当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針・経営戦略等
近年の世界情勢は、トランプ政権が掲げる「米国第一」の各政策や、世界的な物価・資源高、半導体の戦略物資化など、不透明性は高まっております。このような状況のもと、当社グループは中長期的な成長拡大と新たな価値創出を目指すため、2029年3月期を最終年度とする中期経営計画「Hakuto 2028」を2025年4月に策定いたしました。エレクトロニクスとケミカルの2つの事業領域、そして商社とメーカー機能を併せ持つハイブリッド企業として、顧客優位で価値の向上に取り組み、中長期的な成長拡大を目指してまいります。
(事業環境)
当社グループが主力事業を展開しているエレクトロニクス業界は、AI関連投資を中心に引き続き高い成長率が見込まれております。また、環境への更なる意識の高まりにより、代替エネルギー及び水や空気などの環境対策領域で新たなビジネスの機会が生まれております。一方では車載関連や産業機器向けを中心に需要の低迷が継続し、AI関連の好調さとそれ以外の低調さの二極化が明確になるにつれ、既存技術や価値の陳腐化が進行しており、当業界で求められる商社の役割・機能が変化し、その存在意義が改めて問われております。
(当社グループのビジョン)
当社グループのビジョンは、「顧客の進化を加速させるイネーブラーとしてかけがえのない存在になる」です。当社グループは、下記3つの「H」を念頭に、これまで培ってきた技術力という強みに加え、問題解決に向けた共創をリードすることで、顧客の事業成功・事業成長の遂行に必要な価値を提供する企業=イネーブラーとしての役割を拡大し、ビジョンの実現を目指してまいります。
〔High-Value〕
顧客を進化させる価値提供
〔High-Technology〕
最先端技術を追求し、技術、情報を知見として提供する構想力・発想力
〔Humanity〕
人のこころを熱量で動かす
(当社グループの役割)
当社グループはエレクトロニクスとケミカルの2つの領域それぞれに商社機能とメーカー機能を有し、多様な顧客ニーズに対応してまいりました。また、独立系専門商社として仕入先ごとに選任を置き、仕入先、顧客いずれにも自由度の高い強固な関係性を構築してまいりました。顧客を取り巻く環境は選択と集中による事業ポートフォリオの変革や新たな競合の出現、レベルアップしていく環境基準への適用など、より複雑化した課題に直面しております。当社グループはモノ、サービス、最先端テクノロジーを組み合わせ、複合的かつ最適な価値を提供してまいります。
(事業戦略)
顧客課題に応じた提供価値の複合化と新規創出が重要な事業戦略であると認識しております。そのため、M&Aや資本提携による新たな価値の獲得を通じて、注力事業及び周辺領域をさらに深掘りし、現有資産の活用やシナジー効果を創出します。また、新規事業開発に特化した「ビジネスインキュベーションセンター」を新設し、全社視点での事業・ソリューション開発を推進してまいります。これらの事業戦略で、顧客の商品開発やバリューチェーン強化に貢献してまいります。
(経営目標)
本計画の最終年度となる2029年3月期における定量目標は以下の通りです。
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経営目標 2029年3月期 |
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連結売上高 |
2,500億円以上 |
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連結営業利益率 |
4.0%以上 |
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ROE |
10%以上 |
(人材に関する取り組み)
ビジョン実現のために必要となる人材を再定義し、それに基づく採用と育成の強化に取り組むことによって、イネーブラーを体現する多様な人材の確保を目指します。一例としてエンジニア人材の採用強化や女性管理職の計画的育成、オンライン教育システムの充実による自律的な学びの支援、DX戦略の一つである「全員参加型伯東デジタル改革」を加速するDX人材の育成などに取り組んでまいります。
(株主還元方針)
当社グループでは、資本収益性の向上を経営上及び財務上の重要課題と位置付けております。本計画期間中は安定的な株主還元を目指しながらも、成長投資とのバランスを鑑みた方針としてまいります。具体的には、配当性向70%(±5%)に加え、資本配当率(DOE)5%の配当下限値を設定いたします。
本計画の着実な遂行により、当社グループならではの提供価値を追求し、顧客からかけがえのない存在として揺るぎない信頼を確立してまいります。
(2)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループでは、各事業における技術の進化による新たな競合の出現、既存技術や価値の陳腐化の進行、専門商社としての存在意義の低下を優先的に対処すべき事業上の課題と認識しております。2024年度は生成AI関連の好調さや、車載関連分野での主要顧客への一時的な販売増加もあり、前年度業績を上回ることができました。エレクトロニクス業界は引き続き高い成長率が見込まれている一方で、EVの成長鈍化やAI関連以外の分野での最終需要の低迷など、先行きの不透明感が残っております。中期経営計画「Hakuto 2028」における目標は、顧客課題に応じて商品・製品とソリューションを組み合わせた複合的な価値提供と、それを支える事業ポートフォリオの拡充であると考えております。中期経営計画の初年度となる2025年度は、諸施策を着実に実行することにより、各事業セグメントの価値向上に取り組むことが重要と考えております。
各事業セグメントにおける優先的に対処すべき事業上の課題、並びに財務上の課題は以下の通りであります。
(電子部品事業)
電子部品事業は、2025年3月期は産業機器分野では顧客の在庫調整が続き低調だったものの、車載関連分野で主要顧客への一時的な販売増加もあり、当社グループにおいて最大の売上規模があります。また、セグメント利益も前期に引き続き外貨建て輸出取引の為替影響等の外的要因により高水準を維持しております。同事業の売上高の8割弱を占める半導体デバイス部門は近年車載分野や5G通信分野などにおいて積極的に商権を拡大してきたものの、車載はEVの低迷が継続したことにより、投資停滞の影響も受けております。市場低迷に加え、他メーカーへの置き換えの加速などもあり、需要の回復には不透明感があると認識しております。
したがって、同事業における対処の方向性は、モノを提供しながら顧客の課題をとらえ、コト・情報を複合的に提供するソリューションプロバイダーを目指すことにより、存在価値を高めていくことと考えております。また、エンジニアの増員や外部との業務・資本提携を通して、バリューチェーンの強化と領域拡大を目指すことにより、当社グループの役割拡大を図ることと考えております。
(電子・電気機器事業)
電子・電気機器事業は、当社グループにおいては電子部品事業に次ぐセグメント利益を生み出している比較的高収益な事業と位置付けており、2025年3月期は真空・理化学関連機器は堅調を維持し、パワーデバイス向けは前年度受注分の出荷などにより販売が増加しました。しかし、EVの成長鈍化やPC、モバイルなどの低調にともなう顧客の設備投資計画の延期及び縮小に加え、貿易規制等による海外販路開拓の遅れなども成長性鈍化の要因になるものと認識しております。
したがって、同事業における対処の方向性は、検査や加工など各種工程を網羅する新規商材開発を通してポートフォリオの拡充を図り、顧客のあらゆる課題に対応できる体制を整えることと考えております。それと同時に、IT及びデジタル技術を駆使した当社グループ独自のエンジニアリングサービスを高度化させ、商社機能とメーカー機能を強化することで、最先端の技術サービスを提供することと考えております。
(ケミカル事業) 注:2026年3月期より、工業薬品事業からケミカル事業へセグメント名称を変更いたします。
ケミカル事業は、当社グループにおいては特色あるメーカー部門と位置付けておりますが、他のセグメントと比較すると成長性、規模ともに劣後しております。これは、同事業の既存マーケットが主に国内の石油・石油化学関連、紙・パルプ関連という需要が減少しつつある産業であるという外的要因に加えて、環境ビジネスを中心とする新事業展開や海外展開が計画通り進まなかったことなども要因になっていたものと認識しております。
したがって、同事業における対処の方向性は、水処理を中心とする環境領域や新規化粧品基材などのライフサイエンス領域で新事業を創出し、薬品プラスアルファの価値を提供していくことと考えております。また、自社製品の開発に加え分析メニューなどとの組み合わせによる複合的な提案を行うことで、既存事業のソリューションの強化・拡充を推進していくことと考えております。
〔参考〕:過去5期のセグメントごとの売上高、及びセグメント利益(金額単位:百万円)
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決算期 |
2021年3月期 |
