第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 会社の経営の基本方針

当社グループは、常にお客様の立場から、建設資材の専門商社として「建築資材の取扱いを通して、より快適な夢と希望あふれる社会づくりに貢献する」事を基本理念としております。

この基本理念のもと、内装建材事業・エクステリア事業・住環境関連事業を通して、より快適な夢と希望あふれる社会づくりに貢献するとともに、企業価値の更なる向上を図り、株主・取引先・社員など、会社の幅広い利害関係者の信頼と期待に応えていく事を基本方針としております。

(2) 中長期的な会社の経営戦略

当社グループは、内装建材事業、エクステリア事業、住環境関連事業の三本の事業の柱により多角的な成長を続け、建設セグメントのビジネスに特化した建設資材商社の№1を目指して参ります。そして、プロフェッショナル集団となる人材を育成する事で、「100年企業」へ向けて、持続的に成長して参ります。

当社グループにおける、各事業の中長期的な経営戦略は下記のとおりです。

内装建材事業

首都圏及び大阪都市圏を中心に新拠点を開設すると共に、市場規模が縮小する地方都市においては、ダウンサイジングも含めたエリア再編により、効率的な資本の投下を目指します。また、従来取扱高が少なかったシステム天井や床工事用の建設資材といった取り扱い商品の多様化により、市場占有率を高めて参ります。

エクステリア事業

取扱高の増加に比例して、利益率が向上する事業特性があるため、スケールメリットを追求して参ります。子会社の株式会社アイシンが管轄する関西エリアを主要な商圏としておりますが、今後は未出店エリアへの積極的な展開を進めて参ります。

住環境関連事業

中部地区を中心に既存の販売網を継続発展させると共に、営業本部主導で今後成長が期待されるエコ関連商品の比重を高めて参ります。当社グループの現状の売上に占める割合は高くないものの、省エネルギー商品や環境安全性の高い商品ニーズは従来以上に高まる事が予想されます。成長性の高い商品群の取り扱いを増やす事で、市場の需要を取り込んで参ります。

上記の経営戦略を実現するために、当社グループが取り組む具体的な行動目標として、①グループシナジー効果の最大化、②人材の育成と確保、③グループガバナンスの向上を実行して参ります。

①グループシナジー効果の最大化

全国展開している内装建材事業と関西地区を中心とするエクステリア事業で、販売拠点・物流拠点を共有化する事で、事業展開のスピード向上と業務効率化を図ります。また、業務提携しているグループ会社間で、各得意分野のノウハウの共有や人事交流により、それぞれの強みが相乗効果を生むようにして参ります。

②人材の育成と確保

有給休暇取得の積極的な推奨やフレックスタイムといった柔軟な働き方の本格導入による労務環境の向上、優秀な若手社員のチャレンジ登用、社内教育制度を充実する事で、優秀な人材の確保及び育成に取り組んで参ります。

③グループガバナンスの向上

グループガバナンスの整備及び運用を目的としたグループ内部統制基本方針の制定等、当社グループは各種ガバナンスやコンプライアンス規定を整備し、運用を実施しております。子会社への役員派遣等を通じて、継続的に経営状態をモニタリングすると共に、適切な指導・助言により、企業集団としての意思統一を図り、共通の経営目標に向かって参ります。

なお、当社が2023年11月30日に発表した、「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について」において記載している、PBR1倍達成に向けた基本方針及び2024年度から進める具体的な取組みは下記のとおりです。

(基本方針・目標)

当社グループは、PBR1倍達成に向けた基本方針として以下の目標を掲げ、企業価値向上を目指します。

①ROE8%超の維持……持続的な成長のために人的資本への投資を行いながらも、連結決算導入後のROE平均8%超(2023.12期予想を含む)を継続して達成して参ります。

②収益性と成長の両立……高水準のROEの維持継続とのバランスを図りながら、既存事業への追加投資やM&A等により、収益性と成長の機会を両立して参ります。

(具体的取組み)

