文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
Purpose(私たちの存在意義) :計測技術で社会に貢献
Vision (私たちが目指す姿) :テクニカル商社への転身
Values (私たちの価値観) :お客様に信頼される企業、誠実で高い倫理観をもった企業
みんなが幸せになれる企業、地球を大切にする企業
当社グループは、代表的な経営指標である自己資本利益率(ROE)10%以上を目標としております。
当社を取り巻く経営環境に関しては、景気は緩やかな回復傾向にあるものの、回復の勢いは鈍い状況となりました。物価高や人手不足、中国・欧州の経済停滞、ウクライナ・中東情勢を背景とする地政学リスクの高まりに加えて、米国の関税政策による世界経済の減速懸念等、先行きの不確実性が高まっております。
当社グループが属する電子計測器、電源機器、環境試験機器等の業界におきましては、人手不足を背景とする自動化・省力化を企図した設備投資や成長分野への研究開発投資が底堅く推移する中、当社の主要ユーザーである自動車業界では、EVや燃料電池等の次世代自動車やADAS・自動運転の技術開発には引き続き積極的な投資が見込まれております。また電子・電機業界では、様々な分野で電子化・デジタル化の流れが加速しており、5Gに関連する社会インフラの整備や、IoT等の投資の拡大が期待されております。前期は設備投資予算の執行にやや慎重な姿勢がみられ当社受注にも一部影響しましたが、当期は設備投資・研究開発投資が底堅く、受注が大きく伸長しました。
当社グループでは、2030年を見据えた成長戦略「INNOVATION2030」の第2期として、2024年5月に新たな中期経営計画「INNOVATION2030 Ver.2.0」を公表し、これまでに構築してきた基盤を礎に更なる進化を図っております。
マクロ環境の不確実性は高まっておりますが、2025年度は、中期経営計画2年目の目標の実現に向けて、売上高1,240億円、営業利益45億円、経常利益45億円、親会社株主に帰属する当期純利益30億円を計画しております。ただし、世界的に景気・経済環境が大きく変動する可能性があり、当社グループの業績見込みも大きく変化する可能性があります。
マクロ環境は、各国の政治情勢等による世界経済への影響や、地政学リスクの高まり、中国経済の停滞長期化懸念に加え、米国の関税政策によるインフレ再燃や景気下振れといった不確実性の高まりも相まって、混沌とした状況が続く見通しであります。こうしたリスクが当社に影響を及ぼす懸念がある一方、将来を見据えた成長分野への研究開発・設備投資は堅調に推移する見込みであります。
自動車業界においては、次世代自動車やADAS・自動運転の技術開発には積極的な投資が見込まれております。また電子・電機業界においても、DXの実現に向け電子化・デジタル化の更なる進展が想定され、5G関連やIoT等の分野において積極的な投資が見込まれております。当社は、幅広い顧客基盤を構築しており、こうした成長分野への投資拡大の動きを捕捉することで、業界環境や顧客ニーズの変化に対応しつつ、受注及び収益力の拡大を図ってまいります。
当社グループでは、中期経営計画「INNOVATION2030 Ver.2.0」に基づき、成長市場への事業領域の拡大や、お客様へのシステム提案力の強化、グローバルビジネスの拡充等を通じて、中長期的な成長を目指してまいります。また、社員を最大の資産と考える経営方針に基づき、当社の企業理念・経営戦略に資する人材の確保、並びに社員のスキルやモチベーション向上等、人的資本投資を積極的に行うと共に、中長期的な企業価値向上を見据えたシステム関連投資等を継続し、経営基盤も強化してまいります。加えて、株価・PBRや資本収益性を意識した経営の実践に向けて、ROEを経営上の重要指標と位置付けてROE10%以上の安定的、持続的な確保を目指してまいります。
今後も、パーパス「計測技術で社会に貢献」、ビジョン「テクニカル商社への転身」を掲げた企業理念に基づき、成長戦略遂行による収益力増強と経営基盤強化の両立、並びに株価や資本収益性を意識した経営の実践を通じて、業界のリーディングカンパニーとして企業価値向上を図る所存であります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) サステナビリティ全般
① サステナビリティに対する考え方
