第2 【事業の状況】

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1)会社の経営の基本方針

当社グループは、三方一両得の精神に基づき、「異色ある価値を提供し、世界をリードするお客様のモノづくりを支えること」を当社の存在目的として、「社員の存在を強みとする、ユニークで地域に根差したグローバル企業」への変革に挑戦し、中長期的な企業価値の向上と持続可能な社会の実現に努めていくことを経営方針としております。

 

(2)目標とする経営指標

当社グループは、2024年3月期を初年度とした3ヵ年の「中期経営計画2025」において、本業の利益である「連結営業利益3ヵ年累計57.3億円」と、株主資本効率を示す「連結株主資本利益率(ROE)3ヵ年平均10.0%以上」を定量目標として定め、加えて、当社グループにとって大台となる営業利益20億円/年の達成を最終年度にあたる2026年3月期の目標に掲げ、各実行施策に取組んでおります。

なお、当該定量目標に対する結果は、次のとおりであります。

「中期経営計画2025」の定量目標

2024年3月期実績

2025年3月期実績

進捗率

3ヵ年累計営業利益

57.3億円

19.1億円

19.7億円

67.9%

3ヵ年平均ROE

10.0%以上

10.7%

8.9%

 

 

(3)中長期的な会社の経営戦略

当社グループは、2024年11月5日にお知らせしました「長期経営目標2031」のとおり、長期ビジョン(目指していく姿)として、「“異色ある価値”の創造で、お客様のものづくりの進化と持続可能な社会の実現を支えるエッセンシャル・カンパニーへ!」を定め、その実現に向けて「1.メーカー事業の売上高構成比の拡大」「2.Ecoプロダクツ事業(新セグメント)の立ち上げ及び拡大」「3.財務規律の見直しによる積極的な成長投資の実行」の視点を「中期経営計画2025」の実行施策に加え、取組んでおります。

また、「中期経営計画2025(2024年3月25日改定、2025年5月13日更新)」において、現行事業の機能強化、新事業の基盤づくり、R&D、能力増強・自動化、並びに人的資本への成長投資の計画枠の金額を30億円から60億円+αに倍増し、資本コストを上回るリターンの獲得を長期目標に置いて、成長投資の各取組みを進めております。

 

 

(4)会社の対処すべき課題

① 足元における「対処すべき課題」

「中期経営計画2025」の2期目である2025年3月期の連結業績は、当社グループを支えていただいたすべてのステークホルダーの皆様のお陰をもちまして、2024年5月15日にお知らせしました連結業績予想値をすべての項目において上回ることができました。

「中期経営計画2025」の最終年度となる2026年3月期が既にスタートしておりますが、米国の関税政策の影響を見通すことが難しいことに加えて、①エレクトロニクスにおけるスマートフォン関連部材の回復見通しが不透明なこと、②モビリティにおけるアセアン及び中国市場の落ち込みが継続すること、③医療・精密機器におけるプリンター関連部品の落ち込みが継続すること、という3つの懸念要素がある中で、これらの影響を最小限にする活動に加え、これまで種を蒔いてきた活動の芽をしっかりと育て、刈り取ることが「対処すべき課題」と捉えております。

これらの活動に継続して取組み、2026年3月期は、当社グループにとって大台となる連結営業利益20億円の定量目標を達成し、連結営業利益3ヵ年累計目標57.3億円の達成と、ROE3ヵ年平均10.0%以上の確保を目指してまいります。

 

② 中長期視点をもって「対処すべき課題」

2024年11月5日にお知らせした「長期経営目標2031」に掲げた長期ビジョン(「異色ある価値」の創造で、お客様のものづくりの進化と持続可能な社会の実現を支えるエッセンシャル・カンパニーへ!)の実現に向けて、①メーカー事業の売上高構成比を現状の1/2から2/3超へ拡大を図ること、②Ecoプロダクツ事業(新セグメント)の立ち上げ及び拡大を図ることが、中長期視点をもって「対処すべき課題」となります。「この対処すべき課題」を解決するためにも、見直しをした財務規律に基づいた成長投資を積極的に実行していき、中長期的な企業価値の向上を目指してまいります。

 

「中期経営計画2025」及び「長期経営目標2031」の詳細は、当社ウェブサイトに掲載しておりますので、ご高覧ください。

https://www.nip.co.jp/ir/.assets/cyukei2025.pdf

https://www.nip.co.jp/ir/.assets/vision2031.pdf

 