①高収益企業を目標とした経営

基本方針に則った高水準のROEの維持継続を意識した経営により、利益金額だけではなく事業投資に対する資本効率性を評価軸に取り入れ、稼ぐ力を意識した経営に引き続き注力して参ります。

②最適資本構成に対する考え方と配当政策についての明確化

建設資材卸売業に属する当社グループにとって、目安として連結自己資本比率40~50%の範囲内が、業種及び実態に即した最適な資本構成として考えております。

配当政策として、現在の安定配当をベースに連続増配を目標としながら、連結自己資本比率に応じて配当性向を段階的に引き上げていく方針であります。

③株式の流動性向上

当社においては、流動性が乏しく株式売買高が少ない事による、流動性リスクプレミアムが資本コストを引き上げる重要な要因になっていると分析しております。

今後、株式分割等の実施についても検討しながら、流通株式数及び株主数、売買出来高を増やす事で、流動性リスクを引下げて参ります。

④IR活動の強化及び成長に向けた継続的なコーポレートアクションの実施

スタンダード市場に属する時価総額50億円前後の中小型株である当社は、機関投資家よりも個人投資家の売買が中心になっていると考えております。

特に個人投資家に対するPR活動が重要であり、成長の可能性がある魅力的な投資対象として認知してもらえるように、事業内容・企業活動に対する情報発信や非財務情報の情報開示を充実させ、成長性に対する投資家の適切な理解を得られるようにIR活動を強化して参ります。

また、M&Aによる連結決算以後に成長が加速したように、成長に向けた様々なコーポレートアクションを継続して行っていく方針であります。

 

(3) 経営環境

当社グループは少子高齢化、グローバル化、情報化が進むわが国において、国内市場のみで事業展開しており、オフィスビルや商業施設、マンション建設や個別住宅等の民間設備投資をメインターゲットとしております。

民間設備投資の建築需要は、少子高齢化に起因する新築住宅数の漸減、大都市圏への人口集中と地方都市経済の空洞化の影響により、依然として大都市圏に建築需要が集中しておりますが、リモートワークの定着や新しい生活様式の浸透により大都市圏近郊の住宅が脚光を浴び、都市部のオフィスや商業施設の建設需要が減退傾向へと変化する経営環境におかれております。

成熟化した国内の建築市場で活動する当社グループにおいては、成長性に制約を受ける一方で、建設業は各種工事の工程が細分化され、建設資材の商流も細分化しております。このため、人口構成の変化に起因する建築形態の変遷により建築需要は安定して推移すると共に、多岐多様に渡る裾野が広い建築業においては、隣接する商品群への水平的な成長の余地が残されております。

新型コロナウイルス感染症を契機に、ライフスタイルが変化したことで、インターネットを通じた消費活動が促進されたことに伴う物流量の増加による物流コストの上昇に加え、世界的なインフレや不安定な為替変動などに起因したあらゆる原材料価格が高騰しております。

長期的に漸減する国内の建築需要と、慢性的な職工不足や物流コストの上昇、社会環境の変化に適した働き方への対応に課題を抱える状態が、当社グループを取り巻く現在の経営環境であります。

 

(4) 目標とする経営指標

当社グループは、企業価値を向上していくことを経営の目標としております。経営指標といたしましては、企業の付加価値を如何に高めることができるかを重視し、資本コストと株価を意識した経営のため、収益性と成長の両立を図り、ROE(自己資本当期純利益率)8%超の維持及び売上高経常利益率の上昇を目指して参ります。

 

(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

2024年度のわが国経済の見通しは、雇用・所得環境が改善する中で、政府の所得税減税といった各種政策の効果もあり、景気は緩やかな回復が続くことが期待されますが、ウクライナ・中東情勢の悪化や東アジアの政情不安といった地政学リスクの高まり、不安定な為替相場や金融政策の軌道修正などが景気を下押しするリスクが懸念されます。