2022年3月期 |
2023年3月期 |
2024年3月期 |
2025年3月期 |
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電子部品事業 |
売上高 セグメント利益 |
134,949 919 |
157,119 3,682 |
197,818 10,462 |
144,287 5,929 |
142,961 5,239 |
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電子・電気 機器事業 |
売上高 セグメント利益 |
19,029 1,770 |
21,609 2,104 |
22,717 1,665 |
26,547 1,777 |
27,241 2,498 |
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工業薬品事業 |
売上高 セグメント利益 |
10,962 890 |
12,300 1,337 |
12,615 849 |
10,788 35 |
10,789 △9 |
海外事業においては中華圏・ASEANのエリア統括機能を強化し、人的リソースを共有できる組織を編成することで、新規事業及び地域の開拓に注力してまいります。また、各国の環境意識の高まりや製造現場における効率化の需要の高まりに応じて、モノだけでなくソリューションを提供することで顧客の課題解決に取り組んでまいります。
(財務上の課題)
前中期経営計画期間中のROEは自社の株主資本コストを上回る水準で推移したものと認識しておりますが、引き続き資本効率を高めていくことが優先的に対処すべき課題と考えております。具体的な施策として、運転資本の効率化や政策保有株式の縮減によって創出されたキャッシュを新規事業やM&Aを含む成長投資に振り分けるとともに、安定的な株主還元を実現することで、キャピタルアロケーションの最適化を図り、資本収益性を向上させることで企業価値を高めてまいります。
当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、次の通りであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。
Ⅰ.気候変動に関する考え方及び取組
当社は、最先端の技術による電子・電気機器、電子部品を取扱うエレクトロニクス技術商社として、また環境に配慮した工業薬品を製造するケミカルメーカーとして時代のニーズに対応する商品やサービスの安定供給に努めてまいりました。このような企業活動を通じて、気候変動を始めとするサステナビリティ課題の解決は取り組みを強化すべき重要課題であると認識し、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)(*1)提言に賛同を表明いたしました。今後も引き続き、気候変動関連情報の開示の充実に取り組み、持続可能な社会の実現に貢献できるよう取り組んでまいります。
(*1) G20からの要請を受け、金融安定理事会(FSB)が2015年に設立。気候変動によるリスク及び機会が経営に与える財務的影響を評価し、「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」について開示することを推奨しています。
(1)ガバナンス
気候変動課題に関するリスク/機会の分析・特定、施策及び指標・目標の策定、進捗管理のため、「リスクマネジメント委員会」(*2)の下部組織として「気候変動分科会」を設置しております。
気候変動分科会は、具体的取り組みの推進主体となる「各部門・グループ会社等」の計画・推進状況を把握・管理し、リスクマネジメント委員会(年4回開催、委員長:リスク担当取締役)へ報告いたします。
「取締役会」はリスクマネジメント委員会からの報告内容に基づき、取り組み全般のモニタリング、指示・監督を行います。
(*2) 当社グループのリスク管理の総括機能を担う委員会組織
■TCFD推進体制図
(2)戦略
日本国内の主要事業を対象に、気候変動課題に伴うリスク/機会がもたらすインパクトを把握するため、短期・中期・長期(2025 年・2030 年・2050 年)の時間軸でシナリオ分析を実施いたしました。
シナリオ分析では平均気温が1.5℃、もしくは4℃上昇する将来像を中心に、低炭素経済への「移行」(*3)や気候変動がもたらす「物理的」変化(*4)に関する社会経済シナリオを参照し、当社にとってのリスク/機会と、取り得る対策案を検討いたしました。
検討過程では、分析対象である各事業部門へのヒアリングを通じて、約60の社会経済シナリオに伴うリスク/機会について「小・中・大」の3段階で定性的に評価いたしました。
評価結果をふまえ、「移行」関連は1.5℃シナリオ、「物理的」関連は4℃シナリオを前提に、中期(2030年)から長期(2050年)にかけて当社の経営・事業にもたらす影響が「中」以上の主な項目を、以下のとおり開示いたします。
(*3) 低炭素化経済の実現にむけた政策や法規制、市場、企業への要請等の変化
(*4) 気候の変化に伴う「急性」(渇水・干ばつ、風水害の増加等)、および「慢性」(平均気温の上昇、海面上昇等)の事象の発生
〔主な参照シナリオ〕
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移行 |
1.5℃シナリオ:IEA「Net Zero Emissions by 2050 Scenario(NZE)」 ※1.5℃シナリオに該当するシナリオが無い場合、2℃未満シナリオ(IEA「Sustainable Development Scenario(SDS)」等の近似のシナリオで補完 |
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物理的 |
4℃シナリオ:IPCC「RCP8.5」 |
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社会経済シナリオ |
リスク/機会 |
対策案 |
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移行 |
政策・法的 |
炭素税の適用 |
〔リスク〕 ・自社活動への炭素税適用 |
・SCOPE1~3の定量化・削減 ・取引先気候変動対応のモニタリング ・関連規制・技術のモニタリング |
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〔リスク〕 ・取引先のコスト増加(自社の購買・調達・配送コストへの転嫁) ・輸出入に係る規制・炭素税適用への対応 |
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施設・設備のGHG排出量削減 |
〔機会〕 ・ZEB化に貢献する製品・サービスの需要拡大 ・自然冷媒・グリーン冷媒機器への入替に伴う関連製品・機器の需要拡大 |
・SCOPE1~3の定量化・削減 ・関連規制・技術のモニタリング |
||
|
低炭素化・省電力化・省スペース化の要請 |
〔機会〕 ・企業・家庭向け製品・機器の需要が拡大 ・製造プロセスの低炭素化・効率化に貢献する製品・機器の需要が拡大 |
・関連技術・製品のモニタリング |
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技術 |
EV・FCVの普及 |
〔機会〕 ・関連製品・機器・製造装置の需要が拡大 |
・関連技術・製品のモニタリング |
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市場 |
石油精製業関連の既存取引減少 |
〔リスク〕 ・関連製品の需要減少 〔機会〕 ・バイオ燃料、廃プラスチック再利用技術関連製品の需要拡大 |
・関連技術・製品のモニタリング |
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評判 |
気候変動対応 |
〔リスク〕 ・低炭素化取り組みの要請への対応が不十分な場合、取引の縮小・停止 ・開示情報の不足による企業価値低下、若手層等の人材確保困難 〔機会〕 ・適切な情報開示を通じた企業価値向上 ・中長期的に安定した人材確保 |
・具体的取り組みの推進・進捗管理 ・適時・適切な開示 |
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物理的 |
急性 |
渇水・干ばつの発生 |
〔リスク〕 ・購買・調達先での水使用量制約による原材料・製品の高騰・調達困難 |
・サプライチェーン全体の水リスクの把握 |
|
風水害の増加・甚大化 |
〔リスク〕 ・自社の事業拠点・太陽光発電施設、購買・調達先・ロジスティクス拠点の被災 〔機会〕 ・製品・機器の交換・修理等を通じた顧客の事業継続への貢献 |
・サプライチェーン全体の風水害リスクの把握 |
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(3)リスク管理
気候変動分科会は、気候変動に伴うリスク/機会を分析・特定し、リスクマネジメント委員会へ結果を報告します。