③ その他/継続して「対処すべき課題」

「サステナビリティ委員会」によって洗い直したE、S、Gに関する「リスクと機会」を回避、許容又は獲得に資する具体的な活動をやり切ることが「対処すべき課題」となります。

 

<E:地球環境の保護>

「気候変動への対応の指標と目標」として「2051年3月期までのカーボンニュートラル(CO2排出量実質ゼロ)を長期目標におき、これを実現するためのステップとして「2031年3月期時点のCO2排出量を25%以上削減(2022年3月期比)すること」を中期目標に置くとともに更なる削減を目指して取組んでおります。

 

<S:社会との調和と貢献>

人的資本の強化・多様性の実現に向けて、「異色ある価値を創造できる人材の育成」「社員が安心・安全に働くことができる環境づくり」「誰もが活躍できる環境づくり」の実現に向けた各施策に取組んでおります。

 

<G:コンプライアンスの遵守>

「コンプライアンス遵守」を最重要マテリアリティに特定し、コンプライアンス啓発活動の継続と監査、監督を行っております。

 

なお、サステナビリティに関する具体的な取組みは、当社ウェブサイトに掲載しておりますので、ご高覧ください。

https://www.nip.co.jp/esg/.assets/esg_torikumi.pdf

 

当社グループは、これらの「対処すべき課題」に実直に取組むことで企業価値向上に努めてまいります。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日時点において当社グループが判断したものであります。

当社グループは、「新しい価値の創造を通じて、会社の繁栄と社員の幸福増進の一致を計り、社会の恩恵に報いることを使命とする」という“経営理念”と、良き企業市民として遵守すべき“コンプライアンス宣言・行動憲章”の下に、サステナビリティ方針を定め、事業活動を通じて、これに取組むことにより、中長期的な企業価値の向上とSDGsに沿った持続可能な社会の実現に努めてまいります。

 

(1)ガバナンス

当社グループは、「サステナビリティ方針」に基づく中長期的な企業価値の向上と持続可能な社会の実現に向けた取組みを推進するための枠組みとして、代表取締役社長を委員長とする「サステナビリティ委員会」を設置し、マテリアリティの特定・見直し及び特定したマテリアリティへの取組みに対するレビューを行い、サステナビリティの推進を図っております。

なお、特定した各マテリアリティを維持・向上させる具体的な取組みは分科会が推進し、半年ごとに同委員会に活動結果を報告しております。また、取締役会は年1回開催するマネジメントレビューを通じて本委員会及び分科会の活動を監督しております。

なお、2025年3月期の「サステナビリティ委員会」における各分科会の活動レビューにおいては、男性従業員の育児休業取得率目標の上方修正等の7つの改善事項を決定し、次年度の計画に反映いたしました。

 


 

(2)リスク管理

当社グループは、「サステナビリティ委員会」にて、当社の社会・環境問題をはじめとするサステナビリティを巡る諸課題を把握し、これらの諸課題が当社のステークホルダー・社会及び当社の経営・事業に与える影響を1次評価した上でマテリアリティを特定し、また、特定したマテリアリティに関する2次評価として、それぞれに対する「リスクと機会」を特定し、当社のマテリアリティの維持・向上に必要となる具体的な取組みを決定します。

また、マテリアリティの特定、見直し及び維持・向上に関する各プロセスを当社グループが別に定める「リスク管理基本規程」に基づく「リスク管理体制」と統合させることで、効率的で実効的な管理体制の実現を図ります。

 

 

(3)戦略

① 特定したマテリアリティ

当社グループは、社会の公器である企業にとって「コンプライアンスの遵守」が最も重要な取組みであるという認識の下、これに加え、社会・環境問題をはじめとするサステナビリティを巡る課題への取組みとして当社のマテリアリティを特定し、これらを事業戦略に組み込むことによって、「異色ある価値創造」を通じた中長期的な企業価値の向上と持続可能な社会の実現に努めてまいります。

 


 

② リスク及び機会の評価

当社グループは、特定したマテリアリティに関する「リスクと機会」を洗い出し、それぞれに策定した対応策に沿った取組みを推進することで、中長期的な企業価値の向上と持続可能な社会の実現に努めてまいります。

