文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針・経営戦略等
当社グループは、「企業理念」並びに「経営理念」の下、水産物販売事業を中核とし、冷蔵倉庫等事業など食料品に関する多様な事業を営んでおります。
水産物販売事業では、卸売市場法に基づき、京阪神地区を中心とした卸売市場において水産物卸売会社として、集荷・分荷・価格形成等を公正かつ透明性をもって行い、生鮮食料品等を安定して供給する食品流通の核としての役割を担っております。
当社グループの属する水産流通業界は、海洋環境や気候変動等の影響により水産物の漁獲状況が増減するなど様々な要因が業績に影響しております。また消費者のライフスタイルの変化とともに水産物に求められるものが変わってきております。
こうした環境下で、国内の水産物消費は減少傾向が続いていますが、海外での需要は高まっています。
当社グループは、こうした水産物の調達面と流通面の変化を捉えて、水産物流通の核としての役割は堅持しつつ、様々な環境の変化を予測し、スピードをもって対処することで、新たな需要の開拓や付加価値の向上に努めてまいります。
『企業理念』
大水グループは、自然の恵みに感謝し、古(いにしえ)からの食文化を守り、新たな食の創造に挑戦していきます
<企業理念に込めた思い>
水産資源の持続的利用と地球環境の保全につながる思い
⇒「自然の恵みに感謝する」
歴史ある日本の食文化の伝統や卸売市場の役割を支えていきたい思い
⇒「古(いにしえ)からの食文化を守る」
様々な環境変化を先取りし、食を通じて人々の健康と幸福に貢献したい思い
⇒「新たな食の創造に挑戦する」
『経営理念』
①水産物流通の担い手として誇りを持ち、人々の健康と幸福に貢献します。
②企業も社員も常に質の向上を目指し、変革を推進していきます。
③社員全員が働きがいの持てる企業を創っていきます。
④企業として顧客、仕入先、株主など関係者からの期待に応え、社会的信頼を高めます。
⑤関西を基盤に世界を視野に入れた活動をしていきます。
(2)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループでは、成長性と収益性を確保するという観点から、企業収益の基本的な指標となる「売上高」、「営業利益」及び「経常利益」を重要な指標として位置づけております。
なお、当社グループが目指す2025年度の数値目標は、「(3) 経営環境及び優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」に記載のとおりであります。
(3)経営環境及び優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループの中心となる水産物卸売業を取り巻く環境は、大変厳しい状況が続いております。水産物流通の多様化により卸売市場を経由した取扱量が減少しているほか、海洋環境の変化などから天然魚の漁獲が不安定になっております。また、消費者ニーズの変化により水産物消費の減少傾向が続いております。
一方、健康志向の高まりや魚のおいしさが見直されつつあるなど、水産物に対する潜在需要は存在します。また世界での水産物の生産量は中長期的には増加傾向にあり、水産業は成長産業と認識しております。
水産資源の持続的な利用と水産業界の健全な発展に資するため、水産流通適正化法が2022年12月から施行されています。アワビ、ナマコの漁獲者の情報が小売まで伝達されるようになり、今後は太平洋クロマグロにも対象が拡大される予定です。当社は水産流通企業として、上記法令に適切に対応していきます。また、今年4月から始まった「物流の2024年問題」によって、貨物の輸送能力不足や物流コストの上昇が今後懸念されます。当社グループは、生産者及び運送事業者と連携を取ることで、物流問題解消に向けて適切に対処していきます。
当社グループは、水産物卸売業を取り巻く様々な環境の変化に対応し、生産者と生活者の求めるものを最適につなぐ水産物を中心とした卸売企業として永続的な活動をすべく、<2030年度のあるべき姿>を描きました。その姿に到達するために、まず2023年度から2025年度に実行すべきテーマを定め、3カ年を対象とした<中期経営計画>を策定しております。
<2030年度のあるべき姿>
『活き活きと水産物の価値をお客様に提供し続ける企業』
これは、卸売市場の強みを発揮し、水産物卸として様々なお客様の要望に応え、水産物の価値をお届けしていること、また従業員一人一人が挑戦的・主体的に活き活きと仕事に取り組んでいる状態を表しています。
<中期経営計画>
2030年度のあるべき姿を基に、実現のための4つのポイントと2025年度の数値目標を定め取り組んできました。その結果、2023年度は営業利益及び経常利益については、2025年度の目標を上回ることができました。引き続き、4つのポイントへの取り組み推進を図り、売上高及び安定的な利益確保に努めていきます。
ポイント
①関西で確固たる基盤を有し世界の水産市場をターゲットに販売していく