当社グループにとって、サステナビリティとは、事業を通じて社会問題の解決に貢献すること、と捉えております。「計測技術で社会に貢献」をPurposeに掲げた企業理念に基づき、当社グループの事業活動・成長を通じて、お客様や全てのステークホルダーの発展、ひいては持続可能な社会の実現に貢献していきたいと考えております。
当社では、取締役会は、迅速かつ的確な意思決定機関として、取締役会規程に則り、経営の基本方針や法令で定められた事項、その他経営に関する重要事項を決定しております。毎月1回厳正に開催している他、緊急な意思決定を要する事項については、適宜臨時でも開催しております。また、経営全般に関して迅速な意思決定と柔軟な組織対応を目的に、取締役及び執行役員が出席する経営会議も月1回開催しております。
サステナビリティに関する重要事項(E・S・Gに係る取組)についても、取締役会や経営会議で迅速かつ的確に審議・決議しております。
また、透明性の高い経営の実現と企業価値の継続的な向上に向けて、コーポレート・ガバナンスの充実を経営上の重要課題と位置付け、取締役会や監査等委員会等から構成されるガバナンス体制を構築しております。詳細については「
当社は、上述した体制に基づき、グループ経営に関する様々なリスクを定期的にモニタリング・評価し、対応策を適時に検討・指示・実行しております。リスク管理の詳細については「
(2) 当社グループの企業理念
当社グループは、2022年8月に企業理念を再定義しました。創業時よりその歴史の中で受け継いできた精神や信念等を示した企業理念を大きく変えるものではなく、今後、長期的なスパンで更に成長・発展していくうえで大切にすべきことを「Purpose(存在意義)、Vision(目指す姿)、Values(価値観)」に整理したものとなります。
当社は、計測技術を主体にお客様の発展に貢献することで成長を遂げてきており、今後も計測技術を更に向上させ、お客様に貢献し続けることを喜びとし、その実現を通じて社会貢献を果たしていく。こうした思いを込め、企業理念の中核要素となるPurposeを「計測技術で社会に貢献」としております。

(3) 人的資本に関わる戦略・取組等
① 人的資本経営の考え方
企業理念の実現に向けて、当社グループは「社員」が最大の資産と考えております。企業理念のValuesに「みんなが幸せになれる企業」を掲げており、お客様や社会への貢献、並びに社員の人間的な成長を最大限サポートすることを、経営の重要課題と位置付けております。
社員が人間的に成長し、お客様への付加価値提供の礎となる幅広い知識・専門性を備えることが、当社グループの企業価値向上の源泉となるという考え方の下、社員を最大の資産とする人的資本経営を実践しております。
② 人材育成・社内環境整備に関する方針と取組状況
当社の企業理念や経営戦略に資する有能な人材を確保・育成することが、人材育成及びそのための環境整備の基本方針・目的となります。
当社では、社員がモチベーションやスキルを継続的に向上させるための企業風土や文化を醸成すると共に、環境を整備して成長機会を提供していくことが重要と考え、その実現を念頭に人的資本投資を積極的に行っております。
具体的には以下のような取組を行っております。
(a) 人事制度の見直し
当社は、2022年に人事制度を見直しました。具体的には、「社員を大切にする」「成果主義をより鮮明にする」「男女・国内外平等を実践する」「モチベーションが上がる仕組みとする」を基本方針に、外部水準を意識した給与水準への是正など処遇の改善に資する給与制度の改定や、ダイバーシティを念頭に女性や外国人社員が多様な働き方とキャリアパスを選択できるような等級制度の再構築を行いました。また、業績評価や能力評価による適正な評価、評価に見合った処遇を目的に、評価制度も見直しました。キャリア申告制度を導入し、社員が異動等に係る希望を申告できる環境も整備しました。
2024年度には、評価制度見直し後の運用状況に関して外部専門会社によるモニタリング等を通じて課題を整理し、制度の改定を進めております。当社により適した評価制度に修正することで、社員のモチベーションやエンゲージメントの向上に繋げてまいります。
(b) 処遇改善
2022年の人事制度改定に伴う給与水準の引き上げに加えて、2024年4月及び2025年4月には、マクロ環境等を踏まえ2年連続で賃上げを実施しました。また、2023年4月には退職金制度の見直しを図り、従来の退職金制度に加えて、確定拠出型年金制度を導入しました。
(c) 採用強化
