当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針・経営戦略等
当社グループは、2021年4月に4ヶ年の中期経営計画「Change & Co-Create 2024」を公表し、エレクトロニクス商社とケミカルメーカーの複合企業として、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を目指し、収益力の向上や新規事業の展開などの経営課題に取り組んでまいりました。
ウクライナ情勢や中国経済低迷の長期化、更には米国をはじめとする各国の金融引き締めなど、不透明な状況が続いている中、当社グループは本計画にて掲げた事業構造改革による効果に加え、主力事業を展開しているエレクトロニクス業界において、自動車向け半導体並びに産業機器向け半導体及び半導体製造装置の堅調な推移により、2021 年度、2022 年度共に当初計画の定量目標である連結営業利益50 億円以上を達成いたしました。そのため、2023年4月に本計画の折り返し地点に際し、成長を維持するため、以下の通り定量目標の見直しを行いました。
(定量目標)
本計画の最終年度となる2024年度(2025年3月期)における見直し後の定量目標は以下の通りです。
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経営指標 |
当初計画 |
見直し後 |
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連結営業利益 |
50億円以上 |
90億円以上 |
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連結営業利益率 |
3.0%以上 |
4.5%以上 |
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ROE |
6.0%以上 |
9.0%以上 |
その他の項目は当初に公表した全社戦略、事業戦略を踏襲しており、2023年度の本計画に基づく取り組み状況は以下の通りです。
(中期経営計画の進捗状況)
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全社戦略 |
・全社横断的に成長を加速させる事業の創出や市場開拓への取り組み ・事業間連携を通じた情報共有の強化 ・収益性の高い事業への人員シフト ・DX推進強化 ・新人事制度移行 |
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セ グ メ ン ト 別 戦 略 |
半導体デバイス事業 |
IoT等ソリューションビジネスの販売強化とDX推進による収益性の改善 |
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電子コンポーネント事業 |
他事業顧客へのクロスセルによる販路拡大と新分野・新商材開拓 |
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電子・電気機器事業 |
新商材開拓と自社ブランド商品の企画・開発強化・販路開拓 |
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工業薬品事業 |
環境ビジネスを中心に外部技術との融合によるコア技術強化 |
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海外事業 |
環境ビジネスを中心に外部技術との融合によるコア技術強化 |
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定量目標 |
連結営業利益76億円、連結営業利益率4.2%、ROE8.0% |
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株主還元 |
配当金総額52億円、総還元性向101.4% |
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計画策定時及び前期からの外部環境の変化は、ウクライナ情勢やイスラエル・ガザ地区情勢などの地政学的リスクにより国際情勢が一段と不安定化しており、中国経済低迷の長期化なども併せて、不確実性が高まっております。
そのような環境下においても、エレクロトロニクス分野では、電子部品の供給体制の正常化により需給逼迫は解消されてきており、自動車向け半導体を中心とする高い需要に支えられ、2023年度も当初の中期経営計画の目標値を上回ることができました。
しかし、中国市場低迷の長期化や顧客の在庫調整、米中デカップリング問題等の不安定要素も存在しています。本計画にて掲げた全社戦略並びに事業戦略の遂行・浸透により、引き続きいかなる環境下においても持続的な成長力と安定した収益力を確保できるよう事業構造の変革に努めてまいります。
(2)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループでは、各事業における存在意義や付加価値の低下、あるいは成長性の鈍化を優先的に対処すべき事業上の課題と認識しております。2023年度は旺盛な半導体需要の継続と円安の影響など外部環境によるプラス効果も加わり、当初の中期経営計画の目標値を上回ることができましたが、中期経営計画における目標は、いかなる環境下においても持続的な成長力と安定した収益力を確保できる企業体質への転換であると考えております。中期経営計画の最終年度となる2024年度は、事業構造の変革を実現するべく、以下の課題に取り組んでまいります。
①収益構造の改革と有望分野への投資
電子部品事業では人的資源の効率的な配置やDX活用によるバックヤードの効率化などの収益改善への取り組みが順調に進行しております。電子・電気機器事業においては2023年7月に熊本に新たにサービスセンターを設置し、半導体関連の堅調な投資ニーズを取り込んでおります。また、2023年度に新設した事業企画室を中心に当社グループが目指すありたい姿を表したビジョンの策定を行うと共に、全社横断的に成長を加速させる事業の創出や市場開拓に取り組んでまいります。
②資本コストを意識した経営の実践
自社の株主資本コストを概ね7~8%と認識し、ROE8%以上を持続的に達成することを目標としております。業務の効率化、商材の見直しなどにより、収益性の改善と投下資本の削減を図るとともに、電子・電気機器並びに工業薬品の自社ブランド商品の強化や新規事業展開及び外部との協業など、オーガニック、ノンオーガニック双方で成長を実現することで、当社グループ全体の資本収益性を改善し、企業価値向上に取り組んでまいります。
③サステナビリティ経営の推進
気候変動や人権問題などのESG経営の重要課題については、当社グループ全体で横断的に対処する体制の整備を進めております。「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言への取り組みとして、温室効果ガス(GHG)排出削減目標を設定し、持続可能な社会の実現に貢献できるよう努めてまいります。また、2024年4月に「伯東グループ人権方針」を制定しており、実効性のある人権マネジメント体制を構築し、適正な運営に取り組んでまいります。
各事業セグメントにおける優先的に対処すべき事業上の課題、並びに財務上の課題は以下の通りであります。
(電子部品事業)
電子部品事業は、2024年3月期は大手半導体メーカー製品の商流変更の影響等により売上高は減少したものの、過去においては順調に売上高を伸ばしており、当社グループにおいて最大の売上規模があります。また、セグメント利益も前期に引き続き外貨建て輸出取引の為替影響等の外的要因により、過去最高益であった前期には及ばなかったものの、それ以前と比較すると、伸長しております。同事業の売上高の8割弱を占める半導体デバイス部門は近年車載分野や5G通信分野などにおいて積極的に商権を拡大してきたものの、一方では仕入先・顧客の再編による大規模化により、その間に挟まれる商社の交渉力や役割が低下しているという外的要因に加えて、顧客のニーズを踏まえた提案営業やそれに対応できる組織化及び技術で対価を得る仕組み化の途上であり、また、低採算商権の移管受入などもあり、低収益の要因になっていたものと認識しております。
したがって、同事業における対処の方向性は、従来の単品販売ビジネスから「情報力×技術力×提案力」で対価を得るソリューションビジネスへの進化を志向することにより、存在価値を高めて収益性の向上を目指すこと、また、組織については、半導体ビジネス部門と電子コンポーネント部門間の協業による顧客層拡大をさらに進め、注力市場でのビジネス拡大に注力するとともに、労働生産性改善のためにDX・デジタル化による業務効率化とコスト削減を更に推進し、収益改善を図ることと考えております。
(電子・電気機器事業)
電子・電気機器事業は、当社グループにおいては電子部品事業に次ぐセグメント利益を生み出している比較的高収益な事業と位置付けており、2024年3月期は真空・理化学関連機器の需要の拡大や前年度受注分の出荷などにより販売が増加しました。しかし、同事業が取り扱う商品群が最先端のエレクトロニクス技術に基づくため、技術革新による商品の競争力の低下や陳腐化の影響を受けやすいという外的要因に加えて、自前主義での成長を探索する中での自社製品の企画・開発強化の遅れや、貿易規制等による海外販路開拓の遅れなども成長性鈍化の要因になるものと認識しております。