リスクマネジメント委員会は報告内容に基づき、対応の優先順位を評価した上でリスク管理計画(*5)に組み込み、取締役会へ管理状況を報告・提言します。
(*5)経営が管理すべき重要リスクについて、リスク事象への対応・モニタリングのための対応計画
(4)指標及び目標
当社では環境問題への取り組みとして気候変動を最重要課題と認識しており、温室効果ガス(CO2)排出量に対してパリ協定の1.5℃目標に準じた削減目標を以下の通り設定し、低減に取り組んでまいります。
温室効果ガス(CO2)排出削減目標
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指標 |
基準年 |
目標年 |
目標 |
|
Scope1,Scope2 合計 |
2022年度 |
2030年 |
50%削減 |
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2050年 |
カーボンニュートラル |
(参考)Scope1、2 及びScope3 のCO2排出量の実績は以下の通りとなっております。
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項目 |
対象範囲 |
2022年度実績 |
2023年度実績 |
2024年度実績 |
2024年度 対 2022年度比 |
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Scope1 |
当社連結 |
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-4.4% |
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Scope2 |
当社連結 |
|
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-7.4% |
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Scope1,Scope2 合計 |
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-7.8% |
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項目 |
対象範囲 |
2022年度実績 |
2023年度 |
2024年度 |
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Scope3 |
当社単体 |
(Category4~7合計) |
(Category1~7合計) |
算出中(*7) |
(*7)2024年度Scope3は Category9~15についても算出予定
当社は、2024年9月6日付で株式会社クリアライズを完全子会社としております。9月以降のCO2排出量実績を参考情報としてお知らせいたします。
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項目 |
対象範囲 |
2024年9月度~2025年3月度実績 |
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Scope1 |
株式会社クリアライズ |
10.16 t-CO2 |
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Scope2 |
株式会社クリアライズ |
463.90 t-CO2 |
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Scope1,Scope2 合計 |
474.06 t-CO2 |
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Ⅱ.人的資本経営、多様性に関する考え方及び取組
私たち伯東では、日々急激に変化する事業環境と未来の予測が困難な現代においても、社員一人ひとりの才能と能力が企業の持続可能な成長の真の源泉であるという確固たる信念を持っています。この信念のもとに、人材育成を企業戦略の核心に置いて取り組んでいます。
中期経営計画「Hakuto 2028」では、人材に関する基盤強化戦略として、「イネーブラーとしての役割を果たす人材の確保と育成」を重要な柱として掲げました。このイネーブラーとは、単に目の前の仕事をこなすだけでなく、新しいアイデアを持ち込み、革新を推進し、顧客や社会が直面する課題の解決に積極的に寄与できる人材のことを指します。こうしたイネーブラーには、創造的な思考と解決策を提供する能力の保有が求められ、絶えず進化する市場において不可欠です。私たちは、各社員が自らのポテンシャルを発揮し、その結果、社会がより良い方向に向かうような存在となることを目指しています。
社員がそれぞれ独自の価値を発揮し、顧客と社会にとって不可欠な存在となるよう、伯東は引き続き以下をはじめとした支援と人材投資を惜しまない姿勢で臨んでまいります。
(1) 教育・研修プログラムの進化と学びの文化醸成
「事業に価値を提供し、成果に寄与する人材を多様に創造・輩出し続ける」というビジョンのもと、階層別・実務スキル習得・グローバル人材養成研修に加え、2025年度より全社員を対象としたオンライン学習プラットフォーム(PF)を導入しました。特にデジタルスキル分野では、社内オリジナルの研修コンテンツも開発し、イネーブラー人材の育成を強化しています。このPFを「伯東の学び場」と位置づけ、社員が自身のキャリアや挑戦に応じた学びを自発的に選び、アップデートし続けられる環境を整備しています。
(2) グローバル人材育成の支援
グローバル展開の加速に合わせ、海外子会社への出向や実務研修を通じ、語学力はもとより、異文化対応力など、グローバルで通用するリーダーシップの開発に取り組んでいます。今後もこのような「現地ビジネスの課題に向き合い解決に取り組む」機会を将来のリーダーとなる若手・中堅社員を中心に提供していきます。
(3) 伯東の成長を担う次世代経営人材の育成
将来の経営を担う人材の計画的・継続的な育成を目的に、選抜型のサクセッションプランを本格運用しています。経営層に求められる要件を明確にし、経営視点の理解、個々の強みを活かしたリーダーシップ開発に加え、仮説検証型思考や対話型組織開発など、実践的な経営スキルを習得する研修を強化しています。
加えて、社外取締役を含む指名報酬委員と経営課題に関する自由討議の場を設け、経営人材の育成に取り組んでいます。
(4) エンゲージメントの可視化と組織活性化
社員が自らの仕事に誇りを持ち、組織とのつながりを実感できるよう、毎年エンゲージメントサーベイを実施し、部門ごとの改善活動を行っています。部門長を対象としたフィードバック研修を通じて、結果の背景にある要因を深掘りし、数値だけでなく「変化を生む対話」を重視した取組みを展開中です。
今後は、エンゲージメントスコアを経営のKPIとして位置づけ、定点観測と施策のPDCAを通じて、組織全体の活力を高めていきます。
(5) ダイバーシティ&インクルージョンの推進
国籍・性別・価値観の違いを尊重し、社員一人ひとりが力を発揮できる職場づくりを進めております。外国人社員も新卒留学生を含め積極的に採用しており、現在17名(内管理職4名)が在籍しております。
2024年度には「伯東ウィメンズカレッジ」を開講し、女性社員の職域拡大・キャリア開発・管理職登用を体系的に支援しています。今後はこれらの取り組みをさらに拡充し、多様な人材が各々の強みや持ち味を発揮し、組織の革新力に直結する状態を目指します。
※次表「女性管理職比率」「男女賃金格差」「男性育児休暇取得率」参照
(6) ウェルビーイングの向上と安心して働ける環境整備
社員の健康と安心が、挑戦と成長を生み出す土台と捉え、当社では在宅勤務・時差出勤など柔軟な働き方を導入しています。これらの取り組みにより有休取得率80%以上といった成果を着実に積み重ね、健康経営優良法人にも認定されています。さらに2025年度には「健康経営戦略マップ」を策定し、二次健診の受診促進や仕事と育児・介護・学業との両立支援など、心身の健康を支える仕組みを強化しています。
※次表「年次有給休暇取得率」参照
伯東はこれからも、社員が伯東という舞台で成長し、社会に貢献する存在として活躍できる環境の整備を進めていきます。社員の可能性と企業の可能性が重なり合う場所として、持続可能な価値創造を支える人材戦略を推進してまいります。
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2023年度 |
2024年度 |
2030年度 (目標) |
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8.5% |
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20.0% |
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68.6% |
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80.0% |
