第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります

 

(1)会社の経営の基本方針

当社グループの経営ビジョンは「クオリティの高いエンジニアリング力を通じ社会に貢献するエクセレントカンパニーとしてサステナブルな未来を創造する」ことであり、ステークホルダーの皆さまに対し社会的責任を果たし、当社グループの企業価値の向上に努めてまいります。

 

(2)目標とする経営指標

当社グループは連結経常利益を重要な経営指標と位置づけ、収益力の強化と事業領域の拡大により企業価値の向上を目指してまいります。

 

(3)経営環境

当社グループのセグメントごとの経営環境の認識は、以下のとおりであります。

プラント事業では、鉄鋼業界・非鉄金属業界の大型設備維持・管理のため、様々なニーズにお応えしております。圧延ラインやプロセスラインにおける受変電設備・PLCシステム・ドライブシステムを柱とした各種電機制御システムの構築、お客様のカーボンニュートラル実現に向けた環境配慮型製品、各種ソリューションを提供し、また、お客様のDX推進に対し、各種データを使ったサイバーフィジカルシステム等、新たなソリューションに取組んでおります。石油・化学・ガス業界に対し、生産プロセスを把握、よりハイレベルな安全・安定・高効率の操業を実現する為、各種機械設備をはじめ、発電・受配電設備等の強電分野、電気計装、監視制御等の弱電分野に至るまで、幅広いニーズにお応えし、今後、お客様が取組まれるDX・カーボンニュートラルの実現に向けても、これまで現場で培った経験を活かし、運用にマッチした提案をしております。2023年度においては、鉄鋼・非鉄分野では、好調な銅・ステンレス業界を中心に、新工場向けの特高受変電設備新設工事や、生産設備の信頼性向上を目的とした老朽化対策としてそれらに関連する付帯設備や電気設備工事が順調に進捗し、石油・化学・ガス分野では、長期に稼働した自家発電設備及び付帯設備の老朽化対策として大型更新工事等が順調に進捗し、売上高は増加いたしました。

産業・設備事業では、化学・医薬・紙パルプ・精密機器他製造業へ産業機器、ユーティリティー設備、ソリューション製品等の提供、公共社会インフラ施設への設備、機器、システムの提供、建築業界へ業務用空調機やLED照明、エレベーター、オフィス家具の提供、通信・データセンター事業者へのサーバー用冷却装置の提供等、幅広いお客様へ幅広い製品・サービスを提供し、持続可能な社会の実現に貢献しております。2023年度においては、一般産業分野では、工場の生産設備やユーティリティー設備の更新工事、公共事業の空港・水道案件が順調に進捗し、空調設備分野では、情報通信関連、半導体工場関連、医療・バイオ理化学向け等の特殊空調工事や大口空調機納入案件が順調に進捗し、産業機器分野においては、主要セットメーカーの生産調整はあったものの製造業の生産にかかわる設備投資、及び首都圏を中心とした再開発案件の増加により、売上高は増加いたしました

交通事業では、鉄道の安全・安定輸送、サービスを支える車両や設備等を提供しており、鉄道に精通した当社エンジニアがプレエンジニアリングから設計・製作・施工・試運転・保守サービスまで一貫して取組んでおります。また、環境・省エネ・高効率化に優れた製品・ソリューションを提供し、お客様のニーズや課題解決に対応するとともに、地球環境保全と持続可能な社会の実現に貢献しております。2023年度においては、鉄道業界では、行動制限が緩和され訪日外国人等の観光需要による鉄道利用者の増加に伴い、停滞していた老朽設備の更新や、新たなスマート保安などの設備投資が再開されております。車両分野においては新型特急車両や制御装置、保安装置等の大型電気品、変電分野では長期に稼働した設備の更新、信号・情報分野では運行管理システム改修や運行情報表示装置用部材更新、機械・設備分野では分岐装置などの機械設備更新工事等が順調に推移しましたが、工事案件の作業進捗に伴う売上高は減少いたしました。

2024年度におきましては、円安に伴うインフレ懸念はあるものの、好調な企業収益のもと設備投資が堅調に推移し、また、賃金の上昇による個人消費の回復や訪日観光客の増加など、国内景気は回復すると考えられます。このような経営環境のもと、以下「(5) 会社の対処すべき課題」で掲げる項目を当面の基本戦略とし、収益基盤を拡大し、企業価値の向上とエンジニアリング会社として更なる進化を目指してまいります。

