第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)会社の経営の基本方針等

 当社グループは、「創造全力、価値共有。つねに、その上をめざして。」をコーポレート・ステートメントとして設定し、お客様へ価値を提供し続ける仕組みをつくり、それを実行することにより、お客様の共感をいただき、つねに新たな可能性に向けて自らを革新し続けていくことに挑戦しております。

 具体的には、当社グループは、1992年、顧客価値と生産性の最大化を目的に、消費者を起点に小売から生産までを一気通貫させ、ロス・無駄を価値に変える「スパークス(SPARCS)」構想を発表しました。これはファッション産業において、それまで分断されていたビジネスモデルをつなぎ、在庫ロスと機会ロスを最小化すると同時に、当社グループにおいてコアとなる生産系、開発系、マーチャンダイジング系、店舗運営系のそれぞれの業務において再現性のある仕組みをプラットフォーム化することで競争優位性を高め、変化する顧客のニーズにスピーディーに応えることを意味しております。当社グループは、「スパークス(SPARCS)」モデルを日々進化させ、これまで培ったプラットフォームを梃子に、生産から販売に至るすべての業務やリアルとネットのオペレーションを情報で同時につなぐべく、IT技術で事業基盤を絶え間なくアップデートし続けております。

 そして、現在、中長期な基本方針として、「SPARCS構想」をライフスタイルやサーキュラー領域にまで拡張するとともに、プラットフォーム機能をさらに強化していくことで「ワールド・ファッション・エコシステム」の確立と進化を目指しております。また、「ワールド・ファッション・エコシステム」を当社グループ以外のお取引先様にご利用頂くことで、多様なブランド、ファッションの楽しさ、価値あるモノを、あらゆる形でお客様にお届けし、ロス・ムダのない持続可能なファッション産業の構築をめざしております。

 

(2)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標

 当社グループでは、本業の稼ぐ力を表す「コア営業利益」を最も重要視する経営指標としております。コア営業利益は、IFRSに基づく売上総利益から販売費及び一般管理費を差し引いて算出した、日本会計基準の営業利益に相当する数値であり、この持続的な向上を成長性の視点での重要指標に位置付けております。

 この他、当社グループでは、次期の中期経営計画で本格的な成長戦略を追求できるよう、価値創造的な状態を当中期経営計画「PLAN-W」で創り上げることが重要と認識しております。具体的には、「PLAN-W」において、最適資本構成の下でROEがCOEを超過する状態や、投下資本利益率(ROIC)が加重平均資本コスト(WACC)を上回る状態を目指します。このため、これまでのROA(コア営業利益ベース)に替えて、新たにROICを経営指標に設定しております。また、債務返済の能力及び事業の収益性・成長性を持続的に向上できるよう、有利子負債と株主資本の最適な資本構成を検討する目的から、従来のD/Eレシオに替えて、新たにネットD/Eレシオを財務体質の健全化指標といたしました。さらに、株主資本に対するリターンの効率性を表すROEの維持・向上にも注力しております。

 なお、現在の収益の柱であるブランド事業においては、商品(在庫)の収益性の指標として、交叉比率の分解能である「粗利益率」と「在庫回転率」の改善に取り組んでおります。また、成長性の指標としては、事業拡大に取り組んでいる非アパレル事業のコア営業利益が、当社グループ全体のコア営業利益に占める割合のほか、当社グループの持続的な成長をけん引するECチャネルでの売上高の連結売上高に対する比率も重視しております。

 

(3)中長期的な会社の経営戦略

 当社グループは、SPARCS構想を進化させ、ロス・ムダのないファッション産業世界の追求を行い、ファッションの多様性と持続性を実現し、お客様にあらゆる形でファッションの楽しさを提供し続けたいと考えております。そのために、ファッション産業の共通基盤となりうるワールド・ファッション・エコシステムの確立を目指しております。ファッションビジネスで培ったノウハウ・仕組みをさらに進化させ、多様なサービス・商品を提供してまいります。事業戦略におきましては、ブランド事業を中心としたB2C事業に加え、プラットフォーム機能をワールドグループ以外のお取引先様へ提供することで、B2B事業の拡大を進めております。ブランド事業・デジタル事業・プラットフォーム事業を中心とした事業ポートフォリオマネジメントによりグループ全体での成長性と収益性の改善を進めてまいります。

 ブランド事業においては、市場の変化に応じて、業態開発・ブランド開発を進めてまいりました。これにより百貨店、駅ビル、ファッションビル、ショッピングセンター、ECチャネルなどあらゆるチャネルにブランド展開を行うとともに、取り扱うアイテム・価格帯も市場のニーズに対応し、広範囲に展開しております。今後も市場の変化に対応したブランドポートフォリオ戦略により、ブランド事業は今後も持続的な成長に取り組んでまいります。

 デジタル事業においては、テクノロジーを駆使した他社向けのデジタルソリューションサービスを拡大することで、B2B事業を拡大しておいります。B2C事業におきましては、ユーズドセレクトショップやオフプライスストア事業の運営、大量生産から生じうる大量廃棄を回避してムダなく消費者に製品をお届けするサーキュラー事業に資源を集中して成長を加速させてまいります。

 プラットフォーム事業においては、アパレル雑貨のOEM・ODMにより商品を提供する生産プラットフォーム、店舗開発から販売代行・教育研修などのサービスを提供する販売プラットフォーム、ブランディング・空間設計・店舗デザインからVMD業務などを提供するライフスタイルプラットフォーム、経理代行業務・購買コンサルなどを行うシェアードサービスプラットフォームなど、ワールドグループが保有するプラットフォームを業界内外のお取引先様へ提供しております。さらにこの機能を強化し、お取引先様のニーズに対応した商品・サービスを開発・提供することでB2B事業を拡大してまいります。

 当社としては、ブランド事業を着実に利益成長させながら、ファッションビジネスで培った仕組み・ノウハウを生かし、デジタル事業・プラットフォーム事業など独自の多様な事業を展開していくことで、持続的な売上・利益成長を実現してまいります。

 また、次の柱となる再生投資事業・海外事業にも着手しており、次なる成長に向けた準備も進めております。

 

(4)経営環境及び対処すべき課題

 当社グループを取り巻く経営環境は、人口減少や少子高齢化の進行にともなう販売数量減少に加えて、国内アパレル市場も成熟化してプレイヤーの淘汰が進む一方、海外生産地での加工賃上昇や為替変動による仕入価格の上昇に加えて、人手不足による人件費や物流費といった経費増加も生じるなど、引き続き厳しい状況が続くことが予想されます。また、デジタル化の進展を背景として消費者の購買行動は急速に変化しており、新たなビジネスチャンスが生まれているものの、新規参入企業の誘発などを通じて異業種や外資系も巻き込んだ競争激化が継続しております。

 新型コロナウイルス感染症は消費者の生活様式や購買行動を変化させたほか、ロシア・ウクライナ情勢の緊迫による原料価格の高騰等、深刻な世界的ダメージにより、引き続き厳しい市場環境が続くことが想定されます。

 こうした国内アパレル市場や消費者の大きな変化の中で、永続的に成長を遂げ、勝ち続ける企業組織であるためには、これらの環境変化の認識のもと、更なる変革が必要であると認識しております。そして、自己変革を具現化するためにも、以下の点を対処すべき課題と認識し、解決に向けて重点的に取り組んでまいります。

 

①事業収益力の向上

 当社グループは、各事業セグメント間の密接な連携や相互の活用で一枚岩を図りつつ、それぞれのセグメントで異なる外部顧客に向けた営業活動等に取り組んでおります。

 それぞれの事業セグメントの具体的な課題や取り組みについては、以下のとおりであります。

 

(ブランド事業)

 国内外のアパレルブランド及び国内ライフスタイルブランドにおいては、強化すべきブランドと店舗への選択と集中に取り組んでまいりました。デジタル事業、プラットフォーム事業を拡大させていくためにも、ブランド事業が強靭であるということが当社グループの競争力の源泉との認識のもと、子会社各社が市場最適に向けた改善活動を行っていることに加えて、様々なテーマの改革をグループ横断で実施しています。

 成熟した市場では、過去のようなブランド開発や新規出店だけに頼った収益成長が見込めないと判断しており、また、コロナ禍での新しい価値観に対応するためにも、既存のブランドや店舗の付加価値を再構築するべく、グループに分散していたマーケティング組織を統合しマーケティング強化を進めるとともに、店頭で販売を担うドレッサーのインフルエンサー化によるSNS経由でのマーケティングを進めるなど店舗とECのシームレスなサービス提供に向けて総力を挙げて取り組んでまいります。