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57.1% |
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85% |
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80.9% |
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80%以上 |
男女賃金格差については、正規雇用労働者に関する数値を記載しております。
女性管理職比率につきましては、2023年度は2024年4月1日時点、2024年度は2025年4月1日時点のものとなります。
当社グループではリスクを「グループの収益や損失に影響を与える不確実性」と捉え、複雑化・多様化するリスクに対して適切な対策を行うことにより、リスクの回避や発生時の被害を最小限に抑える予防的活動を含めた取り組みをリスクマネジメントと位置付けております。
こうした考えに基づき、当社ではリスクを組織的に管理するために必要な基本事項を定め、事業活動におけるリスクを統括的に把握し、適切に管理することを目的として、リスクマネジメント委員会を設置し、リスクの確実な把握と実効性のある予防的活動に取り組んでおります。
当社グループの財務状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況等に重要な影響を与える可能性がある主要なリスクとして、以下に記載しておりますが、これらのリスクは必ずしも全てを網羅したものではなく、想定していないリスクや重要性が低いと考えられる他のリスクの影響を受ける可能性があります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものであります。
(外部環境に起因するリスク)
(1)経済、市場動向に関するリスク
当社グループの業績は、マクロ的経済動向に少なからず影響を受けますが、電子部品事業及び電子・電気機器事業においては、エレクトロニクス業界全体の市場動向に大きく影響を受けます。具体的には民生用、産業用エレクトロニクス製品の生産並びに需要状況、半導体の生産並びに出荷状況、顧客の在庫保有状況、半導体設備への投資及び設備の稼働状況等が挙げられます。特に、近年では自動車技術の高度化や通信機器の高性能化などにより車載用、産業用等の幅広い用途はあるものの、最終需要の低迷が続き、在庫調整が長期化しています。また、エレクトロニクス業界のグローバル化が進む中、海外子会社を有する当社グループは、国内のみならず、アジア、欧米を中心とした世界各国の経済、市場動向にも影響を受けます。米国の関税政策による貿易コストの高まりなど、国外取引先とのサプライチェーンの見直しを余儀なくされる可能性があります。
当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期については予測が困難であるものの、顕在化した場合には、当社グループの業績や今後の事業計画に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクに対しては、仕入先企業や販売先企業あるいは同業他社の動向等に常に注視し、マクロ経済や世界情勢、業界動向の変化を的確にとらえ経営施策に反映させるよう努めております。
(2)災害並びに感染症に関するリスク
当社グループは、神奈川県伊勢原市に電子部品事業や電子・電気機器事業の物流・サービス拠点と三重県四日市市にケミカル事業の生産・研究開発拠点を有するなど、国内外に複数の物流、生産拠点並びに施設があります。これらの施設が地震や火災等により被災し、あるいは施設内において感染症等が発生した場合には、一時的に商品及び製品の出荷が困難となる可能性があります。また、取引先企業において同様の災害や感染症が発生した場合には、サプライチェーンの確保が困難となる可能性があります。
(技術・競合に起因するリスク)
(3)技術、開発動向に関するリスク
当社グループが取り扱う電子部品、電子・電気機器及び工業薬品は、技術革新によって優位性を有する競合品の市場投入により陳腐化し、競争力が低下する場合があります。
また、近年は中国をはじめとする新興諸国企業の台頭により、技術面や価格面で優位性を持つ商品が市場に多く投入されるようになっており、アジア地域を中心にローカルビジネスの強化を重要な成長戦略の1つとして位置付けている当社グループの阻害要因となる場合があります。
当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期については予測が困難であるものの、顕在化した場合には、当社グループの業績や今後の事業計画に影響を及ぼす可能性があります。
(4)価格競争並びに競合に関するリスク
当社グループが取り扱う電子部品、電子・電気機器及び工業薬品は、最終製品を製造販売する国内外の顧客が競争激化や国内市場の縮小等のさまざまな要因により、日頃より厳しい価格競争に置かれているため、常にコストダウンの要求を受けております。
また、電子部品事業においては、半導体デバイス等電子部品のコモディティ化及び低付加価値化の進行に伴い、競合サプライヤーや競合代理店との差別化がより難しくなる中、競合企業間の価格競争がさらに激化することにより、利益面での影響を受け易くなっております。当該リスクに対しては、技術力を活かしたソリューションビジネスへの取り組み等により、競合代理店との差別化を図るとともに、労働生産性改善のためにDX・デジタル化の推進による業務効率の向上に努め利益性の確保に取り組んでおります。
(5)商権の喪失に関するリスク
商社事業の電子部品事業及び電子・電気機器事業では、多くの商権(仕入先との代理店契約による製品販売権)が事業の根幹を形成しております。仕入先との代理店契約には、契約期間や契約解除要件が定められており、その解除権は当社グループと仕入先の双方が有しております。
近年のエレクトロニクス業界においては、M&Aによる事業再編が活発化しており、エレクトロニクス関連製品を取り扱う販売代理店でも商流の見直しや統廃合の動きが見られます。当社グループは商権の維持や新規獲得に向けた努力をしておりますが、買収による仕入先企業の消滅、仕入先企業の販売子会社設立及び競合代理店への商流変更等により商権を喪失する場合があります。
当該リスクが顕在化した場合には、当社グループの業績や今後の事業計画に影響を及ぼす可能性があります。
(財務リスク)
(6)運転資本に関するリスク
輸入半導体等多くの外国製品を取り扱う当社グループは、国内企業との商取引習慣の違いによる支払条件のギャップを吸収してキャッシュ・フローの調整を図る金融機能を担っております。近年のエレクトロニクス業界においては、仕入先(半導体メーカー等)と顧客(電機メーカー等)の再編による大規模化、設備投資及び研究開発資金の増大等を背景に、売掛債権の回収と買掛債務の支払いとの間に一定期間の差が生じております。また、米中対立の長期化、自然災害の増大等を背景に、BCP(事業継続計画)の観点から当社グループが保有する棚卸資産は増加傾向にあります。
その結果、当社グループのCCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)を短縮することができず、当社グループのキャッシュ・フローに影響を及ぼすとともに、運転資本の調達コスト上昇により業績にも影響を与える可能性があります。
さらに、棚卸資産については、市場動向や販売状況及び顧客の在庫保有状況により滞留するリスクがあります。当社グループでは、顧客企業の生産計画を基に、仕入先企業の生産のリードタイムとの平衡を図ることで、余剰在庫が生じないように努めておりますが、一定の在庫期間を経過し、かつ、受注のない滞留在庫については、収益性がないものとして、また上記以外の商品、製品、原材料については、個別に販売可能性を見積り、回収可能見込み額まで帳簿価額を切り下げることにより当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
〔参考〕:過去5期のCCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル/連結ベース)
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決算期 |
2021年3月 |
2022年3月 |
2023年3月 |
2024年3月 |
2025年3月 |
|
棚卸資産平均回転期間(月) |
2.8 |
2.6 |
2.7 |
4.0 |
3.9 |
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売掛債権平均回収期間(月) |
3.1 |
2.9 |
2.8 |
3.4 |
3.0 |
|
支払債務平均支払期間(月) |
1.6 |
1.5 |
1.5 |
1.9 |
1.8 |
|
キャッシュ・コンバージョン・サイクル(月) |
4.4 |
4.1 |
4.0 |
5.5 |
5.1 |
※ 棚卸資産平均回転期間=((前期末棚卸資産+当期末棚卸資産)÷2)÷(当期売上原価÷12)