また、当社グループの経営上の目標の達成状況を判断するための重要な指標は連結経常利益であり、2024年度の目標値は43億円であります。今後も収益力の強化と事業領域の拡大により企業価値の向上を目指してまいります。

(目標数値は有価証券報告書提出日現在において予測できる事情等を基礎とした合理的な判断に基づくものであり、その達成を保証するものではありません。)

 

(4)中長期的な会社の経営戦略

2023年度は、2009年6月の上場以来最高益を更新し、また、2024年度を終了年度とする中期経営計画(2020年度~2024年度)の目標値を前倒しで達成したため、計画期間を2023年度で終了しました。

当社グループは、八洲電機グループのブランドである「電機制御システム」「電源システム」「空調システム」の3つのコア技術をさらに進化させ、お客様の経営課題を解決することで持続的な成長につなげるため、新たな「80/26中期経営計画(2024年度~2026年度)」を策定し、2026年度(最終年度)目標値「連結売上高700億円、連結経常利益50億円、経常利益率7.1%」の達成に向けて取組んでまいります

 

(5)会社の対処すべき課題

2023年度は、3つのコア技術を活かしたソリューションエンジニアリング力を強化することにより付加価値の増大及び事業規模の拡大を図りました。また、ウェルビーイング経営を推進し、従業員のエンゲージメント向上に取組み、生産性向上と企業の業績向上を図ってまいりました。その結果、2009年6月の上場以来最高益を更新し、また、2024年度を終了年度とする中期経営計画(2020年度~2024年度)の目標値を前倒しで達成したため、計画期間を2023年度で終了しました。

2024年度は、円安に伴うインフレ懸念はあるものの、好調な企業収益のもと設備投資が堅調に推移し、また、賃金の上昇による個人消費の回復や訪日観光客の増加など、国内景気は回復すると考えられます。

そのような状況下、八洲電機グループのブランドである「電機制御システム」「電源システム」「空調システム」の3つのコア技術をさらに進化させ、お客様の経営課題を解決することで持続的な成長につなげるため、新たな「80/26中期経営計画(2024年度~2026年度)」を策定し、2026年度(最終年度)目標値「連結売上高700億円、連結経常利益50億円、経常利益率7.1%」の達成に向け、次の4点に取り組んでまいります。

 

1.事業系戦略

・社会インフラに携わるお客様の経営課題を的確に捉え、エンジニアリングとグループ連携によって解決し、「収益の拡大」「事業規模の拡大」を図るとともに、グループ会社全体で一致協力し、「保守ビジネス」等の新規事業を創出し、八洲電機グループの事業領域を拡大します。

2.管理系イノベーション戦略

・未来志向で、社内管理部門の統合・再編による業務改革と効率化を推進します。

・適材適所を実現する人事考課制度に改定します。

・事業成長の原動力とすべく処遇制度の改定及び処遇を改善します。

3.社内DX戦略

・基幹システムを最新のシステムに切り替えることにより、機動性ある業務へ脱却を図ります。

・基本業務の見直しに伴い、新しい業務方法を検討し業務効率を改善し省力化を図ります。

4.コンプライアンス及びCSR活動の推進

・八洲電機グループが一体となりコンプライアンスの徹底を図ります

・サステナビリティ経営に取組み、事業活動を通じた社会貢献を果たし、高い倫理観と責任感を持ち、持続可能な社会の構築に向けた活動を推進します。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組の状況は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1)ガバナンス

当社グループは、ISO14001に基づいた環境マネジメントシステムを構築し、グループ全社員参加の環境活動を展開しております。当社代表取締役社長は、サステナビリティに関する方針を掲げ、年1回のマネジメントレビューで環境マネジメントシステムの有効性を評価し、当社グループの環境課題に関する実行計画の承認、モニタリング、課題の設定を行い、経営トップコミットメントによるサステナビリティ経営を推進しております。

 