 


 

 

(4)指標及び目標

① 気候変動への取組み

当社グループは、全世界における課題でもある「地球環境の保護」をマテリアリティのひとつとして特定しており、その課題に取組むことは企業の責任であると認識しております。その中でも、気候変動への具体的な取組みは急務であると考え、2022年12月にTCFD提言への賛同を表明し、気候変動分科会にて、気候変動が事業にもたらすリスクと機会及び対応策について、同提言に沿った情報開示を行っております。

 

<CO2排出量の削減目標>

2051年3月期までのカーボンニュートラル(CO2排出量実質ゼロ)を長期目標に置き、これを実現するためのステップとして、「2031年3月期時点のCO2排出量を25%以上削減(2022年3月期比)すること」を中期目標に置くとともに、更なる削減を目指してまいります。

※「SCOPE1/2」を対象とした目標となります。

※「SCOPE3」につきましては、実務において管理可能な対象範囲と算定方法を決定した上で情報開示ができる準備が整いましたら、お知らせいたします。なお、当社はGHGの中でも最も温暖化に影響を及ぼす「CO2の排出量」を削減の対象としています。

指標

2025年3月期実績

2031年3月期目標

2051年3月期目標

CO2排出量の削減
(2022年3月期比)

±0%

25%以上削減

カーボンニュートラル

(実質ゼロ)

 

 

<取組み内容>

・外部調達エネルギーによる削減

工場で使用する電力の一部をクリーンエネルギーに切り替えることで、CO2排出量の削減と動力費の削減を目的として、当社稲沢事業所及びマレーシア工場に続き、2025年5月にバンコク工場に自家消費型太陽光発電システムを設置いたしました。今後も持続可能な社会の実現に向けて、他のグループ拠点への設置検討を計画的に進め、環境負荷の低減に向けて取組んでまいります。

・自社の生産活動に伴うCO2排出量削減

生産活動及び工場設備の徹底的な省エネルギー化を図るための現場改善の取組みと、省エネ設備の導入及び既存設備の入替え等を計画的に進めております。

 

② 人的資本の強化・多様性の実現に向けた取組み

当社グループにとって、テクニカルイノベーターたる従業員は競争優位の源泉であり、従業員の存在こそが当社の強みと言えます。多様な視点を持つ従業員の一人ひとりの活躍と従業員間の共生・協働を通じた「異色ある価値創造」を継続的に実践していくためにも、これまで以上に、人的資本の強化及び多様性の実現に向けた取組みに注力してまいります。

なお、人的資本に係る指標等につきましては、当社を対象としております。

 

<人材育成に関する方針>

「異色ある価値創造」を継続的に実践していくためにも、従業員がそれぞれの専門性を磨き続けることだけでなく、従業員がお互いの価値観や考え方を尊重し、戦略思考に基づく「1+1=3」のアイディアと挑戦を導き出すことを支援する等、従業員のワークエンゲージメントを高め、活躍できる職場環境づくりに努めてまいります。

 

<多様な従業員が活躍できる職場環境整備に関する方針>

従業員が安心・安全に働くことができる環境が「異色ある価値創造」を継続的に実践していくための基本条件であると考え、人事諸制度の導入及び見直しと、働き方改革に基づく働きやすい職場環境づくりに努めてまいります。また、多角的な視点、すなわちジェンダーや国際性の面を含む多様な個性が、ポジション・キャリア・年齢等に関係なく議論できる環境が「異色ある価値創造」を継続的に実践していくための基本条件であると考え、人材の多様化に向けた人事諸制度の導入・見直しと、誰もが活躍できる職場環境づくりに努めてまいります。

(人材育成体系)

 


<目標と取組み内容>

a.異色ある価値を創造できる人材の育成

■従業員研修の充実

指標

2025年3月期実績

2026年3月期目標

階層別研修の受講率

91.0

100

管理職者研修の受講率

98.0

100

 

(取組み内容)

・階層別の人材育成

中長期的な視点をもって、技術力と戦略思考を兼ね備えたテクニカルイノベーターを育成すべく、「教え、教わり、共に育つ」をコンセプトとした相互学習型の階層別研修を実施しております。