※ 売掛債権平均回収期間=((前期末売掛債権+当期末売掛債権)÷2)÷(当期売上高÷12)
※ 支払債務平均支払期間=((前期末支払債務+当期末支払債務)÷2)÷(当期仕入高÷12)
※ キャッシュ・コンバージョン・サイクル=棚卸資産平均回転期間+売掛債権平均回収期間-支払債務平均支払期間
※ 棚卸資産=商品及び製品+仕掛品+原材料及び貯蔵品
※ 売掛債権=売掛金+受取手形+電子記録債権
※ 支払債務=買掛金+支払手形+電子記録債務
※ 仕入高=当期商品仕入高+当期原材料仕入高
(7)為替動向に関するリスク
当社グループの事業はアジア地域を中心に各国にまたがり展開しており、取引通貨についても各国の現地通貨に加えて日本円、米国ドル、ユーロなど多岐にわたるため、為替変動によるリスクが存在しております。当社グループでは、為替相場の変動リスクを回避することを目的として、「市場リスク管理規程」及び「外国為替予約締結マニュアル」に従い、為替予約等によるリスクヘッジ策を実施しております。
為替変動は当社グループの事業に対して多面的な影響を及ぼすため、当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期については予測が困難であるものの、短期間のうちに急激な為替変動が発生した場合には、当社グループの業績やキャッシュ・フローに影響を及ぼす可能性があります。
〔参考〕:過去5期の伯東単独業績における調達地域別仕入高(原材料費及び外注費を含む)
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決算期 |
2021年3月 |
2022年3月 |
2023年3月 |
2024年3月 |
2025年3月 |
|
|
合 計 (百万円) |
120,754 |
150,353 |
176,845 |
140,282 |
121,550 |
|
|
|
国内調達(百万円) |
51,482 |
59,525 |
89,641 |
92,306 |
74,919 |
|
海外調達(百万円) |
69,272 |
90,828 |
87,203 |
47,975 |
46,630 |
|
(8)金利動向に関するリスク
当社グループは運転資金、及び設備投資資金の一部を金融機関より調達しております。現在の経済環境下では、市場金利が急激に上昇する可能性は低いと見られておりますが、当社グループの業績悪化など個別の理由により、金融機関からの調達金利が上昇した場合には、業績や今後の事業計画に影響を及ぼす可能性があります。
なお、当社グループは金利リスクを回避する目的で金利を実質的に固定化する金利スワップを利用しております。また、ヘッジ会計の要件を満たす取引についてはヘッジ会計を適用しております。
〔参考〕:過去5期の借入金残高及び平均金利(連結ベース)
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決算期 |
2021年3月 |
2022年3月 |
2023年3月 |
2024年3月 |
2025年3月 |
|
(短期借入金) |
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|
|
前期末残高(百万円) |
17,900 |
12,400 |
15,300 |
22,700 |
15,800 |
|
当期末残高(百万円) |
12,400 |
15,300 |
22,700 |
15,800 |
12,900 |
|
平均利率 |
0.3% |
0.3% |
0.3% |
0.5% |
0.9% |
|
(1年内返済長期借入金) |
|
|
|
|
|
|
前期末残高(百万円) |
3,019 |
3,880 |
4,690 |
6,100 |
8,870 |
|
当期末残高(百万円) |
3,880 |
4,690 |
6,100 |
8,870 |
6,698 |
|
平均利率 |
0.5% |
0.5% |
0.5% |
0.6% |
0.7% |
|
(長期借入金) |
|
|
|
|
|
|
前期末残高(百万円) |
12,320 |
12,765 |
12,624 |
12,809 |
11,175 |
|
当期末残高(百万円) |
12,765 |
12,624 |
12,809 |
11,175 |
15,218 |
|
平均利率 |
0.5% |
0.5% |
0.6% |
0.7% |
0.8% |
(法的リスク)
(9)製造物責任(PL)並びに得意先等からの求償に関するリスク
商社事業の電子部品事業及び電子・電気機器事業では、納期遅延や品質不良等の理由により顧客から求償を受けた場合には、顧客との協議により求償金額を軽減した上で仕入先より補填を受けるよう努めておりますが、常に当社グループの負担額がゼロになるとは限りません。
また、製造販売業のケミカル事業では、納期遅延や品質不良に加えて、当社製品の顧客の設備や周辺環境へ及ぼす影響等の理由により、顧客から求償を受けることがあります。当社グループでは、品質不良等の製造物の欠陥による損害が発生するリスクに備えて製造物責任(PL)保険及び専門事業者賠償責任(E&O)保険に加入しておりますが、最終的に当社グループが負担する賠償額の全てを補填できるとは限りません。
当連結会計年度において重要な求償及び賠償の支払いはありませんが、当該リスクが顕在化した場合には、民事賠償責任に加えて、許認可や資格の剥奪、レピュテーションの低下等の間接的損害により、当社グループの業績や今後の事業計画に影響を及ぼす可能性があります。
(10)法的規制に関するリスク
当社グループは国内外に拠点を有し事業を展開しており、国内及び外国の法的規制を受けております。これらの法令や規則を遵守できなかった場合、各国当局から事業活動が制限され今後の事業計画に大きな影響を及ぼす可能性があります。
特に安全保障貿易管理については米中対立の長期化などの地政学リスクにより、規制措置は強化される傾向にあり、慎重な対応が必要な状況にあります。これに対して当社では子会社・関係会社を含めた従業員に対する教育を実施し、輸出関連法規の遵守に努め、当社が販売する製品および設計・製造・使用に係る技術等が、規制される貨物等として直接または間接を問わず規制対象地域等へ輸出されることを防止する取り組みを行っております。
(その他のリスク)
(11)情報セキュリティに関するリスク
当社グループは、情報資産を保護するため「情報セキュリティ基本方針書」並びに「情報セキュリティ対策標準書」を策定した上で、「情報セキュリティ委員会」を設置して、情報セキュリティ対策を強化しております。具体的な内容は、会社支給のPC・情報端末への盗難・紛失対策、機密情報の不正持ち出しに対する対策、情報セキュリティに関する継続的な社内教育などです。また、近年はサイバー攻撃による情報資産の社外流出リスクが高まっていることから、当社グループが利用する情報システム及びネットワークインフラについては、外部専門機関によるサイバーセキュリティ診断を実施し、脆弱性の検出とリスクの解消に努めております。
当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期については予測が困難であるものの、事故または故意により当社グループの情報資産が流出した場合には、刑事責任や民事賠償責任に加えて、復旧費用の発生やレピュテーションの低下等の間接的損害により、当社グループの業績や今後の事業計画に影響を及ぼす可能性があります。
(12)人材確保や育成に関するリスク
当社グループでは持続的な企業成長のためには優れたスキルやノウハウ、豊富な経験を有した人材の採用および育成が重要であると認識しております。事業発展のための必要な人材が採用・育成できなかった場合や想定以上の人材が流出した場合には中長期的に今後の事業計画や業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社では新卒採用のみならず中途採用においても採用活動の強化に努めるとともに、社員満足度の向上に向けて「人事の透明性」と「キャリア形成」に主眼を置いた新人事制度を運用しております。キャリアコースの増設や女性管理職の計画的育成などにより、社員の多様な働き方を支援し、優秀な人材の確保・育成に取り組んでおります。
(13)海外事業におけるコーポレートガバナンスに関するリスク
当社グループは、海外子会社を通じて中華圏及びASEANを中心に海外展開を図っており、連結売上高に占める海外売上高の割合は約40%を占めております。今後も海外売上高の比率は高水準で推移することが予想されます。
海外子会社においては、各国の商慣習や法規制などに加え地政学リスクなど、国内とは異なるリスクに晒されることからグループ統制によるリスク管理が重要であると認識しております。グループ統制の不足や連携不十分等により、現地における政治・社会情勢や法律・税制の変化に対する対応の遅れなど管理上の問題が発生する可能性があります。特に海外における訴訟案件や従業員による不適切行為などについては、当社の業績や社会的信用に影響を及ぼす可能性があります。当社では中華圏及びアセアンに地域統括責任者を任命し、現地の管理強化を図るとともにグループ諸規程の整備やコンプライアンス研修の実施など、ガバナンスの強化に取り組んでおります。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次の通りであります。
