第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 会社の経営の基本方針

当社グループは、2023年度より「Mission、Vision、Value」を経営の基本方針として設定しました。

●Mission

エレクトロニクスを通じて、豊かに充ち溢れた幸福を希求し、グローバルにより良い社会の実現と発展に貢献します。

 

●2030Vision

産業、インフラ、モビリティ業界に対する深い知見を活かし、IoTとデータアナリティクスの技術力を成長ドライバーにして、お客様と社会課題を解決する「サステナビリティソリューションカンパニー」を目指します。

 

●Value

「Who is The First Penguin?」

顧客や市場のウォンツをいち早くキャッチし、自らビジネスモデルを創造します。常に多様な意見を取り入れ、常に変革を求め、常にプロフェッショナルとして、「個の成長」と、「集団の成長」を実現します。そういう人を佐鳥は大切にします。

 

今後も拡がり続けるエレクトロニクス産業において、事業の持続的成長と経営効率の改善を図ることで、ステークホルダーへの還元ならびに社会貢献を果たすべく、より一層の企業価値向上に努めてまいります。

 

(2) 目標とする経営指標

当社グループは、「売上高」と「営業利益額」、「自己資本当期純利益率(ROE)」を重要な経営指標と位置づけ、収益力の強化に努めております。昨年度2024年度を初年度とする『中期経営計画2026』を策定しましたが、この度、現時点の見通しを勘案し、業績目標数値を修正いたしました。最終年度である2026年度に売上高1,650億円、営業利益額48億円、ROE9.0%を目標に定め、引き続き(3)に記載の対処すべき課題に取り組むことといたしました。
 

(3) 経営環境および対処すべき課題

わが国の経済は、賃上げによる個人消費の回復やインバウンド需要の拡大により景気は緩やかな回復基調が見られるものの、中国経済の低迷の長期化により、依然として先行き不透明な状況が続いています。
 当社グループが属するエレクトロニクス業界は、関税問題や輸出規制を含む地政学リスクの高まりなどがあるものの、AI需要が引き続き半導体市場の成長を牽引するなど、堅調に推移するものとみております。

そのような環境下で、中長期的な成長が期待されるモビリティ、産業DXおよび世界一の人口を抱えるインド市場に対する積極的な取り組みを促進することにより、持続的な成長を目指してまいります。
 
 サステナビリティソリューションカンパニーを目指して、以下の課題に取り組んでまいります。
 
 1.セグメント経営の推進による事業ポートフォリオ最適化
 
 2.継続した人財投資によるValue人財創出
 
 3.国内外における新事業拡大とラインカード拡充

 

4.ガバナンス改革とPMIによる経営品質向上

 

5.国内外でのアライアンスとM&A推進

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取り組み】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) サステナビリティの基本方針

当社グループは、「エレクトロニクスを通じて、豊かに充ち溢れた幸福を希求し、グローバルにより良い社会の実現と発展に貢献」することを経営の基本方針の中心に据えており、この方針の実践こそがサステナビリティ経営そのものであると考えております。

あわせて、ステークホルダーとの建設的な対話、公平・公正かつ透明性の高いガバナンスの実現、人権・環境・多様性への配慮により、人と地球の環境を大切にする社会の実現に貢献します。

 

(2) サステナビリティ全般に関するガバナンス及びリスク管理

当社グループでは、前述の基本方針に基づき、持続可能性の観点から企業価値を向上させるため、サステナビリティ推進体制を強化しており、代表取締役社長執行役員がサステナビリティ課題に関する経営判断の最終責任を有しております。

 

当社グループは、代表取締役社長執行役員が委員長を務める「サステナビリティ推進委員会」を設置しております。当該委員会では、下記の事項について検討を行い、経営会議に提言・報告を行っております。経営会議は、当該提言・報告を受けて、当社グループのサステナビリティ経営推進のための重要事項について審議を行い、決定しております。