 これらの取り組みを通じて、既存店売上前年比については、「利益を伴わない売上は追わない」という基本方針を維持して、値引き販売を抑制しつつ、100%超を目指してまいります。この他、国内ライフスタイルブランド店舗の出店や、主に地域密着が重要な近隣商圏型ショッピングセンター(NSC)を対象に、当社グループのアパレル企画開発力とストアの運営ノウハウを最大限に活用したフランチャイズ事業の出店や、店舗での顧客体験価値向上の一環として店舗改装も進めてまいります。

 投資サブセグメントには外部より連結加入してきた会社が含まれております。事業再生が必要な場合、ブランドポートフォリオや会社規模等を総合的に勘案し、㈱ワールドインベストメントネットワーク及びその傘下の㈱W&Dインベストメントデザインのもとで、事業再生支援を行っております。これらの会社に対する事業開発の推進やその先にある収益構造の確立といった実績を積み重ね、一連の取り組みをサービスとして当社がアパレル業界へ展開していくことを目指してまいります。なお、傘下の子会社については、事業のPMI(M&A後統合プロセス)を含む改革を実行し、一定程度の収益確保が認められる場合、当該子会社の事業内容に適した事業セグメントへ移管しております。

 

(デジタル事業)

 デジタル事業では、B2BソリューションとB2Cネオエコノミーという二つの領域に分け、B2Bソリューションでは当社グループの内から外へサービスラインを展開しており、B2Cネオエコノミーでは顧客の変化に適合した新たなファッション・サービスの開発に取り組んでおります。

 B2Bソリューションにおいては、EC等における受注、梱包、発送、入金等の一連のプロセスを指すフルフィルメント、バリューチェーンをフルカバーする多様な機能群に至るファッションビジネスに必要な全ての業務領域を支えるデジタルプラットフォームの構築と提供を推進しております。当社グループのリアルな事業経験に裏打ちされたシステムは、「中小企業でも低廉なコストで利用できるサービス」をコンセプトに他社への魅力あるサービス提供も視野に入れて、全業務領域のシステム刷新に伴う開発投資を行ってまいりました。今後は、ベンダーと協業で業界の共通基盤としてのシステムや付随するOMOコマース事業のソリューションを提供するほか、プロジェクトマネジメント、業務設計等のIT・業務コンサルティング、及びデジタルマーケティング運用等の受託事業へ進化させることで収益貢献を積み上げてまいります。

 一方、B2Cネオエコノミーにおいては、顧客の変化に合わせたビジネス・シーズを増やすべく、デジタル軸で新たなサービスの開発・展開に乗り出し、当社グループに足りない技術や資源、ノウハウについて外部から獲得・補強を進めてまいりました。「所有から利用へ」、「マスからパーソナルへ」、「一方通行から双方向へ」といったキーワードに代表されるように、消費の在り方そのものが大きく変化するなか、「次世代ファッションのビジネスモデル開発で欠かせないのが『つなぎ目にあるロス』を埋める協業である」という思想に基づき、従来の大量生産・大量販売からリユース・オフプライスといった今あるモノを循環させるサーキュラー・エコノミーへと、過去における事業開発とは発想や仕様、手法から大転換していることが特徴です。今後、グローバルへの転換を図り、商品仕入を工夫することで魅力ある顧客サービスへ改善し、収益性も高めてまいります。

 

(プラットフォーム事業)

 プラットフォーム事業においては、当社グループが長年にわたって培ってきた様々なノウハウと仕組みが凝縮された、多業態・多ブランドを支えてきたプラットフォームを、積極的に外部企業にも開放する形で各種サービスの提供へ取り組んでおります。

 アパレルプラットフォームにおける生産プラットフォームにおいては、OEM受託として、国内から中国、アセアンにいたる幅広い生産基盤や商標資産、企画機能といった生産支援メニューを外部企業に提供しております。販売プラットフォームにおいては、店舗開発や販売代行、在庫消化といった多様な販売支援メニューを提供しております。

 また、ライフスタイルプラットフォームとして、当社グループが多様な販売チャネルへの直営店の展開を通じて培ってきたノウハウやアセットも活用します。例えば、店舗設計や什器調達、VMD(注)機能等をファッション関連企業に空間創造支援サービスとして提供するほか、競争優位性のある海外什器調達力を背景にホテルや飲食店の内装等にも事業範囲を拡大しております。この他、シェアードサービスプラットフォームとして、ファッションビジネスに関わる様々な事務処理・手続き等の各種事務サービスを一括で受託できる体制を整えています。

 こうした当社グループの各種プラットフォームを顧客ニーズによって組み合わせ、ワンストップでサービスを提供することは、例えば、海外ブランド企業の日本進出支援に有効な手段となります。海外企業の日本初進出時には、店舗開発や店舗運営、経理等の本部機能やシステム構築、物流網の設置など、起業特有の多岐にわたる分野で幾つものハードルがあります。当社グループは、顧客の事業課題の特定、戦略構築から伴走しながら、顧客にとっての最適商品・サービス開発・提供によって付加価値を高め、真のパートナーとなることを目指してまいります。

 

(注)VMDとは、ヴィジュアル・マーチャンダイジングの略。ディスプレイ、インテリア、販売促進など商品MDを視覚面からサポートする専門機能

 

②財務体質の改善

 当社グループは、保有資産の有効活用による価値極大化も目指しており、資産に対するリターンである資産効率の向上に取り組んでおります。

 これまで、ブランド事業の中核的なアセットである棚卸資産の圧縮で在庫回転率の改善を進めたほか、不動産の入れ替えなどで固定資産の収益力も引き上げました。こうした資産の効率性及び収益力の向上を図るとともに、その対となる資金調達面において、負債・資本バランスといった財務体質の改善を進めました。

 MBO時の資金源として銀行借入やメザニンを利用した経緯のほか、永久劣後特約付ローン(注)による資金調達で、資本に対する借入金の割合が大きいといった課題が依然としてあるものの、永久劣後特約付ローンについては当連結会計年度に全てを前倒しで任意弁済したことで、財務体質の健全化に一定の目処が立ちました。今後は、事業活動により得た利益を原資として、引き続き有利子負債の圧縮を進めるとともに、資金配分の重点を成長投資と株主還元へ移行していくことを目指してまいります。

 なお、当社グループでは、債務返済の能力及び事業の収益性・成長性を持続的に向上できるよう、有利子負債と株主資本の最適な資本構成を検討する目的から、ネットD/Eレシオを財務体質の健全化指標としております。中長期的にネットD/Eレシオ0.5倍を目指してまいります。

 

(注) 永久劣後特約付ローンは、元本の弁済期日の定めがなく利息の任意繰延が可能なことなどから、国際会計基準(IFRS)における「資本性金融商品」に分類され、本劣後ローンによる調達額は、当社連結財政状態計算書上、「資本」に計上されることになります。

 

③人材等のリソースの確保

 当社としましては、今後の事業の柱に不可欠な人材や資金といったリソースの確保も重要課題と認識しており、企業価値改善と従業員価値改善の好循環を通じてステークホルダーの価値改善を実現してまいります。

 当社グループは、ファッションテックといった新たな分野に秀でた技術や人材を確保するため、グローバル・オファリングにより調達した資金をM&Aをする形で活用し、エンジニアや経営者等の人材を得てきました。今後は、当社グループの事業構造の非連続な変革の実現には、優秀な人材の確保が引き続き重要と認識しており、まずはコロナ禍で傷んだ従業員処遇の回復に加え、持続的な従業員処遇改善に取り組んでまいります。加えて、外部人材を登用し、継続的に次世代リーダーを輩出していく仕組み作りにも注力してまいります。

 

④コーポレート・ガバナンスの強化

 当社はグループ企業価値を高めるため、事業持株会社としてグループ経営戦略を立案し、子会社間でのシナジー効果の追求や子会社に対する管理・監督機能を適正かつ有効に発揮すべく、今後もグループの業務や組織運営、事業ポートフォリオの最適化や保有資産の価値最大化に取り組んでまいります。

 そして、企業の社会的責任(CSR)の高まりに継続的に応えていくため、今後も意思決定プロセスの透明性確保や企業経営の効率性向上に注力するとともに、コンプライアンス体制の強化と内部統制システムの充実を図ってまいります。

 また、監督と執行の分離で迅速な意思決定を行うことにより、グループ企業価値の更なる向上を目指しております。同時に、社外取締役が過半数を占める取締役会の監督機能の強化や役員の健全な新陳代謝の進展なども図っており、グループの経営力の更なる向上ならびにコーポレート・ガバナンス体制の一層の強化に取り組んでおります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループは、『価値創造企業グループ』として長期的・持続的に価値を創造し、提供し続けるためには「持続可能な社会の実現」への貢献が不可欠であり、環境負荷及び社会活動に関する取り組みを企業経営における重要課題のひとつと位置づけております。

