指摘される大規模地震や、気候変動の影響により猛威を振るう水災害等、我が国における自然災害の発生リスクは年々高まりを見せております。当社グループのホテル事業において、仮に大規模地震や台風等の自然災害が発生した場合、当社グループの所有する建物、施設等に損害を及ぼし、一時的な営業停止による売上減や修復のための費用負担が発生し、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 資材・サービス価格の高騰、人件費の増加

世界的なサプライチェーンの分断や急激な円安、我が国の物価上昇と歩調を合わせた賃上げ、さらには過重労働の解消に向けた政策的な取り組みが、あらゆる資材・サービス価格、人件費などを急速に押し上げ、ホテル業界に限らず、事業運営を圧迫する状況が続いております。

こうした状況下で、適正なサービス価格への転嫁を実現できない場合には、ホテル事業の採算が悪化し、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 必要な人材を確保できないリスク

新型コロナウイルス感染症の影響により長期の停滞を余儀なくされた我が国のホテル業界においてはその間、他業界への人材の流出が起こり、正常化後も依然として、人材の空洞化が顕著な状況にあります。こうした適正な人員確保が難しい状況は、インバウンド需要の急速な高まりや旺盛な内需の取り込みを阻害する要因となり、大幅な収益機会のロスにつながる可能性が懸念されます。

 

④ 新型コロナウイルス感染症に代わる、新たなパンデミックの流行

世界経済は新型コロナウイルス感染症という未曽有の危機の克服に際し、科学技術は飛躍的進歩を遂げた一方で、気候変動による生態系の変化は、新型コロナウイルス感染症に続く第2、第3のパンデミックを引き起こす危険を常に孕んでおります。こうした新型コロナウイルス感染症に代わる、新たなパンデミックが世界的に流行した場合、再び遠距離移動や団体行動の制限が起きることが十分に予想され、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があると考えられます。

 

⑤ 食中毒等、食の安全性に関する問題

当社グループのホテル事業では、レストラン、宴会場等において食事や飲料を提供しており、衛生管理に係るマニュアルの整備や従業員に対する教育指導の徹底等、衛生管理体制の強化に努めておりますが、万が一、食中毒や食品衛生上の問題が発生した場合、一定期間の営業停止等の処分を受ける可能性がある他、イメージの低下等により顧客離れが起こり、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 投資事業に関するリスク

① 投資先のカントリーリスク等

当社グループの投資事業においては次に掲げる特有のリスクが考えられ、これらの事象が発生した場合には、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

イ.経済情勢や競合他社の活動状況

ロ.予測しえない法律や規則の施行・制定、税制の変更

ハ.戦争、疾病、テロ、デモ等による社会的混乱

ニ.不利な政治的要因の発生

ホ.通貨価値や為替相場の変動

 

 

(4) その他のリスク

① 事業投資に関連したリスク

当社グループは、グループ全体の発展のために事業投資を行っており、さまざまな投資形態を採用し、国内外で上場・未上場問わず投資対象を選定しております。そのため、国内外の経済情勢等の影響を受け、当社グループの業績及び財務状態に影響を及ぼす可能性があります。また、投資先企業に対して派遣した当社役職員が損害賠償請求等をされた場合、当社グループに使用者責任及び当該賠償金額を負担する義務が発生し、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 風評被害

当社グループの事業に対して、悪質なデマや誹謗中傷がSNSをはじめとする情報媒体等を介して行なわれた場合、当社グループ全体の健全な事業活動の運営に支障を来たし、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 個人情報漏洩のリスク

当社グループは、個人情報保護法により定められた個人情報の漏洩防止に努めるべく、個人情報の管理体制を整備しております。しかしながら、情報化社会における昨今の個人情報を取り巻く環境は年々複雑さを増しており、予期せぬ事態により個人情報が漏洩した場合には、当社グループの社会的信用の低下や当該漏洩事件に対応するために発生する費用等により、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 新株予約権による株式の希薄化リスク

当社グループは役員に対し、長期的な企業価値向上に対するインセンティブとして新株予約権を付与しております。新株予約権の権利行使が行われた場合、当社株式が新たに発行され、当社株式価値が希薄化する可能性があります。

 

⑤ 財務制限条項に関するリスク

当社グループは、一部の借入契約において一定の財務制限条項が設定されています。これらに抵触した場合、期限の利益を喪失し、借入金の一括返済等を求められる可能性があり、当社グループの財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 経営成績の状況