また、サステナビリティに関する基本方針は、以下のとおりです。

<サステナビリティ方針>

当社グループは、経営理念、経営ビジョンに基づき、社会課題の解決に取組み、持続可能な社会の実現に向けて、サステナビリティ経営を推進します。

1.環境に配慮した事業推進

私たちは、カーボンニュートラル社会の実現に向けて、環境保全に優れた製品、システム及びサービスを提供し、お客様とともに地球環境の保全に貢献していきます。

2.環境問題への取組み

私たちは、省エネルギー化、資源リサイクルの向上等を推進し、自らの活動によって生じる環境負荷の低減に取組みます。

3.個人の尊重

私たちは、個人の権利、多様な価値観を尊重し、不当な差別を排除します。さらに、ウェルビーイング経営に取組み、エンゲージメントを高めることで生産性向上と業績の向上を目指します。

4.ガバナンスの強化

私たちは、法令及び社会的な規範を含む企業倫理を遵守し、コーポレートガバナンスの強化に取組み、当社グループの持続的な成長と長期的な企業価値向上を図ります。

5.情報公開の推進

私たちは、ステークホルダーに対して情報公開及びコミュニケーションを積極的に行い、説明責任を果たすとともに社会との共生に努めます。

6.目標の設定

私たちは、本方針を実現するために目標を定め、継続的な改善を図り目標の達成を目指します。

 

(2)戦略

現時点では、気候関連シナリオに基づく戦略の検証等を実施しておりません。

 

(3)リスク管理

当社グループは、全社的なリスク管理推進にかかわる課題・対応策を協議する組織としてリスク管理委員会を設置しております。委員会構成メンバーは、当社代表取締役社長を委員長とし、関係部門責任者、社外取締役及び主要グループ会社社長で構成されています。

リスク管理委員会において、事業における影響評価の結果などを総合判定し、全社的なリスク管理推進にかかわる課題・対応策の承認を行い、連結ベースでの評価・モニタリング体制を構築しております。

 

 

(4)指標及び目標

当社グループは、気候変動関連のリスク及び機会を管理するための指標については、TCFDで推奨される温室効果ガス(GHG)排出量とします。GHG排出量の目標設定については、現状のGHG排出量の状況を分析しGHG排出量削減内容の検討を行い、2025年度以降に削減目標の策定を行います。

 

(5)人的資本に関する戦略、指標・目標

①戦略

当社グループの事業は、お客さまと取引先に対して付加価値を提供することで成立しており、その付加価値はすべて当社で働く人財に由来しております。人財の育成は当社の持続的成長に不可欠であるとの認識の下、以下の方針を策定して能力開発に関するプログラムを運用するとともに、社内環境を整備します。

1.当社人財に求められるスキルを整理し、職種別・階層別にプロットしたマトリックスをもとに、研修プログラムを確定し、実行する。その運用は、人財委員会において監督する。

2.多様性の確保については、まず女性の採用・登用を先行して進め、豊かな発想に基づいて事業を発展させるとともに、中途及びシニア採用を通じて多様な技能・経験を確保しその伝承に努める。

3.社員はその従事する業務のプロフェッショナルであるから、労働時間と場所についてはその自主性を重んじる「柔軟な働き方」を原則とし、関係する制度及び環境を整備する。

②指標・目標

当社グループは、異なる経験・技能・属性を反映した多様な視点や価値観が存在することが持続的な成長を確保する上での強みになると考え、性別・国籍・年齢等を問わず、従業員の誰もがそれぞれの能力を活かせるようなダイバーシティを常に意識し、多彩な人財活用への取組みを促進します。

なかでも女性の登用に関しては、女性活躍行動推進5か年計画を策定し、「採用者数を男女均等にすること」「女性管理職を倍増すること」「柔軟な働き方を可能にする制度を充実しその利用者数を向上すること」を目標として掲げています。その状況については、当社ホームページに掲載しております。

女性活躍推進の取組み:(URL:https://www.yashimadenki.co.jp/sustainability/employee/)

女性管理職の育成方針としては、社内ロールモデルからのフィードバックをもとに能力・キャリア開発のための適切な機会を提供するとともに、相互研鑽のためのネットワークミーティングを定期的に開催し、意識向上・啓発を図っております。