 そして、分散構造故に見える化が進んでいないファッション業界において、環境負荷の見える化を進めるとともに「ワールド・ファッション・エコシステム」を通じて、ファッション産業の多様性と持続性の両立を目指し、産業全体の構造的課題の解消に向けて積極的に取り組んでおります。

 「ワールド・ファッション・エコシステム」の構築を一段と高次元なものに昇華させることで、新たな成長機会の創出や社会が共感できる価値を創造すべく、ワールドグループならではの持続可能な社会に向けた戦略指針を具体化し、2022年6月にTCFD提言への賛同表明とともに、脱炭素社会の実現に向けて当社グループ独自の「ワールド・サステナビリティ・プラン」を公表しました。目標達成に向けたKPIを設定し、各施策を実施しております。また、実現に向けた基盤として、人的資本経営のフレームワークの構築やダイバーシティの推進をしております。

 記載内容のうち将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)サステナビリティ共通

① ガバナンス

 サステナビリティに係る基本方針や取り組みは、代表取締役 社長執行役員のもと組織されるサステナブル委員会の下に担当役員及び担当部署を設置し推進しております。取締役会は、社長およびサステナブル委員会から定期的に報告を受け、監視・監督を行っております。(後記「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要 ② 企業統治の体制の概要〈経営管理組織体制〉」参照)

 

② 戦略

 経営戦略の一環としてサステナビリティ活動における6つの重点領域(マテリアリティ)を定め、ファッションの多様性と持続性の両立を実現するためのESG経営の着実な進化と、企業価値改善と一体となった従業員価値改善を進めてまいります。

 

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③ リスク管理

 当社グループでは、経営に悪影響を及ぼすリスクを全社的に把握し、その顕在化の未然防止と、顕在化した際の影響を最小化するため、代表取締役 社長執行役員のもと組織されるリスクマネジメント委員会の下にリスクマネジメント担当役員及び担当部署を設置し、当社グループ全体のコンプライアンス・リスクマネジメントプログラムを推進しております。

 気候変動、人的資本、人権に関わるリスクへの対応はサステナブル委員会が主管となり、リスクマネジメント委員会と連携して進める体制としております。

 

④ 指標および目標

 当社グループは、「ワールド・サステナビリティ・プラン&レポート(*1)」にてアクションプラン、及び年次の環境に関する数値と、人的資本に関する数値を開示しております。目標と主な取り組みは以下の通りです。

 

<環境>

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<ガバナンス>

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<社会>

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(*1)ワールド・サステナビリティ・プラン&レポート
https://corp.world.co.jp/csr/

(*2)サーキュリック https://store.world.co.jp/s/brand/circric/

(*3)ワールド エコロモ キャンペーン https://corp.world.co.jp/csr/

 

(2)気候変動

① ガバナンス

 気候変動に関するガバナンスは、「(1)サステナビリティ共通 ①ガバナンス」をご覧ください。

 

② 戦略

 当社グループは、TCFD提言を参照し、気候変動がもたらす「リスク」と「機会」を明確にいたしました。抽出したリスクおよび機会について、シナリオ分析等に基づき継続的な見直しを行うとともに、損益・資金計画に与える影響について検討を進め、経営戦略にどのように反映されているかを説明することで、当社グループの戦略のレジリエンスを示してまいります。

 

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③ リスク管理

 気候変動に関するガバナンスは、「(1)サステナビリティ共通 ③リスク管理」をご覧ください。

 

④ 指標および目標

 当社グループは、中期目標とアクションプランを定め、取り組みの指標として、サプライチェーンにおけるCO2排出量を算定するとともに、資源の循環化を進めております。

 

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(*1)アパレル製品1枚あたりのアイテム別の原単位を算出、各アイテムの仕入実績枚数から計算しています。市場から求められる計算・分析手法や今後の精緻化によって変動する可能性がございます。

(*2)アパレル以外については、カテゴリー1にカテゴリー4のCO2排出量も含まれております。

(*3)自社施設間の輸送や出荷時に自社が費用負担している物流に伴う排出量は、含まれておりません。

 

(3)人的資本・多様性

① ガバナンス

 当社グループが目指す「価値創造企業グループ」の実現に向け、最も大切なのは「人」の力であると考えております。「人」の力を最大化させ、価値創造につなげる「人的資本経営」を次の実行体制のもとで推進しています。

 人的資本経営の実行体制として、人事戦略や施策・重要人事の決定は、代表取締役 社長執行役員が議長を務める経営会議、もしくは取締役会で審議・決定しています。人的資本に係る基本方針や取り組みは、代表取締役 社長執行役員のもと組織されるサステナブル委員会の下に担当役員及び担当部署を設置し推進しております。取締役会は、社長およびサステナブル委員会から定期的に報告を受け、監視・監督を行っております。(後記「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要 ② 企業統治の体制の概要〈経営管理組織体制〉」参照)

 

② 戦略

a. 人材育成指針 及び 社内環境整備指針

 当社グループの人材の多様性の確保を含む人材育成指針、社内環境整備方針は以下のとおりです。

 

〈人材育成指針〉

 社員の成長は組織の責務と捉え、従業員価値を高めポテンシャルを最大限引き出し、企業価値を高めるために、多様な事業形態を運営する当社グループならではの「複数のキャリアパスの整備」と「誰もが学び続けられる育成プログラム」を推進しております。

 また、女性や中途入社の従業員、障がい者等、あらゆる従業員が安心して働き、活躍できる環境を整備、改善してまいります。

 

〈社内環境整備方針〉

・安全、健康に働ける環境
グループ横断の安全衛生委員会を毎月開催し、全ての事業所の職場環境の改善と従業員の健康推進を実施しております。

・従業員エンゲージメント
従業員に対して組織力調査を毎年実施し、組織単位の課題と改善策を明確にして、風土改革や生産性向上につなげております。

・ダイバーシティの推進
DE&I研修や社内で活躍する女性達の経験値を共有する「女性活躍推進に向けた座談会」の実施、従業員のライフスタイルと生産性を両立する様々な制度(ライフ優先型勤務、副業制度など)の運用を推進しております。

 

b. グループ人的資本経営の考え方

 当社グループを成功に導くための重要な要素が「変化対応力」を有する人材です。流行の移り変わりが激しいファッション業界の中で、当社グループは創業以来、ためらうことなく業態の転換を行い、新たな生販チャネルの開拓及び最先端のシステムの構築と導入を推進してまいりました。変化を敏感に感知し、かつ変化を前向きに捉え、柔軟に対応できる人材が集結していることは、当社グループの大きな強みであり、この強みを基軸とした人的資本経営の高度化を目指し、以下4つの推進テーマに取り組んでおります。それが、「知識の利用可能性向上(ナレッジ共有の進化)」「ワークフォースの最適化(生産性向上)」「多様性の向上」「エンゲージメントの向上(組織力向上)」です。

 当社グループの人的資本経営の特長は、中期事業戦略との密接な連携にあります。中長期的なロードマップにおいてROE12%以上の達成と、「ワールド・ファッション・エコシステム」の確立を目指し、事業戦略及び事業成長の進捗に基づいたKPIを、前述の推進テーマごとに設定しております。

 各従業員が事業の成長と自身の業務を明確に結び付け、自らの才能やスキルを活かして目標達成に向けて行動することが求められます。会社はその成果を適正に評価し、このサイクルを通じて従業員のエンゲージメントを高め、持続的な企業価値の向上に寄与してまいります。

 

■財務価値に連関する人的資本KPI

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c. 4つの推進テーマについて

・テーマⅠ:知識の利用可能性向上(ナレッジ共有の進化)
 お客様の嗜好やライフスタイルの変化にスピーディーに適応することが事業成長に直結する当社グループにとって、従業員が有する知識は貴重な財産です。長く働き続けている従業員、あるいはまったく異なる業界から参画してくれた従業員など、多様な従業員が持つ知識・ノウハウは競争力の源であり、その共有と伝承が当社グループの持続的成長を支える重要な要素と捉えています。2024年度より、全社員が利用可能なEラーニングシステムへのノウハウの蓄積や業務タスクリストの整備・更新に取り組む一方で、部門・職種を超えたベストプラクティスの共有やコミュニケーション強化をめざす「つなぐワールド」というコミュニティも発足しました。
 これらの取り組みによって築かれたナレッジ共有のノウハウは、プラットフォーム事業の顧客向けサービスとしても活用しています。

 