①財政状態及び経営成績の状況
a. 財政状態
当連結会計年度末における流動資産は前連結会計年度末と比較して113億20百万円(9.4%)減少し、1,095億32百万円となりました。これは主に手許在庫の出荷が進んだことにより商品及び製品が120億9百万円減少したためであります。
固定資産につきましては、前連結会計年度末と比較して39億37百万円(23.3%)増加し、208億43百万円となりました。これは主に株式会社クリアライズの取得に関連してのれんが30億28百万円増加したためであります。
以上のことから、当連結会計年度末における資産の部全体としては、前連結会計年度末と比較して73億83百万円(5.4%)減少し、1,303億76百万円となりました。
負債につきましては、流動負債が前連結会計年度末と比較して115億9百万円(19.6%)減少し、471億96百万円となりました。これは主に運転資本(商品仕入)の減少に伴い支払手形及び買掛金が54億85百万円、短期借入金が50億71百万円減少したためであります。
固定負債は前連結会計年度末と比較して45億12百万円(34.4%)増加し、176億32百万円となりました。これは主に長期借入金が40億43百万円増加したためであります。
以上のことから、当連結会計年度末における負債の部全体としては、前連結会計年度末と比較して69億96百万円(9.7%)減少し、648億29百万円となりました。
純資産につきましては、前連結会計年度末と比較して3億87百万円(0.6%)減少し、655億46百万円となりました。これは主に投資有価証券の売却等によりその他有価証券評価差額金が2億95百万円減少したためであります。
b. 経営成績
当連結会計年度における世界経済は、インフレが落ち着いたことによる実質所得の持ち直しなどを背景に底堅い成長を維持しておりましたが、トランプ政権が掲げる「米国第一」の各政策や中国経済の回復動向の不透明感、欧州主要国であるドイツやフランスの政治不安定化などの下振れリスクも抱えており、これらが及ぼす今後の世界経済への悪影響も懸念されております。
我が国の経済については、2024年(暦年)実質GDP成長率は前年比プラス0.1%と辛うじてプラスを維持しましたが、食料価格高騰などの物価上昇、実質賃金の伸び悩みを主因とする個人消費の停滞、トランプ米政権の関税措置による貿易影響など先行きの不透明感が残っております。
当社グループが主力事業を展開するエレクトロニクス業界においては、生成AI関連のデータセンター向けは活況さが継続した一方で、車載関連や産業機器向けを中心に最終需要の低迷が続き在庫調整が長期化、AI関連の好調さとそれ以外の低調さの二極化が継続しました。
このような状況のもと、当社グループの電子部品事業においては、車載関連分野で主要顧客への一時的な販売増加もありましたが、産業機器分野では顧客の在庫調整が続き低調だったこと等により、対前年同期比で減収となりました。
電子・電気機器事業においては、パワーデバイス向け関連機器が前年度受注分の出荷により販売が増加、対前年同期比で増収となりました。
工業薬品事業においては、紙・パルプ分野で原料価格高騰分の販売価格への転嫁等もあり、対前年同期比でわずかながら増収となりました。
以上の結果、当連結会計年度の連結売上高は1,831億33百万円(前年同期比0.6%増)となりました。
損益面につきましては、連結売上総利益は278億78百万円(同3.9%増)となり、連結販売費及び一般管理費として199億65百万円(同4.0%増)を計上した結果、連結営業利益は79億13百万円(同3.6%増)、連結経常利益は73億21百万円(同5.9%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は51億31百万円(同0.9%減)となりました。
また、1株当たり当期純利益は272円76銭となり、前連結会計年度より3円44銭減少いたしました。
収益性及び資本効率に係る各指標につきましては、当連結会計年度における売上高営業利益率は4.3%(前連結会計年度は4.2%)、総資産経常利益率は5.5%(同4.9%)、自己資本当期純利益率は7.8%(同8.0%)となりました。
報告セグメント別の経営成績につきましては、以下のとおりです。
詳細は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (セグメント情報等)」をご参照ください。
〔電子部品事業〕
電子部品事業では、車載関連用途においては主要顧客への一時的な販売増加がありましたが、スマートフォンやPC向けは低調に推移、産業機器分野では在庫消化を終えた一部の顧客から受注が入りましたが、全体的には顧客の在庫調整が長引いたことにより販売が減少しました
この結果、当連結会計年度の売上高は1,429億61百万円(前年同期比0.9%減)となり、販売減少に伴う利益額の減少や為替影響等の要因により、セグメント利益は52億39百万円(同11.6%減)となりました。
〔電子・電気機器事業〕
電子・電気機器事業では、PCB関連機器はパッケージ基板メーカーの設備投資が回復せず低調な状態が続きました。一方で真空理化学関連は堅調を維持し、パワーデバイス向けは半導体工場への設備投資に減速感が見えつつも、前年度受注分の出荷により販売が大きく増加しました。
この結果、当連結会計年度の売上高は272億41百万円(前年同期比2.6%増)となり、セグメント利益は24億98百万円(同40.6%増)となりました。
〔工業薬品事業〕
工業薬品事業では、石油石化分野は海外プラントの稼働減に加え国内プラントも生産調整が続き販売が減少しましたが、紙・パルプ分野は原料価格高騰分の販売価格への転嫁で利益が改善しました。また化粧品分野は需要が上向きはじめ主要顧客の在庫も一部解消されましたが、本格的な回復は依然不透明な状況です。
この結果、当連結会計年度の売上高は107億89百万円(前年同期比0.0%増)となり、原材料費の高騰などにより、セグメント損失は9百万円(前年同期はセグメント利益35百万円)となりました。
〔その他の事業〕
その他の事業では、当社の業務・物流管理全般の受託と太陽光発電事業に加え、当連結会計年度より材料調査などの受託分析・試験評価事業を行っております。当連結会計年度の売上高は25億60百万円(前年同期比134.8%増)となり、当連結会計年度より受託分析・試験評価事業が加わったことにより、セグメント利益は1億31百万円(同272.1%増)となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における連結キャッシュ・フローにつきましては、営業活動によるキャッシュ・フローは105億89百万円の収入、投資活動によるキャッシュ・フローは45億68百万円の支出、財務活動によるキャッシュ・フローは65億7百万円の支出、現金及び現金同等物に係る換算差額が1億52百万円の減少となったため、現金及び現金同等物は前連結会計年度末と比較して6億39百万円減少し、当連結会計年度末は149億29百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因につきましては、以下のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
エレクトロニクス関連の商社事業を展開する当社グループでは、市況や事業動向により売上債権や棚卸資産等の運転資本が増減し、営業キャッシュ・フローが変動いたします。当連結会計年度においては、仕入債務の減少額67億15百万円等の支出要因がありましたが、税金等調整前当期純利益75億61百万円、棚卸資産の減少額117億33百万円等の収入要因により、営業活動によるキャッシュ・フローは105億89百万円の収入となりました。なお、前連結会計年度には売上債権の減少額156億82百万円等により、87億12百万円の収入となっておりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動として、主に新規事業に係る投資や工業薬品事業における製造及び研究設備の更新等の資本的支出の他、必要に応じてM&Aやアライアンス等の非連続投資を行っております。当連結会計年度においては、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出37億14百万円等により、投資活動によるキャッシュ・フローは45億68百万円の支出となりました。なお、前連結会計年度には、投資有価証券の売却による収入20億40百万円等により、8億76百万円の収入となっておりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
運転資本の増減による営業キャッシュ・フローの変動に対して、主に有利子負債による調整を行っております。当連結会計年度においては、短期借入金の返済による支出(純)29億円、配当金の支払い額50億79百万円等により、財務活動によるキャッシュ・フローは65億7百万円の支出となりました。なお、前連結会計年度には、配当金の支払額56億12百万円等により、財務活動によるキャッシュ・フローは114億51百万円の支出となっておりました。
