第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社の本有価証券報告書の提出日現在における「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」は以下の通りです。また、将来に関する事項については別段の記載のない限り、本有価証券報告書の提出日現在において判断したものです。

 

(1)会社の経営の基本方針

当社は、「情報革命で人々を幸せに」という経営理念の下、世界の人々が最も必要とするテクノロジーやサービスを提供する企業グループとなることを目指すとともに、企業価値の最大化を図っています。

 

(2)重視する経営指標

当社は、戦略的投資持株会社であるソフトバンクグループ㈱が、子会社・関連会社および投資先を投資ポートフォリオとして統括するマネジメント体制の下、保有株式価値の増大を通じてNAV(Net Asset Value:保有株式価値-調整後純有利子負債で算出(注1))を中長期的に最大化することを目指しています。また、これを支えるための財務方針として、財務の安定性を確保するという観点から、ソフトバンクグループ㈱のLTV(Loan to Value:調整後純有利子負債÷保有株式価値で算出(注1)。保有資産に対する負債の割合)を金融市場の平時は25%未満、異常時でも35%を上限として管理するとともに、今後2年分の社債償還資金以上の手元流動性を確保しています。

 

(注1)保有株式価値および調整後純有利子負債は、いずれもアセットバック・ファイナンスにおける満期決済金額または借入金を除く。また、調整後純有利子負債の算出からは、当社のうち、上場子会社であるソフトバンク㈱(同社子会社を含む)およびアーム、ならびにSVF1、SVF2、LatAmファンドなど独立採算で運営される事業体に帰属する有利子負債および現預金等(債券投資を含む)を除く。

 

(3)中長期的な会社の経営戦略

当社は、情報技術の発展によって社会やライフスタイルが変革する「情報革命」を主要な成長機会として確実に捉え、長きにわたり人々の幸せに貢献していきたいと考えています。そのためには、社会ニーズの変化をいち早く捉え、今後の牽引役となるテクノロジーやビジネスモデルに合わせてグループの構成を最適化しながら自己変革を繰り返していくことが不可欠です。

パソコン、インターネット、ブロードバンド、スマートフォンと変遷してきた「情報革命」の中心は、現在、AI(人工知能)へと移行しています。とりわけ近年の生成AIの進化は、自然言語処理や創造的コンテンツの生成において飛躍的な技術革新をもたらし、各産業に急速な変革を促しています。当社は、この生成AIのさらなる進化が、今後数年のうちに人間と同等の知的能力を備えるAGI(Artificial General Intelligence:汎用人工知能)の実現へとつながり、さらに今後10年以内に人類の叡智を大きく超えるASI(Artificial Super Intelligence:人工超知能)の実現に至ると予測しています。

このような時代の転換期において、当社は人類の進化のためにASIを実現することを使命に掲げて新たな自己変革のさなかにあります。具体的には、グループの総力を挙げて、その実現に不可欠な①AIチップ、②AIロボット、③AIデータセンターおよび④それを支える電力の4つの分野で積極的に投資・事業活動を行うとともに、生成AI分野をリードする企業への投資や連携を進めています。こうした取り組みによって成長機会を確実に捉えるとともに、「群戦略」という独自の組織戦略の下、各グループ会社・投資先が刺激を与え合いながらそれぞれの事業の拡大やビジネスモデルの進化を実現することで、当社の保有株式価値の増大、ひいてはNAVの中長期的な最大化を目指しています。

 

「群戦略」とは

「群戦略」は、特定の分野において優れたテクノロジーやビジネスモデルを持つ多様な企業群が、それぞれ自律的に意思決定を行いつつも、資本関係と同志的結合を通じてシナジーを創出しながら共に進化・成長を続けていくことを志向するものです。ソフトバンクグループ㈱は、戦略的投資持株会社として、群を構成する各企業の意思決定に影響を与えつつも、自律性を重んじ、出資比率は過半にこだわらず、ブランドの統一を志向しません。こうした多種多様な企業でグループを構成することにより、柔軟に業容を変化・拡大させ、長期にわたり成長を続けることを目指しています。

 

 

 

(4)経営環境および優先的に対処すべき課題

2024年4月から12月にかけて、世界の株式市場は米国・欧州中央銀行による利下げ開始や底堅く推移する米国経済を背景に、総じて上昇基調を維持しました。特にナスダック総合指数やS&P500指数は、ハイテク企業の好業績や半導体関連企業の株価上昇を受けて高いパフォーマンスを示し、生成AI関連の需要拡大が市場全体の上昇を牽引しました。その後2025年1月には米国でトランプ政権が発足し、減税や規制緩和に対する期待から米国株式市場では一時的に株価が上昇する場面も見られたものの、同月に中国の新興AI企業DeepSeekが低コストで高度なAIモデルを発表すると、米国の巨大テクノロジー企業の優位性が脅かされるとともに最先端のAI半導体の需要が伸び悩むとの懸念が広がり、巨大テクノロジー・半導体関連企業の株価は一時急落しました。一方で、DeepSeekの台頭をきっかけに、中国テクノロジー産業への期待が高まり、関連銘柄の株価が上昇しました。その後2025年3月末にかけて、関税を含む通商政策の不透明感や米国におけるインフレ率の高止まりに対する警戒感から、米国の株式市場は下落傾向が続きました。一方で、ドイツ、英国、香港などの株式市場は2025年1月から3月にかけても引き続き堅調に推移するなど、世界の株式市場は地域ごとに異なる動きを見せました。

2024年のベンチャー・キャピタル(VC)市場においては、世界の投資総額は依然としてピークとなった2021年の水準を大幅に下回ったものの、AI企業への資金流入は顕著で、投資額全体の37%を占め過去最高水準となりました(注2)。2024年の新規株式公開(IPO)市場においては、中国の不振が続いたものの、米国は回復基調にありインドも好調が続くなど、国ごとで温度差が浮き彫りになりました。米国のテクノロジー分野では、2024年にいくつかの大型案件があり今後のIPO市場への期待感が高まっていましたが、2025年4月にトランプ政権が「相互関税」を発表して以降、米国経済の先行きへの警戒感が高まり、企業がIPOのタイミングを慎重に見極める動きも見られます。

かかる経営環境において、当社は中長期的にNAVを最大化させるために以下1~3に注力しています。また、当社保有株式価値に占める割合が大きく、最重要資産と位置付けられるアーム、SVFおよびソフトバンク㈱はそれぞれの株式価値の拡大を図るため以下4~6に挙げた取り組みを行っています。

 

(注2)CBインサイツ『State of Venture 2024 Report』による。

 

1 既存投資先の価値拡大と新規投資の実行

当期、当社のNAVは2024年6月末に過去最高を記録したものの、期末にかけて主に米国株式市場全体の下落を背景にアームの株価が下落したことにより前期末から減少しました。短期的には株式市場の変動による影響を避けられないものの、アームを中核とした現在のポートフォリオは、主にAIの進化を支えるハードウエアレイヤーからAIを活用したアプリケーションレイヤーまで幅広い投資先で構成されており、AI主導の新たな産業構造の変革を捉える基盤が整っています。当社は、こうしたポートフォリオの強みを活かしながら、既存投資先の価値最大化に向けた取り組みを加速させるとともに、成長性の高いAI関連企業への新規投資を引き続き推進しています。

既存投資先のうちアームおよびソフトバンク㈱については、「情報革命で人々を幸せに」という経営理念の下でそれぞれが後述の成長戦略を着実に遂行することで、当社保有株式価値の拡大につながると期待しています。SVFについては、今後、IPO市場の本格的な再開に伴い投資先の株式公開とその後のエグジットが順次進んでいくと期待しています。また、ストラテジックバイヤーや他のアセットマネージャーへの売却の機会も引き続き探っていきます。

新規投資については、エグジットによる回収資金も活用しつつ、AIという投資テーマに基づき投資案件を厳選し、経営に深く関わることで付加価値を提供できるような投資についてはソフトバンクグループ㈱または100%子会社から行い、それ以外はSVFを通じた投資を行うことを想定しています。

なお、AIに関する新たな取り組みとして、米国のAI研究開発企業であるOpenAI Inc.およびその関係会社(以下総称して「OpenAI」)のためにAIインフラストラクチャーを米国内で構築する「Stargate Project」を2025年1月に、企業用最先端AI「クリスタル・インテリジェンス(注3)」の開発・販売に関するOpenAIとのパートナーシップを2025年2月に、それぞれ発表しました。また、OpenAI Inc.の営利子会社であるOpenAI Global, LLCに最大400億米ドル(外部投資家へのシンジケーション予定額100億米ドルを差し引いた当社の実質的な出資額は最大300億米ドル)の追加出資を行うことについて、OpenAIと2025年3月に合意しました。このほか、Armコンピュートプラットフォームに基づいた高性能・省エネルギー・持続可能なAIコンピューティングに特化した半導体設計企業である米国のAmpere Computing Holdings LLCの全持分を取得することについて、同社および同社の特定の持分保有者と2025年3月に合意しました。

 

(注3)「クリスタル・インテリジェンス」は正式名称ではなく仮称。

 

2 財務方針の堅持

当社は、「(2)重視する経営指標」の通り、ソフトバンクグループ㈱のLTVを金融市場の平時は25%未満、異常時でも35%を上限として管理するとともに、2年分の社債償還資金以上の手元流動性を確保することを財務方針として掲げています。当期において主にAI関連企業への投資を積極的に行った結果、当期末のLTVは前期末から上昇し、手元流動性は前期末から減少しましたが、いずれも財務方針の範囲内に収まっています。

来期においては、「(4)経営環境および優先的に対処すべき課題 1 既存投資先の価値拡大と新規投資の実行」に挙げたAIに関する新たな取り組みを実行に移すために、その必要資金の一部を銀行借入や社債発行などで調達することにより調整後純有利子負債が増加するものと見込んでいます。また、保有株式価値は、その中核をなすアーム株式の価値が米国株式市場の動向の影響を受けやすいことから、市況によっては大きく変動する可能性があります。しかしながら、こうした状況下においても上記の財務方針は不変であり、投資機会や資本市場の動向を注視しつつ、アセットバック・ファイナンスの活用も含めて適切に調整後純有利子負債をコントロールすることで適切に財務運営を行っていきます。

 

3 サステナビリティの推進

当社は、社会の持続的な発展と当社の中長期的な成長の両立を実現するために、企業活動においてサステナビリティを推進することが重要だと考えています。こうした考えの下、サステナビリティに関するリスクおよび機会を認識した上で、それぞれのリスクの軽減と機会の追求に取り組んでいます。

詳細は、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」をご参照ください。

 

4 アーム:AI革命を捉えた成長戦略の遂行

アームは、半導体技術が世界で最も重要な資源の一つとなった現在、半導体技術開発のグローバル・リーダーとしてこれからのコンピューティングの在り方を左右する存在になりつつあると当社では認識しています。アームのプロセッサー・テクノロジーは、高機能プロセッサーとしては世界で最も広くライセンス供与・採用されており、スマートフォンではほぼ全て、タブレットとデジタルテレビのほとんどで使用されているほか、組込プロセッサー用チップでも高い割合で搭載されています。

世界中の3,100億台以上のデジタル機器に採用されているアームのアーキテクチャーは、高性能と高エネルギー効率を両立しており、クラウドからエッジ、エンドポイントに至るまで、現在そして未来のAIワークロードを実行するために一貫性がありセキュアな基盤を提供しています。当社は、アームはAIが築く未来の根幹を支えていくと考えています。

現在、生成AIや大規模言語モデルをはじめとするAI技術の進展・普及が、アームの技術に対する需要を加速度的に後押ししています。多くのAIアルゴリズムは非常に計算量が多く、質問に対する答えを迅速に提供するために高性能な中央演算処理装置(CPU)を必要とします。現在AI処理の多くはクラウド上で行われていますが、スマートフォンや自動車等の端末側でリアルタイムにデータを処理するエッジAI(注4)へのシフトが着実に進んでいます。アームが提供する高性能かつエネルギー効率に優れたCPUは、エッジAIにおける推論を実行するために最適なソリューションであり、エッジ・コンピューティング(注4)の進化とともに、AI時代におけるアームの存在感は高まっていると認識しています。

アームは持続的な成長のため、以下に挙げた市場シェアの維持・拡大、ロイヤルティー単価の増加、およびエコシステムの強化に継続的に取り組んでいます。

 

(注4)スマートフォンや防犯カメラ等の利用者側の端末(エンドポイント)やその近くに設置するサーバーなどのネットワーク周縁(エッジ)部分でデータを処理するコンピューティング手法をエッジ・コンピューティングといい、データをクラウドに集約しクラウド上の高性能サーバーで処理を行うクラウド・コンピューティングに対し、不要な通信を避けることで通信遅延やネットワーク負荷の低減などを実現する。この仕組みをAI処理に応用・発展させたものをエッジAIという。

 

a. 市場シェアの維持・拡大

アームは、99%以上のシェアを持つモバイル・アプリケーション分野に加えて、自動車やクラウド・サーバー、PC分野を中心に市場シェアを拡大しています。アームの顧客は、未来のAIアルゴリズムを実行するために欠かせない高性能かつ高エネルギー効率のチップを開発するための投資を加速しており、アームのテクノロジーに対する需要が増加しています。アームは、各エンドマーケットに特化した幅広いコンピュート・テクノロジー・ポートフォリオの提供に加えて、顧客がより高いライセンス料を支払うことでより広範なアームのテクノロジーにアクセス可能となるサブスクリプション型のライセンス契約を導入するなど、市場シェアの拡大に向けた柔軟な取り組みを行っています。アームは今後も、技術革新の最前線で、次世代のコンピューティング・デバイスのために必要な半導体IP(回路の設計情報などの知的財産)を提供していくことを企図しています。

 

b. ロイヤルティー単価の増加

AIが急速に進化を遂げる中、高性能かつ高エネルギー効率のチップへの需要が高まり、チップ設計はますます複雑化しています。近年、アームの最新世代テクノロジーである「Armv9」や、アームの複数のIPを組み合わせたコンピュート・サブシステム(CSS)の採用が、ハイエンドのスマートフォン向けチップやサーバー向けチップを中心に進んでいます。CSSはアームのCPUと他のオンチップ・テクノロジーを組み合わせたもので、事前に統合・検証され、主要なファウンドリー(半導体受託生産事業者)の製造プロセスのために最適化されています。CSSの採用により、顧客はより短い期間でより簡単にチップを設計し、市場投入までの時間を短縮することが可能になります。アームは、「Armv9」やCSSといったより高度な技術のチップ当たりのロイヤルティー単価を高く設定しており、ロイヤルティー収入を牽引役とした中長期的な売上高の拡大を実現するため、これらの技術の普及・拡大を推し進めています。

 

c. エコシステムの強化

アームの成長は、アームベースの製品向けにソフトウエアを開発する2,000万人を超えるエンジニアから成るエコシステムにより下支えされています。プログラムやアプリケーションは特定のCPUアーキテクチャー上で最適に動作するように作られるため、より多くのソフトウエアと互換性があることがCPUの成功を左右します。アームは過去30年以上にわたり、ソフトウエアエンジニアがアームベースのチップ向けにプログラムやアプリケーションを効率的に開発するために必要なツールやライブラリーを提供するなど、エコシステムの構築・醸成に注力してきました。今後も、あらゆる場所でAIがアームの基盤上で動作するために必要なエコシステムへの投資を継続していきます。

 

5 SVF:投資リターンの最大化

SVF1、SVF2およびLatAmファンドは、主にAIを活用した成長可能性の大きなテクノロジー企業への投資を目的としたファンドです。各投資ファンドを運営する当社100%子会社(SVF1を運営するSBIAおよびSVF2とLatAmファンドを運営するSBGA、以下総称して「ファンド運営子会社」)は、以下の取り組みを通じてそれぞれの存続期間の中で各投資ファンドのリターンの最大化を目指しています。

 

a. 大型資金の中長期的運用

SVF1、SVF2およびLatAmファンドはいずれも、多額の出資コミットメントを有し、設立から10年以上にわたり運用される私募投資ファンドです。すでに投資期間を終え、回収期間に入っているSVF1は2029年11月(注5)の存続期間終了に向けて資産の最適な回収を通じたリターンの最大化に取り組んでいます。一方、引き続き投資期間中であるSVF2およびLatAmファンドは、AIという投資テーマの下、重点領域への機動的な投資を組み合わせつつ、さまざまな地域やセクター、テクノロジーに投資を行うことで、株式市場の変動を乗り越えながら、2032年10月(注5)までの存続期間にわたり中長期的なリターンの創出に取り組んでいます。

 

(注5)各ファンド運営子会社に最大2回の1年延長オプションあり。

 

b. 投資先価値向上の追求

ファンド運営子会社は、既存投資先の中で株式価値の大きい会社またはその向上の余地の大きい会社を選定し、さまざまな戦略的支援やネットワークを通じて投資先の持続的な成長を促すことにより、SVFの保有株式価値の最大化を追求しています。具体的には、当社およびその投資先、取引先までを含めたエコシステムを通じてパートナーシップや協力関係を築くことにより、収益性と成長性を高める機会を捉え、実行することを目指しています。また、投資先の経営陣が成長を模索する中、クロスボーダーでの事業拡大や収益性改善のための助言を提供するとともにガバナンス体制のモニタリングを行い、投資先の健全な成長を支援しています。

 

c. 最適な出口戦略による投資回収

ファンドのリターン、ひいてはソフトバンクグループ㈱を含むリミテッド・パートナーへの分配を最大化するために、ファンド運営子会社は規律あるアプローチの下で適時・適切な保有資産のエグジットを実施する方針です。エグジットは、ストラテジックバイヤーや他のアセットマネージャーへの売却、または投資先の上場を通じて行われます。投資先の上場後は、投資時の計画に対するパフォーマンスや市場環境、株価の動向を慎重に評価しつつ、計画的に売却する仕組みを設定しています。また、株式を担保とした資金調達を行いリミテッド・パートナーへの分配を行う一方、リターンを最大化するために実際の売却は最適と考えるタイミングで行うこともあります。

当期においては、SVFの投資先5社が上場を果たし、活動開始以来累計の上場社数は55社となりました。SVFは長期投資ファンドであり、ファンド運営子会社は最適なエグジットの手段・時期を見極め、短期的な市場の変動による影響を抑えながら、中長期的な視点でリターンの最大化を目指しています。

 

d. 適切な運用体制の構築

投資の成功の再現性を高め、持続的にリターンを生み出すためには、それを可能にする組織体制を構築すること、特に優秀な人材の確保および維持が不可欠です。ファンド運営子会社では、投資銀行やベンチャー・キャピタルなどで豊富な経験を積んだシニア・リーダーたちが運営に当たっています。これまでに、グローバル展開およびポートフォリオ管理のためのニーズと規模を満たす投資・運用・資金調達・管理の各機能およびマネジメント陣を備えた組織を築き、継続的にその改善を行っています。こうした専門家集団によるチームアプローチを取ることにより、組織的に知見の蓄積・共有を図り各投資ファンドの持続的な成長を目指しています。

 

6 ソフトバンク㈱:「Beyond Carrier」戦略の遂行

コロナ禍をきっかけとした人々の生活様式の変化や深刻化する人手不足に対応するため、テレワークやオンラインショッピング、非接触型決済の利用拡大など、企業や行政のデジタル化は必要不可欠なものとなりました。デジタル化は、生産性向上やイノベーションの創発を促すことで今後の日本の社会を変革していく原動力となり、さらに、文章・画像・プログラムコードなどさまざまなコンテンツを生成することができる生成AIの出現により、変革のスピードは加速しています。

こうした中、当社で国内事業を担うソフトバンク㈱は、成長戦略「Beyond Carrier」の下、コアビジネスである通信事業の持続的な成長を図りながら、通信キャリアの枠を超え、情報・テクノロジー領域のさまざまな分野で積極的に事業を拡大することで、企業価値の最大化を目指しています。具体的には、①通信事業のさらなる成長、②エンタープライズ事業におけるDX/ソリューションビジネスの拡大、③メディア・EC事業の成長、④ファイナンス事業の成長、および⑤新規事業の創出・拡大に加え、⑥コスト効率化に取り組んでいます。

財務戦略としては、ソフトバンク㈱は、プライマリー・フリー・キャッシュ・フロー(注6)を重要な経営指標と考えており、高い株主還元を維持しながら、成長への投資を実施していくため、今後も安定的なプライマリー・フリー・キャッシュ・フローの創出を目指しています。また、健全な財務体質を維持しつつ、適切な財務レバレッジを伴った資本効率の高い経営を行っていきます。

なお、メディア・EC事業の中心的な企業であるLINEヤフー㈱は、2023年11月に公表した不正アクセスによる情報漏洩に関して、2024年3月および4月に総務省から行政指導を、同年3月に個人情報保護委員会から勧告および指導を受けました。これに対し同社は、2024年4月以降総務省および個人情報保護委員会へ定期的に報告書を提出しています。同社は、多数のユーザーを抱えるプラットフォーム事業者としての信頼を損なう重大な事態であると重く受け止め、再発防止策を推進しています。ソフトバンク㈱は、同社の親会社として、定期的なリスク状況の評価や緊急事態発生時の連絡体制強化などの実効的なセキュリティガバナンス確保の取り組みを進めています。

 

(注6)プライマリー・フリー・キャッシュ・フローは、調整後フリー・キャッシュ・フロー(LINEヤフー㈱グループ、PayPay㈱等除く)に長期性の成長投資として支出した金額を足し戻した指標。調整後フリー・キャッシュ・フロー(LINEヤフー㈱グループ、PayPay㈱等除く)=フリー・キャッシュ・フロー+(割賦債権の流動化による調達額-同返済額)-LINEヤフー㈱グループ、PayPay㈱等のフリー・キャッシュ・フロー+Aホールディングス㈱からの受取配当、PayPay証券㈱への出資など。LINEヤフー㈱グループ、PayPay㈱等にはAホールディングス㈱、LINEヤフー㈱および子会社(LINEヤフー㈱グループ)、Bホールディングス㈱、PayPay㈱、PayPayカード㈱、PayPay証券㈱などを含む。なお、長期性の成長投資はAI計算基盤・AIデータセンター関連投資、Cubic Telecom Ltd.への出資を含む。

 

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

(1)サステナビリティに関するガバナンス

 ソフトバンクグループ㈱は、取締役会において、グループ全体のサステナビリティ推進の責任者として、チーフ・サステナビリティ・オフィサー(CSusO)を任命するとともに、当社およびグループ会社のサステナビリティに関する活動を推進するため、サステナビリティビジョン・基本方針などの全体方針、サステナビリティに関する課題・目標設定・情報開示方針などの個別活動方針およびサステナビリティ推進体制・運営方針などを継続的に議論するサステナビリティ委員会を設置しています。同委員会は、CSusO(常務執行役員 君和田 和子)を委員長、取締役 専務執行役員 後藤 芳光を委員として構成されており、関係部門の責任者も出席し、専門的な知見や複合的な視点を交え、ステークホルダーからの要請を踏まえながら議論を行っています。サステナビリティ委員会の議論内容についてはCSusOが取締役会に報告し、監督を受けています。当期中、サステナビリティ委員会は2024年4月、7月および10月の計3回開催され、各回の議論内容は取締役会に報告されました。