成長戦略を実現するためには人材の確保は重要課題であり、新卒の定期採用に加えて、多種多様なスキルを持つ中途採用も積極的に行っております。
新卒採用では、応募者の拡大を図るべく、初任給の引き上げに加えて、当社HPの採用ページを刷新し、また学生向けに「若手社員の1日密着取材」の動画や「日本電計と計測の世界」という当社を理解しやすいコンテンツも作成しました。更に、3年生を対象とした就業体験(「1DAY仕事体験」)の内容充実化を図り、2024年度は39名に参加を頂きました(前年度10名)。こうした活動を通じて、採用入社後のミスマッチによる離職防止にも努めております。
業績や事業領域の更なる拡大を図るためには技術や経験を有する人材の確保が不可欠であることや、新卒者の採用競争激化を踏まえ、中途採用にも注力しております。中途採用ルートを拡充すると共に、外部の人材専門会社との連携を強化することで、採用強化を図っております。
こうした取組の結果、2024年度は42名(新卒7名、中途35名)を採用しました。また、2025年4月入社の新卒者は13名となります。今後も採用強化を図ってまいります。
(d) 教育体制充実
等級制度の改定に合わせて、等級定義も見直しました。従来から実施している新入社員研修や管理職研修等に加え、各等級で期待されるスキル・能力を、習得、育成するための階層別研修や職種毎の職務別研修等、体系的な研修制度の構築を図っております。2023年度には役員・部長職等を対象としたマネジメント実践スキルに関する研修等を開催し、次のマネジメント層を担う所長・部長候補者に対する研修も実施しております。
また企業理念を実践し、環境変化に柔軟に適応できる人材を育成するため、外部機関による研修のほか、内部講師による研修も充実させております。今後も個々人の能力開発を実施することにより、組織力向上を図ってまいります。
以上の取組を通じて、2024年度の社員エンゲージメントサーベイでは、総合満足度3.90(2023年度調査比+0.1点)、勤続意向4.06(同+0.03点)、と前年対比で向上させることができました。
一方で、評価制度の浸透、社員の能力開発に資する研修制度の構築、離職防止策の検討・実施、シニア人材の活用方法見直し、人事部態勢の更なる強化等、取り組むべき課題は多く残っております。今後もこうした取組の強化を通じて、社員のモチベーション・スキル向上を図り、社員のエンゲージメントを高め、当社の持続的な成長に繋げてまいります。また、人的資本経営の高度化を念頭に、経営戦略及びその遂行に向けた人材戦略の策定・見直しにも引き続き取り組んでまいります。
社員エンゲージメントサーベイ 調査結果
[実績](2022年度) 総合満足度:3.68点 勤続意向:3.89点
(2023年度) 総合満足度:3.80点 勤続意向:4.03点
(2024年度) 総合満足度:3.90点 勤続意向:4.06点
[目標](2025年度予定) 総合満足度・勤続意向共に2024年度実績を超える水準
(注)調査は「1~5」の5段階評価(平均3点)
女性管理職比率
[実績](2022年度) 0.5%
(2023年度) 0.7%
(2024年度) 0.7%
[目標](2027年度) 2.0%
参考:人的資本に関する各種指標
(注)上記計数は提出会社の数値(連結と記載する数値を除く)。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは以下のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループの営業収入における重要な部分を占める電子計測器の需要は、当社グループが製品を販売している国または地域経済の影響を受けます。従いまして、当社グループが製品を販売している主要市場である自動車業界や電機業界における景気後退及びそれに伴う需要の縮小は、設備投資計画に影響を与え、当社グループの業績や経営成績に悪影響を与えるリスクがあります。
これらのリスクを回避するため、自動車業界では自動運転に関する技術開発や安全性試験、環境試験関連の設備ニーズ、電機業界では次世代通信5Gに向けての設備ニーズやIoT等新たな技術開発に関するニーズを積極的に取り込む営業活動を展開しております。これらの取り組みにより業績悪化リスクの最小化に取り組んでおります。