したがって、同事業における対処の方向性は、短期的には既存事業領域以外の育成を図ることにより、新規商品・自社ブランド商品の拡充に注力し、長期的には商品ラインの拡大を図ることで、他社と差別化されたバリューチェーンの確立及びポートフォリオの拡大に取り組むことと考えております。
(工業薬品事業)
工業薬品事業は、当社グループにおいては高収益で特色あるメーカー部門と位置付けておりますが、他のセグメントと比較すると成長性、規模ともに劣後しております。これは、同事業の既存マーケットが主に国内の石油・石油化学産業、紙・パルプ産業であるという外的要因に加えて、メーカーの屋台骨である技術強化投資の不足、環境ビジネスを中心とする新事業展開や海外展開の遅延なども要因になっていたものと認識しております。
したがって、同事業における対処の方向性は、自社技術を活かした新製品の開発に加え、コア技術と外部の技術との融合により事業領域を拡大するとともに、協業を通じた海外の販路・製造・サービス機能の強化により海外事業拡大を進めることにより、新規事業の創出に取り組むことと考えております。
〔参考〕:過去5期のセグメントごとの売上高、及びセグメント利益(金額単位:百万円)
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決算期 |
2020年3月期 |
2021年3月期 |
2022年3月期 |
2023年3月期 |
2024年3月期 |
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電子部品事業 |
売上高 セグメント利益 |
123,708 576 |
134,949 919 |
157,119 3,682 |
197,818 10,462 |
144,287 5,929 |
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電子・電気 機器事業 |
売上高 セグメント利益 |
18,286 900 |
19,029 1,770 |
21,609 2,104 |
22,717 1,665 |
26,547 1,777 |
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工業薬品事業 |
売上高 セグメント利益 |
11,160 838 |
10,962 890 |
12,300 1,337 |
12,615 849 |
10,788 35 |
注:2022年3月期より報告セグメントの区分を変更しており、2021年3月期以降については変更後のセグメント区分に組み替えた数字となっております。
また、海外事業においては中華圏・ASEANのエリア統括機能を発揮し、拠点の壁を越えて組織を編成することで、新規事業開拓へリソースを重点配置し、事業の拡大と業務の効率化に取り組んでまいります。
(財務上の課題)
当社グループでは、収益性の向上に加えて、ROE(自己資本利益率)の低位固定化及び運転資本の増大に伴うバランスシートの肥大化への対応なども優先的に対処すべき財務上の課題と認識しております。
そのため、2021年度から2024年度を計画期間とする中期経営計画「Change & Co-Create 2024」では、計画期間中は配当と自己株式の取得による「総還元性向100%」を目標とした株主還元を実施することにより、資本効率や資本コストを意識した経営を実践することを基本方針としております。また、事業面においては、事業セグメントごとに連結ベースのバランスシートを展開して運転資本とROIC(投下資本利益率)を算出し、各セグメントの特性に応じたベンチマークを設定することにより、売上高利益率や資産回転率などの財務指標の改善とフリーキャッシュ・フローの創出を図ることを対処の方向性としております。
当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、次の通りであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。
Ⅰ.気候変動に関する考え方及び取組
当社は、最先端の技術による電子・電気機器、電子部品を取扱うエレクトロニクス技術商社として、また環境に配慮した工業薬品を製造するケミカルメーカーとして時代のニーズに対応する商品やサービスの安定供給に努めてまいりました。このような企業活動を通じて、気候変動を始めとするサステナビリティ課題の解決は取り組みを強化すべき重要課題であると認識し、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)(*1)提言に賛同を表明いたしました。今後も引き続き、気候変動関連情報の開示の充実に取り組み、持続可能な社会の実現に貢献できるよう取り組んでまいります。
(*1) G20からの要請を受け、金融安定理事会(FSB)が2015年に設立。気候変動によるリスク及び機会が経営に与える財務的影響を評価し、「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」について開示することを推奨しています。
(1)ガバナンス
気候変動課題に関するリスク/機会の分析・特定、施策及び指標・目標の策定、進捗管理のため、「リスクマネジメント委員会」(*2)の下部組織として「気候変動分科会」を設置しております。
気候変動分科会は、具体的取り組みの推進主体となる「各部門・グループ会社等」の計画・推進状況を把握・管理し、リスクマネジメント委員会(年4回開催、委員長:リスク担当取締役)へ報告いたします。
「取締役会」はリスクマネジメント委員会からの報告内容に基づき、取り組み全般のモニタリング、指示・監督を行います。
(*2) 当社グループのリスク管理の総括機能を担う委員会組織
■TCFD推進体制図
(2)戦略
日本国内の主要事業を対象に、気候変動課題に伴うリスク/機会がもたらすインパクトを把握するため、短期・中期・長期(2025 年・2030 年・2050 年)の時間軸でシナリオ分析を実施いたしました。
シナリオ分析では平均気温が1.5℃、もしくは4℃上昇する将来像を中心に、低炭素経済への「移行」(*3)や気候変動がもたらす「物理的」変化(*4)に関する社会経済シナリオを参照し、当社にとってのリスク/機会と、取り得る対策案を検討いたしました。
検討過程では、分析対象である各事業部門へのヒアリングを通じて、約60 の社会経済シナリオに伴うリスク/機会について「小・中・大」の3段階で定性的に評価いたしました。
評価結果をふまえ、「移行」関連は1.5℃シナリオ、「物理的」関連は4℃シナリオを前提に、中期(2030年)から長期(2050 年)にかけて当社の経営・事業にもたらす影響が「中」以上の主な項目を、以下のとおり開示いたします。
(*3) 低炭素化経済の実現にむけた政策や法規制、市場、企業への要請等の変化
(*4) 気候の変化に伴う「急性」(渇水・干ばつ、風水害の増加等)、および「慢性」(平均気温の上昇、海面上昇等)の事象の発生
〔主な参照シナリオ〕
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移行 |
1.5℃シナリオ:IEA「Net Zero Emissions by 2050 Scenario(NZE)」 ※1.5℃シナリオに該当するシナリオが無い場合、2℃未満シナリオ(IEA「Sustainable Development Scenario(SDS)」等の近似のシナリオで補完 |
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物理的 |
4℃シナリオ:IPCC「RCP8.5」 |
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社会経済シナリオ |
リスク/機会 |
対策案 |
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移行 |
政策・法的 |
炭素税の適用 |
〔リスク〕 ・自社活動への炭素税適用 |
・SCOPE1~3の定量化・削減 ・取引先気候変動対応のモニタリング ・関連規制・技術のモニタリング |
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〔リスク〕 ・取引先のコスト増加(自社の購買・調達・配送コストへの転嫁) ・輸出入に係る規制・炭素税適用への対応 |
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施設・設備のGHG排出量削減 |
〔機会〕 ・ZEB化に貢献する製品・サービスの需要拡大 ・自然冷媒・グリーン冷媒機器への入替に伴う関連製品・機器の需要拡大 |
・SCOPE1~3の定量化・削減 ・関連規制・技術のモニタリング |
||
|
低炭素化・省電力化・省スペース化の要請 |
〔機会〕 ・企業・家庭向け製品・機器の需要が拡大 ・製造プロセスの低炭素化・効率化に貢献する製品・機器の需要が拡大 |
・関連技術・製品のモニタリング |
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技術 |
EV・FCVの普及 |
〔機会〕 ・関連製品・機器・製造装置の需要が拡大 |
・関連技術・製品のモニタリング |
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市場 |
石油精製業関連の既存取引減少 |
〔リスク〕 ・関連製品の需要減少 〔機会〕 ・バイオ燃料、廃プラスチック再利用技術関連製品の需要拡大 |