なお、キャッシュ・フロー指標のトレンドは下記のとおりであります。
|
|
2021年3月期 |
2022年3月期 |
2023年3月期 |
2024年3月期 |
2025年3月期 |
|
自己資本比率 |
49.8% |
46.9% |
43.8% |
47.9% |
50.3% |
|
時価ベースの自己資本比率 |
22.6% |
36.6% |
63.0% |
77.0% |
59.4% |
|
キャッシュ・フロー対 有利子負債比率 |
395.7% |
3,796.7% |
- |
418.8% |
333.2% |
|
インタレスト・カバレッジ・レシオ |
46.4倍 |
5.8倍 |
- |
47.0倍 |
33.8倍 |
自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い
(注)1.いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。
2.株式時価総額は自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しております。
3.キャッシュ・フロー及び利払いは、連結キャッシュ・フロー計算書に計上されている「営業活動によるキャッシュ・フロー」及び「利息の支払額」を用いております。
4.有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち、利子を支払っているすべての負債を対象としております。
5.2023年3月期のキャッシュ・フロー対有利子負債比率及びインタレスト・カバレッジ・レシオは、営業キャッシュ・フローがマイナスのため、記載を省略しております。
③半導体市況の当社グループへの影響
新型コロナウイルス感染症の影響によるリモートワークや巣ごもり消費の拡大により、2020年度第4四半期(2021年1月~3月)から世界的な半導体不足が表面化しましたが、当連結会計年度においては、産業機器関連や一部車載関連においても顧客の在庫調整が進んできており、PC、スマートフォン及び民生機器向けについては需要の減少により供給過剰状態になっていると見られます。
当社グループでは、最終製品の需要動向に注視しながら適正な在庫水準の維持に努めておりますが、半導体製品の取引価格やサプライチェーンにおける在庫水準の変動、及び顧客企業の生産計画の変更等、市場動向の変化が今後の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。
④生産、受注及び販売の実績
a. 生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (2024年4月1日から 2025年3月31日まで) |
前年同期比(%) |
|
電子部品事業 (百万円) |
1,228 |
156.6 |
|
工業薬品事業 (百万円) |
6,086 |
97.7 |
|
合計 (百万円) |
7,314 |
104.3 |
(注)金額は販売価格によっております。
b. 商品仕入実績
当連結会計年度の商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (2024年4月1日から 2025年3月31日まで) |
前年同期比(%) |
|
電子部品事業 (百万円) |
115,834 |
87.7 |
|
電子・電気機器事業 (百万円) |
18,436 |
84.4 |
|
工業薬品事業 (百万円) |
6,657 |
79.4 |
|
合計 (百万円) |
140,929 |
86.8 |
(注)セグメント内の内部取引を相殺消去しております。
c. 受注実績
当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
受注高 |
前年同期比(%) |
受注残高 |
前年同期比(%) |
|
電子部品事業(百万円) |
133,039 |
115.5 |
57,650 |
85.3 |
|
電子・電気機器事業(百万円) |
18,882 |
83.2 |
8,567 |
50.6 |
|
工業薬品事業(百万円) |
10,412 |
96.3 |
817 |
68.4 |
|
その他の事業(百万円) |
2,299 |
210.8 |
302 |
- |
|
合計 |
164,633 |
109.9 |
67,337 |
78.6 |
(注)セグメント内の内部取引については消去しておりますが、セグメント間の内部取引については消去しておりません。
d. 販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (2024年4月1日から 2025年3月31日まで) |
前年同期比(%) |
|
電子部品事業 (百万円) |
142,961 |
99.1 |
|
電子・電気機器事業 (百万円) |
27,241 |
102.6 |
|
工業薬品事業 (百万円) |
10,789 |
100.0 |
|
その他の事業 (百万円) |
2,560 |
234.8 |
|
合計 (百万円) |
183,553 |
100.5 |
(注)1.セグメント内の内部取引については消去しておりますが、セグメント間の内部取引については消去しておりません。
2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次の通りであります。
|
相手先 |
前連結会計年度 (2023年4月1日から 2024年3月31日まで) |
当連結会計年度 (2024年4月1日から 2025年3月31日まで) |
||
|
金額(百万円) |
割合(%) |
金額(百万円) |
割合(%) |
|
|
株式会社デンソー |
17,091 |
9.4 |
21,125 |
11.5 |
※販売実績には、当該顧客と同一の企業集団に属する顧客に対する販売実績を含めております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成に当たって、必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しております。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項) 4.会計方針に関する事項」に記載しております。また重要な会計上の見積りは「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a. 経営成績等の状況
当社グループでは、2021年4月に4ヶ年の中期経営計画「Change & Co-Create 2024」を公表し、エレクトロニクス商社とケミカルメーカーの複合企業として、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を目指し、収益力の向上や新規事業の展開などの経営課題に取り組みましたが、本計画にて掲げた事業構造改革による効果に加え、主力事業を展開しているエレクトロニクス業界において、自動車向け半導体並びに産業機器向け半導体及び半導体製造装置の堅調な推移により、2021年度、2022年度共に当初計画の定量目標である連結営業利益50億円以上を達成いたしました。そのため2023年4月に本計画の折り返し地点に際し、成長を維持するため、定量目標の見直しを行いました。本計画にて掲げた全社戦略並びに事業戦略の遂行・浸透により、更なる企業価値の向上に努めてまいりました。見直し後の2024年度の定量目標は連結営業利益90億円以上、連結営業利益率4.5%以上、ROE9.0%以上とし、本計画にて掲げた全社戦略並びに事業戦略の遂行・浸透により、更なる企業価値の向上に努めてまいりました。
電子部品事業においては、業務の効率化と収益性の高いビジネスへの販売強化による収益性の改善、部門を横断した情報・技術の連携による新規顧客開拓、営業体制の見直しによる海外販売の強化等を進めました。
電気・電子機器事業においては、新商品や自社製品の販売比率の向上、独自の技術、装置、販路の強化を進めました。
工業薬品事業においては、技術強化や製品開発力の向上による事業領域の拡大、海外の販路・製造・サービス機能の強化による海外事業展開及び化粧品原料ビジネスの強化を進めました。
当連結会計年度の売上高は前連結会計年度と比較して10億86百万円(0.6%)増加し、1,831億33百万円となりました。これは主に電子部品事業において、車載関連用途において一時的な販売増加がありましたが、スマートフォンやPC向けや産業機器向けは低調に推移、全体的には顧客の在庫調整が長引いたことにより販売がわずかに減少した一方、電子・電気機器事業において、真空理化学関連は堅調を維持し、半導体・MEMS関連機器などが前年度受注分の出荷により販売が増加したためであります。
売上総利益は、前連結会計年度と比較して10億45百万円(3.9%)増加し、278億78百万円となりました。これは主に前述の電子部品事業の減少を、比較的利益率の高い電子・電気機器事業の増加でカバーしたためです。なお、売上総利益率は15.2%となり、前連結会計年度より0.5ポイント改善いたしました。