当連結会計年度のわが国経済は、個人消費やインバウンド需要の回復を背景に緩やかな持ち直しを見せる一方、地政学的リスクの継続や資源価格の上昇、欧米諸国でのインフレ長期化に伴う金融引締めなどにより、依然として不透明な外部環境が続いています。当社グループでは、価格体系の見直しや業務の効率化に加え、人材投資およびAI活用の推進を通じて収益力の強化を図り、変化の激しい経営環境に柔軟かつ機動的に対応しながら、持続的な成長を目指してまいります。

このような経済状況下、当社グループ(当社及び連結子会社)では、こうした足元のマクロ経済環境に注視しつつ、日本とアジアをつなぐゲートウェイとしての役割を担うという経営方針の下、継続して変化に対応できる会社体制の再構築を行い、中長期では再現性のある成長を実現する組織体制の構築に取り組んでまいりました。

その結果、当連結会計年度の業績は売上高7,788百万円前年同期比1.4%増)、営業利益47百万円前年同期比4.2%減)、経常利益85百万円前年同期比16.4%減)、親会社株主に帰属する当期純利益43百万円前年同期比47.3%減)となりました。

セグメントの業績は、次のとおりであります。

 

<不動産事業>

不動産事業につきましては、株式会社トラストアドバイザーズにおいてマンションオーナー向けのリーシング及び賃貸管理とマンション建物の受託管理を行うレジデンス事業、ならびにマンションオーナーの購入・売却ニーズに対応する不動産売買事業を、株式会社東京アパートメント保証において家賃保証事業を営んでおります。

レジデンス事業は、前年同期比で管理戸数やサブリース賃貸借契約の賃料水準に大きな変化はありませんでしたが、空室率が低下したことで稼働戸数、ひいては家賃収入が増加し、増収増益となったのに対し、不動産売買事業は、売上高、粗利ともにほぼ前年同期並みに推移いたしました。

また、主力のレジデンス事業に加え、当連結会計年度において家賃保証事業の事業規模が拡大し、不動産事業の収益性の向上に寄与いたしました。

その結果、当連結会計年度の不動産事業の売上高は、レジデンス事業の空室率の低下を主要因として、6,417百万円前年同期比3.3%増)となり、営業利益は251百万円前年同期比6.4%増)となりました。

 

<ホテル事業>

ホテル事業につきましては、現在、成田空港エリアで成田ゲートウェイホテル、倉敷美観地区エリアで倉敷ロイヤルアートホテルを運営しております。

成田ゲートウェイホテルは、2023年6月の営業再開以降、段階的に客室稼働率を高める過程にありましたが、今年度の客室稼働率は、すべての月において前年同月を上回り、客室平均単価も前年を上回る水準で推移いたしました。こうした背景には、訪日外国人観光客の増加を背景としたインバウンド需要の回復、プライシング戦略による適切な価格設定を行ったことが挙げられます。一方で、業務委託費・人件費・動力光熱費の高騰に加え、当期に実施した金融機関からの資金調達に係る一時的な費用増も発生しましたが、当連結会計年度においては、前年同期を上回る売上となり、収益性の改善を図ることができました。

倉敷ロイヤルアートホテルが位置する岡山県倉敷市では、訪日外国人観光客の回復傾向が顕著となっており、歴史的な街並みが残る美観地区をはじめ、地域全体への関心が国内外から高まっています。こうした中、当ホテルでは、アートを軸とした独自のコンセプトを活かし、地域文化と融合した宿泊体験の提供を進めており、今後もインバウンド需要の流れを的確に捉え、外国人観光客へのサービス強化や地域連携を通じて、収益機会の拡大を図ってまいりました。一方で、物価上昇や人件費・エネルギーコストの高騰など、費用構造の重圧が継続した影響もあり、増収減益となりました。

 

こうした両ホテルの業績を合算した結果、成田ゲートウェイホテルのインバウンド需要回復とプライシング戦略により、セグメント全体では増収減益、当連結会計年度のホテル事業の売上高は1,138百万円前年同期比10.1%増)、営業損失は30百万円前年同期は営業損失11百万円)となりました。

 

<投資事業>

当社グループの投資事業につきましては、M&Aグローバル・パートナーズ株式会社において国内投資事業を、STRIDERS GLOBAL INVESTMENT PTE.LTD.において海外投資事業を営んでおります。