 

(2)サステナビリティに関するリスク管理

 ソフトバンクグループ㈱では、リスク管理室が「リスク管理ポリシー」に基づき、グループ全体のリスクを統合的に管理しています。そのうちサステナビリティに関するリスクは、CSusOの下、サステナビリティ部がソフトバンクグループ㈱の各部門や主要なグループ会社から報告を受けて把握するとともに、サステナビリティ委員会での議論を通じて、優先的に取り組むべきリスクについて特定しています。また、上記グループ全体のリスク管理プロセスの枠組みに基づき、特定されたリスク、その対応策および対応状況についてリスク管理室へ報告しています。

 リスク管理室は、発生可能性や影響度などに基づき、サステナビリティを含む各種リスクおよびその対応策を分析・評価しています。グループの持続的成長へ大きな影響を与える重大リスクについては、各リスクに関係する部門やグループ会社と連携し、対応状況を把握するとともに、対応策の有効性をモニタリングしています。また、ソフトバンクグループ㈱の取締役会や、取締役および執行役員で構成されるグループ・リスク・コンプライアンス委員会(GRCC)に、重大リスクとその対応状況を四半期ごとに報告し、そこでの議論結果を踏まえてリスク管理の強化に努めています。

 

<サステナビリティガバナンス・リスク管理体制図>

0102010_001.png

 

(3)サステナビリティに関する重要課題

 ソフトバンクグループ㈱は、株主、債権者、顧客、取引先、従業員、地域社会などのステークホルダーの期待に真摯に向き合い、持続的な社会の実現に貢献するために、当社のサステナビリティに関する指針として「ソフトバンクグループサステナビリティ基本方針」を定めています。本方針において、ダブルマテリアリティの考え方に基づき、ステークホルダーにとっての重要性および当社にとっての重要性の2軸で取り組むべき課題を分類した上で、優先して取り組むべきサステナビリティに関する重要課題(マテリアリティ)を特定しています。

 

0102010_002.png

 

 

マテリアリティ

コンセプト

責任あるAI

常に情報革命の最先端に立ち、責任あるAIの活用を通じて新たな価値を創造し、人々の幸せに貢献します

気候変動

多様な企業群の事業活動を通じてグローバルな気候変動の課題解決に挑みます

人的資本

価値創造の源泉である人材の挑戦と活躍を支える基盤を整えることで、持続的な成長を目指します

プライバシー保護/情報セキュリティ

情報革命の担い手として、情報資産の保護に真摯に取り組み、安心・安全なデジタル社会の実現を牽引します

投資先のサステナビリティ

戦略的投資持株会社として、投資を通じて、投資先とともに、持続可能な社会の実現に貢献します

コーポレート・ガバナンス

自由・公正・革新の基本思想の下、透明性や実効性が確保されたガバナンス体制を強化します

デジタルインクルージョン

情報革命を推進することで、誰もがテクノロジーの恩恵を享受できるデジタルデバイドのない世界を目指します

人権の尊重

事業活動のあらゆる場面において、サプライチェーンなどを含む全ての人々の人権を尊重します

自然資本の保全

地球市民の一員として、地球環境の保存に真摯に取り組んでいきます

サプライチェーンのサステナビリティ

あらゆる事業活動において、ステークホルダーと協働し、持続可能なサプライチェーンの構築を追求します

 

 

 ソフトバンクグループ㈱は、マテリアリティを以下のプロセスで特定しています。また、社会環境の変化、ステークホルダーの期待、ならびに当社の事業内容の変化などに応じて2年に1回以上の見直しを実施しており、変更があった場合にはソフトバンクグループ㈱ウェブサイト(https://group.softbank/sustainability)で公表します。

0102010_003.jpg

 

 マテリアリティのうち、特に優先度の高いマテリアリティとして「責任あるAI」「気候変動」「人的資本」の3つを特定し、目標・アクションプランを設定した上で継続的に取り組み、その状況をモニタリングしています。

 

(4)責任あるAIに関する取組

 ソフトバンクグループ㈱は、ワーキンググループを設置した上で、ワーキンググループでの議論を通じて適切なグループAIガバナンス体制の確立を目指していきます。

 ソフトバンクグループ㈱は、2024年4月にソフトバンクグループ㈱の関係部門および主要なグループ会社で構成される「AIガバナンスワーキンググループ」をグループ・リスク・コンプライアンス委員会の傘下に設置し、グループAIガバナンス体制の確立に向けた議論を重ねています(当期中は2024年4月、7月、10月の計3回開催)。

 

(5)気候変動に関する取組

 ソフトバンクグループ㈱は、TCFD提言に基づく情報開示を行うとともに、温室効果ガス排出量の削減に向けたグループ目標の設定およびグループ目標達成に向けた削減計画の策定を行うなど、積極的に対応を進めています。

 なお、TCFD提言に基づく気候変動情報開示の全文は、(https://group.softbank/sustainability/environment#tcfd)をご参照ください。

 

a.戦略

 ソフトバンクグループ㈱は、持株会社投資事業およびソフトバンク・ビジョン・ファンド事業(以下、併せて「当社投資事業」)を対象として、当社投資事業における気候変動リスク・機会の洗い出しと影響の分析、対応策の検討を行っています。

 具体的には、世界全体の脱炭素化が進展する1.5℃シナリオと、脱炭素化が進まず気候変動の影響が顕在化する4℃シナリオの2種類の気候変動シナリオを用いて、リスク・機会を洗い出すとともに、脱炭素社会への移行に伴う影響および気候変動による物理的な影響の分析を行いました。これらに基づき、当社として必要となる具体的な対応策を検討し、取り組みを進めています。

 

<当社投資事業におけるリスク・機会と対応>

(a)リスク・機会の概要

 当社投資事業で想定される気候変動のリスク・機会の概要は、以下の通りです。

 

機会

リスク

新規投資

気候変動対策関連のテクノロジーやサービスを提供する企業(気候テック等)への新規投資による投資利益獲得

当社の気候変動対応が不十分な場合に、投資先候補から投資受け入れを忌避されることによる投資機会の減少

既存投資

既存投資先の気候変動対応による投資先の企業価値向上

既存投資先の気候変動対応が不十分であることによる投資先の企業価値低下

資金調達

当社が着実な気候変動対応を行うことによる投資家からの支持獲得を通じた資金調達機会の拡大

当社の気候変動対応が不十分な場合に、投資家からの評価が低下することによる資金調達機会の減少

 

(b)リスク・機会の当社への影響の認識

 当社の気候変動対応が著しく不十分である場合、上記のような投資機会や資金調達機会の減少につながるリスクがあるものの、当社が温室効果ガス排出量の削減などの着実な気候変動対応を行うことで、こうしたリスクは十分に回避できると考えます。また、投資先における気候変動リスクについては、気候変動リスクが顕在化することで、投資先の財務状況に影響を及ぼす可能性があることを認識しています。当社の投資先であるAI企業のデータセンターの活用に関連する移行リスク・物理的リスクなどの重要性を踏まえ、適切な対応を検討していきます。

 一方で、当社は「情報革命で人々を幸せに」という経営理念の下、新しいテクノロジーやビジネスモデルを有する起業家とのエコシステムの構築を通じて、人類の進歩に投資し、人々の幸せに貢献することを目指しています。深刻化する自然災害などが人々の生活にさまざまな悪影響を与える中、気候変動対策に寄与するテクノロジーやサービスを提供する企業への積極的な投資が、経営理念の実現につながると同時に気候変動の解決にも大きく貢献しうるものと考えます。

 

(c)リスク・機会への対応

 上記の気候変動リスク・機会を踏まえ、当社は、以下の対応策を実施しています。

気候テック等への投資

気候変動対策関連のテクノロジーやサービスを提供する企業への投資

投資プロセスにおける対応

投資プロセスにおける気候変動リスク・機会の評価の組み込み

投資先エンゲージメント

投資先を対象としたワークショップの開催などを含む気候変動に関する投資先エンゲージメントの実施

温室効果ガス排出量の削減

再生可能エネルギー由来の電力への切り替えなど、事業活動に伴う温室効果ガス排出量の削減

 

b.指標と目標

 ソフトバンクグループ㈱は、事業活動に伴う温室効果ガス排出量のさらなる削減を目指し、2022年6月に「2030年度までにカーボンニュートラル達成」(注)というグループ目標を設定しました。本目標の達成に向けて、2024年3月に削減計画を策定するとともに、グループ全体で、再生可能エネルギー由来の電力への転換や省エネルギー化などに取り組んでいます。

 ソフトバンクグループ㈱および主要子会社の温室効果ガス排出量の実績は、ソフトバンクグループ㈱ウェブサイト(https://group.softbank/sustainability/esg_data#1)をご参照ください。

 

(注)対象はソフトバンクグループ㈱および主要子会社の事業活動に伴う温室効果ガス排出(スコープ1および2)です。

 

 

(6)人的資本に関する取組

 当社は、人材は価値創造の源泉であり、持続的成長を支える重要なステークホルダーと捉え、社員が個性や能力を最大限に発揮しながら、挑戦し活躍できる社内環境を整備することが企業価値の向上につながると考えています。

 

a.人材戦略

 ソフトバンクグループ㈱は、自律的でプロフェッショナルな人材を確保し、成長と活躍を支援することを人材戦略の柱として、継続的な取り組みを行っています。具体的な取り組みについては「b.多様性に富んだ人材マネジメント」以降をご参照ください。

 なお、子会社・グループ会社の人材戦略は、同志的結合を通じて共に成長していく「群戦略」に基づき、各社の意思決定を尊重しています。

 

b.多様性に富んだ人材マネジメント

(a)コア能力を重視したプロフェッショナル採用

 ソフトバンクグループ㈱では、Professionalism・Smart・Relationの「3つのコア能力」を重視したプロフェッショナル採用を行っています。年齢、性別、国籍、障がいの有無などにかかわらず、ポジションに最適な人材を配置することを基本とし、優秀かつ多様な人材を確保しています。

0102010_004.png

 

(b)ダイバーシティ&インクルージョン

 ソフトバンクグループ㈱は、企業の成長を支える原動力である社員が、個性と能力を最大限に発揮できるアサインメントに努めており、年齢、性別、国籍、障がいの有無などを問わない人材採用や管理職登用を推進し、誰もが活躍できる多様性に富んだ職場環境を実現しています。

 特に女性の活躍推進については、2025年3月末時点で全社員の46.4%、管理職の25.4%を女性が占め、高度な専門性を活かした職務に従事しており、今後も女性のさらなる活躍を推進していきます。なお、2024年3月に女性活躍推進法に基づく「えるぼし」(3段階目)を獲得しています。

2025年3月末時点

 

男性

女性

社員比率

53.6%

46.4%

平均年齢

42.3歳

40.1歳

平均勤続年数

10.1年

10.1年

管理職比率

74.6%

25.4%

 

 また、障がい者雇用率は、2025年3月末時点で法定雇用率2.5%を達成していますが、さらなる雇用率の向上を目指し、採用活動を継続しています。

 

(c)評価・報酬

 ソフトバンクグループ㈱では、積極的に挑戦する社員を尊重し、その成果に正しく報いるため、人事評価は信賞必罰の原則に基づいて給与・賞与額に反映しています。

 さらに、オーナーシップを持って業務に取り組むように、人事評価に基づいて株式報酬を支給するなど、企業価値向上への貢献を重視した制度になっています。

 なお、2024年度における正社員の男女別報酬水準は、管理職では、男性100に対して女性が約70、非管理職では同約90、全体では同約55となっています(連結子会社の状況につきましては、「第1 企業の概況、5 従業員の状況、(4)管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異の状況」を参照)。今後も適材適所での女性の登用を推進し、報酬差異の解消に努めていきます。

c.自律的で継続的な人材育成

(a)キャリア開発

 ソフトバンクグループ㈱は、社員が自律的にキャリア開発に取り組むことを重視しています。上長との継続的な1on1ミーティングや同僚からの多面的な360度レビューなど、個々の気づきの機会を提供することにより、内省や振り返りを行いながら成長することを促しています。

 

(b)教育・研修

 ソフトバンクグループ㈱は、社員一人ひとりが業務に必要な知識やスキルを自発的に習得できる環境を提供し、成長を継続的に支援しています。具体的には、いつでも自由に受講できる英会話教育や当社内で運営する研修プログラム(ソフトバンクユニバーシティ)を提供するほか、社外の研修も受講できるよう、各部門に教育予算を配分しています。また、キャリアステージに応じて、新卒社員や新任組織長に対する階層別研修を実施するとともに、受講後の理解度向上やスキル習得を目的としたオンライン研修も展開しています。

 さらに、業務遂行に必要な各種資格の登録や維持に関する費用を会社が負担することで、弁護士、弁理士、公認会計士、税理士などのプロフェッショナルな人材の高度化をサポートしています。2024年度には、約12%の社員に対して支援を行いました。

 

(c)グループ人材育成制度

 当社は、社員が自発的に人事異動を実現できる「フリーエージェント制度」や、次世代のグループ経営人材を発掘・育成するための「ソフトバンクアカデミア」、さらには戦略的なシナジーグループ企業群を実現するために社内起業家を養成するプログラム「ソフトバンクイノベンチャー」など、社員が当社内で活躍できる多彩な機会を提供しています。

 

(d)二重就業

 ソフトバンクグループ㈱では、多様な経験を通じて自己成長する機会として、二重就業(副業)も可能としています。

 

d.職場環境づくり

(a)勤務環境整備

 ソフトバンクグループ㈱は、社員のワークライフバランスを尊重し、仕事と生活の両立を支援するために、コアタイムを設けないスーパーフレックス制度や在宅勤務を導入し、時間や場所に捉われず、仕事を行うことができる環境を提供しています。また、働きやすい職場づくりにつながる活動として、社員交流会の実施などコミュニケーション促進にも取り組んでいます。

 

(b)育児支援

 働く父母にとって、子どもの成長に関わる機会は非常に重要であり、社会の発展に寄与する観点からも、積極的な取り組みが必要です。ソフトバンクグループ㈱では、配偶者が出産した男性正社員のうち、育児休業等を取得した割合が2024年度で約60%でした(連結子会社の状況につきましては、「第1 企業の概況、5 従業員の状況、(4)管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異の状況」を参照)。

 仕事と家庭の両立支援として、「こども家庭庁ベビーシッタークーポン」の活用による費用補助や、産前産後休暇・育児休業・出生時育児休業時における積立年休の充当など、収入面での懸念を軽減する施策を行っています。また、企業主導型保育園の共同利用の活用により、社員の早期復職を実現しています。その他、両立支援休暇の拡充や育児休業中社員同士の交流の場を設けました。

 

(c)ウェルビーイング

 純粋持株会社であるソフトバンクグループ㈱は、最大の資産である社員の健康管理や維持・増進のためにさまざまな取り組みを行っています。2023年度からは、通常の健康診断に加え、各世代に合わせたオプション検査が会社負担で受診できる制度を導入し、2024年度の利用実績は約37%です。

 また、年休取得の促進活動も継続的に行っており、2024年度の年休取得率は約56%(一人当たり13.9日)でした。一般事業主行動計画の目標達成に向けて今後もさらなる取得率向上を目指します。

 なお、2024年4月に新設したセルフケア休暇は、女性特有の体調不良時や不妊治療・更年期症状等で取得でき、男女問わず利用されています。今後もさらに社員サポートの充実を図ります。

 

(d)従業員エンゲージメント

 当社では、年に1回、全社員を対象とした満足度調査を実施しており、2024年度は、ソフトバンクグループ㈱を含む国内グループ企業30社が参加しました。この調査は、当社グループの特性を踏まえて開発されたもので、組織(仕事・職場・上司)および会社への満足度についての回答結果を項目ごとにスコア化して、課題を早期に発見します。この結果を継続的にモニタリングすることで、強い組織づくりと社員のモチベーション向上につなげています。

 ソフトバンクグループ㈱では、全社員の87%が回答し、引き続き高い満足度が示されました。今後も、社員一人ひとりがやりがいを持って働ける職場環境を実現するため、エンゲージメントのさらなる向上に取り組みます。

 

3【事業等のリスク】

本有価証券報告書の提出日現在において、投資家の投資判断に重要な影響を及ぼす可能性がある主要なリスクは、以下の通りです。これらのリスクが顕在化した場合には、

・NAV(Net Asset Value:保有株式価値-調整後純有利子負債で算出(注1))

・LTV(Loan to Value:調整後純有利子負債÷保有株式価値で算出(注1)。保有資産に対する負債の割合)

・財政状態および経営成績

・ソフトバンクグループ㈱の分配可能額

に悪影響を及ぼす可能性があります。これらのリスクは、当社における全てのリスクを網羅しているものではなく、加えて、その対応策が十分に奏功する保証もありません。なお、将来に関する事項については別段の記載のない限り、本有価証券報告書の提出日現在において判断したものです。

 

(注1)保有株式価値および調整後純有利子負債は、いずれもアセットバック・ファイナンスにおける満期決済金額または借入金を除く。また、調整後純有利子負債の算出からは、当社のうち、上場子会社であるソフトバンク㈱(同社子会社を含む)およびアーム、ならびにSVF1、SVF2、LatAmファンドなど独立採算で運営される事業体に帰属する有利子負債および現預金等(債券投資を含む)を除く。

 

(1)グループ全体

当社は、戦略的投資持株会社であるソフトバンクグループ㈱が、子会社・関連会社および投資先(以下「投資先」)を統括するマネジメント体制の下、ASIの実現に不可欠な分野で積極的に投資・事業活動を行うとともに、生成AI分野をリードする企業への投資や連携を進めています(注2)。当社の事業遂行における主要なリスクは、以下a~cに記載する通りです。

加えて、ソフトバンク・ビジョン・ファンド事業、ソフトバンク事業、アーム事業における主要なリスクについては、それぞれ「(2)ソフトバンク・ビジョン・ファンド事業」と「(3)ソフトバンク事業」「(4)アーム事業」をご参照ください。

 

(注2)AIに関する新たな取り組みとして、米国のAI研究開発企業であるOpenAI Inc.およびその関係会社(以下「OpenAI」)のためにAIインフラストラクチャーを米国内で構築する「Stargate Project」を2025年1月に、企業用最先端AI「クリスタル・インテリジェンス」の開発・販売に関するOpenAIとのパートナーシップを2025年2月に、それぞれ発表しました。また、OpenAI Inc.の営利子会社であるOpenAI Global, LLCに最大400億米ドル(外部投資家へのシンジケーション予定額100億米ドルを差し引いた当社の実質的な出資額は最大300億米ドル)の追加出資を行うことについて、OpenAIと2025年3月に合意しました。このほか、Armコンピュートプラットフォームに基づいた高性能・省エネルギー・持続可能なAIコンピューティングに特化した半導体設計企業である米国のAmpere Computing Holdings LLCの全持分を取得することについて、同社および同社の特定の持分保有者と2025年3月に合意しました。これらの取り組みの進捗や成否は、AI技術の進歩や競争環境の変化、法令等の新設・強化、規制当局からの必要な承認等の取得状況、OpenAI Global, LLCに対する追加出資(2025年12月に出資時期を迎える予定のセカンドクロージングにおける出資額である最大300億米ドル)に関しては同社の経済的分配構造の廃止および新会社の優先株式の発行等の完了など、さまざまな影響を受ける可能性があり、当社の想定通りに進まない可能性もあります。

 

a.投資活動全般

(a)市場環境

当社は、AIに関連した情報・テクノロジー企業を中心に投資していますが、これらの企業に対する評価は技術進歩や市場規模の成長見通しによって大きく変動することがあります。したがって、当社の保有株式価値も、マクロ経済や金融政策、株式市場の動向に加え、こうしたセクター特有の要因によっても影響を受ける可能性があります。また、非上場の投資先は、ベンチャー・キャピタル市場や新規株式公開市場の動向にも影響を受けます。

2023年9月に上場したアームは、上場後も引き続き連結子会社であるため、上場後の株価の変動は財政状態および経営成績に影響を及ぼすことはありませんが、アーム株式は当社の保有株式価値に占める割合が高いため、その株価の変動は当社の保有株式価値へ大きな影響を与えます。

また、当社は外貨建て資産・負債の保有に伴い、為替変動の影響を受ける可能性があります。

なお、当社は、市場変動の影響に備えるべく、安定的な財務運営を目指しています。詳細は、「第2 事業の状況、1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等、(4)経営環境および優先的に対処すべき課題 2 財務方針の堅持」をご参照ください。

(b)国際情勢や規制の動向

当社は、日本だけでなく、米国、中国、インド、欧州・中南米諸国などの海外の国・地域に展開する企業等に投資しているため、これらの国・地域における政治・軍事・社会情勢の変化および法令・規制・制度など(以下「法令等」)の新設・強化(解釈や運用の変更を含みます。)により、当社の投資活動や投資先の事業活動が期待通りに展開できない可能性があります。法令等には、投資に関するもの以外に、AI、半導体、データセンター、エネルギー、通信サービス、インターネット広告、イーコマース、金融・決済、自動運転、ロボット、ロジスティクスなどの事業やその他の企業活動に関するもの(事業許認可、国家安全保障、輸出入、個人情報・プライバシー保護、環境、製造物責任、公正な競争、消費者保護、贈賄禁止、労務、知的財産権、マネー・ロンダリング防止、租税、為替に関するものを含みますが、これらに限りません。)が含まれ、当社の投資活動や投資先の事業活動は、これらの法令等の影響を直接または間接的に受けます。昨今、ロシア・ウクライナ情勢、中東情勢、米中対立の激化などを背景に、世界各国において国家安全保障の観点からの規制強化の動きも見られます。例えば、特定の国・企業に対する投資を制限する法令等の導入により、当社の投資活動が制約される可能性があるほか、投資回収の遅滞、投資回収における条件の悪化などが起こる可能性があります。また、各国において、特定の先端技術やその関連製品に対する輸出管理の強化や関税政策の変更に向けた動きも見られます。こうした地政学リスクの高まりにより、さらなるサプライチェーンの分断や、特定の製品・技術に関する輸出入の制限、貿易コストの上昇が生じた場合、投資先の事業や業績が悪影響を受ける可能性があります。

加えて、当社の投資活動に関係各国の規制当局からの承認等が必要となる場合や、投資先への関与に制約が加えられる場合があります。必要な承認等が得られないなど制約を回避できない場合には、当社の期待通りに投資や売却を実行できない可能性があります。

なお、当社は、外部のアドバイザーからの助言を受けながら、これらの外部環境の変化に関する情報収集を行い投資活動に及ぼす影響を検討するとともに、それぞれの規制に対応するよう努めています。また、投資ポートフォリオにおける特定の国・地域、業種への集中度を継続的に監視することなどにより、リスクを把握し経営判断に反映しています。

 