また、取締役会は、経営会議において承認された事項の報告を受け、サステナビリティに関する課題への対応について、事業機会創出の観点を含め、討議を行います。

 

<サステナビリティ推進委員会の検討事項>

① 中長期的な視点に立ち、サステナビリティに関する重要課題の特定

② サステナビリティに関する重要課題のリスク及び機会の識別

③ サステナビリティに関する重要課題のリスク及び機会への対応の基本方針の策定

④ サステナビリティに関する重要課題への対応の進捗状況の共有と対策の策定

 

(3) 重要なサステナビリティ項目

① 当社グループの気候変動対応

(ガバナンス)

「サステナビリティ推進委員会」内で、気候変動対応のテーマを重要課題として気候変動リスク・機会の特定、影響分析・評価、及び対応策の検討・取り組み状況を確認します。サステナビリティ推進委員会は定期的に経営会議、取締役会に報告等しております。

会 議 体 名

役  割

頻  度

取締役会

気候変動対応の監督

半期一回

経営会議

気候変動に関する基本方針、重要事項の審議

半期一回

サステナビリティ推進委員会

気候変動に関する基本方針、重要事項の提言や活動状況報告

半期一回

 

 

(リスク管理)

事業上のリスクは、全社的なリスク管理の中で各部門・グループ会社により特定され、「経営会議」で審議されます。

その中でも、特に気候変動による影響は重要な事業上のリスクの一つとして認識しており、「サステナビリティ推進委員会」が関連部門と連携し、リスクを特定し対応策を検討します。

「経営会議」で審議された事項は「取締役会」に報告され、取締役会はリスクの状況を継続的に注視しながら対応策の進捗状況を監視し、全社的なリスク全般において管理・監督を実施します。

 

②人的資本

(戦略)

当社グループにおける、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針は、以下のとおりであります。
 

人材育成方針

a)取り組み方針

2030年に向けて新たに策定した2030Visionに記載のとおり、サステナビリティソリューションカンパニーに当社グループがなるべく、既存領域での業界知見・ノウハウを活用して、市場やお客様のウォンツを把握し、提供した製品を通じて得られる情報をデータ収集・分析することで、新たなソリューション・サービスを提供し、持続的な価値提供に取り組んでおります。

また、これらを実践していくために、成長ドライバーを担うマインド・スキルを備えた人財が不可欠との判断から、「既存ビジネスの変革や新しいビジネスモデルの確立に取り組む人財を育成・輩出すること」を人財マネジメントの大方針とし、抜本的な人事制度改革および教育プログラムの拡充を実施しております。

 
b)人事制度改革

当社グループがサステナビリティソリューションカンパニーになるために、2024年6月より新たな人事制度を導入しました。この制度では、従業員に期待する役割を明確にし、これに基づく等級制度を導入しました。また、管理職層のキャリアコースをマネジメント職とプロフェッショナル職の複線型にし、明示された期待役割と合わせて、従業員への期待をより明確にするとともに、従業員が自らのキャリアプランを描けるようにしております。

従業員については、期待役割に基づきメリハリある報酬水準を設定するとともに、「Pay for performance」の考え方に基づき、個々の従業員の目標達成度合いに応じた処遇とし、従業員の頑張り、成果がより反映できる制度としました。この制度が趣旨に沿った運営がされるよう、マネジメント職を中心に継続して研修してまいります。

また、新しい制度では、非管理職層にある一般職と総合職の区分を総合職に統合し、より幅広い活躍の場を提供することで、女性活躍を推進しております。

 
c)人財戦略委員会の設置

当社グループの次代を担う人財育成を目的とし、セグメント横断で経営人財の評価・配置を検討する人財戦略委員会を2024年6月に設置しました。当該委員会を通じて全社目線での育成を実現し、若手従業員の登用を推進し、引き続き限りある人的資本の最大限活用につとめてまいります。