・関連技術・製品のモニタリング |
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評判 |
気候変動対応 |
〔リスク〕 ・低炭素化取り組みの要請への対応が不十分な場合、取引の縮小・停止 ・開示情報の不足による企業価値低下、若手層等の人材確保困難 〔機会〕 ・適切な情報開示を通じた企業価値向上 ・中長期的に安定した人材確保 |
・具体的取り組みの推進・進捗管理 ・適時・適切な開示 |
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物理的 |
急性 |
渇水・干ばつの発生 |
〔リスク〕 ・購買・調達先での水使用量制約による原材料・製品の高騰・調達困難 |
・サプライチェーン全体の水リスクの把握 |
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風水害の増加・甚大化 |
〔リスク〕 ・自社の事業拠点・太陽光発電施設、購買・調達先・ロジスティクス拠点の被災 〔機会〕 ・製品・機器の交換・修理等を通じた顧客の事業継続への貢献 |
・サプライチェーン全体の風水害リスクの把握 |
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(3)リスク管理
気候変動分科会は、気候変動に伴うリスク/機会を分析・特定し、リスクマネジメント委員会へ結果を報告します。
リスクマネジメント委員会は報告内容に基づき、対応の優先順位を評価した上でリスク管理計画(*5)に組み込み、取締役会へ管理状況を報告・提言します。
(*5)経営が管理すべき重要リスクについて、リスク事象への対応・モニタリングのための対応計画
(4)指標及び目標
当社では環境問題への取り組みとして気候変動を最重要課題と認識しており、温室効果ガス(CO2)排出量に対してパリ協定の1.5℃目標に準じた削減目標を以下の通り設定し、低減に取り組んでまいります。
温室効果ガス(CO2)排出削減目標
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指標 |
基準年 |
目標年 |
目標 |
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Scope1,Scope2 合計 |
2022年度 |
2030年 |
50%削減 |
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2050年 |
カーボンニュートラル |
(参考)Scope1、2 及びScope3 のCO2排出量の実績は以下の通りとなっております。
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項目 |
対象範囲 |
2021年度(*6) |
2022年度実績 |
2023年度実績 |
2022年度比 |
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Scope1 |
当社単体 |
580.65 t-CO2 |
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|
-1.9% |
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国内グループ |
- |
||||
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海外グループ |
- |
||||
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Scope2 |
当社単体 |
612.68 t-CO2 |
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-14.4% |
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国内グループ |
- |
||||
|
海外グループ |
- |
||||
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Scope1,Scope2 合計 |
|
|
-11.5% |
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(*6)2021年度国内・海外グループのScope1,Scope2 は未算出
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項目 |
対象範囲 |
2021年度 |
2022年度実績 |
2023年度 |
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Scope3 |
当社単体 |
- |
4,204.85 t-CO2 (Category4~7合計) |
算出中(*7) |
(*7)2023年度Scope3 はCategory1~3についても算出予定
Ⅱ.人的資本経営、多様性に関する考え方及び取組
当社は、事業を取り巻く環境変化が予測困難な状況下において、人材を「経営の根幹に位置づけられるべきもの」として捉え、人的価値(社員価値)の向上・創造のため、2022年度より人事制度を抜本的に改定し、メリハリのある透明で納得感の高い評価や処遇の実現、自律的なキャリア形成の促進に向け、継続的に制度のブラッシュアップを行っています。また、次世代の経営人材育成を目的としたサクセッションプランを今期からスタートさせ、選抜メンバーが習得する「経営者として必要な知識並びに個々に応じた能力開発・資質養成」のプログラムを策定しました。当社社員が会社を自己実現の場として活用し、モチベーション高く成長し続けることが、当社の持続的企業価値向上に直結するものと考え、今後とも経営戦略実現に必要な人材の確保や教育、投資を積極的に行ってまいります。
また、改定した本社人事制度をベースとして、現在、海外グループ会社の人事制度の改定に取り組んでおります。そのため、後述の指標、目標につきましては改定後の人事制度が運用されている当社の数値を記載しております。なお、人的資本に関する戦略、方針につきましては、当社グループ共通のものとなります。
(1)教育・研修プログラム
当社では、「社員の成長無くして、会社の成長は無い」との基本的な考えから、事業環境の急速な変化や多様化する個人の価値観・ニーズに対応した人材の育成、また、更なる専門性の向上に向け、各階層にマッチした研修を毎年モディファイしながら展開しています。今期は「目指す姿の実現に向け、必要な戦略実践能力の獲得及び組織力の強化を進める」というテーマの下、①階層別能力養成 ②実務スキル習得 ③グローバル人材養成(下記#6参照)を主な目的とした研修体系を構築し、目的別の各種プログラムを実施しているほか、人事制度改定に合わせ、社員の自律的キャリア形成促進の目的から、「キャリアアップ支援制度」を導入し、社員の自己啓発をバックアップしております。当期からは、DX推進プロジェクトの一環として、新たに「デジタル人材育成プログラム」をスタートする予定としております。
また、前期より上級管理職に対しては、360度サーベイを実施し、周囲の評価と自己認識とのギャップを認識することで、自身の強みや課題、行動特徴を把握、それをマネジメントスキルの向上やマネジメントの視野拡大に繋げる取り組みなどを行っています。
(2)ダイバーシティとインクルージョンの推進
当社は、当期新たに「伯東グループ人権方針」(※1)を制定し、その第1項で「すべての人を個人として尊重する」とし、「すべての人」とは、国籍・人種・性別および性的指向性・年齢・職業・信教・政治的信条などが異なったとしても、人である以上、その価値に優劣はなく、皆、普遍の価値である人権の主体であることを基盤にする旨、謳っております。
この方針を踏まえ、当社では、性別・国籍の垣根無く、積極的に有能で多様な人材を採用し、その価値観や個性を尊重し最大限能力を発揮できるよう社内環境を整備しており、直近6年においては、毎年外国人を採用し、現在16名(内管理職2名)が在籍しています。
また、女性管理職の比率は8.5%(前期比+1.0%)となり、2025年度には10%を目標としており、男女賃金格差については、以下の通りとなります。
・全労働者:62.8%(前期比+1.3%)・正社員:68.6%(同+0.9%)・有期社員:70.3%(同+7.1%)
当社は男女による給与差は設定していないため、主たる要因は職種に占める割合によるものとなりますが、今後とも労働力人口の減少を見据え、女性活躍に向けた諸施策を主軸とし、女性の管理職比率の向上ならびに職種と業務領域の拡充を通じて、給与格差是正に注力してまいります。
(※1)https://www.hakuto.co.jp/profile/governance/human-rights.html
(3)働き方改革
当社は、ライフワークに適した柔軟な働き方を選択できるよう在宅勤務、時差出勤、サテライトオフィスを導入しております。また、本社オフィスのほぼ全ての営業部門をフリーアドレス化し、ミーティングスペースを増やすなど、コミュニケーションの活性化を図り、快適な職場環境づくりにも注力しています。
有休取得に関しては、「マンスリープレミアムデー制度」(期初に各々が毎月の有休取得日を決定できる制度)を導入しています。有休取得率は80.9%(前期比+8.9%)となり、今後も80%水準の維持を目標に掲げ、取得促進に取り組んでまいります。
