当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
(1)経営方針
当社のミッションは、「消費者・カスタマーのニーズを第一に考慮し、差別化された潤滑油製品及び関連製品・サービスを提供する、長期的な信頼と価値を築き継続的に業績を上げていけるベストブランド・マーケターを目指す。そして、安全かつ活気のある職場環境を社員に提供し、利益成長を実現し、サステイナブル(持続可能)であり、かつマテリアル(大規模)なビジネスを実現することで業界をリードする利益を株主に提供する。」ことであります。
当社は、bpグループの一員として「HSSE基準」と「bp行動規範」を順守しています。高い倫理基準を設定し、日々それを業務全般において実践することで、信頼される企業としての地位を築き、ステークホルダー全体に持続的な価値を提供します。特に、Health(健康)、Safety(安全)、Security(セキュリティ)、Environment(環境)の各分野において、無事故、無災害、環境負荷の最小化を目指す取り組みを推進し、地域社会の安全とセキュリティの確保に貢献します。
「bp行動規範」及び「HSSE基準」は、当社の価値観と倫理原則を反映したものであり、内部統制システムの基盤として位置づけてられています。これらを通じて、持続可能な成長と社会的信頼のさらなる強化を図り、企業価値向上に取り組んでまいります。
(2)目標とする経営指標
当社は、2022年にウィズコロナ・ポストコロナに向けた経済活動の再開に伴うエネルギー需要の回復や原材料価格の変動、脱炭素社会の実現に向けた自動車業界の取り組みなど、急速に変化する事業環境に対応するため、従来の中期経営計画を見直し新たな中期経営計画(2022-2026)を策定いたしました。本計画では計画最終年である2026年に達成すべき数値目標として、売上高12,000百万円、経常利益2,450百万円を設定しております。
この中期経営計画に基づき、2026年度までにROE15%以上を達成することを目標に、資本コストを意識した経営をさらに推進してまいります。これにより資本効率の向上を図り、競争力と持続的成長を強化することで、株主価値の向上を目指してまいります。
2025年は計画4年目に当たりますが、下記(3)-②に記載のとおり、市場環境の不確実性が依然として高いことを踏まえ、現行の中期経営計画の基本方針を維持することが最適であると判断いたしました。計画の一貫性を確保し、持続的な成長に向けた戦略の遂行に注力すべく、本年度のローリングは見送ることとしております。
(3)経営環境
①企業構造
当社の企業構造については、第1 企業の概況、3 事業の内容 の事業系統図のとおりであります。
②市場環境
会社を取り巻く状況は、米国の関税引き上げを伴う保護主義経済政策の強化並びに米中関係の変化、中東やウクライナさらには緊迫化する台湾情勢に起因する地政学リスクの拡大・長期化、金融資本市場の動向など、世界経済及び日本経済に対する下振れリスクが引き続き懸念される状況にあります。加えて、長引く円安や原油をはじめとするエネルギー・資源価格の高止まりが、日本経済の回復基調や企業収益に悪影響を及ぼす可能性も指摘されています。
自動車用潤滑油市場が成熟する中で、ハイブリッド車の普及と電気自動車の台頭もあり、新たな需要の押し上げ要因は見当たらず、引き続き売上数量・売上高は減少傾向が継続すると予測しております。
③競合他社の動向及び優位性
当社が主力商品として販売する自動車用潤滑油には、国際石油資本を親会社に持つ海外潤滑油ブランド、国内自動車メーカーが独自に展開する純正潤滑油ブランド、量販店チェーンが独自に展開するプライベートブランド等、多数の競合商品が存在しております。
当社製品の強みは、世界的なブランド力と技術力にあります。カストロールは100年以上の歴史を持ち「常に最高の品質とサービスの提供」を信念に、ユーザーのニーズを満たす製品を創出しております。
当社ではデジタル化への対応を中期経営計画で戦略の1つに位置付けております。デジタルトランスフォーメーションは、データと技術を活用してビジネスモデルを改革し、業務そのものや組織、企業文化・風土等を改革し、競争上の優位性を確立するためにきわめて重要です。
(4)対処すべき課題
当社が成熟した市場の中でコアビジネスの強化を進めて行くためには、技術・商品開発、スポンサーシップや他業種とのコラボレーションの活用、サステナビリティへの取り組みなどを通じて、既存ユーザーへの更なる訴求と新規ユーザーの開拓が必要となります。
中期経営計画(2022-2026)では、以下の5つの経営・事業戦略を注力領域として定めております。全社員が今まで以上にひとつのチームとなり、経営方針やサステナビリティの価値観などを共有し、安全で効率の良い業務(オペレーショナルエクセレンス)を常に追求し、厳しい事業環境の中で更なる飛躍に向けて礎を築くべく、不確実性が高い市場環境の変化を注視し適切な対応を進めることで、計画の着実な実行に取り組んでまいります。