社内環境を整備するために、特に女性のライフイベントを念頭に、柔軟な働き方を可能にする制度を導入しております。具体的には、コアタイムのないフレックス勤務制度、通勤を不要とする在宅勤務制度、サテライトオフィスを全社員に導入し、ワークライフバランスを実現しやすくするとともに、業務に集中し生産性の向上を図ることとしております。また、育児休業を早期に繰り上げた女性社員への育児休業早期繰上げ支援金制度、育児や介護によって退職せざるをえない社員を再雇用するジョブリターン制度により、女性社員のキャリア継続、復職を支援しております。

なお当社グループの事業は、顧客及び仕入先・協力会社ともに主として国内の企業であることから、外国人採用については具体的な数値目標を設定しておりません。また中途採用についても、技術系専門商社の業態に適応した中途採用人財の市場が必ずしも確立していないことから、具体的な数値目標を定めず、リファーラル採用などを中心に鋭意進めることとしております。

 

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)㈱日立製作所及び㈱日立製作所の関係会社(以下 日立グループ会社)との関係について

①特約店契約について

当社グループは、日立グループ会社と特約店契約を締結しております。同契約は、当社グループの事業活動の前提となっておりますが、それら契約の主な契約期間及び解除事由は個々の契約により異なり、その解除事由の基本的な規定事項としては、手形の不渡り・差押え・仮差押え・仮処分・競売・破産・民事再生・会社更生・債務不履行・監督官庁からの営業許可の取消処分等に該当する場合となっております。現時点では解除事由を含めてそれらの契約の継続に支障を来す要因は発生しておりません。

しかしながら、それらの契約の継続に支障を来す要因が発生した場合には事業活動に重大な影響を及ぼす可能性があります。

当社と㈱日立製作所は1950年3月に特約店契約を締結して以降、日立グループ会社の増加や統合とともに当社グループも日立グループ会社と特約店契約を締結し、その業容を拡大してきました。

特約店契約は、相互に業務の発展を図ることを目的としており、当社は当該契約を締結している日立グループ製品の販路拡充に最善の努力をなすことが謳われております。また、当該契約書では当社グループの主な取扱製品、主に担当する販売地域及び支払条件等が記載されております。

現在、当社グループが特約店契約を締結している日立グループ会社とは良好な関係にあるものと認識しており、共存共栄の間柄ではありますが、当社グループと日立グループ会社との関係に変化が生じた場合、あるいは日立グループ会社の特約店戦略や特約店各社に対する諸条件もしくは当社グループに対する戦略が変更された場合等には、上記特約店契約の内容等に変更の可能性があり、その場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

②仕入依存度について

当社グループの㈱日立製作所及び主な日立グループ会社からの仕入高は第79期連結会計年度(自 2022年4月1日 至 2023年3月31日)において286億52百万円と当社グループ仕入高全体の59.3%、第80期連結会計年度(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)において294億91百万円と当社グループ仕入高全体の55.6%を占めております。

したがって、日立グループ会社の製品に重要な問題が発生した場合等、日立グループ会社のブランドイメージが著しく低下した場合には、当社グループが取扱っている日立グループ会社の製品の競争力が低下し、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

なお、仕入実績は下記のとおりです。

仕入先

第79期連結会計年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

第80期連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

金額
(百万円)

割合
(%)

金額
(百万円)

割合
(%)

㈱日立製作所

11,848

24.5

11,527

21.7

主な日立グループ会社

16,804

34.8

17,963

33.9

上記合計

28,652

59.3

29,491

55.6

連結仕入高

48,352

100.0

53,055

100.0

 

(注) 上記表の「主な日立グループ会社」の金額は、日立グループ会社のうち、特に取引金額の大きい仕入先の仕入金額を合計したものであります。

 

③売上高の純額表示について

当社グループは、包括代理受注契約(請負者の代理人として契約する取引)等を締結しており、当該契約に基づく取引については、売上高を純額表示しております。

当社グループは商社という事業形態であり、基本的には総額表示で売上高及び売上原価を計上しておりますが、取引内容を鑑み、包括代理受注契約等に基づく取引とそれに類似した取引については純額表示としております。

したがって、今後の取引内容の見直しや契約の変更等の理由により、前期と比較する場合の経営成績(受注高及び売上高)に影響を及ぼす可能性があります。

④当社グループへの出資について

当社グループは、販売力強化、顧客サービスの向上等を目的とした日立グループ会社との関係強化のため、当社は日立グローバルライフソリューションズ㈱から2.3%、㈱日立産機システムから1.9%、㈱日立インダストリアルプロダクツから0.5%、当社の連結子会社である㈱中国パワーシステムは㈱日立製作所から33.3%の出資を受けております。