・管理職候補者の育成

組織の目標達成力の向上を目的とし、管理職者及び管理職候補者を対象としたマネジメント力の強化に向けて、育成体系に沿った研修を実施しております。

・職種別研修の充実

各専門分野で必要とされる知識・スキルの修得に向けた研修を事業部別に行い、職務を通して人材が育つ体制づくりに努めております。

 

b.従業員が安心・安全に働くことができる職場環境づくり

■育児休業取得の促進

指標

2025年3月期実績

2026年3月期目標

男性従業員

71.4

80%以上(注)

女性従業員

100

100

 

(注) これまでの実績を踏まえて、2025年5月に目標を15%以上から80%以上へ修正いたしました。

(取組み内容)

従業員が、出産・育児等を理由に希望した休業を不安なく取得することができ、かつ、円滑に職場復帰ができる制度構築と職場環境づくりに努めております。

■メンタルヘルス及び従業員満足度の向上

指標

2025年3月期実績

2026年3月期目標

ストレスチェック指数(注1)

97

94

従業員満足度指数(注2)

63.2

65%以上

高ストレス者の割合(注3)

19.5

10%未満

離職率(注4)

4.3

5%未満

 

(注)1 ストレスチェック指数:ストレスチェックによる「総合健康リスク」の指数

総合健康リスク:厚生労働省が定める従業員に疾病休業が起こるリスクを示す指数

2 従業員満足度指数:ストレスチェックによる「仕事の満足度」の指数(仕事に「満足」「やや満足」の割合)

3 高ストレス者の割合:ストレスチェックによる「高ストレスと判断された従業員」の割合

4 離職率:正社員の離職率(定年退職、会社都合退職を除く)

(取組み内容)

従業員の心の健康が、従業員とその家族の幸福な生活と活力ある職場の実現の基本条件であると認識し、精神疾患のみでなく、職場内コミュニケーションの活性化施策を講じる等、心の健康づくりに努めております。

 

c.誰もが活躍できる環境づくり

■中核人材における多様性の確保

・多面的な視点が組織の実効性を高めるものと考え、管理職及び管理職候補者である総合職・専門職及び係長級にある従業員に占める女性従業員の比率向上を目指しております。

指標

2025年3月期実績

2026年3月期目標

総合職・専門職に占める
女性従業員の比率(管理職を含まず)

10.0

15

係長級にある従業員に占める女性従業員の比率(一般職を含む)

36.4

40

 

(取組み内容)

・管理職及び管理職候補者に占める女性従業員の比率向上

従業員が、家事や育児と仕事を両立し、ライフプランに応じた働き方を選択しつつも自身のマネジメント能力や専門能力を発揮できる、キャリアパスの構築を目的とした「居住地限定制度」の導入により、居住地を限定した働き方を選択できる環境づくりに努めております。

 

 

・誰もが挑戦し、成功体験を得る事が出来る仕組みづくり

職群や専門性の枠に縛られることなく、希望する誰もが新しい取組みに挑戦し、成功体験を得ることができる仕組みづくり及び多面的な視点で議論をすることで生まれる「1+1=3」を実感するための機会提供として、「公募型社内プロジェクト組成制度」、「社内複業制度」及び「社内インターン制度」を導入しております。これらの取組みに対する具体的な活動(トピックス)につきましては、当社ウェブサイトをご高覧ください。(https://www.nip.co.jp/esg/.assets/esg_torikumi.pdf

 

 

3 【事業等のリスク】

当社グループの事業等を運営する上でリスクとなる可能性があると考えられる主な事項を以下に記載しております。また、必ずしもそのようなリスクに該当しない事項でも、投資判断、あるいは当社グループの事業活動を理解する上で重要と考えられる事項について、投資者に対する積極的な情報開示の観点から記載しております。

なお、本項の文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
 

(1)品質保証に関わるリスクについて

当社グループは、品質不良によるリスクを最小限に抑えるべく、品質管理体制の強化に努め、品質管理には万全を期しておりますが、当社グループの商品・製品に販売後の不具合が発生した場合、当該不具合の内容によっては、販売先で発生したリコール費用等について応分の賠償請求を受ける可能性があり、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

当該リスクへの対応として、各事業本部の品質保証部が主管部署となり、商品・製品特性及び取引上の契約等を踏まえた品質マネジメントシステムの運用及び内部品質監査活動を進めており、さらには、品質保証統括部によるそれらの監督によって、全社的な品質マネジメントシステムの継続的な改善に取組んでおります。