①コアビジネスの強化
カーショップチャネル
•高レベルのマーケット・シェアを持つ強みを活かしながら、潤滑油商品レンジの拡大、近隣製品カテゴリーの拡販
•スポンサーシップや他業種とのコラボレーションを活用した、既存ユーザー層への更なる訴求と新規ユーザー層の開拓
•e-Commerceの拡大
カーディーラーチャネル
•プレミアム・オイルの取扱店舗数並びに数量を拡大
②ポートフォリオの最適化
新規チャネルの開拓
•カストロールのブランド資産と新たなサービス提供を融合し、新たなチャネル及び顧客を開拓(車検/整備工場、タイヤ専門店、中古車販売店等)
③新規ビジネス開発
近隣製品カテゴリーの開発
•ピット向け商品拡充によるフルードも含めたカテゴリーリーダー化
•近隣製品カテゴリーの開発・拡充
•カーケア製品「カストロールPROシリーズ」の育成
新規サービスの開発
•IoT・AIを活用した「販売」「配送」「管理」の統合マネジメントシステムの開発・提供
他業種との提携
•シナジーの追求
④脱炭素化とデジタル化
電動化への対応
•完全電気自動車(BEV)向けe-フルードの導入
•低粘度・ハイブリッド向け潤滑油製品の開発・拡販
脱炭素化への対応
•カーボンオフセット製品の認知拡大と拡販
•製品パッケージ(容器)の削減によるCO2削減
•ライフサイクルを考えた原材料の脱炭素化
•再生ベースオイルの活用
デジタル化への対応
•OtCプロセス、バックオフィスのデジタル化
⑤成長基盤の強化
サプライチェーン強化
•原材料調達先の多様化による安定調達とコスト削減
•配送網の効率化によるコスト・環境負荷の低減
人材開発・育成
•新しい働き方(ハイブリッド型)の推進による働きがい並びに業務効率の向上
•社員のキャリアプランに応じた人材育成・能力開発プログラムの拡充
•「変化」「チャレンジ」を奨励する文化の醸成
当社の親会社であるビーピー・ピーエルシーは、2050年までに温室効果ガスを実質的に排出しない「ネットゼロ企業」となること、国際社会のネットゼロ実現を支援することを目指しています。bpが掲げるサステナビリティ・フレームは、総合エネルギー企業になるという戦略を支え、目標を行動に移すため設定されたものです。
当社もbpグループの一員としてサステナビリティ・フレームのもと、事業分野における戦略と目標を掲げ、持続可能で豊かな社会の実現に貢献するためにSDGsで示された社会課題解決に向けて取り組むことは、新たな事業機会の創出や事業成長にもつながると考えています。当社のサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
当社は、サステナビリティ全般に関する課題を重要なテーマと捉え、代表取締役社長を委員長としてサステナビリティ委員会を設置し、全社プロジェクトとして推進しています。サステナビリティ課題に深く係わるサプライチェーン・マーケティング・人事・財務経理・HSSEの各部門の責任者を中心に委員を構成する本委員会において、サステナビリティに関する基本方針の策定、重要課題(マテリアリティ)の特定、重要課題に関する取り組みの進捗管理等に関し原則として年4回定例会議にて審議し、適宜経営会議及び取締役会へ報告を行うこととしております。
(サステナビリティ基本方針)
当社のサステナビリティ基本方針は次のとおりであります。

当社は、経営理念(ミッション)を定め、サステナブルな経営を行ってきました。そして、私たちの商品・サービスによって、人々の社会生活を豊かにするとともに環境・社会課題に具体解を示し、人々の笑顔あふれる持続可能な社会をつくっていきます。
また、このような価値観・取り組みは、国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」と親和性が高く、事業活動を通じたSDGsの達成に貢献できると考えています。
当社は、サステナビリティへの取り組みを加速するため、ステークホルダーの期待・要望、当社にとっての経営課題や重要性から優先順位付けを行い、注力していく5つの重要課題を選定しました。2030年の「あるべき姿」が示されているSDGsの達成へ向け、「中期経営計画」では、5つの重要課題とそれに紐づく定性目標とSDGsの関係性を整理し、当社が「今なすべきこと」を明確にしています。これらを着実に実施することで持続可能な社会の実現に貢献してまいります。

③リスク管理
当社は、事業継続計画委員会を設置し、その配下に4つのチームを編成しています。そのうちの1つであるリスク管理チームは、ビジネスリスク及びセーフティリスクといった、経営に影響を及ぼす可能性が高いリスクを中心に、リスクアセスメントを実施し、リスク管理に取り組んでおります。