なお、男性の育児休業取得率は57.1%となり、前期の27%を大きく上回る結果となりました。今後も、多様な人材が多様なスタイルでより活躍できる環境を整備し、社員の生産性や心身の健康保持増進に向け、注力してまいります。
(4)安全衛生基本方針と健康経営
当社は、「伯東グループ安全衛生基本理念及び方針」(※2)ならびに「伯東グループ健康宣言」(※3)の下、健康管理(フィジカルケア)、メンタルヘルスケア、働き方改革の3つの柱からなる健康経営に取り組んでおり、優良な健康経営を実践している法人として、2019年より継続して『健康経営優良法人(大規模法人部門)』に認定されています。代表取締役社長及び人事担当役員が健康経営責任者となり、健康経営を牽引するとともに、健康推進担当が中心となり、産業医や保健師の産業保健スタッフ、健康保険組合、各拠点の安全衛生委員会とも連携し、社員の健康づくりを推進し、「ホワイト500」の再認定を目標として、健康経営に関する指標の改善に努めています。今後も、時流をとらえた課題やニーズを踏まえたうえで、社員の心身の健康維持増進に資する施策に積極的に取り組み、社員ひとり一人の「働きがい」「働きやすさ」の充実を目指してまいります。
(※2)https://www.hakuto.co.jp/sustainability/social/safety.html
(※3)https://www.hakuto.co.jp/sustainability/social/health.html
(5)エンゲージメントの向上
当社は、企業の成長や組織力の強化のためには、社員が会社の方向性を理解・共感し、エンゲージメント高く働くことが必要不可欠だと考えます。
仕事、職場、会社それぞれのエンゲージメントとそれらを高めるための要因の状況を診断し、会社や組織状態の改善に役立てることを目的として、「エンゲージメントサーベイ」を開始しました。また、今期はそのサーベイ結果を振り返る部門長を対象とした研修も実施し、組織をエンゲージメントが高い状態にしていくための方向性や課題を明確にしていきます。
今後もサーベイと振り返りの研修を毎年実施することで、組織力やチームワーク力を強化していき、エンゲージメント指数についての数値目標を定め、経営全体のサイクルの中に組み入れたいと考えております。
(6)グローバル人材の育成
当社では意欲あるハイパフォーマー社員を積極的に海外子会社へ出向させ、海外でのビジネス経験を積ませることでグローバルな視点を養い、今後増々拡大する海外ビジネスへの対応に備えております。語学力強化においては、聴く・読む・書くだけでなく、英語での発信力の向上に向けた研修を取り入れております。
また、若手社員に対して「海外現地のリアルビジネスに直結した課題を達成させ、グローバルマインドセットを鍛える」という研修も導入しています。将来的には、グループ内での人事ローテーションや研修による人材交流を行い、多様な価値観を持った社員が個々の力を発揮し、イノベーションが生まれるような環境を目指します。
当社グループではリスクを「グループの収益や損失に影響を与える不確実性」と捉え、複雑化・多様化するリスクに対して適切な対策を行うことにより、リスクの回避や発生時の被害を最小限に抑える予防的活動を含めた取り組みをリスクマネジメントと位置付けております。
こうした考えに基づき、当社ではリスクを組織的に管理するために必要な基本事項を定め、事業活動におけるリスクを統括的に把握し、適切に管理することを目的として、リスクマネジメント委員会を設置し、リスクの確実な把握と実効性のある予防的活動に取り組んでおります。
当社グループの財務状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況等に重要な影響を与える可能性がある主要なリスクとして、以下に記載しておりますが、これらのリスクは必ずしも全てを網羅したものではなく、想定していないリスクや重要性が低いと考えられる他のリスクの影響を受ける可能性があります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものであります。
(外部環境に起因するリスク)
(1)経済、市場動向に関するリスク
当社グループの業績は、マクロ的経済動向に少なからず影響を受けますが、電子部品事業及び電子・電気機器事業においては、エレクトロニクス業界全体の市場動向に大きく影響を受けます。具体的には民生用、産業用エレクトロニクス製品の生産並びに需要状況、半導体の生産並びに出荷状況、顧客の在庫保有状況、半導体設備への投資及び設備の稼働状況等が挙げられます。特に、近年では自動車技術の高度化や通信機器の高性能化などにより車載用、産業用等の幅広い分野で半導体需要は一定の高さを維持しておりますが、供給体制の改善により在庫のだぶつきも顕著になっています。また、エレクトロニクス業界のグローバル化が進む中、海外子会社を有する当社グループは、国内のみならず、アジア、欧米を中心とした世界各国の経済、市場動向にも影響を受けます。米中対立の長期化やウクライナやイスラエル・ガザ地区などの国際情勢の影響から、経済安全保障の観点より先端技術の輸出規制がさらに強化されるなど、国外取引先とのサプライチェーンの見直しを余儀なくされる可能性があります。
当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期については予測が困難であるものの、顕在化した場合には、当社グループの業績や今後の事業計画に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクに対しては、仕入先企業や販売先企業あるいは同業他社の動向等に常に注視し、マクロ経済や世界情勢、業界動向の変化を的確にとらえ経営施策に反映させるよう努めております。
(2)災害並びに感染症に関するリスク
当社グループは、神奈川県伊勢原市に電子部品事業や電子・電気機器事業の物流・サービス拠点と三重県四日市市に工業薬品事業の生産・研究開発拠点を有するなど、国内外に複数の物流、生産拠点並びに施設があります。これらの施設が地震や火災等により被災し、あるいは施設内において感染症等が発生した場合には、一時的に商品及び製品の出荷が困難となる可能性があります。また、取引先企業において同様の災害や感染症が発生した場合には、サプライチェーンの確保が困難となる可能性があります。
各国において新型コロナウイルス感染症対策による行動制限の緩和が進んでおりますが、今後感染再拡大が発生した場合は、日本においてのみならず、各国の生産・物流動向の影響を受ける可能性もあります。当社グループでは引き続き感染防止・衛生管理の徹底を行うとともに、取引先企業や地域情勢にも注視し適切な措置を講じてまいります。
(技術・競合に起因するリスク)
(3)技術、開発動向に関するリスク
当社グループが取り扱う電子部品、電子・電気機器及び工業薬品は、技術革新によって優位性を有する競合品の市場投入により陳腐化し、競争力が低下する場合があります。
また、近年は中国をはじめとする新興諸国企業の台頭により、技術面や価格面で優位性を持つ商品が市場に多く投入されるようになっており、アジア地域を中心にローカルビジネスの強化を重要な成長戦略の1つとして位置付けている当社グループの阻害要因となる場合があります。
当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期については予測が困難であるものの、顕在化した場合には、当社グループの業績や今後の事業計画に影響を及ぼす可能性があります。
(4)価格競争並びに競合に関するリスク
当社グループが取り扱う電子部品、電子・電気機器及び工業薬品は、最終製品を製造販売する国内外の顧客が競争激化や国内市場の縮小等のさまざまな要因により、日頃より厳しい価格競争に置かれているため、常にコストダウンの要求を受けております。
また、電子部品事業においては、半導体デバイス等電子部品のコモディティ化及び低付加価値化の進行に伴い、競合サプライヤーや競合代理店との差別化がより難しくなる中、競合企業間の価格競争がさらに激化することにより、利益面での影響を受け易くなっております。当該リスクに対しては、技術力を活かしたソリューションビジネスへの取り組み等により、競合代理店との差別化を図るとともに、労働生産性改善のためにDX・デジタル化の推進による業務効率の向上に努め利益性の確保に取り組んでおります。
(5)商権の喪失に関するリスク
商社事業の電子部品事業及び電子・電気機器事業では、多くの商権(仕入先との代理店契約による製品販売権)が事業の根幹を形成しております。仕入先との代理店契約には、契約期間や契約解除要件が定められており、その解除権は当社グループと仕入先の双方が有しております。
近年のエレクトロニクス業界においては、M&Aによる事業再編が活発化しており、エレクトロニクス関連製品を取り扱う販売代理店でも商流の見直しや統廃合の動きが見られます。当社グループは商権の維持や新規獲得に向けた努力をしておりますが、買収による仕入先企業の消滅、仕入先企業の販売子会社設立及び競合代理店への商流変更等により商権を喪失する場合があります。
当該リスクが顕在化した場合には、当社グループの業績や今後の事業計画に影響を及ぼす可能性があります。
(財務リスク)
(6)運転資本に関するリスク