現在、建設資材卸売業に属する当社グループを取り巻く経営環境は、原材料価格の高止まり及びコロナ禍で行われた実質無利子・無担保融資の返済の本格化による信用不安の増加やサステナビリティに対する取り組みなど、様々な対処すべき課題が挙げられます。また、2024年4月より働き方改革関連法の時間外労働の上限規制が物流・運送業にも適用される影響により、輸送リードタイムが長期化し、物流コストが上昇する可能性も想定されます。

このような外部環境の中、内装建材事業におきましては、一時の原材料価格の高騰も一服し、高い水準で仕入価格が継続する事が見込まれますが、職工不足などにより首都圏を中心に先送りされていた工事物件が数多く残っていることから、非住宅建設市場は安定した需要が続くと想定されます。主要仕入れ先との良好な関係を保ちながらサプライチェーンを維持し、物流・運送業界の2024年問題を機動的な配送能力を持つ当社グループの好機と捉えて、柔軟な販売戦略で対応して参ります。さらに、グループ会社との連携を深め、西日本地域の未出店エリアへも販売網を広げて参ります。

エクステリア事業におきましては、建設資材の高騰による住宅価格の値上がりや金利上昇への懸念により、住宅建設市場が伸び悩む厳しい状況が想定されますが、株式会社アイシンの経営陣の若返りにより、環境変化に柔軟に対応し、生産効率向上のための営業所の移転や物流センターの統合を進めて参ります。

住環境関連事業におきましては、工事関連のノウハウを活かし、資材販売から工事に至るまでのワンストップサービスの提供により受注機会を広げていきながら、名古屋市内にエクステリア商品を取り扱う中部地域の拠点の建設を進めるなど、営業所間のみならず、事業の垣根を越えて連携を強化して参ります。

対処すべき課題への事業セグメント共通の対応策として、当社グループは人材の育成及び確保を強化して参ります。取り組みの一つとして、2024年度から新しい人事及び人材育成制度の導入や採用活動の強化を予定しており、拡大戦略を見据えた人材投資により、安定した事業活動の継続と将来の成長に向けた管理体制づくりを進めて参ります。

グループ会社間においても、情報共有や双方の販売・物流拠点の有効利用及び各事業セグメントの状況に応じた最適な役割分担をおこなうことで、様々な課題に対してグループ全体で対処して参ります。

そして、当社グループは、高い収益性を維持継続した経営により、安定配当をベースに連続増配を目標とし、株式の流動性の向上や継続的なコーポレートアクションを行って参ります。これらの取り組みにより、資本コストや株価を意識した経営を実現し、PBR(株価純資産倍率)1倍割れを解消しながら、企業価値の向上を図っていく所存です。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

当社グループは、持続可能な社会の発展と100年企業を目指す当社及びグループ会社の持続的な成長を両立させるため、サステナビリティに関する考え方及び取組方針を決定しております。

「建築資材の取り扱いを通して、より快適な夢と希望あふれる社会づくりに貢献します。」と掲げる当社グループ基本理念のもと、下記のグループ経営理念の実行により、格差の解消やCO2排出量の削減といった社会課題の解決に貢献する過程で、事業機会を新たに創造し、持続的な成長を実現して参ります。

(グループ経営理念)

1.損得より先に善悪を考え、会社はお客様の為にあることを基本に心からのサービスを提供し、ともに栄えることを目指します。

2.人を大切にし、努力が成果につながる職場環境を提供し、社員一人ひとりの能力の更なる発見を目指します。

3.企業価値の更なる向上を図り、株主・取引先をはじめ、広く社会に貢献できる会社を目指します。

 

(1)ガバナンス

当社グループは代表取締役社長をサステナビリティに関する取り組みの最終責任者としており、指標及び目標に関しては各担当部門が半期ごとに集計した上で、達成状況及び原因分析を行い、代表取締役社長に報告を行っております。取締役会は、代表取締役社長より指標及び目標の達成状況及び改善策について報告を受け、中長期の経営方針や経営戦略等の策定と並行して、グループ全体のサステナビリティに関する取り組みを討議した上で、その基本的な方針及び枠組みを決定し、改善に向けた取り組み方法を検討しております。