当連結会計年度におきましては、各国経済において不透明な投資環境が継続する中、新規の投資に対して慎重な姿勢を取りつつも、日本国内の事業承継やインバウンド投資の案件発掘を進めてまいりました。また国内を始め、南・東南アジア、欧州といった地域のスタートアップ投資、とりわけアグリテック、ヘルステックおよびエンターテイメントといった領域に注目してまいりました。

STRIDERS GLOBAL INVESTMENT PTE.LTD.においては、シンガポールを拠点にこれまでの投資を基盤としたファンド組成を進行させております。

この結果、当連結会計年度の投資事業の売上高は2百万円前年同期比95.9%減)、営業損失は21百万円前年同期は営業利益29百万円)となりました。

 

② 財政状態の状況

(資産)

当連結会計年度末における流動資産は3,497百万円となり、前連結会計年度末に比べ788百万円増加しました。これは主に定期預金が150百万円減少した一方で、短期貸付金が750百万円、現金及び預金が33百万円増加したこと等によるものであります。

固定資産は2,001百万円となり、前連結会計年度末に比べ80百万円増加しました。これは主に長期貸付金が57百万円、リース資産(純額)が21百万円、敷金保証金が10百万円増加したこと等によるものであります。

この結果、総資産は5,498百万円となり、前連結会計年度末に比べ868百万円増加しました。

(負債)

当連結会計年度末における流動負債は1,043百万円となり、前連結会計年度末に比べ58百万円減少しました。これは主に未払法人税等が39百万円増加した一方で、1年内返済予定の長期借入金が97百万円、1年内償還予定の社債が40百万円減少したこと等によるものであります。

固定負債は1,990百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,004百万円増加しました。これは主に長期借入金1,024百万円が増加した一方で、預り保証金が20百万円減少したこと等によるものであります。

この結果、負債合計は3,034百万円となり、前連結会計年度末に比べ946百万円増加しました。

(純資産)

当連結会計年度末における純資産は2,463百万円となり、前連結会計年度末に比べ77百万円減少しました。これは主に親会社株主に帰属する当期純利益43百万円を計上した一方で、剰余金の配当41百万円、自己株式の取得30百万円を実施したこと等によるものであります。

この結果、自己資本比率は、44.8%となりました。

 

③ キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末の現金及び現金同等物(以下、「資金」という)は2,111百万円となり、前連結会計年度末に比べ183百万円増加しました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果獲得した資金は258百万円(前年同期は164百万円の獲得)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益103百万円、減価償却費121百万円及びのれん償却額8百万円を加算要因とした一方で、棚卸資産の増減51百万円などが減算要因となったことによるものです。

 

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果使用した資金は859百万円(前年同期は565百万円の使用)となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出128百万円、連結範囲の変更を伴う子会社株式の売却による支出62百万円及び短期貸付金の純増738百万円により使用された一方で、定期預金の払戻による収入150百万円及び有形固定資産の売却による収入12百万円により獲得されたこと等によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果獲得した資金は783百万円(前年同期は81百万円の使用)となりました。これは主に、長期借入金による収入1,439百万円があった一方で、長期借入金の返済512百万円、リース債務の返済28百万円、社債の償還40百万円及び自己株式の取得30百万円並びに配当金の支払い41百万円による資金の支出があったこと等によるものであります。

 

④ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績

その他の一部で生産活動を行っておりますが、金額的重要性が乏しいため記載しておりません。

 

b.受注実績

その他の一部で受注販売活動を行っておりますが、金額的重要性が乏しいため記載しておりません。

 

c.販売実績

当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

 至 2025年3月31日)

前年同期比(%)

不動産事業(千円)

6,417,602

3.6

ホテル事業(千円)

1,137,032

10.2

投資事業(千円)

2,000

△95.9

報告セグメント計(千円)

7,556,634

3.8

その他(千円)

232,152

△42.3

合計(千円)

7,788,787

1.4

 

(注) 1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、100分の10未満であるため記載しておりません。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 経営成績及び財政状態の状況に関する分析・検討内容

当連結会計年度は、前年度に策定した中核事業の再定義および組織再編方針に基づき、それぞれの事業領域において実行フェーズへと本格的に移行した一年となりました。社会情勢の落ち着きとともに、グループ全体としてはアフターコロナ環境下における需要動向の変化を捉え、不動産・ホテル・投資の3事業において選択と集中を一層推進し、企業価値の向上に向けた基盤構築を図ってまいりました。ガバナンス体制においては、前年度の方針に基づき、株式会社ストライダーズの監査等委員会設置会社への移行を実施し、意思決定の迅速化と取締役会の監督機能の強化を図るとともに、オフィス統合および管理部門の集約を通じたグループ経営効率の向上にも取り組みました。