・テーマⅡ:ワークフォースの最適化(生産性向上)
 小売業において「生産性」は企業価値を測るうえで欠かせない指標です。当社グループでも、生産性向上に向けて、1人当たりの生産性を引き上げる取り組みを進めています。毎年、グループ各社で生産性指標の目標を設定し、業務効率向上やデジタル化を推進することで、目標達成に努めています。
 「ブランド事業」「デジタル事業」「プラットフォーム事業」など、さまざまな事業を展開している当社グループでは、時代の変化に合わせて従業員に求められるスキル要件も変化しています。中期経営計画で描く事業ポートフォリオに必要な人材を確保するため、ナレッジの共有や育成プログラム、ジョブローテーションを通じて、マルチスキルを有する人材の育成に注力しています。全従業員のキャリア上の希望や適性を考慮し、上司が育成計画を策定しています。また、職種別の複線型キャリアパスや職種を超えたキャリア開発の機会を提供するために、Eラーニングプログラムや社内公募などを積極的に展開しています。

 

・テーマⅢ:多様性の向上
 当社グループにおける多様性のある職場とは、性別、年齢、人種、国籍、性自認などのみならず、異なる価値観や考えを持つ人材が集まり、新たなアイデアが生まれ、お互いに刺激し合い成長できる環境を指します。各メンバーが自分と異なる属性や嗜好を尊重し合いながら働けるよう、DE&I研修やセミナーを継続的に実施しています。また、入社1年以内の従業員の定着支援を目的に、定期的なヒアリングやアドバイス、メンタリングを実施しています。さらに、女性活躍推進座談会や若手社員による課題共有の場など、さまざまな取り組みを通じて、多様性への理解を深めるとともに、帰属意識の醸成をはかっています。新卒採用では、国籍や学歴に限らず幅広く門戸を開き、応募の柔軟性を高めるために応募タイミングを分散化しています。経験者採用でも年齢や性別を問わず、さまざまなバックグラウンドを持つ従業員が活躍できる環境を整備しています。

 

・テーマⅣ:エンゲージメントの向上(組織力向上)
 当社グループでは、組織力の向上にとってエンゲージメントを高めることが重要であると位置づけ、さまざまな取り組みを行っています。当社におけるエンゲージメントサーベイとして2015年から続けている組織力アンケートを通じて、組織課題を抽出し、グループ会社ごとに改善アクションプランを策定し、実行をチェックする体制を整備しています。
 また、処遇改善や男女の賃金格差是正にも積極的に取り組んでおり、適正な評価と報酬を従業員に提供する仕組みを整えています。さらに、エンゲージメント向上にはワークライフバランスの確保も不可欠であるため、従業員のライフステージや生産性に配慮した各種制度(育児休業制度(男女対応)、ライフ優先型勤務、副業制度、介護フレックス制度など)の運用と共に、安全衛生委員会を通じた健康経営の推進にも力を入れており、この度、健康経営優良法人2025に認定されました。

 

■従業員のライフステージや生産性に配慮した制度について

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(*1)国内連結会社のうち、主要14社の制度を記載しております。

(*2)国内連結会社のうち、主要14社の本部系の制度を記載しております。

 

d. 経営戦略と人材ポートフォリオの連動化

 めざす姿の実現に向け、経営戦略と連動した人材戦略を推進しています。事業の多様化に伴い、多様なポジションやキャリアパスを確保するとともに、人材の動的化が必要であると考えています。また、社員一人ひとりに合わせた育成・キャリア開発を推進し、より多くの活躍機会を提供しています。

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③ リスク管理

 当社グループでは、人的資本価値の毀損につながるリスクを以下のとおり想定し、リスクへの対応策を講じるとともに、グループ価値向上につなげております。

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④ 指標および目標

 当社グループの人的資本経営の4つの推進テーマ「知識の利用可能性向上(ナレッジ共有の進化)」「ワークフォースの最適化(生産性向上)」「多様性の向上」「エンゲージメントの向上(組織力向上)」に則って中期目標を掲げ、達成に向けて具体的な取り組みを実施しております。

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(*1)国内の連結子会社の合計になります。2025年2月28日付で連結加入したエムシーファッション㈱および㈱ライフギアコーポレーションを含んでおりますが、㈱OpenFashionは集計の対象から除外しております。

(*2)2025年3月1日時点実績を記載しております。

 

■人的資本に関わる指標

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(*1)役職者は、組織の責任者としての役割を担っている人材(例えば、店長等)をいいます。

(*2)各期末日の翌日時点の情報を記載しております。

 

(注)連結および国内連結会社には、エムシーファッション㈱および㈱ライフギアコーポレーションを含んでおりますが、㈱OpenFashionは集計の対象から除外しております。

 

3【事業等のリスク】

 当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があるリスクには以下のようなものがあります。記載内容のうち将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経済情勢の変化に関するリスク

 当社グループの取り扱う商品・サービスは、いわゆる基礎的支出の対象(生活必需品)ではなく、選択的支出(嗜好品)の対象ととらえられており、一般に選択的支出(嗜好品)は、収入面での不安がもたらす家計の防衛意識などから、支出抑制の対象となりやすい傾向にあります。当社グループは、収益の大部分を日本国内で得ているため、日本の経済情勢の影響を強く受けます。このため消費税増税等の政策や自然災害等日本固有の要因はもとより、地政学リスクや原料高等に起因する世界的な経済活動の低迷等が日本の経済情勢に悪影響を与え、当社グループの収益に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)消費者の嗜好の変化等に関するリスク

 当社グループが取り扱う衣料品、服飾・生活雑貨を中心としたファッション業界は、ファッショントレンドの移り変わりによる消費者の嗜好の変化の影響を大きく受けます。ファッショントレンドについては、SNSの浸透等により情報の発信源が広がっていることや、中長期的にはより低価格の商品が嗜好される傾向にある一方で、近時は相応の品質を備えた商品が好まれるトレンドも一部で見られるなど、消費者の嗜好は多様化しており、これを正確に予測することは従来に比して困難になっております。

 当社グループは多くのブランドを複数の販売チャネルで展開することで消費者の多様な嗜好に対応していく所存ですが、現時点で当社グループがその収益の大半を得ているブランド事業において、当社グループがこのような消費者の嗜好の変化に適時かつ適切に対応できない場合や当社グループ又はその各ブランドの消費者からの評価や支持が低下した場合には、当社グループの事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)仕入価格その他の費用の増加によるリスク

 当社グループの事業活動については、製造国・地域の人件費増加、原材料費の増加、為替レートの変動等を要因とした仕入価格の上昇が発生する可能性があり、とりわけ当社グループの商品の多くが製造されている中国をはじめとする新興国における人件費の増加、世界的な物流網の混乱や原料高、米ドルに対する円安の影響を受けやすい状況にあります。

 また、国内においても、都市部を中心とする賃貸物件の賃料の上昇、原油価格の高騰や物流業界における人手不足による輸送費用の増加、各販売チャネルや製造拠点における人件費の増加又は今後の新規出店やシステム投資による減価償却費の増加も見込まれます。当社グループは、このような仕入価格や費用等の増加の影響を価格設定やその他の手段によって抑えるように努めておりますが、かかる措置が功を奏しない場合には、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)人材に関するリスク

 当社グループでは、人材は企業の競争力の源泉であり、企業は個人の自己実現の「媒体」であるという考えから、「人中心経営」の発展に日々努めております。しかしながら、近年の日本における労働人口の減少やこれに伴う人材獲得競争の激化及び人件費の高騰等により、経営幹部、ITエンジニア、投資人材、デザイナー・パタンナー、販売員等、有能な人材を確保、育成、雇用継続することができず、又は、これに多額の費用を要することとなり、その結果、当社グループの事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5)仕入先、製造委託先、物流委託先その他の取引先に関するリスク

 当社グループでは、仕入先、製造委託先、物流委託先その他の取引先の経営状況及び信用度の把握に努めております。しかしながら、取引先の経営状況の悪化や信用不安により、貸倒れ、支払いの遅延や商品の調達・販売の支障が生じる可能性があるほか、出店先である百貨店・ショッピングセンター・駅ビル・ファッションビル等の経営破綻や閉店等により、当該施設に出店する収益店舗等の営業活動が終了し、また、追加的な損失や引当の計上が必要となり、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6)新規事業に関するリスク

 当社グループでは、長期的・持続的な企業価値の向上を目指すため、常に顧客のニーズの動向やマーケット・チャネルの効率性の変化を的確に捉えるべく、新たな価値を生み出すための新規事業に積極的に取り組み続けております。新規事業を開発・推進していく過程で事業投資を行う際には、十分な調査・研究を行った上で最終的な判断を下すよう留意しておりますが、市場環境の急速な変化や当社グループの新規事業での経験の不足等により当社グループの期待した成果を上げることができない場合には、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7)M&Aに関するリスク