 

(2)戦略

当社グループは、日本国内で広範囲に多店舗展開を進めており、物流機能を有する建設資材の総合商社として事業活動を行っております。

地域ごとに年間の需要が大きく変動する建設市場においては、全国各地区の中心都市に店舗を展開していく事で、建設需要の地域的な偏りが分散され、安定して成長する事が可能となっております。また、自社保有の在庫について自社で機動的に配送する能力が当社グループの強みの一つであり、成長力の源泉であります。これらの能力を維持していく為には、充分な従業員の人数及び熟練した人材の維持確保が必要となっております。

少子高齢化に伴い労働人口が漸減していく国内で活動する当社グループにとって、近年の人材獲得競争の過熱や労働市場の流動性の高まりから、人材育成・確保におけるリスクや物流コストの上昇及び配送制限によるリスクが年々高まっており、その傾向はより顕著になっております。

このような外部環境の中、当社グループが多店舗展開する能力を維持しながら持続的に成長していく為には、人的資本に対する投資は短期的にも中長期的においても、最も重要な経営課題と認識しております。

中長期の経営方針及び経営戦略の中心テーマとして、新卒及び中途社員の採用活動の強化、既存社員の満足度の向上や定着率の向上、多様な働き方のニーズにあわせた人事制度の見直しについて継続的に改善を行って参ります。

また、人材の育成に関する基本方針及び社内環境整備に関する基本方針を明文化しております。

・人材の育成に関する基本方針 前文

『当社グループは、「人を大切にし、努力が成果につながる職場環境を提供し、社員一人ひとりの能力の更なる発見を目指します。」を経営理念の一つにしており、従業員(人)の成長が企業の成長と捉え、多様な学びの機会を提供する事で従業員の成長を支援していきます。』

・社内環境整備に関する基本方針 前文

『当社グループは、全ての従業員の健康と安全を守るとともに、人権を尊重し、ライフスタイルに応じた多様な働き方の推進に向けて職場環境の整備に努めます。』

上記の基本方針に沿って、社員の成長と会社の成長がリンクし、努力が成果につながる職場環境を提供し、社員一人ひとりの能力の更なる発見とやりがいのある職場を目指し、優秀な人材の確保及び獲得の為に、魅力ある企業を目指して参ります。

そして、当社は建設資材の総合商社であり、中心業務において、直接的な生産行為によるCO2の排出には関与しておりません。しかしながら、中長期的に人的資本に対する投資と共に重要な課題として認識しており、住環境関連事業を中心として、気候変動に対する省エネ・防災といったエコ関連商品の販売により、販売会社としての強みを活かした方法で、環境にやさしい社会の実現に貢献しながら、新たな事業機会を探求して参ります。また、販売活動に使用する配送車両への環境配慮車の導入や自社所有物件への太陽光パネルの設置等により、CO2削減にも取り組んでおり、今後も継続して参ります。

 

(3)リスク管理

当社グループでは内部統制におけるリスク管理体制の一環として、サステナビリティに関するリスク管理を内包しております。

組織横断的なリスク及び全社的リスクの対応は、経営管理室が行うほか、各部門の所管業務に付随したリスク管理は当該部門がリスクの把握管理を行っております。内部監査室は必要に応じてリスク管理状況の監査を実施し、 その結果を取締役会、監査等委員会に報告しております。

取締役会及び経営会議における中長期の経営方針や経営戦略等の策定に際して、外部及び内部環境分析を実施し、グループ全体を取り巻く気候変動や人的資本といったサステナビリティに関するリスクについても、事業活動と一体化して評価対象としております。毎期実施する中長期の計画の見直し時においても、環境変化に伴うリスク評価の見直しを適時に行うことで、サステナビリティに関するリスク管理を行っております。

 

(4)指標及び目標

当社グループでは、サステナビリティ情報として、人的資本に関する課題への取り組みを最も重要であると判断しており、人材の育成に関する基本方針及び社内環境整備に関する基本方針の実現の為に、長時間労働の削減や年次有給休暇等の取得を推奨し、従業員の定着率の向上に取り組んで参ります。当該指標に関する目標及び実績は、次のとおりであります。