リスクアセスメントでは、定期的な見直しが行われ、ビジネスそのものの変化や、ビジネスを取り巻く環境の変化に対して、適切な対応策を講じることが出来る体制が整えられています。具体的には、bpグループの開発したリスク管理ツール(Risk Assurance Tool)を用いて、リスクが発生する可能性のある事象を特定し、それぞれの発生頻度や影響度を各8段階で評価しています。この評価結果に基づき、それらの事象の未然防止策、並びに発生した際の影響軽減策を設定した上で、結果及び対策を全従業員に対して共有し、リスク管理意識の維持・向上を図っております。
サイバーセキュリティにおいては、デジタルトランスフォーメーションを含む業務効率化を進めるだけでなく、技術的・物理的なセキュリティ対策を講じたインフラ・ツールを使用する他、社員研修やサイバー攻撃を想定した訓練の実施など人的にも必要な対策を講じております。また、社内のサイバーセキュリティ対策にとどまらず、クラウドサービスなどの導入時には、個人情報を含むデータ管理の安全性が確保できていることを条件として採用するなど、業務委託先のセキュリティ対策の取り組み状況の確認にも努めております。こうした環境の整備や人的な対策の遂行は、ハイブリッド型勤務の推進にも寄与しています。
(注)事業継続計画委員会及びリスク管理チームの役割については、後掲
当社では、上記「②戦略」において記載した重要課題(マテリアリティ)に沿って以下の目標を定め、持続可能な社会の実現に向けて貢献してまいります。また「今なすべきこと」を実践すべく2024年4月より本社オフィスにおいてグリーン電力提供サービス(*)を受ける契約を締結いたしました。
なお、KPIは、中期経営計画の進捗状況に応じて見直しをしていく予定です。
*オフィスビルで使用する電力をトラッキング付非化石証書の使用によって実質的に再生可能エネルギーとして提供するサービス
また当社は、マテリアリティを軸として、下記の指標を目標に掲げ、取り組んでおります。
(注)2025年度目標数値は、2023年12月期の販売数量と同数量と仮定して計算しています。
(2)気候変動への対応
当社は、自動車産業に関わる企業として、気候変動問題を非常に重要な課題として認識しています。気候変動は、当社にとってリスクであると同時に、新たな技術革新や市場機会を生み出す要素とも考えており、これに対する対応を通じて、持続可能な社会の実現に貢献することを目指しています。
①ガバナンス
気候変動への対応に関するガバナンスは、「サステナビリティ全般」に組み込まれております。詳細については「(1)サステナビリティ全般 ①ガバナンス」をご参照ください。
②戦略
当社は、気候変動が事業に与える影響を評価するため、IEA(国際エネルギー機関)やIPCC(気候変動に関する政府間パネル)などのシナリオを参照し、リスクと機会の特定を行いました。これに基づき、気候変動に伴う規制強化や市場の変化に対応し、製品の環境性能を向上させる技術開発を進めるとともに、サプライチェーン全体での環境負荷の低減に取り組んでいます。
1) 参照シナリオの概要
2) 気候変動リスクと機会、当社への影響及び対応
(注)1.影響度の基準 大:当社の事業及び財務への影響が大きくなることが想定される
中:当社の事業及び財務への影響がやや大きくなることが想定される
小:当社の事業及び財務への影響が軽微であることが想定される
2.時間軸の基準 短期:3年以内、 中期:3~10年、長期:10年超
③リスク管理
気候変動への対応に関するリスク管理は、「サステナビリティ全般」に組み込まれております。詳細については「(1)サステナビリティ全般 ③リスク管理」をご参照ください。
④指標及び目標
当社は、GHG排出量(Scope1,2)削減目標を、2019年12月期を基準として2030年までに40%削減する目標を設定しました。自動車用潤滑製品の分野においては、カーボン・オフセットの国際認定を受けた製品の販売を積極的に推進しており、2024年12月期の販売数量に占める割合は88.0%(2023年12月期:86.3%、注:2024年12月期より販売数量からPB商品を除いた構成比の算出方法に変更しました)となりました。製品の領域に止まらず脱炭素社会に貢献できる分野において環境対応を進めてまいります。具体的には、事務所照明のLED化、再生可能エネルギー購入、環境負荷の少ない車への切り替え等によりGHG排出量の削減に取り組んでまいります。
(3)人的資本
①ガバナンス
人的資本に関するガバナンスは、「サステナビリティ全般」に組み込まれております。詳細については「(1)サステナビリティ全般 ①ガバナンス」をご参照ください。
②戦略
1) 人的資本への対応