輸入半導体等多くの外国製品を取り扱う当社グループは、国内企業との商取引習慣の違いによる支払条件のギャップを吸収してキャッシュ・フローの調整を図る金融機能を担っております。近年のエレクトロニクス業界においては、仕入先(半導体メーカー等)と顧客(電機メーカー等)の再編による大規模化、設備投資及び研究開発資金の増大等を背景に、売掛債権の回収と買掛債務の支払いとの間に一定期間の差が生じております。また、米中対立の長期化、自然災害の増大等を背景に、BCP(事業継続計画)の観点から当社グループが保有する棚卸資産は増加傾向にあります。
その結果、当社グループのCCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)を短縮することができず、当社グループのキャッシュ・フローに影響を及ぼすとともに、運転資本の調達コスト上昇により業績にも影響を与える可能性があります。
さらに、棚卸資産については、市場動向や販売状況及び顧客の在庫保有状況により滞留するリスクがあります。当社グループでは、顧客企業の生産計画を基に、仕入先企業の生産のリードタイムとの平衡を図ることで、余剰在庫が生じないように努めておりますが、一定の在庫期間を経過し、かつ、受注のない滞留在庫については、収益性がないものとして帳簿価額を切り下げることにより当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
〔参考〕:過去5期のCCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル/連結ベース)
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決算期 |
2020年3月 |
2021年3月 |
2022年3月 |
2023年3月 |
2024年3月 |
|
棚卸資産平均回転期間(月) |
2.7 |
2.8 |
2.6 |
2.7 |
4.0 |
|
売掛債権平均回収期間(月) |
3.1 |
3.1 |
2.9 |
2.8 |
3.4 |
|
支払債務平均支払期間(月) |
1.5 |
1.6 |
1.5 |
1.5 |
1.9 |
|
キャッシュ・コンバージョン・サイクル(月) |
4.3 |
4.4 |
4.1 |
4.0 |
5.5 |
※ 棚卸資産平均回転期間=((前期末棚卸資産+当期末棚卸資産)÷2)÷(当期売上原価÷12)
※ 売掛債権平均回収期間=((前期末売掛債権+当期末売掛債権)÷2)÷(当期売上高÷12)
※ 支払債務平均支払期間=((前期末支払債務+当期末支払債務)÷2)÷(当期仕入高÷12)
※ キャッシュ・コンバージョン・サイクル=棚卸資産平均回転期間+売掛債権平均回収期間-支払債務平均支払期間
※ 棚卸資産=商品及び製品+仕掛品+原材料及び貯蔵品
※ 売掛債権=売掛金+受取手形+電子記録債権
※ 支払債務=買掛金+支払手形+電子記録債務
※ 仕入高=当期商品仕入高+当期原材料仕入高
(7)為替動向に関するリスク
当社グループの事業はアジア地域を中心に各国にまたがり展開しており、取引通貨についても各国の現地通貨に加えて日本円、米国ドル、ユーロなど多岐にわたるため、為替変動によるリスクが存在しております。当社グループでは、為替相場の変動リスクを回避することを目的として、「市場リスク管理規程」及び「外国為替予約締結マニュアル」に従い、為替予約等によるリスクヘッジ策を実施しております。
為替変動は当社グループの事業に対して多面的な影響を及ぼすため、当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期については予測が困難であるものの、短期間のうちに急激な為替変動が発生した場合には、当社グループの業績やキャッシュ・フローに影響を及ぼす可能性があります。
〔参考〕:過去5期の伯東単独業績における調達地域別仕入高(原材料費及び外注費を含む)
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決算期 |
2020年3月 |
2021年3月 |
2022年3月 |
2023年3月 |
2024年3月 |
|
|
合 計 (百万円) |
127,011 |
120,754 |
150,353 |
176,845 |
140,282 |
|
|
|
国内調達(百万円) |
58,633 |
51,482 |
59,525 |
89,641 |
92,306 |
|
海外調達(百万円) |
68,378 |
69,272 |
90,828 |
87,203 |
47,975 |
|
(8)金利動向に関するリスク
当社グループは運転資金、及び設備投資資金の一部を金融機関より調達しております。現在の経済環境下では、市場金利が急激に上昇する可能性は低いと見られておりますが、当社グループの業績悪化など個別の理由により、金融機関からの調達金利が上昇した場合には、業績や今後の事業計画に影響を及ぼす可能性があります。
なお、当社グループは金利リスクを回避する目的で金利を実質的に固定化する金利スワップを利用しております。また、ヘッジ会計の要件を満たす取引についてはヘッジ会計を適用しております。
〔参考〕:過去5期の借入金残高及び平均金利(連結ベース)
|
決算期 |
2020年3月 |
2021年3月 |
2022年3月 |
2023年3月 |
2024年3月 |
|
(短期借入金) |
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|
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|
前期末残高(百万円) |
7,100 |
17,900 |
12,400 |
15,300 |
22,700 |
|
当期末残高(百万円) |
17,900 |
12,400 |
15,300 |
22,700 |
15,800 |
|
平均利率 |
0.3% |
0.3% |
0.3% |
0.3% |
0.5% |
|
(1年内返済長期借入金) |
|
|
|
|
|
|
前期末残高(百万円) |
633 |
3,019 |
3,880 |
4,690 |
6,100 |
|
当期末残高(百万円) |
3,019 |
3,880 |
4,690 |
6,100 |
8,870 |
|
平均利率 |
0.4% |
0.5% |
0.5% |
0.5% |
0.6% |
|
(長期借入金) |
|
|
|
|
|
|
前期末残高(百万円) |
589 |
12,320 |
12,765 |
12,624 |
12,809 |
|
当期末残高(百万円) |
12,320 |
12,765 |
12,624 |
12,809 |
11,175 |
|
平均利率 |
0.4% |
0.5% |
0.5% |
0.6% |
0.7% |
(法的リスク)
(9)製造物責任(PL)並びに得意先等からの求償に関するリスク
商社事業の電子部品事業及び電子・電気機器事業では、納期遅延や品質不良等の理由により顧客から求償を受けた場合には、顧客との協議により求償金額を軽減した上で仕入先より補填を受けるよう努めておりますが、常に当社グループの負担額がゼロになるとは限りません。
また、製造販売業の工業薬品事業では、納期遅延や品質不良に加えて、当社製品の顧客の設備や周辺環境へ及ぼす影響等の理由により、顧客から求償を受けることがあります。当社グループでは、品質不良等の製造物の欠陥による損害が発生するリスクに備えて製造物責任(PL)保険及び専門事業者賠償責任(E&O)保険に加入しておりますが、最終的に当社グループが負担する賠償額の全てを補填できるとは限りません。
当連結会計年度において重要な求償及び賠償の支払いはありませんが、当該リスクが顕在化した場合には、民事賠償責任に加えて、許認可や資格の剥奪、レピュテーションの低下等の間接的損害により、当社グループの業績や今後の事業計画に影響を及ぼす可能性があります。
(10)法的規制に関するリスク
当社グループは国内外に拠点を有し事業を展開しており、国内及び外国の法的規制を受けております。これらの法令や規則を遵守できなかった場合、各国当局から事業活動が制限され今後の事業計画に大きな影響を及ぼす可能性があります。
特に安全保障貿易管理については米中対立の長期化やウクライナやイスラエル・ガザ地区などの国際情勢を受けて、規制措置は強化される傾向にあり、慎重な対応が必要な状況にあります。これに対して当社では子会社・関係会社を含めた従業員に対する教育を実施し、輸出関連法規の遵守に努め、当社が販売する製品および設計・製造・使用に係る技術等が、規制される貨物等として直接または間接を問わず規制対象地域等へ輸出されることを防止する取り組みを行っております。
(その他のリスク)
(11)情報セキュリティに関するリスク
当社グループは、情報資産を保護するため「情報セキュリティ方針書」並びに「情報セキュリティ対策標準書」を策定した上で、「情報セキュリティ委員会」を設置して、情報セキュリティ対策を強化しております。具体的には、会社支給のPC・情報端末への盗難・紛失対策、機密情報の不正持ち出しに対する対策、サイバー攻撃に対する対策等となります。また、近年はサイバー攻撃による情報資産の社外流出リスクが高まっていることから、当社グループが利用する情報システム及びネットワークインフラについては、外部専門機関によるサイバーセキュリティ診断を実施し、脆弱性の検出とリスクの解消に努めております。
当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期については予測が困難であるものの、事故または故意により当社グループの情報資産が流出した場合には、刑事責任や民事賠償責任に加えて、復旧費用の発生やレピュテーションの低下等の間接的損害により、当社グループの業績や今後の事業計画に影響を及ぼす可能性があります。