 

(2)情報漏洩に関わるリスクについて

当社グループは、情報セキュリティ基本方針の下、企業秘密管理規程、個人情報管理規程等の情報管理規定を定めるとともに、内外の通報窓口を設け、万一、情報が漏洩、紛失した場合のフローを策定し、被害の拡大を最小限に留める施策を講じておりますが、当社グループが保有する取引先の機密情報の漏洩により取引先に損害を与えた場合は、取引の停止や応分の賠償請求を受ける可能性があり、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

当該リスクへの対応として、機密情報となる資料やデータレスPC以外の持出しを原則として禁止し、また、外部メモリー等へのアクセス制限や電子メールによる添付ファイル等の送受信にも一定のルールとソフトウエアによる対策を講じ、情報の漏洩につながるリスクの低減と監視の強化に取組んでおります。

 

(3)サイバー攻撃に関わるリスクについて

情報システム・情報インフラ等は、当社グループの経営及び事業活動の運営に欠かせないリソース基盤であることから、第三者によるサイバー攻撃等によって当社グループの情報システム・情報インフラ等の使用が制限又は停止させられた場合は、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

当該リスクへの対応として、専門事業者の指導に基づき、システムの脆弱性を解消した上で、パスワードロック等の運用の変更、サイバー攻撃の兆候を即座に検知・対処するソフトウエアの導入等の情報セキュリティの強化に取組んでおります。

 

(4)サプライチェーンの変更に関わるリスクについて

当社グループは、株式会社レゾナックをはじめ複数のパートナー企業と特約店契約等を締結し、製品の販売をしておりますが、パートナー企業の事業方針の変更や顧客の調達方針の変更により、サプライチェーンの変更が生じた場合は、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

当該リスクへの対応として、パートナー企業との連携の強化を図りつつ、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)中長期的な会社の経営戦略」に掲げた活動を通じて、サプライチェーン内における当社の付加価値を向上させることで、当該リスクを抑制してまいります。

 

(5)固定資産の減損に関わるリスクについて

当社グループが保有する固定資産に関連する事業収益性の低下等により当該固定資産の投資額の回収が見込めなくなった場合は、「固定資産の減損に係る会計基準」に基づく減損損失を計上するため、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

当該リスクへの対応として、固定資産の投資判断時における投資採算性の検証に加え、早期に予兆を把握し、対策を講じることができるよう、投資後における事業収益のモニタリングの強化に取組んでおります。

 

 

(6)自然災害等に関わるリスクについて

当社グループは、国内外に11の工場を有しております。これら工場の建物や設備が火災、地震、台風等により被災し、壊滅的な損害を被った場合は、その修復に巨額な費用を費やすとともに、生産及び出荷活動が縮小又は停止する可能性があるため、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

当該リスクへの対応として、平時の防災活動及び有事における初動から業務再開までの手順と体制等をまとめたリスク管理マニュアルを整備しており、有事において、迅速かつ実効的に活動ができるよう、平時の防災活動とリスク管理マニュアルの継続的な点検に取組んでおります。

 

(7)原材料や部材の調達に関わるリスクについて

当社グループは、国内外に11の工場を有しております。これら工場で調達しているプラスチック成形品の原材料等及び営業拠点で調達している商品及び材料が資源価格の高騰等によって値上げされ、かつ当該値上げ相当額を売価に転嫁できなかった場合、並びに原材料等の供給逼迫等によってこれを安定的に調達することができなくなった場合は、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

当該リスクへの対応として、平時から顧客、調達先及び当社との三者間における生産計画その他の情報共有に努めるとともに、顧客、調達先と連携した需給調整と在庫保有による生産活動の平準化に取組んでおります。

 

(8)法的規制に関わるリスクについて

当社グループは、日本、アセアン及び中華圏に拠点を置き、グローバルに事業を展開しており、各国の法的規制の適用を受けております。将来において現在予期し得ない各国の法的規制等が設けられ、それらを遵守できなかった場合、事業活動が制限される可能性があり、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

当該リスクへの対応として、各国の法規制に精通した専門家とも相談の上、これらの法的規制等の早期情報の入手と事前対応に取組んでおります。

 