当社は、上記のミッションの下、収益基盤の更なる強化、事業ポートフォリオを再構築・拡大、サステナビリティへの貢献、持続的な企業価値の向上、更なる成長への礎づくり、と変革と飛躍にチャレンジしています。自動車業界は“100年に一度の変革期”と言われる中、「未来は自分達で創る」とした強い決意の下、積極的に協働する組織への再活性化と人材育成・能力開発にも注力し取り組んでまいります。
2) 人材育成方針
当社は、全ての社員が活躍できるよう多様な視点や価値観などの違いを認める多様性、個々の異なる状況やニーズに合わせたサポートを提供し同じ機会や結果を与える公平性、そして個々の違いを尊重し、能力、経験、価値観などを認め活かす包括性を重視した企業文化の醸成に取り組んでいます。
3) 社内環境整備方針
i) 心理的安全性の向上
多様なメンバーが価値観を共有しながら一体となって、変革を推進し、継続的に成功する組織を構築するため、組織の中で個人の考えを社員の誰に対しても安心して発言できる共通理念の浸透に取り組んでいます。
ii) 働き方改革
企業の成長には、社員が高いモチベーションをもって働くことができる環境が必要不可欠です。会社業績に応じた業績報酬制度の導入はもとより、働きやすい職場環境の構築に取り組み以下を整備しております。
・ハイブリッド型勤務(オフィス勤務60%、在宅勤務40%)の導入
個々の業務効率、ワークライフ・バランスの実現を目指します。
・Activity Based Working(ABW)制の導入
最適な場所(座席)を自由に選択できる“ABW“の導入により、その時の自分の業務内容に適した場所を選択、社員間/部署間の対話が活発に行われる社内風士を醸成します。
・フレックスタイム制度及び時差出勤制度の導入
日々の働き方を従業員の裁量で選択することで、または1日の所定労働時間を変更しないまま、始業/終業時刻を繰り上げ、または繰り下げることで、仕事とプライベートのバランスを取りながら、充実感を持って働くことを目指します。
③リスク管理
人的資本に関するリスク管理は、「サステナビリティ全般」に組み込まれております。詳細については「(1)サステナビリティ全般 ③リスク管理」をご参照ください。
④指標及び目標
当社の全従業員における女性の占める割合、女性管理職の割合は、2024年度末時点において下記のとおりです。
女性が働きやすい職場環境の整備と女性管理職の登用に継続的に取り組んでまいります。
また、リスクアセスメント(「(1)サステナビリティ全般 ③リスク管理」セクション参照)の結果に基づき、弊社の管理すべき主要なリスクの一つとして、社用車による自動車事故が特定されています。弊社は、このリスクを軽減するため、安全運転管理プログラムを採用し、一貫して社有車の事故防止に取り組んでいます。
具体的には、社用車を運転する新入社員に対して、外部自動車教習所における運転適性試験と安全運転講習を義務付け、社用車運転者全員に対し、3年毎のリフレッシュ講習を義務付けています。また、社内プログラムでは、社用車運転者全員に対し、上司等によるライドアロングプログラムを実施しています。
今後もこれらの安全運転管理プログラムを通じて、安全を最優先とする運転技術の習得、維持、向上に努め、社用車による事故防止の取り組みを継続、改善して参ります。
*ライドアロングとは、経験豊富なドライバーが一般運転者の車に同乗し、実践的な運転技術の指導やアドバイスを行う安全運転トレーニングの一形態です。
当社を取り巻く市場環境及び事業の状況等に関する事項のうち、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項は、以下のとおりであります。なお、以下の各事項は、有価証券報告書提出日現在において、当社が把握している情報等から判断可能なものについて記載したものであります。
①経済情勢による影響
当社は、ほぼ100%、日本国内において事業展開を行っているため、国内の経済情勢や景気動向の影響を受けております。このリスクが顕在化する可能性は相応にあると認識しており、これら情勢の変動によっては、当社製品に対する需要動向が変化して当社の経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
②自動車業界を取り巻く環境変化
当社が主力商品として販売する潤滑油は、2輪車及び4輪自動車のエンジン並びにトランスミッション(変速機)のメンテナンスを目的としています。従って、自動車業界を取り巻く環境変化に大きく影響を受ける製品カテゴリーといえます。燃料価格の乱高下、新車販売動向とそれを支援する政府の施策、地球温暖化ガス削減に伴う各種規制の強化などに関連して、予測を超える急激な環境変化が起きた場合、当社の経営成績及び財政状態に影響を与える可能性がありますが、本書提出日現在におきまして当該リスクが顕在化する可能性は低いと考えております。また、将来的には、ガソリンエンジン車よりEV(電気自動車)、FCV(燃料電池車)等の次世代自動車が普及することによる登録台数構成比の変化がみられた場合、当社の事業も影響を受けることが予想されますが、現時点では短期的に、かつ急激に構成比が変化するとは考えておりません。