(12)人材確保や育成に関するリスク
当社グループでは持続的な企業成長のためには優れたスキルやノウハウ、豊富な経験を有した人材の採用および育成が重要であると認識しております。事業発展のための必要な人材が採用・育成できなかった場合や想定以上の人材が流出した場合には中長期的に今後の事業計画や業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社では新卒採用のみならず中途採用においても採用活動の強化に努めるとともに、社員満足度の向上に向けて「人事の透明性」と「キャリア形成」に主眼を置いた新人事制度を運用しております。キャリアコースの増設などにより、社員の多様な働き方を支援し、優秀な人材の確保・育成に取り組んでおります。
(13)海外事業におけるコーポレートガバナンスに関するリスク
当社グループは、海外子会社を通じて中華圏及びASEANを中心に海外展開を図っており、連結売上高に占める海外売上高の割合は約40%を占めております。今後も海外売上高の比率は高水準で推移することが予想されます。
海外子会社においては、各国の商慣習や法規制などに加え地政学リスクなど、国内とは異なるリスクに晒されることからグループ統制によるリスク管理が重要であると認識しております。グループ統制の不足や連携不十分等により、現地における政治・社会情勢や法律・税制の変化に対する対応の遅れなど管理上の問題が発生する可能性があります。特に海外における訴訟案件や従業員による不適切行為などについては、当社の業績や社会的信用に影響を及ぼす可能性があります。当社では中華圏及びアセアンに地域統括責任者を任命し、現地の管理強化を図るとともにグループ諸規程の整備やコンプライアンス研修の実施など、ガバナンスの強化に取り組んでおります。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次の通りであります。
①財政状態及び経営成績の状況
a. 財政状態
当連結会計年度末における流動資産は前連結会計年度末と比較して86億9百万円(6.7%)減少し、1,208億53百万円となりました。これは主に商流移管による売上高の減少に伴い、受取手形、売掛金及び契約資産が115億62百万円減少したためであります。
固定資産につきましては、前連結会計年度末と比較して4億68百万円(2.9%)増加し、169億5百万円となりました。これは主に基幹システム移行のための投資により無形固定資産が5億75百万円増加したためであります。
以上のことから、当連結会計年度末における資産の部全体としては、前連結会計年度末と比較して81億40百万円(5.6%)減少し、1,377億59百万円となりました。
負債につきましては、流動負債が前連結会計年度末と比較して90億67百万円(13.4%)減少し、587億6百万円となりました。これは主に運転資本(商品仕入)の減少に伴い支払手形及び買掛金が15億70百万円、短期借入金が41億30百万円減少したためであります。
固定負債は前連結会計年度末と比較して11億43百万円(8.0%)減少し、131億19百万円となりました。これは主に長期借入金が16億34百万円減少したためであります。
以上のことから、当連結会計年度末における負債の部全体としては、前連結会計年度末と比較して102億11百万円(12.4%)減少し、718億25百万円となりました。
純資産につきましては、前連結会計年度末と比較して20億70百万円(3.2%)増加し、659億33百万円となりました。これは主に為替の変動により為替換算調整勘定が19億10百万円増加したためであります。
b. 経営成績
当連結会計年度における世界経済は、ロシアによるウクライナ侵攻やイスラエル・ガザ地区情勢などによる地政学的緊張の高まり、中国経済低迷の長期化、更には米国をはじめとする各国の金融引き締めなどにより、世界経済は依然として景気停滞局面が続いております。
我が国の経済については、物価高による景気下押しや足元では能登半島地震の影響などもあり、景気回復が足踏みしておりますが、2024年春闘での賃上げ率は2023年を大きく上回り、また3月には日銀によるマイナス金利政策の解除も発表され、金融政策は正常化に向けて新たな段階に入りました。
当社グループが主力事業を展開するエレクトロニクス業界においては、スマートフォン・PC・民生等の需要は低調に推移しており、産業機器関連や一部車載関連においても顧客の在庫調整が続いております。一方で、DX(デジタルトランスフォーメーション)関連・GX(グリーントランスフォーメーション)関連・生成AIサーバ関連等は引き続き高い成長が見込まれております。
このような状況のもと、当社グループの電子部品事業においては、車載関連用途のICは一部の製品で続いていた供給難も解消され、国内自動車向けは堅調な需要に支えられ、商流変更による減少の影響を除くと販売が増加しました。一方で民生機器をはじめとする他の分野では中国市場の低迷と顧客の在庫調整が影響し、商流変更の影響もあり、対前年同期比で減収となりました。
電子・電気機器事業においては、パッケージ用PCBなどへの設備投資が停滞し始めており、顧客において在庫調整が進んでおりますが、真空・理化学関連において前年度の先行手配の受注残を出荷できたことなどにより、対前年同期比で増収となりました。
工業薬品事業においては、主に中国の景気低迷により化粧品原料の需要が回復せず、対前年同期比で減収となりました。
以上の結果、当連結会計年度の連結売上高は1,820億46百万円(前年同期比22.1%減)となりました。
損益面につきましては、連結売上総利益は268億33百万円(同17.1%減)となり、連結販売費及び一般管理費として191億96百万円(同2.4%減)を計上した結果、連結営業利益は76億36百万円(同39.9%減)、連結経常利益は69億12百万円(同42.6%減)となり、特別利益として投資有価証券売却益16億72百万円、特別損失として貸倒引当金繰入額11億56百万円等を計上した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は51億75百万円(同42.0%減)となりました。
また、1株当たり当期純利益は276円20銭となり、前連結会計年度より194円32銭減少いたしました。
収益性及び資本効率に係る各指標につきましては、当連結会計年度における売上高営業利益率は4.2%(前連結会計年度は5.4%)、総資産経常利益率は4.9%(同8.7%)、自己資本当期純利益率は8.0%(同14.2%)となりました。
報告セグメント別の経営成績につきましては、以下のとおりです。
詳細は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (セグメント情報等)」をご参照ください。
〔電子部品事業〕
電子部品事業では、車載関連用途のICが国内向けを中心に引き続き堅調に推移しましたが、EV(電気自動車)市場には一部翳りが見えはじめており、またテレビ等の民生機器分野やPC・スマートフォンなど情報通信・モバイル分野を中心に需要の低迷が続きました。さらに、大手半導体メーカー製品の商流変更による減収に加え、前年度における連結売上総利益の押し上げ要因となった円安進行による為替影響も当連結会計年度は比較的軽微でありました。
この結果、当連結会計年度の売上高は1,442億87百万円(前年同期比27.1%減)となり、販売減少に伴う利益額の減少等の要因により、セグメント利益は59億29百万円(同43.3%減)となりました。
〔電子・電気機器事業〕
電子・電気機器事業では、真空・理化学関連機器では需要の拡大や前年度受注分の出荷などにより販売が増加しました。また半導体関連においても前年度受注分の出荷や一部顧客の設備増強などによる装置が納入できたことにより、販売が伸長しました。
この結果、当連結会計年度の売上高265億47百万円は(前年同期比16.9%増)となり、セグメント利益は17億77百万円(同6.7%増)となりました。
〔工業薬品事業〕
工業薬品事業では、石油精製・石油化学分野における国内販売は比較的堅調でしたが、海外向けは供給過多により製品出荷が減少し、紙・パルプ分野においては需要の停滞が続いております。また化粧品基剤においては主力の化粧品原料販売が中国経済の停滞により回復していないことに加え、中国の自国ブランド化粧品の台頭により販売が減少し、対前年同期比で減収となりました。
この結果、当連結会計年度の売上高は107億88百万円(前年同期比14.5%減)となり、原材料費の高騰及び販売減少に伴う利益額の減少などにより、セグメント利益は35百万円(同95.8%減)となりました。
〔その他の事業〕
その他の事業では、当社の業務・物流管理全般の受託と太陽光発電事業を行っております。当連結会計年度の売上高は10億90百万円(前年同期比11.8%減)となり、太陽光発電事業において修繕費を計上したことにより、セグメント利益は35百万円(同82.8%減)となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における連結キャッシュ・フローにつきましては、営業活動によるキャッシュ・フローは87億12百万円の収入、投資活動によるキャッシュ・フローは8億76百万円の収入、財務活動によるキャッシュ・フローは114億51百万円の支出、現金及び現金同等物に係る換算差額が6億80百万円の増加となったため、現金及び現金同等物は前連結会計年度末と比較して11億82百万円減少し、当連結会計年度末は155億68百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因につきましては、以下のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