 

d)教育プログラムの拡充

期待役割に応える人財を育成することを目的として、階層別の研修をはじめとした教育プログラムを大幅に拡充し、継続的に投資してまいります。

 

e)多様な働き方

2023年6月からリモートワークを、2024年6月からフレックスタイム制度を導入し、従業員の柔軟な働き方を促進し、個々の従業員の生産性を高めております。

 

(指標及び目標)

多様性における当社グループ課題として女性管理職比率の低さがあげられます。その対応として、制度面では総合職と一般職の統合により活躍の場を広げ、また、従業員に占める女性の割合がそもそも低いことから引き続き、女性の採用や育成に取り組んでまいります。

指標

2025年5月期末実績

目標

達成時期

女性管理職比率

6.1

7

2031年5月期末

 

 (注) 比率および目標値は提出会社における内容となります。

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している重要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 最終製品の販売動向等について

当社グループの取扱商品等は、主として電子機器関連メーカーに販売し、デジタルカメラ、AV機器、携帯端末、パソコン等の製品に使用されておりますが、これら最終製品の販売動向は、流行、競合製品の状況等により大きく変動する傾向を有しております。従って、当社グループの経営成績および財務状況は、最終製品の販売動向等による取扱商品等の需要動向、価格動向の影響を受ける可能性があります。

 

(2) 特定の仕入先への依存について

仕入先とは販売店契約を締結し、緊密な関係を維持しておりますが、契約内容が変更となる場合や各社製品の需要動向、供給状況によって当社グループの経営成績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

また、仕入先の販売店政策の見直しやM&Aによる再編、商権の変更が生じた場合も、当社グループの経営成績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 自社製品の品質等に関するリスクについて

当社グループは、品質・安全に配慮した製品の開発・製造・販売に最善の努力を図っております。製品の品質管理については品質保証の部署を設置し、取引先に対して品質保証が維持できるよう努めております。しかしながら、すべての製品について不具合・欠陥がなく、将来において製品回収などの事態が発生しないという保証はありません。また、製造物責任賠償については保険に加入しておりますが、この保険が最終的に負担する賠償額を十分にカバーできるという保証はありません。よって、大規模な製品の回収や製造物責任賠償につながるような不具合・欠陥が発生した場合には、当社グループの社会的信頼性に重大な影響を与え、多額の費用又は損失の発生や売上高の減少により、当社グループの経営成績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 製品の設計開発について

当社グループの製品については、商談を獲得したのち、製造に向けた設計・開発を行うこととなりますが、顧客による仕様変更やプロジェクトが中止となる可能性があるほか、顧客の要求水準を満たす製品の開発や顧客が受入可能な価格及び数量での製造に成功しない可能性があります。設計・開発段階でプロジェクトが中止となった場合、製品売上は一切受領できないこととなり、当社グループの経営成績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) 在庫リスクについて

当社グループは、顧客からの所要状況や仕入先の供給状況および市場動向を総合的に勘案し、適正な在庫水準の維持と滞留在庫の発生を防ぐ努力をしております。ただし仕入先の取扱製品の生産終了(EOL)や自然災害発生時のサプライチェーン継続に伴い、在庫が増加する可能性があります。

当社グループは適正な在庫価値評価を行い、評価減を計上しておりますが、市況変動など当初見込んでいた顧客の所要に変化があった場合には当社グループの経営成績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6) 技術革新・顧客ニーズへの対応について

当社グループが属するエレクトロニクス業界は、技術革新や事業環境の変化が極めて速く、顧客が当社グループに求める機能も年々、多様化・複雑化しております。当社グループでは、顧客ニーズを把握し、グループの持つ商社機能に自社技術を融合させ付加価値の高い開発ソリューションを提供できるように努めているほか、国内外で新たな仕入先の開拓を行い、取扱商品の拡大を図っております。しかしながら、当社グループが想定していないような新技術・新商品の出現等により事業環境が変化した場合、必ずしも迅速には対応できない恐れはあります。従って、このような場合には当社グループの経営成績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7) キャッシュ・フローの状況について