③競合などによる影響
当社が主力商品として販売する自動車用潤滑油には、国際石油資本を親会社に持つ海外潤滑油ブランド、国内自動車メーカーが独自に展開する純正潤滑油ブランド、量販店チェーンが独自に展開するプライベートブランド等、多数の競合商品が存在しております。本書提出日現在におきまして当該リスクが顕在化する可能性は低いと考えておりますが、これら競合他社による新製品、広告、販売促進、価格施策等によっては、当社の経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
④原油価格並びに為替レート等の変動による影響
当社の主力商品である自動車用潤滑油の商品原価は、原材料のベースオイルや各種添加剤等資材価格の大本となる原油価格、並びに為替レートの変動により大きく左右されます。このリスクが顕在化する可能性は相応にあると認識しており、これら指標に関し米国、中国、欧州並びにアジア新興国を含む世界のエネルギー需要、産油国を取り巻く地政学的リスク、産油国による生産量調整などの要因から原油価格が高騰した場合、もしくは、急激に為替レートが円安方向へ変動した場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
⑤製造委託先の経営悪化、品質事故等
当社は製品の製造を主に2社に委託しておりますが、それぞれの企業の特性などを考慮し、当社製品の処方の機密性の高さに応じて、各社への製造委託品目を決めております。各社に対しては、当社にて品質検査、HSSE(健康、安全、セキュリティ、環境)監査、経営状態の確認などを実施しております。仮に委託先の経営悪化、品質事故などが発生した場合、委託先の変更は可能ではあるものの、新たな生産体制が再構築されるまでの期間、当社の経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。しかしながら、本書提出日現在におきまして当該リスクが顕在化する可能性は低いと考えております。
⑥移転価格税制
当社は親会社グループとロイヤリティの支払、製品の輸入などの海外取引が発生いたします。当該取引は、独立した第三者間で通常行われる取引価格に準じて取引価格を決定しております。本書提出日現在におきまして顕在化する可能性は低いと考えておりますが、税務当局との見解に相違が発生した場合、当社の経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
⑦情報セキュリティ
当社は、顧客及び取引先に関する個人情報や各種経営に関する重要情報を保有しております。社内体制といたしましては、情報保護管理規程による管理体制及び情報保護チーム活動によるモニタリング体制の構築、bpグループの強固なサイバーセキュリティ管理の元でのシステム運用、並びに社員へのサイバーセキュリティ教育の実施を行なっておりますが、万が一それらの情報が漏洩した場合には、顧客及び取引先からの信用低下、当社の企業イメージの悪化等により、当社の経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
⑧地震やその他の自然災害等
当社は製造委託先の製造拠点、製品の主要保管倉庫を全国8箇所に分散しております。また地震などの災害について事業継続計画に準拠して非常事態に対応する体制を構築しております。このリスクが顕在化する可能性は相応にあると認識しており、今後も地震などの自然災害が発生した場合には、その規模及び地域によって当社の経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
⑨新型コロナウイルス感染症等、危険度の高い感染症の影響
当社は新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて導入した、デジタルツールを活用した在宅勤務の推進などの新たな従業員の働き方を継続し、感染症の影響を最低限に抑えるべく努めております。今後新たな感染症の発生により、当社の事業活動に係る生産体制、物流体制、又は営業活動に支障が生じた場合、または感染拡大に伴う経済活動制限の程度によっては、その規模及び地域によって当社の経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
⑩親会社等と締結する契約
(1)親会社等の商号等
(注) 親会社等の議決権所有割合欄の( )内は、間接被所有割合で内数であります。
(2)親会社等のうち当社に与える影響が最も大きいと認められる会社の商号とその理由