エレクトロニクス関連の商社事業を展開する当社グループでは、市況や事業動向により売上債権や棚卸資産等の運転資本が増減し、営業キャッシュ・フローが変動いたします。当連結会計年度においては、棚卸資産の増加額70億40百万円等の支出要因がありましたが、税金等調整前当期純利益74億39百万円、売上債権の減少額156億82百万円等の収入要因により、営業活動によるキャッシュ・フローは87億12百万円の収入となりました。なお、前連結会計年度には売上債権の増加額78億64百万円等により33億82百万円の支出となっておりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動として、主に新規事業に係る投資や工業薬品事業における製造及び研究設備の更新等の資本的支出を行っております。当連結会計年度においては、投資有価証券の売却による収入20億40百万円等により、投資活動によるキャッシュ・フローは8億76百万円の収入となりました。なお、前連結会計年度には有形固定資産の取得による支出4億59百万円等により、3億円の支出となっておりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
運転資本の増減による営業キャッシュ・フローの変動に対して、主に有利子負債による調整を行っております。当連結会計年度においては、短期借入金の返済による支出(純)69億円、配当金の支払い額56億12百万円等により、財務活動によるキャッシュ・フローは114億51百万円の支出となりました。なお、前連結会計年度には短期借入による収入(純)74億円等により、財務活動によるキャッシュ・フローは13億14百万円の収入となっておりました。
なお、キャッシュ・フロー指標のトレンドは下記のとおりであります。
|
|
2020年3月期 |
2021年3月期 |
2022年3月期 |
2023年3月期 |
2024年3月期 |
|
自己資本比率 |
48.2% |
49.8% |
46.9% |
43.8% |
47.9% |
|
時価ベースの自己資本比率 |
17.7% |
22.6% |
36.6% |
63.0% |
77.0% |
|
キャッシュ・フロー対 有利子負債比率 |
- |
395.7% |
3,796.7% |
- |
418.8% |
|
インタレスト・カバレッジ・レシオ |
- |
46.4倍 |
5.8倍 |
- |
47.0倍 |
自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い
(注)1.いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。
2.株式時価総額は自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しております。
3.キャッシュ・フロー及び利払いは、連結キャッシュ・フロー計算書に計上されている「営業活動によるキャッシュ・フロー」及び「利息の支払額」を用いております。
4.有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち、利子を支払っているすべての負債を対象としております。
5.2020年3月期、2023年3月期のキャッシュ・フロー対有利子負債比率及びインタレスト・カバレッジ・レシオは、営業キャッシュ・フローがマイナスのため、記載を省略しております。
③半導体市況の当社グループへの影響
新型コロナウイルス感染症の影響によるリモートワークや巣ごもり消費の拡大により、2020年度第4四半期(2021年1月~3月)から世界的な半導体不足が表面化しましたが、当連結会計年度においては、産業機器関連や一部車載関連においても顧客の在庫調整が進んできており、PC、スマートフォン及び民生機器向けについては需要の減少により供給過剰状態になっていると見られます。
当社グループでは、最終製品の需要動向に注視しながら適正な在庫水準の維持に努めておりますが、半導体製品の取引価格やサプライチェーンにおける在庫水準の変動、及び顧客企業の生産計画の変更等、市場動向の変化が今後の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。
④生産、受注及び販売の実績
a. 生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (2023年4月1日から 2024年3月31日まで) |
前年同期比(%) |
|
電子部品事業 (百万円) |
784 |
63.5 |
|
工業薬品事業 (百万円) |
6,229 |
71.8 |
|
合計 (百万円) |
7,013 |
70.8 |
(注)金額は販売価格によっております。
b. 商品仕入実績
当連結会計年度の商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (2023年4月1日から 2024年3月31日まで) |
前年同期比(%) |
|
電子部品事業 (百万円) |
132,090 |
73.6 |
|
電子・電気機器事業 (百万円) |
21,845 |
124.0 |
|
工業薬品事業 (百万円) |
8,384 |
98.3 |
|
合計 (百万円) |
162,319 |
78.9 |
(注)セグメント内の内部取引を相殺消去しております。
c. 受注実績
当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
受注高 |
前年同期比(%) |
受注残高 |
前年同期比(%) |
|
電子部品事業(百万円) |
115,224 |
65.6 |
67,572 |
69.9 |
|
電子・電気機器事業(百万円) |
22,703 |
77.4 |
16,927 |
81.5 |
|
工業薬品事業(百万円) |
10,816 |
85.5 |
1,194 |
102.4 |
|
その他の事業(百万円) |
1,090 |
88.2 |
- |
- |
|
合計 |
149,835 |
68.4 |
85,693 |
72.3 |
(注)セグメント内の内部取引については、消去しておりますが、セグメント間の内部取引については消去しておりません。
d. 販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (2023年4月1日から 2024年3月31日まで) |
前年同期比(%) |
|
電子部品事業 (百万円) |
144,287 |
72.9 |
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電子・電気機器事業 (百万円) |
26,547 |
116.9 |
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工業薬品事業 (百万円) |
10,788 |
85.5 |
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その他の事業 (百万円) |
1,090 |
88.2 |
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合計 (百万円) |
182,714 |
78.0 |
(注)1.セグメント内の内部取引については、消去しておりますが、セグメント間の内部取引については消去しておりません。
2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次の通りであります。
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相手先 |
前連結会計年度 (2022年4月1日から 2023年3月31日まで) |
当連結会計年度 (2023年4月1日から 2024年3月31日まで) |
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金額(百万円) |
割合(%) |
金額(百万円) |
割合(%) |
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株式会社デンソー |
23,094 |
9.9 |
17,091 |
9.4 |
|
パナソニック株式会社 |
23,308 |
10.0 |
9,295 |
5.1 |
※販売実績には、当該顧客と同一の企業集団に属する顧客に対する販売実績を含めております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成に当たって、必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しております。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項) 4.会計方針に関する事項」に記載しております。また重要な会計上の見積りは「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a. 経営成績等の状況