 

翌連結会計年度におきましては、引き続きグループガバナンス体制および経営基盤を整備しつつ、外部環境の変化に柔軟かつ迅速に対応できる持続可能な経営体制の確立を目指してまいります。中長期的な企業価値の向上を見据え、経営判断の質とスピードの両立を図るとともに、ホールディングスとしての統括機能と事業会社の自律的な執行機能の適切なバランスを維持・強化し、全体最適に資する経営運営を追求してまいります。また、コーポレート・ガバナンスの実効性を一層高めるべく、取締役会の監督機能と業務執行の分離を徹底し、透明性の高い意思決定と説明責任を重視した経営体制の運営を継続してまいります。さらに、将来の不確実性を見据えたリスクマネジメント体制の高度化にも取り組み、変化を先取りし適応する企業文化の醸成を通じて、経営の持続可能性を高めてまいります。

 

不動産セグメントの主力であるレジデンス事業は、安定した市場環境のもと堅調に推移しており、当連結会計年度においては営業努力により空室率が改善し、前年同期比で増収増益を達成いたしました。翌連結会計年度においても大きな市況変動は想定しておらず、引き続き一都三県を中心とした首都圏全域において管理戸数の拡大を進めることで、安定収益の確保と持続的な成長の実現を図ってまいります。他方で、当連結会計年度に周辺サービスである家賃保証事業は、事業規模の拡大及び収益性の安定化に伴い、不動産事業の新たな柱になりつつあります。今後は、既存のレジデンス事業とのシナジーを活かしながら、より効率的かつ付加価値の高いサービス提供を図ることで、グループ全体の収益基盤強化に寄与していくものと見込んでおります。

また、業界全体の課題であるデジタルトランスフォーメーションに関しても、顧客の潜在ニーズを取りこぼすことがないよう、引き続き業界を率先して取り組んでまいります。

ホテルセグメントの成田ゲートウェイホテルでは、2023年5月に約3年間続いた療養施設としての運営を終了し、翌月より宿泊施設としての営業を再開いたしました。営業再開後は客室稼働率・客室平均単価ともに前年を上回る水準で推移し、インバウンド需要の回復や柔軟なプライシング戦略が奏功しました。

一方で、中国人団体客の回復遅れを受け、個人旅行客中心への営業戦略転換に伴うコスト増加や、業務委託費・人件費・動力光熱費の高騰、資金調達関連費用などが重なりましたが、売上は前年同期を上回り、一定の収益性改善を実現しました。個人客中心のオペレーション体制への移行は、翌連結会計年度に概ね完了する見通しです。

また、成田空港の拡張計画により、当該地域は千葉県内でも成長が最も期待されるエリアと位置づけられ、空港関連を中心とした工事需要の増加が見込まれています。これに伴い、地元金融機関や企業との連携も進展することが期待されており、当ホテルにおいても地域発展を取り込むべく外部連携を強化してまいります。

同じくホテルセグメントの倉敷ロイヤルアートホテルでは、当連結会計年度の前半において集客が平常水準に回復し、年末にかけては宴会需要も回復基調を示したことにより、前年同期比で増収となりました。倉敷市では、歴史的な街並みが残る美観地区をはじめとする地域資源への注目が国内外で高まっており、訪日外国人観光客の回復傾向も顕著となっています。さらに、2025年の瀬戸内国際芸術祭や大阪・関西万博の開催を控え、瀬戸内地域全体への注目度が一層高まることが見込まれています。こうした環境下において、当ホテルは「アートとホテルの融合」「多目的空間としてのホテル活用」「瀬戸内地域との連携と協創」という独自のコンセプトを軸に、地域文化と調和した宿泊体験の提供を進めております。今後も、インバウンド需要の動向を的確に捉え、外国人観光客へのサービス強化と地域連携を通じて、収益機会の拡大を図ってまいります。

当社グループのホテルセグメントはその地域に根差し、その地域に活力を生み、その地域の多様なステークホルダーの協創の場となるような空間の形成を目指しております。今後、これらのホテルが成田、倉敷といったそれぞれ特色の異なる地域において、それぞれが協創の拠点としての役割を担っていけるよう、取り組みを進めてまいります。

 