当社グループは、業績の拡大とともに売上債権および棚卸資産が増加する傾向にあります。売上債権流動化を実施することにより、売上債権の増加を抑制しておりますが、その増加を全面的に回避できるものではありません。従って、売上債権および棚卸資産の推移によっては、当社グループの財務状況および営業キャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。
 なお、当社は資金調達の機動性と安定性を図るため、取引銀行とコミットメントライン契約を締結しております。

 

(8) 為替レートおよび金利の変動について

当社グループが事業を展開する日本国外の各地域における売上高、費用、資産を含む現地通貨建ての項目は、連結財務諸表の作成のために円換算されております。これらの項目は、換算時の為替レートにより円換算後の価値が影響を受ける可能性があります。
  現在、外貨建ての輸出入取引や国内取引であっても外貨建てとする取引が発生しております。取引発生時と決済時の為替変動リスクに関しては、外貨建売上に伴う回収代金を外貨建仕入代金の支払いに充てる方法(マリー)や為替予約(カバー)によってリスク回避に努めております。為替変動による仕入価格の変動に関しては、仕入価格の動向を勘案して販売価格を改定する等の方策を採っておりますが、急激な為替変動により、当社グループの経営成績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループは、運転資金の一部を金融機関からの借入れにより調達しており、資金調達手段の多様化等により金利変動リスクを軽減するよう努めておりますが、急激な金利変動により、当社グループの経営成績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(9) 売上債権等の貸倒れの影響について

当社グループでは、国内外の多くの取引先と製品販売、サービス提供を行っており、十分な与信管理を行うとともに、売上債権等に対して一定の貸倒引当金を計上する等、信用リスク管理に努めております。しかしながら、与信先の信用不安等により、貸倒損失の発生や貸倒引当金を追加で計上する場合は、当社グループの経営成績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10) 投資有価証券の価格変動について

当社グループは、中長期的な企業価値の向上に向けて、取引関係の維持および強化を図るため、他社の株式を取得および保有しております。毎年、中長期的な視点を踏まえて継続保有の合理性・必要性を確認しておりますが、経済情勢や株式相場の動向等により、株価に著しい変動が生じる場合には、当社グループの経営成績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(11) 固定資産の減損処理について

当社グループでは、固定資産を保有しておりますが、固定資産の減損に係る会計基準の対象となる資産又は資産グループについて減損損失を認識すべきであると判定した場合には、当該資産又は資産グループの帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として当該期の損失とすることとなり、当社グループの経営成績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(12) M&A、業務・資本提携について

当社グループでは、M&Aおよび業務・資本提携を既存事業の補完・強化のため、また、業務規模の拡大、新規事業への進出を図る成長戦略のための有効な手段の一つであると位置づけております。これらの実施に当たっては、対象となる企業の財務・税務・法務・事業内容・リスク等に関する詳細なデューデリジェンスを行い、意思決定のために必要かつ十分な情報を収集し、各種リスクの低減を図っておりますが、事業環境や競合状況の著しい変化等により関係会社の業績が当初の想定を下回り、想定していた超過収益力が低下した場合、当該のれん等について減損損失が発生するなど、当社グループの経営成績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(13) 事業環境変化および人材の確保による影響について

当社グループの属するエレクトロニクス業界は、技術革新および事業環境の変化のスピードが速く、高度な開発力、技術力、サポート力が必要とされます。当社グループにおいても、このような環境変化に対応すべく、社内の技術力を高め、販売活動・技術サポート・設計開発ビジネス・保守サービス等における付加価値の向上によって競争力の強化に努めております。しかしながら、想定していた人材の獲得が困難になった場合や人材が流出した場合、商品やサービスを事業計画どおりに提供することが困難となり、当社グループの経営成績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(14) その他の事項について