(c)投資先の事業展開

当社は、AIに関連した情報・テクノロジー企業を中心に投資を行い、中長期的視点から投資成果を最大化することを目指していますが、投資先のテクノロジーやビジネスモデルの陳腐化、競争環境の激化などにより、投資決定時に想定した通りに投資先が事業を展開できず、業績が大幅に悪化したり、事業計画の大幅な見直しを迫られたりする可能性があります。また、投資先が想定通りに事業を展開できない場合、当社は、投資先の株式価値の向上に必要と判断すれば、投資先に対し融資や債務保証、追加出資などを行うことがあり、その場合には、当該投資先に対するエクスポージャーが増加することになります。ただし、当社は救済のみを目的とした投資等は行わないことを基本方針としています。

なお、当社は、投資実行後も、投資先の財務・経営情報や重要な経営指標、投資決定時の事業計画と実際の進捗の差異、コーポレート・ガバナンスの状況など、主なリスク要因を継続的に監視し、必要に応じて投資先の経営改善のための助言や、役員の派遣などを行っています。

 

(d)投資判断

当社は、投資の意思決定において、対象企業のテクノロジー、ビジネスモデル、競争環境、財務内容、法令遵守、ガバナンスまたは重要な影響力を持つ創業者や経営者の資質などに関するリスクを見誤ったまま投資判断を下す可能性があります。特に非上場企業においては、当社が投資判断の基礎とした情報の透明性、正確性、完全性が十分ではない可能性が相対的に高くなります。

なお、当社は、投資判断プロセスにおいて、社内関係部門による調査・検討に加え、必要に応じて外部の財務・法務・税務アドバイザーなどの協力を得ながら、対象企業の重要項目についてデュー・デリジェンスを実施し、投資に係るリスクを把握するよう努めています。それらの検討結果を踏まえて、ソフトバンクグループ㈱の取締役会、取締役会から権限を委譲された投融資委員会(「第4 提出会社の状況、4 コーポレート・ガバナンスの状況等」を参照)、またはファンド運営子会社の投資委員会で投資判断を下しています。

 

b.資金調達

当社は、金融機関からの借入や社債のほか、保有資産を活用した資金調達(アセットバック・ファイナンス)、保有資産の売却などの多様な調達手段を活用しています。

金融機関からの借入や社債については、金利変動や信用格付けの変更などにより調達環境が悪化した場合、資金調達を予定した時期・規模・条件で行えない可能性があります。また、これらの債務には、各種コベナンツが付されていることがあり、抵触した場合、当該債務について期限の利益を喪失する可能性があります。さらに、それに伴い、その他の債務についても一括返済を求められる可能性があります。

アーム株式などをはじめとした上場および非上場株式を活用したアセットバック・ファイナンス(株式先渡売買契約を除きます。)については、対象となる保有株式の価値が下落した場合に、追加で現金担保の差し入れが必要となる可能性や期限前の返済義務が発生する可能性があることに加えて、新たな資金調達やリファイナンスに支障が生じる可能性があります。

保有資産の売却による資金調達については、市場流動性の低迷、契約上の売却制限、予定していた新規株式公開の遅延などにより、必要な時期に想定した価格で売却できない可能性があります。

なお、当社は、資金調達に係るリスクをコントロールするため、市場環境を注視した上で適切と考える時期、手法で資金調達を実施しています。特に金融機関からの借入、社債の発行やアセットバック・ファイナンスの実施にあたっては、様々なシナリオを想定した事前の検討・対応を行うことで各資金調達の安定性を高めています。こうした対応により、財務方針に基づき十分な手元流動性を維持することに努めています。

 

c.経営陣

当社の主要な子会社はそれぞれのCEOなどの下で、投資ファンドは後述のファンド運営子会社のCEOの下で、いずれも自律的に運営を行っていますが、当社の経営において中心的な役割を担っている代表取締役 会長兼社長執行役員 孫 正義に不測の事態が生じた場合には、当社の活動全般に支障が生じる可能性があります。

このような不測の事態が発生した場合における意思決定プロセスへの影響を最小限に留めるため、コンティンジェンシープランを策定しています。また、指名報酬委員会において、サクセッションプランについても定期的に議論しています。指名報酬委員会の活動状況については、「第4 提出会社の状況、4 コーポレート・ガバナンスの状況等」をご参照ください。

 

(2)ソフトバンク・ビジョン・ファンド事業

ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF1、SVF2およびLatAmファンド、以下「SVF」)は、主にAIを活用した成長可能性が大きいと考えるテクノロジー企業への投資を目的としたファンドであり、ファンドの存続期間の中でリターンを最大化することを目指しています。ソフトバンクグループ㈱は、各投資ファンドにリミテッド・パートナーとして出資を行っており、また、各投資ファンドを運営する当社100%子会社(SVF1を運営するSBIAおよびSVF2とLatAmファンドを運営するSBGA、以下「ファンド運営子会社」)は、各投資ファンドの事業活動に応じて管理報酬、業績連動型管理報酬および成功報酬を受け取ります。

SVFを通じた投資やその運営における主要なリスクは、以下のa~dに記載する通りです。なお、本(2)において、「投資先」はSVFの投資先を意味します。

 

a.投資先の事業展開

多くの投資先は、AIやビッグデータなどの新技術を活用し、従来にはない新たなビジネスモデルの実現を目指しています。このような企業が、計画通りに事業を展開し、利益の獲得や強固な事業基盤の確立を果たすには様々なリスクを伴います。例えば、技術の開発やビジネスモデルの実現を想定通りに進められず顧客や市場に合致する商品・サービスを提供できない、スケールメリットを享受するまでの規模に至らず事業基盤の維持や技術開発に必要な費用を十分に確保できない、最新の技術を持つ他の新規参入企業や経営基盤の強固な既存企業との競争に敗れる、事業・地域の多角化への対応や経済・事業環境の変化への対応ができない、広告宣伝活動や営業人員の確保などの顧客獲得費用が計画を大幅に上回り利益を確保できない、複雑化する各国・地域のデータ保護やAI規制に対応できないまたは対応コストが増加する、などのリスクがあります。

また、国家安全保障における先端技術の戦略的重要性は近年高まっており、米中関係の悪化などを背景として、各国における規制が強化される可能性があり、その結果投資先の事業展開や期待する投資リターンに悪影響を及ぼす可能性があります。

さらに、事業展開に必要な資金を確保するに当たり、資金調達環境などが悪化した場合には、想定通りの条件での調達ができず、事業の成長を損なう大幅なコスト削減を迫られたり、当社持ち分の希薄化を伴う資金調達を余儀なくされたりする可能性があります。

なお、ファンド運営子会社では、投資承認プロセスや投資後の継続的なモニタリングを通じて、投資リスク部門が中心となり、これらのリスクの早期の把握と軽減に努めています。

 

 

b.投資におけるエグジット機会の不足

SVFの保有株式等は流動性が低いものが多く、また、経済、法律・規制、政治などの要因による影響も受けるため、当初の計画通りに資金化できない可能性があります。さらに、契約またはその他の制約により、SVFは特定の株式等の売却を一定期間禁止される場合があり、有利な市場価格で売却する機会を逸する可能性があります。

なお、エグジット戦略はファンド運営子会社の投資委員会において重要な検討事項となっており、慎重な議論を重ねた上で承認されます。エグジット戦略は、投資部門が継続的に見直し、更新するとともに、投資リスク部門がそれに対し様々な市場環境を想定したストレステストを実施しています。景気後退の可能性や、エグジットに時間を要する投資がありうることを想定し、SVFは存続期間が長期に設定されています。

 

c.保有する上場株式等

SVFの投資ポートフォリオには上場株式等が含まれています。これらの資産の保有には、投資先に関する情報の開示義務の増加、当該株式等の処分におけるSVFの裁量に対する制限、投資先の役員および取締役(ファンド運営子会社の従業員である場合を含みます。)に対する投資先株主からの訴訟提起およびインサイダー取引の告発の可能性の増加、などのリスクを伴います。また、これらのリスクに対応する費用が増加する可能性があります。

なお、ファンド運営子会社は、計画的に保有株式等を売却する仕組みを構築しており、市場への影響を最小限に抑えつつ、売却額の最大化に努めています。また、米ドルに対する為替レートが不安定な通貨建ての株式等の為替リスクをヘッジする必要性について検証しています。

さらに、SVFが上場株式等を管理する上で発生する業務運営上のリスクやコンプライアンスリスクは、ファンド運営子会社のオペレーション、コンプライアンス、リスク管理の各部門が関与するコントロール・フレームワークを通じて管理されており、これにはポリシー、社員研修、社内通報制度、取引相手の確認などの取引承認プロセス、および取引後のモニタリングが含まれます。

 

d.人材の確保・維持

ファンド運営子会社は、投資ファンドの保有株式価値の最大化を目的として、投資先を慎重に選定することに加え、投資後の成長を促す様々な支援を行います。このような取り組みの成功には、テクノロジーや金融市場に関する幅広い知見や投資事業の運営における専門的スキルを保有する有能な人材の確保・維持が不可欠です。有能な人材を十分に確保・維持することができない場合は、運営する投資ファンドの投資規模の維持・拡大や将来の投資成果に悪影響を及ぼす可能性があります。

なお、ファンド運営子会社は、投資・運用に求められる多様なノウハウを維持すべく、定期的な人事評価や組織の見直しに加え、研修や能力開発、スタッフが潜在能力を最大限に発揮できるよう行われる社内異動に至るまで、様々な人材サポートプログラムを提供しています。

 

(3)ソフトバンク事業

ソフトバンク㈱およびその子会社(以下「ソフトバンク㈱グループ」)は、コアビジネスである通信事業に加え、「Yahoo! JAPAN」、「LINE」、「PayPay」などのサービスを提供しており、情報・テクノロジー領域のさまざまな分野でビジネスを展開しています。ソフトバンク㈱グループにおける主要なリスクは、以下のa~fに記載する通りです。

 

a.市場環境の変化、他社との競合

通信関連市場は、競争促進政策の強化や異業種からの新規参入などによって経営環境が大きく変化し、利用者からはより低廉で多様なサービスを求める動きが高まっています。これらの市場環境に対応するため、ソフトバンク㈱グループは消費者の志向に合ったサービス・商品・販売方法を導入していますが、料金プランや通話・データ通信の品質等の面で消費者の期待に沿えない場合やソフトバンク㈱グループが提供するサービス・商品に重大な瑕疵が存在した場合、既存の契約者数を維持できない可能性があります。また、法令・規制・制度などの制定、改正または解釈・適用の変更等により、ソフトバンク㈱グループが顧客に提供できるサービス・商品・販売方法および料金プラン等が実質的な制約を受け、収入の減少や金銭的負担の発生・増加が起きる可能性があります。

ソフトバンク㈱グループの競合他社は、その資本力、サービス・商品、技術開発力、価格競争力、顧客基盤、営業力、ブランド、知名度およびこれらの総合力などにおいて、ソフトバンク㈱グループより優れている場合があります。競合他社がその優位性を現状以上に活用してサービスや商品の販売に取り組んだ場合、ソフトバンク㈱グループが価格競争を含む販売競争で劣勢に立たされ、ソフトバンク㈱グループの期待通りにサービス・商品を提供できない、顧客を維持・獲得できない、またはARPU(1契約当たりの月間平均収入)が低下することも考えられます。また、設立間もない新興企業や新規参入者のサービス・商品がソフトバンク㈱グループのサービス・商品に対する競合となる可能性、またはソフトバンク㈱グループが競争優位性を発揮するための新規サービス・商品の開発に費用がかかる可能性があります。

ソフトバンク㈱グループは、重複する経営資源の効率化、意思決定の迅速化や事業間におけるより大きなシナジーの創出などを目的として、ソフトバンク㈱グループ内部において再編を行う場合があります。しかし、期待した再編の効果を十分に発揮できない場合、展開するサービスの連携の不調・遅れ、戦略やシナジーへの悪影響、再編に伴う混乱などの問題が発生する可能性があります。

 

b.技術・ビジネスモデルへの対応

ソフトバンク㈱グループは、技術やビジネスモデルの移り変わりが早い情報産業を主な事業領域としています。特に生成AIやAIエージェントに関する技術の分野の発展は目覚ましく、既存のビジネスモデルに大きな影響を与えています。ソフトバンク㈱グループは、常に、最新の技術動向や市場動向の調査、技術的優位性の高いサービスの導入に向けた実証実験、および他社とのアライアンスの検討などの施策を講じていますが、新たな技術への対応が想定通りの時間軸に沿って進むこと、想定通りの効果を上げること、共通の基準や仕様が確立すること、および商用性を持つようになることについての保証はなく、また、これらの施策を行ったとしても、新たな技術やビジネスモデルの出現を含む市場環境の変化にソフトバンク㈱グループが適時かつ適切に対応できず、または迅速かつ効率的に設備を配備できないことにより、市場変化に適した優れたサービス、技術やビジネスモデルを創出または導入できない可能性があります。その場合、ソフトバンク㈱グループのサービスが市場での競争力を失い、ソフトバンク㈱グループが維持・獲得できる契約数が抑制される、またはARPUが低下する可能性があります。

 

c.情報の流出や不適切な取扱いおよびソフトバンク㈱グループの提供する商品やサービスの不適切な利用

ソフトバンク㈱グループは、事業を展開する上で、顧客情報(個人情報を含みます。)やその他の機密情報を取り扱っています。ソフトバンク㈱グループは、情報セキュリティ管理責任者の設置や役職員へのセキュリティ教育・訓練をはじめ、適切に情報資産を保護・管理するための体制構築を図っていますが、ソフトバンク㈱グループ(役職員や委託先の関係者を含みます。)の故意・過失、または悪意を持った第三者によるサイバー攻撃、ハッキング、コンピューターウイルス感染、その他不正アクセスなどにより、これらの情報の流出や消失などが発生する可能性があります。

また、ソフトバンク㈱グループの提供する商品やサービスが詐欺等の犯罪等に不正に利用された場合、ソフトバンク㈱グループの信用および信頼の低下を招く可能性があります。

こうした事態が生じた場合、ソフトバンク㈱グループの信頼性や企業イメージが低下し顧客の維持・獲得が困難になるほか、競争力の低下や、損害賠償やセキュリティシステム改修のために多額の費用負担が発生する可能性があります。

なお、特に主要な関係会社であるLINEヤフー㈱においては、同社が2023年11月27日に公表した不正アクセスの事案に関し、総務省および個人情報保護委員会への報告を行い、行政指導および勧告を踏まえた対応等を推進しています。また、2024年11月に同社が提供するサービスである「LINEアルバム」においてアルバムのサムネイル画像に他の利用者の画像データが紛れ込むという不具合が発生し、2025年3月8日に総務省より行政指導を受けました。同社は、多数のユーザーを抱えるプラットフォーム事業者としての信頼を損なう重大な事態であると重く受け止め、再発防止策を推進しています。さらに、LINEヤフー㈱としての組織再編以降、同社およびそのグループ会社においては、グループ全体のデータガバナンスが円滑かつ適切に機能するよう体制を整備し、継続的にその強化に取り組んでいます。

しかし、LINEヤフー㈱およびソフトバンク㈱の取り組みが適切ではない、または十分ではないと判断された場合、ソフトバンク㈱グループの信用の毀損、ソフトバンク㈱グループのサービスへの需要の減少等により、ソフトバンク㈱グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。

 

d.業務の委託

ソフトバンク㈱グループは、提供する各種サービス・商品に係る販売、顧客の維持・獲得、通信ネットワークの構築およびメンテナンス、ならびにそれらに付随する業務の全部または一部について、他社に委託しているほか、情報検索サービスにおいて他社の検索エンジンおよび検索連動型広告配信システムを利用しています。ソフトバンク㈱グループは、サプライチェーン上のリスクの低減に努めていますが、業務委託先(役職員や関係者を含みます。)がソフトバンク㈱グループの期待通りに業務を行うことができない場合や、顧客に関する情報の不正取得や人権侵害等に関連する問題を起こした場合、ソフトバンク㈱グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。

また、上述のような事象により当該業務委託先の信頼性や企業イメージが低下した場合には、ソフトバンク㈱グループの信頼性や企業イメージも低下し、事業展開や顧客の維持・獲得に影響を及ぼす可能性があります。このほか、当該業務委託先において法令などに違反する行為があった場合、ソフトバンク㈱グループが監督官庁から警告・指導を受けるなど監督責任を追及される可能性があるほか、ソフトバンク㈱グループの信頼性や企業イメージが低下し顧客の維持・獲得が困難になる可能性があります。

 

e.関連システムの障害などによるサービスの中断・品質低下

ソフトバンク㈱グループでは、通信ネットワークや顧客向けのシステム、「Yahoo! JAPAN」、「LINE」、「PayPay」をはじめとする各種サービスを提供しています。これらサービスにおいて、人為的なミスや設備・システム上の問題(自然災害など予測困難な事情に起因するものも含みます。)、第三者によるサイバー攻撃、ハッキングその他不正アクセスなどに起因して各種サービスを継続的に提供できなくなること、または各種サービスの品質が低下することなどの重大なトラブルが発生する可能性があります。ソフトバンク㈱グループは、ネットワークを冗長化するとともに、障害やその他事故が発生した場合に備え、復旧手順を明確にしています。また、障害やその他事故が発生した場合、規模に応じて事故対策本部を設置するなど、適切な体制を構築して復旧に当たっています。これらの対策にもかかわらず、サービスの中断や品質低下を回避できず、サービスの中断・品質低下による影響が広範囲にわたり、復旧に相当時間を要した場合、信頼性や企業イメージが低下し、顧客の維持・獲得が困難になる可能性があります。

 

f.経済安全保障

経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律(以下「経済安全保障推進法」)に基づき、2023年11月16日にソフトバンク㈱およびLINEヤフー㈱は電気通信事業における特定社会基盤事業者(基幹インフラ事業者)に指定されました。2024年5月17日から本制度の規律が適用されていますが、ソフトバンク㈱またはLINEヤフー㈱が経済安全保障推進法が定める国による審査に適切に対応できなかった場合、当局からのソフトバンク㈱またはLINEヤフー㈱に対する事業の是正や中止の勧告、命令等の行政措置、それに伴う事業の一時停止、遅延、追加の設備投資ならびに追加の対策やコスト、ソフトバンク㈱グループの信用の毀損が生じる可能性があります。

 

(4)アーム事業

アームは主に、CPU製品やその他の関連製品など、高性能かつ高エネルギー効率のアームコンピュートプラットフォームの開発とライセンス事業を行っています。アームは、CPU製品やその他の関連製品を、自社チップの設計を行う半導体企業やOEMなどにライセンスし、そこで設計されたチップは、デバイスメーカーによってスマートフォン、タブレット、PC、自動車などの最終製品に組み込まれます。アームの収益は、主に、アームのテクノロジーのライセンス収入およびライセンス先の企業がアームの製品を含むチップを販売することにより生じるロイヤルティー収入からなります。アームの事業における主要なリスクは、以下のa~kに記載する通りです。

 

a.業界動向の変化

アームのテクノロジーやサービスに対する需要は、半導体およびエレクトロニクス産業の動向に大きく依存しています。これらの産業は、変化と競争が激しい上、各世代のチップの平均販売価格がそのライフサイクルを通じて下落するという特徴があります。また、アームのライセンス収入も、半導体企業およびデバイスメーカーがアームの新しい製品を採用する頻度に大きく依存しているため、これらの企業の製品に対する需要の影響を受けます。デバイスメーカーによる、アームベースのチップへの需要の減少は、アームのロイヤルティー収入に悪影響を及ぼします。

アームの成功は、その製品およびサービスが、半導体企業やデバイスメーカーに受け入れられるかどうかに大きく依存しています。市場には競合するアーキテクチャーがあり、アームの製品が市場で引き続き受け入れられる保証はありません。

また、半導体およびエレクトロニクス産業はますます複雑化し、設計および製造コストは増加の傾向にあります。そのため、アームの顧客の多くは、設計自動化ツール(EDA)や設計した半導体の製造にサードパーティを利用しています。アームはこれらのサードパーティと緊密に連携し、自社の技術とサードパーティのEDAや製造プロセスの互換性を確保しています。しかしながら、互換性の確保が適切に行われなかった場合や、EDAや半導体設計に関する情報へのアクセスが妨げられた場合、アームの製品に対する需要が減少する可能性があります。

なお、これらのリスクを軽減するために、アームの経営陣は定期的に戦略と長期の製品開発計画を見直し、将来のニーズを満たす製品の開発に努めています。また、半導体やエレクトロニクス業界の多くの顧客や企業と連携することで、状況の変化を察知し、適切な対応を図る体制を整えています。

 

b.競合

アームは、他社との競争に加え、設計および製造技術の進歩、エンドユーザーのニーズや業界標準の変化、頻繁な新製品の導入やアップグレードなど、変化の激しい事業環境に晒されています。x86のような確立された技術や、RISC-Vのようなオープンソースの技術など、既存および新規の市場参加者との競合が今後も継続すると予想されます。

アームの競合他社が、開発・広告宣伝・販売により多くの経営資源を投入することで、価格、顧客対応、性能、品質の面でより優れた製品・サービスを提供した場合、アームは競争上の優位性を確保するため、相当規模の経営資源の投資が必要となる可能性があります。

なお、アームは、主要な半導体企業と密接に連携し、リスクの軽減に努めています。アームは、アームベースのチップの構築や適合するソフトウエア開発の知識を持つ多くのエンジニアからなるエコシステムを確立しており、それに投資することで、様々なアームベースのチップの開発・維持コストのさらなる削減に努めています。

 

c.新製品の開発およびビジネスモデルの変更

競争力を維持するため、アームは、顧客の要望や市場機会に対応し、既存の製品・サービスの強化や、新しい製品・サービスの創造、開発を継続することが不可欠です。そのため、アームは経営資源を投入し、新規市場の開拓や、さまざまな最終市場における既存および潜在顧客に向けて、新たな製品やソリューションを検討しています。これには、アームのIPだけでなく、コンピュート・サブシステム、チップレット、およびエンド・チップ・ソリューションなど、IP設計を超えたソリューションも含まれます。こうした新規市場への参入や新たなソリューションの提供は、さまざまな要因により成功しない可能性があります。

例えば、新規市場への参入や新たな製品やソリューションを提供する企業と同様に、アームも、すでに確立された地位を持つ企業、長年にわたる顧客関係やブランド認知度を有する企業、またはアームよりも多くの経営資源を投入している企業との競争に直面します。また、アームの顧客が従来のアームのIPを引き続き自社製品やソリューションへ組込むことを望む場合、アームが提供する統合的なコンピュート製品は、想定した時期に採用されない、または全く採用されない可能性もあります。さらに、アームの製品提供における進展や、将来的な製品・サービスの変更により、重要な顧客などの関係者との間に対立またはその懸念が生じた場合、これらの顧客などは、アームとの関係を解消また大幅に縮小し、代替アーキテクチャーや競合他社の製品を使用する可能性があります。

また、アームは、競争力を維持するために、製品やサービスの価格を引き下げたり、顧客との取引の仕組みや条件、またはビジネスモデルを変更したりする可能性があります。これらの変更が顧客に受け入れられる保証はありません。そのような場合、アームは想定した金額や時期で収益を得られない、または全く収益を得られない可能性があります。