・社内組織の連携を図り、顧客視点で原料(産地)、加工、顧客を最適につなぐ仕組みを多くつくる
・海外販売取引の拡充を図る
②収益力を高めて、質の向上を図る
・生産性を高めローコストで運営できる業務体制(業務変革と個人の能力の向上)にする
③より挑戦的・主体的に取り組む組織風土のもと、より働き甲斐のある企業を目指す
・新しい人事賃金制度の運用と定着を行う
④ステークホルダーから信頼される企業を目指す
・コンプライアンス・ガバナンス体制の強化を継続する
・環境や安全・安心への取り組みを行い、広報・社会貢献活動を充実させる
2025年度 数値目標(連結ベース)
売上高 1,040億円
営業利益 690百万円
経常利益 790百万円
※業績予想ならびに将来予想は、現時点で入手可能な情報に基づき作成されています。様々な不確実性、潜在リスク、自然環境変化等の要因の変化により、予想とは大きく乖離する可能性を含んでいます。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)サステナビリティ全般に関するガバナンス及びリスク管理
①ガバナンス
当社グループは、企業としての中長期的な持続可能性を高めるため、収益を追求し継続的な成長を目指しております。また、保有資産の毀損の回避、不正・腐敗の防止、サイバーセキュリティ・データセキュリティ対策を図るなどのリスク管理にも努めております。くわえて、社会の公器としての環境保全、法令遵守、雇用創出・人材の多様性の確保といった社会価値の向上にも取り組んでおります。
当社グループの企業理念は、「大水グループは、自然の恵みに感謝し、古(いにしえ)からの食文化を守り、新たな食の創造に挑戦していきます」であります。このうち、「自然の恵みに感謝する」は、水産資源の持続的利用と地球環境の保全への思いであります。当社グループが水産物の適正な集荷・価格形成を行うことは、漁業者、養殖業者、流通業者といった水産流通の関係者の継続的な活動に寄与することとなります。適切に管理された水産資源は持続可能な特性を持っております。そのため、当社グループの事業活動は、環境保全と持続的消費活動の両立に資するものと考えております。
当社は、これらのサステナビリティに関するリスク及び機会を監視・管理するため、取締役会の下に社長を議長とし執行役員で構成するリスクマネジメント会議を設置しております。同会議の下部にある、各委員会(内部統制委員会、コンプライアンス委員会、債権管理委員会、情報セキュリティ委員会、安全衛生委員会、品質管理委員会)で具体的なリスク対応策の立案等に取り組んでおります。当社のガバナンスに関する詳細は、
②リスク管理
当社グループでは、サステナビリティに関するリスク及び機会を識別・評価・管理するため、リスクマネジメント会議において審議、評価しております。各連結会計年度においてリスクマネジメント運営プログラムを決定し、課題解決やリスク回避の策を講じております。同会議は四半期に1回開催しており、運営状況は取締役会にも報告しております。グループ会社についても当社に準じた手続きを実施しており、その運営状況は年に2回、各社の取締役会にて報告され、当社から派遣した取締役および監査役同席のもと、取組内容の評価を行っております。
当社は、具体的なリスク及び機会に対する課題は、リスクマネジメント会議の下部にある各委員会で課題解決に取り組んでおります。各委員会では責任担当役員を設け、役割及び責任を明確にしております。サステナビリティに関する項目に応じた委員会が主体となることで、実効性を上げていく体制を構築しております。なお、主な課題については、
(2)人的資本に関する戦略並びに指標及び目標
当社グループは上述のとおりの企業理念を掲げ、水産物販売事業を中心とし、新たな商品開発や販売戦略に取り組んでおります。グループ全体の事業活動活性化のためには、継続的な人材確保と人材力の向上及び多様な人材の活用が必要となります。これらを実現するために、人事賃金制度、職場環境の整備及びその運用を推進しております。
なお、当社グループのうち、当社以外は事業規模が小規模で従業員数が少ないため、当社と同レベルの管理・取組を行っていないことから、提出会社単体の記載としております。
①戦略
a.人材確保とキャリア開発
当社では、中長期的な人員構成シミュレーションに基づき、毎年適正な人員数の新卒及びキャリア採用を行い、継続した人材の確保と育成に注力しております。2022年度に人事賃金制度を刷新し、役職・資格等級の再整備および教育研修制度を体系化しました。昇格時には選抜試験を実施し、財務知識、パソコンやプレゼンテーションスキルなど、業務上必要な知識・技能の習得を昇格要件としております。また、従業員が自己啓発に取り組めるよう、支援策としてのeラーニング教育の充実化も行っております。今後も継続的な人材確保と体系的・段階的な教育研修の実施により、多様なマーケットに対応できる人材育成を目指してまいります。
b.多様な人材の活用
当社では以下のとおり年齢、人種、性別などに関わらず能力重視の人材活用を推進しております。