 当社グループでは、事業ポートフォリオの最適化又は投資成果の享受を目的として、当社グループが直接行う買収・マイノリティ出資や当社グループの出資する投資会社を活用したM&Aによって、設備、人材又は技術・ノウハウ等を保有する企業をグループに迎える等して、事業の継続的拡大を推進しております。

 しかし、M&Aにおいて、個々の案件の獲得が成功するかどうかは、当社グループが投資にかかる適切な機会を発見できるかということや、資金力のある他社との競争並びに当社グループによる投資機会についての正確な評価及び売主との交渉力に左右される可能性があり、さらに買収後も、当社グループのノウハウやリソースを投入したにもかかわらず、PMI(M&A後統合プロセス)が円滑に進まない、又は、市場経済状態の悪化等の当社グループの影響が及ばない要因により当初期待した収益や効果が得られずに目的を達成できない場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 また、マイノリティ出資においては、出資先の経営陣が当社グループの意思に反する経営判断を下す、又は当社グループの意思に反して若しくは不利な条件で、当社グループの投資持分を売却せざるを得なくなる可能性があり、その結果、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8)情報に関するリスク

 当社グループは、直営店舗やECサイトにおける顧客、従業員等の個人情報のほか、経営戦略上の施策、商品開発等に関する重要な機密情報を多数保有しております。

 これら個人情報及び機密情報の取り扱いについては、情報管理者を選任し、データベースへのアクセス環境、セキュリティシステム、紙情報の保管管理等の改善を常に図り、情報の利用・保管等に関する社内規程・基準を設け、情報の取り扱いに対する意識の向上を目的とした社員教育の徹底や、牽制システムの構築等、情報管理体制を整えておりますが、人為的なミス、コンピュータシステムの予期せぬトラブル等による情報流出や不正アクセスやサイバー攻撃等の犯罪行為による情報漏洩が発生する可能性があります。このような事態が発生した場合、当社グループは、顧客等からの損害賠償の対象となり又はこれに対応するための費用等が生じうるほか、行政処分の対象となる可能性があり、その結果、当社グループの社会的信用度が低下し、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(9)知的財産権に関するリスク

 当社グループでは、特許権、商標権等の知的財産権を所有しており、法令の定め及び社内規程に則って関係する国や地域での商標の取得を含む管理体制を整えておりますが、国・地域等によっては知的財産権の保護に関する制度や体制が十分に確保されているとは言えない場合があります。また、国内外において、当社グループ商品の模倣品が市場に流通する等、当社グループの知的財産権が第三者により侵害された場合、当社グループ又はそのブランドのイメージを侵害し、当社グループの事業及び経営成績に影響を与える可能性があります。

 また、当社グループが意図せず第三者等の知的財産権を侵害してしまった場合には、当該第三者から訴訟等を提起される可能性があり、損害賠償や補償等、又は訴訟等に対応するための多大な時間、労力、費用を要する可能性があることに加え、当社グループ又はそのブランドのイメージ、評価、社会的信用を害する可能性があり、その結果、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10)ハザードに関するリスク

 当社グループでは事業継続計画(BCP:Business continuity planning)を作成する等をしてBCM(Business continuity management)に関する取組みを行っております。しかし、異常気象や地球温暖化等の影響による天候不順、台風や集中豪雨等の予測できない気象状況の変化が起きた場合、又は、地震及び地震に起因する津波、電力不足等・風水害・落雷等不測の自然災害やパンデミック、突発的な事故、火災及びテロ行為、インフラの断絶、ITシステムの故障等により、事業の一部中断や取引先(仕入先等)に被害が生じた場合、当社グループの売上が減少するのみならず、製造及び出荷の遅滞、又は製造・物流設備の修理、取替え、再製造等に係る費用が増加し、多額の損失をもたらし、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(11)海外に関するリスク

 当社グループは、中国、台湾、タイ、マレーシアでの販売事業と中国をはじめとするアセアンでの生産管理及び貿易業務を行っております。当社グループの連結売上高に占める海外売上高の割合は現時点では軽微ですが、今後海外で販売・生産の両面を進める上において、現地における自然災害や感染症、テロや戦争、政変や経済情勢の悪化、為替レートの変動、インフレの発生や生産コストの上昇、運輸・物流の未整備、現地従業員の雇用問題、地政学的問題等の社会情勢、知的財産権訴訟を含む法律や制度及びその改正、消費者の嗜好及び購買行動の差異といったリスクが内在しております。

 海外における事業に関しこれらのリスクが現実化した場合には、取引工場の操業が困難になり、日本国内への商品供給体制(仕入活動)に支障が出る等の問題が発生することや海外での売上が減少することにより、当社グループの事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(12)外国為替相場の変動に伴うリスク

 当社グループの商品の多くは海外で生産されていますが、大半の商品は日本国内で販売されているため、当社グループの商品の仕入価格は外国為替相場の変動により影響を受けます。

 また、海外子会社の財政状態及び経営成績、外貨建ての取引並びに資産及び負債は、当社グループの連結財務諸表の作成時に円建てに換算されるため、当社グループの財政状態及び経営成績は外国為替相場の変動により影響を受けます。

 

(13)減損に関するリスク

 当社グループは、2025年2月28日現在、2006年4月のMBOを含む過去のM&A等により生じたのれん57,176百万円を連結財政状態計算書に計上しているほか、その他の有形・無形の固定資産も有しています。今後、これらの固定資産に係る事業の収益性が低下する場合、当該固定資産の帳簿価額と公正価値の差を損失とする減損処理により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 なお、当社グループが認識しているのれんは、各連結子会社を資金生成単位として配分し、減損テストを実施しております。当社グループにて実施しているのれんの減損テストについては後記「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 13.無形資産」を参照下さい。

 

(14)多額の借入金、金利変動及び有利子負債の財務制限条項への抵触に関するリスク

 当社グループは、金融機関からの融資契約(シンジケートローン)を含む借入により事業資金を調達しております。2025年2月28日現在における総資産に対する借入金の割合は31.7%となっております。

 当社グループは、中長期的に借入金の削減を行っていく予定ですが、かかる削減が進行しない場合、借入金及び金融費用・支払利息の計上により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループの借入金のほとんどについては変動金利となっているものの、現在の金利動向等に鑑みて、当社グループは金利変動へのヘッジを行っていないことから、市場金利が上昇等により調達金利が変動した場合には、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに影響を及ぼす可能性があります。

 さらに、当社グループが締結している融資契約(シンジケートローン)に基づく借入金については、一定の財務制限条項が付されております。かかる財務制限条項は、純資産維持及び利益維持に関する一般的な数値基準を設けるものであり、当該金融機関からの調達以降、本書提出日現在において財務制限条項には一度も抵触しておりませんが、仮に今後これらに抵触し、かつ貸付人の請求がある場合は、当社グループは当該契約上の期限の利益を失うため、ただちに債務の弁済をするための資金の確保が必要となり、当社グループの財政状態及びキャッシュ・フローに影響を及ぼす可能性があります。

 

(15)気候変動がもたらすリスク

 当社グループは、気候変動に関わる課題を当社グループの経営に重要な影響を与える主要なリスクのひとつとして認識しております。気候変動による影響は一部顕在化しており、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。リスクが当社の経営に与える影響と影響に対する対応策については、前記「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」を参照ください。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度の末日現在において判断したものであります。

 

①経営成績の状況及び分析

 当連結会計年度(2024年3月1日~2025年2月28日)の経営成績は、売上収益が2,256億58百万円、コア営業利益が170億13百万円、営業利益が167億96百万円、税引前当期利益が155億6百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益は111億5百万円となりました。なお、当社は、前連結会計年度の第66期より決算期を3月末日から2月末日に変更しました。経営成績及び各セグメントにおける対前年同期比について、連結会計年度が第66期(2023年4月1日~2024年2月29日)と第67期(2024年3月1日~2025年2月28日)で異なるため、記載しておりません。

 当連結会計年度は、2023年5月8日に公表した中期経営計画「PLAN-W」の2年目にあたり、「人材競争力を高める従業員処遇の改善」と「再上場後の最高益水準の実現」の両立を目指したテーマ『持続的成長と利益の証明』を掲げ臨み、当初目論んだ経営成績を収められました。具体的には、ブランド事業では一部アパレルの不振がライフスタイルの健闘を幾分打ち消したものの、デジタル事業とプラットフォーム事業のセグメント利益が大幅増益とグループ収益を力強く牽引したことから、コア営業利益は再上場後の最高益を5期振りに更新しました。