したがって、日立グループ会社からの出資割合に変更があった場合には、当社のグループ戦略等を見直す必要性が生じ、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)当社グループの経営戦略について

当社グループは従来、日立グループ会社の特約店として同グループ製品を中心に据えた営業政策を取り、順次販売力を強化してまいりました。しかしながら、今日のような経営環境においては、市場環境、経済状況、市場ニーズ等をいち早く察知し、対応を図らなくてはなりませんが、多様な情報入手には限界があり、それによって時期を逸するなどの対策の遅れから、停滞在庫の発生による不良資産の増加や、製品投入遅れによる受注機会の逸失等、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

また、近年は主に環境問題、省エネルギー、高効率化などを追求する顧客ニーズが急速に多様化し、それに対応するためエンジニアリング力の強化及び、より付加価値の高い当社独自のソリューションビジネスへの期待が高まっております。しかしながら、このようなソリューションビジネスではメーカーの製品が持つ機能に当社のノウハウを付加するビジネスの割合が増えることを意味するもので、当然、品質管理に関して負う責任の重要性も拡大してまいります。この場合、当社は製造部門を持たないことから日立グループ会社及びその他の外注メーカーとの連携が必要となります。

その際、製品・サービスに関する契約を明確に致しますが、事故・クレーム等の原因について責任が明確になるまで、当社グループが顧客に提供する製品・技術・サービスについては一義的に責任を負うことがあり、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

さらに、当社グループは、今後も新たな成長事業の創出及び既存事業における更なる高収益の追求を目指し、利益を生み出すことのできる体質への改善に積極的に取組んで行きます。しかし当社グループが事業を遂行する上において、経済環境、自然災害、戦争、テロ、感染症等の不可抗力、金融、株式市場、政府等による規制、仕入先の供給体制、商品の確保、また人材の確保、喪失等により当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)外部環境が業績に及ぼす影響について

当社グループは、鉄鋼、非鉄金属、石油、化学、精密機械、製紙、薬品、建設、運輸、公共、流通、サービス業を営む一般企業や官公庁に対して電気機器、電子情報機器、産業用設備、空調関連機器等の販売及び設置工事等を行っております。これらの事業は、国内設備投資の動向に影響を受ける傾向があります。

したがって、国内設備投資動向が悪化した場合及び当社グループの主要販売先が属する事業分野の市況が悪化した場合等には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)法的規制について

当社グループは、広範囲の事業展開を行っているため種々の法的規制(建設業法、輸出管理法令等)を受けております。これら法的規制は将来において変更される可能性があり、また現在予期しえない法的規制等が設けられる可能性もあります。

その場合たとえば、建設業法においては当社グループの工事売上高に影響し、技術資格においては、資格保有者の確保が確実となるまで受注機会を逸する可能性が発生します。また、輸出管理法令に関しては、現在、直接輸出物件は少ないものの、全ての取引において輸出管理法令等に抵触しないことと、手続きを漏れなく厳正に行われなければ、刑事上、行政上の処分を受ける可能性があります。

したがって、当社グループがこれらの法的規制等の対応に遅れを生じた場合、対象となる営業の全部又は一部の停止命令や許可取消等の行政処分あるいは当社グループ顧客等からの信頼の失墜等により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5)有価証券の保有状況について

当社グループは、販売・仕入に係る取引先及び取引金融機関の株式を中心に、有価証券を保有しております。このうち、株式の多くは上場しており、株式市場の価格変動リスクを負っております。

したがって、株式市場における相場の大幅な変動は、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

なお、有価証券に係る時価に関する情報は、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(有価証券関係)」に記載しております。

 

(6)退職給付債務について

当社グループは、確定拠出の性格を併せもつ確定給付企業年金制度(キャッシュバランス制度)に移行し、将来期間の業績及び財政状態へのリスク軽減を図っております。しかし、従業員退職給付債務及び費用は、割引率等数理計算で設定される前提条件や年金資産の期待運用収益率等に基づいて算定されており、実際の結果が前提条件と異なる場合又は変更された場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

なお、退職給付に関する情報は、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(退職給付関係)」に記載しております。

 