当社グループで取り扱う電子計測器や環境試験機等が多く使われる、自動車業界や電機業界では、製品やその部品の生産が世界に分散しており、サプライチェーンは複雑に絡み合っております。中国への製造拠点の集中を避けるため、アセアン地域に製造拠点を新たに設置したり、移設したりする動きも見られます。米国の関税政策や世界各地での紛争等を背景に、サプライチェーンが今後も見直されることで、当社グループの業績や経営成績に影響を与えるリスクがあります。
当社グループでは、主に日系企業の海外進出に対応できるよう、中国、アセアン諸国、インド、アメリカ、ドイツ等に現地法人を設立し、ユーザーの海外生産拠点のシフトにも弾力的に対応できる販売拠点網を構築し、リスクの最小化に努めております。
新型コロナウイルス感染症拡大のようなパンデミックや、当社グループの想定を超える大規模な自然災害等が発生し、事業運営が困難になった場合、当社グループの業績と財務状況に大きな影響を与える可能性があります。
当社グループでは、本部のオフィスの分散化、時差出勤、自家用車通勤等、感染防止に向けた諸施策を実施しております。また、従業員の行動履歴の把握、異常事態発生時の対応マニュアル作成等を実施しており、こうしたリスクの回避に努めております。
電子計測器の卸売業界においても、厳しい価格競争は例外ではなく、競争の激化により当社グループが収益性を保つことができなくなる可能性があります。
ユーザーのニーズにスピ―ディーかつ的確に応え、また取扱領域の拡大を図り、付加価値の高いサービスを追求してまいります。加えて、ユーザーの幅広いニーズを踏まえ、粗利益率の比較的高い海外製品の取り扱い拡充や、専門性を必要とするビジネスの強化等に取り組むことで収益性を確保しております。
当社グループは、東アジアでは中国を中心に積極的に拠点を設立している他、アセアン地域では、一国2拠点を目標に駐在所や現地法人を設立し、事業を展開しておりますが、現地の法的規制、慣習、国際情勢の変化等に起因する予測不能な事態が発生したような場合、当社グループの業績と財務状況に影響が及ぶ可能性があります。
現地での税務コンサルタント、監査法人、弁護士事務所からの情報収集に努めており、現地の法的規制、慣習、国際情勢の変化等に起因する予測不能な事態が発生した場合に速やかに対応できる体制の構築に努めております。
当社グループの海外での事業展開に伴い、日本から商品を輸出する取引が中心となります。売掛金や入金が米ドル建てとなる場合が多く、円と米ドルの為替の急激な変動によっては売掛金の評価を含め、為替差損が発生する場合があり、当社グループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
海外との取引における為替リスクを回避するため、基幹システムを為替変動に対応できるように変更したほか、受注と売上時の適用レートの差をできるだけ少なくするため見積書の有効期間の短縮、外貨預金の運用で為替差益を確保するオペレーションの実施等を行っております。
当社グループでは、運転資金として、一定水準の有利子負債を調達しております。ゼロ金利下においては、有利子負債に伴う金利支払いが収益力に及ぼす影響は軽微でしたが、国内金融政策等を背景に金利が上昇した場合には、当社グループの財務状況に影響が生じる可能性があります。
当社グループでは、金利上昇局面を想定し、金融機関からの借入を固定金利とする等の対応を行っております。今後もこうした対応を継続すると共に、運転資金を削減するための対応策も検討してまいります。
当社グループの販売先は、大企業から中小企業まで10,000社程度に達し、また取引上そのほとんどが信用取引であります。景気の悪化等に伴い企業の倒産が増加した場合には、不良債権が発生し当社グループの業績と財務状況に悪影響を与える可能性があります。
販売先の企業情報をベースとして、各社に販売限度となる与信限度を設定し、売掛債権の徹底した管理を行っている他、大口案件については個別に回収条件や取引条件を検討しており、不良債権の発生リスクの低減に努めております。
売上管理、支払管理等をコンピュータ処理しており、1日の取引件数は、平均10,000件程度に達しております。サイバー攻撃等により、コンピュータのダウン等の異常事態が発生した場合に、営業活動を停止せざるを得ないリスクがあります。これらの事態は、当社グループの業績や経営成績に影響を与えるリスクがあります。
社内のサーバによるデータ管理をやめ、大手システムインテグレーターのデータセンターに移行し、地震や洪水等の自然災害からコンピュータシステムの保護を強化するとともに、毎日のデータのバックアップを行っております。このように、停電や突然の障害並びにサイバー攻撃に備えるシステム構築等の対策を講じて、コンピュータ関連の異常事態発生によるリスクの回避、軽減に努めております。