投資セグメントのStriders Global Investment Pte. Ltd.では、

シンガポールを拠点にこれまでの投資実績を基盤としたファンド組成が進行しており、ファンド名を「Omusubi Venture Fund」と定めました。

 

こうした取り組みを通じて、当社内にファンド運営のノウハウが一定程度蓄積したと判断しており、翌連結会計年度には、当社が主体となり、南・東南アジアのスタートアップをターゲットとした本ファンドの立ち上げを予定しております。

また、当社が保有する海外投資家ネットワークを活用し、当社グループの事業領域である不動産やホテルなどを対象とした日本国内へのインバウンド投資のファシリテートにも、引き続き注力してまいります。

 

他方、財政状態の状況につきましては、成田ゲートウェイホテル株式会社における経営と所有の一体化を進めるため、土地・建物を取得したことに伴う新規借入を実施した結果、総負債は前連結会計年度末に比べ946百万円増加し、3,034百万円となった一方で、自己株式の取得及び非支配株主持分の減少により、本業における利益計上や円安による為替影響の増加がこれを上回り、純資産は前連結会計年度末に比べ77百万円減少し、2,463百万円となりました。以上から、長期借入金による資金調達及び定期預金の払戻しにより現金及び預金は増加し、これに伴い総資産は前連結会計年度末に比べ868百万円増加の5,498百万円となりました。

 

経営方針、経営戦略ならびに経営上の目標の達成状況を把握するための客観的な指標等につきましては、当社グループでは事業の規模拡大と収益力の向上のために「売上高」と「営業利益」を採用しております。また、その他の指標等については、以下のとおりとなっております。

 

a.自己資本比率について

当社グループの当連結会計年度末における自己資本比率は44.8%となり、前連結会計年度末の54.3%より、9.5ポイント減少いたしました。これは、財政状態の状況において先述したとおり、当連結会計年度末における純資産が2,463百万円と前連結会計年度末に比べ77百万円減少し、また、総資産は5,498百万円と前連結会計年度末に比べ868百万円増加したことによります。当社グループとしましては、今後も資本効率に留意しながら、経営環境の変化に応じ、バランスの取れた自己資本の水準を維持してまいります。

 

b.デットエクイティレシオについて

当社グループの当連結会計年度末におけるデットエクイティレシオ(有利子負債/自己資本)は0.80倍となり、前連結会計年度末の0.42倍から0.38ポイント上昇しております。これは、当連結会計年度において長期借入金による資金調達を実施したことに加え、自己株式の取得等により自己資本が減少したことに起因するものであります。今後も、財務の健全性と機動的な資本政策の両立を図りながら、適切なデットエクイティレシオの維持に努めてまいります。

 

c.自己資本利益率について

当社グループの当連結会計年度末における自己資本利益率は1.8%となり、前連結会計年度末の3.3%より1.5ポイント低下いたしました。これは、経営成績の状況において先述したとおり、親会社株主に帰属する当期純利益が43百万円(前年同期比47.3%減)であったことによります。当社グループでは、市場における投資家の期待リターンを踏まえ、自己資本利益率10%を中期的な目標値として、収益性の向上及び資本効率の改善に取り組んでまいります。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは258百万円の獲得となり、前連結会計年度比で94百万円の収入の増加となりました。これは、株式会社トラストアドバイザーズの営業活動によるキャッシュ・フローの増加と、成田ゲートウェイホテル及び倉敷ロイヤルアートホテルの設備投資に伴う減価償却費の増加が主要因であります。

当連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・フローは859百万円の支出となり、前連結会計年度比で294百万円の支出の増加となりました。これは、株式会社ホテル・アローレに対する業務支援の際に生じた貸付金の支出を主要因としております。

 

当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・フローは783百万円の獲得となり、前連結会計年度比で864百万円の収入の増加となりました。これは、ホテル事業部門における運転資金及び資本コストを意識した適切な資本構成の実現のため銀行借入を実施したことを主要因としております。なお、新規借入による収入が借入の返済や社債の償還による支出が上回っているため、財務活動によるキャッシュ・フローは獲得のポジションとなっております。

こうした結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は2,111百万円となり、前連結会計年度比で183百万円増加しております。

 