(7)債権管理について

当社グループの販売先は多岐にわたり、その規模や業種も多種多様であります。債権管理には特に注力し、販売先の業態・資力に応じた信用限度設定を行うとともに、必要に応じて担保等の提供を受けるほか、信用状態の継続的な把握をするなど、不良債権の発生防止に努めております。

また、貸倒引当金の計上に関しては、一般債権については貸倒実績率による計算額を、貸倒懸念債権等特定の債権については、個別に回収可能性を検討し回収不能見込額を計上しておりますが、景気の動向等によっては、貸倒引当金の積み増しを要する事態が生じ、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(8)物流の外部委託について

当社グループの物流はロジスティード㈱をはじめとする外部の専門企業に全面委託しております。当社の商品を取扱う拠点は国内にあり、拠点毎に保管条件や配送条件等は異なっております。

したがって、委託先企業はそれぞれの条件に応じて、複数存在しますが、その取引条件の変更や、事故等によるトラブル発生の場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(9)情報セキュリティについて

当社グループは、事業を行うにあたり取引先や営業に関する情報、又は当社グループや取引先の技術情報等当社グループの事業に関して多くの秘密情報を保有しており、当社グループではコンピューターウイルス対策及びネットワーク管理等の情報保護に関する社内細則を定め、入退館システムの導入、情報管理に関する社内教育の徹底及び外部委託先との機密保持契約の締結を行い、当社グループからの情報漏洩を未然に防ぐ対策を講じております。このような対策にもかかわらず、予期せぬ事態により情報が流出した場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10)自然災害について

地震等の自然災害により当社グループの事業所・設備や社員などに対する被害が発生し、営業活動に支障が生じる可能性があります。

なお、当社グループでは社員の安否確認や災害対策マニュアルの作成及び防災訓練などの対策を講じてきておりますが、自然災害による被害を完全に回避できるものではなく、被害が発生した場合には当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

(1) 経営成績

当連結会計年度におけるわが国経済は、物価高により個人消費の回復は鈍いものの、雇用・所得環境が改善し、デジタル化・脱炭素化の潮流により企業の設備投資は増加傾向にあり、景気は緩やかに回復しております。その一方で、世界的なインフレや金融引き締め懸念による景気の停滞感が強まり、また、国際情勢の地政学リスクの高まりが続くなど、依然として景気回復への懸念が残る状況にあります。

そのような状況下、当社グループでは、エンジニアリング会社としてのさらなる進化を目指し、当社グループのブランドである「電機制御システム」「電源システム」「空調システム」の3つのコア技術を活かしたソリューションエンジニアリング力の強化により、付加価値の増大と収益基盤の拡大を図ってまいりました。当社グループのエンジニアリング力で顧客のグリーン化(GX)投資、デジタル化(DX)投資、事業変革投資を取込み、社会課題や顧客の経営課題を解決し、持続可能な社会の実現を図るなかで、事業規模の拡大を推進しております。さらに、ウェルビーイング経営(健康経営等)に取組み、従業員のエンゲージメント向上を図り、「働きやすい、働き甲斐のある企業」を目指し、生産性の向上と業績向上を図っております。

当連結会計年度におきましては、老朽設備の更新や設備の維持・保全案件に加え、付加価値の高いエンジニアリング案件で、顧客の戦略投資案件を獲得するなど、これまで推し進めてきた成長戦略の各種施策や事業構造改革、収益力の強化が着実に成果を上げた結果、売上高648億62百万円(前年比7.6%増)営業利益は38億94百万円(前年比39.3%増)、経常利益は40億19百万円(前年比37.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は26億57百万円(前年比38.7%増)と、各段階利益はいずれも大幅な増益となり、2009年6月の上場以来最高益となりました

 

セグメントの業績は次のとおりであります。

①プラント事業

鉄鋼・非鉄分野では、好調な銅・ステンレス業界を中心に、新工場向けの特高受変電設備新設工事や、生産設備の信頼性向上を目的とした老朽化対策としてそれらに関連する付帯設備や電気設備工事が順調に進捗し、売上高は好調に推移しました。石油・化学・ガス分野では、長期に稼働した自家発電設備及び付帯設備の老朽化対策として大型更新工事等が順調に進捗し、売上高は堅調に推移しました