(10) 法的規制等の強化
外国為替令及び輸出貿易管理令等により、輸出管理規制が強化されております。当社グループにおいても、取引先の海外進出等を背景に計測機器類の輸出も増加する傾向にあります。米中貿易摩擦が激しくなる中で、輸出できる製品や相手先が急遽限定されるなど、日本政府による法令も非定期で変更されます。法令違反が発生すれば、貿易業務に支障が生じ、当社グループの業績と財務状況に悪影響を与える可能性があります。
外国為替令及び輸出貿易管理令等による輸出管理規制の強化に対応するため、貿易管理室の人員の増加とレベルアップを図っております。また、貿易実務に直接従事する社員の教育にも力を入れており、輸出管理規制に速やかに且つ正確に対応できる体制を構築しております。
(11) 有能な人材の確保及び人材育成
当社グループの将来の成長と成功は、ユーザー企業のエンジニアや購買担当者などキーマンのニーズに的確に対応できる幅広い商品知識と情報収集力を持った営業担当者の確保・育成に依存する部分が大きく、その確保・育成ができなかった場合、当社グループの業績と財務状況及び将来の成長に影響が及ぶ可能性があります。また、優れた営業ノウハウを持った人材を確保することは、採用コストと人件費を増大させる可能性があり、既存従業員の育成では、研修コストを増大させる可能性があります。加えて、人材の確保や社員のモチベーション向上に向けては賃上げ等の処遇改善も必要であり、これにより人件費が増加する可能性があります。これらのコストの増加に関しては、当社グループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、コスト増加の可能性はあるものの、中長期的な企業成長を見据えて、新卒の定期採用に加えて、営業所の人材ニーズに適応した多種多彩な人材の中途採用を積極的に進めており、女性の営業部門への登用も進めております。また、ユーザー企業のエンジニアのニーズに対応できる人材を確保することも重要な取組となります。既存の従業員のスキルアップも重要であり、社員教育の充実を図っております。加えて、賃金制度や勤務体制等、処遇改善・働き方改革に資する取組も積極的に進めて、魅力ある職場づくりに努めております。
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は以下のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における経営環境に関しては、景気は緩やかな回復傾向にあるものの、回復の勢いは鈍い状況となりました。物価高や人手不足、中国・欧州の経済停滞、ウクライナ・中東情勢を背景とする地政学リスクの高まりに加えて、米国の関税政策による世界経済の減速懸念等、先行きの不確実性が高まっております。
当社グループが属する電子計測器、電源機器、環境試験機器等の業界におきましては、人手不足を背景とする自動化・省力化を企図した設備投資や成長分野への研究開発投資が底堅く推移する中、当社の主要ユーザーである自動車業界では、EVや燃料電池等の次世代自動車やADAS・自動運転の技術開発には引き続き積極的な投資が見込まれております。また電子・電機業界では、様々な分野で電子化・デジタル化の流れが加速しており、5Gに関連する社会インフラの整備や、IoT等の投資の拡大が期待されております。前期は設備投資予算の執行にやや慎重な姿勢がみられ当社受注にも一部影響しましたが、当期は設備投資・研究開発投資が底堅く、受注が大きく伸長しました。
当社グループでは、2030年を見据えた成長戦略「INNOVATION2030」の第2期として、2024年5月に新たな中期経営計画「INNOVATION2030 Ver.2.0」を公表し、これまでに構築してきた基盤を礎に更なる進化を図っております。具体的には、電子計測器を主体とするコアビジネスの安定成長、お客様へのシステム提案力の強化、成長市場への事業領域の拡大、サプライチェーンの変革を捕捉するグローバルビジネスの拡充等を推進しております。また、社員を最大の資産と考える経営方針に基づき、当社の企業理念・経営戦略に資する人材の確保、並びに社員のスキルやモチベーション向上等、人的資本投資を積極的に行っております。システム関連投資等も継続し、中長期的な企業価値向上を見据えて経営基盤の強化も進めております。