(9)感染症に関わるリスクについて

当社グループは、日本、アセアン及び中華圏に拠点を置き、グローバルに事業を展開しております。このような事業ロケーションの中、各国において感染症の拡大等によって都市封鎖等がなされ、当社及び取引先の生産活動等が縮小又は停止した場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

当該リスクへの対応として、平時の感染予防活動及び有事におけるクラスターの防止と初動から業務再開までの手順と体制等をまとめたリスク管理マニュアルを整備しており、有事において迅速かつ実効的に活動ができるよう、リスク管理マニュアルの継続的な点検に取組んでおります。

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度における外部環境としましては、米国の政権交代に伴う政策動向、中東及びウクライナ情勢の先行き並びに、欧米を中心とした金利政策、中国における不動産市場その他の経済環境の悪化が見られ、先行きが不透明の中で推移しました。一方、我が国経済は、消費者物価指数の上昇等の影響により個人消費の持ち直しに足踏みが見られたものの、設備投資の増加や企業収益の改善等の影響により、景気全体は緩やかな回復基調が認められる中で推移しました。

このような外部環境の中、当社グループを取り巻く事業環境は、エレクトロニクスにおける生成AI関連の部材需要の拡大と、医療・精密機器における原価低減活動によるプラスの影響を受けた一方、モビリティにおいては、当第2四半期まで継続した外部環境の変化(自動車メーカーの不正問題による稼働停止、アセアン及び中国の自動車市場の落ち込み)によるマイナスの影響を受け、アセアン各工場の収益が減益する中で推移しました。

このような状況の中、当社グループは、「中期経営計画2025」の2期目にあたる当連結会計年度も「中期経営計画2025」に定めた実行施策に取組むとともに、人的資本投資の実行と新規事業・機能強化に向けた成長投資の準備を進めてまいりました。

これに加えて、タイ(コラート)工場等の事業用資産について、将来の回収可能性の評価を実施した結果、減損損失444百万円を、また、2024年12月31日をもって当社メキシコ支店を閉鎖し、これに伴う事業撤退損86百万円を計上し、事業ポートフォリオ戦略に基づく事業の入替えの準備を整えるとともに、当社グループの今後の業績見通し等を踏まえ、繰延税金資産の回収可能性を慎重に検討し、法人税等調整額(△は益)△372百万円を計上しました。

この結果、当連結会計年度の売上高は44,890百万円(前期比7.1%増)、営業利益は1,970百万円(前期比2.7%増)、経常利益は2,105百万円(前期比2.1%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は1,396百万円(前期比4.1%減)となり、すべての項目において、2024年5月15日にお知らせしました連結業績予想値を上回る結果となりました。

なお、当社グループは、2024年11月5日にお知らせしました「長期経営目標2031」のとおり、長期ビジョン(目指していく姿)として、「“異色ある価値”の創造で、お客様のものづくりの進化と持続可能な社会の実現を支えるエッセンシャル・カンパニーへ!」を定め、その実現に向けて「1.メーカー事業の売上高構成比の拡大」「2.Ecoプロダクツ事業(新セグメント)の立ち上げ及び拡大」「3.財務規律の見直しによる積極的な成長投資の実行」の視点を「中期経営計画2025」の実行施策に加え、取組んでまいることとしました。

「長期経営目標2031」の詳細につきましては、当社ウェブサイトをご高覧ください。

(https://www.nip.co.jp/ir/.assets/vision2031.pdf)

 

各セグメントの業績は、次のとおりであります。

 

エレクトロニクス

電子部品及び住宅設備の関連メーカーに対して、専門商社として、またファブレスメーカーとして、高機能材料、加工部品、治工具及び機器等を国内外で販売しております。

当セグメントの業績は、タイ(コラート)工場のドライフィルム事業の立ち上げに伴う先行費用の影響を継続して受けたものの、生成AI関連のサーバー需要拡大による配線板材料の受注が好調に推移したことに加え、沖縄工場のウエハ研磨用キャリア事業の受注が堅調に推移しました。

この結果、当連結会計年度における当セグメントの売上高は20,838百万円(前期比10.2%増)、セグメント利益は1,532百万円(前期比20.5%増)となりました。

 

 