 売上収益では、店舗売上の伸び悩みを好調なEC売上がカバーしました。店舗売上は、新型コロナウイルス感染症の5類移行を契機にした人流の店頭回帰に伴う押し上げ効果が一巡した影響を受けました。加えて、アパレルブランドを中核とするブランド事業においては、8月を中心とした端境期の晩夏・初秋商材の品揃えに量・質の両面で依然として課題を残したほか、秋冬シーズンでは季節の遅い進行にも適応できませんでした。店頭にて売上機会を的確に捉えた商品を適時適量揃えることで、一段と収益を伸ばせる余地は大きいという反省が残りました。

 利益面においては、端境期における品揃えや四半期評価ルールへの適応力に課題を残したものの、店舗・EC両販路でプロパーを重視した売り方に努めた結果、売上総利益率は59.1%でした。また、販売費及び一般管理費では、従業員処遇の改善に伴う人件費の増加を経費コントロールの徹底で吸収して販管費率を51.5%に抑えました。結果として、本業の稼ぐ力であるコア営業利益が計画通り進捗したうえ、エムシーファッション㈱の連結加入に伴う負ののれん発生益も寄与し、全ての利益段階において「PLAN-W」2年目の目標を達成しました。

 

 セグメント別の状況は次のとおりです。

 

a. ブランド事業

 ブランド事業においては、あるべきブランドポートフォリオ戦略の完遂にむけて、ブランド事業セグメント全体最適の視点で成長性と収益性のバランスが取れた持続的成長を追求しております。

 百貨店を中心に展開するミドルアッパーブランドは、ブランドらしく差別化された高付加価値な商品開発を行うほか、世界的な物価上昇や急激な為替変動に左右されないよう、自社工場体制を垂直統合して国産回帰を図っております。また、お客様との強いつながりを構築するため、マルチチャネル化やOMO(Online Merges with Offline)戦略を進め、様々なプロトタイプ開発・出店を通じて新たな成長の創造に取り組んでおります。

 ショッピングセンターを中心に展開するミドルロワーブランドにおいては、前連結会計年度の期首にSC主体のミドルロワー事業を一社に集約し、水平統合に伴うスケールメリットなどの追求で収益性の改善を図っています。加えて、2024年3月からは商品調達部隊の垂直統合で直貿化の更なる推進体制を整えているほか、店舗数の純増転換に向けて店舗運営の改良や店舗開発の強化に取り組んでおります。

 ライフスタイルブランドでは、暮らしに寄り添った衣・食・住を生活雑貨や服飾雑貨で提案し、引き続きお客様の支持拡大に努めております。2024年3月よりミドルロワー系のライフスタイルブランド事業を一社に統合しており、リソースの融通やノウハウの共有などで収益構造の抜本的な改革を進めております。また、新しいブランドの開発を進めており、ローンチに向けて着々と準備を進めています。

 投資ブランドは、プラットフォーム導入によるシナジー追求や収益構造の改善・確立をテーマに掲げています。ラグジュアリーセレクトを運営する㈱ストラスブルゴでは、欧州インポートブランドのエージェント獲得に加え、新規出店で高価格帯ビジネスの拡充を図っています。質の高い革小物で世代を超えたファンを持つ㈱ヒロフを中核とする日本発ラグジュアリーバッググループでは、MD改革が幅広い顧客から支持を得ております。

 また、ブランド事業として海外事業の開発・拡張も進めております。タイでは「タケオキクチ」が店舗網をバンコクから他の都市圏へ広げると同時に、アジアでタイ以外にも新規進出の機会を探っています。台湾においては、「ココシュニック」のドミナント展開や「ドレステリア」の新規出店に続き、㈱ナルミヤ・インターナショナルとのシナジーを一段と発揮すべく、「プティマイン」の出店も予定し協業活動を本格化しております。

 当連結会計年度は、ライフスタイルブランドが健闘したものの、アパレルブランドでは商品課題が散見されました。2024年8月の猛暑と9~10月の季節外れの残暑、その後も秋冬稼働が遅れたことなどへ商品設計等での適応力が弱く、当期より適用した四半期単位の商品評価損ルールは決算期末の前倒しも相まって一部ブランドの売価変更の拙さを招きました。店舗数に関しては、出店の一部が翌期にずれたものの、ようやく純増転換を果たし、今後の成長及び収益への貢献を期待できる状態を整えました。

 この結果、ブランド事業の経営成績は、売上収益が1,988億93百万円(うち外部収益は1,906億37百万円)、コア営業利益(セグメント利益)が110億57百万円となりました。

 

b. デジタル事業

 デジタル事業は「B2Bソリューション」と「B2Cネオエコノミー」から成り立ち、B2Bはこれまでの積極投資を外販収益で回収できるよう、B2Cは「サーキュラー」を成長加速できるよう目指しています。

 B2Bソリューションでは、ECの運営受託サービスにおいて、自社ブランドを中心に販売する直営ファッション通販サイト「ワールドオンラインストア(WOS)」をはじめ、他社公式ECの開発・運営を受託しております。自社サイト運営においては、アプリの機能改善やOMO活動に対する投資を進め、直営店舗とのシームレスなサービス改善をブランド事業と一体で推進しています。また、ソリューションサービスでは、自社グループの物流コスト抑制の取組みや基幹システムの更新に留まらず、他社への在庫コントロールシステムの導入・運用サービスの提供を進めており、売上拡大に向けた営業活動を強化してまいります。また、案件収支の見える化と損益改善の打ち手を進めており、WOSでの配送料値上げ効果に加え、他社公式EC受託でも売上サポートを前提とした一部取引見直しの効果が出ております。

 B2Cネオエコノミーは、「サーキュラー」に焦点を当てた成長戦略を追求しております。ラクサス・テクノロジーズ㈱ではブランドバッグに特化したサブスクリプション型レンタルサービスを営むほか、保有資産であるバッグの稼働率に着目した試用販売等の事業サービスを拡充し、2024年12月13日には東京証券取引所グロース市場への上場を果たしました。ユーズドセレクトショップ「RAGTAG」を運営する㈱ティンパンアレイは、店舗・EC相互活用による仕入・販売両面のOMO推進及び出店加速を両輪にした成長路線に加えて、カジュアル業態「usebowl」やタイでのPOP-UPといった様々な実験を実施しました。国内外で積極投資による事業基盤の拡充に本腰を入れており、2024年3月より連結子会社化したオフプライスストア「& Bridge」を運営する㈱アンドブリッジでは、㈱ティンパンアレイとの事業連携やノウハウ共有を強化してシナジー最大化に努めております。

 当連結会計年度においては、B2BソリューションでEC受託事業の大幅な収支改善を実現した㈱ファッション・コ・ラボが貢献したほか、B2Cネオエコノミーでは、サーキュラーへの「選択と集中」が奏功したことに加えて、海外旅行客のインバウンド需要も追い風に伸張する㈱ティンパンアレイが引き続き好調な業績を維持しております。なお、上場に伴うラクサス・テクノロジーズ㈱の連結子会社から持分法適用関連会社への連結範囲の変更があった反面、2025年2月28日付で株式の追加取得により㈱OpenFashionが完全子会社となりました。

 この結果、デジタル事業の経営成績は、売上収益は325億36百万円(うち外部収益は144億54百万円)、コア営業利益(セグメント利益)が26億19百万円となりました。

 

c. プラットフォーム事業

 プラットフォーム事業では、ワールドグループが培ってきた様々なノウハウと仕組みを活用したプラットフォームの外部企業へのオープン化を推進し、業界の枠組みを超えた新たな事業領域の拡大に取り組んでいます。

 中間持株会社の㈱ワールドプラットフォームサービスは、プラットフォーム事業の収益モデルを整える事業マネジメント機能と外部顧客の法人企業へのマーケティング機能を有します。各プラットフォームのノウハウ・仕組みを横断的に組み合わせ、クライアントのニーズに最適なサービスをワンストップで提案・提供します。

 生産プラットフォームの㈱ワールドプロダクションパートナーズは、自らの商社機能を発揮して直接貿易スキームの構築や、製造子会社群の生産性改善の指導・支援をするほか、外販主体の専門商社である㈱イディオムや縫製工場の㈱ラ・モードでは、他社アパレルの商品開発及び製造(OEM・ODM事業)を受託しております。

 販売プラットフォームの㈱ワールドストアパートナーズでは、商品在庫の最終的な換金に不可欠なアウトレット「NEXT DOOR」や他社ブランドの出店も年々増やしてきたファミリーセール等の催事を運営するほか、様々な業種業態の販売代行業務といった外販サービスも着実に拡充してきております。

 こうしたアパレル起点の生産・販売プラットフォーム以外では、㈱アスプルンドに代表される子会社群が、空間創造や什器・備品の製造販売(建装)、家具や雑貨の卸からコントラクトに至るライフスタイル領域も手掛けており、プラットフォーム事業のサービスラインやクライアント層の幅を拡張することに寄与しています。