この結果、個別の売上高は100,343百万円(前年同期比12.3%増)と、期初時点では受注残高が前年比マイナスでありましたが、受注高を拡大したことにより増収となりました。また、粗利益率は前年同期比0.2%低下しましたが、売上総利益は前年同期比1,115百万円増加しました。将来に向けて人的資本投資・事業投資・システム関連投資等を積極的に実施したことにより販管費は増加しましたが、営業利益は3,834百万円(前年同期比421百万円増)となりました。また為替差損を74百万円計上し(前年同期は為替差益273百万円)、経常利益は4,276百万円(前年同期比357百万円増)となりました。国内子会社では、校正サービスを請負うユウアイ電子株式会社は業績堅調に推移し、その他の子会社も概ね利益を確保しました。海外子会社では、中国は、景気減速の影響が残るものの受注強化等により、増収増益となりました。またその他地域は、韓国やベトナムが好調に推移した一方で、米国においては前期の大型案件の寄与が無くなり、増収減益となりました。
以上の結果、当連結会計年度の売上高は121,235百万円(前年同期比11.7%増)となりました。営業利益は4,738百万円(前年同期比306百万円増)、経常利益は4,734百万円(前年同期比75百万円減)、親会社株主に帰属する当期純利益は2,973百万円(前年同期比25百万円増)となりました。
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ8,092百万円増加し、74,155百万円となりました。
当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ5,591百万円増加し、43,456百万円となりました。
当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ2,500百万円増加し、30,699百万円となりました。
セグメントの業績は、セグメント間の内部取引も含めて次のとおりであります。
なお、セグメント利益は営業利益ベースによる金額であります。
日本では、景気は緩やかな回復傾向にあるものの、回復の勢いは鈍い状況となりました。当社グループが属する電子計測器、電源機器、環境試験機器等の業界におきましては、人手不足を背景とする自動化・省力化を企図した設備投資や成長分野への研究開発投資が底堅く推移する中、当社の主要ユーザーである自動車業界では、EVや燃料電池等の次世代自動車やADAS・自動運転の技術開発には引き続き積極的な投資が見込まれております。また電子・電機業界では、様々な分野で電子化・デジタル化の流れが加速しており、5Gに関連する社会インフラの整備や、IoT等の投資の拡大が期待されております。前期は設備投資予算の執行にやや慎重な姿勢がみられ当社受注にも一部影響しましたが、当期は設備投資・研究開発投資が底堅く、受注が大きく伸長しました。当社グループでは、新たな中期経営計画「INNOVATION2030 Ver.2.0」に基づき、これまでに構築してきた基盤を礎に更なる進化を図っております。
その結果、期初時点では受注残高が前年を下回っていたものの、受注高の拡大により、売上高は101,946百万円(前年同期比13.0%増)となり、セグメント利益は6,201百万円(前年同期は5,480百万円)となりました。
中国では、販売子会社である電計貿易(上海)有限公司等は、景気減速の影響が残るものの受注強化等により底堅い収益を確保しました。一方、受託試験場を運営する電計科技研発(上海)股份有限公司の業績は苦戦しました。
その結果、売上高は17,284百万円(前年同期比6.2%増)となり、セグメント利益は192百万円(前年同期は185百万円)となりました。
その他地域では、韓国やベトナムの販売子会社は業績が好調に推移しました。また、インドの販売子会社は収益が低迷しましたが、受注・売上高は改善傾向にあります。一方、米国の販売子会社は前期の大型案件の寄与が無くなり苦戦しました。
その結果、売上高は7,861百万円(前年同期比5.0%増)となり、セグメント利益は465百万円(前年同期は632百万円)となりました。
海外売上高
前連結会計年度(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)
(注) 1 海外売上高における国又は地域は、販売先(市場)を基準としているため、当社及び連結子会社の日本以外の国又は地域における売上高であります。