定年後の再雇用制度を拡充し、一定人数を管理職に任用する他、各従業員の経験や能力に応じた人材の活用を行っております。
外国人雇用については、従来海外事業部門を中心に積極的な雇用を行ってきました。今後も語学や輸出入業務経験などの要件を充たす外国人従業員を積極的に雇用する予定です。また、外国人雇用に対応できるよう、英語併記の労働条件通知書を準備しており、その他の就業環境の整備にも取り組んでまいります。
女性活用については、2023年度末の女性役職者(部長、課長、課長補佐、主任)比率は8.5%ですが、候補となる女性従業員のキャリアアップを積極的に行うことで、女性活用を促進してまいります。
c.職場環境の整備
当社では、従業員が自己の能力を存分に発揮できるよう、以下の施策に取り組んでおります。
安全な職場環境を提供するため、安全衛生委員会による安全推進活動を実施しています。定期的に職場の安全点検を実施し、車両や設備・機器の不良個所の早期発見とメンテナンスを徹底して行っております。また、業務上の車両事故や業務災害の発生を防止するための教育研修を行うなど、従業員に対する事故防止啓発を適宜実施しております。
従業員の健康増進のために、定期健康診断結果に応じたフォローを行っております。管理職には、詳細な生活習慣病健診を実施し、重大な疾病の早期発見、治療に繋げるなどの成果に繋げております。
従業員の心身のリフレッシュを促進するため、年次有給休暇を取得しやすい環境の整備に取り組んでおります。現在、業務を相互補完できる体制を整備しており、これを定着化させることで年次有給休暇の取得日数の向上に取り組んでまいります。
②指標と目標
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指 標 |
2023年度 |
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年次有給休暇取得日数 (従業員一人平均) |
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(注)株式会社大水のみにかかる指標・目標です。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)法的規制について
当社グループは、水産物卸売会社として中央卸売市場及び地方卸売市場を中心に活動しております。そのため、卸売市場法を中心とした関係法令等への対応は重要な事項として認識しております。
卸売市場法などの法令等に抵触した場合、市場開設者から業務停止等の処分を受ける可能性があります。そのような事態に陥った場合、財政状態及び経営成績に与える影響は多大であると考えております。
当該リスクが顕在化する蓋然性は高くないものの、未然防止策として関係法令等の遵守・周知徹底や開設者等の検査対応及び各種モニタリングを推進しております。また、卸売市場を取り巻く環境の変化に柔軟かつ迅速に対応できる体制を構築し、新たな需要の開拓や付加価値の向上に取り組んでおります。
(2)市況変動等について
当社グループの主力事業である水産物の販売は、天候の影響により水産物の入荷量や市況が日々変動することがあります。このほか、発生頻度は高くないものの、自然災害や海洋汚染、資源保護による漁獲制限、政策的な輸出入の制限等も市況を変動させる要因となっております。
当社グループは水産物販売を主な収益源としているため、水産物需給の大幅な減退や市況の暴落等の事態に陥った場合は、仕入及び販売に影響を与える可能性があります。
当該リスクへの対応策として、営業本部が主体となり適時適切な在庫商品を確保することで価格変動リスクの低減を図っております。また、入荷が不安定にならないよう、全国各地の産地出荷者との関係を強化することで、水産物を安定的に集荷する体制づくりに努めております。
(3)食品の安全性について
食品を取り扱う上で品質管理の不備や衛生管理の不備、食品情報の伝達に関する不備等、様々なリスクが常に内在しております。
当該リスクが顕在化した場合、食品の回収や廃棄、損害賠償責任等に費用が必要となる他、社会的信頼の低下により仕入及び販売の状況に影響を与える可能性が考えられます。
当該リスクへの対応策として、品質管理委員会を設置し、品質管理活動の方針決定や当該活動状況のチェック等を実施しております。また、営業本部内に品質管理専任者を配置し、品質管理の周知・指導を実施しております。
衛生管理面においては、「HACCPに沿った衛生管理」に関する基準に基づき計画書を作成し、衛生管理にかかる手順書の作成、実施状況の記録・保存を行っております。
(4)新規人材確保と業務ノウハウの継承について
当社グループの継続的な成長には、優秀な人材の確保と育成・活用が必要不可欠となります。
現在当社の社員構成は、中高年者の割合が高くなっております。中長期的な業務ノウハウ継承のためには、若年層の拡充と早期育成が必要です。一方で、人口減少とともに若年層の割合が減少し、新卒採用を中心とした若年者の採用が困難となってきております。今後、若年者の人材確保や育成が停滞した場合には、基幹的な業務ノウハウの空洞化が発生することが懸念されます。そのような事態に陥った場合、仕入販売等の事業活動に影響を与える可能性が考えられます。