モビリティ

自動車メーカー及び自動車部品メーカーに対して、樹脂成形品及び同組立品を核とした様々な自動車関連部品を国内外で製造・販売しております。

当セグメントの業績は、当第3四半期に外部環境(自動車メーカーの不正問題による稼働停止、アセアン及び中国市場の落ち込み)が良化し収益改善が進んだものの、ベトナム工場におけるブレーキ制御関連部品の量産に向けた準備費用(先行投資)の影響と、当第2四半期までのアセアン各工場の減益影響を受ける中で推移しました。

この結果、当連結会計年度における当セグメントの売上高は16,844百万円(前期比1.6%増)、セグメント利益は1,160百万円(前期比24.8%減)となりました。

 

医療・精密機器

医療機器メーカー、プリンターメーカー等に対して、樹脂成形品及び同組立品等を国内外で製造・販売しております。

当セグメントの業績は、タイ(コラート)工場における医療機器部品の受注が堅調に推移したことに加え、アセアン各工場で継続してきた原価低減活動の効果が、当セグメントの利益業績に寄与しました。

この結果、当連結会計年度における当セグメントの売上高は7,419百万円(前期比12.1%増)、セグメント利益は396百万円(前期比137.6%増)となりました。

 

その他

報告セグメントに含まれない事業セグメントであり、タイの国際地域統括本部におけるマネジメント業務等で構成しております。

当連結会計年度における当セグメントの売上高は215百万円(前期比7.9%増)、セグメント利益は62百万円(前期比10.8%増)となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べて547百万円の増加となり6,220百万円となりました。

 

当連結会計年度における区分ごとのキャッシュ・フローの状況は以下のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における営業活動により増加した資金は、2,768百万円(前期は3,682百万円の増加)となりました。

これは税金等調整前当期純利益により1,558百万円、減価償却費により1,540百万円増加したことなどが主な要因となっております。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における投資活動により減少した資金は、1,675百万円(前期は1,558百万円の減少)となりました。

これは有形固定資産の取得による支出により1,622百万円減少したことなどが主な要因となっております。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における財務活動により減少した資金は、1,073百万円(前期は1,644百万円の減少)となりました。

これは配当金の支払額により672百万円減少したことなどが主な要因となっております。

 

③ 生産、受注及び販売の状況

a. 生産実績

当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自  2024年4月1日

至  2025年3月31日)

(百万円)

前期比(%)

モビリティ

12,271

△0.4

医療・精密機器

5,586

14.0

合計

17,858

3.7

 

(注) 金額は、販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。

 

b. 受注実績

当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自  2024年4月1日

至  2025年3月31日)

受注高(百万円)

前期比(%)

受注残高(百万円)

前期比(%)

エレクトロニクス

20,890

9.9

1,530

8.1

モビリティ

16,723

1.0

971

1.8

医療・精密機器

7,459

13.1

433

13.2

合計

45,073

6.9

2,935

6.6

 

(注) 金額は、販売価格によっており、セグメント間取引については相殺消去しております。

 

c. 販売実績

当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自  2024年4月1日

至  2025年3月31日)

(百万円)

前期比(%)

エレクトロニクス

20,776

10.2

モビリティ

16,706

1.4

医療・精密機器

7,408

12.2

合計

44,890

7.1

 

(注) 1  セグメント間取引については相殺消去しております。

2  主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自  2023年4月1日

至  2024年3月31日)

当連結会計年度

(自  2024年4月1日

至  2025年3月31日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

株式会社デンソー

7,867

18.8

7,615

17.0

 

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

① 当連結会計年度の経営成績の分析

当連結会計年度の経営成績の分析については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」をご参照ください。

 

② 経営成績に重要な影響を与える要因について

詳細につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載しております。

 

③ 財政状態の分析

(流動資産)

流動資産は、前連結会計年度末に比べて1,006百万円増加18,759百万円となりました。これは受取手形及び売掛金(電子記録債権を含む)が616百万円、現金及び預金547百万円増加したことなどが主な要因となっております。

 

(固定資産)

固定資産は、前連結会計年度末に比べて713百万円増加13,715百万円となりました。これは投資有価証券476百万円、建物及び構築物(純額)333百万円減少したものの、建設仮勘定449百万円、機械装置及び運搬具(純額)432百万円、繰延税金資産324百万円、工具、器具及び備品(純額)135百万円増加したことなどが主な要因となっております。

 