指標

目標

実績(当連結会計年度)

月あたりの平均残業時間

10時間未満

11.7時間

有給休暇取得率

80%

51.0%

離職率

3%

4.8%

 

なお、当該指標及び目標につきましては、連結グループに属する全ての会社で実施されているものではなく、提出会社における指標及び目標を記載しております。これは、提出会社におけるサステナビリティに関する考え方及び取組が明確化された後、順次、連結グループ会社全体に適用を拡大していくことを計画している為であり、サステナビリティに関する議論を重ね、将来的に対象範囲や指標の項目数を拡大する予定でおります。

 

3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 事業環境の変化

当社グループの取扱い商品は、ビル等の建築や外構工事に関するものが多く、想定を上回る建設需要の減少や価格の大幅な変動が生じる場合があります。

当社グループは、これらのリスクを軽減するため、固定費等のコスト削減を図っておりますが、事業環境の変化により業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 人口の減少に伴う市場縮小リスク

当社グループは、本邦での販売のみであり、日本国内の少子高齢化が進行した結果、人口減少化社会による新設住宅個数の減少、非住宅の伸び率低下及び労働者不足(職工不足)による受注制限が発生した場合には、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、人口減少による市場縮小リスクに対応するため、多角的な事業展開を推進しており、成長過程にある市場への参入も視野に入れ、経営環境の変化に適応できる経営基盤づくりに取り組んで参ります。

(3) 特定の取引先への依存によるリスク

当社グループは、主力販売商品である軽量鋼製下地材やエクステリア資材において、一定割合を特定の取引先から購入していることから、特定の取引先との関係に急激な変化が生じた場合や契約条件に大幅な変更が生じ、取引ルート等の変更が発生した場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

当社グループは、特定の取引先との関係に急激な変化が生じた場合や契約条件の大幅な変更に対応するため、仕入ルートの多様化を検討しておりますが、今後もこれまでの取引関係を維持・発展させていくことを重視しております。

(4) 物流コスト上昇及び配送制限によるリスク

当社グループの取扱商品は、提携する運送会社各社等の協力により最適な配送網を構築することで、配送しております。しかしながら、物流業界における「2024年問題」及び原油価格の高騰による配送コストの上昇や配送ドライバーの人手不足問題による配送制限が発生した場合には、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、配送コストの上昇や配送ドライバーの人手不足問題による配送制限に対応するため、協力会社との良好な関係を維持しドライバーの待遇改善を図ることで人員確保を進めて参ります。

(5) 不良債権の発生

当社グループの販売先の大半は建設に係る取引先であり、建設需要の減少による取引先の倒産などが発生した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、売掛債権の早期回収を図るとともに、信用情報の収集に努め、未然防止を心掛けております。また、情報収集網を充実させることで与信管理制度の向上を図り、不良債権の発生防止対策に取り組んで参ります。

(6) 人材育成・確保におけるリスク

当社グループが目指す「100年企業」を実現できる経営基盤づくりを進めるためには、優秀な人材の育成・確保が不可欠であり、必要な人材を育成・確保できない場合には、当社グループの事業展開、業績等に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、教育に対する投資を行い人材育成に取り組み、新しいことへチャレンジできる支援と機会を創出し、人材の積極登用・確保に取り組み、給与や待遇面の改善に努め、人事育成・確保におけるリスクの対策を図ることで、「100年企業」を目指して参ります。

(7) コンプライアンス違反によるリスク

当社グループにおいて、法令・規制違反や企業倫理に反する行為等が発生した場合には、その直接的損害に加えて、当社グループに対する信用失墜や損害賠償責任等が生じ、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、子会社も含めたコンプライアンス体制の整備を行っており、リスクを軽減するため、ガバナンスの整備とコンプライアンスの教育活動を進めて参ります。