当該リスクへの対応策として、管理本部人事法務部に専任の採用担当者を配置し、通年で採用活動を実施しております。採用活動を強化することで、業務ノウハウを継承できる体制を維持してまいります。また、社員各々の資格等級に求める能力要件を明確化し、それに基づき教育研修を段階的に実施しております。人事制度を充実させることで、若年社員の早期離脱防止と人財の早期育成・活用を実現しております。
(5)基幹システムについて
当社グループの基幹システムは、全社各部署で使用され、業務遂行の生命線を担っております。その基幹システムのうち、水産物卸売業務で利用している「全社統合システム」は、安定的な稼働が求められるため、サーバやネットワーク機器を保守委託会社が管理するデータセンター内に設置しております。
当該データセンターでは、地震や水害などの自然災害が発生した場合でも、数日間の稼働が可能な環境及び運用体制を構築しております。さらに、システムの冗長化を構築することで、不測の事態が発生した場合でも業務の復旧ができるように備えております。
また、自然災害以外のリスクとして、サイバー攻撃、不正アクセス及びウィルス感染等を原因とした、システム障害及びネットワーク障害が発生する可能性があります。このようなサイバーセキュリティ対策として、情報セキュリティポリシーに基づいたUTM(統合脅威管理)や情報端末機器のセキュリティ対策管理システムを導入し、日々安全対策を講じております。当該リスクの発生の可能性は高くないものの、基幹システムの停止や障害などが発生した場合、取引先へのサービスに支障をきたし、当社グループの仕入及び販売の状況に影響を与える可能性があります。
当該リスクへの対応策として、上記のとおり頑健なデータセンターの利用、システムの冗長化、情報セキュリティ対策等を講じております。
(6)情報漏えいについて
当社グループは全国各地に取引先を持つため、顧客の信用情報を含めた個人情報及び取引条件等の当社事業に関する情報等を扱っております。
個人情報の取扱いは厳格に行っておりますが、当社グループ又は業務委託先等から、個人情報の漏えいや紛失、毀損又は不正利用等が発生する場合があります。情報漏えいが発生した場合、当社グループの信用毀損、損害賠償責任を招き、経営成績に影響を与える恐れがあります。また、個人情報取扱事業者として法令に違反した場合、罰則や勧告、命令等の行政処分を受けた場合、経営状態に悪影響を与える可能性があります。
当該リスクへの対応策として、コンプライアンス委員会及び情報セキュリティ委員会が中心となり、個人情報並びに特定個人情報の適正な取扱いを策定し、安全管理等の維持・推進に取り組んでおります。
(7)営業債権の貸倒について
販売の増加に伴い貸倒リスクは高まるほか、自然環境をはじめとする様々な要因による価格変動や需給関係の変化でも貸倒リスクは高まります。また、新型コロナウイルス感染症の拡大期に中小企業支援策として、いわゆる「コロナ融資」が導入されました。「コロナ融資」にて資金不足を回避している取引先については、返済時期に実質的な資金不足の発生が考えられます。そのため、「コロナ融資」の返済時期に貸倒リスクが、顕在する蓋然性は高くなる傾向が強いと認識しております。
その他の貸倒リスクについては、顕在化する時期に偏りはありません。ただし、当社グループの繁忙期である年末を越えた時期は、営業債権が他の時期に比べて多い状況にあります。そのため、この時期に大口債権の貸倒が発生した場合は、貸倒引当金の計上による経営成績等に与える影響額は相対的に大きくなる可能性があります。
当該リスクへの対応策として、影響の最小化を図る与信管理や販売先の定性情報の収集に努めるなどの債権管理を行っております。そのほか、ファクタリングによる実効性の高いリスク回避策を行う等、貸倒リスクの低減に取り組んでおります。
(8)在庫商品について
当社グループは、市況を勘案しながら在庫商品を確保しております。市況の動向によっては、過剰在庫や評価損の計上などが発生する可能性があります。市況の予測は困難なため、当該リスクの発生時期を予見はできませんが、当社グループの経営成績に影響を及ぼすリスクを有しております。
当該リスクへの対応策として、定例会議において、現在及び将来の市況情報の共有を図るとともに滞留在庫の有無を確認し、適正在庫の維持に取り組んでおります。
(9)投資有価証券の時価下落による減損処理について
当社グループは売上・仕入の取引拡大及び安定した営業外収益確保のため、上場有価証券を有しております。
当連結会計年度末の上場有価証券の保有状況は、連結財務諸表の注記事項(有価証券関係)に記載のとおりです。連結貸借対照表計上額が取得原価を超える銘柄が多数を占めており、平時において減損処理を行うリスクは極めて低いと考えております。