この結果、総資産は前連結会計年度末に比べて1,719百万円増加32,475百万円となりました。

 

(流動負債)

流動負債は、前連結会計年度末に比べて337百万円減少12,220百万円となりました。これは短期借入金300百万円減少したことなどが主な要因となっております。

 

(固定負債)

固定負債は、前連結会計年度末に比べて319百万円増加3,724百万円となりました。これは繰延税金負債284百万円減少したものの、退職給付に係る負債297百万円、長期借入金153百万円、その他固定負債が63百万円増加したことなどが主な要因となっております。

 

この結果、負債合計は前連結会計年度末に比べて17百万円減少15,945百万円となりました。

 

(純資産)

純資産は、前連結会計年度末に比べて1,737百万円増加16,530百万円となりました。これは為替換算調整勘定1,370百万円、利益剰余金722百万円増加したことなどが主な要因となっております。

 

この結果、自己資本比率は前連結会計年度末より2.8ポイント増加の50.9%となりました。

 

④ キャッシュ・フローの状況の分析

キャッシュ・フローの状況の分析については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。

 

⑤ 資本の財源及び資金の流動性についての分析

当社グループは、営業活動から得られる自己資金及び金融機関からの借入を資金の源泉としております。設備投資に伴う長期的な資金需要については、金融機関からの長期借入やリース・割賦契約による調達などを活用して対応しております。運転資金など短期の資金需要については、製品製造のための原材料費や労務費及び製造経費をはじめ、販売費及び一般管理費の支払いがこれにあたり、自己資金及び短期借入を活用して対応しております。

なお、当連結会計年度末において、複数の金融機関との間で合計3,000百万円のコミットメントライン契約を締結しております(借入実行残高1,300百万円、借入未実行残高1,700百万円)。

また、当連結会計年度末における有利子負債残高は、3,215百万円と前連結会計年度末に比べ、0百万円減少しております。

 

⑥ 経営方針・経営戦略等又は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

経営方針・経営戦略等又は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(2)目標とする経営指標」に記載のとおりであります。

なお、当該定量目標に対する結果は、次のとおりであります。

「中期経営計画2025」の定量目標

2024年3月期実績

2025年3月期実績

進捗率

3ヵ年累計営業利益

57.3億円

19.1億円

19.7億円

67.9%

3ヵ年平均ROE

10.0%以上

10.7%

8.9%

 

 

⑦ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

 

5 【重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

当社グループは、事業ポートフォリオマネジメントを導入し、経営資源を投入していく主力事業と新規事業領域を定め、各事業セグメントの機能強化と新たな事業セグメントの創出に取組んでおります。

これらの主力事業と新規事業を拡大していくためには、よりお客様固有のニーズに応えた商材の開発が必要とされるため、お客様及びパートナー企業と緊密に連携しつつ、技術等に関わる機密情報の交換を図りながら、当該商材の開発を進めております。また、持続的な競争優位を創出するための取組みとして、稲沢事業所内に「研究開発センター」を開設し、当社の「新たな強み」となる優位性のある自社技術や自社製品の創出に向けた研究・開発の準備を進めるとともに、「高度な技術の壁を乗り越えて取得した全自動・半自動ラインの量産に係るコア技術のグループ企業への横展開をさらに前進させること」、「異色性のあるパートナー企業とのネットワークづくりによって、新商材開発や差別化技術を活用した自社企画製品を具体的なアウトプットとして積み重ねていくこと」等の活動を継続しております。加えて、「1.環境配慮型素材」「2.水素エネルギー」「3.CO2排出量の削減及び利用」をターゲットとした環境貢献に資する製品・商材の開発の取組みを軌道に乗せ、「Ecoプロダクツ事業」として第4の事業の柱に成長させることを目指して、新事業の基盤づくりを進めております。

当連結会計年度における当社グループが支出した研究開発費の総額は93百万円であります。このうち、各事業セグメントに直接関連しない全社開発部門の研究開発費は89百万円であります。

 

各セグメントの研究開発活動は、次のとおりであります。

エレクトロニクス

電子部品及び住宅設備業界向け製品を中心に、研究開発活動を実施しており、当連結会計年度の研究開発費は2百万円であります。

 

モビリティ

自動車業界向け製品を中心に、研究開発活動を実施しており、当連結会計年度の研究開発費は0百万円であります。