①法的規制等および訴訟等のリスクについて

当社グループは、国内外において事業を展開しており、各国の法的規制の適用を受けております。予想外の規制の変更、法令適用や政府の政策運用の変更等により、当社グループの事業、経営成績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループは、事業活動の遂行にあたり、訴訟その他の法的手続の対象となるリスクがあり、その結果、当社グループの経営成績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
  

②情報漏洩・流出による影響について

当社グループは、顧客や取引先に関する機密情報および個人情報を有しております。これらの情報を守ることを重大な社会的責務と認識し、情報の適切な取扱い・管理・保護・維持に努めております。しかしながら、万が一情報漏洩等の問題が発生した場合には、社会的信用の失墜や損害賠償責任のために多額の費用負担が発生する可能性があり、当社グループの経営成績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

③自然災害による影響について

当社グループは、地震等の災害に備え、事業継続計画の策定や防災訓練等の対策に取り組んでおりますが、想定外の大規模地震や洪水等の自然災害が発生した場合、業務の全部又は一部の停止、若しくは仕入先・販売先の生産機能および物流機能不全等により、当社グループの経営成績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

④カントリーリスクについて

当社グループが事業展開する国・地域において、経済状況、政治、社会体制等の著しい変化や法律・税制の改正、テロ・戦争、疫病の発生・蔓延などの事象が生じた場合、事業活動の停滞や不測の事態による損害の発生等、当社グループの経営成績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤情報セキュリティに係るリスクについて

当社グループでは、リモートワークによる外部からのアクセスの増加など、情報システムの利用とその重要性は増大しております。そのため、情報システムや情報通信ネットワークの安定的運用とセキュリティ強化に努めておりますが、サイバー攻撃、コンピュータウイルスの侵入等によるシステム停止やデータの破壊、改ざん等によるオペレーションの混乱、停止が生じた場合、当社グループの経営成績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥納期管理に係るリスクについて

当社グループは、提供する商材について納期管理の徹底に努めておりますが、仕入先における資材調達、生産等における予期せぬ要因により納期遅延が生じる可能性があります。また、商材の配送において、道路事情の影響や感染症拡大による都市封鎖、自然災害による物流網の寸断等により遅配等が生じる可能性があります。

これらにより、納期遅延に至った場合、得意先が被った損害の賠償責任等が発生する可能性があり、当社グループの経営成績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

なお、2024年5月1日に行われたオランダの半導体設計会社MAGnetIC Holding B.V.との企業結合について、前連結会計年度において暫定的な会計処理を行っておりましたが、当連結会計年度に確定しており、前連結会計年度に係る比較・分析については暫定的な会計処理の確定の内容を反映させております。

 

(1) 経営成績等の状況の概要

①財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度におけるわが国の経済は、賃上げによる個人消費の回復やインバウンド需要の拡大により景気は緩やかな回復基調が見られるものの、中国経済の低迷の長期化により、依然として先行きが不透明な状況が続いています。

このような環境の中、当連結会計年度の業績につきましては、次のとおりであります。

 

(イ)財政状態

総資産は、前連結会計年度末に比べて46億47百万円減少し、791億50百万円となりました。

負債は、前連結会計年度末に比べて29億84百万円減少し、458億44百万円となりました。

純資産は、前連結会計年度末に比べて16億63百万円減少し、333億6百万円となりました。

 

(ロ)経営成績

売上高は調達マネジメント事業の減少等があったものの、インド市場向け、および国内車載市場向け半導体やPC・サーバー向け電子部品の売上増加に加え、円安の影響等もあり、1,562億42百万円(前年度比5.5%増)となりました。営業利益は為替と人的資本投資等の影響により、39億93百万円(前年度比16.0%減)となりました。経常利益は30億52百万円(前年度比16.5%減)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は投資有価証券売却益の計上や税金費用の減少により、25億24百万円(前年度比17.0%増)となりました。

  

②キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、88億40百万円(前連結会計年度末は92億43百万円)となり、4億3百万円減少しました。