当社グループのキャッシュ・フローは、主に事業会社における営業活動からの安定的な資金創出を基盤としており、これにより運転資金をはじめとする通常の資金需要を賄っております。加えて、企業価値の向上に資する成長投資については、グループ各社において金融機関から資金調達を実施する方針を取っており、機動的な対応を可能とするため、主要取引金融機関との良好かつ継続的な関係を構築・維持し、必要に応じた資金調達を可能とする体制を整えております。資金運営においては、自己資本比率やデットエクイティレシオ等の財務指標に基づいた健全性の確保を基本方針としており、調達手段の多様化・長期化を視野に入れた柔軟な財務戦略を推進しております。また、手元資金については、短期的な安全性と中長期的な成長機会を両立させる適切な水準の維持に努めており、余剰資金は安定的な株主還元や戦略的投資の原資として有効に活用してまいります。今後も引き続き、事業特性や外部環境の変化を踏まえながら、キャッシュ・フローの安定性と資金流動性の確保を両立し、財務基盤の強化と資本効率の向上に努めてまいります。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。その作成にあたっては、経営者による会計方針の選択・適用等、開示に影響を与える見積り及び仮定が必要になります。経営者はこれらの見積り及び仮定について、過去の実績等を勘案し、合理的に判断しておりますが、見積り及び仮定に基づく数値には特有の不確実性があるため、実際の結果と異なる場合があります。

連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、特に重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

 

5 【重要な契約等】

(財務制限条項)

当社の連結子会社である成田ゲートウェイホテル株式会社(千葉県成田市、代表取締役 早川良太郎)は、2024年11月29日付で株式会社千葉銀行との間に金銭消費貸借契約を締結しております。なお、当該契約には以下の財務制限条項(コベナンツ)が付されており、これらは当社グループの財政状態及び資金調達に重要な影響を及ぼす可能性があることから、本欄にて補足いたします。

 

(1) 金銭消費貸借契約に係る債務の期末残高及び弁済期限並びに当該債務に付された担保の内容

 

金銭消費貸借契約に係る債務の期末残高

876,892千円

弁済期限

2037年11月25日

債務に付された担保の内容

信託受益権に対する質権、停止条件付抵当権

 

 

(2) 財務制限条項の内容

1.借主および関連法人の決算書類(税務申告書を含む)、四半期試算表、借入残高一覧、不動産一覧、修繕状況等の定期提出義務

2.千葉銀行による本信託不動産の現地実査への協力義務

3.本信託受益権および信託不動産に関する担保提供や契約の変更・終了・更新に関して、事前に千葉銀行の承諾を得る義務

4.本信託受益権に基づく配当や売却代金の受取口座を千葉銀行に指定する義務

5.株式会社ストライダーズによる出資比率を100%に維持する義務

6.50百万円以上の設備投資または不動産売却時の事前報告義務

7.他の金融機関からの新規借入に関する事前報告義務

8.千葉銀行の預金口座における平均残高を30百万円以上に維持する義務

9.2026年3月期以降、2期連続で経常損失を計上しないこと

10.同じく2026年3月期以降、純資産額を2025年3月期または直前期末の純資産額の75%以上に維持する義務

 

(連結子会社の吸収合併)

当社は、2025年2月10日開催の取締役会において、当社の完全子会社である株式会社グローバルホールディングスを吸収合併することを決議し、2025年3月31日付で吸収合併いたしました。

 

1.企業結合の概要

(1) 結合当事企業の名称及び事業内容

吸収合併存続会社の名称 株式会社ストライダーズ

事業の内容       傘下子会社及びグループ経営管理並びにこれに付帯または関連する事業

吸収合併消滅会社の名称 株式会社グローバルホールディングス

事業の内容       ホテル事業

 

(2) 企業結合日

2025年3月31日

 

(3) 企業結合の法的形式

当社を存続会社とし、株式会社グローバルホールディングスを消滅会社とする吸収合併によります。

 

(4) 合併に係る割当ての内容

完全子会社との合併であり、新株式の発行及び金銭等の交付は行いません。

 

 

(5) 合併の目的

株式会社グローバルホールディングスの主たる事業は、これまでホテル資産の保有・管理でありましたが、当社子会社である成田ゲートウェイホテル株式会社へホテル資産を売却したため、事業運営の効率化を目的に同社を吸収合併することといたしました。

 

2.会計処理の概要

「企業結合に関する会計基準」(企業会計基準第21号 2019年1月16日)及び「企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針」(企業会計基準適用指針第10号 2019年1月16日)に基づき、共通支配下の取引として会計処理を行っております。

 

6 【研究開発活動】

当連結会計年度における研究開発活動について、特記すべき事項はありません。