その結果、プラント事業の売上高は193億59百万円(前年比23.7%増)、営業利益は29億1百万円(前年比58.5%増)となりました。

②産業・設備事業

コロナ禍で先送りされていた老朽設備の維持・更新工事が再開されているなか、一般産業分野では、工場の生産設備やユーティリティ設備の更新工事、公共事業の空港・水道案件が順調に進捗し、売上高は堅調に推移しました。空調設備分野では、情報通信関連、半導体工場関連、医療・バイオ理化学向け等の特殊空調工事や大口空調機納入案件が順調に進捗したことにより、売上高は堅調に推移しました。産業機器分野においては、主要セットメーカーの生産調整はあったものの製造業の生産にかかわる設備投資、及び首都圏を中心とした再開発案件の増加により、売上高は堅調に推移しました。

その結果、産業・設備事業の売上高は330億36百万円(前年比6.1%増)営業利益は27億7百万円(前年比35.7%増)となりました。

③交通事業

鉄道業界では、行動制限が緩和され訪日外国人等の観光需要による鉄道利用者の増加に伴い、停滞していた老朽設備の更新や、新たなスマート保安などの設備投資が再開されております。車両分野においては新型特急車両や制御装置、保安装置等の大型電気品、変電分野では長期に稼働した設備の更新、信号・情報分野では運行管理システム改修や運行情報表示装置用部材更新、機械・設備分野では分岐装置などの機械設備更新工事等が順調に推移しましたが、工事案件の作業進捗に伴う売上高が減少しました。

その結果、交通事業の売上高は124億66百万円(前年比7.5%減)、営業利益は8億15百万円(前年比26.2%減)となりました。

 

 

生産、受注及び販売の実績は、次のとおりであります。

① 仕入実績

当連結会計年度における仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

仕入高(百万円)

前年比(%)

プラント事業

15,418

+37.5

産業・設備事業

26,709

+4.2

交通事業

10,928

△5.1

合計

53,055

+9.7

 

(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。

2 上記の金額には、工事に伴う材料費等を含んでおります。

 

② 受注実績

当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前年比(%)

受注残高(百万円)

前年比(%)

プラント事業

22,275

+12.1

21,371

+15.8

産業・設備事業

36,464

+8.1

20,923

+19.6

交通事業

13,964

△0.2

17,017

+9.7

合計

72,704

+7.6

59,311

+15.2

 

(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。

 

③ 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(百万円)

前年比(%)

プラント事業

19,359

+23.7

産業・設備事業

33,036

+6.1

交通事業

12,466

△7.5

合計

64,862

+7.6

 

(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。

  

(2) 財政状態

(資産)

当連結会計年度末における資産の残高は604億30百万円で、前連結会計年度末に比べ16億91百万円増加しております。主な要因は、現金及び預金(120億67百万円から130億62百万円へ9億94百万円増)、電子記録債権(37億87百万円から66億89百万円へ29億1百万円増)、商品(20億4百万円から29億52百万円へ9億47百万円増)が増加した一方、受取手形、売掛金及び契約資産(239億68百万円から216億20百万円へ23億47百万円減)、その他の流動資産(10億60百万円から7億77百万円へ2億83百万円減)が減少したことによるものであります。

(負債)

当連結会計年度末における負債の残高は329億31百万円で、前連結会計年度末に比べ14億14百万円減少しております。主な要因は、短期借入金(10億40百万円から7億90百万円へ2億50百万円減)、支払手形及び買掛金(235億92百万円から229億88百万円へ6億3百万円減)、契約負債(31億94百万円から20億29百万円へ11億64百万円減)、退職給付に係る負債(12億15百万円から97百万円へ11億18百万円減)が減少したことによるものであります。

(純資産)

当連結会計年度末における純資産の残高は274億98百万円で、前連結会計年度末に比べ31億6百万円増加しております。主な要因は、利益剰余金(221億80百万円から243億8百万円へ21億27百万円増)、退職給付に係る調整累計額(△4億52百万円から-百万円へ4億52百万円増)が増加したことによるものであります。

 

 

(3) キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度のキャッシュ・フローについては、営業活動により8億9百万円増加、投資活動により8億48百万円増加、財務活動により8億48百万円減少しました。その結果、現金及び現金同等物は121億42百万円と前連結会計年度と比較して8億9百万円(前年比7.1%増)の増加となりました。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローの収入は、8億9百万円(前年比72.2%減)となりました。