 
(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果得られた資金は13億3百万円(前連結会計年度は53億25百万円の獲得)となりました。

これは主に売上債権の増加、預り金の減少による資金の減少はあったものの、税金等調整前当期純利益の計上、棚卸資産の減少、仕入債務の増加により資金が増加したことによるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果得られた資金は5億92百万円(前連結会計年度は20億57百万円の使用)となりました。

これは主に事業譲渡により資金が増加したことによるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果使用した資金は19億5百万円(前連結会計年度は45億19百万円の使用)となりました。

これは主に短期借入金の純増加による資金の増加はあったものの、配当金の支払、SM Electronic Technologies Pvt. Ltd.の株式の追加取得により資金が減少したことによるものであります。

 

 

③生産、受注及び販売の状況

(生産実績)

当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

生産高(百万円)

前期比(%)

 産業インフラ事業

2,196

89.4

 エンタープライズ事業

341

40.7

 モビリティ事業

 グローバル事業

合計

2,538

77.0

 

(注) 金額は販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。

 

(仕入実績)

当連結会計年度の仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

仕入高(百万円)

前期比(%)

 産業インフラ事業

22,328

96.2

 エンタープライズ事業

39,230

99.2

 モビリティ事業

34,918

125.4

 グローバル事業

39,807

118.9

合計

136,285

109.8

 

(注) 金額は仕入価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。

 

(受注状況)

当連結会計年度の受注状況をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前期比(%)

受注残高(百万円)

前期比(%)

 産業インフラ事業

28,572

100.3

7,012

98.7

 エンタープライズ事業

33,538

118.5

13,764

71.1

 モビリティ事業

50,459

155.7

32,176

152.0

 グローバル事業

48,321

109.2

6,329

90.3

合計

160,891

120.6

59,283

108.5

 

(注) 金額は販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。

 

(販売実績)

当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(百万円)

前期比(%)

 産業インフラ事業

28,663

96.6

 エンタープライズ事業

39,125

90.3

 モビリティ事業

39,452

126.4

 グローバル事業

49,001

111.6

合計

156,242

105.5

 

(注) セグメント間の取引については相殺消去しております。

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

①当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

(イ)財政状態

(資産)

当連結会計年度末における総資産は、791億50百万円(前連結会計年度末は837億98百万円)となり、46億47百万円減少いたしました。これは主に商品及び製品の減少(39億75百万円)、投資有価証券の減少(11億37百万円)によるものであります。

(負債)

当連結会計年度末における負債は、458億44百万円(前連結会計年度末は488億28百万円)となり、29億84百万円減少いたしました。これは主に預り金の減少(38億10百万円)によるものであります。

(純資産)

当連結会計年度末における純資産は、333億6百万円(前連結会計年度末は349億69百万円)となり、16億63百万円減少いたしました。これは主にその他有価証券評価差額金の減少(7億9百万円)、為替換算調整勘定の減少(11億72百万円)によるものであります。なお、自己資本比率は、前連結会計年度の39.9%から40.8%となりました。

 

(ロ)経営成績

(売上高)

当連結会計年度は、調達マネジメント事業の減少等があったものの、インド市場向け、および国内車載市場向け半導体やPC・サーバー向け電子部品の売上増加に加え、円安の影響等もあり、1,562億42百万円(前年度比5.5%増)となりました。

(販売費及び一般管理費)

当連結会計年度は、主に給与手当の増加(2億65百万円)や支払手数料の増加(78百万円)により、前連結会計年度と比べ5億66百万円増加115億59百万円となりました。

(営業利益)

当連結会計年度は、主に販売費及び一般管理費の増加(5億66百万円)による減少により、前連結会計年度と比べ7億61百万円減少39億93百万円となりました。

(経常利益)

当連結会計年度は、債権売却損の減少(2億44百万円)による増加はあったものの、営業利益の減少(7億61百万円)や為替差損の増加(1億円)による減少により、前連結会計年度と比べ6億1百万円減少30億52百万円となりました。