当社グループでは、2021年4月に4ヶ年の中期経営計画「Change & Co-Create 2024」を公表し、エレクトロニクス商社とケミカルメーカーの複合企業として、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を目指し、収益力の向上や新規事業の展開などの経営課題に取り組んでおりますが、本計画にて掲げた事業構造改革による効果に加え、主力事業を展開しているエレクトロニクス業界において、自動車向け半導体並びに産業機器向け半導体及び半導体製造装置の堅調な推移により、2021年度、2022年度共に当初計画の定量目標である連結営業利益50億円以上を達成いたしました。そのため2023年4月に本計画の折り返し地点に際し、成長を維持するため、定量目標の見直しを行いました。本計画にて掲げた全社戦略並びに事業戦略の遂行・浸透により、更なる企業価値の向上に努めてまいります。
見直し後の2024年度の定量目標は連結営業利益90億円以上、連結営業利益率4.5%以上、ROE9.0%以上とし、その達成に向けて、以下の通り取り組んでおります。
電子部品事業においては、業務の効率化と収益性の高いビジネスへの販売強化による収益性の改善、部門を横断した情報・技術の連携による新規顧客開拓、営業体制の見直しによる海外販売の強化等を進めております。
電気・電子機器事業においては、新商品や自社製品の販売比率の向上、独自の技術、装置、販路の強化を進めております。
工業薬品事業においては、技術強化や製品開発力の向上による事業領域の拡大、海外の販路・製造・サービス機能の強化による海外事業展開及び化粧品原料ビジネスの強化を進めております。
当連結会計年度の売上高は前連結会計年度と比較して515億77百万円(22.1%)減少し、1,820億46百万円となりました。これは主に電子部品事業において、車載用途ICの販売が堅調に推移したものの、大手半導体メーカー製品の商流変更による減収があり、同セグメントの売上高が535億30百万円減少したためであります。
売上総利益は、前連結会計年度と比較して55億46百万円(17.1%)減少し、268億33百万円となりました。これは主に前述の電子部品事業の売上高の減少に加え、前連結会計年度の連結売上総利益の押し上げ要因となった円安進行による為替影響による増益効果が縮小したためです。なお、売上総利益率は14.7%となり、前連結会計年度より0.8ポイント改善いたしました。
販売費及び一般管理費は、前連結会計年度と比較して4億72百万円(2.4%)減少し、191億96百万円となりました。これは主に人件費が11億71百万円減少したことによります。
営業利益は、前述の通り販売費及び一般管理費が減少したものの、その減少以上に売上総利益が減少したため、前連結会計年度と比較して50億74百万円(39.9%)減少し、76億36百万円となりました。また、営業利益率は4.2%となり、前連結会計年度より1.2ポイント下降いたしました。
営業外収益は、受取配当金が1億54百万円減少したこと等により前連結会計年度と比較して1億40百万円減少し2億61百万円となり、営業外費用は、為替差損7億53百万円を計上したものの、売上債権売却損の減少等により前連結会計年度と比較して78百万円減少し9億85百万円となりました。その結果、経常利益は前連結会計年度と比較して51億35百万円(42.6%)減少し、69億12百万円となりました。
特別利益は、投資有価証券売却益16億72百万円を計上したこと等により前連結会計年度と比較して15億62百万円増加し16億93百万円となり、特別損失は、貸倒引当金繰入額11億56百万円等により前連結会計年度と比較して11億33百万円増加し11億66百万円となりました。その結果、税金等調整前当期純利益は前連結会計年度と比較して47億7百万円(38.8%)減少し、74億39百万円となりました。
法人税等合計額は、法人税、住民税及び事業税20億41百万円を計上したこと等により、22億63百万円となりました。
以上の結果、親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度と比較して37億53百万円(42.0%)減少し、51億75百万円となりました。
また自己資本当期純利益率(ROE)は8.0%となり、前連結会計年度より6.2ポイント下降しました。
当連結会計年度は、中期経営計画「Change & Co-Create 2024」の3年目でありましたが、当初計画の2024年度の定量目標(連結営業利益50億円以上、連結営業利益率3.0%以上、ROE6.0%以上)は達成したものの、見直し後の2024年度の定量目標(連結営業利益90億円以上、連結営業利益率4.5%以上、ROE9.0%以上)には届いておりません。これは中国市場低迷の長期化や顧客の在庫調整の影響を受けたものと考えております。引き続き本計画にて掲げた全社戦略並びに事業戦略の遂行・浸透により、引き続きいかなる環境下においても持続的な成長力と安定した収益力を確保できるよう事業構造の変革に努めてまいります。
b. 資本の財源及び資金の流動性についての分析
商社事業である電子部品事業と電子・電気機器事業で売上高の大半を占める当社グループのバランスシートは、主に現金及び預金、売上債権、並びに棚卸資産等の流動資産で構成されております。また、新規事業開発や商権獲得のための事業投資の他に、製造業の工業薬品事業では生産設備投資や研究開発投資等にも資金を投入しております。当社グループでは、これらの手元流動性、運転資本及び投資等に充当する資金は、主に内部留保と金融機関からの借入によって調達しております。
当連結会計年度末における棚卸資産は前連結会計年度末と比較して81億75百万円(17.0%)増加し、561億48百万円となりました。これは半導体需給逼迫の解消に伴う商品仕入れの増加及び顧客の在庫調整等により、商品及び製品が79億38百万円増加したためであります。一方で、売上債権は前連結会計年度末と比較して144億74百万円(24.6%)減少し、443億78百万円となりました。これは主に商流変更に伴う電子部品の売上減少によるものであります。特に前連結会計年度末は商流変更に伴う後任代理店への販売により売上債権残高が膨らんでおりました。
当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債残高は、前連結会計年度末と比較して56億1百万円(13.3%)減少し、364億84百万円となりました。これは主に、売上債権の減少に伴う運転資本の減少によるもので、増加した営業キャッシュ・フローを元に借入金の返済を進めました。また、現金及び現金同等物の期末残高は前連結会計年度末と比較して11億82百万円(7.1%)減少し、155億68百万円となり、手元流動性比率は約1.0ヶ月となりました。
内部留保につきましては、M&A等戦略的投資や事業効率化投資などの中長期的な成長や高い投資効率が期待できる投資などに優先的に充当してまいりますが、2021年4月に公表した中期経営計画「Change & Co-Create 2024」の期間中は、株主の皆様への利益還元と資本効率の改善を事業上及び財務上の重要課題と位置づけ、「総還元性向100%」を目標とした株主還元を実施することを基本方針としております。
配当につきましては、1株当たり年間280円の配当(連結配当性向101.4%)を実施しており、自己株式の取得は行わなったため、総還元性向は連結配当性向と同じく101.4%となりました。
c. 経営成績に重要な影響を与える要因について
「第2 事業の状況 3.事業等のリスク」に記載のとおりであります。
該当事項はありません。
当社グループは、工業薬品事業、化粧品事業における研究開発活動を行っております。当連結会計年度における活動状況は以下のとおりであります。
(1)方針および目的
当社グループの工業薬品事業は、石油・石油化学産業、紙・パルプ産業、自動車産業などの各産業プロセスにおける生産性向上と省資源、省エネルギー、環境改善に貢献するスペシャリティーケミカルの提供を目的にしております。又、化粧品事業においては、オリジナル化粧品原料の製造、販売及びODMビジネス、自社ブランド化粧品「TAEKO」の開発、販売を行っております。
近年、石油・石油化学産業、紙・パルプ産業、自動車産業では持続可能な社会実現に向けカーボンニュートラルやケミカルリサイクル等の新たな開発ニーズも生まれてきております。化粧品業界においても環境に配慮した原料を用いた製品への関心が更に高まってきています。
このような環境下、工業薬品事業では当社が培ってきた省エネルギーや環境改善技術を進化させ、環境関連や電子産業等の成長産業向けた新たなニーズ開拓に取り組んでおります。又、化粧品事業では、発酵技術により得られる化粧品原料を配合した「TAEKO」をライフスタイルブランドとすべく、「人と環境に優しい製品」の開発に取り組んでおります。
(2)主な研究・技術開発の内容
①工業用薬品事業
石油・石油化学産業向けに国内外でのニーズが高まるCO2排出量低減に繋がる薬品開発を進めております。
紙・パルプ産業向けには、人の健康や環境影響に配慮した製品ラインナップを拡充しております。
②化粧品事業
製品の品質改善と訴求力の向上に努めております。具体的には、効果試験データを伴ったサンスクリーン、スキ
ンケア等の化粧品開発を行っております。
又、発酵技術を利用した新たな化粧品素材の開発にも取り組んでいます。
③新規分野開発
電子産業向け水処理剤や排水処理等の環境負荷低減技術の開発を進めております。又、半導体製造向け添加剤の
開発にも取り組んでいます。
(3)研究開発費
当連結会計年度の研究開発費の総額は工業薬品事業において