販売費及び一般管理費は、前連結会計年度と比較して7億68百万円(4.0%)増加し、199億65百万円となりました。これは主に業務委託費4億17百万円増加したことによります。
営業利益は、前述の通り販売費及び一般管理費が増加したものの、その増加以上に売上総利益が増加したため、前連結会計年度と比較して2億76百万円(3.6%)増加し、79億13百万円となりました。また、営業利益率は4.3%となり、前連結会計年度より0.1ポイント改善いたしました。
営業外収益は、受取配当金が2億71百万円増加したこと等により前連結会計年度と比較して3億91百万円増加し6億53百万円となり、営業外費用は、為替差損8億97百万円を計上したほか、支払利息の増加等により前連結会計年度と比較して2億59百万円増加し、12億44百万円となりました。その結果、経常利益は前連結会計年度と比較して4億8百万円(5.9%)増加し、73億21百万円となりました。
特別利益は、投資有価証券売却益2億90百万円を計上しましたが、前連結会計年度と比較して13億99百万円減少し2億94百万円となり、特別損失は、投資有価証券評価損49百万円等により前連結会計年度と比較して11億12百万円減少し54百万円となりました。その結果、税金等調整前当期純利益は前連結会計年度と比較して1億22百万円(1.6%)増加し、75億61百万円となりました。
法人税等合計額は、法人税、住民税及び事業税23億15百万円を計上したこと等により、24億29百万円となりました。
以上の結果、親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度と比較して44百万円(0.9%)減少し、51億31百万円となりました。
また自己資本当期純利益率(ROE)は7.8%となり、前連結会計年度より0.2ポイント下降しました。
当連結会計年度は、中期経営計画「Change & Co-Create 2024」の最終年度でありましたが、当初計画の2024年度の定量目標(連結営業利益50億円以上、連結営業利益率3.0%以上、ROE6.0%以上)は達成したものの、見直し後の2024年度の定量目標(連結営業利益90億円以上、連結営業利益率4.5%以上、ROE9.0%以上)には届きませんでした。これは中国市場低迷の長期化や顧客の在庫調整の影響を受けたものと考えております。
また当社は、エレクトロニクスとケミカルの2つの事業領域、そして商社とメーカー機能を併せ持つハイブリッド企業として、中長期的な成長拡大と新たな価値創出を目指すため、2028年度を最終年度とする新中期経営計画「Hakuto 2028」を策定し、2025年4月30日に公表しました。世界的な物価・資源高、半導体の戦略物資化など、世界情勢の不透明性は高まっておりますが、AI関連及び半導体製造に対する様々な投資活動を中心に、エレクトロニクス業界は引き続き高い成長が見込まれております。また、当業界で求められる商社の役割・機能が変化し、その存在意義が改めて問われております。このような事業環境の下、当社グループならではの提供価値を追求し、顧客からかけがえのない存在として信頼を確立するため、この中期経営計画をマイルストーンとして位置付けております。
b. 資本の財源及び資金の流動性についての分析
商社事業である電子部品事業と電子・電気機器事業で売上高の大半を占める当社グループのバランスシートは、主に現金及び預金、売上債権、並びに棚卸資産等の流動資産で構成されております。また、新規事業開発や商権獲得のための事業投資の他に、製造業の工業薬品事業では生産設備投資や研究開発投資等にも資金を投入しております。当社グループでは、これらの手元流動性、運転資本及び投資等に充当する資金は、主に内部留保と金融機関からの借入によって調達しております。
当連結会計年度末における棚卸資産は前連結会計年度末と比較して116億64百万円(20.8%)減少し、444億84百万円となりました。これは手許在庫の出荷が進んだことにより、商品及び製品が120億9百万円減少したためであります。一方で、売上債権は前連結会計年度末と比較して14億16百万円(3.2%)増加し、457億95百万円となりました。
当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債残高は、前連結会計年度末と比較して12億1百万円(3.3%)減少し、352億82百万円となりました。これは主に増加した営業キャッシュ・フローを元に借入金の返済を進めたためであります。また、現金及び現金同等物の期末残高は前連結会計年度末と比較して6億39百万円(4.1%)減少し、149億29百万円となり、手元流動性比率は約1.0ヶ月となりました。
内部留保につきましては、M&A等戦略的投資や事業効率化投資などの中長期的な成長や高い投資効率が期待できる投資などに優先的に充当してまいりますが、2021年4月に公表した中期経営計画「Change & Co-Create 2024」の期間中は、株主の皆様への利益還元と資本効率の改善を事業上及び財務上の重要課題と位置づけ、「総還元性向100%」を目標とした株主還元を実施することを基本方針としておりました。
配当につきましては、1株当たり年間260円の配当(連結配当性向95.3%)を実施しており、自己株式の取得は行わなったため、総還元性向は連結配当性向と同じく95.3%となりました。
なお、翌期以降の配当方針につきましては、2025年4月30日に公表した新中期経営計画「Hakuto 2028」をご参照ください。
c. 経営成績に重要な影響を与える要因について
「第2 事業の状況 3.事業等のリスク」に記載のとおりであります。
当社は、2024年8月26日開催の取締役会において、株式会社クリアライズの全株式を取得することを決議し、2024年8月30日付でエンデバー・ユナイテッド2号投資事業有限責任組合と株式譲渡契約を締結しました。2024年9月6日に全株式を取得し、当社の完全子会社といたしました。
1.被取得企業の概要
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(1) 名称 |
株式会社クリアライズ |
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(2) 所在地 |
茨城県ひたちなか市大字堀口字長久保832番地2 |
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(3) 代表者の役職・氏名 |
代表取締役 関根善久 |
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(4) 事業内容 |
受託分析サービス |
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(5) 資本金 |
50百万円 |
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(6) 設立年月日 |
2019年2月21日 |
2.企業結合日
2024年9月6日(みなし取得日:2024年9月30日)
3.企業結合の法的形式
現金を対価とする株式取得
当社グループは、工業薬品事業、化粧品事業における研究開発活動を行っております。当連結会計年度における活動状況は以下のとおりであります。
(1)方針および目的
当社グループの工業薬品事業は、石油・石油化学産業、紙・パルプ産業、自動車産業などの各産業プロセスにおける生産性向上と省資源、省エネルギー、環境改善に貢献するスペシャリティーケミカルの提供を目的にしております。又、化粧品事業においては、オリジナル化粧品原料の製造、販売及びODMビジネス、自社ブランド化粧品「TAEKO」の開発、販売を行っております。
工業薬品事業では、持続可能な社会実現に向けたカーボンニュートラルやケミカルリサイクル等の新たな開発ニーズへの取り組みに加え、電子産業と環境関連事業を成長産業と位置付け、これまで当社が培ってきた生産効率の改善と環境保全を融合した工業薬品の開発に取り組んでおります。
化粧品事業では、発酵技術を用いた化粧品素材の開発と共に業界トレンド及び顧客ニーズを意識した処方・製品開発に取り組んでおります。
また、創造的な製品設計、論文・特許情報の解析による新技術の探索、顧客対応強化を図る為、生成AIの導入に着手しています。
(2)主な研究・技術開発の内容
①工業用薬品事業
環境事業への取り組みとして、有害物質除去薬品の開発に注力し、従来技術を上回る新薬品の開発に成功しました。更に、グループ会社である株式会社クリアライズの水処理装置「Eleca」をはじめ、有害物質の分解装置・除去装置を組み合わせた環境負荷低減技術の開発によるトータルソリューションの提供を目指しております。又、当社が培ってきたポリマー技術を活かし、半導体製造プロセス向け添加剤の開発を進めております。
②化粧品事業
発酵技術を利用した新たな化粧品素材の開発と共に生産効率化と品質向上に努めております。又、顧客の製品開発を加速させる提案を意識した化粧品開発を行っております。
(3)研究開発費
当連結会計年度の研究開発費の総額は工業薬品事業において