ただし、個別の銘柄の発行会社にて信用不安等の特別な事象が発生した場合には、投資有価証券評価損の計上により経営成績等に影響を与える可能性があります。
当該リスクへの対応策として、各銘柄の保有効果、時価情報、配当率を確認し、定性情報も注視して管理しております。
(10)不動産等の事業用資産の減損処理について
当社グループが保有する不動産等の事業用資産は、経営成績の低迷、不動産価額の下落の程度やその他の影響等により、減損損失の計上対象となる可能性があります。
ただし、賃貸用不動産の主要な物件については収益を獲得しており、直ちに経営成績等に影響を与えるものではありません。
当該リスクへの対応策として、安定した業績を上げるよう努めるとともに、不動産価額の動向把握に努め、より好条件での活用を検討するなど常に活用方法の見直しに取り組んでおります。
(11)コンプライアンスに関する事項について
当社グループは、コンプライアンスに則した行動をとるため、「大水行動規範」に基づきその仕組みづくりに取り組んでおります。
しかしながら、様々な取り組みを実施しても、営業取引上の不適切な売上計上、過誤による会計不正リスク及び働き方改革等への不十分な対応による労務トラブルリスク等の問題を回避することは困難であります。そのため、コンプライアンス上のリスクが発生する可能性を、潜在的に有しております。
当該リスクが顕在化した場合には、社会的な信用が低下し、顧客との取引停止・縮小による売上高減少や多額の損害賠償請求を受けるなど、当社業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクへの対応策として、コンプライアンス委員会を設置し、当社グループに内在するコンプライアンス上のリスクや課題を可視化しております。可視化されたリスクは、個々に具体策を講じており、ガバナンス体制の強化、コンプライアンス意識の徹底に取り組んでおります。また、社外に顧問弁護士を連絡先とする内部通報窓口を設置し、社内に周知することで、内在するコンプライアンス上の問題が、早期に発現する体制としております。
(12)自然災害、疫病等について
当社グループは水産物流通の担い手として、生鮮食料品等の安定供給を使命としております。そのため、事業継続が脅かされるような、地震、津波、台風等の自然災害、火災及び疫病等が発生した場合でも、不測の事態への対応は重要な課題であると認識しております。しかしながら、自然災害、火災及び疫病等の発生時期を予見することは非常に困難であり、事前に準備できる対策も限定的となります。
自然災害及び火災が発生した場合、当社グループの資産が毀損すること等により財務状況が悪化することが考えられます。また、疫病等が蔓延した場合、水産物需要の減少及び流通の停滞並びに従業員の欠勤等により、仕入及び販売等に影響を与える可能性があります。
当該リスクへの対応策として、リスクマネジメント会議を設置し、様々なリスクについて協議を行う他、災害時のBCP計画も策定しております。また、上記会議に限らず緊急性を要する事案が発生した場合は、代表取締役の指揮の下、臨時の対策本部を設置し、適宜様々な対応策について協議、実行いたします。
(13)物流について
当社グループは、物流等に係る業務の全部又は一部を外部業者へ委託しております。
物流業界は2024年度から時間外労働の上限規制が適用されることに伴うトラックドライバー不足等により、輸送能力課題が加速すると懸念されております。
当該リスクが顕在化した場合、出荷地からの慢性的な遅延や委託先からのサービスの提供が中断・停止される可能性があります。また、当社グループにおける荷役作業の増加など物流業務にも支障が生じる可能性があります。当社グループが物流費の大幅な増加に適切に対応できない場合は、経営成績等に影響を与える可能性があります。
当該リスクへの対応策として、営業本部に専任担当者を配置し、生産者及び運送事業者と連携を取ることで、物流の安定性確保に取り組んでおります。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
a.経営成績の概要
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の5類移行により経済・社会活動の正常化が進みました。訪日外国人数はコロナ禍前に近づきつつあり、訪日客の旅行消費額も大きく伸びました。また、個人の所得環境に改善が見られ、景気は緩やかに回復に向かいました。しかしながら、名目賃金の上昇を上回る物価高騰の影響で実質賃金は依然として減少傾向にあります。欧州・中東地域の政情不安や中国経済の先行き懸念など、海外景気の下振れがわが国の景気を下押しするリスクとなっております。
当水産流通業界におきましては、天然魚の漁獲量の減少や円安の加速により、魚価は高値圏で推移しております。食品全般の値上げに対する消費者の生活防衛意識の高まりから、家計の消費支出は減少傾向にあり、特に水産物消費への影響も大きくなっております。
このような状況のもと、当社グループでは、安全・安心な水産物を安定供給するという社会的使命を果たすべく、産地出荷者とのネットワークの強化等に努めてまいりました。