(3)親会社等の企業グループと当社との関係
当社の親会社はビーピー・ピーエルシーであり、同社は2024年12月末時点において、その子会社であるカストロール・リミテッド及びカストロール・リミテッドの子会社であるティー・ジェイ株式会社を通じて、当社の株式を間接的に14,896千株(株式所有比率64.8%、議決権所有比率64.9%)保有する筆頭株主で当面その比率は維持される見込みです。
ビーピー・ピーエルシーは、石油・天然ガスの開発に加え、風力発電やバイオ燃料など再生可能エネルギーの供給などエネルギー事業全般、カストロール・リミテッドは潤滑油事業全般を全世界で展開しております。
当社は、bpグループの事業領域の中で潤滑油事業のセグメントに属し、日本の自動車用潤滑油市場においてbpグループのブランド製品の販売を一手に引き受けております。
そのため、ビーピー・ピーエルシーとbpブランド製品商標権に関する「Lubricant Intellectual Property License Agreement」を、カストロール・リミテッドとCastrol及びbpブランド製品商標及び製造・販売に関する「Lubricant Intellectual Property and Technology License Agreement(ライセンス契約)」(以下、ライセンス契約等という)を締結しており、カストロール・リミテッドに対して契約に定めたロイヤリティを支払っております。
当社は、ライセンス契約等に基づき、日本の自動車用潤滑油市場においてbpグループのブランド製品の普及浸透を一手に引き受けており、日本市場並びに日本の消費者を熟知していることから、同グループのパートナーとして、また、独立した上場企業として事業を展開しております。
ライセンス契約等には、bpグループの名誉を傷つける行為・民事再生の申請・支払遅延・契約違反等による契約解除条項が定められております。当社とbpグループとの間のライセンス契約等が万一解除され、又は契約内容が変更された場合、当社の事業展開に一時的に支障をきたす恐れがあり、当社の業績に影響が及ぶ可能性があります。
この他、当社はビーピー・ピーエルシーのグループ会社との間で、企業倫理、健康・安全等に関するノウハウ提供及び資金管理・人事管理・能力開発ツールなどを含む業務支援サービスを主軸とした包括的サービス契約(Global Cost Contribution Amendment Agreement)、並びにITサポートに関するサービス契約(Global Digital & Communications Technology Agreement)を締結しており、契約に定めた業務委託料を支払っております。
なお、現時点では前述の重要な契約の継続に支障をきたす恐れがある原因の発生は無いと認識しております。

(注) 上図中の数字は、株式所有比率であります。
当事業年度におけるわが国経済は、物価高が続くものの、雇用や所得環境の改善、政府の政策効果により緩やかな回復基調が見られました。一方で、海外経済は中国経済の先行き不安、中東地域の情勢、アメリカの政権交代による政策変更の可能性など、複合的な要因で依然として不透明な状況が続いています。
自動車業界におきましては、小型・ハイブリッドの低燃費車及び軽自動車が引き続き消費者からの根強い支持を集めております。販売台数につきましては、普通車・軽自動車合計で前年同期比約7%の減少となり、2年ぶりにマイナスに転じました。半導体等の供給不足解消による新車供給の回復はあったものの、一部自動車メーカーによる認証取得の不正問題に伴う全面的な生産・出荷停止が影響し、新車販売台数は下押しされました。また、円安の進行や原材料価格の高止まりにより、厳しい経営環境が続いています。
このような市場環境の下、自動車潤滑油ビジネスにおいてはコンシューマーチャネルにて高付加価値製品の継続訴求とともに、上半期に導入したコストパフォーマンスに優れた専売品の販売拡大を行いました。そしてeコマースにおいてソーシャルメディアの活用を含むデジタルチャネルとの連携強化により、購入者層の拡大を図りました。またディーラーチャネルにおいては、環境に配慮した製品の継続的な訴求、上半期に上市した商材を元に新規顧客獲得へのアプローチを強化するとともに、その他顧客のニーズに対応した施策を実施してきました。
さらにbpグループが提唱する2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロとする“ネットゼロ”のコンセプトを訴求し、関心が高まっている環境問題にも継続的に取り組む一方、プロフェッショナル仕様の多目的潤滑スプレーの販売も進めてエンジンオイル以外の新たな市場・ユーザーへのアプローチに積極的に取り組みました。また、自動車整備工場販路にもプレミアムオイルの提案を実施し、販路・顧客層の拡大を実践しました。