(8) 減損会計の適用によるリスク

当社グループが所有する固定資産や企業買収に伴う顧客関連資産等の無形固定資産などを有しておりますが、投資に対する回収が不可能になることを示す兆候を認識した場合には、将来キャッシュ・フローの算定等により減損の有無を判定しております。その結果、減損損失の計上が必要になることも考えられ、その場合は、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、投資に対する回収が不可能になる前に、営業本部等の早期指導による収益向上を図り、継続的な業績のモニタリングを行なうことで、リスク対策を講じて参ります。

(9) 感染症のリスク

感染症の発生や蔓延による経済の停滞等により、当社グループの販売活動に大きな制約がかかる可能性があり、また景気悪化に伴う建設需要の減退により、当社グループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループにおいては、感染症のリスクを最小限に抑えるため、手洗いや消毒作業の指導、在宅勤務(テレワーク)、時差出勤の導入及びウェブ会議等を利用した社内外のコミュニケーションを実施しており、感染症予防対策に努めております。

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は以下のとおりであります。

① 経営成績の状況

当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症が「5類感染症」へ移行されたことに伴う社会経済活動の正常化により、個人消費の持ち直しやインバウンド需要の高まりから景気は緩やかな回復に向かう一方で、世界経済においては、ウクライナ情勢の長期化によるエネルギー・原材料価格の高騰に加え、中国経済の減速や世界的な金融引締めにより、成長率に落ち込みが見られました。

建設業界におきましては、公共投資は底堅く推移しましたが、民間投資は建設資材や労務費の高騰により住宅価格が上昇した事から、住宅建設は弱含み、新設住宅着工戸数は前年割れで推移致しました。また、鋼材などの原材料価格の高騰は一服したものの、依然として高止まりしており、エクステリア商材に関しても断続的な値上が行われました。建設業就業者数の減少など慢性的な人手不足が続く中で、人材確保に向けて業界全体での賃上げや労働環境の改善に向けた動向により、コスト上昇の影響が顕在化しており、予断を許さない経営環境が続いております。

このような経営環境の中、当社グループにおきましては、三つの事業セグメントのうち、内装建材事業がグループ全体の業績を牽引する形で推移致しました。エクステリア事業及び住環境関連事業につきましては、事業環境の変化の影響もあり、前年比で減益となりましたが、グループ全体としては順調に推移し、過去最高の業績となりました。

内装建材事業におきましては、大阪府寝屋川市で大阪営業所の営業を開始し、2020年の東京営業所開設に続き、大都市圏における新たな営業拠点を開設致しました。既存店に関しましては、非住宅の建設需要が年間を通して安定して推移した事や、積極的な受注活動と仕入価格の相場変動に柔軟に対応した適正な販売価格を維持したことにより、増収増益となりました。

エクステリア事業におきましては、仕入価格の値上がりによる販売単価の上昇や株式会社アイシンの創立50周年記念キャンペーンが増収に寄与しましたが、コロナ後の巣ごもり需要の反動や中価格帯商品の需要の減退により、物流量自体は減少致しました。また、将来に向けた販売体制強化の為の人員補充や賃金水準の引上げといった人件費の増加などの影響もあり、減益となりました。

住環境関連事業につきましては、工事関連の受注は全体として増加しましたが、従来から当該事業を牽引してきたALC金具副資材市場が、代替製品の普及により急速に縮小するなど、取扱商材の販売に停滞が見られました。その他、新商材の販売に向けた人員の増加といった先行投資により、人件費などが増加した事で、減収減益となりました。

セグメントごとに好不調はありましたが、エクステリア事業及び住環境関連事業の利益減少分を内装建材事業の好調な業績がそれを上回る形で推移し、当社グループの業績は前期比で増収増益となりました。

この結果、当連結会計年度の売上高は、344億22百万円(前期比8.3%増)、営業利益14億21百万円(前期比10.4%増)、経常利益15億74百万円(前期比10.0%増)となりました。また、親会社株主に帰属する当期純利益は9億75百万円(前期比14.2%増)となり、2019年12月期に連結グループ経営を開始してから5期連続で、過去最高の売上高と利益を更新致しました。

セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。

(内装建材事業)

内装建材事業は、売上高は175億57百万円(前期比15.0%増)、営業利益は12億87百万円(前期比21.3%増)となりました。当連結会計年度においては、非住居用の建設需要は持ち直し傾向であったことと、適正な販売価格を維持し受注活動を続けた結果、前年を上回る好調な業績で推移し、前期比において増収増益となりました。また、関西圏のシェア拡大を図るため、大阪営業所を4月に開設し営業活動を開始しております。

(エクステリア事業)

エクステリア事業は、売上高は123億82百万円(前期比4.9%増)、営業利益は5億11百万円(前期比10.7%減)となりました。当連結会計年度においては、売上面においては、コロナ禍の巣ごもり需要が収束したことにより、景況感が停滞しておりましたが、販売店向け記念キャンペーン等の営業活動の積極的な展開により、前年実績を上回り増収となりました。一方で、販売体制強化に伴う人材採用や従業員の処遇改善などの人件費の増加により、利益面においては減少しており、前期比において増収減益となりました。

 

(住環境関連事業)

住環境関連事業は、売上高は46億39百万円(前期比3.3%減)、営業利益は1億90百万円(前期比14.8%減)となりました。当連結会計年度においては、主にALC金具副資材の販売における中京圏の物流倉庫の建設需要の減退やALC建材の代替製品の普及から工事案件の受注が減少したこと及び販売体制強化に伴う人材採用や従業員の処遇改善などの人件費の増加により、前期比において減収減益となりました。

② 財政状態の状況

資産・負債及び純資産の状況

当連結会計年度末における資産合計は、227億31百万円で前連結会計年度末に比べ16億22百万円の増加となりました。

流動資産は、前連結会計年度末に比べ10億85百万円増加し、165億49百万円となりました。この主な要因は、現金及び預金が5億56百万円、電子記録債権が4億82百万円、売掛金が3億67百万円増加し、受取手形が2億61百万円、商品が69百万円減少したことによるものであります。

固定資産は、前連結会計年度末に比べ5億36百万円増加し、61億82百万円となりました。この主な要因は、建物及び構築物が1億79百万円、土地が3億25百万円、建設仮勘定が43百万円、保険積立金が23百万円増加し、顧客関連資産が53百万円減少したことによるものであります。

負債合計は、130億42百万円で前連結会計年度末に比べ7億円の増加となりました。

流動負債は、前連結会計年度末に比べ2億62百万円増加し、117億78百万円となりました。この主な要因は、電子記録債務が3億93百万円、1年内返済予定の長期借入金が2億5百万円、流動負債のその他が36百万円増加し、支払手形及び買掛金が2億99百万円、未払法人税等が66百万円減少したことによるものであります。

固定負債は、前連結会計年度末に比べ4億37百万円増加し、12億63百万円となりました。この主な要因は、長期借入金が5億8百万円、固定負債のその他が1億70百万円増加し、役員退職慰労引当金が2億38百万円減少したことによるものであります。

純資産合計は、96億89百万円で前連結会計年度末に比べ9億21百万円の増加となりました。この主な要因は、配当金の支払及び親会社株主に帰属する当期純利益の計上等により利益剰余金が8億44百万円、非支配株主持分が55百万円増加したことによるものであります。

③ キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という)は、前連結会計年度に比べ5億56百万円増加し、当連結会計年度末には60億82百万円となりました。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度において営業活動の結果獲得した資金は、6億92百万円(前期は12億97百万円の獲得)となりました。

これは主に、税金等調整前当期純利益15億74百万円、減価償却費98百万円、顧客関連資産償却額53百万円、棚卸資産の減少64百万円、仕入債務の増加1億30百万円、その他による増加2億7百万円の一方で、役員退職慰労引当金の減少2億38百万円、売上債権の増加6億18百万円、法人税等の支払額5億68百万円などによるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度において投資活動の結果使用した資金は、6億79百万円(前期は2億20百万円の使用)となりました。