当連結会計年度の経営成績は、売上高は984億60百万円(前期比0.0%増)となりました。損益面では、営業利益は8億30百万円(前期比92.1%増)、経常利益は9億98百万円(前期比66.9%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は10億9百万円(前期比43.8%増)となりました。
各セグメントの経営成績は次のとおりであります。
(水産物販売事業)
水産物販売事業については、市場営業部門の売上は外食・インバウンド需要の回復傾向が続いており、堅調に推移しました。鮮魚関係では、天然魚は大衆魚中心に水揚げが少なくスルメイカ・カレイ・タラなどは低調に推移しましたが、養殖物を中心にブリ・鮭鱒・エビの売上が増加しました。塩冷関係では、カニが相場下落の影響により取扱数量は増加したものの売上は減少しました。一方でチリメン・シラス等の干魚類は取扱数量が増加し売上は前年を大きく上回りました。
市場外営業部門については、量販店をはじめとした小売業態等への売上は前年を上回りました。冷凍スリミは販売単価の下落により取扱数量は増加したものの、売上は減少となりました。
損益面については、市場営業部門は販売が堅調に推移し、粗利率の改善に努めたことにより増益となりました。市場外営業部門は一部商品の相場下落もあり減益でした。
その結果、売上高は982億33百万円(前期比0.0%減)となり、セグメント利益は9億44百万円(前期比66.9%増)となりました。
(冷蔵倉庫等事業)
冷蔵倉庫等事業は、保管料及び荷役作業収入の増加により売上高が2億76百万円(前期比12.3%増)となり、セグメント利益は22百万円(前期はセグメント利益0百万円)となりました。
b.財政状態の概要
(資産)
当連結会計年度末における流動資産は183億72百万円となり、前連結会計年度末に比べ12億57百万円増加しました。これは主に現金及び預金が14億33百万円、受取手形及び売掛金が6億54百万円増加した一方で、棚卸資産が9億25百万円減少したこと等によるものであります。固定資産は63億72百万円となり、前連結会計年度末に比べ9億99百万円増加しました。これは主に投資有価証券が10億33百万円増加したこと等によるものです。
この結果、総資産は247億45百万円となり、前連結会計年度末に比べ22億56百万円増加しました。
(負債)
当連結会計年度末における流動負債は114億37百万円となり、前連結会計年度末に比べ9億33百万円増加しました。これは主に支払手形及び買掛金が13億31百万円、1年内償還予定の社債が6億円増加した一方で、短期借入金が12億円減少したこと等によるものであります。固定負債は32億65百万円となり、前連結会計年度末に比べ4億86百万円減少しました。これは主に繰延税金負債が4億5百万円増加した一方で、社債が6億円、退職給付に係る負債が2億5百万円減少したこと等によるものであります。
この結果、負債合計は147億2百万円となり、前連結会計年度末に比べ4億47百万円増加しました。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産合計は100億42百万円となり、前連結会計年度末に比べ18億9百万円増加しました。これは主に親会社株主に帰属する当期純利益を10億9百万円計上したこと等により利益剰余金が9億42百万円、その他有価証券評価差額金が7億22百万円増加したこと等によるものであります。
この結果、自己資本比率は40.6%(前連結会計年度末は36.6%)となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、43億39百万円(前連結会計年度末比16億33百万円増)となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果、得られた資金は26億51百万円(前連結会計年度は3億49百万円の支出)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益を10億44百万円計上し、仕入債務が13億31百万円、売上債権が7億8百万円増加し、棚卸資産が9億25百万円減少したこと等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果、得られた資金は2億27百万円(前連結会計年度は1億23百万円の収入)となりました。これは主に定期預金の払戻により2億円の収入があったこと等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果、支出した資金は12億72百万円(前連結会計年度は8億41百万円の収入)となりました。これは主に短期借入金を12億円返済したこと等によるものであります。
また、キャッシュ・フローの指標のトレンドは以下のとおりであります。
(キャッシュ・フローの指標)
|
|
2020年3月期 |