 なお、2025年2月28日付で三菱商事ファッション㈱(同日、エムシーファッション㈱に社名変更)を100%子会社としたほか、2025年3月1日付で㈱TSIソーイング(同日、㈱ワールドソーイングに社名変更)の株式も取得いたしました。

 M&Aも活用しながらプラットフォーム機能の強化を図ることでB2B事業基盤の拡充を進めてきており、ファッションの多様性と永続性の実現への貢献を目指した「ワールド・ファッション・エコシステム」の構築に向けて更なる事業基盤の拡充を図ってまいります。

 当連結会計年度においては、為替変動に抵抗力を増すべく、取引条件の変更による粗利確保や案件単位の採算性も吟味した外販受注などを進めたほか、前連結会計年度との単純比較では、B2B事業の書き入れ時である3月を含む点も寄与しました。なお、ブランド事業がアパレル商品の企画・開発から生産業務までを一気通貫で垂直統合して収益向上を図ることを目的として、当期初に(当社グループのブランドに対する)内販を主体にした縫製工場運営会社の一部をプラットフォーム事業からブランド事業へ移管しました。

 この結果、プラットフォーム事業の経営成績は、売上収益は744億52百万円(うち外部収益は204億22百万円)、コア営業利益(セグメント利益)が18億29百万円となりました。

 

d. 共通部門

 事業セグメントに属さない共通部門においては、子会社からの配当や経営指導料等を収入として計上し、当社(ホールディングス)のコーポレートスタッフ等の費用を賄うことを基本的な収益構造としておりますが、子会社からの配当は予めセグメント利益から除いております。

 共通部門は、「グループ経営本部」、「グループ人事統括室」といったコーポレートスタッフに加えて、グループの商品鮮度向上とソフト開発を監修する「クリエイティブ・マネジメント・センター」、グループの情報・物流システムを開発・運用する「デジタルソリューション事業本部」などで成り立っています。

 ホールディングスは重点分野への集中投資という自らの役割を果たすため、子会社からホールディングスのスタッフ等の実費を上回る経営指導料等で回収することを原則としておりますが、機能集約化などを不断に進めて自らの生産性の改善に努めております。

 当連結会計年度においては、当期より本格稼働した海外事業開発室の活動費のほか、会社・部署横断で取り組む新規事業等に対する戦略的投資やグループを挙げたM&Aなどに代表される成長投資にかかる先行費用の増加、従業員処遇の改善に伴う人件費の増加などの影響を受けました。

 この結果、共通部門の経営成績は、売上収益は100億47百万円(うち外部収益は1億45百万円)、コア営業利益(セグメント利益)が14億85百万円となりました。

 

②財政状態の状況及び分析

当社グループの財政状態の状況及びその要因につき、次のとおり分析しております。

 

(資産)

 資産合計は2,738億80百万円と前連結会計年度末に比べて341億95百万円増加しました。

 この主な要因は、エムシーファッション㈱の連結加入の影響で流動資産を中心に約478億円資産合計が増加した一方、ラクサス・テクノロジーズ㈱の連結除外の影響で非流動資産を中心に約30億円資産合計が減少したことによるものです。

 

(負債)

 負債合計は1,873億75百万円と前連結会計年度末に比べて361億8百万円増加しました。

 この主な要因は、エムシーファッション㈱の連結加入の影響で約429億円負債合計が増加した一方、ラクサス・テクノロジーズ㈱の連結除外の影響で約26億円負債合計が減少したことによるものです。借入金は、主に連結範囲の変更の影響により125億円増加しました。

 

(資本合計)

 資本合計は865億5百万円と前連結会計年度末に比べて19億13百万円減少しました。

 この主な要因は、主に親会社の所有者に帰属する当期利益により利益剰余金が約111億円増加した一方、配当金の支払いにより約24億円、その他資本性金融商品の償還により約100億円、その他資本性金融商品に係る支払利息の計上により約3億円減少したことによるものです。

 

(在庫)

 当社グループではブランド事業が売上収益の大半を占めておりますが、ブランド事業におけるアパレルブランドの事業特性から、売上債権と棚卸資産の合計から仕入債務を差し引いた運転資本のコントロール、とりわけ棚卸資産(在庫)の抑制を重視しております。

 当連結会計年度末の運転資本は370億7百万円と前連結会計年度末に比べて約151億円の増加となりました。運転資本が増加した主因は、エムシーファッション㈱の連結加入に伴うものであり、当該影響を除くと運転資本は約4億円減少しております。新規連結影響を除いた実質では、在庫も前連結会計年度末から圧縮しました。

 

(ネットD/Eレシオ)

 当社グループでは、債務返済の能力及び事業の収益性・成長性を持続的に向上できるよう、有利子負債と株主資本の最適な資本構成を検討する目的から、ネットD/Eレシオを財務体質の健全性指標とし、中長期的にネットD/Eレシオ0.5倍を目指してまいります。

 当連結会計年度末のネット有利子負債は699億14百万円と前連結会計年度末より約118億円増加した一方、親会社の所有者に帰属する持分合計については約8億円減少しました。その結果、当連結会計年度のネットD/Eレシオは前連結会計年度末の0.71倍から0.86倍と0.15ポイント上昇しました。

 なお、この主な要因は、エムシーファッション㈱の連結加入に伴うものであり、この間において資本勘定である永久劣後ローン100億円を借入金にて借り換えた影響は、当連結会計年度の親会社の所有者に帰属する当期利益及びフリー・キャッシュ・フローの増加で吸収できた結果となっております。

 

(ROE)

 当社グループでは、中期経営計画「PLAN-W」策定時において、株主資本コスト(COE)を超過する株主資本当期利益率(ROE)として10%超の実現を目標に掲げておりましたが、現在ではこれまでの業績等の進捗状況も踏まえて、「PLAN-W」最終年度の2026年2月期に目標値12.0%を超えるよう努めております。

 当連結会計年度のROEは、前連結会計年度の7.1%から6.5ポイント改善の13.6%となり1年前倒して目標値を超えることができました。一時的な収益貢献アイテムなしで、持続的な目標値の超過を目指してまいります。

 

(ROIC)

 当社グループでは、次期の中期経営計画で本格的な成長戦略を追求できるよう、価値創造的な状態を「PLAN-W」で創り上げることが重要と認識しております。具体的には、「PLAN-W」において、最適資本構成の下でROEがCOEを超過する状態や、投下資本利益率(ROIC)が加重平均資本コスト(WACC)を上回る状態を目指しています。

 このため、これまでのROA(コア営業利益ベース)に替えてROICを経営指標に設定し、当中期経営計画「PLAN-W」最終年度には目標値8.5%を射程圏に捉えられる水準を目指しております。また、格付けがA格でWACCが最も低位の状態を最適資本構成と定義したうえで、WACCを目標値5.0%以下でコントロールできるよう努めます。

 当連結会計年度のROICは、前連結会計年度の4.8%から3.7ポイント改善の8.5%となり目標値に達しましたが、一時的な押し上げ要因もあるため、引き続き改善を進めてまいります。

 

各指標に関しては、下記の定義の通り算出しております。

なお、ネット有利子負債及び親会社の所有者に帰属する持分合計は前年同期末と当期末の平均で算出しております。

・ネットD/Eレシオ
期末のネット有利子負債 ÷ 期末の親会社の所有者に帰属する持分合計

・ネット有利子負債
借入金 + 日本基準におけるファイナンスリース負債 - 現金及び現金同等物

・ROE
過去一年間の親会社の所有者に帰属する当期 (四半期) 利益 ÷ 親会社の所有者に帰属する持分合計

・ROIC
(過去一年間の営業利益 - 法人所得税 - 非支配株主持分に帰属する当期 (四半期) 利益) ÷(ネット有利子負債 + 親会社の所有者に帰属する持分合計)

 

③キャッシュ・フローの状況及び分析

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。なお、前連結会計年度の決算期変更に伴い、第66期(2023年4月1日~2024年2月29日)と第67期(2024年3月1日~2025年2月28日)で期間が異なっております。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 319億92百万円の収入(前年同期比45億33百万円 収入増)となりました。

 この主な要因は、税引前当期利益が約43億円増加したことによるものです。なお、運転資本約14億円がキャッシュ・フロー上マイナス要因となっておりますが、これは決算期変更に伴う累計期間の差異による影響によるものです。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 102億62百万円の支出(前年同期比83億1百万円 支出増)となりました。

 この主な要因は、店舗への出店・改装投資に伴い約18億円、子会社株式及び関連会社株式の取得による支出が約64億円、それぞれ支出が増加したことによるものです。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 207億55百万円の支出(前年同期比47億45百万円 支出減)となりました。