加えて、ビジネスモデルの変更後において、将来締結されるライセンスの数や金額の増加が従来と同じようには実現せず、または全く実現せず、その結果、ライセンス収入およびロイヤリティ収入が予想を下回る可能性があります。さらに、新しいビジネスモデルの導入は、顧客にとってアームの製品の魅力を低減させてしまうなど、想定通りの結果を得られない可能性があります。

なお、これらのリスクを軽減するため、アームは新しいビジネスモデルに関して、主要な変更を実施する前に顧客と十分な議論を行うなど、広範な検討を実施し、リスクの特定と対応に努めています。

 

d.研究開発

アームは、競争力を維持するため、市場参加者による次世代技術の採用が進む中で、新製品や応用分野を継続的に創造・開発し、既存の製品やサービスを強化する必要があります。また、進化する市場のニーズに対応するには、適切な人員や開発技術など、研究開発に必要な経営資源を十分に確保・維持することが、アームの持続的な成功にとって不可欠です。しかし、アームの資源確保が不十分である可能性や、誤った将来需要の見通しに基づいて研究開発を進める可能性があります。

なお、これらのリスクを軽減するために、アームの経営陣は研究開発の資源配分について定期的に見直しを行っています。

 

e.顧客の集中

アームの収益の大部分は少数の主要顧客に依存しており、これらの主要顧客の事業の動向に影響を受ける可能性があります。

なお、アームは、毎年複数のプロセッサーを開発することで、特定の顧客がアーム製品の導入を見送った場合の影響の軽減に努めています。

 

f.世界市場の細分化

アーム製品が属する世界市場は、地政学的影響を受けることがあります。地政学的要因や政治的対立によって、世界共通のアーキテクチャーの役割が低下し、国・地域特有の製品への需要が増加し、世界の半導体市場の細分化が起きる可能性があります。これは地域ごとの多様な製品をサポートするための費用の増加や、アーム製品を使用しなくなった地域における収益の減少、新規市場における将来のライセンス収入の機会損失につながる可能性があります。

なお、アームは、規制当局に対する働きかけや、将来の顧客ニーズに即した製品開発を行うために戦略の見直しを行うことで、これらのリスクの軽減に努めています。

 

g.中国への依存

アームは、収益の一定部分を中国の半導体企業およびOEM、ならびに中国に半導体や最終製品を輸出する半導体企業およびOEMから得ています。アームにおける中国関連市場での収益の維持が困難になる場合、中国における新規および既存の市場へのアクセスが閉ざされる場合、新規事業での成長の遅れまたは中国における市場シェアが低下する場合には、アームの業績や競争力に悪影響を与える可能性があります。

中国は半導体産業の収益のうち重要な部分を占めています。しかし、貿易や国家安全保障政策、債務残高の継続的な増加などにより中国経済は不確実性が高く、中国の半導体産業および関連産業の短期的な成長見通しは、不透明な状況にあります。このような状況が長期化する場合、アームに悪影響を及ぼす可能性があります。

また、米国および中国政府による貿易政策や国家安全保障政策を含む規制および法的措置により、アームの中国でのビジネスおよび中国の顧客やサプライヤーとの取引は現在すでに一定の制約に服していますが、今後も取引が制約される、または禁止される可能性があります。

なお、これらのリスクを軽減するために、アームは、米中における政策の動向を的確かつ迅速に把握することに努めています。また、アーム・チャイナ(注3)における収益見通しやライセンス契約を定期的にレビューすることで、中国市場の動向をモニタリングするとともに、その対応に努めています。

 

(注3)アーム・チャイナは、当社の子会社と中国投資家による合弁会社です。アームはこの会社を通じて中国市場にアクセスしています。

 

h.所有する知的財産権の保護

アームの事業の成功には、その知的財産権の保護が不可欠です。アームは、その保護に当たり、主に特許権・著作権・企業秘密・商標関連の法律や、従業員との機密保持契約、ならびに顧客などの関係者とのライセンス契約に依拠していますが、知的財産権を保護するためのアームの措置が不十分である可能性があります。加えて、アームが希望する特許権を取得できない、または特定の法域においては、アームが保持する知的財産に関する契約上の権利などが制限される可能性があります。アームがこれらに関連する法律や規制に適切に対応できない場合、および関連する法域において知的財産権や契約上の権利を行使できない場合、アームの事業に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、特許権およびその他の知的財産権を行使するために、訴訟が必要となる場合があります。そのような訴訟は巨額の費用が必要となる、または経営陣やエンジニアの通常業務に支障をきたす可能性があります。

一例として、アームは、Qualcomm, Inc. および Qualcomm Technologies, Inc.(両者を含めて「Qualcomm」)、Nuvia, Inc.との係争中の訴訟に関与しています。このような訴訟の結果や、それによる現在主要顧客であるQualcommとの関係や収益への影響は不透明です。さらに、アームによる訴訟への関与が、業界、Qualcommやその他の顧客などとの関係において風評被害が生じる可能性があります。

なお、アームは、関連法域における特許権、訴訟、係争事案の動向を注意深く監視することにより、これらのリスクの軽減に努めています。

 

i.知的財産権の侵害

アームは、第三者により知的財産権の侵害、濫用などを主張されたことがあり、今後も同様の主張がなされる可能性があります。そのような法的主張を受けた場合、顧客との契約に基づき、顧客に対する補償を行わなければならないことがあります。さらに、そのような法的主張により、高額かつ長期にわたる訴訟、ロイヤルティーまたはライセンス契約の締結、損害賠償または販売差止、特許の無効化、顧客からのライセンス料の返還または支払い免除の要求、製品の設計やブランドの変更が必要となる、などのさまざまなリスクを伴います。

なお、アームは、第三者に帰属する知的財産権を使用せずに製品を設計・実装することで(ライセンス契約による恩恵があり、かつ厳密に管理された手順に沿って使用する場合を除きます)、これらのリスクを軽減しています。

 

j.ブランドと評判

アームのブランドと評判を維持することは、顧客、従業員、政府、サプライヤー、およびその他のステークホルダーとの関係において不可欠です。アームのブランドと評判は、非倫理的行動や不正、製品の品質、不適切利用および安全性、法令または契約違反、内部統制の失敗、コーポレート・ガバナンスの不備、セキュリティインシデント、労働災害、環境問題、違法または不適切な用途への技術の使用、営業手法、メディア報道、サプライヤーの行為などにより影響を受ける可能性があります。また、アームによるAI(生成AIを含みますが、それに限りません)の内部利用や、AIや機械学習に関連して、アームの取組みやアームの技術が用いられた製品の使用への懸念が生じた場合も、アームの評判は影響を受ける可能性があります。これらの危機や脅威に迅速かつ効果的に対応できなかった場合、社会的な批判によりアームのブランドと評判が大きく棄損する可能性があります。また、アーム・チャイナなどの第三者の行為の責任がアームに転嫁された場合も、アームのブランドや評判が損なわれる可能性があります。

なお、アームは、製品の欠陥やバグのリスクを低減するために、厳格な品質保証と検証プロセスを実施しています。加えて、顧客などからのフィードバックを定期的に収集し、アームの製品や行動に対する認識の変化を把握し、評価の低下に対して早期の対応を図る体制を維持することで、これらのリスクの軽減に努めています。

 

k.輸出規制と貿易障壁

アームの本社は英国にあり、現時点において、米国、中国、インド、韓国、日本、台湾、および欧州を含む世界中の国や地域で事業を展開しています。これらの国際的な事業活動は、政治・経済・金融情勢や、法律・規制環境の変化による様々な影響を受けます。

各国政府による輸出入規制により、様々な負担や製品のライセンス提供の制限を伴う可能性があります。米国商務省が、他国の製品に対する輸出規制の適用範囲をさらに拡大した場合、より多くのアームの製品が米国の輸出管理の対象となる可能性があります。さらに、米国政府がアームの顧客や取引先が拠点とする国・地域を対象としたより広範な経済制裁を導入した場合には、特定の国や組織に対する製品のライセンス提供に制約が生じる可能性があります。

アーム、またはその顧客が関与する国々の貿易における関係性は近年不安定です。米国政府は特定のサービスの提供や技術・ソフトウエア製品の国外への移転に対し、制裁や輸出規制を強化したほか、アームの一部顧客のICおよび関連製品の輸出に影響を与える新たな輸出許可規制を発表しました。また、米国政府は輸入品に対する関税の引き上げを新たに発表しました。これら国々の規制は追加の費用負担や、重要市場での収益減少につながる可能性があります。

なお、アームは、米国、英国、EUの輸出管理当局と強い関係を維持し、政策や規制の動向を監視することで、これらのリスクの軽減に努めています。

 

(5)その他

a.法令遵守

当社は、各国の法令等の下で投資活動を行っています。当社や投資先(役職員を含みます。)が法令等に違反する行為を行った場合、違反の認識の有無にかかわらず、行政処分や法的措置の対象となる可能性があります。その結果、当社および投資先の信頼性や企業イメージの低下、取引先による契約解除、金銭的負担が発生する可能性があります。また、当社および投資先が活動を行う国・地域において、租税法令またはその解釈・運用が新たに導入・変更された場合や、税務当局との見解の相違により追加の税負担が生じる可能性があります。

なお、当社では、法令の遵守にとどまらず、高い倫理観に基づいた企業活動を行うため、全ての役職員に適用される「ソフトバンクグループ行動規範」を定めるとともに、グループコンプライアンス体制の強化や研修など役職員の知識や意識向上を促す取り組みを行っています。また、法令等の新設・改正に関しては、法務部門が外部のアドバイザーからの助言を受けながら情報収集などを行っています。

 

b.知的財産権

ソフトバンクグループ㈱が保有する「ソフトバンク」ブランドが第三者により侵害された場合、ソフトバンクグループ㈱および「ソフトバンク」ブランドを使用する子会社の企業イメージや信頼性が低下する可能性があります。また、子会社および投資先が保有する知的財産権が第三者により侵害された場合、同社の事業展開や業績に悪影響を及ぼす可能性があります。一方、当社または投資先が意図せずに第三者の知的財産権を侵害した場合、権利侵害の差止めや損害賠償、ライセンス使用料の請求などを受ける可能性があります。

なお、事業の持続的成長を支えるソフトバンクグループ㈱のブランドの重要性に鑑み、商標権を国内外で戦略的に確保する取り組みを行うとともに、子会社の知的財産活動・戦略の評価や子会社との知的財産に関する連携等を行い、持株会社としてグループ全体の知的財産保護・活用も目指しています。

 

c.訴訟

当社は、株主、投資先、取引先、従業員(投資先の現在および過去の株主・従業員を含みます。)を含む第三者の権利・利益を侵害したとして、損害賠償などの訴訟を起こされる可能性があります。その結果、当社の投資活動に支障が生じたり、企業イメージが低下したりする可能性があるほか、金銭的負担が発生する可能性があります。本有価証券報告書の提出日現在における主な訴訟内容については「第5 経理の状況、1 連結財務諸表等、連結財務諸表注記46.偶発事象(3)訴訟」をご参照ください。

 

d.サステナビリティ

当社はサステナビリティに対し、本質的な取り組みを率先して実行することが重要であると考えています。しかし、当社のサステナビリティに関する取り組みが、投資家をはじめとした社内外のステークホルダーの期待から大きく乖離した場合、例えば、サステナビリティの要素が当社のガバナンス体制や経営戦略に十分に組み込まれていない、またはサステナビリティに関する重要課題として特定しているもののうち、特に優先度の高い「責任あるAI」、「気候変動」および「人的資本」への取り組みが不十分な場合、投資活動および資金調達に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、投資先のサステナビリティに関するリスクおよび機会を十分に把握できない場合は、当社が想定した通りに投資先が事業を展開できない可能性があります。さらに、当社の投資活動や投資先の事業活動に対するサステナビリティ関連規制が強化された場合は、投資スピードの鈍化や対応コストの増加が生じる可能性もあります。

なお、ソフトバンクグループ㈱は、ソフトバンクグループ㈱および主要なグループ会社へのヒアリング等を通じて、サステナビリティに関するリスクおよび機会を把握し、ソフトバンクグループ㈱の取締役会で任命されたチーフ・サステナビリティ・オフィサー(CSusO)を委員長とするサステナビリティ委員会において、取り組むべきサステナビリティに関する課題や対応方針等を継続的に議論するとともに、サステナビリティに関わる対応および情報開示を強化しています。詳細は「第2 事業の状況、2 サステナビリティに関する考え方及び取組」をご参照ください。

また、投資活動では、各投資エンティティにおいて、投資先のサステナビリティに関するリスクおよび機会を分析し、総合的な投資評価を行っています。

 

e.情報セキュリティ

昨今の国際情勢を受け世界中でサイバー攻撃の脅威が高まる中、当社および投資先においてサイバー攻撃、ハッキング、コンピューターウイルス感染、その他不正アクセスや内部不正を完全に防止できなかった場合、情報の漏えい、改ざん、消失またはその他の情報セキュリティ事故が発生する可能性があります。こうした事態が生じた場合、当社および投資先の信頼性や企業イメージが低下したり、事業活動に支障が生じたりする可能性があるほか、金銭的損失やこれらの事象に対応するための追加費用等が発生する可能性があります。

なお、当社は、ソフトバンクグループ㈱の取締役会で任命された最高情報セキュリティ責任者であるチーフ・インフォメーション・セキュリティ・オフィサー(CISO)の下、情報セキュリティを脅かす脆弱性などのリスク要因を特定し、リスクに応じた組織的、物理的、技術的および人的な情報セキュリティ対策を実施することで、情報資産の保護に努めています。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 当期における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」)の状況の概要並びに経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次の通りです。

 なお、文中の将来に関する事項は、当期末現在において判断したものです。

 

(1)財政状態及び経営成績の状況

1.業績ハイライト

投資利益3兆7,011億円(前期の投資損失:5,594億円)

- 持株会社投資事業からの投資利益3兆4,138億円

・アリババ株式に係る投資利益1兆8,759億円、Tモバイル株式に係る投資利益1兆3,522億円(注1)、ドイツテレコム株式に係る投資利益4,342億円をそれぞれ計上

(アリババ株式に係る投資利益1兆8,759億円およびドイツテレコム株式に係る投資利益4,342億円は、アリババ株式を利用した先渡売買契約およびドイツテレコム株式を利用したカラー取引に係るデリバティブ関連損失2兆184億円(別科目「デリバティブ関連損益(投資損益を除く)」に計上)で相殺)

- SVF事業からの投資利益3,876億円(当社子会社への投資に係る投資利益を含まない)

・ByteDanceやCoupangなど一部の投資先の公正価値が増加

・活動開始来累計損益はSVF1で234億米ドルのプラス、SVF2で229億米ドルのマイナス(注2)

※アームやソフトバンク㈱などの子会社は連結されるため、株式の公正価値の変動は連結損益計算書に計上せず

 

税引前利益1兆7,047億円(前期比1兆6,469億円増加)

- 販売費及び一般管理費3兆244億円

- 財務費用5,816億円

- デリバティブ関連損失(投資損益を除く)2兆340億円:アリババ株式およびドイツテレコム株式の株価上昇に伴い、同株式の先渡売買契約およびカラー取引に係るデリバティブ関連損失を計上。上記の通り、アリババ株式およびドイツテレコムに係る投資利益を相殺

- SVFにおける外部投資家持分の増加額4,919億円:外部投資家持分の割合が大きいSVF1において投資利益1兆230億円(SVF1単体ベース)を計上したことに伴い、外部投資家持分の増加額4,028億円(成果分配型投資家帰属分)を計上

 

親会社の所有者に帰属する純利益1兆1,533億円(前期比1兆3,810億円改善)

- 法人所得税1,016億円

- 非支配持分に帰属する純利益4,498億円

 

2.成長に向けて投資を積極化

- 米国のAI研究開発企業であるOpenAIのためにAIインフラストラクチャーを構築する「Stargate Project」を発表

- OpenAI Globalに最大400億米ドル(外部投資家へのシンジケーション予定額100億米ドルを差し引いた当社の実質的な出資予定額は最大300億米ドル)の追加出資を行うことをコミット。当期末以降の2025年4月15日、このうちファーストクロージングが完了し、100億米ドルの資金をOpenAI Globalに提供(うち、15億米ドルはシンジケーションにより外部投資家が、残りの85億米ドルはSVF2が出資)

- 米国の半導体設計企業であるAmpereの全持分を65億米ドルで取得し、100%子会社化することを決定。2025年度後半に完了の見込み

- AIや機械学習に特化した半導体チップの設計・開発を手掛ける英国のGraphcoreを子会社化

- AIを活用したデータ学習型の自動運転プラットフォームを開発する英国のWayve Technologiesへ投資(注3)

- 米国で太陽光発電所の建設および運営を手掛ける持分法適用関連会社のSBE Globalの持分を追加取得し、同社を子会社化

- SVFからエンタープライズやフロンティアテックセクターの企業を中心に合計37.9億米ドルを投資(当社からSVFへの移管に伴う投資額および当社子会社への追加投資額を連結消去後)(注4)

 

3.社債リファイナンス・新規発行に加えて、ローン調達を実行

国内普通社債(ソフトバンクグループ㈱)

2024年4月に機関投資家向け国内普通社債1,000億円、同年6月および12月に個人投資家向け国内普通社債5,500億円、3,500億円をそれぞれ発行。一方で、同年6月に国内普通社債4,500億円を満期償還。なお、当期末以降の2025年5月、個人投資家向け国内普通社債6,000億円を発行

 

外貨建普通社債(ソフトバンクグループ㈱)

2024年7月に米ドル建普通社債900百万米ドル、ユーロ建普通社債900百万ユーロをそれぞれ発行。一方で、同月に米ドル建普通社債767百万米ドルとユーロ建普通社債638百万ユーロをそれぞれ期限前償還および満期償還。このほか、2025年1月に米ドル建普通社債449百万米ドルを満期償還

 

各種シンジケートローン(ソフトバンクグループ㈱および100%子会社)

- シニアローン

2024年9月にタームローンにより29億米ドルの借入を実行。なお、当期末以降の2025年4月、OpenAI Globalへの追加出資(ファーストクロージング)に際し、外部投資家へのシンジケーション分を差し引いた85億米ドルの借入をブリッジローンにより実行。Ampere全持分の取得対価65億米ドルのブリッジローンも組成済

- コミットメントライン契約

2024年9月にコミットメントライン契約を更改。更改後の借入限度額は米ドル建トランシェが5,465百万米ドル、円建トランシェが356億円。当期末現在、全額借入実行済

- ハイブリッドローン

2024年11月にハイブリッドローン1,350億円を借り入れ、同月に初回期限前返済日を迎えたハイブリッドローン840億円のリファイナンスを完了

- アーム株式を利用したマージンローン

2024年12月、アーム株式を利用したマージンローンについて、借入枠を85億米ドルから135億米ドルへ増額するなどの条件を変更。当期末現在、増額分の50億米ドルは全額未使用

- ソフトバンク株式を利用したマージンローン

2025年2月、ソフトバンク株式を利用したマージンローンについて、従前の借入額5,000億円から8,000億円への増額リファイナンスを完了

 

4.株主還元

- 自己株式の取得

2024年8月に取締役会で決議した最大5,000億円の自己株式取得枠のうち、当期末までに累計2,370億円、2025年4月末までに累計2,862億円の自己株式を取得

- 配当

期末配当1株当たり22円で定時株主総会(2025年6月27日開催予定)に付議することを取締役会で決議。中間配当と合わせた当期の年間配当金は前期と同額の1株当たり44円に(当期の年間配当金の総額635億円)

(注1)投資に係るデリバティブ関連損益および為替換算影響額を含む金額です。

(注2)外部投資家持分および税金等の控除前のグロスの金額です。

(注3)ソフトバンクグループ㈱および主要投資子会社の投資ポートフォリオの再整理の一環として、Wayve Technologies Ltd(以下「Wayve」)への投資を当第4四半期にSVF2へ移管しました。詳細は「b. セグメントの業績概況(b)ソフトバンク・ビジョン・ファンド事業」をご参照ください。

(注4)連結キャッシュ・フロー計算書で計上された金額です。

 

 

<アーム株式のグループ内取引の対価のうち、第3回目を支払い>

2023年9月のアームの新規株式公開に先立つ同年8月、当社100%子会社はSVF1が保有していたアームの普通株式(発行済株式総数の24.99%相当)を161億米ドル(以下「本取引対価」)で取得しました。本取引対価は4分割で支払うこととなっており、同年8月の取引完了時に第1回目の41億米ドルを、2024年8月に第2回目の41億米ドルを、2025年2月に第3回目の41億米ドルをそれぞれ支払いました。これらの支払いは、グループ内で行われた当社子会社株式の譲渡対価に係る債権債務の精算のため、連結財務諸表に影響はありません。

 

本取引対価の分割払いの支払タイミングおよび支払額の内訳

 

第1回目

(支払い済)

第2回目

(支払い済)

第3回目

(支払い済)

第4回目

(予定)

支払タイミング

2023年8月

2024年8月

2025年2月

2025年8月

支払額

41億米ドル

41億米ドル

41億米ドル

38億米ドル

 

 

<ロボティクス関連投資を中間持株会社へ集約>

グループ内で複数のエンティティに分散していたロボティクス関連投資を一元管理し、シナジー創出による価値向上を図るため、中間持株会社(以下「ロボHD」)を設立し、その傘下にロボティクス関連投資を集約することを2025年1月23日の取締役会で決議しました。当第4四半期においては、当社から10銘柄(注1)を現物出資または売却により、SVF2から6銘柄(注2)を現物出資によりロボHDに移管しました。このほか、投資等に係るコミットメントに充当するため、当社およびSVF2から現金を拠出しました。当社が保有するソフトバンクロボティクスグループ㈱やBalyo SAおよびSVF2が保有するAutoStore Holdings Ltd.(以下「AutoStore」)については、2026年3月期に移管を完了する予定です。これら今後予定している移管を完了した後、ロボHDの持分は、当社が過半を保有し、SVF2が残余を保有する見込みです。

当社およびSVF2からロボHDへの移管価額は移管日の公正価値を使用します。移管日の公正価値は、全ての投資の移管が完了した後、独立した外部機関による評価査定に基づき最終化する予定です。このため、当第4四半期に移管した投資については、暫定的に算定した価額を使用しています。

なお、これらの移管および現金拠出の取引は、グループ内取引のため連結上消去しています。

(注1)Berkshire Grey, Inc.やStack AV Co.など

(注2)1X Holdings, Inc.、Agile Robots SE、Skild AI, Inc.、Terabase Energy, Inc.など

 

<OpenAIへの追加出資>

ソフトバンクグループ㈱は、2025年3月31日、米国の人工知能(AI)研究開発企業OpenAI Global, LLC(以下「OpenAI Global」)に最大400億米ドルの追加出資を行うこと(以下、本項目において「本取引」)について、OpenAIと最終的な合意に至りました。当社は、本取引における最大400億米ドルの出資額のうち100億米ドルを外部投資家にシンジケーションする予定です。その場合、当社の実質的な出資額は最大300億米ドルになる見込みです。