コミュニケーション分野においては、カストロール創業125周年を迎え、カストロールブランドロゴのリニューアルに伴う製品パッケージの刷新を継続的に展開しました。また、bpグループがグローバルスポンサーを務めるF1、フォーミュラEや英国プレミアリーグチームのコンテンツを活用するとともに、11月に開催された世界ラリー選手権フォーラムエイト・ラリージャパンにカストロールMEMラリーチームがイギリスから初参戦するといった様々な取り組みによって、カストロールブランドの認知向上に努めました。さらにデジタルトランスフォーメーションを含む業務効率化も継続して推進しました。
成熟した市場環境並びに物価の高騰から、価格によりシビアなユーザーが増える中、高付加価値ブランドの拡大と新しい需要の喚起・創出を促進することで、当社ビジネスの継続的な成長を図りました。
これらの結果、当事業年度における当社の売上高は13,652百万円(前年同期比13.4%増)、営業利益は1,354百万円(前年同期比22.2%増)、経常利益は1,412百万円(前年同期比20.9%増)、当期純利益は932百万円(前年同期比19.3%増)となりました。
なお、当社の事業は、潤滑油の販売並びにこれらに付帯する事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの記載を省略しております。
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、745百万円となり前事業年度末より500百万円減少いたしました。当事業年度末における各キャッシュ・フローの状況と要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度末において営業活動の結果得られた資金は、516百万円(前年同期比128百万円の減少)となりました。これは、主に税引前当期純利益1,412百万円、減価償却費の計上134百万円、仕入債務の増加124百万円及び未払金の増加281百万円により資金が増加した一方、前払年金費用の増加227百万円、売上債権の増加503百万円、棚卸資産の増加307百万円及び法人税等の支払額353百万円により資金が減少したことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は、122百万円(前年同期比70百万円の支出減少)となりました。これは、主に貸付けによる支出6,000百万円、貸付金の回収による収入6,000百万円及び有形固定資産の取得による支出79百万円によるものであります。
なお、貸付金の内容は、bpグループのインハウス・バンクを運営しているビーピー・インターナショナル・リミテッドに対するものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は、894百万円(前年同期比0百万円の支出増加)となりました。これは、主に配当金の支払い894百万円によるものであります。
当社は潤滑油の販売並びにこれらに付帯する事業のみの単一セグメントであり、当事業年度における商品仕入実績は次のとおりであります。
(受注実績は販売実績とほぼ同様であります。)
当社は潤滑油の販売並びにこれらに付帯する事業のみの単一セグメントであり、当事業年度における販売実績は次のとおりであります。
(注) 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
(注) 相手先別に売上割戻を集計することが困難なため、売上割戻金控除前の金額及び割合を使用しております。
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。
当社の財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しており、その作成に当たっては、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とします。
当社の財務諸表の作成に当たり採用した重要な会計方針については、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項(重要な会計方針)」に記載のとおりであります。
また、引当金の計上や資産の評価等、当社の財務諸表の作成に当たり必要となる見積りについて、経営者は過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果とは異なる場合があります。