2 「その他」の区分に属する主な国又は地域
その他・・・タイ、シンガポール、ベトナム、マレーシア、韓国、台湾、インドネシア、フィリピン、
インド、アメリカ、ドイツ
当連結会計年度(自 2024年4月1日 至 2025年3月31日)
(注) 1 海外売上高における国又は地域は、販売先(市場)を基準としているため、当社及び連結子会社の日本以外の国又は地域における売上高であります。
2 「その他」の区分に属する主な国又は地域
その他・・・タイ、シンガポール、ベトナム、マレーシア、韓国、台湾、インドネシア、フィリピン、
インド、アメリカ、ドイツ
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べて2,289百万円増加し、9,900百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは251百万円の収入(前年同期は3,604百万円の収入)となりました。これは主として、売上債権の増加額5,852百万円を、税金等調整前当期純利益4,741百万円、減価償却費653百万円、仕入債務の増加額643百万円が上回ったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは309百万円の収入(前年同期は764百万円の支出)となりました。これは主として、定期預金の預入による支出103百万円、有形固定資産の取得による支出284百万円を、有形固定資産の売却による収入711百万円が上回ったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは1,508百万円の収入(前年同期は3,542百万円の支出)となりました。これは主として、長期借入金の返済による支出3,011百万円、配当金の支払額970百万円を、短期借入金の増加額3,583百万円、長期借入れによる収入2,300百万円が上回ったことによるものであります。
③ 生産、受注及び販売の実績
当連結会計年度における仕入実績をセグメントごとに示すと次のとおりであります。
(注) 金額は、仕入価格によっており、セグメント間の取引については消去前の数値によっております。
当連結会計年度における受注実績は、次のとおりであります。
(注) 金額は、販売価格によっております。
(c) 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと次のとおりであります。
(注) 金額は、販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。
この連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
(資産)
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べて8,092百万円増加し、74,155百万円となりました。
流動資産は、前連結会計年度末に比べて9,009百万円増加し、65,661百万円となりました。現金及び預金が2,358百万円、受取手形及び売掛金が5,948百万円増加したこと等によるものであります。
固定資産は、前連結会計年度末に比べて916百万円減少し、8,494百万円となりました。有形固定資産が合計で906百万円減少したこと等によるものであります。
(負債)
流動負債は、前連結会計年度末に比べて4,288百万円増加し、40,305百万円となりました。短期借入金が1,333百万円、その他に含まれている契約負債が1,480百万円増加したこと等によるものであります。
固定負債は、前連結会計年度末に比べて1,302百万円増加し、3,150百万円となりました。長期借入金が1,362百万円増加したこと等によるものであります。
(純資産)
純資産は、前連結会計年度末に比べて2,500百万円増加し、30,699百万円となりました。利益剰余金が配当金の支払により971百万円減少いたしましたが、親会社株主に帰属する当期純利益が2,973百万円計上したことにより、利益剰余金が2,000百万円、為替換算調整勘定が641百万円増加したこと等によるものであります。
(b) 経営成績の分析
(売上高)
当連結会計年度における売上高は121,235百万円となり、前連結会計年度に比べ12,695百万円増加(前連結会計年度比11.7%増)となりました。