当期末以降の2025年4月15日、OpenAI Globalに対する最大400億米ドルの出資額のうち、ファーストクロージングが完了し、100億米ドルの資金がOpenAI Globalに提供されました。このうち、15億米ドルは同日にシンジケーションにより外部投資家が出資し、残りの85億米ドルはSVF2が出資しました。その後、外部投資家に対して追加のシンジケーションが実行され、SVF2の出資額は85億米ドルから75億米ドルに減額されました。

ファーストクロージングに係る出資を目的として、2025年4月に当社は㈱みずほ銀行をはじめとする取引金融機関から85億米ドルの借入による調達を行い、同額をSVF2に貸し付けています。なお追加のシンジケーションに伴い、2025年5月に、当社は貸付金元本の一部回収および利息としてSVF2から10億米ドルを受領しました。

詳細は「第5 経理の状況、1 連結財務諸表等、連結財務諸表注記48.追加情報 (2)OpenAIへの投資について」をご参照ください。

 

<Ampereの買収(100%子会社化)>

ソフトバンクグループ㈱は、米国の100%子会社を通じて、Armコンピュートプラットフォームに基づいた高性能・省エネルギー・持続可能なAIコンピューティングに特化した半導体設計企業である米国のAmpereの全持分を総額65億米ドルで取得すること(以下、本項目において「本取引」)について、Ampereおよび同社の特定の持分保有者との間で、2025年3月19日付で合意しました。

本取引はソフトバンクグループ㈱の取締役会で承認されていますが、米国における競争法上の承認、対米外国投資委員会(CFIUS:Committee on Foreign Investment in the United States)による承認その他監督官庁の通常の承認、そして、誓約事項があらゆる重大な点において遵守されていること、Ampereへの重大な悪影響が発生しないこと、特定の雇用関連の事項等、その他の前提条件の充足(または放棄)が条件となります。

当社は、本取引が2025年度後半に完了するものと見込んでいます。本取引の結果、Ampereはソフトバンクグループ㈱の100%子会社となります。

詳細は「第5 経理の状況、1 連結財務諸表等、連結財務諸表注記48.追加情報 (1)Ampere Computing Holdings LLCの買収について」をご参照ください。

 

 

為替換算レート

2024年3月期

2025年3月期

1米ドル

第1四半期

第2四半期

第3四半期

第4四半期

第1四半期

第2四半期

第3四半期

第4四半期

期中平均

レート

138.11円

145.44円

147.00円

147.87円

156.53円

150.26円

151.32円

152.95円

期末日

レート

 

 

 

151.41円

 

 

 

149.52円

 

a.連結経営成績の状況

 

 

 

 

(単位:百万円)

 

3月31日に終了した1年間

 

 

 

 

2024年

2025年

増減

増減率

 

売上高

6,756,500

7,243,752

487,252

7.2%

売上総利益

3,542,392

3,754,203

211,811

6.0%

 

投資損益

 

 

 

 

 

持株会社投資事業からの投資損益

△459,045

3,413,821

3,872,866

SVF事業からの投資損益

△167,290

387,584

554,874

その他の投資損益

66,985

△100,298

△167,283

 

投資損益合計

△559,350

3,701,107

4,260,457

 

販売費及び一般管理費

△2,982,383

△3,024,409

△42,026

1.4%

財務費用

△556,004

△581,559

△25,555

4.6%

為替差損益

△703,122

27,055

730,177

デリバティブ関連損益(投資損益を除く)

1,502,326

△2,034,029

△3,536,355

SVFにおける外部投資家持分の増減額

△390,137

△491,898

△101,761

26.1%

その他の損益

204,079

354,251

150,172

73.6%

税引前利益

57,801

1,704,721

1,646,920

 

法人所得税

151,416

△101,613

△253,029

純利益

209,217

1,603,108

1,393,891

666.2%

 

非支配持分に帰属する利益

436,863

449,776

12,913

3.0%

 

親会社の所有者に帰属する純利益

△227,646

1,153,332

1,380,978

 

 

 

 

 

 

 

包括利益合計

2,241,441

1,082,348

△1,159,093

△51.7%

 

親会社の所有者に帰属する包括利益

1,809,984

666,237

△1,143,747

△63.2%

 

 

以下、連結損益計算書の主要な科目および特筆すべき科目に関する概要を記載します。

 

A 売上高

ソフトバンク事業およびアーム事業はいずれも増収となりました。詳細は「b. セグメントの業績概況」の「(c)ソフトバンク事業」および「(d)アーム事業」をご参照ください。

 

B 持株会社投資事業からの投資損益

持株会社投資事業からの投資利益は3,413,821百万円となりました。これは主に、アリババ株式に係る投資利益1,875,908百万円、Tモバイル株式に係る投資利益1,352,177百万円(投資に係るデリバティブ関連損益および為替換算影響額を含む)、ドイツテレコム株式に係る投資利益434,224百万円をそれぞれ計上したことによるものです。詳細は「b. セグメントの業績概況(a)持株会社投資事業」をご参照ください。

 

C SVF事業からの投資損益

SVF事業からの投資利益は387,584百万円となりました。その内訳は、SVF1で940,483百万円の利益、SVF2で526,496百万円の損失、LatAmファンドで8,110百万円の利益、その他で34,513百万円の損失です。

SVF1の投資利益は、主に当期末に保有する投資の未実現評価利益889,312百万円(純額)を計上したことによるものです。そのうち、公開投資先については、Coupang, Inc.(以下「Coupang」)やDiDi Global Inc.(以下「DiDi」)などの株価上昇に伴い合計580,211百万円の未実現評価利益(純額)を計上しました。未公開投資先については、公開類似企業の株価上昇および好調な業績を反映したBytedance Ltd.(以下「ByteDance」)の公正価値の増加が牽引役となり、合計309,101百万円の未実現評価利益(純額)を計上しました。

SVF2の投資損失は、主に当期末に保有する投資の未実現評価損失539,320百万円(純額)を計上したことによるものです。AutoStoreやSymbotic Inc.などの公開投資先の株価が下落したほか、主に業績低迷や公開類似企業の株価下落を反映して未公開投資先の公正価値も減少しました。

詳細は「b. セグメントの業績概況(b)ソフトバンク・ビジョン・ファンド事業」をご参照ください。

 

主にB~Cの結果、投資損益合計は3,701,107百万円の利益となりました。

 

D 販売費及び一般管理費

ソフトバンク事業の販売費及び一般管理費が前期比119,701百万円増の2,174,555百万円に、アーム事業の販売費及び一般管理費が前期比43,463百万円増の536,898百万円になりました。前者は主に、スマートフォン契約の獲得強化およびコマースサービスにおける既存顧客の継続利用促進のための販売関連費が増加したことによるものです。後者は、主に研究開発の強化を目的として技術関連人員を中心に従業員数を増加させた結果、株式報酬費用を含む人件費が増加したことによるものです。

 

E 財務費用

SVFの支払利息が借入金の大幅減少に伴い前期比35,691百万円減の32,713百万円となった一方で、ソフトバンクグループ㈱1の支払利息が前期比40,744百万円増の443,765百万円となりました。また、2024年7月にSBE Globalが当社の子会社となったことに伴い、同社の支払利息16,008百万円を計上しました。ソフトバンクグループ㈱の支払利息が増加したのは主に、発行残高の増加に伴い国内社債に係る支払利息が増加したことに加え、2024年9月にタームローンにより29億米ドルの借入を実行したことによるものです。

 

F 為替差損益

主にソフトバンクグループ㈱と国内の資金調達子会社の米ドル建負債(子会社からの借入や外貨建普通社債など)および米ドル建現預金・貸付金について、前者が後者を上回っていたことから、期末日為替換算レートが前期末に比して円高となったことにより為替差益27,055百万円(純額)を計上しました。

なお、ソフトバンク・ビジョン・ファンドなど機能通貨が外貨(主に米ドル)の在外子会社・関連会社の純資産については、期末日為替換算レートが前期末に比して円高となったことにより円換算後の価値が減少しましたが、そのマイナス影響は為替差損益には含まれず、連結財政状態計算書の資本の部の「その他の包括利益累計額」に在外営業活動体の為替換算差額の減少額521,272百万円として計上されています。

 

G デリバティブ関連損益(投資損益を除く)

アリババ株式を利用した先渡売買契約等に係るデリバティブ関連損失1,698,697百万円、ドイツテレコム株式を利用したカラー取引に係るデリバティブ関連損失319,735百万円をそれぞれ計上しました。

 

H SVFにおける外部投資家持分の増減額

「SVFにおける外部投資家持分の増減額」は、SVFの投資損益から当社100%子会社である運営会社が受領する管理報酬、業績連動型管理報酬、成功報酬、SVFの営業費用およびその他の費用を控除した金額をもとに算出された、外部投資家に帰属する損益です。連結損益計算書においては、通常、SVFにおいて投資利益を計上した場合には外部投資家に帰属する利益が外部投資家持分(成果分配型投資家帰属分)の増加額として費用方向(マイナス)に、投資損失を計上した場合には外部投資家に帰属する損失が外部投資家持分(成果分配型投資家帰属分)の減少額として利益方向(プラス)に寄与します。このほか、SVFにおける投資損益にかかわらず、外部投資家によるプリファード・エクイティの拠出額残高に応じて外部投資家持分(固定分配型投資家帰属分)の増加額が費用方向(マイナス)に寄与するものとして計上されます。

当期において、SVF事業からの投資利益387,584百万円に対してSVFにおける外部投資家持分の増加額が491,898百万円となったのは、外部投資家持分の割合が大きいSVF1において投資利益1,022,971百万円(SVF1単体ベース)を計上したことに伴い、成果分配型投資家帰属分の増加額402,783百万円を計上したことによるものです。このほか、固定分配型投資家帰属分の増加額98,201百万円を計上したことも寄与しました。

 

I その他の損益

2024年5月に、ソフトバンクグループ㈱の子会社を通じて保有していたフォートレスの全持分をMubadala Investment Company PJSCの子会社に売却した結果、フォートレスに対する支配を喪失したことに伴い、子会社の支配喪失利益93,139百万円を計上しました。また、2024年7月に、当社の持分法適用関連会社であったSBE Globalの持分を追加取得し、同社が当社の子会社となったことに伴い、既存の投資持分を公正価値測定した結果、企業結合に伴う再測定による利益55,553百万円を計上しました。その他の内訳は「第5 経理の状況、1 連結財務諸表等、連結財務諸表注記41.その他の損益」をご参照ください。

 

主にA~Iの結果、税引前利益は前期比1,646,920百万円増加の1,704,721百万円の利益となりました。

 

 

J 法人所得税

法人所得税は101,613百万円となりました。当期税金費用645,668百万円を計上した一方で、繰延税金費用を利益方向に544,055百万円計上したことによるものです。当期税金費用は、主にアリババ株式を利用した先渡売買契約の現物決済に伴いソフトバンクグループ㈱において295,679百万円計上したほか、ソフトバンク㈱などの事業会社で269,357百万円計上しました。繰延税金費用(利益)は、主にアリババ株式を利用した先渡売買契約の現物決済に伴い、前期末にアリババ株式および関連するデリバティブに対して計上していた繰延税金負債を取り崩したことによるものです。

なお、当期より適用となったグローバル・ミニマム課税の所得合算ルール(IIR)に関して、当期におけるトップアップ課税を見積もった結果、ソフトバンクグループ㈱において計上された税金費用はありません。

 

主にA~Jの結果、親会社の所有者に帰属する純利益は前期比1,380,978百万円改善の1,153,332百万円の利益となりました。

 

 

 

b.セグメントの業績概況

 当社の報告セグメントは、当社の経営資源の配分の決定や業績の評価を行うための区分を基礎としています。当期末現在、「持株会社投資事業」、「ソフトバンク・ビジョン・ファンド事業」、「ソフトバンク事業」、「アーム事業」の4つを報告セグメントとしています。

 

 報告セグメントの概要は以下の通りです。

 

セグメント名称

主な事業の内容

主な会社

報告セグメント

 

 

 

持株会社投資事業

・ソフトバンクグループ㈱およびその子会社による投資事業

 

ソフトバンクグループ㈱

SoftBank Group Capital Limited

ソフトバンクグループジャパン㈱

ソフトバンクグループオーバーシーズ合同会社

SB Northstar LP

 

 

ソフトバンク・ビジョン・ファンド事業

・SVF1、SVF2およびLatAmファンドによる投資事業

SB Investment Advisers (UK) Limited

SoftBank Vision Fund L.P.

SB Global Advisers Limited

SoftBank Vision Fund II-2 L.P.

SBLA Latin America Fund LLC

 

 

ソフトバンク事業

・コンシューマ事業:個人顧客を対象とした日本国内でのモバイルサービスの提供、携帯端末の販売、ブロードバンドサービスの提供

・エンタープライズ事業:法人顧客を対象とした日本国内でのモバイルサービスやソリューションサービスの提供

・ディストリビューション事業:法人顧客を対象としたICTサービス商材の提供、個人顧客を対象とした通信端末関連商品・IoT機器の提供

・メディア・EC事業:メディア・広告やコマースサービスの提供

・ファイナンス事業:決済、金融サービスの提供

 

ソフトバンク㈱

LINEヤフー㈱

PayPay㈱

 

アーム事業

・半導体のIPおよび関連テクノロジーのデザイン

・ソフトウエアツールの販売および関連サービスの提供

 

Arm Holdings plc

その他(注1)

・太陽光発電所の建設および運営

・福岡ソフトバンクホークス関連事業

SBE Global, LP

福岡ソフトバンクホークス㈱

(注1)2024年5月14日、ソフトバンクグループ㈱は、ソフトバンクグループ㈱の子会社を通じて保有していたフォートレスの全持分をMubadala Investment Company PJSCの子会社に売却しました。本取引の完了をもって、フォートレスはソフトバンクグループ㈱の子会社でなくなりました。

 

 

(a)持株会社投資事業

1.アリババ株式に係る投資利益1兆8,759億円、Tモバイル株式に係る投資利益1兆3,522億円(注1)、ドイツテレコム株式に係る投資利益4,342億円をそれぞれ計上した結果、持株会社投資事業からの投資利益は3兆4,138億円

2.アリババ株式を利用した先渡売買契約に係るデリバティブ関連損失1兆6,987億円、ドイツテレコム株式を利用したカラー取引に係るデリバティブ関連損失3,197億円に加え、財務費用5,313億円などを計上した結果、セグメント利益は7,943億円に

(注1)投資に係るデリバティブ関連損益および為替換算影響額を含む金額です。

 

<事業概要>

当事業においては、主にソフトバンクグループ㈱が、戦略的投資持株会社として直接または子会社を通じて投資活動を行っています。当事業は、ソフトバンクグループ㈱、SoftBank Group Capital Limited、ソフトバンクグループジャパン㈱、ソフトバンクグループオーバーシーズ合同会社および資産運用子会社であるSB Northstarのほか、投資または資金調達を行う一部の子会社で構成されています。持株会社投資事業からの投資損益は、ソフトバンクグループ㈱が、直接または子会社を通じて保有する投資からの投資損益により構成されています。ただし、子会社からの受取配当金および子会社株式に係る減損損失などの子会社株式に関連する投資損益を含みません。

当事業を構成する会社が保有する投資先は、アリババやTモバイル、ドイツテレコムなどであり、そのほとんどがFVTPLの金融資産として認識されるものです。FVTPLの金融資産に該当する投資は、四半期ごとに公正価値を測定し、その変動額を「投資損益」として連結損益計算書に計上しています。

 

資産運用子会社からの上場株式や社債等への投資

SB Northstarはソフトバンクグループ㈱の余剰資金を用いて上場株式や社債等の取得および売却を行っています。当期における資産運用子会社に係る投資損失(債券投資による受取利息を含む)は144億円(活動開始来の累計投資損失:9,655億円)(注1)、当期末における投資残高は1兆1,348億円(うち、社債:8,195億円)です。社債は主に残存年数が短い投資適格債に投資しています。

同社における持分は、ソフトバンクグループ㈱が67%、ソフトバンクグループ㈱代表取締役 会長兼社長執行役員の孫 正義が33%をそれぞれ間接的に保有しています。孫 正義の持分は非支配持分として同社の投資損益から差し引かれるため、投資損益の67%が親会社の所有者に帰属する純利益に影響を与えます。ソフトバンクグループ㈱が同社に対しファンド存続期間(12年+延長2年)満了時に債権を保有し、その債権に返済不能分が発生した場合、持分比率に応じて孫 正義は損害額を補償します。

(注1)累計投資損失は、受取配当金および債券投資による受取利息を含む一方、SB NorthstarからSB Investment Advisers (US) Inc.子会社のSPAC3社への投資の影響を含みません。

 

 

<業績全般>

 

 

 

 

 

(単位:百万円)

 

 

 

3月31日に終了した1年間

 

 

 

 

 

 

2024年

2025年

増減

増減率

 

持株会社投資事業からの投資損益

△459,045

3,413,821

3,872,866

 

資産運用子会社からの投資の実現損益

△90,360

△39,323

51,037

 

 

資産運用子会社からの投資の未実現評価損益

12,692

△10,888

△23,580

 

 

投資の実現損益(注1)

△38,429

537,805

576,234

 

 

投資の未実現評価損益

△611,627

3,134,253

3,745,880

 

 

 

当期計上額

△647,414

2,379,508

3,026,922

 

 

 

過年度計上額のうち実現損益への振替額(注1)

35,787

754,745

718,958

 

 

投資に係るデリバティブ関連損益

226,050

△297,653

△523,703

 

 

為替換算影響額(注2)

6,532

△1,963

△8,495

 

 

その他

36,097

91,590

55,493

153.7%

 

販売費及び一般管理費

△89,285

△131,856

△42,571

47.7%

 

財務費用

△473,811

△531,252

△57,441

12.1%

為替差損益

△703,438

19,257

722,695

 

デリバティブ関連損益(投資損益を除く)

(主にアリババ株式の先渡売買契約の影響)

1,500,015

△2,041,830

△3,541,845

 

その他の損益

128,038

66,111

△61,927

△48.4%

 

セグメント利益(税引前利益)

△97,526

794,251

891,777

 

(注1)当期に実現した投資に係る未実現評価損益の過年度計上額を「投資の実現損益」に振り替えています。

(注2)投資の未実現評価損益は当該評価損益が生じた四半期の平均為替レートを用いて換算する一方、投資の実現損益は当該株式を処分した四半期の平均為替レートを用いて換算します。「為替換算影響額」は、未実現評価損益と実現損益の換算に使用する為替レートの差により生じた金額です。

 

 持株会社投資事業からの投資利益:3,413,821百万円

・2024年6月7日に、当社がドイツテレコムに付与したTモバイル株式を対象とする株式購入オプションの一部が行使されたため、当社はTモバイル株式6.7百万株を670百万米ドルで売却しました。この結果、当期において、投資の実現利益78,277百万円、投資の未実現評価損失50,043百万円(過年度計上額のうち実現損益への振替額)、投資に係るデリバティブ関連損失17,753百万円、為替換算影響額11,066百万円の損失を計上しました。なお、同株式購入オプションのうち残りの未行使分については、2024年6月22日に行使期限が到来し消滅しました。

・アリババ株式を利用した株式先渡売買契約の現物決済により、投資の実現利益280,516百万円、投資の未実現評価利益900,335百万円(過年度計上額のうち実現損益への振替額)を計上しました。

・投資の未実現評価利益3,134,253百万円を計上しました。このうち当期計上額は2,379,508百万円でした。これは主に、当期末に引き続き保有するTモバイル株式に係る未実現評価利益1,346,194百万円、アリババ株式に係る未実現評価利益695,057百万円、ドイツテレコム株式に係る未実現評価利益398,793百万円をそれぞれ計上したことによるものです。

・投資に係るデリバティブ関連損失297,653百万円を計上しました。これは主に上場株式を対象としたオプション取引に係る損失285,533百万円を計上したことによるものです。

 

 財務費用:531,252百万円(前期比57,441百万円増加)

・ソフトバンクグループ㈱1のグループ外への支払利息が前期比40,744百万円増の443,765百万円となりました。これは主に、発行残高の増加に伴い国内社債に係る支払利息が増加したことに加え、2024年9月にタームローンにより29億米ドルの借入を実行したことによるものです。

・2023年8月に行ったSVF1からのアーム株式の取得の対価のうち未払金に係る償却原価83,715百万円を計上しました。なお、当該償却原価は連結上、消去されています。

 

 

 

 

(参考情報)資産運用子会社の当社連結財政状態計算書への影響

 

 

 

(単位:百万円)

 

 

2025年3月31日

 

現金及び現金同等物

1,328

 

資産運用子会社からの投資

1,086,807

 

 

うち、社債

819,499

 

資産運用子会社における担保差入有価証券

47,947

 

資産運用子会社におけるデリバティブ金融資産

9

 

その他

9,303

 

資産合計

1,145,394

 

有利子負債

29,796

 

その他の金融負債

1,141

 

その他

915

 

負債合計

31,852

 

Delaware子会社からの出資(注1)

1,971,699

 

 

ソフトバンクグループ㈱からDelaware子会社への現金出資相当額

39,786

 

 

ソフトバンクグループ㈱からDelaware子会社への貸付相当額

(ソフトバンクグループ㈱からの運用委託金)

1,912,020

 

 

孫 正義からDelaware子会社への現金出資相当額

19,893

利益剰余金

△1,014,555

為替換算差額

156,398

 

純資産

1,113,542

(注1)当社の子会社であるDelaware Project 1 L.L.C.、Delaware Project 2 L.L.C.およびDelaware Project 3 L.L.C.(以下「Delaware子会社」)から資産運用子会社であるSB Northstarへの出資額

 

(非支配持分の計算)

 

(単位:百万円)

孫 正義からDelaware子会社への現金出資相当額

19,893

非支配持分損益(累計)(注2)

△338,085

 

為替換算差額

59,901

 

非支配持分(孫 正義の持分)

△258,291

(注2)表中Bの3分の1

 

(純資産(上記C)に対する持分)

 

(単位:百万円)

ソフトバンクグループ㈱の持分

1,371,833

 

非支配持分(孫 正義の持分)

△258,291

純資産

1,113,542

 

当事業における主な有利子負債およびリース負債

 

借入者

種別

当期末連結

財政状態計算書残高

ソフトバンクグループ㈱

借入金

1兆7,754億円

社債

6兆6,685億円

リース負債

80億円

コマーシャル・ペーパー

1,415億円

 

 

 

資金調達を行う100%子会社

アーム株式を利用した借入(マージンローン)

1兆2,585億円

アリババ株式を利用した株式先渡売買契約(フォワード契約)

9,978億円

ソフトバンク㈱株式を利用した借入(マージンローン)

7,960億円

ドイツテレコム株式を利用したカラー取引

4,094億円

(注)資金調達を行う100%子会社による借入はソフトバンクグループ㈱に対してノンリコースです。

 

 

(b)ソフトバンク・ビジョン・ファンド事業

1.活動開始来累計損益はSVF1で234億米ドルのプラス、SVF2で229億米ドルのマイナス(注1)

SVF1:投資額896億米ドルに対しリターン(注2)1,130億米ドル、活動開始来累計利益は234億米ドル

・当期の投資利益は67億米ドル(1兆230億円)

・当第4四半期末に保有する投資の合計公正価値が前四半期末比4.1%上昇(注3)