2021年3月期 |
2022年3月期 |
2023年3月期 |
2024年3月期 |
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自己資本比率(%) |
34.2 |
38.1 |
35.9 |
36.6 |
40.6 |
|
時価ベースの自己資本比率(%) |
14.4 |
16.3 |
15.4 |
15.2 |
17.7 |
|
キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年) |
- |
9.4 |
- |
- |
1.1 |
|
インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍) |
- |
14.9 |
- |
- |
118.7 |
(注) 自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い
※各指標はいずれも連結ベースの財務数値により算出しております。
※株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しております。
※営業キャッシュ・フローは、連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。
※2020年3月期、2022年3月期及び2023年3月期のキャッシュ・フロー対有利子負債比率及びインタレスト・カバレッジ・レシオについては、営業キャッシュ・フローがマイナスのため記載しておりません。
③仕入及び販売の実績
a.商品仕入実績
当連結会計年度の商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
前年同期比(%) |
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水産物販売事業(百万円) |
89,643 |
98.3 |
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冷蔵倉庫等事業(百万円) |
- |
- |
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合計(百万円) |
89,643 |
98.3 |
b.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
前年同期比(%) |
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水産物販売事業(百万円) |
98,233 |
100.0 |
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冷蔵倉庫等事業(百万円) |
276 |
112.3 |
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合計(百万円) |
98,510 |
100.0 |
(注)セグメント間の内部振替前の数値によっております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する記述は、有価証券報告書提出日現在において判断したものであります。
①当連結会計年度の財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
(経営成績)
当連結会計年度の経営成績は、売上高については前連結会計年度から微増の984億60百万円(前期比0.0%増)となりました。商品市況は、天然魚の漁獲量の減少や円安の加速などにより単価高となりました。そのため、家計の消費支出が減少傾向となりましたが、外食・インバウンド需要の回復を背景に、京阪神の中央卸売市場を拠点とする市場営業部門の販売が堅調に推移しました。
利益面では営業利益8億30百万円(前年比92.1%増)、経常利益9億98百万円(前年比66.9%増)といずれも前連結会計年度から増益となりました。売上総利益は一部商品の相場下落などにより前連結会計年度を下回りました。しかしながら、販売費及び一般管理費のうち、海上コンテナ運賃などの販売経費が減少したことにより、限界利益の段階では増益となり、人件費等の固定費は増加したものの、販売費及び一般管理費全体では前連結会計年度を大幅に下回りました。
当社グループでは、経営方針・経営戦略または経営上の目標の達成状況を判断する客観的な指標として、中期経営計画(2023年度-2025年度)において2025年度の数値目標(連結ベース)を掲げております(≪第2 事業の状況 1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(3)経営環境及び優先的に対処すべき事業上及び財政上の課題≫に記載のとおり)。初年度となる当連結会計年度は、営業利益、経常利益については、2025年度の目標を上回ることができました。