当事業年度は、自動車用潤滑油市場に新たな需要の押し上げ要因の見当たらない厳しい経営環境の中、コンシューマーチャネルにおいては高い走行歴でも最適なエンジン・パフォーマンスを維持する高走行距離車向けエンジンオイルや最新の省燃費車に合わせた超低粘度エンジンオイルなどの高付加価値製品の継続的な拡販に加えて、自動車整備工場販路の拡大やコストパフォーマンスに優れた専売品の新規導入を行いました。またディーラーチャネルにおいては、顧客のニーズに対応した新製品の導入及びきめの細かい施策を実施し、同時に法人ユーザーをターゲットとした施策も実施してまいりました。併せてeコマースにおいてソーシャルメディアの活用を含むデジタルチャネルとの連携強化により購入者層の拡大を促進し、販売数量維持・拡大を行ってまいりました。
また、bpグループが提唱する2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロとする“ネットゼロ”コンセプトの訴求等を通して、当社旗艦製品である「カストロールエッジ」、さらに「カストロールマグナテック」「カストロールトランスマックス」ブランドを中心としたエンジンオイル、トランスミッションオイル、並びにエンジン内部を手軽に洗浄できる「エンジンシャンプー」や、プロフェッショナル仕様の多目的潤滑スプレーなど関連製品も含めた積極的な拡販を進めました。原油をはじめとするエネルギー・資源価格の上昇・高止まり並びに円安傾向が継続する状況から、コスト上昇を反映するタイムラグはありながらも販売価格への転嫁を進めたことにより、当事業年度の売上高は13,652百万円(前事業年度比1,615百万円の増加)となりました。
売上総利益は、新製品の発売や旗艦製品の拡販、新規販路の開拓、さらに原材料・資材価格上昇を受けた販売価格転嫁により、5,075百万円(前事業年度比332百万円の増加)となりました。
販売費及び一般管理費は、3,720百万円となり、前事業年度比85百万円の増加となりました。主な要因は、カストロールブランドの認知向上を目的とした取り組みによる販売促進費の増加であり、その結果、営業利益は1,354百万円(前事業年度比246百万円の増加)となりました。
上記の要因により経常利益は1,412百万円(前事業年度比244百万円の増加)、当期純利益は932百万円(前事業年度比151百万円の増加)となりました。
経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載の通り、売上高及び経常利益を重要な経営指標として位置付けており、上記の通りの結果となっております。
(流動資産)
当事業年度末における流動資産の残高は、11,871百万円(前事業年度末は11,462百万円)となり、408百万円増加いたしました。これは、主に売掛金(503百万円の増加)、商品及び製品(279百万円の増加)及び短期貸付金(298百万円の減少)によるものです。(なお、貸付金の内容は、bpグループのインハウス・バンクを運営しているビーピー・インターナショナル・リミテッドに対するものです。)
(固定資産)
当事業年度末における固定資産の残高は、1,567百万円(前事業年度末は1,350百万円)となり、216百万円増加いたしました。これは、主に前払年金費用(227百万円の増加)によるものです。
(流動負債)
当事業年度末における流動負債の残高は、3,252百万円(前事業年度末は2,739百万円)となり、513百万円増加いたしました。これは、主に買掛金(124百万円の増加)及び未払金(299百万円の増加)によるものです。
(固定負債)
当事業年度末における固定負債の残高は、179百万円(前事業年度末は101百万円)となり、77百万円増加いたしました。これは、主に繰延税金負債(66百万円の増加)によるものです。
(純資産)
当事業年度末における純資産の残高は、10,006百万円(前事業年度末は9,972百万円)となり、34百万円増加いたしました。これは、主に利益剰余金が当期純利益により932百万円増加し、剰余金の配当により895百万円減少したことによるものです。
当社における運転資金需要の内、主なものは仕入や販売費及び一般管理費等の営業費用であり、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。
これらの資金需要は営業活動で生み出した自己資金で賄うこととしておりますが、必要に応じて資金調達を実施いたします。
当社は、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおり、国内の経済情勢や市場環境、景気動向等、様々なリスク要因が当社の経営成績に重要な影響を与える可能性があると認識しております。
そのため、当社では自動車業界や国内外の経済動向、消費者動向に留意しつつ、顧客のニーズを的確に捉え最適な商品を提供してまいります。また内部管理体制の強化及び優秀な人材を確保育成することにより、様々なリスクに対し適切に対応を行ってまいります。
(注) 上記については、契約に応じたロイヤリティを支払っております。
該当事項はありません。