- 公開投資先(注4):前四半期末比0.8%上昇。FirstCryなどの株価が下落した一方、DiDiやAuto1などの株価が上昇

- 未公開投資先(注4):前四半期末比6.6%上昇。公開類似企業の株価上昇および好調な業績を反映したByteDanceが牽引役となり公正価値が上昇

SVF2:投資額608億米ドルに対しリターン379億米ドル、活動開始来累計損失は229億米ドル

・当期の投資損失は36億米ドル(5,617億円)

・当第4四半期末に保有する投資の合計公正価値が前四半期末比2.7%減少

- 公開投資先:前四半期末比21.7%減少。SwiggyやOla Electric Mobilityの株価が下落

- 未公開投資先:前四半期末比0.7%上昇。公開類似企業の株価下落や業績低迷を反映して一部銘柄の公正価値が下落したものの、直近取引における評価額上昇を反映した複数銘柄の公正価値上昇がそれを上回った

 

(2025年3月31日現在;単位:十億米ドル)

 

 

 

活動開始来累計

当期(注5)

 

 

投資額(注6)

リターン(注6)

損益

1~3月

損益計上額

累計

損益計上額

 

 

SVF1

 

 

エグジットした投資

45.4

67.3

21.9

△0.1

△4.1

 

 

エグジット前の投資

44.2

43.3

△0.9

1.7

5.8

 

 

当期にエグジットした投資の未実現評価損益過去計上額の振替

0.2

5.0

 

 

デリバティブ/

 受取利息/配当金

△0.0

2.4

2.4

0.0

0.0

 

 

合計

89.6

113.0

23.4

1.8

6.7

 

 

 

 

 

 

2,827億円

10,230億円

 

 

 

 

 

SVF2

 

 

エグジットした投資

9.7

5.4

△4.3

△0.3

△4.6

 

 

エグジット前の投資

50.8

32.3

△18.5

△0.8

△3.6

 

 

当期にエグジットした投資の未実現評価損益過去計上額の振替

0.3

4.6

 

 

デリバティブ/

 受取利息/配当金

0.3

0.2

△0.1

0.1

△0.0

 

 

合計

60.8

37.9

△22.9

△0.7

△3.6

 

 

 

 

 

 

△1,083億円

△5,617億円

 

(注)2024年6月にWeWorkによる米国連邦破産法11条に基づく手続きが完了したことに伴い、SVF1および2が保有していた旧WeWork株式は消滅しました。また、同手続き申請前にSVF2が保有していた債権の一部が消滅し、残りは再建後の新WeWork株式に転換されました。これに伴い、SVF1および2による旧WeWork株式、ワラントおよび債券への投資が実現したことから、過年度において計上していた投資の未実現損失67.1億米ドル(SVF1:31.8億米ドル、SVF2:35.3億米ドル)を実現損失に振り替えました。

 

2.規律あるアプローチの下で投資および資金化を継続

- 当期にSVF2でエンタープライズやフロンティアテックセクターの企業を中心に合計82.0億米ドルを投資2(SVF2が当社より取得した投資を含む)

- 当期にSVF1およびSVF2でDoorDash、SenseTimeを含む24銘柄の全株式(SVF2からロボHDへ移管した投資6銘柄を含む)および複数の銘柄の一部株式などを合計53.5億米ドルで売却2

(注1)累計リターンおよび投資損益は外部投資家持分および税金等の控除前のグロスの金額です。以下本項の累計パフォーマンスの表示において同じです。

(注2)売却額等+保有投資の公正価値。以下同じです。

(注3)当第4四半期中に実行した投資と売却による変動を除いた公正価値(米ドルベース)の増減率です。なお、投資先の公開/未公開の区分は、当第4四半期末時点の状態に基づいており、当第4四半期中に公開/未公開の区分が変更になった投資先については、当第3四半期末の状態を当第4四半期末時点の状態に合わせた上で比較を行っています。以下本項における四半期末に保有する投資の公正価値の増減において同じです。

(注4)公開投資先は証券取引所および店頭市場で取引される株式を、未公開投資先は公開投資先に該当しない投資先を指します。以下同じです。

(注5)「エグジットした投資」の当期1~3月および当期累計損益計上額は、当該投資のエグジット金額から投資額を差し引いた金額です。過年度または当第3四半期までに計上した当該投資に係る未実現評価損益については、「当期にエグジットした投資の未実現評価損益過去計上額の振替」に表示しています。そのため、「エグジット前の投資」の当第3四半期までの決算において開示した各四半期の損益計上額と、上記「当期1~3月」の損益計上額との合計は、上記「当期累計」の損益計上額と一致しない場合があります。

(注6)投資額は、デリバティブについてはデリバティブ原価を表します。リターンは、エグジットした投資についてはエグジット金額を、エグジット前の投資については公正価値を、デリバティブについては既決済契約の決済額または未決済契約の公正価値を、受取利息または配当金については各受領額を指します。

 

<事業概要>

当事業の業績には、主にソフトバンク・ビジョン・ファンド1(SVF1)、ソフトバンク・ビジョン・ファンド2(SVF2)およびソフトバンク・ラテンアメリカ・ファンド(LatAmファンド)における投資および事業活動の結果が含まれています。

 

当事業における主なファンドの概要

2025年3月31日現在

 

AIを活用した成長可能性の大きな企業へ投資し、中長期的視点から投資成果を最大化することを目指しています。SVF1の投資期間は終了しましたが、固定分配やファンド運営関連費用への充当を目的に出資コミットメント総額の残額が留保されています。

 

 

SVF1

SVF2

LatAmファンド

主なリミテッド・

パートナーシップ

SoftBank Vision Fund L.P.

SoftBank Vision Fund II-2 L.P.

SBLA Latin America Fund LLC

出資コミットメント総額

986億米ドル

658億米ドル

78億米ドル

 

当社:331億米ドル(注1)

外部投資家:655億米ドル

当社:632億米ドル

外部投資家(MgmtCo):
26億米ドル(注2)

当社:74億米ドル

外部投資家(MgmtCo):
4億米ドル(注2)

運営会社

SBIA(当社英国100%子会社)

SBGA(当社英国100%子会社)

投資期間

2019年9月12日に終了

運営会社の裁量により決定

存続期間

2029年11月20日まで

(SBIAに最大2回の1年
延長オプションあり)

2032年10月4日まで

(SBGAに最大2回の1年延長オプションあり)

 

(注1)SVF1への当社の出資コミットメントは、アーム株式を活用した約82億米ドル相当の支払義務履行分(全該当株式を拠出済み)のほか、SVF1に関連するインセンティブ・スキームへ活用される25億米ドルを含みます。

(注2)SVF2およびLatAmファンドには当社経営陣による共同出資プログラムが導入されており、経営陣の投資エンティティであるMgmtCoが参画しています。当社連結財務諸表上、MgmtCoの出資持分は外部投資家持分として扱われています。詳細は「第5 経理の状況、1 連結財務諸表等、連結財務諸表注記45.関連当事者(1)関連当事者との取引 a. 配当受領権制限付き共同出資プログラム」をご参照ください。

 

 

SVFにおける借入

SVF1、SVF2およびLatAmファンドは、レバレッジの活用や手元流動性の確保などを目的として、ソフトバンクグループ㈱にはノンリコースの借入を独自に行うことがあります。このような借入には、例えばリターンの向上およびリミテッド・パートナーへの分配を目的とした保有資産を活用するアセットバック・ファイナンスがあります。

 

投資先の公正価値評価

SVF1、SVF2およびLatAmファンドはIFRS第13号「公正価値測定」に従い、SBIA Global Valuation PolicyおよびInternational Private Equity and Venture Capital Valuation Guidelines(IPEVガイドライン)に基づいて、毎四半期末日における投資先の公正価値を算定しています。公開投資先のうち、証券取引所で取引される株式については相場価格を用いて、店頭市場で取引される株式については相場価格および観察可能なその他のインプットを単一もしくは複数用いて公正価値を算定しています。未公開投資先の公正価値算定については、公開類似企業の情報を用いたマーケット・アプローチ、予想される将来キャッシュ・フローを用いたインカム・アプローチに加えて、直近の資金調達ラウンドや類似取引の価格を用いた取引事例法などの評価手法を単一もしくは複数用いています。

 

 

<業績全般>

 

 

 

 

 

 

 

(単位:百万円)

 

 

 

 

3月31日に終了した1年間

 

 

 

 

 

 

 

2024年

2025年

増減

増減率

 

SVF事業からの投資損益(注1)

724,341

434,903

△289,438

△40.0%

 

SVF1、SVF2およびLatAmファンドからの投資損益

696,261

469,416

△226,845

△32.6%

 

 

 

投資の実現損益(注2)

984,409

△1,366,533

△2,350,942

 

 

 

投資の未実現評価損益

△144,835

1,552,687

1,697,522

 

 

 

 

当期計上額

△189,604

314,724

504,328

 

 

 

 

過年度計上額のうち実現損益への振替額

 (注2)

44,769

1,237,963

1,193,194

 

 

 

投資先からの利息及び配当金

21,668

8,451

△13,217

△61.0%

 

 

 

投資に係るデリバティブ関連損益

△7,337

8,151

15,488

 

 

 

為替換算影響額

△157,644

266,660

424,304

 

 

その他の投資損益

28,080

△34,513

△62,593

 

販売費及び一般管理費

△84,986

△62,169

22,817

△26.9%

 

財務費用

△74,322

△40,244

34,078

△45.9%

 

SVFにおける外部投資家持分の増減額

△390,137

△491,898

△101,761

26.1%

その他の損益

△46,717

44,390

91,107

 

セグメント利益(税引前利益)

128,179

△115,018

△243,197

 

(注1)SVFによる当社子会社(主にアーム、PayPay㈱)への投資に係る投資損益は、ソフトバンク・ビジョン・ファンド事業のセグメント利益において「SVF事業からの投資損益」に含まれますが、連結上消去し、連結損益計算書上の「SVF事業からの投資損益」には含まれません。

(注2)当期に実現した投資に係る未実現評価損益の過年度計上額を「投資の実現損益」に振り替えています。

 

SVF1およびSVF2の投資・売却実績

 

 

 

 

 

 

 

(単位:十億米ドル)

 

当期投資実行額

 

当期売却額3

 

Q1

Q2

Q3

Q4

累計

 

Q1

Q2

Q3

Q4

累計

SVF1

 

0.81

0.96

0.75

0.71

3.23

SVF2

0.62

0.62

1.31

5.65

8.20

 

0.03

0.05

0.38

1.66

2.12

合計

0.62

0.62

1.31

5.65

8.20

 

0.84

1.01

1.13

2.37

5.35

(注)投資額は、新規および既存投資先への追加投資を含みます。当第3四半期にSVF2が280百万米ドルで取得したPayPay㈱の新株予約権をはじめとするデリバティブへの投資額を含みません。

 

 

セグメント利益

 SVF事業からの投資利益:434,903百万円

 

(単位:百万円)

 

3月31日に終了した1年間

 

 

2024年

2025年

増減

SVF1からの投資損益

768,891

1,022,971

254,080

SVF2からの投資損益

△146,472

△561,656

△415,184

LatAmファンドからの投資損益

73,862

8,110

△65,752

その他の投資損益等

28,060

△34,522

△62,582

SVF事業からの投資損益

724,341

434,903

△289,438

 

 

 

 

 

B SVFにおける外部投資家持分の増減額:△491,898百万円

各ファンドからの投資損益から、①SBIAがSVF1から受領する管理報酬および成功報酬、②SBGAがSVF2から受領する管理報酬および業績連動型管理報酬、③SBGAがLatAmファンドから受領する管理報酬、業績連動型管理報酬および成功報酬、④各ファンドの営業費用およびその他の費用を控除した金額をもとに算出された外部投資家に帰属する損益です。詳細は「第5 経理の状況、1 連結財務諸表等、連結財務諸表注記7.ソフトバンク・ビジョン・ファンド事業 (2)SVFにおける外部投資家持分」をご参照ください。

 

当社からSVF2への投資移管

ソフトバンクグループ㈱および主要投資子会社の投資ポートフォリオの再整理の一環として、当社が支配もしくは共同支配を有していない未公開投資先6銘柄(注1)をSVF2へ移管することを、2024年10月21日のソフトバンクグループ㈱取締役会で決議し、当第3四半期および当第4四半期に移管日の公正価値でSVF2へ移管しました。これらの投資の当社取得額は19.5億米ドルであり、移管価額は当第4四半期に独立した外部機関による評価査定に基づき最終化した結果、当第3四半期に暫定的に算定した価額と同額の19.0億米ドルでした。

(注1)1X Holdings, Inc.、AI Lens Co., Ltd.、Mapbox, Inc.(デリバティブを含む)、Skild AI, Inc.、WayveおよびZipline International Inc.の6銘柄です。このうち、1X Holdings, Inc.およびSkild AI, Inc.を当第4四半期にロボHDへ移管しました。ロボHDへの移管の詳細は「(1)財政状態及び経営成績の状況<ロボティクス関連投資を中間持株会社へ集約>」をご参照ください。

 

 

投資の状況

2025年3月31日現在

 

SVF1

(単位:十億米ドル)

合計(下記①+②+③+④)

 

 

累計

投資銘柄数

累計

投資額

累計

リターン

累計損益

(注1)

 

投資損益

当期計上額

 

 

 

1~3月

累計

 

 

102

89.6

113.0

23.4

 

1.8

6.7

(参考)

 

 

累計

投資銘柄数

累計

投資額

累計

リターン

累計損益

(注1)

株式交換による影響(注2)

△4

△2.0

△2.0

現物配当による影響(注3)

△4

上記による影響考慮後

94

87.6

111.0

23.4

①エグジットした投資

 

 

 

 

銘柄数

 

 

 

投資額

 

エグジット

金額

 

累計

実現損益

(注1)

 

実現損益

当期計上額

 

 

 

1~3月

累計

一部エグジット

5.7

9.3

3.6

 

 

0.1

全部エグジット(注4)

45

39.7

58.0

18.3

 

 

△4.2

合計

45

45.4

67.3

21.9

 

△0.1

△4.1

②エグジット前の投資(当期末に保有する投資)(注5)

 

 

 

 

銘柄数

 

 

 

投資額

 

 

公正価値

 

累計未実現

評価損益

(注7)

 

未実現評価損益

当期計上額

 

 

 

1~3月

累計

公開投資(注6)

17

20.5

18.7

△1.8

 

0.2

3.8

未公開投資

40

23.7

24.6

0.9

 

1.5

2.0

合計

57

44.2

43.3

△0.9

 

1.7

5.8

③デリバティブ

 

 

 

デリバ

ティブ

原価

公正価値

/決済額

累計

デリバ

ティブ

関連損益

 

デリバティブ

関連損益

当期計上額

 

 

 

1~3月

累計

未決済

 

-

-

-

 

 

△0.0

既決済

 

△0.0

1.4

1.4

 

 

0.0

合計

 

△0.0

1.4

1.4

 

0.0

0.0

④投資先からの利息および配当金

 

 

 

 

利息および

配当金

累計損益

 

利息および配当金

当期計上額

 

 

 

1~3月

累計

合計

 

 

1.0

1.0

 

0.0

(注)各項目の金額は、単位未満を四捨五入しているため、内訳の計と合計が一致しない場合があります。

(注1)外部投資家持分および税金等の控除前

(注2)累計投資パフォーマンスを純額で示すため、株式交換を行った投資について交換先の株式の取得額および当初保有株式の処分額(売却額)をそれぞれ控除しています。Uber Advanced Technologies GroupとAurora Innovation Inc.、PT TokopediaとPT GoTo Gojek Tokopedia Tbk、Grofers International Pte. Ltd.とZomato Limited、Zymergen, Inc.とGinkgo Bioworks Holdings, Inc.、Candy Digital, Inc.とFanatics Holdings, Inc.(既存投資先)の株式交換が含まれます。なお、SVF1は過年度において既存投資先2社の株式を同じく既存投資先であるその関係会社株式に交換したため、当項目において該当する投資の取得額および処分額(売却額)をそれぞれ控除しています。

(注3)既存投資先からの現物配当として受領した投資について投資件数から控除しています。アームから受領した2銘柄(Treasure Data, Inc.およびAcetone Limited(Arm Technology (China) Co., Ltd.株式の約48%を保有する中間持株会社))およびReef Global Inc.から受領した2銘柄(REEF Proximity Aggregator LLCおよびParking Aggregator LLC)が含まれます。

(注4)株式交換および投資先の組織再編による処分(売却)を含みます。

(注5)投資先の公開/未公開の区分は、当期末時点の状態に基づいています。

(注6)公開株式には店頭市場で取引されているDiDiへの投資を含みます。

(注7)当社からSVF1への移管が決定されていたものの実行されなかった投資について、移管の取りやめを決定するまでの期間に発生した未実現評価損益は含めていません。

 

SVF2

(単位:十億米ドル)

合計(下記①+②+③+④)

 

 

累計

投資銘柄数

累計

投資額

累計

リターン

累計損益

(注1)

 

投資損益

当期計上額

 

 

 

1~3月

累計

 

310

60.8

37.9

△22.9

 

△0.7

△3.6

(参考)

 

 

累計

投資銘柄数

累計

投資額

累計

リターン

累計損益

(注1)

ロボHDへの移管による影響(注2)

△1.6

△1.6

WeWorkへの財務サポートによる影響(注3)

△5

株式交換による影響(注4)

△3

△0.1

△0.1

上記による影響考慮後

302

59.1

36.2

△22.9

①エグジットした投資

 

 

 

 

銘柄数

 

投資額

 

エグジット

金額

 

累計

実現損益

(注1)

 

実現損益

当期計上額

 

 

 

1~3月

累計

一部エグジット

1.0

0.6

△0.4

 

 

△0.3

全部エグジット(注5)

27

8.7

4.8

△3.9

 

 

△4.3

 

うち、ロボHDへの移管

6

1.9

1.6

△0.3

 

△0.3

△0.3

合計

27

9.7

5.4

△4.3

 

△0.3

△4.6

②エグジット前の投資(当期末に保有する投資)(注6)

 

 

 

 

銘柄数

 

投資額

(注7)

公正価値

(注7)

累計未実現

評価損益

 

 

未実現評価損益

当期計上額

 

 

 

1~3月

累計

公開投資

17

6.1

3.3

△2.8

 

△0.9

△1.9

未公開投資

266

44.7

29.0

△15.7

 

0.1

△1.7

 

うち、ロボHDの取得

1

2.2

2.2

0.0

 

0.0

0.0

合計

283

50.8

32.3

△18.5

 

△0.8

△3.6

③デリバティブ

 

 

 

デリバ

ティブ

原価

公正価値

/決済額

累計

デリバ

ティブ

関連損益

 

デリバティブ

関連損益

当期計上額

 

 

 

1~3月

累計

未決済

 

0.3

0.3

0.0

 

 

0.0

既決済

 

△0.0

△0.3

△0.3

 

 

△0.0

合計

 

0.3

△0.0

△0.3

 

0.1

△0.0

④投資先からの利息および配当金

 

 

 

 

利息および

配当金

累計損益

 

利息および配当金

当期計上額

 

 

 

1~3月

累計

合計

 

 

0.2

0.2

 

0.0

0.0

(注)各項目の金額は、単位未満を四捨五入しているため、内訳の計と合計が一致しない場合があります。

(注1)外部投資家持分および税金等の控除前

(注2)1X Holdings, Inc.、Agile Robots SE、Skild AI, Inc.、Terabase Energy, Inc.などの6銘柄をロボHDへ現物出資により移管しました。また、投資に係るコミットメントに充当するため、575百万米ドルの現金を拠出しました。「ソフトバンク・ビジョン・ファンド事業」では、当該6銘柄を全部エグジット、ロボHDを新規投資として扱いますが、連結上では、当社の100%子会社であるロボHDを通じて継続して保有しています。累計投資パフォーマンスを純額で示すため、SVF2の当初保有株式の移管価額および対価として取得したロボHD株式の公正価値をそれぞれ控除しています。

(注3)SVF2が保有していたWeWorkの債券(計4銘柄)および同社による米国連邦破産法11条に基づく手続き完了に伴い同債権の対価として受領した再建後の新WeWork株式(1銘柄)を投資銘柄数から控除しています。

(注4)累計投資パフォーマンスを純額で示すため、株式交換を行った投資について交換先の株式の取得額および当初保有株式の処分額(売却額)をそれぞれ控除しています。XCOM Labs, Inc.とGlobalstar, Inc.、ODA Group Holding ASとMathem Holdings AB、Exscientia PLCとRecursion Pharmaceuticals, Inc.の株式交換が含まれます。

(注5)株式交換および投資先の組織再編による処分(売却)を含みます。

(注6)投資先の公開/未公開の区分は、当期末時点の状態に基づいています。

(注7)SVF2のエグジット前の投資の投資額および公正価値には、投資の取得対価の一部として受領した他会社の非支配持分に係るものが含まれています。

 

LatAmファンド

当期末現在、LatAmファンドは累計投資額75億米ドルに対し累計リターンは64億米ドルとなり、活動開始来累計損失は11億米ドルとなりました。当期においては、投資利益57百万米ドルを計上しました。

 

 

資金の状況

2025年3月31日現在

SVF1

 

 

 

(単位:十億米ドル)

 

 

合計

当社

外部投資家

出資コミットメント(A)

98.6

33.1

65.5

拠出額4(B)

87.2

29.9

57.3

 

拠出額返還額(再コール不可)(C)

47.8

10.5

37.3

 

拠出額残高(注1)(D)=(B)-(C)

39.4

19.4

20.0

コミットメント残額(E)=(A)-(B)

11.4

3.2

8.2

(注)SVF1への当社の出資コミットメントは、アーム株式を活用した約82億米ドル相当の支払義務履行分(全該当株式を拠出済み)のほか、SVF1に関連するインセンティブ・スキームへ活用される25億米ドルを含みます。

(注1)当期末現在、外部投資家の拠出額残高の200億米ドルのうち、51億米ドルはプリファード・エクイティ出資です。

 

SVF2

(単位:十億米ドル)

 

合計

出資コミットメント(A)

65.8

拠出額(B)

63.9

コミットメント残額(C)=(A)-(B)

1.9

(注)コミットメント残額には再コール可能な払込資金返還額を含みます。

 

(参考:2025年3月31日現在 出資コミットメントの内訳)

出資コミットメント総額

65.8

 

共同出資プログラムの対象外の投資への当社エクイティ出資

12.7

 

SVF2 LLCへの当社プリファード・エクイティ出資(注1)

38.1

 

SVF2 LLCへの当社エクイティ出資

12.4

 

SVF2 LLCへのMgmtCoエクイティ出資

2.6

 

 

(注)当期末現在、MgmtCoによる出資額の支払いは実施されていません。

(注1)SVF2 LLC(SVF II Investment Holdings LLC)はSVF2の傘下に設立された当社の子会社であり、共同出資プログラムの対象となる投資を間接的に保有しています。

 

当期末現在、LatAmファンドに対する出資コミットメント総額は78億米ドル、拠出額は76億米ドルです。

 

 

 

 