(親会社株主に帰属する当期純利益)

当連結会計年度は、主に経常利益の減少(6億1百万円)はあったものの、投資有価証券売却益の増加(3億52百万円)や法人税等合計の減少(4億46百万円)による増加により、前連結会計年度と比べ3億67百万円増加25億24百万円となりました。

 

これらの結果として、売上高営業利益率は前連結会計年度に比べ0.6ポイント減少し2.6%となりました。

産業インフラ事業では、成長するファクトリー市場/公共インフラ市場にてコアパートナーとの共創活動によりDX/ICTを活用した新しい価値創出への集中、ならびにセンサ、無線、絶縁監視技術の活用による自社製品を核としたソリューションの提供等により収益性の向上を図っております。エンタープライズ事業では、新たなコア商材の創出と育成、通信、エナジー等成長市場への注力、事業領域拡大を図っております。モビリティ事業では、EV向けを中心とした車載用半導体のインド市場を含む事業領域拡大を図っております。グローバル事業では、コアビジネスである日系顧客の移管ビジネスサポートと台湾EMS顧客へのビジネスを引き続き強化/拡充、ならびに急成長を続ける中国や韓国メーカーの商材を日本国内、海外の他拠点の顧客に提供することで事業領域拡大を図っております。

 

 

②経営成績に重要な影響を与える要因

経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

当社は、「コンプライアンス・リスク委員会」を半期に一度開催し、当社グループにとって重要なリスクについて、その影響度を踏まえ、対応策等の検討ならびに情報共有を図っております。また、企業活動に重大な影響を及ぼす恐れがある緊急事態が発生した場合には、「リスク管理規則」に則って対応しております。なお、自然災害等により生じる損害の拡大防止および損失の最小化を目的として当社が定めているBCP(事業継続計画)について、その実効性を高めるため、継続的に内容の見直しを実施しております。

 

③キャッシュ・フロー状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

(キャッシュ・フローの状況)

キャッシュ・フローの状況につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

(資金需要)

当社グループは、資金需要が生じる事象は主に商品の購入のほか、販売費及び一般管理費の営業費用によるものであります。販売費及び一般管理費の主なものは、人件費であります。

なお、重要な資本的支出の予定はありません。

 

(財務政策)

当社グループは、金融機関等からの借入れおよび売上債権流動化により資金調達を行うことを基本としております。

なお、当連結会計年度末における借入金、社債およびリース債務を含む有利子負債の残高は208億26百万円となっております。

また、資金調達の機動性と安定性を図るため、取引先金融機関3行とコミットメントライン契約を締結しております。契約極度額は90億円であり、当連結会計年度末現在において、本契約に基づく借入金残高は30億円であります。

 

④経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

2025年度の連結業績見通しにつきましては、売上高1,600億円(前年度比2.4%増)、営業利益43億円(前年度比7.7%増)、経常利益35億円(前年度比14.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益26億円(前年度比3.0%増)を見込んでおります。

 

 

⑤セグメントごとの経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

セグメントの業績を示すと、次のとおりであります。

 

(産業インフラ事業)

業務用PCの所要減等により、売上高は289億32百万円(前年度比3.6%減)、セグメント利益は売上減に加え、人的資本投資等の影響もあり、13億52百万円(前年度比15.2%減)となりました。

(エンタープライズ事業)

調達マネジメント事業本部の売上減等により、売上高は455億99百万円(前年度比7.3%減)、セグメント利益は売上減に加え、為替と人的資本投資等の影響もあり、12億6百万円(前年度比41.6%減)となりました。

(モビリティ事業)

SM Electronic Technologies Pvt. Ltd.の好調に加え、国内車載市場向け半導体が堅調に推移し、売上高は400億43百万円(前年度比25.1%増)となりましたが、セグメント利益はのれん償却負担増等により、15億4百万円(前年度比17.5%減)となりました。