これは主に、定期預金の払戻による収入6億18百万円、貸付金の回収による収入17百万円、保険積立金の解約による収入18百万円の一方で、定期預金の預入による支出6億18百万円、有形固定資産の取得による支出6億48百万円、貸付けによる支出21百万円、保険積立金の積立による支出40百万円などによるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度において財務活動の結果獲得した資金は、5億43百万円(前期は5億49百万円の使用)となりました。

これは主に、長期借入れによる収入12億円の一方で、長期借入金の返済による支出4億86百万円、配当金の支払額1億30百万円、非支配株主への配当金の支払額36百万円などによるものであります。

 

(2) 仕入及び販売の実績

① 仕入実績

当連結会計年度の仕入実績をセグメントごとに示すと次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年1月1日

至 2023年12月31日)

前年同期比(%)

内装関連事業

(千円)

14,278,951

13.8%

エクステリア事業

(千円)

10,199,875

5.5%

住環境関連事業

(千円)

3,661,103

△7.0%

合計

(千円)

28,139,929

7.6%

(注)1. セグメント間の取引については相殺消去しております。

2. 金額は、仕入価格によっております。

② 販売実績

当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年1月1日

至 2023年12月31日)

前年同期比(%)

内装関連事業

(千円)

17,557,529

15.0%

エクステリア事業

(千円)

12,225,019

4.3%

住環境関連事業

(千円)

4,639,515

△3.3%

合計

(千円)

34,422,065

8.3%

(注)セグメント間の取引については相殺消去しております。

(3) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

当連結会計年度の業績につきましては、売上高344億22百万円(前期比8.3%増)、営業利益14億21百万円(前期比10.4%増)、経常利益15億74百万円(前期比10.0%増)となりました。また、親会社株主に帰属する当期純利益は9億75百万円(前期比14.2%増)で増収増益となりました。

当社グループは経営指標としてROE(自己資本当期純利益率)及び売上高経常利益率を重視しておりますが、資本効率性指標であるROE(自己資本当期純利益率)においては、前期比0.4ポイント上昇し11.9%となり、当社グループが目標として掲げる8%超の水準を維持いたしました。また、収益性指標である売上高経常利益率については前期比0.1ポイント上昇し4.6%となりました。これは主に、当期においては、売上高の増加及び内装建材事業において仕入価格の相場変動に柔軟に対応した適正な販売価格の維持に努めたことにより増益となり、販売費及び一般管理費の伸び率を上回ったことによるものです。

当連結会計年度の経営成績等の状況につきましては、第2「事業の状況」4「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」(1)経営成績等の状況の概要に記載したとおりであります。

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当社グループの資金需要は、主に商品仕入、販売費及び一般管理費の営業費用による運転資金及び設備投資資金であります。資金の源泉は主に営業活動によるキャッシュ・フローであり、必要に応じて金融機関からの借入による資金調達を行っております。なお、当連結会計年度末における借入金の残高は17億12百万円となっております。

当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、第2「事業の状況」4「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」(1)経営成績等の状況の概要③キャッシュ・フローの状況に記載したとおりであります。

なお、直近5連結会計年度におけるキャッシュ・フロー指標の推移は、次のとおりであります。

 

第62期

第63期

第64期

第65期

第66期

自己資本比率(%)

32.2

36.6

37.1

36.8

38.0

時価ベースの自己資本比率(%)

13.8

16.2

14.5

16.1

22.5

キャッシュ・フロー対有利子負債比率(%)

544.4

115.2

77.6

247.9

インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)

126.5

271.0

382.1

202.5

※ 自己資本比率:自己資本/総資産

時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産

キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー

インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い

1.株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しております。

2.有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち、利子を支払っている全ての負債を対象としております。

3.第63期については、営業活動によるキャッシュ・フローがマイナスのため、キャッシュ・フロー対有利子負債比率及びインタレスト・カバレッジ・レシオの表示はしておりません。

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

5【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

6【研究開発活動】

該当事項はありません。