(c)ソフトバンク事業

メディア・EC事業、コンシューマ事業およびエンタープライズ事業が引き続き増益となったことに加え、PayPay㈱グループが黒字に転じたことにより、セグメント利益は前期比8.5%増加

 

 

 

 

(単位:百万円)

 

3月31日に終了した1年間

 

 

 

2024年

2025年

増減

増減率

売上高

6,083,846

6,544,275

460,429

7.6%

セグメント利益(税引前利益)

835,076

906,309

71,233

8.5%

減価償却費及び償却費

△738,762

△739,874

△1,112

0.2%

投資損益

6,664

△25,074

△31,738

財務費用

△63,706

△81,453

△17,747

27.9%

その他の損益

10,537

20,631

10,094

95.8%

 

<事業概要>

当事業の業績には、ソフトバンク㈱および同社子会社が主に日本国内で行っているモバイルサービスの提供や携帯端末の販売、ブロードバンドサービスや広告サービス、コマースサービスの提供などの事業活動の結果が含まれています。「Beyond Carrier」戦略の下、コアビジネスである通信事業の持続的な成長を図りながら、「Yahoo! JAPAN」、「LINE」といったインターネットサービスや、キャッシュレス決済サービス「PayPay」などのAI・IoT・FinTechを含む最先端テクノロジーを活用したビジネスの展開を通じ、通信以外の領域の拡大を目指しています。

 

<業績全般>

セグメント利益は、前期比71,233百万円(8.5%)増加の906,309百万円となりました。これは主に、メディア・EC事業、コンシューマ事業およびエンタープライズ事業が引き続き増益となったことに加え、ファイナンス事業の主な担い手であるPayPay㈱グループが黒字に転じたことによるものです。

メディア・EC事業は、アカウント広告の成長に伴うメディア売上の増加やコマース売上の増加に加えて、複数の子会社に係る支配喪失利益を計上(上表「その他の損益」に計上)したことにより増益となりました。コンシューマ事業は、主にモバイルサービス売上や物販売上、ブロードバンドサービス売上の増収効果で増益となりました。このうちモバイルサービス売上は、スマートフォン契約数の増加等により引き続き増収となりました。エンタープライズ事業は、企業のデジタル化が加速する中でクラウドサービスの売上が拡大したことなどにより増益となりました。PayPay㈱グループは、主に決済取扱高の拡大に伴う手数料収入の増加およびリボ払い残高の拡大に伴う金利収入の増加により増収となったことに加え、固定費の最適化や、キャンペーン設計の変更などによる販売促進費の効率化により収益性が改善したことにより黒字に転じました。

なお、当期の投資損失の計上は主に、LINEヤフー㈱の子会社において持分法適用関連会社のLINEヤフー㈱以外の持分所有者の一部に付与している売建プットオプションについて公正価値で測定したことによるものです。

 

 

(d)アーム事業

顧客のテクノロジー企業によるAI投資の増加を背景に、当期の売上高(米ドルベース)は過去最高を記録

米ドルベースの売上高は前期比25.3%増(円ベースでは同32.0%増)

- 米ドルベースのロイヤルティー収入は、チップ当たりのロイヤルティー単価が高いアームの最新技術の採用拡大および複数市場でのシェア拡大により、前期比22.7%増加し過去最高を記録

- 米ドルベースのライセンスおよびその他の収入は、主要なテクノロジー企業との間で締結した高額かつ長期のライセンス契約により、前期比28.5%増加し過去最高を記録。これらの契約により、アームの顧客は次世代スマートフォン、データセンター、ネットワーク機器、自動車、コンシューマー・エレクトロニクスおよびAIアプリケーション等、幅広い用途に向けたチップ開発が可能に

将来の成長に向けた研究開発投資の強化が利益の伸びを一部相殺するも、力強い増収がセグメント利益の改善に
貢献

 

 

 

 

(単位:百万円)

 

3月31日に終了した1年間

 

 

 

2024年

2025年

増減

増減率

売上高

464,025

612,347

148,322

32.0%

セグメント利益(税引前利益)

△33,215

47,667

80,882

(注)セグメント利益には、アーム買収時に行った取得原価配分により計上した無形資産の償却費が、当期は63,715百万円、前期は65,581百万円含まれています。

 

<事業概要>

アームは主に、低消費電力型マイクロプロセッサーおよび関連テクノロジーのデザインなど、半導体のIP(回路の設計情報などの知的財産)のライセンス事業を行っています。

アームの業績は半導体市場の動向にプラスにもマイナスにも大きく影響を受けることがあります。市場の売上高はその成長に応じて増加し、アームのロイヤルティー収入の増加をもたらします。また、市場の成長はアームの顧客による活発な製品設計活動を促す可能性があり、アームがより多くの最新テクノロジーをライセンスする機会が生まれ、ライセンスおよびその他の収入の増加につながります。

アームは、コンピューティングの未来を築くため、研究開発投資を継続して強化しています。CPUや、グラフィックスプロセッサー、AIアクセラレーターおよび統合サブシステムなどの関連技術を開発することで、顧客が次世代のコンピューティングデバイスを開発できるようサポートしています。

 

<業績全般>

売上高(米ドルベース)

アームの売上は主に米ドル建てであるため、本項の売上高は米ドルベースの実績を記載しています。

 

 

 

 

(単位:百万米ドル)

3月31日に終了した1年間

 

 

 

2024年

2025年

増減

増減率

ロイヤルティー収入

1,767

2,168

401

22.7%

ライセンスおよびその他の収入

1,431

1,839

408

28.5%

合計

3,198

4,007

809

25.3%

 

売上高は、前期から809百万米ドル(25.3%)増加しアーム史上最高となりました。

 

ロイヤルティー収入

ロイヤルティー収入は、前期から401百万米ドル(22.7%)増加し、過去最高となりました。特にスマートフォン分野において、従来の「Armv8」からチップ当たりのロイヤルティー単価が約2倍となる「Armv9」への置き換えが進んだことが成長を牽引しました。加えて、スマートフォンおよびクラウド分野において、アームのコンピュート・サブシステム(CSS)をベースにしたチップの量産出荷が始まり、ロイヤルティー収入の拡大に寄与しました。CSSベースの設計は、事前に統合・検証された構成で提供されるため、顧客によるチップ開発期間の短縮およびコスト削減を可能とすることで、より高いロイヤルティー料率が適用されます。さらに、当期においてクラウドおよび自動車分野においてアームのシェアが拡大したことも、ロイヤルティー収入の成長を後押ししました。前者ではアームベースのカスタムシリコン(自社設計の半導体チップ)の採用拡大が、後者では自動車の高機能化が、それぞれ成長の背景にあります。一方で、IoT機器およびネットワーク機器分野では、期初の在庫調整の影響を受けて収益成長が一部抑制されました。

 

ライセンスおよびその他の収入

ライセンスおよびその他の収入は前期から408百万米ドル(28.5%)増加し、過去最高となりました。複数の大手テクノロジー企業と高額かつ長期のライセンス契約を締結したことが力強い増収に寄与しました。アームの顧客は、次世代スマートフォン、データセンター、ネットワーク機器、自動車、コンシューマー・エレクトロニクスおよびAIアプリケーションなど多岐にわたる用途に向けたチップを開発しています。これらの顧客の多くは、アームの最先端技術へのアクセスを通じて、将来のAIアルゴリズムを実行可能なチップを設計し、それらが搭載された製品が市場に投入される際に高い競争力を発揮することを目指しています。現在の旺盛なライセンス需要は、今後開発され数年後に市場に投入されるチップからのロイヤルティー収入の基盤となることが期待されます。

 

セグメント利益

セグメント利益は、前期から80,882百万円改善し、47,667百万円の利益となりました。大幅な増収が、次世代のテクノロジーを開発する技術関連人員の増加などに伴うコストの増加を上回ったことによるものです。

なお、アームは当期から金銭による賞与を廃止し、株式報酬を従業員への主なインセンティブ報酬としています。株式報酬はIFRS第2号「株式に基づく報酬」に基づき費用計上されています。

 

<技術開発>

当期、アームおよびライセンシー企業は技術開発に関する以下の発表を行いました。なお、各技術開発の詳細については、発表各社のウェブサイトに掲載されているプレスリリースをご参照ください。

 

・Google LLCは、同社初となる自社開発のデータセンター向けアームベースCPU、Google Axionを発表(2024年4月)。同等の現行世代のx86ベースCPUと比較して最大50%の性能向上と、最大60%の高いエネルギー効率を実現

・Microsoft Corporationは、AI向けに設計されたCopilot+ PCを発表(2024年5月)。これまでで最も高速でインテリジェントなWindows PCであり、第1世代はアームのエネルギー効率に優れた高性能アーキテクチャーで動作

・アームは、スマートフォン、ラップトップおよびコンシューマー・エレクトロニクス向けの次世代のCPUおよびGPU製品を発表(2024年5月)。新しいコンピュート・サブシステム(CSS)は、ソフトウエアやゲームで35%以上、大規模言語モデルを含むオンデバイスの生成AIで40%以上の性能向上を実現

・Meta Platforms Inc.とアームは、Llama 3.2の小規模および大規模言語モデル(10億〜900億パラメーター)を、コンシューマー・エレクトロニクスからスマートフォン、データセンターサーバーに至るまで、アームベースのCPUに最適化するために協力すると発表(2024年9月)

・MediaTek Inc.は、フラッグシップスマートフォン向け次世代チップDimensity 9400を発表(2024年10月)。同チップは「Armv9」をベースとした最新のコンピュート・サブシステム(CSS)を基に開発され、CPUコア「Arm Cortex-X925」およびGPUコア「Arm Immortalis-G925」を搭載

・NVIDIA Corporationは、アームベースのデスクトップAIスーパーコンピュータProject DIGITSを発表(2025年1月)。データサイエンティスト、AI研究者および学生等の個人が、クラウドへのアップロード前にAIモデルを試作、調整および実行することを可能に

・アームは、IoT機器向けにAI処理能力を強化する最新CPU「Arm Cortex-A320」を発表(2025年2月)。同社のNPU「Ethos-U85」との組み合わせにより、10億超のパラメーターを持つAIモデルの実行が可能となり、産業用ロボットの高度な制御、スマートカメラの認識精度向上、家庭用デバイスの利便性向上などに寄与

 

 

c.財政状態の状況

1.投資資産の状況

SVFからの投資(FVTPL)(注1)の帳簿価額は11兆4,109億円(前期末比3,964億円増加)(注2)

- SVF1は前期末比4,256億円増加:米ドルベースでは33.5億米ドル増加。投資の売却により24.9億米ドル減少した一方、当期末に保有する投資先の公正価値増加により58.4億米ドル増加

- SVF2は前期末比26億円減少:米ドルベースでは3.2億米ドル増加。当期末に保有する投資先の公正価値減少により34.7億米ドル、投資の売却2により20.3億米ドルそれぞれ減少した一方、新規投資2および既存投資先への追加投資により58.3億米ドル増加

投資有価証券の帳簿価額は8兆401億円(前期末比1兆219億円減少)(注2)

- Tモバイル株式の帳簿価額は3兆4,041億円(前期末比1兆1,282億円増加)

- ドイツテレコム株式の帳簿価額は1兆1,220億円(前期末比2,939億円増加)

- アリババ株式の帳簿価額は1兆251億円(前期末比2兆7,320億円減少)

 

2.財務活動に伴う負債の増減

ソフトバンクグループ㈱の有利子負債が前期末比1兆7,983億円増加

- 国内普通社債1兆円、外貨建普通社債900百万米ドルおよび900百万ユーロを発行した一方、国内普通社債4,500億円、外貨建普通社債1,216百万米ドルおよび638百万ユーロを償還

- コミットメントライン(米ドル建トランシェ5,465百万米ドル、円建トランシェ356億円)全額の借入実行

- タームローンにより29億米ドルの借入を実行。また、ハイブリッドローン1,350億円の借入実行により、ハイブリッドローン840億円のリファイナンスを完了

資金調達を行う100%子会社の有利子負債が前期末比3兆9,814億円減少(注2)

- アリババ株式を利用した先渡売買契約について、一部の現物決済に伴い決済時点において株式先渡契約金融
負債3兆7,991億円(248.3億米ドル)の認識を中止

- Tモバイル株式を利用した先渡売買契約の全てを現金決済したことに伴い、株式先渡契約金融負債が4,322億円(28.5億米ドル)減少

- 借入金がソフトバンク株式を利用した借入(マージンローン)の増額等により1,932億円増加

 

3.資本の増減

資本合計で前期末比7,159億円の増加

- 親会社の所有者に帰属する純利益1兆1,533億円を計上し、利益剰余金が増加

- 継続的な自社株買いを実施:当期に2,370億円取得

- 為替換算レートが前期末に比して円高となったことにより在外営業活動体の為替換算差額が5,213億円減少

親会社の所有者に帰属する持分比率(自己資本比率)は当期末25.7%(前期末は23.9%)

(注1)「SVFからの投資(FVTPL)」には、SVFが保有する当社の子会社への投資(主にPayPay㈱)および当社から移管後引き続き持分法を適用している投資(後者は「持分法で会計処理されている投資」に計上)を含みません。

(注2)期末日の対米ドルの為替換算レートが前期末に比して1.2%円高となったことによる帳簿価額の減少を含みます。

 

 

 

 

(単位:百万円)

 

2024年

3月31日

2025年

3月31日

 

増減

 

増減率

資産合計

46,724,243

45,013,756

△1,710,487

△3.7%

負債合計

33,487,074

31,060,730

△2,426,344

△7.2%

資本合計

13,237,169

13,953,026

715,857

5.4%

 

(a)資産

 

 

 

 

(単位:百万円)

 

 

2024年

3月31日

2025年

3月31日

 

増減

 

現金及び現金同等物

6,186,874

3,713,028

△2,473,846

 

営業債権及びその他の債権

2,868,767

3,008,144

139,377

 

デリバティブ金融資産

852,350

111,258

△741,092

その他の金融資産

777,996

1,485,877

707,881

棚卸資産

161,863

198,291

36,428

 

その他の流動資産

550,984

365,880

△185,104

 

売却目的保有に分類された資産

42,559

550,440

507,881

流動資産合計

11,441,393

9,432,918

△2,008,475

 

有形固定資産

1,895,289

2,830,185

934,896

使用権資産

746,903

857,961

111,058

 

のれん

5,709,874

5,781,931

72,057

 

無形資産

2,448,840

2,414,562

△34,278

 

契約獲得コスト

317,650

383,022

65,372

 

持分法で会計処理されている投資

839,208

502,995

△336,213

 

SVFからの投資(FVTPL)

11,014,487

11,410,922

396,435

 

SVF1

6,042,046

6,467,602

425,556

 

 

SVF2

4,096,880

4,094,257

△2,623

 

 

LatAmファンド

875,561

849,063

△26,498

 

投資有価証券

9,061,972

8,040,068

△1,021,904

デリバティブ金融資産

385,528

168,248

△217,280

 

その他の金融資産

2,424,282

2,767,625

343,343

 

繰延税金資産

245,954

207,987

△37,967

 

その他の非流動資産

192,863

215,332

22,469

 

非流動資産合計

35,282,850

35,580,838

297,988

 

資産合計

46,724,243

45,013,756

△1,710,487

 

 

 

主な科目別の増減理由

科目

前期末からの主な増減理由

流動資産

 

デリバティブ金融資産

アリババ株式を利用した先渡売買契約について、一部契約の現物決済や同社株式の株価上昇により、同契約に係るデリバティブ金融資産が803,346百万円(53.1億米ドル)減少しました。

 

その他の金融資産

資産運用子会社からの投資が主に社債(主に残存年数が短い投資適格債)の取得により757,844百万円増加しました。

 

売却目的保有に分類された資産

 

2025年4月に決済日が到来するアリババ株式を利用した先渡売買契約のうち、現物決済に使用することを当期末までに決定した同社株式533,818百万円(35.7億米ドル)を「投資有価証券」から「売却目的保有に分類された資産」へ振り替えました。

 

 

 

科目

前期末からの主な増減理由

非流動資産

 

有形固定資産

・2024年7月に当社の持分法適用関連会社であったSBE Globalの持分を追加取得し子会社化したことに伴い、同社の有形固定資産705,535百万円を計上しました。

・ソフトバンク㈱の有形固定資産が169,530百万円増加しました。これは主に大規模なAIデータセンターの構築に向けてシャープ㈱堺工場の土地建物を取得したことに加え、AI計算基盤を取得したことによるものです。

 

SVFからの投資(FVTPL)

・SVF1の帳簿価額が425,556百万円増加しました。米ドルベースでは33.5億米ドル増加しました(注1)。投資の売却により24.9億米ドル減少した一方、当期末に保有する投資先の公正価値増加により58.4億米ドル増加しました。

・SVF2の帳簿価額が2,623百万円減少しました。米ドルベースでは3.2億米ドル増加しました(注1)。当期末に保有する投資先の公正価値減少により34.7億米ドル、投資の売却(ロボHDへの移管を含む)2により20.3億米ドルそれぞれ減少した一方、新規投資2および既存投資先への追加投資により58.3億米ドル増加(当社等から取得した投資を含む)しました。

 

なお、これらのSVFからの投資については、期末日の対米ドルの為替換算レートが前期末に比して1.2%円高となったことによる帳簿価額の減少を含みます。

 

詳細は「(1)財政状態及び経営成績の状況  b.セグメントの業績概況(b)ソフトバンク・ビジョン・ファンド事業」をご参照ください。

 

投資有価証券

・アリババ株式の帳簿価額が前期末比2,731,959百万円減少しました(当期末残高は1,025,104百万円(68.6億米ドル))。当期に同社株式を利用した先渡売買契約の一部について現物決済したことに伴い、決済時点において4,073,694百万円(267.2億米ドル)の認識を中止しました。また、2025年4月に決済日が到来するアリババ株式を利用した先渡売買契約のうち、現物決済に使用することを当期末までに決定した同社株式533,818百万円(35.7億米ドル)を当期末において「投資有価証券」から「売却目的保有に分類された資産」へ振り替えました。これらが、アリババ株式の株価上昇による帳簿価額の増加を上回りました(参考:1株当たり、2024年3月末の72.36米ドルから2025年3月末には132.23米ドルに上昇)。

・Tモバイル株式の帳簿価額が前期末比1,128,242百万円増加しました(当期末残高は3,404,069百万円(227.7億米ドル))。当社がドイツテレコムに付与したTモバイル株式を対象とする株式購入オプションの一部が行使され6.7百万株を売却した一方で、同社株価の上昇により帳簿価額が増加しました(参考:1株当たり、2024年3月末の163.22米ドルから2025年3月末には266.71米ドルに上昇)。

・ドイツテレコム(注2)の帳簿価額が前期末比293,933百万円増加しました(当期末残高は1,121,969百万円(75.0億米ドル))。同社株式を利用したカラー取引の一部現物決済等による減少を、同社株価の上昇による増加が上回りました(参考:1株当たり、2024年3月末の22.50ユーロから2025年3月末には34.22ユーロに上昇)。

 

なお、これらの投資有価証券については、期末日の対米ドルの為替換算レートが前期末に比して1.2%円高となったことによる帳簿価額の減少を含みます。

 

(注1)米ドルに対する現地通貨相場の変動影響を含みます。

(注2)ドイツテレコム株式は当社米国子会社が保有するため、米ドルに対するユーロの変動影響を含みます。

 

(別掲)エンティティ別の現金及び現金同等物

連結上の現金及び現金同等物は前期末比2兆4,738億円減少の3兆7,130億円となりました。詳細については「(2)キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。

 

 

 

(単位:百万円)

 

 

2024年

3月31日

2025年

3月31日

 

増減

持株会社投資事業(注1)

3,359,514

1,596,258

△1,763,256

 

ソフトバンクグループ㈱

2,198,869

1,251,667

△947,202

 

資金調達を行う100%子会社

27,223

97,622

70,399

 

SB Northstar

794,508

1,328

△793,180

 

その他

338,914

245,641

△93,273

ソフトバンク・ビジョン・ファンド事業

229,887

134,096

△95,791

 

SVF1

65,748

30,314

△35,434

 

SVF2

102,063

29,265

△72,798

 

LatAmファンド

3,084

4,497

1,413

 

SBIA、SBGA、SBLA Advisers Corp.

58,992

70,020

11,028

ソフトバンク事業

1,992,873

1,435,525

△557,348

 

ソフトバンク㈱

482,763

293,429

△189,334

 

LINEヤフー㈱

325,391

268,132

△57,259

 

PayPay㈱(注2)、PayPay銀行㈱(注3)

739,759

366,355

△373,404

 

その他

444,960

507,609

62,649

アーム事業

291,127

311,795

20,668

 

アームおよび子会社

291,127

311,795

20,668

その他(注1)

313,473

235,354

△78,119

合計

6,186,874

3,713,028

△2,473,846

(注)連結消去後の金額です。

(注1)当期より、報告セグメントごとに区分して表示しています。これに伴い、従前、表下段の「その他」に含めていた金額の一部を、「持株会社投資事業」の「その他」に組み替えています。

(注2)PayPayカード㈱をはじめとする同社子会社の現金及び現金同等物を含みます。

(注3)PayPay銀行㈱の現金及び現金同等物の当期末残高は223,939百万円です。

 

(b)負債

 

 

 

(単位:百万円)

 

2024年

3月31日

2025年

3月31日

 

増減

 

有利子負債

8,271,143

5,629,648

△2,641,495

 

リース負債

149,801

165,355

15,554

 

銀行業の預金

1,643,155

1,795,965

152,810

 

営業債務及びその他の債務

2,710,529

3,036,349

325,820

 

デリバティブ金融負債

195,090

840,469

645,379

その他の金融負債

31,801

5,940

△25,861

 

未払法人所得税

163,226

444,180

280,954

 

引当金

44,704

54,047

9,343

 

その他の流動負債

801,285

629,717

△171,568

 

売却目的保有に分類された資産に直接関連する負債

9,561

△9,561

 

流動負債合計

14,020,295

12,601,670

△1,418,625

 

有利子負債

12,296,381

12,376,682

80,301

 

リース負債

644,706

741,665

96,959

 

SVFにおける外部投資家持分

4,694,503

3,652,797

△1,041,706

デリバティブ金融負債

41,238

104,197

62,959

 

その他の金融負債

57,017

199,284

142,267

 

引当金

167,902

155,436

△12,466

 

繰延税金負債

1,253,039

924,392

△328,647

 

その他の非流動負債

311,993

304,607

△7,386

 

非流動負債合計

19,466,779

18,459,060

△1,007,719

 

負債合計

33,487,074

31,060,730

△2,426,344

 

 

 

主な科目別の増減理由

科目

前期末からの主な増減理由

有利子負債の内訳は次ページの(別掲)をご参照ください。

流動負債

 

デリバティブ金融負債

・アリババ株式を利用した先渡売買契約に係るデリバティブ金融負債が497,255百万円(33.3億米ドル)増加しました。これは主に同社株式の株価上昇によるものです。

・ドイツテレコム株式を利用したカラー取引に係るデリバティブ金融負債について、契約の一部を決済したことにより減少した一方、同社株式の株価上昇により251,238百万円(16.8億米ドル)増加しました。

・当社がドイツテレコムに付与したTモバイル株式を対象とする株式購入オプションの一部が行使され、Tモバイル株式6.7百万株を売却したほか、残り全ての株式購入オプションについても2024年6月22日に行使期限が到来し消滅したことに伴い、デリバティブ金融負債が70,699百万円(4.7億米ドル)減少しました。

・Tモバイル株式を利用した先渡売買契約の全てを現金決済したことにより、同契約に係るデリバティブ金融負債が28,257百万円(1.9億米ドル)減少しました。

 

非流動負債

 

SVFにおける外部投資家持分

SVF1が外部投資家へ分配・返還を行ったことにより減少しました。詳細は「第5 経理の状況、1 連結財務諸表等、連結財務諸表注記7.ソフトバンク・ビジョン・ファンド事業(2)SVFにおける外部投資家持分」をご参照ください。

 

 

(別掲)連結有利子負債およびリース負債(流動負債および非流動負債の合計)

 

 

 

(単位:百万円)

 

 

2024年

3月31日

2025年

3月31日

 

増減

 

持株会社投資事業(注1)

14,265,108

12,109,943

△2,155,165

 

 

ソフトバンクグループ㈱

6,796,406

8,593,337

1,796,931

 

 

借入金

462,977

1,775,411

1,312,434

 

社債

6,147,578

6,668,470

520,892

 

リース負債

9,351

7,956

△1,395

 

 

コマーシャル・ペーパー

176,500

141,500

△35,000

 

 

資金調達を行う100%子会社(注2)

7,443,112

3,461,666

△3,981,446

 

 

借入金

2,270,601

2,463,823

193,222

 

株式先渡契約金融負債

5,172,511

997,843

△4,174,668

 

SB Northstar

29,796

29,796

 

 

借入金

29,796

29,796

 

 

その他

25,590

25,144

△446

 

ソフトバンク・ビジョン・ファンド事業

563,842

516,272

△47,570

 

 

SVF2

547,894

501,245

△46,649

 

 

借入金

547,894

501,245

△46,649

 

 

SBIA、SBGA、SBLA Advisers Corp.