 この主な要因は、エムシーファッション㈱の連結加入の影響で借入金が約118億円増加した一方、その他資本性金融商品の償還により約50億円、リース負債の返済により約17億円、それぞれ支出が増加したことによるものです。

 

 これらの結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度末より9億円増加して、217億48百万円となりました。

 

④生産、受注及び販売の実績

 前連結会計年度は、決算期の変更により、2023年4月1日から2024年2月29日までの11ヶ月間となっております。このため、前年同期比較については記載しておりません。

 

a. 生産実績

 当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

ブランド事業

5,321

プラットフォーム事業

421

合計

5,742

(注) 上記金額には、セグメント間の内部取引高を含んでおります。

 

b. 仕入実績

 当連結会計年度の仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

ブランド事業

80,745

デジタル事業

4,147

プラットフォーム事業

62,972

小計

147,864

 IFRS調整(注)2

168

合計

148,031

(注)1 上記金額には、セグメント間の内部取引高を含んでおります。

2 IFRS調整は、為替予約における調整金額を記載しております。

 

c. 販売実績

 当連結会計年度における販売実績は次のとおりであります。

 販路別売上状況

セグメント

区分

金額(百万円)

前年同期比(%)

ブランド事業

 

ミドルアッパー

55,059

ミドルロワー

96,000

国内アパレルブランド

151,058

国内ライフスタイルブランド

26,396

海外

1,686

投資

11,497

小計

190,637

デジタル事業

B2Bソリューション

3,535

B2Cネオエコノミー

10,920

小計

14,454

プラット

フォーム事業

生産プラットフォーム

3,019

販売プラットフォーム

6,673

シェアードサービスプラットフォーム

203

ライフスタイルプラットフォーム

10,526

小計

20,422

共通部門

145

売上収益

225,658

 

 なお、「受注実績」につきましては、該当事項はありません。

 

(参考)

当社グループのEC化率は以下のとおりであります。

EC化率

金額(百万円)

前年同期差

 

EC取扱高

連結取扱高

 

 

49,733

223,545

 

22.25

+ 0.47

(注)EC化率とは商品の取扱高を分母にし、そのうちECの取扱高を分子にしたものであります。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討結果は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

 経営成績等の状況に関する分析・検討内容につきましては、前記「(1)経営成績等の状況の概要」をご参照下さい。

 当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因として、当社は、前記「3 事業等のリスク」に記載のとおり、経済情勢の変化、消費者の嗜好の変化、在庫管理、出店・閉店、仕入価格その他費用の増加等様々なリスク要因が当社の経営成績に重要な影響を与える可能性があると認識しております。そのため、当社は常に市場環境等に留意しつつ、内部管理体制を強化し、優秀な人材を確保し、消費者や市場のニーズに適時適切に対応していくことにより、経営成績に重要な影響を与えるリスク要因を分散・低減し、適切に対応を行って参ります。

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローは、前記「(1)経営成績等の状況の概要」をご参照下さい。

 当社グループの資本の財源及び資金の流動性について、当社グループは金融機関からの借入金のほか、営業活動によるキャッシュ・フローから投資活動によるキャッシュ・フロー及びリース負債の返済を差し引いた実質的なフリー・キャッシュ・フローを資金の源泉と考えております。当連結会計年度における資金使途について、主に出店・改装に伴う店舗設備やシステムへの投資に係るものであります。資金調達に係る借入金の残高については後記「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 20.借入金」に記載しております。

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(1976年大蔵省令第28号)第312条の規定によりIFRSに準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成に当たって、必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しております。

 なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要性がある会計方針、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定は、後記「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 4.重要な会計上の見積り及び判断」に記載しております。

 

5【経営上の重要な契約等】

 特記すべき重要な事項はありません。

 

6【研究開発活動】

 特記すべき重要な事項はありません。

 

第3【設備の状況】

1【設備投資等の概要】

 当連結会計年度に実施しました設備投資の総額は、7,412百万円であります。

 その主なものは、出店・改装に伴う店舗設備やブランドの価値向上を目的としてブランド事業への投資に4,350百万円を投資したほか、ECサイト運営を中心としたデジタルソリューション事業への強化やサーキュラー事業の成長にむけての投資推進のため、デジタル事業へ2,822百万円の投資を実施いたしました。

 

2【主要な設備の状況】

 当社及び連結子会社の当連結会計年度末における主要な設備の状況は以下のとおりであります。

(1)提出会社

事業所名

(所在地)

セグメントの

名称

設備の

内容

帳簿価額(百万円)

従業

員数

(名)

(注)3

建物及び構築物

機械装置及び運搬具

土地

(面積㎡)

リース

資産

その他

(注)2

合計

本社ビル

(兵庫県神戸市中央区)

(注)4

事務所

1,650

0

3,723

(6,935)

113

13

5,499

55

(-)

北青山ビル

(東京都港区)

(注)4

事務所

2,185

0

20,267

(1,878)

13

60

22,525

200

(1)

松本技術研究所

(長野県松本市)

(注)5

プラットフォーム事業

縫製工場

(縫製子会社に対する賃貸設備)

115

0

397

(11,261)

4

0

516

(-)

淡路技術研究所

(兵庫県洲本市)

(注)5

プラットフォーム事業

縫製工場

(縫製子会社に対する賃貸設備)

15

0

532

(17,444)

5

0

552

(-)

岡山工場

(岡山県岡山市中区)

(注)5

プラットフォーム事業

縫製工場

(縫製子会社に対する賃貸設備)

624

(8,570)

624

(-)

ワールドディストリビューションセンター 南船橋I・Ⅱ

(千葉県船橋市)

デジタル事業

物流倉庫

197

937

7

1,141

17

(114)

(注)1 上記は、日本基準に基づく帳簿価額であります。

2 帳簿価額のうち「その他」は、器具備品及び建設仮勘定等であります。

3 従業員数欄には、提出会社と委任契約を締結している人員数を含んでおります。また、従業員数欄の(外書)は、臨時従業員の延べ人数を記載しております。

4 すべてのセグメントにおいて使用している設備であります。

5 連結子会社である㈱ワールドインダストリーファブリック及び㈱ワールドインダストリーニットに貸与しております。

6 現在休止中の重要な設備はありません。

7 上記に記載している他、複数拠点がありますが、主要な設備ではないため記載を省略しております。

 

(2)国内子会社

会社名

事業所名

(所在地)

セグメントの

名称

設備の

内容

帳簿価額(百万円)

従業

員数

(名)

(注)3

建物及び構築物

機械装置及び運搬具

土地

(面積㎡)

リース

資産

その他

(注)2

合計

㈱アルカスインターナショナル

営業店舗

(国内)

ブランド事業

営業用設備(店舗)

1,016

1,032

36

2,084

745

(1,257)

㈱フィールズインターナショナル

営業店舗

(国内)

ブランド事業

営業用設備(店舗)

189

476

37

702

745

(358)

㈱エクスプローラーズトーキョー

営業店舗

(国内)

ブランド事業

営業用設備(店舗)

154

253

9

416

350

(93)

㈱ライフスタイルイノベーション

営業店舗

(国内)

ブランド事業

営業用設備(店舗)

2,185

113

2,298

288

(1,231)

㈱ティンパンアレイ

営業店舗

(国内)

デジタル事業

営業用設備(店舗)

550

137

687

79

(121)

(注)1 上記は、日本基準に基づく帳簿価額であります。

2 帳簿価額のうち「その他」は、レンタル用資産、器具備品及び建設仮勘定等であります。

3 従業員数欄には、提出会社と委任契約を締結している人員数を含んでおります。また、従業員数欄の(外書)は、臨時従業員の延べ人数を記載しております。

4 現在休止中の重要な設備はありません。

5 上記に記載している他、複数拠点がありますが、主要な設備ではないため記載を省略しております。

 

(3)在外子会社

 主要な設備はありません。

 

3【設備の新設、除却等の計画】

(1)重要な設備の新設等

 当社及び連結子会社の設備投資につきましては、販売計画、需要予測、投資収益率等を総合的に勘案して計画しており、設備投資は原則として当社及び連結子会社が個別に策定した上で、当社及び連結子会社の全体最適となるよう当社を中心に調整を図っており、当連結会計年度においては、7,412百万円を計上しました。

 今後、引き続き業務効率化やECサイト運営に係るシステム投資を実施していくほか、店舗にかかる営業設備に対してこれまでの効率性を重視した投資から再成長に向けた積極的な投資を計画しております。なお、重要な設備投資の計画はありません。

 

(2)重要な設備の除却等

 当社及び連結子会社の設備の除却等につきましては、主に直営店舗における改装・退店に関わるものを予定しております。