(グローバル事業)

事務機器向けユニット製品やPC・サーバー向け電子部品の売上増等により、売上高は490億66百万円(前年度比11.6%増)、セグメント利益は9億91百万円(前年度比71.0%増)となりました。

 

⑥重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されております。その作成には経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額ならびに開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

当社グループの連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

5 【重要な契約等】

2025年5月31日現在における販売等の提携は、次のとおりであります。

契約会社名

提携先

契約内容

契約期間

佐鳥電機株式会社

日本電気株式会社

販売特約店契約

2009年6月から1か年

(1年毎の自動更新)

株式会社トーキン

販売特約店契約

2002年4月から1か年

(1年毎の自動更新)

住友電気工業株式会社

特約販売契約

1999年8月から1か年

(1年毎の自動更新)

Western Digital Technologies Inc.

販売店契約

2018年4月から3か年

(1年毎の自動更新)

ヌヴォトンテクノロジージャパン株式会社

販売代理店契約

2021年6月から1か年

(1年毎の自動更新)

佐鳥電機株式会社及び佐鳥SPテクノロジ株式会社

パナソニックホールディングス株式会社

業務提携契約

2018年7月から3か年

(1年毎の自動更新)

株式会社スター・エレクトロニクス

MELEXIS N.V.

販売代理店契約

2007年3月から1か年

(1年毎の自動更新)

 

 

6 【研究開発活動】

当社グループは長年のLSI及びソフトウエアの開発により蓄積された技術力をベースに、無線通信分野を中心に他社製品との差別化を図ったオリジナルバリュー製品を提供できるよう、研究開発活動を展開しております。

当連結会計年度における研究開発費は86百万円であり、主な研究開発活動につきましては次のとおりであります。

 

 <産業インフラ事業

(絶縁監視装置ソリューション)

絶縁監視装置Leakeleは、鉄道/空港/道路を中心としたインフラ市場やデータセンターをはじめとする通信市場において豊富な販売実績を築いてまいりました。更なる市場開拓を目指し、次世代機であるLeakele2ndのリリースに向け研究開発を推進しており、新たに対地電圧補正や自己試験電流診断機能といった独自の新たな機能を搭載することで、他社製品との差別化を図っております。今後も、非接地電路や静電容量不平衡電路のような特殊な環境への対応に向けた技術開発を進めてまいります。

また、経済産業省が推進するスマート保安に対応した専用機の研究開発も進めており、2025年度中に他社に先行した市場投入を予定しております。

〔特長〕

・電気火災の要因である地絡抵抗成分(Ior)を正確に検知

・高精度デジタルフィルターにより、高調波ノイズによる歪んだ電流波形からも正確に検出が可能

・電路/負荷機器の劣化予兆監視が可能

・LED/LCD表示付き操作パネルにより、監視状態の通知・確認・設定および各種試験の操作が可能

・外部通信との親和性

 

(鉄道向け汎用IoTセンサー開発)

日本全国に広がる鉄道網(総延長約19,000km、踏切約33,000箇所)の安全な運行を支えるため、従来は有線ケーブルによるデータ送受信で行われていたレールの状況や踏切の故障診断に、「汎用IoTセンサー開発」を広く活用いただくことで、踏切周辺画像や送電線支柱角度などの増加する確認項目を簡単かつ安価に、そして短時間での無線(IoT)によるデータ送受信が可能となりました。

これにより、鉄道運用企業様においては、更なる安心・安全な鉄道運行を省人化で実現できるため、「汎用IoTセンサー開発」への注目と採用が拡がっており、2026年度の売上に向けた研究開発を進めております。

〔特長〕

・お客様が要求される様々なセンサーとの接続を想定し、複数のセンサーインターフェースを有する

・各種センサー情報をLTE/LoRa/Sigfox/920MH/Bluetooth等の無線(IoT)によるデータ送受信が可能