これは主に、税金等調整前当期純利益38億58百万円がキャッシュ・フローのプラスとなった一方、売上債権の増加額18億37百万円、法人税等の支払額10億18百万円がキャッシュ・フローのマイナスとなったためであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローの収入は、8億48百万円(前年度は14億87百万円の支出)となりました。

これは主に、投資有価証券の償還による収入10億円がキャッシュ・フローのプラスとなった一方、有形固定資産の取得による支出1億78百万円がキャッシュ・フローのマイナスとなったためであります。

 (財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローの支出は、8億48百万円(前年度は6億63百万円の支出)となりました。

これは主に、短期借入金純増減額2億50百万円、配当金の支払額5億28百万円がキャッシュ・フローのマイナスとなったためであります。

 

(4) 資本の財源及び資金の流動性についての分析

当社グループは、運転資金及び設備投資資金につきましては、内部資金または借入により資金調達することとしております。

このうち、借入による資金調達に関しましては、運転資金については期限が1年以内の短期借入金で、銀行等からの借入金によるものであります。

また、キャッシュマネジメントシステムを活用したグループファイナンスを行うことにより、グループ会社全体での資金の効率化に努め、資金管理体制の更なる強化を図っております。

当社グループは、引き続き財務の健全性を保ち、継続的に営業活動によるキャッシュ・フローを生み出すことによって、将来必要な運転資金及び設備投資資金を調達することが可能と考えております。

 

(5) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表作成にあたって、必要と思われる見積りは、合理的と判断される前提に基づいて実施しておりますが、実際の結果がこれらの見積りと異なる場合があります。

連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

(6) 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは、重要な経営指標を連結経常利益としております。2024年3月期は40億19百万円(前年比37.2%増)となりました。2024年4月より、引続きプラント事業、産業・設備事業、交通事業の3つのビジネスユニットそれぞれで事業領域の拡大を推進するとともに、2027年3月期を最終年度とした中期経営計画の目標達成に向けて、2025年3月期の目標値は連結経常利益43億円としております。

 

5 【経営上の重要な契約等】

(1)販売等の提携は次のとおりであります。

契約会社名

相手先の名称

契約の種類及び
主要取扱製品

契約期間

八洲電機㈱
(当社)

㈱日立製作所

グループ特約店契約書

 受変電設備、鉄道車両、

 情報機器、圧縮機

 ポンプ、送風機、防雷システム

2021年7月1日から1年

㈱日立産機システム
 圧縮機、配電機器、
 モーター・インバーター

日立グローバルライフソリューションズ㈱
 空調、冷凍、冷蔵機器、
 ランプ、照明器具

㈱日立ビルシステム
 昇降機

㈱日立インダストリアルプロダクツ
 モーター・インバーター

㈱日立情報通信エンジニアリング
 IPテレフォニー製品

㈱日立産業制御ソリューションズ
 監視・制御システム

㈱日立パワーソリューションズ
 監視・制御システム

2022年7月1日から1年

八洲産機システム㈱

(連結子会社)

㈱日立製作所

グループ特約店契約書
 受変電設備、鉄道車両

2021年7月1日から1年

㈱日立産機システム
 圧縮機、配電機器、

 監視・制御システム

㈱中国パワーシステム
(連結子会社)

㈱日立製作所

グループ特約店契約書

 発電・変電機器、情報機器

2021年7月1日から1年

㈱日立インダストリアルプロダクツ
 モーター・インバーター

2021年7月1日から1年

三菱重工業㈱

業務委託契約

 発電機器

2023年5月1日から1年

日立三菱水力㈱

代理店基本契約
 水力発電システムに係る製品

2011年10月1日から1年

 

 (注)1 契約期間は再契約のものを含めて最新の契約書に基づく契約期間を表示しております。また、上記すべての契約は、自動更新となっております。

2 上記契約の解除事由は個々の契約により異なりますが、概ねその基本的な規定事項としては、手形の不渡り・差押え・仮差押え・仮処分・競売・破産・民事再生・会社更生・債務不履行・監督官庁からの営業許可の取消処分等に該当する場合となっております。

 

6 【研究開発活動】

該当事項はありません。