2025年度の最終的な目標達成に向けては、今後、生活様式の変化や物価の上昇に伴い、消費者の生活防衛意識の高まりが続くものと予想されます。特に、水産物販売事業においては、温暖化による天然魚の漁獲量減少、円安による魚価の高止まり、「物流の2024年問題」の本格化による物流コストの上昇などが懸念され、事業環境の先行きは不透明であります。
当社グループでは、こうした事業環境の変化に対応すべく仕入先・販売先との関係強化に努め、安定した水産物の集荷・販売に注力し、数値目標の連続達成に向けて取組んでまいります。
(財政状態)
当連結会計年度末の財政状態は、資産合計が247億45百万円(前期比22億56百万円増)となりました。資産合計が増加した要因は「現金及び預金」が14億33百万円、「投資有価証券」が10億33百万円増加し、「商品及び製品」が9億25百万円減少したこと等によります。「現金及び預金」については、当連結会計年度末が銀行休業日であったことから翌期に決済が繰り越されたことによります。これに連動して「受取手形及び売掛金」「支払手形及び買掛金」もそれぞれ増加しております。「投資有価証券」については、保有する上場有価証券の評価益が増加したことによります。これに連動して「繰延税金負債」「その他有価証券評価差額金」もそれぞれ増加しております。
また、「商品及び製品」の減少に伴い、有利子負債(短期、長期借入金および社債)が12億円減少しております。
(セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討の内容)
セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討については、当社グループの報告セグメントにおける水産物販売事業の比率が極めて高いため、上記の事業全体に係る記載内容と概ね同一と考えられます。よって、セグメントごとの記載を省略しております。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
(キャッシュ・フロー)
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは26億51百万円の収入(前期は3億49百万円の支出)となりました。これは当連結会計年度に税金等調整前当期純利益を10億44百万円計上したこと、棚卸資産の減少額が9億25百万円となったことに加え、≪①当連結会計年度の財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容(財政状態)≫に記載したとおり、当連結会計年度末が銀行休業日であったことによるものであります。また、財務活動によるキャッシュ・フローの支出は、棚卸資産が減少したことから、借入金を返済したことによるものです。
(資本の財源及び資金の流動性)
当連結会計年度末の資金調達の総額は29億円(前期比12億円減)となりました。これらの内訳は、短期借入金は14億50百万円(前期比12億円減)、長期資金(1年内返済予定として流動負債に計上分を含む)は14億50百万円(前期と同額)となっております。資金調達の総額に占める流動・固定の比率は資産のバランスに見合った長期資金を調達する方針としております。2025年3月期の資金支出については、業務用パソコン、プリンタ等の全面入れ替えを予定しており、約3億円の資金支出を見込んでおります。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されており、重要な会計方針につきましては、≪第5 経理の状況 1連結財務諸表等(1)連結財務諸表 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項≫ に記載しているとおりであります。この連結財務諸表の作成にあたっては、会計基準の範囲内で一定の見積りがなされ、引当金の計上等の数値に反映されております。これらの見積りについては、必要に応じて見直しを行っておりますが、不確実性があるため、実際の結果が見積りと異なる場合があります。
なお、この連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、≪第5 経理の状況 1連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)≫に記載しているとおりであります。
当社は下記のとおり経営支援に関する合意書を締結しております。
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相手先 |
期間 |
内容 |
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㈱ニッスイ |
- |
当社は日本水産㈱(現 ㈱ニッスイ)との間で2009年3月27日付で、同社による当社への資本参加とそれに伴う役員派遣及び資金支援等の経営支援に関する基本合意書を締結しました。 |
該当事項はありません。