(売上総利益)
当連結会計年度における売上総利益では、売上高の増加により、16,934百万円となりました。前連結会計年度に比べ1,469百万円増加(前連結会計年度比9.5%増)となりました。
(販売費及び一般管理費、営業利益)
当連結会計年度における販売費及び一般管理費は12,196百万円となり、前連結会計年度に比べて1,162百万円増加(前連結会計年度比10.5%増)となりました。
この結果、営業利益は4,738百万円(前連結会計年度比6.9%増)となりました。
(営業外収益、営業外費用、経常利益)
当連結会計年度における営業外収益は、262百万円(前連結会計年度は、491百万円)となりました。主な要因は、受取利息及び受取配当金等によるものであります。営業外費用は、265百万円(前連結会計年度は、112百万円)となりました。主な要因は、支払利息等によるものであります。
この結果、経常利益は4,734百万円(前連結会計年度比1.6%減)となりました。
(特別利益、特別損失、税金等調整前当期純利益)
当連結会計年度における特別利益は、227百万円(前連結会計年度は、68百万円)となりました。主な要因は、固定資産売却益等によるものであります。特別損失は、220百万円(前連結会計年度は、11百万円)となりました。主な要因は、減損損失等によるものであります。
この結果、税金等調整前当期純利益は、4,741百万円(前連結会計年度比2.6%減)となりました。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
以上の結果、当連結会計年度における税金等調整前当期純利益から法人税、住民税及び事業税、法人税等調整額を差引いた当期純利益は、3,004百万円(前連結会計年度比2.3%増)となり、親会社株主に帰属する当期純利益は、2,973百万円(前連結会計年度比0.9%増)となりました。
キャッシュ・フローの分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社グループの資金需要は、営業費用である債権及び債務に対するものが主なものとなっており、これらの資金需要については、自己資金、金融機関からの借入金により資金を調達しております。
資金の流動性については、現金及び現金同等物に加え、取引銀行との間で当座貸越契約を締結しており、事業活動のために必要な資金の確保と流動性を維持しております。
当社は、株価・PBR(株価純資産倍率)や資本収益性を意識した経営の実践を通じて、中長期的な企業価値の向上を目指しております。PBRの改善や資本効率経営の実現に向けて、ROE(自己資本当期純利益率)を経営上の重要指標と位置付けております。中期経営計画においてもROE10%以上の安定的な確保を目標に掲げて、収益性の向上、資本の効率化、積極的な株主還元等により、その向上に取り組んでおります。
ROEを向上させる手段としては、①売上総利益率の向上、②総資産回転率の向上、③財務レバレッジの向上が考えられます。
① 売上総利益率の向上
当連結会計年度の売上総利益率は13.97%となり、大きく上昇した前期14.25%からは小幅ながら低下しましたが、前々期13.16%と比較しても高水準を確保しております。粗利率の高い製品の売上に注力すると共に、システム提案も強化し、引き続き、付加価値向上に取り組んでおります。
② 総資産回転率の向上
当連結会計年度では、成長市場への積極的な取り組み等を進めてきた結果、売上高は121,235百万円、前年同期比11.7%の増加となりました。事業規模の拡大に伴い総資産も増加しましたが、総資産回転率はほぼ前期比同水準となりました。
③ 財務レバレッジ(自己資本比率の逆数)の向上
財務レバレッジを向上させるための手段としては、負債を増加させることや株主への配当を増加させることが考えられます。
当連結会計年度では、配当は、中間40円、期末47円、年間配当87円、前期比7円の増配となる見込みであります。業績が堅調に推移していること等を踏まえて、期末配当を期初時点の予想42円から5円増配する等、引き続き積極的に株主還元を実施しております。
以上の結果、当連結会計年度のROEは10.4%と、前期11.2%からは低下しましたが、期初に掲げた計画を実現し、中期経営計画で掲げる目標10%以上も上回りました。今後も、ROE10%以上の安定的、持続的な確保を目指してまいります。
該当事項はありません。
該当事項はありません。