15,948

15,027

△921

 

 

リース負債

15,948

15,027

△921

 

ソフトバンク事業

6,321,094

5,962,152

△358,942

 

 

ソフトバンク㈱

4,373,826

4,090,269

△283,557

 

 

借入金

2,994,039

2,613,115

△380,924

 

 

社債

827,781

1,023,282

195,501

 

 

リース負債

466,005

453,872

△12,133

 

 

コマーシャル・ペーパー

86,001

△86,001

 

 

LINEヤフー㈱

1,122,485

1,087,779

△34,706

 

 

借入金

591,338

556,318

△35,020

 

 

社債

469,270

444,374

△24,896

 

 

リース負債

61,877

55,087

△6,790

 

 

コマーシャル・ペーパー

32,000

32,000

 

 

PayPay㈱(注3)、PayPay銀行㈱(注4)

503,714

353,216

△150,498

 

 

その他

321,069

430,888

109,819

 

アーム事業

34,630

54,871

20,241

 

 

アームおよび子会社

34,630

54,871

20,241

 

 

リース負債

34,630

54,871

20,241

 

その他(注1)

177,357

270,112

92,755

 

 

その他の有利子負債

143,297

233,824

90,527

 

 

リース負債

34,060

36,288

2,228

 

合計

21,362,031

18,913,350

△2,448,681

 

(注)連結消去後の金額です。

(注1)当期より、報告セグメントごとに区分して表示しています。これに伴い、従前、表下段の「その他」に含めていた金額の一部を、「持株会社投資事業」の「その他」に組み替えています。

(注2)資金調達を行う100%子会社の有利子負債はソフトバンクグループ㈱に対してノンリコースです。

(注3)PayPayカード㈱をはじめとする同社子会社の有利子負債およびリース負債を含みます。

(注4)PayPay銀行㈱の銀行業の預金は、有利子負債には含まれていません。

 

 

前期末からの主な会社別の増減理由

項目

内容

持株会社投資事業

ソフトバンクグループ㈱

借入金

・コミットメントライン契約に基づき、借入限度額全額(米ドル建トランシェが5,465百万米ドル、円建トランシェが356億円)を借り入れました。

・タームローンにより29億米ドルを借り入れました。

・ハイブリッドローンにより1,350億円を借り入れました。これにより、2024年11月に初回任意期限前返済日を迎えたハイブリッドローン840億円のリファイナンスを完了しました。

 

社債

国内普通社債を1兆円発行した一方、4,500億円満期償還しました。

米ドル建普通社債900百万米ドルおよびユーロ建普通社債900百万ユーロをそれぞれ発行した一方、米ドル建普通社債1,216百万米ドルおよびユーロ建普通社債638百万ユーロをそれぞれ償還しました。

上記は全て額面総額です。

 

資金調達を行う100%子会社

借入金

・ソフトバンク㈱株式を利用した借入(マージンローン)の増額により借入金が297,193百万円増加しました。

・ドイツテレコム株式を利用したカラー取引に係る借入金の一部を現金およびドイツテレコム株式で返済したことに伴い、返済時点において借入金が81,489百万円(5.3億米ドル)減少しました。

 

株式先渡契約
金融負債

・アリババ株式を利用した先渡売買契約の一部を現物決済したことに伴い、決済時点において株式先渡契約金融負債3,799,116百万円(248.3億米ドル)の認識を中止しました。

・Tモバイル株式を利用した先渡売買契約の全てを現金決済したことに伴い、株式先渡契約金融負債が432,165百万円(28.5億米ドル)減少しました。これに伴い、当第2四半期末にTモバイル株式を利用した先渡売買契約に係る株式先渡契約金融負債の残高は零となりました。

 

詳細は「第5 経理の状況、1 連結財務諸表等、連結財務諸表注記22.有利子負債(2)アリババ株式先渡売買契約取引」ご参照ください。

 

 

 

(c)資本

 

 

 

(単位:百万円)

 

2024年

3月31日

2025年

3月31日

 

増減

 

資本金

238,772

238,772

 

資本剰余金

3,326,093

3,376,724

50,631

 

その他の資本性金融商品

193,199

193,199

 

利益剰余金

1,632,966

2,701,792

1,068,826

自己株式

△22,725

△256,251

△233,526

その他の包括利益累計額

5,793,820

5,307,305

△486,515

親会社の所有者に帰属する持分合計

11,162,125

11,561,541

399,416

 

非支配持分

2,075,044

2,391,485

316,441

資本合計

13,237,169

13,953,026

715,857

 

 

主な科目別の増減理由

科目

前期末からの主な増減理由

利益剰余金

親会社の所有者に帰属する純利益1,153,332百万円を計上しました。

 

自己株式

総額5,000億円を上限とする自己株式の取得に関する2024年8月7日の取締役会決議に基づき、当期に237,045百万円(28,812,200株)を取得しました。

 

その他の包括利益累計額

海外を拠点とする子会社・関連会社の財務諸表を円換算する際に生じる在外営業活動体の為替換算差額が、対米ドルの為替換算レートが前期末に比して円高となったことなどにより、521,272百万円減少しました。

 

非支配持分

ソフトバンク㈱をはじめとする子会社において非支配持分に帰属する純利益の計上により449,776百万円増加した一方、剰余金の配当により368,868百万円減少しました。このほか、ソフトバンク㈱が社債型種類株式200,000百万円を発行したことにより増加しました。

 

 

(2)キャッシュ・フローの状況

1.営業活動によるキャッシュ・フロー

法人所得税の支払額:3,800億円、法人所得税の還付額:1,648億円

 

2.投資活動によるキャッシュ・フロー:1兆6,315億円のキャッシュ・アウト・フロー(純額)

主にソフトバンクグループ㈱および100%子会社が成長投資に加え、上場株式等への投資を行ったほか、PayPay銀行が債券等の資産運用商品への投資を行ったことにより、投資の取得による支出1兆6,252億円を計上

主にソフトバンクグループ㈱が上場株式等の売却を行ったほか、ドイツテレコムによる株式購入オプションの一部行使に伴うTモバイル株式6.7百万株の売却を行ったことにより、投資の売却または償還による収入1兆1,807億円を計上

SVFで資金化および投資を継続

- SVFによる投資の取得による支出:5,789億円

- SVFによる投資の売却による収入:4,583億円

ソフトバンク等の設備投資に伴い、有形固定資産及び無形資産の取得による支出8,542億円を計上

 

3.財務活動によるキャッシュ・フロー:1兆1,164億円のキャッシュ・アウト・フロー(純額)

ソフトバンクグループ㈱が社債のリファイナンス・新規発行等の資金調達・返済を行ったほか、SVF1が外部投資家への分配・返還を実施

- 有利子負債の収入:5兆3,137億円

・ソフトバンクグループ㈱における収入:3兆3,223億円

(国内普通社債1兆円、米ドル建普通社債900百万米ドルおよびユーロ建普通社債900百万ユーロを発行したほか、短期借入、タームローンおよびハイブリッドローン等により2兆211億円を調達)

- 有利子負債の支出:3兆8,091億円

・ソフトバンクグループ㈱における支出:1兆4,235億円

(国内普通社債4,500億円、米ドル建普通社債449百万米ドルおよびユーロ建普通社債638百万ユーロを満期償還、米ドル建普通社債767百万米ドルを期限前償還したほか、短期借入金およびハイブリッドローン等6,828億円を返済)

・資金調達を行う100%子会社における支出:5,467億円

(Tモバイル株式を利用した先渡売買契約の現金決済およびドイツテレコム株式を利用したカラー取引による借入金の返済等)

- SVFにおける外部投資家への分配額・返還額:1兆4,858億円

- 自己株式の取得による支出:2,371億円

 

4.現金及び現金同等物の当期末残高、増減額

営業活動、投資活動、財務活動それぞれのキャッシュ・フローに加え、現金及び現金同等物に係る換算差額等を計上した結果、当期末時点における残高は3兆7,130億円(前期末比2兆4,738億円減少)

 

<重要な非資金取引>

当期において、アリババ株式先渡売買契約およびドイツテレコム株式を利用したカラー取引の一部を現物決済しました。いずれの取引も非資金取引に該当するため、連結キャッシュ・フローへの影響はありません。詳細は「第5 経理の状況、1 連結財務諸表等、連結財務諸表注記44.連結キャッシュ・フロー計算書の補足情報」をご参照ください。

 

 

 

 

 

(単位:百万円)

 

3月31日に終了した1年間

 

 

2024年

2025年

増減

営業活動によるキャッシュ・フロー

250,547

203,580

△46,967

投資活動によるキャッシュ・フロー

△841,461

△1,631,540

△790,079

財務活動によるキャッシュ・フロー

△606,222

△1,116,384

△510,162

現金及び現金同等物に係る換算差額等

458,857

70,498

△388,359

現金及び現金同等物の増減額

△738,279

△2,473,846

△1,735,567

現金及び現金同等物の期首残高

6,925,153

6,186,874

△738,279

現金及び現金同等物の期末残高

6,186,874

3,713,028

△2,473,846

 

(a)営業活動によるキャッシュ・フロー

SB Northstarにおける余剰資金運用を目的とした社債(主に残存年数が短い投資適格債)等への投資があったものの、営業活動によるキャッシュ・フローは203,580百万円のキャッシュ・イン・フロー(純額)となりました。

なお、法人所得税の支払額は380,008百万円、法人所得税の還付額は164,847百万円でした。前者は主に、ソフトバンク㈱が法人所得税を支払ったことによるものです。後者は主に、ソフトバンクグループ㈱が前期に中間納付した法人所得税118,026百万円について76,724百万円の還付を受けたことによるものです。

 

(b)投資活動によるキャッシュ・フロー

主な科目別の内容

科目

主な内容

投資の取得による支出

△1,625,245百万円

・ソフトバンクグループ㈱および100%子会社で主に成長投資を目的として258,531百万円の投資(以下の上場株式および債券への投資を除く)を行いました。主に、AIを活用したデータ学習型の自動運転プラットフォームを開発する英国のWayveへの投資です。なお、Wayveへの投資は当第4四半期にSVF2に移管しました。

・ソフトバンクグループ㈱が上場株式および債券に962,972百万円の投資を行いました。

・PayPay銀行㈱が債券等の資産運用商品に336,259百万円の投資を行いました。

 

投資の売却または償還による収入

1,180,746百万円

・ソフトバンクグループ㈱が上場株式および債券824,703百万円を売却しました。

・PayPay銀行㈱が債券等の資産運用商品を105,595百万円売却しました。

・当社がドイツテレコムに付与したTモバイル株式を対象とする株式購入オプションの一部が行使され、Tモバイル株式6.7百万株を670百万米ドルで売却しました。

 

SVFによる投資の取得による支出

△578,927百万円

SVFが合計37.9億米ドルの投資を行いました。

SVFによる投資の売却による収入

458,319百万円

SVFが合計30.0億米ドルの投資の売却を行いました。

子会社の支配獲得による収支

△194,216百万円

当社が米国で太陽光発電所の建設および運営を手掛ける持分法適用関連会社のSBE Globalの持分を追加取得し、同社を子会社化しました。また、AIや機械学習に特化した半導体チップの設計・開発を手掛ける英国のGraphcoreを子会社化しました。

なお、左記は支配獲得時に各被取得企業が保有していた現金及び現金同等物を差し引いた金額です。

 

 

 

科目

主な内容

有形固定資産及び無形資産の取得に
よる支出

△854,173百万円

 

ソフトバンク㈱が通信設備、シャープ㈱の堺工場の土地建物およびAI計算基盤等の有形固定資産、ならびにソフトウエア等の無形資産を取得しました。

 

 

(c)財務活動によるキャッシュ・フロー

主な科目別の内容

科目

主な内容

短期有利子負債の収支(純額)

△421,723百万円(注1)

(有利子負債(流動負債)のうち、回転が
早く、期日が短い項目の収支)

・ソフトバンクグループ㈱のコマーシャル・ペーパーが35,000百万円(純額)減少しました。

・ソフトバンク㈱の短期借入金が213,823百万円(純額)減少しました。

・LINEヤフー㈱およびその子会社の短期借入金およびコマーシャル・ペーパーが203,379百万円(純額)減少しました。

有利子負債の収入(以下AおよびBの合計)

5,313,665百万円

 

借入による収入

3,756,443百万円(注2)

・ソフトバンクグループ㈱がコミットメントラインの借入限度額全額(米ドル建トランシェ5,465百万米ドル、円建トランシェ356億円)の借入実行をはじめとする短期借入や、タームローン、ハイブリッドローン等により、2,021,112百万円を調達しました。

・ソフトバンク㈱が割賦債権の流動化、セール&リースバック等により1,060,448百万円を調達しました。

 

 

社債の発行による収入

1,557,222百万円

・ソフトバンクグループ㈱が国内普通社債1兆円、米ドル建普通社債900百万米ドルおよびユーロ建普通社債900百万ユーロをそれぞれ発行しました。

・ソフトバンク㈱が国内普通社債206,000百万円を発行しました。

・LINEヤフー㈱が国内普通社債50,000百万円を発行しました。

上記は全て額面総額です。

 

有利子負債の支出(以下A~Cの合計)

△3,809,082百万円

 

借入金の返済による支出

△2,475,239百万円(注2)

・ソフトバンクグループ㈱が短期借入金、ハイブリッドローンおよびコマーシャル・ペーパー682,836百万円を返済しました。

・ソフトバンク㈱が割賦債権の流動化、セール&リースバック等による借入金およびコマーシャル・ペーパー1,324,658百万円を返済しました。

・資金調達を行う100%子会社がドイツテレコム株式を利用したカラー取引による借入金の一部38,454百万円(251百万米ドル)を返済しました。

 

 

科目

主な内容

 

社債の償還による支出

△825,632百万円

・ソフトバンクグループ㈱が国内普通社債450,000百万円、米ドル建普通社債1,216百万米ドルおよびユーロ建普通社債638百万ユーロをそれぞれ償還しました。

・ソフトバンク㈱が国内普通社債10,000百万円を満期償還しました。

・LINEヤフー㈱が国内普通社債75,000百万円を満期償還しました。

上記は全て額面総額です。

 

 

株式先渡契約金融負債の決済
による支出

△508,211百万円

資金調達を行う100%子会社がTモバイル株式を利用した先渡売買契約を現金決済するために506,234百万円(32.6億米ドル)を支出しました。このうち株式先渡契約金融負債の決済分に相当する444,489百万円(28.6億米ドル)が本科目に含まれています。デリバティブ金融負債の決済分に相当する61,745百万円(4.0億米ドル)は財務活動によるキャッシュ・フローの「その他」に含まれています。

 

SVFにおける外部投資家に対する

分配額・返還額

△1,485,774百万円

 

SVF1が外部投資家へ分配・返還を行いました。

子会社におけるその他の資本性金融商品の発行による収入

200,000百万円

 

ソフトバンク㈱が社債型種類株式200,000百万円を発行しました。

自己株式の取得による支出

△237,058百万円

 

ソフトバンクグループ㈱が2024年8月7日の取締役会決議に基づき自己株式を総額237,045百万円(28,812,200株)取得しました。

配当金の支払額

△64,020百万円

 

ソフトバンクグループ㈱が配当金を支払いました。

 

非支配持分への配当金の支払額

△368,678百万円

 

ソフトバンク㈱やLINEヤフー㈱等が非支配株主へ配当金を支払いました。

(注1)短期有利子負債の収支には、IFRSにおける「純額によるキャッシュ・フローの報告」の要件を満たした財務活動によるキャッシュ・フローを記載しています。

(注2)借入による収入および借入金の返済による支出には、契約上の借入期間が1年以内の借入金に係る収入が1,687,992百万円、支出が1,007,139百万円、それぞれ含まれています。

 

 

 

(d)当社の資本の財源および資金の流動性に係る情報

 

i.ソフトバンクグループ㈱における資本の財源

ソフトバンクグループ㈱は、戦略的投資持株会社として、子会社・関連会社への投資を含む直接投資(子会社を通じた投資を含みます。)または投資ファンド(例えば、SVF1およびSVF2ならびにLatAmファンド)を通じて多数の企業に投資を行っています。また、適切なタイミングでそれらの保有資産を資金化することで、回収した資金や投資先からの配当、投資ファンドからの分配金などを、成長戦略に基づき新規投資に充当するほか、適切なタイミングで株主還元や財務改善にも振り向けています。このほか、負債の返済原資等に充当する目的で社債の発行や金融機関からの借入を実施しています。

保有資産の資金化においては、保有資産の売却だけではなく、多様なアセットバック・ファイナンス(株式先渡売買契約やマージンローンなど、保有資産を活用した資金調達)により、機動的な資金化を実現しています。また、SVFを通じた投資についても、ストラテジックバイヤーや他のアセットマネージャーへの売却、投資先の上場を通じて資金化を行っています。

また、社債の発行においては、円建シニア社債だけではなく米ドルやユーロ建シニア社債、ハイブリッド社債など異なる商品性の債券を発行することで、国内外の様々な市場からの資金調達の機会を確保し、安定的な調達を図っています。

 

ii.当期における資本の財源と資金の流動性の分析

当期は、主にAI関連企業への投資を積極的に行いました。財務活動においては、社債のリファイナンスおよび新規発行、各種シンジケートローンによる調達を行った一方、自己株式の取得による株主還元も行いました。

主にこうした投資活動と財務活動の結果、当期末においても当社の手元流動性は今後2年間の社債償還に必要な資金を上回る水準を維持しています。

 

 

「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」における注記事項

1

ソフトバンクグループ㈱の支払利息には、資金調達を行う100%子会社の支払利息が含まれています。

2

株式交換および投資先の組織再編による取得または処分を含みます。

3

売却手数料等の控除後

4

SVF1における払込資金は、払込み後に投資計画の変更等によりリミテッド・パートナーへ返還された金額を差し引いています。

 

 

 

(3)生産、受注および販売の状況

 当社グループのサービスは広範囲かつ多種多様であり、また受注生産形態をとらない事業も多いため、セグメントごとに生産の規模および受注の規模を金額あるいは数量で示すことはしていません。

 なお、販売の状況については、「(1)財政状態及び経営成績の状況 b.セグメントの業績概況」における各セグメントの業績に関連付けて示しています。

 

(4)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、IFRSに基づき作成しています。この連結財務諸表を作成するにあたり必要となった重要な会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定については、「第5.経理の状況、1 連結財務諸表等、連結財務諸表注記5.重要な判断および見積り」をご参照ください。

 

5【重要な契約等】

(1)OpenAIへの投資について

 ソフトバンクグループ㈱は、2025年3月31日、米国の人工知能研究開発企業OpenAI Global, LLCに最大400億米ドルの追加出資を行うことについて、同社及びその関係会社と最終的な合意に至りました。

 詳細は、「第5 経理の状況、1 連結財務諸表等、連結財務諸表注記48.追加情報(2)OpenAIへの投資について」をご参照ください。

 

(2)ソフトバンクグループ㈱が発行する社債に付された財務上の特約について

ソフトバンクグループ㈱が発行する下記の社債には財務上の特約が付されており、主な内容は以下の通りです。

a.社債の発行をし、又はこれらの特約が付された年月日

    ・第55回無担保普通社債:2019年4月26日

    ・第56回無担保普通社債:2019年9月20日

    ・第58回無担保普通社債:2022年12月16日

    ・第59回無担保普通社債:2024年3月15日

    ・第63回無担保普通社債:2024年6月14日

    ・第64回無担保普通社債:2024年12月11日

 

b.社債の発行残高及び償還期限並びに社債に付された担保の内容

    ・第55回無担保普通社債

      発行残高:5,000億円 償還期限:2025年4月25日 社債に付された担保の内容:なし

    ・第56回無担保普通社債

      発行残高:4,000億円 償還期限:2026年9月17日 社債に付された担保の内容:なし

    ・第58回無担保普通社債

      発行残高:3,850億円 償還期限:2029年12月14日 社債に付された担保の内容:なし

    ・第59回無担保普通社債

      発行残高:5,500億円 償還期限:2031年3月14日 社債に付された担保の内容:なし

    ・第63回無担保普通社債

      発行残高:5,500億円 償還期限:2031年6月13日 社債に付された担保の内容:なし

    ・第64回無担保普通社債

      発行残高:3,500億円 償還期限:2031年12月11日 社債に付された担保の内容:なし

 

    (注) 第55回無担保普通社債は2025年4月25日付で満期償還されています。

 

c.財務上の特約の内容

    第55回、56回、58回、59回、63回、64回無担保普通社債に共通して付された財務上の特約の内容

    ・事業年度の末日におけるソフトバンクグループ㈱の貸借対照表に示される純資産の部の金額を3,698億円以上

    に維持すること。

 

6【研究開発活動】

 当期における研究開発費は507,590百万円です。

 このうち、アーム事業における研究開発費は368,806百万円です。同事業では、低消費電力型マイクロプロセッサー、グラフィックプロセッサーおよびAIアルゴリズム向けアクセラレーターのデザインなど、半導体のIPおよび関連テクノロジーに関する研究開発を主に行っています。